上記特許文献1、2に記載された折畳み携帯電話機は、いずれも蓋体ケース(受話ケース)と本体ケース(送話ケース)とが折畳み自在なヒンジ機構で連結されているので、蓋体ケースと本体ケースとの折畳み及び開動がスムーズに行なうことができる。
しかしながら、上記特許文献1に開示された折畳み式携帯電話機は、第1駒部内に駆動部材を有するヒンジアセンブリが収容されるので、第1駒部の外形が大きくなり、他の第2駒部も第1駒部の形状に合わせて外形の大きな形状となっている。このため、この携帯電話機においては、開状態では連結部に円筒状の突起物が突出した状態となっている。連結部にこのような突起物が存在すると、ユーザーにこの突起物の存在を意識させてしまいデザイン性に欠けた露骨な機械部品のイメージを与え、また、この突起物の存在により、蓋体ケース及び本体ケースの使用表面積が縮小される。特に、本体ケースは、これらの連結部、すなわち筒状突起物に近接したところに操作キーが配設されるので、このような突起物が存在すると、操作キーの操作エリアが狭くなり、配設される操作キー数が制限され、また、操作時にこの突起物に指先が衝突し、操作に支障をきたすことがある。
また、上記特許文献2に開示された携帯電話機は、回動軸線を2本備えることから、送受話ケースの連結部に突起が形成されることがないため、開状態における表面がフラットになっている。そして、送受話ケースと連結部材とが、第1、第2回動軸線L1、L2上でそれぞれ一対の第1、第2ヒンジで連結されているが、これらのヒンジ部材は、それぞれ独立し個別に回動されるようになっている。
携帯電話機等は、一般的に送受話ケースが折畳まれた状態のとき、両ケースがぴったり重なるようにほぼ同一寸法で形成されている。しかしながら、上記特許文献2に開示された構成では、各第1、第2ヒンジが連結部材に対して個別に回動すると、送受話ケースが折畳まれたときに両ケースがスライドする場合があり、両ケースが同一形状のときには、折畳み時にぴったり重ならず、一方のケースが他のケースからはみ出しズレた状態になる。
したがって、このようなズレが発生すると、ユーザーにあたかも欠陥品かのような不安感を与え、また、そのズレを直すために各ケースをスライド移動させて重なった状態にしなければならず、ユーザーに余分な操作を強いることになる。
加えて、第1、第2ヒンジが独立で作動するため、第1ヒンジあるいは第2ヒンジが壁面等に突き当たり、以降の回動が阻止されるタイミングが第1ヒンジと第2ヒンジとで異なるため、開閉動作が常に一定とならず、またいずれかのヒンジが開閉動作の途中で壁面に突き当たり、回動が阻止されるとユーザーに違和感を生じさせ、スムーズな開閉を行うことができない。また、送受話ケース及び連結部材が樹脂で形成されており、送受話ケースの開状態においては、両ケースの保持は樹脂製の各ケース端部と連結部材とを当接させて支持するため、機械的強度が弱く、一方のケースに強い力が加わると樹脂ケース等が破損する恐れがある。
更に、上記特許文献1、2に記載された折畳み式携帯電話機は、ヒンジ機構を構成する部材と送受話ケースとが互いに連接されているため、送受話ケースの開閉に伴ってヒンジ部材と送受話ケースとが擦れ、この擦れによりユーザーに不快感を与える音、例えばきしみ音が発生することがある。このような音を発生しないようにするには、送受話ケースとヒンジ機構との連結を緩くすれば解消できるが、そうなるとケースとヒンジ機構との間にアソビができて送受話ケースの折り畳みが不安定になる。
更にまた、上記特許文献2に記載された折畳み式携帯電話機は、携帯電話機を開状態あるいは閉状態にその回動距離を規制する方法として、携帯電話機の上下筐体を当接させることで回動距離を規制しているが、筐体自体が一般に樹脂製のケースに覆われていることから、開方向に過度に応力が加わると、ケース同士が接触することで破損してしまったり、ケース同士が擦れてきしみ音が発生したりする恐れがある。また、筐体同士を当接させるのみで携帯電話機を開状態あるいは閉状態に維持するので、実質的に開あるいは閉状態に保持することは出来ず、回動方向に小さな力が加えられるだけで簡単に開あるいは閉状態が解除されてしまう。
本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、機器ケースそれぞれに異なる回転軸を有し、機器ケースの折畳み時に両ハウジングにズレが発生しない安定感のある折畳み動作を可能とした折畳み機器のヒンジ機構及びこのヒンジ機構を備えた折畳み機器を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、折畳み機器を開状態あるいは閉状態に強固に保持することができるとともに、折畳み機器の一対の機器ケースの強度を向上させ、機器ケース同士が擦れて生じるきしみ音を抑えた折畳み機器のヒンジ機構及びこのヒンジ機構を備えた折畳み機器を提供することにある。
上記目的を達成するために、本願の請求項1に記載の折畳み機器のヒンジ機構の発明は、一対の機器ケースの一端部同士を折り畳み自在に連結する折畳み機器のヒンジ機構であって、前記ヒンジ機構は、前記機器ケースの一方に取付けられる所定長さの板状体からなる結合片と、前記結合片の両端部から同一方向に立設されその先端部に結合部が形成された第1、第2アーム片と、を備える第1フレームと、前記機器ケースの他方に取付けられる所定長さの板状体からなる結合片と、前記結合片の両端部から同一方向に立設されその先端部に結合部が形成された第3、第4アーム片と、を備える第2フレームと、所定長さを備えた板状体からなる結合片と、前記結合片の両端部から同一方向に立設されるとともに左右にそれぞれ分岐され、前記分岐された先端部に前記第1〜第4アーム片に連結される第1〜第4結合部を有する第1、第2連結片と、を備える第3フレームと、を備え、前記第1〜第4アーム片に形成された結合部と前記第1〜第4結合部とが回動自在に連結されて、第1〜第4連結部が形成されるとともに、前記第1〜第4連結部の少なくとも1つには前記第1、第2フレームを所定位置に回動・保持する駆動機構が設けられ、前記第1〜第4連結部の少なくとも1つには前記第1又は第2フレームの回動制限を行うストッパー機構が設けられ、前記第1又は第2連結部と前記第3又は第4連結部の少なくとも1組の連結部間が連係機構により連結され、前記第1フレームが前記第1及び第2連結部を軸として前記第3フレームに対し一方向に所定角度回動されると、前記連係機構によりこの回動に連係して前記第2フレームが前記第3及び第4連結部を軸として前記第3フレームに対し反対方向に前記第1フレームと同一の角度だけ回動するように連結されていることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の折畳み