JP4223161B2 - Ultra-high strength metastable austenitic stainless steel and manufacturing method - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐食性と共に高い強度および疲労特性が要求される部材や部品、例えば板ばね,コイルばね,Si単結晶ウェハー作製用ブレード板等の素材に最適なステンレス鋼材であって、特に非常に高い引張強さを有する超高強度準安定オーステナイト系ステンレス鋼材および製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ステンレス鋼を用いて上記のような部材や部品を製造する場合、マルテンサイト系ステンレス鋼、加工硬化型ステンレス鋼および析出硬化型ステンレス鋼が使用されてきた。
【0003】
マルテンサイト系ステンレス鋼は、高温のオーステナイト状態から急冷してマルテンサイト変態させることで硬化を図るもので、SUS410,SUS420J2等がこれに相当する。これらは焼入れ−焼戻しの調質処理により高い強度と靱性が得られる。しかし、製品が極薄の場合、焼入れ処理の際に熱ひずみにより変形し、目的の形状のものを作製するのが困難である。
【0004】
加工硬化型ステンレス鋼は、溶体化処理状態でオーステナイト相を呈し、その後の冷間加工で加工誘起マルテンサイト相を生成させて高強度を得ようとするものであり、SUS301,SUS304に代表される準安定オーステナイト系ステンレス鋼がこれに相当する。強度は冷間加工量やマルテンサイト量に依存する。前記のような焼入れ処理に伴う熱ひずみの問題は生じない。ただし、冷間加工のみで強度を精度良く調整するのは非常に困難であり、また冷間加工率をあまり大きくすると材料の異方性が増し、靱性も低下する。
【0005】
析出硬化型ステンレス鋼は、析出硬化能の高い元素を含有させ、時効処理により硬化させるもので、代表的鋼種としてCuを含有させたSUS630、Alを含有させたSUS631が挙げられる。前者は、溶体化処理後マルテンサイト単相であり、これを時効処理して硬化させる。ただし引張強さはせいぜい1400N/mm2程度である。後者は、溶体化処理後に準安定オーステナイト相を有し、これを冷間加工などの前処理で一部マルテンサイト相に変化させてから時効処理するものである。金属間化合物Ni3Alを析出させて硬化を図るものであり、積極的にマルテンサイト相を生成させることで1800N/mm2程度まで引張強さを上昇させることが可能である。
【0006】
このような時効処理を利用したものにおいて、上記の従来鋼種よりもさらに高強度化を図ったステンレス鋼が開発されている。例えば、特開昭61−296356号公報や特開平4−202643号公報には、CuとSiを複合添加した準安定オーステナイト系ステンレス鋼に適度の冷間加工を施した後、時効処理する手法が開示されており、引張強さ2000N/mm2程度の高強度鋼が得られている。ただし、これらの手法は、高強度を得るための時効処理温度範囲は非常に狭く、営業的な生産への適用は必ずしも容易でない。
【0007】
その後、本発明者らは特開平6−207250号公報,特開平7−300654号公報において、MoとSiを複合添加した準安定オーステナイト系ステンレス鋼に適度の冷間加工を施し、その後の時効処理を高温で行うことにより、引張強さ2000N/mm2程度でしかも靱性に優れた高強度鋼が得られることを開示した。この手法では成分組成の厳密なコントロールが要求されるが、今日の製鋼技術で十分対応できる。また、時効処理温度範囲は広く、かつ短時間の時効処理が可能なため工業的な連続生産にも対応できる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平6−207250号公報,特開平7−300654号公報に開示の技術により、引張強さ2000N/mm2級の高強度ステンレス鋼材の製造技術はほぼ確立されたと言うことができる。ところが昨今、ばね材やブレード板の用途を中心に、さらに一層の高強度化を図ったステンレス鋼素材の要求が高まりつつある。この要求に応えるためには、2200N/mm2以上の引張強さが安定して得られる素材を開発し提供することが望まれるところである。
【0009】
一方、2000〜2400N/mm2級の引張強さを有する超高強度金属材料として、18Niマルエージ鋼が知られている。例えば、18Ni−9Co−5Mo−0.7Ti系マルエージ鋼で2000N/mm2級、18Ni−12.5Co−4.2Mo−1.6Ti系マルエージ鋼で2400N/mm2級の引張強さが得られている。またこれらの材料は比較的良好な靱性も有している。しかし、Ni,Co,Moという高価な元素を多量に含むため、素材コストが非常に高いという欠点がある。したがって、この素材を安価な板ばね等の用途に適用することは事実上不可能である。
【0010】
本発明は、このような現状に鑑み、2200N/mm2以上の引張強さを呈する超高強度金属材料を、準安定オーステナイト系ステンレス鋼を素材として製造し、提供することを目的とするものである。また本発明においては、連続ラインで時効処理して得られる鋼帯のみならず、各種部品に加工した後、バッチ処理で時効処理する鋼材をも提供可能にする点に配慮する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特開平6−207250号公報,特開平7−300654号公報で開示した鋼について、引張強さを2200N/mm2級に引き上げる試みを種々行ってきた。しかし、当該鋼においてそのような高強度を安定的に得ることはできなかった。検討の結果、特開平6−207250号公報,特開平7−300654号公報に示した鋼で2000N/mm2を超える高強度を得るには合金設計上の無理があることがわかり、これらとは別の化学組成を有する鋼を新規開発するする必要があるとの結論に達した。そこでさらに検討を進め、▲1▼化学組成においてはC含有量を0.10質量%を超える量にすること、▲2▼金属組織においては冷間加工により加工誘起マルテンサイト相を生成させ、80〜95体積%マルテンサイト+オーステナイトの組織を時効前に得ておくことが非常に望ましいことを知見した。本発明はこのような知見に基づいて完成されたものである。
【0012】
すなわち、上記目的を達成するために、請求項1の発明は、質量%で、C:0.10超え〜0.20%,Si:1.0〜5.0%,Mn:3.0%以下,Ni:4.0〜10.0%,Cr:12.0〜18.0%,Cu:3.5%以下,Mo:5.0%以下,N:0.15%以下,残部がFeおよび不可避的不純物であり、C+N≧0.15%,Si+Mo≧3.5%を満たし、かつ下記(1)式で定義されるMd(N)の値が50〜140となる化学組成を有し、マルテンサイト相が 80 〜 95 体積%であり、非金属介在物および 1 体積%以下のδフェライトの存在が許容され、残部がオーステナイト相および析出物からなる加工された複相組織を呈し、かつ Mo 系析出物が前記マルテンサイト相中に分布しており、 2200N/mm 2 以上の引張強さを有する超高強度準安定オーステナイト系ステンレス鋼材を提供するものである。
