JP4206133B2 - 乳頭腫ウイルスのスクリーニングの改良またはそれに関する改良 - Google Patents
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Description
本発明は、子宮頸の悪性腫瘍につながる可能性のある前駆病変(precursor lesion)のスクリーニング方法、HPV感染の検出および型判別方法、並びに前記方法に使用する試薬に関する。
発明の背景
乳頭腫ウイルス(PV)は、感染部位および関連するHPV(ヒト乳頭腫ウイルス)の型によって重篤度は異なるが、ヒトの上皮性腫瘍を引き起こすものである(Laimins,1993;Villiers de,1994)。HPV1またはHPV63(Egawaら,1993a;Egawaら,1993b)等の危険性の低い型は、悪性腫瘍へはまず進行することのない良性の皮膚イボを引き起こし、一方、HPV16およびHPV31等の危険性の高いウイルスは、粘膜部位に扁平イボを引き起こし、悪性度の高い頸部上皮内腫瘍新生(CIN)や癌と関連する(Schneider,1994)。HPV誘発腫瘍の形成は、上皮基底細胞の感染と、細胞増殖を刺激するためにウイルス性の初期タンパク質の発現を必要とすると考えられる。最終的に感染性ビリオンの産生に至るウイルス生活環の後期は、感染細胞が分化した表皮上層を移動するのに伴ってのみ開始される。HPV後期遺伝子の発現に影響を及ぼすウイルスおよび細胞の事象は、in vitroでの増殖性感染(productive infection)を模倣する便利なシステムが最近までなかったため、特性決定されていなかった(Laimins,1993)。
自然に発生したイボの研究より、ウイルスが3つの後期タンパク質、即ち、L1およびL2(ビリオン外被タンパク質;Doorbarら,1987)並びにE1^E4(機能が未知の非構造性後期タンパク質;Doorbarら,1986)をコードすることが判明した。HPV1誘発イボでは、E1^E4タンパク質が下部有棘層の細胞中で最初に発現され、特有の細胞質封入体および核内封入体へ組み立てられる。最終分化(terminal differentiation)の際には、転写後にリン酸化(Grandら,1989)およびN末端からの配列除去(Doorbarら,1988;Robertsら,1994)によって修飾される。危険性の高いウイルスのE1^E4タンパク質はあまり特性決定されていない。理由は、HPV16誘発病変には増殖性感染細胞がごくわずかしか含まれておらず、低レベルのE4しか含まれていないと思われていたためである(Doorbarら,1996b;Crumら,1990)。HPV16E1^E4に対する単一Mab(TVG 402)を使ってタンパク質が細胞質に位置することが確認されているが、パラフィン包埋で保存された材料については充分には研究されていないと報告されている(Doorbarら,1992)。さらに、粘膜ウイルスのE4タンパク質に関するポリクローナル抗体の研究では、矛盾する結果が得られている。ある研究では上述の所見を支持するが(Crumら,1990)、一方、別の研究ではタンパク質が核に位置することが示されている(Palefskyら,1991)。
多くの諸国では、子宮頸癌の有無を早期に検出するためのスクリーニングプログラムが存在する。通常、このようなプログラムは、子宮頸癌が発症している危険性のある女性から子宮頸部塗抹標本を得、得られた塗抹標本を従来の病理組織学的技術によって機械的に検査することにより実施される。これらの技術は手間と時間がかかり、結果を正しく解釈するのにかなりの経験が必要であり、また、擬陽性の結果の割合が比較的高くなることが多く、不要な警告を与えることになる。疑陰性は、不慣れな作業者がスクリーニングを行った場合に起こる可能性があり、前癌性病変を正常として分類しかねない。従って、改良された子宮頸癌スクリーニング法が必要とされている。
HPV感染と子宮頸癌の発生との間には非常に強い相関関係があることが周知である。子宮頸癌を有する女性の90%以上で、子宮頸のHPV感染の証拠が認められる。従って、従来の子宮頸部塗抹標本の病理組織学的検査に対する可能な代替の一つは、HPV感染の証拠についてサンプルを検査することである。例えば、HPV配列に特異的な核酸プローブを用い、サンプルにDNAハイブリダイゼーションアッセイを行って子宮頸癌をスクリーニングするための数多くの提案がなされている。このようなハイブリダイゼーションアッセイは、適切な試薬の入手が容易であり、特異性も高いことから、一般に当業者に好まれる。
このように、例えば、権威あるウイルス学の教科書であるFields Virology[Fieldsら編,Virology Vol.2,p2099,第3版(1996)Raven Press,New York]には、「組織におけるHPVの型の診断には、核酸ハイブリダイゼーション研究が必要である」と述べられている。
反対に、HPVポリペプチドの発現を検出する子宮頸癌のスクリーニングは一般に軽視されており、多くの理由のため、主に適切な試薬を得るのが困難であるため、より具体的には、多くのHPVが粘膜感染ではウイルスタンパク質をほとんど産生しないことから、検出が困難、不確実および信頼できないものになるため、不適切であると考えられている。このように、Fields Virology(上述)では、「ウイルスのカプシド抗原の免疫学的な検出」には「限界値」があると述べられている。他のウイルス抗原の免疫学的検出の可能性は、考慮すらされていない。ウイルスタンパク質の発現の検出に基づくスクリーニング法が開発された場合、標的の最も有望な候補は、L1またはL2のような充分に特性決定されているタンパク質であろう。E4タンパク質の機能は目下不明である。子宮頸病変におけるその発現パターンは先行技術では結局判明しておらず、それゆえ、HPV感染を検出する標的としては、該分子は選択用の明らかな候補ではなかったのである。
発明の概要
本発明によれば、今回、HPVのE4タンパク質へ特異的に結合する分子を用いて、患者から採取したサンプルにおいてHPV感染を検出できることが実証された。特に、本発明は、HPV E4タンパク質へ特異的に結合する分子を用いて、前癌性子宮頸病変についてサンプルをスクリーニングする方法を提供するものである。
本研究では、HPV16 E4タンパク質が細胞質性であり、増殖期(vegetative)ウイルスDNA複製を支持する細胞内で産生されることが明らかになった。
第一の態様では、本発明は、生物における乳頭腫ウイルス感染を検出する方法を提供する。この方法には、乳頭腫ウイルス感染の可能性がある部位から生物の細胞サンプルを採取する工程、この細胞を乳頭腫ウイルスE4タンパク質へ特異的に結合する分子と接触させる工程、および、この結合をモニターする工程が含まれる。
特に、本発明は、前癌性子宮頸病変をスクリーニングする方法を提供する。この方法には、被験者から子宮頸細胞のサンプルを採取する工程、この細胞をHPV E4タンパク質へ特異的に結合する分子と接触させる工程、および、この結合をモニターする工程が含まれる。
さらに、本発明は、患者のHPV感染の型を判定する方法を提供する。この方法には、HPV感染部位から患者の細胞サンプルを採取する工程、この細胞をHPV E4タンパク質のサブセットへ特異的に結合する分子と接触させる工程、および、この結合をモニターする工程が含まれる。
