以下、この発明の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態の説明に先立って、この発明に適用可能なディスクシステムについて、下記の9のセクションに従い説明する。
1.記録方式の概要
2.ディスクについて
3.信号フォーマット
4.記録再生装置の構成
5.次世代MD1および次世代MD2によるディスクの初期化処理について
6.音楽データの第1の管理方式について
7.音楽データの管理方式の第2の例
8.装置の外観について
9.インデックストラックについて
1.記録方式の概要
この発明による記録再生装置では、記録媒体として光磁気ディスクが使用される。フォームファクタのような、ディスクの物理的属性は、いわゆるMD(Mini-Disc)システムによって使用されるディスクと実質的に同じである。しかし、ディスク上に記録されたデータと、そのデータがどのようにディスク上に配置されているかについては、従来のMDと異なる。
より具体的には、この発明による装置は、オーディオデータのようなコンテンツデータを記録再生するために、ファイル管理システムとしてFAT(File Allocation Table)システムを使用している。これによって、当該装置は、現行のパーソナルコンピュータに対して互換性を保証することができる。
ここでは、「FAT」又は「FATシステム」という用語は、前述したように、種々のPCベースのファイルシステムを指すのに総称的に用いられ、DOS(Disk Operating System)で用いられる特定のFATベースのファイルシステム、Windows95/98(それぞれ登録商標)で使用されるVFAT(Virtual FAT)、Windows98/ME/2000(それぞれ登録商標)で用いられるFAT32、及びNTFS(NT File System(New Technology File System とも呼ばれる))のどれかを示すことを意図したものではない。NTFSは、WindowsNT(登録商標)オペレーティングシステム、又は(オプションにより)Windows2000で使用されるファイルシステムであり、ディスクに対する読み出し/書き込みの際に、ファイルの記録及び取り出しを行う。
また、この発明では、現行のMDシステムに対して、エラー訂正方式や変調方式を改善することにより、データの記録容量の増大を図るとともに、データの信頼性を高めるようにしている。更に、この発明では、コンテンツデータを暗号化するとともに、不正コピーを防止して、コンテンツデータの著作権の保護が図れるようにしている。
記録再生のフォーマットとしては、現行のMDシステムで用いられているディスクと全く同様のディスク(すなわち、物理媒体)を用いるようにした次世代MD1の仕様と、現行のMDシステムで用いられているディスクとフォームファクター及び外形は同様であるが、磁気超解像度(MSR)技術を使うことにより、線記録方向の記録密度を上げて、記録容量をより増大した次世代MD2の仕様とがあり、これらが本願発明者により開発されている。
現行のMDシステムでは、カートリッジに収納された直径64mmの光磁気ディスクが記録媒体として用いられている。ディスクの厚みは1.2mmであり、その中央に11mmの径のセンターホールが設けられている。カートリッジの形状は、長さ68mm、幅72mm、厚さ5mmである。
次世代MD1の仕様でも次世代MD2の仕様でも、これらディスクの形状やカートリッジの形状は、全て同じである。リードイン領域の開始位置についても、次世代MD1の仕様および次世代MD2の仕様のディスクも、29mmから始まり、現行のMDシステムで使用されているディスクと同様である。
トラックピッチについては、次世代MD2では、1.2μmから1.3μm(例えば1.25μm)とすることが検討されている。これに対して、現行のMDシステムのディスクを流用する次世代MD1では、トラックピッチは1.6μmとされている。ビット長は、次世代MD1が0.44μm/ビットとされ、次世代MD2が0.16μm/ビットとされる。冗長度は、次世代MD1および次世代MD2ともに、20.50%である。
次世代MD2の仕様のディスクでは、磁気超解像技術を使うことにより、線密度方向の記録容量を向上するようにしている。磁気超解像技術は、所定の温度になると、切断層が磁気的にニュートラルな状態になり、再生層に転写されていた磁壁が移動することで、微少なマークがビームスポットの中で大きく見えるようになることを利用したものである。
すなわち、次世代MD2の仕様のディスクでは、透明基板上に、少なくとも情報を記録する記録層となる磁性層と、切断層と、情報再生用の磁性層とが積層される。切断層は、交換結合力調整用層となる。所定の温度になると、切断層が磁気的にニュートラルな状態になり、記録層に転写されていた磁壁が再生用の磁性層に転写される。これにより、微少なマークがビームスポットの中に見えるようになる。なお、記録時には、レーザパルス磁界変調技術を使うことで、微少なマークを生成することができる。
また、次世代MD2の仕様のディスクでは、デトラックマージン、ランドからのクロストーク、ウォブル信号のクロストーク、フォーカスの漏れを改善するために、グルーブを従来のMDディスクより深くし、グルーブの傾斜を鋭くしている。次世代MD2の仕様のディスクでは、グルーブの深さは例えば160nmから180nmであり、グルーブの傾斜は例えば60度から70度であり、グルーブの幅は例えば600nmから700nmである。
また、光学的の仕様については、次世代MD1の仕様では、レーザ波長λが780nmとされ、光学ヘッドの対物レンズの開口率NAが0.45とされている。次世代MD2の仕様も同様に、レーザ波長λが780nmとされ、光学ヘッドの開口率NAが0.45とされている。
記録方式としては、次世代MD1の仕様も次世代MD2の仕様も、グルーブ記録方式が採用されている。つまり、グルーブ(ディスクの盤面上の溝)をトラックとして記録再生に用いるようにしている。
エラー訂正符号化方式としては、現行のMDシステムでは、ACIRC(Advanced Cross Interleave Reed-Solomon Code) による畳み込み符号が用いられていたが、次世代MD1および次世代MD2の仕様では、RS−LDC(Reed Solomon−Long Distance Code)とBIS(Burst Indicator Subcode)とを組み合わせたブロック完結型の符号が用いられている。ブロック完結型のエラー訂正符号を採用することにより、リンキングセクタが不要になる。LDCとBISとを組み合わせたエラー訂正方式では、バーストエラーが発生したときに、BISによりエラーロケーションが検出できる。このエラーロケーションを使って、LDCコードにより、イレージャ訂正を行うことができる。
アドレス方式としては、シングルスパイラルによるグルーブを形成したうえで、このグルーブの両側に対してアドレス情報としてのウォブルを形成したウォブルドグルーブ方式が採用されている。このようなアドレス方式は、ADIP(Address in Pregroove)と呼ばれている。現行のMDシステムと、次世代MD1および次世代MD2の仕様では、線密度が異なると共に、現行のMDシステムでは、エラー訂正符号として、ACIRCと呼ばれる畳み込み符号が用いられているのに対して、次世代MD1および次世代MD2の仕様では、LDCとBISとを組み合わせたブロック完結型の符号が用いられているため、冗長度が異なり、ADIPとデータとの相対的な位置関係が変わっている。そこで、現行のMDシステムと同じ物理構造のディスクを流用する次世代MD1の仕様では、ADIP信号の扱いを、現行のMDシステムのときとは異なるようにしている。また、次世代MD2の仕様では、次世代MD2の仕様により合致するように、ADIP信号の仕様に変更を加えている。
変調方式については、現行のMDシステムでは、EFM(8 to 14 Modulation)が用いられているのに対して、次世代MD1および次世代MD2の仕様では、RLL(1,7)PP(RLL;Run Length Limited ,PP;Parity Preserve/Prohibit rmtr(repeated minimum transition runlength))(以下、1−7pp変調と称する)が採用されている。また、データの検出方式は、次世代MD1ではパーシャルレスポンスPR(1,2,1)MLを用い、次世代MD2ではパーシャルレスポンスPR(1,−1)MLを用いたビタビ復号方式とされている。
また、ディスク駆動方式はCLV(Constant Linear Verocity)またはZCAV(Zone Constant Angular Verocity)で、その標準線速度は、次世代MD1の仕様では、2.4m/秒とされ、次世代MD2の仕様では、1.98m/秒とされる。なお、現行のMDシステムの仕様では、60分ディスクで1.2m/秒、74分ディスクで1.4m/秒とされている。
現行のMDシステムで用いられるディスクをそのまま流用する次世代MD1の仕様では、ディスク1枚当たりのデータ総記録容量は約300Mバイト(80分ディスクを用いた場合)になる。変調方式がEFMから1−7pp変調とされることで、ウィンドウマージンが0.5から0.666となり、この点で、1.33倍の高密度化が実現できる。また、エラー訂正方式として、ACIRC方式からBISとLDCを組み合わせたものとしたことで、データ効率が上がり、この点で、1.48倍の高密度化が実現できる。総合的には、全く同様のディスクを使って、現行のMDシステムに比べて、約2倍のデータ容量が実現されたことになる。
磁気超解像度を利用した次世代MD2の仕様のディスクでは、更に線密度方向の高密度化が図られ、データ総記録容量は、約1Gバイトになる。
データレートは標準線速度にて、次世代MD1では4.4Mビット/秒であり、次世代MD2では、9.8Mビット/秒である。
2.ディスクについて
図1は、次世代MD1のディスクの構成を示すものである。次世代MD1のディスクは、現行のMDシステムのディスクをそのまま流用したものである。すなわち、ディスクは、透明のポリカーボネート基板上に、誘電体膜と、磁性膜と、誘電体膜と、反射膜とを積層して構成される。更に、その上に、保護膜が積層される。
次世代MD1のディスクでは、図1に示すように、ディスクの内周(ディスクのレコーダブル領域の最も内側の周(「最も内側」は、ディスクの中心から放射状に延びる方向において最も内側を示す)のリードイン領域に、P−TOC(プリマスタードTOC(Table Of Contents))領域が設けられる。ここは、物理的な構造としては、プリマスタード領域となる。すなわち、エンボスピットにより、コントロール情報等が、例えば、P−TOC情報として記録されている。
P−TOC領域が設けられるリードイン領域の外周(ディスクの中心から放射状に延びる方向において外側の周)は、レコーダブル領域(光磁気記録可能な領域)とされ、記録トラックの案内溝としてグルーブが形成された記録再生可能領域となっている。このレコーダブル領域の内周には、U−TOC(ユーザTOC)が設けられる。
U−TOCは、現行のMDシステムでディスクの管理情報を記録するために用いられているU−TOCと同様の構成のものである。U−TOCは、現行のMDシステムにおいて、トラック(オーディオトラック/データトラック)の曲順、記録、消去などに応じて書き換えられる管理情報であり、各トラック(トラックを構成するパーツ)について、開始位置、終了位置や、モードを管理するものである。
U−TOCの外周には、アラートトラックが設けられる。このトラックには、ディスクが現行のMDシステムにロードされた場合に、MDプレーヤによって起動(出力)される警告音が記録される。この警告音は、そのディスクが次世代MD1方式で使用され、現行のシステムでは再生できないことを示すものである。レコーダブル領域の残りの部分(詳しくは、図2に示されている)は、リードアウト領域まで、放射状に延びる方向に広がっている。
図2は、図1に示す次世代MD1の仕様のディスクのレコーダブル領域の構成を示すものである。図2に示すように、レコーダブル領域の先頭(内周側)には、U−TOCおよびアラートトラックが設けられる。U−TOCおよびアラートトラックが含まれる領域は、現行のMDシステムのプレーヤでも再生できるように、EFMでデータが変調されて記録される。EFM変調でデータが変調されて記録される領域の外周に、次世代MD1方式の1−7pp変調でデータが変調されて記録される領域が設けられる。EFMでデータが変調されて記録される領域と、1−7pp変調でデータが変調されて記録される領域との間は所定の距離の間だけ離間されており、「ガードバンド」が設けられている。このようなガードバンドが設けられるため、現行のMDプレーヤに次世代MD1の仕様のディスクが装着されて、不具合が発生されることが防止される。
1−7pp変調でデータが変調されて記録される領域の先頭(内周側)には、DDT(Disc Description Table)領域と、リザーブトラックが設けられる。DDT領域には、物理的に欠陥のある領域に対する交替処理をするために設けられる。DDT領域には、さらに、ディスク毎に固有の識別コードが記録される。以下、このディスク毎に固有の識別コードをUID(ユニークID)と称する。次世代MD1の場合、UIDは、例えば所定に発生された乱数に基づき生成され、例えばディスクの初期化の際に記録される(詳細は後述する)。UIDを用いることで、ディスクの記録内容に対するセキュリティ管理を行うことができる。リザーブトラックは、コンテンツの保護を図るための情報が格納される。
更に、1−7pp変調でデータが変調されて記録される領域には、FAT(File Allocation Table)領域が設けられる。FAT領域は、FATシステムでデータを管理するための領域である。FATシステムは、汎用のパーソナルコンピュータで使用されているFATシステムに準拠したデータ管理を行うものである。FATシステムは、ルートにあるファイルやディレクトリのエントリポイントを示すディレクトリと、FATクラスタの連結情報が記述されたFATテーブルとを用いて、FATチェーンによりファイル管理を行うものである。なお、FATの用語は、前述したように、PCオペレーティングシステムで利用される、様々な異なるファイル管理方法を示すように総括的に用いられている。
次世代MD1の仕様のディスクにおいては、U−TOC領域には、アラートトラックの開始位置の情報と、1−7pp変調でデータが変調されて記録される領域の開始位置の情報が記録される。
