JP4228117B2 - 調湿性を有する壁紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、湿気の吸収と吸収した湿気の放出を行う調湿性を有し結露防止やかび発生防止などの性能に優れると共に、室内の空気中に拡散されている有害物質を吸着・分解することが可能で、表面装飾性能に優れたな壁紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、多雨多湿環境下における建築物の建築用材料としては、湿気の吸放出を行い結露防止作用を有する漆喰,土,木材などの天然の建築用材料が好適であるが、近年は主として経済性などの観点から、石油を原料とする建築用材料が多く活用されるようになってきている。
【0003】
しかしながら、石油を原料とする建築用材料は、上記した天然の建築用材料と比べ湿気の吸放出など調湿性の面で劣り結露防止作用が乏しいという問題がある。このため、最近は水分の吸放出性能を有した多孔質無機鉱物である珪藻土(二酸化ケイ素)を塗料層などに用いた建築用材料が注目されてきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、壁紙などの原反層に裏打ち紙を用い、この原反層に対して珪藻土を塗料層として塗布した場合には、塗料層は装飾性を有すると共に、湿気(水分)の吸収を行うことができるようになり、壁紙自体に湿気の吸収性を持たせることができる。
【0005】
その反面、壁紙を貼り付けた壁面などの建材面側にも裏打ち紙を通過して湿気が吸収されてしまうため、建材面側を腐食させたりカビを発生させたりするという問題が生ずる。
【0006】
また、石膏ボードなどの建材面側に湿気が吸収されると、建材面側がべたついた状態になると共に、室内などの湿度が低下すると建材面側の塵埃などが湿気の揮発に伴って裏打ち紙を通過して壁紙の表面側に浮き出てしまい、壁紙の表面側に汚れが発生するなどの問題がある。
【0007】
さらに、近年は室内の健康空間を確保するために、家具やフローリングなどの接着剤に含まれ空気中に拡散されているホルムアルデヒドなど有害な物質やガスなどの分解・除去を行う必要が指摘されてきている。
【0008】
本願の発明者は、そのような問題を解決すべく、特に、珪藻土を用いた壁紙において調湿性の向上を図ることにより、結露防止やカビ発生防止を図る共に、壁紙の耐久性の向上や空気中に拡散された有害物質の除去なども行うことができ、表面装飾性能に優れた壁紙につき鋭意研究を行った。
【0009】
この発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、湿気の吸収と吸収した湿気の放出を行う調湿性を有し、結露防止やかび発生防止などの性能に優れると共に、室内の空気中に拡散されているホルムアルデヒドなど有害な物質やガスなどを分解・除去することが可能な壁紙を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記のような目的を違成するために、調湿性を有する壁紙として、請求項1記載のように、可撓性を有する裏打ち紙の裏面側に接着剤を塗布する壁紙であって、該裏打ち紙を通過する接着剤などの湿気の遮断を図るポリエチレン樹脂からなるポリコート層である遮湿層を該裏打ち紙の表面側に設けると共に、該遮湿層の表面側に室内側からの湿気の吸収と放出が可能なパルプ不織布である吸放湿層を積層し、且つ、該吸放湿層の表面側に粉末状の多孔質無機鉱物を主成分としつつ酸化チタンを顔料として含有するペースト状の塗料層をコーティングして形成されることを特徴とする。また、請求項2記載のように、塗料層の主成分を形成する多孔質無機鉱物は、粉末状焼成珪藻土であることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。図1は、この発明に係る壁紙の説明用断面図である。
【0012】
図1に示すように、壁紙は原反層1と原反層1の表面側に塗布される塗料層2とから構成される。原反層1は、可撓性を有するシート状の裏打ち紙1a、例えば「商品名:NN75HB(紀州製紙社製)」などが基材として用いられ、この裏打ち紙1aの表面側には、ポリエチレン樹脂からなるポリコート層であり裏打ち紙1aを通過しようとする湿気の遮断を図る遮湿層1bが設けられ、また、遮湿層1bの表面側に吸収と放出を図ると共に、柔軟性とボリューム化を図るパルプ不織布、例えば「商品名:JS60HD(Jソフト社製)」などよりなる吸放湿層1cを積層させて構成されている。
