JP4208065B2 - 真空管回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接地されたカソード端子、プレート端子およびグリッド端子を備えると共に、前記カソード端子から電子を放射させるためのヒーターを備えた真空管を用いた回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種の分野において真空管の増幅作用を利用した回路が提案されている。真空管の増幅動作を実現するためには、通常、定格電圧により大電流をヒーターに供給してカソードからの電子放射を行わせ、放射電子がプレートに到達する際に流れる電流量をグリッド端子に負の電圧を印加して制御する。また、同一の真空管から従来の制御方式に比べて大きな可制御プレート電流を引き出すことを可能にするため、グリッド端子に正の電圧を印加することが提案されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭59−66210号公報(第1−2頁、第1図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この提案によれば、グリッド端子に正の電圧を印加して従来の制御方式に比べて大きな可制御プレート電流を引き出すことを可能にするが、電子放射動作を行わせるためにプレートには高電圧を、ヒーターには大電流を流すために定格電圧を印加するようになっていた。
【0005】
そこで、本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、低電圧で増幅動作可能な真空管回路を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、カソード、プレートおよびグリッドを備えると共に、前記カソードから電子を放射させるためのヒーターを備えた真空管を用いた回路において、
前記プレートと前記ヒーターとに定電源電圧を供給し、前記グリッドに抵抗(Rg1)を介して正の電圧を供給するように構成し、更に、
前記抵抗(Rg1)のグリッド接続端と反対の他端はコンデンサ(50)を介して第2の抵抗(Rg2)の一端が接続されており、
この第2の抵抗(Rg2)の他端には可変抵抗(46)が接続されていて、この可変抵抗46には前記定電源電圧が供給され、更に、
前記プレートに接続した第3の抵抗(RL)の一端と前記ヒーターとに同一の定電源電圧が供給されるように構成したことを特徴とするようにした。
【0008】
また、この真空管回路において、前記プレートに接続した抵抗の一端と前記ヒーターとに同一の低電源電圧が供給されるように構成しても良い、そして、 前記真空管の出力端子からの出力電圧の平均値が所定値になるようなバイアス制御回路を設けたことを特徴とするようにしても良い。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
(構成)
図1は第1実施形態の構成を示している。真空管20のカソード端子22は接地され、電子をカソード端子22から放射させるためのヒータ25には、低電圧の一例として「+4(V)」の低電圧の電源電圧が供給されている。また、放射された電子の到達先となるプレート端子21には抵抗(RL)40の一端が接続され、この抵抗(RL)40の他端には「+4(V)」の電源電圧が供給されている。また、真空管20のグリッド端子23には抵抗(Rg1)42の一端が接続されている。
【0011】
そして、この抵抗(Rg1)42の他端には、コンデンサ50を介して、オーディオ信号を出力する信号源10と接続されていると共に、抵抗(Rg2)44の一端が接続されている。さらに、この抵抗(Rg)44の他端には可変抵抗46が接続されていて、この可変抵抗46には「+4(V)」の電源電圧が供給されている。かくして、プレート端子21に接続した抵抗(RL)40の一端とヒーター25とには同一の正の低電源電圧が供給される構成となっており(この結果、プレート端子21にも正の低電圧が供給される)、低電圧型の真空管増幅回路を構成している。
【0012】
また、可変抵抗46は不図示の移動部によって、抵抗(Rg2)44との接続点を移動することによって抵抗比が変化して、電源電圧(+4(V))の抵抗44への分配量が変化する。抵抗比をどのようにしても、(+4(V))の電源電圧は正の電圧であるので、抵抗(Rg2)44、抵抗(Rg1)42を介して、グリッド端子23には正の低電圧が印加される構成となっている。
【0013】
(作用)
