JP4217116B2 - 座のスライド機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、椅子が備えるスライド機構に関する。さらに詳述すると、本発明は、歯科医用椅子などの作業用椅子の座を傾斜させながらスライドさせる機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
着座する作業者が目的の作業を行ない易い形態を備えた作業用椅子として、例えば特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1には、立った姿勢のままで腰を掛けられる立ち仕事用椅子が開示されている。この椅子は、作業の種類に適した形状に工夫された腰掛部(2,3,4)、支柱(5)、脚(10)及びキャスター(9)を有している(符号は特許文献1におけるもの)。
【0003】
また、椅子の座を前後動させる機構として、特許文献2に開示されたものがある。特許文献2に開示された椅子の座板スライド装置では、座板または座受部材のいずれか一方の部材に案内溝を、他方の部材に案内溝内を摺動する前後2組のスライダをそれぞれ備え、かつ案内溝がスライダを水平方向に摺動させる水平部と鉛直方向の変位を同時に与える傾斜部とを有するようにしている。そして、座板に前後方向の外力を加えることによって、スライダが案内溝内の水平部を摺動することで座板が座受部材に対して水平に摺動し、その後、スライダが案内溝の傾斜部に達することにより座板が座受部材に対して傾斜する。
【0004】
【特許文献1】
実開平5−76365
【特許文献2】
特開平9−322837
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、着座者が上体を前方に傾けて作業を行なう必要があるような場合、座面が水平であると、腰に負担をかけたり腹部などを圧迫し更には背筋が丸く縮まってしまうことから長時間の作業には不向きである。そこで、着座者の作業姿勢に応じて座面を前傾させることが考えられるが、単に座面を前傾させるだけでは、着座者と椅子の重心が前方に移動し不安定となって転倒の危険がある。特許文献1の椅子では座が脚柱に固定される構造であるため、上記の点が解決できない。
【0006】
一方、特許文献2の技術では、着座者が着座した状態で座板をスライドさせるためには、手を使って座板を引き出したり押し込んだりしなければならない。しかも、脚にキャスタが付いている場合などのために、座板をスライドさせる力によって座受部材(ひいては椅子)まで同時に移動してしまう場合には、座板と座受部材とを相対移動をさせるために、座受部材または座受部材と一体となった部材(例えば背凭れや脚柱等)を手などで押さえておく必要がある。特に、作業の都合上もしくは作業の安全性や信頼性等の観点から長く手を離せないような場合、座板の位置調整を行なうのは困難である。加えて、特許文献2の技術では、座板が暫く水平移動した後で傾斜するために、傾斜姿勢となるまでに間があり、着座者が迅速に作業に適した姿勢をとることが難しい。
【0007】
そこで本発明は、簡単な操作で座の位置や角度を迅速に調整できる座のスライド機構を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、前傾状態と水平状態との間で座が座受部材に対して角度変化を成しながら摺動可能とされ前傾姿勢作業用椅子の座のスライド機構において、前記座と前記座受部材とを摺動可能でかつ同時に前記座の前記座受け部材に対する傾斜角度を変化可能に連結する摺動方向が互いに異なる2つの滑り対偶及び当該2つの滑り対偶の摺動を許容する2つの回り対偶とで前記座を前方へ移動させたときに水平状態とすると共に前記座を後方へ移動させたときに前傾状態と角度変化させ、前記座受部材に対する前記座の摺動を規制する係止手段と、前記座受部材と前記座との間に前記座を前記前傾状態の基準位置に復帰させる力を発生させる復帰手段とを備え、前記係止手段による前記座の摺動規制を解除することにより、前記復帰手段による前記座の着座者背面側への移動により水平状態から前傾状態へ自動復帰させるようにしている。したがって、座が座受部材に対して摺動すると直ちに座は座受部材に対して角度変化を生じる。このため、椅子の利用者は迅速に作業に適した姿勢をとれる。例えば、上体を前方に傾けて作業を行なう着座者が迅速に前傾姿勢(作業姿勢)をとることができ、しかも、座が着座者の背面側に移動するので、着座者と椅子の重心が前方に移動してしまうことを防ぎ、着座者および椅子の転倒の危険を回避できる。また、調整された座の位置および傾きは係止手段によってその状態に保持される。また、復帰手段の復帰力を利用して、椅子の利用者は座への荷重の掛け方によって、座の位置および傾きを調整できる。また、椅子の利用者は座への荷重の掛け方によって、直ちに座を前傾状態または水平状態とできる。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の前傾姿勢作業用椅子の座のスライド機構において、前記係止手段は前記座受部材あるいは前記座に支持された前記滑り対偶及び回り対偶の一部を構成する前方側の第1軸と係合する櫛歯状の係合溝と操作のためのレバー部とを有し、前記座あるいは座受部材のいずれか一方に回転可能に取り付けられると共に前記係合溝が前記第1軸へ向けて嵌合する方向あるいは前記第1軸から離反する方向に前記レバー部を常時付勢する付勢手段を備え、前記座若しくは座受部材の前方に備えられるようにしている。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の座のスライド機構を搭載する前傾姿勢作業用椅子において、開閉バルブが下向きとなったガススプリングを脚の中心部に取り付けて座の高さを調整可能に支持する脚柱を構成する一方、前記脚柱底部に前記ガススプリングの前記開閉バルブを足で操作可能な傾動部材を備え、前記座の高さ調整を足で操作可能とするものである。
