JP4202128B2 - Wispポリペプチドを用いる治療方法 - Google Patents
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Description
(関連出願)
この出願は、出典明示によりその内容がここに取り込まれる2000年10月16日に出願された仮出願番号第60/241222号に基づく第119条(e)項の優先権を主張する非仮出願である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、変性軟骨性疾患及び様々な免疫関連症状の治療においてWISPポリペプチドを使用する方法に関する。
【0003】
(発明の背景)
結合組織成長因子(CTGF)は、TGF-βを含む多くの因子によって線維芽細胞において誘導される成長因子であり、形質転換された細胞の性質である付着依存性成長(AIG)を誘導するTGF-βの能力に対して必須である。CTGFは培養された内皮細胞の成長培地中に存在する血小板由来成長因子(PDGF)二量体のタイプを同定する試みにおいて発見されたもので、PDGFに免疫学的かつ生物学的に関連している。米国特許第5408040号を参照のこと。CTGFはまた細胞に対して分裂促進的で化学走性であり、よってこのファミリーの成長因子は、ヒト組織の正常な発達、成長及び修復に所定の役割を担っているものと考えられている。
Cyr61のニワトリオルソログ、CEF10、ヒト、マウス、及びアフリカツメガエルCTGF、及びヒト、ニワトリ、及びアフリカツメガエルNovを含む、CTGFに関連した幾つかのタンパク質が単離され、クローニングされ、配列決定され、CCN遺伝子ファミリーに属するものと特徴付けられている。Oemar及びLuescher, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 17: 1483-1489 (1997)。Cyr61をコードしている遺伝子は血管形成、腫瘍成長及び血管新生を促進することが見出された。Babic等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 6355-6360 (1998)。nov遺伝子は腎臓において本質的に胚形成期に発現され、正常な腎臓に対して、nov発現の変化が鳥類腎芽細胞腫とヒトウイルム腫瘍の双方で検出されている。Martinerie等, Oncogene, 9: 2729-2732 (1994)。Wt1はヒトnov発現をダウンレギュレートし、このダウンレギュレーションが正常な及び腫瘍の腎形成におけるキーとなる要素を表しているかもしれない。Martinerie等, Oncogene, 12: 1479-1492 (1996)。そのN末端に保存配列とIGFBPモチーフを含み、低親和性をもってIGFsに結合する分泌タンパク質をコードするCTGF、nov及びcyr61遺伝子が、低親和性mac25/IGFBP-7(Yamanaka等, J. Biol. Chem., 272: 30729-30734 (1997))及び高親和性IGFBPs1−6と共に、IGFBPスーパーファミリーのより多くのメンバーを表すと最近提案されている。この提案のCTGFはIGFBP-8と命名されている。Kim等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94: 12981-12986 (1997)。
【0004】
CCNファミリーの異なったメンバーは様々な可溶性又はマトリクス随伴巨大分子、特に硫酸化された複合糖質と相互作用する(Holt等, J. Biol. Chem., 265:2852-2855 (1990))。この相互作用はヘパリン-アガロースでのアフィニティクロマトグラフィーによりCyr61及びCTGFを精製するために使用された(Frazier等, J. Invest. Dermatol., 107:404-411 (1996); Kireeva等, Mol. Cell. Biol., 16:1326-1334 (1996))。Cyr61は分泌されそのヘパリン硫酸に対する親和性のために細胞外マトリックスと細胞表面の双方に伴う(Yang等, Cell. Growth Diff., 2:351-357 (1991))。
最近、低転移性細胞に発現されるELM1と命名されたタンパク質がマウスに見出された。Hashimoto等, J. Exp. Med., 187: 289-296 (1998)。以下に開示するWISP-1のマウス相同体であるelm1遺伝子は、CTGFの他のメンバー、Cyr61/Cef10及び神経芽細胞腫過剰発現遺伝子ファミリーであり、インビボでのK-1735マウスメラノーマ細胞の腫瘍成長と転移を抑制する。以下に記載するWISP-2のラットのオルソログであるrCop-1に関する他の最近の文献は、細胞形質転換後のこの遺伝子の発現の消失を記載している。Zhang等, Mol. Cell. Biol., 18:6131-6141 (1998)。
【0005】
(novを除く)CCNファミリーメンバーは、細胞増殖、分化、胚形成、及び創傷治癒を調節すると考えられている最初期成長応答性遺伝子である。CCN遺伝子ファミリーのメンバー間の配列相同性は若干高い;しかし、これらのタンパク質のインビトロでの機能は成長刺激(つまり、ヒトCTGF)から成長阻害(つまり、ニワトリNovとおそらくhCTGFも)までの範囲にわたる。更に、CTGFに対するある種の分子ホモログは、線維形成の防止、ある種の癌に伴う高度に細胞性の過剰な結合組織ストローマ、及び例えば強皮症、ケロイド、好酸球性筋膜炎、結節性筋膜炎、及びデュピュイトラン痙縮のような様々な皮膚疾患を伴う線維性病巣の形成に有用であることが示されている。更に、CTGF発現は乳腺腫瘍の線維ストローマにおいて最近実証されており、癌ストローマの形成が創傷治癒のように類似の線維増殖性成長因子の誘導を含むことを示唆している。ヒトCHGFはまた進行したアテローム硬化型病巣において非常に高いレベルで発現されるが、正常な動脈では発現されず、アテローム性動脈硬化症においてある役割を果たしている可能性を示唆している。上掲のOemar及びLuescher。
【0006】
Wntは、そのメンバーが回虫、昆虫、軟骨魚、及び脊椎動物で見出されている大きな遺伝子ファミリーによってコードされる。Holland等, Dev. Suppl., 125-133 (1994)。Wntは、多くの広範な種が複数の保存Wnt遺伝子を有しているので、様々な発生及び生理学的過程において機能するものと考えられる。McMahon, Trends Genet., 8: 236-242 (1992); Nusse及びVarmus, Cell, 69: 1073-1087 (1992)。Wnt遺伝子は幾つかの原始細胞型において活性な傍分泌又は自己分泌シグナルとして機能すると考えられる分泌糖タンパク質をコードしている。上掲のMcMahon (1992); 上掲のNusse及びVarmus (1992)。Wnt成長因子ファミリーは、cDNAクローニングによって、マウスにおいて同定された10を越える遺伝子(Wnt-1、-2、-3A、-3B、-4、-5A、-5B、-6、-7A、-7B、-8A、-8B、-10B、-11、-12、及び-13)(例えば、Gavin等, Genes Dev., 4: 2319-2332 (1990); Lee等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 2268-2272 (1995); Christiansen等, Mech. Dev., 51: 341-350 (1995)を参照)及びヒトにおいて同定された少なくとも9つの遺伝子(Wnt-1、-2、-3、-5A、-7A、-7B、-8B、-10B、-11)を含む。例えば、Vant Veer等, Mol. Cell. Biol., 4:2532-2534 (1984)を参照のこと。
【0007】
Wnt-1プロト癌遺伝子(int-1)は、ウイルスDNA配列の挿入のためにマウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)によって誘導される乳腺腫瘍から元々は同定された。Nusse及びVarmus, Cell 31: 99-109(1982)。成体マウスにおいて、Wnt-1mRNAの発現レベルは精子発生の後期段階において精巣にのみ検出される。Wnt-1タンパク質は約42KDaであり、分泌のためのシグナル配列として機能しうるアミノ末端疎水性領域を含んでいる(上掲のNusse及びVarmus, 1992)。Wnt-2/irpの発現はマウス胎仔及び成体組織中で検出され、その分布はWnt-1の発現パターンとオーバーラップしない。Wnt-3はマウス乳腺腫瘍形成に関連している。マウス胚でのWnt-3の発現は神経管と肢芽において検出されている。Wnt-5a転写物は、9.5から14.5日齢の発達中の前肢及び後肢において検出されており、最も高いレベルは肢の遠位端の外胚葉性頂に濃縮している。上掲のNusse及びVarmus (1992)。最近、Wnt-xと呼ばれるWnt成長因子が、骨組織及び骨由来細胞でのWnt-xの発現の検出と共に記載されている(WO95/17416)。また記載されていることは、成熟骨芽細胞の維持におけるWnt-xの役割と、治療薬として又は骨関連疾病を治療するための他の治療薬の開発においてWnt-x成長因子を使用することである。
【0008】
Wntは局所の細胞シグナル伝達に役割を担っている可能性がある。生化学的研究により、分泌されたWntタンパク質の多くが、培地に自由に拡散するよりむしろ細胞表面又は細胞外マトリックスに付随して見出されうることが示された。Papkoff及びSchryver, Mol. Cell. Biol., 10: 2723-2730 (1990);Bradley及びBrown, EMBO J., 9: 1569-1575 (1990)。
Wnt遺伝子における突然変異の研究は、成長調節及び組織パターニングにおけるWntの役割を示した。ショウジョウバエにおいて、無羽(wg)はWnt関連遺伝子をコードし(Rijsewik等, Cell, 50: 649-657 (1987))、及びwg変異は胚外胚葉、神経形成、及び成虫原基成長のパターンを変えた。Morata及びLawerence, Dev. Biol., 56: 227-240 (1977); Baker, Dev. Biol., 125: 96-108 (1988); Klingensmith及びNusse, Dev. Biol., 166: 396-414 (1994)。線虫においては、lin-44が非対称的細胞分裂に必要なWnt相同体をコードする。Herman及びHorvitz, Development, 120: 1035-1047 (1994)。マウスにおけるノックアウト突然変異は、Wntが脳の発達(McMahon及びBradley, Cell, 62: 1073-1085 (1990); Thomas及びCappechi, Nature, 346: 847-850 (1990))、及び腎臓(Stark等, Nature, 372: 679-683 (1994))、尾芽(Takada等, Genes Dev., 8: 174-189 (1994))、及び肢芽についての胚原基の成長に必須であることを示した。Parr及びMcMahon, Nature, 374: 350-353 (1995)。乳腺におけるWntの過剰発現は、乳腺過形成(上掲のMcMahon (1992); 上掲のNusse及びVarmus (1992))、及び早熟性肺胞発達をもたらす。Bradbury等, Dev. Biol., 170: 553-563 (1995)。
【0009】
Wnt-5a及びWnt-5bは7−8日齢のマウス胚の後及び側部中胚葉及び胚外中胚葉において発現される。上掲のGavin等, (1990)。これらの胚性ドメインは多能の造血前駆体及びHSCが誘導されるAGM領域及び卵黄嚢組織に寄与する。Dzierzak及びMedvinsky, Trends Genet., 11: 359-366 (1995); Zon等, Gluckman及びCoulombel編, Colloque, INSERM, 235: 17-22 (1995)、1995年4月3−6日にフランス、パリにてのJoint International Workshop on Foetal and Neonatal Hematopoiesis and Mechanism of Bone Marrow Failureで紹介;Kanatsu及びNishikawa, Development, 122: 823-830 (1996)。Wnt-5a、Wnt-10b、及び他のWntは肢芽において検出され、Wnt-7bに対して示されたように初期の骨の微環境の発達と様式における可能な役割を示している。上掲のGavin等(1990);Christiansen等, Devel., 51: 341-350 (1995);上掲のParr及びMcMahon (1995)。
Wnt/Wgシグナル伝達経路は、生物体の生物学的発達において重要な役割を果たし、幾つかのヒト癌に関連している。またこの経路は腫瘍抑制遺伝子APCも含んでいる。APC遺伝子における突然変異は、ヒト結腸直腸癌の散発性及び遺伝形態の発達と関連している。Wnt/Wgシグナルは細胞中でのβ-カテニン/アルマジロの蓄積を導き、βカテニン及びリンパエンハンサー結合因子/T細胞因子(LEF/TCF)HMGbox転写因子ファミリーのメンバーからなる二連転写複合体の形成がなされる。この複合体は核に転位し、そこでショウジョウバエの波形縁のウルトラバイソラックス(Ultrabithorax)遺伝子のような、Wnt/Wgシグナルの下流の遺伝子の発現を活性化できる。
Wntに関するレビューには、Cadigan及びNusse, Genes & Dev., 11: 3286-3305 (1997)を参照のこと。
【0010】
Pennica等, Proc. Natl. Acad. Sci., 95:14717-14722 (1998)は、Wnt-1によって形質転換されたマウス乳腺上皮細胞株C57MGにおいてアップレギュレートされる二つの遺伝子WISP-1及びWISP-2、及び第3の関連する遺伝子WISP-3のクローニングと特徴付けを記載している。Pennica等は、これらのWISP遺伝子がWnt-1シグナル伝達の下流にあり、大腸癌でのWISP発現の異常なレベルが大腸腫瘍形成においてある役割を担っている可能性があると報告している。WISP-1は最近β-カテニン調節遺伝子として同定されており、その発癌性活性の特徴付けは、WISP-1がβ-カテニン媒介腫瘍形成に寄与しているかもしれないことを実証した(Xu等, Gene & Develop., 14:585-595 (2000))。正常なラット腎臓細胞(NRK-49F)中でのWISP-1過剰発現は形態変換、加速された細胞成長及び亢進された飽和密度を誘導した。また、これらの細胞はヌードマウスに注入されると直ぐに腫瘍を形成し、WISP-1が腫瘍形成にある種の役割を担っている可能性があることを示唆している(上掲のXu等, 2000)。
Hurvitz等, Nature Genetics, 23:94-97 (1999)は、無関係の個人におけるWISP3の9つの異なった変異が常染色体性劣性骨格疾患である進行性疑性リウマチ様異形成症(PPD)を伴うことが見出された。ヒト滑膜細胞、関節軟骨細胞、及び骨髄由来間葉前駆細胞においてRT-PCRによるWISP3の発現がHurvitz等によって観察された。
【0011】
1998年5月22日に公開されたPCT出願WO98/21236は、成長因子スーパーファミリーの26kDメンバーをコードしているヒト結合組織成長因子遺伝子-3(CTGF-3)を開示している。WO98/21236は、CTGF-3アミノ酸配列はヒト骨芽細胞cDNAクローンから推定され、CTGF-3が卵巣、精巣、心臓、肺、骨格筋、副腎髄質、副腎皮質、胸腺、前立腺、小腸及び大腸のような複数の組織で発現されたことを開示している。
幾人かの研究者は腫瘍におけるプロテオグリカン組成の変化を文献化している。特に、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの顕著な生産は様々な悪性腫瘍におけるよく認識された現象である。また、プロテオグリカンを含むデルマタン硫酸であるデコリンの発現は、ヒト癌腫の悪性とよく相関していることが示された(Adany等, J. Biol. Chem., 265:11389-11396 (1990); Hunzlemann等, J. Invest. Dermatol., 104:509-513 (1995))。最近、デコリンが幾つかの癌腫の成長を抑制することが実証された(Santra 1997)。腫瘍形成性発達におけるデコリンの機能は十分には理解されていないが、腫瘍周囲ストローマ中でのデコリンの発現が侵入新生細胞への宿主結合組織細胞の局所的応答を反映させていると提案された(Stander等, Gene Therapy, 5:1187-1194 (1999))。
【0012】
結合組織成長因子/システインリッチ61/腎性芽細胞腫過剰発現(CNN)ファミリーの様々なメンバー及びその各性質と活性の最近のレビューのためには、Brigstock, Endocrine Reviews, 20:189-206 (1999)を参照のこと。
変性軟骨疾患は、広義には、患部の痛み、硬化又は運動能力減退により認識される結合組織の変性又は代謝系の異常により特徴づけられる疾患の群を表す。これらの疾患の原因は、例えば病理的であるか又は外傷や怪我によるものであり得る。
骨関節炎(OA)は、骨関節症又は変形性関節疾患としても知られ、典型的には関節構造に影響する局所的な変性過程の繰り返しによるものであり、痛みや機能の減退を生じる。OAはしばしば関節の破壊を加速しうる局所的な炎症因子を伴う。OAは、プロテオグリカン(PG)及びコラーゲンの早期喪失を伴った、軟骨の滑らかな関節表面の破壊に、裂け目の形成とフィブリル化が続き、最後には軟骨の全層喪失により特徴づけられる。OAの症状は、罹患した関節の、特に使用後の局部的な痛みを伴う。病気の進行に従って、症状は、持続的な痛みの感覚、局所的な不快、及び罹患した関節の奇形等の美容的な変化へと進行しうる。
【0013】
OAの局部的な性質に対して、リウマチ様関節炎(RA)は滑膜、関節の間隙周辺の組織に発症するような全身性炎症疾患である。RAは、関節の対称性滑膜炎によって特徴付けられる慢性自己免疫疾患であり、典型的には、小及び大可動関節に影響を及ぼし、進行性の破壊を引き起こす。疾病が進行すると、RAの症状は、発熱、体重の減少、皮膚の薄弱、多器官併発、強膜炎、角膜潰瘍、皮下又は骨膜下小結節の形成、さらに早期死亡を含む。RA及びOAの原因又は起源は明らかに異なるが、軟骨破壊に関連するサイトカイン及び酵素は同様のようである。
ペプチド成長因子は、軟骨成長及び軟骨細胞挙動(即ち、分化、移動、分裂、及びマトリクス合成又は分解)の重要な制御因子であると考えられている。F.S.Chen等、Am J. Orthop. 26:396-406 (1997)。軟骨修復を刺激することが既に提唱されていた成長因子には、インスリン様成長因子(IGF-1)、Osborn, J. Orthop. Res. 7:35-42 (1989);Florini & Roberts, J. Gerontol. 35:23-30 (1980);塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、Toolan等、J. Biomec. Mat. Res. 41:244-50 (1998);Sah等、Arch. Biochem. Biophys. 308:137-47 (1994);骨形態形成タンパク質(BMP)、Sato & Urist, Clin. Orthop. Relat. Res. 183:180-87 (1984);Chin等、Arthritis Rheum. 34:314-24 (1991)及びトランスフォーミング成長因子β(TGF-β)、Hill & Logan, Prog. Growth Fac. Res. 4:45-68 (1992);Guerne等、J. Cell Physiol. 158:476-84 (1994);Van der Kraan等、Ann. Rheum. Dis. 51:643-47 (1992)が含まれる。
【0014】
インスリン様成長因子(IGF-1)は、培養におけるマトリックス合成と細胞増殖の両方を促進し、K. Osborn. J. Orthop. Res. 7: 35-42(1989)、IGF-1の不適切な部分は骨関節炎の進行の病因的役割を有しうることである。R.D. Coutts,等, Instructional Course Lect. 47: 487-94, Amer. Acad. Orthop. Surg. Rosemont, IL(1997)。変形関節炎の患者の血清のIGF-1濃度がコントロールグループよりも低いことが示唆された研究もあるが、他に違いの見られなかった研究もある。にもかかわらず、血清のIGF-1レベルとIGF-1に対する軟骨細胞の反応性はともに、年齢に従い減少する。J. R. Florini & S.B. Roberts, J. Gerontrol. 35:23-30(1980)。従って、IGF-1の低下した利用性並びにIGF-1に対する減少した軟骨細胞反応性は、軟骨の恒常性を助長し、年齢の上昇と共に退化させうる。
IGF-1は、変形関節炎の抑制治療に提案されている。実際に、ペントサンポリ硫酸ナトリウム(軟骨細胞分解活性阻害剤)と組み合わせたIGF-1の関節内投与は、組織学的状態の改善をもたらし、分解酵素(中性メタロプロテイナーゼ及びコラゲナーゼ)を正常レベルに近づけ、メタロプロテイナーゼ及びマトリックスコラーゲンの組織阻害剤となる。R.A. Rogachefsky, 等, Ann. NY Acad. Sci. 732: 889-95(1994)。単独で又は軟骨再生を促進する他の成長因子をアジュバンドとしたIGF-1の使用は、WO91/19510、WO92/13565、US5444047、及びEP434652に記載されている。
【0015】
骨形成タンパク質(BMP)は、成長因子の大きな形質転換成長因子β(TGF-β)ファミリーのメンバーである。インビトロ及びインビボの研究において、BMPが間葉細胞の軟骨細胞への分化を促進することが示されている。K. Sato & M. Urist, Clin. Orthop. Relat. Res. 183:180-87 (1984)。さらに骨格成長因子及び軟骨誘導成長因子はBMPと相乗効果があり、これらの成長因子とBMP及び成長ホルモンの組み合わせは間葉細胞の分化を開始させる。分化した細胞の後の増殖は他の因子により促進される。D.J. Hill & A Logan, Prog. Growth fac. Res. 4: 45-68(1992)。
形質転換成長因子β(TGF-β)は、骨芽細胞、軟骨細胞、血小板、活性化リンパ球、及び他の細胞により産生される。R.D. Coutts等, 上掲。TGF-βは、標的細胞、用量及び細胞培養条件によって、マトリックス合成及び細胞増殖の促進及び抑制の両方の特性を有す。P. Guerne等, J. Cell Physiol. 158:476-84(1994); H. Van Beuningen等, Ann. Rheum. Dis. 52: 185-91(1993); P. Van der Kraan等, Ann. Rheum. Dis. 51:643-47(1992)。さらに、IGF-1と同様に、TGF-βの反応性は年齢と共に減少する。P.Guerne等, J. Cell Physiol. 158: 476-84(1994)。しかしながら、TGF-βは、血小板由来成長因子(PDGF)bFGF、及びIGF-1を含む他の成長因子よりも軟骨細胞増殖をより効果的に促進し(Guerne等, 上掲)、軟骨細胞によるプロテオグリカン産生を促進する。TGF-βはまた、軟骨細胞の異化作用を促進するサイトカインの影響を抑制調節するVan der Kraan等, 上掲。インビボで、TGF-βは、間葉細胞の軟骨細胞への分化と増殖を誘発し、ウサギの関節軟骨で部分的肥厚の欠陥の修復を促進する。E.B. Hunziker & L.Rosenberg, Trans. Osthopaed. Res Soc.19:236(1994)。
【0016】