機器のヒンジ機構において、前記ストッパー機構は、前記第1フレームを連結した前記第1、第2連結部の一方と前記第2フレームを連結した前記第3、第4連結部の一方とにそれぞれ設けられていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の折畳み機器のヒンジ機構において、前記駆動機構は、前記ストッパー機構が設けられていない連結部に設けられていることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の折畳み機器のヒンジ機構において、前記ストッパー機構は、前記ストッパー機構が設けられる連結部を構成するアーム片あるいは連結片の結合部の一面に固定され、前記結合部の外径よりも小さな外径を有する円形の板体であって、前記板体の外周縁の2箇所から法線方向に突出した一対の係止爪を備えるストッパー部材と、前記ストッパー部材が固定されていないアーム片あるいは連結片の結合部の一面に設けられ、前記係止突起のいずれかに当接することにより前記ストッパー部材の回動を阻止する係止突起と、からなることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の折畳み機器のヒンジ機構において、前記駆動機構は、前記第1〜第4アーム片の少なくとも1つの一面に設けられたアーム片側カム片と、前記アーム片側カム片が設けられたアーム片に連結される連結片の前記アーム片側カム片が当接する一面に設けられた連結片側カム片と、前記アーム片側カム片と連結片側カム片との噛合を強固にするように前記アーム片又は連結片を押圧するバネ体と、からなることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の折畳み機器のヒンジ機構において、前記アーム片側カム片及び連結片側カム片は、回転軸を中心に放射状に設けられた複数の突条のカムが噛合するように設けられており、かつ前記複数のカムのうちの何れか2つのなす角が前記第1又は第2フレームの回動可能な角度と同一の角度となるように設けられていることを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の折畳み機器のヒンジ機構において、前記連係機構は、前記第1〜第4連結部の前記第3フレームを介して対向する少なくとも一対の連結部の間に設けられていることを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項4に記載の折畳み機器のヒンジ機構において、前記ストッパー部材は、金属製の剛体からなることを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の折畳み機器のヒンジ機構において、前記第1〜第3フレームは、金属製の剛体からなることを特徴とする。
また、請求項10に記載の発明は、請求項1〜9の何れかに記載の折畳み機器のヒンジ機構において、前記連係機構は、前記第1又は第2連結部と前記第3又は第4連結部との間にその中心部が回動自在に固定された作動バーと、前記第1又は第2アーム片及び第3又は第4アーム片の回転軸に固定され、前記回転軸から所定距離離れた位置に前記作動バーの一端部及び他端部を固定する一対のカム駒片と、からなるリンク機構であることを特徴とする。
また、請求項11に記載の発明は、請求項1〜9の何れかに記載の折畳み機器のヒンジ機構において、前記連係機構は、前記第1又は第2アーム片と前記第3又は第4アーム片のそれぞれに固定された歯車と、前記歯車の間に取付けられる偶数個の遊歯車と、からなるギア機構であることを特徴とする。
請求項12に記載の折畳み機器の発明は、一対の機器ケースを備え、前記一対の機器ケースの一端部同士が前記請求項1〜11の何れかに記載のヒンジ機構により連結されていることを特徴とする。
また、請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の折畳み機器において、前記折畳み機器を閉状態とした場合には、前記一対の機器ケース表面同士が当接するとともに前記ストッパー部材の一方の係止爪と前記係止突起との間に所定の隙間が形成され、前記折畳み機器を開状態とした場合には、前記一対の前記一対の機器ケースの前記ヒンジ機構により連結された一端部同士が当接するとともに前記ストッパー部材の他方の係止爪と前記係止突起との間に所定の隙間が形成されるようになっていることを特徴とする。
また、請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の折畳み機器において、前記所定の隙間は、前記ストッパー部材の回転軸を中心として0.5〜1.5°に相当する隙間であることを特徴とする。
本発明は上記構成を備えることにより、以下に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、このヒンジ機構はその回転軸が2軸存在するものであるが、例えば第1フレームの第3フレームを基軸とする一方向への回動に伴って、第2フレームが同じく第3フレームを基軸として逆方向に回動するため、機器ケースの開動動作がスムーズになる。また、第1フレームの回動と第2フレームとの回動が連動するため、従来技術では折畳み機器を折畳んだ状態においてこの2軸が独立していると機器ケース同士の位置にズレが生じることがあるが、本発明ではこのようなズレが生じることがない。すなわち、例えば、このヒンジ機構を折畳み式携帯電話機に適用すると、携帯電話機の上下ハウジングの位置ズレが発生せず、ユーザーに安定感を与えることができる。また、第1、第2フレームを開状態及び閉状態に規制するためのストッパー機構をヒンジ機構自体に設けたので、折畳み機器に適応した場合に機器ケース同士の接触による開あるいは閉状態の規制を行う必要がないので、折畳み機器の機器ケースの破損を抑えることができる。
また、請求項2の発明によれば、ストッパー機構が2つの回転軸のそれぞれに設けられるので、一方の回転軸のみに設けた場合に比べ、回転軸それぞれにアソビあるいはガタが発生することがなくなる。
また、請求項3の発明によれば、駆動機構をストッパー機構が設けられていない位置に設けるので、第1〜第4連結部それぞれに生じる負担を分配できるとともに、駆動機構とストッパー機構とを1つの連結部に設けないので、連結部それぞれの構成が比較的簡単なもので済むので、比較的容易に製造することができる。
また、請求項4の発明によれば、外周縁に一対の係止爪を有するストッパー部材と、アーム片あるいは連結片の係合部に設けられた係止突起とにより、ストッパー機構を構成されるので、簡単な構成で上記請求項1の効果を奏することができるようになる。
