JP4227364B2 - ガス放電管及びガス放電管装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス放電管及びガス放電管装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のガス放電管として、たとえば特開平4−357659号公報に開示されたようなものが知られている。特開平4−357659号公報に開示されたガス放電管は、ガスが気密封止された管状の容器と、この容器の両端部にそれぞれ封装された一対のステムピンの先端部に装着された傍熱型電極とを備えており、傍熱型電極のそれぞれは、一端部が一対のステムピンの一方と電気的に接続される加熱用ヒータと、加熱用ヒータの他端部と電気的に接続されると共に、一対のステムピンの他方と電気的に接続され、加熱用ヒータからの熱を受けて電子を放出する電子放射部と、を有している。
【0003】
ところで、ガス放電管の寿命は、当該ガス放電管が点灯するか否かに基づいて判断がなされていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来では、ガス放電管が消灯して初めて、寿命に達したことが分かることになる。このため、消灯する以前に、当該ガス放電管が寿命に達するか否かを判断することが可能な技術を確立させることが望まれていた。
【0005】
本発明者等は、調査研究の結果、陰極降下電圧がガス放電管(傍熱型電極)の寿命に関係しているという事実を新たに見出した。また、本発明者等は、放電表面電位を実験因子として、従来の傍熱型電極(傍熱型陰極)との比較を陰極降下電圧(ボックス電位)を中心に着目し、調査研究の結果、以下のような事実を新たに見出した。
【0006】
なお、以後使用する等電位界面、ボックス電位と放電形態は、次のように定義する。等電位界面とは、等電位面に易電子放射物質としての金属酸化物が接触塗布され、ガスと接触した構造と定義する。ボックス電位とは、放電中、陰極近傍の陰極と電気的に絶縁された端子と陰極間に発生する電位と定義する。放電物性の一般用語として使われている陰極降下電圧に近似している値である。イオン電流とは、ガス放電管中のガス分子に電子が衝突することで、ガス分子が電離生成した電離ガスによって発生する電流と定義する。熱電子放出とは、金属の温度を上昇させると、熱運動エネルギが増加し、金属の持つ電子エネルギ障壁(仕事関数)を超えて空間中に電子が飛びだす電子放出のことで、ここでは化学的に不安定な易電子放射物質としての金属酸化物からの電子放出のことである。二次電子放出とは、電離ガスの陰極への衝突時に、陰極から空間中に電子が押し出される電子放出のことである。
【0007】
直流動作でのボックス電位の変化を等電位化の前後で比較(すなわち、等電位面が形成されていない(等電位化の前)状態と、等電位面が形成された(等電位化の後)状態とで比較)してみると、図10に示されるように、ボックス電位の顕著な差を確認した。発明者は、等電位界面モデルを作成し、本現象の調査研究結果の考察を行った。ガス放電での放電形態としては、イオン電流、熱電子放出、二次電子放出の3形態でほぼ言い表すことができ、理論的には、下記のような関係式で表現される。因みに、真空放電での放電形態としては、熱電子放出のみでほぼ言い表すことができ、ガス放電の放電形態とは異なる。
Id =Ii + Ie=Ii(1+ γ)+ Ith …… (1)
Ie =Ith+γIi …… (2)
Vc =Vo+{(1-Ith/Id)}/ {α(γ+Ith/Id)} …… (3)
ショットキー効果関連の式
Ie =Ithexp{(e/kT)sqr(eE/4πεo) …… (4)
Ith=SAT^2*exp(-eφ/kT) …… (5)
Ise=Ith[exp[(e/kT)sqr(eE/4πεo)]−1] …… (6)
ここで、Ii:イオン電流
Ie:エミッション電流
Ith:熱電子電流
Ise:二次電子電流
Id:放電電流
Vc:陰極降下電圧
γ:二次電子放出に関わる係数(利得)
α、Vo:パラメータ
S:電極表面積
A:材料で決定される定数
T:陰極温度
e:電子負荷
φ:仕事関数
k:ボルツマン定数
εo:真空中の誘電率
E:陰極降下部の電界強度
【0008】
次に、ガス放電管におけるイオン電流(Iiに相当)とエミッション電流(電子:Ieに相当)について考察する。電子の静止質量が9.109×10-31kgであるのに対して、元素の中で最も軽い水素でも1.675×10-27kgと電子に比べ格段に重い。更に、電離ガスは陰極に吸寄せられて衝突するのに対して、電子の場合は、陰極から引き離されることから、電離ガスの衝撃力が電子の衝撃力を上回り、電離ガスの陰極に与える損傷は電子に比べて大きい。以上のことからイオン電流の陰極に対する有害性が分かる。一方、ガス放電管の発光および放電現象の観点から見ると、電離ガスが、発光物質として寄与するほか、真空中に比べ、イオン電流に依存して多くの放電電流を空間中に引き出す効用がある。ガス放電管においては、イオン電流の功罪を加味しつつ、陰極に対する影響を最小限に保つことが寿命特性、安定性を図る上で大切である。
【0009】
ボックス電位は、陰極降下電圧に近似し、ガスの励起、電離状態を相対的に示していて、電離ガス発生量の目安となる。ボックス電位が低ければ低いほど、電離ガス生成量は少ないことを意味している。
【0010】
ガス放電での放電形態としては、イオン電流、熱電子放出、二次電子放出の3形態あることは、上述した。熱電子放出は、易電子放射物質としての、バリウム等の金属酸化物を加熱することで起きる。熱電子放出は、放電開始時に、ガス電離を起こし、放電を開始させる役目が有る。放電を開始した後、ガス放電の場合、易電子放射物質としての金属酸化物から放出される熱電子に引き寄せられる形で電離ガスが衝突してくる。その際、電離ガス衝突により、主に電気導体と易電子放射物質としての金属酸化物の界面上から二次電子放出が起きる。ガス放電の場合、単位面積あたりの放電電流密度が、真空放電に比べ数十倍から数百倍にもなり、全放電電流中の大半が二次電子放出で形成される。
【0011】
二次電子の供給に関し、易電子放射物質としての金属酸化物の電気抵抗率は、電気導体に比べ格段に大きく、易電子放射物質としての金属酸化物単体での供給には限界があり、二次電子の供給の多くは電気導体を介して供給され、易電子放射物質としての金属酸化物との界面上から放出される。電気導体への二次電子の基となる電子供給は、直接外部回路から供給される場合と、易電子放射物質としての金属酸化物との接触面を介して行われる場合がある。電気導体と界面を成さない易電子放射物質としての金属酸化物上からも熱電子放出が起きるが、上述したように、二次電子の供給に関し、易電子放射物質としての金属酸化物単体での供給には限界があり、二次電子放出量は少なく、ガス放電中に占める易電子放射物質としての金属酸化物単体からの放電電流の絶対量はきわめて少ない。以上整理すると、ガス放電における陰極で、主に電子放出を担う場所は、電気導体と易電子放射物質としての金属酸化物界面である。
【0012】
次に、図10及び図11を参照して、等電位界面モデルに関して説明する。図10は、横軸をヒータ印加電圧(Vf)、つまり陰極への強制加熱量による陰極温度の増減軸とし、縦軸を陰極降下電圧(ボックス電位)(Vc)とした線図(モデル図)である。図11は、横軸を同じくヒータ印加電圧(Vf)とし、縦軸を放電電流(Id)とした線図(モデル図)である。ただし、図11の放電電流(Id)は一定として、縦軸は、熱電子電流、二次電子電流、イオン電流の構成割合(領域分布)を表している。図10の縦軸は、高低を表している。
【0013】
陰極温度の構成要因は、ヒータ印加電圧(Vf)、つまり陰極への強制加熱量の他に、電離ガスの陰極への衝突時に発生する通称、自己加熱量が有り、この合計熱量により決まる。図10左側の陰極温度が低い、つまり強制加熱量が少ない、あるいは放熱面積が大きく、陰極からの損失熱量が多い領域では、熱電子生成量が少なく、これを補う形でイオン電流が支配的になり、陰極降下電圧が電離電圧以上となり、電離ガスの生成を加速している。この領域で、陰極表面の電位分布が不均一である場合は、イオン電流、二次電子電流の集中による局所的な放電(放電位置の偏在)が生じ易く、電離ガス衝撃による陰極表面への損傷が大きく、陰極物質材(易電子放射物質としての金属酸化物)の削り取り(スパッタ)、還元金属との酸化による安定化(鉱物化)を招き易い。