研究者の中には軟骨又は軟骨細胞組織を修復する特定の成長因子の使用を中心に扱うものもいれば、他に、軟骨破壊を促進及び/又はマトリックス合成を阻害する分子の活性を抑制することを考えるものもいる。このような分子の1つには、関節内にあるいくつかの組織に不利に作用するサイトカインIL-1αがあり、滑膜炎の発生、及び上方制御マトリックス金属プロテイナーゼ及びプロスタグランジン発現に関連する。V. Baragi等、J. Clin. Invest. 96:2454-60 (1995);V.M. Baragi等、Osteoarthritis Cartilage 5:275-82 (1997);C.H. Evans及びP.D. Robbins, J. Keukoc. Biol. 64:55-61 (1998);C.H. Evans等、J. Rheumatol. 24:2061-63 (1997);R. Kang等、Biochem. Soc. Trans. 25:533-37 (1997);R. Kang等、Osteoarthritis Cartilage 5:139-43 (1997)。IL-1αに拮抗する手段の一つは、可溶性IL-1レセプターアンタゴニスト(IL-1ra)、IL-1のそのレセプターへの結合を抑制する天然発生タンパク質での処理によって、軟骨のIL-1の直接的及び間接的な作用を妨げるものである。哺乳動物において、ただ1つのプロテアーゼ、つまりインターロイキン1β-コンバターゼ(ICE)は、成熟した活性IL-1αを特異的に生成することができる。ICEの阻害は、IL-1αの生成を阻害することが示されており、関節炎の変性を遅延させうる(Martel-PElletier J.等 Front. Biosci. 4: d694-703)。溶解性IL-1レセプターアンタゴニスト(IL-1α)、軟骨細胞との相互作用からIL-1を防御することによりIL-1の影響を阻害することができる天然発生タンパク質は、関節炎の動物モデルにおいて効果的であることも示されており、関節炎の発生又が進行を防止するその能力について最近ヒトで試験されている。他のサイトカイン、例えばIL-1β、腫瘍壊死因子α、インターフェロンγ、IL-6及びIL-8は、滑膜繊維芽細胞様細胞、軟骨細胞及び/又はマクロファージの活性の増加に関連している。これらのサイトカインの抑制は炎症及び軟骨破壊を防止するのに有益な処理となりうる。実際に、TNF-α活性を抑制する分子は、リウマチ様関節炎を有する患者の関節で有益に作用することが示されている。
【0017】
軟骨マトリックスの分解は、プロテアーゼによるマトリックス分子(プロテオグリカン及びコラーゲン)の切断によると考えられている(Woessner JF Jr.,「Proteases of the extacellular matrix」, in Mow, V., Ratcliffe, A. (eds): Structure and Function of Articular Cartilage. Boca Raton, FL, CRC Press, 1994 及びSmith R.L., Front. In Biosci. 4:d704-712参照)。マトリックス分解に関係する重要な酵素は、まだはっきりと分かっていないが、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)及び「アグリカナーゼ」は関節破壊に重要な役割を有するようである。さらに、プロテイナーゼのセリン及びシステインファイリーのメンバー(例えば、カテプシン及びウロキナーゼ又はプラスミノーゲン活性化因子(uPA及びtPA))もまた関与しているようである。プラスミン、ウロキナーゼ プラスミノーゲン活性因子(uPA)及び組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)は、メタロプロテイナーゼの活性化の経緯において重要な役割を果たしうる。カテプシンB、L及びSに近い関係にあるグループはマトリックス分解に関係することが証明され、これらのカテプシンはOAにおいて若干増加する。IL-1、TNF-α及びLIFを含む多くのサイトカインは、軟骨細胞でのMMP発現を誘発する。MMPの誘発は、TGF-β及びIL-4により、少なくともウサギにおいてはFGF及びPDGFにより拮抗することができる。動物研究で示されるように、これらのプロテアーゼ(MMP及びアグリカナーゼ)の阻害剤は、生体内で障害から関節組織を少なくとも部分的に保護しうる。
酸化窒素(NO)は関節破壊において重要な役割を果たす。Ashok等、Curr. Opin. Rheum. 10:263-268 (1998)。IL-1等のサイトカインで刺激された場合以外にNOを生成しない正常な軟骨と異なり、骨関節炎関節から得られる軟骨は、更なる刺激がないにもかかわらず培地において3日間にわたって大量の酸化窒素を生成する。さらに、NO生成の抑制は、IL-1媒介軟骨破壊及び軟骨細胞の死、並びに動物モデルにおいて骨関節炎の進行を防ぐことが証明されている。
【0018】
(発明の概要)
出願人は、驚いたことに、WISPポリペプチドが軟骨細胞の分化又は増殖の刺激能又は亢進能のような有用な活性を持っており、よってWISPポリペプチドは軟骨性疾患及び/又は傷害の結果として損傷した軟骨を含む、軟骨の治療、修復又は保護に有用であり得ることを見出した。
一実施態様では、本発明は、軟骨性疾患の結果として損傷した軟骨の治療方法において、上記軟骨を有効量のWISPポリペプチドに接触させることを含む方法に関する。本発明における使用することが考えられるWISPポリペプチドには、限定されるものではないが、WISP-1、WISP-2及びWISP-3ポリペプチド並びにそれらの変異体が含まれ、これらは以下に更に説明される。場合によっては、軟骨は関節軟骨であり、用いられるWISPポリペプチドの量は治療的に有効な量である。好適な実施態様では、軟骨性疾患は変形性関節症又はリウマチ様関節炎である。本方法は、例えば治療的に有効な量のWISPポリペプチドを哺乳動物に投与することによって、インビボで、あるいは上記軟骨組織を培養中に有効量のWISPポリペプチドに接触させた後、治療した軟骨組織を哺乳動物中に移植することによってエクスビボで、実施されうる。また本方法は、WISPポリペプチドを治療薬として単独で用いるか、あるいは有効量の軟骨薬もしくはその他の治療法と併用することによって、実施されうる。例えば、WISPポリペプチドはあらゆる標準的な軟骨外科技術と併用することができる。WISPポリペプチドは標準的な軟骨外科技術の前に、その後に、及び/又はそれと同時に投与されうる。
【0019】
更なる実施態様では、本発明は、傷害によって損傷した軟骨を治療し、又は初期のもしくは持続する損傷を防止する方法において、上記軟骨を有効量のWISPポリペプチドに接触させることを含む方法に関する。より詳細には、治療される傷害は、マイクロダメージ又は鈍的外傷、軟骨骨折、骨軟骨骨折、腱、半月板、もしくは靱帯の損傷である。特定の観点では、傷害は過剰な機械的ストレスあるいはスポーツ損傷又は肥満から生じる他のバイオメカニカルな不安定性の結果のものでありうる。あるいは、本発明は、骨折を治療し又は修復を容易にする方法において、骨の損傷領域を有効量のWISPポリペプチドに接触させることを含む方法に関する。
他の実施態様では、本発明は、軟骨細胞又は軟骨細胞前駆体細胞を有効量のWISPポリペプチドに接触させることによって軟骨細胞又は軟骨細胞前駆体細胞の分化を亢進し、刺激し又は促進する方法に関する。
他の実施態様では、本発明は、適切な包装体中にWISPポリペプチドと担体、賦形剤及び/又は安定剤(例えばバッファー)を含有する、キット又は製造物品に関する。キット又は物品は、好ましくは、軟骨性疾患の結果として損傷した軟骨を治療するために、又は初期のもしくは持続する損傷を防止するためにWISPポリペプチドを用いるという指示書を含む。あるいは、キットは軟骨性疾患を治療するためにWISPポリペプチドを用いるという指示書を含みうる。
【0020】
本発明のより特定の実施態様には、哺乳動物の軟骨細胞又は組織を治療する方法において、変性軟骨性疾患により損傷した(又は傷害により損傷した)哺乳動物軟骨細胞又は組織を有効量のWISPポリペプチドに接触させることを含み、上記WISPポリペプチドが:
a)配列番号:3のアミノ酸23から367を含んでなるWISP-1ポリペプチド;
b)配列番号:3のアミノ酸1から367を含んでなるWISP-1ポリペプチド;
c)a)又はb)のポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を有するWISP-1ポリペプチド;
d)a)又はb)のポリペプチドの生物学的に活性な断片;
e)配列番号:10のアミノ酸24から250を含んでなるWISP-2ポリペプチド;
f)配列番号:10のアミノ酸1から250を含んでなるWISP-2ポリペプチド;
g)e)又はf)のポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を有するWISP-2ポリペプチド;
h)e)又はf)のポリペプチドの生物学的に活性な断片;
i)配列番号:9のアミノ酸34から372を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
j)配列番号:9のアミノ酸1から372を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
k)配列番号:8のアミノ酸16から354を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
l)配列番号:8のアミノ酸1から354を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
m)i)、j)、k)又はl)のポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を有するWISP-3ポリペプチド;及び
i)、j)、k)又はl)のポリペプチドの生物学的に活性な断片;
からなる群から選択されるポリペプチドである、方法が含まれる。
【0021】
場合によっては、WISP-1ポリペプチドはa)又はb)のポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を有し、該WISP-1ポリペプチドは軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する。あるいは、WISP-1ポリペプチドはa)又はb)のWISP-1ポリペプチドの生物学的に活性な断片であり、該生物学的に活性な断片は軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する。場合によっては、WISP-2ポリペプチドはe)又はf)のポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を有し、該WISP-2ポリペプチドは軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する。あるいは、WISP-2ポリペプチドはe)又はf)のWISP-2ポリペプチドの生物学的に活性な断片であり、該生物学的に活性な断片は軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する。場合によっては、WISP-3ポリペプチドはi)、j)、k)又はl)のポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を有し、該WISP-3ポリペプチドは軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する。あるいは、WISP-3ポリペプチドはi)、j)、k)又はl)のWISP-3ポリペプチドの生物学的に活性な断片であり、該生物学的に活性な断片は軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する。上で言及したWISPポリペプチドは一又は複数のポリエチレングリコール分子に結合されていてもよい。場合によっては、WISPポリペプチドはエピトープタグ又は免疫グロブリン分子に結合されていてもよい。本方法において、軟骨は関節軟骨であり得、また変性軟骨性疾患はリウマチ様関節炎又は変形性関節症であり得る。
【0022】
(発明の詳細な記載)
I.定義
「WISPポリペプチド」という用語は、天然配列ヒト及びマウスWISPタンパク質及びその遺伝子が少なくともWnt-1によって誘導されるここに記載される変異体を意味する。この用語には、WISP-1、WISP-2、及びWISP-3並びにそれらの変異体が含まれる。このようなWISP-1、WISP-2、及びWISP-3タンパク質は更に以下に記載され、1999年5月6日に公開されたPCT出願WO99/21998及びPennica等, Proc. Natl. Acad. Sci., 95:14717-14722 (1998)に記載されている。
ここで使用される、用語「WISP-1ポリペプチド」「WISP-1相同体」及びそれらの文法上の変化形は、天然配列WISP-1タンパク質及びそれらの変異体(ここで更に詳細に定義する)を包含する。WISP-1ポリペプチドは、ヒト組織型又は他の供給源のような様々な供給源から単離してもよく、あるいは組換え又は合成法によって、あるいはこれらの類似の技術の任意の組み合わせによって調製してもよい。
ここで使用される、用語「WISP-2ポリペプチド」「WISP-2相同体」、「PRO261」及び「PRO261ポリペプチド」並びにそれらの文法上の変化形は、天然配列WISP-2タンパク質及びそれらの変異体(ここで更に詳細に定義する)を包含する。WISP-2ポリペプチドは、ヒト組織型又は他の供給源のような様々な供給源から単離してもよく、あるいは組換え又は合成法によって、あるいはこれらの類似の技術の任意の組み合わせによって調製してもよい。
【0023】
ここで使用される、用語「WISP-3ポリペプチド」「WISP-3相同体」及びそれらの文法上の変化形は、天然配列WISP-3タンパク質及びそれらの変異体(ここで更に詳細に定義する)を包含する。WISP-3ポリペプチドは、ヒト組織型又は他の供給源のような様々な供給源から単離してもよく、あるいは組換え又は合成法によって、あるいはこれらの類似の技術の任意の組み合わせによって調製してもよい。
「天然配列WISP-1ポリペプチド」は、天然由来のWISP-1ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。このような天然配列WISP-1ポリペプチドは、自然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列WISP-1ポリペプチド」という用語には、特に、ここに開示されるWISP-1ポリペプチドの自然に生じる切断又は分泌型、自然に生じる変異型(例えば、選択的スプライシングがなされた形態又はスプライス変異体)及びWISP-1ポリペプチドの自然に生じる対立遺伝子変異体が包含される。本発明の一実施態様では、天然配列WISP-1ポリペプチドは、N末端メチオニンを伴うか伴わない、それぞれここに記載した配列番号:3のアミノ酸23から367(1999年5月6日に公開のWO99/21998に示された図3A及び3B(配列番号:3)において過去にまた提供)又はここに記載した配列番号:3のアミノ酸1から367(WO99/21998に示された図3A及び3B(配列番号:4)において過去に提供)を含有する成熟又は全長天然配列ヒトWISP-1ポリペプチドである。場合によっては、ヒトWISP-1ポリペプチドはここに記載した配列番号:3のアミノ酸23から367又はアミノ酸1から367の近接配列を含む。場合によっては、ヒトWISP-1ポリペプチドはATCC寄託番号第209533号のコード化ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0024】
本発明の他の実施態様では、天然配列WISP-1ポリペプチドは、ここに記載した配列番号:3のアミノ酸23から367又は1から367を含有する全長又は成熟天然配列ヒトWISP-1ポリペプチドであって、184番の位置のバリン残基又は202番の位置のアラニン残基がイソロイシン又はセリン残基にそれぞれ変化したもので、N末端メチオニンを伴うか伴わないものである。本発明の他の実施態様では、ここに記載した配列番号:3のアミノ酸23から367又は1から367を含有する全長又は成熟天然配列ヒトWISP-1ポリペプチドであって、184番の位置のバリン残基及び202番の位置のアラニン残基がイソロイシン又はセリン残基にそれぞれ変化したもので、N末端メチオニンを伴うか伴わないものである。本発明の他の実施態様では、それぞれここに記載した配列番号:4のアミノ酸23から367(WO99/21998に示された図1(配列番号:11)において過去に提供)、又はここに記載した配列番号:4のアミノ酸1から367(WO99/21998に示された図1(配列番号:12)において過去に提供)を含有する成熟又は全長天然配列マウスWISP-1ポリペプチドであって、N末端メチオニンを伴うか伴わないものである。
本発明の他の実施態様では、天然配列WISP-1ポリペプチドは、WO99/21998に示された配列番号:23、24、25、26、27、28、又は29を含む、ヒトWISP-1スプライス又は他の天然配列変異体の一つを含むヌクレオチド配列によってコードされるものであって、N末端メチオニンを伴うか伴わないものである。
【0025】
「天然配列WISP-2ポリペプチド」又は「天然配列PRO261ポリペプチド」は、天然由来のWISP-2ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。このような天然配列WISP-2ポリペプチドは、自然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列WISP-2ポリペプチド」という用語には、特に、ここに開示されるWISP-2ポリペプチドの自然に生じる切断又は分泌型、自然に生じる変異型(例えば、選択的スプライシングがなされた形態又はスプライス変異体)及びWISP-2ポリペプチドの自然に生じる対立遺伝子変異体が包含される。本発明の一実施態様では、天然配列WISP-2ポリペプチドは、ここに記載した配列番号:10のアミノ酸1から250とアミノ酸1から250を含む、ここに記載した配列番号:10のアミノ酸1−24から250までを(WO99/21998に示された図4(配列番号:15、16、及び56−77)において過去にまた提供)含有する成熟又は全長天然配列ヒトWISP-2ポリペプチドであって、N末端メチオニンを伴うか伴わない。場合によっては、ヒトWISP-2ポリペプチドはここに記載した配列番号:10のアミノ酸24から250又はアミノ酸1から250の近接配列を含む。場合によっては、ヒトWISP-2ポリペプチドはATCC寄託番号第209391号のコード化ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。本発明の他の実施態様では、天然配列WISP-2は、WO99/21998に示された図2のアミノ酸24から251とアミノ酸1から251(それぞれ配列番号:19及び20)を含む、WO99/21998に示された図2のアミノ酸1−24から251までを(配列番号:19、20、及び78−99)含有する成熟又は全長天然配列マウスWISP-2ポリペプチドであって、N末端メチオニンを伴うか伴わない。
【0026】
「天然配列WISP-3ポリペプチド」は、天然由来のWISP-3ポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。このような天然配列WISP-3ポリペプチドは、自然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列WISP-3ポリペプチド」という用語には、特に、ここに開示されるWISP-3ポリペプチドの自然に生じる切断又は他の型、自然に生じる変異型(例えば、選択的スプライシングがなされた形態又はスプライス変異体)及びWISP-3ポリペプチドの自然に生じる対立遺伝子変異体が包含される。本発明の一実施態様では、天然配列WISP-3ポリペプチドは、ここに記載した配列番号:9のアミノ酸34から372(WO99/21998の図6A及び6B(配列番号:32)において過去に提供)又はここに記載した配列番号:9のアミノ酸1から372(WO99/21998に示された図6A及び6B(配列番号:33)において過去に提供)をそれぞれ含む成熟又は全長天然配列ヒトWISP-3ポリペプチドであって、N末端メチオニンを伴うか伴わない。本発明の他の実施態様では、天然配列WISP-3ポリペプチドは、ここに記載した配列番号:8のアミノ酸16から354(WO99/21998に示された図7A及び7B(配列番号:36)において過去に提供)又はここに記載した配列番号:8のアミノ酸1から354(WO99/21998に示された図7A及び7B(配列番号:37)において過去に提供)をそれぞれ含む成熟又は全長天然配列ヒトWISP-3ポリペプチドであって、N末端メチオニンを伴うか伴わない。場合によっては、ヒトWISP-3ポリペプチドはここに記載した配列番号:9のアミノ酸34から372又はアミノ酸1から372の近接配列を含む。場合によっては、ヒトWISP-3ポリペプチドはここに記載した配列番号:8のアミノ酸16から354又はアミノ酸1から354の近接配列を含む。場合によっては、ヒトWISP-3ポリペプチドはATCC寄託番号第209707号のコード化ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0027】
「WISP-1変異体」という用語は、配列番号:3のアミノ酸23から367の推定アミノ酸配列を有するヒト成熟WISP-1と、及び/又は配列番号:3のアミノ酸1から367の推定アミノ酸配列を有するヒト全長WISP-1と、及び/又はWO99/21998に示された図1(配列番号:11)に示された推定アミノ酸配列を有するマウス成熟WISP-1及び/又はWO99/21998の図1(配列番号:12)に示された推定アミノ酸配列を有するマウス全長WISP-2と、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有するものとして以下に定義するような活性なWISP-1ポリペプチドを意味する。そのような変異体には、例えば、配列番号:3の全長又は成熟配列のN末端又はC末端に対して一又は複数のアミノ酸残基が付加され、又は欠失され(すなわち、断片)たWISP-1ポリペプチドで、他の種の変異体を含むものが含まれるが、天然配列WISP-1ポリペプチドは除かれる。
【0028】
「WISP-2変異体」又は「PRO261変異体」という用語は、配列番号:10のアミノ酸24から250の推定アミノ酸配列を有するヒト成熟WISP-2と、及び/又は配列番号:10のアミノ酸1から250の推定アミノ酸配列を有するヒト全長WISP-2と、及び/又はWO99/21998の図2(配列番号:19)に示された推定アミノ酸配列を有するマウス成熟WISP-1及び/又はWO99/21998の図2(配列番号:20)に示された推定アミノ酸配列を有するマウス全長WISP-2と、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有するものとして以下に定義するような活性なWISP-2ポリペプチドを意味する。そのような変異体には、例えば、配列番号:10の全長又は成熟配列のN末端又はC末端に対して一又は複数のアミノ酸残基が付加され、又は欠失され(すなわち、断片)たWISP-2ポリペプチドで、他の種の変異体を含むものが含まれるが、天然配列WISP-2ポリペプチドは除かれる。
【0029】
「WISP-3変異体」という用語は、配列番号:9のアミノ酸34から372の推定アミノ酸配列を有するヒト成熟WISP-3と、及び/又は配列番号:9のアミノ酸1から372の推定アミノ酸配列を有するヒト全長WISP-3と、及び/又は配列番号:8のアミノ酸16から354の推定アミノ酸配列を有するヒト成熟WISP-3と、及び/又は配列番号:8のアミノ酸1から354の推定アミノ酸配列を有するヒト全長WISP-3と、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有するものとして以下に定義するような活性なWISP-3ポリペプチドを意味する。そのような変異体には、例えば、配列番号:9又は配列番号:8の全長又は成熟配列のN末端又はC末端に対して一又は複数のアミノ酸残基が付加され、又は欠失され(すなわち、断片)たWISP-2ポリペプチドで、他の種の変異体を含むものが含まれるが、天然配列WISP-3ポリペプチドは除かれる。
【0030】
ここに同定されるポリペプチド配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、ここで同定されたWISP配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテク社によって作成され、表1に示したソースコードは米国著作権庁, Washington D.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテク社、South San Francisco, Californiaを通して公的に入手可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標) V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0031】