現行のMDシステムのプレーヤに、次世代MD1のディスクが装着されると、U−TOC領域が読み取られ、U−TOCの情報から、アラートトラックの位置が分かり、アラートトラックがアクセスされ、アラートトラックの再生が開始される。アラートトラックには、このディスクが次世代MD1方式で使用され、現行のMDシステムのプレーヤでは再生できないことを示す警告音が記録されている。この警告音から、このディスクが現行のMDシステムのプレーヤでは使用できないことが知らされる。
なお、警告音としては、「このプレーヤでは使用できません」というような言語による警告とすることができる。勿論、単純なビープ音、トーン、又はその他の警告信号とするようにしても良い。
次世代MD1に準拠したプレーヤに、次世代MD1のディスクが装着されると、U−TOC領域が読み取られ、U−TOCの情報から、1−7pp変調でデータが記録された領域の開始位置が分かり、DDT、リザーブトラック、FAT領域が読み取られる。1−7pp変調のデータの領域では、U−TOCを使わずに、FATシステムを使ってデータの管理が行われる。
図3は、次世代MD2のディスクを示すものである。ディスクは、透明のポリカーボネート基板上に、誘電体膜と、磁性膜と、誘電体膜と、反射膜とを積層して構成される。更に、その上に、保護膜が積層される。
次世代MD2のディスクでは、図3Aに示すように、ディスクの内周(ディスクの中心から放射状に延びる方向において内側の周)のリードイン領域には、ADIP信号により、コントロール情報が記録されている。次世代MD2のディスクには、リードイン領域にはエンボスピットによるP−TOCは設けられておらず、その代わりに、ADIP信号によるコントロール情報が用いられる。リードイン領域の外周からレコーダブル領域が開始され、記録トラックの案内溝としてグルーブが形成された記録再生可能領域となっている。このレコーダブル領域には、1−7pp変調で、データが変調されて記録される。
次世代MD2の仕様のディスクでは、図3Bに示すように、磁性膜として、情報を記録する記録層となる磁性層101と、切断層102と、情報再生用の磁性層103とが積層されたものが用いられる。切断層102は、交換結合力調整用層となる。所定の温度になると、切断層102が磁気的にニュートラルな状態になり、記録層101に転写されていた磁壁が再生用の磁性層103に転写される。これにより、記録層101では微少なマークが再生用の磁性層103のビームスポットの中に拡大されて見えるようになる。
図示しないが、次世代MD2の使用のディスクでは、記録可能領域の内周側の、コンシューマ向けの記録再生装置で再生可能であるが記録不可であるような領域に、上述したUIDが予め記録される。次世代MD2のディスクの場合、UIDは、例えばDVD(Digital Versatile Disc)で用いられているBCA(Burst Ctting Area)の技術と同様の技術により、ディスクの製造時に予め記録される。ディスクの製造時にUIDが生成され記録されるため、UIDの管理が可能となり、上述の次世代MD1による、ディスクの初期化時などに乱数に基づきUIDを生成する場合に比べ、セキュリティを向上できる。UIDのフォーマットなど詳細については、後述する。
なお、繁雑さを避けるために、次世代MD2においてUIDが予め記録されるこの領域を、以降、BCAと呼ぶことにする。
次世代MD1であるか次世代MD2であるかは、例えば、リードインの情報から判断できる。すなわち、リードインにエンボスピットによるP−TOCが検出されれば、現行のMDまたは次世代MD1のディスクであると判断できる。リードインにADIP信号によるコントロール情報が検出され、エンボスピットによるP−TOCが検出されなければ、次世代MD2であると判断できる。上述したBCAにUIDが記録されているか否かで判断することも可能である。なお、次世代MD1と次世代MD2との判別は、このような方法に限定されるものではない。オントラックのときとオフトラックのときとのトラッキングエラー信号の位相から判別することも可能である。勿論、ディスク識別用の検出孔等を設けるようにしても良い。
図4は、次世代MD2の仕様のディスクのレコーダブル領域の構成を示すものである。図4に示すように、レコーダブル領域では全て1−7pp変調でデータが変調されて記録され、1−7pp変調でデータが変調されて記録される領域の先頭(内周側)には、DDT領域と、リザーブトラックが設けられる。DDT領域は、物理的に欠陥のある領域に対する交替領域を管理するための交替領域管理データを記録するために設けられる。
具体的には、DDT領域は、物理的に欠陥のある上記領域に替わるレコーダブル領域を含む置き換え領域を管理する管理テーブルを記録する。この管理テーブルは、欠陥があると判定された論理クラスタを記録し、その欠陥のある論理クラスタに替わるものとして割り当てられた置き換え領域内の論理クラスタ(1つ又は複数)も記録する。さらに、DDT領域には、上述したUIDが記録される。リザーブトラックは、コンテンツの保護を図るための情報が格納される。
更に、1−7pp変調でデータが変調されて記録される領域には、FAT領域が設けられる。FAT領域は、FATシステムでデータを管理するための領域である。FATシステムは、汎用のパーソナルコンピュータで使用されているFATシステムに準拠したデータ管理を行うものである。
次世代MD2のディスクにおいては、U−TOC領域は設けられていない。次世代MD2に準拠したプレーヤに、次世代MD2のディスクが装着されると、所定の位置にあるDDT、リザーブトラック、FAT領域が読み取られ、FATシステムを使ってデータの管理が行われる。
次世代MD1および次世代MD2のディスクでは、時間のかかる初期化作業は不要とされる。すなわち、次世代MD1および次世代MD2の仕様のディスクでは、DDTやリザーブトラック、FATテーブル等の最低限のテーブルの作成以外に、初期化作業は不要で、未使用のディスクからレコーダブル領域の記録再生を直接行うことが可能である。
なお、次世代MD2のディスクは、上述のように、ディスクの製造時にUIDが生成され記録されるため、より強力にセキュリティ管理を行うことが可能である一方、現行のMDシステムで用いられるディスクに比べて膜の積層数が多く、より高価である。そこで、ディスクの記録可能領域およびリードイン、リードアウト領域は、次世代MD1と共通とし、UIDのみ、DVDと同様のBCAを用いて次世代MD2と同様にしてディスクの製造時に記録するようにしたディスクシステム(次世代MD1.5と称する)が提案されている。
なお、以下では、次世代MD1.5に関して、特に必要となる場合を除き、説明を省略する。すなわち、次世代MD1.5は、UIDに関しては次世代MD2に準じ、オーディオデータの記録再生などに関しては次世代MD1に準ずるものとする。
UIDについて、より詳細に説明する。上述したように、次世代MD2のディスクにおいて、UIDは、DVDで用いられているBCAと称される技術と同様の技術により、ディスクの製造時に予め記録される。図5は、このUIDの一例のフォーマットを概略的に示す。UIDの全体をUIDレコードブロックと称する。
UIDブロックにおいて、先頭から2バイト分がUIDコードのフィールドとされる。UIDコードは、2バイトすなわち16ビットのうち上位4ビットがディスク判別用とされる。例えば、この4ビットが〔0000〕で当該ディスクが次世代MD2のディスクであることが示され、〔0001〕で当該ディスクが次世代MD1.5のディスクであることが示される。UIDコードの上位4ビットの他の値は、例えば将来の拡張のために予約される。UIDコードの下位12ビットは、アプリケーションIDとされ、4096種類のサービスに対応することができる。
UIDコードの次に1バイトのバージョンナンバのフィールドが配され、その次に、1バイトでデータ長のフィールドが配される。このデータ長により、データ長の次に配されるUIDレコードデータのフィールドのデータ長が示される。UIDレコードデータのフィールドは、UID全体のデータ長が188バイトを超えない範囲で、4m(m=0、1、2、・・・)バイト分、配される。UIDレコードデータのフィールドに、所定の方法で生成したユニークなIDを格納することができ、これにより、ディスク個体が識別可能とされる。
なお、次世代MD1のディスクでは、このUIDレコードデータのフィールドに、乱数に基づき生成されたIDが記録される。
UIDレコードブロックは、最大188バイトまでのデータ長で、複数個、作ることができる。
3.信号フォーマット
次に、次世代MD1および次世代MD2のシステムの信号フォーマットについて説明する。現行のMDシステムでは、エラー訂正方式として、畳み込み符号であるACIRCが用いられており、サブコードブロックのデータ量に対応する2352バイトからなるセクタを記録再生のアクセス単位としている。畳み込み符号の場合には、エラー訂正符号化系列が複数のセクタに跨るため、データを書き換える際には、隣接するセクタ間に、リンキングセクタを用意する必要がある。アドレス方式としては、シングルスパイラルによるグルーブを形成したうえで、このグルーブの両側に対してアドレス情報としてのウォブルを形成したウォブルドグルーブ方式であるADIPが使われている。現行のMDシステムでは、2352バイトからなるセクタをアクセスするのに最適なように、ADIP信号が配列されている。
これに対して、次世代MD1および次世代MD2のシステムの仕様では、LDCとBISとを組み合わせたブロック完結型の符号が用いられ、64Kバイトを記録再生のアクセス単位としている。ブロック完結型の符号では、リンキングセクタは不要である。そこで、現行のMDシステムのディスクを流用する次世代MD1のシステムの仕様では、ADIP信号の扱いを、新たな記録方式に対応するように、変更するようにしている。また、次世代MD2のシステムの仕様では、次世代MD2の仕様により合致するように、ADIP信号の仕様に変更を加えている。
図6、図7、および図8は、次世代MD1および次世代MD2のシステムで使用されるエラー訂正方式を説明するためのものである。次世代MD1および次世代MD2のシステムでは、図6に示すようなLDCによるエラー訂正符号化方式と、図7および図8に示すようなBIS方式とが組み合わされている。
図6は、LDCによるエラー訂正符号化の符号化ブロックの構成を示すものである。図6に示すように、各エラー訂正符号化セクタのデータに対して、4バイトのエラー検出コードEDCが付加され、水平方向に304バイト、垂直方向に216バイトのエラー訂正符号化ブロックに、データが二次元配列される。各エラー訂正符号化セクタは、2Kバイトのデータからなる。図6に示すように、水平方向に304バイト、垂直方向に216バイトからなるエラー訂正符号化ブロックには、2Kバイトからなるエラー訂正符号化セクタが32セクタ分配置される。このように、水平方向に304バイト、垂直方向に216バイトに二次元配列された32個のエラー訂正符号化セクタのエラー訂正符号化ブロックのデータに対して、垂直方向に、32ビットのエラー訂正用のリード・ソロモンコードのパリティが付加される。
図7および図8は、BISの構成を示すものである。図7に示すように、38バイトのデータ毎に、1バイトのBISが挿入され、(38×4=152バイト)のデータと、3バイトのBISデータと、2.5バイトのフレームシンクとの合計157.5バイトが1フレームとされる。
図8に示すように、このように構成されるフレームを496フレーム集めて、BISのブロックが構成される。BISデータ(3×496=1488バイト)には、576バイトのユーザコントロールデータと、144バイトのアドレスユニットナンバと、768バイトのエラー訂正コードが含められる。
このように、BISデータには、1488バイトのデータに対して768バイトのエラー訂正コードが付加されているので、強力にエラー訂正を行うことができる。このBISコードを38バイト毎に埋め込んでおくことにより、バーストエラーが発生したときに、エラーロケーションが検出できる。このエラーロケーションを使って、LDCコードにより、イレージャ訂正を行うことができる。
ADIP信号は、図9に示すように、シングルスパイラルのグルーブの両側に対してウォブルを形成することで記録される。すなわち、ADIP信号は、FM変調されたアドレスデータを有し、ディスク素材にグルーブのウォブルとして形成されることにより記録される。
図10は、次世代MD1の場合のADIP信号のセクタフォーマットを示すものである。
図10に示すように、ADIP信号の1セクタ(ADIPセクタ)は、4ビットのシンクと、8ビットのADIPクラスタナンバの上位ビットと、8ビットのADIPクラスタナンバの下位ビットと、8ビットのADIPセクタナンバと、14ビットのエラー検出コードCRCとからなる。
シンクは、ADIPセクタの先頭を検出するための所定パターンの信号である。従来のMDシステムでは、畳み込み符号を使っているため、リンキングセクタが必要になる。リンキング用のセクタナンバは、負の値を持ったセクタナンバで、「FCh」、「FDh」、「FEh」、「FFh」(hは16進数を示す)のセクタナンバのものである。次世代MD1では、現行のMDシステムのディスクを流用するため、このADIPセクタのフォーマットは、現行のMDシステムのものと同様である。
次世代MD1のシステムでは、図11に示すように、ADIPセクタナンバ「FCh」から「FFh」および「0Fh」から「1Fh」までの36セクタで、ADIPクラスタが構成される。そして、図10に示すように、1つのADIPクラスタに、2つのレコーディングブロック(64Kバイト)のデータを配置するようにしている。
図12は、次世代MD2の場合のADIPセクタの構成を示すものである。次世代MD2の仕様では、ADIPセクタが16セクタで、ADIPセクタが構成される。したがって、ADIPのセクタナンバは、4ビットで表現できる。また、次世代MDでは、ブロック完結のエラー訂正符号が用いられているため、リンキングセクタは不要である。
次世代MD2のADIPセクタは、図12に示すように、4ビットのシンクと、4ビットのADIPクラスタナンバの上位ビットと、8ビットのADIPクラスタナンバの中位ビットと、4ビットのADIPクラスタナンバの下位ビットと、4ビットのADIPセクタナンバと、18ビットのエラー訂正用のパリティとからなる。