Md(N)=580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−26Cu−10Mo ・・(1)
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、特にCu含有量が1.0〜3.0質量%、かつMo含有量が1.0〜4.5質量%である点を規定したものである。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の鋼材において、該鋼材が特に板材または線材である点を規定したものである。
【0015】
ここで、加工された組織であることは、例えば光学顕微鏡観察によりオーステナイト結晶粒が加工方向に延びていることなどで特定することができる。Mo系析出物としてはFe2Mo,Fe3Mo等を挙げることができる。Mo系析出物の存在は、例えば電子顕微鏡によるミクロ的な観察手法により特定することができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1で規定した化学組成を有する鋼を溶体化処理したのち40 %以上冷間加工して、80〜95体積%のマルテンサイト相を含む金属組織とした鋼材に対し、300〜600℃の温度範囲で0.5〜120分の時効処理を施す、引張強さが2200N/mm2以上の超高強度準安定オーステナイト系ステンレス鋼材の製造法である。ここで、「80〜95体積%のマルテンサイト相」は冷間加工で新たに生じた加工誘起マルテンサイト相が主体であるが、溶体化処理後に既に冷却マルテンサイト相が存在していた場合にはそれも含まれる。マルテンサイト相以外には、非金属介在物および 1 体積%以下のδフェライトの存在が許容され、残部はオーステナイト相および析出物である。
【0017】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、特に鋼のCu含有量が1.0〜3.0質量%,Mo含有量が1.0〜4.5質量%である点を規定したものである。
【0018】
請求項6の発明は、請求項4または5の製造法において、特に溶体化処理後の組織がオーステナイト単相の組織または冷却マルテンサイト相を30体積%以下含むオーステナイト相主体の組織である点、および40 %以上の冷間加工により加工誘起マルテンサイト相を生成させる点を規定したものである。
【0019】
請求項7の発明は、請求項4〜6のいずれかの製造法において、特に時効処理を10〜120分のバッチ処理で行う点を規定したものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明において、引張強さが2200N/mm2以上であるような超高強度準安定オーステナイト系ステンレス鋼材を得るためには、鋼の成分組成を新規な化学組成範囲に厳密に規定することが必要であり、また、時効処理前の金属組織状態を適正化することが非常に望ましい。
以下、本発明を特定するための事項について説明する。
【0021】
化学組成において、C含有量の規定は本発明では特に重要な意味をもつ。Cは、オーステナイト形成元素であり、高温で生成するδフェライト相の抑制、および冷間加工で誘発されたマルテンサイト相の強化に極めて有効である。MoとSiを複合添加した従来の高強度準安定オーステナイト系ステンレス鋼では、耐粒界腐食性や靱性を確保する観点からC含有量を0.10質量%以下に規制する設計思想を採用していた。しかし、発明者らの研究の結果、このようなCレベルで2200N/mm2以上といった超高強度を安定して得ることは困難であること、およびC含有量を引き上げることで、そのような超高強度が実現可能になることがわかった。また、耐粒界腐食性や靱性に関しても、一般的なばね用途やブレード板用途においては、0.20質量%以下のC含有量であればほとんど問題ないことが詳細な調査によって明らかになってきた。むしろ、耐粒界腐食性や靱性のわずかな低下によるデメリットよりも、強度レベルが大幅に向上するメリットの方がはるかに大きい場合がほとんどである。そこで本発明では、MoとSiを複合添加した鋼では従来試みられることのなかった、0.10超え〜0.20質量%というC含有量範囲を規定し、超高強度化を達成するに至った。
【0022】
ただし、単にC含有量を増加させるだけで超高強度化が達成できるわけではない。それには冷間加工後(時効処理前)のマルテンサイト量の適正化、遡れば加工誘起マルテンサイト相の生成し易さを適正化するための組成コントロールが、C含有量の規定とともに極めて重要となる。この点については後述する。
【0023】
Siは、通常、加工硬化型ステンレス鋼などでは脱酸目的で使用され、その含有量はSUS301,SUS304の例に見られるように1.0質量%以下である。しかし本発明ではSi含有量をこれより多くして、冷間加工時の加工誘起マルテンサイト相の生成を顕著に促進させる作用を発揮させる。またSiは加工誘起マルテンサイト相を硬くするとともに、オーステナイト相にも固溶しこれを硬化させ、冷間加工後の強度向上に寄与する。さらに、時効処理においては、Cuとの相互作用により時効硬化能を増大させる。これらのSiの作用を十分に享受するには、1.0質量%以上のSi含有量とする必要がある。ただし、5.0質量%を超えるとコイルどうしの溶接の際に冷却速度を制御しても高温割れを誘発し易くなり、製造上種々の問題が生じる。したがってSi含有量は1.0〜5.0質量%とした。なお、好ましいSi含有量は1.0超え〜4.0質量%である。
【0024】
Mnは、オーステナイト相の安定度を支配する元素で、その含有量は他の元素とのバランスによって決定されるが、Mn含有量が多いと冷間加工時にマルテンサイト相が誘発されにくくなるので3.0質量%以下とした。なお、好ましいMn含有量は0.2〜2.5質量%である。
【0025】
Niは、高温および室温でオーステナイト相を得るために必須の元素であるが、本発明の場合、特に、溶体化処理後の状態で、オーステナイト単相組織または冷却マルテンサイト相を30体積%以下含むオーステナイト相主体の組織が得られるようにする点を考慮しなければならない。Ni含有量が4.0質量%未満では高温で多量のδフェライト相が生成し、しかも室温までの冷却過程でマルテンサイト相が生成し易くなるので、上記組織を得ることが困難となる。一方、10.0質量%を超えると冷間加工でマルテンサイト相が誘起されにくくなる。したがって、Ni含有量は4.0〜10.0質量%とした。なお、好ましいNi含有量の下限は5.0質量%、同上限は8.5質量%である。
