JP4209066B2 - 鋼材ガイド用スリーブガイド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼材等の圧延ラインに使用される、耐摩耗性及び固体潤滑性を向上させた鋼材ガイド用スリーブガイドに関する。
【0002】
【従来の技術】
線材、棒鋼の圧延工場などで、冷却、成形するための工程において高温・重量材料等の導入に用いられるスリーブガイドは、常に導入される鋼材等と接触し同一方向の摩擦力を受けているため、耐摩耗性が高いことが求められる。
従来、耐熱鋼、鉄系合金等からなる金属製スリーブガイドが用いられてきたが、金属製スリーブガイドは耐摩耗性が低いことに加え、スリーブガイドの局部摩耗によりスリーブガイド自体にエッジが形成され、そのエッジにより、導入する鋼材等に傷が発生したり、又、高温の鋼材との摺動により焼き付きを起こして傷が発生するため、スリーブガイドの交換等のメンテナンスを頻繁に行わなければならないという問題があった。
【0003】
金属以外の材質としては、カーボン製のスリーブガイドが用いられている。カーボン製のスリーブガイドは、金属製に比較して耐摩耗性は劣るが、固体潤滑性に優れるため、導入する鋼材等へ傷を付けにくい。しかしながら、摩耗によるメンテナンス頻度は、金属製スリーブガイドよりも更に多くなるという問題があった。
【0004】
このため、近年においては、導入する鋼材等と接触する部分を窒化珪素等のセラミックで形成したセラミック製スリーブガイドが提案されるようになった。窒化珪素等のセラミック製スリーブガイドの耐摩耗性は、金属製やカーボン製スリーブガイドに比べて優れているが、成形性、加工性については、金属製やカーボン製スリーブガイドよりも劣り、製作し難く、一度摩耗してしまった後は、導入する鋼材等へ傷が発生するという問題があった。
【0005】
図4(a)は、線材圧延工場での処理フローを示すものである。線材21は圧延機22、水冷帯23を経て、レイングヘッド24でコイル材25に加工され、ステルモアコンベア26にて搬送され、出荷される。水冷帯23、レイングヘッド24等で鋼材ガイド用として使用されるのが、図4(b)に示す鋼材ガイド用スリーブガイド27である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、摩耗時のエッジ形成による傷を防止し、焼き付き傷を付けずに、長期間、安定して、鋼材等を案内し得る、充分な耐摩耗性及び固体潤滑性を有したスリーブガイドを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、鋼材等の圧延に使用される鋼材ガイド用スリーブガイドであって、SiC系複合材料又はSi−SiC系複合材料から成ることを特徴とする鋼材ガイド用スリーブガイドが提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明においては、鋼材ガイド用スリーブガイドをSiC系複合材料、又はSi−SiC系複合材料から構成することにより、鋼材ガイド用スリーブガイドに充分な耐摩耗性と固体潤滑性を付与することで、短時間の使用期間内に、導入される鋼材等との摩擦により摩耗してエッジを形成したり、そのエッジにより導入される鋼材等を傷つけたり、交換等のメンテナンス頻度が多くなることを防止している。
【0009】
即ち、SiC系複合材料及びSi−SiC系複合材料は、優れた強度及び滑らかさを有しているため、鋼材ガイド用スリーブガイドに上記の特性を付与できるのである。特に耐摩耗性は著しく大きく、Si−SiC系複合材料、SiC系複合材料の順に大きい。
【0010】
本発明において、スリーブガイドの用途、種類に特に制限はなく、鋼材等の導入に使用されるものであればよい。
【0011】
