図1は、本発明の第1実施例を説明するモデル図である。図2はその側面図である。
図1及び図2において、100はロータ部鉄心、101はポンプ軸、102はポンプ軸101の外表面(輸送面)を覆う筒状ハウジング、103はフロンントカバー、104はリアカバー、105はポンプ軸101の内部に形成された流通路(鎖線で示す)、106はポンプ軸101の外表面と筒状ハウジング102の内面の間に形成されたポンプ室、107は導電性流体、108はポンプ軸101の外表面に形成されたねじ溝(スパイラル溝)である。
ねじ溝108は、リッジ(峰)109とグルーブ(輸送溝)110から構成される。
111及び112は、ロータ部鉄心100に形成された導電性流体107の吸入口及び吐出口である。上記部材100〜112により、導電性流体供給ユニットのロータ部113(但し機械的に回転はしない)を構成している。
114a〜114dは、電磁石の固定子磁極、115a〜115dは前記固定子磁極のそれぞれに巻かれた電磁コイル、116は磁気回路のヨークを兼ねた外部ケースである。上記部材114a〜114d、115a〜115d、116により回転磁界を発生するためのステータ部117を構成している。
ポンプ軸101と筒状ハウジング102は、本実施例では、何れも非磁性かつ非導電性材料であるセラミクスを用いており、渦電流の発生はなく、磁気回路に与える影響もない。筒状のポンプ軸101の内部には、磁性材料であるロータ部鉄心100が挿入されており、2つの対極する固定子磁極を繋ぐ磁気回路の一部を構成している。
電磁コイル115a〜115dに交流電流を流して回転磁界が形成されると、充填された導電性流体107の一部に渦電流が発生する。この渦電流と磁界の作用によるフレミングの左手の法則により、導電性流体は円周方向に力を受けて、ねじ溝108が形成されたポンプ軸101の回りを回転する。更に導電性流体の円周方向流動を、ねじ溝108により軸方向流動に変換する。その結果、導電性流体は吸入側111から吐出側112へ輸送される。
本実施例では、吸入口111及び吐出口112はロータ部鉄心100に形成したが、例えば、フロンントカバー103、リアカバー104に形成してもよい。
図3は本発明の第2実施例を示すモデル図で、スラスト円盤上にスパイラル溝(ねじ溝)を形成し、かつこの円盤上で回転磁界を発生させることにより、導電性流体の供給装置を構成したものである。
同図において、150はスラスト円盤、151はこのスラスト円盤に形成されたスパイラル溝(ねじ溝)、152はこのスパイラル溝を構成するリッジ(峰)、153はグルーブ(輸送溝)である。154はスラスト円盤150の表面を狭い隙間を隔てて覆うハウジング、155はハウジング154の中心部に形成された吸入口、155はスラスト円盤150の外周部に形成された吐出口、156a、156bは磁極を構成する電磁石の固定子磁極、157a、157bは上記スロットのそれぞれに巻かれた電磁コイルである。電磁石の固定子磁極と電磁コイルは円周上に複数個設けているが、図3ではそれぞれ2個のみ記している。
本実施例のポンプの動作原理は、第1実施例の場合と同様である。電磁コイル157a、157bに交流電流を流して回転磁界が形成されると、充填された導電性流体の一部に渦電流が発生する。この渦電流と磁界の作用によるフレミングの左手の法則により、導電性流体はスパイラル溝が形成されたスラスト円盤150上の回りを回転する力を受ける。この導電性流体の円周方向流動を、スパイラル溝により径方向流動に変換する。
その結果、導電性流体はスラスト円盤150の中心部(吸入口155)から外周部(吐出口155)へ輸送される。なお、スパイラル溝の角度を逆にするか、或いは回転磁界の方向を逆にすれば導電性流体の流動方向も逆(外周部→中心部へ流動)となる。
図4は本発明の第3実施例を示すモデル図で、回転磁界により円周方向に流動する導電性流体の流通路に仕切り板を設けることにより、導電性流体の供給装置を構成したものである。
同図において、200はロータ部鉄心、201はポンプ軸、202は筒状のハウジング、203及び204は側板、205はポンプ軸201の外表面とハウジング202の内面の間に形成された円弧状のポンプ室、206は前記ポンプ室の流路を円周方向で遮蔽する仕切り板、207はベース台、208及び209は仕切り板206を隔ててベース台206に形成された導電性流体の吸入口及び吐出口である。
また、210a〜210cは、電磁石の固定子磁極、211はこの固定子磁極を固定しポンプ全体を収納すると共に、磁気回路のヨークを兼ねた外部ケース、212a〜212cは前記固定子磁極のそれぞれに巻かれた電磁コイルである。
また、ポンプ軸201とハウジング202は、何れも非磁性かつ非導電性材料であるセラミクスを用いており、渦電流の発生はなく、磁気回路に与える影響もない。
ポンプ軸201の内部には、磁性材料であるロータ部鉄心200が挿入されており、隣り合う固定子磁極を繋ぐ磁気回路の一部を構成している。