さらに、請求項4記載の発明は、請求項3記載の前傾姿勢作業用椅子において、前記傾動部材を覆い前記傾動部材が誤って踏まれるのを防止するカバーを備えたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1から図6に本発明の座のスライド機構の実施の一形態を示す。本実施形態では、本発明の座のスライド機構を歯科医用の椅子1に適用した例について説明する。また、本明細書では、特に断らない限り前後方向とは椅子1の奥行き方向を指し、後方とは着座者の背面側を意味し、前方とは座部の前端縁側を意味する。また、左右方向とは椅子1の幅方向を指す。
【0012】
この座のスライド機構は、摺動方向が異なる2つの滑り対偶および当該2つの滑り対偶の摺動を許容する2つの回り対偶により座8と座受部材10とを連結して、座8が座受部材10に対して角度変化を成しながら摺動するようにしている。
【0013】
座8と座受部材10とを連結する2つの滑り対偶および2つの回り対偶は、例えば本実施形態においては、案内溝11と、この案内溝11内に摺動可能かつ回転可能に取り付けられる横断面円形状の軸12とにより構成するようにしている。これら案内溝11と軸との組は座8の前後方向に2組設けられており、座8の前方の組を第1案内溝11aおよび第1軸12aと呼び、座8の後方の組を第2案内溝11bおよび第2軸12bと呼ぶ。
【0014】
本実施形態の座8は、例えば座受部材10に摺動可能に連結される座板13と、この座板13に取り付けられて座面を形成する座部14とにより構成される。座板13は、座部14が載置される天板13aと、この天板13aの左右の両側縁から鉛直下方に向かうように設けられる2つの側板13bとを有し、各側板13bには第1案内溝11aとしての長孔と第2案内溝11bとしての長孔とが形成されている。
【0015】
また、各案内溝11には、溝の縁を覆うように例えばプラスチック製のガイドレール15がそれぞれ取り付けられている。このため、第1案内溝11aおよび第2案内溝11bを摺動する第1軸12aおよび第2軸12bの動きは滑らかになる。各ガイドレール15の左右方向内側の側端部にはフランジ15aが形成されている。そして、各ガイドレール15は側板13bの内側から各案内溝11に嵌め込まれている。このため、各ガイドレール15のフランジ15aが案内溝11の縁の内側に当接して各ガイドレール15の外側への抜け落ちを防止する。また、座板13の内側には座受部材10が位置している。このため、各ガイドレール15は、座受部材10により押さえられ、座板13の内側に抜け落ちることもない。尚、座部14は、例えばクッション材などにより座面を有するように形成され、座板13に設けられた4つの取付部13cに例えばねじ止めにより固定される。但し、座8の構成や形状は特に限定されるものではなく、例えば座部14を用いず座板13そのものにより座面を形成するようにしても良い。
【0016】
本実施形態の座受部材10は、脚柱2が取り付けられる底部10aと、この底部10aの左右の両側縁から鉛直上方に向かい且つ前後方向に広がるように設けられる2つの側壁10bとを有し、各側壁10bの前方および後方には第1軸12aと第2軸12bを取り付ける孔が形成されている。座受部材10における一対の側壁10bの間隔は、座板13における一対の側板13bの間隔よりも小さい。従って、座板13は座受部材10に被せるように取り付けられる。当該取付後、第1軸12aおよび第2軸12bが、それぞれ第1案内溝11aおよび第2案内溝11bを通り且つ側壁10bを貫通するようにして取り付けられる。この第1軸12aおよび第2軸12bの取り付け後、例えば溶接等の固定手段によってこれらの軸12a,12bを側壁10bに固定するようにする。但し、第1軸12aおよび第2軸12bを側壁10bに固定する構成に限らず、例えば座板13の下面に凸部(図示省略)を設け、この凸部により第1軸12aおよび第2軸12bの両端面を押さえるようにし、これらの軸12a,12bの抜け落ちを防止するようにしても良い。尚、脚柱2は座受部材10の底部10aに、例えば溶接等の固定手段により固定するようにする。但し、脚柱2は座受部材10の底部10aに回転可能に取り付けても良い。
【0017】
ここで、本実施形態の座8のスライド機構では、座板13が着座者背面側へ移動することによって水平状態(但し、完全なる水平状態の他に、ほぼ水平とみなせる状態も含むものとする。)から前傾状態となるようにしている。このため例えば本実施形態では、第1案内溝11aの長手方向(即ち、一方の滑り対偶の摺動方向)を水平かつ前後方向とし、第2案内溝11bの長手方向(即ち、他方の滑り対偶の摺動方向)を第1案内溝11aの長手方向に対して第1軸12a回りまたは第2軸12b回り(即ち、回り対偶の回転中心回り)に傾けて前方に向かって下る方向としている。そして、第1軸12aおよび第2軸12bの直径を同じとし、且つ第1軸12aと第2軸12bの中心を結ぶ線が水平線を成すように第1軸12aと第2軸12bを配置するようにしている。