上記の鋼材ガイド用スリーブガイドが使用される線材圧延工場の処理フローは、図4(a)に示すようなものである。レイングヘッド24の導入に使用されるスリーブガイドの他、水冷帯23への導入にもスリーブガイドは用いられる。これらスリーブガイドの部材が、SiC系複合材料又はSi−SiC系複合材料で構成されることになる。
【0012】
本発明において、SiC系複合材料及びSi−SiC系複合材料の基本骨格であるC/Cコンポジットとは、少なくとも炭素繊維の束と炭素繊維以外の炭素成分とを含有するヤーンを層方向に配向しつつ三次元的に組み合わせ、互いに分離しないように一体化したヤーン集合体から成る材料をいうが、より具体的にはヤーン集合体が複数のヤーン配列体を積層して構成され、各ヤーン配列体は複数のヤーンを略平行に二次元的に配列することによって構成されている材料をいう。C/Cコンポジットは、隣接するヤーン配列体における各ヤーンの長手方向が互いに交差しているものであることが好ましい。C/Cコンポジットは、炭素繊維束の周囲に、熱可塑性樹脂等のプラスチックからなる柔軟な被膜を形成して得た、柔軟性中間材であるプレフォームドヤーンを、特開平2−80639号公報に記載されている方法によりシート状又は織布状にし、必要量を積層した後、ホットプレスで成形、又は、この成形体を焼成することにより製造される。
【0013】
尚、炭素繊維束は、炭素繊維束のマトリックスとして作用する粉末状のバインダーであって、焼成後には炭素繊維の束に対して遊離炭素となるピッチ、コークス類を包含させ、更に必要に応じてフェノール樹脂粉末等を含有させることによって調製する。尚、本発明において使用されるC/Cコンポジットにおいて、上記のヤーン中の炭素繊維以外の炭素成分は、好ましくは炭素粉末であり、特に好ましくは黒鉛化した炭素粉末である。
【0014】
本発明において、SiC系複合材料とは、C/Cコンポジットから成る基本骨格をSiC系材料からなるマトリックスが取り巻いた構成を有する材料をいう。
【0015】
より具体的には、SiC系複合材料とは、15重量%〜35重量%の炭化珪素と、炭素繊維と、炭素繊維以外の炭素成分とから構成され、骨格部と骨格部の周囲に形成されたマトリックスとからなる構造を有するSiC−C/Cコンポジット複合材料であって、炭化珪素の少なくとも50%はβ型で、骨格部は、炭素繊維と炭素繊維以外の炭素成分により形成されており、その骨格部の一部分には炭化珪素が存在していてもよく、マトリックスは、炭化珪素により形成され、前記マトリックスと前記骨格部とは一体的に形成されており、かつ、前記複合材料は0.5%〜5%の気孔率と二山型の平均気孔径の分布を有する複合材料をいう。構成される炭化珪素は15重量%を下回ると耐摩耗性が極端に低下し、摩耗によるメンテナンス頻度が高くなる。又、構成される炭化珪素は35重量%を上回ると対衝撃性が極端に低下し、鋼材進入による衝撃で割損し易くなる。SiC系複合材料の動摩擦係数は0.05〜0.6であることが好ましく、又、大気中で10℃/分の割合で昇温したときに5%重量減少が生じる温度が600℃以上であることが好ましい。
【0016】
SiC系複合材料は、骨格部がC/Cコンポジットであるため、その一部にSiCが形成されていても、各炭素繊維の構造が破壊されることなく保持されているために炭素繊維が炭化珪素化により短繊維化することがなく、原料であるC/Cコンポジットの有する機械的強度がほぼ保持される。しかも、ヤーン集合体中で隣り合うヤーンの間に、SiC系材料からなるマトリックスが形成された複合構造を有している。この点で、Si−SiC系複合材料とは異なる。なお、この材料は、平成11年2月9日付出願の特願平11−31979号に開示された方法により製造することができる。従って、特願平11−31979号の内容をここに引用する。
【0017】
ここで、SiC系材料とは、炭素との結合度を異にする炭化珪素を含有する材料をいい、C/Cコンポジットに金属珪素を含浸させることにより製造できる。その際、金属珪素はコンポジット内の炭素繊維を構成する炭素原子および/又は炭素繊維の表面に残存している遊離炭素原子と反応し、一部が炭化されるために、C/Cコンポジットの最表面や炭素繊維からなるヤーンとヤーンとの間には、一部炭化された珪素が生成し、かくして上記のヤーンとヤーンとの間には炭化珪素からなるマトリックスが形成される。