次に作用を説明する。ヒーター25により加熱されたカソード22からは電子が放射されるが、このヒーター25には通常よりも低電圧が供給されているため、ヒーター25の発熱量は少なくカソード22からの放射電子量は通常より少ない。また、プレート21に印加されている電圧も低い。もし、一般的な真空管増幅回路におけるようにグリッド23に負電圧のバイアスをかけるとカソード22からの放射電子は、グリッド23に遮蔽されるため、殆どプレート21に到達することができない。本実施形態では、グリッド端子には正の電圧が印加されているため、負の電荷を持つ放射電子のうちグリッド23に到達するものが発生する。この結果、抵抗(Rg1)42に図1に示すような電流Igが流れる。更にグリッド格子間を通過した電子は加速されてプレート21に到達する。この結果として真空管20は信号源10からの入力信号を増幅するようになる。なお、グリッド電流Igはグリッドの電位が上昇すると加速度的に増大する。
【0014】
そして、抵抗(Rg1)42があるため、グリッド電流値が加速的に大きくなり電圧降下も大きなものとなり、その結果、グリッド電圧はプラス「+」側で飽和し、一方、プレート出力は逆転して下側で飽和する。かくして、低電圧・低電力で真空管20の動作を行わせることができる。また、1本の真空管20で波形の上下対称歪みを発生させることができる。例えば、図3の波形W1は信号源10からの正弦波信号が歪まずに増幅された場合の増幅波形であるが、点線で示す歪み波形の符号UP部は、真空管20の特性により歪むものであり、符号DW部は、抵抗(Rg1)42の電圧降下によるものである。
【0015】
このようにして、グリッド端子23に抵抗(Rg1)42を介して正の電圧を供給しながら、プレート端子21とヒーター25とに正の低電圧を供給することによって、低電圧で増幅動作可能な真空管回路を提供することができる。なお、このような回路の応用例としては、例えば各種の楽器の楽音信号を入力して増幅させたり、歪みにより効果付加を行ったりすることを低電圧型の真空管20で実現することが挙げられるが応用例はこれに限られない。
【0016】
(第2実施形態)
この実施形態は、出力端子30から出力される増幅信号の平均値が電源電圧の半分の値になるようなバイアス回路を設けた点に特徴がある。
【0017】
図2は第2実施形態の構成を示している。真空管20のカソード22は接地され、電子をカソード22から放射させるためのヒータ25には低電圧電源の一例として「+4(V)」の低電圧の電源電圧が供給されている。また、放射された電子の到達先となるプレート端子21には抵抗RLの一端が接続され、さらに、この抵抗RLの他端には「+4(V)」の電源電圧が供給されている。また、真空管20のグリッド端子23には抵抗Rgの一端が接続されている。そして、抵抗Rg1の他端には、コンデンサC1を介して、オーディオ信号等を出力する信号源10に接続されていると共に、抵抗Rg2の一端が接続されている。さらに、プレート端子21には、抵抗3とコンデンサC3で成る積分回路65が設けられ、プレート電圧を平滑化している。
【0018】
また、同一の抵抗値を持つ抵抗R1を2個直列接続したものの一端に「+4(V)」」の電源電圧が供給され、この抵抗R1を2個直列接続したものの他端は接地されている。そして、2つの抵抗R1の接続点には、差動増幅器60の反転端子が接続され、また、差動増幅器60の非反転端子には積分回路65が接続されている。さらに、差動増幅器60の出力側と反転端子との間には、抵抗R2とコンデンサC2とが並列に接続されている。このコンデンサC2はノイズ除去用として作用する。
【0019】
この回路において、「抵抗R2の抵抗値」と「2つの抵抗R1の合成抵抗値」の和を「2つの抵抗R1の合成抵抗値」で除した値が動増幅器60の増幅率となり、例えば「R1=20(kΩ)、R2=1(MΩ)」の場合には増幅率が「(10k+1M)÷10k=101倍」となる。そして、2つの抵抗R1の値は同一であるので、符号Aで示した点(差動増幅器60の反転端子位置)での電圧は「+4(V)」の2分の1の「+2(V)」となる。
【0020】
(作用)
先ず、増幅作用について説明する。ヒーター25により加熱されたカソード22からは電子が放射されるが、このヒーター25には通常よりも低電圧の「+4(V)」が供給されているため、ヒーター25の発熱量は少なくカソード22からの放射電子量は通常より少ない。また、プレート21に印加されている電圧も低い。もし、一般的な真空管増幅回路におけるようにグリッド23に負電圧のバイアスをかけるとカソード22からの放射電子は、グリッド23に遮蔽されるため、殆どプレート21に到達することができない。本実施形態では、グリッド23には正の電圧が印加されているため、負の電荷を持つ放射電子のうちグリッド23に到達するものが発生し、更にグリッド23の格子間を通過した電子は加速されてプレート21に到達する。この結果として真空管20は信号源10からの入力信号を増幅するようになる。