シンクは、ADIPセクタの先頭を検出するための所定パターンの信号である。ADIPクラスタナンバとしては、上位4ビット、中位8ビット、下位4ビットの16ビット分が記述される。16個のADIPセクタでADIPクラスタが構成されるため、ADIPセクタのセクタナンバは4ビットとされている。現行のMDシステムでは14ビットのエラー検出コードであるが、18ビットのエラー訂正用のパリティとなっている。そして、次世代MD2の仕様では、図13に示すように、1つのADIPクラスタに、1レコーディングブロック(64Kバイト)のデータが配置される。
図14は、次世代MD1の場合のADIPクラスタとBISのフレームとの関係を示すものである。
図11に示したように、次世代MD1の仕様では、ADIPセクタ「FC」〜「FF」およびADIPセクタ「00」〜「1F」の36セクタで、1つのADIPクラスタが構成される。記録再生の単位となる1レコーディングブロック(64Kバイト)のデータは、1つのADIPクラスタに、2つ分配置される。
図14に示すように、1つのADIPセクタは、前半の18セクタと、後半の18セクタとに分けられる。
記録再生の単位となる1レコーディングブロックのデータは、496フレームからなるBISのブロックに配置される。このBISのブロックに相当する496フレーム分のデータのフレーム(フレーム「10」からフレーム「505」)の前に、10フレーム分のプリアンブル(フレーム「0」からフレーム「9」)が付加され、また、このデータのフレームの後に、6フレーム分のポストアンブルのフレーム(フレーム506からフレーム511)が付加され、合計、512フレーム分のデータが、ADIPセクタ「FCh」からADIPセクタ「0Dh」のADIPクラスタの前半に配置されるとともに、ADIPセクタ「0Eh」からADIPセクタ「1Fh」のADIPクラスタの後半に配置される。データフレームの前のプリアンブルのフレームと、データの後ろのポストアンブルのフレームは、隣接するレコーディングブロックとのリンキング時にデータを保護するのに用いられる。プリアンブルは、データ用PLLの引き込み、信号振幅制御、信号オフセット制御などにも用いられる。
レコーディングブロックのデータを記録再生する際の物理アドレスは、ADIPクラスタと、そのクラスタの前半か後半かにより指定される。記録再生時に物理アドレスが指定されると、ADIP信号からADIPセクタが読み取られ、ADIPセクタの再生信号から、ADIPクラスタナンバとADIPセクタナンバが読み取られ、ADIPクラスタの前半と後半とが判別される。
図15は、次世代MD2の仕様の場合のADIPクラスタとBISのフレームとの関係を示すものである。図13に示したように、次世代MD2の仕様では、ADIPセクタが16セクタで、1つのADIPクラスタが構成される。1つのADIPクラスタに、1レコーディングブロック(64Kバイト)のデータが配置される。
図15に示すように、記録再生の単位となる1レコーディングブロック(64Kバイト)のデータは、496フレームからなるBISのブロックに配置される。このBISのブロックに相当する496フレーム分のデータのフレーム(フレーム「10」からフレーム「505」)の前に、10フレーム分のプリアンブル(フレーム「0」からフレーム「9」)が付加され、また、このデータのフレームの後に、6フレーム分のポストアンブルのフレーム(フレーム506からフレーム511)が付加され、合計、512フレーム分のデータが、ADIPセクタ「0h」からADIPセクタ「Fh」からなるADIPクラスタに配置される。
データフレームの前のプリアンブルのフレームと、データの後ろのポストアンブルのフレームは、隣接するレコーディングブロックとのリンキング時にデータを保護するのに用いられる。プリアンブルは、データ用PLLの引き込み、信号振幅制御、信号オフセット制御などにも用いられる。
レコーディングブロックのデータを記録再生する際の物理アドレスは、ADIPクラスタで指定される。記録再生時に物理アドレスが指定されると、ADIP信号からADIPセクタが読み取られ、ADIPセクタの再生信号から、ADIPクラスタナンバが読み取られる。
ところで、このようなディスクでは、記録再生を開始するときに、レーザパワーの制御等を行うために、各種のコントロール情報が必要である。次世代MD1の仕様のディスクでは、図1に示したように、リードイン領域にP−TOCが設けられており、このP−TOCから、各種のコントロール情報が取得される。
次世代MD2の仕様のディスクには、エンボスピットによるP−TOCは設けられず、コントロール情報がリードイン領域のADIP信号により記録される。また、次世代MD2の仕様のディスクでは、磁気超解像度の技術が使われるため、レーザのパワーコントロールが重要である。次世代MD2の仕様のディスクでは、リードイン領域とリードアウト領域には、パワーコントロール調整用のキャリブレーション領域が設けられる。
すなわち、図16は、次世代MD2の仕様のディスクのリードインおよびリードアウトの構成を示すものである。図16に示すように、ディスクのリードインおよびリードアウト領域には、レーザビームのパワーコントロール領域として、パワーキャリブレーション領域が設けられる。
また、リードイン領域には、ADIPによるコントロール情報を記録したコントロール領域が設けられる。ADIPによるコントロール情報の記録とは、ADIPクラスタナンバの下位ビットとして割り当てられている領域を使って、ディスクのコントロール情報を記述するものである。
すなわち、ADIPクラスタナンバは、レコーダブル領域の開始位置から始まっており、リードイン領域では負の値になっている。図16に示すように、次世代MD2のADIPセクタは、4ビットのシンクと、8ビットのADIPクラスタナンバの上位ビットと、8ビットのコントロールデータ(ADIPクラスタナンバの下位ビット)と、4ビットのADIPセクタナンバと、18ビットのエラー訂正用のパリティとからなる。ADIPクラスタナンバの下位ビットとして割り当てられている8ビットに、図16に示すように、ディスクタイプや、磁気位相、強度、読み出しパワー等のコントロール情報が記述される。
なお、ADIPクラスタの上位ビットは、そのまま残されているので、現在位置は、ある程度の精度で知ることができる。また、ADIPセクタ「0」と、ADIPセクタ「8」は、ADIPクラスタナンバの下位8ビットを残しておくことにより、所定間隔で、ADIPクラスタを正確に知ることができる。
ADIP信号によるコントロール情報の記録については、本願出願人が先に提案した特願2001−123535号の明細書中に詳細に記載してある。
4.記録再生装置の構成
次に、図17、図18により、次世代MD1および次世代MD2システムで記録/再生に用いられるディスクに対応するディスクドライブ装置(記録再生装置)の構成を説明する。
図17には、ディスクドライブ装置1が、例えばパーソナルコンピュータ100と接続可能なものとして示している。
ディスクドライブ装置1は、メディアドライブ部2、メモリ転送コントローラ3、クラスタバッファメモリ4、補助メモリ5、USB(Universal Serial Bus)インターフェース6,8、USBハブ7、システムコントローラ9、オーディオ処理部10を備えている。
メディアドライブ部2は、装填されたディスク90に対する記録/再生を行う。ディスク90は、次世代MD1のディスク、次世代MD2のディスク、または現行のMDのディスクである。メディアドライブ部2の内部構成は図18で後述する。
メモリ転送コントローラ3は、メディアドライブ部2からの再生データやメディアドライブ部2に供給する記録データについての受け渡しの制御を行う。
クラスタバッファメモリ4は、メモリ転送コントローラ3の制御に基づいて、メディアドライブ部2によってディスク90のデータトラックからレコーディングブロック単位で読み出されたデータのバッファリングを行う。
補助メモリ5は、メモリ転送コントローラ3の制御に基づいて、メディアドライブ部2によってディスク90から読み出された各種管理情報や特殊情報を記憶する。
システムコントローラ9は、ディスクドライブ装置1内の全体の制御を行うと共に、接続されたパーソナルコンピュータ100との間の通信制御を行う。
すなわち、システムコントローラ9は、USBインターフェース8、USBハブ7を介して接続されたパーソナルコンピュータ100との間で通信可能とされ、書込要求、読出要求等のコマンドの受信やステイタス情報その他の必要情報の送信などを行う。
システムコントローラ9は、例えばディスク90がメディアドライブ部2に装填されることに応じて、ディスク90からの管理情報等の読出をメディアドライブ部2に指示し、メモリ転送コントローラ3によって読み出した管理情報等を補助メモリ5に格納させる。
パーソナルコンピュータ100からのあるFATセクタの読出要求があった場合は、システムコントローラ9はメディアドライブ部2に、そのFATセクタを含むレコーディングブロックの読み出しを実行させる。読み出されたレコーディングブロックのデータはメモリ転送コントローラ3によってクラスタバッファメモリ4に書き込まれる。
システムコントローラ9はクラスタバッファメモリ4に書き込まれているレコーディングブロックのデータから、要求されたFATセクタのデータを読み出させ、USBインターフェース6、USBハブ7を介してパーソナルコンピュータ100に送信させる制御を行う。
パーソナルコンピュータ100からのあるFATセクタの書き込み要求があった場合は、システムコントローラ9はメディアドライブ部2に、まずそのFATセクタを含むレコーディングブロックの読み出しを実行させる。読み出されたレコーディングブロックはメモリ転送コントローラ3によってクラスタバッファメモリ4に書き込まれる。
システムコントローラ9は、パーソナルコンピュータ100からのFATセクタのデータ(記録データ)をUSBインターフェース6を介してメモリ転送コントローラ3に供給させ、クラスタバッファメモリ4上で、該当するFATセクタのデータの書き換えを実行させる。
システムコントローラ9は、メモリ転送コントローラ3に指示して、必要なFATセクタが書き換えられた状態でクラスタバッファメモリ4に記憶されているレコーディングブロックのデータを、記録データとしてメディアドライブ部2に転送させる。メディアドライブ部2では、そのレコーディングブロックの記録データを変調してディスク90に書き込む。
システムコントローラ9に対して、操作部50が接続される。操作部50は、各種のキーやボタン、スイッチなどの操作子により構成され、ユーザによる操作子の操作に応じた制御信号を出力する。この制御信号がシステムコントローラ9に供給され、制御信号に基づくシステムコントローラ9の制御により、ディスクドライブ装置1の動作が制御される。
操作部50に設けられる操作子としては、他にも、回転させることにより回転角に応じた制御信号を出力するようにされたロータリエンコーダや、回転操作および押圧操作を組み合わせて制御信号を出力するジョグダイヤル、上下方向への操作と押圧操作とでそれぞれ対応する制御信号を出力する集中コントローラなどを用いることができる。
ディスクドライブ装置1に対して、例えばLCD(Liquid Crystal Display)からなるディスプレイ51が設けられる。ディスプレイ51は、例えばドット単位の表示を組み合わせてテキストデータや簡単なアイコンなどの表示が可能とされる。ディスプレイ51は、システムコントローラ9から供給される表示制御信号に基づき、このディスクドライブ装置1の状態に関する情報や、ユーザに対するメッセージ、トラックの選択情報などを表示する。
オーディオ処理部10は、入力系として、例えばライン入力回路/マイクロホン入力回路等のアナログ音声信号入力部、A/D変換器や、ディジタルオーディオデータ入力部を備える。また、オーディオ処理部10はATRAC圧縮エンコーダ/デコーダや、圧縮データのバッファメモリを備える。更に、オーディオ処理部10は、出力系として、ディジタルオーディオデータ出力部や、D/A変換器およびライン出力回路/ヘッドホン出力回路等のアナログ音声信号出力部を備える。
ディスク90が現行のMDのディスクの場合には、ディスク90に対してオーディオトラックが記録されるときに、オーディオ処理部10にディジタルオーディオデータ(またはアナログ音声信号)が入力される。入力されたリニアPCMディジタルオーディオデータ、あるいはアナログ音声信号で入力されA/D変換器で変換されて得られたリニアPCMオーディオデータは、ATRAC圧縮エンコードされ、バッファメモリに蓄積される。そして所定タイミング(ADIPクラスタ相当のデータ単位)でバッファメモリから読み出されてメディアドライブ部2に転送される。メディアドライブ部2では、転送されてくる圧縮データを、EFMで変調してディスク90にオーディオトラックとして書き込みを行う。
ディスク90が現行のMDシステムのディスクの場合には、ディスク90のオーディオトラックが再生されるときには、メディアドライブ部2は再生データをATRAC圧縮データ状態に復調して、メモリ転送コントローラ3を介してオーディオ処理部10に転送する。オーディオ処理部10は、ATRAC圧縮デコードを行ってリニアPCMオーディオデータとし、ディジタルオーディオデータ出力部から出力する。あるいはD/A変換器によりアナログ音声信号としてライン出力/ヘッドホン出力を行う。
なお、パーソナルコンピュータ100との接続はUSBでなく、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394等の他の外部インターフェースが用いられても良い。
記録再生データ管理は、FATシステムを使って行われ、レコーディングブロックとFATセクタとの変換については、本願出願人が先に提案した特願2001−289380号の明細書中に詳細に記載してある。
続いて、データトラックおよびオーディオトラックの両方について記録再生を行う機能を有するものとしてのメディアドライブ部2の構成を図18を参照して説明する。
図18は、メディアドライブ部2の構成を示すものである。メディアドライブ部2は、現行のMDシステムのディスクと、次世代MD1のディスクと、次世代MD2のディスクとが装填されるターンテーブルを有しており、メディアドライブ部2では、ターンテーブルに装填されたディスク90をスピンドルモータ29によってCLV方式で回転駆動させる。このディスク90に対しては記録/再生時に光学ヘッド19によってレーザ光が照射される。
光学ヘッド19は、記録時には記録トラックをキュリー温度まで加熱するための高レベルのレーザ出力を行い、また再生時には磁気カー効果により反射光からデータを検出するための比較的低レベルのレーザ出力を行う。このため、光学ヘッド19には、ここでは詳しい図示は省略するがレーザ出力手段としてのレーザダイオード、偏光ビームスプリッタや対物レンズ等からなる光学系、および反射光を検出するためのディテクタが搭載されている。光学ヘッド19に備えられる対物レンズとしては、例えば2軸機構によってディスク半径方向およびディスクに接離する方向に変位可能に保持されている。