電磁コイル212a〜212cに交流電流を流して回転磁界が形成されると、充填された導電性流体の一部に渦電流(図4)が発生する。この渦電流と磁界の作用によるフレミングの左手の法則により、導電性流体は円周方向に力を受けて、ポンプ軸201の回りを回転する。
なお、ポンプ室の一部に仕切り板を設けて、導電性流体がポンプ室と外部と出入りするポンプ作用を与える方法は、第2実施例で示したようなスラスト円盤の場合でも適用できる。また、後述するポンプの効率アップを図る方法、ポンプを流量センサとして用いる方法等も本構造が適用できる。何れの場合でも、ねじ溝を輸送面に形成する必要がないため、構成はより簡素になる。
以上の実施例は何れも導体の表面に発生する渦電流を利用して、導電性流体を輸送させる方法であった。
以下、ポンプの効率を向上させる方法について、誘導モータの基本原理として知られる「アラゴの円盤」(図6(イ)(ロ))に立ち返り考察する。
同図において、700は導体円盤、701は永久磁石、702及び703は磁極の固定子磁極である。導体円盤700が図の矢印のごとく時計方向に回転すると、例えば、固定子磁極702の両端部703、704近傍の導体円盤700上で、渦電流705、706が生じる。すなわち、磁界Hの変化を妨げる向きに新たな磁界が発生するように、渦電流が発生する。端部703近傍では、永久磁石701による磁束の減少を補う磁界が発生するように、右ねじの法則により右旋回する渦電流が発生する。逆に端部704近傍では、永久磁石に701よる磁束の増加を妨げる磁界が発生するように、左旋回する渦電流が発生する。ここで2つの渦電流705、706を、
1)スロット702の対向面上で導体円盤700上に発生する電流
(705a、706aとする)
2)スロット702の対向面上から外れた箇所で発生する電流
(705b、706bとする)
とすると、磁界Hと上記1)の2つの電流705a、706aの電磁誘導作用により、導体円盤700には半時計方向の制動トルクが作用する。上記2)の2つの電流705b、706bについては、磁界が作用しないため、トルクには影響を与えない。
要約すれば、永久磁石を固定した状態で導体円盤が回転する場合、導体円盤には、導体円盤を静止させるような制動トルクが発生する。逆に導体円盤が静止した状態で磁界が回転する場合は、導体円盤には回転磁界に追従するように同方向の回転トルクが作用する。電磁ポンプでは、この回転トルクが導電性流体を圧送するポンプ作用となる。
以上がアラゴの円盤を用いた誘導形モータ、誘導形電磁ポンプの駆動原理であるが、実際は、以下示す理由によって誘導形では大きな効率が得られない。
ここで、導体(導電性流体)上に発生する渦電流706(図7(イ))に注目する。理解を容易にするために、この渦電流を図7(ロ)の等価回路に置換えてみる。図7(ハ)は電流ループの各位置における電圧を示す。図7(ロ)から直感的にわかるように、導体面内にはリーク電流が発生するため、渦電流は導体表面に図6で示したような、明確な閉ループを持つ理想的な状態では発生できない。
図8は本発明の第4実施例を示すモデル図であり、磁気回路に閉ループを形成すると共に、ポンプ流路をかご形形状にして電流の閉ループを形成することにより、ポンプの高効率化を図ったものである。また、図9は図8の側面図で磁束がB→B’の方向に流れる場合、図10は磁束がA→A’の方向に流れる場合、図11はかご形流路だけを抽出したモデル図である。
300はロータ部鉄心、301はポンプ軸、302はポンプ軸301の外周部(輸送面)を覆う筒状ハウジング、303はポンプ軸301の外周部と筒状ハウジング302の内面の間に形成されたポンプ室、304は導電性流体、305aはポンプ軸の外表面に形成されたねじ溝ポンプのリッジ(峰)である。
同様なリッジ305b、305c、305dがポンプ軸301円周方向で対称に形成されている。306aはリッジ305aと305bの間に形成されたグルーブ(輸送溝)である。同様な輸送溝306b、306c、306dが各リッジの間に形成されている。各輸送溝は軸芯に対して角度αの傾斜角を有する。輸送溝の角度α>0ならば、後述する原理によって、流体は軸方向に流動する作用が得られる。
307は輸送溝とリッジの右端部に形成された吸入側環状流通路(吸入側共通流通路)、308は左端部に形成された吐出側環状流通路(吐出側共通流通路)、309及び310は、ロータ部鉄心300に形成された導電性流体304の吸入口及び吐出口である。
本実施例では、リッジ305a〜305dの外表面と筒状ハウジング302の内面間の隙間は小さく、この部分での導電性流体304の出入りが無いように充分なシールがなされている。したがって各輸送溝は、吸入口と吐出口を除いて、外界と遮断された閉空間となるために、フレミング左手の法則により円周方向に流動する作用を受けても、隣り合う輸送溝間の流体リークは無い。その効果により、本実施例のポンプは高い輸送効率が得られる。