ここで定義される「ストリンジェントな条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いるもの;(3)42℃における50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5xデンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸と、42℃における0.2xSSC及び0.1SDSでの洗浄;又は(4)10%デキストラン硫酸、2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)のバッファー及び55℃での50%ホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1xSSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を用いるものによるものである。
「中程度のストリンジェント条件」は、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Press, 1989)に記載されているように同定され、上記のストリンジェントより低い洗浄溶液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度のストリンジェント条件は、20%ホルムアミド、5xSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハード液、10%デキストラン硫酸、及び20mg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中の37℃での終夜インキュベーション、次いで1xSSC中37−50℃でのフィルターの洗浄といった条件である。当業者であれば、プローブ長などの因子に適合させる必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識する。
【0032】
「単離された」とは、ここで開示された種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離されたポリペプチドには、WISPの自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0033】
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0034】
「リポソーム」は、種々の型の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤からなる小型の小胞であり、哺乳動物への薬物(WISPポリペプチド及びここで記載されるWISP変異体など)の輸送に有用である。リポソームの成分は、通常は生体膜の脂質配列に類似する二層形式に配列させる。
ここで用いられる「イムノアドヘシン」なる用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインとを結合した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を持ち、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(即ち「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
【0035】
本発明のWISPポリペプチド又はWISP変異体において「活性な」及び「活性」とは、天然又は天然発生WISPポリペプチドの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持する本発明のタンパク質の形態を意味し、「生物学的」活性とは、天然又は天然発生WISPポリペプチドによって生ずる(阻害性又は刺激性の)生物学的機能であって、天然又は天然発生ポリペプチドが有する抗原性エピトープに対して抗体を生成する能力を除くものを意味する。同様に、「免疫学的」活性とは、本発明の天然又は天然発生ポリペプチドが有する抗原性エピトープに対する抗体の生成における、抗原として働く能力を意味する。
【0036】
ここでのWISPポリペプチド又はWISP変異体における「生物学的活性」は、軟骨の再生及び/又は破壊防止を促進する、あるいは軟骨細胞の分化又は増殖(すなわち、成熟した軟骨細胞への前駆体細胞の分化)を増強又は促進するこのような分子の能力に関して使用される。場合によっては、軟骨は関節軟骨であり、軟骨の再生及び/又は破壊は外傷又は軟骨疾患に関する。例えば、生物学的活性は、関節軟骨からのプロテオグリカン(PG)放出の抑制、関節軟骨でのPG合成の増加、NOの生成の抑制等により定量されうる。
用語「軟骨疾患」は、疾病又は外傷に因るものを含む、影響した体の部分の痛みの症状、硬直及び/又は動作の制限により更に明らかになる疾患の総称を意味する。「軟骨疾患」の範囲に含まれるのは、「変性軟骨疾患」−少なくとも部分的な、体の結合組織の変性又は代謝異常に特徴づけられ、関節又は筋肉、滑液包(滑膜)、腱及び繊維組織を含む関連構造のみならず、成長板も含む疾患の総称である。一実施態様では、該用語は、滑らかな関節軟骨表面の破壊及び軟骨マトリックスの変性により特徴づけられる「関節軟骨疾患」を含む。更なる病態には、酸化窒素の生成、マトリックス合成の抑制又は減少を含む。
【0037】
「関節軟骨疾患」の範囲内には、骨関節炎(OA)及びリウマチ様関節炎(RA)が含まれる。OAは、関節マージンにおける明白な骨拡張に比例した局在化した軟骨の非対称性破壊によって特徴付けられる。典型的に、OAは、手の指節間関節、第一腕掌骨関節、股関節、膝、脊椎及びミッドフット(midfoot)の幾つかの関節に影響を及ぼすが、足首、肘、及び肩などの大関節は容赦される傾向にある。OAは、しばしば、血色素症、アルカプトン尿症などの代謝病、発育性臼蓋形成不全(先天性股関節脱臼)、肢長不一致などの発育異常とも関連し、痛風、敗血性関節炎及び神経障害性関節炎などの外傷性及び炎症性関節炎を含む。また、OAはスポーツ外傷又は肥満により生じるような広範な生体力学不安定の後に現れうる。
【0038】
リウマチ様関節炎は(RA)、関節の対称性滑膜炎によって特徴付けられる全身性、慢性、自己免疫疾患で、典型的には、小及び大可動関節などに影響を及ぼす。RAが進行すると、その症状には、発熱、体重の減少、皮膚の薄弱、多器官併発、強膜炎、角膜潰瘍、皮下又は骨膜下小結節、さらに早期死亡が含まれる。RAの症状はしばしば、青年期に現れ、脈管炎、皮膚及び筋肉の萎縮、皮下小結節、リンパ節症、脾腫、白血球減少症及び慢性貧血が含まれる。
さらに、「変性軟骨疾患」という用語は、全身性紅斑性狼瘡及び痛風、アミロイドーシス又はフェルティ症候群を含み得る。さらに、該用語は、乾癬性関節炎、急性炎症(例えば、エルシニア関節炎、ピロリン酸関節炎、痛風関節炎(arthritis urica)、敗血性関節炎)、外傷関連関節炎、炎症性腸疾患(例えば、クローン病)、多発性硬化症、糖尿病(例えば、インスリン依存性及びインスリン非依存性)、肥満症、巨細胞関節炎及びシェーグレン症候群を網羅する。
【0039】
本発明の方法によって治療されるものの少なくとも幾つかの他の免疫性及び炎症性疾患の例には、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症誘発性筋疾患、(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間血色素尿)、自己免疫性血小板減少症(特発的血小板減少性紫斑病、免疫媒介血小板減少症)、甲状腺炎(グレーブ疾患、ハシモト甲状腺炎、若年性リンパ性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、自己免疫炎症性疾患、(例えば、アレルギー性筋痛性脳脊髄炎、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、自己免疫性ぶどう膜炎、甲状腺中毒症、強皮症、全身性紅斑狼瘡、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、限局性腸炎、末梢回腸炎、肉芽腫性腸炎、限局性回腸炎、末端性回腸炎)自己免疫性甲状腺疾患、悪性貧血)及び同種移植の拒絶反応、真性糖尿病、免疫性腎臓疾患(糸状体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢及び抹消神経系の脱髄性疾患、例えば多発性硬化症 、特発性脱髄性多発神経障害又はGuillain-Barre症候群、及び慢性炎症誘発性脱髄性多発神経障害、肝胆道疾患、例えば感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎及び他の非肝炎性ウィルス)、自己免疫性慢性活性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性腸疾患(例えば、クローン病)、グルテン感受性腸疾患、及びフィップル疾患、水泡性皮膚疾患を含む自己免疫性又は免疫媒介性皮膚疾患、多形性紅斑及び接触皮膚炎、乾癬、アレルギー性疾患、例えば喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及びジンマシン、肺の免疫学的疾患、例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び高感受性間質性肺炎、移植片拒絶及び移植片対宿主の疾患を含む、移植関連疾患を含む考案に従って治療することができる。感染性疾患には、ウイルス性疾患、例えばエイズ(HIV感染)、A、B、C、D、及びE型肝炎、ヘルペス等、細菌性感染症、真菌性感染症、原生動物感染症、寄生虫感染症、及び呼吸器合胞体ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス等、及びアレルギー疾患、例えばアナフィラキシー性過敏症、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、春季カタル、湿疹、じんま疹及び食物アレルギー等が含まれる。
【0040】
「治療」とは、疾患の病理の進展阻止又は変化の本発明で実施される介入である。従って、「治療」は治療的処置及び予防的又は保護的手段の両方を指し、標的である病理学的状態又は疾患を予防、又は抑制(減少)することが目的である。治療が必要なものは、既に疾患に罹患しているもの並びに疾患が防止されるべきものを含む。免疫関連疾患の治療では、治療薬は直接的に疾患の病理成分の応答の大きさを低下又は増加させうるし、或いは疾患を他の治療剤による治療、例えば抗生物質、抗真菌剤、抗炎症剤、化学療法剤等に対してより敏感にしうる。
用語「有効量」とは、損傷した軟骨の検出可能な改善又は修復あるいは軟骨マトリックスの単離した試料における持続した又は誘発された軟骨変性からの測定可能な保護の何れかを引き起こす、誘発する又は結果的に生じる(例えば、マトリックス内プロテオグリカンの保持、マトリクスからのプロテオグリカン放出の抑制、プロテオグリカン合成の促進)、WISPポリペプチドの最小濃度である。更に、「治療的有効量」とは、少なくとも外傷又は軟骨疾患から生じる症状を和らげる(例えば、損傷した関節軟骨の検出可能な改善又は修復の何れかを引き起こす、誘発する又は結果的に生じる、あるいは軟骨変性の持続又は発生からの測定可能な保護を引き起こす、誘発する又は結果的に生じること、関節可動域の改善、痛みの減少)のに有効な、哺乳動物に投与するWISPポリペプチドの最小濃度(量)である。
【0041】
「軟骨剤」は、成長因子、サイトカイン、小分子、抗体、RNA片又はDNA片、ウィルス粒子、ペプチド、又は化学物質であってもよく、軟骨に有利な効果をもたらし、ペプチド成長因子、異化アンタゴニスト及び骨-、滑膜-又は抗炎症因子を含みうる。あるいは、「軟骨剤」はペプチド成長因子-例えば線維芽細胞成長因子(例えば、FGF-1、FGF-2、...FGF-21、等々)、IGF's(I及びII)、TGF-βs(1-3)、BMPs(1-7)、又は例えば増殖、分化、移動、付着、又は軟骨細胞によるマトリックス産生を変化させることによって軟骨の本質的な修復反応を促進することができる、EGF、HB-EGF、TGF-β等の上皮成長因子ファミリーのメンバーの任意のものであり得る。あるいは、「軟骨剤」は軟骨の異化作用に拮抗する因子(例えば、IL-1レセプターアンタゴニスト(IL-1ra)、NO阻害剤、IL1-β転換酵素(ICE)阻害剤、IL-6、IL-8、LIF、IFNγの活性、TNF-α活性を阻害する因子、テトラサイクリン及びその変異体、アポトーシスの阻害剤、MMP阻害剤、アグリカナーゼ阻害剤、カテプシン及びウロキナーゼ又は組織プラスミノーゲン活性化剤(uPA及びtPA)等のセリン及びシステインプロテイナーゼの阻害剤)であり得る。あるいはまた、軟骨剤は下にある骨(即ち、骨因子、例えば、二リン酸エステル又はオステオプロテグリン)又は周囲の滑膜(即ち、滑膜因子)に影響することにより軟骨に直接作用する因子又は抗炎症因子(例えば、抗TNF-α(Remicade(登録商標)等の抗TNFα抗体、並びにEnbrel(登録商標)等のTNFレセプター免疫アドヘシンを含む)、IL1ra、IL-4、IL-10、IL-13、NSAIDs)を含む。軟骨剤の概説としては、例えばMartel-Pelletier等, Front. Biosci. 4: d694-703(1999); Hering , T.M., Front. Biosci. 4: d743-761(1999)を参照のこと。
【0042】
「慢性」投与とは、急性の様式とは異なり、初期の治療効果(活性)を長時間に渡って維持するために連続的な様式で薬剤を投与することを指す。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処理である。
治療の目的のための「哺乳動物」は、ヒト、家庭及び農業用動物、及び動物園、スポーツ用、又はペット用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ブタ、ハムスターなどを含む哺乳動物に分類される任意の動物を称する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
一又は複数の更なる治療薬と「組合わせた」投与には、いずれかの順番による同時的(併用の)及び継続的な投与が含まれる。
【0043】
ここで用いられる「担体」は、製薬上許容される担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、使用用量及び濃度でそこに暴露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性のものである。しばしば、生理学的に許容される担体の例は、水性pH緩衝溶液である。生理学的に許容される担体は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSTM(登録商標)、ヒアルロン酸(HA)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0044】
II.本発明の方法及び組成物
本発明の方法によれば、変異体WISPポリペプチドは、変性軟骨疾患並びに種々の他の免疫及び免疫関連症状の治療に利用できる。このようなWISPポリペプチドは、ここでWISP-1、WISP-2、及びWISP-3及びその変異体と称されるポリペプチド(並びにその誘導タンパク質、例えばエピトープタグ形態又はそのIg-融合構築物)を含む。WISPポリペプチドはインビボ並びにエキソビボで使用されうる。任意には、WISPポリペプチドは、更に下記で詳細に説明される製薬組成物の形態で使用される。
本発明で考慮される変性軟骨疾患はリウマチ様関節炎は(RA)を含む。RAは、関節の対称性滑膜炎によって特徴付けられる全身性、慢性、自己免疫疾患で、典型的には、小及び大可動関節などに影響を及ぼす。RAが進行すると、その症状には、発熱、体重の減少、皮膚の薄弱、多器官併発、強膜炎、角膜潰瘍、皮下又は骨膜下小結節、さらに早期死亡が含まれる。OAとは対照的に、RAの症状はしばしば、青年期に現れ、関節外症状はあらゆる臓器に影響があり、関節破壊が左右対称で、大及び小関節の両方に同様に生じる。関節外の症状は、関節脈管炎、皮膚及び筋肉の萎縮、皮下小結節、リンパ節症、脾腫、白血球減少症及び慢性貧血が含まれる。更に、RAは、様々な疾患の発症と本質的に異質であり、患者の90%において病気の経過中の血漿リウマチ因子の形成に関与する。典型的には、RAを有する患者はまた、異常に活発な免疫系を持つ。RAに罹っているかなり多くのヒトは、単球及びマクロファージ上のクラスII主要組織適合性複合体分子の増大された活性化に関連した遺伝的感受性を有する。これらの組織適合性複合体分子は、これらのクラスII分子のレセプターを担持する活性化T細胞に対する抗原の存在に関わる。RAに対する遺伝的素因は、非常に重篤な症状を持つヒト患者における高度に保存された白血球抗原DRのサブタイプDw4、Dw14及びDw15の罹患率によって支持される。
【0045】
骨関節炎(OA)は、関節構造に影響を及ぼし、その結果痛み及び機能欠損を引き起こす局所的変成疾病である。OAは2のタイプ:原発性及び二次性に分類される。原発性OAとは、潜在的な因果関係が決定されない変成関節疾病の範囲を意味する。典型的に、原発性OAによって影響を受ける関節は、手の指節間関節、第一腕掌骨関節、股関節、膝、脊椎及びミッドフット(midfoot)の幾つかの関節である。一次性OAにおいて、足首、肘、及び肩などの大関節は容赦される傾向にある。これに対して、二次性OAは決まった怪我又は外傷の結果として生じる。二次性OAは、しばしば、血色素症、アルカプトン尿症などの代謝病、発育性臼蓋形成不全(先天性股関節脱臼)、肢長不一致などの発育異常と関連し、リウマチ様関節炎、痛風、敗血性関節炎及び神経障害性関節炎などの外傷性及び炎症性関節炎を含む。
OAに関する最初の変性は、プロテオグリカンがマトリックスから失われるので、関節軟骨表面の擦り切れ及び線維化として現れる。連続した関節の使用で、表面の線維化が進行し、欠損が軟骨に更に深く入り込み、軟骨組織の一部が失われる。さらに、軟骨の下にある骨(軟骨下骨)が薄くなり、軟骨が失われるので、徐々に骨が露わになる。非対称な軟骨破壊によって醜い傷跡が生じうる。骨増殖体と呼ばれる骨小結節がしばしば軟骨表面の周辺に形成され、場合によっては隣接した浸食領域にまで広がる。これらの骨増殖体の表面が広がると、血管の増殖が生じ、繊維軟骨を含む組織栓の形成を生じる。
【0046】
軟骨は無血管であるため、軟骨層に生じる損傷は軟骨下骨にまで進入ないが、僅かな内在する複製の潜在力を有する常在性の軟骨細胞の修復作業はなされなくなる。しかしながら、軟骨下骨に浸透した場合、その血管供給は3つの修復過程を生じさせる。この型の損傷に応答して合成される最適以下の軟骨は、その線維マトリックスのためにここで「繊維軟骨」と称されるが、これは、最適以下の生化学及び機能特性を有し、よって更に摩耗及び破壊されやすくなる。罹患又は損傷した関節では、メタロプロテイナーゼ(MMP)、例えばコラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ストロメライシン、アグリカナーゼ、及び他のプロテアーゼの増加した放出は、更なる軟骨の薄化及び欠損を引き起こす。インビトロ研究では、IL-1α、IL-1β、TNF-α、PDGF、GM-CSF、IFN-γ、TGF-β、LIF、IL-2及びIL-6、IL-8等のサイトカインが滑膜繊維芽細胞様細胞、マクロファージ、T細胞、及び/又は破骨細胞の活性の代わりをすることができることが示され、これらのサイトカインが生体内でのマトリックスの代謝回転を調節しうることが示唆された。
軟骨の機能特性はその生化学的組成により決定される。軟骨構造は軟骨の引張強度及び硬度に寄与するが、圧縮性(又は弾性)はそのプロテオグリカン成分による。健康な関節軟骨では、II型コラーゲンが優性である(約90−95%含む)が、少量のV、VI、IX及びXI型コラーゲンもまた存在する。軟骨プロテオグリカン(PG)は、架橋結合した硫酸化グリコサミノグリカンを有する、水力学的に大きい集合性PG、並びにデコリン、バイグリカン及びルミカン等の水力学的により小さい非集合性のPGを含む。
【0047】
軟骨に対する傷害は、3つのカテゴリーに分けられる:(1)微細損傷又は鈍的外傷、(2)軟骨骨折、及び(3)骨軟骨骨折である。
軟骨細胞及び軟骨マトリクスに対する微細損傷は、単一の衝撃により、連続した鈍的外傷により、又は生体力学的に不安定な関節の連続使用によって引き起こされ得る。実際に、変性関節の初期段階に見られるような代謝性又は生化学的変化は、関節軟骨の反復した負荷に関わる動物モデルに複製されうる。Radin等, Clin. Orthop. Relat. Res. 131: 288-93(1978)。このような実施例は、関節炎の関節に見られる軟骨損失の明確なパターンに加えて、疾患における関節軟骨の整合性及び恒常性の欠損に生化学的負荷が関与する役割をはっきりさせる。Radine等, J Orthop Res. 2: 221-234(1984); Radin等, Semin Arthritis Rheum(補足2)21: 12-21(1991); Wei等, Acta Orthop Scand 69:351-357(1998)。軟骨細胞は、基礎的な割合ではプロテオグリカンによって軟骨マトリックスを補充することができるが、コラーゲン網への同時損傷は損失率を増加させ、不可逆性の変性を生じる。Buckwalter等, J. Am. Acad. Orthop. Surg. 2:192-201(1994)。
【0048】
軟骨骨折は軟骨下板を破らずに関節表面が破壊されることに特徴づけられる。外傷部位で軟骨細胞壊死が生じると、続いて外傷に隣接する生軟骨細胞の分裂及び代謝活性が増加して線維組織による関節表面の壊裂のライニングを引き起こす。軟骨細胞活性の増加は一時的であり、新しいマトリックス成分の不十分な質と量で修復反応が起こる。
3つのタイプのうち最も重篤である骨軟骨骨折は、潮標(tidemark)又は下の軟骨下プレートをクロスリンクする傷害である。このタイプの傷害において、軟骨下脈管構造の存在により、血管組織で典型的に遭遇する3相の反応が引き起こされる:(1)壊死;(2)炎症;(3)修復である。最初、傷害は血液又は血の固まりで埋められる。生じたフィブリンの固まりは炎症反応を活性化し、血管形成修復組織となり、種々の細胞成分がトランスフォーミング成長因子β(TGF-β)、血小板由来成長因子(PDGF)、骨形態形成タンパク質、及びインスリン様成長因子を含む、成長因子及びサイトカインを放出する。Buckwalter等、J. Am. Acad. Orthop. Surg. 2:191-201 (1994)。
【0049】
骨軟骨骨折に関連する最初の修復反応は、前駆体の軟骨細胞への補充、増殖及び分化に特徴付けられる。間葉幹細胞はフィブリン網に堆積し、最終的には線維軟骨領域となる。F. Shapiro等, J. Bone. Joint Surg. 75: 532-53(1993); N. Mitchell及びN. Shepard, J. Bone Joint Surg. 58:230-33(1976)。これらの幹細胞は、隣接した関節表面よりむしろ下にある骨髄からのものであると考えられ、軟骨細胞へと分化が進む。外傷の後6〜8週で、修復した組織はいくつかのI型コラーゲンと共に大部分がII型であるコラーゲン及びプロテオグリカンのマトリックスに軟骨細胞様細胞を含む。T. Furukawa等, J. Bone Joint Surg. 62: 79-89(1980); J. Cheung等, Arthritis Rheum. 23:211-19(1980); S.O. Hjertquist & R. Lemperg, Calc. Tissue Res. 8: 54-72(1971)。しかしながら、この新しく堆積したマトリックスは退化し、軟骨組織はより多くの線維組織及び線維軟骨に置き換わり、コラーゲンの合成はII型からI型に変化する。H.S. Cheung等, J. Bone Joint Surg. 60: 1076-81(1978); D.Hamerman, 「Prospects for medical intervention in cartilage repair」, Joint cartilage degradation: Basic and clinical aspects, Eds. Woessner JF等, (1993); Shapiro等, J. Bone Joint Surg. 75: 532-53(1993); N. Mitchell & N. Shepard, J. Bone joint Surg. 58: 230-33(1976); S.O. Hjertquist & R. Lemperg, Calc. Tissue Res. 8: 54-72(1971)。初期の変性の変化は、表面の線維化、プロテオグリカンの枯渇、軟骨細胞のクローニングと死、及び表面から深層への縦割れを含む。外傷の一年後には、修復した組織は繊維軟骨と硝子軟骨が混在し、大量のI型コラーゲンを有し、これは正常な関節軟骨で大した量で見られることはないものである。T. Furukawa等, J. Bone Joint Surg. 62: 79-89(1980)。