また、ディスク90を挟んで光学ヘッド19と対向する位置には磁気ヘッド18が配置されている。磁気ヘッド18は記録データによって変調された磁界をディスク90に印加する動作を行う。また、図示しないが光学ヘッド19全体および磁気ヘッド18をディスク半径方向に移動させためスレッドモータおよびスレッド機構が備えられている。
光学ヘッド19および磁気ヘッド18は、次世代MD2のディスクの場合には、パルス駆動磁界変調を行うことで、微少なマークを形成することができる。現行MDのディスクや、次世代MD1のディスクの場合には、DC発光の磁界変調方式とされる。
このメディアドライブ部2では、光学ヘッド19、磁気ヘッド18による記録再生ヘッド系、スピンドルモータ29によるディスク回転駆動系のほかに、記録処理系、再生処理系、サーボ系等が設けられる。
なお、ディスク90としては、現行のMD仕様のディスクと、次世代MD1の仕様のディスクと、次世代MD2の仕様のディスクとが装着される可能性がある。これらのディスクにより、線速度が異なっている。スピンドルモータ29は、これら線速度の異なる複数種類のディスクに対応する回転速度で回転させることが可能である。ターンテーブルに装填されたディスク90は、現行のMD仕様のディスクの線速度と、次世代MD1の仕様のディスクの線速度と、次世代MD2の仕様のディスクの線速度とに対応して回転される。
記録処理系では、現行のMDシステムのディスクの場合に、オーディオトラックの記録時に、ACIRCでエラー訂正符号化を行い、EFMで変調してデータを記録する部位と、次世代MD1または次世代MD2の場合に、BISとLDCを組み合わせた方式でエラー訂正符号化を行い、1−7pp変調で変調して記録する部位が設けられる。
再生処理系では、現行のMDシステムのディスクの再生時に、EFMの復調とACIRCによるエラー訂正処理と、次世代MD1または次世代MD2システムのディスクの再生時に、パーシャルレスポンスおよびビタビ復号を用いたデータ検出に基づく1−7復調と、BISとLDCによるエラー訂正処理とを行う部位が設けられる。
また、現行のMDシステムや次世代MD1のADIP信号よるアドレスをデコードする部位と、次世代MD2のADIP信号をデコードする部位とが設けられる。
光学ヘッド19のディスク90に対するレーザ照射によりその反射光として検出された情報(フォトディテクタによりレーザ反射光を検出して得られる光電流)は、RFアンプ21に供給される。
RFアンプ21では入力された検出情報に対して電流−電圧変換、増幅、マトリクス演算等を行い、再生情報としての再生RF信号、トラッキングエラー信号TE、フォーカスエラー信号FE、グルーブ情報(ディスク90にトラックのウォブリングにより記録されているADIP情報)等を抽出する。
現行のMDシステムのディスクを再生するときには、RFアンプで得られた再生RF信号は、EFM復調部24およびACIRCデコーダ25で処理される。すなわち再生RF信号は、EFM復調部24で2値化されてEFM信号列とされた後、EFM復調され、更にACIRCデコーダ25で誤り訂正およびデインターリーブ処理される。すなわちこの時点でATRAC圧縮データの状態となる。
そして現行のMDシステムのディスクの再生時には、セレクタ26はB接点側が選択されており、その復調されたATRAC圧縮データがディスク90からの再生データとして出力される。
一方、次世代MD1または次世代MD2のディスクを再生するときには、RFアンプで得られた再生RF信号は、RLL(1−7)PP復調部22およびRS−LDCデコーダ23で処理される。すなわち再生RF信号は、RLL(1−7)PP復調部22において、PR(1,2,1)MLまたはPR(1,−1)MLおよびビタビ復号を用いたデータ検出によりRLL(1−7)符号列としての再生データを得、このRLL(1−7)符号列に対してRLL(1−7)復調処理が行われる。そして更にRS−LDCデコーダ23で誤り訂正およびデインターリーブ処理される。
そして次世代MD1または次世代MD2のディスクの再生時には、セレクタ26はA接点側が選択されており、その復調されたデータがディスク90からの再生データとして出力される。
RFアンプ21から出力されるトラッキングエラー信号TE、フォーカスエラー信号FEはサーボ回路27に供給され、グルーブ情報はADIP復調部30に供給される。
ADIP復調部30は、グルーブ情報に対してバンドパスフィルタにより帯域制限してウォブル成分を抽出した後、FM復調、バイフェーズ復調を行ってADIP信号を復調する。復調されたADIP信号は、アドレスデコーダ32およびアドレスデコーダ33に供給される。
現行のMDシステムのディスクまたは次世代MD1のシステムのディスクでは、図10に示したように、ADIPセクタナンバが8ビットになっている。これに対して、次世代MD2のシステムのディスクでは、図12に示したように、ADIPセクタナンバが4ビットになっている。アドレスデコーダ32は、現行のMDまたは次世代MD1のADIPアドレスをデコードする。アドレスデコーダ33は、次世代MD2のアドレスをデコードする。
アドレスデコーダ32および33でデコードされたADIPアドレスは、ドライブコントローラ31に供給される。ドライブコントローラ31ではADIPアドレスに基づいて、所要の制御処理を実行する。またグルーブ情報はスピンドルサーボ制御のためにサーボ回路27に供給される。
サーボ回路27は、例えばグルーブ情報に対して再生クロック(デコード時のPLL系クロック)との位相誤差を積分して得られる誤差信号に基づき、CLVまたはCAVサーボ制御のためのスピンドルエラー信号を生成する。
またサーボ回路27は、スピンドルエラー信号や、RFアンプ21から供給されたトラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号、あるいはドライブコントローラ31からのトラックジャンプ指令、アクセス指令等に基づいて各種サーボ制御信号(トラッキング制御信号、フォーカス制御信号、スレッド制御信号、スピンドル制御信号等)を生成し、モータドライバ28に対して出力する。すなわち上記サーボエラー信号や指令に対して位相補償処理、ゲイン処理、目標値設定処理等の必要処理を行って各種サーボ制御信号を生成する。
モータドライバ28では、サーボ回路27から供給されたサーボ制御信号に基づいて所要のサーボドライブ信号を生成する。ここでのサーボドライブ信号としては、二軸機構を駆動する二軸ドライブ信号(フォーカス方向、トラッキング方向の2種)、スレッド機構を駆動するスレッドモータ駆動信号、スピンドルモータ29を駆動するスピンドルモータ駆動信号となる。このようなサーボドライブ信号により、ディスク90に対するフォーカス制御、トラッキング制御、およびスピンドルモータ29に対するCLVまたはCAV制御が行われることになる。
現行のMDシステムのディスクでオーディオデータを記録するときには、セレクタ16がB接点に接続され、したがってACIRCエンコーダ14およびEFM変調部15が機能することになる。この場合、オーディオ処理部10からの圧縮データはACIRCエンコーダ14でインターリーブおよびエラー訂正コード付加が行われた後、EFM変調部15でEFM変調が行われる。
そしてEFM変調データがセレクタ16を介して磁気ヘッドドライバ17に供給され、磁気ヘッド18がディスク90に対してEFM変調データに基づいた磁界印加を行うことでオーディオトラックの記録が行われる。
次世代MD1または次世代MD2のディスクにデータを記録するときには、セレクタ16がA接点に接続され、したがってRS−LDCエンコーダ12およびRLL(1−7)PP変調部13が機能することになる。この場合、メモリ転送コントローラ3からの高密度データはRS−LDCエンコーダ12でインターリーブおよびRS−LDC方式のエラー訂正コード付加が行われた後、RLL(1−7)PP変調部13でRLL(1−7)変調が行われる。
そしてRLL(1−7)符号列としての記録データがセレクタ16を介して磁気ヘッドドライバ17に供給され、磁気ヘッド18がディスク90に対して変調データに基づいた磁界印加を行うことでデータトラックの記録が行われる。
レーザドライバ/APC20は、上記のような再生時および記録時においてレーザダイオードにレーザ発光動作を実行させるが、いわゆるAPC(Automatic Lazer Power Control)動作も行う。
すなわち、図示していないが、光学ヘッド19内にはレーザパワーモニタ用のディテクタが設けられ、そのモニタ信号がレーザドライバ/APC20にフィードバックされる。レーザドライバ/APC20は、モニタ信号として得られる現在のレーザパワーを、設定されているレーザパワーと比較して、その誤差分をレーザ駆動信号に反映させることで、レーザダイオードから出力されるレーザパワーが、設定値で安定するように制御している。
なお、レーザパワーとしては、再生レーザパワー、記録レーザパワーとしての値がドライブコントローラ31によって、レーザドライバ/APC20内部のレジスタにセットされる。
ドライブコントローラ31は、システムコントローラ9からの指示に基づいて、以上の各動作(アクセス、各種サーボ、データ書込、データ読出の各動作)が実行されるように制御を行う。
なお、図18において一点鎖線で囲ったA部、B部は、例えば1チップの回路部として構成できる。
5.次世代MD1および次世代MD2によるディスクの初期化処理について
次世代MD1および次世代MD2によるディスクには、上述したように、FAT外にUID(ユニークID)が記録され、この記録されたUIDを用いてセキュリティ管理がなされる。次世代MD1および次世代MD2に対応したディスクは、原則的には、ディスク上の所定位置にUIDが予め記録されて出荷される。次世代MD1に対応したディスクでは、UIDが例えばリードイン領域に予め記録される。この場合、UIDが予め記録される位置は、リードイン領域に限られず、例えば、ディスクの初期化後にUIDが書き込まれる位置が固定的であれば、その位置に予め記録しておくこともできる。次世代MD2および次世代MD1.5に対応したディスクでは、上述したBCAにUIDが予め記録される。
一方、次世代MD1によるディスクは、現行のMDシステムによるディスクを用いることが可能とされている。そのため、UIDが記録されずに既に出回っている、多数の現行のMDシステムによるディスクが次世代MD1のディスクとして使用されることになる。
そこで、このような、UIDが記録されずに出回ってしまった現行のMDシステムによるディスクに対しては、規格にて守られたエリアを設け、当該ディスクの初期化時にそのエリアにディスクドライブ装置1において乱数信号を記録し、これを当該ディスクのUIDとして用いる。また、ユーザがこのUIDが記録されたエリアにアクセスすることは、規格により禁止する。なお、UIDは、乱数信号に限定されない。例えば、メーカーコード、機器コード、機器シリアル番号および乱数を組み合わせて、UIDとして用いることができる。さらに、メーカーコード、機器コードおよび機器シリアル番号の何れかまたは複数と、乱数とを組み合わせて、UIDとして用いることもできる。
図19は、次世代MD1によるディスクの一例の初期化処理を示すフローチャートである。最初のステップS100で、ディスク上の所定位置がアクセスされ、UIDが記録されているかどうかが確認される。UIDが記録されていると判断されれば、そのUIDが読み出され、例えば補助メモリ5に一時的に記憶される。
ステップS100でアクセスされる位置は、例えばリードイン領域のような、次世代MD1システムによるフォーマットのFAT領域外である。当該ディスク90が、例えば過去に初期化されたことがあるディスクのように、既にDDTが設けられていれば、その領域をアクセスするようにしてもよい。なお、このステップS100の処理は、省略することが可能である。
次に、ステップS101で、U−TOCがEFM変調により記録される。このとき、U−TOCに対して、アラートトラックと、上述の図2におけるDDT以降のトラック、すなわち1−7pp変調でデータが変調されて記録される領域とを確保する情報が書き込まれる。次のステップS102で、ステップS101でU−TOCにより確保された領域に対して、アラートトラックがEFM変調により記録される。そして、ステップS103で、DDTが1−7pp変調により記録される。
ステップS104では、UIDがFAT外の領域、例えばDDT内に記録される。上述のステップS100で、UIDがディスク上の所定位置から読み出され補助メモリ5に記憶されている場合、そのUIDが記録される。また、上述のステップS100で、ディスク上の所定位置にUIDが記録されていないと判断されていた場合、または、上述のステップS100が省略された場合には、乱数信号に基づきUIDが生成され、この生成されたUIDが記録される。UIDの生成は、例えばシステムコントローラ9によりなされ、生成されたUIDがメモリ転送コントローラ3を介してメディアドライブ2に供給され、ディスク90に記録される。
次に、ステップS105で、FATなどのデータが、1−7pp変調でデータが変調されて記録される領域に対して記録される。すなわち、UIDの記録される領域は、FAT外の領域になる。また、上述したように、次世代MD1においては、FATで管理されるべきレコーダブル領域の初期化は、必ずしも必要ではない。
図20は、次世代MD2および次世代MD1.5によるディスクの一例の初期化処理を示すフローチャートである。最初のステップS110でディスク上のBCAに相当する領域がアクセスされ、UIDが記録されているかどうかが確認される。UIDが記録されていると判断されれば、そのUIDが読み出され、例えば補助メモリ5に一時的に記憶される。なお、UIDの記録位置は、フォーマット上で固定的に決められているので、ディスク上の他の管理情報を参照することなく、直接的にアクセス可能とされる。これは、上述の図19を用いて説明した処理にも適用することができる。
次のステップS111で、DDTが1−7pp変調で記録される。次に、ステップS112で、UIDがFAT外の領域、例えばDDTに記録される。このとき記録されるUIDは、上述のステップS110でディスク上の所定位置から読み出され補助メモリ5に記憶されたUIDが用いられる。ここで、上述のステップS110で、ディスク上の所定位置にUIDが記録されていないと判断されていた場合には、乱数信号に基づきUIDが生成され、この生成されたUIDが記録される。UIDの生成は、例えばシステムコントローラ9によりなされ、生成されたUIDがメモリ転送コントローラ3を介してメディアドライブ2に供給され、ディスク90に記録される。