【0026】
Crは、耐食性を確保するうえで必須の元素である。本発明鋼材の適用用途を考慮すると、12.0質量%以上のCr含有量が必要である。しかし、Crはフェライト形成元素でもあるので、多量に含有させると高温でδフェライト相が生成し易くなる。この作用を打ち消すためにはオーステナイト形成元素(C,N,Ni,Mn,Cu等)を添加しなければならないが、これらの元素の過度の添加は室温でのオーステナイト相の安定化をもたらし、冷間加工でのマルテンサイト相の誘起を不十分にする。そうなると時効処理後に高強度を得ることが不可能となる。このためCr含有量の上限は18.0質量%とした。なお、好ましいCr含有量は12.0〜16.5質量%である。
【0027】
Cuは、時効処理の際、Siとの相互作用により顕著な硬化作用を発揮する。しかし、過剰のCu含有は熱間加工性を劣化させ鋼材の割れ発生の原因となるので、3.5質量%以下の範囲で含有させることとした。好ましいCu含有量の下限は1.0質量%、同上限は3.0質量%である。
【0028】
Moは、耐食性を向上させるとともに、時効処理で炭窒化物を微細に分散させる作用を示す。また、本発明では疲労特性に悪影響を及ぼす過度の圧延歪を低減するために時効温度を高くするが、この高温時効での歪の解放があまりに急激であると強度面で不利となる。Moは高温時効での急激な歪の解放を抑制する非常に有効な元素である。さらに、Moは時効処理時に析出物(Fe2Mo,Fe3Mo等)を形成させるが、かなりの高温域で時効を行ってもこれらのMo系析出物は強度向上に有効な形態で形成されるため、Mo添加によって高温時効による強度低下を防止することができる。ただし、Mo含有量があまり多くなると高温でδフェライト相が生成し易くなるので、Mo含有量は5.0質量%以下とした。なお、上記Moの作用を十分享受するには1.0質量%以上のMo含有量を確保することが望ましい。しかしMo含有量が多くなると高温での変形抵抗が高くなるため、熱間加工性を重視する場合はMo含有量の上限を4.5質量%とすることが望ましい。したがって、本発明における好ましいMo含有量は1.0〜4.5質量%である。
【0029】
Nは、オーステナイト形成元素であるとともに、オーステナイト相およびマルテンサイト相を硬化させるのに極めて有効な元素であるが、多量の添加は鋳造時のブローホールの原因となるので0.15質量%以下とした。
【0030】
CとNは互いに同様な硬化作用を示し、その効果を十分に発揮させるためにはC+Nの合計含有量が0.15質量%以上となるようにする必要がある。
【0031】
また、本発明では時効によりMo系の析出物を形成させるが、Si添加によりその析出物の生成サイトが増加し、それにより析出物の大きさも微細になる。Mo系析出物の分布形態を十分に微細かつ均一にするには、Si+Moの合計含有量を3.5質量%以上とする必要があり、そのとき、Mo系析出物は強度向上に顕著に寄与し得る。
【0032】
本発明では、2200N/mm2以上の引張強さを安定して得るための手段として、前述のC含有量の増加による強度上昇効果とともに、冷間加工によるマルテンサイト誘起変態を積極的に利用する。そして、時効処理前の段階において、80〜95体積%の全マルテンサイト量が確保されていることが極めて有利となる。
【0033】
そのためには、第1に、溶体化処理後の状態で、組織の大部分がオーステナイト相になっていることが必要である。発明者らの研究の結果、溶体化処理後に、「オーステナイト単相組織」または「冷却マルテンサイト相を30体積%以下含むオーステナイト相主体の組織」になっていることが非常に望ましいことがわかった。
【0034】
第2に、常温での冷間加工によって、全マルテンサイト量が80〜95体積%となるように加工誘起マルテンサイト相が無理なく生成する化学組成を有していることが非常に有効である。つまり、例えば冷間圧延であれば、実施し易い40〜60%といった圧下率によって、特段の強加工や温度制御をすることなく、上記マルテンサイト量を確保できることが望ましいのである。その際、わずかな加工で急激にマルテンサイト相が誘起されてしまうようでは、十分な加工率が確保できないため加工硬化による強度向上作用が利用できず、超高強度化は達成できない。
【0035】
これらの要件を満足させるには、合金設計において、オーステナイト相の加工に対する安定度を厳密に規定することが不可欠となる。本発明では、当該安定度の指標として下記(1)式で表されるMd(N)値を採用した。
Md(N)=580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−26Cu−10Mo ・・(1)
ここで、C,Si,・・・,Moは、それぞれ当該鋼のC含有量,Si含有量,・・・,Mo含有量(いずれも質量%で表される値)を意味する。
【0036】
このMd(N)が50未満の鋼では、オーステナイト相が冷間加工に対し安定で、超高強度化に寄与するマルテンサイト相が十分に形成されない。一方、Md(N)が140を超える鋼では、比較的低い冷間圧延率でほぼマルテンサイト単相となってしまい、冷間圧延時の靱性低下が懸念されるとともに、冷間加工不足により超高強度化の達成が困難となる。そこで本発明では、Md(N)の値が50〜140となるよう、各成分元素の含有量をコントロールする。なお、好ましいMd(N)値の下限は60、同上限は135である。
【0037】
以上のような化学組成を有する鋼を溶製して、熱間加工あるいはさらに冷間加工を行った後、溶体化処理を施し、準安定オーステナイト相単相、または一部冷却マルテンサイトが生成した準安定オーステナイト相主体の金属組織を得る。ここで、前記の化学組成コントロールにより、冷却マルテンサイト相は概ね30体積%以下の量に抑えられる。
【0038】
本発明では、この溶体化処理された鋼材に対して冷間加工を施し、加工歪を導入する。その際、準安定オーステナイト相の多くはマルテンサイト相に変態する。時効処理後に2200N/mm2以上の引張強さを得るには、この段階で鋼材中のマルテンサイト量を80体積%以上(好ましくは80体積%を超える量)としておくことが非常に有効である。これにより、時効処理時に、硬化に寄与する有効な析出物の核生成サイトを十分に増やすことができるのである。ただし、鋼材の靱性を確保するうえで、マルテンサイト100%の組織とするのは好ましくない。好ましい組織は、全マルテンサイト量が80〜95体積%で、残部が実質的にオーステナイト相からなる「複相組織」である。Md(N)値を前述の適正範囲に調整した鋼であれば、冷間加工率をコントロールすることで比較的容易にこのような複相組織が得られる。
【0039】
