JP4207627B2 - エンジンの始動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのアイドリング運転時等において自動的に停止状態となったエンジンを再始動させるエンジンの始動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃費の低減およびCO2排出量の抑制等を目的として、エンジンがアイドリング状態にある場合等に、エンジンを自動的に停止させるとともに、その後に発進操作が行われる等により再始動条件が成立したときに、エンジンを自動的に再始動させるように構成されたエンジンの始動装置が開発されている。このように自動停止状態となったエンジンを運転者の発進操作等に応じて自動的に再始動させる場合、迅速な始動性が要求されるため、始動用モータ(スタータ)によりエンジンの出力軸を駆動するクランキングを経てエンジンを始動させるような方法は、エンジンの始動が完了するまでにかなりの時間を要し、かつ上記始動用モータに負荷が掛かるとともに、大きな騒音が発生するので好ましくない。
【0003】
そこで、例えば特許文献1,2に示されるように、エンジンの自動停止時に膨張行程にある気筒を検出し、この気筒内に燃料を噴射して点火することにより発生した燃焼エネルギーに応じ、ピストンを駆動してエンジンを迅速に始動させるようにしたエンジンの始動装置が提案されている。
【0004】
また、特許文献3に示されるように、多気筒エンジンにおいて、エンジンの停止時に圧縮行程にある気筒で初回の燃焼を実行することにより、この気筒のピストンを押し下げるとともに、これに伴い膨張行程にある気筒のピストンを上昇させてその筒内圧力を高めた状態で、この気筒に燃料を噴射して点火するように工夫したエンジンの始動装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−125136号公報
【特許文献2】
特開2002−4985号公報
【特許文献3】
国際公開01/38726号パンフレット
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1,2に示された始動装置によると、エンジンの停止時にピストンが適正な位置にないと、正常にエンジンを始動させることができない可能性がある。例えばエンジンの停止時に、膨張行程にある気筒のピストンが上死点に近い位置にある場合には、エンジンが停止している間に上記気筒内の空気が外部に漏出することにより、空気の残存量が極めて少なくなり、これに対応して燃料噴射量も少なく設定する必要があるため、充分な燃焼エネルギーが得られず、エンジンを正常に始動させることが困難である。逆に、上記ピストンが下死点に近い位置にある場合には、筒内の空気量および燃料噴射量をある程度は確保することができるが、その燃焼時に発生した燃焼エネルギーをピストンに作用させる行程、つまりピストンの停止位置から排気弁が開弁するまでの行程が短すぎることに起因してエンジンの回転数を充分に上昇させることができず、上記気筒の燃焼に続いて他の気筒を燃焼させる際にエンジンが停止状態となり易いという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献3に示された始動装置によると、エンジン停止時に圧縮行程にある気筒では、初回の燃焼により少しだけエンジンが逆回転してピストンが押し下げられた後、エンジンの停止時に膨張行程にある他の気筒で燃焼が行われてエンジンが正回転するのに応じ、上記気筒(エンジン停止時に圧縮行程にあった気筒)のピストンが上昇した後に、圧縮上死点を経て燃焼を伴う膨張行程に移行するが、エンジンを逆回転させる初回の燃焼で空気が既に使われているため、上記圧縮上死点付近における本来の燃焼時(エンジンを正回転させる第2回目の燃焼時)に、必要な量の空気が気筒内に存在していない状態となる。したがって、エンジンを正回転させる本来の燃焼が充分に行われず、エンジンの停止時に膨張行程にある上記気筒で燃焼が行われた後、別の気筒で次の燃焼が行われるまでの間隔が長くなり、この間にエンジンの回転速度が低下して始動性が悪化するという問題があった。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑み、自動停止状態にあるエンジンを迅速かつ適正に始動させることができるエンジンの始動装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、エンジンの停止条件が成立したときに、エンジンを自動的に停止させるとともに、エンジンの自動停止状態で再始動条件が成立したときに、実質的な膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火することにより、エンジンを再始動させるように構成されたエンジンの始動装置において、エンジンの再始動開始時点から何れかの気筒が上死点を迎えるまでの間における第1行程で、上記実質的な膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火を行い、かつ上記第1行程から次の気筒が上死点を迎えるまでの間における第2行程で、吸気行程にある気筒の吸気弁を閉止するとともに、この第2行程で吸気行程にある気筒と、膨張行程にある他の気筒との両方で燃焼が行われるように、それぞれ所定のタイミングで燃料を噴射して点火するように制御する再始動制御手段を備え、エンジンの自動停止時に上記第2行程で吸気行程となる気筒の排気弁が第1行程の途中で閉止状態となるように上記排気弁の閉止時期を制御するものである。
【0010】
上記構成によれば、エンジンの再始動時には、まず実質的な膨張行程つまりピストンの下降に応じて燃焼室内の容積が拡大する方向にある膨張行程または吸気行程にある気筒の少なくとも一方に、燃料が噴射されて第1行程の燃焼が行われることにより、エンジンの出力軸が正転方向に駆動され、この第1行程から次の気筒が上死点を迎えるまでの間における第2行程で、吸気行程にある気筒と膨張行程にある気筒との両方で燃焼が行われることにより、上記第1行程における燃焼状態の如何に拘わらず、エンジン回転数が速やかに上昇してエンジンが適正に始動されることになる。また、エンジンの自動停止時に排気行程にある気筒の排気弁が上記第1行程の途中で閉止状態となることにより、この気筒内に所定量の空気が確保されるため、第2行程において上記気筒の吸気弁が閉止された状態で、燃料が噴射されて点火が行われることにより、エンジンを始動させるために必要な燃焼エネルギーが得られることになる。
【0011】
請求項2に係る発明は、エンジンの停止条件が成立したときに、エンジンを自動的に停止させるとともに、エンジンの自動停止状態で再始動条件が成立したときに、実質的な膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火することにより、エンジンを再始動させるように構成されたエンジンの始動装置において、エンジンの再始動開始時点から何れかの気筒が上死点を迎えるまでの間における第1行程で、上記実質的な膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火を行い、かつ上記第1行程から次の気筒が上死点を迎えるまでの間における第2行程で、吸気行程にある気筒の吸気弁を閉止するとともに、この第2行程で吸気行程にある気筒と、膨張行程にある他の気筒との両方で燃焼が行われるように、それぞれ所定のタイミングで燃料を噴射して点火するように制御する再始動制御手段を備え、エンジンの再始動時に上記第2行程で膨張行程となる気筒の空燃比が理論空燃比よりもリッチとなるように上記気筒に対する燃料の噴射量を制御するものである。
【0014】
