JP4214740B2 - 圧縮空気供給システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は圧縮空気を利用する者に有料で圧縮空気を供給する圧縮空気供給システムに関し、特に圧縮空気利用者は、圧縮空気設備機器の選定や運転管理に関し手を煩わせることなく、圧縮空気を利用することのできる環境を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧縮空気は、動力源や噴射媒体として、多くの産業分野で活用されている。この圧縮空気は、空気圧縮機により大気中の空気を圧縮して製造し、配管を通じて使用場所へ供給されている。従来、圧縮空気の利用者は、空気圧縮機の適切な機種を選定して購入設置し、配管設備を工事して圧縮空気を利用している。また、始業点検から、定期的な潤滑油や消耗部品の交換、異状発生時の対応など、空気圧縮機設備の維持管理作業も空気圧縮利用者がその責務として実施していた。
【0003】
圧縮空気利用者が空気圧縮機を購入せず、維持管理作業も軽減したい場合には、特開2002−7741号公報に記載されているような機種選択手段によるレンタル利用形態が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開2002−7741号公報に記載されたものでは、圧縮空気利用者(需要者)が空気圧縮機を購入する必要が無く、維持管理作業(メンテナンス)からも解放されると記載されている。
【0005】
この公報記載のものでは、圧縮空気或いは空気圧縮機の使用状況として運転時間に応じた課金を例示している。しかし、圧縮機のアンロード運転や可変速運転を考慮すると実際の空気使用量と運転時間とは乖離する。そのため、使用状況を示す数値として運転時間を採用することは、圧縮空気利用者と設備を設置運営する者との間で、両者が納得しやすい手段とは言えない。即ち、この公知例記載の方法では課金方法に問題があった。
【0006】
また、この公報記載の公知例では、設備を運転する上で必要なエネルギ源である電力や燃料の購入代金の負担を誰が行うのか言及されておらず、責任分担が不明確であることから省エネルギへの取り組みが不十分になりやすい。
【0007】
さらに、圧縮空気供給設備を維持管理する者(供給者)が該設備を維持管理するために用いる手段や方法についても具体的な記載が無い。維持管理作業者が各々の設備近くに常駐する場合、設備数に対し維持管理に従事する要員が必要であった。
【0008】
本発明の目的は、圧縮空気利用者が、圧縮空気設備機器の選定や運転管理に関し手を煩わせることなく、圧縮空気を利用することのできる環境を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、圧縮空気利用者と圧縮空気設備の設置運営者の両者が納得できる圧縮空気利用者への課金方法を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、設備を運転する上で必要なエネルギ源の使用に関し省エネルギ化への取り組みがし易い圧縮空気供給システムを得ることにある。
【0011】
本発明の他の目的は、圧縮空気供給設備を遠隔監視できるようにして、必要時のみに作業者を派遣するようにでき、作業者が設備近くに常駐する必要のない圧縮空気供給システムを得ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の圧縮空気供給システムは、空気圧縮機とその下流に連なる空気流路を備えた圧縮空気供給設備と、前記空気流路の途中に設けられ該流路内の圧力を検出すると共に、該検出値を電気信号に変換し送信する機能を備えた圧力検出手段と、前記空気流路の途中に設けられ該流路内の圧縮空気の流量を検出すると共に、該検出値を電気信号に変換し送信する機能を備えた流量検出手段と、前記圧力検出手段及び流量検出手段からの検出値の情報を受信し、それらを基に圧縮空気使用量並びにその使用量に基づく圧縮空気使用料金を算出する手段とを備えたことにある。前記空気流路は、一般には、空気が流れる配管及び圧縮空気を貯める空気槽を備える。