また、請求項5の発明によれば、アーム片の一面に設けられたカム片と連結片の一面に設けられたカム片とを噛合させ、この噛合状態を強固にするようにバネ体で付勢するという簡単な構造で、ヒンジ機構の良好な駆動を実現でき、駆動時にスナップアクションを得ることができる。
また、請求項6の発明によれば、このような間隔でカムを設けると、ストッパー部材により回動が規制された際に、同時にカムの噛合もなされるので、開状態あるいは閉状態のときに駆動機構によっても第1、第2フレームの保持を行えるので、開状態及び閉状態においてヒンジ機構及びこのヒンジ機構を備えた折畳み機器が安定するようになる。なお、このカムをより多く、例えば第1又は第2フレームの回動可能な角度の半分の角度ごとに設けるようになせば、開状態と閉状態のちょうど中間地点において駆動機構が噛合するようになり、より好ましいスナップアクションを実現することもできる。
また、請求項7の発明によれば、連係機構を第3フレームを介して対向する連結部同士を接続するように設けることで、この連係機構が専有するスペースを押さえることができる。
また、請求項8の発明によれば、ストッパー部材が剛性を備えるので、第1、第2フレームを強固に支えることができ、破損等を抑えることができる。
また、請求項9の発明によれば、第1〜第3フレームを金属製の剛体により形成することにより、ヒンジ機構の機械的な強度を維持できるとともに、このフレームを介して一対の機器ケースを電気的に導通状態とすることができ、携帯電話等の電子機器においては、アンテナの性能を向上させる効果がある。
また、請求項10の発明によれば、連係機構としてリンク機構を採用することにより、上記請求項1の効果を良好に実現できる折畳み機器のヒンジ機構を提供できる。
また、請求項11の発明によれば、連係機構としてギア機構を採用することにより、上記請求項1の効果を良好に実現できる折畳み機器のヒンジ機構を提供できる。
請求項12の発明によれば、上記請求項1〜11の効果を奏する折畳み機器を提供することができる。
また、請求項13の発明によれば、開状態及び閉状態とした際に、機器ケース同士は当接するが、ストッパー機構による規制は厳密には行われないことになり、この状態においては駆動機構のカム片同士が噛合しておらず、よってカム片同士には互いに噛合しようとする方向、すなわち機器ケース同士が当接している方向に駆動力が作用することになるので、機器ケースは互いに押し付けあう方向に押圧された状態となり、開状態及び閉状態を強固に維持できるようになる。
また、請求項14の発明によれば、この隙間を0.5°〜1.5°と極めて小さくすることにより、開状態及び閉状態において機器ケースが更に回動方向に押圧された場合には、ストッパー機構によってその回動を規制するため、結果として2つのストッパー作用によって機器ケースの回動を制御するようになり、機器ケースの確実な回動を実現することができるようになる。
図1は本発明の実施例1に係るヒンジ機構を適用した折畳み式携帯電話機を示す斜視図、図2は図1の携帯電話機からハウジング及びケースを取外しリンク機構等の内部機構が見えるようにした状態を示す斜視図、図3は図2の背面からみた斜視図、図4はヒンジ機構を分解して示す分解斜視図、図5は図4を異なる方向から見た分解斜視図である。
この折り畳み式携帯電話機1は、図1〜図3に示すように、無線送受信回路、各種操作キー及びマイクロフォン等が収容された送話ケース2と、表示部やレシーバー等が収容された受話ケース10と、これらの送受話ケース2、10を回動自在に連結するヒンジ機構20とで構成されている。なお、図1において、ヒンジ機構20は一対のカバー部材7、8からなるヒンジカバーCで覆われている。
送話ケース2は、内部に制御回路基板3等の部品が収容され、底部にスピーカ用の開口及びバッテリー取付け部等が形成された細長箱状の裏面ハウジング2aと、この裏面ハウジング2aに収容されるマイクロフォン及びスピーカ等を備える制御回路基板3と、各種操作キー5a〜5cと、各種操作キー5a〜5cを露出させる複数個の穴を有し裏面ハウジング2aの開口部を覆う表面ハウジング2bとを備え、裏面ハウジング2aに制御回路基板3及び各種操作用キースイッチボード等の部品が収容され、その開口部が表面ハウジング2bで覆われている。
制御回路基板3には、通話機能を制御する通話制御回路、ネットワーク接続等を制御するネットワーク制御回路及びその他の機能を制御する制御回路が搭載され、これらの制御回路は内蔵されたCPUによって制御されるようになっている。なお、これらの制御回路は公知のものを使用するので、詳細な説明は省略する。また、スイッチボード、操作シート部材及び制御回路基板等は、支持枠4に固定され、この支持枠4の一端は、ヒンジ機構20の第2フレーム41に固定されている。スイッチボード5は、複数個の操作キー5a〜5cを備えている。
受話ケース10は、表面に開口部10b’を有し、裏面ハウジング10aと、液晶表示装置等からなる表示パネル11と、レシーバー12等の部品と、表示パネル11の表示面を露出させる表示窓を有し裏面ハウジング10aの開口部を覆う表面ハウジング10bとを備え、裏面ハウジング10a内には表示パネル11に表示させる画像を制御するパネル制御基板14及びレシーバー12等の部品が収容されている。この表示パネル11及びこのパネル制御基板14等の部品は、図2に示すように、支持枠13に固定され、この支持枠13の一端は、ヒンジ機構20の第1フレーム21に固定されている。
送話ケース2及び受話ケース10内に収容された各制御回路基板3、14は、図2、図3に示すように、可撓性を有するリード線6、すなわちフレキシブルプリント配線基板(以下、FPCという。)6によって接続されている。このFPC6は、絶縁体のフィルム内部に極細線が配線された細幅で所定長の帯状体からなり、その中央部が略コ字状に屈曲されている。このFPC6は、制御回路基板3から送話ケース2のヒンジ機構20が接続される一方の隅部15bを通り、略コ字状に屈曲された部分をヒンジ機構20内部に配設することでヒンジ機構20を経由し、受話ケース10の一方の隅部16bを介して制御回路基板14に接続されている。 ヒンジ機構20は、図4、図5に示すように、送受話ケース2、10内に収容された支持枠4、13に装着される一対の第1、第2フレーム21、41と、これらの第1、第2フレーム21、41を連結する第3フレームとしての連結部材30と、この連結部材30で連結された第1、第2フレーム21、41をそれぞれ折畳み位置から所定角度に回動したとき、その駆動を規制・保持する第1、第2駆動機構50、50と、第1、第2フレーム21、41を連係し、両フレームの駆動を連動させるリンク機構60と、送話ケース2及び受話ケース10の開及び閉時にこの開状態及び閉状態を維持するストッパー機構70、70と、で構成されている。