【0050】
炎症は骨関節炎の初期現象ではないようだが、炎症が骨関節炎関節に生じる。外傷の後及び炎症の間に滑膜ライニングに浸潤する炎症細胞(例えば、単球、マクロファージ、及び好中球)はメタロプロテイナーゼ、並びに分解酵素の更なる放出を助長する能力のある異化サイトカインを産生する。炎症と関節破壊は関節炎の動物モデルの全てにおいて完全な相関は示さないが、炎症を抑制するIL-4、IL-10及びIL-13等の物質は関節炎の動物において軟骨及び骨の病状も減少させる(Martel-Pelletier J.等 Front. Biosci.4:d694-703)。炎症性サイトカインを抑制する物質の使用は、OA患者に発生する局所性滑膜炎に対抗することによりOAの進行を遅らせうる。
OAは、骨の象牙質化を引き起こす関節軟骨の分解のみならず、この組織のいわゆる硬化を生じる軟骨下骨の広範な再造形も伴う。これらの骨の変化は、しばしば局所的な吸収の結果としての軟骨下嚢胞の形成を伴う。骨吸収を抑制する物質、即ちオステオプロテグリン又はビスホスホネートは、関節炎の動物モデルにおいて有望な結果を示した。Kong等, Nature 402:304-308 (1999)。
【0051】
全身性紅斑性狼瘡において、疾患の中心媒介物は自己タンパク質/組織に対する自己反応性抗体の産出であり、続いて、免疫媒介炎症が生じ、抗体は直接的又は間接的に組織傷害を媒介する。しかし、Tリンパ球は組織ダメージに直接関与しないことが示されており、Tリンパ球は自己反応性抗体の発育に必要である。よって、疾患の発生はTリンパ球に依存している。腎臓、肺、筋骨格、皮膚粘膜、眼、中枢神経系、心臓血管系、胃腸管、骨髄及び血液を含む複数の器官及び系が臨床的な影響を受ける。
若年性慢性関節炎は、多くの場合16才以下で発症する慢性特発性炎症疾患である。その表現型はRAといくつかの類似点があり;リウマチ因子がポジティブである患者の中には若年性リウマチ様関節炎に分類されるものもいる。この疾患は主な3つのカテゴリー:小関節(pauciarticular)、多関節(polyarticular)及び全身性のものに亜分類される。関節炎は重度で局所的な破壊が生じ、関節強直症及び遅延成長に至るおそれもある。他の徴候には慢性前ブドウ膜炎及び全身性アミロイド症が含まれる。
【0052】
脊椎関節症は、一般的にHLA-B27遺伝子生成物の発現に関連した、いくつかの共通した臨床的特徴を有する疾患のグループである。疾患には:強直症、脊椎炎(sponylitis)、ライター症候群(反応性関節炎)、炎症性大腸疾患に関連した関節炎、乾癬に関連した脊椎炎、若年発生脊椎関節症及び未分化脊椎関節症が含まれる。区別する特徴には、脊椎炎を伴うか伴わない仙腸関節炎;HLA-B27(血清学的には、クラスI MHCのHLA-B座位にある定義された対立遺伝子)を伴う炎症非対称性関節炎;眼の炎症、及び他のリウマチ疾患に関連した自己抗体の不在が含まれる。疾患の誘導における鍵として関わるほとんどの細胞はCD8+Tリンパ球であり、クラスI MHC分子により付与される抗原を標的としている細胞である。CD8+T細胞は、MHCクラスI分子により発現した外来ペプチドであるかのように、クラスI MHC対立遺伝子HLA-B27と反応する。HLA-B27のエピトープが細菌性又は他の微生物の抗原エピトープを模倣し、よってCD8+T細胞の反応が誘発されると仮定されている。
本発明で使用されるWISPポリペプチドは、組換え発現技術を含む任意の適した方法によって調製され得る。組換え発現の技術は、当業者によく知られており、適切な材料と方法はPCT出願、WO99/21998に記載されている。任意には、WISPポリペプチドをCHO細胞、大腸菌又は酵母などの宿主細胞を用いて発現させる。WISPポリペプチドは完全長ポリペプチド(ここで定義される)、又はその変異体形態、並びにWISPポリペプチドの他の変形(例えば免疫グロブリン、エピトープタグ、ロイシンジッパー又は他の非タンパク質様重合体と融合して又は結合して)を含みうる。
【0053】
イムノアドヘシン分子は、ここに開示の方法におけるさらなる使用が考慮される。WISPイムノアドヘシンは、全長ポリペプチドの他に細胞外ドメイン(ECD)配列又はECD配列フラグメントを含むレセプターの可溶性型のような、WISPの様々な形体を含んでもよい。ある実施態様において、分子は、WISPと抗体又は抗体の特定の領域との融合体を含んでもよい。イムノアドヘシンの二価の形体に対して、そのような融合は、IgG分子のFc領域に対して行われてもよい。Ig融合は、好適には、Ig分子の少なくとも1の可変領域に代えて、レセプターポリペプチドの可溶性型(膜貫通ドメイン欠失又は不活性化型)で置換することを含む。特に好適な実施態様において、イムノグロブリンの融合は、IgG1分子のヒンジ、CH2及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。イムノグロブリン融合体の生産については、1995年6月27日発行の米国特許第5,428,130号、及びChamow等, TIBTECH, 14:52-60(1996)も参照のこと。
他の実施態様において、WISPポリペプチドは、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号に記載された方法で、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンのうち一つに、ポリペプチドを連結させることにより共有結合的に修飾される。このようなWISPポリペプチドのペグ化形態は当該技術分野において既知の方法を用いて調製してもよい。
また、これらの分子のロイシンジッパー形態も本発明によって考慮される。「ロイシンジッパー」は当該技術分野において、その融合相手(例えば、ロイシンジッパーが融合し、連結する配列又は分子)の二量体化又は三量体化を増強し、促進し、又は引き起こすロイシンに富む配列のことを意味するために使用される語句である。様々なロイシンジッパーポリペプチドは当該分野において記述されている。例えば、Landschulz等, Science 240:1759 (1988); WO94/10308;Hoppe等, FEBS Letters 344:1991 (1994); Maniatis等, Nature 341:24 (1989)を参照されたい。当業者であれば、ロイシンジッパー配列をWISPポリペプチドの5'末端又は3'末端の何れかに融合しうることは理解するであろう。
【0054】
また、本発明のWISPポリペプチドは、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に該レセプターポリペプチドを融合することによりキメラ分子を形成する方法で修飾してもよい。好ましくは、そのような異種性ポリペプチド又はアミノ酸配列は、キメラ分子をオリゴマー化するように作用するものである。一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドと本発明のWISPポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般的には本発明のポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このようなWISPポリペプチドのエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によってWISPポリペプチドを容易に精製できるようにする。種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(poly-his)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Field等, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)]を含む。
【0055】
本発明で使用され得るWISPポリペプチドの治療的製剤は、所望される程度の純度を持つ活性分子を、任意の製薬上許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合することにより調製され保存される(Remington's Pharmaceutical Science 16th edition, Osol, A. Ed. [1980])。このような治療的製剤は、凍結乾燥又は水溶性形態で在り得る。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンズアルコニウムクロリド;ベンズエトニウムクロリド;フェノール;ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、デキストリン又はヒアルロナンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はTWEEN(商標登録)、PLURONICS(商標登録)、及びポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0056】
また、WISPポリペプチドは、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中にカプセル化することにより調製される。このような調製物は、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中にて投与され得る。これらの技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16版 (又はさらに新しい版), Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
このようなポリペプチドの投与を必要とする任意の疾患又は疾病の治療に適した放出特性を持つ製剤でWISPポリペプチドの持続性又は徐放性投与が望まれる場合、マイクロカプセル化が考えられる。持続放出のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、成功裏に実施されている。Johnson等, Nat. Med., 2: 795-799 (1996); Yasuda, Biomed. Ther., 27: 1221-1223 (1993); Hora等, Bio/Technology, 8: 755-758 (1990); Cleland, 「Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polyactide Polyglycolide Microsphere Systems」 in Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell 及び Newman. eds. , (Plenum Press: New York, 1995), p. 439-462; WO 97/03692, WO 96/40072, WO 96/07399; 及びU.S. Pat No. 5,654,010参照。
【0057】
持続性放出製剤の好適な例には、活性分子を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスが含まれ、該マトリクスは、例えばフィルム又はマイクロカプセルの成形物の形態である。徐放性マトリクスの例は、一又は複数のポリアンヒドリド(例えば、U.S.P.4,891,225;4,767,628)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸及び乳酸−グリコール酸の共重合ポリエステル(米国特許出願第3,773,919号; 同第4,767,628号; 同第4,530,840号;Kulkarni等、Arch. Surg. 93:839 (1966))、ポリリジンなどのポリアミノ酸、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドアクリル酸、ポリアクリル酸、エチレン-ビニルアセテート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリアセチルニトリル、ポリフォスファゼン、及びポリエステルヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリル酸)、又はポリ(ビニルアルコール))のポリマー及びコポリマー、セルロース、アシル置換セルロースアセテート、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、塩化ポリビニル、フッ化ポリビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタミン酸共重合ポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドからなる注射可能なマイクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D(-)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。さらに、使用される非生物分解性ポリマーは、ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、エチレンビニル酢酸、ポリエチレングリコール、セルロースアセテートブチレート、及びセルロースアセテートプロピオネートである。
【0058】
あるいは、持続性放出製剤は、分解性生物材料で構成される。生物分解性ポリマーは、その生物適合性、特異的な分解に対する高い反応性、及び生物学的マトリクス中への活性薬物の取込み容易性により、魅力的な薬物剤形である。例えば、ヒアルロン酸(HA)は生物学的材料に対する膨潤性の重合性送達媒体としてクロスリンクされ、使用される。U.S.P. 4,957,744;Valle等、Polym. Mater. Sci Eng. 62:731-735 (1991)。また、ポリエチレングリコールで移植されたHAポリマーは、生物学的状態における長期間の保存に関連する望ましくない薬物漏出及び変性の両方を低下させる改善された送達マトリクスとしても調製されている。Kazuteru. M., J.Controlled Release 59:77-86 (1999)。使用される更なる生物分解性ポリマーは、ポリ(カプロラクトン)、ポリアンヒドリド、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリシアノアクリレート、ポリ(ホスファジン)、ポリ(ホスホジエステル)、ポリエステルアミド、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、分解性及び非毒性ポリウレタン、ポリヒドロキシブチル酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリアルキレンオキサル酸、ポリアルキレンコハク酸、ポリ(リンゴ酸)、キチン及びキトサンである。
【0059】
あるいは、生物分解性ヒドロゲルは、生物学的材料及び薬物に対してコントロールされた放出送達媒体として使用される。マクロマーの適当な選択を通じて、膜は、広範囲の生物分子に適する透過性、孔サイズ及び分解速度の範囲を有して生産され得る。
あるいは、生物材料及び薬物に対する持続性放出送達系は、分散により構成される。分散は、懸濁液又はエマルジョンのいずれかにさらに分類される。生物学的材料に対する送達媒体という点において、懸濁液は液体培地中に分散(多少不均一に)された極微小固体粒子の混合物である。懸濁液の固体粒子は、数ナノメーターから数百ミクロンのサイズにおよび、微粒子、マイクロカプセル及びナノスフェアーを含む。一方、エマルジョンは、少量の乳化剤による懸濁液中に保持される2又は複数の混合できない液体の混合物である。乳化剤は、混合できない液体間に界面状のフィルムを形成し、また、表面活性物質又は界面活性剤としても知られている。エマルジョン形成は、水が連続相で油又は脂肪が分散されている水中油(o/w)、並びに油が連続相で水が分散されている水中油(w/o)の両方であり得る。適切な持続性放出の製剤化の一例は、WO97/25563中に開示される。さらに、生物学的材料と共に使用するためのエマルジョンには、複合エマルジョン、マイクロエマルジョン、ミクロドロプレット及びリポソームが含まれる。ミクロドロプレットは、内部に油層も持つ球状脂質層から構成される単層のリン脂質媒体である。例えば、U.S.P. 4,622,219及びU.S.P. 4,725,442。リポソームは、水溶液と水に不溶な極性脂質とを混合することにより調製されるリン脂質媒体である。
【0060】
あるいは、WISPポリペプチドの持続性製剤は、乳酸-グリコール酸共重合ポリマー(PLGA)など、非常に高い生物適合性及び広範囲の生物分解性特性を発揮するポリマーを用いて開発される。PLGAの分解産物である乳酸及びグリコール酸は、ヒトの身体から速やかにクリアにされる。さらに、該ポリマーの分解性はその分子量及び組成に依存して、月から年の範囲で調整することができる。さらなる情報については、Lewisによる「Controlled Release of Bioactive Agents from Lactide/Glycolide polymer,」 in Biogradable Polymers as Drug Delivery Systems M, Chasin and R. Langeer, editors(Marcel Dekker:New York, 1990), pp.1-41を参照のこと。
カプセル化されたポリペプチド又は徐放性製剤中のポリペプチドは、放出濃度及び温度において非毒性である「水溶性多価金属塩」と共にポリペプチドを製剤化することで得られる。「多価金属」の例には、アルカリ土類金属(例えば、Ca2+,Mg2+,Zn2+,Fe2+,Fe3+,Cu2+,Sn2+,Sn4+,Al2+,及びAl3+)が含まれる。上記多価金属カチオンと共に水溶性塩を形成するアニオンの例には、無機酸及び/又は有機酸によって形成されるものが含まれる。このような水溶性塩は水(20℃)に少なくとも20 mg/ml、或いは100 mg/ml、或いは200 mg/mlの溶解度を持つ。
【0061】
「水溶性多価金属塩」を形成するために用いられる適切な無機酸には、疎水性酸、硫酸、硝酸、チオシアン酸、及びリン酸が含まれる。用いられる適切な有機酸には、脂肪族カルボン酸及び芳香族酸が含まれる。ここでの定義において脂肪酸とは、飽和又は不飽和C2−9のカルボン酸(例えば、脂肪族モノ-、ジ-、及びトリ-カルボン酸)として定義されてもよい。一般に、カプセル化されたポリペプチドの安定化を補助するために用いられる水溶性多価金属塩には、例えば、:(1)無機酸のハロゲン金属塩(例えば、塩化亜鉛、塩化カルシウム)、硫酸鉛、硝酸塩、リン酸塩、チオシアン酸塩;(2)脂肪族カルボン酸の金属塩、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、プロピオン酸カルシウム、グリコール酸亜鉛、乳酸カルシウム、乳酸亜鉛及び酒石酸亜鉛:及び(3)安息香酸塩の芳香族カルボン酸金属塩、(例えば、安息香酸亜鉛)及びサリチル酸塩などが含まれる。
インビボ投与に使用する処方のために、それらを無菌にする必要がある。処方は凍結乾燥及び再構成の前又は後に無菌の濾過膜を通して濾過することにより簡単に無菌にすることができる。ここでの治療用組成物は、一般に、無菌のアクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈注射用の溶液バッグ又はバイアルに入れる。
【0062】
インビボの哺乳動物治療のために、投与経路を既知の方法、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内又は関節内経路による注射又は注入、局所的投与、持続放出性又は徐放放出性の手段等の周知の方法に従う。任意には、活性化合物又は製剤を罹患した軟骨領域又は関節に直接注射する。また、本発明により考えられる治療は、遺伝子治療の形態をとりうる。
本発明で利用できる製薬組成物の用量及び望ましい薬物濃度は、意図する特定の用途に応じて変化する。適切な用量又は投与経路の決定は、通常の内科医の技量の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効量の決定についての信頼できるガイダンスを提供する。有効量の種間スケーリングは、Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobiら, 編, Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-96のMordenti, J. 及びChappell, W. 「The use of interspecies scaling in toxicokinetics」に記載された原理に従って実施できる。
【0063】
WISPポリペプチドのインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kgまで、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日である。特定の用量及び輸送方法の指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4,657,760号、第5,206,344号、又は第5,225,212号参照。異なる製剤が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又は組織を標的とする投与には、他の器官又は組織とは異なる方式で輸送することが必要であることが予想される。
また、ここで使用される製剤は、治療される特定の徴候に必要とされる一以上の活性化合物、互いに不利に影響しない相補的な活性を有する好適なものを含んでいてもよい。WISPポリペプチドは細胞傷害罪、サイトカイン又は成長阻害因子と組み合わせて投与されうる。このような分子は、意図する目的に効果的な量及び組合せで存在する。また、他の免疫疾患に関連した、又は腫瘍に関連した抗原に対する抗体、例えばCD20、CD11a、CD40、CD18、ErbB2、EGFR、ErbB3、ErbB4、又は血管内皮因子(VEGF)に結合する抗体を投与することも好ましい。別法として、又は付加的に、同一の抗原又はここに開示した二又はそれ以上の異なる抗原に結合する二又はそれ以上の抗体を患者に同時投与してもよい。しばしば、患者に一又は複数のサイトカインを投与することも有益である。一実施態様では、本発明のポリペプチドは、成長阻害剤と同時投与される。例えば、まず成長阻害剤を投与し、続いて本発明のWISPポリペプチドを投与する。また他の薬剤、例えばデコリン又はバイグリカンのような薬剤をWISPポリペプチドと組み合わせて投与することができる。また、同時投与又は連続投与も考えられる。
【0064】
本方法はまた、あらゆる標準的な軟骨の外科的技術と組み合わせて行われうる。標準的な外科的技術は、軟骨シェービング、摩耗性軟骨形成術、レーザー修復、壊死組織切除、軟骨形成術、軟骨下骨侵入のある又はない微小破壊、自家骨軟骨移植、軟骨細胞同種移植、幹細胞自家移植、助軟骨移植、化学刺激、電気刺激、軟骨外自家移植、骨膜自家移植、軟骨足場再生(scaffollds)、シェル(骨関節)自家移植又は同種移植、又は骨切り術を含む、軟骨の治療的な操作に通常用いられる外科的手術である。これらの技術はFrenkel等, Front. Bioscience 4: d671-685(1999)により詳細に記載され、検討されている。
好ましい実施態様では、WISPポリペプチドは微小破壊手術と組み合わせて使用される。微小破壊手術の技術は当業者に公知であり、一般に哺乳動物の骨髄腔の外科的な穿孔を必要とする。次いで、フィブリン凝塊が形成され、哺乳動物体の欠損を補填する。続いて、繊維軟骨が形成する。
WISPポリペプチドは、軟骨又は軟骨細胞をエキソビボで処理するために使用することができると考えられる。このようなエキソビボ処理は、移植、特に自家移植に有用である。例えば、WISPポリペプチドによるこのような軟骨又は軟骨細胞を含む細胞又は組織の処理、任意には、上記のような一以上の他の治療は、レシピエント哺乳動物における移植前に、前駆体軟骨細胞の分化の誘発を軟骨組織の再生に利用することができる。
【0065】
軟骨又は軟骨細胞を含む細胞又は組織を、まずドナー哺乳動物から得る。細胞又は組織は外科的に得られ、好ましくは無菌的に得られる。次いで、細胞又は組織をWISPポリペプチドで、任意には上記のような一以上の他の治療と共に処理する。