【0013】
本発明によれば、圧縮空気利用者が、圧縮空気設備機器の選定や運転管理に関し手を煩わせることなく、圧縮空気を利用することのできる環境を提供することができる。
【0014】
前記圧縮空気供給設備は、外部から供給される電力をエネルギ源として動作するものである場合、該設備全体に供給する電力使用量を計測する電力計(例えば積算電力計)を備えると良い。この電力計は本設備の電力使用量を計測し、圧縮空気利用者がこの設備と別の用途に使用する電力量とは独立とする。このようにすれば、設備を運転する上で必要なエネルギ源の使用に関し、省エネルギ化への取り組みがし易い圧縮空気供給システムが得られる。
【0015】
また、前記圧縮空気供給設備の空気圧縮機内部の温度、圧力、騒音、振動の少なくとも1つの状態量を監視し、その情報を電気信号に変換し遠隔地に送信する機能を備えた監視手段と、該監視手段からの監視情報を遠隔地において受信する監視情報受信手段とを備え、圧縮空気供給設備の管理者が前記空気圧縮機に関する監視情報を遠隔地で監視できるようにすると良い。このようにすることにより、圧縮空気供給設備を遠隔監視でき、必要時のみに作業者を派遣すれば良いから、作業者が設備近くに常駐する必要のない圧縮空気供給システムが得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的実施例を説明する。
圧縮空気供給設備は、1台或いは複数台の空気圧縮機とその下流に接続された空気流路から構成される。空気流路は、圧縮空気が流れる配管、開閉弁及び空気槽(レシーバタンク)等、圧縮空気が通過するすべての空間を含むものとして説明する。空気流路の途中には、該流路内の圧力を検出する圧力検出手段と、該流路を流れる圧縮空気の流量を検出する流量検出手段の両方若しくはそれらのうちの少なくとも一方を備えている。また、圧力や流量の検出手段は、検出値を電気信号に変換し、送信する機能を備えるようにする。また、上記検出手段から送信された情報を受信し、それを基に圧縮空気使用量並びにそれに基づく使用料金を算出する手段を備える。通信手段を仲介させることにより、空気圧縮機や検出手段の設置場所と、圧縮空気使用量や使用料金の算出場所とは同一場所でも、隣接地でも、或いは遠隔地でも良い。
【0017】
図1に本発明の具体的実施例を示す。
圧縮空気供給設備1は、建屋31内に設けられた空気圧縮機2、ドライヤ3、空気槽4等から構成されている。各空気圧縮機2にはそれぞれドライヤ3が配管接続されて1組となっており、本実施例では3組設けられ、それらの吐出配管は集合されて1つの空気槽4の入口に接続されている。空気槽4にはそこに貯められた圧縮空気の圧力を検出する圧力検出器6が設けられている。空気槽4から2組の供給配管が接続されており、各供給配管には各々直列に流量検出器7aと供給弁16aが設けられている。各供給配管は圧縮空気利用者が管理する建屋33まで延長され、受弁21を経て利用者の配管22に接続される。利用者配管22にはエアスプレー23、エアガン24、エアシリンダ25など多くの圧縮空気を利用する空圧機器が多数接続され、供給された圧縮空気を利用する。他方の供給弁16bの側も同様に別の利用者の設備に配管接続され、同様の構成となっている。
【0018】
圧力検出器6は空気槽4内圧を検出し電気信号に変換、送信する機能を有し、一般に圧力変換器などに代表されるもので構成される。また、圧力検出器6は圧力検出機能に加え、圧力を目視で確認できる表示機能も備えている。流量検出器7(7a,7b)は絞り式や容積式などのもので構成され、流路を通過する圧縮空気の体積流量を検出し、その値を電気信号に変換し送信する機能を併せ持っている。
【0019】
各空気圧縮機2並びにドライヤ3は、設備外から連なる商用電力線11から電力計12、配電盤13を経て電力が供給され、運転制御装置5の指令に従って動作する。電力計12は積算式で電力供給事業者の電気料金算出用を兼用し、消費した電力の値を情報管理装置8に送る機能を有する。配電盤13は各空気圧縮機毎に開閉器を備え、個々の空気圧縮機への電力供給を遮断可能にすると共に漏電ブレーカとしての安全確保機能も有する。運転制御装置5は情報管理装置8の制御下にあり、空気圧縮機2の起動停止や容量制御を行う。