そして、ステップS113で、FATなどが記録される。すなわち、UIDの記録される領域は、FAT外の領域になる。また、上述したように、次世代MD2においては、FATで管理されるべきレコーダブル領域の初期化は、行われない。
6.音楽データの第1の管理方式について
前述したように、この発明が適用された次世代MD1および次世代MD2のシステムでは、FATシステムでデータが管理される。また、記録されるオーディオデータは、所望の圧縮方式で圧縮され、著作者の権利の保護のために、暗号化される。オーディオデータの圧縮方式としては、例えば、ATRAC3、ATRAC5等を用いることが考えられている。勿論、MP3(MPEG1 Audio Layer-3 )やAAC(MPEG2 Advanced Audio Coding )等、それ以外の圧縮方式を用いることも可能である。また、オーディオデータばかりでなく、静止画データや動画データを扱うことも可能である。勿論、FATシステムを使っているので、汎用のデータの記録再生を行うこともできる。更に、コンピュータが読み取り可能でかつ実行可能な命令をディスク上に符号化することもでき、従って、次世代MD1または次世代MD2は、実行可能ファイルを含むこともできることになる。
このような次世代MD1および次世代MD2の仕様のディスクにオーディオデータを記録再生するときの管理方式について説明する。
次世代MD1のシステムや次世代MD2のシステムでは、長時間で高音質の音楽データが再生できるようにしたことから、1枚のディスクで管理される楽曲の数も、膨大になっている。また、FATシステムを使って管理することで、コンピュータとの親和性が図られている。このことは、本願発明者の認識によれば、使い勝手の向上が図れるというメリットがある反面、音楽データが違法にコピーされてしまい、著作権者の保護が図られなくなる可能性がある。この発明が適用された管理システムでは、このような点に配慮が配られている。
図21は、オーディオデータの管理方式の第1の例である。図21に示すように、第1の例における管理方式では、ディスク上には、トラックインデックスファイルと、オーディオデータファイルとが生成される。トラックインデックスファイルおよびオーディオデータファイルは、FATシステムで管理されるファイルである。
オーディオデータファイルは、図22に示すように、複数の音楽データが1つのファイルとして納められたものであり、FATシステムでオーディオデータファイルを見ると、巨大なファイルに見える。オーディオデータファイルは、その内部がパーツとして区切られ、オーディオデータは、パーツの集合として扱われる。
トラックインデックスファイルは、オーディオデータファイルに納められた音楽データを管理するための各種の情報が記述されたファイルである。トラックインデックスファイルは、図23に示すように、プレイオーダテーブルと、プログラムドプレイオーダテーブルと、グループインフォメーションテーブルと、トラックインフォメーションテーブルと、パーツインフォメーションテーブルと、ネームテーブルとからなる。
プレイオーダテーブルは、デフォルトで定義された再生順序を示すテーブルである。プレイオーダテーブルは、図24に示すように、各トラックナンバ(曲番)についてのトラックインフォメーションテーブルのトラックデスクリプタ(図27)へのリンク先を示す情報TINF1、TINF2、…が格納されている。トラックナンバは、例えば「1」から始まる連続したナンバである。
プログラムドプレイオーダテーブルは、再生手順を各ユーザが定義したテーブルである。プログラムドプレイオーダテーブルには、図25に示すように、各トラックナンバについてのトラックデスクリプタへのリンク先の情報トラック情報PINF1、PINF2、…が記述されている。
グループインフォメーションテーブルには、図26に示すように、グループに関する情報が記述されている。グループは、連続したトラックナンバを持つ1つ以上のトラックの集合、または連続したプログラムドトラックナンバを持つ1つ以上のトラックの集合である。グループインフォメーションテーブルは、図26Aに示すように、各グループのグループデスクリプタで記述されている。グループデスクリプタには、図26Bに示すように、そのグループが開始されるトラックナンバと、終了トラックのナンバと、グループネームと、フラグが記述される。
トラックインフォメーションテーブルは、図27に示すように、各曲に関する情報が記述される。トラックインフォメーションテーブルは、図27Aに示すように、各トラック毎(各曲毎)のトラックデスクリプタからなる。各トラックデスクリプタには、図27Bに示すように、符号化方式、著作権管理情報、コンテンツの復号鍵情報、その楽曲が開始するエントリとなるパーツナンバへのポインタ情報、アーチストネーム、タイトルネーム、元曲順情報、録音時間情報等が記述されている。アーチストネーム、タイトルネームは、ネームそのものではなく、ネームテーブルへのポインタ情報が記述されている。符号化方式は、コーデックの方式を示すもので、復号情報となる。
パーツインフォメーションテーブルは、図28に示すように、パーツナンバから実際の楽曲の位置をアクセスするポインタが記述されている。パーツインフォメーションテーブルは、図28Aに示すように、各パーツ毎のパーツデスクリプタからなる。パーツとは、1トラック(楽曲)の全部、または1トラックを分割した各パーツである。図28Bは、パーツインフォメーションテーブル内のパーツデスクリプタのエントリを示している。各パーツデスクリプタは、図28Bに示すように、オーディオデータファイル上のそのパーツの先頭のアドレスと、そのパーツの終了のアドレスと、そのパーツに続くパーツへのリンク先とが記述される。
なお、パーツナンバのポインタ情報、ネームテーブルのポインタ情報、オーディオファイルの位置を示すポインタ情報として用いるアドレスとしては、ファイルのバイトオフセット、パーツデスクリプタナンバ、FATのクラスタナンバ、記録媒体として用いられるディスクの物理アドレス等を用いることができる。ファイルのバイトオフセットは、この発明において実施されうるオフセット方法のうちの特定の実施態様である。ここで、パーツポインタ情報は、オーディオファイルの開始からのオフセット値であり、その値は所定の単位(例えば、バイト、ビット、nビットのブロック)で表される。
ネームテーブルは、ネームの実体となる文字を表すためのテーブルである。ネームテーブルは、図29Aに示すように、複数のネームスロットからなる。各ネームスロットは、ネームを示す各ポインタからリンクされて呼び出される。ネームを呼び出すポインタは、トラックインフォメーションテーブルのアーチストネームやタイトルネーム、グループインフォメーションテーブルのグループネーム等がある。また、各ネームスロットは、複数から呼び出されることが可能である。各ネームスロットは、図29Bに示すように、文字情報であるネームデータと、この文字情報の属性であるネームタイプと、リンク先とからなる。1つのネームスロットで収まらないような長いネームは、複数のネームスロットに分割して記述することが可能である。そして、1つのネームスロットで収まらない場合には、それに続くネームが記述されたネームスロットへのリンク先が記述される。
この発明が適用されたシステムにおけるオーディオデータの管理方式の第1の例では、図30に示すように、プレイオーダテーブル(図24)により、再生するトラックナンバが指定されると、トラックインフォメーションテーブルのリンク先のトラックデスクリプタ(図27)が読み出され、このトラックデスクリプタから、符号化方式、著作権管理情報、コンテンツの復号鍵情報、その楽曲が開始するパーツナンバへのポインタ情報、アーチストネームおよびタイトルネームのポインタ、元曲順情報、録音時間情報等が読み出される。
トラックインフォメーションテーブルから読み出されたパーツナンバの情報から、パーツインフォメーションテーブル(図28)にリンクされ、このパーツインフォメーションテーブルから、そのトラック(楽曲)の開始位置に対応するパーツの位置のオーディオデータファイルがアクセスされる。オーディオデータファイルのパーツインフォメーションテーブルで指定される位置のパーツのデータがアクセスされたら、その位置から、オーディオデータの再生が開始される。このとき、トラックインフォメーションテーブルのトラックデスクリプタから読み出された符号化方式に基づいて復号化が行われる。オーディオデータが暗号化されている場合には、トラックデスクリプタから読み出された鍵情報が使われる。
そのパーツに続くパーツがある場合には、そのパーツのリンク先がパーツデスクリプタが記述されており、このリンク先にしたがって、パーツデスクリプタが順に読み出される。このパーツデスクリプタのリンク先を辿っていき、オーディオディデータファイル上で、そのパーツデスクリプタで指定される位置にあるパーツのオーディオデータを再生していくことで、所望のトラック(楽曲)のオーディオディオデータが再生できる。
また、トラックインフォメーションテーブルから読み出されたアーチストネームやタイトルネームのポインタにより指し示される位置(ネームポインタ情報)にあるネームテーブルのネームスロット(図29)が呼び出され、その位置にあるネームスロットから、ネームデータが読み出される。ネームポインタ情報は、例えば、ネームスロットナンバ、FATシステムにおけるクラスタナンバ、または記録媒体の物理アドレスであってもよい。
なお、前述したように、ネームテーブルのネームスロットは、複数参照が可能である。例えば、同一のアーチストの楽曲を複数記録するような場合がある。この場合、図31に示すように、複数のトラックインフォメーションテーブルからアーチストネームとして同一のネームテーブルが参照される。図31の例では、トラックデスクリプタ「1」とトラックデスクリプタ「2」とトラックデスクリプタ「4」は、全て同一のアーチスト「DEF BAND」の楽曲であり、アーチストネームとして同一のネームスロットを参照している。また、トラックデスクリプタ「3」とトラックデスクリプタ「5」とトラックデスクリプタ「6」は、全て同位置のアーチスト「GHQ GIRLS」の楽曲であり、アーチストネームとして同一のネームスロットを参照している。このように、ネームテーブルのネームスロットを、複数のポインタから参照可能にしておくと、ネームテーブルの容量を節約できる。
これとともに、例えば、同一のアーチストネームの情報を表示するのに、こののネームテーブルへのリンクが利用できる。例えば、アーチスト名が「DEF BAND」の楽曲の一覧を表示したいような場合には、「DEF BAND」のネームスロットのアドレスを参照しているトラックデスクリプタが辿られる。この例では、「DEF BAND」のネームスロットのアドレスを参照しているトラックデスクリプタを辿ることにより、トラックデスクリプタ「1」とトラックデスクリプタ「2」とトラックデスクリプタ「4」の情報が得られる。これにより、このディスクに納められている楽曲の中で、アーチスト名が「DEF BAND」の楽曲の一覧が表示できる。なお、ネームテーブルは複数参照が可能とされるため、ネームテーブルからトラックインフォメーションテーブルを逆に辿るリンクは設けられていない。
新たにオーディオデータを記録する場合には、FATテーブルにより、所望の数のレコーディングブロック以上、例えば、4つのレコーディングブロック以上連続した未使用領域が用意される。所望のレコーディングブロック以上連続した領域を確保するのは、なるべく連続した領域にオーディオデータを記録した方がアクセスに無駄がないためである。
オーディオデータを記録するための領域が用意されたら、新しいトラックデスクリプターがトラックインフォメーションテーブル上に1つ割り当てられ、このオーディオディデータを暗号化するためのコンテンツの鍵が生成される。そして、入力されたオーディオデータが暗号化され、用意された未使用領域に、暗号化されたオーディオデータが記録される。このオーディオデータが記録された領域がFATのファイルシステム上でオーディオデータファイルの最後尾に連結される。
新たなオーディオデータがオーディオデータファイルに連結されたのに伴い、この連結された位置の情報が作成され、新たに確保されたパーツデスクリプションに、新たに作成されたオーディオデータの位置情報が記録される。そして、新たに確保されたトラックデスクリプターに、鍵情報やパーツナンバが記述される。更に、必要に応じて、ネームスロットにアーチストネームやタイトルネーム等が記述され、トラックデスクリプターに、そのネームスロットにアーチストネームやタイトルネームにリンクするポインタが記述される。そして、プレイオーダーテーブルに、そのトラックデスクリプターのナンバが登録される。また著作権管理情報の更新がなされる。
オーディオデータを再生する場合には、プレイオーダーテーブルから、指定されたトラックナンバに対応する情報が求められ、再生すべきトラックのトラックデスクリプタが取得される。
トラックインフォメーションテーブルのそのトラックデスクリプタから、鍵情報が取得され、また、エントリのデータが格納されている領域を示すパーツデスクリプションが取得される。そのパーツデスクリプションから、所望のオーディオデータが格納されているパーツの先頭のオーディオデータファイル上の位置が取得され、その位置に格納されているデータが取り出される。そして、その位置から再生されるデータに対して、取得された鍵情報を用いて暗号が解読され、オーディオデータの再生がなされる。パーツデスクリプションにリンクがある場合には、指定されてパーツにリンクされて、同様の手順が繰り返される。
プレイオーダテーブル上で、トラックナンバ「n」であった楽曲を、トラックナンバ「n+m」に変更する場合には、プレイオーダテーブル内のトラック情報TINFnから、そのトラックの情報が記述されているトラックデスクリプターDnが得られる。トラック情報TINFn+1からTINFn+mの値(トラックデスクリプターナンバ)が全て1つ前に移動される。そして、トラック情報TINFn+mに、トラックデスクリプターDnのナンバが格納される。