第1、第2フレーム21、41、連結部材30、第1、第2駆動機構50、50、リンク機構60及びストッパー機構70、70を構成する部品は、殆どが金属製の剛体からなり、これらは金属製の板材を打ち抜き、折曲するプレス加工することによって形成される。金属材としては、高強度、高剛性及び高じん性のステンレス製のばね材(例えば、SUS304CSP−1/2H)が好ましい。また、第1、第2フレーム21、41の板厚は、例えば1.5mm、連結部材30の板厚は、例えば1.2mmである。このように各部品を金属材で形成することにより、従来の樹脂材で作製したものに比べてヒンジ機構の機械的強度を高くできるので部品を小型にできる。また、ヒンジ機構20全体を金属製の剛体で形成することにより、支持枠4、13が電気的に接続されるので、支持枠4、13のいずれかが備えるアンテナの受信面積を大きくでき、アンテナの性能を向上させることができる。
また、第1、第2フレーム21、41は、2つ折りとなる送受話ケース2、10の連結箇所に形成された各凹部内に何らの突出部を設けることなく内蔵されるものである。
第1フレーム21は、図4、図5に示すように、所定長さの結合片26と、この結合片26の両端から同一方向へほぼ直角に折曲された所定長の一対の第1、第2アーム片22、24とからなり、受話ケース10の支持枠13に取付けられ、平面から見ると全体がコ字状をしている。
結合片26の長さは、受話ケース10の幅長より短く、また、第1、第2アーム片22、24には、各先端部に結合部22a、24aがそれぞれ形成されているとともに、各アーム片22、24の腕部にFPCあるいはリード線等を挿通するためのU字状溝23c、25cが形成されている。
第1アーム片22の結合部22aは、筒状キャップ51を挿入できる大きさの開口22bを有するリング状の取付け環となっている。また、この結合部22aには、その外周囲に筒状キャップ51の鍔片52に形成された鉤片53が挿入される溝22cが形成されている。
また、第2アーム片24の結合部24aは、所定の大きさを有する板状体からなり、この板状体にストッパー部材71の第1取付け軸72を取付ける非円形状の取付け穴24bと、板状体の一面(第1アーム片22と対向する面)にストッパー部材71を位置決め固定する一対の突起25a、25bとがそれぞれ形成されている。
これらの突起25a、25bの高さ(板状体表面からの高さ)は、ストッパー部材71の肉厚より短い、すなわち背低に形成され、また、取付け穴24bを中心にして扇型に所定角度開いた仮想線上にあって第2アーム片24の外周縁に設けてある。これらの突起25a、25bは、第2アーム片24の他面から打ち抜き加工することで形成されている。
また、結合片26は、帯状をなしており、この両端部付近には支持枠13に取付けられる取付け穴26a、26bがそれぞれ形成されている。
第2フレーム41は、第1フレーム21とほぼ同じ形状を有し、所定長さの結合片46と、この結合片46の両端から同一方向へほぼ直角に折曲された所定長の一対の第3、第4アーム片42、44とからなり、送話ケース2の支持枠4に取付けられるものである。
結合片46の長さは、送話ケース2の幅長より短く、また、第3、第4アーム片42、44には、各先端部に結合部42a、44aがそれぞれ形成されているとともに、各アーム片42、44の腕部にFPCあるいはリード線等を挿通するためのU字状溝43c、45cが形成されている。
第3アーム片42の結合部42aは、筒状キャップ51を挿入できる大きさの開口42bを有するリング状の取付け環となっている。また、この結合部42aには、その外周囲に筒状キャップ51の鍔片52に形成された鉤片53が挿入される溝42cが形成されている。
また、第4アーム片44の結合部44aは、所定の大きさを有する板状体からなり、この板状体にストッパー部材71を取付ける非円形状の取付け穴44bと、板状体の一面(第3アーム片42と対向する面)にストッパー部材71を位置決め固定する一対の突起45a、45bとがそれぞれ形成されている。
これらの突起45a、45bの高さは、第1フレームの突起25a、25bと同じく背低であり、また、取付け穴44bを中心にして扇型に所定角度開いた仮想線上にあって第4アーム片44の外周縁に設けてある。これらの突起45a、45bは、第4アーム片44の他面から打ち抜き加工することで形成されている。
また、結合片46は、帯状をなしており、この両端部付近には支持枠4に取付けられるU字状溝46a、46bがそれぞれ形成されている。
連結部材30は、図4、図5に示すように、第1フレーム21の結合片26の長さより短長の結合片31と、この結合片31の両端から同一方向へほぼ直角に折曲された第1、第2連結片32、33とを有し、第1、第2連結片32、33と結合片31とは一体に結合されている。各第1、第2連結片32、33は、左右に分岐したほぼ横長な楕円形状の板状体からなり、長手方向中心部の外周縁の一部が結合片31の端部に結合され、この結合部を中心にして左右が第1、第3結合部34、36及び第2、第4結合部35、37となっている。
第1連結片32には、そのほぼ中心に後述するリンク機構60の作動バー61を装着する固定穴38が形成されている。また、第1、第3結合部34、36には、作動桿67に挿通される取付け穴34a、36aが形成されているとともに、外面すなわち組立て時に第1、第3アーム片22、42の内面と対向する面に、複数個のカム34b、36bがプレス加工等により一体に形成されている。これらのカム34b、36bは、各取付け穴34a、36aを中心にして放射状に形成されている。
第2連結片33は、第2、第4結合部35、37を備え、それぞれストッパー部材71、71に設けられた第2取付け軸73、73が装着される取付け穴35a、37aと、第2、第4結合部35、37の外縁部に設けられストッパー部材71、71が装着された状態でこれらのストッパー部材71、71の回動を所定角度に制限する係止突起35b、37bと、がそれぞれ形成されている。したがって、各ストッパー部材71、71が所定角度回動されると、係止爪71a、71bが係止突起35b、37bに衝突して回動が制限される。この回動制限は、第2、第4アーム片24、44の回動制限、すなわち、第1、第2フレーム21、41の回動制限となる。
すなわち、各ストッパー部材71、71は、第2、第4アーム片24、44の取付け穴24b、44b及び突起25a、25b、45a、45bにより回り止めされて固定されるので、第2、第4アーム片24、44が回動されると、この回動にしたがって各ストッパー部材71、71も回動し、所定角度回動すると、各ストッパー部材71、71の係止爪71a、71bが係止突起35b、37bに衝突して回動が制限される。