さらなる態様では、本発明は、抗体分子またはこれらの抗原結合変異体を提供する。これらの分子または変異体は、HPV16 E4タンパク質のアミノ酸残基の領域RPIPKPSPWAPKKHRRLSSDQDSQTP、または他のHPV E4タンパク質の対応する酸/塩基に富む親水性の領域でHPV E4タンパク質へ特異的に結合するものである。
本発明は、さらに、乳頭腫ウイルスおよび/または乳頭腫ウイルスに感染した細胞を破壊することのできる抗ウイルス剤をターゲティングさせるための、E4へ結合することのできる分子の使用に関する。このような分子は、本明細書中で例示した上述の抗体またはペプチドであり、任意に抗癌剤または抗ウイルス剤へコンジュゲートさせてもよい。
【図面の簡単な説明】
図1Aは、HPV16 E4タンパク質のアミノ酸配列と、各種抗体分子または抗体のE4特異的抗原結合フラグメントの結合部位を示す。
図1Bは、HPV16(最上列)、HPV1(最下列)およびコンセンサス配列(中央の列)由来のE4タンパク質の配列と、各種抗体または抗体の抗原結合変異体の結合部位を示す。
図2A〜2Dは、表面プラスモン共鳴(surface plasmon resonance)装置を用いて得た4つのセンソグラム(sensogram)を示す[任意応答単位対時間(秒)]。
図3〜8は、本文中で説明するように様々に染色したサンプルの顕微鏡写真である。
図9は、HPV E4タンパク質の一部のアミノ酸配列アライメントである。
発明の詳細な説明
本発明の方法は、乳頭腫ウイルス感染に感受性の生物における、乳頭腫ウイルスおよび乳頭腫ウイルス感染の検出、同定および診断を可能にするものである。
このような生物は、好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。生物がヒト生体である場合、乳頭腫ウイルスはヒト乳頭腫ウイルス(HPV)型である。
患者の細胞サンプルには、皮膚細胞が含まれる場合がある(例えば、イボの場合には、皮膚HPV感染による疣贅(veruccas)等)。HPV 5、8、14、17、20型によって誘発されるような皮膚病変は、臨床上の処理が難しく、免疫抑制患者では悪性腫瘍に関連することが多い(Bentonら,1992 Papillomavirus Report 3,23-26)。あるいは、尿生殖器路(urinogenital tract)のHPV感染の場合には、サンプルに粘膜細胞、特に子宮頸細胞が含まれる場合がある。本発明の方法で使用するために、このようなサンプルを採取して調製する方法は当業者には公知であり、本開示より明らかであろう。
用語「前癌性子宮頸病変」とは、「前悪性腫瘍」状態として臨床的に記述することができ、治療しなければ完全な悪性腫瘍へ進行する可能性のある異常性をいうものとする。上述したように、このような病変は、例えば、子宮頸部塗抹標本を試験することにより機械的にスクリーニングされる。本発明は、子宮頸部塗抹標本等の方法で患者から得られた細胞を、HPV感染についてより正確にかつより迅速に試験するものである。
好ましくは、E4タンパク質へ特異的に結合する分子は、抗体分子またはその抗原結合変異体、例えば、Fab、Fv、scFv、「diabody」等を含むものである。この分子は、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体、またはスクリーニング(例えば、タンパク質展示ファージ(phage display)技術を用いる)によってライブラリーから選択した抗体の抗原結合部分を含むことができる。あるいは、この分子は、別のポリペプチド、ペプチド、合成化合物またはSELEX等の手法で作製されたRNAもしくはDNAアプタマー(aptamer)であってもよい。好適な実施形態のいくつかでは、この分子は、蛍光団、発色団、酵素または放射性標識等の標識部分を含み、その結果、分子のE4タンパク質への結合がモニターしやすくなる。このような標識は当業者には周知であり、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ストレプトアビジン、ビオチン、35Sまたは125Iが挙げられる。他の例は、当業者には明らかであろう。標識は、ある場合には、抗体または抗原結合変異体へコンジュゲートさせてもよく、標識がペプチドまたはポリペプチドである場合には、融合タンパク質としてもよい。
好ましくは、本発明の方法で使用する分子は、一定のHPV型のE4タンパク質へ選択的に結合するが、他のHPV型のE4タンパク質へは結合しない。従って、一実施形態では、本発明を使用して患者に感染しているHPVの型を判定することができる。悪性疾患への進行(従って臨床的予後)はHPVの型に大いに依存するため、これは非常に有意義である。従って、本発明の第二の態様では、患者におけるHPV感染の型を判定する方法を提供する。この方法には、HPV感染部位から患者の細胞サンプルを採取する工程、この細胞を目的のHPV E4タンパク質へ特異的に結合する分子と接触させる工程、および、この結合をモニターする工程が含まれる。
本発明の第二の態様の方法では、分子が結合するE4タンパク質のサブセットは、単一のHPV型E4タンパク質からなるものであるか、異なる型の複数のE4タンパク質からなるものであるが、全ての既知のHPV型のE4タンパク質を含むものではない。そのため、細胞サンプル中に含まれるE4タンパク質に対して分子が(適切には)結合するかしないかによって、患者に感染するHPV型の同一性に関して一定の推定が可能であろう。
実際に、E4タンパク質の異なるサブセットへ結合する複数の異なる分子を用いるのが有利な場合がある。これは、予後徴候の指標としては必須なわけではないが、患者に感染するHPVの型を明確に同定するにはなくてはならない場合もである。例えば、感染HPVの型を特定のサブセットへ限定する(またはこのようなサブセットを除く)能力は充分である。説明としては、粘膜HPV6、11、42、43および44型が外性器乳頭腫(尖圭コンジローム(condylomata accuminata))に関連することが知られている。この乳頭腫は、癌へ進行する危険性は低いが、完治が難しく患者の生活を壊す可能性がある。危険性の高い粘膜型(31、33、35、51、52、58、61および16、18、45、56)は、無症状の扁平イボ(扁平コンジローム)を発症する。この扁平イボは、悪性度の高い頸部上皮内腫瘍新生(CIN)および癌へ進行する場合がある。悪性腫瘍へ進行する危険性の最も高いものは、HPV16、18、45および56型によって発症する病変と関連する。
所望のHPV型へ結合するが、所望ではないHPV型へは結合しない分子は、例えば、ランダム化技術および選択技術によって作製することができる。これらの技術には、タンパク質展示ファージ、および抗体または他のポリペプチドを提示(display)するのに適したその他の技術や、例えば、SELEX等の核酸結合分子(例えば、RNAアプタマー)を作製する手法が含まれる。これらの手法は当業者には周知であり、例示として後述する。従って本発明は、HPV E4タンパク質へターゲティングされるHPV結合分子を提供する。この分子は本明細書に記載する方法に有用である。
本発明によれば、E4結合分子は好ましくはE4ポリペプチドの細胞外部分へターゲティングされる。このような部分は、特性的に親水性の傾向がある。従って、好ましくは、本発明のE4結合分子はHPV E4タンパク質の親水性部分へ特異的に結合する。