【0020】
情報管理装置8は、運転制御装置5へ制御指示する機能に加え、電力計12から積算電力、圧力検出器6から空気槽内圧力、流量検出器7から流量の情報を収集し、記憶、演算する機能を備えている。また、通信経路14を通じて情報を管理センタとやりとりする機能を備える。通信経路14はインターネットを経由する情報伝達手段とすることができ、送信された情報は管理センター32のサーバ17を経てパソコンに専用ソフトを搭載した管理装置18に至る。
【0021】
また、情報管理装置8からLAN(ローカルエリアネットワーク)ケーブルを経由し、圧縮空気利用者の建屋33内に設置したプリンタ9並びに入出力端末10へ情報伝送路が構成されている。入出力端末10はタッチパネル並びにその付属機器で構成され、設定圧力など利用者が指示を入力すると、その内容は情報管理装置8に逐次送信されるようになっており、同時に、運転状況などの情報を表示できる機能も備えている。
【0022】
ドライヤ3は冷凍式と呼ばれる方式で空気圧縮機2が吐出する圧縮空気に含まれる水蒸気を除去する。即ち、冷媒サイクルを内蔵し、圧縮空気を一旦冷却することで、含有する水蒸気を結露させて除去し、その後空気を加熱して相対湿度を下げるようにしたものである。除去した水分はドレンとして排出管から出される。各ドライヤからの排出管は集合し排水処理装置15を経て外部に排出する。排水処理装置15はドレンに含まれる油分等を除去し、ドレン排出の環境負荷を軽減する。
【0023】
圧縮空気供給設備1は次のように運営される。圧縮空気供給設備1は圧縮空気利用者とは異なる設置運営者が所有し、設置運営者は日常の保守管理や老朽設備の更新、電力料金の支払いや消耗部品の定期的交換、設備に異状が発生した場合の対応等を行う。一方、圧縮空気利用者には圧縮空気供給設備1で製造された圧縮空気が配管を通して供給される。設置運営者は利用者が消費した圧縮空気の圧力並びに量に対して課金し、利用者がその対価を支払う。
【0024】
圧縮空気利用者と設置運営者は、予め利用する圧縮空気の圧力並びに量について契約する。圧力については設備を運転開始した後に利用者の選択で微調整可能なものとし、0.6〜0.7MPaの選択幅を設ける。量については最大供給可能量で契約し、例えば大気圧換算で最大毎分10立方メートルとする。設置運営者は契約した圧力と量の両最大値の圧縮空気供給が年間を通じて連続的に可能な能力を持つ設備を設置運営する義務を負う。また、圧縮空気の質についても利用者と設置運営者の間で取り決めておく。本実施例では、圧縮空気に含まれる水蒸気を供給圧力下20℃で露点5℃以下とする。設置運営者はこれら取り決めを満足できるように圧縮空気中の水蒸気を取り除く能力を有するドライヤを設置する。
【0025】
本実施例による圧縮空気供給システムは以下に示すように利用する。
圧縮空気利用者は圧縮空気を使用するにあたり、運転開始の指示を入出力端末10に入力し、配管の受弁21を開く。要求する供給圧力は契約の範囲内で入出力端末10から指示することができる。特に変更を要する時以外は前回運転時の設定圧力値が持続されるので、毎回の入力は必要無い。圧縮空気は配管を通じて供給され、利用者は供給設備1の運転状況を気にせずに、供給無しから契約量までの供給量範囲で圧縮空気を利用することができる。
【0026】
圧縮空気供給設備1の内部では各要素が次のように動作する。入出力端末10が受けた利用者の運転開始指示は情報管理装置8で認識され、運転制御装置5に運転開始が指令される。運転制御装置5は最初にドライヤ3に運転開始を指示し、ドライヤ3を先行運転しておく。続いて空気圧縮機2が起動され、圧縮空気の製造を開始する。
【0027】