上記構成によれば、エンジンの始動時には、まず実質的な膨張行程つまりピストンの下降に応じて燃焼室内の容積が拡大する方向にある膨張行程または吸気行程にある気筒の少なくとも一方に、燃料が噴射されて第1行程の燃焼が行われることにより、エンジンの出力軸が正転方向に駆動され、この第1行程から次の気筒が上死点を迎えるまでの間における第2行程で、吸気行程にある気筒と膨張行程にある気筒との両方で燃焼が行われることにより、上記第1行程における燃焼状態の如何に拘わらず、エンジン回転数が速やかに上昇してエンジンが適正に始動されることになる。また、上記第2行程で膨張行程にある気筒でリッチな空燃比の燃焼が行われることにより、エンジン回転数を速やかに上昇させるための燃焼エネルギーが充分に確保されることになる。
【0015】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載のエンジンの始動装置において、第2行程で吸気行程となる気筒の空燃比が理論空燃比よりもリーンとなるように上記気筒に対する燃料の噴射量を制御するものである。
【0016】
上記構成によれば、第2行程で吸気行程となる気筒の空燃比が理論空燃比よりもリーンとなるように制御されることにより、この気筒において上記第2行程(吸気行程)における初回の燃焼が行われた後に多くの空気が残存するため、この気筒が膨張行程となった第4行程における第2回目の燃焼(本来の燃焼)を、上記初回の燃焼に連続させて行うことが可能となり、これによってエンジンの始動時に回転数がスムーズに立ち上げられることになる。
【0017】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3の何れかの1項に記載のエンジンの始動装置において、上記第2行程で圧縮行程にある気筒に、この圧縮行程で燃料を噴射するとともに、この気筒に噴射された燃料を、この気筒の圧縮上死点またはこれに続く膨張行程で点火するものである。
【0018】
上記構成によれば、エンジンの再始動時に、第1行程および第2行程でそれぞれ燃焼が行われるとともに、第2行程で圧縮行程にある気筒に噴射された燃料が気化することにより、この気筒内の温度および圧力が充分に低下するため、ピストンの上昇時に作用する抵抗が低減されるとともに、上記気筒の圧縮上死点またはその後の膨張行程における点火が適正に行われることになる。
【0019】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4の何れかの1項に記載のエンジンの始動装置において、エンジン停止時に膨張行程にある気筒のピストンの停止位置を検出するピストン位置検出手段を備え、このピストン位置検出手段により検出された上記ピストンの停止位置が、上記第1行程および第2行程における燃焼によってエンジンの再始動を行い得る範囲内で相対的に下死点側にある場合には、第2行程で吸気行程にある気筒と膨張行程にある気筒との両方で燃焼を行わせ、ピストン停止位置が上記範囲内で相対的に上死点側にある場合には、第2行程で膨張行程にある気筒のみで燃焼が行われるように、それぞれ所定のタイミングに燃料を噴射して点火するものである。
【0020】
上記構成によれば、エンジン停止時に実質的な膨張行程にある気筒のピストンの停止位置が相対的に下死点側にあり、第1行程で上記気筒の燃焼を行っても、その燃焼エネルギーをピストンに作用させるための行程が短すぎる状態にあるとともに、エンジンの停止時に圧縮行程にある気筒内の空気量が少ない状態にある場合には、上記第1行程の燃焼後に第2行程で吸気行程にある気筒と膨張行程にある気筒との両方を燃焼させることにより、上記第2行程から第3行程にスムーズに移行させるための充分な燃焼エネルギーが得られ、エンジンの始動性が確保されることになる。また、エンジン停止時に実質的な膨張行程にある気筒のピストンの停止位置が相対的に上死点側にあり、第1行程で上記気筒の燃焼を行うことにより、その燃焼エネルギーをピストンに対して充分に作用させ得る状態にあるとともに、エンジンの停止時に圧縮行程にある気筒内の空気量が充分に確保された状態にある場合には、第2行程で膨張行程にある気筒のみで燃焼を行わせるだけで、エンジン回転数を速やかに上昇させてエンジンを適正に始動させることが可能となる。
【0021】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5の何れかの1項に記載のエンジンの始動装置において、エンジン停止時に膨張行程にある気筒のピストンの停止位置を検出するピストン位置検出手段を備え、このピストン位置検出手段により検出された上記ピストンの停止位置が、上記第1行程および第2行程における燃焼によってエンジンの再始動を行い得る範囲外にある場合には、スタータを作動させてエンジンを始動させるものである。
【0022】
上記構成によれば、エンジン停止時に実質的な膨張行程にある気筒のピストンの停止位置が下死点側または上死点側の何れかに偏っているために、上記燃料噴射および点火を行ってもエンジンを適正に再始動させることができない状態にある場合には、スタータを作動させることにより、エンジンを迅速かつ確実に再始動させることが可能となる。
【0023】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6の何れかの1項に記載のエンジンの始動装置において、エンジン停止時に膨張行程にある気筒のピストンの停止位置を検出するピストン位置検出手段を備え、このピストン位置検出手段により検出された上記ピストンの停止位置が、上記第1行程および第2行程における燃焼によってエンジンの再始動を行い得る範囲外にあるとともに、この範囲に近い位置で上死点側にある場合には、上記第1行程で、吸気行程にある気筒の吸気弁を閉止するとともに、この吸気行程にある気筒と、膨張行程にある気筒との両方にそれぞれ燃料を噴射して点火するものである。
【0024】
上記構成によれば、エンジン停止時に膨張行程にある気筒のピストンの停止位置が上死点側に偏り、この気筒内の空気量が少ないためにエンジンを適正に再始動させることがやや困難な状態にある場合には、上記第1行程で吸気行程にある気筒と、膨張行程にある気筒との両方にそれぞれ燃料を噴射して点火することにより、第1行程から第2行程に至る間に充分に燃焼エネルギーが確保され、スタータを使用することなくエンジンを適正に再始動させることが可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1および図2は本発明の一実施形態によるエンジンの概略構成を示している。これらの図において、エンジン本体はシリンダヘッド1およびシリンダブロック2で構成された複数の気筒を有し、図示の実施形態では4つの気筒3A〜3Dを有している。各気筒3A〜3Dにはピストン4がそれぞれ嵌挿され、ピストン4の上方に燃焼室5が形成されている。上記ピストン4はコンロッドを介してクランクシャフト6に連結されている。
【0028】
各気筒3A〜3Dの燃焼室5の頂部には点火プラグ7が装備され、そのプラグ先端が燃焼室5内に臨んでいる。さらに、燃焼室5の側方部には、この燃焼室5内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁8が設けられている。この燃料噴射弁8は、図略のニードル弁およびソレノイドを内蔵し、パルス信号が入力されることにより、そのパルス入力時期にパルス幅に対応する時間だけ駆動されて開弁し、その開弁時間に応じた量の燃料を噴射するように構成されている。そして、上記燃料噴射弁8から点火プラグ7付近に向けて燃料が噴射されるように、燃料噴射弁8の燃料噴射方向が設定されている。なお、図外の燃料ポンプにより燃料供給通路等を介して燃料噴射弁8に燃料が供給され、かつ、圧縮行程における燃焼室5内の圧力よりも高い燃料圧力を与え得るように燃料供給系統が構成されている。
【0029】
また、各気筒3A〜3Dの燃焼室5に対して吸気ポート9および排気ポート10が開口し、これらのポート9,10に吸気弁11および排気弁12が装備されている。これらの吸気弁11および排気弁12は、図外のカムシャフト等からなる動弁機構により駆動される。そして、後に詳述するように各気筒が所定の位相差をもって燃焼サイクルを行うように、各気筒の吸・排気弁11,12の開閉タイミングが設定されている。