【0013】
原反層を形成するパルプ不織布の吸放湿層1cの表面側には、水分の吸放出性能を有した多孔質無機鉱物である粉末状焼成珪藻土を主成分とする塗料層2が設けられる。この塗料層2は、実施例にも示したように、粉末状焼成珪藻土と、EVA(エチレン酢酸ビニール共重合体),アクリル,発泡剤などの混合された水性樹脂、顔料(酸化チタン)、その他必要に応じて添加剤などの混合塗料材が用いられる。
【0014】
このように構成された壁紙によれば、壁紙の表面側(主として室内側)に滞留する湿気が塗料層2を通過してパルプ不織布よりなる吸放湿層1cに吸収される。パルプ不織布に吸収された湿気は、ポリコート層である遮湿層1bにおいて遮断されるので、裏打ち紙1aを通過することはなく、壁紙の貼り付けられた壁面などの下地建材を湿らすことはない。
【0015】
また、パルプ不織布に吸収された湿気は、壁紙の表面側の湿度が低下すると、塗料層2を通過して壁紙の表面側に放出されることとなるので、裏打ち紙1aへの湿気は遮断すると共に、湿気の吸放出を行う壁紙とされる。
【0016】
さらに、ポリコート層1bの遮湿性により、裏打ち紙1aに糊3を塗布した場合でも糊の水分などが裏打ち紙1aを通過して壁紙の表面側へと放出されることがなく揮発が抑制されるので、裏打ち紙1に対する糊の付け置き時間が従来よりも長時間確保できることとなり、長時間の施工可能時間が確保され施工効率の向上が図られる。また、このポリコート層1bにより壁紙の寸法安定性が図られ、ジョイント部の目開きなどの問題を軽減化することができる。
【0017】
また、パルプ不織布1cは、空気中の水分の吸放出を行うのみならず、壁紙製品として薄いながらもそれなりの柔軟性と厚みを確保可能とし、壁紙としての表現力を豊かとし、折り皺も付きにくく、リフォーム時などの下地凹凸もカバーしやすくなる。
【0018】
塗料層は多孔質無機鉱物を主成分としているので、装飾性を有すると共に、壁紙の表面側において湿気の吸収,保留,放出を行うことができ、且つ、室内の空気中に拡散されているホルムアルデヒドなど有害な物質やガスなどを吸着・分解することができる。
【0019】
さらに、塗料層2には顔料として酸化チタンが採用されているので、この酸化チタンが空気に触れると二酸化チタンとなり、光触媒の強力な酸化還元反応効果により、大気中の有害汚染物質を分解することに対し一定の効果を期待することができる。
【0020】
従来より、二酸化チタンと光触媒の関係においては次のように指摘されている。すなわち、光合成の場合には葉緑素を触媒とし光エネルギーを用いて水と二酸化炭素から酸素を作り出すのであるが、光触媒の場合には、二酸化チタン(TIO)などの光触媒半導体金属を触媒に、光エネルギー(紫外線)を用いて空気中の水(HO)と酸素(O)から活性酸素(O ),フリーラジカル(OH)マイナスイオンを作り出すと指摘されている。活性酸素は強い酸化力を有するので、汚れの原因となる有機化合物や細菌などの有害物質や悪臭なども分解・除去することが知られている。分解された汚れ等の物質は、雨などによって洗い流されるためセルフクリーニング効果ともいわれている。いずれにせよ、光触媒の酸化還元反応は大気中の有害汚染物質である窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を分解し、周辺の空気を浄化する作用をするため、高速道路の防音フェンスなど環境改善のために導入が図られている事例もある。
【0021】
また、この壁紙はパルプ材と珪藻土を主原料として形成されているので、火災時や廃棄焼却時などに有毒ガスやダイオキシンの発生もほとんどない。
【0022】
以下に、この発明に係る壁紙の原反層1と塗料層2の材料構成の好適な1例を示す。
原紙(裏打ち紙) 75g/m
ポリコート層(ポリエチレン) 15μ(15g/m
不織布(パルプ100%) 60g/m
原反層 150g/m
珪藻土(二酸化ケイ素) 40g/m
水性樹脂(EVA,アクリル,発砲剤) 60g/m