空気圧縮機2が吸い込んだ空気を圧縮して製造された圧縮空気はドライヤ3で除湿され、空気槽4に一旦蓄えられる。空気槽4における圧力を供給圧力として圧力検出手段6で検出し、圧縮空気は流量検出手段7を経て供給弁16と受弁21を通り利用者の配管22に送り出される。供給圧力は一定範囲にあることが省エネルギ並びに使い勝手のよさから望ましく、個々の空気圧縮機2は容量制御機能を備え、供給圧力を自動制御する。その上で、圧力検出器6で検知された圧力は情報管理装置8で常に利用者の指示圧力と比較され、特開平11-343986号公報に記載されているような、省エネルギに適した圧縮機の運転台数や容量制御機能が選択実行される。
【0028】
圧縮空気を利用する上で、その能力は圧力(ここではゲージ圧、すなわち絶対圧で表記した供給圧力と大気圧との差)並びに量の両者に依存し、圧力が高く量が多いほど大きな能力を持つ。逆に大気を圧縮する場合に必要な動力も圧力と量に依存する。したがって、圧縮空気の価値は圧力や流量単独では規定されず、両者の関数で示される。
【0029】
圧縮に要する理論的な動力は、熱力学における断熱圧縮動力の計算式(数1)で導かれる。実際はそれに空気圧縮機もしくは利用機器の効率を乗じたものとなる。さらに、圧縮直後の高温の空気は空気圧縮機内蔵の熱交換器や配管の通過で冷却されて、外気温に近い温度になり体積流量が減少し利用できるエネルギは圧縮直後よりも減少する。
【0030】
【数1】
圧縮空気を製造するのに必要な動力や供給する温度での圧縮空気の利用価値を厳密に評価する数式は上述のように複雑になる。しかし、先に契約圧力範囲として示した狭い圧力範囲においては、圧縮空気の価値をゲージ圧表示の供給圧力と供給量の積で近似し、計算を簡素化しても不都合なほどの誤差は生じない。そこで、情報管理装置8は圧力検出器6から送られてくる圧力値と、流量検出器7から送られてくる流量値を乗じたものを圧縮空気の供給量として扱う。
【0031】
ここで算出したものは圧縮空気供給量の瞬時値であり、これを時間で積算したものが、圧縮空気の積算供給量になる。理論的には圧力も流量も連続変化するので、数2による時間積分値が積算供給量であるが、実際には十分に短い時間間隔Δtで圧力と流量を計測しその値を積算して求めた数3による値を圧縮空気の積算供給量とする。この積算供給量に圧縮空気の単価を乗じ、基本料金に加算、また各種割引を考慮した数4が圧縮空気の使用(利用)料金である。
【0032】
【数2】
【数3】
【数4】
数3並びに数4による積算供給量の計算は情報管理装置8内部で演算し、その結果はプリンタ9で印刷出力すると共に、入出力端末10に表示する。さらに、積算供給量の情報は通信経路14を通じて設置運営者の管理装置18に伝送する。設置運営者は管理装置18で積算使用量から圧縮空気の使用料金を算出し、圧縮空気利用者にその金額を請求し代金を回収する手続きをとる。
【0033】
供給弁16bから圧縮空気の供給を受ける側(第2の用途)についても同様に圧縮空気の使用量が計算される。流量は独立した流量検出器7bにより検出されるが、供給圧力は第1の用途(供給弁16aから圧縮空気の供給を受ける側)と共通の圧力検出器6の検出値を使う。第2の用途についても同様に課金され、利用者は設置運営者に使用料金を支払う。
【0034】
空気圧縮機2やドライヤ3の運転に必要な電力は商用電力線11から本設備1に供給され、電力計12で供給量を計測しながら、配電盤13を経由して各機器に送られる。電力計12は消費電力の値を逐次情報管理装置8に伝送する。
【0035】
設置運営者は圧縮空気の積算供給量や消費電力以外の情報も情報管理装置8から通信経路14経由で入手する。瞬時供給量の時間的推移データは図3に示すような形態で管理装置18に蓄積される。蓄積したデータは次の例のような分析に活用される。図3のパターンaは最大供給量に対して実際の供給量が少なく、契約量が削減できる可能性がある。パターンbは供給量が最大となる時間帯が多く、供給先での圧力低下が懸念されることから、契約供給量の拡大が望ましい。また、パターンcは供給量の変動が激しく、容量制御の応答性や経済性に優れた可変速型空気圧縮機の設置や空気槽を大型化するとメリットが得られることがわかる。
【0036】