さらに本発明は、かなりの特異性で分子(特に抗体分子またはその変異体)が結合し得るE4タンパク質の特定の領域を提供する。相同領域は全てのHPV E4タンパク質に存在するものの、この領域は異なる型のHPV間でアミノ酸配列が違っている。この領域はE4タンパク質の親水性のピークに相当し、おそらく表面に露出している。この領域は極度に帯電している(酸/塩基に富む)。HPV16型では、この領域のアミノ酸配列は(N末端からC末端へ)、RPIPKPSPWAPKKHRRLSSDQDSQTPである。明らかなように、他のHPV型のE4タンパク質のアミノ酸配列は、16型のものと同一である必要性はないが、本開示(例えば、図9)を活用すれば、当業者であれば従来のアライメントおよび配列比較のコンピュータプログラムを用いて他のE4タンパク質中で対応する領域を容易に同定することができる(70程度の既知HPVゲノムのうち約65がクローニングされ、配列決定されている)。
従って、第三の態様では、本発明は、HPV16 E4タンパク質のアミノ酸残基の領域RPIPKPSPWAPKKHRRLSSDQDSQTPまたは他のHPV E4タンパク質の対応する酸/塩基に富む親水性領域でHPV E4タンパク質へ特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合変異体を提供する。好ましくは、Doorbarら(1992 Virology 187,353-359)によって同定された抗体TVG402以外のものを提供する。
さらに、本発明は、本明細書に記載のHPV感染を検出するための、HPV16 E4タンパク質のアミノ酸残基の領域RPIPKPSPWAPKKHRRLSSDQDSQTPまたは他のHPV E4タンパク質の対応する酸/塩基に富む親水性領域でHPV E4タンパク質へ特異的に結合する抗体分子、またはその抗原結合変異体の使用を提供する。
数多くの異なるHPV型の対応の酸/塩基に富む親水性領域を図9に示す。図9では、最上列にコンセンサス型アミノ酸配列(「最も有望」)を示し、その下にHPV E4タンパク質の配列を示す。点(・)はアライメントを容易にするために導入したギャップを表し、ダッシュ(−)はコンセンサス配列と一致するアミノ酸残基を表す。図の右側の数字は、実際のまたは予測されるE1^E4スプライス部位からのアミノ酸残基の数を表す。領域の親水性は異なるHPV型の間で保存されているものの、実際のアミノ酸配列は相当違っており、この領域に結合する試薬はHPV型に非常に特異的であるものと予想されることは、このアライメントから当業者には明らかであろう。
好ましくは、本発明の抗体は、SPOTSエピトープマッピングシステムで同定されるように、領域RRIPKPSPWAPKKHR(または他のHPV型由来の対応のアミノ酸配列)内に結合部位を有する。特に好適な分子は、非常に高い親和性でエピトープPKPSPWAPKKH(R)に結合するFabフラグメントTVG405(後述)であり、上記の本発明の方法に特に有用なものである。
TVG405エピトープのC末端の括弧内のアルギニン残基は、高親和性結合に必須のものではない。
本発明者らは、後述するように、タンパク質展示ファージ技術を用いてFabフラグメントTVG405を単離した。当業者であれば、同様のタンパク質展示ファージ技術(およびE4タンパク質またはその一部を用いるスクリーニング)を用いて、またはポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体(Milsteinらの周知のハイブリドーマ技術を利用)を得るためのさらに一般的な免疫感作技術(例えば、マウス、ウサギ、ラット等をE4タンパク質またはE4タンパク質の一部に相当するペプチドで免疫)を用いて、異なる抗体またはFabフラグメントが容易に得られることは理解できるであろう。完全な抗体分子は、Fabをコードする配列(例えば、タンパク質展示ファージ技術によって単離)から、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY,USA)に記載の、適切なDNA配列を結合するための標準的なDNA操作技術を使用して容易に調製できる。
同様に、標準的なDNA操作技術を使用して、抗E4抗体またはその抗原結合変異体をコードするDNA配列を改変することもできる。特に、部位特異的突然変異誘発またはPCRを使用して、コード配列を改変することもでき、異なる結合特異性または親和性を有する改変された抗E4抗体が産生される。あるいは、Fab、Fvまたは抗体等のE4結合部位を含む融合タンパク質を作製してもよい。
E4を結合できる分子は、抗ウイルス剤もしくは抗癌剤、またはこのような剤の一部として使用することができる。例えば、上述したような抗体分子またはE4結合ペプチドをこの目的に使用することができる。しかしながら、好ましくは、E4タンパク質および/またはE4タンパク質に結合できる分子を使用し、合理的な薬剤設計によってE4結合分子、好ましくは小分子を設計することができる。
このような方法には、好ましくは、E4またはE4に結合可能な分子の結晶化が含まれる。より好ましくは、このような方法には、E4と結合剤の同時結晶化が含まれる。このような手法により、E4と結合分子との間の相互作用に関する情報が得られ、この情報は結合相互作用を模倣することのできる小分子の設計に利用できる。
結晶化には、結晶化緩衝液の調製が含まれ、例えば、ペプチドまたはペプチド複合体の溶液を、結晶形成に必要な沈殿剤を低濃度で含有する「貯留緩衝液(reservoir buffer)」と好ましくは1:1の比で混合することによって調製する。結晶形成では、例えば、滴定によって、沈殿剤を添加することによって、または結晶化緩衝液と貯留緩衝液との間の拡散によって沈殿剤の濃度を平衡にすることで、沈殿剤の濃度を上げる。適切な条件下では、このような沈殿剤の拡散は沈殿剤の勾配に沿って、例えば高濃度の沈殿剤を有する貯留緩衝液から低濃度の沈殿剤を有する結晶化緩衝液へ向かって起こる。拡散は、例えば共通ガス相における拡散を可能にする蒸気拡散技術によって達成できる。公知の技術は、例えば「ハンギングドロップ(hanging drop)」法または「シッティングドロップ(sitting drop)」法等の蒸気拡散法である。蒸気拡散法では、タンパク質を含む結晶化緩衝液の液滴が、貯留緩衝液のさらに大きなプールの上に吊り下げられているかまたは近くに置かれている。また、沈殿剤を平衡にすることは、結晶化緩衝液を貯留緩衝液から隔ててタンパク質が貯留緩衝液へ希釈されるのを防ぐ半透膜によって達成できる。
結晶化緩衝液中では、ペプチドまたはペプチド/結合パートナー複合体は好ましくは最大30mg/ml、好ましくは約2mg/ml〜約4mg/mlの濃度を有する。
結晶の形成は、以下のパラメーターで本質的に決まる様々な条件下で達成することができる:pH、塩および添加剤の有無、沈殿剤、タンパク質濃度および温度。pHは約4.0〜9.0の範囲であってよい。緩衝液の濃度と種類は、むしろあまり重要ではないため、例えば、所望のpHに応じて変えることができる。適切な緩衝液系としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、Tris緩衝液、MES緩衝液およびHEPES緩衝液が挙げられる。有用な塩および添加剤としては、例えば、塩化物、硫酸塩、さらに実施例1に明記する塩が挙げられる。緩衝液には、水混和性の有機溶剤、好ましくは分子量が100〜20000、優先的には4000〜10000のポリエチレングリコール、または硫酸塩、特に硫酸アンモニウム、塩化物、クエン酸塩または酒石酸塩等の適切な塩からなる群から選択される沈殿剤が含まれる。