そして、座板13が最前方に移動して第1案内溝11aの後端に第1軸12aが接触すると共に第2案内溝11bの後端に第2軸12bが接触した状態で、座板13の天板13aがほぼ水平となるように、第1案内溝11aおよび第2案内溝11bの位置を設定している。本実施形態の構成の場合、座8が後方に移動すると、座8の後方を持ち上げるようにして座8が前傾状態となるので、座8の重心が後方且つ鉛直上方に移動する。したがって、座8を後方に移動させて前傾させた後、座8と座受部材10の相対移動を規制する物や力が無ければ、座8は自重(重力)で水平状態まで移動しようとする。また、座8が水平状態のときは着座者が座8に深く腰掛ける体勢をとるため、前傾状態の座8に着座者が座る場合よりも座8に大きな加重が作用するが、この際に座8が許容移動範囲の鉛直最下位置にあり、また第1案内溝11aで第1軸12aが受け支えられると共に第2案内溝11bの後端側で第2軸12bが受け支えられて負荷が分散することで、座8が安定して支持される。
【0018】
本実施形態の座8のスライド機構は、座受部材10に対する座8の摺動を規制する係止手段16を更に備えるようにしている。係止手段16は、座8と座受部材10の相対移動を禁止し得るものであれば、特にその構成は限定されない。例えば、座受部材10または座8の一方に取り付けられ、他方の部材と係合することによって、座受部材10と座板13との相対移動を禁止する構成を採用できる。本実施形態の係止手段16は、座8に取り付けられ、座受部材10と係合する係止位置と、座受部材10に係合しない非係止位置との間を移動可能であるものとしている。
【0019】
この係止手段16は、レバー部17と、このレバー部17を座板13の側板13bに対し回転可能に取り付ける支軸18と、スペーサとしての軸受19とを有している。さらに、レバー部17は、一対の側部17aと、これらの側部17aを接続する第1接続部17bおよび第2接続部17cより構成される。レバー部17における一対の側部17aの間隔は、座受部材10における一対の側壁10bの間隔よりも小さく、スペーサとしての軸受19によってレバー部17は座受部材10の側壁10bの間に位置するように配置される(図2参照)。また、支軸18は側板13bに第1案内溝11aよりも前方に取り付けられ、レバー部17の支軸18回りの回転によってレバー部17の側部17aが座受部材10に取り付けられた第1軸12aに接触し又離れるようにしている。
【0020】
側部17aには、第1軸12aが嵌め込まれ且つ嵌め込まれた第1軸12aを挟み込む係合溝20が形成されている。第1軸12aが係合溝20に嵌まり、座板13に取り付けられたレバー部17と座受部材10に取り付けられた第1軸12aとが係合し、第1案内溝11a内の第1軸12aの摺動が規制されることによって、座8と座受部材10の相対移動が禁止され、座受部材10に対して座8が固定される。例えば本実施形態では、この係合溝20を複数設けるようにしている。より具体的には、一対の側部17aを櫛歯状に切り欠いて、第1案内溝11aの後端に位置する第1軸12aが嵌め込まれる第1の係合溝20と、第1案内溝11aの中間に位置する第1軸12aが嵌め込まれる第2の係合溝20と、第1案内溝11aの前端に位置する第1軸12aが嵌め込まれる第3の係合溝20を設けるようにしている。尚、隣接する係合溝20の間には座板13側に向かう曲面状の突出部21を設けて、第1軸12aが係合溝20の間に位置した場合でも、隣接する係合溝20のいずれかに第1軸12aが誘導されるようにしている。また、側部17aの先端と第1の係合溝20との間および側部17aにおける支軸18の取付部分と第3の係合溝20との間にも座板13側に向けて曲面形状を形成し、各係合溝20に第1軸12aが嵌まり易いようにしている。また、レバー部17と座板13の間には付勢手段22が設けられており、係止手段16を係止位置(即ち第1軸12aが係合溝20に嵌め込まれる位置)に向かう方向に付勢するようにしている。例えば付勢手段22としての圧縮コイルばねを天板13aと第1接続部17bとの間に取り付けて、レバー部17を第1軸12aに接触する方向に回転するように付勢させている。
【0021】
本実施形態の座8のスライド機構は、座受部材10に対して予め定めた基準位置から変位した座8を当該基準位置に復帰させる力を発生させる復帰手段23を更に備えるようにしている。そして、例えば本実施形態では、座8が前傾状態となる位置を基準位置となるように設定している。座8は重心を後方且つ鉛直上方に移動させるようにして前傾するので、基準位置が重力による座8の自然到達位置とは異なる位置に設定されることとなる。
【0022】
例えば本実施形態の復帰手段23は、引張コイルばね24と、座板13に固定されて引張コイルばね24の一端が取り付けられる第1ばね支持部25と、座受部材10に固定されて引張コイルばね24の他端が取り付けられる第2ばね支持部26とにより構成される。第1ばね支持部25は、座板13の下面に突出するように設けられ、引張コイルばね24を引っ掛けるための穴が形成されている。第2ばね支持部26は、座受部材10の底部10aの上方に2つの側壁10bを接続するように設けられる基部26aと、基部の後方の端縁から鉛直上方に立ち上がるように設けられ、引張コイルばね24を引っ掛けるための穴が形成されるばね掛け部26bとにより構成されている。第1ばね支持部25は、第2ばね支持部26よりも前方に位置するように設けられており、引張コイルばね24は、第1ばね支持部25と第2ばね支持部26を近づけるように、即ち座板13が後方且つ前傾となる位置に移動するように、付勢している。引張コイルばね24は、例えば2つ備えられている。尚、第2ばね支持部26の基部26aは、座板13と共に移動するレバー部17と干渉することのないように、レバー部17と対向する部分が切り欠かれている。