各係止突起35b、37bの高さは、後述するストッパー部材71の肉厚より低く、それぞれ第2、第4結合部35、37の底辺部に形成されている。なお、第2、第4アーム片24、44に設けられた突起25a、25b、45a、45bと第2、第4結合部35、37に設けられた係止突起35b、37bとが接触しないように、両突起の高さを加算した長さは、ストッパー部材71の肉厚より若干短くしてある。
ここで、以下には先ずストッパー機構70について説明する。
ストッパー機構70は、第1及び第2フレーム21、41に固定された一対のストッパー部材71、71と、第1及び第2フレーム21、41の回動に伴ってこのストッパー部材71、71に当接し、その回動を規制する係止突起35b、37bとから構成されている。
ストッパー部材71、71は、いずれも同一の構造を有しているので、以下には第2アーム片24に取付けられるストッパー部材71について説明する。しかしながら、第2アーム片24に取付けられるストッパー部材71と第4アーム片44に取付けられるストッパー部材71とは連結部材30を境に左右対称に配置されている。
このストッパー部材71は、ほぼ円形で所定肉厚の板体の外周縁の2箇所から法線方向に係止爪71a、71bが突出した形状を有し、平面視においてほぼ三日月状であって、その表裏面のほぼ中心に第1、第2取付け軸72、73を有し、この三日月状の先端部が係止爪71a、71bとなっている。各係止爪71a、71bは、第1取付け軸72を中心にして所定角度θ(図示省略)離れている。第1取付け軸72は取付け穴24bに嵌合されるように非円形状に形成し、第2アーム片24の取付け穴24bへ嵌着されることで回り止めを行う。また、第2取付け軸73は、第2結合部35の取付け穴35aに挿通される太さで、且つ第2結合部35の肉厚より若干長くなっている。そして、取付け穴35aに挿入された後第2取付け軸73の先端部をかしめることで取付け穴35aに回動自在に固定される。なお、各係止爪71a、71bのなす角θは、例えば携帯電話機1に実装された際の所望の最大回転角を等分し、かつその角度に係止突起35b、37bの円周方向の延設角度を加えた角度とする。
ストッパー部材71は、金属材、特に機械的強度の強いステンレス鋼で作製されている。このような金属材でストッパー部材71を作製すると、第1、第2フレーム21、41の一方に過度な力が加わっても各係止爪71a、71bが係止突起35b、37bに係止されるため、破損等が生じにくくなる。
また、これらのストッパー部材71、71の軸心部には、第1、第2取付け軸72,73をも貫通する貫通孔(図示省略)が形成されていてもよく、この貫通孔には、送受話ケース2、10間を電気的に接続する同軸ケーブルが挿通されて基板間の接続がなされるものである。
次に、駆動機構50について説明する。
第1フレーム21の第1アーム片22の結合部22a及び第2フレーム41の第3アーム片42の結合部42aには、それぞれ駆動機構50、50が設けられている。各駆動機構50、50は、第1、第3フレーム21、41を所定位置に規制・保持するカム機構と、このカム機構を駆動するバネ体とを備え、第1、第2フレーム21、41の回動にしたがってこれらのフレームを間歇移動させるものである。第1アーム片22及び第3アーム片42に設けられた駆動機構とは、同様の構成からなるため、同一の符号を付し、以下には第1アーム片22に取付けられた駆動機構50についてのみ説明を行う。
カム機構は、第1結合部34に設けられたカム34bと、このカム34bと噛合するカム55bを一面に有する円盤状のカム板55とからなる。このカム板55には、その一端が筒状キャップ51内に設けられたバネ体(図示省略)によって押圧されるバネ押圧部54が設けられ、他端がリンク機構60に連結される棒状の作動棹67に一体に固定されている。またカム板55のバネ押圧部54は、その径が筒状キャップ51の開口部の直径とほぼ同じ径及び所定の肉厚を有し、その内面、すなわち第1結合部34の一面と対向する面に、複数個のカム55bが作動棹67から放射状に形成されている。また、このカム板55は、第1結合部34のカム34bと噛合するようにカム55b同士の間に凹部55cが設けられている。同様に、第1結合部34の外面に設けられた複数個のカム34b同士の間にも凹部34cが形成されている。また、筒状キャップ51は鉤片53により結合部22aの取付け穴22b内に固定され、カム板55のバネ押圧部54がこの筒状キャップ51に固定されているため、このカム板55は、第1フレーム21の回動に伴って回動することとなる。なお、筒状キャップ51の後端部は第1、第3アーム片22、42から突出しているが、この後端部は組立て時に送受話ケース2、10の他方の隅部15a、16aに収納される。
互いのカム34b、55b同士は、携帯電話機1を開状態とする場合の角度に合わせて設けると好ましく、例えば携帯電話機1の開状態を160°とすれば、このカム同士の間隔も160°あるいはその半分の80°毎に設けると、カムが噛合した時点で送受話ケース2、10が固定されるため、開状態、閉状態あるいはその中間部での送受話ケース2、10が安定する。
これにより、第1、第2フレーム21、41が回動されると、駆動機構50のカム板55が回動し、このカム板55に設けられたカム55bが、噛合された第1、第3結合部34、36のカム34b、36bに乗り上げるように、バネ体の付勢力に抗して移動する。これにより、カム同士が噛合していない場合には適度な抵抗を生じるようになり、回動時のスナップアクションを実現する。
次にリンク機構60について説明する。
リンク機構60は、第1、第3アーム片22、42に設けられ、突出棒65aをその一面に有し第1、第3アーム片22、42の回動に連動して回動する一対のカム駒片65と、連結部材30の第1連結片32に固定された規制板63と、中心部に設けられた軸棒61aにより連結部材30に回動可能に固定された長尺な棒状体からなり、規制板63に設けられた規制穴63a、63bに連通された突出棒65aにその両端部が固定されて、第1、第3アーム片22、42の回動をリンクさせる作動バー61と、を備え、駆動機構50、50のいずれか一方が駆動されたとき、他の駆動機構を連動させて作動させるものである。
カム駒片65は、作動棹67の先端部に設けられた固定部材68により第1、第3アーム片22、42に固定され、両アーム片に設けられた駆動機構50、50に連携されており、この固定部材68の先端部には規制板63の係止穴64a、64bに係止される小突起69が設けられている。また、このカム駒片65はほぼ半月状をなし、その内面の回転軸から所定距離離れた位置に規制板63の規制穴63a、63bと係合する突出棒65aが形成されており、この突出棒65aはカム駒片65の回動に合わせて円弧状に揺動する。