E4自体またはE4由来ペプチド、または本発明のE4(ペプチド)/結合パートナー複合体の結晶は、例えば重原子誘導体化によって化学的に修飾することができる。簡単に説明すると、このような誘導体化は、結晶中を拡散し、タンパク質の表面へ結合することのできる重金属原子塩または有機金属化合物(例えば、塩化鉛、チオリンゴ酸金、チメロサールまたは酢酸ウラニル)を含有する溶液中へ結晶を浸漬することで達成可能である。結合した重金属原子の位置は、浸漬した結晶のX線回折分析によって判定でき、この情報を利用して、例えばペプチドの三次元モデルを構築することができる。
三次元モデルは、例えば、結晶の重原子誘導体から、および/または結晶化によって得られる構造データの全てまたは一部から得られる。好ましくは、このようなモデルの構築には、相同性モデリングおよび/または分子置換が含まれる。
予備的な相同性モデルは、配列が既知のE4タンパク質のいずれかとの配列アライメント、二次構造の推定および構造ライブラリーのスクリーニングを組み合わせることで作製できる。例えば、HSV16および34 E4の配列は、本明細書に記載されているようにアライメントをとることができる。
コンピュータソフトウエアを使用して、E4ペプチドまたはペプチド複合体の二次構造を予測することもできる。ペプチド配列をE4構造へ組み込んでもよい。構造上の非整合性(structural incoherence)(例えば、挿入/欠失周辺の構造フラグメント)は、適切なコンホメーションを有する所望の長さのペプチドについて構造ライブラリーをスクリーニングすることによりモデリングが可能である。側鎖コンホメーションを予測する場合は、側鎖の回転異性体ライブラリーを使用すればよい。
最終的な相同性モデルを使用し、適切なコンピュータソフトウエアを用いる分子置換によってE4またはそのペプチドの結晶構造を解く。相同性モデルは分子置換の結果に従って配置され、分子動力学計算と結晶化に使用する阻害剤のモデリングを含む改良をさらに行い、電子密度を求める。
同様のアプローチを使用して、例えば本発明で得られるような抗体および抗体フラグメントを含むE4結合ポリペプチドの構造の結晶化と判定を行うことができる。
驚くべきことに、E4の発現がHPV感染細胞での増殖期DNA複製と強く相関することが見出され、これによりE4発現の検出はHPV感染の特に適切な指標となり、従って前癌性子宮頸病変のスクリーニングに特に有用である。
HPV検出による現在利用可能な子宮頸のスクリーニング方法は、DNAハイブリダイゼーションに基づくものである。この方法は、細胞溶解または細胞膜の透過性を上げることを含み、ELISA型96ウェル様式で行われる。ハイブリダイゼーションは、最終的にウェルの一つ一つにおいて色の変化として可視化する。
本発明の抗体は同様に(即ち、細胞溶解後に)使用してもよいが、組織病理学的研究による機械的な実施がさらに容易である迅速な手法に用いる。子宮頸細胞を含むサンプルを通常通り採取する。この細胞を、例えばスライドグラスまたは他の支持体上へ、例えば本明細書に例示されているような当該技術分野で公知の技術を使用して広げて、例えば抗E4 Fabで染色する。検出は、二次抗体-酵素コンジュゲート(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)を用いて行うか、またはこのFabを例えばFITC等の蛍光団へ直接コンジュゲートさせることができる。このアプローチは、抗体検出の感度を上げるために現在利用できるシステムでの使用に適合させることができる。目下、子宮頸部塗抹標本は顕微鏡検査法によって機械的に検査されている。提案されたアプローチは、新しい設備を必要とせず、既存の方法に容易に適合させることができる。
標準的な検出方法は改変することも可能である。細胞を懸濁させながら抗体結合を行ってもよく、細胞を分析前に回転沈降させる。これにより、スクリーニングの質が向上するであろう。
診断における多大な努力が、自動スクリーニング法に払われている。抗体またはその抗原結合変異体をHPV検出に使用することで、このことは著しく容易になる。
要約すると、以下のことが判明した:
1.感染ケラチノサイトの分化がカプシドタンパク質の産生と感染性ビリオンの組み立てを支持するのに充分ではないとしても、増殖性感染HPV誘発病変、並びに悪性度の低いおよび高い子宮頸新生物(cervical neoplasia)においてE4タンパク質を検出することができる。
2.E4発現が増殖期ウイルスDNA複製と密接に相関しており、E4タンパク質の検出が、ウイルス感染の検出のためのウイルスDNA複製の検出と同程度に有効であることが指摘される。
3.感染組織の上層はE4タンパク質に富んでおり、そのため機械的な塗抹標本試験の際に採取された細胞で検出することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。
実施例1
抗E4モノクローナルおよびポリクローナル免疫グロブリンの産生
HPV16 E1^E4に対するMabは既に記載されているが(TVG401、402、403;Doorbarら,1992)、これらの試薬は、E4の主要な抗原部位において単一の重複エピトープを認識し、保存された組織生検ではタンパク質を検出しないことが報告されている(Doorbarら,1992)。
これらの結果より、E4がHPVの免疫学的な検出の候補ではないことが示唆されるが、HPV16 E4のNおよびC末端をターゲティングするさらなる抗体を産生させる。
標準的なハイブリドーマ技術によるさらなるMabの産生によって、TVG404(該タンパク質のまさにC末端においてエピトープを認識するIgM)を単離する。
この試薬を補足するために、タンパク質のN末端に対するポリクローナル抗血清を、N末端合成ペプチド(E4 N末端)に対して惹起する。(HPV16およびHPV63 E4タンパク質に対する)ポリクローナル抗体は、ウサギをマルトース結合タンパク質E4融合タンパク質(MBP-E4)で免疫して産生させる。抗体価を精製グルタチオンSトランスフェラーゼE4融合タンパク質(GST-E4)を用いてELISAでモニターする。
タンパク質のN末端に対する抗体を、C末端システイン残基を介してチログロブリンまたはキーホールリンペットヘモシニアンにコンジュゲートさせた合成ペプチドMADPAAATKYPLCに対して惹起する。コンジュゲーションは、Greenら(1982)に記載のように、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いて行う。
エピトープマッピングによって、以下のように抗体の特異性を確認する:SPOTSエピトープマッピンシステム(Genosys Biotechnologies,Cambridge,UK)を用い、固相fmoc化学により、HPV16 E4タンパク質を一連の85個の重複8量体(単一アミノ酸重複)として合成する。タンパク質の主要な抗原部位に結合するHPV16 E1^E4モノクローナルTVG402(Doorbarら,1992)を用いて、合成の精度を確認する。製造業者の指示に従ってフィルターを再生し、ECL(Amersham,Little Chalfont,UK)で抗体結合を可視化する。ポリクローナル血清を1/250希釈で使用し、精製Fabを約1g/mlで使用し、ハイブリドーマ上清を1/10希釈で使用する。