【0018】
このマトリックスにおいては、極微量の珪素と炭素とが結合した炭化珪素質の相から、純粋な炭化珪素結晶相に至るまで、いくつかの相異なる相を含みうる。しかし、このマトリックスには、X線による検出限界(0.3重量%)以下の金属珪素しか含まれない。つまり、このマトリックスは、典型的には炭化珪素相からなるが、炭化珪素相には、珪素の含有量が傾斜的に変化しているSiC質相を含みうる。従って、SiC系材料とは、このようなSiC系列において、炭素の濃度として、少なくとも0.01mol%以上から50mol%までの範囲以内で含まれてる材料の総称である。又、SiC系複合材料は、マトリックスが骨格部表面から離れるに従って、珪素の含有比率が上昇する傾斜組成を有していてもよい。なお、炭素濃度を0.01mol%未満に制御するには、C/Cコンポジット中の遊離炭素の量との関係で、添加する金属珪素の量の厳密な計量が要求され、又、後述する最終工程での温度管理が複雑になるため実際的ではない。従って、理論的には、炭素濃度を0.001mol%程度まで制御することは可能である。
【0019】
図1にSiC系複合材料の一例を示す。又、図1のIIa−IIa線断面図を図2(a)に、IIb−IIb線断面図を図2(b)に示す。
【0020】
SiC系複合材料7の骨格は、ヤーン集合体6によって構成されている。ヤーン集合体6は、ヤーン配列体1A、1B、1C、1D、1E、1Fを上下方向に積層してなる。各ヤーン配列体においては、各ヤーン3が二次元的に配列されており、各ヤーンの長手方向がほぼ平行である。上下方向に隣り合う各ヤーン配列体における各ヤーンの長手方向は、直交している。すなわち、各ヤーン配列体1A、1C、1Eの各ヤーン2Aの長手方向は、互いに平行であり、かつ各ヤーン配列体1B、1D、1Fの各ヤーン2Bの長手方向に対して直交している。各ヤーンは、炭素繊維と、炭素繊維以外の炭素成分とからなる繊維束3からなる。ヤーン配列体が積層されることによって、三次元格子形状のヤーン集合体6が構成される。各ヤーンは、後述するような加圧成形工程の間に押しつぶされ、やや楕円形になっている。
【0021】
各ヤーン配列体1A、1C、1Eにおいては、隣り合う各ヤーンの間隙には、マトリックス8Aが充填されており、各マトリックス8Aはヤーン2Aの表面に沿ってそれと平行に延びている。各ヤーン配列体1B、1D、1Fにおいては、隣り合う各ヤーンの間隙には、マトリックス8Bが充填されており、各マトリックス8Bは、ヤーン2Bの表面に沿ってそれと平行に延びている。
図2(a)および図2(b)に示したように、マトリックス8A、8Bは、それぞれ、各ヤーンの表面を被覆する炭化珪素相4からなっている。炭化珪素相の一部は、小突起部9として表面に突出するか、あるいは、複合部材の内部においては、炭素繊維層に突出していてもよい。この様な小突起部の内部には、中央値が約100μmの孔径を有する気孔(空隙)が形成されている。なお、この小突起部19は、殆どが原料のC/Cコンポジットの炭素繊維以外の炭素成分からなるマトリックスの跡に沿って形成されるので、ヤーンとヤーンとの間隔および/又はヤーン配列体とヤーン配列体との間隔を適宜選択することにより、単位面積当たりの小突起部9の密度を調整することが可能である。隣接するヤーン2Aと2Bとの間にも、炭化珪素相4が形成されていてもよい。
【0022】
各マトリックス8Aと8Bとは、それぞれヤーンの表面に沿って細長く、好ましくは直線状に延びており、各マトリックス8Aと8Bとは互いに直交している。そして、ヤーン配列体1A、1C、1Eにおけるマトリックス8Aと、これに直交するヤーン配列体1B、1D、1Fにおけるマトリックス8Bとは、それぞれヤーン2Aと2Bとの間隙部分で連続している。この結果、マトリックス8A、8Bは、全体として、三次元格子を形成している。
