JP4225642B2 - 構造物用の沓装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造物の一端を、他の構造物、特に浮体橋の橋桁又は橋脚等の浮体式の構造物に回動自在に連結するための構造物用の沓装置及びこれを具備した構造体に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
陸からそれほど離れていない島又は浮島を含む人工島(以下、人工島等という)と陸との間の海面に、比較的海面からの高さが低い浮体橋(道路橋)を浮かばせ、この浮体橋を介して人工島等と陸とを自動車道等により結び、船舶の通過時には、浮体橋をタグボートなどにより移動させて、船舶の通過を許容するようにする橋構造体が提案されている。
【0003】
この場合、人工島等及び陸と浮体橋とを夫々結ぶために夫々の間に徐々に傾斜した傾斜道路橋が設置されるが、この道路橋の橋桁は、潮の流れ、潮の干満による浮体橋の横揺れ、上下動に追従でき、しかも、タグボートなどによる浮体橋の移動をも許容できるように、浮体橋と連結解除自在になっている必要がある。
【0004】
従来の高架道路又は道路橋におけるその橋桁は、温度変化、荷重の変動等によるそれ自体の伸縮、撓み及び地震等の振動を吸収するために、単に滑り支承又は転がり支承等を介して橋脚上に載置、設置されているが、このような滑り支承又は転がり支承のみでは、上記のような人工島等及び陸と浮体橋とを夫々連結することが困難であって、これに対する連結装置としては、いまだ満足し得るものが提案されていない。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、構造物の一端を、他の構造物、特に浮体橋の橋桁又は橋脚等の浮体式の構造物に回動自在に連結するための沓装置及びこのような沓装置を用いた構造体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の態様の構造物用の沓装置は、基台又は構造物に固着されると共に一端開放の凹所を有した一方の沓と、構造物又は基台に固着されると共に、突出した円柱部を具備した他方の沓と、この他方の沓に対して一方の沓を回動自在とする軸受装置とを具備しており、この軸受装置が、凹球面状の内面を有すると共に一方の沓の凹所に配された軸受本体と、この軸受本体の凹球面状の内面に摺動自在に接触した凸球面状の外面を有すると共に、他方の沓の円柱部の環状表面に摺動自在に接触する環状内面を有した球面軸受とを具備しており、他方の沓の円柱部は、球面軸受の環状内面によって規定される円孔に挿抜自在に配されている。
【0007】
第一の態様の沓装置では、軸受装置が球面軸受を具備し、他方の沓の円柱部が球面軸受の円孔に挿抜自在に配されているために、基台に対する構造物の相対的な大きな横揺れ、上下動を含む回動を許容でき、しかも、必要により円柱部を円孔から引き抜いて両沓の連結を解除でき、而して、基台と構造物との連結を解除できる。
【0008】
本発明の第二の態様の沓装置では、第一の態様の沓装置において、球面軸受の環状内面は、当該環状内面によって規定される円孔への他方の沓の円柱部の挿入方向から見て、徐々に縮径する第一の略截頭円錐面と、この第一の略截頭円錐面に連接しており、当該第一の略截頭円錐面よりも更に徐々に縮径する第二の略截頭円錐面とを具備しており、他方の沓の円柱部の環状表面は、当該円柱部の先端から見て、徐々に拡径する第三の略截頭円錐面と、この第三の略截頭円錐面に連接していると共に、第二の略截頭円錐面と相補的な形状となるように、第三の略截頭円錐面よりも更に徐々に拡径した第四の略截頭円錐面とを具備している。
【0009】
第二の態様の沓装置によれば、他方の沓の円柱部が先端先細り状となっており、球面軸受の円孔が先端広口となっているために、他方の沓の円柱部の円孔からの抜き取り後の再挿入に際して、他方の円柱部と球面軸受の円孔との間に若干の位置ずれが生じていたとしても、これを修正できて困難なく所望に他方の沓の円柱部を球面軸受の円孔に挿入でき、しかも、他方の沓の円柱部の環状表面は、球面軸受の環状内面の第二の略截頭円錐面と相補的な形状となる第四の略截頭円錐面を具備しているために、挿入後においては、他方の沓の円柱部の環状表面と球面軸受の環状内面とを面接触させることができ、而して、他方の沓の円柱部を面的に回転自在に連結できる。