【0021】
次にバイアス作用について説明する。プレート21の電圧を積分回路65によって平滑化した、差動増幅器60の非反転入力に印加される電圧(図2:B点の電位:出力端子30からの出力電圧の平均値)が差動増幅器60の反転入力に印加された「+2(V)」よりも大きくなると差動増幅器60の出力は正となる。この結果、グリッド23の正電圧が大きくなり、カソード22からの放射電子を引き込みやすくなると同時にグリッド23の格子間(隙間)を抜けた放射電子は加速されるためプレート21に到達する放射電子が増え、抵抗RLに流れる電流Ipが増大する。すると、出力端子30の電圧は降下し、その平均値Bも降下する。この降下は平均値Bが「+2(V)」を下回る迄続く。
【0022】
一方、積分回路65によって平滑化されたプレート21の電圧の平均値Bが「+2(V)」よりも小さくなると差動増幅器60の出力は負となる。この結果、カソード22からの放射電子を引き込みにくくなると同時にグリッド23の格子間(隙間)を抜けてプレート21に到達する放射電子も減り、抵抗RLに流れる電流Ipが減少する。すると、出力端子30の電圧は上昇し、その平均値(積分回路65の出力)も上昇する。この上昇は出力端子30の電圧の平均値(積分回路65の出力)が「+2(V)」を上回る迄続く。この様にして出力端子30の電圧の平均値は自動的に「+2(V)」に近づく。
【0023】
この結果、図3の波形W1に示すように、出力端子30から出力される増幅信号の平均値が電源電圧「+4(V)」の半分の値「+2(V)」になるようにバイアス動作が行われるようになる。したがって、図2に示すような差動増幅器60を用いたバイアス回路の作用によって、出力端子30から出力される増幅信号の平均値が安定して、安定した増幅信号が得られるようになる。
【0024】
以上本発明の実施の形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で上記実施形態に種々の変形や変更を施すことが可能となる。例えば、図1の回路においてノイズ除去のために適宜コンデンサを設けた構成とても良い。また、電源電圧は特に「+4(V)」に限定しなくても良い。電源電圧を例えば「+3(V)」程度として乾電池で対応可能な極低電圧としても良い。
【0025】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、グリッドに抵抗を介して正の電圧を供給しながら、プレートとヒーターとに低電圧を供給することによって、低電圧で増幅動作可能な真空管回路を提供することができるという効果が得られる。低電圧動作が可能になることにより、低消費電力動作が可能になり真空管の発熱を抑えることができるため、例えば、電池動作や高密度実装が可能になり装置の信頼度も上がるという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の説明図である。
【図2】第2実施形態の説明図である。
【図3】動作の説明図である。
【符号の説明】
10 信号源
20 真空管
21 プレート
22 カソード
23 グリッド
25 ヒーター
30 出力端子
40 抵抗
42 抵抗
44 抵抗
46 可変抵抗
50 コンデンサ
60 差動増幅器
65 積分回路

Claims (1)

  1. カソード、プレートおよびグリッドを備えると共に、前記カソードから電子を放射させるためのヒーターを備えた真空管を用いた回路において、
    前記プレートと前記ヒーターとに定電源電圧を供給し、前記グリッドに抵抗(Rg1)を介して正の電圧を供給するように構成し、更に、
    前記抵抗(Rg1)のグリッド接続端と反対の他端はコンデンサ(50)を介して第2の抵抗(Rg2)の一端が接続されており、
    この第2の抵抗(Rg2)の他端には可変抵抗(46)が接続されていて、この可変抵抗46には前記定電源電圧が供給され、更に、
    前記プレートに接続した第3の抵抗(RL)の一端と前記ヒーターとに同一の定電源電圧が供給されるように構成したことを特徴とする真空管回路。
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