JP4209711B2 - 炭素繊維を用いた複合材の製造方法 - Google Patents

炭素繊維を用いた複合材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は炭素繊維を原料とした複合材の製造方法、特に解繊方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維は、軽量で耐熱性、熱伝導性に富む。このような炭素繊維を主材料として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、炭素繊維強化炭素複合材に代表される炭素繊維強化型セラミックス複合材(C/Cコンポジット)、炭素繊維マトリックス複合材(CMC)を製造するが知られている。
【0003】
前記国際特許分類を調査分野として、先行技術文献情報の調査を実施したが、該当する文献を見出すことはできなかった。本発明が、ごく基礎的な技術であることがその理由であると思われる。
そこで、本発明者等は、先行技術文献情報に代えて、従来の技術を図面を用いて説明する。
【0004】
図6は従来のC/Cコンポジットの代表的な製造フロー図であり、ST×××はステップ番号を示す。便宜的に100番代の番号を付す。
ST101:(混合工程):炭素繊維と、フィラー(充填剤)としての黒鉛粉と、バインダー(結合剤)としてのフェノール樹脂とをミキサーに入れ、十分に混合する。これで成形用材料を得ることができる。
【0005】
ST102:(高圧成形工程):得られた成形用材料を、温度160℃、成形圧力200kg/cm、10分間の条件で所望の形状に成形する。これで、CFRPを得ることができる。
ST103:(熱処理工程):CFRPを、温度200℃、大気圧、8時間の条件で熱処理を施す。これで、C/C前駆体を得ることができる。
ST104:(高温加熱処理工程):C/C前駆体を、温度1600℃、不活性ガス雰囲気、2時間の条件で加熱処理する。これで、C/Cコンポジットを得ることができる。
【0006】
以上の製造フローを用いて2個のサンプルを製造した。これらのサンプルを比較例1及び比較例2と名付けて、以下に説明する。
1.共通条件:
(1−1)炭素繊維:
種類:パン系
長さ:6mm
径:8μm×12000本を撚って1本化した撚り糸
【0007】
(1−2)材料の混合比:
炭素繊維:40質量%
黒鉛粉:40質量%
フェノール樹脂:20質量%
【0008】
2.比較例1:
(2−1)混合工程での条件:
混合機械:アイリッヒミキサー(容器としてのパンと、このパンに挿入した撹拌羽根としてのチョッパーと、からなり、パン、チョッパーとも回転する形式のミキサー)
チョッパー回転数:3000rpm(1分当りの回転数、以下同じ)
パン回転数:84rpm
混合時間:20分
【0009】
(2−2)製造フロー:ST101〜ST104
(2−3)得られた成形用材料の密度:1.0g/cm
(2−4)C/Cコンポジットの曲げ強さ:17MPa
【0010】
3.比較例2:
(3−1)混合工程での条件:
混合機械:アイリッヒミキサー
チョッパー回転数:1800rpm
パン回転数:84rpm
混合時間:2分
【0011】
(3−2)製造フロー:ST101〜ST104
(3−3)得られた成形用材料の密度:0.08g/cm
(3−4)C/Cコンポジットの曲げ強さ:計測不能
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
この種のC/Cコンポジットでは35MPa以上の曲げ強さが要求される。しかし比較例1は、この要求に到達していない。すなわち比較例1は、成形用材料の密度は大きいにも拘わらず、C/Cコンポジットの曲げ強さがあまり高くないと言える。チョッパー回転数を高目に設定したことと、混合時間を長目に設定したために、炭素繊維がチョッパーにより裁断され、曲げ強さが低下したと考えられる。
【0013】
そこで、比較例2では、チョッパー回転数を下げ、且つ混合時間を短縮した。
しかし、比較例2では炭素繊維が解けたことにより嵩が増加し、密度が著しく小さくなった。そのため、C/Cコンポジットの曲げ強さを高めるには至らなかった。ただし、顕微鏡で観測したところ、炭素繊維の切断は軽微であった。
【0014】
比較例2並みの混合工程条件を踏襲しつつ、C/Cコンポジットの曲げ強さを高める技術を確立する必要がある。