【0014】
これに対して、図10右側の陰極温度が高い、つまり強制加熱量が多い、あるいは放熱面積が小さく、陰極への蓄熱量が多い領域では、熱電子生成量が過剰となり、これを補う形でイオン電流は減少し、陰極降下電圧が電離電圧以下なる。しかし、陰極温度が上昇し陰極構成物の蒸気圧を高め、蒸発による易電子放射物質としての金属酸化物の消失を招き易い。陰極への熱量の過不足は、上述した理由により好ましくない。動作領域の目安としては、ボックス電位(陰極降下電圧)で言うと、電離電圧近辺での動作が適している。
【0015】
ところで、このモデルの構成要素の中で、重要な要素として、放電面積がある。これは、関係式中の電極表面積(S)と同義とみなせる。先に述べたように、ガス放電では、電気導体と易電子放射物質としての金属酸化物界面上からの電子放出が、放電主体を成している。これに加え、温度均一性に止まらず、電位的にも均一(等電位)であるか否かによって放電面積は変わる。つまり、放電面積は等電位面の面積、あるいは等電位面部の長さに比例することとなり、等電位面が広い、あるいは長いほど、電極表面積(S:放電面積)が増加し、上記(5)式から、熱電子電流(Ith)の割合が増加し、上記(1)式よりイオン電流量が減少し、イオン電流、二次電子電流は等電位面に分散し、図11のモデルの細線部(等電位化前)はモデルの太線側(等電位化後)に領域分布がシフトすることになり、上記(3)式から図10のボックス電位(陰極降下電圧)が低下する。今回の等電位面と金属酸化物、ガスの等電位界面構造を採用し、熱電子量が増加することで、放電電流中のイオン電流量が減少し、図10のボックス電位が下がる理由を説明できる。
【0016】
以上のことから、ガス放電において、従来の等電位化されていない陰極に比べ、イオン電流量を減少させることで、単位放電面積あたりの電離ガス衝撃を緩和させることができ、その結果、陰極への負荷が軽減し、熱電子放出能の低下が少なく、寿命特性が改善され、これに伴い、放電位置の移動も少なく、安定性の改善を図れることが分かる。
【0017】
次に、等電位面のガス放電管への有効性について、考察する。真空放電での放電形態としては、熱電子放出のみでほぼ言い表すことができ、ガス放電の放電形態とは異なると、先に述べた。真空放電中での放電面積は、熱電子放出面にある易電子放射物質としての金属酸化物により形成された表面積で決まるといえる。従って、熱電子放出のほか、イオン電流、二次電子放出からなる放電形態を有するガス放電管における放電面積構成要素と真空放電中の放電面積構成要素とが異なり、ガス放電における陰極で、主に電子放出を担う場所は、電気導体と易電子放射物質としての金属酸化物界面であるから、放電面として、電気導体から形成されて電位をほぼ等しくした、等電位面がガス放電において有効であることを見出した。
【0018】
更に、等電位面の形成手段に使う材料をメッシュ状、線状、あるいはリボン状、箔状を含む板状と細線構造とすることで、放熱面となる表面積と、熱伝導部となる体積を極力増やさず、結果的に熱損失量を抑える。金属酸化物と等電位面の接触部を増し、結果的に放電面積を増やす。以上のことから、等電位面の形成手段に使う材料をメッシュ状、線状、あるいは板状と細線構造とすることで、等電位面の効果をより高めることを見出した。
【0019】
従来のように、陰極表面の電位分布が不均一である場合は、発熱量もそれに伴い不均一となるため、熱電子の生成密度も不均一となり、イオン電流、二次電子電流の集中による局所的な放電(放電位置の偏在)が生じることになる。そして、局所的な放電は、陰極物質材(易電子放射物質としての金属酸化物)の削り取り(スパッタ)、還元金属との酸化による安定化(鉱物化)、つまり熱電子放出能の低下を招き、放電位置が次なる熱電子放出特性のよい位置へと移動する。このように、局所的な熱電子放出劣化を繰り返しながら、陰極表面を劣化させることになる。また、上述した放電位置の移動により、放電自体が不安定になってしまう。
【0020】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、傍熱型電極の陰極降下電圧を容易に検出することが可能なガス放電管及びガス放電管装置を提供することを課題とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
かかる調査研究結果も踏まえ、本発明に係るガス放電管は、密封容器内にガスを封入し、密封容器の端部を構成するステムに立設された一対のステムピンに支持された傍熱型電極を密封容器内に気密に封着したガス放電管であって、傍熱型電極は、表面に電気絶縁層が形成されると共に、一対のステムピンに電気的に接続された加熱用ヒータと、加熱用ヒータからの熱を受けて電子を放出する電子放射部と、電子放射部の最表面側部分に設けられ、所定長さを有し、一対のステムピンのうち一方のステムピンに電気的に接続された電気導体と、を有し、電子放射部は、易電子放射物質としての金属酸化物と、金属酸化物を保持するコイル部材と、を含み、加熱用ヒータは、コイル部材の内側に配設され、金属酸化物は、電気絶縁層を介して加熱用ヒータに接触しており、電気導体は、金属酸化物に接触するとともに、コイル部材の長手方向にそってコイル部材の複数のコイル部分に接触して設けられ、導電性の検出ピンが、電子放射部と所定の間隔を有するようにステムに立設されていることを特徴としている。
【0022】
本発明に係るガス放電管では、電気導体により電子放射部に等電位面が実効的に形成されるので、形成された等電位面の広い領域で熱電子放出が起きるために放電面積が増加し、単位面積当りの電子放出量(電子放出密度)が大きくなり、放電位置における負荷が軽減されることになる。これにより、局所的な放電の発生を抑制でき、傍熱型電極の長寿命化を図ることができる。また、放電位置の移動も抑制されることになるため、長時間にわたって安定した放電を得ることができる。また、放電面積が増加したことに関連して、電流密度を若干上げて、負荷をやや増す、つまり、放電電流を増しても、従来のものに比べ損傷を小さくでき、従来のものとほぼ同一形状で、大放電電流の傍熱型電極を提供でき、パルス動作、大電流動作を実現することができる。また、陰極降下電圧も、従来の傍熱型電極に比して、極めて安定したものとなる。
【0023】
そして、本発明によれば、導電性の検出ピンが、電子放射部と所定の間隔を有するようにステムに立設されているので、検出ピンとステムピン間の電圧を容易に測定することが可能となり、傍熱型電極の陰極降下電圧を容易に検出することができる。
【0024】
また、本発明では、電子放射部は、易電子放射物質としての金属酸化物と、金属酸化物を保持するコイル部材とを含んでおり、電気導体は、金属酸化物に接触するとともに、コイル部材の長手方向にそってコイル部材の複数のコイル部分に接触して設けられている。このように構成した場合、電気導体により複数の放電点あるいは放電線からなる放電面の電位がほぼ等しくなり、劣化要因である金属酸化物のスパッタ、還元金属との酸化による安定化(鉱物化)、つまり熱電子放出能の低下を抑制することができ、放電位置の移動も抑制することができる。この結果、電気導体を金属酸化物に接触して設けるという簡易な構成により、傍熱型電極の長寿命化及び安定した放電を得ることができる。
また、本発明では、金属酸化物は、電気絶縁層を介して加熱用ヒータに接触している。このように構成した場合、加熱用ヒータの熱が直接的に金属酸化物に伝わり、予熱時に加熱用ヒータの熱を確実且つ効率よく金属酸化物に伝えることができる。また、従来技術のように円筒を有するものに比して、熱陰極動作に必要となる熱量の損失を抑制することができる。このため、外部からの電極への熱量供給、強制過熱を大きくすることなく電極を動作させることが可能となる。
【0025】