【0030】
吸気ポート9および排気ポート10には吸気通路15および排気通路16が接続されている。吸気通路15には、吸気量調節手段としてのスロットル弁(吸気通路面積を調節するバルブ)が設けられ、当実施形態では、吸気量を制御する際における応答性を高めるため分岐吸気通路15aにスロットル弁17が設けられている。すなわち、吸気通路15は、サージタンク15bの下流に気筒別の分岐吸気通路15aを有し、各分岐吸気通路15aの下流端が各気筒の吸気ポート9に連通するが、その各分岐吸気通路15aの下流端近傍に、各分岐吸気通路15aを同時に絞り調節する多連型のロータリバルブからなるスロットル弁17が配設されている。このスロットル弁17は、アクチュエータ18により駆動されるように構成されている。
【0031】
上記吸気通路15におけるサージタンク15bの上流に位置する共通吸気通路15cには、吸気量を検出するエアフローセンサ20が設けられている。また、上記クランクシャフト6に対し、その回転角を検出するクランク角センサが設けられており、当実施形態では、後に詳述するように、互いに一定量だけ位相のずれたクランク角信号を出力する2つのクランク角センサ21,22が設けられている。さらに上記クランクシャフト6に対し、その特定回転位置を検出することで気筒識別信号を与えることのできるカム角センサ23が設けられている。なお、この他にもエンジンの制御に必要な検出要素として、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ24、アクセル開度(アクセル操作量)を検出するアクセル開度センサ25等が装備されている。
【0032】
図1において30は、制御手段としての機能を有するECU(エンジンコントロールユニット)であり、上記各センサ20〜25からの信号を受け、上記燃料噴射弁8に対して燃料噴射量および噴射時期を制御する制御信号を出力するとともに、点火プラグ7に対して点火時期を制御する制御信号を出力し、さらにスロットル弁17のアクチュエータ18に対してスロットル開度を制御する制御信号を出力するように構成されている。
【0033】
そして、エンジンのアイドリング状態で、予め設定されたエンジン停止条件が成立したときに、燃料噴射弁8からの燃料の噴射を停止するとともに、点火プラグ7の点火動作を停止する等により、自動的にエンジンを停止させるとともに、その後にエンジンの再始動条件が成立したときに、エンジンを自動的に再始動させる制御が実行されるようになっている。
【0034】
また、上記エンジンの自動停止時に、圧縮行程にある気筒および膨張行程にある気筒において、ピストン4が上死点方向に移動する際における抵抗を大きくすべく、少なくともこれらの気筒に対する吸気量を増大させ、特に膨張行程となる気筒に対してより多く吸気を供給するように、上記スロットル弁17をエンジンの停止動作期間中における所定期間だけ所定の開状態とする制御が実行される。
【0035】
上記のように自動停止状態となったエンジンを再始動させる際には、エンジン停止時のピストン位置が所定範囲にある場合に、エンジンの再始動開始時点から何れかの気筒が上死点を迎えるまでの間における第1行程で、エンジン停止時に膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火することにより燃焼を行わせた後、上記第1行程から次の気筒が上死点を迎える第2行程で、吸気行程にある気筒の吸気弁を閉止して、この気筒と、第2行程で膨張行程となる気筒との両方を燃焼させるように、それぞれ所定のタイミングで燃料を噴射して点火することにより、エンジンを正転方向に駆動して再始動させる制御を実行する。
【0036】
当実施形態では、上述のように第2行程において吸気行程にある気筒と膨張行程にある気筒との両方を燃焼させる第1再始動制御モードと、第2行程で膨張行程にある気筒の燃焼は行わせるが、吸気行程にある気筒の燃焼を行わせない第2再始動制御モードと、スタータ(始動用モータ)31でアシストしつつ、エンジンの停止時に膨張行程にある気筒と、圧縮行程にある気筒とを連続して燃焼させることによりエンジンを始動させる第3再始動制御モードとを、ピストンの停止位置に応じて選択的に実行するようになっている。
【0037】
上記ECU30によるエンジン停止および再始動の制御を、図3〜図7に示すフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートに示す処理は、エンジンが運転されている状態からスタートし、ECU30において、まず自動停止条件が成立したか否かを判定する(ステップS1)。すなわち、車速およびエンジン温度(エンジン冷却水の温度)等の検出値に基づき、例えば車速が0の停車状態が所定時間以上に亘って持続し、かつエンジン温度が所定範囲内にあり、さらにエンジンを停止させることに格別の不都合がない状況にある場合等に、自動停止条件が成立したと判定される。
【0038】
上記自動停止条件が成立したときは、エンジンの各気筒に対する燃料供給を停止した後(ステップS2)、一旦スロットル弁17を所定開度に開いた後(ステップS3)、エンジン回転数が所定回転数以下となるまで、上記スロットル弁17を開放状態に保持するとともに(ステップS4)、エンジン回転数が所定回転数以下となった時点で上記スロットル弁17を閉止状態とする(ステップS5)。
【0039】
続いて、ステップS6でエンジンが停止状態となったか否かを判定し、エンジンが停止状態となると、図4に示す後述の停止位置検出ルーチンによるピストン停止位置の検出結果に基づき、エンジンの停止時に膨張行程にある気筒のピストン4の停止位置が所定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS7)。この場合に、上記ピストン4が、図9中に斜線を付して示した範囲A、つまり膨張行程の中期領域に相当する範囲を所定範囲とする。
【0040】
そして、上記ピストン4が所定範囲A内にあると判定された場合には、エンジンの停止時に膨張行程にある気筒が、上記ピストン4の停止位置が所定位置よりもBDC(下死点)側にあるか否かを判定する(ステップS8)。すなわち、エンジンの停止時に膨張行程にある気筒のピストン停止位置が、図9に示す所定範囲A内において、その中間位置A0よりもBDC寄りの範囲A2内にあるか否かを判定する。
【0041】
上記ステップS7,S8の判定に基づき、ピストン4の停止位置が所定範囲A内であって、そのBDC側(範囲A2内)にあることが確認された場合には、図5に示す第1再始動制御モードである第1サブルーチン(R1)の制御を実行し、ピストン4の停止位置が上記所定範囲A内であって、そのTDC(上死点)側の範囲A1内にあることが確認された場合には、図6に示す第2再始動制御モードである第2サブルーチン(R2)の制御を実行する。また、上記ピストン4の停止位置が所定範囲A外であることが確認された場合は、図7に示す第3再始動制御モードである第3サブルーチン(R3)の制御を実行する。
【0042】
図4は、ECU30に設けられたピストン位置検出手段において実行されるピストン停止位置の検出ルーチンを示している。この検出ルーチンの制御がスタートすると、第1クランク角信号CA1(第1クランク角センサからの信号)および第2クランク角信号CA2(第2クランク角センサからの信号)に基づき、第1クランク角信号CA1の立ち上がり時に第2クランク角信号CA2がLowであるか否か、または第1クランク角信号CA1の立ち下がり時に第2クランク角信号CA2がHighであるか否かを判定する。要するに、エンジンの停止動作時における上記信号CA1,CA2の位相の関係が、図8(a)のようになるか、それとも図8(b)のようになるかを判別することにより、エンジンが正転状態にあるか逆転状態にあるかを判別する(ステップS11)。