規制板63は、第1連結片32とほぼ同じ長さ及び幅長を有するほぼ楕円形の板状体からなり、この板状体の長手方向の両端部には固定部材68の先端部に設けられた小突起69が係止される係止穴64a、64bと、この係止穴を中心として所定角度に渡って屈曲して形成された細溝開口からなり、突出棒65aが挿入される規制穴63a、63bとが設けられている。規制穴63a、63bに挿入された突出棒65aはこの穴内で揺動可能であるとともに、その移動が所定位置で規制されるようになっている。
作動バー61は、規制板41とほぼ同じ長さを有する棒状体からなり、両端部に長手方向に向かって所定長さのアソビを設けた楕円形の穴62a、62bが設けられており、この穴62a、62bにはカム駒片65の突出棒65aが挿入される。
上述の構成により、このリンク機構60は、例えばヒンジ機構20を開状態から閉状態へ第1フレーム21を回動させることにより移行させると、回動された第1フレーム21の回動に伴って第1アーム片22に連結されたカム駒片65が回動し、これによりカム駒片65の突出棒65aが規制穴63a内を右方から見て反時計方向に移動する。この移動に伴って作動バー61の一端部の穴62aにも反時計方向の力が加わり、作動バー61が軸棒61aを中心に時計方向に回動する。そして、作動バー61の他端部の穴62bに連結された、第3アーム片42に連結したカム駒片65の突出棒65aに時計方向の力が加わることによりこのカム駒片65が時計方向に移動し、この移動に伴って第3アーム片42が同じく時計方向に回動することにより、第1フレーム21と第3フレーム41とが互いに反対方向に回動するようになっている。なお、閉状態から開状態へ移行させる場合においても同様の動作がなされることは明白であるので、ここではその説明を省略する。
次に、図4〜図5を参照して、ヒンジ機構20の組立てを説明する。
先ず、連結部材30の第2結合部33にそれぞれストッパー部材71、71を装着する。このストッパー部材71の装着は、第2連結片33の第1、第2結合部35、37に設けられた取付け穴35a、37aにストッパー部材71の第2取付け軸73を挿通し、この穴33aから抜けないようにこの軸の頂部をかしめる。なお、図4、図5は、すでにかしめた状態で図示している。
一方、筒状キャップ51を第1、第3アーム片22、42の取付け穴22b、42bの内側から挿入し、筒状キャップ51の鍔片52を第1、第3アーム片22、42の溝22d、42dに挿入して位置決めする。次いで、この筒状キャップ26内にコイル状バネ体(図示省略)を挿入する。そして、この筒状キャップ51内にカム板55のバネ押圧部54を挿入・固定し、次いで、連結部材30と第1、第2フレーム21、41とを取付ける。この取付けは、バネ体により押圧されたカム板55をバネ体に抗して押し込み、この状態で、第1及び第3アーム片22、42と第2及び第4アーム片24、44との間に連結部材30の第1〜第4結合部34〜37を配置し、第2連結片33の第2、第4結合部35、37に装着されたストッパー部材71、71の第1取付け軸72、72を第2、第4アーム片24、44の取付け穴24a、44aに挿通して回り止めして取付けるとともに、ストッパー部材71、71の係止爪71a、71bを突起25a、25b及び45a、45bに当接させて固定している。
そして作動桿67を取付け穴34a、34b及びカム板55の中心部を挿通させて筒状キャップ51内面の底部にまで挿通するとともに、第1、第3結合部34、36のカム34b、36bをカム板55のカム55bに噛合させる。続いて、この作動桿67にカム駒片65を装着する。この装着は、作動桿67にカム駒片65を挿通し、作動桿67の先端部に固定部材68を取付けてこの固定部材68にカム駒片65を固定し回り止めを行なう。そして作動バー61の軸棒61aを規制板63の挿通穴64cを介して固定穴38に挿通させて回動自在に固定し、次いで、規制板63の係止穴64a、64bを固定部材68先端部の小突起69に挿入する。加えてカム駒片65の突出棒65aを規制板63の穴63a、63b及び作動バー61の両端部に形成された穴62a、62bに挿通して先端をかしめる。
図6〜図8は図4及び図5に示すヒンジ機構を組み立てた状態を示し、図6はヒンジ機構が閉状態の場合を示す斜視図、図7はヒンジ機構が開閉途中の状態を示す斜視図、図8はヒンジ機構が開状態の場合を示す斜視図である。
組み立てられたヒンジ機構20は、図6〜図8に示すように、第1アーム片22と第1結合部34とが連結された第1連結部101、第2アーム片24と第2結合部35とが連結された第2連結部102、第3アーム片42と第3結合部36とが連結された第3連結部103、第4アーム片44と第4結合部37とが連結された第4連結部104、とにより第1、第2フレーム21、41と連結部材31とが一体に形成され、第1、第3連結部101、103には、駆動機構50及びリンク機構60が設けられ、第2、第4連結部102、104にはストッパー機構70が設けられている。
図9は送受話ケースの折畳み状態とヒンジ機構との関係を説明するもので、図9(a)は図1の送受話ケースをA−A線から切断した状態で両ケースを折畳んだ状態を示す側断面図、図9(b)は図9(a)の状態におけるヒンジ機構を示す拡大側断面図、図10は図9の送受話ケースを80°開いた状態を示し、図10(a)は側断面図、図10(b)は図10(a)の状態におけるヒンジ機構を示す拡大側断面図、図11は図9の送受話ケースを160°開いた状態を示し、図11(a)は側断面図、図11(b)は図11(a)の状態におけるヒンジ機構を示す拡大側断面図である。なお、図9(a)、図10(a)、図11(a)はその連結部におけるハウジングの形状が分かりやすいように、リンク機構が省略されており、また、図9(b)、図10(b)、図11(b)のヒンジ機構20は、ストッパー部材が見えるように所定の位置で切断された状態を示している。
ヒンジ機構20は、図9(a)、図10(a)及び図11(a)に示すように、一対のほぼ半楕円形状のカバー部材7、8により、表面及び裏面から挟み込まれることで覆われており、送話ケース2と受話ケース10との間に装着される。このカバー部材7、8は、長手方向の一側端部に鉤状の係止部7a、8aが形成され、対向する他側短部に係止ねじ装着口7b、8bが形成されており、係止部7a、8a同士を係止した状態で係止ねじ装着口7b、8b同士を連通させ、この連通させた係止ねじ装着口7b、8bをねじ9によりねじ止めすることで取付けられている。このとき、係止ねじ装着口7b、8bを半楕円形状の長手方向の側端部に設けることにより、送受話ケース2、10の折畳み及び所定角度に開いた状態のいずれの状態においても、送話ケース2と受話ケース10とからねじ9が露出することなく、すなわち外から見えないため美観を向上させることができる。