空気圧縮機2の内部には各部の温度や圧力、或いは振動や騒音を検出するセンサを設けてあり、それらが検出した情報は運転制御装置5を経由して情報管理装置8に送られる。情報管理装置8内で、これら運転状態の情報は取捨選択され、敷居値を超えたデータや、特に管理装置18から要求のあるデータは通信経路14を通じて管理装置18へ転送される。例えば、増加傾向にある吐出温度や振動は空気圧縮機の故障に発展する可能性が高く、管理センタ32で判断して該当する空気圧縮機2の運転停止を指令すると共に、点検修理要員が派遣される。また、軸受や軸シール、潤滑油に代表される総運転時間や総回転数により交換すべき消耗品の交換時期も管理装置18で把握し、適切な時期に訪問する点検修理要員が交換部品を持参し交換作業する。以上のように、空気圧縮機の発信するデータは、故障診断やメンテナンス要否の判断にも活用できる。
【0037】
排水処理装置15は油分等ドレンに含まれる環境負荷物質を吸着するフィルタを内蔵しており、ドライヤ3から排出されるドレンを処理し、無害化して外部に排出する。油等を吸着したフィルタは、空気圧縮機の交換部品同様に運転時間で管理し定期的に交換する。
【0038】
本実施例におけるサービスの提供と金銭の収受関係を図2により説明する。 設置運営者は圧縮空気の利用者との契約に基づいて、利用者の事業場所或いはその隣接地に圧縮空気供給設備を建設し、利用者の設備に対して配管を通じて圧縮空気を供給する。圧縮空気供給設備から設置運営者へは圧縮空気の供給量や運転状況が先に述べた手段により逐次報告される。圧縮空気の使用料金は月ごとに集計し設置運営者から利用者に請求され、利用者は設置運営者に使用料金を支払う。
【0039】
設置運営者は設備から受ける情報や時期を判断し、設備の点検や維持管理作業の責務を担う。また、設備の老朽化や故障に際しては、空気圧縮機の修理や入れ替えを行う。圧縮空気供給設備の消費する電力は独自の電力計で計測しており、この使用料金は電力供給事業者から設置運営者に請求され、設置運営者から電力供給事業者に支払われる。
【0040】
本実施例によれば、次の効果がある。
1)圧力並びに流量の両方から圧縮空気料金を算出することから、圧縮空気の持つ能力や圧縮空気を製造するに必要な動力にほぼ比例し、利用者と設置運営者の両者が納得できる課金が可能となる。
2)圧縮空気の利用者は、空気圧縮機の購入、設備設計、設置工事などの初期投資はもちろんのこと、老朽化を予測した新機種への入れ替え、日々の点検や油など消耗品の交換、清掃作業など圧縮機の運転に伴なう付帯作業も無用となり、本来の業務に専念することができる。
3)圧縮機の運転状態を設置運営者が監視しているため、突発の故障による圧縮空気供給が停止する障害が発生する確率は極めて低く、信頼性が高く安定した圧縮空気の供給を受けることができる。万一、空気圧縮機の1台が故障したとしても、設置運営者は他の空気圧縮機による応急運転をしながら修理或いは交換作業が可能となる。この場合、圧縮空気利用者には修理費や購入費など急な出費は必要ない。
4)圧縮空気ユーザは使用空気量に応じた対価を支出すればよく、それ以外の支出が無用となる。同時に圧縮空気消費量の削減が直接費用節約になるため、省エネルギの動機づけが明確となる。この効果として、圧縮空気の消費量を減らす省エネルギのための改善が積極的に為されるようになる。また、図3に示したような圧縮空気消費量の推移を示す時刻歴データが得られるため、消費量を増やす原因が特定し易く、省エネルギを図るポイントを明確にし易い。
5)設置運営者にとり、利用者の圧縮空気消費量の変動を把握し、最適な空気圧縮機の構成を選定することができる。例えば、使用量変動の激しいユーザには容量制御状態で省エネルギ効果の高い可変速機を中心に複数台で構成し、100%近い負荷の続くユーザにはコストの安い大型一定速機を選定する。これにより、設置運営者にとってのコスト削減に加えて省エネルギ効果も拡大できる。
6)空気圧縮機の設置環境は専門家である設置運営者が企画し建設できる。建屋構造や換気通風など、設備の省エネルギ特性や寿命信頼性、騒音防止を考慮した設計が可能となる。これにより環境負荷を低減することができる。