本発明に係るガス放電管は、密封容器内にガスを封入し、密封容器の端部を構成するステムに立設された一対のステムピンに支持された傍熱型電極を密封容器内に気密に封着したガス放電管であって、傍熱型電極は、コイル状に巻き回されたコイル部材と、コイル部材の内側に配設され、その表面に電気絶縁層が形成されると共に、一対のステムピンに電気的に接続された加熱用ヒータと、コイル部材に保持される易電子放射物質としての金属酸化物と、コイル部材の内側に金属酸化物と接触すると共にコイル部材の複数のコイル部分と接触して設けられ、所定長さを有し、一対のステムピンのうち一方のステムピンに電気的に接続された電気導体と、を有し、金属酸化物は、電気絶縁層を介して加熱用ヒータに接触しており、導電性の検出ピンが、コイル部材と金属酸化物とで構成される電子放射部と所定の間隔を有するようにステムに立設されていることを特徴としている。
【0026】
本発明に係るガス放電管では、電気導体によりコイル部材の裏面(放電面とは反対側の面)に等電位面が実効的に形成されるので、形成された等電位面の広い領域で熱電子放出が起きて放電面積が増加し、単位面積当りの電子放出量(電子放出密度)が大きくなり、放電位置における負荷が軽減されることになる。これにより、局所的な放電の発生を抑制でき、電極の長寿命化を図ることができる。また、放電位置の移動も抑制されることになるため、長時間にわたって安定した放電を得ることができる。また、放電面積が増加したことに関連して、電流密度を若干上げて、負荷をやや増す、つまり、放電電流を増しても、従来のものに比べ損傷を小さくでき、従来のものとほぼ同一形状で、大放電電流の傍熱型電極を提供でき、パルス動作、大電流動作を実現することができる。また、陰極降下電圧も、従来の傍熱型電極に比して、極めて安定したものとなる。
【0027】
そして、本発明によれば、導電性の検出ピンが、電子放射部と所定の間隔を有するようにステムに立設されているので、検出ピンとステムピン間の電圧を容易に測定することが可能となり、傍熱型電極の陰極降下電圧を容易に検出することができる。
【0028】
また、本発明では、電気導体は、金属酸化物に接触するとともに、コイル部材の複数のコイル部分に接触して設けられている。このように構成した場合、電気導体により、複数の放電点あるいは放電線からなる放電面の電位がほぼ等しくなり、劣化要因である金属酸化物のスパッタ、還元金属との酸化による安定化(鉱物化)、つまり熱電子放出能の低下を抑制することができ、放電位置の移動も抑制することができる。この結果、電気導体を金属酸化物に接触して設けるという簡易な構成により、電極の長寿命化及び安定した放電を得ることができる。
【0029】
また、本発明では、金属酸化物は、電気絶縁層を介して加熱用ヒータに接触している。このように構成した場合、加熱用ヒータの熱が直接的に金属酸化物に伝わり、予熱時に加熱用ヒータの熱を確実且つ効率よく金属酸化物に伝えることができる。また、従来技術のように円筒を有するものに比して、熱陰極動作に必要となる熱量の損失を抑制することができる。このため、外部からの電極への熱量供給、強制過熱を大きくすることなく電極を動作させることが可能となる。
【0030】
また、コイル部材は、電気絶縁層を介して加熱用ヒータに接触していることが好ましい。このように構成した場合、加熱用ヒータの熱が直接的にコイル部材に伝わり、予熱時に加熱用ヒータの熱を確実且つ効率よくコイル部材に伝えることができる。また、従来技術のように円筒を有するものに比して、熱陰極動作に必要となる熱量の損失を抑制することができる。このため、外部からの電極への熱量供給、強制過熱を大きくすることなく電極を動作させることが可能となる。
【0031】
また、コイル部材は、マンドレルを有するコイルをコイル状に巻き回して構成した多重コイルであることが好ましい。このように構成した場合、易電子放射物質である金属酸化物がコイルを形成する線材間の間隔である、ピッチ(心距)間に挟み込まれて保持されることになる。これにより、各ピッチ間の距離は隙間程度に小さいため振動による金属酸化物の脱落を抑制することができる。また、隙間構造のピッチが多数存在するため、多量の金属酸化物を保持でき、放電中の経時劣化に伴う消失金属酸化物分を補充する効果がある。更に、マンドレルを有しているので、加工時の多重コイルの変形を抑制することができる。
【0032】
また、電気導体は、メッシュ状、線状あるいは板状に形成された高融点金属であることが好ましい。このように、電気導体がメッシュ状、線状あるいは板状に形成された高融点金属であることにより、熱電子放出能の低下及び放電位置の移動を抑制し得る構成の電気導体を低コスト且つより一層簡易に実現することができる。また、電気導体が剛体となるために、加工が容易であると共に、金属酸化物に密接して設けることができる。なお、本明細書において用いる「板状」とは、リボン状、箔状等の形状が含まれるものとする。
【0033】
本発明に係るガス放電管は、密封容器内にガスを封入し、密封容器の端部を構成するステムに立設された一対のステムピンに支持された傍熱型電極を密封容器内に気密に封着したガス放電管であって、傍熱型電極は、マンドレルを有するコイルをコイル状に巻き回して構成し、一対のステムピンのうち一方のステムピンに電気的に接続された多重コイル部材と、多重コイル部材の内側に配設され、その表面に電気絶縁層が形成された加熱用ヒータと、多重コイル部材に接触するように当該多重コイル部材に保持される易電子放射物質としての金属酸化物と、を有し、金属酸化物は、電気絶縁層を介して加熱用ヒータに接触しており、導電性の検出ピンが、多重コイル部材と金属酸化物とで構成される電子放射部と所定の間隔を有するようにステムに立設されていることを特徴としている。
【0034】
本発明に係るガス放電管では、多重コイル部材がマンドレルを有しているので、多重コイル部材の剛性が高くなり、成形を容易に行うことができ、この結果、傍熱型電極の製造が容易となる。また、加工時及び使用時の多重コイル部材の変形を抑制することができる。また、易電子放射物質である金属酸化物がコイル部分の間隔である、ピッチ(心距)間に挟み込まれて保持されることになる。これにより、各ピッチ間の距離は隙間程度に小さいため振動による金属酸化物の脱落を抑制することができる。また、隙間構造のピッチが多数存在するため、多量の金属酸化物を保持でき、放電中の経時劣化に伴う消失金属酸化物分を補充する効果がある。
【0035】
そして、本発明によれば、導電性の検出ピンが、電子放射部と所定の間隔を有するようにステムに立設されているので、検出ピンとステムピン間の電圧を容易に測定することが可能となり、傍熱型電極の陰極降下電圧を容易に検出することができる。
【0036】
また、本発明では、金属酸化物は、電気絶縁層を介して加熱用ヒータに接触している。このように構成した場合、加熱用ヒータの熱が直接的に金属酸化物に伝わり、予熱時に加熱用ヒータの熱を確実且つ効率よく金属酸化物に伝えることができる。また、従来技術のように円筒を有するものに比して、熱陰極動作に必要となる熱量の損失を抑制することができる。このため、外部からの電極への熱量供給、強制過熱を大きくすることなく電極を動作させることが可能となる。
【0037】
また、多重コイル部材は、電気絶縁層を介して加熱用ヒータに接触していることが好ましい。このように構成した場合、加熱用ヒータの熱が直接的に多重コイル部材に伝わり、予熱時に加熱用ヒータの熱を確実且つ効率よく多重コイル部材に伝えることができる。また、従来技術のように円筒を有するものに比して、熱陰極動作に必要となる熱量の損失を抑制することができる。このため、外部からの電極への熱量供給、強制過熱を大きくすることなく電極を動作させることが可能となる。
【0038】
また、金属酸化物は、バリウム、ストロンチウム、カルシウムの内のいずれか単体の酸化物、又はこれらの酸化物の混合物あるいは希土類金属の酸化物を含んでいることが好ましい。このように、金属酸化物がバリウム、ストロンチウム、カルシウムの内のいずれか単体の酸化物、又はこれらの酸化物の混合物あるいは希土類金属の酸化物を含んでいることにより、電子放射部における仕事関数を効果的に小さくすることが可能となり、熱電子の放出が容易となる。
【0039】
また、所定の間隔は、検出ピンを傍熱型電極の負グロー領域に位置させる値に設定されていることが好ましい。このように構成した場合、検出ピンが陽光柱領域に位置することはなく、傍熱型電極の陰極降下電圧を適切に検出することができる。
【0040】