【0023】
尚、以上の座8のスライド機構を構成する諸部材の材料は、特に限定されるものではなく、機械的強度や軽量性など必要な設計条件を満足し得る材料(例えばアルミニウム合金などの金属材料や硬質プラスチックなど)を適宜選択して良い。
【0024】
以上のように構成された座8のスライド機構は、例えば以下に説明するように動作する。先ず、レバー部17が操作されない限り、第1軸12aはいずれかの係合溝20に嵌まっており(図3,図5,図6参照)、このため第1軸12aは第1案内溝11a内を摺動することはなく、座板13(ひいては座部14)が座受部材10(ひいては脚柱2)に対して固定される。
【0025】
一方、レバー部17を付勢手段22の付勢力に抗して回転させると、第1軸12aと係合溝20の係合が外れて、第1軸12aは第1案内溝11a内を自由に摺動できるようになり、座8の前後方向へのスライドが可能な状態となる(図4参照)。
【0026】
ここで、引張コイルばね24が第1ばね支持部25と第2ばね支持部26を近づけるように付勢しているので、レバー部17が非係止位置にある状態で、着座者が座8から腰を浮かす等によって、座8に作用する荷重を無くす若しくは当該荷重が引張コイルばね24の付勢力よりも小さくなると、引張コイルばね24に引かれて座板13が後方に移動する。座板13が後方に移動すると、第2案内溝11bが第2軸12bに沿って案内される。これにより、第2案内溝11bが形成された座板13の後部が上方に案内される。一方、第1案内溝11aは水平なので座板13の前部の位置は第1軸12aに沿って案内されても上下方向に変化しない。このため、座板13は第1軸12aを中心に揺動すると共に後部を上方に移動させ、座部14が前傾される。
【0027】
他方、レバー部17が非係止位置にある状態で、着座者が座8に深く腰掛ける等によって座8に引張コイルばね24の付勢力よりも大きな荷重を作用させると、座板13が鉛直下方に移動しようとする。これにより、第2案内溝11bが第2軸12bに沿って案内され、引張コイルばね24の付勢力に抗して、座8が水平状態となる。
【0028】
そして、所望となる座8の位置にて、レバー部17を離すと、付勢手段22の力でレバー部17が回転して、第1軸12aは再びいずれかの係合溝20に嵌まり、座板13(ひいては座部14)が座受部材10(ひいては脚柱2)に対して固定される。なお、第1軸12aがいずれかの係合溝20に収容されている時に、座板13に前後方向への外力が加えられても、また座8に荷重が作用しても、第1軸12aの周面が係合溝20の縁に当接しているので、座板13は移動することはない。また、第1軸12aは3箇所の係合溝20のいずれかに係止可能であるので、座板13は3箇所の位置で固定することが可能である。
【0029】
このスライド機構によれば、椅子1の利用者はレバー部17の操作と座8への荷重の掛け方(例えば腰を浮かす等して座8への荷重を減らす事)のみによって、直ちに座面を前傾状態とできる。従って、着座者は極めて簡単な操作によって迅速に前傾姿勢(作業姿勢)をとることができる。しかも、座8が着座者の背面側に移動するので、着座者と椅子1の重心が前方に移動してしまうことを防ぎ、着座者および椅子1の転倒の危険を回避できる。さらに、椅子1の利用者はレバー部17の操作と座8への荷重の掛け方(例えば深く腰を降ろす等して座8への荷重を増やす事)のみによって、直ちに座面を水平状態にもできる。また、これらの座面の切り替えは、次のように着座者が座った状態でも可能である。即ち、着座者が座り直す時に少し腰を浮かすような動作と同時に操作することで、座面はすばやく移動するので、着座者が座った状態でも座の角度を調整することが出来る。従って、着座者は極めて簡単な操作によって前傾姿勢(作業姿勢)から安楽な姿勢に切り替えることができる。尚、この状態において、必ずしも座面を水平とする必要は無く、作業の種類に応じた設計として、座8に幾分傾斜角度を付与するようにしても良い。
【0030】
この座8のスライド機構によれば、手を使って座板13を引き出したり押し込んだりする必要はなく、このため脚9にキャスタ30が付いていても、座板13をスライドさせる力によって椅子1が動かないように座受部材10や座受部材10と一体となった部材を手などで押さえておく必要もない。本発明によれば、作業の都合上もしくは作業の安全性や信頼性等の観点から長く手を離せないような場合でも、優れた操作性で座8の位置調整を迅速に行なう事が可能である。例えば本実施形態のような作業の安全性や確実性が要求される歯科医が用いる椅子1への本発明の適用は好適例である。
【0031】
ここで、本実施形態の椅子1は、脚柱として機能するガススプリング2のバルブ3を開閉して座8の高さを調整可能とする昇降装置を更に備えている。そして、この椅子1は、足で操作可能な傾動部材4と、この傾動部材4を保持する保持部材5とを備えている(図7〜図11等参照)。
【0032】
