JP4207621B2 - ポリウレタン樹脂組成物、およびそれを含有する印刷インキ組成物、さらにそれを用いてなるプラスチックシート被覆物とそのラミネート積層物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷インキ用樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、各種プラスチックフィルム、プラスチックシートまたは合成樹脂成形品の被覆用として特に有用な印刷インキ用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック類、とりわけ、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどのプラスチックフィルムに用いられる印刷インキ組成物としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、硝化綿、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体等のバインダーに顔料を分散させたインキが使用されていたが、近年、フィルムに対する接着性、残留溶剤、耐ブロッキング性、印刷適性等、さらには加熱殺菌等の高熱水条件下においてもフィルムとの接着性が良好であることにより、ポリウレタン樹脂もしくはポリウレタン-ウレア樹脂(以下、総称してポリウレタン樹脂と示す)が多く使用されている。フィルム用の印刷インキのバインダーにポリウレタン樹脂が用いられる例としては、特開平7-216280、特開平2-64174、特開平5-209146、特開平6-033008、特開平6-248051などが挙げられる。
【0003】
ここで、比較的良好な物性を示しかつ軟化点の低い低結晶性ポリマーポリオールとしてポリエステルポリオールが挙げられるが、得られるポリウレタン樹脂は、皮膜物性が不充分であり、さらにポリエステル特有の耐加水分解性の低さといった問題点がある。
【0004】
軟化点の高い高結晶性ポリマーポリオールを用いたポリウレタン樹脂では、強靭な皮膜物性を要求される用途に応じることができるものの、その溶解性・低温安定性から芳香族系などの優れた溶解性を持つ有機溶剤を溶媒とすることを余儀なくされる。しかし、近年の環境対応によるノントルエン化の風潮により、印刷インキに用いられる溶剤においても、芳香族系溶剤からケトン系さらにはエステル系溶剤へと、軟化点の高い高結晶性ポリマーポリオールに対して、溶解性が比較的劣る溶剤への置き換えが進められていることから、前記のような芳香族系溶剤の使用による解決手段は好ましくない。また、高結晶性のため皮膜は柔軟性がなく、ウレタン特有の伸びなどの性質がなくなってしまう。
【0005】
【特許文献1】
特開平2-64174号公報
【特許文献2】
特開平6-033008号公報
【特許文献3】
特開平6-248051号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、高結晶性ポリマーポリオールを反応して合成したポリウレタン樹脂に、ポリオール成分として2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールを導入することで、低温安定性を大幅に向上させ、さらに優れた塗膜物性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、軟化点20℃以上のポリマーポリオール(a)と、下記一般式(1)で示される構造単位で導入される2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(b)と、有機イソシアネート化合物の少なくとも3成分からなるウレタンプレポリマー、およびアミン類鎖伸長剤を用いてなり、溶媒としてのエステル系溶剤およびアルコール系溶剤から選ばれる1種以上の存在下に得られることを特徴とするポリウレタン樹脂組成物に関する。
一般式(1)
【化2】
また、本発明は、上記ポリマーポリオール (a)が、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリカーボネート、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール重合体から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする上記のポリウレタン樹脂組成物に関する。
さらに、本発明は、(b)/(a)のモル比が0.1/1〜2/1の範囲にあることを特徴とする上記ポリウレタン樹脂組成物に関する。
加えて、本発明は、上記ポリウレタン樹脂組成物を含有することを特徴とする印刷インキ組成物に関する。
加えて、本発明は、上記の印刷インキ組成物を用いてなる印刷物の印刷面に、エクストルージョンラミネート法、ドライラミネート法あるいはダイレクトラミネート法によりラミネートしてなるラミネート積層物に関する。
【0008】
本発明において、軟化点20℃以上のポリマーポリオール(a)とは、特に、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリカーボネート、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール重合体、もしくはこれらのモノマーを主成分とする共重合体から選ばれる少なくとも1種類のポリマーポリオールである。ここで分子量500〜7000程度のものを用いることが好ましい。ポリマーポリオール(a)の分子量が500未満の場合には、プラスチックとの接着性が若干低下する傾向があり、7000を超える場合には,得られる印刷インキの粘度が高くなり、印刷適性が若干低下する傾向がある。
【0009】
本発明において、樹脂の低温安定性を付与させる目的で、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(b)が必須成分として用いられる。2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(b)の添加量は、ポリマーポリオール (a)との比において、(b)/(a)のモル比が0.1/1〜2/1の範囲にあることが好ましい。
また、必要に応じて他の側鎖を有するジオールを使用することもできる。
【0010】