図1Aには、85個の重複E4合成ペプチドの配列を図の上段に示し、エピトープマッピング実験の結果をその下に示す。黒い点は、その上に示した合成ペプチドへの抗体の結合を表す。各抗体に反応するペプチドを含有するフィルターの一部のみを示す。
図1Bでは、E1^E4アミノ酸配列のエピトープの位置をHPV16配列の上にまとめる。70の推定E1^E4配列を比較して作製したコンセンサスE4配列(Doorbar and Myers,1996b)とのアライメントを、HPV16 E1^E4配列の下に示し、HPV1 E1^E4タンパク質の配列をその下に示す。既存のHPV1 E1^E4 Mabの結合部位(Doorbarら,1988)をHPV1配列の下に示す。HPV1のE1^E4タンパク質において16Kおよび10/11K遺伝子産物に対して惹起されるタンパク質分解による切断部位(Doorbarら,1988;Robertsら,1994)をHPV1配列の下に示し、HPV16のE1^E4配列の推定部位を予測する。
実施例2
合成免疫グロブリンの作製
Fabをfdバクテリオファージ上に展示された合成抗体(Griffithsら,1994)から後述するように単離する。イムノチューブ(Life Technologies,Paisley,UK)を、MBP-E4またはGST-E4のいずれかで0.1g/mlの濃度にて4℃で一晩被覆した。続いてこれらを37℃で1時間、PBS/2% marvelTM中でブロックし、1011ファージの存在下にて血液チューブ回転器上でインキュベートした(37℃)。未結合ファージを流し、チューブを10回PBS/0.1% Tween20で洗浄する。結合したもの(binder)を100mMトリエチルアミン(pH11.0、1ml)で溶離し、直ちに1M Tris(pH8.0)で中和し、大腸菌TG1細胞へ再度導入する。濃縮された(enriched)ライブラリーを増幅させ、選択操作をさらに3回繰り返す。
MBPまたはGSTタンパク質に対する抗体の単離を防ぐために、6.5×1010のレパートリーを用いてGST 16 E1^E4およびMBP 16 E1^E4に対して交互にファージの選択を行う(Griffithsら,1994)。GST融合体(約5mg/細菌1リットル)よりもMBP 16 E4の方が高レベル(>50mg/細菌1リットル)に発現されるが、いずれにせよ、抗体の単離には1g程度の抗原が必要である(Hawkinsら,1992)。E4に対して親和性を有するファージ展示抗体を(GST-E4、MBP-E4、GSTおよびMBPに対して)ELISAによって同定し、ファージウェスタンブロット法によって活性を確認する。免疫グロブリン遺伝子を、単離したファージから細菌系発現ベクターpUC119.His.myc(Griffithsら,1994)へ導入し、可溶性のFabを、誘導された細菌の細胞周辺腔からニッケル-NTAクロマトグラフィー(Qiagen,Crawley UK)によって精製する。抗体価をELISAによって確定する。
選択を4回行った後、個々のクローンを、E1^E4、未融合GSTもしくはMBP、またはウシ血清アルブミン(BSA)のいずれかに結合する能力について試験する。47クローン(100クローン中)がMBP 16 E1^E4へ結合可能であり、そのうち39クローンがGST 16 E4へも結合可能である。これらのクローンのいずれもBSA、GSTまたはMBPとは相互作用しない。BstNIフィンガープリント法(Marksら,1992:Nissimら,1994)より、これらのクローンのうち3個の異なるFabが判明し、その免疫グロブリン遺伝子を原核生物発現ベクターpUC119His.6mycへサブクローニングして可溶性の抗E4 Fabを産生させる(Griffithsら,1994)。およそ5mg(細菌1リットル当たり)の抗E4 Fab(TVG405、406および407)を、誘導された細菌の細胞周辺腔から抽出することができ、全てがE1^E4を特異的に検出することがELISAおよびウェスタンブロット法によって判明した。Fab TVG407は、ハイブリドーマ由来のMabであるTVG409によって認識されるエピトープと同じエピトープへ結合する(図1)。残りの合成Fabは、このE4の主要な抗原領域の上流の新規なエピトープ(TVG405)または下流の新規なエピトープ(TVG407)を認識する。結果を図1に要約する。
TVG405 FabおよびTVG407 FabのCDR3ループのアミノ酸配列が以下のようであることが判明した:
抗体親和性の測定
合成Fab(TVG405、TVG406およびTVG407)およびハイブリドーマ由来Fab(TVG402)の親和性を、BIAcore 2000機器(Pharmacia Biosensor,St.Albans,UK)を用いて製造業者の指示通りに表面プラスモン共鳴によって分析する。
MBP-E4凝集体を、0.5%SDS、1mMβ-メルカプトエタノール、50mM Na2CO3/NaHCO3(pH8.5)の還元条件下で解離し、NHS-LCビオチン(Sigma,St Louis,USA;25mg/ml DMSO中)を用いてビオチン:タンパク質モル比6:1でビオチン化する(Johnsonら,1991)。単量体MBP-E4を、Superdex S200 HR10/30カラムを用いるFPLCクロマトグラフィーによって、6M尿素/1mMβ-メルカプトエタノール/PBS/0.2mM EDTA(pH7.2)で流して回収し、ストレプトアビジンで被覆したセンサーチップへ結合させ、PBS/0.2mM EDTA/0.1mg/mlプロテアーゼ不含BSA(Sigma)中、in vitroで「リフォールディング」させる。
Immunopure Fabキット(Pierce,Rockford,USA)を用いて、精製したTVG402からFabを単離し、FPLCゲルクロマトグラフィー(Superdex S200 HR10/30カラム、PBS/0.2mM EDTA(pH7.2)で流す)によって単量体調製物を得る。6M尿素カラム緩衝液(上述)を使用してセンサーチップ表面を再生する。開始および終了速度(on and off rates)は、登録商標「BIAanalysis」ソフトウエアを用いる非線形カーブフィッティングより求める。
結合活性は、細菌で誘導した抗体に対しては全タンパク質レベルの20%台であり、ハイブリドーマ培養上清由来のFabに対しては50%である。TVG405およびTVG402の親和性を、BIAcore結合曲線のセットに対する非線形カーブフィッティングによって得られた開始および終了速度より計算する。
図2Aには、上述したようにMBP-E4融合タンパク質で被覆したBIAcoreチップへFab TVG405を通した後に得られた結合曲線(センソグラム)を重ねて示す。Fabの濃度範囲は、中間の5段階の希釈を含めて10mM(最下曲線)〜300nM(上部曲線)である。結合の程度は、Y軸の時間(秒)に対してX軸の共鳴単位で示される。精製Fabをおよそ100秒で注入し、700秒で洗浄を開始する。BIAevaluationソフトウエア(Pharmacia,UK)を用いて会合曲線および解離曲線を分析することにより、TVG405の親和性(Kd)は0.3〜1.25nMと計算される。
図2Bには、100nM〜1Mの濃度範囲にわたるハイブリドーマ誘導Fab TVG402の結合曲線(上述と同様)を重ねて示す。Kdは70nMと推定される。