冷間加工としては、一般的には冷間圧延を施すが、用途によっては冷間圧延材にさらにスピニング加工その他の冷間加工を施したり、あるいは溶体化処理後にはじめから圧延以外の冷間加工を施してもよい。線材の場合には引抜による線引加工を施すのが一般的である。いずれにしても、時効処理前の段階において、鋼材中のマルテンサイト量が80〜95体積%になっていることが、2200N/mm2級の超高強度鋼材を得るうえで極めて有効である。
【0040】
時効処理においては、以上のようなマルテンサイト相を多量に含む冷間加工材に対して、300〜600℃の温度範囲で均熱時間0.5〜120分の加熱を行う。時効処理温度を300℃以上にすることで析出強化現象が十分に現れて目的とする超高強度を得ることが可能となり、また過剰な加工歪が除去されて靱性も確保できるようになる。しかし600℃を超える温度で加熱すると、加工誘起マルテンサイト相の回復・再結晶が起こったり、一部がオーステナイト相に逆変態する場合が生じるため、材料は軟化する。均熱時間については、0.5分未満では十分な時効硬化が期待できず、また120分を超える長時間の加熱では過時効による軟化や炭化物の粒界析出による耐食性低下が生じるようになる。
【0041】
本発明では、時効処理の均熱時間に関し、0.5分から120分までの広いレンジで実施が可能である点に特徴がある。したがって、冷延鋼帯を熱処理炉に連続通板する方法で超高強度鋼帯を製造することが可能であるだけでなく、所望の部品に加工した材料に対してバッチ処理で時効処理を施すことも可能になる。バッチ処理による操業現場では、均熱時間を数分程度の短時間に精度良くコントロールすることは困難である場合が多い。したがって、特にバッチ処理での時効処理を採用する場合は、10〜120分の均熱時間とすることが好ましい。
【0042】
【実施例】
表1に供試材の化学成分値およびMd(N)値を示す。表中のS1〜S9は化学組成が本発明規定範囲にあるもの(本発明対象鋼)、M1〜M6はそれ以外のもの(比較鋼)である。
【0043】
【表1】
【0044】
いずれの鋼も、真空溶解炉にて溶製され、鍛造、熱延、中間焼鈍および冷延を施した後、1050℃で1分間保持して水冷する溶体化処理を施し、その後、種々の圧延率で冷間圧延を行い板厚1.2〜0.8mmの冷延材を得た。さらにこれらの冷延材に525℃×60分の時効処理を施した。表2に、各試料の、冷延率、冷延材のマルテンサイト量および引張強さ、ならびに時効材の引張強さを示す。なお、引張試験は、JIS Z 2201に規定される13B号試験片を用い、JIS Z 2241に規定される試験方法で実施した。
【0045】
【表2】
【0046】
表2からわかるように、C含有量が0.10質量%を超える量に満たないM1,M3,M6、Si含有量が1.0質量%に満たないM4、およびMd(N)値が50に満たないM2,M5では、いずれも時効材において2200N/mm2以上の引張強さは得られていない。これに対し、本発明例であるS1〜S9ではいずれも時効材において2200N/mm2以上の引張強さが得られた。
【0047】
図1は、表1のS1〜S4,M1,M3について、525℃×60分の時効材の引張強さをC含有量で整理したものである。C含有量0.10質量%以上において、引張強さが2200N/mm2以上の超高強度鋼材が得れることがわかる。
【0048】
次に、表1のS3,M3について、種々の温度で均熱30分の時効処理を施し、引張強さを調べた。その結果を図2に示す。本発明対象鋼であるS3では、300〜600℃の範囲で2200N/mm2以上の引張強さが得られていることがわかる。
【0049】
【発明の効果】
本発明により、準安定オーステナイト系ステンレス鋼において、引張強さが2200N/mm2以上という、18Niマルエージ鋼に匹敵する超高強度鋼材が実現された。すなわち本発明は、従来の高強度ステンレス鋼材の強度を10%あるいはそれ以上も向上させることに成功した点で、その技術的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 525℃×60分の時効材の引張強さに及ぼすC含有量の影響を示すグラフである。
【図2】本発明対象鋼と比較鋼についての、時効材の引張強さに及ぼす時効処理温度の影響を示すグラフである。[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention is a stainless steel material that is optimal for materials such as members and parts that require high strength and fatigue characteristics as well as corrosion resistance, such as plate springs, coil springs, and blade plates for producing Si single crystal wafers, and is extremely high. The present invention relates to an ultrahigh strength metastable austenitic stainless steel material having tensile strength and a manufacturing method.
[0002]
[Prior art]
Conventionally, when manufacturing the above members and parts using stainless steel, martensitic stainless steel, work hardening stainless steel and precipitation hardening stainless steel have been used.
[0003]
Martensitic stainless steel is hardened by quenching from a high temperature austenite state and transforming into martensite, and SUS410, SUS420J2, etc. correspond to this. These can obtain high strength and toughness by tempering treatment of quenching and tempering. However, when the product is extremely thin, it is difficult to produce a target shape due to deformation due to thermal strain during the quenching process.