上記部材300〜310により、導電性流体供給ユニットのロータ部311(但し機械的に回転はしない)を構成している。
312a〜312dは、電磁石の固定子磁極、313a〜313dは前記固定子磁極のそれぞれに巻かれた電磁コイル、314は磁気回路のヨークを兼ねた外部ケースである。上記部材312a〜312d、313a〜313d、314により回転磁界を発生するためのステータ部315を構成している。ポンプ軸301と筒状ハウジング302は何れも非磁性かつ非導電性材料であるセラミクスを用いており、渦電流の発生はなく、電磁誘導作用で誘起される電流と磁気回路に与える影響がない。
筒状のポンプ軸301の内部には、磁性材料であるロータ部鉄心300が挿入されており、2つの対極する固定子磁極を繋ぐ磁気回路の一部を構成している。すなわち、図9の鎖線は回転磁界による磁束が、固定子磁極312a→磁極312cの方向(B→B’)だけに流れる場合を示す。この場合、磁気回路の閉ループ「固定子磁極312a→ロータ部鉄心300→固定子磁極312c→外部ケース314→固定子磁極312a」を形成している。
図10に、回転磁界が丁度90度進み、磁束が固定子磁極312b→磁極312dの方向(A→A’)だけに流れる場合を示す。
本実施例の第1の実施例と異なる点のひとつは、ポンプ内部の導電性流体に流れる電流が明確な閉ループを形成しているという点である。
以下、その動作原理について、かご形流路だけを抽出したモデル図11を用いて説明する。回転磁界によって形成される磁界Hが、図11における矢印(図のB→B’の方向)に作用した時にスポットを当てる。
移動磁界が矢印Aのごとく回転しているとする。この場合、磁界が静止していると仮定すれば、相対的には導体が矢印Aとは逆方向に回転している場合と等価である。このとき、輸送溝306aだけに注目すれば、溝306aにはフレミング右手の法則により、吸入口(IN)近傍の導電性流体に起電力が誘導され、その結果、電流iが矢印(鎖線)のごとく、吸入口(IN)から吐出口(OUT)の向きに流れる。
一方、ポンプ軸301の円周方向で180度異なる位置に形成された輸送溝306cだけに注目すれば、回転磁界の方向が逆になるために、電流iは吐出口(OUT)から吸入口(IN)に向けて流れる。すなわち、電磁誘導作用によって誘起される電流iは、「輸送溝306a→吐出側環状流通路308→輸送溝306c→吸入側環状流通路307→輸送溝306a」の明確な閉ループを描く。
更に、この電流iと磁界Hの作用により、フレミング左手の法則により、輸送溝内にある導電性流体は、円周方向の力fを受ける。輸送溝は、ポンプ軸301の軸芯に対してαだけ傾斜しているために、円周方向の力fの輸送溝方向成分(=fsinα)が溝内の流体を輸送する力となる。その結果、導電性流体は矢印(実線)のごとく、吸入口(IN)から吐出口(OUT)に向けて流動する。
輸送溝306aの流体に起電力を誘導させる固定子磁極312aは、隣り合う輸送溝306dも覆っているため、この輸送溝306d内の流体にも同時に流動作用を与える。また、円周方向で180度異なる位置に形成された固定子磁極312cも同様に、隣り合う輸送溝306b内の流体にも流動作用を同時に与える。つまり、1対の磁極間だけに磁束が流れる場合でも、本ポンプではすべての輸送溝に流動作用が与えられるのである。この効果により、本ポンプは極めて高い効率を得ることができるが、この理由について、図12、図13を用いてもう少し詳しく説明する。
図12は輸送溝が形成されたポンプ軸301を、点a、bを切り口として、円周方向に展開したモデル図である。リッジ(305a〜305d)と輸送溝306a〜306d)がそれぞれ4個づつ形成されている。図12(イ)は、回転磁界による磁束が、固定子磁極312a→磁極312cの方向(B→B’)だけに流れる場合を示す。図24を参考にすれば、メインコイル電流が正のピーク位置にあり、始動コイル電流がゼロの位置にある場合(同図2))である。
図中の矢印は、磁界によって流体の流動作用が与えられている状態を示している。図12(ロ)は、磁束が固定子磁極312b→磁極312dの方向(A→A’)だけに流れる場合を示す。図24を参考にすれば、メインコイル電流がゼロの位置にあり、始動コイル電流が負のピーク位置にある場合(同図3))である。
流体の流動作用を示す矢印の分布から、回転磁界が図12(イ)及び図12(ロ)のいずれの場合も、各輸送溝の流体には流動作用が与えられることがわかる。回転磁界が図12(イ)と図12(ロ)の中間にある場合は、全磁極に電流が供給されるため、すべての輸送溝の流体に流動作用が与えられる。
図13は、本実施例ポンプの等価電気回路である。本実施例ポンプは圧力発生源Pgと輸送溝自身の流体抵抗Pgを直列和した流路が4セット並列に接続した等価回路で表現できる。また、ポンプの吸入側310と吐出側309はポンプ外部の流体抵抗Rpに連結されている。
