JP4218694B2 - インク組成物、インクカートリッジ、これらを用いた記録方法 - Google Patents

インク組成物、インクカートリッジ、これらを用いた記録方法 Download PDF

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Description

本発明は、インク組成物、これを用いた記録方法および記録物に関し、特に、起泡が少なく、消泡性が良好であり、従って信頼性(目詰まり回復性・吐出安定性等)に優れ、美麗な発色を可能にするのみならず、長期間に亘ってプリンタの性能を維持することができるインク組成物と、かかる特性を有するインク組成物を用いたインクジェット記録方法と、該記録方法で得られる美麗な発色状態を長期間に亘って維持する記録物とに関する。
インクジェット記録方法は、インクの小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。
インクとしては、例えば、着色剤である顔料や染料を、界面活性剤や樹脂微粒子と共に使用した組成物として利用することで、印刷品質や印刷物の保存性を向上させる提案がなされている。
しかしながら、このような界面活性剤の利用は、その特性から高い起泡性と低い消泡性をインクにもたらすため、界面活性剤を含有するインク組成物は、吐出安定性や目詰まり回復性等の信頼性に欠けるという問題があった(特許文献1参照)。そこで、界面活性剤を含有するインク組成物の起泡を抑制し、消泡性を向上させる技術が求められている。
一方において、近年のインクジェットプリンタに対する高い印刷品質や印刷物の保存性への希求により、さらに多様な界面活性剤(例えばベタイン系界面活性剤など)や樹脂微粒子の利用が検討されている(特許文献2参照)。
特開2004−315739号公報 特開2005−187790号公報
本発明は、以上の諸点を考慮し、起泡発生が少なく消泡性が良好であるとともに、信頼性に優れ、高い印刷品質や印刷物の保存性を可能にしたインク組成物と、掛かる特性を有するインク組成物を用いたインクジェット記録方法と、該記録方法で得られる高画質な記録物とを提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行ったところ、まず、(α)少なくとも、特定のベタイン系界面活性剤と消泡剤とを含有するインク組成物が、起泡性や消泡性において飛躍的な改良効果を示すとの知見を得た。
また、この知見の下でさらに検討を重ねた結果、(β)上記消泡剤として特定の化合物を用い、インク組成物中における各々の配合割合の最適化を図り、十分な吐出安定性を確保することを見出した。
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
(1)下記式(1)の一般式で表されるベタイン系界面活性剤と、下記式(4)の一般式で表されるジアセチレンテトラオールとを含有することを特徴とするインク組成物。
[化1]
(R)p−N−[L−(COOM)qr 式(1)
(上記式(1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Lは2価以上の連結基を表す。Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基、プロトン化された有機アミンもしくは含窒素へテロ環基、4級アンモニウムイオン基を表し、式(1)中のN原子からなるアンモニウムイオンの対イオンとなる場合は、カチオンとして存在しない基を表す。qは1以上の整数を表し、rは1以上4以下の整数を表す。pは0以上4以下の整数を表し、p+rは3もしくは4である。p+rが4である場合はNは4級アミンを構成する窒素原子となる。pが2以上の時はRは同じでも異なっていてもよい。qが2以上の時はCOOMは同じでも異なっていてもよい。rが2以上の時はL−(COOM)qは同じでも異なっていてもよい。)


(上記式(4)中、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表し、R3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、−O−R4−はそれぞれ独立にオキシエチル、オキシプロピル、オキシブチルのいずれかを表し、R5は2価の連結基を表し、k、l、m、nはそれぞれ1〜100の整数を表す。)
(2)式(1)で表されるベタイン系界面活性剤が、下記式(2)の一般式で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載のインク組成物。



(式(2)中、R1〜R3は、炭素数が1〜20のアルキル基を表し、Xは、2価の連結基を表す。)
(3)式(1)又は式(2)で表されるベタイン系界面活性剤が、下記式(3)で表される化合物であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のインク組成物。