また、所定の間隔は、電子放射部と検出ピンとの最短距離で規定した場合、10mm以下に設定されていることが好ましい。このように構成した場合、傍熱型電極の陰極降下電圧をより一層適切に検出することができる。
【0041】
本発明に係るガス放電管装置は、請求項1〜10のいずれか一項に記載のガス放電管と、一対のステムピンのうち電源に接続されているステムピンと検出ピンとの間の電圧を検出する電圧検出手段を有することを特徴としている。
【0042】
本発明に係るガス放電管装置では、電圧検出手段により、電源に接続されるステムピンと検出ピンとの間の電圧、すなわち、陰極降下電圧が検出されることとなり、傍熱型電極の陰極降下電圧を極めて容易に検出することができる。
【0043】
また、電圧検出手段にて検出された電圧に応じて、表示状態が変更される表示手段を更に有することが好ましい。このように構成した場合、傍熱型電極の陰極降下電圧の状態、すなわち、傍熱型電極の寿命を利用者等に確実に報知することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0045】
(第1実施形態)
まず、図1及び図2に基づいて、第1実施形態に係るガス放電管DT1を説明する。図1は、本第1実施形態に係るガス放電管(蛍光ランプ)を示す構成図であり、図2は、第1実施形態に係るガス放電管に含まれる傍熱型電極近傍の概略断面図である。
【0046】
ガス放電管DT1は、図1に示されるように、密封容器としての管状バルブ1と、ステムピン(導入線)3,5と、傍熱型電極C1と、検出ピン7を備えている。
【0047】
管状バルブ1は、ガラス等の材料からなり、当該管状バルブ1の端部を構成するステム1aを含んでいる。管状バルブ1の内部には、アルゴン等の希ガス、あるいは、アルゴン等の希ガス及び水銀が封入されている。また、管状バルブ1の内壁には図示しない蛍光体が塗布されている。ステムピン3,5及び検出ピン7は、管状バルブ1の両端において、管状バルブ1のステム1aに立設されており、管軸方向に延在している。傍熱型電極C1は、ステムピン3,5の先端部に装着されて、管状バルブ1内に気密に封着されている。
【0048】
傍熱型電極C1は、図2にも示されるように、加熱用ヒータ11と、コイル部材としての二重コイル13と、電気導体としての線状部材15と、易電子放射物質(陰極物質)としての金属酸化物17とを有している。
【0049】
加熱用ヒータ11は、直径0.05〜0.2mm、たとえば0.096mmのタングステン素線を二重に巻回したフィラメントコイルからなり、このタングステンフィラメントコイルの表面には、電着法等により電気絶縁材料(たとえば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ等)が被覆されて電気絶縁層12が形成されている。なお、電気絶縁層12の代わりに電気絶縁材料(たとえば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカ等)の円筒パイプを用い、当該円筒パイプ内に加熱用ヒータ11を挿入して加熱用ヒータ11を絶縁する構成を採用してもよい。ここで、二重コイル13と易電子放射物質としての金属酸化物17とは、加熱用ヒータ11からの熱を受けて電子を放射する電子放射部を構成している。
【0050】
加熱用ヒータ11の一端部11aは、溶接等により、ステムピン3に電気的に接続されている。
【0051】
二重コイル13は、コイル状に巻き回されたコイルより構成される多重コイルであって、直径0.0913mmのタングステン素線を外径0.36mmの1次マンドレル13aにピッチ0.15mmで巻き回して一次コイル(外周径0.543mm)に形成し、さらにその一次コイルを外径2.8mmの2次マンドレルにピッチ0.65mmで、たとえば10回巻き回して二重コイルに形成したものである。二重コイル13の内側には、加熱用ヒータ11が挿入されて配設されている。
【0052】
二重コイル13は、2次マンドレルを取り除き1次マンドレル13aを残した状態で用いられ、当該1次マンドレル13aを有することになる。この1次マンドレル13aは、たとえばモリブデンからなる。また、二重コイル13は、巻き回された複数のコイル部分が所定の間隔(0.1mm〜0.3mm)を有している。ここで、マンドレルとは、フィラメントコイル作成時に巻径を決める型の役割を果たす芯線のことである。
【0053】
なお、コイル部材としては、二重コイル13を用いる代わりに、三重コイル、あるいは一重コイル等を用いるようにしもよい。また、コイル状の部材を用いる代わりに、メッシュ状の部材を用いるようにしてもよい。このように、コイルあるいはメッシュ状の部材を用いることにより、易電子放射物質としての金属酸化物17を保持する保持手段としての放熱面積を減らすことができる。
【0054】
線状に形成された線状部材15は、導電性を有する剛体(金属導体)で、周期律表のIIIa〜VIIa、VIII、Ib族に属し、具体的にはタングステン、タンタル、モリブデン、レニウム、ニオブ、オスミウム、イリジウム、鉄、ニッケル、コバルト、チタン、ジルコニウム、マンガン、クロム、バナジウム、ロジウム、希土類金属等の高融点金属(融点1000℃以上)の単体金属もしくはこれらの合金からなる。本実施形態においては、タングステン製の線状部材を用いている。線状部材15の直径は、0.1mm程度に設定されている。
【0055】
線状部材15は、所定長さを有しており、二重コイル13の外側に二重コイル13の長手方向にわたって、放電方向に略直交するように配設されている。この線状部材15は、図2に示されるように、二重コイル13の長手方向に沿って二重コイル13の複数のコイル部分に電気的に接触して設けられている。好ましくは、二重コイル13の長手方向での全長にわたって電気的に接触して設けることがよい。この線状部材15は、二重コイル13と易電子放射物質としての金属酸化物17とを含む電子放射部の最表面側部分に設けられることになる。
【0056】
加熱用ヒータ11の他端部11b、二重コイル13及び線状部材15は、リードロッド16を介して、ステムピン5に電気的に接続されている。なお、線状部材15の本数は、1本に限られることなく、2本以上の複数本であってもよい。また、線状部材15と二重コイル13との各接触点を溶接してもよい。また、線状部材15の代わりに、メッシュ状に形成されたメッシュ状部材(例えば、直径0.03mmのタングステン素線をメッシュ状に編んだもの)や、板状(リボン状、箔状も含む)に形成された板状部材を用いてもよい。
【0057】
傍熱型電極C1は、易電子放射物質としての金属酸化物17を有している。金属酸化物17は、二重コイル13に保持され、線状部材15に接触して設けられている。金属酸化物17及び線状部材15は、金属酸化物17の表面及び線状部材15の表面が放電面となるように、傍熱型電極C2の外側に露出しており、金属酸化物17の表面部分に線状部材15が接触するようになっている。
【0058】
金属酸化物17としては、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)の内のいずれか単体の酸化物、又はこれらの酸化物の混合物、あるいは、主構成要件がバリウム、ストロンチウム、カルシウムの内のいずれか単体の酸化物、又はこれらの酸化物の混合物であり副構成要件がランタン系を含む希土類金属(周期律表のIIIa)である酸化物が用いられる。バリウム、ストロンチウム、カルシウムは、仕事関数が小さく、熱電子を容易に放出することができ、熱電子供給量を増加させることができる。また、副構成要件として希土類金属(周期律表のIIIa)を添加した場合、熱電子供給量を更に増加させることができると共に、耐スパッタ性能を向上することもできる。
【0059】
金属酸化物17は、陰極物質材として金属炭酸塩(たとえば、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム等)の形で塗布され、塗布された金属炭酸塩を真空加熱分解することにより得られる。尚、加熱用ヒータへの通電により真空加熱分解を行う場合、直流加熱分解に比べ交流加熱分解の方が好ましい。このようにして得られた金属酸化物17が最終的に易電子放射物質となる。陰極物質材としての金属炭酸塩は、二重コイル13の内側に加熱用ヒータ11が配設され、二重コイル13の外側に線状部材15が配設されている状態において、線状部材15側から塗布される。なお、金属炭酸塩は、傍熱型電極C1(二重コイル13)の全周を覆うように塗布する必要はなく、線状部材15が設けられている部分のみに塗布するようにしてもよい。