TVG405の会合速度定数(kon)は1.8×106M-1.s-1であり、終了速度は(koff)は2×103s-1であって、およそ1nMのモル解離定数(Kd)となる。最も優れたハイブリドーマ誘導抗体であるTVG402の親和性はわずか70nMであり、konは4.2×104M-1.s-1であり、koff値は3×103s-1である。TVG406および407は急速な速度論を示すため、TVG407について示すように、平衡結合データのスキャッチャード分析によって試験する。
図2Cには、急速な速度論を示すFab TVG407の平衡結合曲線を示す。図2Dには、BIAevaluationソフトウエアを用いて、図2Cに示したデータのスキャッチャード分析を示す。平衡値は、ビオチンでブロックした表面の値を図2Cに示した値から差し引くことにより、バルク屈折率(bulk refractive index)の変化について補正する。図示したプロットでは、傾きが−Kdであり、Y軸切片が「Rmax」(即ち、Fabで飽和した際の結合レベル)である。TVG407およびTVG406に対する未補正のKd値は250nMおよび140nMであり、Fab調製物の活性を考慮すると、実際の親和性は50nMおよび28nMになる。
TVG407の親和性(Kd)は、生物学的活性について補正した後では50nMであり、TVG406の親和性(Kd)は28nMである。重鎖および軽鎖CDR3ループのアミノ酸配列をDNA塩基配列決定によって確定し、3つの抗体が異なることをさらに確認する。
実施例3
抗E4ペプチドの産生
市販のツーハイブリッドスクリーニングキットをClonTechから購入し、製造業者の指示に従って、天然に存在するE4結合ペプチドを同定するのに使用する。同じ販売元から購入したHeLacDNAライブライーをスクリーニングする。この方法により、E4結合ポリペプチドをコードする7個のDNA配列を単離し、このうち3個を配列決定した後同定する。
第一のペプチドはフェリチンである。
第二のペプチドはケラチンフィラメント結合タンパク質であり、配列番号2に記載の配列を有する。
第三のポリペプチドは、タンパク質のDEADボックスファミリーのメンバーと認められる新規なポリペプチドであり、特徴的な配列モチーフDEADを含む。第三のポリペプチドの配列を配列番号3に示す。
これらのポリペプチドとE4との相互作用部位を同定するために、10〜20アミノ酸長の一連の重複ペプチドをPCRによって産生し、上述のようにファージ上へ展示させる。続いて、結合するもの(binder)をスクリーニング剤として使用し、粘膜病変においてHPV16を同定する。
実施例4
抗E4RNAオリゴヌクレオチドの産生
標的分子へ特異的に結合することのできるRNAオリゴヌクレオチド(アプタマーとして知られる)を、SELEX等の選択方法によって産生することができる。SELEX法には、核酸アプタマー(即ち、所望の標的へ結合可能な一本鎖核酸)をオリゴヌクレオチドのライブラリーから選択することが含まれる。核酸のライブラリー(好ましくはランダム化配列のセグメントを含む)より始まり、SELEX法には、結合に有利な条件下でライブラリーを標的と接触させる工程、標的分子へ特異的に結合した核酸から未結合核酸を分配する工程、核酸-標的複合体を解離する工程、核酸-標的複合体から解離した核酸を増幅してリガンドに富む核酸ライブラリーを得る工程、そして、結合、分配、解離および増幅の工程を、標的分子に対して高度に特異的な高親和性核酸リガンドを得るのに望ましいサイクル数繰り返す工程が含まれる。
DNAオリゴヌクレオチドライブラリー
26塩基のランダム化部分を有するDNAオリゴヌクレオチド73塩基長を、E4に結合することのできるアプタマーの開発に使用する。以下の構造を有する合成RNAオリゴヌクレオチドのライブラリーを作製する:
(式中、Nは、ランダム領域における任意の可能な塩基を表す)。ランダム領域は、オリゴヌクレオチドライブラリーの伸長における各ヌクレオチドの合成時に、4種全てのヌクレオチドの混合物(比6:5:5:4、A:C:G:T、カップリング効率の違いを考慮)を使用して作製する。得られる複雑性は理論上426分子である。合成スケール(0.1μmol)をゲル精製にかけたところ8.8nmolが得られ、実際に存在する異なる分子の数について絶対上限が約5×1015と予測される。
T7RNAポリメラーゼの認識部位を導入する5’プライマー(5’TAATACGACTCACTATAGGGAGACAAGAATAAACGCTCAA3’)および3’プライマー(5’GCCTGTTGTGAGCCTCCTGTCGAA3’)によるPCR増幅より、転写用に以下の鋳型が得られる。
RNA転写産物自体は以下の配列を有する:
米国特許第5,270,163号に記載されているような従来のSELEX法を使用して、抗E4アプタマーを選択する。各ラウンドは以下の工程からなる:
1)選択。RNAおよびE4タンパク質を混合し、37℃でインキュベートし、ニトロセルロースフィルターを充分に洗浄し、RNAをフィルターから溶離させる。
2)増幅。フィルターから溶離させたRNAを、50μl反応中、50ピコモルの3’プライマーの存在下、Gaussら(1987)に記載の条件下にてAMV逆転写酵素で伸長させる。得られたcDNA合成に対し、50ピコモルの5’プライマーを添加し、反応容積100μl中、Innis(1988)に記載されているようなTaqDNAポリメラーゼで30サイクル増幅する。
3)転写。Milliganら(1987)に記載されているように、選択した増幅鋳型に対してin vitro転写を行い、その後、DNaseIを添加してDNA鋳型を除去する。次いで、得られた選択RNA転写産物を、次のラウンドの工程1に使用する。サイクルの各工程で生成した産物の12分の1だけを後続のサイクルに使用する。これにより、選択の履歴をたどることができる。選択法の進行は、各PCR反応からの標識された転写産物のフィルター結合アッセイによってモニターする。選択および増幅の第4ラウンドの後、標識された選択RNA産物はE4への結合を示す。結合するもの(binder)を、子宮頸部塗抹標本由来の細胞におけるHPVの検出に使用する。
実施例5
皮膚および粘膜病変におけるHPVの検出
合成Fabは全て、ホルマリン固定パラフィン包埋組織においてHPV16 E1^E4タンパク質を検出するが、TVG405が一貫して最も高レベルの染色を示す(図3)。
図3には、合成Fabを使用して、HPV16 E4タンパク質をin vivoで局在化させた例を示す。HPV16 E4に対して反応性を持たないFab NIP-C11(Griffithsら,1994)(図3A)および本明細書に記載のE4特異的Fab TVG405(図3B、C、D)で悪性度の低いHPV16 CIN Iを免疫染色する。二次抗体として9E10を用い、次いで抗マウスFITCコンジュゲートを用いてFabを検出する。E4は表皮の上層では検出可能であるが、異なる病変間でレベルが大幅に変動し、わずか数個の陽性細胞のみが見られる場合が多い(C、D)。CおよびDでは基底層の位置を矢印で示す。倍率は200倍である。