プレイオーダテーブルで、トラックナンバ「n」であった楽曲を削除する場合には、プレイオーダテーブル内のトラック情報TINFnから、そのトラック の情報が記述されているトラックデスクリプタDnが取得される。プレイオーダテーブル内のトラック情報のエントリ、TINFn+1から後の有効なトラックデスクリプタナンバが全て1つ前に移動される。更に、トラック「n」は、消されるべきものなので、トラック「n」の後の全てのトラック情報のエントリが、プレイオーダテーブル内で1つ前に移動される。前記トラックの消去に伴って取得されたトラックデスクリプタDnから、トラックインフォメーションテーブルで、そのトラックに対応する符号化方式、復号鍵が取得れるとともに、先頭の音楽データが格納されている領域を示すパーツデスクリプタPnのナンバが取得される。パーツデスクリプタPnによって指定された範囲のオーディオブロックが、FATのファイルシステム上で、オーディオデータファイルから切り離される。更に、このトラックインフォメーションテーブルのそのトラックのトラックデスクリプタDnが消去される。そして、パーツデスクリプタがパーツインフォメーションテーブルから消去され、ファイルシステムでそのパーツデスクリプションが解放される。
例えば、図32Aにおいて、パーツA、パーツB、パーツCはそれまで連結しており、その中から、パーツBを削除するものとする。パーツAパーツBは同じオーディオブロックを(かつ同じFATクラスタを)共有しており、FATチェーンが連続しているとする。パーツCは、オーディオデータファイルの中ではパーツBの直後に位置しているが、FATテーブルを調べると、実際には離れた位置にあるとする。
この例の場合には、図32Bに示すように、パーツBを削除したときに、実際にFATチェーンから外す(空き領域に戻す)ことができるのは、現行のパーツとクラスタを共有していない、2つのFATクラスタである。すなわち、オーディオデータファイルとしては4オーディオブロックに短縮される。パーツCおよびそれ以降にあるパーツに記録されているオーディオブロックのナンバは、これに伴い全て4だけ小さくなる。
なお、削除は、1トラック全てではなく、そのトラックの一部に対して行うことができる。トラックの一部が削除された場合には、残りのトラックの情報は、トラックインフォメーションテーブルでそのパーツデスクリプタPnから取得されたそのトラックに対応する符号化方式、復号鍵を使って復号することが可能である。
プレイオーダテーブル上のトラックnとトラックn+1とを連結する場合には、プレイオーダテーブル内のトラック情報TINFnから、そのトラックの情報が記述されているトラックデスクリプタナンバDnが取得される。また、プレイオーダテーブル内のトラック情報TINFn+1から、そのトラックの情報が記述されているトラックデスクリプタナンバDmが取得される。プレイオーダテーブル内のTINFn+1から後の有効なTINFの値(トラックデスクリプタナンバ)が全て1つ前のTINFに移動される。プログラムドプレイオーダテーブルを検索して、トラックデスクリプタDmを参照しているトラックが全て削除される。新たな暗号化鍵を発生させ、トラックデスクリプタDnから、パーツデスクリプタのリストが取り出され、そのパーツデスクリプタのリストの最後尾に、トラックデスクリプタDmから取り出したパーツデスクリプタのリストが連結される。
トラックを連結する場合には、双方のトラックデスクリプタを比較して、著作権管理上問題のないことを確認し、トラックデスクリプタからパーツデスクリプタを得て、双方のトラックを連結した場合にフラグメントに関する規定が満たされるかどうか、FATテーブルで確認する必要がある。また、必要に応じて、ネームテーブルへのポインタの更新を行う必要がある。
トラックnを、トラックnとトラックn+1に分割する場合には、プレイオーダテーブル内のTINFnから、そのトラックの情報が記述されているトラックデスクリプタナンバDnが取得される。プレイオーダテーブル内のトラック情報TINFn+1から、そのトラックの情報が記述されているトラックデスクリプタナンバDm取得される。そして、プレイオーダテーブル内のTINFn+1から後の有効なトラック情報TINFの値(トラックデスクリプタナンバ)が、全て1つ後に移動される。トラックデスクリプタDnについて、新しい鍵が生成される。トラックデスクリプタDnから、パーツデスクリプタのリストが取り出される。新たなパーツデスクリプタが割り当てられ、分割前のパーツデスクリプタの内容がそこにコピーされる。分割点の含まれるパーツデスクリプタが、分割点の直前までに短縮される。また分割点以降のパーツデスクリプタのリンクが打ち切られる。新たなパーツデスクリプタが分割点の直後に設定される。
7.音楽データの管理方式の第2の例
次に、オーディオデータの管理方式の第2の例について説明する。図33は、オーディオデータの管理方式の第2の例である。図33に示すように、第2の例における管理方式では、ディスク上には、トラックインデックスファイルと、複数のオーディオデータファイルとが生成される。トラックインデックスファイルおよび複数のオーディオデータファイルは、FATシステムで管理されるファイルである。
オーディオデータファイルは、図34に示すように、原則的には1曲が1ファイルの音楽データが納められたものである。このオーディオデータファイルには、ヘッダが設けられている。ヘッダには、タイトルと、復号鍵情報と、著作権管理情報とが記録されるとともに、インデックス情報が設けられる。インデックスは、1つのトラックの楽曲を複数に分割するものである。ヘッダには、インデックスにより分割された各トラックの位置がインデックスナンバに対応して記録される。インデックスは、例えば、255箇設定できる。
トラックインデックスファイルは、オーディオデータファイルに納められた音楽データを管理するための各種の情報が記述されたファイルである。トラックインデックスファイルは、図35に示すように、プレイオーダテーブルと、プログラムドプレイオーダテーブルと、グループインフォメーションテーブルと、トラックインフォメーションテーブルと、ネームテーブルとからなる。
プレイオーダテーブルは、デフォルトで定義された再生順序を示すテーブルである。プレイオーダテーブルは、図36に示すように、各トラックナンバ(曲番)についてのトラックインフォメーションテーブルのトラックデスクリプタ(図39)へのリンク先を示す情報TINF1、TINF2、…が格納されている。トラックナンバは、例えば「1」から始まる連続したナンバである。
プログラムドプレイオーダテーブルは、再生手順を各ユーザが定義したテーブルである。プログラムドプレイオーダテーブルには、図37に示すように、各トラックナンバについてのトラックデスクリプタへのリンク先の情報トラック情報PINF1、PINF2、…が記述されている。
グループインフォメーションテーブルには、図38に示すように、グループに関する情報が記述されている。グループは、連続したトラックナンバを持つ1つ以上のトラックの集合、または連続したプログラムドトラックナンバを持つ1つ以上のトラックの集合である。グループインフォメーションテーブルは、図38Aに示すように、各グループのグループデスクリプタで記述されている。グループデスクリプタには、図38Bに示すように、そのグループが開始されるトラックナンバと、終了トラックのナンバと、グループネームと、フラグが記述される。
トラックインフォメーションテーブルは、図39に示すように、各曲に関する情報が記述される。トラックインフォメーションテーブルは、図39Aに示すように、各トラック毎(各曲毎)のトラックデスクリプタからなる。各トラックデスクリプタには、図39Bに示すように、その楽曲が納められているオーディオデータファイルのファイルのポインタ、インデックスナンバ、アーチストネーム、タイトルネーム、元曲順情報、録音時間情報等が記述されている。アーチストネーム、タイトルネームは、ネームそのものではなく、ネームテーブルへのポインタが記述されている。
ネームテーブルは、ネームの実体となる文字を表すためのテーブルである。ネームテーブルは、図40Aに示すように、複数のネームスロットからなる。各ネームスロットは、ネームを示す各ポインタからリンクされて呼び出される。ネームを呼び出すポインタは、トラックインフォメーションテーブルのアーチストネームやタイトルネーム、グループインフォメーションテーブルのグループネーム等がある。また、各ネームスロットは、複数から呼び出されることが可能である。各ネームスロットは、図40Bに示すように、ネームデータと、ネームタイプと、リンク先とからなる。1つのネームスロットで収まらないような長いネームは、複数のネームスロットに分割して記述することが可能である。そして、1つのネームスロットで収まらない場合には、それに続くネームが記述されたネームスロットへのリンク先が記述される。
オーディオデータの管理方式の第2の例では、図41に示すように、プレイオーダテーブル(図36)により、再生するトラックナンバが指定されると、トラックインフォメーションテーブルのリンク先のトラックデスクリプタ(図39)が読み出され、このトラックデスクリプタから、その楽曲のファイルポインタおよびインデックスナンバ、アーチストネームおよびタイトルネームのポインタ、元曲順情報、録音時間情報等が読み出される。
その楽曲のファイルのポインタから、そのオーディオデータファイルがアクセスされ、そのオーディオデータファイルのヘッダの情報が読み取られる。オーディオデータが暗号化されている場合には、ヘッダから読み出された鍵情報が使われる。そして、そのオーディオデータファイルが再生される。このとき、もし、インデックスナンバが指定されている場合には、ヘッダの情報から、指定されたインデックスナンバの位置が検出され、そのインデックスナンバの位置から、再生が開始される。
また、トラックインフォメーションテーブルから読み出されたアーチストネームやタイトルネームのポインタにより指し示される位置にあるネームテーブルのネームスロットが呼び出され、その位置にあるネームスロットから、ネームデータが読み出される。
新たにオーディオデータを記録する場合には、FATテーブルにより、所望の数のレコーディングブロック以上、例えば、4つのレコーディングブロック以上連続した未使用領域が用意される。
オーディオデータを記録するための領域が用意されたら、トラックインフォメーションテーブルに新しいトラックデスクリプタが1つ割り当てられ、このオーディオディデータを暗号化するためのコンテンツ鍵が生成される。そして、入力されたオーディオデータが暗号化され、オーディオデータファイルが生成される。
新たに確保されたトラックデスクリプタに、新たに生成されたオーディオデータファイルのファイルポインタや、鍵情報が記述される。更に、必要に応じて、ネームスロットにアーチストネームやタイトルネーム等が記述され、トラックデスクリプターに、そのネームスロットにアーチストネームやタイトルネームにリンクするポインタが記述される。そして、プレイオーダーテーブルに、そのトラックデスクリプターのナンバが登録される。また著作権管理情報の更新がなされる。
オーディオデータを再生する場合には、プレイオーダーテーブルから、指定されたトラックナンバに対応する情報が求められ、トラックインフォメーションテーブルの再生すべきトラックのトラックデスクリプタが取得される。
そのトラックデスクリプタから、またその音楽データが格納されているオーディオデータのファイルポインタおよびインデックスナンバが取得される。そして、そのオーディオデータファイルがアクセスされ、ファイルのヘッダから、鍵情報が取得される。そして、そのオーディオデータファイルのデータに対して、取得された鍵情報を用いて暗号が解読され、オーディオデータの再生がなされる。インデックスナンバが指定されている場合には、指定されたインデックスナンバの位置から、再生が開始される。
トラックnを、トラックnとトラックn+1に分割する場合には、プレイオーダテーブル内のTINFnから、そのトラックの情報が記述されているトラックデスクリプタナンバDnが取得される。プレイオーダテーブル内のトラック情報TINFn+1から、そのトラックの情報が記述されているトラックデスクリプタナンバDmが取得される。そして、プレイオーダテーブル内のTINFn+1から後の有効なトラック情報TINFの値(トラックデスクリプタナンバ)が、全て1つ後に移動される。
図42に示すように、インデックスを使うことにより、1つのファイルのデータは、複数のインデックス領域に分けられる。このインデックスナンバとインデックス領域の位置がそのオーディオトラックファイルのヘッダに記録される。トラックデスクリプタDnに、オーディオデータのファイルポインタと、インデックスナンバが記述される。トラックデスクリプタDmに、オーディオデータのファイルポインタと、インデックスナンバが記述される。これにより、オーディオファイルの1つのトラックの楽曲M1は、見かけ上、2つのトラックの楽曲M11とM12とに分割される。
プレイオーダテーブル上のトラックnとトラックn+1とを連結する場合には、プレイオーダテーブル内のトラック情報TINFnから、そのトラックの情報が記述されているトラックデスクリプタナンバDnが取得される。また、プレイオーダテーブル内のトラック情報TINFn+1から、そのトラックの情報が記述されているトラックデスクリプタナンバDmが取得される。プレイオーダテーブル内のTINFn+1から後の有効なTINFの値(トラックデスクリプタナンバ)が全て1つ前に移動される。
ここで、トラックnとトラックn+1とが同一のオーディオデータファイル内にあり、インデックスで分割されている場合には、図43に示すように、ヘッダのインデックス情報を削除することで、連結が可能である。これにより、2つのトラックの楽曲M21とM22は、1つのトラックの楽曲M23に連結される。
トラックnが1つのオーディオデータファイルをインデックスで分割した後半であり、トラックn+1が別のオーディオデータファイルの先頭にある場合には、図44に示すように、インデックスで分割されていたトラックnのデータにヘッダが付加され、楽曲M32のオーディオデータファイルが生成される。これに、トラックn+1のオーディオデータファイルのヘッダが取り除かれ、この楽曲M41のトラックn+1のオーディオデータが連結される。これにより、2つのトラックの楽曲M32とM41は、1つのトラックの楽曲M51として連結される。
以上の処理を実現するために、インデックスで分割されていたトラックに対して、ヘッダを付加し、別の暗号鍵で暗号化して、インデックスによるオーディオディデータを1つのオーディオデータファイルに変換する機能と、オーディオデータファイルのヘッダを除いて、他のオーディオデータファイルに連結する機能が持たされている。
8.装置の外観について
