JP4200865B2 - シリンダヘッド - Google Patents

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本発明は内燃機関のシリンダヘッドに関する。
シリンダヘッドは、動弁機構のカムシャフトが配置されるカム室と、カム室床面の左右一側に開口しカム室床面に溜まる潤滑油(オイル)をオイルパンに落とすオイル落とし孔を有する。
また、シリンダヘッドは、その剛性を上げるために、カム室床面から立ち上がる立ち上がり壁(「リブ」と言ってもよい)を有することがある。たとえばカムジャーナルがシリンダヘッドと別体に形成されてシリンダヘッド上部に組み付けられるエンジンでは、燃焼室上壁の剛性を確保するために、シリンダヘッドの幅方向中間部位にシリンダヘッドの長手方向にカム室の全長にわたって延びる立ち上がり壁が設けられることが多い。
しかし、カム室床面に立ち上がり壁が設けられると、立ち上がり壁によって、カム室空間の少なくとも下部が、オイル落とし孔がある側の第1の部分とそれと反対側の第2の部分に隔てられ、動弁機構の摺動部を潤滑してカム室床面に落ちたオイルのうち第2の部分に落ちたオイルは、立ち上がり壁の上端位置まで溜まり立ち上がり壁の上端を越えて第1の部分に流れるまでは第2の部分に溜まってしまう。カム室床面上へのオイル溜まり量が多いと、必要油量の増加と、オイル劣化の問題が発生する。
オイル溜まりを無くすために立ち上がり壁を除去すると、シリンダヘッド、とくに燃焼室上壁の剛性が低くなるという問題が生じる。また、オイル落とし孔はブローバイガスの通路を兼ねる場合が多いため、立ち上がり壁の除去によって多量のオイルがオイル落とし孔に落ちるとブローバイガスの通りが悪くなり、換気性能が悪化する。
特開2002−021633号公報は、吸気孔の周囲に、ロッカアーム室の床面に溜まったオイルが一度に流入するのを防ぐ堰を形成し、堰の一部に、ロッカアーム室の床面に溜まったオイルを少しずつ吸気孔に流入させるための溝を形成したエンジンを開示している。この技術を上記のカム室床面に立ち上がり壁を有するシリンダヘッドに適用しようとしても、立ち上がり壁に溝を設けると立ち上がり壁が切れてシリンダヘッド剛性向上効果が無くなるという問題が生じて、適用することができない。
特開2002−021633号公報
本発明が解決しようとする問題は、カム室床面に立ち上がり壁を設けたシリンダヘッドではオイル落とし孔がある側と反対側の部分のカム室床面上にオイルが溜まり、必要油量の増加とオイル劣化が生じるという問題である。
本発明の目的は、カム室床面に立ち上がり壁を設けたシリンダヘッドで、オイル落とし孔がある側と反対側の部分のカム室床面上にオイルが溜まりにくく、オイルが溜まることによる必要油量の増加とオイル劣化を抑制することができるシリンダヘッドを提供することにある。その場合、立ち上がり壁のシリンダヘッド剛性向上効果をほぼ維持したまま、必要油量の増加とオイル劣化を抑制することができるようにする。
上記課題を解決する、そして上記目的を達成する、本発明はつぎの通りである。
カム室に開口するオイル落とし孔と、カム室床面から立ち上がりカム室の下部をオイル落とし孔が設けられている側の第1の部分とそれと反対側でカム室床面上にオイルが溜まる側の第2の部分に隔てる立ち上がり壁とを有するシリンダヘッドであって、
カム室床面から立ち上がる前記立ち上がり壁に前記第1の部分と前記第2の部分とを連通する連通孔が設けられており、
前記連通孔の断面積が、カム室の下部の第2の部分のカム室床面に溜まるオイルが立ち上がり壁の上端まで上がってあふれる断面積より大に設定され、かつ第2の部分のカム室床面に溜まるオイルが第1の部分に流れて第1の部分に落ちたオイルと合流してオイル落とし孔に流れた場合にオイル落とし孔を上昇するブローバイガスの流れを阻害する断面積より小に設定されているシリンダヘッド。