7)瞬時の圧縮空気消費量や積算消費量をプリンタ9で出力し、記録保存することが可能となるので、通信経路14の不調や停電などによっても過去の使用記録が消失しない。よって、設置運営者にとって確実な課金並びに使用料金請求ができる。また、利用者と設置運営者の双方に使用記録が残るため、双方が納得できる課金が可能である。
【0041】
上記実施例では、空気圧縮機とドライヤのセットを3組、圧縮空気の供給配管を2組としたが、これらは最小1組以上であれば本発明を同様に適用できる。
【0042】
また、空気槽4と圧力検出器6と流量検出器7を圧縮機建屋31内に設置したが、これらを利用者の建屋33内に設置しても良く、そうすることで、建屋間の圧力損失を小さくでき、利用者にとって安定した圧力で圧縮空気を利用する環境が得られる。
【0043】
供給圧力がほぼ同一でよければ、空気槽4からの出口を増やし、各々に流量検出器7と供給弁16を設けることにより、1つの圧縮空気供給設備から複数の利用者に圧縮空気を供給することも可能となる。複数の利用者が互いに隣接している場合、このようにすれば、使用空気量の平準化並びに設備の集中大型化が可能となり、設備維持コストの削減並びに省エネルギ効果を拡大できる。
【0044】
空気圧縮機の圧縮原理はレシプロ式、スクリュー式、スクロール式、ターボ式など多くの種類が実用化されているが、本発明では何れの方式も採用可能である。また、圧縮過程で空気に油を混入させる油冷式や、水を混入させる注水式、或いは油,水の何れも混入しないドライ式の何れにも対応できる。
【0045】
圧縮空気供給設備には運転を続けたままで維持管理作業する場合や一部の機器の故障でも運転を持続するため、冗長性を持たせることが多い。例えば、予備機を含む複数の機器の並列設置や、機器をまたぐバイパス配管などが冗長性のある機器である。本発明はこれらの要素を含んでいるものにも適用できる。
【0046】
圧縮空気の利用者と設置運営者の間の契約には、圧縮空気への微細油滴(オイルミスト)や粉塵或いは細菌の含有量について、例えば1ppm以下というように取り決めることもできる。その場合には設置運営者はオイルミストや粉塵を発生しない圧縮機を採用するか、それらを取り除くフィルタを配管途中に設ける。それらの消耗部品の交換などが必要である時には、その責務を負う。このような圧縮空気の付加価値を高めた契約をした場合は、圧縮空気の単価増に反映しても良い。
【0047】
圧縮空気使用量の算出については、単純な圧力と流量の積によらず、熱力学の圧縮仕事計算式(数1)或いはその2次近似式により算出しても良い。供給圧力を一定にする制御が十分な精度で可能な場合には、圧力検出手段の出力を直接用いずに、契約した圧力値或いは入出力端末で設定した値などを定数として用い、流量検出器7による検出値に比例して課金するようにしても良い。また、圧縮空気の温度や気温などさらに入力変数を追加した算出式を用いても良い。
【0048】
圧縮機建屋31内部に温度や湿度の検出手段を設け、その出力を情報管理装置8に伝送するようにしても良い。このようにすると、運転に支障があるような異状な高温や低温の環境を察知でき、換気や予熱で対策して無理な運転を防止できる。また、換気能力不足など空気圧縮機の設置建屋の環境を適切な環境に改良すべきとの判断も可能となる。
【0049】
情報管理装置8、プリンタ9と入出力端末10の一部或いは全部は、信号伝達手段が確保されていれば、圧縮空気を使用する機器と同じ建屋31にある必要は無く、隣接した室や離れた建屋にあってもかまわない。また、情報管理装置8と、プリンタ9及び入出力端末10とを結ぶ伝達経路や通信経路14は専用ケーブル、ローカルエリアネットワーク、インターネット、電話回線等、確実かつ十分な伝送速度であれば、その方式によらず同様に利用できる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、圧力検出手段及び流量検出手段からの検出値の情報を受信し、それらを基に圧縮空気使用量並びにその使用量に基づく圧縮空気使用料金を算出する手段を備えているので、圧縮空気利用者は、圧縮空気設備機器の選定や運転管理に関し手を煩わせることなく、圧縮空気を利用することのできると共に、圧縮空気利用者と圧縮空気設備の設置運営者の両者が納得できる圧縮空気利用者への課金方法を採用できる。
