JP4211020B2 - 廃棄物溶融炉およびその制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体状の炭素系燃料としてコークスを使用した廃棄物の溶融処理に係り、より詳しくは、炉の温度を一定にして安定した操業の維持をはかることができる廃棄物溶融炉およびその制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
固体状の炭素系燃料を使用した従来の廃棄物溶融炉として、例えば特開平9−60830号公報に開示された廃棄物ガス化溶融炉があり、炭素系燃料を使用したときの炉内温度の調整は、使用する炭素系燃料の使用量を増減することにより調整していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように構成した廃棄物溶融炉によれば、これらの炭素系燃料は炉の頂部から装入されるため、炉内温度に効果を発揮するには炭素系燃料が羽口先に到達するまで待たなければならない。従って、羽口先に降下するまでの時間的なロスを生じ、廃棄物の性状変化に伴う急激な炉内温度の低下や、急激な炉内温度の上昇時に対応できない等の問題を生じていた。
【0004】
また、羽口先での送風酸素濃度を変化させて燃焼ガス温度を調整し、炉内温度を制御する方法もあるが、この場合、酸素濃度により炭素系燃料の燃焼量が変化するため、炉内の炭素系燃料および廃棄物装入レベルを一定に維持できなくなり、操業が不安定となるなどの問題を生じていた。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、時事刻々と変化する廃棄物の種類に対して、瞬時に炉内温度を調整して安定な操業を維持することができる手段を備えた廃棄物溶融炉およびその制御方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る廃棄物溶融炉は、炉下部に高温燃焼帯が形成されて高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、高温燃焼帯に酸素含有ガスを吹き込む羽口を有し、廃棄物を熱分解して廃棄物中の灰分および不燃分を溶融し、溶融物を出滓口から排出させる廃棄物溶融炉であって、排出される溶融物の温度を計測する手段と、計測された溶融物の温度に基づいて羽口に送風する酸素含有ガスの温度を調整する手段とを備えるものである。
【0007】
また、本発明に係る廃棄物溶融炉の制御方法は、炉下部に高温燃焼帯が形成されて高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、高温燃焼帯に酸素含有ガスを吹き込む羽口を有し、廃棄物を熱分解して廃棄物中の灰分および不燃分を溶融し、溶融物を出滓口から排出させる廃棄物溶融炉の制御方法であって、計測された溶融物の温度に基づき羽口に送風する酸素含有ガスの温度を調整して、溶融物の温度を所定の範囲に制御するようにしたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施の形態に係る廃棄物溶融炉を示す縦断面図である。図において、1はシャフト型をなす廃棄物溶融炉の炉本体であって、炉本体1は、その上部に位置する円筒形状のフリーボード部1aと、上方に向かって拡径された朝顔部1bと、炉下部1cとによって構成されている。
2は廃棄物およびコークスなどの炭素系補助燃料によって形成された堆積層で、炉本体1内に充填され、上から下に廃棄物層3、高温燃焼帯4、溶融物5を構成する。
【0009】
炉本体1の頂部には、廃棄物とコークスの装入口6が設けられており、炉本体1の側部には、酸素含有ガスを吹込む羽口7が設けられている。この羽口7は、炉本体1の高さ方向に沿って三レベルの周上にそれぞれ複数個が一組となって設けられている。その一組の羽口は、廃棄物層3の上面よりも上方(廃棄物層3の上面よりも上の空間部)に相当するレベルに設けられた上段の三段羽口8であり、他の一組の羽口は、廃棄物層3の上部に相当するレベルに設けられた中段の副羽口9である。さらに他の一組の羽口は、廃棄物層3の下に形成された高温燃焼帯4に相当するレベルに設けられ、この高温燃焼帯4に酸素含有ガスを吹き込む下段の主羽口10である。