必要に応じて用いられるその他任意のポリオールのうち、ポリマーポリオールの具体例としては、たとえば酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体などのポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの飽和および不飽和の低分子グリコール類ならびにn-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの二塩基酸もしくはこれらの無水物を脱水縮合せしめて得られるポリエステルポリオール類;環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類などの一般にポリウレタンの製造に用いられる各種公知の高分子ポリオールが挙げられる。ポリマーポリオールの他に、以下の各種低分子ポリオールを併用することができる。すなわち、たとえばグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール等のポリオールに置換してもよい。また、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときは、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等を用いてもよい。ここで、その他任意のポリオール成分の合計量は、ポリマーポリオール(a)と重量比で1:1未満になることが望ましい。1:1未満だと、皮膜が強靭でなくなり、耐引っ掻き強度が低下することになる。
【0011】
本発明に用いられる有機イソシアネート化合物のうち、有機ジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、あるいはこれらの混合物であり、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート,テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジメリルジイソシアネートなどがある。3官能イソシアネ−トとしては、1)トリメチロ−ルプロパンのアダクト体、例えばタケネ−トD-160N(武田薬品工業(株)製)、スミジュ−ルHT(住友バイエルウレタン(株)製)、2)ビュレット体、例えばタケネ−トD-165N(武田薬品工業(株)製)、スミジュ−ルN3200(住友バイエルウレタン(株)製)、3)イソシアヌレ−ト環タイプ、例えばVESTANAT T1890(ヒュルス(株)製)等が挙げられる。3官能イソシアネ−トを使用する場合は、凝集力の向上と反応時の粘度制御の観点から水性ウレタン樹脂の固形分の0.05〜2重量%であることが特に好ましい。
【0012】
本発明に用いられる伸長剤としては、前記の低分子ポリオール類とアミン類がある。このうちアミン類鎖伸長剤としては、各種公知のアミン類を使用することができる。例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジアミンなどが挙げられる。その他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン類およびダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等もその代表例とし挙げられる。
【0013】
更には反応停止剤を用いることもできる。かかる反応停止剤としては、例えばジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類、ジエタノールアミン等のジアルカノールアミン類が挙げられる。
【0014】
本発明のポリウレタン樹脂を製造する方法については特に制限はされず、一般的なポリウレタン系樹脂の製法と同様の方法にしたがって製造すればよい。例えば、純粋なポリウレタン樹脂の場合、ポリオールおよびイソシアネート化合物を、イソシアネート基/水酸基の官能基数の比が 0.9/1〜0.99/1 、1.01/1〜1.1/1の条件下でウレタン化反応させる。ポリウレタン-ウレア樹脂の場合、ポリオールおよびイソシアネート化合物を、イソシアネート基/水酸基の官能基数の比が 1.3/1〜2.0/1 の条件下でウレタン化反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(好ましくは遊離イソシアネート含量 0.5〜10重量%)を調整し、次いでこれらを適当な溶媒中で鎖伸長剤および必要に応じて反応停止剤と反応させるが、前記化合物を一括で反応させることもできる。
【0015】
前記製造法において使用される溶剤としては、通常、印刷インキ用の溶剤として知られている、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、あるいは水が挙げられ、これらを単独または2種以上の混合物で用いるが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤を含有しないことが好ましい。水性、水溶性の印刷インキ用のポリウレタン樹脂を得る場合、先述の合成反応は溶剤中、例えばアセトンで行い、これをストリッピングにより除去し水和していく方法と、バルクで合成反応を行い水和していく方法がある。
【0016】
以上の様にして得られたポリウレタン樹脂の分子量は5000〜100000の範囲内とするのが好適である。分子量が5000に満たない場合には、これをバインダーとして用いられた印刷インキの乾燥性、耐ブロッキング性、皮膜強度および耐油性などが劣り、100000を越える場合にはポリウレタン樹脂溶液の粘度が上昇したり、印刷インキの光沢が低下する傾向にある。ポリウレタン樹脂の樹脂固型分濃度は特に制限されず、印刷時の作業性などを考慮して適宜決定される。実用上は、樹脂固型分濃度は15〜60重量%とし、粘度は50〜100000cps(25℃)とするのが好適である。
【0017】
本発明のインキに必要とされる機能を有するために配合される着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。藍インキには銅フタロシアニン、透明黄インキにはコスト・耐光性の点からC. I. Pigment No Yellow83を用いることが好ましい。
【0018】
無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。白インキには酸化チタン、墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウム、パールインキにはマイカ(雲母)を使用することがコストや着色力の点から好ましい。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
【0019】
着色剤はインキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキの総重量に対して1〜50重量%の割合で含まれることが好ましい。また、着色剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0020】