【0060】
加熱用ヒータ11は、図2に示されるように、電気絶縁層12を介して、金属酸化物17に接触している。このため、予熱時に加熱用ヒータ11の熱を確実且つ効率よく金属酸化物17に伝えることができる。また、特公昭62−56628号公報に開示されたガス放電管用傍熱型陰極のように熱良導性の円筒を有するものに比して、放熱面積が少なくなり、熱陰極動作に必要となる熱量の損失を抑制することができる。このため、外部からの電極への熱量供給、強制過熱を必要とせず、自己加熱による熱量のみで電極が動作するよう設計できる。ここで、自己加熱とは、ガス放電管において電極から電子が出る際、放電空間中のイオン化したガス分子が衝突して電気的に中和されるが、ガス分子が電極に衝突する衝撃により、熱が発生することをいう。
【0061】
検出ピン7は、導電性を有し、二重コイル13と易電子放射物質としての金属酸化物17とにより構成される電子放射部と所定の間隔を有する位置に配設されている。本実施形態において、検出ピン7は鉄、ニッケル、コバルトからなる合金であるコバール等の金属材料からなる。
【0062】
次に、図3に基づいて、検出ピン7を設ける位置について説明する。図3は、傍熱型電極からの距離とランプ電圧との関係を示す線図である。この図3は、アルゴンガスを封入した場合の特性である。バルブ内の圧力は470Paであり、放電電流は0.3Aであった。また、図3は周囲の温度が25℃である場合の特性を示している。
【0063】
図3に示されるように、傍熱型電極からの距離が10mm以上離れると、ランプ電圧は急激に上昇することとなる。たとえば、アルゴンガス中で、10mmまでは13V程度で殆ど変化がないのに対し、10mmより大きくなると30Vまで急激に変化している。これは、10mmより大きく離れてしまうと、放電空間上の負グロー領域から陽光柱領域に入ってしまうことを意味している。したがって、検出ピン7にて傍熱型電極C1の陰極降下電圧を測定するためには、当該検出ピン7を傍熱型電極C1の負グロー領域に位置させることが好ましい。具体的には、上述した所定の間隔を、電子放射部と検出ピン7との最短距離で規定した場合、10mm以下に設定することが好ましい。
【0064】
尚、ランプ電圧の値(陰極降下電圧を含む)は封入ガスの種類、放電電流、駆動方式により変わる(図の形はほぼ相似)。例えば、封入ガスがキセノンの場合、ランプ電圧が全体的に5V程度低下する。また、放電電流を増やすと放電特性特有の負性抵抗特性により、ランプ電圧(陰極降下電圧を含む)は低下する。さらに駆動方式や周波数によっても変わる。
【0065】
続いて、図4に基づいて、ガス放電管DT1の点灯装置を説明する。なお、点灯装置50は、ガス放電管DT1における傍熱型電極C1の陰極降下電圧を検出する電圧検出装置を含んでいる。
【0066】
ガス放電管DT1の点灯装置50は、図4に示されるように、始動装置53、安定器54、交流電源55、電圧検出装置57を有している。始動装置53は、グロー管等を用いることができる。ステムピン5間に、安定器54、交流電源55を結合し、ステムピン3間に始動装置53を結合している。
【0067】
電圧検出装置57は、図5に示されるように、交流電源55に結合されたステムピン5と検出ピン7との間の電圧(陰極降下電圧)を測定する、既存の交流電圧検出回路59(電圧検出手段)と、交流電圧検出回路59における電圧の測定結果に基づいて、その表示状態を変更する表示回路61(表示手段)とを有している。本実施形態においては、電圧検出装置57を両側の傍熱型電極C1に設けているが、片側の傍熱型電極C1のみに設けるようにしてもよい。
【0068】
表示回路61は、図5に示されるように、ダイオード63、切替スイッチ65、第1のLED67、及び第2のLED69を含んでいる。切替スイッチ65は、交流電圧検出回路59からの信号を受け、交流電源55に対して、第1のLED67あるいは第2のLED69のいずれか一方を接続するように、切り替え動作を行う。第1の発光素子67と第2の発光素子69とは、互いに発光色が異なっており、たとえば、第1の発光素子67は青色LEDを用い、第2の発光素子69は赤色LEDを用いることができる。
【0069】
交流電圧検出回路59は、交流電源55に結合されたステムピン5と検出ピン7との間の電圧(陰極降下電圧)を測定し、当該電圧が所定値(たとえば、13V)未満である場合、切替スイッチ65に第1の信号を出力する。また、交流電圧検出回路59は、測定した電圧が上記所定値以上である場合、切替スイッチ65に第2の信号を出力する。切替スイッチ65は、交流電圧検出回路59から第1の信号が出力されると、交流電源55に対して、第1のLED67を接続するように、切り替えられる。一方、切替スイッチ65は、交流電圧検出回路59から第2の信号が出力されると、交流電源55に対して、第2のLED69を接続するように、切り替えられる。
【0070】
したがって、傍熱型電極C1が寿命に達し、陰極降下電圧が大きくなると、この状態が交流電圧検出回路59により検知されて、第2のLED69が発光することとなり、表示回路61における表示が変更される。これにより、利用者等に、傍熱型電極C1が寿命に達する状態であることを速やかに報知される。
【0071】
なお、図4に示されたように、ガス放電管DT1を点灯装置50に接続した場合には、ガス放電管DT1の動作中、加熱用ヒータ11に通電されることはなく、▲1▼傍熱型電極C1がオーバヒート状態となるようなことはなく、傍熱型電極C1の劣化を抑制できる、▲2▼加熱用ヒータ11で消費される電力が加わるようなことはなく、ガス放電管DT1としての発光効率(照度/入力電力)が低下するのを抑制できる、といった作用効果を奏することとなる。ガス放電管DT1においては、一方の傍熱型電極C1が陰極として動作している場合、他方の傍熱型電極C1は陽極として動作する。
【0072】
電源として交流電源55を用いた場合には、傍熱型電極C1は、カソードサイクルとアノードサイクルが繰り返されることになるが、カソードサイクルのときは、放電面積が増えるためイオン電流過多による金属酸化物17のスパッタを防止することができる。また、アノードサイクルのときは、線状部材15が電子収束部としての役割を果たすことになり、受電子面積が大きく、過剰となる温度上昇を防止でき、金属酸化物17の蒸発を抑制することができる。
【0073】
以上のように、本第1実施形態の傍熱型電極C1においては、金属酸化物17に接触して線状部材15が設けられ、線状部材15が複数箇所において二重コイル13と電気的に接触することで、線状部材15により等電位面が実効的に形成されるので、形成された等電位面の広い領域で熱電子放出が起きるために放電面積が増加し、単位面積当りの電子放出量(電子放出密度)が大きくなり、放電位置における負荷が軽減されることになり、劣化要因である金属酸化物17のスパッタ、還元金属との酸化による安定化(鉱物化)、つまり熱電子放出能の低下を抑制することができる。この結果、局所的な放電の発生を抑制でき、陰極の長寿命化を図ることができる。また、放電位置の移動も抑制されることになるため、長時間にわたって安定した放電を得ることができる。また、陰極降下電圧も、従来の傍熱型電極に比して、極めて安定したものとなる。
【0074】
また、傍熱型電極C1にあっては、放電面積が増加したことに関連して、電流密度を若干上げて、負荷をやや増す、つまり、放電電流を増しても、従来のものに比べ損傷を小さくできる。これにより、従来のものとほぼ同一形状で、大放電電流の傍熱型電極を提供でき、パルス動作、大電流動作の実現が可能となる。
【0075】
また、電気導体として線状部材15を用いているので、熱電子放出能の低下及び放電位置の移動を抑制し得る構成の電気導体を低コスト且つより一層簡易に実現することができる。また、線状部材15(電気導体)が剛体となるために、加工が容易であると共に、金属酸化物17に密接して設けることができる。
【0076】