【0010】
本発明の第三の態様の沓装置では、第二の態様の沓装置において、他方の沓の円柱部は、少なくとも第四の略截頭円錐面の部位で、ステンレス鋼により肉盛りされて形成されている。
【0011】
第三の態様の沓装置によれば、他方の沓の円柱部において、球面軸受の環状内面と摺動自在に接触する略截頭円錐面がステンレス鋼により肉盛りされて形成されているために、当該略截頭円錐面の腐食を低減でき、長期に亘って好ましい摺動接触を確保できる。
【0012】
本発明の第四の態様の沓装置では、第二又は第三の態様の沓装置において、一方の沓は、凹所の底面に弾性手段を具備しており、この弾性手段を介して軸受本体は、一方の沓に対してその軸心方向に可動となるように凹所で一方の沓に着座している。
【0013】
第四の態様の沓装置によれば、軸受本体が一方の沓に対して軸心方向に可動となるように弾性手段を介して一方の沓に着座しているために、他方の沓の円柱部の略截頭円錐面と球面軸受の略截頭円錐面との間で相互の噛み付きが生じようとしても、軸受本体が軸心方向に逃げるために、他方の沓の円柱部が球面軸受の円孔から抜けなくなるような過度な噛み付きを防止できる。
【0014】
本発明の第五の態様の沓装置では、第2から第四の態様のいずれかの沓装置において、軸受装置が、軸受本体の外面と凹所の側面を規定する一方の沓の内面との間に介在された滑り軸受を更に具備している。
【0015】
第五の態様の沓装置によれば、軸受本体と一方の沓との間に滑り軸受が介在されているために、軸受本体の軸心方向の移動を滑らかに抵抗なしに行うことができ、而して、他方の沓の円柱部の球面軸受の円孔への過度な噛み付きを更に効果的に防止できる。
【0016】
本発明の第六の態様の沓装置では、第五の態様の沓装置において、軸受本体の軸心方向の更なる滑らか移動を確保するために、軸受本体の外面に対面する滑り軸受の表面には、固体潤滑材が埋設された複数の凹所が形成されており、この固体潤滑材の露出面は、軸受本体の外面に摺動自在に接触している。なお、このような凹所を滑り軸受の表面に代えて、この表面に対面する軸受本体の外面に設けてもよい。
【0017】
本発明の第七の態様の沓装置では、第一から第六の態様のいずれかの沓装置において、球面軸受の凸球面状の外面には、固体潤滑材が埋設された複数の凹所が形成されており、この固体潤滑材の露出面は、軸受本体の凹球面状の内面に摺動自在に接触している。
【0018】
本発明の第八の態様の沓装置では、第一から第七の態様のいずれかの沓装置において、球面軸受の環状内面には、固体潤滑材が埋設された複数の凹所が形成されており、この固体潤滑材の露出面は、他方の沓の円柱部の環状表面に摺動自在に接触している。
【0019】
第七の態様及び第八の態様の沓装置においては、他方の沓の一方の沓に対する相対的回動に際して各摺動面に固体潤滑材を流出させて、各摺動面に固体潤滑材の薄層を形成することができるので、各摺動面を固体潤滑材の薄層により常に低摩擦状態に維持できる結果、構造物の大きな相対的回動を長期に亘って滑らかに許容できる。固体潤滑材としては、黒鉛を主体とし、これにポリテトラフルオロエチレン等を混入したものが好ましいが、本発明はこれに必ずしも限定されない。
【0020】
両沓には、通常、アンカーボルトが植設され、このアンカーボルトを介して構造物及び基台が固着される。本発明の沓装置においては、好ましくは、他方の沓は、その上面で構造物に固着される上沓であり、この構造物は、人工島等又は陸側の構造物であり、一方の沓が、その下面で基台に固着される下沓であり、ここで、基台は、上記の構造物に隣接する浮体式の構造物であるが、基台としては、これに限定されず、固定式の構造物であってもよく、要は、両沓は、隣接する構造物同士を連結するように配されればよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に何等限定されないのである。
【0022】
図1から図13において、本例の沓装置1は、下面2でシム3及び4を介して基台としての後述する浮体橋81の橋脚80(図14及び図15参照)にアンカーボルト(図示せず)又は溶接等により固着されると共に上端5開放の凹所6を有した一方の沓としての下沓7と、上面8で浮体橋81の橋桁84(図14及び図15参照)に隣接した構造物としての橋桁9にシム10及び11を介してアンカーボルト12又は溶接等により固着されると共に、下方に突出して垂下した円柱部13を具備した他方の沓としての上沓14と、下沓7に対して上沓14を回動自在とするように、凹所6に配された軸受装置15と、凹所6からの軸受装置15の抜け出しを防止するように、中央に貫通孔16を有して下沓7の上端面にボルト又は溶接等により固着された円環状の押え板17とを具備している。