本実施例のポンプでは、ひとつの固定子磁極が2つの輸送溝を均等に覆っているため、各溝の流体に与えられる流動作用(等価回路では圧力発生源Pgの大きさ)は等しい値となる。
図12(イ)において、固定子磁極312aが2つの輸送溝306a、306dを覆う部分を316、317とすれば、3角形部分316と317の面積は概略等しい。すなわち、各輸送溝の圧力発生源Pgの値が等しくなるように固定子磁極の配置方法、輸送溝の傾斜角度などを設定すれば、各輸送溝に与えられる流動作用は等しく、流体は一方向のみに流動する。
圧力発生源Pgの大きさは、電磁コイルに流れる電流の大きさに比例して変化するが、ひとつの輸送溝に位相の異なる2つの圧力発生源(例えば、316と317)が常に存在するために、Pg>0の状態を保つことができる。
本実施例では、磁極312aが輸送溝306aを覆う面積をSa(316の面積)、隣合う輸送溝306dを覆う面積をSb(317の面積)として、評価指数φ=|Sa−Sb|/(Sa+Sb)を定義したとき、φ<0.3となるように構成すれば、充分なポンプ効率が得られた。
更に、ひとつの輸送溝に注目し、脈動の無い流量を得る方法について述べる。その前提として、ひとつの磁極が輸送溝を覆う面積と隣合う輸送溝を覆う面積が等しく、φ=0とする。
後述する図25を参考にすれば、メインコイルに流れる電流をI1=f(ωt)、始動コイルに流す電流をI2=f(ωt+π/2)としたとき、I=I1+I2が一定値になるような周期関数f(ωt)を選択すれば、2つの圧力発生源の流動作用は常に一定値を保つ。全ての輸送溝でこの条件が成り立てば、本ポンプは脈動のない吐出流量が得られる。
更に、汎用性を向上させるならば、メインコイルに流れる電流をI1=f(ωt)、始動コイル(サブコイル)に流す電流をI2=g(ωt)として、I=I1+I2が一定値になるような周期関数f(ωt)、g(ωt)を選択すればよい。
電磁コイルが図9に示したような集中巻きではなく、分布巻きの場合も同様であり、輸送溝に傾斜角をもたせることにより、全輸送溝内の流体に流動作用を与えられるように、コイルに流す電流波形、各部材の形状と配置関係等を設定すればよい。
ここで、1つの固定子磁極が1つの輸送溝のみを受け持つ場合を想定する。例えば、輸送溝の傾斜角度αが小さい場合は、1つの固定子磁極の極歯は1つの輸送溝しか覆えない。この場合、回転磁界による磁束が、例えば、1対の対向する磁極間B→B’(例えば、固定子磁極312a→磁極312cの方向)だけに流れる場合を想定すると、この時点での等価回路は、図14のようになる。
すなわち、圧力発生源Pgと輸送溝自身の流体抵抗Rgの直列和の流路が2セット、流体抵抗Rgだけを有する流路が2セット、計4セットの流路を並列に接続した等価回路で表現できる。回転磁界の位相が丁度90度進み、磁束がもう1対の対向する磁極間A→A’の方向だけに流れる場合は、各圧力発生源Pgは隣の輸送溝へ移行する。
この等価回路から分かるように、回転磁界が上記いずれかのタイミングのとき、流体は吐出側から吸入側へ逆流する成分(鎖線)を有する。輸送溝の流体抵抗Rgが充分に大きければ、逆流が効率に与える影響を減らすことができる。微少流量ポンプの場合は、輸送溝の溝深さを浅くできる。粘性流体の流体抵抗Rgは隙間の3乗に逆比例するために、溝深さが浅いほど流体抵抗は顕著に増大する。
従って、微少流量ポンプの場合は逆流による効率低下の影響を小さくできる。しかし、ポンプに大きな流量が要求される場合は、溝深さは大きくせざるをえず、流体抵抗Rgに大きな値は期待できない。
ひとつの固定子磁極が2つの輸送溝を均等に覆うことにより、ポンプ効率が向上できるという本発明の発想は、回転子のスロットが物理的に固定された従来の誘導モータの考え方にはなく、回転子の輸送溝内を流体が流動するという本発明の固有の構造に基づくものである。
以下示す第5実施例は、輸送溝間の逆流を防止するための第2案を示すもので、独立したステータ部を2セット配置し、かつ2つステータ部のそれぞれの極歯が傾斜した輸送溝の吸入側と吐出側を覆うように、2つステータ部を配置したものである。この構成により、本ポンプでは高いポンプ効率が得られる。
図15において、900はロータ部鉄心、901はポンプ軸、902はポンプ軸901の外周部(輸送面)を覆う筒状ハウジング、903はポンプ軸901の外周部と筒状ハウジング902の内面の間に形成されたポンプ室、904は導電性流体、905aはポンプ軸の外表面に形成されたねじ溝ポンプのリッジ(峰)である。同様なリッジ905b、905c、905dがポンプ軸901円周方向で対称に形成されている。