また、二重コイル13において、易電子放射物質である金属酸化物17がコイルを形成する線材間の間隔である、ピッチ(心距)間に挟み込まれて保持されることとなる。これにより、各ピッチ間の距離は間隙程度に小さいため振動による金属酸化物17の脱落を抑制することができる。また、二重コイル13のピッチ間に多量の金属酸化物17が保持されることになり、放電中の経時劣化に伴う消失金属酸化物分を補充する効果がある。
【0077】
また、二重コイル13がマンドレル13aを有しているので、加工時に二重コイル13が変形するのを抑制することができるという更なる効果を奏する。
【0078】
また、第1実施形態においては、検出ピン7が、二重コイル13と易電子放射物質としての金属酸化物17とにより構成される電子放射部と所定の間隔を有するようにステム1aに立設されているので、検出ピン7とステムピン5間の電圧を容易に測定することが可能となり、傍熱型電極C1の陰極降下電圧を容易に検出することができる。
【0079】
また、第1実施形態において、上記所定の間隔は、検出ピン7を傍熱型電極C1の負グロー領域に位置させる値に設定されていることが好ましい。これにより、検出ピン7が陽光柱領域に位置することはなく、傍熱型電極C1の陰極降下電圧を適切に検出することができる。
【0080】
また、上記所定の間隔は、上述した電子放射部と検出ピン7との最短距離で規定した場合、10mm以下に設定されていることが好ましい。これにより、傍熱型電極C1の陰極降下電圧をより一層適切に検出することができる。
【0081】
また、第1実施形態においては、交流電源55に結合されたステムピン5と検出ピン7との間の電圧(陰極降下電圧)を測定する交流電圧検出回路59を有している。このため、交流電圧検出回路59により、交流電源55に接続されるステムピン5と検出ピン7との間の電圧、すなわち、陰極降下電圧が検出されることとなり、傍熱型電極C1の陰極降下電圧を極めて容易に検出することができる。
【0082】
また、第1実施形態においては、交流電圧検出回路59にて検出された電圧に応じて、表示状態が変更される表示回路61を更に有している。このため、傍熱型電極C1の陰極降下電圧の状態、すなわち、傍熱型電極C1(ガス放電管DT1)の寿命を利用者等に確実に報知することができる。
【0083】
尚、上述した傍熱型電極C1を1対用い、電極間長さ300mm、検出ピン7を電極(電子放射部)から5mmとすると、安定動作中は交流電圧検出回路59にて検出される電圧が10V前後を維持する。この電圧が15Vを越えると立ち消え現象が現れることがあるので、切換スイッチ65の駆動用電圧の所定値を13Vに設定する。この所定値は封入ガスの種類、放電電流、駆動周波数により変化する。
【0084】
(第2実施形態)
次に、図6及び図7に基づいて、第2実施形態に係るガス放電管DT2を説明する。図6は、本第2実施形態に係るガス放電管を示す構成図であり、図7は、第2実施形態に係るガス放電管に含まれる傍熱型電極近傍の概略断面図である。
【0085】
ガス放電管DT2は、図6に示されるように、密封容器としての管状バルブ1と、ステムピン3,5と、検出ピン7と、傍熱型電極C2とを備えている。
【0086】
傍熱型電極C2は、図7にも示されるように、加熱用ヒータ11と、コイル部材としての二重コイル22と、電気導体としての板状部材23と、易電子放射物質(陰極物質)としての金属酸化物17とを有している。ここで、二重コイル22と易電子放射物質としての金属酸化物17とは、加熱用ヒータ11からの熱を受けて電子を放射する電子放射部を構成している。
【0087】
二重コイル22は、コイル状に巻き回されたコイルより構成される多重コイルであって、直径0.091mmのタングステン素線を径0.25mm、ピッチ0.146mmの一次コイルに形成し、さらにその一次コイルで径1.7mm、ピッチ0.6mmの二重コイルに形成したものである。二重コイル22の内側には、加熱用ヒータ11が挿入されて配設されている。なお、コイル部材としては、二重コイル22を用いる代わりに、三重コイル等を用いるようにしもよい。
【0088】
板状に形成された板状部材23は、導電性を有する剛体(金属導体)で、周期律表のIIIa〜VIIa、VIII、Ib族に属し、具体的にはタングステン、タンタル、モリブデン、レニウム、ニオブ、オスミウム、イリジウム、鉄、ニッケル、コバルト、チタン、ジルコニウム、マンガン、クロム、バナジウム、ロジウム、希土類金属等の高融点金属(融点1000℃以上)の単体金属もしくはこれらの合金からなる。本実施形態においては、幅1.5mm、厚さ25.4μmのタングステン製の板状部材を用いている。
【0089】
板状部材23は、二重コイル22の内側(加熱用ヒータ11と二重コイル22との間)に二重コイル22の長手方向にわたって、放電方向に略直交して設けられている。板状部材23は、二重コイル22と電気的に接続された状態にある。また、板状部材23は、二重コイル22の内側において複数のコイル部分に接触しており、二重コイル22と複数個の接点を形成している。
【0090】
加熱用ヒータ11の他端部11b、二重コイル22及び板状部材23は、リードロッド16を介して、ステムピン5に電気的に接続されている。なお、板状部材23を用いる代わりに、メッシュ状に形成されたメッシュ状部材(例えば、直径0.03mmのタングステン素線をメッシュ状に編んだもの)線状に形成された線状部材(たとえば、直径0.1mm程度のタングステン素線)を用いるようにしてもよい。また、板状部材23と二重コイル22との各接触点を溶接してもよい。
【0091】
金属酸化物17は、二重コイル22及び加熱用ヒータ11に保持され、板状部材23に接触して設けられている。金属酸化物17の表面及び二重コイル22の表面が傍熱型電極C2の外側に露出しており、金属酸化物17の表面部分に二重コイル22の表面部分が接触するようになっている。金属酸化物17は、第1実施形態と同様にして、設けられる。
【0092】
加熱用ヒータ11は、電気絶縁層12を介して、金属酸化物17と二重コイル22とに接触している。このため、予熱時に加熱用ヒータ11の熱を確実且つ効率よく金属酸化物17及び二重コイル22に伝えることができる。また、特公昭62−56628号公報に開示されたガス放電管用傍熱型陰極のように熱良導性の円筒を有するものに比して、熱陰極動作に必要となる熱量の損失を抑制することができる。このため、外部からの電極への熱量供給、強制過熱を必要とせず、自己加熱による熱量のみで電極が動作するよう設計できる。
【0093】
検出ピン7は、第1実施形態と同じく、傍熱型電極C1の負グロー領域に位置させることが好ましい。具体的には、二重コイル22と易電子放射物質としての金属酸化物17とで構成される電子放射部と検出ピン7との間隔を、検出ピン7と電子放射部との最短距離で規定した場合、10mm以下に設定することが好ましい。
【0094】
以上のように、本第2実施形態の傍熱型電極C2においては、金属酸化物17に接触するとともに二重コイル22に接触して板状部材23が設けられているので、板状部材23は、二重コイル22の裏面(放電面とは反対側の面)において当該二重コイル22の内側部分とともに等電位面を実効的に形成することになる。すなわち、板状部材23と二重コイル22の内側部分とは、複数の電気配線(導電路)で構成され、かつ単一の方向へ電流が流れるよう規制されることはない。したがって、板状部材23の表面の端々間の電気抵抗は著しく小さく、板状部材23の表面においてはほぼ等電位状態となっており、複数の放電点あるいは放電線からなる放電面の電位はほぼ等しくなる。言い換えると、板状部材23により、放電面に平行な方向に放電電流が流れ得る複数の電気回路が形成、つまり、放電電子(エミッション)の通り路(等電位回路)が複数形成されることとなる。
【0095】