図45は、ディスクドライブ装置1の一例の外観を概略的に示す。ディスクドライブ装置1の表面側に操作部50と表示部51とが所定に配置される。操作部50は、表面側だけでなく、操作子100のように側面側にさらに配置してもよいし、裏面側にも配置することができる。
操作部50において、操作子100は、2方向の回転操作と押圧操作とが可能とされたジョグダイヤルである。操作子101は、集中コントロールキーであって、4方向への押圧と、中央部の押圧の5種類の操作が可能とされている。これら操作子100や101を用いて、表示部51に表示されるメニュー表示に基づいた諸設定操作や、再生するトラックの選択操作などを行うことができる。
なお、操作子100および101は、何方か一方を設けるようにしてもよい。以下の説明では、操作子100を押圧することで、メニューモードが起動され、表示部51にメニューが表示されるものとする。メニューモード中に操作子100を回転操作することで、表示部51に表示されるメニュー項目を変更することができる。さらに操作子100を押圧すると、そのときに表示部51に表示されている内容が選択され決定される。
スイッチ103は、録音開始を指示するスライドスイッチである。キー104は、グループ機能を制御するためのキーである。キー105および106は、それぞれ再生または録音の一時停止および停止を指示する。操作子102は、蓋開閉用のボタンであって、この操作子102を操作してディスクドライブ装置1の蓋を開けて、ディスク90を装置内に装填する。また、ジャック107および108は、それぞれ音声信号入力用、出力用のジャックであって、オーディオ処理部10に接続される。ジャック108にヘッドフォンなどを接続することで、装置内に装填されたディスク90から再生された再生音を聞くことができる。
9.インデックストラックについて
この発明では、ディスクに記録された各トラックについて、トラックの一部をを集めてトラック順に並べたインデックストラックを作成する。作成したインデックストラックは、通常再生において妨げにならないように当該ディスクに記録する。そして、インデックストラックを再生中に所望のトラックの部分が再生されたら、ディスクドライブ装置1に対して再生を指示することで、対応するトラックが再生されるようにしている。ユーザは、ディスクドライブ装置1の表示部51を見なくても、インデックストラックの再生音声に基づき所望のトラックを選択できる。
先ず、この発明の実施の第1の形態について説明する。この発明の実施の第1の形態は、上述した次世代MD1および次世代MD2のシステムにおいてインデックストラックを作成する例である。また、オーディオデータの管理方法としては、上述した複数の音楽データが1つのファイルとして納められた、第1の例を用いている。
図46は、この発明の実施の第1の形態における一例のファイル管理構造を示す。この図46は、上述した図21に対応するもので、図21の構造に対して、FATファイルシステム内にインデックストラックファイル「index01.idx」が追加されている。次世代MD1および次世代MD2のシステムでは、FATファイルシステム内に任意のファイルを記録することが可能である。この実施の第1の形態では、インデックストラックを、図46に一例が示されるインデックストラックファイル「index01.idx」として記録している。なお、ディスク上には、この発明により管理されるFATファイルシステム外にも、ファイルやフォルダを作成することができる。また、インデックストラックファイルのファイル名は、「index01.idx」に限定されるものではない。
図47は、インデックストラックファイル「index01.idx」(以下、単にインデックストラックファイルと称する)の一例の構造を示す。インデックストラックファイルは、FATファイルシステムの管理下に記録された各音楽データの先頭の部分がインデックス(1)、(2)、・・・、(n)として連続的に格納されて形成される。インデックス(1)、(2)、・・・、(n)の順序は、例えばトラックのデフォルトの再生リストであるプレイオーダーテーブルに基づく。これに限らず、インデックストラックファイル作成時に既にディスク上に存在するプログラムドプレイオーダーテーブルに基づいてもよい。
このとき、インデックス(1)、(2)、・・・、(n)のそれぞれは、圧縮符号化方式が同一のものとされると共に、再生時間tが固定的とされる。各インデックス(1)、(2)、・・・、(n)の再生時間tは、例えば1乃至数秒とすることが好ましい。
圧縮符号化方式としては、ATRAC方式のLP4モードを用いることができる。LP4モードは、ATRAC方式においてより高圧縮率とした圧縮モードである。より高圧縮率の圧縮符号化方式を用いることで、ディスクを効率的に用いることができる。なお、インデックストラックファイルの圧縮符号化方式は、ATRAC方式のLP4モードに限らず、装置が対応していれば、他の方式を用いることもできる。
また、各インデックス(1)、(2)、・・・、(n)の再生時間tを同一とすると共に、圧縮符号化方式を同一としているため、インデックストラックファイル内の位置(例えばバイト位置)に基づき対応するトラック(音楽データ)を特定することが可能である。勿論、インデックストラックファイルの先頭からの再生時間に基づき対応するトラックを特定することも可能である。
図48は、この発明の実施の第1の形態によるインデックストラックファイルの一例の作成方法を示すフローチャートである。なお、図48中、変数T_TNOは、ディスクに記録されている、すなわち、FATシステムにより管理されている総トラック数を示し、変数countは、現在処理中のトラックを示す番号である。総トラック数T_TNOは、トラックインデックスファイルを調べることで取得できる。
ディスクをディスクドライブ装置1に装填した後、例えば操作子100を押圧してメニューモードを起動させる。そして、操作子100を回転操作して、表示部51のメニュー表示から「インデックストラックの作成」を選択し、例えば操作子100を押圧して実行させる。インデックストラックファイルの作成が指示されると、最初のステップS300で、既存のインデックストラックファイルのサイズが0とされ、初期化される。既存のインデックストラックファイルが存在しない場合、サイズが0のインデックストラックファイルが新規に作成される。そして、次のステップS301で、変数countが初期化され、例えばcount=1とされる。
次のステップS302で、変数countと総トラック数T_TNOとが比較され、count>T_TNOであると判断されれば、ディスクに記録されている全てのトラックについてインデックスが作成されたとして、処理がステップS311に移行される。
一方、ステップS302で、count≦T_TNOであると判断されれば、処理はステップS303に移行する。ステップS303では、変数countに対応するトラックナンバを有するトラックが読み出される。上述したように、音楽データの第1の管理方式では、各トラックを構成する各音楽データが1つのオーディオデータファイル「ATDATA01.HMA」に纏められている。このステップS303では、上述したように、トラックインフォメーションテーブルから変数countに対応するパーツナンバを読み出し、読み出されたパーツナンバの情報からパーツインフォメーションテーブルにリンクして、当該トラックの開始位置に対応するパーツの位置のオーディオデータファイルがアクセスされ、その位置からオーディオデータを読み出す。
ステップS304では、読み出されたオーディオデータの圧縮符号化方式が判断される。オーディオデータの圧縮符号化方式は、トラックインフォメーションテーブルが持つ各トラック毎のトラックデスクリプタを参照することで取得することができる。この例では、インデックストラックファイルに格納されるオーディオデータの圧縮符号化方式をATRAC方式のLP4モードとしている。読み出されたオーディオデータの圧縮符号化方式がATRACのLP4モードであると判断されれば、処理はステップS306に移行される。
一方、ステップ304で、読み出されたオーディオデータの圧縮符号化方式がATRAC方式のLP4モードではないと判断されれば、処理はステップS305に移行され、読み出されたオーディオデータを一旦復号化し、ATRAC方式のLP4モードで再圧縮する。再圧縮がなされると、処理はステップS306に移行される。
ステップS306では、当該オーディオデータの再生時間t0が、固定的に決められたインデックスの再生時間tより大きいかどうかが判断される。再生時間は、例えば当該オーディオデータのデータサイズを調べることで取得可能である。若し、t0≧tであると判断されれば、処理はステップS307に移行され、当該オーディオデータの先頭部分から再生時間tに対応するオーディオデータが切り取られる。切り取られたオーディオデータは、インデックス(count)のオーディオデータである。
一方、ステップS306で、当該オーディオデータの時間t0が再生時間t0<tであると判断されれば、処理はステップS308に移行し、当該オーディオデータに対して、再生時間が全体で時間tとなるように無音のオーディオデータが付加される。この無音のオーディオデータは、例えば再生時に無音となるように所定の圧縮符号化方式(この例ではATRAC方式のLP4モード)で圧縮符号化されたデータである。
ステップS307およびS308で、このようにして再生時間tのオーディオデータが作成されると、処理はステップS309に移行される。ステップS309では、作成された再生時間tのオーディオデータがクラスタバッファメモリ4に溜め込まれる。クラスタバッファメモリ4に所定量のデータが溜め込まれたら、クラスタバッファメモリ4に溜め込まれたデータがディスク上のインデックストラックファイルに追記される。そして、処理はステップS310に移行されてcount=count+1とされ、処理がステップS302に戻され、次のトラックに対する処理が行われる。
上述したステップS302〜ステップS310の処理が、ディスクに記録されている全てのトラックに対してなされると、処理がステップS311に移行される。ステップS311では、クラスタバッファメモリ4に残っている未処理のデータをディスク上に記録する。
なお、上述では、インデックストラックファイル作成の指示を操作子100を用いて行うように説明したが、これはこの例に限られるものではない。例えば、インデックストラックファイル作成を指示する専用のキーを操作部50に設けるようにしてもよい。また、ディスク90がディスクドライブ装置1に装填された際に自動的にディスク90の内容を判断し、判断結果に基づきインデックストラックファイルを自動的に作成するようにしてもよい。さらにこの場合、インデックストラックファイルを自動的に作成するか否かをユーザが予め設定しておくようにしてもよい。
再生の際の動作について概略的に説明する。一例として、操作子100を操作することで、インデックストラックファイルを再生させるようにできる。例えば、操作子100を図45において左方向に操作すると、インデックストラックファイルが再生され、各インデックス(1)、(2)、・・・、(n)が順番に再生される。
ユーザは、インデックストラックファイルの再生音を聞きながら、所望のインデックスが再生されたら、例えば図示されない再生キーを押して、当該インデックスに対応するトラックの再生を指示する。すると、再生が指示された時点でのインデックストラックファイルの再生バイト位置に基づき対応するトラックナンバが割り出され(インデックスがトラックナンバ順に並べられている場合)、当該トラックナンバにより示されるトラックが再生される。
このように、インデックストラックファイルの再生音に基づきトラックを選択することができるため、ユーザは、ディスクドライブ装置1の表示部51を見なくても、所望のトラックを選択して再生することができる。
なお、インデックストラックファイルは、ユーザが所望のトラックを選択するか、若しくは、ユーザにより再生停止が指示されるまで、繰り返して再生されるようにすると、好ましい。
また、上述では、最初にインデックストラックファイルを再生して所望のトラックを選択するようにしているが、これはこの例に限定されない。例えば、図示されないFF(この場合、曲送り)キーを押す毎に、インデックストラックファイルの対応するインデックスを順次、再生するようにできる。このとき、次にFFキー、再生キー、停止キーなどが押されるまで、当該インデックスが繰り返し再生されるようにすると、好ましい。一例として、第1トラックを再生中にFFキーを1回押すと、第2トラックに対応するインデックストラックファイル中のインデックス(2)が再生され、さらに1回押すと、次のインデックス(3)が再生されるようにする。所望のトラックに対応するインデックスが再生されたら、再生キーを押すことにより、当該トラックが再生されるようにする。
さらに、上述ではこの発明の実施の第1の形態が、次世代MD1または次世代MD2における音楽データの管理方法の第1の例に適用されるように説明したが、これはこの例に限らず、音楽データの管理方法の第2の例に同様にして適用することもできる。この第2の管理方法においては、オーディオデータファイルには、1曲が1ファイルの音楽データが格納され、複数のオーディオデータファイルがトラックインデックスファイルにより管理される。そこで、インデックストラックファイル作成の際の、変数countに対応するトラックを読み出す処理(ステップS303)において、トラックインデックスファイルに基づき各オーディオデータファイルがトラック毎に参照され、各オーディオデータファイルのヘッダの後ろから再生時間tに対応するオーディオデータが切り取られ、インデックスが作成される。
なお、この発明の実施の第1の形態に対応していない記録再生装置では、インデックストラックファイルが作成されない。したがって、この発明の実施の第1の形態に非対応の記録再生装置で作成されたディスクを、この発明の実施の第1の形態に対応しているディスクドライブ装置1に装填しても、誤ってインデックストラックを再生してしまうことがない。
勿論、これに限らず、ディスクに対して、最後に記録が行われた際に用いられた記録再生装置を示す情報を記録しておき、ディスクドライブ装置1において、ディスク装填時にこの情報をチェックするようにしてもよい。この情報に基づき、最後に記録が行われた機種がこの発明の実施の第1の形態に対応したものではないと判断された場合、インデックストラックの再生を行わない。
次に、この発明の実施の第2の形態について説明する。この発明に適用可能なディスクドライブ装置1は、上述したように、現行MDシステムによる記録再生を行うことができる。この発明の実施の第2の形態は、現行MDシステムにおいてインデックストラックを作成する例である。