[0004]
Work-hardening type stainless steel exhibits an austenite phase in a solution-treated state, and generates a work-induced martensite phase by subsequent cold working to obtain high strength, and is represented by SUS301 and SUS304. Metastable austenitic stainless steel corresponds to this. The strength depends on the amount of cold work and the amount of martensite. The problem of heat distortion accompanying the quenching process as described above does not occur. However, it is very difficult to adjust the strength with only cold working, and if the cold working rate is increased too much, the anisotropy of the material increases and the toughness also decreases.
[0005]
Precipitation hardening type stainless steel contains an element with high precipitation hardening ability and is hardened by an aging treatment. Examples of typical steel types include SUS630 containing Cu and SUS631 containing Al. The former is a martensite single phase after solution treatment, and is cured by aging treatment. However, the tensile strength is about 1400 N / mm 2 at most. The latter has a metastable austenite phase after solution treatment, which is partly changed to a martensite phase by a pretreatment such as cold working and then subjected to an aging treatment. It is intended to harden by depositing the intermetallic compound Ni 3 Al, and it is possible to increase the tensile strength to about 1800 N / mm 2 by actively generating a martensite phase.
[0006]
In the case of using such an aging treatment, stainless steel having higher strength than the above-described conventional steel types has been developed. For example, Japanese Patent Laid-Open No. 61-296356 and Japanese Patent Laid-Open No. 4-202643 disclose a method of aging treatment after moderately cold-working a metastable austenitic stainless steel to which Cu and Si are added in combination. A high strength steel having a tensile strength of about 2000 N / mm 2 is obtained. However, these methods have a very narrow aging treatment temperature range for obtaining high strength, and application to commercial production is not always easy.
[0007]
Thereafter, the inventors of the present invention disclosed in JP-A-6-207250 and JP-A-7-300654, by performing moderate cold working on the metastable austenitic stainless steel to which Mo and Si were added in combination, and thereafter aging treatment. It has been disclosed that high-strength steel having a tensile strength of about 2000 N / mm 2 and excellent in toughness can be obtained by carrying out at a high temperature. This method requires strict control of the component composition, but today's steelmaking technology is sufficient. Moreover, since the aging temperature range is wide and aging treatment is possible for a short time, industrial continuous production can be handled.
[0008]
[Problems to be solved by the invention]
It can be said that the technology for producing a high strength stainless steel material having a tensile strength of 2000 N / mm 2 has been almost established by the techniques disclosed in the above-mentioned JP-A-6-207250 and JP-A-7-300654. In recent years, however, there has been an increasing demand for stainless steel materials with higher strength, mainly for the use of spring materials and blade plates. In order to meet this demand, it is desired to develop and provide a material that can stably obtain a tensile strength of 2200 N / mm 2 or more.
[0009]
On the other hand, 18Ni maraging steel is known as an ultra-high strength metal material having a tensile strength of 2000 to 2400 N / mm 2 grade. For example, 2000N / mm 2 class in 18Ni-9Co-5Mo-0.7Ti based maraging steels, 2400 N / mm 2 class tensile strength is obtained in the 18Ni-12.5Co-4.2Mo-1.6Ti-based maraging steels. These materials also have relatively good toughness. However, it contains a large amount of expensive elements such as Ni, Co, and Mo, so there is a disadvantage that the material cost is very high. Therefore, it is practically impossible to apply this material to uses such as inexpensive leaf springs.
[0010]
In view of such a current situation, the present invention aims to produce and provide an ultra-high-strength metallic material exhibiting a tensile strength of 2200 N / mm 2 or more, using metastable austenitic stainless steel as a raw material. is there. Further, in the present invention, it is considered that not only a steel strip obtained by aging treatment in a continuous line but also a steel material that can be aged by batch treatment after being processed into various parts can be provided.
[0011]
[Means for Solving the Problems]
The inventors have made various attempts to raise the tensile strength to 2200 N / mm 2 class for the steel disclosed in Japanese Patent Application Laid-Open Nos. 6-207250 and 7-300654. However, such high strength could not be stably obtained in the steel. As a result of the examination, it was found that it was impossible for the alloy design to obtain high strength exceeding 2000 N / mm 2 with the steel shown in JP-A-6-207250 and JP-A-7-300654. It was concluded that a new steel with a different chemical composition needs to be developed. Therefore, further investigation was made, and (1) in the chemical composition, the C content was made to exceed 0.10% by mass, and (2) in the metal structure, a work-induced martensite phase was generated by cold working, and 80-95 It has been found that it is highly desirable to obtain a volume% martensite + austenite structure before aging. The present invention has been completed based on such findings.
[0012]
That is, in order to achieve the above object, the invention of
Md (N) = 580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−26Cu−10Mo ・ ・ (1)
[0013]
The invention of
[0014]
A third aspect of the present invention, the steel material according to
[0015]
Here, it is pressurized Engineering tissue can e.g. austenite grain by optical microscopy to identify like that extends in the working direction. Examples of Mo-based precipitates include Fe 2 Mo and Fe 3 Mo. The presence of Mo-based precipitates can be specified by, for example, a microscopic observation technique using an electron microscope.
[0016]
According to a fourth aspect of the present invention, there is provided a steel material obtained by subjecting a steel having the chemical composition defined in the first aspect to solution treatment and then cold working for 40 % or more to obtain a metal structure containing a martensite phase of 80 to 95% by volume. On the other hand, it is a method for producing an ultrahigh strength metastable austenitic stainless steel material having a tensile strength of 2200 N / mm 2 or more, which is subjected to an aging treatment in a temperature range of 300 to 600 ° C. for 0.5 to 120 minutes. Here, “80-95 volume% martensite phase” is mainly composed of a work-induced martensite phase newly generated by cold working, but when a cooled martensite phase already exists after solution treatment. Is also included. Except for the martensite phase , non-metallic inclusions and 1 % by volume or less of δ ferrite are allowed, and the balance is the austenite phase and precipitates .