906aはリッジ905aと905bの間に形成されたグルーブ(輸送溝)である。同様な輸送溝906b、906c、906dが各リッジの間に形成されている。907は輸送溝とリッジの右端部に形成された吸入側環状流通路(吸入側共通流通路)、908は左端部に形成された吐出側環状流通路(吐出側共通流通路)、909及び910は、ロータ部鉄心900に形成された導電性流体904の吸入口及び吐出口である。上記部材900〜910により、導電性流体供給ユニットのロータ部911(但し機械的に回転はしない)を構成している。
ステータ部は第1ステータ部912と、第2ステータ部913から構成される。914a〜914dは第1ステータ部912の電磁石の固定子磁極、915a〜915dは第2ステータ部913の電磁石の固定子磁極、916は磁気回路のヨークを兼ねた外部ケースである。
図16は輸送溝が形成されたポンプ軸900を、点a、bを切り口として、円周方向に展開した図であり、第1ステータ部912には磁束が対向する1対の固定子磁極間(914b→914d)だけに流れ、第2ステータ部913には磁束が対向する1対の固定子磁極間(915b→915d)だけに流れた場合に相当する。リッジ(905a〜905d)と輸送溝(906a〜906d)がそれぞれ4個づつ形成されている。また、第1ステータ部912と第2ステータ部913の相対位置は、2つステータ部のそれぞれの極歯が傾斜した輸送溝の吸入側と吐出側を覆うように配置されている。
図16から明らかなように、磁束が対向する1対の固定子磁極間だけに流れる場合でも、全輸送溝(906a〜906d)に電磁誘導による流動作用が働くため、回転磁界のいかなる段階でも輸送溝間に逆流が発生することはない。
第5実施例では、ねじ溝ポンプの輸送溝(グルーブ)とリッジ(峰)の形状がポンプ軸901の軸芯に対してαだけ傾斜しているのに対して、2つのステータ部共電磁石の固定子磁極は軸芯に平行な形状をしていた。この固定子磁極の極歯が輸送溝全体を覆うように、固定子磁極の形状に傾斜角をもたせた電磁石構造にすれば、磁束が流れる部分と輸送溝内で電流が流れる部分が一致すために、ポンプ効率は更に増加することができる。その結果、ポンプの圧力・流量特性の向上が図れる。
図17は、1個のステータ部のみに注目し、輸送溝が形成されたポンプ軸400を、点a、bを切り口として、円周方向に展開した図である。第5実施例では輸送溝が4セットであったのに対し、図17の例は輸送溝を6セット形成した場合を示す。
リッジ(401a〜401f)と輸送溝(黒く塗りつぶした部分402a〜402f)がそれぞれ6個づつ形成されている。輸送溝402bに注目すると、輸送溝402bを覆うように固定子磁極403b(鎖線で示す)の極歯が形成されている。同様に、各輸送溝にスロットが1対で形成されており、図17の場合は6極の固定子磁極が形成されている。この6極の固定子磁極から構成される電磁石に、回転磁界を与えればよい。
或いは、1つの共通の固定子磁極が複数の輸送溝を覆うように固定子磁極の極歯を形成してもよい。例えば、1つの共通の固定子磁極が2つの輸送溝402bと402cを覆うように固定子磁極の極歯を形成した場合、3極の電磁石に回転磁界を与えればよい。
以上の実施例における電磁石の固定子磁極は、電磁コイルを巻く部分と極歯の部分は同一幅の形状をしていた。図18に示す実施例は、輸送溝の対抗面である極歯の幅を円周方向で充分に大きく形成した場合を示す。
800はロータ部鉄心、801はポンプ軸、802はポンプ軸801の外周部を覆う筒状ハウジング、803はポンプ軸801の外周部と筒状ハウジング802の内面の間に形成されたポンプ室、804は導電性流体、805aはポンプ軸の外表面に形成されたねじ溝ポンプのリッジ(峰)である。同様なリッジ805b、805c、805dがポンプ軸801円周方向で対称に形成されている。806aはリッジ805aと805bの間に形成されたグルーブ(輸送溝)である。同様な輸送溝806b、806c、806dが各リッジの間に形成されている。
807は、ロータ部鉄心800に形成された導電性流体804の吸入口である。808a〜808dは、電磁石の固定子磁極、809a〜809dは前記スロットのそれぞれに巻かれた電磁コイル、810a〜810dは前記固定子磁極の極歯、811は磁気回路のヨークを兼ねた外部ケースである。
ポンプ軸801と筒状ハウジング802は何れも非磁性かつ非導電性材料、或いは、弱磁性かつ弱導電性材料を用いており、渦電流の発生は小さく、電磁誘導作用で誘起される電流と磁気回路に与える影響が少ない。筒状のポンプ軸801の内部には、磁性材料であるロータ部鉄心800が挿入されており、2つの対極する固定子磁極を繋ぐ磁気回路の一部を構成している。
本実施例では、固定子磁極の極歯の幅(θp)を電磁コイルが巻かれる部分(電磁コイルを除いた細首の部分)よりも大きく形成しているために、極歯の対向面はポンプ軸801上で輸送溝が占める部分を充分に広くカバーできる。通常の誘導モータの場合、極歯の幅を広くしても、磁束密度は極歯の面積に逆比例して低下するため、直接にはトルクアップ、効率アップに繋がらない。しかし、本発明の導電性流体輸送ポンプでは、軸方向に傾斜角を持つ輸送溝がポンプ軸(モータのロータに相当する部分)に形成されているため、極歯がポンプ軸上を広く覆う程、回転磁界のエネルギを有効に流体を輸送する動力に変換できるのである。