【0023】
SiC系複合材料は、例えば平成11年2月9日付出願の特願平11−31979号に開示された下記の方法にて製造することができる。
即ち、炭素繊維から成る成形体又は焼成体と金属珪素とを、1100〜1400℃の温度域、炉内圧0.1〜10hPaで1時間以上保持する。保持時間は、種々の要因により変動しうるが、無機ポリマーないし無機物のセラミックス化への変化に伴うCO等の発生ガスを焼成雰囲気より除去し、又大気中のO2等による外部からの焼成雰囲気の汚染を防止するに充分な時間であればよい。又、この際、成形体又は焼成体と珪素の合計重量1kg当たり0.1NL(ノルマルリットル:1200℃、圧力0.1hPaの場合、5065リットルに相当)以上の不活性ガスを流しつつ、成形体又は焼成体表面にSiC層を形成することが好ましい。次いで、温度1450〜2500℃に昇温して前記成形体又は焼成体の開気孔内部へ珪素を溶融、含浸させ、先ず、SiC系材料を形成させる。
【0024】
次いで、炉内温度を一旦周囲環境温度(20℃〜25℃)まで冷却するか、あるいは、炉内温度をそのまま保持しつつ、炉内圧力を約1気圧程度まで上げ、炉内温度を2000℃〜2800℃に引き上げて、場合によっては残存していることもある金属珪素と、既に生成している炭化珪素を炭素繊維と炭素繊維外の炭素成分中(一部黒鉛化した炭素を含む遊離炭素と同義である)にまで拡散させ、これら炭素と反応させる。この場合の保持時間は1時間程度で充分である。又、この過程において、C/Cコンポジットからなる成形体を用いた場合は、前記成形体の焼成も行われ、同時にSiC系複合材料が生成する。
【0025】
本発明において、Si−SiC系複合材料とは、C/Cコンポジットから成る基本骨格をSi−SiC系材料からなるマトリックスが取り巻いた構成を有する材料をいう。
【0026】
より具体的には、Si−SiC系複合材料とは、15重量%〜35重量%の炭化珪素と炭素繊維と、炭素繊維以外の炭素成分、及び珪素とから構成され、少なくとも炭素繊維の束と炭素繊維以外の炭素成分とを含有するヤーンが層方向に配向しつつ三次元的に組み合わされ、互いに分離しないように一体化されているヤーン集合体と、このヤーン集合体中で隣り合うヤーンの間に充填されているSi−SiC系材料からなるマトリックスとを備えている複合材料をいう。構成される炭化珪素は15重量%を下回ると耐摩耗性が極端に低下し、摩耗によるメンテナンス頻度が高くなる。又、構成される炭化珪素は35重量%を上回ると対衝撃性が極端に低下し、鋼材進入による衝撃で割損し易くなる。
【0027】
Si−SiC系複合材料の基本骨格として用いられるC/Cコンポジットとしては、直径が10μm前後の炭素繊維を、通常、数百本〜数万本束ねて形成した繊維束(ヤーン)を熱可塑性樹脂で被覆して柔軟性糸状中間材とし、これを特開平2−80639号公報に記載されている方法によりシート状にしたものを二次元又は三次元方向に配列して一方向シート(UDシート)若しくは各種クロスとしたり、又は上記シートやクロスを積層することにより、所定形状の予備成形体(繊維プリフォーム)とし、次いでこの予備成形体の繊維束の外周に形成されている有機物からなる熱可塑性樹脂等の被膜を焼成することにより炭化除去したものが使用される。尚、本明細書においては、参考のために特開平2−80639号公報の記載を引用する。本発明に於いて使用されるC/Cコンポジットは、上記のヤーン中の炭素繊維以外の炭素成分は、好ましくは炭素粉末であり、特に好ましくは黒鉛化した炭素粉末である。
【0028】
又、Si−SiC系材料とは、未反応の状態で残存する珪素からなる珪素相からほぼ純粋な炭化珪素に至るまでの、いくつかの相異なる相を含む材料をいい、典型的には珪素相と炭化珪素相から成るが、炭化珪素相には、珪素の含有量が傾斜的に変化しているSiC共存相を含んでもよい。従って、Si−SiC系材料とは、このようにSi−SiC系列において、炭素の濃度として、0mol%から50mol%までの範囲以内で含まれてる材料の総称である。