エピトープをマイクロ波処理することでE4検出の感度が上がるため、TVG402を用いる染色さえも可能である(Doorbarら,1992)。E4発現の程度は、異なる病変間で大幅に変動し(8種のHPV16関連CIN 1生検を試験)、生検全体に拡散したまばらな細胞のみでの発現(図3)から表皮の最も分化した層の全体に広がる分布(図4)まで変動し、感染性ビリオンの産生も高いHPV1およびHPV63によって引き起こされる皮膚イボでのE4の分布(図4)と比較できる。HPV16によって引き起こされる悪性度の低い頸部上皮内癌(CIN 1)では、E4とL1の2つのタンパク質の発現は一致しないものの(既に示唆されている(Brownら,1994))、E4およびL1レベルが密接に相関することが判明した。E4発現は、複数の細胞層による主要なカプシドタンパク質の合成を先導し(二重染色によって判明、図4を参照)、悪性度の高い子宮頸病変(CIN 2/CIN 3)では、L1の発現がもはや支持されなくともE4に富んでいることが多い(図4)。E4合成の開始と感染性ビリオンの組み立てとの間のこの時間の遅れは、HPV63で最も明白であり、E4発現が感染基底細胞の傍基底層への移動と同時に生じた一方、L1の発現は上部顆粒層の細胞の狭い帯に限られている。
図4では、悪性度が高いおよび低いHPV16病変および良性イボでは、E4合成がカプシドタンパク質の発現へ直接関連するものではないことを実証する。図4には、抗L1抗血清(図4A、D、G)、HPV16 E4 Fab TVG405(図4Bおよび4E)、HPV63 E4に対するポリクローナル抗血清(図4H)を用いる三重染色、およびDAPI(図4C、F、I)での染色の結果を示す。A、BおよびCは、悪性度の低いHPV16誘発病変(CIN I)に該当する。D、EおよびFは、悪性度の高いHPV16誘発病変(CIN II/III)に該当する。G、HおよびIは、HPV63によって引き起こされる疣贅の切片に該当する。全ての場合で、E4発現はL1発現を先導するが、CIN Iではわずか2、3の細胞層のみによる(A、B)。CIN II/IIIでは、E4発現が過剰であるものの(E)、最終分化がビリオン構造タンパク質の合成を支持するのに充分ではないと考えられる(D)。E4発現の開始とウイルス構造タンパク質の検出との対比は、HPV63によって引き起こされる皮膚疣贅で最も明らかである(G、H)。DAPI染色像では基底層を矢印で示す。倍率は100倍である。
増殖期ウイルスDNA複製の開始とE4の発現は同時に起こる
増殖期ウイルスDNA複製は、中間有棘層の細胞内で開始し、E4発現の開始と厳密に相関することが判明した(図5)。
図5では、増殖期ウイルスDNA複製の開始が悪性度の低いHPV16病変および良性の皮膚イボでのE4発現と同時に起こることを実証する。図には、HPV16 E4抗体TVG402、405および406(図5A)並びにHPV1 E4抗体4.37および9.95(図5D)、ビオチン化DNAプローブ(図5B:HPV16、図5E:HPV1)、またはDAPI(図5CおよびF)を用いる三重染色を示す。A、BおよびCはHPV16誘発CIN Iの切片に該当し、D、EおよびFはHPV1誘発病質の切片に該当する。HPV16 CIN Iでは、増殖期ウイルスDNA複製とE4合成が、表皮の中間層〜上層において相関する(A、B)。皮膚病変では、感染細胞が基底層を離れるやいなや、この2つの事象が開始される(D、E)。DAPI対比染色像には基底細胞を例示する(F)。倍率は200倍である。
HPV1誘発イボでは、増殖期ウイルスDNA複製とE4合成がさらに早く始まり、感染基底細胞が浅層へ移動した直後が顕著である(図5)。分化している細胞の一部のみで増殖期ウイルスDNA複製が可能であり、これらの細胞においてのみE4が検出可能である。
隣接細胞では、後期遺伝子発現も増殖期ウイルスDNA複製も見られなかったため、これら2つの事象の開始が密接に関連していることが示唆される。DNAおよびE4検出の感度が確定していないものの、これらの「正常」細胞はウイルス複製が不可能であるか、または未感染の可能性が高い。E4発現と増殖期ウイルスDNA複製の開始との間のこの厳密な相関関係は、HPV63および65によって引き起こされる皮膚イボおよびHPV2によって引き起こされる尋常性疣贅でも見られる。
後期遺伝子発現を受ける細胞は、非許容(non-permissive)細胞または未感染細胞と比べて最終分化の異常なパターンを示す
Fab TVG405(HPV16に対する)、Mab4.37(HPV1に対する)またはE4に対するポリクローナル抗血清(HPV63)での免疫染色によって、HPV感染の後期を支持する細胞を同定することができる。HPV1によって引き起こされるイボでは、E4陽性細胞は検出し得るレベルのフィラグリンまたは被膜(involucrin)を欠く(図6(i))。E4発現も増殖期ウイルスDNA複製も示さない同一病変における非許容(または未感染)細胞は、フィラグリンおよびロリクリン(loricrin)を、周囲の表皮からは識別できないレベルで発現する。E4合成と分化特異的ケラチンK4およびK13との相関関係から、同一の阻害パターンが判明した。K4およびK13染色の強度は、E4を発現しない隣接細胞よりもE4陽性細胞の方が常に低い(図6(ii))。基底細胞および下部傍基底細胞に存在するK5および14は影響を受けない。発現分化特異的ケラチン(皮膚のK1およびK10)の検出に対するこの妨害も、HPV1によって引き起こされる皮膚イボでは明白であるが(図6(ii))、HPV63によって引き起こされるイボでは顕著ではない(図6(ii))。HPV63のE4タンパク質がHPV1のE4タンパク質に最も密接に関連している。
図6には、増殖性感染が、悪性度の低いHPV16病変および良性皮膚イボにおける正常上皮の最終分化を妨害することを例示する。図6(i)(ケラチン発現)には、分化特異的粘膜ケラチン4および13(B)または皮膚ケラチン1および10(E、H)に対する抗体と併用して、HPV16 E4 Fab TVG405/TVG406(図6(i)A)、HPV1E4モノクローナル4.37/9.95(D)、およびHPV63 E4ポリクローナル抗体(G)を用いる三重染色を示す。図6(i)C、FおよびIには、DAPI対比染色を示す。A、BおよびCは、HPV16誘発CIN Iの切片に該当する。D、EおよびFにはHPV1誘発疣贅の縁の切片を示す。図6(i)G、HおよびIには、HPV63誘発イボの切片を示す。HPV16およびHPV1誘発病変では、分化特異的ケラチンはE4陽性細胞では隣接細胞ほど明白ではない(A、B、D、E)が、HPV63の場合ではそうではない(G、H)。核退化(DAPI対比染色によって可視化)は、E4発現細胞では遅くなる(A、C、D、F)。倍率は200倍である。
図6(ii)は、フィラグリン発現に関する。図には、上述したように、三重染色を示す。但し、図6(ii)BおよびEにはフィラグリン染色を示す。E4染色を図6(ii)AおよびDに示し、DAPI対比染色を図6(ii)CおよびFに示す。A、BおよびCは、正常皮膚(図の左側)が良性腫瘍(図の右側)と接するHPV63誘発イボの縁に該当する。D、EおよびFには、HPV1誘発イボの顆粒層を示す。E4陽性細胞は、検出し得るレベルの分化特異的マーカーフィラグリンを発現せず、隣接する未感染または非許容細胞と比較して、顕著な核保存を示す。倍率は200倍である。
HPV16 E4タンパク質の細胞内分布は、HPV1およびHPV63によって引き起こされる皮膚病変のE4の分布とは異なる
HPV1のE1^E4タンパク質は主として細胞質性であり、細胞が皮膚の表面へ移動するのに伴って合体してサイズが大きくなる封入体へ組み立てられる。