【0043】
すなわち、エンジンの正転時には、図8(a)のように、第1クランク角信号CA1に対して第2クランク角信号CA2が半パルス幅程度の位相遅れをもって生じることにより、第1クランク角信号CA1の立ち上がり時に第2クランク角信号CA2がLow、第1クランク角信号CA1の立ち下がり時に第2クランク角信号CA2がHighとなる。一方、エンジンの逆転時には、図8(b)のように、第1クランク角信号CA1に対して第2クランク角信号CA2が半パルス幅程度の位相の進みをもって生じることにより、エンジンの正転時とは逆に第1クランク角信号CA1の立ち上がり時に第2クランク角信号CA2がHigh、第1クランク角信号CA1の立ち下がり時に第2クランク角信号CA2がLowとなる。
【0044】
そこで、ステップS11の判定がYESであれば、エンジンの正転方向のクランク角変化を計測するためのCAカウンタをアップし(ステップS12)、ステップS11の判定がNOの場合は、上記CAカウンタをダウンする(ステップS13)。そして、エンジン停止後に上記CAカウンタの計測値を調べることでピストン停止位置を求める(ステップS14)。
【0045】
図5は、図3のフローチャート中のステップS8でYESと判定され、エンジンの停止時に膨張行程にある気筒のピストン停止位置が、予め設定された上記範囲A内であって、そのBDC側(範囲A2内)にあることが確認された場合に実行される第1再始動制御モードの第1サブルーチンR1を示している。この第3サブルーチンR1の制御動作がスタートすると、まず予め設定されたエンジンの再始動条件が成立したか否かを判定し(ステップS21)、NOと判定された場合には、そのままリターンすることにより待機する。
【0046】
上記ステップS21でYESと判定され、停車状態にある車両を発進するためにアクセル操作等が行われたり、バッテリー電圧が低下したりする等により、エンジンの再始動条件が成立したことが確認された場合には、上記ピストン停止位置に基づき、例えば図10に示すように、エンジンの再始動開始時点tにおいて、エンジンの停止時に圧縮行程にあるNo.1気筒および膨張行程にあるNo.2気筒内の空気量をそれぞれ算出する(ステップS22)。具体的には、図4に示す停止位置検出ルーチンにより検出されたピストン停止位置から上記両気筒の燃焼室容積が求められる。また、エンジン停止の際には燃料カットされた時点から、エンジンが数回転した後に停止するので、上記膨張行程にある気筒(No.2気筒)内もある程度新気で満たされた状態にあり、かつエンジンの停止中に上記両気筒の筒内圧力は略大気圧となっているので、上記燃焼室容積から新気量を求めることができる。なお、燃料カット前に運転状態がλ=1のアイドル運転の場合は、スロットル弁17が閉じているため、エンジン停止までの掃気が不充分な場合があり、エンジン停止の際における吸気圧力と停止までのエンジン回転数(サイクル数)から精度良く新気を求めるようにしてもよい。
【0047】
上記ステップS22で算出されたエンジンの停止時に膨張行程にあるNo.2気筒内の空気量に基づき、このNo.2筒内に燃料を噴射することにより生成される混合気の空燃比が所定値、例えばλ=1の近傍またはλ≦1のリッチとなるように算出された量の燃料噴射F1を、No.2気筒に実行した後(ステップS23)、エンジンの再始動開始時点tから何れかの気筒(No.1気筒およびNo.4気筒)が上死点Tを迎えるまでの間の第1行程において、上記燃料が気化するのに要する所定時間が経過した時点で、上記No.2気筒に対して点火S1を実行するとともに、このNo.2気筒の排気弁が下死点Bの近傍で開放状態となるように、図10の矢印に示すように上記排気弁の開放タイミングを遅開きに設定する(ステップS24)。
【0048】
次に、エンジンの停止時に排気行程にあるNo.4気筒が上死点Tとなる前、つまり上記第1行程が終了する前の所定時期にNo.4気筒の排気弁がそれぞれ閉止状態となるように、この排気弁の閉止タイミングを早閉じに設定するとともに(ステップS25)、この排気弁が閉止状態となった時点における上記No.4気筒内の空気量を算出する(ステップS26)。
【0049】
そして、上記ステップS22で算出されたエンジンの停止時に圧縮行程にあるNo.1気筒および上記ステップS25で算出されたエンジンの停止時に排気行程にあるNo.4気筒内の空気量に基づき、これらのNo.1,No.4筒内に燃料を噴射することにより生成される混合気の空燃比が所定値、例えばλ=1の近傍またはλ≦1のリッチとなるように算出された量の燃料噴射F21,F22を、上記No.1,No.4気筒に対してそれぞれ所定のタイミングで実行する(ステップS27)。
【0050】
また、エンジンの停止時に排気行程にあるNo.4気筒の吸気弁を閉止状態に維持しつつ(ステップS28)、上記No.1,No.4気筒のピストンが上死点Tを超えた所定の時点、つまり上記第1行程から次の気筒が上死点を迎えるまでの間における第2行程で、上記No.1,No.4気筒の点火S21,S22を実行し(ステップS29)、両気筒のピストンが下死点Bを迎えて第3行程に移行する前の所定のタイミングで、両気筒の排気弁を開放状態とする(ステップS30)。
【0051】
次いで、エンジンの停止時に吸気行程にあるとともに、上記第2行程で圧縮行程となるNo.3気筒に、その圧縮行程(第2行程)で、予め設定された所定量の燃料噴射F3を行うとともに(ステップS31)、上記No.3気筒の圧縮上死点Tまたはこの圧縮上死点Tを超えた膨張行程(第3行程)で点火S3を実行する(ステップS32)。
【0052】
なお、上記第3行程に続く第4行程では、エンジンの停止時に排気行程にあるNo.4気筒が膨張行程になるが、この膨張行程では、No.4気筒に対する燃料の噴射および点火は行わず、その排気弁を開放状態に維持しつつ、上記No.4気筒の排気行程が終了した後の本来のタイミングで第4気筒の排気弁を閉止した後(ステップS33)、通常の制御状態に移行する(ステップS34)。
【0053】
図6は、図3のフローチャート中のステップS8でNOと判定され、エンジン停止時に膨張行程にあるピストン4の停止位置が、予め設定された所定範囲A内であって、そのTDC側(範囲A1内)にあることが確認された場合に実行される第2再始動制御モードの第2サブルーチンR2を示している。この第2サブルーチンR2の制御動作がスタートすると、まず予め設定されたエンジン再始動条件が成立したか否かを判定し(ステップS41)、NOと判定された場合には、そのままリターンすることにより待機する。
【0054】
上記ステップS41でYESと判定されてエンジンの再始動条件が成立したことが確認された場合には、エンジンの停止時に圧縮行程にある気筒(No.1気筒)および膨張行程にある気筒(No.2気筒)の空気量を算出した後(ステップS42)、このステップS42で算出されたエンジンの停止時に膨張行程にあるNo.2気筒内の空気量に基づき、このNo.2気筒内に燃料を噴射することにより生成される混合気の空燃比が所定値(例えばλ=1の近傍またはλ≦1のリッチ)となるように算出された量の燃料噴射を、上記No.2気筒に対して実行する(ステップS43)。次いで、エンジンの再始動開始時点tから何れかの気筒が上死点を迎えるまでの間の第1行程において、上記燃料が気化するのに要する所定時間が経過した時点で、このNo.2気筒に対して点火を実行する(ステップS44)。
【0055】
また、上記ステップS42で算出されたエンジンの停止時に圧縮行程にあるNo.1気筒の空気量に基づき、このNo.1筒内に燃料を噴射することにより生成される混合気の空燃比が所定値(例えばλ=1の近傍またはλ≦1のリッチ)となるように算出された量の燃料噴射を、上記No.1気筒に対して実行するとともに(ステップS45)、上記No.1気筒のピストンが上死点Tを超えた所定の時点、つまり上記第1行程から次の気筒が上死点を迎えるまでの間における第2行程の間に、No.1気筒に対して点火を行った後(ステップS46)、通常の制御状態に移行する(ステップS47)。