そこで、本発明の目的は炭素繊維の切断を抑えつつ、C/Cコンポジットの曲げ強さを高める技術を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、比較例2で説明した従来の技術では、混合工程で炭素繊維の解繊(解きほぐすこと)と、黒鉛粉やフェノール樹脂を炭素繊維間に充填することとを同時に実施していたため、2分間の混合時間では充填が不十分となり、大量の空隙が残留した。そのため、嵩が増加したと考えるに至った。
しかし、これを解消するために混合時間を増加することは、炭素繊維の切断を招くので得策ではない。
【0016】
そこで、混合時間は延長せずに、混合工程を2段階に分け、その第1段階で炭素繊維の解繊のみを実施し、第2段階で解繊済みの炭素繊維に黒鉛粉及びフェノール樹脂を混合することを試みた。すると、成形用材料の密度を高めることができると共にC/Cコンポジットの曲げ強さを高めることができることが分かった。さらには、第1段階で、適量の水を加えると、成形用材料の密度を著しく高めることができた。
【0017】
そこで、請求項1は、炭素繊維を用いた複合材の製造方法において、前記炭素繊維を予め解繊する解繊工程と、解繊済みの炭素繊維に充填剤及び結合剤を加えて混合する本混合工程と、により成形用材料を得ることを特徴とする。
【0018】
解繊工程と本混合工程とをこの順で実施することにより、成形用材料の密度を高めることができると共にC/Cコンポジットの曲げ強さを高めることができる。
【0019】
加えて、請求項では、解繊工程で、炭素繊維に水を加えて解繊を実施する。
【0020】
加えた水が炭素繊維に付着するため同繊維が重くなる。一般に解繊をミキサーで実施するが、炭素繊維が重くなるとチョッパーで跳ねられた炭素繊維は飛距離が短くなり、パンやチョッパーに当る回数が減る。この結果、炭素繊維の長さが適当な長さになる。
【0021】
更に、請求項1では、水は、炭素繊維質量の25〜35質量%を添加することを特徴とする。
【0022】
水の添加量を増加すると、成形用材料の密度は高まるが、C/Cコンポジットの曲げ強さが低下する。そこで、水の添加量を炭素繊維質量の25〜35質量%にすることで、成形用材料の密度を高めることができると共にC/Cコンポジットの曲げ強さを高める。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るC/Cコンポジットの製造フロー図であり、ST××はステップ番号を示す。
ST01:(解繊工程):炭素繊維のみをミキサーに掛ける、又は炭素繊維に適量の水を加えてミキサーに掛けることで、解繊を行う。
【0024】
ST02:(混合工程):解繊済みの炭素繊維に、フィラー(充填剤)としての黒鉛粉と、バインダー(結合剤)としてのフェノール樹脂とを添加してミキサーにより十分に混合する。これで成形用材料を得ることができる。
フィラーとしては、樹脂粉、黒鉛粉、セラミックス粉などが採用できる。
【0025】
ST03:(高圧成形工程):得られた成形用材料を、温度160℃、成形圧力200kg/cm、10分間の条件で所望の形状に成形する。これで、CFRPを得ることができる。
【0026】
ST04:(熱処理工程):CFRPを、温度200℃、大気圧、8時間の条件で熱処理を施す。これで、C/C前駆体を得ることができる。
ST05:(高温加熱処理工程):C/C前駆体を、温度1600℃、不活性ガス雰囲気、2時間の条件で加熱処理する。これで、C/Cコンポジットを得ることができる。
【0027】
以上の製造フローを用いて7個のサンプルを製造した。これらのサンプルを参考例1〜4、実施例5〜6及び比較例3と名付けて、以下に説明する。
1.共通条件:
(1−1)炭素繊維:
種類:パン系
長さ:6mm
径:8μm×12000本を撚って1本化した撚り糸
【0028】
(1−2)材料の混合比:
炭素繊維:40質量%
水:0質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、35質量%、50質量%の何れか
黒鉛粉:40質量%
フェノール樹脂:20質量%
【0029】
炭素繊維+黒鉛+フェノール樹脂=100質量%とした。また、炭素繊維質量%を基準に水の量を定めた。
【0030】
(1−3)解繊工程での条件:
混合機械:アイリッヒミキサー(容器としてのパンと、このパンに挿入した撹拌羽根としてのチョッパーと、からなり、パン、チョッパーとも回転する形式のミキサー)