椅子1の昇降装置を構成しているガススプリング2としては例えば先端側に開閉バルブ3を備えた構造の公知のスプリングが用いられている(図7参照)。本実施形態で採用しているガススプリング2は先端の弁体3aが軸方向にのみ移動可能な構造でありこの弁体3aがガススプリング2の本体側へと押し込まれたときだけ開状態となって通気可能となり、それ以外のときはバルブ3が遮断された状態となって通気できない状態に保たれている。本実施形態では、開閉バルブ3の弁体3aが下向きとなった状態でガススプリング2を椅子1の脚9の中心部に取り付け、このガススプリング2によって座8を支える伸縮可能な支柱(脚柱)を構成している(図1参照)。特に図示していないが、座8を上昇させるように付勢するコイルスプリング等の付勢部材がこのガススプリング2に内蔵されている。このようなガススプリング2を昇降装置に利用した椅子1においては、開閉バルブ3を開状態とした場合に座8の昇降が可能となり、着座している使用者の体重によって座8を低くしあるいは付勢部材の反力によって座8を高くするなどし、所望の高さとなったところでバルブ3を閉状態とすることによって座8をその高さに保持することができる。
【0033】
傾動部材4は、傾動した場合にてこ(梃子)の作用で上述のバルブ3の弁体3aをガススプリング2の本体側に押し込んで開状態とする部材で、足で踏むことによって傾動させることが可能なように椅子1の脚9に取り付けられている。本実施形態の傾動部材4は、弁体3aの先端に宛われるバルブ押圧部4a、このバルブ押圧部4aから放射状に広がるアーム部4b、このアーム部4bによって支持されるリム部4cを備えた構造となっている(図8等参照)。
【0034】
傾動部材4のバルブ押圧部4aはガススプリング2の弁体3aの先端に宛われる部材であり、傾動部材4の中心となる位置に設けられている(図8参照)。例えば本実施形態ではこのバルブ押圧部4aを略矩形であって表面が平坦な部材によって形成している(図9参照)がこれは一例に過ぎず、傾動部材4が傾動した際に弁体3aを軸方向に押し込むことのできる大きさと形状になっていれば形状等は特に限定されることはない。例えば、弁体3aの先端形状に合わせて接触部分が凹形状となっているものでもよい。尚、バルブ押圧部4aと接触する弁体3aの先端部分は例えばR(丸み)を有する曲面状としている。
【0035】
傾動部材4のアーム部4bはバルブ押圧部4aから放射状に広がりリム部4cを支持するいわばスポークのように機能する部材である。アーム部4bのアーム数・形状・配置は、例えば少なくとも3本のアームがそのうちの2本が直線状にないように配置されたものであって傾動時にバルブ押圧部4aを介して弁体3aを押し込むことのできるもので、傾動部材4がどの方向に傾いても弁体3aを同様に押し込むことができ尚かつ傾動部材4を製作しやすいようなものであることが好ましい。このような観点から、本実施形態では十字状に交差する真っ直ぐの2本(あるいは4本)のアームによってアーム部4bを構成している。こうした場合、アーム部4b自体も傾動部材4も製作しやすいことに加え、保持部材5においてこの傾動部材4の中心部が収容される収容溝6も十字状となるため溝成形が極めて容易になるという利点がある。
【0036】
傾動部材4のリム部4cは椅子1の使用者が足で踏むことができるようにこの傾動部材4の外周の全部または一部を形成している部材である。バルブ押圧部4aやアーム部4bと同様、このリム部4cの形状も特に限定されるものではなく、例えば途中が途切れていて完全な環状となっていないもの、あるいは多角形となっているもの等でも構わないが、椅子1が回転椅子である場合等には、着座者がいずれの方向からも踏むことができるように設けられていれば着座方向に関わらず操作することが可能となる点で好ましい。本実施形態ではこのような観点からリム部4cの形状を円環形状とし(図8、図11参照)、着座者の椅子1への着座方向が一定でなくてもリム部4cを同じような動作で踏むことによって傾動部材4を傾動させることができるようにしている。
【0037】
保持部材5は、上述の傾動部材4を傾動動作可能な状態で椅子1の所定位置において保持している部材で、例えば脚9に足踏み可能な傾動部材4を設けるようにした本実施形態の歯科医用椅子1においてはバルブ押圧部4aおよびその周辺を受け支えるように脚9の中央部の底側に着脱可能な状態で取り付けられている(図8参照)。この場合の保持部材5は、少なくともバルブ3が押し込まれる程度まで傾斜できるような状態でこの傾動部材4を保持している。本実施形態においては、保持部材5を収容部材5aと座部材5bとガイド部材5cとで構成し、このうち収容部材5a側に十字状の収容溝6を設け、バルブ押圧部4aの全部およびアーム部4bの中央寄りの一部が収容されるようにしている(図9参照)。ガイド部材5cは、弁体3aの側面に当接して弁体3aを摺動方向(弁体3aおよびガススプリング2の軸方向)に案内する(換言すれば、弁体3aの当該摺動方向以外の方向への変位を規制する)。座部材5bは、このようにバルブ押圧部4aとアーム部4b(の一部)とが収容された状態の収容部材5aの底面にねじ等で取り付けられ、バルブ押圧部4aおよびアーム部4bを受け支える座として機能する(図8参照)。このようにして保持部材5により保持される傾動部材4は、保持部材5に対し水平面内で回転することはできないが所定の範囲内で傾斜することが可能となっている。この場合における収容溝6の深さは、上述したように少なくともバルブ3が押し込まれる程度まで傾動部材4が傾斜することができる範囲であれば自由に設定することができる。傾動部材4が傾斜した場合、座部材5bの周縁であってアーム部4bの裏側に接する部分が傾動部材4の支点(図8中において符号Fで示す)としてはたらき、リム部c(力点)に加えられた力がてこの作用により増幅され、バルブ押圧部4a(作用点)を介して弁体3aを押し込む力が作用する。この際、弁体3aを押し込む力は鉛直軸方向からは少し傾くが、弁体3aはガイド部材5cにより鉛直軸方向へガイドされる。即ち、ガイド部材5cは、弁体3aの摺動を妨げない程度に弁体3aに当接しており、斜め方向に加えられた力を鉛直軸方向へ変換する働きをする。なお本実施形態においては、傾動部材4をどの方向に傾斜させた場合にも同様に傾斜させるようにするため座部材5bを真円形状としている(図11参照)。こうした場合、てこの支点(つまり座部材5bの周縁)Fから弁体3aまでの距離が一様となるため傾動部材4がどの方向にも同様に傾斜するようになる。なお、アーム部4bと収容溝6を十字状とした本実施形態においては、傾動部材4が傾斜した場合における座部材5bとアーム部4bとの接点数(支点Fの数)は2箇所、場合によって1箇所である。