送受話ケース2、10を折畳んだ状態におけるヒンジ機構は、図6及び図9(b)に示すように、第1、第2フレーム21、41がほぼ平行状態となっている。すなわち、各ストッパー部材71、71のうち、第4連結部104に設けられたストッパー部材71の係止爪71aが連結部材30の第4結合部37の係止突起37bに当接し、また、第2連結部102に設けられたストッパー部材71の係止爪71aは第2結合部35の係止突起35bから少し離れたところに位置している。すなわち、携帯電話機1を閉状態としたときにおいては、2つのストッパー部材71の係止爪71aのうち、一方のみしか係止突起37bに当接していない。これは、例えば携帯電話機1の送受話ケース2、10の開閉角度を160°としたとき、ストッパー部材71によって規制される開閉角度は、160°よりも若干(例えば1〜3°程度、すなわち1つの回動軸ごとに0.5〜1.5°程度)大きな角度が設定されていることを意味し、このようにストッパー部材71により規制される角度を実際の開閉角度よりも大きな角度とすれば、例えば閉状態においてもストッパー部材71によって規制されていないため、駆動機構50により送話ケース2、受話ケース10が互いに押し付けあうように付勢させた状態とすることができ、これにより、閉状態において送受話ケース2、10間に隙間が生じることを防止することができる。なお、ここではストッパー部材71、71の一方が当接した場合について説明したが、両方のストッパー部材を僅かな隙間(回動軸を中心として0.5〜1.5°、好ましくは1°)を空けた状態とするようにしてもよい。この場合、送受話ケース2、10の閉状態あるいは開状態においてはこの両ケース2、10同士が当接することにより支持されるものである。
次いで、この折畳み状態から、一方のケース、例えば受話ケース10を所定角度回動させると、他の送話ケース2も反対方向へ同じ角度回動する。例えば送受話ケース2、10を図7及び図10(a)に示すように80°開くと、ヒンジ機構20は、図10(b)に示すように、第1、第2フレーム21、41は、連結部材30に対して互いに反対方向へほぼ同じ角度、すなわち40°ずつ回動している。
更に、送受話ケース2、10を回動し、開状態となる160°にまで開くと、ヒンジ機構20は、図8及び図11(b)に示すように、第1、第2フレーム21、41が連結部材30に対して互いに80°ずつ回動しており、また、160°開かれた状態では、送受話ケース2、10の両隅部15a、15b、16a、16bが当接することにより開状態を支持し、ストッパー部材71、71は係止突起35b、37bに対して僅かな隙間(2°)を空けて位置している。ただし、開状態においては、このように僅かな隙間を設けることなく、送受話ケース2、10を当接させるとともにストッパー部材71、71も係止突起35b、37bに当接させるようにしてももちろん良い。
図12は図9(a)のB方向からみた側面図である。この図に示すように、ヒンジ機構20がカバー部材7、8で覆われると、送受話ケース2、10の各隅部15a、15b及び16a、16bにより挟まれたヒンジ機構20が連結される隙間の幅方向の長さが、ヒンジカバーCを構成するカバー部材7、8の幅方向よりも長くなっており、カバー部材7、8の側端と送受話ケース2、10の各隅部15a、15b及び16a、16bとの間には所定長さdの小隙間が形成される。この位置に隙間が形成されると、送受話ケース2、10の折畳み時に、送受話ケース2、10とカバー部材7、8とが擦れて摩擦音、例えばきしみ音が発生することがなくなる。なお、この小隙間は塵等が侵入しないものとなっている。
上述したように、実施例1のヒンジ機構は、リンク機構60により、第1、第2フレーム21、41の回動が連結部材30に対して逆位相で連係して駆動するため、一方のフレームのみが回動することはなく、常に両フレームの回動が連係するため、安定した開閉動作を実現できるとともに、閉状態における送受話ケース2、10にズレが生じることもない。
なお、この実施例1では、駆動機構50を第1、第3連結部101、103の2箇所に設けたが、第1〜第4連結部101〜104の何れにいくつ設けてもよい。ただし、駆動機構50を1つのみとすると、バックラッシが原因となるアソビあるいはガタが発生するため、好ましくは回動軸ごとに1つずつ設けるものとする。また、リンク機構60は駆動機構50が設けられた第1、第3連結部101、103に設けられているが、第1フレーム21と第2フレーム41とをリンクさせることが可能であれば何れに設けてもよく、好ましくは第1アーム片22と第3アーム片42、又は第2アーム片24と第4アーム片44とをリンクするように設けると最も省スペースで設置することができる。
また、ストッパー機構70についても実施例1では第2、第4連結部102、104に設けたが、何れの連結部に何個設けても良いが、好ましくは駆動機構と同様に回転軸ごと1つずつ設けるものとする。また、このストッパー機構70を駆動機構50及びリンク機構60が設けられた連結部であっても設けることができることは当業者にとり自明であろう。
次に、本発明のリンク機構の第1、第2フレームを連係駆動させる連係機構としてギア機構を用いた場合について説明する。図13は本発明の実施例2に係るヒンジ機構を示し、図13(a)は閉状態の斜視図、図13(b)は開状態の斜視図、図14は図13のヒンジ機構を分解した分解斜視図である。このヒンジ機構20Aは、実施例1のヒンジ機構20と主に連係機構の構成が異なるのみで、他の構成はほぼ同じであるので、共通する部分は同一符号を付してその説明を援用し、主に異なる部分に関してのみ以下に詳述する。なお、以下に示す実施例2では、駆動機構を1つのみとする。また、以下には連係機構を複数の歯車からなる回転力伝達機構として示し、駆動機構を回転角度規制手段として示す。
本実施例のヒンジ機構20Aは、第1フレーム21と、第2フレーム41と、連結部材30とから構成されており、第1フレーム21は、図14に示すように、左右一対の第1、第2アーム片22、24と、各第1、第2アーム片22、24を繋ぐ結合片26とで構成されている。第1、第2アーム片22、24は、先端部にそれぞれ結合部22a、24aを有し、一方の結合部22aには、第1主軸105のDカット部が嵌合される矩形軸孔22b’が、他方の結合部24aには、第1枢軸107の先端が嵌合される丸軸孔24b’がそれぞれ設けられている。この構成により、第1フレーム21に回転力が加わると、その回転力は第1主軸105に連結した歯車106に伝達される。