[0017]
The invention of claim 5 is the invention of
[0018]
The invention of claim 6 is the method according to
[0019]
The invention according to claim 7 stipulates that the aging treatment is performed in a batch process for 10 to 120 minutes in the manufacturing method according to any one of
[0020]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
In the present invention, in order to obtain an ultra-high-strength metastable austenitic stainless steel material having a tensile strength of 2200 N / mm 2 or more, it is necessary to strictly define the component composition of the steel within a new chemical composition range. In addition, it is highly desirable to optimize the state of the metal structure before aging treatment.
Hereinafter, matters for specifying the present invention will be described.
[0021]
In the chemical composition, the definition of the C content is particularly important in the present invention. C is an austenite-forming element and is extremely effective for suppressing the δ ferrite phase generated at high temperatures and for strengthening the martensite phase induced by cold working. The conventional high-strength metastable austenitic stainless steel with a combined addition of Mo and Si employs a design philosophy that regulates the C content to 0.10% by mass or less from the viewpoint of ensuring intergranular corrosion resistance and toughness. However, as a result of the inventors' research, it is difficult to stably obtain an ultra-high strength such as 2200 N / mm 2 or more at the C level, and by increasing the C content, It was found that high strength became feasible. Further, with regard to intergranular corrosion resistance and toughness, detailed investigations have revealed that there is almost no problem with a C content of 0.20% by mass or less in general spring applications and blade plate applications. Rather, the benefits of significantly increasing the strength level are often much greater than the disadvantages of a slight decrease in intergranular corrosion resistance and toughness. Therefore, in the present invention, a steel content combined with Mo and Si has been specified in a C content range of more than 0.10 to 0.20 mass%, which has not been attempted in the past, and an ultra-high strength has been achieved.
[0022]
However, ultra high strength cannot be achieved simply by increasing the C content. For that purpose, the optimization of the martensite content after cold working (before aging treatment), and in the retrospective, composition control for optimizing the ease of forming the processing-induced martensite phase is extremely important along with the C content regulation. Become. This point will be described later.
[0023]
Si is usually used for the purpose of deoxidation in work hardening type stainless steel and the like, and its content is 1.0 mass% or less as seen in the examples of SUS301 and SUS304. However, in the present invention, the Si content is increased to exert the effect of remarkably accelerating the formation of a work-induced martensite phase during cold working. Si hardens the work-induced martensite phase and also dissolves in the austenite phase and hardens it, contributing to strength improvement after cold working. Furthermore, in the aging treatment, the age hardening ability is increased by the interaction with Cu. In order to fully enjoy these effects of Si, the Si content needs to be 1.0 mass% or more. However, if it exceeds 5.0 mass%, it becomes easy to induce hot cracking even if the cooling rate is controlled during welding of coils, and various problems arise in production. Therefore, the Si content is set to 1.0 to 5.0% by mass. In addition, preferable Si content is more than 1.0-4.0 mass%.
[0024]
Mn is an element that governs the stability of the austenite phase, and its content is determined by the balance with other elements, but if the Mn content is high, the martensite phase is less likely to be induced during cold working, so 3.0% It was made into the mass% or less. In addition, preferable Mn content is 0.2-2.5 mass%.
[0025]
Ni is an essential element for obtaining an austenite phase at high temperature and room temperature, but in the case of the present invention, in particular, in a state after solution treatment, an austenite single phase structure or a cooled martensite phase is contained in an amount of 30% by volume or less. It must be taken into consideration that an austenite phase-based structure can be obtained. When the Ni content is less than 4.0% by mass, a large amount of δ ferrite phase is generated at high temperature, and a martensite phase is easily generated in the cooling process to room temperature, making it difficult to obtain the above structure. On the other hand, if it exceeds 10.0% by mass, the martensite phase is hardly induced by cold working. Therefore, the Ni content is set to 4.0 to 10.0% by mass. In addition, the minimum with preferable Ni content is 5.0 mass%, and the same upper limit is 8.5 mass%.
[0026]
Cr is an essential element for ensuring corrosion resistance. Considering the application of the steel of the present invention, a Cr content of 12.0% by mass or more is necessary. However, since Cr is also a ferrite forming element, if it is contained in a large amount, a δ ferrite phase is likely to be formed at a high temperature. To counteract this effect, austenite-forming elements (C, N, Ni, Mn, Cu, etc.) must be added. Excessive addition of these elements leads to stabilization of the austenite phase at room temperature. Insufficient induction of martensite phase during hot working. Then, it becomes impossible to obtain high strength after aging treatment. For this reason, the upper limit of the Cr content is set to 18.0% by mass. In addition, preferable Cr content is 12.0-16.5 mass%.
[0027]
Cu exhibits a remarkable hardening action by interaction with Si during aging treatment. However, excessive Cu content deteriorates hot workability and causes cracking of the steel material. Therefore, the Cu content is determined to be 3.5% by mass or less. The lower limit of the Cu content is preferably 1.0% by mass, and the upper limit is 3.0% by mass.
[0028]
Mo improves the corrosion resistance and shows an effect of finely dispersing carbonitride by aging treatment. In the present invention, the aging temperature is increased in order to reduce excessive rolling strain that adversely affects fatigue properties. However, if the strain is released too rapidly at this high temperature aging, it is disadvantageous in terms of strength. Mo is a very effective element that suppresses the rapid strain release under high temperature aging. Furthermore, Mo forms precipitates (Fe 2 Mo, Fe 3 Mo, etc.) during the aging treatment, but these Mo-based precipitates are formed in a form effective for improving the strength even when aging is performed at a considerably high temperature range. Therefore, strength addition due to high temperature aging can be prevented by adding Mo. However, if the Mo content is too large, a δ ferrite phase is likely to be formed at a high temperature, so the Mo content was set to 5.0% by mass or less. In order to fully enjoy the effect of Mo, it is desirable to secure a Mo content of 1.0% by mass or more. However, as the Mo content increases, the deformation resistance at high temperatures increases, and therefore when the hot workability is important, the upper limit of the Mo content is preferably 4.5% by mass. Therefore, the preferable Mo content in the present invention is 1.0 to 4.5 mass%.