【0056】
図7は、図3のフローチャート中のステップS7においてNO判定され、エンジン停止時に膨張行程にあるピストン4の停止位置が、予め設定された所定範囲A外にあるときに実行される第3再始動制御モードの第3サブルーチンR3を示している。この第3サブルーチンR3の制御動作がスタートすると、まず所定のエンジン再始動条件が成立したか否かを判定し、NOと判定された場合には、そのままリターンすることにより待機する(ステップS51)。
【0057】
エンジンの再始動条件成立時(ステップS51の判定がYESのとき)には、スタータ31の駆動を開始するとともに(ステップS52)、エンジンの停止時におけるピストンの停止位置に基づき、エンジンの停止時に圧縮行程にある気筒および膨張行程にある気筒の空気量を算出した後(ステップS53)、両気筒内におけるの各空燃比が理論空燃比付近(λ=1)となるように燃料を噴射する(ステップS54)。
【0058】
そして、エンジンの停止時に膨張行程にある気筒に対する燃料の噴射後に、この燃料の気化時間を考慮して設定された時間が経過した時点で、上記気筒に対する点火を実行する(ステップS55)。また、エンジンの停止時に圧縮行程にある気筒が所定クランク角となった時点で、この気筒に対する点火を実行した後(ステップS56)、通常の始動制御状態に移行するとともに(ステップS57)、スタータ31の駆動を停止する(ステップS58)。
【0059】
以上のように、各気筒が所定の位相差をもって吸気、圧縮、膨張および排気の各行程からなるサイクルを行うように構成された多気筒4サイクルエンジンにおいて、エンジンの出力を要しない所定のアイドリング状態となってエンジンの停止条件が成立した場合には、この停止条件の成立時点で燃料供給が停止されることにより、エンジン回転数が次第に低下してエンジンが自動停止状態となる。
【0060】
そして、エンジンの自動停止後に再始動条件が成立した時点で、エンジンを自動的に再始動させる制御を実行する場合に、図10に示すように、再始動開始時点tから膨張行程にあるNo.2気筒が下死点Bを迎えるまでの間における第1行程で、このNo.1気筒に燃料を噴射して点火し、かつ膨張行程にあるNo.1気筒と、排気行程にあるNo.4気筒において上死点Tを迎えるまでに燃料噴射S21,S22を行う。ただし、この燃料噴射S22のタイミングは、No.4気筒の排気弁を閉止した後の時期に設定する。次に、上記第1行程から次のNo.2およびNo.3気筒が上死点Tを迎えるまでの間における第2行程で、吸気行程にあるNo.4気筒の吸気弁を閉止するとともに、この第2行程で膨張行程にあるNo.1気筒と、吸気行程にあるNo.4気筒との両方でそれぞれ点火S21,S22を行うように構成したため、エンジン回転数を速やかに上昇させてエンジンを適正に始動することができる。
【0061】
例えば、エンジンの停止時に膨張行程にある上記気筒のピストン停止位置が中間位置よりも下死点側にあると、上記第1行程における燃焼により発生した燃焼エネルギーをピストン4に作用させる行程が短すぎるために、この第1行程でエンジン回転数を充分に上昇させることができないとともに、エンジンの停止時に圧縮行程にあるNo.1気筒内の空気量が少なく、このNo.1気筒を第2行程で燃焼させることにより得られる燃焼エネルギーが少ないために、上記第1行程から第2行程に移行させることができても、第2行程以降の行程に移動させることが困難な状態となる。このような場合に、上記第1行程に続く第2行程で、吸気行程にある気筒(No.4気筒)にある吸気弁を閉止した状態で、このNo.4気筒と、膨張行程にある気筒(No.1気筒)との両方で燃焼を行わせることにより、上記第2行程で充分な燃焼エネルギーを得ることができるため、上記第1行程の燃焼に続く第2行程への移行時にエンジン回転数が低下してエンジンが停止状態となるという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0062】
特に、上記実施形態では、図10に示すように、第2行程で吸気行程となるNo.4気筒の排気弁を第1行程(排気行程)の途中で閉止するように、図10の矢印に示すように、上記排気弁の閉止タイミングを早閉じに設定したため、この第1行程において、No.4気筒内に燃料噴射F22を実行できるとともに、第2行程において上記No.2気筒の吸気弁を閉止した状態でも、No.2気筒内に所定量の空気を確保し、燃料噴射F22のタイミングから燃料を気化・霧化させるための所定時間を経た後に、点火S22を行うことができる。この結果、エンジンを始動させるために必要な燃焼エネルギーを効果的に得ることができるという利点がある。
【0063】
具体的には、図11に示すように、吸気弁および排気弁の動弁機構に、各弁の開閉タイミングを変更可能にするバルブタイミング可変機構40,41を設け、エンジンの再始動時に、ECU30から排気弁用のバルブタイミング可変機構41に出力される制御信号に応じて第2行程で吸気行程となる気筒の排気弁を通常時よりも早いタイミングで閉止するとともに、ECU30から吸気弁用のバルブタイミング可変機構40に出力される制御信号に応じて上記気筒の吸気弁を閉止状態に維持することにより、上記気筒内に所定量の空気を確保した状態で、その吸気行程で燃焼を行わせることができる。
【0064】
また、図10に示す例において、上記第2行程で膨張行程となるNo.1気筒および吸気行程となるNo.4気筒の空燃比が、理論空燃比よりもリッチとなるように、上記両気筒に対する燃料の噴射量を制御するように構成した場合には、エンジンの始動時に、まず第1行程で、膨張行程にあるNo.2気筒の燃焼を行いつつ、上記膨張行程にあるNo.1気筒および吸気行程にあるNo.4気筒に多量の燃料を噴射して第2行程で点火を行うことにより、エンジン回転数を速やかに上昇させるための燃焼エネルギーを充分に確保することができる。
【0065】
さらに、上記実施形態では、例えば図10に示すように、エンジンの停止時に膨張行程にあるNo.2気筒に対して第1行程で燃料噴射F1を行った後に、点火S1を行って燃焼させるとともに、このNo.2気筒の排気弁を下死点Bの近傍で開放することにより、図10の矢印に示すように上記排気弁の開放タイミングを遅開きに設定するように構成したため、上記第1行程で発生した燃焼エネルギーをクランクシャフト6に伝達する行程を可及的に長くすることができる。
【0066】
上記の構成によれば、エンジン停止時に膨張行程にあるNo.2気筒のピストン停止位置が相対的に下死点B寄りとなって、ピストン4の下降距離が短い状態にある場合においても、この第1行程の全域で上記燃焼エネルギーをピストン4に効果的に伝達することが可能となり、エンジン回転数を充分に上昇させてエンジンを適正に始動させ得るという利点がある。例えば、通常時に上死点前52°程度に設定された排気弁の開放タイミングを、上死点前35°程度に設定して遅開き状態とした場合には、図12に示すように、通常時に比べてエンジン回転数を迅速かつ顕著に上昇させ得ることが実験データにより確認された。
【0067】
なお、第2行程で吸気行程となる気筒(No.4気筒)の空燃比を、理論空燃比(λ=1)またはそれよりもリッチ(λ≦1)となるように設定した上記実施形態に代え、上記No.4気筒の空燃比が理論空燃比よりもリーンとなるように燃料の噴射量を制御するように構成してもよい。このように構成した場合には、例えば図13に示すように、エンジンの停止時に排気行程にあるNo.4気筒の吸気行程(第2行程)おいて、燃料噴射F22および点火S22を行うことにより初回の燃焼を行った後に、このNo.4気筒内に残存する多くの空気を利用して第2回目の燃焼を行わせることができる。すなわち、上記No.4気筒が圧縮行程となった第3行程で、排気弁を開放することなく閉止状態に維持しつつ、上記No.4気筒に燃料噴射F4を行うとともに、その後の圧縮上死点Tの近傍等において点火S4を行うことにより、上記第2行程における初回の燃焼と、第4行程における第2回目の燃焼(本来の燃焼)とを連続して行うことが可能であり、これによってエンジンの始動時に回転数をスムーズに立ち上げることができる。