【0038】
上述したように、本実施形態の歯科医用椅子1においてリム部4cはいずれの位置からも踏みやすいように形成されていることが好ましいが、その一方で、椅子1の使用中にリム部4cが誤って踏まれることにより座8が不意に降下するというような誤動作を生じさせない必要もある。そこで本実施形態ではこの傾動部材4を覆うカバー7を設けることにより傾動部材4のリム部4cが誤って踏まれるのを防止している(図8参照)。この場合のカバー7の大きさ、形状、設置高さはリム部4cの踏み易さと誤動作防止という両観点から適宜決定され、例えば本実施形態では、カバー7の基本形状をリム部4cと同径の円形とし、更に放射状に5本設けられている各脚9を覆うため放射状に突出する5本の脚カバー7aを一体化した形状としている(図10、図11参照)。
【0039】
本実施形態の歯科医用椅子1における座8の昇降動作は以下のようになる。
【0040】
椅子使用時、バルブ3は閉じた状態となっており座8はある高さに保持されている。このとき、弁体3aがバルブ押圧部4aを下方に押し付けるように作用しており、傾動部材4は座部材5bによってほぼ水平に保持されている(図8参照)。この状態から座8の高さを変える場合にはリム部4cの任意の個所を足で踏み傾動部材4を傾斜させる(図8参照)。こうした場合、傾動部材4は保持部材5上を支点Fとして、より具体的には座部材5bの周縁であって足で踏んだ寄りの部位を支点Fとして傾斜し、中央のバルブ押圧部4aを上昇させる(図8参照)。この結果、弁体3aがこのバルブ押圧部4aによって押し込まれ、バルブ3が開いた状態となって座8の昇降が可能となる。この状態で座8を所望の高さとなる位置まで昇降させたらリム部4cから足を離せばよい。弁体3aの戻り力によってバルブ3が自動的に閉じた状態となり、座8がその高さに保持される。また、傾動部材4は弁体3aにより下向きに押圧されて再び水平な状態に戻る(図8参照)。尚、座8を下げるときには利用者は例えば着座した状態でリム部4cを踏み操作するようにする。また、座8を上げるときには利用者は例えば立ち上がった状態でリム部4cを踏み操作するようにする。因みに、ここではリム部4cを足で踏む場合について説明したがこのリム部4cを足のつま先で跳ね上げるようにしても傾動部材4を傾動させることができる。
【0041】
尚、本実施形態では足踏み動作によって座8の高さの調整が可能となる椅子1を示したが、同様の機構により手動式の高さ調整機構を構成することもできる。すなわち、傾動部材4を椅子1の座8の裏側に設けることにより手でリム部4cの一部を持ち上げあるいは押し下げることによってバルブ3を開状態とすることができる高さ調整機構を構成できる。この場合の具体的な一例としては、例えば図12に示すように、図8に示したガススプリング2、バルブ3、傾動部材4、保持部材5等を上下逆さまにして傾動部材4が座8の裏側に位置するようにしたものを挙げることができる。
【0042】
この椅子1によれば、ガススプリング2のバルブ3を開閉して座8の高さを調整可能とする昇降装置を備え、且つバルブ3の弁体3aの先端に宛われるバルブ押圧部4a、このバルブ押圧部4aから放射状に広がるアーム部4b、およびこのアーム部4bによって支持されるリム部4cを備え使用者が手または足で傾動操作可能な傾動部材4と、バルブ押圧部4aおよびその周辺を保持するとともに弁体3aの側面に当接して弁体3aを摺動方向に案内するガイド部材5cを備え、傾動部材4が傾動したときこの傾動部材4との接点を支点としたてこの作用によりバルブ押圧部4aで弁体3aを押圧させバルブ3を開かせる傾動部材4用の保持部材5とを備えているので、弁体3aの先端にバルブ押圧部4aを宛った状態の傾動部材4を保持するという極めて簡単な構造によりバルブ3の開閉機構を構成でき、簡単な構成を実現し尚かつ部品点数を少なくすることができる。このため軽量であり尚かつ耐久性に優れる椅子の昇降装置を構築することができ、製造工程の簡素化を図ることも可能となる。加えて、傾動部材4の一部が損壊したような場合であっても部品を簡単に取り換えることが可能である。また、例えば椅子1を構成する部材に規格品(金型を必要としない市販品など)を使用することで安価な機構にできる。しかもこの機構はてこの作用を利用して弁体3aを押圧する構造であるため軽い力で操作することができ、尚かつ弁体3aを円滑に開閉動作させることができる。また、押圧する際に弁体3aがこじれるといったような従来の機構が有していたような問題を生じることなくバルブ3を確実に開閉動作させることができる。
【0043】
またリム部4cの形状を円環状とすることで、どの位置においてもリム形状が同様となることから、どの部位を足で踏みあるいは手で上下させるとしても同様の操作を行えばよいという使用者にとって簡単な方向性のない操作を実現することができる。