(4)前記消泡剤の含有量が、0.1〜1.0重量%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のインク組成物。
(5)前記ベタイン系界面活性剤に対する、前記消泡剤の含有割合が、重量比で、1:0.1〜1:1.7であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のインク組成物。
)インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において用いられることを特徴とする上記(1)〜()のいずれかに記載のインク組成物。
)インクジェット記録方法が、圧電素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッドを用いた記録方法であることを特徴とする()に記載のインク組成物。
)上記(1)〜()のいずれかに記載のインク組成物を充填したインクカートリッジ。
)インクジェット記録方法であって、インク組成物として上記(1)〜()のいずれかに記載のインク組成物を使用すること、または上記(8)のインクカートリッジを使用することを特徴とするインクジェット記録方法。
本発明のインク組成物は、現行のインクジェットプリンタ用インクとして好適である。また、十分な起泡抑制効果や消泡向上性を有しているため、一般的なインクジェット記録方法において、信頼性に優れ、高い印刷品質や印刷物の保存性を提供できる。
本発明のインク組成物においては、下記式(1)の一般式で表されるベタイン系界面活性剤と、消泡剤とを含有することが重要である。
[化5]
(R)p−N−[L−(COOM)qr 式(1)
(上記式(1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Lは2価以上の連結基を表す。Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基、プロトン化された有機アミンもしくは含窒素へテロ環基、4級アンモニウムイオン基を表し、式(1)中のN原子からなるアンモニウムイオンの対イオンとなる場合は、カチオンとして存在しない基を表す。qは1以上の整数を表し、rは1以上4以下の整数を表す。pは0以上4以下の整数を表し、p+rは3もしくは4である。p+rが4である場合Nは4級アミンを構成する窒素原子となる。pが2以上の時Rは同じでも異なっていてもよい。qが2以上の時COOMは同じでも異なっていてもよい。rが2以上の時はL−(COOM)qは同じでも異なっていてもよい。)
以下、各構成要素について詳細に説明する。
[ベタイン系界面活性剤]
本発明におけるベタイン系界面活性剤としては、上記式(1)の化合物並びにその塩から選ばれる一種以上からなるベタイン系界面活性剤が用いられる。
本発明におけるベタイン系界面活性剤としては、インク組成物の被印刷物への定着性向上の点から、下記式(2)の一般式で表されるベタイン系界面活性剤が好ましい。下記式(2)の一般式で表される化合物は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
(式(2)中、R1〜R3は、炭素数が1〜20のアルキル基を表し、Xは、2価の連結基を表す。)
さらに、本発明におけるベタイン系界面活性剤としては、インク組成物の被印刷物への定着性向上の点から、下記式(3)で表されるベタイン系界面活性剤がより好ましい。
[消泡剤]
本発明で使用できる消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、ジアセチレンテトラオール、アセチレンジオール系消泡剤、破泡性ポリマー系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記シリコーン系消泡剤としては、信越化学工業社製のKS508,KS531,KM72,KM85等、東レ・ダウ・コーニング社製のQ−23183A,SH5510等、日本ユニカー社製のSAG30等、旭電化工業社製のアデカネートシリーズ等、ビックケミー・ジャパン社製のBYK−019,BYK−020,BYK−025,BYK−080A,BYK−094,BYK−1650,BYK−1660が挙げられる。特にビックケミー・ジャパン社製のBYK−1650、BYK−1660が好ましい。
上記ジアセチレンテトラオール系消泡剤としては、エアープロダクツジャパン社製のサーフィノールMD20が好ましい。
上記アセチレンジオール系消泡剤としては、日信化学社製のオルフィンSPC等が挙げられる。
上記破泡性ポリマー系消泡剤としては、ビックケミー・ジャパン社製のBYK−012、コグニス ジャパン社製のStarFactant20等が挙げられる。
上記消泡剤の中でも、起泡抑制効果及び消泡性の点から、ジアセチレンテトラオール系消泡剤やシリコーン系消泡剤が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
さらにインクジェットプリンタ用インク組成物に用いた場合の、インク滴の飛翔安定性から、ジアセチレンテトラオール系消泡剤が最も好ましい。なお、前記インク滴の飛翔安定性は、インク滴の飛翔開始時もしくは飛翔中にインク滴が安定して飛翔できる速度の範囲で評価される。
上記ジアセチレンテトラオール系消泡剤の一般式を下記式(4)で表す。下記式(4)で表されるジアセチレンテトラオール系消泡剤としては、例えば、エアープロダクツジャパン社製のサーフィノールMD20が挙げられる。
(式(4)中、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表し、R3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、−O−R4−はそれぞれ独立にオキシエチル、オキシプロピル、オキシブチルのいずれかを表し、R5は2価の連結基を表し、k、l、m、nはそれぞれ1〜100の整数を表す。)
消泡剤の配合量は、少なすぎるとインク組成物に十分な起泡抑制効果や消泡向上性が得られず、多すぎても印字安定性(インク滴の飛翔安定性など)が損なわれる。このため、本発明では、インク組成物中に0.1〜1.0重量%の範囲で含有されることが好ましい。
消泡剤とベタイン系界面活性剤とを、重量比で1:0.1〜1:1.7の配合割合で配合することにより、インク組成物全体として、十分な起泡抑制効果や消泡向上性が得られ、印字安定性に優れるというバランスの良いインク組成物を得ることができる。
[着色剤]
本発明における着色剤としては、通常のインクジェット記録方法において用いられ得るものであれば、水溶性染料でも顔料でも用いることができる。
前記染料としては、特にその種類を限定することなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、塩基性染料が使用できる。例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19、38、51、71、154、168、171、195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3、4、35等を用いることができる。
前記顔料としては、特に制限されることがなく、有機顔料でも、カーボンブラック等の無機顔料でもよい。
前記有機顔料としては、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料またはアゾ系顔料等が挙げられる。
本発明によるインク組成物の静的表面張力は、小さすぎると、安定した吐出量及び飛翔形状を得られない場合があり、大きすぎると、発生した気泡が消えにくい場合があるため、20〜40mN/mの範囲内が好ましく、26〜34mN/mであることがより好ましい。
なお、本発明における静的表面張力は、JIS K 3362に準拠する方法により、市販のウィルヘルミ式表面張力計を用いて測定した値である。
さらに、本発明によるインク組成物の20℃における粘度は、小さすぎても大きすぎても吐出安定性が低下するため、2〜10mPa・sの範囲内が好ましく、3.5〜4.5mPa・sであることがより好ましい。
尚、この粘度は、市販の粘度計等により測定することができる。
さらに、本発明では、前述のベタイン系界面活性剤のほかに、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤およびカチオン系界面活性剤を含有してもよく、中でも、十分な保存安定性を持つインク組成物を得るという観点から、ノニオン系界面活性剤を含有することが特に好ましい。