【0068】
また、上記実施形態では、図10および図12に示すように、上記第2行程で圧縮行程にあるNo.3気筒に、この圧縮行程(第2行程)で、燃料噴射F3を行うとともに、その圧縮上死点Tまたはこれに続く膨張行程(第3行程)で点火S3を行うように構成したため、エンジンの再始動時に、第2行程で圧縮行程となる上記No.3気筒に噴射された燃料が気化することにより、このNo.気筒の圧縮上死点Tまたはその後の膨張行程において気筒内の温度および圧力が充分に低下した状態で点火が適正に行われることになる。このようにNo.3気筒に噴射された燃料が気化して気筒内の温度が低下するのに応じ、No.3気筒内の圧力を低減することができるため、上記圧縮行程(第2行程)でピストンが上昇する際に大きな抵抗が作用するのを防止し、エンジン回転数をスムーズに上昇させることができる。しかも、上記No.3気筒内の温度を低下させることにより、混合気が早期に圧縮自己着火するのを効果的に抑制できるため、この圧縮自己着火に起因した逆トルクの発生を防止してエンジンをスムーズに再始動させることができるという利点がある。
【0069】
また、上記実施形態に示すように、エンジン停止時に膨張行程にある気筒のピストン4の停止位置を検出するピストン位置検出手段をECU30に設け、このピストン位置検出手段により検出された上記ピストン4の停止位置に応じた燃焼制御を実行するように構成したため、上記第1行程および第2行程における燃焼によってエンジンの再始動を行い得る範囲A内において、上記ピストン4の停止位置が相対的に下死点側または上死点側のいずれにある場合においても、エンジンを適正に再始動させることができる。
【0070】
具体的には、図10に示す例において、エンジン停止時に膨張行程にあるNo.2気筒のピストン停止位置が相対的に下死点側(図9の範囲A2内)にあり、第1行程で上記No.2気筒の燃焼を行っても、その燃焼エネルギーをピストン4に作用させるための行程が短すぎるために、エンジン回転数を充分に上昇させることが困難であるとともに、エンジンの停止時に圧縮行程にあるNo.1気筒内の空気量が少なく、このNo.1気筒を第2行程で燃焼させることにより得られる燃焼エネルギーが少ないために、上記第1行程から第2行程に移行させることができても、第2行程以降の行程に移動させることが困難な状態にある場合には、第2行程で吸気行程となるNo.4気筒と、膨張行程となるNo.1気筒との両方に燃料を噴射してそれぞれ点火することにより、上記第2行程から第3行程に移行させるための充分な燃焼エネルギーを生じさせてエンジンを適正に始動させることができる。
【0071】
一方、エンジン停止時に膨張行程にある気筒のピストンの停止位置が相対的に上死点側(図9の範囲A1内)にあり、図10に示す例において、第1行程で上記No.2気筒の燃焼を行うことにより、その燃焼エネルギーをピストン4に対して充分に作用させ得る状態にあるとともに、エンジンの停止時に圧縮行程にあるNo.1気筒内に所定量の空気が存在し、このNo.1気筒を第2行程で燃焼させることにより充分な燃焼エネルギーが得られる状態にある場合には、第2行程で膨張行程にあるNo.1気筒のみに燃料を噴射して点火するだけで、エンジン回転数を速やかに上昇させてエンジンを適正に始動させることができるとともに、No.4気筒の燃焼を、本来の燃焼時期である膨張行程(第4行程)で行わせることにより、エンジンの始動時に回転数をスムーズに上昇させることができる。
【0072】
さらに、上記実施形態では、ピストン位置検出手段により検出された上記ピストンの停止位置が、上記第1行程および第2行程における燃焼によってエンジンの再始動を行い得る範囲(A)外にある場合、つまりエンジンの停止時に膨張行程にある気筒のピストン停止位置が上記範囲Aよりも上死点側にあって、上記気筒内の空気量が少なすぎる状態にある場合、または上記気筒のピストン停止位置が上記範囲Aよりも下死点側にあって、第1行程で上記気筒の燃焼により発生した燃焼エネルギーをピストン4に作用させる期間が短すぎる状態にある場合に、スタータ31を作動させてエンジンを始動させるように構成したため、エンジンを迅速かつ確実に再始動させることができるという利点がある。
【0073】
なお、上記ピストン位置検出手段により検出された上記ピストンの停止位置が、上記第1行程および第2行程における燃焼によってエンジンの再始動を行い得る領域外、つまり図9に示す範囲A外にあるとともに、この範囲Aに近い位置で、その上死点TDC側(図9の破線で示す範囲A3内)にある場合に、上記第1行程で、吸気行程にある気筒の吸気弁を閉止するとともに、この吸気行程にある気筒と、膨張行程にある気筒との両方にそれぞれ燃料を噴射して点火するように構成してもよい。
【0074】
すなわち、エンジン停止時の膨張行程にある気筒のピストン停止位置が上記範囲A外(上記第1行程および第2行程における燃焼によってエンジンの再始動を行い得る領域外)にある状態で、エンジンの再始動条件が成立した判定された時点で、図14に示すように、上記範囲Aに近い位置で上死点側の範囲A3内あるか否かを判定し(ステップS61)、NOと判定された場合には、上記スタータ31を使用した第3再始動モードR3の制御を実行する。
【0075】
一方、上記ステップS61でYESと判定されてピストン停止位置が上記範囲A3内にある状態で、エンジンの再始動条件が成立したことが確認された場合には、図15に示すように、エンジンの停止時に圧縮行程にあるNo.1気筒と、膨張行程にあるNo.2気筒および吸気行程にあるNo.3気筒との空気量をそれぞれ算出した後(ステップS62)、上記No.3気筒の吸気弁を閉止するとともに、上記ステップS62で算出されたNo.2気筒およびNo.3内の空気量に基づき、この両気筒内に燃料を噴射することにより生成される混合気の空燃比が所定値(例えばλ=1の近傍またはλ≦1のリッチ)となるように算出された量の燃料噴射F11,12を上記両気筒に実行する(ステップS63)。次いで、エンジンの再始動開始時点tから何れかの気筒が上死点を迎えるまでの間の第1行程において、上記両気筒に噴射された燃料が気化するのに要する所定時間が経過した時点で、この両気筒に対して点火S11,S12を実行する(ステップS64)。
【0076】
また、上記ステップS62で算出されたエンジンの停止時に圧縮行程にあるNo.1気筒の空気量に基づき、このNo.1筒内に燃料を噴射することにより生成される混合気の空燃比が所定値(例えばλ=1の近傍またはλ≦1のリッチ)となるように算出された量の燃料噴射F2を、停止時に圧縮行程にある上記No.1気筒に対して実行するとともに(ステップS65)、エンジンの停止時に吸気行程にあるNo.3気筒のピストンが下死点Tに至る前に、このNo.3気筒の排気弁を開放する(ステップS66)。
【0077】
そして、エンジンの停止時に圧縮行程にある上記No.1気筒のピストンが上死点Tを超えた所定の時点、つまり第2行程の間に、上記No.1気筒に対して点火S2を実行する(ステップS67)。次いで、エンジンの停止時に吸気行程にある上記No.3気筒の排気弁が本来の閉止タイミングとなった時点で、この排気弁を閉止した後(ステップS68)、通常の制御状態に移行する(ステップS69)。
【0078】
上記のようにエンジン停止時に膨張行程にある気筒のピストン停止位置が上死点側にやや偏った上記範囲A3内にある場合には、その気筒内の空気量が少なく、第1行程で上記膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火することにより発生する燃焼エネルギーが小さいので、上記第1行程の燃焼によりエンジン回転数を充分に上昇させることができず、第2行程に移行する前にエンジンが停止し易く、あるいは第2行程に移行して吸気行程にある気筒と膨張行程にある気筒との両方に燃料を噴射して点火を行ってもエンジンを適正に再始動させることが困難な傾向がある。