また、第2フレーム41は、第1フレーム21とほぼ同様の構成を有しており、左右一対の第3、第4アーム片42、44と各第3、第4アーム片42、44を繋ぐ結合片46とで構成される。両アーム片42、44の先端部に設けられた結合部42a、44aのうち、一方の結合部42aには、第2主軸118が挿通される大径軸孔42b’、及びその外周部にカップリング121が係合される凹部が、他方の結合部42bには、第2枢軸108の先端が嵌合される丸軸孔44b’がそれぞれ設けられている。カップリング121は回転角度規制手段115を構成するカムフォロワー117を保持して第2フレーム41に固定するものである。また、カムフォロワー117は、第2主軸118に回り止め結合される。この構成により、第2フレーム41に回転力が加わると、その回転力は第2主軸118に連結した歯車119、及びカムフォロワー117に伝達される。
連結部材30は、その第1連結片32に、第1主軸105を軸支する軸孔34aと、第2主軸118を軸支する軸孔36aと、歯車112、113を軸支する軸孔38a、38bと、が設けられ、第2主軸118を軸支する軸孔36aを囲む外壁面には回転角度規制手段115を構成するカム面116がプレス加工等を用いて第1連結片32と一体に刻設されている。各軸孔38a、38bは、軸孔34aと軸孔36aとの間にあって千鳥状に配置されている。この構成により、所定外径の歯車112、113を用いても、軸孔34aと軸孔36aとの距離を短くでき、このヒンジ機構20Aが装着される折畳み機器の薄型化を図れる。第2連結片33には、第1枢軸107が支持される軸孔35aと、第2枢軸108が支持される軸孔37aとが設けられている。結合片31には、実施例1の場合と異なり、折畳み機器に装着した状態で手前側に位置するように、その両端部が第1、第2連結片32、33に連結されており、補助取付けフレーム125を固定するためのネジ穴31bと、ヒンジカバーCを取付けるための開口31aが設けられている。
回転角度規制手段115は、カム面116とカムフォロワー117とを含み、カムフォロワー117をカム面116に弾性的に係合させ、かつ、第2フレーム41の回転と連動させるために、カップリング121、スリーブ122、伸張スプリング123、及び止めワッシャ124が設けられている。これらの組み込みは、連結部材30の軸孔36aに第2主軸118の手前側軸部を差し込み、さらに、この軸部に、カムフォロワー117、カップリング121、及びスリーブ122を嵌め込んでから、この軸部先端側を第2フレーム41の大径軸孔42b’に通し、さらに、この軸部先端側に伸張スプリング123を嵌め込んだ後、第2主軸118の端部に止めワッシャ124が固定される。これにより、伸張スプリング123は軸方向に移動自在なスリーブ122を介してカムフォロワー117に押圧力を与える。第2主軸118の奥側軸部は、補助取付けフレーム125の軸孔129に嵌め込まれる。
前記構成を備える回転角度規制手段115は、第1フレーム21と第2フレーム41とが相対的に回転して開閉するとき、すなわち一つの状態から他の状態に移行するときに、回転初期に負荷が大きくなり、それを乗り越えると負荷が小さくなり、閉状態と開状態とで安定したものとなるように機能する。こうして、二つ折りの送受話ケース2、10の開閉動作は、スナップアクションが利いたものとなる。
前記補助取付けフレーム125は、連結部材30の第1連結片32の内面との間に各歯車106、112、113、119を支持するためのもので、上辺126と側辺127とから成り、上辺126にはこの補助取付けフレーム125を連結部材30に固定するための固定用ネジ137が挿通されるネジ穴132と、開口31aに対応する開口131とが設けられ、側辺127には第1主軸105を軸支する軸孔128と、第2主軸118を軸支する軸孔129と、歯車112、113を軸支する軸孔130、140とが設けられている。
また、連結部材30の第2連結片33は、第1フレーム21及び第2フレーム41の第2、第4アーム片24、44の結合部24b’、44b’に第1、第2枢軸107、108によって軸支されるものであるが、第1、第2枢軸107、108にストッパー部材71、71がそれぞれ嵌め込まれる。このストッパー部材71,71は上記実施例1に示すものと同一形状からなり、第2、第4アーム片24、44に固定されて第2連結片33の外面に設けられた係止突起(図示省略)に当接することにより、第1、第2フレーム21、41の回動を規制する。また、前記回転力伝達機構111において、歯車106、119は第1、第2主軸105、118にそれぞれ固定され、歯車112、113は中心支持軸に対して回転自在に設けられた遊歯車である。
このように構成されたヒンジ機構20Aにおいては、第1フレーム21と第2フレーム41との間に偶数の歯車列から成る回転力伝達機構111が設けられていることから、第1フレーム21又は第2フレーム41のいずれか一方に回転力が加わると、他方に反転回転力を伝達する機能となる。すなわち、第1フレーム21に回転力が加わると、第1主軸105が回転し、歯車106が回転し、その回転は歯車112、113を介して歯車119に伝達される。歯車119が回転すると、第2主軸118が回転し、それに結合されているカムフォロワー117、及びカップリング121が回転し、カップリング121が係合している第2フレーム41が回転する。このとき、カムフォロワー117はカム面116に弾性的に係合しており、回転角度規制手段115が機能する。
図13(a)及び図13(b)には、第1フレーム21に対して第2フレーム41を、閉状態から開いていったときのヒンジ機構の動作を示している。第1フレーム21及び第2フレーム41を閉状態(図13(a)参照)から開いていったとき、その開き面は連続した平面状となる(図13(b)参照)。これは、2つの軸、すなわち、第1フレーム21の第1主軸105及び第2フレーム41の第2主軸118を、いずれも連結部材30でもって支持したからである。また、回転力伝達機構111は両主軸の歯車112、113の間を、歯車106、119により連結しているので、両主軸の歯車106、119を小径化することができる。
以上説明したように、本発明の実施例2に係るヒンジ機構20Aによれば、連係機構として偶数個の歯車を用いて第1、第2フレーム21、41の回動を連動させるので、このヒンジ機構20Aを備える折畳み機器(例えば図1〜図3に示す携帯電話機1)の一方のフレームに連結した送話ケース2あるいは受話ケース10を回動させて折畳み機器を開状態とした際、ヒンジ機構は2つの軸を中心にそれぞれ送受話ケース2、10の回動角度を等分した角度回動することになり、両軸が独立して回動することがないので、閉状態における送受話ケース2、10のズレを抑えることができる。
なお、上述の実施例2においては、駆動機構を1つとしたが、2つあるいはそれ以上設けることもできることは、上述の実施例1の構成から明らかである。