ノニオン系界面活性剤のさらなる具体例として、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系、ジメチルポリシロキサン等のシリコン系界面活性剤、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等の含フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
なお、これらのノニオン系界面活性剤は、適当な静的表面張力のインク組成物を得るという観点から、インク組成物中に0.1〜5重量%含まれることが好ましい。
また、上記ノニオン系界面活性剤の中でも特にアセチレングリコール系界面活性剤が起泡も少なく、また優れた消泡性能を有する点で好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤の更なる具体例としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられるが、市販品で入手も可能で、例えば、エアープロダクツ社のサーフィノール104、82、465、485、TGや日信化学社製のオルフィンSTG、オルフィンE1010等が挙げられる。
さらに、本発明のインク組成物は、浸透促進剤を含有してもよい。
本発明で使用される浸透促進剤としては、特に限定されないが、中でもグリコールエーテル類が好ましい。
グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いてもよい。中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
なお、これらの浸透促進剤は、インク組成物の適正な物性値(粘度等)の確保、印刷品質、信頼性の確保という観点で、インク組成物 に対して、0.25〜10重量%の範囲の量添加することが好ましい。
以上のような本発明のインク組成物には、必要に応じて、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐・防カビ剤等を添加することができる。
pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアミン類等を用いることができる。また、必要に応じて、コリジン、イミダゾール、燐酸、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ほう酸等をpH緩衝剤として用いることができる。
酸化防止剤・紫外線吸収剤としては、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩等、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物等が用いられる。
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(アーチケミカルズジャパン社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等が挙げられる。
また、本発明のインク組成物に含有される主溶媒は水である。
この水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水などを用いることができる。特に紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水を用いることが、カビやバクテリアの発生を防止してインク組成物の長期保存を可能にする点で好ましい。
本発明のインク組成物はペン等の筆記具類、スタンプ等に好適に使用することができるが、インクジェット記録用インク組成物としてさらに好適に使用できる。
本発明においてインクジェット記録方法とは、インク組成物を微細なノズルより液滴として吐出して、その液滴を記録媒体に付着させる方法を意味する。具体例を以下に説明する。
第一の方法としては、静電吸引方式があり、この方式はノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加して、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、あるいはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式である。
第二の方法としては、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
第三の方法は圧電素子(ピエゾ素子)を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
第四の方式は熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を印刷情報信号に従って微小電極で加熱起泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
以上のいずれの方式も本発明のインクを用いたインクジェット記録方法に使用することができ、それぞれの方式のインクジェットカートリッジに充填することができる。
また、本発明における記録媒体とは、例えば、紙(ゼロックスP(商品名:富士ゼロックス社製)、Xerox 4024(商品名:Xerox Co.(米国))、写真用紙クリスピア<高光沢>(商品名:セイコーエプソン社製)など)等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
本発明の記録物は、前述の構成のインク組成物を用いて、上記インクジェット記録方法により記録が行われたものである。
この記録物は、本発明のインク組成物を用いることにより、印字品質が良好で、優れた印字安定性を示し、美麗な発色状態を呈し、しかもこの美麗な発色状態を長期間に亘って維持することができる。
[例1〜46]
例1〜46のインク組成物を、表1〜2に示す配合割合で各成分を混合して溶解させ、孔径1μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン製)フィルターにて加圧濾過を行って、各インク組成物を調製した。
なお、表1〜2中に示すインク組成物の各成分はインク組成物全量に対する各成分の重量%を示し、残量は水である。
泡立ち性(起泡性)、泡消え性(消泡性)は目視ならびに、泡高さを経時にて観測することで実施した。具体的には、各実施例及び比較例の配合のインク10gを直径2cm×高さ10cmの円筒状ガラス容器に封入して50回振り混ぜ、泡と液体との界面から、泡の最高高さまでの高さ(H)を測定して起泡性の評価を行い、当該泡と液体との界面から泡の最高高さまでの高さ(H)が、0.5Hとなるまでの時間を消泡性として評価した。(実験は23〜24℃の気温の下でおこなった。)
静的表面張力の測定は、いわゆるウィルヘルミ・プレート法を利用して行った。測定に用いた白金プレートは接触長28mmとし、サンプル液に浸漬したこの白金プレートを引き出す時の抵抗を測定した。表4〜6に記載した測定結果は、純水の測定値を基準値72mN/mとして算出したものである。なお、詳細な条件はJIS K 3362に準拠する条件で行った。
各インク組成物をインクジェットプリンタ用インクカートリッジに充填し、ピエゾ素子の歪率を変化させることにより、インク滴の飛翔速度を変化させ、インク滴の飛翔開始時もしくは飛翔中にインク滴が分離して3滴以上の多滴にならないインク滴の最高飛翔速度を最高案定飛翔速度とし、同様に3滴以上の多滴にならないインク滴の最低飛翔速度を最低安定飛翔速度として記録し、前記最高安定飛翔速度と最低安定飛翔速度との差を安定範囲とした。
結果を表3〜表5に示す。
上記の実施例に記載のインク組成物を、インクジェットプリンタPM−G820(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、この専用カートリッジに充填し、インクジェット専用記録媒体(写真用紙クリスピア<高光沢>(セイコーエプソン株式会社製))に印字した結果、良好に印刷を行うことができた。
本発明のインク組成物は、インクジェットプリンタに特に好適なインク組成物として利用することができる。また、本発明のインクジェット記録方法は、種々の記録媒体に記録するインクジェット記録方法として利用できる。さらに、本発明の記録物は、種々の情報を記録しておく記録物として利用できる。