【0010】
11は炉底に溜っている溶融物5を炉内から排出するために炉本体1の炉底部近傍の側壁に設けられた出滓口、12は炉本体1の側壁上部に設けられた燃焼排ガスの排出口である。排出口12には燃焼排ガスの熱を利用して空気を加熱する熱交換器を設けてもよい。
【0011】
13は熱風発生炉で、ブロワ14が接続されると共に下段の主羽口10に接続されており、主羽口10に吹き込む吹込み酸素含有ガスを加熱して発生する。この熱風発生炉13の熱源には灯油バーナーを使用してもよいが、廃棄物溶融炉からの排ガスから熱交換した加熱空気を用いてもよいし、排ガスの顕熱を利用したボイラーを用いてもよい。
15は熱風発生炉13を制御する炉内温度制御装置であり、出滓口11から排出する溶融物5の温度を検知し、主羽口10に供給する吹込みガスの温度を制御する。16は出滓口11の近傍に配設されて出滓口11から排出される溶融物5の温度を計測する温度計で、その検出信号は炉内温度制御装置15に送られる。
【0012】
温度計16は、溶融物5に対して直接に温度測定する場合は、溶融物5に熱伝対や光ケーブルなどを接触させる。また、非接触により温度測定する場合は、輻射熱を測定するサーモビュア、放射温度計あるいはレーザー光などを利用する。
【0013】
上記のように構成した実施の形態の作用を説明する。廃棄物溶融炉によって廃棄物をガス化溶融する場合、まず、装入口6から、廃棄物と炭素系補助燃料の一つであるコークス、およびスラグ調整剤などが装入され、これらの装入物によって堆積層2が形成される。
【0014】
この堆積層2を形成している装入物は、中段の副羽口9から吹き込まれる空気によって適度に流動させられながら、その一部が下部で発生した可燃性ガスと一緒に燃焼する。この燃焼熱によって、廃棄物が加熱されると共に乾留され、可燃性ガスが発生する。
乾留された廃棄物は、堆積層2の上部から、順次、炉下部1cまで降下し、下段の主羽口10から吹き込まれる酸素含有ガスによって燃焼し、灰化されたのち、溶融され、溶融物5となって出滓口11から排出される。
【0015】
一方、発生した可燃性ガスは、フリーボード部1aにおいて、上段の三段羽口8から吹き込まれる酸素含有ガスによってその一部が燃焼し、排気口12から排出される。
【0016】
ところで、廃棄物溶融炉に投入された廃棄物は、付着水分や発熱量、可燃物および不燃物の比率が一定していないために、炉内の温度が常に変動する。すなわち、付着水分が多く発熱量の少ない廃棄物を多く投入したときは炉内温度が低下して溶融物の粘度が上昇し、流動性が低下して排出が滞るばかりでなく、燃焼残渣の一部が溶融しないで炉外に排出したり、炉内で固結して排出不能になるおそれがある。また逆に、可燃物の比率が高く、水分の少ない廃棄物を使用したときは、急激に炉内温度が上昇して、炉壁耐火物の損耗を増し、溶融物5の一部が高温で気化して炉内で凝縮して付着物を形成し、操業不能となるおそれがある。
このため、本発明においては、排出する溶融物5の温度を測定し、炉内温度制御装置15がその温度に応じて主羽口10に供給する吹込みガスの送風温度を調整し、炉内温度を一定に制御して、排出される溶融物5の温度を一定に維持するようにした。
【0017】
溶融物5の温度の好ましい範囲は、1500℃以上1600℃以下である。廃棄物の燃焼残渣や不燃物の融点は1300℃以上と推定されるが、1300℃程度ではさらさらの状態で流れるのは難しいため、流動性のよい粘度になるまで温度を上昇させるために上記の範囲が好ましいと考えられる。1600℃以上では、炉壁の耐火物の損耗が多くなる問題が生じる。
【0018】
こうして、溶融物5の温度を一定に制御すべく、出滓口11から排出される溶融物5の温度を温度計16によって連続して計測し、ある管理値から温度が低下したときは炉内温度制御装置15がこれを検知し、炉内温度制御装置15が熱風発生炉13を制御して、主羽口先から供給する送風温度を上昇させることにより、主羽口10周辺部の高温燃焼帯4の温度を上昇させ、滴下してくる溶融物5を着熱させて温度を上昇させる。一方、溶融物5の温度が管理値よりも高くなったときは、炉内温度制御装置15がこれを検知し、炉内温度制御装置15が熱風発生炉13を制御して、羽口先から供給する送風温度を低下させることにより、溶融物5の温度を低下させる。