【0029】
本発明に用いるSi−SiC系複合材料は、ヤーンの表面から離れるのに従って珪素の含有比率が上昇する傾斜組成を有するマトリックスを有することが好ましい。又、本発明に用いるSi−SiC系複合材料において、C/Cコンポジットから成る基本骨格は、炭素繊維から構成される複数のヤーン配列体を特定方向に積層して成るヤーン集合体から成り、各ヤーン配列体はそれぞれ特定本数の炭素繊維を束ねて構成したヤーンをほぼ平行に二次元的に配列したものであることが好ましい。
【0030】
Si−SiC系複合材料の骨格は、SiC系複合材料と同様であり、図1を一例とみなす。図3(a)は図1をSi−SiC系複合材料の骨格としたときのIIa−IIa線断面図であり、図3(b)は同様に図1のIIb−IIb線断面図である。
Si−SiC系複合材料17の骨格は、ヤーン集合体16によって構成されている。ヤーン集合体16は、ヤーン配列体11A、11B、11C、11D、11E、11Fを上下方向に積層してなる。各ヤーン配列体においては、各ヤーン3どうしが平行になるようにかつ二次元的に配列されている。上下方向に隣り合う各ヤーン配列体における各ヤーンの長手方向は、直交している。即ち、各ヤーン配列体11A、11C、11Eの各ヤーン12Aの長手方向は、互いに平行であり、かつ各ヤーン配列体11B、11D、11Fの各ヤーン12Bの長手方向に対して直交している。
各ヤーンは、炭素繊維と、炭素繊維以外の炭素成分とからなる繊維束13からなる。ヤーン配列体が積層されることによって、三次元格子形状のヤーン集合体16が構成される。各ヤーンは、後述するような加圧成形工程の間に押しつぶされ、略楕円形になっている。
【0031】
各ヤーン配列体11A、11C、11Eにおいては、隣り合う各ヤーンの間隙には、マトリックス18Aが充填されており、各マトリックス18Aはヤーン12Aの表面に沿ってそれと平行に延びている。各ヤーン配列体11B、11D、11Fにおいては、隣り合う各ヤーンの間隙には、マトリックス18Bが充填されており、各マトリックス18Bは、ヤーン12Bの表面に沿ってそれと平行に延びている。
本例では、マトリックス18A、18Bは、それぞれ、各ヤーンの表面を被覆する炭化珪素相14A、14Bと、炭化珪素相14A、14Bよりも炭素の含有割合が少ないSi−SiC系材料相15A、15Bからなっている。炭化珪素相中にも珪素を一部含有していてもよい。又、本例では、上下方向に隣接するヤーン12Aと12Bとの間にも、炭化珪素相14A、14Bが生成している。
各マトリックス18Aと18Bとは、それぞれヤーンの表面に沿って細長く、好ましくは直線状に延びており、各マトリックス18Aと18Bとは互いに直交している。そして、ヤーン配列体11A、11C、11Eにおけるマトリックス18Aと、これに直交するヤーン配列体11B、11D、11Fにおけるマトリックス18Bとは、それぞれヤーン12Aと12Bとの間隙部分で連続している。この結果、マトリックス18A、18Bは、全体として、三次元格子を形成している。
【0032】
Si−SiC系複合材料は、例えば平成10年9月4日付出願の特願平10−267462号に開示された下記の方法にて製造することができる。
即ち、炭素繊維の束に対して、最終的にマトリックスとなる粉末状のバインダーピッチ、コークス類を包含させ、更に必要に応じてフェノール樹脂粉末等を含有させることによって、炭素繊維束を作製する。炭素繊維束の周囲に、熱可塑性樹脂等のプラスチックから成る柔軟な被膜を形成し、柔軟性中間材料を得る。この柔軟性中間材料を、ヤーン状にし(特願昭63−231791号明細書)、必要量を積層した後、ホットプレスで300〜2000℃、常庄〜500kg/cm2の条件下で成形することによって、成形体を得る。又は、この成形体を、必要に応じて700〜1200℃で炭化させ、1500〜3000℃で黒鉛化して、焼結体を得る。