Claims (9)

  1. 下記式(1)の一般式で表されるベタイン系界面活性剤と、下記式(4)の一般式で表されるジアセチレンテトラオールとを含有することを特徴とするインク組成物。
    [化1]
    (R)p−N−[L−(COOM)qr 式(1)
    (上記式(1)中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Lは2価以上の連結基を表す。Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基、プロトン化された有機アミンもしくは含窒素へテロ環基、4級アンモニウムイオン基を表し、式(1)中のN原子からなるアンモニウムイオンの対イオンとなる場合は、カチオンとして存在しない基を表す。qは1以上の整数を表し、rは1以上4以下の整数を表す。pは0以上4以下の整数を表し、p+rは3もしくは4である。p+rが4である場合はNは4級アミンを構成する窒素原子となる。pが2以上の時はRは同じでも異なっていてもよい。qが2以上の時はCOOMは同じでも異なっていてもよい。rが2以上の時はL−(COOM)qは同じでも異なっていてもよい。)


    (上記式(4)中、R1およびR2はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基を表し、R3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、−O−R4−はそれぞれ独立にオキシエチル、オキシプロピル、オキシブチルのいずれかを表し、R5は2価の連結基を表し、k、l、m、nはそれぞれ1〜100の整数を表す。)
  2. 式(1)で表されるベタイン系界面活性剤が、下記式(2)の一般式で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。


    (式(2)中、R1〜R3は、炭素数が1〜20のアルキル基を表し、Xは、2価の連結基を表す。)
  3. 式(1)又は式(2)で表されるベタイン系界面活性剤が、下記式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインク組成物。
  4. 前記消泡剤の含有量が、0.1〜1.0重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク組成物。
  5. 前記ベタイン系界面活性剤に対する、前記消泡剤の含有割合が、重量比で、1:0.1〜1:1.7であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物。
  6. インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において用いられることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のインク組成物。
  7. インクジェット記録方法が、圧電素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッドを用いた記録方法であることを特徴とする請求項に記載のインク組成物。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載のインク組成物を充填したインクカートリッジ。
  9. インクジェット記録方法であって、インク組成物として請求項1〜のいずれか一項に記載のインク組成物を使用すること、または請求項のインクカートリッジを使用することを特徴とするインクジェット記録方法。
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