上記本発明のシリンダヘッドによれば、カム室床面から立ち上がる立ち上がり壁にカム室の下部の第1の部分と第2の部分とを連通する連通孔を設けたので、第2の部分のカム室床面に溜まるオイルを連通孔を通して第1の部分に流出させることができる。
また、連通孔20の断面積(孔形状)が、カム室の下部の第2の部分のカム室床面に溜まるオイルが立ち上がり壁の上端まで上がってあふれる断面積より大に設定され、かつ第2の部分のカム室床面に溜まるオイルが第1の部分に流れて第1の部分に落ちたオイルと合流してオイル落とし孔に流れた場合にオイル落とし孔を上昇するブローバイガスの流れを阻害する断面積より小に設定されているので、カム室の下部の第2の部分のカム室床面にオイルが溜まり過ぎない。その結果、第2の部分のカム室床面上に多量にオイルが溜まることがなくなり、多量にオイルが溜まることによって生じる必要油量の増加とオイル劣化が抑制される。また、オイル落とし孔を上昇するブローバイガスの流れを阻害しない。これによって、クランクケース内の換気性能が維持される。
また、立ち上がり壁に設けられる手段が溝ではなく連通孔であるため、立ち上がり壁が切れることがなく、立ち上がり壁のシリンダヘッド剛性向上効果が維持される。
以下に、本発明のシリンダヘッドを図1、図2を参照して説明する。
本発明のシリンダヘッド10は、内燃機関のシリンダヘッドであり、シリンダブロック上に装着される。シリンダヘッド10の上には、カムジャーナル11を介して、または直接、シリンダヘッドカバー12が装着される。シリンダヘッド10、カムジャーナル11、ヘッドカバー12内には、カム室(「カム室空間」ともいう)13が形成されており、カム室13にはカムシャフト14が2本並列に配置されている。カムシャフト14は、シリンダヘッド10の長手方向に延びており、カムジャーナル11に支持されている。図1、図2は左右バンクがV型に配置された、片側バンクに3気筒をもつエンジンの片側バンクを示している。
シリンダヘッド10は、上端がカム室13の床面16の左右一側に開口するオイル落とし孔15と、カム室床面16から立ち上がりカム室13の下部をオイル落とし孔15が設けられている側の第1の部分17とそれと反対側(オイル落とし孔が設けられていない側)の第2の部分18に隔てる立ち上がり壁19を有する。オイル落とし孔15は、ブローバイガス通路を兼ねる。
立ち上がり壁19は、上下方向には、シリンダヘッド10の上端(シリンダヘッド10とカムジャーナル11との接続面)近傍まで延びている。
オイル落とし孔15は、シリンダヘッド長手方向には、カム室13の長手方向端部の位置、および気筒21と気筒21との間の位置に設けられている。
立ち上がり壁19は、シリンダヘッドの幅方向(シリンダヘッドの長手方向に直交する方向)の中央部で、シリンダヘッドの長手方向にカム室13の全長にわたって延びる。2本のカムシャフト14のうちの1本はカム室13の下部の第1の部分17の上方にあり、もう1本はカム室13の下部の第2の部分18の上方にある。
立ち上がり壁19は、各気筒21の燃焼室の上壁を、補強している。
気筒21と気筒21の間の位置では、シリンダヘッド内にウォータジャケット22が形成されており、ウォータジャケット22の上壁の上面はカム室床面16の一部を構成しており、このウォータジャケット22の上壁の上面から立ち上がり壁19が立ち上がっている。
立ち上がり壁19には、カム室13の下部の第1の部分17と第2の部分18とを連通する連通孔20が設けられている。
連通孔20は、シリンダヘッド長手方向には、カム室13の長手方向端部の位置、および気筒21と気筒21の間の位置にある。したがって、連通孔20とオイル落とし孔15は、シリンダヘッド長手方向に、同じ位置か、またはほぼ同じ位置にある。
エンジンを車両に搭載した状態では、カム室床面16および連通孔20はほぼ水平の姿勢にある。連通孔20は、シリンダヘッドの幅方向に延び、立ち上がり壁19を貫通している。
連通孔20は、その下端が、カム室13の下部の第1の部分17のカム室床面16よりも若干高い位置にあり、カム室13の下部の第2の部分18のカム室床面16よりも若干高い位置にある。