[0029]
N is an austenite-forming element and is an extremely effective element for curing the austenite phase and the martensite phase. However, a large amount of N causes a blowhole during casting, so the content is made 0.15% by mass or less.
[0030]
C and N exhibit the same curing action as each other, and the total content of C + N needs to be 0.15% by mass or more in order to fully exhibit the effect.
[0031]
Further, in the present invention, Mo-based precipitates are formed by aging, but by adding Si, the generation sites of the precipitates are increased, thereby reducing the size of the precipitates. In order to make the distribution pattern of Mo-based precipitates sufficiently fine and uniform, the total content of Si + Mo needs to be 3.5% by mass or more. At that time, Mo-based precipitates can significantly contribute to strength improvement. .
[0032]
In the present invention, as a means for stably obtaining a tensile strength of 2200 N / mm 2 or more, the martensite-induced transformation by cold working is actively utilized together with the above-described strength increasing effect by increasing the C content. . And, it is extremely advantageous to ensure a total martensite amount of 80 to 95% by volume in the stage before the aging treatment.
[0033]
To that end, first, it is necessary that most of the structure is in the austenite phase after the solution treatment. As a result of the inventors' research, it has been found that it is highly desirable that after the solution treatment, an “austenite single-phase structure” or “an austenite phase-based structure containing 30% by volume or less of a cooled martensite phase” is obtained. .
[0034]
Secondly, it is very effective to have a chemical composition that allows a work-induced martensite phase to be formed reasonably so that the total martensite content is 80 to 95% by volume by cold working at room temperature. . That is, for example, in the case of cold rolling, it is desirable that the amount of martensite can be ensured by a reduction ratio of 40 to 60%, which is easy to implement, without performing special strong working or temperature control. At that time, if the martensite phase is abruptly induced by a small amount of processing, a sufficient processing rate cannot be ensured, so that the effect of improving the strength by work hardening cannot be used, and ultrahigh strength cannot be achieved.
[0035]
In order to satisfy these requirements, it is indispensable to strictly define the stability of the austenite phase during processing in alloy design. In the present invention, the Md (N) value represented by the following equation (1) is employed as the stability index.
Md (N) = 580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−26Cu−10Mo ・ ・ (1)
Here, C, Si,..., Mo mean the C content, Si content,..., And Mo content (values expressed in mass%) of the steel, respectively.
[0036]
In the steel having an Md (N) of less than 50, the austenite phase is stable with respect to cold working, and the martensite phase contributing to ultrahigh strength is not sufficiently formed. On the other hand, in steel with Md (N) exceeding 140, it becomes a martensite single phase at a relatively low cold rolling rate, and there is a concern about toughness reduction during cold rolling. It becomes difficult to achieve high strength. Therefore, in the present invention, the content of each component element is controlled so that the value of Md (N) is 50 to 140. The lower limit of the preferred Md (N) value is 60, and the upper limit is 135.
[0037]
A steel having the above chemical composition was melted, and after hot working or further cold working, solution treatment was performed, and a metastable austenite single phase or partially cooled martensite was generated. A metal structure composed mainly of a metastable austenite phase is obtained. Here, the cooling martensite phase is generally suppressed to an amount of 30% by volume or less by the chemical composition control.
[0038]
In the present invention, cold working is performed on the solution-treated steel material to introduce processing strain. At that time, most of the metastable austenite phase is transformed into a martensite phase. In order to obtain a tensile strength of 2200 N / mm 2 or more after aging treatment, it is very effective to keep the amount of martensite in the steel material at 80% by volume or more (preferably more than 80% by volume) at this stage. . Thereby, the effective nucleation site | part of the precipitate which contributes to hardening can be fully increased at the time of an aging treatment. However, in order to ensure the toughness of the steel material, it is not preferable to have a martensite 100% structure. A preferable structure is a “multiphase structure” in which the total amount of martensite is 80 to 95% by volume and the balance is substantially composed of an austenite phase. If the steel has the Md (N) value adjusted to the above-mentioned appropriate range, such a multiphase structure can be obtained relatively easily by controlling the cold work rate.
[0039]
As cold working, cold rolling is generally performed. However, depending on the application, the cold rolled material is further subjected to spinning processing or other cold working, or cold working other than rolling from the beginning after solution treatment. May be applied. In the case of a wire rod, it is common to perform a drawing process by drawing. In any case, the martensite content in the steel material in the stage before the aging treatment is 80 to 95% by volume, which is extremely effective in obtaining a 2200 N / mm 2 class ultra high strength steel material.
[0040]
In the aging treatment, the cold worked material containing a large amount of the martensite phase as described above is heated in a temperature range of 300 to 600 ° C. for a soaking time of 0.5 to 120 minutes. By setting the aging treatment temperature to 300 ° C. or higher, the precipitation strengthening phenomenon appears sufficiently and the intended ultra-high strength can be obtained, and excessive work strain can be removed to ensure toughness. However, when heated at a temperature exceeding 600 ° C., the material is softened because recovery and recrystallization of the work-induced martensite phase may occur or a part of the material may reversely transform into the austenite phase. With regard to the soaking time, sufficient age hardening cannot be expected if it is less than 0.5 minutes, and if it is heated for longer than 120 minutes, softening due to overaging and deterioration of corrosion resistance due to grain boundary precipitation of carbides will occur.
[0041]
In the present invention, the soaking time of the aging treatment is characterized in that it can be carried out in a wide range from 0.5 minutes to 120 minutes. Therefore, it is possible not only to produce an ultra-high strength steel strip by a method of continuously passing a cold-rolled steel strip through a heat treatment furnace, but also to apply aging treatment to the material processed into a desired part by batch processing. It becomes possible. In operation sites using batch processing, it is often difficult to accurately control the soaking time in a short time of about several minutes. Therefore, in particular, when employing an aging treatment in a batch treatment, it is preferable to set a soaking time of 10 to 120 minutes.
[0042]
【Example】
Table 1 shows the chemical component values and Md (N) values of the test materials. In the table, S1 to S9 are those in which the chemical composition is within the scope of the present invention (steel subject to the present invention), and M1 to M6 are other (comparative steel).