図18を一例に本発明のポンプを構成する各部材の径方向寸法について、考察する。筒状ハウジング802の厚みをδHとする。電磁石の固定子磁極808aと筒状ハウジング802の外表面の間にエアーギャップを設けた場合(例えば、図1に示す第1の実施例参照)は、固定子磁極808a内面と筒状ハウジング802の内面間の距離をδHと定義する。輸送溝806aの溝深さをδGとする。リッジ805aの頂点と筒状ハウジング802の内面の間にギャップがある場合(図1参照)は、輸送溝の底面と筒状ハウジング802の内面間の距離を溝深さδGと定義する。また、ポンプ軸801の最少厚み(前記輸送溝の底面とロータ部鉄心800間の距離)をδPとする。
従って、前記固定子磁極808a内面とロータ部鉄心800の外表面間の距離は、δT=δH+δG+δPとなる。筒状ハウジング802、ポンプ軸801は何れも透磁率の小さな非磁性材料或いは弱磁性材料を用いるのが好ましいため、上記距離δTは磁気回路における磁気抵抗となる。磁気回路における上記ギャップδTは、ポンプの性能を確保する上で、小さいほうが好ましい。
以下、δH、δG、δPに必要な寸法について考察する。
筒状ハウジング802によって収納される部分(図1の場合はロータ部113)と、前記電磁石スロットと外部ケース811で構成される部分(図1の場合はステータ部117)は、メンテナンスのために着脱自在であるほうが好ましい。そのために設定するエアーギャップの厚みと、筒状ハウジング802に必要な板厚強度を考慮すると、δH>1.0mmは必要であった。
例えば鉛フリー溶融はんだを輸送する場合、不純物溶け込みによる組成変化と酸化物発生により、流通路の溝深さδGが狭いと流路の目詰まりによるトラブルが発生しやすい。実施例の場合、目詰まりなくポンプが機能するためには、輸送溝の溝深さδG>0.5mmは必要であった。また、ポンプ軸801内部は、ロータ部鉄心800によって十分に補強されるために、δP>0.5mmあれば強度上十分であった。
従って、後述する鉛フリー溶融はんだにおける実施例を参考にすれば、磁気回路におけるギャップδT=δH+δG+δP>2.0mmは必要であった。また、電磁誘導作用を利用した本ポンプが十分な性能を確保する上で、ギャップδTの上限値が決まり、実用上、δT<6.0mmとするのが好ましかった。
δHとδPは、一定値以上の寸法を確保する必要がないため、輸送溝の溝深さδGの推奨範囲は、0.5mm<δG<4.5mmである。適用する装置に要求されるポンプ流量が、微小流量でよい場合は、輸送溝の溝深さδGは、目詰まりが発生しない範囲で十分小さいほうが好ましく、0.5mm<δG<3.0mmであった。この場合、ギャップδTの範囲は、2.0mm<δT<4.5mmである。
なお、図1の実施例では、磁極の数Np=4、図5ではNp=3、図17ではNp=6であった。しかし固定子磁極の数は限定されるものではなく、通常の誘導モータのように数十個の固定子磁極を設けてもよい。また、輸送溝(およびリッジ)の数Ngも同様に限定されるものではない。
図19及び図20は、不純物センシングシステムに本発明のポンプを適用した場合をした場合を示す。この不純物センシングシステムは、はんだ槽の液組成状態をリアルタイムで把握するインライン型のシステムである。
500ははんだ槽、501は導電性流体の輸送ポンプ、502ははんだ液検出部、503ははんだ検出センサ、504は圧縮気体源、505はオリフィス、506はバルブA、507はバルブB、508は不純物センシングユニットである。509〜514は各ユニット同士を繋ぐパイプである。なお、各ユニットとパイプには、はんだを適温下で溶融状態に保つためのヒータが装備されているが、記載は省略する。
図19は、不純物センシングユニット508に溶融はんだを供給している状態を示し、バルブA506は開放状態にあり、バルブB507は遮断されている。本発明の導電性流体輸送ポンプは、流量は回転磁界の周波数を変えることにより自在に制御でき、供給総流量も総回転数をカウントすることにより設定できる。また、供給の定常状態、過渡状態(終了時)の流量の微妙な制御も、あたかもモータの回転数制御を施すごとくできるため、極めて精度の高い導電性流体の流量制御が可能となる。
図20は、装置を駆動するための準備段階の状態を示す。バルブAは遮断されており、バルブBは開放されている。圧縮気体源504から供給された気体がオリフィス505を通過すると、サイフオンの原理(細径部の動圧増加による静圧降下)によって負圧が発生し、各流通路、ポンプ501、はんだ液検出部502にははんだ槽から溶融はんだが緩やかに充填される。はんだ検出センサ503にはんだが充分に充填されたことを検出すると、準備段階は終了する。この準備段階において、ポンプ501に回転磁界を与えた状態にしておくと、溶融はんだがパイプ509を登りつめた段階で、ポンプ501が本来の導電性流体の輸送作用を発揮できるために、速やかに充填が完了する。