顔料を有機溶剤に安定に分散させるには、前記樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総重量に対して0.05重量%以上、ラミネート適性の観点から5重量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2重量%の範囲である。
【0021】
本発明のインキに必要に応じて併用される樹脂の例としては、本発明以外のポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。併用樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。併用樹脂の含有量は、インキの総重量に対して1〜25重量%が好ましく、更に好ましくは2〜15重量%である。
【0022】
本発明のインキは、樹脂、着色剤などを有機溶剤中に溶解および/または分散することにより製造することができる。具体的には、顔料を本発明のポリウレタン樹脂や前記併用樹脂、および前記分散剤により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
【0023】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
【0024】
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0025】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【0026】
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばポリウレタン樹脂、着色剤、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0027】
本発明のインキの色相としては、使用する着色剤の種類に応じて、プロセス基本色として黄、紅、藍、墨、白の5色があり、プロセスガマット外色として赤(橙)、草(緑)、紫の3色がある。更に透明黄、牡丹、朱、茶、金、銀、パール、色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)などがベース色として準備される。各色相のベースインキは、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0028】
更に、この印刷物の印刷面にイミン系、イソシアネート系、ポリブタジエン系、チタン系等の各種アンカーコート剤を介して、溶融ポリエチレン樹脂を積層する通常のエクストルージョンラミネート(押し出しラミネート)法、印刷面にウレタン系等の接着剤を塗工し、プラスチックフィルムを積層するドライラミネート法、印刷面に直接溶融ポリプロピレンを圧着して積層するダイレクトラミネート法等、公知のラミネート工程により、本発明のラミネート積層物が得られる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部および%は、重量部および重量%を表わす。
【0030】
【実施例1】
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、分子量2000のポリテトラメチレンジオール(a1)246.1部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(b1)0.9860部およびイソホロンジイソシアネート45.95部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン6.469部、ジ-n-ブチルアミン0.5009部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液589.1部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度2500cps、重量平均分子量(以下、Mwという)100000のポリウレタン樹脂溶液(A)を得た。この時の2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールと軟化点20℃以上のポリマーポリオールのモル比は、(b1)/(a1)=0.05である。
【0031】
【実施例2】
実施例1と同様の反応装置に、分子量2000のポリテトラメチレンジオール(a2)243.3部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(b2)1.949部およびイソホロンジイソシアネート47.58部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン6.699部、ジ-n-ブチルアミン0.5187部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液592.8部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度2200cps、重量平均分子量(以下、Mwという)90000のポリウレタン樹脂溶液(B)を得た。この時の2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールと軟化点20℃以上のポリマーポリオールのモル比は、(b2)/(a2)=0.1である。
【0032】
【実施例3】
実施例1と同様の反応装置に、分子量2000のポリテトラメチレンジオール201.4部(a3)、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール16.14部(b3)およびイソホロンジイソシアネート71.62部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン10.08部、ジ-n-ブチルアミン0.7808部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液589.1部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度2000cps、Mw80000のポリウレタン樹脂溶液(C)を得た。この時の2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールと軟化点20℃以上のポリマーポリオールのモル比は、(b3)/(a3)=1.0である。
【0033】
【実施例4】