【0023】
下沓7は、特に図3及び図4に示すように、円筒状の側壁部21と、側壁部21に一体的に形成された矩形状の底壁部22と、側壁部21の截頭円錐面状の外周面23に固着された複数の吊り下げ金具24と、凹所6の底面25に配された弾性手段26とを具備している。
【0024】
側壁部21の円筒状の内周面27及び底壁部22の上面28により凹所6が規定されており、底壁部22には、凹所6に侵入した雨水を排出する貫通孔29が複数個形成されている。
【0025】
弾性手段26は、凹所6の底面25において、底壁部22の上面28に複数個等角度間隔で形成された円形穴30に、一端部が上方に突出して嵌合された円柱状のウレタン製のゴム部材31を具備している。なお、弾性手段26は、このように離散的に配されたゴム部材31から構成する代わりに、底壁部22の上面28に側壁部21の内周面27と同心に少なくとも一個の環状溝を形成して、この環状溝に嵌合された円環状(リング状)のゴム部材から構成してもよい。また、ゴム部材31としては、ウレタン製に限らず、その他の天然ゴム、合成ゴムでもよく、要は、耐腐食、耐荷重性に優れて、耐久性のあるものであればよい。加えて、弾性手段26としては、ゴム部材31に代えて又はゴム部材31と共にコイルばね、板ばね、皿ばね等であってもよい。
【0026】
下沓7は、吊り下げ金具24を利用してクレーン等により吊り下げられて橋脚80上に設置される。
【0027】
上沓14は、特に図5及び図6に示すように、中央の上面8に位置決め用の円柱状の突起35を一体的に有した矩形状の取付基部36と、取付基部36に一体的に垂下して形成された上記の円柱部13と、取付基部36の周面37に固着された複数の吊り下げ金具38とを具備しており、取付基部36の四隅には、アンカーボルト12を挿通させる貫通孔39が形成されている。
【0028】
上沓14の円柱部13の環状表面45は、当該円柱部13の先端46から見て、徐々に拡径する略截頭円錐面47と、略截頭円錐面47に連接していると共に、後述の球面軸受48の略截頭円錐面49と相補的な形状となるように、略截頭円錐面47よりも更に徐々に拡径した略截頭円錐面50とを具備しており、上沓14の円柱部13は、略截頭円錐面50の部位で、ステンレス鋼により肉盛りされて形成されている。上沓14は、円柱部13の環状表面45における略截頭円錐面50の部位で、球面軸受48の略截頭円錐面49に摺動自在に接触するようになっている。
【0029】
上沓14は、下沓7と同様にして、吊り下げ金具38を利用してクレーン等により吊り下げられて軸受装置15上に設置される。
【0030】
軸受装置15は、凹球面状の内面55を有すると共に下沓7の凹所6に配された軸受本体56と、軸受本体56の凹球面状の内面55に摺動自在に接触した凸球面状の外面57を有すると共に、上沓14の円柱部13の環状表面45に摺動自在に接触する環状内面58を有した環状の球面軸受48と、軸受本体56の円筒状の外面59と凹所6の側面を規定する下沓7の内面、すなわち側壁部21の円筒状の内周面27との間に介在された滑り軸受60とを具備している。
【0031】
略円筒状の軸受本体56は、特に図7及び図8に示すように、ボルト61に互いに連結されて一体化された二個の半割体62及び63からなり、弾性手段26を介して下沓7に対して軸心方向Aに可動となるように凹所6で下沓7の上面28に着座されている。
【0032】
軸受本体56の中央円孔64に配されて、軸受本体56に包持された球面軸受48は、特に図9、図10及び図11に示すように、その環状内面58が、当該環状内面58によって規定される円孔65への上沓14の円柱部13の挿入方向から見て、徐々に縮径する略截頭円錐面66と、略截頭円錐面66に連接しており、当該略截頭円錐面66よりも更に徐々に縮径する略截頭円錐面49と、略截頭円錐面49に連接しており、略截頭円錐面66に対して逆に徐々に拡径する略截頭円錐面67とを具備して形成されている。
【0033】