したがって、傍熱型電極C2では、板状部材23と二重コイル22とにより、二重コイル22の裏面(放電面とは反対側の面)において等電位面が実効的に形成されているので、形成された等電位面の広い領域で熱電子放出が起きて放電面積が増加し、単位面積当りの電子放出量(電子放出密度)が大きくなって放電位置における負荷が軽減されることになり、劣化要因である金属酸化物17のスパッタ、還元金属との酸化による安定化(鉱物化)、つまり熱電子放出能の低下を抑制することができる。この結果、局所的な放電の発生を抑制でき、陰極の長寿命化を図ることができる。また、放電位置の移動も抑制されることになるため、長時間にわたって安定した放電を得ることができる。また、放電面積が増加することから、傍熱型電極C2の動作電圧及び発生熱量を低くすることもできる。また、陰極降下電圧も、従来の傍熱型電極に比して、極めて安定したものとなる。
【0096】
また、傍熱型電極C2にあっては、放電面積が増加したことに関連して、電流密度を若干上げて、負荷をやや増す、つまり、放電電流を増しても、従来のものに比べ損傷を小さくできる。これにより、従来のものとほぼ同一形状で、大放電電流の傍熱型電極を提供でき、パルス動作、大電流動作の実現が可能となる。
【0097】
また、電気導体として板状部材23を用いているので、熱電子放出能の低下及び放電位置の移動を抑制し得る構成の電気導体を低コスト且つより一層簡易に実現することができる。また、板状部材23(電気導体)が剛体となるために、加工が容易であると共に、金属酸化物17に密接して設けることができる。更に、板状部材23と金属酸化物17とが接触する箇所を容易に多く設けることができる。
【0098】
また、傍熱型電極C2においては、加熱用ヒータ11を核として、その外側に金属酸化物17を保持する二重コイル22を取り巻くように配置し、二重コイル22の内側において金属酸化物17に接触するように板状部材23を配設することにより、二重コイル22の振動抑制効果が働き、金属酸化物17の落下を防ぐことができる。また、二重コイル22のピッチ間に多量の金属酸化物17が保持されることになり、放電中の経時劣化に伴う消失金属酸化物分を補充する効果がある。
【0099】
また、第2実施形態においては、検出ピン7が、二重コイル22と易電子放射物質としての金属酸化物17とにより構成される電子放射部と所定の間隔を有するようにステム1aに立設されているので、検出ピン7とステムピン5間の電圧を容易に測定することが可能となり、傍熱型電極C2の陰極降下電圧を容易に検出することができる。
【0100】
また、第2実施形態において、上記所定の間隔は、検出ピン7を傍熱型電極C2の負グロー領域に位置させる値に設定されていることが好ましい。これにより、検出ピン7が陽光柱領域に位置することはなく、傍熱型電極C2の陰極降下電圧を適切に検出することができる。
【0101】
また、上記所定の間隔は、上述した電子放射部と検出ピン7との最短距離で規定した場合、10mm以下に設定されていることが好ましい。これにより、傍熱型電極C2の陰極降下電圧をより一層適切に検出することができる。
【0102】
(第3実施形態)
次に、図8及び図9に基づいて、第3実施形態に係るガス放電管DT3を説明する。図8は、本第3実施形態に係るガス放電管を示す構成図であり、図9は、第3実施形態に係るガス放電管に含まれる傍熱型電極近傍の概略断面図である。
【0103】
ガス放電管DT3は、図8に示されるように、密封容器としての管状バルブ1と、ステムピン3,5と、検出ピン7と、傍熱型電極C3とを備えている。
【0104】
傍熱型電極C3は、図9にも示されるように、加熱用ヒータ11と、多重コイル部材としての二重コイル13と、易電子放射物質(陰極物質)としての金属酸化物17とを有している。加熱用ヒータ11の他端部11b及び二重コイル13は、ステムピン5に電気的に接続されている。ここで、二重コイル13と易電子放射物質としての金属酸化物17とは、加熱用ヒータ11からの熱を受けて電子を放射する電子放射部を構成している。
【0105】
金属酸化物17は、二重コイル13及び加熱用ヒータ11に保持されている。金属酸化物17の表面及び二重コイル13の表面が傍熱型電極C3の外側に露出しており、金属酸化物17の表面部分に二重コイル13の表面部分が接触するようになっている。金属酸化物17は、第1実施形態と同様にして、設けられる。
【0106】
加熱用ヒータ11は、電気絶縁層12を介して、金属酸化物17と二重コイル13に接触している。このため、予熱時に加熱用ヒータ11の熱を確実且つ効率よく金属酸化物17及び二重コイル13に伝えることができる。また、特公昭62−56628号公報に開示されたガス放電管用傍熱型陰極のように熱良導性の円筒を有するものに比して、熱陰極動作に必要となる熱量の損失を抑制することができる。このため、外部からの電極への熱量供給、強制過熱を必要とせず、自己加熱による熱量のみで電極が動作するよう設計できる。
【0107】
ところで、多重コイル部材としてマンドレルを有する2重コイルを用い、電源として交流電源を用いた場合には、マンドレルの表面上での熱量の均衡によって放電が保たれる。マンドレルの表面上での放電により電極表面上の発生熱量は放電電流(Id)と比例関係にある。また、マンドレルの断面積(Sm)が大きいと、表面積も増えることになるため熱損失量は増える。以上のことから、電極表面温度(Tc)は、Tc∝Id/Smとの関係を有する。表面電極温度が許容範囲より小さすぎると、陰極動作温度不足となる。このため、放電を持続するように、局所的に温度を上昇させて熱電子を供給しようとして、放電が集中する。この結果、局所過熱による易電子放射物質のスパッタ現象を助長し、電極の劣化を加速させる。一方、表面電極温度が許容範囲より大きすぎると、電極表面全体が過熱状態となり、易電子放射物質の蒸発を助長し、電極の劣化を加速させる。また、陰極降下電圧も、従来の傍熱型電極に比して、極めて安定したものとなる。
【0108】
以上のように、本第3実施形態の傍熱型電極C3では、二重コイル13がマンドレル13aを有しているので、二重コイル13の剛性が高くなり、成形を容易に行うことができ、この結果、傍熱型電極C3の製造が容易となる。また、加工時及び使用時の二重コイル13の変形を抑制することができる。
【0109】
また、傍熱型電極C3では、易電子放射物質である金属酸化物17が二重コイル13のコイル部分の間隔である、ピッチ(心距)間に挟み込まれて保持されることになる。これにより、各ピッチ間の距離は隙間程度に小さいため振動による金属酸化物17の脱落を抑制することができる。また、隙間構造のピッチが多数存在するため、多量の金属酸化物17を保持でき、放電中の経時劣化に伴う消失金属酸化物分を補充する効果がある。
【0110】
また、二重コイル13に含まれるタングステン素線とマンドレル13aとの間に生じる空間にも金属酸化物17が保持されることになる。このタングステン素線とマンドレル13aとの間に生じる空間に金属酸化物17は、電極動作中の金属酸化物17のスパッタ等により消失する金属酸化物分を有効に補充する機能を有する。タングステン素線とマンドレル13aとの間に生じる空間に金属酸化物17を有効に保持させるためには、上述した一次コイルにおけるコイル部分の間隔が1.0mm以下であることが好ましく、0.01mm〜0.3mmの範囲が更に好ましい。
【0111】
また、第3実施形態においては、検出ピン7が、二重コイル13と易電子放射物質としての金属酸化物17とにより構成される電子放射部と所定の間隔を有するようにステム1aに立設されているので、検出ピン7とステムピン5間の電圧を容易に測定することが可能となり、傍熱型電極C3の陰極降下電圧を容易に検出することができる。
【0112】
また、第3実施形態において、上記所定の間隔は、第1及び第2実施形態と同じく、検出ピン7を傍熱型電極C3の負グロー領域に位置させる値に設定されていることが好ましい。これにより、検出ピン7が陽光柱領域に位置することはなく、傍熱型電極C3の陰極降下電圧を適切に検出することができる。
【0113】
また、上記所定の間隔は、第1及び第2実施形態と同じく、上述した電子放射部と検出ピン7との最短距離で規定した場合、10mm以下に設定されていることが好ましい。これにより、傍熱型電極C3の陰極降下電圧をより一層適切に検出することができる。
【0114】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。電気導体として高融点金属を用いるようにしているが、導電性を有し融点が陰極の作動温度よりも高い剛体であれば、高融点金属の代わりに厚さの薄い多孔質金属、炭素繊維等を用いるようにしてもよい。また、金属酸化物17の耐スパッタ性向上、放電性能向上のために、タンタル、チタン、ニオブ等の窒化物あるいは炭化物を金属酸化物17の表面、あるいは二重コイル13,22、あるいは線状部材15、板状部材23に付着させるようにしてもよい。