【0044】
また、アーム部4bと収容溝6を十字状とすることで、傾動部材4の構成が簡単かつ製作しやすいものとなり、加えて収容溝6がきわめて成形しやすい簡単なものとなる。
【0045】
さらに、傾動部材4を脚側に設置するとともにカバー7を設けることで、歯科医をはじめとする使用者が傾動部材4を踏むことによって座の高さを調整することが可能となることに加え、椅子の使用中において誤ってリム部4cを踏んで座8が不意に降下するといったような誤動作が生じるのを簡単な構造により未然に防止することができる。
【0046】
治療中の歯科医にとっては手指の清浄度を保ちつつ座8の高さを適宜変化させることができれば便宜であり、足踏み動作により昇降可能となる本発明に係る椅子は歯科医用として特に好適である。
【0047】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では本発明を歯科医用の椅子1に適用したが、他の作業用椅子に本発明を適用しても良く、また事務用椅子に本発明を適用しても良い。
【0048】
また、上述の実施形態では座板13の側板13bに案内溝11が形成され、座受部材10に軸12が取り付けられた構造としたが、これに限らず、座板13の両側板13bを連結するように軸12を取り付け、座受部材10の側壁10bに案内溝11を形成した構造としても構わない。
【0049】
また、上述の実施形態では案内溝11を貫通した長孔で構成しているがこれに限られず、有底溝で形成しても構わない。また、案内溝11を摺動する軸12は、座受部材10や座板13を貫通する軸に限られず、座受部材10の側壁10bや座板13の側板13bから案内溝11に摺動可能に嵌まるように突出するピンであっても良い。
【0051】
また、上述の実施形態では座8と座受部材10とを連結する滑り対偶および回り対偶として、案内溝11と、この案内溝11内に摺動可能かつ回転可能に取り付けられる軸12を用いたが、この例には限られない。例えば、図示は省略するが、座8と座受部材10の一方の部材に棒状のガイド軸を軸方向を異ならせて前後2組取り付け、これら2組のガイド軸を摺動するスライダをそれぞれ取り付け、且つ座8と座受部材10の他方の部材をガイド軸と直交する軸回りに回転可能となるように前後2組のスライダに取り付けるようにしても良い。
【0052】
また、上述の実施形態における係止手段16は3つの係合溝20を有するものとしたが、係合溝20(即ち、座8の係止位置)の数はこの例に限らず3つ未満でも4以上でも良い。
【0053】
また、係止手段16や復帰手段23は上述の実施形態の例には限られない。例えば、周知のロック機構付きガススプリングを用い、その一端を座板13に回転可能に取り付けると共に、その他端を座受部材10に回転可能に取り付けるようにしても良い。ロック機構付きガススプリングは、内部にガスを封入したシリンダ装置で、封入流体の移動通路を開閉する弁と、当該弁を開閉操作するレバーなどの操作手段(図示省略)等を有し、封入流体の移動を許容することで伸縮可能なロック解除状態となり、封入流体の移動を禁止することで伸縮不可能なロック状態となる。この場合、ガススプリングのロックを解除することで、当該ガススプリングは伸縮可能となり、座受部材10に対して座8が摺動可能となる。また、ガススプリングをロック状態とすることで、当該ガススプリングは伸縮不可能となり、座受部材10に対して座8が固定される。このロック機構付きガススプリングを用いる場合、座8の固定位置を無段階で調整できる利点がある。尚、ガススプリングの復帰力を座8が基準位置に復帰する力に利用しても良く、ガススプリングの他に復帰手段23(座8が基準位置から変位することで変形して復元力を蓄えるばね等)を別途設けても良い。
【0054】
また、本発明に係るスライド機構を、場合によっては肘掛けのスライド機構や背凭れのスライド機構などに利用しても良い。即ち、摺動方向が異なる2つの滑り対偶および当該2つの滑り対偶の摺動を許容する2つの回り対偶により、椅子のスライド部材(例えば肘掛けや背凭れなど)と被スライド部材(例えば肘掛け支柱や背支桿など)とを連結して、スライド部材が被スライド部材に対して角度変化を成しながら摺動するようにする。この場合、上述の実施形態のように、被スライド部材に対するスライド部材の摺動を規制する係止手段16を更に備えても良く、被スライド部材に対して予め定めた基準位置から変位したスライド部材を基準位置に復帰させる力を発生させる復帰手段23を更に備えるようにしても良い。
【0055】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1記載の前傾姿勢作業用椅子の座のスライド機構によれば、座が座受部材に対して摺動すると直ちに座は座受部材に対して角度変化を生じるので、椅子の利用者は迅速に作業に適した姿勢をとれる。例えば、座は着座者背面側への移動により水平状態から前傾状態となるので、上体を前方に傾けて作業を行なう着座者が迅速に前傾姿勢(作業姿勢)をとることができる。しかも、座が着座者の背面側に移動するので、着座者と椅子の重心が前方に移動してしまうことを防ぎ、着座者および椅子の転倒の危険を回避できる。さらに、調整された座の位置および傾きは係止手段によってその状態に保持される。さらに、復帰手段の復帰力を利用して、椅子の利用者は座への荷重の掛け方によって、座の位置および傾きを調整できる。具体的には、椅子の利用者は座への荷重の掛け方によって、直ちに座を前傾状態または水平状態とできる。即ち、腰を浮かす等して座への荷重を減らせば直ちに座は前傾状態となり、腰を降ろす等して座への荷重を増やせば座を水平状態にできる。この座のスライド機構によれば、手を使って座を引き出したり押し込んだりする必要はなく、このため脚にキャスタが付いている場合に座をスライドさせる力によって椅子が動かないように押さえておく必要もない。本発明によれば、作業の都合上もしくは作業の安全性や信頼性等の観点から長く手を離せないような場合でも、優れた操作性で座の位置調整を迅速に行なう事が可能であり、例えば作業の安全性や確実性が要求される歯科医が用いる椅子等への適用は好適である。