球面軸受48の外面57並びに環状内面58、すなわち略截頭円錐面49、66及び67の夫々には、固体潤滑材68が埋設された複数の凹所69が形成されており、外面57の固体潤滑材68の露出面は、軸受本体56の内面55に摺動自在に接触しており、略截頭円錐面49の固体潤滑材68の露出面は、上沓14の円柱部13の環状表面45における略截頭円錐面50に摺動自在に接触している。固体潤滑材68が埋設された凹所69は、一つの好ましい例では、外面57並びに略截頭円錐面49、66及び67の夫々の全面に均等に且つランダムに分散、分布して形成されている。
【0034】
球面軸受48は、軸受本体56の内面55に対して相対的に回転自在に軸受本体56の中央円孔64に配されており、上沓14の円柱部13は、球面軸受48の円孔65に挿抜自在に配されている。なお、固体潤滑材68が埋設された複数の凹所69を球面軸受48の外面57並びに略截頭円錐面49、66及び67の夫々に形成する代わりに、これと同等の固体潤滑材が埋設された複数の凹所を、軸受本体56の内面55及び円柱部13の環状表面45、特に略截頭円錐面50に夫々形成してもよい。
【0035】
特に図12及び図13に示す円筒部材からなる滑り軸受60は、その円筒状の外周面71で下沓7の側壁部21の内周面27に嵌着されており、その円筒状の内周面72で軸受本体56の外面59に摺動自在に接触している。軸受本体56の外面59に対面する滑り軸受60の表面、本例では、円筒状の内周面72には、固体潤滑材73が埋設された複数の凹所74が形成されており、固体潤滑材73の露出面は、軸受本体56の外面59に摺動自在に接触している。固体潤滑材73が埋設された凹所74は、凹所69と同様に、一つの好ましい例では、内面72の全面に均等に且つランダムに分散、分布して形成されている。
【0036】
軸受本体56は、内周面72に対して軸心方向Aに可動となるように、滑り軸受60に支持されている。なお、滑り軸受60の内周面72に固体潤滑材73が埋設された複数の凹所74を形成する代わりに、軸受本体の外面59に同等の固体潤滑材が埋設された複数の凹所を形成してもよい。また、滑り軸受60を設けない場合には、軸受本体56の外面59と下沓7の内周面27とを摺動自在に直接当接させてもよく、この場合、外面59と内周面27とのいずれか一方に、固体潤滑材73が埋設された凹所74と同様の凹所を形成してもよい。
【0037】
橋桁9と浮体橋81の橋脚80との間への設置に際しては、上沓14は、仮固定金(図示せず)を介して、回転、揺動しないように下沓7に仮止めされ、設置後は、仮固定金具は取り除かれるようになっている。
【0038】
押え板17は、下沓7の側壁部21の上面76にボルト等により固着されて、凹所6からの軸受装置15の軸受本体56及び滑り軸受60の抜け出しを防止しており、上沓14の円柱部13は、押え板17の貫通孔16を通って球面軸受48の円孔65に配されている。
【0039】
以上の沓装置1は、図14及び図15に示すような、浮体橋81と陸82及び人工島83とを夫々結ぶ橋桁9と、橋桁9に隣接した浮体橋81の橋脚80との間に介在されて、構造体としての橋構造体を構成する。
【0040】
浮体式の構造物としての浮体橋81は、橋桁84と、橋桁84を支える橋脚80と、橋桁84を橋脚80を介して海面85上に支持するポンツーン(浮き)86とを具備しており、橋桁84は、陸82側では、当該陸82側の橋桁9の一端部87に、解除自在なヒンジ機構88(図16参照)を介して水平面内で回動自在に連結されており、人工島83側では、当該人工島83側の橋桁9の一端部89に、同じく解除自在なヒンジ機構90を介して水平面内で回動自在に連結されている一方、陸82側及び人工島83側の夫々で、海中に固定されて、夫々一対の伸縮自在な支持機構91及び92により移動しないように挟持されて保持されている。
【0041】
船舶の通過に際しては、ヒンジ機構88及び90のいずれかにおけるヒンジ連結が解除され、更に、支持機構91及び92の片側が油圧ジャッキ等により下降されて、浮体橋81は、図15に示すように、タグボート93により水平面内で回動されるようになっている。
【0042】
浮体橋81の回動に際し、陸82側及び人工島83側の夫々の橋桁9は、浮体橋81の回動を許容するように、夫々のその一端部87及び89が油圧ジャッキ等により、橋脚5に隣接した橋脚94から若干上方、すなわちB方向に持ち上げられるようになっている。