先ず、理解を容易とするために、現行MDシステムにおけるU−TOCについて説明する。U−TOCは、セクタ0〜セクタ7までの8セクタが設けられる。ここでは、この発明の実施の第2の形態に関係の深いU−TOCセクタ0について説明する。図49は、このU−TOC用とされるセクタのフォーマットを示す。このU−TOCセクタ0は、主にユーザが録音を行なった楽曲や新たに楽曲の録音が可能なフリーエリアについての管理情報が記録されているデータ領域とされる。
例えば、現行MDシステムのディスク(以下、ディスクと略称する)に対してある楽曲の録音を行なおうとする際には、その録音に用いられるMD記録/再生装置において、システムコントローラなどによって、U−TOCセクタ0からディスク上のフリーエリアが探し出され、ここに音声データが記録される。また、再生時には、再生すべき楽曲が記録されているエリアがU−TOCセクタ0から判別され、そのエリアに対してアクセスを行なうことで再生動作がなされる。
図49に示されるU−TOCセクタ0には、先頭にヘッダが設けられ、ヘッダに続いて所定アドレス位置(先頭から28バイト目以降)にメーカーコード(maker cod)、モデルコード(model code)、最初の楽曲の曲番号(First TNO)、最後の楽曲の曲番号(Last TNO)およびディスクIDなどのデータが記録される。すなわち、First TNOは、再生リストの始まりを示し、その値は通常「1」とされ、Last TNOは、再生リストの終わりを示し、その値は、最大で「255」である。
さらに、ユーザが録音を行なっている楽曲の領域やフリーエリアなどを、後述する管理テーブルに対応させることによって識別するため、対応テーブル指示でタブとして各種のテーブルポインタ(P−DFA、P−EMPTY、P−FRA、P−TNO 1〜P−TNO 255)が記録される領域が用意されている。
そして、テーブルポインタに対応させることになる管理テーブル部としてパーツデスクリプタ(1)〜(255)が設けられ、それぞれのパーツデスクリプタには、あるパーツについて起点となるスタートアドレス、終端となるエンドアドレス、そのパーツのモード情報(トラックモード)が記録されている。
各パーツデスクリプタで示されるパーツが他のパーツへ続いて連結される場合があるので、その連結されるパーツのスタートアドレスおよびエンドアドレスが記録されているパーツデスクリプタを示すリンク情報が記録できるようにされている。現行MDにおいては、1つの楽曲のデータが物理的に不連続に、すなわち複数のパーツにわたって記録されていても、パーツ間でアクセスしながら再生していくことにより再生動作に支障が生じないようにされる。そのため、ユーザが録音する楽曲などについては、録音可能エリアの効率使用などの目的から、記録を複数パーツに分けて行なう場合もある。
複数パーツを連続的に再生できるようにするため、リンク情報が設けられ、例えば各パーツデスクリプタに与えられたナンバ(1)〜(255)によって、連結すべきパーツデスクリプタを指定することによってパーツデスクリプタが連結できるようにされている。
なお、実際には、リンク情報は、所定の演算処理によりU−TOCセクタ0内のバイトポジションとされる数値で示される。すなわち、304+(リンク情報)×8(バイト目)としてパーツデスクリプタが指定される。つまり、U−TOCセクタ0における管理テーブル部においては、1つのパーツデスクリプタは、1つのパーツを表現しており、例えば3つのパーツが連結されて構成される楽曲については、リンク情報によって連結される3つのパーツデスクリプタによって、そのパーツ位置の管理がなされる。
上述したテーブルポインタについて、概略的に説明する。テーブルポインタP−DFAは、MD1上の欠陥領域について示す。テーブルポインタP−EMPTYは、管理テーブル部における1または複数の未使用のパーツデスクリプタの先頭のパーツデスクリプタを示す。テーブルポインタP−FRAは、ディスク上のデータ書き込み可能なフリーエリア(消去領域を含む)について示す。
また、テーブルポインタP−TNO 1〜P−TNO 255は、ディスクにユーザが記録を行った楽曲について示す。例えばテーブルポインタP−TNO 1では、1曲目のデータが記録された1または複数のパーツのうちの、時間的に先頭となるパーツが示されたパーツテーブルを指定している。
一例として、1曲目とされた楽曲がディスク上でトラック分断されずに、すなわち1つのパーツで記録されている場合には、その1曲目の記録領域は、テーブルポインタP−TNO 1で示されるパーツテーブルにおけるスタートおよびエンドアドレスとして記録されている。また、別の例として、2曲目とされた楽曲がディスク上で複数のパーツに離散的に記録されている場合は、その楽曲の記録位置を示すため、各パーツが時間的な順序に従って指定される。すなわち、テーブルポインタP−TNO 2に指定されたパーツテーブルから、さらにリンク情報によって他のパーツテーブルが順次時間的な順序に従って指定されて、リンク情報が以降連結無しを示す(0)となるパーツテーブルに連結される。
ところで、現行MDシステムにおいては、U−TOCのFirst TNOからLast TNOまでのトラック番号で示されるトラックが再生の範囲となっている。そこで、この実施の第2の形態では、Last TNOの値を「254」に制限し、再生リストの最大範囲である第255トラックをインデックストラックの記録に使用する。こうすることで、通常の再生動作でインデックストラックが再生されてしまうおそれがなくなる。
すなわち、この発明の実施の第2の形態に対応したディスクドライブ装置1では、Last TNOの値の最大値が「254」とされると共に、作成されたインデックストラックを第255トラックに記録する。そして、インデックストラックを再生する操作により、この第255トラックが再生されるようにする。
一方、この実施の第2の形態に対応していないディスクドライブ装置では、第255トラックに記録を行うことができる。このようなディスクを、この実施の第2の形態に対応しているディスクドライブ装置1に装填し、インデックストラックの再生を指示すると、通常のトラックが記録された第255トラックを誤ってインデックストラックとして再生してしまうことになる。
そこで、この発明の実施の第2の形態では、U−TOC中の「maker code」および「model code」を参照し、この実施の第2の形態で記録されたディスクか否かを判断するようにしている。例えば、この発明の実施の第2の形態に対応したディスクドライブ装置1の「maker code」および「model code」のテーブルをディスクドライブ装置1のシステムコントローラ9が有する図示されないROM(Read Only Memory)に予め記憶しておき、ディスクドライブ装置1にディスクが装填された際に、装填されたディスクに記録された「maker code」および「model code」がこのテーブルに存在するか否かを調べるようにできる。この発明の実施の第2の形態に対応したディスクドライブ装置1の機種名(model code)として、所定の文字列を用い、ディスクに記録された「model code」に当該文字列が含まれているか否かを調べるようにしてもよい。
この実施の第2の形態でも、インデックストラックの構成は、図47を用いて説明したインデックストラックファイル構成と、略同様とされる。すなわち、ディスクに記録されたトラックの先頭の部分がインデックス(1)、(2)、・・・、(n)として連続的に格納されて形成される。このとき、インデックス(1)、(2)、・・・、(n)のそれぞれは、圧縮符号化方式が同一のものとされると共に、再生時間tが例えば1乃至数秒程度に固定的とされる。圧縮符号化方式としては、例えばATRAC方式のLP4モードが用いられる。
各インデックス(1)、(2)、・・・、(n)の再生時間を同一とすることで、インデックストラックファイルの先頭からの再生時間に基づいて対応する音楽データを特定することができる。
図50は、この発明の実施の第2の形態によるインデックストラックファイルの一例の作成方法を示すフローチャートである。この処理は、基本的には、図48を用いて上述した実施の第1の形態による処理と同様である。なお、図50中、変数countは、現在処理中のトラックを示す番号である。
操作子100の操作によりインデックストラックファイルの作成が指示されると、最初のステップS200で、既存のインデックストラックファイルのサイズが0とされ、初期化される。既存のインデックストラックファイルが存在しない場合、サイズが0のインデックストラックファイルが新規に作成される。そして、次のステップS201で、変数countがFirst TNOで示される値に初期化される。
次のステップS202で、変数countとLast TNOとが比較され、変数count>Last TNOであれば、ディスクに記録されている全てのトラックについてインデックスが作成されたとして、処理がステップS211に移行される。
一方、ステップS202で、count≦Last TNOであれば、処理はステップS203に移行する。ステップS203では、変数countに対応するトラックが読み出される。すなわち、変数countに対応するテーブルポインタP−TNO (count)が示すパーツテーブルを参照し、そのパーツテーブルに示されるリンク情報に基づき、ディスク上の実オーディオデータが読み出される。
ステップS204では、読み出されたオーディオデータの圧縮符号化方式が判断される。読み出されたオーディオデータの圧縮符号化方式がATRACのLP4モードであると判断されれば、処理はステップS206に移行される。一方、ステップ104で、読み出されたオーディオデータの圧縮符号化方式がATRAC方式のLP4モードではないと判断されれば、処理はステップS205に移行され、読み出されたオーディオデータを一旦復号化し、ATRAC方式のLP4モードで再圧縮する。再圧縮がなされると、処理はステップS206に移行される。
ステップS206では、当該オーディオデータの再生時間t0が、予めインデックスとして固定的に決められた時間tより大きいかどうかが判断される。再生時間は、例えば当該オーディオデータのデータサイズを調べることで取得可能である。若し、t0≧tであれば、処理はステップS207に移行され、当該オーディオデータの先頭部分から再生時間tに対応したオーディオデータが切り取られる。切り取られたオーディオデータは、インデックス(count)のオーディオデータである。
一方、ステップS206で、当該オーディオデータのt0が再生時間t0<tであれば、処理はステップS208に移行し、当該オーディオデータに対して、再生時間が全体で時間tとなるように無音のオーディオデータが付加される。この無音のオーディオデータは、例えば再生時に無音となるように所定の圧縮符号化方式(この例では、ATRAC方式のLP4モード)で圧縮符号化されたデータである。
ステップS207およびS208で、このようにして時間tのオーディオデータが作成されると、処理はステップS209に移行される。ステップS209では、作成された再生時間tのオーディオデータがクラスタバッファメモリ4に溜め込まれる。クラスタバッファメモリ4に所定量のデータが溜め込まれたら、クラスタバッファメモリ4に溜め込まれたデータが、ディスク上のテーブルポインタP−TNO 255で参照されるパーツテーブルにより示される位置に記録され、インデックストラックに追記される。
そして、処理はステップS210に移行されてcount=count+1とされ、処理がステップS202に戻され、次のトラックに対する処理が行われる。
上述したステップS202〜ステップS210の処理が、ディスクに記録されている全てのトラックに対してなされると、処理がステップS211に移行され、クラスタバッファメモリ4に未処理のデータが残っていれば、それがディスク上に記録される。そして、ステップS212で、U−TOC情報が更新される。このときに、上述した「maker code」および「model code」がそれぞれこのディスクドライブ装置1のものに書き換えられる。
再生の際の動作について概略的に説明する。先ず、現行MDシステムによるディスクがディスクドライブ装置1に装填されると、U−TOCセクタ0の「maker code」および「model code」が読み出され、当該ディスクを最後に更新した機種が、この発明の実施の第2の形態に対応した機種であるか否かが判断される。若し、対応機種で最後の更新がなされたディスクであると判断され、且つ、インデックストラックが記録されていれば、上述の第1の実施の形態の再生動作と同様に、例えば操作子100を図45において左方向に操作すると、インデックストラックが再生され、各インデックス(1)、(2)、・・・、(n)が順番に再生される。
ユーザは、インデックストラックの再生音を聞きながら、所望のインデックスが再生されたら、例えば図示されない再生キーを押し、当該インデックスに対応するトラックの再生を指示する。すると、インデックストラックの先頭から再生が指示された時点までの再生時間に基づき、対応するトラックが割り出される。例えば、各インデックスの再生時間tが3秒とされ、インデックストラックの再生開始から13秒が経過してからトラックの再生が指示されたら、第5トラックが選択されたトラックとして再生される。
なお、上述では、Last TNOの最大値を「254」としたうえで、第255トラック目としてインデックストラックを作成するようにしているが、これはこの例に限定されない。例えば、Last TNOの最大値を「240」のようなさらに小さい値に制限し、第241トラック以降の何れかにインデックストラックを作成することも可能である。これに限らずFirst TNOを2以上の値とし、第1トラック目にインデックストラックを作成することもできる。
上述では、この発明が次世代MD1、次世代MD2および現行MDシステムによるディスクに適用されるように説明したが、これはこの例に限定されない。この発明は、トラック間の移動に一定以上の時間を要する他の記録媒体、例えばCD−R(Compact Disc-Recordable)やCD−RW(Compact Disc-ReWritable)にも用いて好適なものである。勿論、追記または書き換えが可能なタイプのDVD(Digital Versatile Disc)などにも適用可能である。
また、上述では、インデックスとして各トラックの先頭部分を用いたが、これはこの例に限定されず、トラックの先頭以外の部分をインデックスとして用いて、インデックストラックを作成することもできる。