【0115】
また、第1実施形態においては、線状部材15の表面が露出するようにしているが、必ずしもこれらを露出させる必要はなく、金属酸化物17に線状部材15が接触しているのであれば、線状部材15の表面が金属酸化物17に覆われていてもよい。
【0116】
また、第3実施形態においては、二重コイル13の表面部分が露出するようにしているが、必ずしもこれを露出させる必要はなく、金属酸化物17に二重コイル13の表面部分が接触しているのであれば、二重コイル13の表面部分が金属酸化物17に覆われていてもよい。なお、二重コイル13の表面部分を露出させることにより、放電性をより向上させることができる。
【0117】
また、図4に示された点灯装置50に対して、ガス放電管DT1の代わりに、ガス放電管DT2,DT3を接続するようにしてもよい。また、図4に示された点灯装置50において、交流電圧検出回路59にて測定された電圧(陰極降下電圧)が上記所定値以上である場合、ガス放電管DT1を消灯するように、交流電源55からの電力供給を遮断するようにしてもよい。また、表示回路61の電源は、交流電源55とは別に独立して設けるようにしてもよい。
【0118】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したとおり、本発明によれば、傍熱型電極の陰極降下電圧を容易に検出することが可能なガス放電管及びガス放電管装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るガス放電管を示す構成図である。
【図2】第1実施形態に係るガス放電管に含まれる傍熱型電極近傍の概略断面図である。
【図3】傍熱型電極からの距離とランプ電圧との関係を示す線図である。
【図4】ガス放電管の点灯装置を示す構成図である。
【図5】図4に示された点灯装置に含まれる電圧検出装置を示す構成図である。
【図6】第2実施形態に係るガス放電管を示す構成図である。
【図7】第2実施形態に係るガス放電管に含まれる傍熱型電極近傍の概略断面図である。
【図8】第3実施形態に係るガス放電管を示す構成図である。
【図9】第3実施形態に係るガス放電管に含まれる傍熱型電極近傍の概略断面図である。
【図10】ガス放電管における、ヒータ印加電圧と陰極降下電圧(ボックス電位)との関係を示す線図である。
【図11】ガス放電管における、ヒータ印加電圧と放電電流との関係を示す線図である。
【符号の説明】
1…管状バルブ、1a…ステム、3,5…ステムピン、7…検出ピン、11…加熱用ヒータ、13…二重コイル、13a…マンドレル、15…線状部材、17…金属酸化物、22…二重コイル、23…板状部材、50…点灯装置、53…始動装置、54…安定器、55…交流電源、57…電圧検出装置、59…交流電圧検出回路、61…表示回路、C1〜C3…傍熱型電極、DT1〜DT3…ガス放電管。
Claims (12)
- 密封容器内にガスを封入し、前記密封容器の端部を構成するステムに立設された一対のステムピンに支持された傍熱型電極を前記密封容器内に気密に封着したガス放電管であって、
前記傍熱型電極は、
表面に電気絶縁層が形成されると共に、前記一対のステムピンに電気的に接続された加熱用ヒータと、
前記加熱用ヒータからの熱を受けて電子を放出する電子放射部と、
前記電子放射部の最表面側部分に設けられ、所定長さを有し、前記一対のステムピンのうち一方のステムピンに電気的に接続された電気導体と、を有し、
前記電子放射部は、易電子放射物質としての金属酸化物と、前記金属酸化物を保持するコイル部材と、を含み、
前記加熱用ヒータは、前記コイル部材の内側に配設され、
前記金属酸化物は、前記電気絶縁層を介して前記加熱用ヒータに接触しており、
前記電気導体は、前記金属酸化物に接触するとともに、前記コイル部材の長手方向にそって前記コイル部材の複数のコイル部分に接触して設けられ、
導電性の検出ピンが、前記電子放射部と所定の間隔を有するように前記ステムに立設されていることを特徴とするガス放電管。 - 密封容器内にガスを封入し、前記密封容器の端部を構成するステムに立設された一対のステムピンに支持された傍熱型電極を前記密封容器内に気密に封着したガス放電管であって、
前記傍熱型電極は、
コイル状に巻き回されたコイル部材と、
前記コイル部材の内側に配設され、その表面に電気絶縁層が形成されると共に、前記一対のステムピンに電気的に接続された加熱用ヒータと、
前記コイル部材に保持される易電子放射物質としての金属酸化物と、
前記コイル部材の内側に前記金属酸化物と接触すると共に前記コイル部材の複数のコイル部分と接触して設けられ、所定長さを有し、前記一対のステムピンのうち一方のステムピンに電気的に接続された電気導体と、を有し、
前記金属酸化物は、前記電気絶縁層を介して前記加熱用ヒータに接触しており、
導電性の検出ピンが、前記コイル部材と前記金属酸化物とで構成される電子放射部と所定の間隔を有するように前記ステムに立設されていることを特徴とするガス放電管。 - 前記コイル部材は、前記電気絶縁層を介して前記加熱用ヒータに接触していることを特徴とする請求項2に記載のガス放電管。
- 前記コイル部材は、マンドレルを有するコイルをコイル状に巻き回して構成した多重コイルであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス放電管。
- 前記電気導体は、メッシュ状、線状あるいは板状に形成された高融点金属であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス放電管。
- 密封容器内にガスを封入し、前記密封容器の端部を構成するステムに立設された一対のステムピンに支持された傍熱型電極を前記密封容器内に気密に封着したガス放電管であって、
前記傍熱型電極は、
マンドレルを有するコイルをコイル状に巻き回して構成し、前記一対のステムピンのうち一方のステムピンに電気的に接続された多重コイル部材と、
前記多重コイル部材の内側に配設され、その表面に電気絶縁層が形成された加熱用ヒータと、
前記多重コイル部材に接触するように当該多重コイル部材に保持される易電子放射物質としての金属酸化物と、を有し、
前記金属酸化物は、前記電気絶縁層を介して前記加熱用ヒータに接触しており、
導電性の検出ピンが、前記多重コイル部材と前記金属酸化物とで構成される電子放射部と所定の間隔を有するように前記ステムに立設されていることを特徴とするガス放電管。 - 前記多重コイル部材は、前記電気絶縁層を介して前記加熱用ヒータに接触していることを特徴とする請求項6に記載のガス放電管。
- 前記金属酸化物は、バリウム、ストロンチウム、カルシウムの内のいずれか単体の酸化物、又はこれらの酸化物の混合物あるいは希土類金属の酸化物を含んでいることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項6に記載のガス放電管。
- 前記所定の間隔は、前記検出ピンを前記傍熱型電極の負グロー領域に位置させる値に設定されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項6に記載のガス放電管。
- 前記所定の間隔は、前記電子放射部と前記検出ピンとの最短距離で規定した場合、10mm以下に設定されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項6に記載のガス放電管。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載のガス放電管と、
前記一対のステムピンのうち電源に接続されているステムピンと前記検出ピンとの間の電圧を検出する電圧検出手段を有することを特徴とするガス放電管装置。 - 前記電圧検出手段にて検出された電圧に応じて、表示状態が変更される表示手段を更に有することを特徴とする請求項11に記載のガス放電管装置。
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