図21は本発明のポンプを用いたスポットはんだ付け装置を示す。
同図において、600ははんだ槽、601は導電性流体の輸送ポンプ、602ははんだ付けの対象となる基板、603は内側パイプ、604は外側パイプ、605はノズル先端部、606はオリフィス抵抗、607は溶融はんだ、608はポンプの吸入側流通路である。
ポンプ601によって、はんだ槽600から供給された溶融はんだ607は内側パイプ603を通過して、ノズル先端部605から噴出する。ポンプ601の吸入側流通路608には、オリフィス抵抗606が設けられている。このオリフィス抵抗606とポンプ601吸入側間に、外側パイプ604が連結している。
なお、各ユニットとパイプには、はんだを適温下で溶融状態に保つためのヒータが装備されているが、記載は省略する。ポンプ601が溶融はんだをはんだ槽から吸引しているとき、外側パイプ604は負圧となるために、ノズル先端部605から噴出した溶融はんだはすみやかに外側パイプ604内に吸引される。その結果、ノズル先端部605から噴出した溶融はんだはノズル先端部605から外周部に拡散せず、限定された部分でのスポットはんだ付けが可能となる。
本発明の導電性流体輸送ポンプを用いれば、はんだの供給量を回転磁場の周波数で微妙に調節できるために、対象部品(電子部品)の条件に合わせて最適な条件を設定できる。上記実施例では、ノズル先端部605における溶融はんだの吐出と吸引は同一のポンプを用いたが、それぞれ個別のポンプを用いてもよい。
上述した不純物センシングシステム、スポットはんだ付け装置等、いずれの場合もポンプ内に導電性流体が充填されていない場合は、「呼び水」としてのポンプが最初の段階は必要である。この呼び水としてのポンプは、大きな流量は必要ないため、極力シンプルな構成のポンプを用いればよい。例えば、低電圧電源と電磁コイルから構成される伝導形ポンプを、本発明のポンプの吸入側に装着すればよい(図示せず)。
本発明のポンプは小型化が容易であり、例えば、はんだの微少量を自在に制御できることを利用して、「携帯用小型はんだ付けユニット」としても本発明を適用することができる。
本発明の導電性流体輸送装置は、ポンプではなく逆に発電機、或いは流量センサとしても用いることができる。その理由は、磁界中を導体(導電性流体)が移動すれば、フレミング右手の法則により電流が誘起されるからである。この電流を検出することにより、配管中を流動する導電性流体の流量をリアルタイムで計測することができる。
図22はその原理モデルを示し、850はロータ部鉄心、851はポンプ軸、852はポンプ軸851の外周部を覆う筒状ハウジング、853はポンプ軸851の外周部と筒状ハウジング852の内面の間に形成されたポンプ室、854は導電性流体、855a〜855dは電磁石の固定子磁極、856a〜856dは前記固定子磁極のそれぞれに巻かれた電磁コイルである。
857と860は電磁コイルを繋ぐケーブル、858はバイアス電源、859は信号の出力端子である。対向する磁極には、バイアス電源により静磁界が形成されている。ポンプ室853内を導電性流体が、図22の矢印のごとく円周方向に流れれば、バイアス電流iOに加えて、電磁誘導作用による流量に比例した電流iVが電磁コイル内を流れる。この電流iVを検出することにより、導電性流体の流量を計測することができる。
また、電磁コイルにバイアス電流を流して静磁界を形成する代わりに、永久磁石を用いてもよい。この場合、永久磁石が高温下に晒されないように断熱処理を施せばよい。ポンプを流量センサ、発電機として用いる場合、本実施例で示したポンプ構造以外に、第2実施例であるスラスト円盤型、第3実施例である円周流路に仕切り板を設ける構造などが適用できる。また、ポンプの効率を上げるための前述した方法もすべて適用できる。
図23は、図22で示した導電性流体の流量センサを組み込んだ不純物センシングシステムである。650ははんだ槽、651は導電性流体の輸送ポンプ、652ははんだ液検出部、653ははんだ位置検出センサ、654は圧縮気体源、655はオリフィス、656はバルブA、657はバルブB、658は不純物センシングユニット、659は流量センサである。
なお、各ユニットとパイプには、はんだを適温下で溶融状態に保つためのヒータが装備されているが、記載は省略する。不純物センシングユニット658へ供給される溶融はんだの流量は、流量センサ659によりハイレスポンスで検出できる。この情報をポンプ651へフィードバックすることにより、極めて精度の高い流量制御ができる。