HPV63のE1^E4タンパク質は、線維状および顆粒状分布を有することが判明した。対照的に、HPV16 E4は、表皮下層の細胞においてフィラメント状および核周囲の分布を有し(図7)、さらに分化した細胞層においてのみ顕著な構造に組み立てられる。これらの「封入体」は常に細胞当たり一つ見られ(反対に、多くの皮膚病変では複数の封入体が見られる)、核に隣接して位置し、核の表皮表面に近い側でほぼ定常的に検出される。外見上は、HPV16 E1^E4タンパク質の発現後にin vitroで上皮細胞上に形成されるE4/中間フィラメント束と同様であるが、in vivoではこれらの構造にケラチンの存在は検出されなかった。
HPV16 E1^E4のまさにN末端に対する抗体は、C末端エピトープに対する抗体(TVG404、TVG405、TVG406)ほど容易には構造を染色しないことから、N末端領域がおそらく隠蔽されたか失われたものと示唆される。
図7には、in vivoにおける核周囲束およびフィラメント構造を有するHPV16 E4タンパク質の会合、特に、Fab TVG405およびTVG406の混合物を用いたHPV16 CIN Iの上層(図7A、B)および下層(図7C、D)におけるHPV16 E4タンパク質の検出を示す。上層では、E4は細胞質中に拡散しているが、顕著な核周囲パターンを有する。E4の核周囲束への濃縮(図7Bの矢印)は、これらの細胞では明白である。下層では、E4は主として核周囲外観およびフィラメント状外観を有するが(図7C、D)、核周囲束へは濃縮していない。倍率は、図7AおよびCでは200倍、BおよびDでは400倍である。
共焦点像より、N末端抗体が主にE4構造の縁に局在化し、一方、中央では抗C末端染色が最大であることが判明した(データは図示せず)。TVG405およびTVG406で見られる分布と比較して、抗N末端試薬より、HPV16 E1^E4が細胞内でさらに拡散した分布を有することが判明した(図8)。TVG405、406、407およびC末端抗体の染色パターン間では有意差は見られない。
図8は、HPV16 E4タンパク質のin vivoでのプロセシングの証拠を示すものであり、E4タンパク質のC末端側の半分にあるエピトープを認識するHPV16 E4 Fab TVG406(図8A)、HPV16 E1^E4タンパク質のN末端12アミノ酸に対する抗体(図8B)およびDAPI(図8C)を用いたHPV16 CINの上層における三重染色を示す。TVG402、403、404、405および407は、TVG406の染色パターンとは有意には相違しない染色パターンをもたらした。抗N末端抗体は、TVG406では顕著であった(図8Aの矢印)核周囲束を有効に染色せず(8B)、HPV1の場合と同様に、タンパク質の形態が異なれば細胞内位置も異なることが示唆される。倍率は400倍である。
実施例6
子宮頸病変から単離した細胞におけるHSVの検出
抗E4抗体を用いて染色した子宮頸部塗抹標本由来の細胞のイメージングに適したスライドガラスを、米国特許第5,346,831号に記載の方法で調製する。従来の手順に従って細胞を患者から単離し、10mlのアルコール/生理食塩水緩衝液へ溶解する。サンプル中に含まれる細胞の集塊またはクラスターをボルテックスして解離させ、サンプルを遠心分離用に調製する。解離させた後、サンプルの水気を完全に切り、12mlコニカルチューブ中の密度勾配上へ重層する。密度勾配は、商品名「Hespan」(NPBI、Emmer-Compascuum,Netherlands製)としても知られる、6%のβデンプン溶液と0.9%の生理食塩水を含む血漿増量物質で形成する。
密度勾配とサンプル細胞を含有する12mlのコニカルチューブを遠心分離バケットへ入れ、バランスをとって5分間、約600Gの力で遠心分離する。次いで液体をコニカルチューブの5m1線まで吸引する。遠心分離バケットを取り外し、12mlコニカルチューブを残りの液体で10分間、800Gで遠心分離する。チューブは上清を捨て、軽く2、3回45度の角度でタッピングする。チューブには、様々な容積の充填細胞が含まれる。混合して均一にすれば、ペレットには通常、液体の単位容積当たり同一濃度の細胞が含まれる。
50μlの脱イオン水を添加し、サンプルを0.042インチのチップで5回シリンジング(syringing)して混合する。混合が完了したら、150μlのサンプルに続いて500μlの脱イオン水を、ポリL-リシン(1%Sigma)で通常被覆しておいたスライドグラスへ取り付けた沈降容器へ分配する。移したサンプルを、約10分間容器内で沈降させる。過剰のサンプルを吸引除去し、チャンバーを2mlの脱イオン水で2回洗浄する(各々を添加する間に吸引する)。
次いでFITC標識Fabを、公知の手順に従って細胞へ適用し、蛍光顕微鏡検査法で結合を可視化する。
引用文献
配列表
(2)配列番号:1:
(i)配列の特色:
(A)配列の長さ:375塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(iii)ハイポセティカル:No
(iv)アンチセンス:No
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:CDS
(B)存在位置:1..375
(xi)配列:
(2)配列番号:2:
(i)配列の特色:
(A)配列の長さ:125アミノ酸
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:タンパク質
(xi)配列:
(2)配列番号:3:
(i)配列の特色:
(A)配列の長さ:491アミノ酸
(B)配列の型:アミノ酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(iii)ハイポセティカル:No
(iv)アンチセンス:No
(xi)配列:
Claims (10)
- 生物における粘膜乳頭腫ウイルス感染に由来する前癌性病変を検出する方法であって、感染の可能性がある部位由来の生物の細胞サンプルを粘膜乳頭腫ウイルスE4タンパク質へ特異的に結合する分子と接触させる工程、および、この結合をモニターする工程を含んでなる前記方法。
- 前記生物が哺乳動物である、請求項1記載の方法。
- 前記生物がヒトであり、前記乳頭腫ウイルスがヒト乳頭腫ウイルス(HPV)である、請求項2記載の方法。
- 前記感染の可能性がある部位が子宮頸である、請求項2または3記載の方法。
- 前記ヒト乳頭腫ウイルスが、HPV16、18、33、35、45、51、52、56、58および61型からなる群より選ばれるものである、請求項3記載の方法。
- 前記乳頭腫ウイルスE4タンパク質へ結合することができる分子が、E4配列の親水性領域内で結合できるものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記親水性領域が、HPV16の配列RPIPKPSPWAPKKHRRLSSDQDSQTPまたは他の乳頭腫ウイルスにおけるその相同体を有する領域である、請求項6記載の方法。
- 前記親水性領域が、HPV16の配列RPIPKPSPWAPKKHRまたは他の乳頭腫ウイルスにおけるその相同体を有する領域である、請求項7記載の方法。
- 前記親水性領域が、HPV16の配列PKPSPWAPKKHまたは他の乳頭腫ウイルスにおけるその相同体を有する領域である、請求項8記載の方法。
- 前記乳頭腫ウイルスE4タンパク質へ結合できる分子が、抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
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