【0056】
さらに、請求項2記載の前傾姿勢作業用椅子の座のスライド機構によれば、着座者は腰を浮かしてレバー部を持ち上げるだけの極めて簡単な操作によって迅速に前傾姿勢(作業姿勢)をとることができる。さらには、着座者はレバー部を持ち上げてから座に深く腰を降ろす等して座への荷重を増やす事のみによって、直ちに座面を水平状態にもできる。
【0057】
さらに、請求項1または2記載の座のスライド機構を搭載した請求項3記載の前傾姿勢作業用椅子によれば、傾動部材を踏むことによって座の高さを調整することが可能となる。つまり、手を使わずに足踏み動作で座を任意の高さに昇降させ得る。したがって、作業の都合上もしくは作業の安全性や信頼性等の観点から長く手を離せないような前傾姿勢での作業においては、例えば歯科医のように上体を前方に傾けて作業を行なう間にいすの高さを調整したい場合においては、足踏み動作だけで座の高さを調整でき、治療中の手指の清浄度を保ちつつ誤動作なく安全に座の高さを適宜変化させることができる。
さらに、請求項4記載の前傾姿勢作業用椅子によれば、傾動部材はカバーによって覆われているため、椅子の使用中において誤って傾動部材を踏んで座が不意に降下するといったような誤動作が生じるのを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の座のスライド機構の実施の一形態を示し、当該スライド機構を適用した椅子の座の付近を示す概略側面図である。
【図2】図1におけるII−II線で切った断面を示す概略平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線で切った断面を示す概略中央断面側面図である。
【図4】図3に示した状態から係止手段が非係止位置に移動した様子を示す概略中央断面側面図である。
【図5】図3に示した状態から座がスライドした様子を示す概略中央断面側面図である。
【図6】図5に示した状態から座が更にスライドした様子を示す概略中央断面側面図である。
【図7】本発明を歯科医用椅子に適用した実施形態を示す全体図である。
【図8】歯科医用椅子の脚部の構造を縦断面においてのみ示す部分拡大図である。
【図9】バルブ押圧部材とその周辺部およびこれらが収容される収容部材を示す部分拡大底面図である。
【図10】カバーの平面図である。
【図11】椅子の脚部(脚はキャスターを外した状態)のみの構造を示す底面図である。
【図12】本発明の椅子の他の実施形態の一例を示す概略断面側面図である。
【符号の説明】
8 座
10 座受部材
11a 第1案内溝(滑り対偶)
11b 第2案内溝(滑り対偶)
12a 第1軸(回り対偶)
12b 第2軸(回り対偶)
16 係止手段
23 復帰手段

Claims (4)

  1. 前傾状態と水平状態との間で座が座受部材に対して角度変化を成しながら摺動可能とされ前傾姿勢作業用椅子の座のスライド機構において、前記座と前記座受部材とを摺動可能でかつ同時に前記座の前記座受け部材に対する傾斜角度を変化可能に連結する摺動方向が互いに異なる2つの滑り対偶及び当該2つの滑り対偶の摺動を許容する2つの回り対偶とで前記座を前方へ移動させたときに水平状態とすると共に前記座を後方へ移動させたときに前傾状態と角度変化させ、前記座受部材に対する前記座の摺動を規制する係止手段と、前記座受部材と前記座との間に前記座を前記前傾状態の基準位置に復帰させる力を発生させる復帰手段とを備え、前記係止手段による前記座の摺動規制を解除することにより、前記復帰手段による前記座の着座者背面側への移動により水平状態から前傾状態へ自動復帰させることを特徴とする前傾姿勢作業用椅子の座のスライド機構。
  2. 前記係止手段は前記座受部材あるいは前記座に支持された前記滑り対偶及び回り対偶の一部を構成する前方側の第1軸と係合する櫛歯状の係合溝と操作のためのレバー部とを有し、前記座あるいは座受部材のいずれか一方に回転可能に取り付けられると共に前記係合溝が前記第1軸へ向けて嵌合する方向あるいは前記第1軸から離反する方向に前記レバー部を常時付勢する付勢手段を備え、前記座若しくは座受部材の前方に備えられている請求項1記載の前傾姿勢作業用椅子の座のスライド機構。
  3. 請求項1または2記載の座のスライド機構を搭載する前傾姿勢作業用椅子において、開閉バルブが下向きとなったガススプリングを脚の中心部に取り付けて座の高さを調整可能に支持する脚柱を構成する一方、前記脚柱底部に前記ガススプリングの前記開閉バルブを足で操作可能な傾動部材を備え、前記座の高さ調整を足で操作可能とする前傾姿勢作業用椅子。
  4. 前記傾動部材を覆い前記傾動部材が誤って踏まれるのを防止するカバーを備えたものである請求項3記載の前傾姿勢作業用椅子。
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