以上説明したいずれの実施例の場合も、ポンプ軸と筒状ハウジングに非磁性かつ非導電性材料、或いは、弱磁性かつ弱導電性材料を用いれば、渦電流の発生を押さえて、電磁誘導作用で導電性流体に誘起される電流と磁気回路に与える影響を少なくできる。また、ロータ部鉄心と固定子磁極は薄板の電磁鋼板を積層させて用いれば、渦電流の発生を小さくできるため、ポンプ効率は更にアップする。
ポンプが輸送する導電性流体に酸化物などの発生がなく、かつ流量が微少量でよい場合は、前記輸送溝の溝深さδGを極力浅く、例えば0.1mmのオーダー、或いはそれ以下に設定して、筒状ハウジングの厚みδHを薄くし、ロータ部鉄心の外表面と前記固定子磁極間のギャップδTを小さくすればよい。もし非磁性体の間隙δTが誘導モータ並(例えばδT<1mm)にできれば、本発明の導電性流体ポンプは誘導モータと同等の効率(80%以上)を得ることができる。但し、微小流量であるため評価すべきはポンプ効率ではなく、高い発生圧力が得られるポンプ性能である。
しかし、ポンプの必要流量が大きく、溝深さδGを小さく出来ない場合、或いは、筒状ハウジングの厚みδHが小さくできない場合は、非磁性体の間隙δTの増大により磁気抵抗を増加させ、閉ループ磁気回路(図9参照)における磁束密度を低下させてしまう。この場合は、ポンプ軸と筒状ハウジングには、適度な大きさの透磁率を有する磁性材料を用いた方がポンプ性能の点で好ましい場合もあるため、ポンプの要求される仕様に合わせて、両部品に用いる材料の磁気特性を選択すればよい。
本発明の導電性流体輸送ポンプは、液体だけではなく気体も扱うことができる。例えば、プラズマ流体の高精度な流量制御、圧力制御にも適用することができる。図24は、ECR(電子サイクロトロン共鳴型)スパッタに本発明を適用した場合の装置のモデル図である。ECRスパッタは、低エネルギ領域でイオンエネルギを制御し、イオン化率高く、金属および金属化合物の低温作成ができる。
950はポンプ軸、951は輸送溝、952は吸入側流通路、953は吐出側流通路、954は電磁コイル、955は冷却プレート、956はターゲット、957は基板、958はプラズマ流、959は排気口である。その他、プラズマ材料プロセシング技術の基幹ユニットとして、プラズマCVD、反応性イオンエッチング、イオンビームエッチング、難燃性材料のプラズマトーチ等に本発明を適用することができる。
何れの実施例の場合も輸送溝(グルーブ)とリッジは、ポンプ軸とこのポンプ軸を覆う筒状ハウジングのいずれの側に形成してもよい。本発明のポンプが適用できる導電性流体としては、溶融はんだ、プラズマ流体以外では、亜鉛、ナトリウム、水銀、アルミ電解液、導電性インクなど、各種材料を、さまざまな製造工程で用いることができる。
以下、図25〜図30を用いて、本発明のポンプを駆動する制御方法について補足説明をする。導電性流体に円周方向流動をさせるための回転磁界を与える方法は、誘導(インダクション)モータを駆動するための、よく知られた公知の技術が適用できる。すなわち、ステータ(固定子)側の巻線に交流電流を流して回転磁界を発生させ、ロータ(回転子)を回す方式が適用できるため、以下、その一例を参考に示す。
誘導モータの回転にはコンデンサの電気特性が利用されている。コンデンサに交流電流が流れるとき、電圧よりも90°位相が進むために、コンデンサを交流につなぐと電圧変化よりも4分の1周期早く変化しながら交流電流が流れることになる。この電圧と電流間の位相のズレを利用して、誘導モータでは回転磁界を形成している。
4極の誘導モータが回転磁界が発生できる原理を図25及び図26に示す。
ロータを取り巻くステータ550にはL1/L4の4つのコイルが巻かれている。メインコイル551(L1とL2)と始動コイル552(L3とL4)は、それぞれ交流電源と並列に結ばれ、互いに垂直方向の磁界を発生する。2つの電磁石は直交するように置かれた構造となっており、メインコイル551を実線、始動コイル552を一点鎖線で示す。磁界が同時に発生すると回転磁界とはならないため、始動コイル側には位相をずらすためのコンデンサ553が直列に挿入される。
図27において、交流電圧が1)の状態にあるときは、コンデンサ553によって位相が90°進むため、始動コイルのほうに大きな電流が流れて、図27の矢印Hのごとく磁界が発生する。次に交流電圧が2)の状態に進むと、今度はメインコイル側に大電流が流れ、発生磁界もメインコイル側に移るため、図28の矢印Hごとく磁界が発生する。交流電圧が3)4)の場合を図29及び図30に示す。
このようにして、発生磁界は90°ずつ変化するため、それに同期してモータの場合はロータが回転する。本発明の導電性ポンプの場合、導電性流体は円周方向に流動する力を受ける。
上述したように、本発明の導電性ポンプの制御駆動方法は、よく知られた公知の技術が適用できる。制御コントローラとドライバーに関しては、ソフト&ハード共、既存の誘導モータのローコストな技術が適用できる。もたらされる効果の大きさを考慮したとき、本発明適用のコストパーホーマンスは極めて大きい。