【0051】
また、本発明によれば、圧縮空気ユーザは使用空気量に応じた対価を支出すれば良いから、圧縮空気消費量の削減が直接費用節約になるため、省エネルギの動機づけが明確となり、圧縮空気の消費量を減らす省エネルギのための改善が積極的に為され易くなる効果もある。
【0052】
更に、圧縮空気供給設備を遠隔監視できるようにすれば、必要時にのみ作業者を派遣するようにできるから、作業者が設備近くに常駐する必要のない圧縮空気供給システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す圧縮空気供給システムの系統図である。
【図2】本発明の一実施例における各事業者間の物や情報、金銭の収受関係を説明する図である。
【図3】圧縮空気利用の時間変化の例を説明する図である。
【符号の説明】
1…圧縮空気供給設備、2…空気圧縮機、3…ドライヤ、4…空気槽、5…運転制御装置、6…圧力検出器、7(7a,7b)…流量検出器、8…情報管理装置、9…プリンタ、10…入出力端末、11…商用電力線、12…電力計、13…配電盤、14…通信経路、15…排水処理装置、16(16a,16b)…供給弁、17…サーバ、18…管理装置、21…受弁、22…利用者の配管、23…エアスプレー、 24…エアガン、25…エアシリンダ、31…圧縮機建屋、32…管理センター、33…利用者の建屋。
Claims (6)
- 空気圧縮機とその下流に連なる空気流路を備えた圧縮空気供給設備と、
前記空気流路の途中に設けられ該流路内の圧力を検出すると共に、該検出値を電気信号に変換し送信する機能を備えた圧力検出手段と、
前記空気流路の途中に設けられ該空気流路を流れる圧縮空気の流量を検出すると共に、該検出値を電気信号に変換し送信する機能を備えた流量検出手段と、
前記圧力検出手段及び流量検出手段からの検出値の情報を受信し、それらを基に圧縮空気使用量並びにその使用量に基づく圧縮空気使用料金を算出する手段と
を備えたことを特徴とする圧縮空気供給システム。 - 請求項1の何れかにおいて、前記空気流路は、空気が流れる配管と、圧縮空気を貯める空気槽を備えることを特徴とする圧縮空気供給システム。
- 請求項1の何れかにおいて、前記圧縮空気供給設備は、外部から供給される電力をエネルギ源として動作するものであり、該設備全体に供給する電力使用量を計測する電力計を備えていることを特徴とする圧縮空気供給システム。
- 請求項1の何れかにおいて、前記圧縮空気供給設備の空気圧縮機内部の温度、圧力、騒音、振動の少なくとも1つの状態量を監視し、その情報を電気信号に変換し遠隔地に送信する機能を備えた監視手段と、該監視手段からの監視情報を遠隔地において受信する監視情報受信手段とを備え、圧縮空気供給設備の管理者が前記空気圧縮機に関する監視情報を遠隔地で監視できるようにしたことを特徴とする圧縮空気供給システム。
- 請求項1において、前記圧縮空気供給設備は、複数台の空気圧縮機と、該複数の空気圧縮機それぞれの吐出側に接続された複数のドライヤと、該複数のドライヤ下流側に設けられ、前記複数台の圧縮機からの圧縮空気を貯める空気槽と、該空気槽内の圧力を検出する圧力検出器と、前記空気槽から分岐され圧縮空気を需要先に供給するための複数の供給配管と、この供給配管のそれぞれに設けられた流量検出器と、各空気圧縮機の運転を制御する運転制御装置と、前記圧力検出器及び流量検出器からの情報を記憶し、空気使用量を演算すると共に前記運転制御装置を制御する情報管理装置とを備えていることを特徴とする圧縮空気供給システム。
- 請求項5において、前記情報管理装置は、インターネットを介して圧縮空気供給設備内の各種情報を遠隔地に設置された管理センターのサーバに送信する機能を備えていることを特徴とする圧縮空気供給システム。
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