チョッパー回転数:1800rpm(1分当りの回転数、以下同じ)
パン回転数:84rpm
混合時間:1分
【0031】
(1−4)本混合工程での条件:
混合機械:アイリッヒミキサー
チョッパー回転数:1800rpm(1分当りの回転数、以下同じ)
パン回転数:84rpm
混合時間:1分
(1−5)製造フロー:ST01〜ST05
【0032】
2.参考例1:
(2−1)解繊工程:炭素繊維40質量%のみを、アイリッヒミキサーで1分間解繊処理する。
(2−2)本混合工程:解繊済み炭素繊維に、黒鉛粉40質量%及びフェノール樹脂20質量%を添加し、アイリッヒミキサーで1分間混合する。
(2−3)得られた成形用材料の密度:0.125g/cm
(2−4)高圧成形工程:160℃、200kg/cmの条件で成形することでCFRPを得る。
【0033】
(2−5)得られたCFRPの気孔率:2.7%
(2−6)得られたCFRPの曲げ強さ:118.6MPa
(2−7)熱処理工程:CFRPを200℃、大気雰囲気で、8時間処理しC/C前駆体を得る。
(2−8)高温加熱工程:C/C前駆体を1600℃、不活性ガス雰囲気で2時間処理してC/Cコンポジットを得る。
(2−9)得られたC/Cコンポジットの曲げ強さ:63.8MPa
【0034】
3.参考例2:
(3−1)解繊工程:炭素繊維に、炭素繊維質量当たり10質量%の水を加えてアイリッヒミキサーで1分間解繊処理する。
(3−2)本混合工程:解繊済み炭素繊維に、黒鉛粉40質量%及びフェノール樹脂20質量%を添加し、アイリッヒミキサーで1分間混合する。
(3−3)得られた成形用材料の密度:0.125g/cm
(3−4)高圧成形工程:160℃、200kg/cmの条件で成形することでCFRPを得る。
【0035】
(3−5)得られたCFRPの気孔率:4.8%
(3−6)得られたCFRPの曲げ強さ:94.0MPa
(3−7)熱処理工程:CFRPを200℃、大気雰囲気で、8時間処理しC/C前駆体を得る。
(3−8)高温加熱工程:C/C前駆体を1600℃、不活性ガス雰囲気で2時間処理してC/Cコンポジットを得る。
(3−9)得られたC/Cコンポジットの曲げ強さ:57.5MPa
【0036】
4.参考例3:
(4−1)解繊工程:炭素繊維に、炭素繊維質量当たり15質量%の水を加えてアイリッヒミキサーで1分間解繊処理する。
(4−2)本混合工程:解繊済み炭素繊維に、黒鉛粉40質量%及びフェノール樹脂20質量%を添加し、アイリッヒミキサーで1分間混合する。
(4−3)得られた成形用材料の密度:0.125g/cm
(4−4)高圧成形工程:160℃、200kg/cmの条件で成形することでCFRPを得る。
【0037】
(4−5)得られたCFRPの気孔率:3.4%
(4−6)得られたCFRPの曲げ強さ:67.8MPa
(4−7)熱処理工程:CFRPを200℃、大気雰囲気で、8時間処理しC/C前駆体を得る。
(4−8)高温加熱工程:C/C前駆体を1600℃、不活性ガス雰囲気で2時間処理してC/Cコンポジットを得る。
(4−9)得られたC/Cコンポジットの曲げ強さ:未計測
【0038】
5.参考例4:
(5−1)解繊工程:炭素繊維に、炭素繊維質量当たり20質量%の水を加えてアイリッヒミキサーで1分間解繊処理する。
(5−2)本混合工程:解繊済み炭素繊維に、黒鉛粉40質量%及びフェノール樹脂20質量%を添加し、アイリッヒミキサーで1分間混合する。
(5−3)得られた成形用材料の密度:0.250g/cm
(5−4)高圧成形工程:160℃、200kg/cmの条件で成形することでCFRPを得る。
【0039】
(5−5)得られたCFRPの気孔率:3.8%
(5−6)得られたCFRPの曲げ強さ:55.2MPa
(5−7)熱処理工程:CFRPを200℃、大気雰囲気で、8時間処理しC/C前駆体を得る。
(5−8)高温加熱工程:C/C前駆体を1600℃、不活性ガス雰囲気で2時間処理してC/Cコンポジットを得る。
(5−9)得られたC/Cコンポジットの曲げ強さ:未計測
【0040】
6.実施例5:
(6−1)解繊工程:炭素繊維に、炭素繊維質量当たり25質量%の水を加えてアイリッヒミキサーで1分間解繊処理する。
(6−2)本混合工程:解繊済み炭素繊維に、黒鉛粉40質量%及びフェノール樹脂20質量%を添加し、アイリッヒミキサーで1分間混合する。
(6−3)得られた成形用材料の密度:0.250g/cm