【0019】
上記の場合、燃焼排ガスを使用して送風する酸素含有ガスの熱交換を行えば、熱風発生炉13から100℃〜250℃の送風温度を得ることができ、例えば定常時は、150℃で送風する。炉内の温度が低下したとき、すなわち、温度計16による溶融物5の検出温度が管理値より低下したときは、送風温度を例えば20℃づつ最高温度250℃まで上昇させる。逆に管理値よりも高くなったときは、送風温度を例えば20℃づつ最低送風温度100℃まで低下させる。
こうして、時事刻々と変化する廃棄物の種類に対して、瞬時に炉内温度を調整することができ、安定な操業を維持することができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明に係る廃棄物溶融炉は、炉下部に高温燃焼帯が形成されて高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、高温燃焼帯に酸素含有ガスを吹き込む羽口を有し、廃棄物を熱分解して廃棄物中の灰分および不燃分を溶融し、溶融物を出滓口から排出させる廃棄物溶融炉であって、排出される溶融物の温度を計測する手段と、計測された溶融物の温度に基づいて羽口に送風する酸素含有ガスの温度を調整する手段とを備えたので、溶融物の温度を一定に維持することが可能であり、溶融炉の操業を安定化することができ、また、急激な炉内温度の上昇を抑制できるため耐火物の寿命を向上させることができる。また、羽口先から吹き込む酸素含有ガスの酸素濃度を一定にすることができるため、廃棄物の装入レベルを一定に維持し、操業の安定化をはかることができる。さらに、廃棄物は水分や発熱量等による制約を受けないため、種々の廃棄物の装入が可能である。
【0021】
また、本発明に係る廃棄物溶融炉の制御方法は、炉下部に高温燃焼帯が形成されて高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、高温燃焼帯に酸素含有ガスを吹き込む羽口を有し、廃棄物を熱分解して廃棄物中の灰分および不燃分を溶融し、溶融物を出滓口から排出させる廃棄物溶融炉の制御方法であって、計測された溶融物の温度に基づき羽口に送風する酸素含有ガスの温度を調整して、溶融物の温度を所定の範囲に制御するようにしたので、上記の廃棄物溶融炉の場合と実質的に同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の縦断面図である。
【符号の説明】
1 廃棄物溶融炉の炉本体
1c 炉下部
3 廃棄物層
4 高温燃焼帯
5 溶融物
7 羽口
8 三段羽口
9 副羽口
10 主羽口
11 出滓口
13 熱風発生炉
14 ブロワ
15 炉内温度制御装置
16 温度計
Claims (2)
- 炉下部に高温燃焼帯が形成されて該高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、前記高温燃焼帯に酸素含有ガスを吹き込む羽口を有し、前記廃棄物を熱分解して該廃棄物中の灰分および不燃分を溶融し、該溶融物を出滓口から排出させる廃棄物溶融炉であって、
排出される前記溶融物の温度を計測する手段と、計測された前記溶融物の温度に基づいて前記羽口に送風する酸素含有ガスの温度を調整する手段とを備えたことを特徴とする廃棄物溶融炉。 - 炉下部に高温燃焼帯が形成されて該高温燃焼帯の上に廃棄物層が形成され、前記高温燃焼帯に酸素含有ガスを吹き込む羽口を有し、前記廃棄物を熱分解して該廃棄物中の灰分および不燃分を溶融し、該溶融物を出滓口から排出させる廃棄物溶融炉の制御方法であって、
計測された前記溶融物の温度に基づき前記羽口に送風する酸素含有ガスの温度を調整して、前記溶融物の温度を所定の範囲に制御することを特徴とする廃棄物溶融炉の制御方法。
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