【0043】
各橋桁9は、一端部87及び89がA方向に持ち上げ可能となると共に、橋脚5上でその他端部95及び96が橋軸方向に移動可能となるように、各橋桁9を直動及び揺動自在に案内支持する他の沓装置と、橋桁9の他端部95及び96と各橋脚5との間に介在された図示しないロラー又はコロにより支持されるようになっており、また、同じく図示しない適宜なストッパ機構により橋軸方向の一定以上のその移動が阻止されるようになっている。
【0044】
橋桁9の一端部87及び89と各橋脚80との間には、沓装置1が配されていると共に、橋桁9の他端部95及び96と同様に、ロラー又はコロが配されており、橋桁9の一端部87及び89は、このロラー又はコロを介して各橋脚80に橋軸方向に移動可能となるように支持されていると共に、各沓装置1を介して各橋脚80に回動自在に連結されている。
【0045】
沓装置1と、沓装置1が上面に載置、固定された橋脚80と、沓装置1により端部87(又は89)が回動自在に連結された橋桁9とを具備した橋構造体97(又は98)において、沓装置1は、橋桁9の一端部87(又は89)に対する橋脚80の水平面内での相対的回動を、主に上沓14の円柱部13での略截頭円錐面50の球面軸受48の略截頭円錐面49に対する相対的回動により許容し、橋桁9の一端部87(又は89)に対する橋脚80の垂直面内での相対的回動を、球面軸受48の外面57の軸受本体56の内面55に対する相対的回動により許容するようになっている。
【0046】
橋桁9が油圧ジャッキ等によりB方向に持ち上げられる際には、上沓14の円柱部13は、図16に示すように、球面軸受48の円孔65から抜き出され、而して、沓装置1は、橋桁9の一端部87(又は89)と橋脚80との連結を解除し、浮体橋81が図15に示すように回動できるようにする。橋桁9が元に復帰される際には、円柱部13の略截頭円錐面47と球面軸受48の略截頭円錐面66との摺接に案内されて、上沓14の円柱部13は球面軸受48の円孔65に滑らかに挿入される。
【0047】
沓装置1では、軸受装置15が球面軸受48を具備し、上沓14の円柱部13が球面軸受48の円孔65に挿抜自在に配されているために、橋桁9の相対的な大きな回動を許容でき、しかも、必要により円柱部13を円孔65から引き抜いて下沓7と上沓14との連結を解除でき、また、上沓14の円柱部13が先端先細り状となっており、球面軸受48の円孔65が先端広口となっているために、上沓14の円柱部13の円孔65への再挿入に際して、上沓14の円柱部13と球面軸受48の円孔65との間に若干の位置ずれが生じてたとしても、これを修正できて困難なく所望に上沓14の円柱部13を球面軸受48の円孔65に挿入でき、しかも、上沓14の円柱部13の環状表面45は、球面軸受48の略截頭円錐面49と相補的な形状となる略截頭円錐面50を具備しているために、挿入後においては、上沓14の円柱部13の環状表面45と球面軸受48の環状内面58とを面接触させることができ、而して、上沓14の円柱部13を面的に回転自在に連結できる。
【0048】
また、沓装置1では、上沓14の円柱部13において、球面軸受48の環状内面58と摺動自在に接触する略截頭円錐面50がステンレス鋼により肉盛りされて形成されているために、腐食を低減でき、長期に亘って好ましい摺動接触を確保でき、更に、軸受本体56が下沓7に対して軸心方向Aに可動となるように弾性手段26を介して下沓7に着座しているために、上沓14の円柱部13の略截頭円錐面50と球面軸受48の略截頭円錐面49との間で相互の噛み付きが生じようとしても、軸受本体56が軸心方向Aに逃げるために、上沓14の円柱部13が球面軸受48の円孔65から抜けなくなるような過度な噛み付きを防止できる上に、軸受本体56と下沓7との間に滑り軸受60が介在されているために、軸受本体56の軸心方向Aの移動を滑らかに抵抗なしに行うことができ、而して、円柱部13の円孔65への過度な噛み付きを更に効果的に防止できる。
【0049】
加えて、沓装置1では、上沓14の下沓7に対する回動、揺動に際して各摺動面に固体潤滑材68又は73を流出させて、各摺動面に固体潤滑材の薄層を形成することができるので、各摺動面を固体潤滑材の薄層により常に低摩擦状態に維持できる結果、橋桁9の大きな回動を長期に亘って滑らかに許容できる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、構造物の一端を、他の構造物、特に浮体式の構造物に回動自在に連結するための沓装置及びこのような沓装置を用いた構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施の形態の一例を示す橋軸方向の一部断面説明図である。