(6−4)高圧成形工程:160℃、200kg/cmの条件で成形することでCFRPを得る。
【0041】
(6−5)得られたCFRPの気孔率:3.4%
(6−6)得られたCFRPの曲げ強さ:51.6MPa
(6−7)熱処理工程:CFRPを200℃、大気雰囲気で、8時間処理しC/C前駆体を得る。
(6−8)高温加熱工程:C/C前駆体を1600℃、不活性ガス雰囲気で2時間処理してC/Cコンポジットを得る。
(6−9)得られたC/Cコンポジットの曲げ強さ:45.8MPa
【0042】
7.実施例6:
(7−1)解繊工程:炭素繊維に、炭素繊維質量当たり35質量%の水を加えてアイリッヒミキサーで1分間解繊処理する。
(7−2)本混合工程:解繊済み炭素繊維に、黒鉛粉40質量%及びフェノール樹脂20質量%を添加し、アイリッヒミキサーで1分間混合する。
(7−3)得られた成形用材料の密度:0.333g/cm
(7−4)高圧成形工程:160℃、200kg/cmの条件で成形することでCFRPを得る。
【0043】
(7−5)得られたCFRPの気孔率:3.1%
(7−6)得られたCFRPの曲げ強さ:45.6MPa
(7−7)熱処理工程:CFRPを200℃、大気雰囲気で、8時間処理しC/C前駆体を得る。
(7−8)高温加熱工程:C/C前駆体を1600℃、不活性ガス雰囲気で2時間処理してC/Cコンポジットを得る。
(7−9)得られたC/Cコンポジットの曲げ強さ:35.5MPa
【0044】
8.比較例3:
(8−1)解繊工程:炭素繊維に、炭素繊維質量当たり50質量%の水を加えてアイリッヒミキサーで1分間解繊処理する。
(8−2)本混合工程:解繊済み炭素繊維に、黒鉛粉40質量%及びフェノール樹脂20質量%を添加し、アイリッヒミキサーで1分間混合する。
(8−3)得られた成形用材料の密度:0.50g/cm
(8−4)高圧成形工程:160℃、200kg/cmの条件で成形することでCFRPを得る。
【0045】
(8−5)得られたCFRPの気孔率:3.0%
(8−6)得られたCFRPの曲げ強さ:45.6MPa
(8−7)熱処理工程:CFRPを200℃、大気雰囲気で、8時間処理しC/C前駆体を得る。
(8−8)高温加熱工程:C/C前駆体を1600℃、不活性ガス雰囲気で2時間処理してC/Cコンポジットを得る。
(8−9)得られたC/Cコンポジットの曲げ強さ:17.5MPa
【0046】
以上の実験結果をグラフ化して評価する。
図2は実験例をミキシング時間及びチョッパー回転数で区分したグラフであり、横軸をミキシング時間、縦軸をチョッパー回転数として、参考例1〜4、実施例5〜6、比較例3及び比較例1、2(従来の技術の項参照)を表示した。また、(混合)は比較例1、2に適用する。
【0047】
従来の技術の項で説明した比較例1は、チョッパー回転数が高く、且つ(混合)のためのミキシング時間が極度に長かったため、炭素繊維が過度に短くなった。
そこで、炭素繊維の長さを適正に保つ条件で実施したのが比較例2であり、比較例2では(混合)のためのミキシング時間は2分で、チョッパー回転数は1800rpmである。
【0048】
参考例1〜4、実施例5〜6及び比較例3は、解繊工程で1分、本混合工程で1分、合計2分のミキシングを実施し、このミキシング時間は比較例2と同一である。チョッパー回転数は1800rpmであり、比較例2と同一である。
従って、参考例1〜4、実施例5〜6及び比較例3は炭素繊維の長さが適正に保たれる条件で実施したと言える。
【0049】
図3は水添加量と成形用材料の密度の関係を示すグラフであり、横軸は添加した水の質量%、縦軸は成形用材料の密度を示す。
△は比較例1、□は比較例2を示し、何れも水を加えていないので縦軸上に表示した。
【0050】
水の添加量にほぼ比例して成形用材料の密度が高まることが確認できた。
水を添加することで、解繊が進むと共に炭素繊維の長さが適正になる。加えて、水は解繊済み炭素繊維が膨らまぬように接着剤的役目を果たすため、水の添加量にほぼ比例して密度が高まったとも考えられる。
【0051】
参考例1は、比較例2より密度が大きい。さらには、水添加量が15質量%である参考例3は比較例2より密度が大きくなる。密度が大きいと、圧縮代が小さくて済み、成形工程が容易になり、好ましい。
【0052】
図4は水添加量とCFRP曲げ強さとの関係を示すグラフであり、横軸が水添加量、縦軸はCFRP曲げ強さを示す。