次いで、処理した細胞又は組織はレシピエント哺乳動物に移植又は注入されうる。レシピエント哺乳動物はドナー哺乳動物と同じ個体であっても、又は他の異なる哺乳動物でもよい。
ここで記載される処理の進行又は効果は、熟練技術者に既知の従来からの技術及びアッセイにより簡単に監視することができる。
ここで記載されるWISPポリペプチドの軟骨又は軟骨細胞における活性又は効果は、様々なインビトロ又はインビボのアッセイを用いて過度の実験なしに測定することができる。
【0066】
あるアッセイにおいて、無傷の軟骨におけるWISPポリペプチドの合成的及び予防的可能性を試験することができる。この目的ために、プロテオグリカン(PG)の合成及び分解、並びに一酸化窒素の放出が、処理した関節軟骨移植片において測定される。プロテオグリカンは、関節軟骨中二番目に大きな有機材料成分である(Kuettner, K.E.等、Articular Cartilage Biochemistry. Raven Press, New York, USA (1986), p.456;Muir, H., Biochem. Soc. Tran. 11:613-622 (1983);Hardingham, T. E., Biochem . Soc. Trans. 9;489-497 (1981))。プロテオグリカンは軟骨の物理的及び化学的性質を決定するのに役立つため、関節の分解の間に生じる軟骨PGsの減少は、圧縮されたこわばり及び弾性の喪失、水力の透過性の増大、増加した水分含量(膨張)、及びコラーゲンなど他の細胞外組織の変化を導く。従って、PGの喪失は、変性軟骨性疾患の進行の初期段階であり、さらに関節の生体力学的及び生化学的安定性を混乱させる。関節軟骨のPGsは、骨格成長及び疾病における有望な役割により、広く研究されてきた。Mow, V.C., & Ratcliffe, A. Biomaterials 13:67-97 (1992)。病気に罹った関節で増大するプロテオグリカンの分解は、ここで記述されるアッセイにおいて比色定量DMMBアッセイを用いて外植片培地中でPGsを定量することにより測定される。Farndale及びButtle, Biochem. Biophys. Acta 883:173-177 (1985)。プロテオグリカンへの35S-硫酸塩の取り込みは、プロテオグリカン合成の指標として使用される。
【0067】
インターロイキン-1α、IL-1βと変成軟骨性疾病が連関するという証拠は事実である。例えば、高レベルのインターロイキン-1α(IL-1α)(Pelletier JP等、「Cytokines and inflammation in cartilage degradation」 in Osteoarthritic Edition of Rheumatic Disease Clinics of North America, Eds. RW Moskowitz, Philadelphia, W.D. Saunders Company, 1993, p.545-568)及びIL-1レセプター(Martel-Pelletier等、Arthritis Rheum. 35:530-540 (1992)が病気に罹った関節において見いだされており、IL-1αが軟骨マトリクスの分解を誘導し、新たなマトリクス分子の合成を阻害する。Baragi等、J. Clin. Invest. 96:2454-60 (1995);Baragi等、Osteoarthritis Cartilage 5:275-82 (1997);Evans等、J. Leukoc. Biol. 64:55-61 (1998);Evans等、J. Rheumatol. 24:2061-63 (1997);Kang等、Biochem. Soc. Trans. 25:533-37 (1997);Kang等、Osteoarthritis Cartilage 5:139-43 (1997)。また、IL-1αと疾患との関連性のため、IL-1αの存在下においてWISPポリペプチドをアッセイすることができる。軟骨にポジティブな影響を持つだけでなく、IL-1αの異化作用を妨害するWISPポリペプチドの能力は、WISPポリペプチドによって示される保護的効果の強力な証拠である。さらに、異化現象がIL-1αにより阻害され、また多くの他のサイトカインに誘発されるために、そしてIL-1α活性の拮抗作用が変成軟骨関節炎の進行を抑えることが示されているため、このような活性はWISPポリペプチドが関節炎の状態で生じる分解を阻害し得ることを示唆する。Arend, W.P.等、Ann. Rev. Immunol. 16:27-55(1998)。
【0068】
一酸化窒素(NO)の生産は、IL-1などの異化作用的サイトカインにより軟骨中で誘発され得る。Palmer, RMJ等、Biochem. Biophys. Res. Commun. 193:398-405 (1993)。また、NOは関節炎の状態で生じる関節破壊にも関与してきた。Ashok等、Curr. Opin. Rheum. 10:263-268 (1998)。正常な(病気ではない又は負傷していない)軟骨とは異なり、インターロイキン-1又はリポ多糖類(LPS)などの付加刺激の非存在下でも、骨関節炎の軟骨はエクスヴィボにおいて有意な量の一酸化窒素を生産する。インビボ動物モデルにより、酸化窒素生成の阻害は関節炎の進行を和らげることが示唆された。Pelletier, JP等, Arthritis Rheum. 7: 1275-86(1998); van de Loo等, Arthritis Rheum. 41: 634-46 (1998); Stichtenoth, D.O. 及びFrolich J. C., Br. J. Rheumatol. 37:246-57 (1998)。インビトロにおいて、一酸化窒素は軟骨細胞の機能に対し、コラーゲン及びプロテオグリカンの合成阻害、亢進されたアポトーシス及び細胞外マトリクスへの接着阻害を含む有害な影響を及ぼす。亜硝酸の濃度は、リウマチ様関節炎の患者の液よりも変成軟骨関節炎の患者の関節液中において高いことが示されている。Renoux等、Osteoarthritis Cartilage 4:175-179 (1996)。さらに、動物モデルは、一酸化窒素の生産の阻害は、関節炎の進行を抑えることを示唆する。Pelletier, J.P.等、Arthritis Rheum 7:1275-86 (1998);van de Loo等、Arthritis Rheum. 41:634-46 (1998);Stichtenoth, D.O.及びFrolich J.C. Br. J. Rheumatol. 37:246-57 (1998)。また、NOは他の細胞にも影響を及ぼすため、関節中のNOの存在は、血管拡張及び透過率を増大させ、白血球によるサイトカインの放出を強化し、血管形成活性を刺激する。従って、軟骨によるNOの生産は、疾病の状態と相関し、NOは、関節疾病の腐食性及び炎症性の成分の両方において役割を演じるようであるため、一酸化窒素の生産を減少させる因子は、変成軟骨疾患の治療に対して有益であると思われる。
【0069】
ここで記述されるアッセイは、2,3-ジアミノナフタレン(DAN)が、定量可能な蛍光産物である1-(H)-ナフトトリアゾールを形成する酸性条件下で亜硝酸塩と反応する原理に基づいている。NOは亜硝酸塩(NO2 -1)及び硝酸塩(NO3 -1)へと代謝されるため、亜硝酸塩の検出は軟骨組織で(たとえカウント値以下であっても)実際に生産されたNOを検出する手段の一つである。
この方法において、血清又は他の成長因子無しの培地で軟骨細胞の生存を促進、助長又は維持するためのWISPポリペプチドの能力が試験される。関節軟骨細胞は、まず細胞外マトリックスの除去により作成され、単層で培養され、マトリックスが枯渇した時に軟骨疾患の後期ステージに近似すると思われる。アッセイは、黄テトラゾリウム塩MTTを切断して紫のホルマザン結晶を形成する生細胞の能力に基づいて培養される細胞の代謝活性を測定する非職分析アッセイである。この細胞性還元反応は、ピリジンヌクレオチド補助因子NADH及びNADPHに関係する。Berridge, M.V. & Tan, A.S., Arch. Biochem. Biophys. 303: 474(1993)。可溶化した生成物は、ELISAリーダーで分光光度的に定量される。
【0070】
また、他のアッセイはマウスの膝蓋骨(膝頭)におけるプロテオグリカンの合成に対するWISPポリペプチドの影響を調べる。本アッセイは無傷の軟骨(骨の下の存在するものも含める)、従って、インビボの軟骨環境に近い条件下のテスト因子を用いる。化合物は、インヴィトロにおいて膝蓋骨に添加されるか、又はエクスヴィボでの膝蓋骨におけるプロテオグリカンの合成を分析する前にインビボにて膝関節へインジェクトされるかのいずれかである。以前示されたように、インビボで処理された膝蓋骨はエクスヴィボでのPG合成において明らかな変化を示す。(Van den Berg等、Rheum. Int. 1:165-9 (1982);Vershure. P.J.等、Ann. Rheum. Dis. 53:455-460 (1994);及びVan de Loo等、Arthrit. Heum. 38:164-172 (1995)。本モデルにおいて、各動物の対側の関節はコントロールとして使用できる。
これらの試験は、膝の骨関節炎(OA)を自然に生じるモルモットの系統、Dunkin Hartley (DH)からの関節軟骨移植片においてPG合成の促進及びPG放出の抑制の両方におけるWISPポリペプチドの影響を測定する。関節破壊の急速な進行を引き起こす多くの他の動物モデルは、徐々に進行するヒト1次OAよりも2次OAに類似している。対照的にDHモルモットは、自然発生的なゆっくりとした進行の非炎症性OA様変化を有する。これらモルモットの軟骨破壊の高い再現性のあるパターンは、ヒトの疾患に見られるものと似ているので、DHモルモットは骨関節炎のためのよく知られた動物モデルである。Young等、”Osteoarthritis”, Spontaneous animal models of human disease vol.2, pp.257-261, Acad. Press. Ney York. (1979);Bendele等、Arthritis Rheum. 34:1180-1184;Bendele等、Arthritis Rheum. 31:561-565 (1988);Jimenez等、Laboratory Animal Science vol.47(6):598-601 (1997);Wei等, Acta Orthop Scand 69:351-357(1998)。初めに、これらの動物モデルは最小の組織学的変化の存在により検出可能な軽いOAを発症する。しかしながら、疾病は進行し、16-18月齢までに関節での中程度から重篤な軟骨変成が観察される。結果として、DHモルモットの軟骨マトリックスでの病気の進行を超えるWISPポリペプチドの効果は、関節破壊の異なるステージでOAの治療に化合物が治療的効果を有することの示唆となった。
【0071】
真性糖尿病(糖尿病)に関係する代謝の変化は、罹患した生物の他の多くの器官及び筋骨格システムに影響する。例えば、ヒトにおいて、筋骨格の損傷及び疾患の発生は、糖尿病になると増加し、糖尿病は関節炎進行の危険要因であるとされる。
糖尿病に類似した病理現象はストレプトゾトシン(STZ)の投与により動物に誘発させることができる。Portha B. 等, Diabete Metab. 15: 61-75(1989)。インスリンを産生する膵臓細胞の死滅によって、STZは処置した動物の血清インスリンの量を減少させる。STZ誘発性糖尿病は、皮膚、骨及び軟骨を含む結合組織の萎縮に関連し、コラーゲン含量を低下させる。Craig, R.G.等, Biochim. Biophys. Acta 1402: 250-260(1998)。このアッセイにおいて、処置したSTZ処理マウスの膝蓋骨をWISPポリペプチドの存在下でインキュベートし、結果的なマトリックス合成を分析する。未処理コントロールに対して、PG合成のレベルを増加又は回復するWISPポリペプチドの能力は、治療的潜在性を示唆する。
【0072】
本発明の他の実施態様では、上記の疾患の診断又は治療に有用な物質を含む製造品が提供される。この製造品は容器と使用説明書とを含んでなる。好適な容器は、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、及び試験管を含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの種々の材料から形成されてよい。容器は、例えば、軟骨疾患を治療するのに有効な組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の活性薬剤は、典型的にはWISPポリペプチドである。組成物は、ここで開示されるいずれの又は複数の成分をも含み得る。容器上の又は添付された説明書は、組成物が選択の状態を治療するために使用されることを示す。例えば、説明書は、組成物が変成軟骨関節炎、リウマチ様関節炎又は他の任意の軟骨疾患の治療に有効であることを示す。製造品はさらに、リン酸緩衝塩水、リンガー液及びデキストロース溶液などの製薬的に許容される緩衝液を含む第2の容器を具備してもよい。あるいは、組成物は、任意の担体、賦形剤及び/又は安定化剤を含んでもよい。さらに、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用上の指示を付けたパッケージ挿入物を含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0073】
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び参考文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
(実施例)
実施例で言及されている市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC受託番号により以下の実施例及び明細書全体を通して同定されている細胞の供給源はバージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションである。特記しない限り、本発明は上記及び以下の教科書に記載されたもののような組換えDNA技術の標準的な手法を用いる:Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press N.Y., 1989; Ausubel等, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y., 1989; Innis等, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press, Inc., N.Y., 1990; Harlow等, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, 1988; Gait, M.J., Oligonucleotide Synthesis, IRL Press, Oxford, 1984; R.I. Freshney, Animal Cell Culture, 1987; Coligan等, Current Protocols in Immunology, 1991。
【0074】
実施例1
以下に記載されるアッセイにおいて、次の方法及び材料を用いた:
材料: ウシ気管由来のコンドロイチン硫酸A、サメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸C、ウシ精巣由来のヒアルロニダーゼ(EC 3.2.1.45)及びアセロバクター アウレンスセンス(Artherobacter aurenscens)由来のコンドロイチナーゼACII(EC 4.2.2.5)をカルビオケム社(サンディエゴ)から購入した。コンドロイチン硫酸B、ブタ腸管粘膜由来のヘパリン及びヘパラン硫酸、ウシ関節軟骨由来のデコリン、バイグリカン、フラボバクテリウム ヘパニウム(Flavobacterium hepanium)コンドロイチナーゼC、コンドロイチナーゼB及びへパリナーゼI(EC 4.2.2.7)をシグマ社から得た。サメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸D、イカ軟骨由来のコンドロイチン硫酸EをUSバイオロジカル社(United States Biological)(スウォンプスコット、MA)から購入した。コレラ菌(Vibrio Cholera)由来のノイラミニダーゼ(EC 3.2.2.18)、プロテウス ブルガリス(Proteus vulgaris)由来のコンドロイチンABC(EC 4.2.2.4)、プロテアーゼフリー、完全EDTAフリープロテアーゼ阻害剤カクテルタブレット及び脂肪酸ウルトラフリーBSAフラクションVをロシュ・モレキュラー・バイオケミカル社(インディアナポリス、IN)から購入した。プロテウス ブルガリス由来のコンドロイチン-4-硫酸(EC 3.1.6.9)及びコンドロイチン-6-硫酸(EC 3.1.6.10)をICNバイオメディカル(オーロラ、OI)から入手した。西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートしたビオチニル化ヤギ抗ヒトIgG、Fc断片特異的ビオチニル化抗ヒツジIgGをジャクソンイムノリサーチ社(コスタメサ、CA)から購入した。プロテイナーゼK(EC 3.4.21.14)ready-to-use、テキサスレッドにコンジュゲートしたストレプトアビジン及び抗ビメンチンモノクローナル抗体(クローンVim 3B4)をダコ社(カーピンテリア、CA)から入手した。5-クロロメチルフルオレセインジアセテート(5-CFDA)及びヘキスト33342をモレキュラープローブ社(ユージーン、OR)から購入した。ルネッサンスTSA間接増幅キットをNENライフサイエンスプロダクツ社(ボストン、MA)から購入した。ベクタッシュイールド(Vectashield)マウンティング培地及びビオチニル化ウマ抗マウスIgGをベクター社(バーリンゲーム、CA)から入手した。
【0075】
完全長マウスWISP-1(Pennica等, Proc. Natl. Acad. Sci., 95:14717-14722 (1998))を、以前TNFR1について記載されているようにして(Ashkenazi等, Proc. Natl. Acad. Sci., 88:10535-10539 (1991);WO 99/21998)、ヒトIgG1Fc領域のWISP-1配列下流をコードする発現ベクターにクローン化した。得られた組み換え融合タンパク質(WISP-1-Fc)はSf9昆虫細胞を用いてバキュロウィルス発現系で合成し、タンパク質AセファロースFast Flow(ファルマシア バイオテック社、スウェーデン)カラムでの親和性クロマトグラフィーによって無血清条件培地から精製して均一にした。吸着しなかったタンパク質を1MのNaClを含有する50mMのリン酸ナトリウムバッファーで洗い流した。WISP-1-Fcを100mMのグリシン、pH2.5で抽出し、3MのトリスHCl、pH8の0.1量でpHを中性にした。透析(20mMのトリスHCl、pH7.5、150mM)の後、精製したタンパク質をセントリプレップ-30(ミリポア株式会社、ベッドフォード、MA)を用いて限外濾過により濃縮し、SDS-PAGE及び銀染色によって純度を測定した。様々な回数で発現及び精製したタンパク質の3つの異なるバッチで少なくとも3回実験を繰り返して、同様の結果を得た。
【0076】
細胞培養: NRK(正常ラット腎線維芽細胞)、Hs597.Sk(ヒト正常皮膚線維芽細胞)、Hs839.T(ヒト皮膚メラノーマ線維芽細胞)、Hs908.Sk(ヒト皮膚メラノーマ線維芽細胞)、COLO320DM(ヒト大腸腺癌細胞)、RAG(マウス腎臓腺癌細胞)、293(ヒト腎上皮細胞)、HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)及びWM-266-4(ヒト皮膚メラノーマ上皮細胞)をアメリカンタイプカルチャーコレクション、マナッサス、バージニアから入手した。細胞を、10%のFBSを補足した低グルコースダルベッコ変法イーグル培地/ハムF-12(1:1)で37℃、5%CO2で維持した。
【0077】
細胞結合: 細胞を8ウェルプラスティックチャンバースライドに撒き、37℃、5%CO2で一晩維持した。次の日、細胞をPBSで洗浄し、ウェルを3%BSAのHBS-Cバッファー(25mMのHepes、pH7.2、150のNaCl、3mMのCaCl2、3mMのMgSO4、5mMのKCl、完全プロテアーゼ阻害剤カクテル)を用いて室温で30分間遮断した。記載しているときに、遮断する前に細胞を洗浄し、0.1Uの様々な脱離酵素を用いて2時間37℃でインキュベートした。(参照、Vacherot等, J. Biol. Chem., 274:7741-7747 (1999))。1nMのmWISP-1-IgGで室温において1時間細胞をインキュベートし、洗浄して0.2μg/mlのビオチニル化抗ヒトIgGFc’含有HBS-C/3%BSAで30分間室温においてインキュベートした。TSA間接キット(NENデュポン社)で製造業者の使用説明書に従ってシグナルを増幅させた。1:200のFITC複合ストレプトアビジン(ダコ社)で30分インキュベーションした後、スライドを1μg/mlのヘキスト33342(モレキュラープローブ社)を含有するベクタッシュイールドでマウントし、ニコンEclipse 800蛍光顕微鏡を用いて可視化した。Photometrics 300 CCDカラーカメラを用いて画像を得た。過去の記載(Szurdoki等, Anal. Biochem., 291:219-228 (2001))に変更を加えて細胞の蛍光強度の測定をした。簡単にいうと、平均90細胞を含む3つの別々のフィールドの最小の画像を取得し、電子ファイルとして保存した。閾値を、WISP-1-Fcなしで作成されたネガティブコントロールにおける1%の最も明るいピクセルの最も低い強度として決定した。細胞集団の蛍光シグナルを、細胞数で割った閾値を超える全体のピクセル強度として決定した。
【0078】
固相結合アッセイ: タンパク質を50μl(総量)のPBSに希釈し、ポリスチレンマイクロタイターウェルに適用し、4℃で一晩インキュベートした。次の日、ウェルを0.3%のBSAを含有する300μlのHBS-c3回洗浄し、非特異的結合部位を、200μlのHBS-C/3%BSAで室温で1時間遮断した。バッファーを吸引し、50μlの0.5nMのWISP-1-IgG含有HBS-C/3%BSAを室温で2時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、50μlの2μg/ml西洋ワサビペルオキシダーゼ複合ヤギ抗ヒトIgGFc’を含有するHBS-C/3%と共に1時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、ウェルを0.05%のTween-20を含有する200μlのPBSで6回洗浄し、シグナルを100μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ色素生産性物質TMB(KPL社)を用いて可視化した。反応を100μlの1Mリン酸で停止させ、450nmのODで測定した。インキュベーションと並行して、マイクロタイターウェルのコーティングを取り除くことによって非特異的WISP-1Fc結合を測定した。WISP-1-Fcが除かれた場合、シグナルは作られなかった。
【0079】
WISP-1結合因子の精製: ヒト皮膚線維芽細胞で、3日おきに血清含有と無血清培地とのサイクルを実施した。無血清条件培地をCentriprep-30(ミリポア社、ベッドフォード、MA)で濃縮した。次に、続けて20mMのトリスHCl pH7.4、300mMのNaClを添加し、再び濃縮することによってバッファーを変えた。濃縮物(150μgのタンパク質/ml)をスナップフローズンし、使用まで−80℃で保存した。濃縮した条件培地を解凍、濾過し、300mMのNaClを含有する20mMのトリスHCl、pH7.4で平衡化したMono Q陰イオン交換カラムを通した。カラムを洗浄し、吸着したタンパク質を、同じバッファーでのNaCl(300mM−2M)直線勾配を用いて抽出した。500μlの分画をWISP-1結合活性について分析した。
【0080】