実施例1と同様の反応装置に、分子量2000のポリテトラメチレンジオール(a4)169.0部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(b4)27.91部およびイソホロンジイソシアネート90.18部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン12.70部、ジ-n-ブチルアミン0.9831部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液586.3部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度1600cps、Mw70000のポリウレタン樹脂溶液(D)を得た。 この時の(b4)/(a4)=2.0である。
【0034】
【実施例5】
実施例1と同様の反応装置に、分子量2000のポリテトラメチレンジオール(a5)156.5部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(b5)31.35部およびイソホロンジイソシアネート97.40部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン13.71部、ジ-n-ブチルアミン1.062部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液585.2部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度1200cps、Mw60000のポリウレタン樹脂溶液(E)を得た。 この時の(b5)/(a5)=2.5である。
【0035】
【実施例6】
実施例1と同様の反応装置に、分子量2000のポリ-ε-カプロラクトンジオール(a6)201.4部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(b6)16.14部およびイソホロンジイソシアネート71.62部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン10.08部、ジ-n-ブチルアミン0.7808部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液589.1部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度2000cps、Mw80000のポリウレタン樹脂溶液(F)を得た。この時の(b6)/(a6)=1.0である。
【0036】
【実施例7】
実施例1と同様の反応装置に、分子量2000のポリ-ε-カプロラクトンジオール(a7)100.7部、分子量が2000であるカルボン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールのポリエステルジオール100.7部、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(b7)16.14部およびイソホロンジイソシアネート71.62部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン10.08部、ジ-n-ブチルアミン0.7808部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液589.1部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度1600cps、Mw80000のポリウレタン樹脂溶液(G)を得た。この時の(b7)/(a7)=1.0である。
【0037】
【比較例1】
実施例1と同様の反応装置に、分子量2000のポリテトラメチレンジオール249.0部、イソホロンジイソシアネート44.28部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン6.234部、ジ-n-ブチルアミン0.4827部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液593.3部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度2200cps、Mw100000のポリウレタン樹脂溶液(H)を得た。
【0038】
【比較例2】
実施例1と同様の反応装置に、分子量2000のポリテトラメチレンジオール205.2部、ネオペンチルグリコール10.69部およびイソホロンジイソシアネート73.00部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン10.28部、ジ-n-ブチルアミン0.7958部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液588.9部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度1700cps、Mw72000のポリウレタン樹脂溶液(I)を得た。
【0039】
【比較例3】
実施例1と同様の反応装置に、分子量2000のポリテトラメチレンジオール206.2部、1,4-ブタンジオール9.281部およびイソホロンジイソシアネート73.35部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン10.33部、ジ-n-ブチルアミン0.7996部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液588.9部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度1800cps、Mw75000のポリウレタン樹脂溶液(J)を得た。
【0040】
【比較例4】
実施例1と同様の反応装置に、分子量2000のポリテトラメチレンジオール202.3部、1,5-オクタンジオール14.79部およびイソホロンジイソシアネート71.96部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン10.13部、ジ-n-ブチルアミン0.7845部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液589.1部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度2200cps、Mw80000のポリウレタン樹脂溶液(K)を得た。
【0041】
【比較例5】
実施例1と同様の反応装置に、分子量2000のポリ-ε-カプロラクトンジオール249.0部、イソホロンジイソシアネート44.28部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン6.234部、ジ-n-ブチルアミン0.4827部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液593.3部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度1800cps、Mw100000のポリウレタン樹脂溶液(L)を得た。