顔料(酸化チタン) 18g/m
その他(添加剤) 2g/m
塗料層 120g/m
合 計 270g/m
【0023】
上記の壁紙における加工方法は、原反層はTダイによるポリラミネート加工により、塗料層はコンマコーターによるコーティングによる。すなわち、コンマコーターによるコーティングによるものであるから、粉末状珪藻土を主成分としたペースト状の塗料とされ、裏打ち紙の表面側にコーティングされる。
したがって、形成される塗料層は粉末状多孔質無機鉱物である珪藻土を主成分としつつ含有しながらも表面状態がよく、珪藻土の剥げ落ちを防止しつつ装飾ローラーなどにより多種多様な装飾を表面に容易に施すことができ、表面装飾性能に優れた壁紙となる。
この壁紙においては、塗料層とポリコート層及び不織布間においては湿気の吸収,保留,放出を行うが、原紙は湿気を帯びない。また、原紙に糊を塗布した場合、ポリコート層のない壁紙よりも大幅に糊の付け置き時間が延長化される。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、次のような効果を有する。
▲1▼ 裏打ち紙の表面側にはペースト状の塗料層としてコーティングされるので、形成される塗料層は粉末状多孔質無機鉱物土を主成分として含有しながらも表面状態がよく、珪藻土の剥げ落ちを防止しつつ装飾ローラーなどにより多種多様な装飾を表面に容易に施すことができる。
▲2▼ 塗料層は多孔質無機鉱物を主成分としているので、装飾性を有すると共に、壁紙の表面側において湿気の吸収,保留,放出を行うことができ、且つ、室内の空気中に拡散されているホルムアルデヒドなど有害な物質やガスなどを吸着・分解することができる。
▲3▼ 塗料層には顔料として酸化チタンが採用されているので、この酸化チタンが空気に触れると二酸化チタンとなり、光触媒の強力な酸化還元反応効果により、大気中の有害汚染物質を分解することができる。
▲4▼ 接着剤を塗布する裏打ち紙側と塗料層及びパルプ不織布との間には遮湿層が介在されているので、裏打ち紙側への湿気の通過は遮断するという調湿性を有し、居住空間の調湿作用を行いながらも石膏ボードなど下地側における結露防止やかび発生防止などを図ることができる。
▲5▼ 接着剤を塗布する裏打ち紙側と塗料層及びパルプ不織布との間には遮湿層が介在されているので、裏打ち紙側から壁紙の表面側への湿気の通過も遮断することとなり、裏打ち紙に塗布される接着剤が裏打ち紙を通過して壁紙の表面側へ揮発されることを防止し、大幅に糊の付け置き時間の延長化を図り、施工性の向上を図ることができる。また、建材面側の塵埃などが湿気の揮発に伴って裏打ち紙を通過して壁紙の表面側に浮き出ることを防止し、壁紙の表面側に汚れが発生するなどの事態を防止する。
▲6▼ 塗料層と遮湿層との間に介在されるパルプ不織布により、吸放湿機能の一層の向上が図られると共に、壁紙の寸法安定性が図られジョイント部の目開きなどを軽減化し、且つ、壁紙製品として薄いながらもそれなりの柔軟性と厚みを確保可能とし、折り皺も付きにくく、壁紙としての表現力を豊かとし、リフォーム時などの下地凹凸もカバーすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る壁紙の説明用断面図である。
【図2】図1における湿気の流れを示す説明用断面図である。
【符号の説明】
1 原反層
1a 裏打ち紙
1b 遮湿層
1c 吸放湿層
2 塗料層

Claims (2)

  1. 可撓性を有する裏打ち紙の裏面側に接着剤を塗布する壁紙であって、該裏打ち紙を通過する接着剤などの湿気の遮断を図るポリエチレン樹脂からなるポリコート層である遮湿層を該裏打ち紙の表面側に設けると共に、該遮湿層の表面側に室内側からの湿気の吸収と放出が可能なパルプ不織布である吸放湿層を積層し、且つ、該吸放湿層の表面側に粉末状の多孔質無機鉱物を主成分としつつ酸化チタンを顔料として含有するペースト状の塗料層をコーティングして形成されることを特徴とする調湿性を有する壁紙。
  2. 塗料層の主成分を形成する多孔質無機鉱物は、粉末状焼成珪藻土であることを特徴とする請求項1記載の調湿性を有する壁紙。
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