質量分析によるタンパク質の同定: WISP-1結合活性を有する分画をプール、変性、還元して、0.1UのコンドロイチナーゼABCと共に37℃で2時間前もってインキュベーションしている、又はインキュベーションをしていない4-15%の勾配アクリルアミドSDS-PAGEを行った。ゲルを銀染色してコンドロイチナーゼABC消化で移動性の変化を示すタンパク質バンドを切除し、Arnott等, Electrophoresis, 19:968-980 (1998)に以前記載されているようにしてインサイツにおいてトリプシンで消化した。トリプシンペプチドを抽出し、ミクロキャピラリー逆相液体クロマトグラフィー質量分析を分析した。5μmのC18ビーズの入った100μm i.d.、10cm長の融合シリカキャピラリーカラム(238MSB5;バイダック社、Hesperia、CA)にペプチド混合物を負荷し、イオントラップ質量分析計(LCQ;サーモクエスト社、サンノゼ、CA)のマイクロエレクトロスプレーイオン化手段に直接、アセトニトリル勾配で抽出した。プレカラム分離によって、HPLC(Ultra Plus II;マイクロテック・サイエンティフィック社、サニーベール、CA;Arnott等, 上掲)により得られる25μl/分から500nl/分の流速が得られた。質量スペクトルの自動データディペンデント収集は分子量(MS)及びカラムから抽出されるようなペプチドの配列データ(MS/MS)を与えた。Sequestプログラム(Gatlin, C., Eng, J., Cross, S., Detter, J.及びYates III, Analytical Chemistry, 72:757-763 (2000))を用いた重複性のタンパク質配列データベースの入力したMS/MSの相関によってタンパク質を同定した。スペクトルの手動解読によってタンパク質の合致を確認した。
【0081】
免疫蛍光: スライドマウントしたヒト大腸腫瘍切片を室温にもどし、70%のエタノールで10分間固定し、非特異的結合部位を1.5%の正常血清を含有するPBS/3%BSAを20分間染み込ませた。切片を0.125マイクログラム/mlの抗ビメンチン抗体と共に1時間インキュベートし、PBSで洗浄し、さらに2マイクログラム/mlのビオチニル化抗マウスIgG抗体と共に30分間インキュベートした。シグナルをTSA間接キットを用いて製造業者の使用説明書に従って増幅した。1:1000のテキサスレッド複合ストレプトアビジンと30分間インキュベーションした後、1マイクログラム/mlのヘキスト33342を含有するベクタッシュイールドでスライドをマウントし、ニコンEclipse 800蛍光顕微鏡で可視化した。Photometrics 300 CCD冷却カメラで画像を取得した。一次抗体のない状態で行ったネガティブコントロールはいずれの蛍光染色も示されなかった。
ヒト皮膚線維芽細胞のデコリンの免疫蛍光検出を同じプロトコルを用いて実施した。8x103の細胞をチャンバースライドに撒き、一晩培養した。次の日、細胞を洗浄し、37℃で15分間5マイクログラム/mlの5-CFDAを含有する新しい培地と共にインキュベートした。洗浄の後、非特異的結合部位を室温で30分間HBS-C/3%BSAに浸けた。次に、細胞を室温で1時間1:4000のヒツジ抗ヒトデコリン抗体を含有するHBS-C/0.1%BSAと共にインキュベートした。細胞を洗浄し、4%のパラホルムアルデヒド/PBSで10分間固定し、洗浄してさらに2マイクログラム/mlのビオチニル化抗ヒツジIgGとインキュベートした。シグナルをTSA間接キットを用いて増幅した。1:1000のテキサスレッドをコンジュゲートしたストレプトアビジンと30分間インキュベーションした後、スライドを1マイクログラム/mlのヘキスト33342を含有するベクタッシュイールドを用いてマウントし、ニコンEclipse 800蛍光顕微鏡で可視化した。Photometrics 300 CCD冷却カメラで画像を取得した。一次抗体のない状態で行ったネガティブコントロールはいずれの蛍光染色も示されなかった。
【0082】
分析方法: SDS-PAGEをBio-Rad Mini-PROTEAN II垂直スラブゲル電気泳動装置を用いてLaemli, Nature, 227:680-685 (1970)に従って実施した。推定上の分子量をBio-Radの広範囲分子量標準を用いて測定した。Bio-Radタンパク質アッセイ銀染色試薬及びウシ血清アルブミン標準物を用いてタンパク質を決定した。
【0083】
A.様々な細胞株及びヒト大腸腫瘍切片に対するWISP-1の結合
ヒト免疫グロブリンFc断片タグを有するキメラ組み換えマウスWISP-1の様々な培地内の細胞への結合を分析した。細胞をチャンバースライドに撒き、一晩培養した。次の日、非特異的結合部位を遮断し、細胞を1nMのWISP-1-IgGと共に又はmWISP-1-IgGなしで1時間培養した。細胞を洗浄、固定し、WISP-1-IgGをビオチニル化抗ヒトIgG抗体を用いて免疫蛍光により検出し、間接チラミド基質増幅法をFITCコンジュゲートストレプトアビジンで続けた。
図1にまとめられているように、WISP-1の結合は線維芽細胞株の表面でのみ見られた。一例として、WISP-1のNRK細胞への結合が例証される(図1A)。さらに、タンパク質はまた、正常又は皮膚メラノーマ由来にかかわらずラット又はヒト由来の線維芽細胞に結合する。一方、マウス腎臓腺癌、ヒト大腸腺癌、ヒト腎上皮細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞、又はヒト皮膚メラノーマ内皮細胞が使用された場合、蛍光シグナルは検出されなかった。例として、WISP-1のRAG細胞への結合を例証した(図1B)。WISP-1の添加を省略した場合又は無関係のビオチニル化二次抗体を使用した場合に、シグナルは検出されなかった(図1C)。
【0084】
WISP-1のヒト大腸腫瘍切片への結合をインサイツリガンド結合法を用いて評価した。スライドにマウントしたヒト大腸腫瘍切片を室温にし、すぐに3mMのCaCl2、3mMのMgSO4、5mMのKCl及び1MのNaClを含有する35mMの酢酸(pH3.5)で4分間インキュベートした。次いでスライドを、32mMのショ糖を含有するHBS-C(25mMのHepes、pH7.2、150のNaCl、3mMのCaCl2、3mMのMgSO4、5mMのKCl、完全プロテアーゼ阻害剤カクテル)で洗浄し、非特異的結合部位を3%のBSA、1.5%の正常ヤギ血清及び32mMのショ糖を含有するHBS-Cで20分間遮断した。結合部位はアビジンであり、ビオチンはVector社(バーリンゲーム、CA)のアビジン/ビオチン遮断キットを用いて遮断した。スライドをHBS-C/3%のBSA及び1nMのWISP-1-Fcで1時間インキュベートし、冷たい(4℃)HBS-C/1%のBSAを用いて各回1分で3回洗浄し、PBS/4%パラホルムアルデヒドで10分間固定した。スライドを、0.2マイクログラム/mlのビオチニル化ヤギ抗ヒトIgG、Fc特異性を含有するHBS-C/3%BSAとともに30分間インキュベートし、洗浄してPBS/4%パラホルムアルデヒドで10分間固定した。シグナルをTSA間接増幅キットを用いて製造業者の使用説明書に従って増幅した。TBS/0.1%BSAで4分、3回洗浄することによって反応を停止した。スライドを、ストレプトアビジンをコンジュゲートしたFITC(1:1000)含有TBS/0.1%BSAで30分間インキュベートし、0.05%のTween-20を含有するTBSで洗浄した。切片を、1マイクログラム/mlのヘキスト33342を含有するベクタッシュイールドマウント培地でマウントし、ニコンEclipse 800蛍光顕微鏡を用いて可視化した。
ビメンチン染色は腫瘍及び正常粘膜の両方で間葉細胞の存在を示すが(図1F及び図1G参照)、インサイツWISP-1結合は腫瘍周囲間質に限られる(図1D)。腫瘍上皮細胞又は正常粘膜には結合が見られなかった(図1D及び1E)。
【0085】
B.ヒト皮膚線維芽細胞条件培地へのWISP-1結合
WISP-1結合因子をヒト皮膚線維芽細胞の表面から分泌又は脱落するかどうかを試験するために、固相結合アッセイを実施した。ヒト皮膚線維芽細胞から無血清条件培地(上記のようにして調製される)を回収し、濃縮してマイクロタイタープレートに一晩コートした。50マイクロリットルの条件培地を二通りにマイクロタイトレーションウェルをコートした。非特異的結合部位に3%のBSAを含有するHBS-Cをインキュベーションによって染み込ませ、ウェルをmWISP-1-IgGとともに2時間インキュベートした。非特異的結合部位を遮断した後、ウェルをまずWISP-1と、次いで西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗ヒトIgG抗体とインキュベートした。ウェルを洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗ヒトIgGFc’とともに1時間インキュベートした。0.3%のBSAを含有するHBS-Cでの6回の洗浄の後、シグナルを西洋ワサビペルオキシダーゼ色素生産物質を用いて可視化した。反応を1Mのリン酸で停止し、450nmのODで測定した。図2Aは、段階希釈した条件培地でコートしたウェルへの1nMのmWISP-1-IgG結合を示し、図2Bは0.5μlのヒト皮膚線維芽細胞条件培地でコートしたウェルへの段階希釈したmWISP-1-IgGの結合を示す。結合はコートした培地の量及び添加したWISP-1の濃度に比例し、ヒト皮膚線維芽細胞は溶解性WISP-1結合因子を産生することを示す。
【0086】
図3Aに示されるように、WISP-1と条件培地の間の相互作用を1MのNaClの存在下で消失させた。100mMのEDTAの存在は部分的に結合を減弱させるが、0.05%のTween-20の存在は影響がない。コート物質へのWISP-1の結合はカチオン性と無関係であり、イオン的要素を有すると結論づけられた。次いで、結合因子がプロテオグリカンであるという可能性を、WISP-1の結合を評価する前に様々な脱酵素でコートウェルを処理することによって調べた。コンドロイチナーゼC、コンドロイチン-6-スルファターゼ、へパリナーゼ又はノイラミニダーゼでのコート培地の処理は、コントロールに比較してWISP-1の結合に変化はなかった(図3B)。しかしながら、コンドロイチナーゼACII又はヒアルロニダーゼでの消化は部分的に結合を減少させた。結局、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼB、コンドロイチン-4-スルファターゼ又はプロテイナーゼKでの処理はコートウェルへのWISP-1の結合を消失させた。コンドロイチナーゼB及びコンドロイチン-4-スルファターゼの特異性は、デルマタン硫酸成分がWISP-1の結合に必須であることを示す。更に、プロテイナーゼKに対する相互作用の感応性は、結合因子がタンパク質性の成分であることを示す。結果は、WISP-1がプロテオグリカンを含有する分泌デルマタン硫酸に結合することを示唆する。
【0087】
コンドロイチナーゼABC及びコンドロイチナーゼB処理は結合を完全に消失させるが、コンドロイチナーゼCは影響しなかった。コンドロイチナーゼBは、β-D-ガラクトサミン-L-イズロン酸結合でデルマタン硫酸を切断する。この酵素の特異性は、WISP-1の結合のためにイズロン酸が必要であることを示す。コンドロイチンACII又はヒアルロニダーゼでの処理は一部でのみ結合を減少させた。これは、WISP-1の相互作用をもたらすグリコサミノグリカン鎖がデルマタン硫酸-コンドロイチン類硫酸共重合体から構成されることを示す。感受性のあるガラクトサミニド結合を切断することによって、これらの酵素をイズロン酸残基を含むグリコサミノグリカン鎖の部分を取り除いた。コンドロイチン-4-硫酸での処理は、結合を完全に消失させるが、コンドロイチン-6-硫酸は相互作用を変化させなかった。これは、相互作用のためにN-アセチルガラクトサミンの4位の硫酸基が必要であることを示す。へパリナーゼでの処理は影響がなく、結合が2位で硫酸化させるためにイズロン酸を必要としないことを示す。プロテイナーゼKでの処理は結合を消失させ、相互作用をもたらすグリコサミノグリカンが、タンパク質分解によりウェルから脱離可能なタンパク質中心に結合されることを示唆する。まとめると、これらの結果は、プロテオグリカンのグリコサミノグリカン鎖のモチーフを有するイズロン酸が、ヒト皮膚線維芽細胞条件培地に結合するWISP-1を調節するという結論を支持する。
【0088】
C.WISP-1結合因子の精製と同定
WISP-1の結合をもたらす因子を精製するために、ヒト皮膚線維芽細胞からの無血清条件培地を培養の3日後に回収、濃縮し、20mMのトリスHCl、pH7.4、300mMのNaClを含有するバッファーに移し、Q-セファロース陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに適用した。カラムを洗浄し、残ったタンパク質を増大した濃度のNaClで取り除いた。WISP-1結合因子の存在を固相結合アッセイを用いて各分画で分析し、結果を図4Aに示す。さらに、分画15(図4Aに*で示される)を0.1UのコンドロイチナーゼABCの存在下(+)又は非存在下(−)で2時間37℃でインキュベートした。試料を還元状態下でSDS-Pageにより分離し、ゲルを銀染色した。示されたバンドを質量分析(図4B)で同定した。
デコリンに相当する46、60、及び70kDaでバンドが見られたが、44kDaのバンドはバイグリカンと同定された(230kDaのバンドはデコリンとバイグリカンの両方の混合物であることを示す)。コンドロイチナーゼABC処理の間に精製された不完全消化グリコサミノグリカン鎖を含むおそらくバイグリカンとデコリンに相当する異なる分子量でバンドが見られた。結果は、WISP-1がプロテオグリカン、バイグリカン及びデコリンを含む2つのデルマタン硫酸に結合することを示す。
【0089】
D.WISP-1はデコリンとバイグリカンに結合する
WISP-1のデコリン及びバイグリカンとの直接的な相互作用を示すために、固相結合アッセイを実施した。デコリンとバイグリカンをマイクロタイターウェルに一晩コートした。非特異的結合部位を飽和させ、0.25nMのmWISP-1-IgGを2時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗ヒトIgGFc’(2μg/ml)とともに1時間インキュベートした。0.05%のTween-20を含有するPBSで6回洗浄した後、シグナルを色素生産性物質のインキュベーションによって発達させた。色の発達を1Mのリン酸を添加することで停止し、450nmのO.D.で測定した。
図5Aに示されるように、デコリン及びバイグリカンへのWISP-1の結合に相当する曲線は非常に類似し、コートされたタンパク質の量に比例する。同様に、コートしたヒト皮膚線維芽細胞条件培地へのWISP-1の結合を阻害するデコリン及びバイグリカンの能力を評価した。
50マイクロリットルのヒト皮膚線維芽細胞条件培地をマイクロタイタープレートのウェルにコートした。非特異的結合部位を飽和させ、0.25nMのWISP-1-IgGを様々な濃縮のデコリン(黒丸)又はバイグリカン(白丸)(図5B)の存在下で2時間インキュベートした。mWISP-1-IgGの結合を上記のようにして評価した。図5Bに見られるように、ヒト皮膚線維芽細胞条件培地へのWISP-1の結合は、増大した濃縮のデコリン及びバイグリカンの存在下で徐々に減少する。デコリン及びバイグリカンは、デコリンについて70μg/mlで、バイグリカンについて105μg/mlで50%阻害されたWISP-1結合を示す類似した競合曲線を示す。
【0090】
E.グリコサミノグリカンへのWISP-1結合
プロテオグリカンに対するWISP-1の相互作用の特異性がデルマタン硫酸に限定されるかを理解するために、様々なプロテオグリカンの存在下におけるヒト皮膚線維芽細胞条件培地へのWISP-1の結合を評価した。ヒト皮膚線維芽細胞の無血清条件培地を上記のようにして調製した。50μlの条件培地を4℃で一晩マイクロプレートのウェルにコートし、非特異的結合部位を飽和させ、ウェルを様々な濃度の種々のグリコサミノグリカンの存在下において0.5nMのWISP-1-IgGとともに室温で2時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、シグナルを色素生産物質を用いて発達させ、450nmのO.D.を測定した。図6は、コンドロイチン硫酸A(黒い丸);デルマタン硫酸(白い丸);コンドロイチン硫酸C(黒い三角);コンドロイチン硫酸D(白い三角);コンドロイチン硫酸E(黒い四角);ヘパリン(X);ヘパラン硫酸(白い四角)を示す。
図6に示されるように、WISP-1の結合は、増加した濃度の様々なプロテオグリカンの存在下において比例的に減少する。WISP-1の結合は、3μg/mlのデルマタン硫酸、10.5μg/mlのコンドロイチン硫酸D又はヘパリン、30μg/mlのコンドロイチン硫酸E、75μg/mlのヘパラン硫酸、105μg/mlのコンドロイチン硫酸Aで最大結合の50%に達する。コンドロイチン硫酸Cの存在は、WISP-1の結合を減少させなかった。このデータは、グリコサミノグリカンとWISP-1の相互作用がヒト皮膚線維芽細胞条件培地へのその結合を十分に調節することを示す。さらにWISP-1は、試験されたあらゆる他のグリコサミノグリカンよりもデルマタン硫酸に優れた特異性を示すことが表される。
【0091】
F.ヒト皮膚線維芽細胞へのWISP-1の結合はデルマタン硫酸によって阻害される
細胞表面へのWISP-1の結合におけるプロテオグリカンを含むデルマタン硫酸の重要性を確かめるために、様々なグリコサミノグリカンの存在下において細胞結合分析を実施した。ヒト皮膚線維芽細胞をチャンバースライドに蒔いた。非特異的結合部位を飽和させ、1nMのWISP-1-IgGを50μg/mlのコンドロイチン硫酸A(図7B)、デルマタン硫酸(図7C)、コンドロイチン硫酸C(図7D)、コンドロイチン硫酸D(図7E)、コンドロイチン硫酸E(図7F)、ヘパリン(図7G)又はヘパラン硫酸(図7H)の存在下又は不存在下(図7A)において室温で1時間インキュベートした。細胞を洗浄、固定し、WISP-1-IgGの結合をビオチニル化抗ヒトIgG抗体を用いた免疫蛍光及びFITCコンジュゲートストレプトアビジンで終わる間接チラミド基質増幅法によって検出した。
何れの添加グリコサミノグリカンもない状態で、細胞表面へのWISP-1の結合は強い蛍光染色に達した。コンドロイチン硫酸C及びコンドロイチン硫酸Dは、それぞれおよそ20%及び46%までWISP-1結合を減少させ、コンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸E、ヘパリン硫酸又はヘパリンはおよそ60−70%まで相互作用を減退させた(図7I)。一方、50μg/mlのデルマタン硫酸の存在下において、ヒト皮膚線維芽細胞表面へのWISP-1の結合は消失した。これらの結果は共に、WISP-1がデルマタン硫酸により高い親和性を有し、この相互作用が細胞表面へのWISP-1の結合をもたらしうることを示す。
【0092】
G.ヒト皮膚線維芽細胞に対するWISP-1結合は、コンドロイチナーゼBでの細胞表面の消化によって消失する
デルマタン硫酸を含む小プロテオグリカン及びグリコサミノグリカンとのWISP-1相互作用の間に、同じ形態の相互作用を通じて細胞表面に相互作用するかどうかは未だ決定されていなかった。この可能性に取り組むために、様々なグリコサミノグリカン脱離酵素で処理したヒト皮膚線維芽細胞の表面へのWISP-1の結合を分析した。ヒト皮膚線維芽細胞を、0.1UのコンドロイチナーゼABC(図8B)、コンドロイチナーゼB(図8C)、コンドロイチナーゼC(図8D)、へパリナーゼ(図8E)の存在下、又は不存在下(図8A)において、或いはmWISP-1(図8F)の不存在下において37℃で2時間インキュベートした。細胞を洗浄し、非特異的結合部位を飽和させ、1nMのmWISP-1-IgGを室温で1時間インキュベートした。3回の洗浄の後、細胞を固定し、mWISP-1-IgGの結合をビオチニル化抗ヒトIgG抗体を用いた免疫蛍光及びFITCコンジュゲートストレプトアビジンで終わる間接チラミド基質増幅法によって検出した。
図8Aに示されるように、未処理のヒト皮膚線維芽細胞の表面に対するWISP-1の結合は、強い蛍光シグナルに達した。細胞をコンドロイチナーゼABC又はコンドロイチナーゼBで処理した場合、WISP-1の結合は、WISP-1が除かれたネガティブコントロールに相当するレベルに対して減少していた(それぞれ図8B、C及びD)。一方、コンドロイチナーゼC又はへパリナーゼで処理した細胞に対するWISP-1の結合は、分布又は強さに関して何の変更も示さなかった(図8、それぞれパネルD及びE)。これらの結果は、ヒト皮膚線維芽細胞の細胞表面へのWISP-1の結合はプロテオグリカンを含むデルマタン硫酸により媒介されることを示した。
【0093】
H.デコリン及びバイグリカンはWISP-1ヒト皮膚線維芽細胞の結合を阻害する
ヒト皮膚線維芽細胞へのWISP-1の結合は、過剰なデコリン又はバイグリカンの存在下又は不存在下において評価された。ヒト皮膚線維芽細胞をチャンバースライドに撒き、非特異的結合部位を飽和させた。1ナノモルのmWISP-1-IgGを1mg/mlのデコリン(図9A)、バイグリカン(図9B)の存在下において、あるいは添加競合物のない状態で(図9C)室温で1時間インキュベートした。細胞を洗浄、固定し、WISP-1-IgGの結合をビオチニル化抗ヒトIgG抗体を用いた免疫蛍光及びFITCコンジュゲートストレプトアビジンで終わる間接チラミド基質増幅法によって検出した。
図9に示されるように、デコリン又はバイグリカンの存在は、ヒト皮膚線維芽細胞とWISP-1の相互作用を部分的に阻害した。阻害は十分である(およそ88%及び94%)が、最も高い濃度の試験(1mg/ml)であっても、結合は完全には消失しなかった。これは、デコリン及びバイグリカンが細胞の細胞外マトリックスに存在するコラーゲンと相互作用する必要があるという能力によって説明することができる。
【0094】
デコリン及びバイグリカンは、結合組織の細胞外マトリックスに存在する小さいロイシンリッチプロテオグリカンのファミリーのメンバーである。デコリンの分泌形態は36,319Daの中心タンパク質(Krusius等, Proc. Natl. Acad. Sci., 83:7683-7687 (1986))及び4位のセリンに付着するデルマタン硫酸の単一のグリコサミノグリカン鎖からなる(Scott, PG, Dermatan Sulfate Proteoglycans: Chemistry,Biology, Chemical Pathology, Portoland Press, London, England, 1993)。バイグリカンの分泌形態は、2つのグリコサミノグリカン鎖、1つのデルマタン硫酸及び1つのコンドロイチン硫酸に代わる37,983Daの中心タンパク質からなる(Fisher等, J. Biol. Chem., 264:4571-4576 (1989))。バイグリカン及びデコリンの中心タンパク質は約55%のアミノ酸同一性で共有する。デコリンとバイグリカンの中心タンパク質の分子量は、コンドロイチナーゼABC処理の後に最も速い電気泳動移動性を有する上に挙げた2つのバンドの推定分子量に相当する。遅い方の移動バンドは、部分的に消化されたグリコサミノグリカン鎖を担持するデコリン及びバイグリカンに相当しうる。
デコリンは、ヒト皮膚の線維芽細胞表面でフィブロネクチン原繊維と共存する(Schmidt, G., Robenek, H., Harrach, B., Glossl, J., Nolte, V., Hormann, H., Richter, H. 及び Kresse, H., J. Cell. Biol, 104:1683-1691 (1987))。細胞表面とのWISP-1相互作用は細胞外マトリックスに付着するデコリンによって媒介される可能性がある。免疫蛍光を用いて、ヒト皮膚線維芽細胞の表面でのデコリンの存在は上記のアッセイで確認した。また、デコリン及びバイグリカンは細胞表面に結合するWISP-1を有意に減少させることが示された。ヒト皮膚線維芽細胞とデコリン及びバイグリカンとの相互作用は、恐らくWISP-1結合の完全な阻害を阻止した。これらの結果は共に、デコリンがWISP-1に対する細胞表面結合部位として働くことができることを示した。
【0095】
細胞膜又は細胞外マトリックスに関する幾つかのプロテオグリカンは、イズロン酸を含むことが示された。従って、WISP-1はイズロン酸モチーフを示すヘパラン硫酸プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸と相互作用することができる。また、様々なプロテオグリカンのグリコサミノグリカンのイズロン酸含量が組織分布によって異なることが示された。例えば、皮膚由来のデコリン及びバイグリカンはおよそ80%のイズロン酸を含むが、軟骨ではそれらを40%しか含まない(Choi等, J. Biol. Chem., 264:2876-2884 (1989))。骨及びウシ鼻軟骨由来のバイグリカン及びデコリンのグリコサミノグリカン鎖は、イズロン酸を含まず、従ってコンドロイチン硫酸を含む(Fisher等, J. Biol. Chem. 262:9702-9708 (1987); Heinegard等, Biochem. J., 3:2042-2051 (1981))。また、TGF-β処理は、デコリン及びバイグリカンの側鎖のイズロン酸含量の10〜15%の減少を引き起こす(Malmstrom, A等, Dermatan Sulfate Proteoglycans:Chemistry, Biology, Chemical Pathology, Portoland Press, London, England, 1993)。従って、プロテオグリカンのグリコサミノグリカン鎖のイズロン酸含量のレベルの変化によってWISP-1の相互作用を調節することができる。