【0042】
【比較例6】
実施例1と同様の反応装置に、分子量が2000であるカルボン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールのポリエステルジオール249.0部、イソホロンジイソシアネート44.28部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン6.234部、ジ-n-ブチルアミン0.4827部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液593.3部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度2000cps、Mw100000のポリウレタン樹脂溶液(M)を得た。
【0043】
【比較例7】
実施例1と同様の反応装置に、分子量2000のポリプロピレングリコール249.0部、イソホロンジイソシアネート44.28部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させ、これに酢酸エチル300部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いでイソホロンジアミン6.234部、ジ-n-ブチルアミン0.4827部、酢酸エチル190部およびイソプロピルアルコール210部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液593.3部を添加し、攪拌下に70℃で3時間反応させ、固形分30%、25℃における粘度1200cps、Mw80000のポリウレタン樹脂溶液(N)を得た。
【0044】
(評価方法)(低温安定性)ポリウレタン樹脂溶液は、生産効率上、低温での流動性が必要とされる。得られたポリウレタン樹脂溶液(A-G)を50gを70gガラス製サンプル瓶に入れ、-5℃の恒温槽にて12時間放置後、低温安定性を次の基準に従って評価した。
5:外観は透明のままで、流動性が有る。
4:やや不透明になる
3:白濁し、流動性が低下する。
2:分離、沈殿する。
1:固化、及びゲル化する。
【0045】
(樹脂皮膜の伸び率)フィルム上の塗工される場合、樹脂皮膜には柔軟性が要求される。得られたポリウレタン樹脂溶液(A)40gを200cm2の型に流し込み乾燥させ、均一な厚みの皮膜を作製した。この乾燥皮膜から幅1cmの試験片を切り取り、2cmの間隔でマーキングを行い、毎分20cmの速度で引っ張り、破断した時のマーキング間の距離から、伸び率を算出した。
【0046】
(接着性(テープ接着試験))得られたポリウレタン樹脂溶液(A)40部、酸化チタン(ルチル型)30部、酢酸エチル21部およびイソプロピルアルコール9部の混合物を練肉し白色印刷インキ組成物を作製した。得られた印刷インキ組成物の粘度を酢酸エチルおよびイソプロピルアルコールの混合溶剤(重量比70:30)で調整し、版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機により2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)に印刷して40℃〜50℃で乾燥し、印刷物を得た。この印刷物について、印刷直後と12時間後に、印刷面にセロハンテープを貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷皮膜の外観の状態を、次の基準に従って目視判定した。
5:印刷皮膜が全く剥がれない。
4:印刷皮膜が若干剥がれる。。
3:印刷皮膜が80%以上剥がれない。
2:印刷皮膜が50%以上剥がれない。
1:印刷皮膜が全部剥がれる。
【0047】
(耐ブロッキング性)前記におけるOPPへの印刷と同様にコロナ処理ポリエステル(PET)フィルムへ印刷を行い、この試験片の印刷面をPETフィルムのコロナ処理面と重ね合わせ、40℃、80%RHにて、2kg/cm2の荷重をかけて15時間放置し、2枚のフィルムを剥離時のブロッキングの程度を、下記の基準に従って評価した。
5:抵抗が無く容易に剥離可能である。
4:剥離後、外観異常なし。
3:剥離後、一部の印刷面に損傷あり。
2:剥離後、30%程度インキ取られをする。
1:剥離後、全面インキ取られをする。
【0048】
(耐引っ掻き強度)前記におけるOPPへの印刷物を実験台上に置き、爪でやや力をいれて横へ引っ掻き、インキ皮膜に生じた度合いを、下記の基準に従って評価した。
5:傷を生じない。
4:わずかに傷を生じる。
3:傷を生じる。
2:1と3の中間程度の引っ掻き強度である。
1:非常に弱く、爪を縦方向に引っ掻いても剥がれる。
一連の評価結果を、表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】
本発明が提供するポリウレタン樹脂、若しくはそれを用いてなる印刷インキ、印刷インキ用バインダーは、優れた低温安定性を示す。さらに、高結晶性のポリマーポリオールを用いることでの強靭さに加え、弾力を併せ持つ塗膜物性を持たせることができる。
Claims (5)
- 軟化点20℃以上のポリマーポリオール(a)と、下記一般式(1)で示される構造単位で導入される2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(b)と、有機イソシアネート化合物の少なくとも3成分からなるウレタンプレポリマー、およびアミン類鎖伸長剤を用いてなり、溶媒としてのエステル系溶剤およびアルコール系溶剤から選ばれる1種以上の存在下に得られることを特徴とするポリウレタン樹脂組成物。
一般式(1)
- (a)が、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリカーボネート、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール重合体から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン樹脂組成物。
- (b)/(a)のモル比が0.1/1〜2/1の範囲にあることを特徴とする請求項1または2記載のポリウレタン樹脂組成物。
- 請求項1〜3いずれか記載のポリウレタン樹脂組成物を含有することを特徴とする印刷インキ組成物。
- 請求項4の印刷インキ組成物を用いてなる印刷物の印刷面に、エクストルージョンラミネート法、ドライラミネート法あるいはダイレクトラミネート法によりラミネートしてなるラミネート積層物。
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