連通孔20の断面積(孔形状)は、カム室13の下部の第2の部分18のカム室床面16に溜まるオイルが立ち上がり壁19の上端まで上がってあふれる断面積より大に設定され、かつ第2の部分18のカム室床面16に溜まるオイルが第1の部分17に流れて第1の部分に落ちたオイルと合流してオイル落とし孔15に流れた場合にオイル落とし孔15を上昇するブローバイガスの流れを阻害する断面積より小に設定される。すなわち、連通孔20の断面積は、カム室13の下部の第2の部分18のカム室床面16にオイルが溜まり過ぎないように、かつ、オイル落とし孔15を上昇するブローバイガスの流れを阻害しないように、適正な範囲に設定される。
立ち上がり壁19の上端部分には、オイル通路23が形成されていてもよい。ただし、オイル通路23は形成されなくてもよい。
立ち上がり壁19の上端部分にオイル通路23が形成されている場合は、このオイル通路23よりも下方に連通孔20は位置する。
つぎに、本発明の作用・効果を説明する。
エンジン運転中に動弁機構の摺動部を潤滑したオイル24は流れ落ち、たとえば2本のカムシャフト14から、カム室13の下部の第1の部分17のカム室床面16と第2の部分18のカム室床面16上に流れ落ちる。
カム室13の下部の第2の部分18のカム室床面16に落ちたオイル24は立ち上がり壁19があるために溜まり、溜まるオイル24の液位が連通孔20の下端部位に達すると、連通孔20を通ってカム室13の下部の第1の部分17のカム室床面16に流れ、そこからオイル落とし孔15へと流れ、オイルパンに戻る。
すなわち、立ち上がり壁19にカム室下部の第1の部分17と第2の部分18とを連通する連通孔20を設けたので、第2の部分18のカム室床面部分に溜まるオイルを連通孔20を通して第1の部分17に流出させることができる。その結果、第2に部分18にオイル24が溜まり過ぎる(多量に溜まる)ことがなくなり、オイル24が多量に溜まることによって生じる必要油量の増加とオイル劣化が抑制される。
また、立ち上がり壁19に設けられる手段が溝ではなく連通孔であるため、立ち上がり壁19が切れることがなく、立ち上がり壁19のシリンダヘッド剛性向上効果がほぼ維持される。
また、連通孔20の断面積(孔形状)が適正な範囲に設定されているので、カム室13の下部の第2の部分18のカム室床面16にオイルが溜まり過ぎないだけでなく、オイル落とし孔15を上昇するブローバイガスの流れを阻害しない。これによって、クランクケース内の換気性能が維持される。
本発明のシリンダヘッドの断面図である。 本発明のシリンダヘッドの平面図である。
符号の説明
10 シリンダヘッド
11 カムジャーナル
12 シリンダヘッドカバー
13 カム室
14 カムシャフト
15 オイル落とし孔
16 カム室床面
17 第1の部分(カム室の下部の第1の部分)
18 第2の部分(カム室の下部の第2の部分)
19 立ち上がり壁
20 連通孔
21 気筒
22 ウォータジャケット
23 オイル通路
24 オイル

Claims (1)

  1. カム室に開口するオイル落とし孔と、カム室床面から立ち上がりカム室の下部をオイル落とし孔が設けられている側の第1の部分とそれと反対側でカム室床面上にオイルが溜まる側の第2の部分に隔てる立ち上がり壁とを有するシリンダヘッドであって、
    カム室床面から立ち上がる前記立ち上がり壁に前記第1の部分と前記第2の部分とを連通する連通孔が設けられており、
    前記連通孔の断面積が、カム室の下部の第2の部分のカム室床面に溜まるオイルが立ち上がり壁の上端まで上がってあふれる断面積より大に設定され、かつ第2の部分のカム室床面に溜まるオイルが第1の部分に流れて第1の部分に落ちたオイルと合流してオイル落とし孔に流れた場合にオイル落とし孔を上昇するブローバイガスの流れを阻害する断面積より小に設定されているシリンダヘッド。
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