【0033】
炭素繊維は、石油ピッチ若しくはコールタールピッチを原料とし、紡糸用ピッチの調整、溶融紡糸、不融化及び炭素化して得られるピッチ系炭素繊維並びにアクリロニトリル(共)重合体繊維を耐炎化及び炭素化して得られるPAN系炭素繊維のいずれのものでもよい。
【0034】
マトリックスの形成に必要な有機バインダーとしては、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂及びタール、ピッチ等が用いられるが、これらはコークス類、金属、金属化合物、無機及び有機化合物等を含んでいてもよい。有機バインダーの一部が炭素源となる場合もある。
【0035】
次いで、上記のように作製された成形体又は焼結体とSiとを、1100〜1400℃の温度域、炉内圧0.1〜10hPaで1時間以上保持する。好ましくは、この際、成形体又は焼結体とSiの合計重量1kg当たり0.1NL(ノルマルリットル:1200℃、圧力0.1hPaの場合、5065リットルに相当)以上の不活性ガスを流しつつ、成形体又は焼結体表面にSi−SiC層を形成する。次いで、温度1450〜2500℃に昇温して前記成形体又は焼結体の開気孔内部へSi−SiC系材料を溶融、含浸成形させる。又、この過程において、成形体を用いた場合は、前記成形体の焼成も行われ、Si−SiC系複合材料が生成する。Si−SiC系複合材料全体における、Si−SiC系材質の濃度傾斜の調節は、成形体又は焼結体の開気孔率及びその細孔径により行う。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0037】
鋼材ガイド用スリーブガイドを構成する部材として、開気孔率50%のC/Cコンポジットに、Siを含浸成形したSi−SiC系複合材料を用いた。Si−SiC系複合材料は、炭化珪素の含有率を変えて4例用意した。(実施例1〜2、比較例1〜2)又、鋼材ガイド用スリーブガイドを構成する部材として、金属材料(比較例3)を用いた場合を、レイングヘッドに装着し、同条件にて測定した。
【0038】
(実施例1)
鋼材ガイド用スリーブガイドを構成する部材として、炭化珪素が15重量%のSi−SiC系複合材料を使用した。図4に示すような線材圧延工程において、この材料から加工した外径40mm、内径20mm、長さ40mmの鋼材ガイド用スリーブガイド27一式(40個)を用いて、線径φ5.5mm、線速70m/secのレイングヘッド24に装着した。線材21を鋼材ガイド用スリーブガイド27を介してレイングヘッド24へ導入し、線材21の延べ通過重量と、スリーブガイドの摩耗量を測定した。摩耗量は図4(c)に示す摩耗部28の最大値とした。同じ測定を、同条件で製作した5式のスリーブガイドで、5回行った。その結果を表1に示す。
【0039】
(実施例2)
鋼材ガイド用スリーブガイド27を構成する部材として、炭化珪素が35重量%のSi−SiC系複合材料を使用した。炭化珪素の含有率以外は実施例1と同様の鋼材ガイド用スリーブガイド27を製作し、実施例1と同様の条件下でスリーブガイドの摩耗量を測定した。その結果を表1に示す。
【0040】
(比較例1)
鋼材ガイド用スリーブガイド27を構成する部材として、炭化珪素が10重量%のSi−SiC系複合材料を使用した。炭化珪素の含有率以外は実施例1と同様の鋼材ガイド用スリーブガイド27を製作し、実施例1と同様の条件下でスリーブガイドの摩耗量を測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
(比較例2)
鋼材ガイド用スリーブガイド27を構成する部材として、炭化珪素が40重量%のSi−SiC系複合材料を使用した。炭化珪素の含有率以外は実施例1と同様の鋼材ガイド用スリーブガイド27を製作し、実施例1と同様の条件下でスリーブガイドの摩耗量を測定した。その結果を表1に示す。
【0042】
(比較例3)