【0079】
このため、上記実施形態示すように、ピストンの停止位置が、上記第1行程および第2行程における燃焼によってエンジンの再始動を行い得る範囲A外にあるとともに、この範囲Aよりも上死点T側でこの範囲Aに近い位置(範囲A3内)にある場合に、第1行程で実質的な膨張行程にある両気筒、つまり図15に示す例において、ピストン4の下降に応じて燃焼室5内の容積が拡大する方向にある膨張行程のNo.2気筒と吸気行程のNo.3気筒との両方にそれぞれ燃料を噴射して点火を行うことにより、上記第1行程で充分な燃焼エネルギーを発生させ得るように構成することが望ましい。
【0080】
なお、図14および図15に示す上記実施形態では、第1行程で吸気行程にあるNo.3気筒の吸気弁を閉止した状態で燃焼を行った後、その膨張行程(第3行程)で本来の燃焼を行うことなく、排気弁の開放タイミングとなった時点で排気弁を開放して通常の制御状態に移行するように構成しているが、上記第1行程で吸気行程にあるNo.3気筒の燃焼時における空燃比をリーンに設定し、上記第3行程の膨張行程に至る前に排気弁を閉止状態として燃料噴射を行うことにより、上記第1行程および第3行程で連続して燃焼させるように構成してもよい。このように構成した場合には、エンジンの始動時に回転数をスムーズに上昇させることができるという利点がある。
【0081】
また、エンジン停止時に膨張行程にある気筒のピストン停止位置が上死点側に偏った上記範囲A3内にある場合にのみ、第1行程で実質的な膨張行程のNo.2気筒とNo.3気筒との両方にそれぞれ燃料を噴射して点火するように構成した上記実施形態に代え、上記ピストン停止位置が、図9に示す所定範囲A内でその中間位置よりもBDC寄りの範囲A2内にある場合にも、上記第1行程で実質的な膨張行程にあるNo.2気筒とNo.3気筒との両方にそれぞれ燃料を噴射して点火する再始動制御を実行し、あるいは上記所定範囲Aおよび上記範囲A3の全領域で、第1行程で実質的な膨張行程にあるNo.2気筒とNo.3気筒との両方にそれぞれ燃料を噴射して点火するように構成してもよい。
【0082】
また、エンジン停止条件が成立したときに、エンジンを自動的に停止させるとともに、エンジンの自動停止状態で再始動条件が成立したときに、実質的な膨張行程にある気筒に対して燃料を噴射して点火することにより、エンジンを再始動させるエンジンの始動装置において、エンジンの再始動開始時点から何れかの気筒が上死点を迎えるまでの間における第1行程およびこの第1行程から次の気筒が上死点を迎えるまでの間における第2行程で、実質的な膨張行程にある気筒に燃料をそれぞれ噴射して点火するとともに、上記第2行程で圧縮行程にある気筒に、この圧縮行程で燃料を噴射するとともに、この気筒に噴射された燃料の点火時期を、この気筒の圧縮上死点またはこれに続く膨張行程の間に設定するように構成してもよい。
【0083】
上記構成によれば、エンジンの再始動時に、例えば図16に示すように、第1行程で膨張行程にあるNo.2気筒に対する燃焼噴射F1および点火S1と、第2行程で膨張気筒となるNo.1気筒に対する燃料噴射F2および点火S2とが連続して行われるとともに、上記第2行程で圧縮行程にあるNo.3気筒に燃料噴射F3が行われるため、この燃料が気化することにより、ピストンの上昇時に作用する抵抗が低減させた状態で、その圧縮上死点Tまたはこれに続く膨張行程(第3行程)の間に点火F3を行うことによってエンジンを適正に始動させることができる。しかも、上記燃料が気化するのに応じてNo.3気筒内の温度が充分に低下するため、上記No.3気筒が圧縮自己着火して逆トルクが発生するのを効果的に防止することが可能となり、エンジン回転数を速やかに上昇させることができるという利点がある。なお、図16に示す実施形態においても、第2行程で、膨張行程にあるNo.1気筒と、吸気行程にあるNo.4気筒との両方に燃料噴射F11,F12および点火S11,S12を行うように構成してもよい(図10参照)。
【0084】
また、上記のようにエンジンの自動停止条件が成立した時点で、スロットル弁17を所定開度に開き、その後にエンジン回転数が予め設定された所定回転数まで低下した時点でスロットル弁17を閉じるように制御することにより、気筒内の空気の圧力を利用してエンジン停止位置が好ましい範囲内となる確率を高めることができる。すなわち、上記自動停止条件の成立時点から所定時間に亘りスロットル弁17が所定開度に開かれることにより、多少の時間的遅れをもって一時的に吸気負圧が減少(吸気量が増大)し、その後に吸気圧負圧が増大(吸気量が減少)するが、一時的に吸気負圧が減少する期間が、エンジン停止時に膨張行程となる気筒の吸気行程の期間に概ね対応するように予め上記所定回転数等が設定されている。これにより、エンジンの自動停止条件が成立した時点で、直ちにスロットル弁17が閉じられる場合と比べ、エンジン停止前に各気筒に吸入される空気量が増加し、そのうちでも特にエンジン停止時に膨張行程となる気筒に流入する吸気量が多くなる。
【0085】
そして、エンジン停止に至るときには、圧縮行程にある気筒ではピストン4が上死点に近づくにつれて当該気筒内の空気が圧縮されてピストン4を押し返す方向に圧力が作用し、これによりエンジンが逆転して圧縮行程にある気筒のピストン4が下死点側に押し返されると、膨張行程にある気筒のピストン4が上死点側に移動し、それに伴い当該気筒内の空気が圧縮され、その圧力で膨張行程にある気筒のピストン4が下死点側に押し返される。このようにしてピストン4がある程度振動してから停止し、この際、圧縮行程にある気筒および膨張行程にある気筒においてそれぞれピストン4が上死点に近いほどこれを押し戻す力が大きいため、ピストン4の停止位置は行程中間部に近い位置となる場合が多い。
【0086】
特に、上記のようにエンジン停止前に吸気量が増加されることにより、上死点に近づいたときにピストン4を押し戻す力が増大するので、ピストン4が行程中間部に近い所定範囲内に停止する確率が高くなる。さらに、上記のようなスロットル弁17の制御により膨張行程にある気筒の吸気量が圧縮行程にある気筒と比べて多くなるようにすれば、膨張行程にある気筒においてピストン4が行程中間部に近い範囲のうちでも多少下死点寄りに停止することが多くなる。
【0087】
なお、燃料カットからエンジンが完全に停止するまでに慣性でエンジンが数回転するため、ある程度既燃ガスは排出され、膨張行程といえども筒内はある程度新気で満たされた状態となる。また、エンジンが停止すると圧縮行程気筒でも圧力は直ぐにリークする。したがって、エンジン停止後は、いずれの気筒も筒内には略大気圧となった比較的多くの新気が存在する状態となる。
【0088】
ところで、上記実施形態では、前述のようにエンジン停止の際、燃料供給停止後に所定期間だけスロットル弁17を所定の開状態として吸気量を増加させることにより、エンジン停止時に圧縮行程となる気筒および膨張行程となる気筒においてピストンの上死点方向への移動に対する抵抗を大きくし、かつ上記膨張行程気筒の吸気量をより多くしているため、図17に示すように、エンジン停止時の膨張行程におけるピストン位置は、その行程の中間部付近の所定範囲A内となることが殆どであり、そのうちでも比較的に下死点BOC側の範囲A2内となることが多く、このように停止位置が調整されることでエンジンの再始動が効果的に行われる。
【0089】