[0043]
[Table 1]
[0044]
All steels are melted in a vacuum melting furnace, subjected to forging, hot rolling, intermediate annealing, and cold rolling, and then subjected to a solution treatment that is held at 1050 ° C. for 1 minute and then water cooled, and then various rolling And cold rolled at a rate of 1.2 to 0.8 mm. Further, these cold-rolled materials were subjected to aging treatment at 525 ° C. for 60 minutes. Table 2 shows the cold rolling rate, the martensite amount and tensile strength of the cold rolled material, and the tensile strength of the aging material of each sample. Note that the tensile test was carried out using a test piece No. 13B specified in JIS Z 2201 and a test method specified in JIS Z 2241.
[0045]
[Table 2]
[0046]
As can be seen from Table 2, M1, M3, M6 whose C content is less than 0.10 mass%, M4 whose Si content is less than 1.0 mass%, and M2 whose Md (N) value is less than 50 , M5 has not obtained a tensile strength of 2200 N / mm 2 or more in the aging material. On the other hand, in each of the inventive examples S1 to S9, the tensile strength of 2200 N / mm 2 or more was obtained in the aging material.
[0047]
FIG. 1 is a summary of the tensile strength of aging materials at 525 ° C. for 60 minutes in terms of C content for S1 to S4, M1, and M3 in Table 1. It can be seen that when the C content is 0.10% by mass or more, an ultrahigh strength steel material having a tensile strength of 2200 N / mm 2 or more can be obtained.
[0048]
Next, S3 and M3 in Table 1 were subjected to an aging treatment for 30 minutes at various temperatures, and the tensile strength was examined. The result is shown in FIG. It can be seen that S3, which is the subject steel of the present invention, has a tensile strength of 2200 N / mm 2 or more in the range of 300 to 600 ° C.
[0049]
【The invention's effect】
According to the present invention, an ultra-high strength steel material comparable to 18Ni maraging steel having a tensile strength of 2200 N / mm 2 or more in a metastable austenitic stainless steel has been realized. That is, the present invention has great technical value in that it has succeeded in improving the strength of a conventional high-strength stainless steel material by 10% or more.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a graph showing the effect of C content on the tensile strength of an aging material at 525 ° C. × 60 minutes.
FIG. 2 is a graph showing the influence of the aging treatment temperature on the tensile strength of the aging material for the subject steel and the comparative steel.
Claims (7)
C:0.10超え〜0.20%,
Si:1.0〜5.0%,
Mn:3.0%以下,
Ni:4.0〜10.0%,
Cr:12.0〜18.0%,
Cu:3.5%以下,
Mo:5.0%以下,
N:0.15%以下,
残部がFeおよび不可避的不純物であり、
C+N≧0.15%,Si+Mo≧3.5%を満たし、かつ下記(1)式で定義されるMd(N)の値が50〜140となる化学組成を有し、マルテンサイト相が 80 〜 95 体積%であり、非金属介在物および 1 体積%以下のδフェライトの存在が許容され、残部がオーステナイト相および析出物からなる加工された複相組織を呈し、かつ Mo 系析出物が前記マルテンサイト相中に分布しており、 2200N/mm 2 以上の引張強さを有する超高強度準安定オーステナイト系ステンレス鋼材。
Md(N)=580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−26Cu−10Mo ・・(1)% By mass
C: Over 0.10 to 0.20%,
Si: 1.0-5.0%,
Mn: 3.0% or less,
Ni: 4.0 to 10.0%,
Cr: 12.0 to 18.0%,
Cu: 3.5% or less,
Mo: 5.0% or less,
N: 0.15% or less,
The balance is Fe and inevitable impurities,
C + N ≧ 0.15%, Si + Mo ≧ 3.5%, Md (N) defined by the following formula (1) has a chemical composition of 50 to 140, and the martensite phase is 80 to 95 % by volume. The presence of non-metallic inclusions and 1 % by volume or less of δ-ferrite is allowed, the balance presents a processed multiphase structure consisting of an austenite phase and precipitates, and Mo- based precipitates are present in the martensite phase. are distributed, ultra-high strength metastable austenitic stainless steel having a 2200N / mm 2 or more tensile strength.
Md (N) = 580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−26Cu−10Mo ・ ・ (1)
C:0.10超え〜0.20%,
Si:1.0〜5.0%,
Mn:3.0%以下,
Ni:4.0〜10.0%,
Cr:12.0〜18.0%,
Cu:3.5%以下,
Mo:5.0%以下,
N:0.15%以下,
残部がFeおよび不可避的不純物であり、
C+N≧0.15%,Si+Mo≧3.5%を満たし、かつ下記(1)式で定義されるMd(N)の値が50〜140となる化学組成を有する鋼を溶体化処理したのち40 %以上冷間加工して、80〜95体積%のマルテンサイト相を含む金属組織とした鋼材に対し、300〜600℃の温度範囲で0.5〜120分の時効処理を施す、引張強さが2200N/mm2以上の超高強度準安定オーステナイト系ステンレス鋼材の製造法。
Md(N)=580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−26Cu−10Mo ・・(1)% By mass
C: Over 0.10 to 0.20%,
Si: 1.0-5.0%,
Mn: 3.0% or less,
Ni: 4.0 to 10.0%,
Cr: 12.0 to 18.0%,
Cu: 3.5% or less,
Mo: 5.0% or less,
N: 0.15% or less,
The balance is Fe and inevitable impurities,
40 % or more cold after solution treatment of steel with a chemical composition satisfying C + N ≧ 0.15%, Si + Mo ≧ 3.5% and Md (N) value defined by the following formula (1) between 50 and 140 Steel material that has been processed into a metal structure containing 80-95% by volume martensite phase is subjected to an aging treatment at a temperature range of 300-600 ° C for 0.5-120 minutes. Tensile strength is 2200 N / mm 2 or more Of manufacturing ultra-high strength metastable austenitic stainless steel.
Md (N) = 580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−26Cu−10Mo ・ ・ (1)
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