【図2】図1に示す例の橋軸方向と直交する方向(橋軸横断方向)の一部断面説明図である。
【図3】図1に示す例の下沓の図4に示すIII−III線断面図である。
【図4】図1に示す例の下沓の平面図である。
【図5】図1に示す例の上沓の平面図である。
【図6】図1に示す例の上沓の側面図である。
【図7】図1に示す例の軸受本体の一部切欠平面図である。
【図8】図1に示す例の軸受本体の一部切欠側面図である。
【図9】図1に示す例の球面軸受の平面図である。
【図10】図1に示す例の球面軸受の側面図である。
【図11】図1に示す例の球面軸受の図9に示すXI−XI線断面図である。
【図12】図1に示す例の滑り軸受の平面図である。
【図13】図1に示す例の滑り軸受の図12に示すXIII−XIII線断面図である。
【図14】図1に示す例が用いられる橋桁及び浮体橋等の側面説明図である。
【図15】図7に示す橋桁及び浮体橋等の作用の平面説明図である。
【図16】図1に示す例の動作説明図である。
【符号の説明】
1 沓装置
6 凹所
7 下沓
9 橋桁
13 円柱部
14 上沓
15 軸受装置
45 環状表面
48 球面軸受
55 内面
56 軸受本体
57 外面
58 環状内面
65 円孔
80 橋脚

Claims (8)

  1. 基台又は構造物に固着されると共に一端開放の凹所を有した一方の沓と、構造物又は基台に固着されると共に、突出した円柱部を具備した他方の沓と、この他方の沓に対して一方の沓を回動自在とする軸受装置とを具備しており、この軸受装置が、凹球面状の内面を有すると共に一方の沓の凹所に配された軸受本体と、この軸受本体の凹球面状の内面に摺動自在に接触した凸球面状の外面を有すると共に、他方の沓の円柱部の環状表面に摺動自在に接触する環状内面を有した球面軸受とを具備しており、他方の沓の円柱部は、球面軸受の環状内面によって規定される円孔に挿抜自在に配されている、構造物用の沓装置。
  2. 球面軸受の環状内面は、当該環状内面によって規定される円孔への他方の沓の円柱部の挿入方向から見て、徐々に縮径する第一の略截頭円錐面と、この第一の略截頭円錐面に連接しており、当該第一の略截頭円錐面よりも更に徐々に縮径する第二の略截頭円錐面とを具備しており、他方の沓の円柱部の環状表面は、当該円柱部の先端から見て、徐々に拡径する第三の略截頭円錐面と、この第三の略截頭円錐面に連接していると共に、第二の略截頭円錐面と相補的な形状となるように、第三の略截頭円錐面よりも更に徐々に拡径した第四の略截頭円錐面とを具備している請求項1に記載の構造物用の沓装置。
  3. 他方の沓の円柱部は、少なくとも第四の略截頭円錐面の部位で、ステンレス鋼により肉盛りされて形成されている請求項2に記載の構造物用の沓装置。
  4. 一方の沓は、凹所の底面に弾性手段を具備しており、この弾性手段を介して軸受本体は、一方の沓に対してその軸心方向に可動となるように凹所で一方の沓に着座している、請求項2又は3に記載の構造物用の沓装置。
  5. 軸受装置が、軸受本体の外面と凹所の側面を規定する一方の沓の内面との間に介在された滑り軸受を更に具備している請求項2から4のいずれか一項に記載の構造物用の沓装置。
  6. 軸受本体の外面に対面する滑り軸受の表面には、固体潤滑材が埋設された複数の凹所が形成されており、この固体潤滑材の露出面は、軸受本体の外面に摺動自在に接触している請求項5に記載の構造物用の沓装置。
  7. 球面軸受の凸球面状の外面には、固体潤滑材が埋設された複数の凹所が形成されており、この固体潤滑材の露出面は、軸受本体の凹球面状の内面に摺動自在に接触している請求項1から6のいずれか一項に記載の構造物用の沓装置。
  8. 球面軸受の環状内面には、固体潤滑材が埋設された複数の凹所が形成されており、この固体潤滑材の露出面は、他方の沓の円柱部の環状表面に摺動自在に接触している請求項1から7のいずれか一項に記載の構造物用の沓装置。
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