水添加量を増加すると、ほぼ比例してCFRP曲げ強さが低下することが分かった。
【0053】
図5は水添加量とC/Cコンポジット曲げ強さとの関係を示すグラフであり、横軸が水添加量、縦軸はC/Cコンポジット曲げ強さを示す。
C/Cコンポジットが、取扱い中や使用中に破損することは避けなければならず、曲げ強さは大きいほど良い。
比較例1におけるC/Cコンポジット曲げ強さの約2倍に相当する35MPaが要求曲げ強さと言われているので、縦軸から▲1▼のごとく横線を引き、曲線との交点から▲2▼のごとく縦線を引く。この結果、水添加量が35質量%以下であれば、C/Cコンポジット曲げ強さが確保できることが分かった。
【0054】
なお、水添加量が増加するほどC/Cコンポジット曲げ強さが減少するのは、次の理由による。
水を加えると、炭素繊維が重くなり過度な切断を回避することができる。
反面、水を加えすぎると切断が不十分となり解繊不良、すなわち繊維の束が残る虞がある。繊維の束は気泡を内蔵するため、C/Cコンポジットにしたとき、前記気泡が空洞となって残る。この空洞の存在により曲げ強さが低下すると考えられる。
【0055】
以上に述べたとおり本発明では、解繊工程で炭素繊維に水を加えてミキサーに掛けるが、この水が炭素繊維に付着し、炭素繊維が見かけ上、重くなる。炭素繊維が重くなるとチョッパーで跳ねられた炭素繊維は飛距離が短くなり、パンやチョッパーに当る回数が減る。この結果、炭素繊維の長さが適当な長さとなる。
加えて、解繊工程と本混合工程とを区別したため、解繊工程では炭素繊維の好ましい解繊が行え、次の本混合工程では解繊済み炭素繊維に充填剤及び結合剤を均一に付着させることができるため、C/Cコンポジット曲げ強さが確保できたと言える。
【0056】
尚、水は、炭素繊維質量の35質量%を上限として添加することとしたが、図3を参照すれば、水は炭素繊維質量の25質量%以上が望ましい。そこで、水は炭素繊維質量の25質量%〜35質量%の範囲から選択することとする。成形用材料の密度を高めることができるからである。
【0057】
また、図1のST03〜ST05は、一例を示しただけであり、温度、圧力、時間などの条件を変更することやステップを増減することは差し支えない。
さらに、解繊工程や本混合工程で示した数値は、一例を示しただけであり、数値(特に混合割合)を変更することは差し支えない。
【0058】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1によれば、解繊工程と本混合工程とをこの順で実施することにより、成形用材料の密度を高めることができると共にC/Cコンポジットの曲げ強さを高めることができる。
【0059】
加えて、請求項では、解繊工程で、炭素繊維に水を加えて解繊を実施する。
加えた水が炭素繊維に付着するため同繊維が重くなる。一般に解繊をミキサーで実施するが、炭素繊維が重くなるとチョッパーで跳ねられた炭素繊維は飛距離が短くなり、パンやチョッパーに当る回数が減る。この結果、炭素繊維の長さが適当な長さになる。
【0061】
更に、請求項1では、水は、炭素繊維質量の25〜35質量%を添加することを特徴とする。
水の添加量を増加すると、成形用材料の密度は高まるが、C/Cコンポジットの曲げ強さが低下する。そこで、水の添加量を炭素繊維質量の25〜35質量%にすることで、成形用材料の密度を高めることができると共にC/Cコンポジットの曲げ強さを高める。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るC/Cコンポジットの製造フロー図
【図2】実験例をミキシング時間及びチョッパー回転数で区分したグラフ
【図3】水添加量と成形用材料の密度の関係を示すグラフ
【図4】水添加量とCFRP曲げ強さとの関係を示すグラフ
【図5】水添加量とC/Cコンポジット曲げ強さとの関係を示すグラフ
【図6】従来のC/Cコンポジットの代表的な製造フロー図

Claims (1)

  1. 炭素繊維を予め解繊する解繊工程と、解繊済みの炭素繊維に充填剤及び結合剤を加えて混合する本混合工程と、により成形用材料を得る複合材の製造方法において、前記解繊工程では、炭素繊維質量の25〜35質量%の水を、炭素繊維に加えて解繊を実施することを特徴とする炭素繊維を用いた複合材の製造方法。
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