【0096】
バイグリカン及びデコリンは、様々な細胞外マトリックスタンパク質、サイトカイン及び細胞表面レセプターと相互作用することが知られている(Hocking等, Matrix Biol., 17:1-19 (1998)及びIozzo, R.V. J. Biol. Chem. 274:18843-18846 (1999)参照)。デコリン及びバイグリカンは形質転換成長因子-β(TGF-β)と相互作用してその生物学的活性をネガティブに調節する(Hildebrand等, Biochem. J., 302:527-534 (1994))。また、デコリンは、インビトロでmRNAレベル及びTGF-βタンパク質合成を減少させることが示された(Stander等, Gene Therapy, 5: 1187-1194 (1998))。一方、デコリンの発現は、一般的に様々な細胞及び生物でTGF-βによって下方制御される(Iozzo, Ann. Rev. Biochem., 67:609-652 (1998))。デコリン遺伝子のプロモーター領域はTGF-β-ネガティブ制御要素を含む。TGF-β-ネガティブ制御要素はTGF-βによって下方制御された幾つかのプロテアーゼ遺伝子で見られ、デコリン遺伝子発現を抑制するように機能する(Iozzo, Experientia, 49: 447-455 (1993))。さらに、デコリンの発現はヒト癌腫の悪性の性質と非常に関係する(Adany等, J. Biol. Chem., 265:11389-11396 (1990); Hunzlemann等, J. Invest. Sermatol., 104:509-513 (1995))。それは多くの腫瘍組織で抑制され(Iozzo, 上掲、1993)及び幾つかの腫瘍細胞株でなくなる(Iozzo等, FASEB J., 10:598-614 (1996))ことが分かった。しかしながら、デコリンの発現は腫瘍間質で増加する(Adany等, 上掲, 1991; Iozzo, 上掲、1993, Brown等, Clin. Cancer Res., 5:1041-1056 (1999))。デコリンは、発ガン及び腫瘍の進行を促進する腫瘍によって放出されるTGF-βの潜在的なネガティブ制御物質である。デコリンは、TGF-β依存性及び非依存性の機構によって幾つかの腫瘍の成長を直接抑制することが示され、腫瘍周辺間質でのその発現は、浸潤腫瘍性細胞に対する宿主結合組織細胞の局所的な応答を反映しうる(Stander等, 上掲, 1999)。
【0097】
実施例2
WISP-1及び他のECMタンパク質へのCHO細胞の接着
次のCHO細胞株(ATCC番号で同定)を10%のFBSを含有するハム-F12/LGDMEM(50:50)で維持した:
CHO-K1 (CCL-61)
CHO pgs A-745 (CRL-2242; プロテオグリカンを合成しない)
CHO pgs B-618 (CRL-2241; プロテオグリカンを合成しない)
CHO pgs D-677 (CRL-2244; ヘパラン硫酸を合成しない)
CHO pgs E-606 (CRL-2246; 十分に硫酸化されていないヘパラン硫酸を合成する)
Maxisorpプレートを4℃で一晩PBSの50μlのmWISP-1-IgG(5μg/ml)又はBSA3%(分画V、脂肪酸ウルトラフリー;べーリンガー・マンハイム社)溶液でコートした。次の日、ウェルの中身を吸引し、ウェルを室温で1時間200μl のPBS/3%BSAで遮断した。細胞を、2mMのEDTAを含有するPBSにとり、凝集塊をピペットで壊し、次いで1000rpmで10分間遠心分離した。上清を取り除き、細胞を1%のBSAを含有する無血清ハム-F12/LGDMEM(50:50)で2回洗浄した。
細胞を、1%のBSAを含有する無血清ハム-F12/LGDMEM(50:50)中に25x105細胞/mlで再懸濁した。50μlの無血清ハム-F12/LGDMEM(50:50)/1%BSAを各ウェルに加え、続いて50μlの細胞懸濁物を加えた。ふたをせずにプレートを37℃で2時間インキュベートした。その後、ウェルをPBSで3回洗浄し、上清が完全に取り除かれたら、プレートを−70℃で保存した。
プレートを解凍し、分子プローブCyQUANT(モレキュラープローブ社)を添加した。蛍光を480nm-520nmで測定した。
結果を図10に示す。
【0098】
グリコサミノグリカン合成に障害のある突然変異CHO細胞株を用いて、WISP-1への細胞接着におけるプロテオグリカンの役割を確かめた。図10に示されるように、グリコサミノグリカンの合成を完全に欠くCHO細胞株の何れも(CHOpgsA及びCHOpgsB)、WISP-1への接着が見られなかった。この結果は、WISP-1へのCHO細胞の接着がプロテオグリカンのグリコサミノグリカン側鎖に完全に依存することを示す。一方、ヘパラン硫酸を欠く(CHOpgsD)又は十分に硫酸化されていないヘパラン硫酸を合成するCHO細胞株は、正常なプロテオグリカンを合成するCHO-K1に比較して40%減少したWISP-1結合を示した。これは、CHO細胞のヘパラン硫酸プロテオグリカンがWISP-1への細胞接着を一部でのみもたらし、その硫酸化がその活性に必要であることを示す。従って、CHOpgsD及びCHOpgsEのプロテオグリカンの残りの分画であるデルマタン硫酸プロテオグリカンは、WISP-1へのCHO細胞の接着のほとんどの原因である。
【0099】
実施例3
WISP-1及び他のECMタンパク質へのヒト皮膚線維芽細胞の接着
ヒト皮膚線維芽細胞(ATCC;CRL7356)を10%のFBSを含有するハム-F12/LGDMEM(50:50)で維持した。Maxisorpプレートを4℃で一晩PBSの50μlのタンパク質(下に定義)溶液でコートした:
コラーゲンI、ヒト (2μg/ml)(ヒト;BioDesign社)
コラーゲンII、ヒト(2μg/ml)(ヒト;BioDesign社)
mWISP-1-IgG(2μg/ml)(上記実施例1参照)
BSA 3% (分画V、脂肪酸ウルトラフリー;べーリンガー・マンハイム社)
次の日、ウェルの中身を吸引し、ウェルを室温で1時間200μl のPBS/3%BSAに浸けた。細胞を、15mMのEDTAを含有するPBSにとり、凝集塊をピペットで壊した。細胞懸濁液を45μmのフィルターで濾過し、1000rpmで10分間遠心分離した。
上清を取り除き、1%のBSAを含有する無血清ハム-F12/LGDMEM(50:50)で細胞を2回洗浄した。細胞を、1%のBSAを含有する無血清ハム-F12/LGDMEM(50:50)中に3x105細胞/mlで再懸濁した。次いで50μlの無血清ハム-F12/LGDMEM(50:50)/1%BSAを100μg/mlのデルマタン硫酸(ブタの腸管粘膜由来のコンドロイチン硫酸B;シグマ社);100μg/mlのヘパリン(ブタの腸管粘膜;シグマ)と共に又は何も添加せずに加えた。プレートを室温で15分間インキュベートした。次いで50μlの細胞懸濁物を各ウェルに加え、ふたをせずにプレートを37℃で2時間インキュベートした。その後、ウェルをPBSで3回洗浄した。クリスタルバイオレットで30分間染色を実施した。次に水で洗浄した。O.D.を570nmで測定した。
結果を図11に示す。
【0100】
データは、ポジティブコントロール(コラーゲンI及びコラーゲンIIへの接着)よりも低い値であるがヒト皮膚線維芽細胞はWISP-1でコートしたウェルに接着することが示された(図11)。100μg/mlのヘパリン又は100μg/mlのデルマタン硫酸の存在は、それぞれ30%又は70%までWISP-1への細胞接着を減少させた。同様の条件で、コラーゲンI及びIIへの細胞接着はあまり変化しなかった。これらの結果は、WISP-1へのヒト皮膚線維芽細胞の接着がコラーゲンI及びコラーゲンIIへの接着とは異なる機構によって媒介されることを示す。また、プロテオグリカンを含有するヘパリンはこの現象に関与できるが、WISP-1へのヒト皮膚線維芽細胞の接着はデルマタン硫酸プロテオグリカンによって主に媒介されることが示される。
【0101】
実施例4
軟骨細胞の再分化アッセイ
軟骨細胞の分化における様々な濃度のWISP-1ポリペプチドの影響を測定する実験を構築した。軟骨細胞を培養するために、細胞外マトリックスを取り除く酵素で関節軟骨を消化した。こうして、この培養系の細胞環境はマトリックスが枯渇し軟骨細胞が「未成熟」な表現型に戻る傾向のある軟骨疾患の後期に見られるものと同様となりうる。
4−6月齢の雌のブタの中手指節関節を無菌で解剖し、下の骨を避けるように注意して関節軟骨をフリーハンドのスライシングによって取り出した。次に、これらの軟骨切片を37℃で25分間、無血清ハムF12中の0.05%のトリプシンで消化した。培地を流し捨て、軟骨を37℃で30分間、無血清ハムF12培地中の0.3%のコラゲナーゼBで消化した。培地を流し捨て、軟骨をハムF12中の0.06%のコラゲナーゼB+10%のウシ胎児血清中で一晩消化した。次いで、細胞を70ミクロンのナイロンフィルターで濾過し、無血清のハムF12培地に蒔いた。単離した細胞を10%のFBS及び4μg/mlのゲンタマイシンを含有するハムF-12に25000細胞/cm2に蒔く。培地を3日毎に替え、細胞を5日毎に25000細胞/cm2まで再び蒔いた。12日目に、血清なしの100μlの同じ培地5000細胞/ウェルで96ウェルプレートに細胞を蒔き、1%希釈で100μlのヒトWISP-1-IgG(図17参照)を最終容積が200μl/ウェルになるまで添加した。37℃で5日後、ステージ駆動式倒立顕微鏡を用いて各ウェルの写真を撮った。分化状態をユニバーサルイメージ社のMetamorphソフトウェアで形態学的に測定した。それぞれの写真で再分化した軟骨細胞に相当する周辺細胞をそれらの大きさ及び形によって選択するが、脱分化した表現型を有する平らな細胞を排除する。次に、写真上の選択された細胞によって覆われた全ての領域を測定し、ポジティブコントロール(スタウロスポリンによる再分化軟骨細胞)及びネガティブコントロール(未処理細胞)と比較した。
【0102】
結果の算出及び解釈は次のように導いた:
結果の算出:
Y=軟骨細胞の領域
再分化指数=[(Y−Yネガティブコントロール)/(Yポジティブコントロール−Yネガティブコントロール)]*100
結果の解釈:
再分化指数が高いほど、WISP分子は軟骨細胞の再分化を促進する。
結果のカットオフ:再分化指数>40→陽性の結果。
結果を図12に示す。
【0103】
実施例5
コラーゲンIIの染色アッセイ
コラーゲンIIは軟骨細胞の好適なマーカーである。一次ブタ軟骨細胞を10日間培地で間葉細胞に「脱分化」させた後、細胞はそのコラーゲンII発現が緩くなる傾向がある。上記のような軟骨細胞分化アッセイを実施した。3通りのウェルを(+)及び(-)コントロール、及び次の各タンパク質の二通りに5日間処理した:
ポジティブ−5nM (0.5μl/50ml)のスタウロスポリン
100nMのIGF-1
ネガティブ−培地のみ
試験− 100nMのヒトWISP-1-His
100nMのヒトWISP-2-His
100nMのヒトWISP-3-His
(WISPポリペプチド構築物は各WISPポリペプチドに接着したN末端Hisタグを用いて調製した)。
(実施例4に記載されるように)倒立顕微鏡を用いて写真を撮った後、細胞を室温で15分間70%のエチルアルコールで固定し、次いでPBSで3回洗浄した。プレートをPBS/3%BSAで60分間200μl/ウェルで遮断した。処理したウェルを、1:2000に希釈しつつ室温で1時間マウス抗コラーゲンII(Neomarker-5 B2.5)を含有するPBS/3%BSAで処理した。プレートを再びPBS/0.1%BSAで3回洗浄した。
【0104】
洗浄に続き、プレートを1:1000のベクタービオチニル化抗マウス含有PBS/0.1%BSAと共に室温で30分間インキュベートした。次にプレートをPBSで2分間3回洗浄した。
細胞を室温で10分間4%のパラホルムアルデヒド含有PBSで固定し、次いでTBS(50mMのトリス-HCl、150mMのNaCl、pH8)+0.3%のBSAで3分間2回洗浄した(500μl/ウェル)。次に、Dupont HRP-ストレプトアビジン1:1000含有TBS+1%のBSAと共に30分間インキュベートする(100μl/ウェル)。この後、TBS+0.1%のBSAで4分間3回洗浄する(500μl/ウェル)。次に、ビオチニル化チラミドとともに増幅希釈液(NEN Dupont)の1:50で10分間インキュベートする(100μl/ウェル)。インキュベートに続いて、TBS+0.1%BSAで4分間3回洗浄した(500μl/ウェル)。
次のインキュベーションにおいて、DAKO FITC-ストレプトアビジンを1:1000含むTBS含有HBS-C+1%BSAを30分間添加した(100μl/ウェル)。次いで、PBSで簡単に洗浄した。最後に、1:1000ヘキスト含有PBS(100μl/ウェル)を添加し、次いで倒立顕微鏡を用いて評価した。
データを図13に示す。ポジティブコントロール(スタウロスポリン及びIGF-1)はコラーゲンIIを強度に染色したが、ネガティブコントロールは全く染色が示されなかった。100nMのWISP-1又はWISP-2又はWISP-3で処理した細胞は、コラーゲンIIの強いポジティブ染色を示した。このデータは、WISPタンパク質が培地中の一次ブタ軟骨細胞の再分化を促進したことを示した。
【0105】
実施例6
関節軟骨移植アッセイ
この実験は、軟骨マトリックス代謝回転におけるWISPポリペプチドの合成及び予防可能性の両方を試験する。この可能性は、関節軟骨におけるマトリックス(即ち、プロテオグリカン)合成と分解、並びに酸化窒素の合成を測定することにより決定される。これらのパラメータは、インターロイキン1αの存在及び不存在で評価される。関節軟骨外植片は培養において初代細胞の間、いくつかの利点を有する。第1に、恐らく最も重要であるが、外植片中の細胞は生体内での組織構造に組み込まれたままである。第2に、これらの外植片は、生体外で組織向上性を保持できる間の数週間、表現型的に安定である。最後に、初代細胞と異なり、外植片はマトリックス分解の測定に使用できる。軟骨外植片を準備するために、関節軟骨を解剖し、細かく刻んで、コラーゲン網を破壊し、培地中にプロテオグリカンを放出させなければならない。従って、このシステムは、マトリックスが次第に消耗した関節炎等の変性状態を模倣する。
4−6月齢の雌ブタの中手指節関節が上記のようにして無菌的に開かれる。軟骨は、細かく刻まれ、洗浄され、バルクで少なくとも24時間37℃で外植片培地、即ち0.1%BSA、100U/ml ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、2mMのL-グルタミン、0.1mMのピルビン酸ナトリウム(Gibco)、20μg/mlのゲンタマイシン(Gibco)、1.25mg/LのアムホテリシンB(Sigma)を含有する無血清(SF)LG DMEM/F12培地において5%のCO2で培養される。関節軟骨をマイクロチューブに等分(1チューブにつき約55mg)し、少なくとも24時間上記培地中でインキュベートする。培地を回収し、種々の時点(例えば、0,24,48,72時間)で新しい培地(培地のみ又はWISPポリペプチド(IgG融合構築物)と共に)を加えた。
【0106】
種々の時点で収集された培地を、上記されるように、Farndale及びButtle. Biochem. Biophys. Acta 883:173-177(1985)の1,9-ジメチルメチレンブルー(DMMB)比色定量アッセイを用いてプロテオグリカン含量についてアッセイした。時間0におけるPG放出を基準測定値として使用し、特に高い又は低いPG放出を有する任意の試料をWISP-1ポリペプチドでの処置前に捨てた。全ての処理の間、結果は5つの各試料の平均を示す。
最初の処理の48時間後、35S-硫酸塩を新しい培地(試験化合物を含有又は無し)とともに10μCi/mlの最終濃度で軟骨外植片に添加した。37℃での更なる12−17時間のインキュベーションの後、培地を取り除き、次のPG及び酸化窒素(NO)分析に備えた。軟骨片を外植片用培地を用いて2回洗浄し、900mLの反応容積の10mMのEDTA、0.1Mのリン酸ナトリウム及び1mg/mlのプロテイナーゼK(Gibco BRL)中、50℃で一晩消化した。消化反応物を10%W/V塩化セチルピリジニウム(Sigma)と混合して(2:1)プロテオグリカンを沈殿させ、1000x gで15分間遠心した。上清を除去し、沈殿物を溶解させるためにギ酸(500mL、Sigma)を添加した。次いで試料を10mlのシンチレーション液(ICN)を含むバイアルに移し、シンチレーションカウンターで読み取った。
【0107】
72時間後、残りの関節軟骨外植片を上記のようにして消化し、DMMB比色アッセイ(上記されている)を用いてプロテオグリカン含量を検定した。
関節軟骨移植片をWISP-3(図14)又はWISP-1(図15A)の何れかで処理し、基礎及びIL-1α誘発軟骨マトリックス破壊を減少させた。さらに、WISP-1は基礎及びIL-1α誘発一酸化窒素生成の何れも抑制した(図15B)
これらの結果は、WISPポリペプチドが軟骨異化を防御できることを示す。一酸化窒素とIL-1αの両方の上昇したレベルが罹患した間接で見られるという事実があるとすれば、IL-1αの活性化と一酸化窒素の生成を阻害するWISPポリペプチドの能力は、WISPポリペプチドが関節炎軟骨の組織障害の程度を低減させることができることを示唆する。
【0108】
実施例7
WISP-2を発現する遺伝子組換えマウス
インビトロでWISPポリペプチドの効果を試験するために、ミオシン軽鎖プロモーターによって筋肉にWISP-2を過剰発現する遺伝子組換えマウスを作成した。遺伝子組換えは、当分野で公知の技術(Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, Beddington等, Cold Spring Harbor Press, 1994; Transgenic Animal Technology: A Laboratory Handbook, Academic Press, New York, 1994)を用いて作成した。これらのマウスの骨を標準的な組織学によって14周齢で試験した。動物を屠殺した後、骨を4%緩衝ホルマリンで固定し、続いてFormical(商品名)で4−8時間脱灰した。次いで試料をパラフィン包埋し、組織学評価をした。3ミクロンの厚さの切片にし、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
図16に示されるように、硝子軟骨区画(つまり成長プレート及び関節軟骨)の膨張が見られる。これらの結果は、軟骨細胞分化の誘発及び軟骨マトリックス破壊の阻害のためのWISPポリペプチドの能力を示す上記の実施例に示される結果と一致する。従って、WISPポリペプチドは、インビボの軟骨組織において潜在的な影響を有しうる。このような活性を有するポリペプチドをもつ関節炎個体の治療、つまり軟骨の量を増加させるものは、関節炎患者に生じうる障害及び間接破壊を防止しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1A−1Gは異なった細胞株へのWISP-1の結合性を示している。細胞をチャンバースライドに蒔き、一晩培養した。次の日に、非特異的結合部位をブロックし、細胞を1nMのmWISP-1-IgGと共に(1A及び1B)又はmWISP-1-IgGなしで(1C)1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、固定し、WISP-1-IgGの結合を、ビオチン化抗ヒトIgG抗体を用いる免疫蛍光法と、間接的チラミド基質増幅法の次にFITC結合ストレプトアビジンを用いて検出した。1Aでは、mWISP-1-IgGが結合した細胞株がグループ分けされている。写真はmWISP-1-IgG結合に続くNRK細胞表面上に見出される典型的な蛍光シグナルを表している。1Bでは、mWISP-1-IgGが結合しなかった細胞株がグループ分けされている。写真はmWISP-1-IgG結合に続くRAG細胞表面上に見出される典型的な蛍光シグナルを表している。1Cの写真は、mWISP-1-IgGが結合手順から省かれた場合にNRK細胞の表面上に見出される典型的な蛍光シグナルを表している。スライドに取り付けたヒト大腸腫瘍切片を室温にして洗浄し、飽和させ、HBS-C/3%BSA及び1nMのWISP-1-Fc中で1時間インキュベートした(1D及び1E)。平行して、ビメンチンの免疫蛍光検出を実施例1に記載した隣接する切片について実施した(1F及び1G)。
【図2】 図2A−2Bは、ヒト皮膚線維芽細胞馴化培地へのmWISP-1-IgGの結合を示している。「WISP-1結合因子の精製」の項に記載したようにしてヒト皮膚線維芽細胞の無血清馴化培地を調製した。馴化培地の50マイクロリットルをマイクロタイターウェル中で二組コートした。非特異的結合部位を、3%のBSAを含むHBS-Cと共にインキュベーションすることによって飽和させ、mWISP-1-IgGと共に2時間ウェルをインキュベートした。ウェルを洗浄し、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgGFc'と共に1時間インキュベートした。0.3%BSAを含むHBS-Cでの6回の洗浄後、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ発色体基質を使用してシグナルを可視化した。反応を1Mのリン酸で停止させ、450nmのODを測定した。2Aは、連続希釈した馴化培地でコートしたウェルに対する1nMのmWISP-1-IgGの結合を示し;2Bは0.5μlのヒト皮膚線維芽細胞馴化培地でコートしたウェルに対するmWISP-1-IgGの連続希釈物の結合を示す。
【図3】 図3A−3Bは、ヒト皮膚線維芽細胞馴化培地のコンドロイチナーゼB感受性因子へのmWISP-1-IgGの結合を示している。3Aでは、馴化培地の50マイクロリットルをマイクロタイターウェル中で二組コートし、非特異的結合部位を、3%のBSAを含むHBS-Cと共にインキュベーションすることによって飽和させた。1ナノモルのWISP-1-IgGを、1MのNaCl、100mMのEDTA又は0.05%のTween-20の不存在下又は存在下で2時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgGFc'と共に1時間インキュベートした。0.3%BSAを含むHBS-Cでの6回の洗浄後、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ発色体基質を使用してシグナルを可視化した。反応を1Mのリン酸で停止させ、450nmのODを測定した。3Bでは、0.5U/mlのコンドロイチナーゼABC(Ch ABC)、0.5U/mlのコンドロイチナーゼACII(Ch ACII)、0.5U/mlのコンドロイチナーゼB(Ch B)、0.5U/mlのコンドロイチナーゼC(Ch C)、0.5U/mlのコンドロイチン-4-スルファターゼ(Ch-4-Sulf)、0.5U/mlのコンドロイチン-6-スルファターゼ(Ch-6-Sulf)、0.5U/mlのヘパリナーゼ(Hep)、0.5U/mlのヒアルロニダーゼ(Hyal)、0.5U/mlのノイラミニダーゼ(Neuram)又は100μg/mlのプロテイナーゼK(Prot K)を含む50μlのHBS-Cをコートしたウェルに添加し、37℃で2時間インキュベートした。ウェルを十分に洗浄し、非特異的結合部位を飽和させ、1nMのmWISP-1-IgGを室温で2時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、WISP-1-IgGの結合を測定した。
【図4】 図4A−4Bは、ヒト皮膚線維芽細胞馴化培地からのWISP-1結合因子の精製を示している。4Aでは、ヒト皮膚線維芽細胞からの無血清馴化培地を培養の3日後に収集し、濃縮し、20mMのTris-HCl、pH7.4及び300mMのNaClを含む緩衝液に移し、Q-セファロース陰イオン交換クロマトグラフィーカラムにかけた。カラムを洗浄し、保持されたタンパク質を増加する濃度のNaClで脱着させた。WISP-1結合因子の存在を、固相結合アッセイを用いて各画分において分析した。4Bでは、画分15(図4Aでa*で示した)を、0.1UのコンドロイチナーゼABCの存在下(+)又は不存在下(−)で37℃にて2時間インキュベートした。サンプルを還元条件下でSDS-PAGEによって分離し、ゲルを銀染色した。示されたバンドは質量分析によって同定した。