すなわち、エンジンの停止時に膨張行程にある気筒のピストン停止位置が上記範囲Aよりも上死点TDC側(圧縮行程気筒の下死点側)に近づきすぎた場合には、上記膨張行程にある気筒の空気量が少なくなるので、この気筒での燃焼により得られるトルクが少なくなり、また、上記範囲Aよりも下死点BDC側(圧縮行程気筒の上死点側)に近づきすぎた場合には、エンジンの停止時に圧縮行程にある気筒の空気量が少なくなるので第2行程の燃焼エネルギーが充分に得られなくなる。これに対し、ピストン停止位置が上記範囲A内にあれば、エンジンの停止時に膨張行程にある気筒での燃焼が良好に行われるとともに、その燃焼エネルギーを充分にピストンに作用させることができ、特にピストン停止位置が上記範囲A内で下死点BDC寄りの範囲A2にあれば上記膨張行程にある気筒の空気量を充分に多く確保でき、この気筒での燃焼エネルギーを増大させ、エンジンの始動性を高めることができる。
【0090】
【発明の効果】
以上のように本発明のエンジンの始動装置によると、エンジンの始動時には、まず実質的な膨張行程つまりピストンの下降に応じて燃焼室内の容積が拡大する方向にある膨張行程または吸気行程にある気筒の少なくとも一方に、燃料が噴射されて第1行程の燃焼が行われることにより、エンジンの正転方向に駆動され、この第1行程から次の気筒が上死点を迎えるまでの間における第2行程で、吸気行程にある気筒と膨張行程にある気筒との両方を燃焼させるようにしたため、上記第1行程における燃焼状態の如何に拘わらず、上記第2行程で充分な燃焼エネルギーを得ることができる。したがって、上記第1行程の燃焼に続く第2行程への移行時にエンジン回転数が低下してエンジンが停止状態となるという事態の発生を効果的に防止し、エンジン回転数を速やかに上昇させてエンジンを適正に始動させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による始動装置を備えたエンジンの概略断面図である。
【図2】上記エンジンの概略平面図である。
【図3】制御手段によるエンジンの停止および再始動時の制御動作を示すフローチャートである。
【図4】エンジン停止時のピストン位置を検出するための処理を示すフローチャートである。
【図5】第1再始動制御モードを示すフローチャートである。
【図6】第2再始動制御モードを示すフローチャートである。
【図7】第3再始動制御モードを示すフローチャートである。
【図8】2つのクランク角センサからのクランク角信号を示すものであって、(a)はエンジン正転時の信号、(b)はエンジン逆転時の信号である。
【図9】エンジン停止時のピストン位置に応じた再始動制御モード選択のための範囲の設定を示す説明図である。
【図10】エンジン再始動時の各気筒のサイクルおよび燃焼動作を示す説明図である。
【図11】バルブタイミングの制御系統を示すブロック図である。
【図12】エンジンの始動時における排気弁の開放タイミングとエンジン回転数の上昇度合いとの関係を示すグラフである。
【図13】本発明の別の実施形態における各気筒のサイクルおよび燃焼動作を示す説明図である。
【図14】本発明のさらに別の実施形態における制御動作を示すフローチャートである。
【図15】図13の実施形態における各気筒のサイクルおよび燃焼動作を示す説明図である。
【図16】本発明のさらに別の実施形態における各気筒のサイクルおよび燃焼動作を示す説明図である。
【図17】エンジン停止時のピストン位置と圧縮行程気筒および膨張行程気筒の空気量と発生頻度との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
3A〜3D 気筒
4 ピストン
7 点火プラグ
8 燃料噴射弁
17 スロットル弁(吸気量調節手段)
21,22 クランク角センサ
30 ECU(再始動制御手段)
31 スタータ
Claims (7)
- エンジンの停止条件が成立したときに、エンジンを自動的に停止させるとともに、エンジンの自動停止状態で再始動条件が成立したときに、実質的な膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火することにより、エンジンを再始動させるように構成されたエンジンの始動装置において、エンジンの再始動開始時点から何れかの気筒が上死点を迎えるまでの間における第1行程で、上記実質的な膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火を行い、かつ上記第1行程から次の気筒が上死点を迎えるまでの間における第2行程で、吸気行程にある気筒の吸気弁を閉止するとともに、この第2行程で吸気行程にある気筒と、膨張行程にある他の気筒との両方で燃焼が行われるように、それぞれ所定のタイミングで燃料を噴射して点火するように制御する再始動制御手段を備え、エンジンの自動停止時に上記第2行程で吸気行程となる気筒の排気弁が第1行程の途中で閉止状態となるように上記排気弁の閉止時期を制御することを特徴とするエンジンの始動装置。
- エンジンの停止条件が成立したときに、エンジンを自動的に停止させるとともに、エンジンの自動停止状態で再始動条件が成立したときに、実質的な膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火することにより、エンジンを再始動させるように構成されたエンジンの始動装置において、エンジンの再始動開始時点から何れかの気筒が上死点を迎えるまでの間における第1行程で、上記実質的な膨張行程にある気筒に燃料を噴射して点火を行い、かつ上記第1行程から次の気筒が上死点を迎えるまでの間における第2行程で、吸気行程にある気筒の吸気弁を閉止するとともに、この第2行程で吸気行程にある気筒と、膨張行程にある他の気筒との両方で燃焼が行われるように、それぞれ所定のタイミングで燃料を噴射して点火するように制御する再始動制御手段を備え、エンジンの再始動時に上記第2行程で膨張行程となる気筒の空燃比が理論空燃比よりもリッチとなるように上記気筒に対する燃料の噴射量を制御することを特徴とするエンジンの始動装置。
- 上記第2行程で吸気行程となる気筒の空燃比が理論空燃比よりもリーンとなるように上記気筒に対する燃料の噴射量を制御することを特徴とする請求項2に記載のエンジンの始動装置。
- 上記第2行程で圧縮行程にある気筒に、この圧縮行程で燃料を噴射するとともに、この気筒に噴射された燃料を、この気筒の圧縮上死点またはこれに続く膨張行程で点火することを特徴とする請求項1〜3の何れかの1項に記載のエンジンの始動装置。
- エンジンの停止時に膨張行程にある気筒のピストンの停止位置を検出するピストン位置検出手段を備え、このピストン位置検出手段により検出された上記ピストンの停止位置が、上記第1行程および第2行程における燃焼によってエンジンの再始動を行い得る範囲内で相対的に下死点側にある場合には、第2行程で吸気行程にある気筒と膨張行程にある気筒との両方で燃焼を行わせ、ピストン停止位置が上記範囲内で相対的に上死点側にある場合には、第2行程で膨張行程にある気筒のみで燃焼が行われるように、それぞれ所定のタイミングで燃料を噴射して点火することを特徴とする請求項1〜4の何れかの1項に記載のエンジンの始動装置。
- エンジンの停止時に膨張行程にある気筒のピストンの停止位置を検出するピストン位置検出手段を備え、このピストン位置検出手段により検出された上記ピストンの停止位置が、上記第1行程および第2行程における燃焼によってエンジンの再始動を行い得る範囲外にある場合には、スタータを作動させてエンジンを始動させることを特徴とする請求項1〜5の何れかの1項に記載のエンジンの始動装置。
- エンジンの停止時に膨張行程にある気筒のピストンの停止位置を検出するピストン位置検出手段を備え、このピストン位置検出手段により検出された上記ピストンの停止位置が、上記第1行程および第2行程における燃焼によってエンジンの再始動を行い得る範囲外にあるとともに、この範囲に近い位置で上死点側にある場合には、上記第1行程で、吸気行程にある気筒の吸気弁を閉止するとともに、この吸気行程にある気筒と、膨張行程にある気筒との両方にそれぞれ燃料を噴射して点火することを特徴とする請求項1〜6の何れかの1項に記載のエンジンの始動装置。
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