鋼材ガイド用スリーブガイド27を構成する部材として、金属材料(SUS304)を用いた場合を、同条件にて測定した。
【0043】
(考察)
金属材料を用いた比較例3の鋼材ガイド用スリーブガイドを使用した場合は、10000kgの延べ線材通過重量において、線材と接触する部分のスリーブガイドの摩耗量は、1mmであった。しかし、鋼材への傷が8000kgの延べ線材通過重量を超えた頃から発生した。
一方、Si−SiC系複合材料を用いた実施例1〜2及び比較例1〜2の鋼材ガイド用スリーブガイドを使用した場合は、炭化珪素の含有率により差異が見られた。炭化珪素が15重量%のSi−SiC系複合材料を用いた実施例1、及び炭化珪素が35重量%のSi−SiC系複合材料を用いた実施例2では、50000kgの延べ線材通過重量においても、線材と接触する部分のスリーブガイドの摩耗量は、安定して線材を通過させ得る使用限界点である2mm迄に余裕を残す1.7〜1.8mmであった。炭化珪素が10重量%のSi−SiC系複合材料を用いた比較例1では、摩耗量は使用限界点に早く達し、その時の延べ線材通過重量は4000〜5000kgであった。炭化珪素が40重量%のSi−SiC系複合材料を用いた比較例2では、摩耗量が使用限界点に達する前に割損した。その時の延べ線材通過重量は1000〜2000kgであった。
【0044】
【表1】
Figure 0004209066
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の鋼材ガイド用スリーブガイドによれば、鋼材等の導入口として長時間使用しても摩耗量が少なく、割れることがなく、鋼材ガイド用スリーブガイドの寿命を長くすることができる、即ち線材圧延工程ラインのメンテナンス頻度を少なくできるため、鋼材等の製品の製造コストを低減することができる。又、固体潤滑性に優れるため、スリーブガイドのエッジにより製品に傷が付く等の品質低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 SiC系複合材料の骨格の一例を示す斜視図である。
【図2】 (a)図1のIIa−IIa線断面図及び(b)図1のIIb−IIb線断面図である。
【図3】 図1をSi−SiC系複合材料の骨格の一例を示す斜視図とみなした場合の(a)図1のIIa−IIa線断面図及び(b)図1のIIb−IIb線断面図である。
【図4】 (a)鋼材ガイド用スリーブガイドが使用される一般的な線材圧延工場のフロー例、(b)鋼材ガイド用スリーブガイドの側面方向から見た概略外形図、及び(c)鋼材ガイド用スリーブガイドの摩耗の形態を示す鋼材の進行方向と垂直方向の断面図である。
【符号の説明】
1…ヤーン配列体、2…ヤーン、3…繊維束、4…炭化珪素相、5…Si−SiC系材料相、6…ヤーン集合体、7…SiC系複合材料、8…マトリックス、9…小突起部、11…ヤーン配列体、12…ヤーン、13…繊維束、14…炭化珪素相、15…Si−SiC系材料相、16…ヤーン集合体、17…Si−SiC系複合材料、18…マトリックス、21…線材、22…圧延機、23…水冷帯、24…レイングヘッド、25…コイル材、26…ステルモアコンベア、27…鋼材ガイド用スリーブガイド、28…摩耗部。

Claims (1)

  1. 鋼材の圧延ライン中に使用される鋼材ガイド用スリーブガイドであって、
    Si−SiC系複合材料から成り、そのSi−SiC系複合材料が、15重量%〜35重量%の炭化珪素と炭素繊維と、炭素繊維以外の炭素成分、及び珪素とから構成され、少なくとも炭素繊維の束と炭素繊維以外の炭素成分とを含有するヤーンが層方向に配向しつつ三次元的に組み合わされ、互いに分離しないように一体化されているヤーン集合体と、このヤーン集合体中で隣り合う前記ヤーンの間に充填されているSi−SiC系材料からなるマトリックスとを備えている鋼材ガイド用スリーブガイド。
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