【図5】 図5A−5Bはデコリン及びバイグリカンへのWISP-1結合を示す。5Aでは、マイクロタイターウェルをデコリン(塗りつぶした円)又はバイグリカン(白抜きの円)の連続希釈物でコートした。非特異的結合部位を飽和させ、0.25nMのmWISP-1-IgGを2時間インキュべートした。ウェルを洗浄し、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgGFc'(2μg/ml)と共に1時間インキュベートした。0.05%のTween-20を含むPBSでの6回の洗浄後、発色体基質のインキュベーションによってシグナルを明らかにした。発色を1Mのリン酸で停止させ、450nmのODを測定した。5Bでは、ヒト皮膚線維芽細胞馴化培地の50ミリリットルをマイクロタイタープレートのウェル中でコートした。非特異的結合部位を飽和させ、0.25nMのWISP-1-IgGを、様々な濃度のデコリン(塗りつぶした円)又はバイグリカン(白抜きの円)の存在下で2時間インキュベートした。mWISP-1-IgGの結合は5Aに記載したようにして評価した。
【図6】 図6はグリコサミノグリカンへのmWISP-1-IgG結合を示す。ヒト皮膚線維芽細胞の無血清馴化培地を以下の実施例に記載したようにして調製した。50μlの馴化培地をマイクロプレートのウェル中で4℃にて一晩コートし、非特異的結合部位を飽和させ、ウェルを、様々な濃度の異なったグリコサミノグリカンの存在下で0.5nMのWISP-1-IgGと共に室温で2時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、発色体基質を用いてシグナルを明らかにし、450nmのO.D.を測定した。コンドロイチン硫酸A(塗りつぶした円);デルマタン硫酸(白抜きの円);コンドロイチン硫酸C(塗りつぶした三角);コンドロイチン硫酸D(白抜きの三角);コンドロイチン硫酸E(塗りつぶした四角);ヘパリン(X);ヘパリン硫酸(白抜きの四角)。
【図7】 図7A−7Iは、ヒト皮膚線維芽細胞へのWISP-1の結合についてデルマタン硫酸が競合することを示している。ヒト皮膚線維芽細胞をチャンバースライドに蒔いた。非特異的結合部位を飽和させ、1nMのWISP-1-IgGを、(7B)50μg/mlのコンドロイチン硫酸A(「CSA」)、デルマタン硫酸(「DS」);(7C)、コンドロイチン硫酸C(「CS C」);(7D)、コンドロイチン硫酸D(「CS D」);(7E)、コンドロイチン硫酸E(「CS E」)(7F);ヘパリン(「Hep」)(7G)又はヘパラン硫酸(「HS」)(7H)の存在下で又は不存在下(図7A)で室温で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、固定し、WISP-1-IgGの結合を、ビオチン化抗ヒトIgG抗体を用いる免疫蛍光法と、間接的チラミド基質増幅法の次にFITC結合ストレプトアビジンを用いて検出した。得られたデジタル画像の相対的蛍光強度を形態計測分析を用いて測定した(7I)。
【図8】 図8A−8Gは、ヒト皮膚線維芽細胞へのWISP-1結合が、コンドロイチナーゼBでの細胞表面の消化によって消滅することを示している。ヒト皮膚線維芽細胞を、0.1UのコンドロイチナーゼABC(Ch ABC);(8B)、コンドロイチナーゼB(「Ch B」);(8C)、コンドロイチナーゼC(「Ch C」);(8D)、ヘパリナーゼ(「Hep」)(8E)の不存在下(8A)又は存在下で、37℃にて2時間インキュベートした。細胞を洗浄し、非特異的結合部位を飽和させ、1nMのWISP-1-IgGを室温で1時間インキュべートした。3回の洗浄後、細胞を固定し、WISP-1-IgGの結合をビオチン化抗ヒトIgG抗体を用いる免疫蛍光法と、間接的チラミド基質増幅法の最後にFITC結合ストレプトアビジンを用いて検出した。図8Fは未消化の細胞が使用されたが、mWISP-1-IgGが結合手順から省かれた負のコントロールを示している。得られたデジタル画像の相対的蛍光強度を形態計測分析を用いて測定した(8G)。
【図9】 図9A−9Dは、ヒト皮膚線維芽細胞へのWISP-1の結合についてデコリンとバイグリカンが競合することを示している。ヒト皮膚線維芽細胞をチャンバースライドに蒔き、非特異的結合部位を飽和させた。1ナノモルのmWISP-1-IgGを、1mg/mlのデコリン(9A)又はバイグリカン(9B)の存在下で、又は加えた競合剤の不存在下で(9C)室温にて1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、固定し、WISP-1-IgGの結合を、ビオチン化抗ヒトIgG抗体を用いる免疫蛍光法と、間接的チラミド基質増幅法の最後にFITC結合ストレプトアビジンを用いて検出した。得られたデジタル画像の相対的蛍光強度を形態計測分析を用いて測定した(9D)。
【図10】 図10はWISP-1に対するCHO細胞の異なった変異体の付着を示している。細胞を2mMのEDTAを含むPBS中に取った後、洗浄し、1%BSAを含む無血清Ham-F12/LGDMEM(50:50)中に再懸濁させた。細胞懸濁液を、WISP-1をコートしたマイクロタイターウェルに加え、37℃で2時間インキュベートした。ウェルをPBSを用いて3X洗浄し、上清を除き、付着細胞数を、Molecular ProbesのCyQUANTを用いて測定した。WISP-1をコートしたマイクロタイターウェルへのCHO-K1細胞の付着を100%として使用し、全ての値を、BSAでコートしたマイクロタイターウェルへの非特異的接着に対して補正した。
【図11】 図11はWISP-1に対するヒト皮膚線維芽細胞の付着を示している。細胞を15mMのEDTAを含むPBS中に取った後、洗浄し、1%BSAを含む無血清Ham-F12/LGDMEM(50:50)中に再懸濁させた。細胞懸濁液を、100μg/mlのデルマタン硫酸(つまりコンドロイチン硫酸B)又はヘパリンの不存在又は存在下でマイクロタイターウェルに加えた。37℃で2時間後、ウェルをPBSを用いて3X洗浄し、上清を除き、付着細胞数をクリスタルバイオレット染色によって測定した。全ての値はBSAでコートしたマイクロタイターウェルへの非特異的接着に対して補正した。
【図12】 軟骨細胞分化アッセイの結果を示す。
【図13】 コラーゲンII染色アッセイの結果を示す。
【図14】 軟骨基質破壊アッセイの結果を示す。示されたデータは、WISP-3が軟骨基質の破壊を減少させることを示している。関節軟骨移植片を培地だけで(−)又は150ng/mlのWISP-3で(WISP3−)、又は1ng/mlのIL-1αだけを有する培地中で(+)又はIL-1αプラスWISP-3(WISP3+)で3日間処理した。軟骨基質の破壊は、DMMBアッセイを使用して培地中のプロテオグリカン量を測定することによって決定した。
【図15】 図15A−15BはWISP-1が軟骨基質破壊と一酸化窒素の生成を阻害することを示している。関節軟骨移植片を培地だけで(−)又は1.1nMのWISP-1で(WISP1−)、又は1ng/mlのIL-1αだけを有する培地中で(+)又はIL-1αとWISP-1(WISP1+)で3日間処理した。図15Aでは、軟骨基質の破壊を、DMMBアッセイを使用して培地中のプロテオグリカン量を測定することによって決定した。図15Bでは、一酸化窒素(NO)の生成を、グリース反応を使用して培地中のNO量を測定することによって決定した。
【図16】 図16はWISP-2を過剰発現するトランスジェニックマウスの骨格表現型を示す。その骨格筋中にWISP-2を過剰発現する14週齢の野生型(右のパネル)又はトランスジェニック(左のパネル)マウスの大腿骨の組織切片が示されている。野生型マウスのものに対してトランスジェニックマウスにおいて硝子軟骨の領域、すなわち成長板と関節軟骨の拡大が見られる。また、軟骨基質の領域がトランスジェニックの皮質骨中に存在しているようであるが、野生型マウスでは存在しない。
【図17】 図17はヒトWISP-1-IgG(配列番号:1);マウスWISP-1-IgG(配列番号:2);「野生型」ヒトWISP-1(配列番号:3);「野生型」マウスWISP-1(配列番号:4);及びヒトIgGタグ(配列番号:5)のアミノ酸配列を示す。
【図18】 図18はWISP-3-IgG(配列番号:6);「交互」WISP-3-IgG(配列番号:7);WISP-3(配列番号:8);及びWISP-3-「ロング5’スプライシング」(配列番号:9)のアミノ酸配列を示す。
【図19】 図19はヒトWISP-2のアミノ酸配列(配列番号:10)を示す。
【配列表】
Claims (36)
- 変性軟骨性疾患を治療するための医薬であって:
a)配列番号:3のアミノ酸23から367を含んでなるWISP-1ポリペプチド;
b)配列番号:3のアミノ酸1から367を含んでなるWISP-1ポリペプチド;
c)a)又はb)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-1ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-1ポリペプチド;
d)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、a)又はb)のポリペプチドの断片;
e)配列番号:10のアミノ酸24から250を含んでなるWISP-2ポリペプチド;
f)配列番号:10のアミノ酸1から250を含んでなるWISP-2ポリペプチド;
g)e)又はf)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-2ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-2ポリペプチド;
h)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、e)又はf)のポリペプチドの断片;
i)配列番号:9のアミノ酸34から372を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
j)配列番号:9のアミノ酸1から372を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
k)配列番号:8のアミノ酸16から354を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
l)配列番号:8のアミノ酸1から354を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
m)i)、j)、k)又はl)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-3ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-3ポリペプチド;及び
n)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、i)、j)、k)又はl)のポリペプチドの断片;
からなる群から選択されるWISPポリペプチドの有効量を含んでなる医薬。 - 前記WISPポリペプチドが:
a)配列番号:3のアミノ酸23から367を含んでなるWISP-1ポリペプチド;
b)配列番号:3のアミノ酸1から367を含んでなるWISP-1ポリペプチド;
c)a)又はb)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-1ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-1ポリペプチド;
d)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、a)又はb)のWISP-1ポリペプチドの断片;
から選択されるポリペプチドである、請求項1に記載の医薬。 - 前記WISP-1ポリペプチドが配列番号:3のアミノ酸23から367を含む、請求項2に記載の医薬。
- 前記WISP-1ポリペプチドが一又は複数のポリエチレングリコール分子に結合している、請求項2に記載の医薬。
- 前記WISP-1ポリペプチドがエピトープタグ又は免疫グロブリン分子に結合している、請求項2に記載の医薬。
- 前記WISPポリペプチドが:
a)配列番号:10のアミノ酸24から250を含んでなるWISP-2ポリペプチド;
b)配列番号:10のアミノ酸1から250を含んでなるWISP-2ポリペプチド;
c)a)又はb)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-2ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-2ポリペプチド;及び
d)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、a)又はb)のWISP-2ポリペプチドの断片;
から選択されるポリペプチドからなる、請求項1に記載の医薬。 - 前記WISP-2ポリペプチドが配列番号:10のアミノ酸24から250を含む、請求項6に記載の医薬。
- 前記WISP-2ポリペプチドが一又は複数のポリエチレングリコール分子に結合している、請求項6に記載の医薬。
- 前記WISP-2ポリペプチドがエピトープタグ又は免疫グロブリン分子に結合している、請求項6に記載の医薬。
- 前記WISPポリペプチドが:
a)配列番号:9のアミノ酸34から372を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
b)配列番号:9のアミノ酸1から372を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
c)配列番号:8のアミノ酸16から354を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
d)配列番号:8のアミノ酸1から354を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
e)a)、b)、c)又はd)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-3ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-3ポリペプチド;及び
f)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、a)、b)、c)又はd)のポリペプチドの断片;
から選択されるポリペプチドからなる、請求項1に記載の医薬。 - 前記WISP-3ポリペプチドが配列番号:9のアミノ酸34から372を含む、請求項10に記載の医薬。
- 前記WISP-3ポリペプチドが配列番号:8のアミノ酸16から354を含む、請求項10に記載の医薬。
- 前記WISP-3ポリペプチドが一又は複数のポリエチレングリコール分子に結合している、請求項10に記載の医薬。
- 前記WISP-3ポリペプチドがエピトープタグ又は免疫グロブリン分子に結合している、請求項10に記載の医薬。
- 前記軟骨が関節軟骨である、請求項1に記載の医薬。
- 前記変性軟骨性疾患がリウマチ様関節炎又は変形性関節症である、請求項1に記載の医薬。
- 前記変性軟骨性疾患がリウマチ様関節炎である、請求項16に記載の医薬。
- WISPポリペプチドが製薬的に許容可能な担体中に含まれる、請求項1に記載の医薬。
- 傷害により損傷を受けた哺乳動物軟骨細胞又は軟骨組織を治療するための医薬であって:
a)配列番号:3のアミノ酸23から367を含んでなるWISP-1ポリペプチド;
b)配列番号:3のアミノ酸1から367を含んでなるWISP-1ポリペプチド;
c)a)又はb)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-1ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-1ポリペプチド;
d)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、a)又はb)のポリペプチドの断片;
e)配列番号:10のアミノ酸24から250を含んでなるWISP-2ポリペプチド;
f)配列番号:10のアミノ酸1から250を含んでなるWISP-2ポリペプチド;
g)e)又はf)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-2ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-2ポリペプチド;
h)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、e)又はf)のポリペプチドの断片;
i)配列番号:9のアミノ酸34から372を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
j)配列番号:9のアミノ酸1から372を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
k)配列番号:8のアミノ酸16から354を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
l)配列番号:8のアミノ酸1から354を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
m)i)、j)、k)又はl)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-3ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-3ポリペプチド;及び
n)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、i)、j)、k)又はl)のポリペプチドの断片;
からなる群から選択されるWISPポリペプチドの有効量を含んでなる医薬。 - 傷害が、マイクロダメージ又は鈍的外傷、軟骨骨折、骨軟骨骨折あるいは腱、半月板、もしくは靱帯の損傷である、請求項19に記載の医薬。
- 前記WISPポリペプチドが、哺乳動物の前記軟骨細胞又は軟骨組織又は関節中への注射により哺乳動物に投与される、請求項19に記載の医薬。
- 前記WISPポリペプチドが:
a)配列番号:3のアミノ酸23から367を含んでなるWISP-1ポリペプチド;
b)配列番号:3のアミノ酸1から367を含んでなるWISP-1ポリペプチド;
c)a)又はb)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-1ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-1ポリペプチド;
d)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、a)又はb)のポリペプチドの断片;
から選択されるポリペプチドである、請求項19に記載の医薬。 - 前記WISP-1ポリペプチドが配列番号:3のアミノ酸23から367を含む、請求項22に記載の医薬。
- 前記WISP-1ポリペプチドが一又は複数のポリエチレングリコール分子に結合している、請求項22に記載の医薬。
- 前記WISP-1ポリペプチドがエピトープタグ又は免疫グロブリン分子に結合している、請求項22に記載の医薬。
- 前記WISPポリペプチドが:
a)配列番号:10のアミノ酸24から250を含んでなるWISP-2ポリペプチド;
b)配列番号:10のアミノ酸1から250を含んでなるWISP-2ポリペプチド;
c)a)又はb)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-2ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-2ポリペプチド;
d)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、a)又はb)のポリペプチドの断片;
から選択されるポリペプチドからなる、請求項19に記載の医薬。 - 前記WISP-2ポリペプチドが配列番号:10のアミノ酸24から250を含む、請求項26に記載の医薬。
- 前記WISP-2ポリペプチドが一又は複数のポリエチレングリコール分子に結合している、請求項26に記載の医薬。
- 前記WISP-2ポリペプチドがエピトープタグ又は免疫グロブリン分子に結合している、請求項26に記載の医薬。
- 前記WISPポリペプチドが:
a)配列番号:9のアミノ酸34から372を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
b)配列番号:9のアミノ酸1から372を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
c)配列番号:8のアミノ酸16から354を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
d)配列番号:8のアミノ酸1から354を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
e)a)、b)、c)又はd)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-3ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-3ポリペプチド;
f)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、a)、b)、c)又はd)のポリペプチドの断片;
から選択されるポリペプチドからなる、請求項19に記載の医薬。 - 前記WISP-3ポリペプチドが配列番号:9のアミノ酸34から372を含む、請求項30に記載の医薬。
- 前記WISP-3ポリペプチドが配列番号:8のアミノ酸16から354を含む、請求項30に記載の医薬。
- 前記WISP-3ポリペプチドが一又は複数のポリエチレングリコール分子に結合している、請求項30に記載の医薬。
- 前記WISP-3ポリペプチドがエピトープタグ又は免疫グロブリン分子に結合している、請求項30に記載の医薬。
- WISPポリペプチドが製薬的に許容可能な担体中に含まれる、請求項19に記載の医薬。
- (イ)軟骨性疾患の治療に有効な組成物であって:
a)配列番号:3のアミノ酸23から367を含んでなるWISP-1ポリペプチド;
b)配列番号:3のアミノ酸1から367を含んでなるWISP-1ポリペプチド;
c)a)又はb)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-1ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-1ポリペプチド;
d)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、a)又はb)のポリペプチドの断片;
e)配列番号:10のアミノ酸24から250を含んでなるWISP-2ポリペプチド;
f)配列番号:10のアミノ酸1から250を含んでなるWISP-2ポリペプチド;
g)e)又はf)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-2ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-2ポリペプチド;
h)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、e)又はf)のポリペプチドの断片;
i)配列番号:9のアミノ酸34から372を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
j)配列番号:9のアミノ酸1から372を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
k)配列番号:8のアミノ酸16から354を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
l)配列番号:8のアミノ酸1から354を含んでなるWISP-3ポリペプチド;
m)i)、j)、k)又はl)のポリペプチドに対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するWISP-3ポリペプチドであって、軟骨細胞の増殖又は分化を刺激するWISP-3ポリペプチド;及び
n)軟骨細胞の増殖又は分化を刺激する、i)、j)、k)又はl)のポリペプチドの断片;
からなる群から選択されるWISPポリペプチドの有効量を含有する組成物を収容する容器と、
(ロ)軟骨性疾患の治療のために前記WISPポリペプチドを使用するための指示書とを含んでなる製造品。
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