JP4200255B2 - 炭化水素を原料とした動力発生装置および方法 - Google Patents

炭化水素を原料とした動力発生装置および方法 Download PDF

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  • Engine Equipment That Uses Special Cycles (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化水素原料を用いて動力を発生する動力発生装置および動力発生方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来より、石炭や重質油等の化石燃料を原料として電力、熱、動力を発生させることが広く実施されている。また廃棄物問題、環境問題から廃棄物を再利用することが進められており、その一つの方法として、ゴミ発電等がある。廃棄物には主に都市ゴミに代表される一般廃棄物と各産業セクターから排出される産業廃棄物がある。可燃性の廃棄物には汚泥、紙、プラスチック、木屑、廃油等が代表的であり、近年の再利用の主な対象である。これらは都市や工業地域、家庭が主な発生源であるが、これ以外にも農業、林業、漁業関係の分野からも、糞尿、廃棄木材、農耕廃棄物、漁業廃棄物等、いわゆる有機系のもの(以下、バイオマスと称す)が排出されており、これらの再利用も求められている。バイオマスの処理技術には、直接燃焼、熱分解、ガス化、液化、発酵等が代表的であり、これらの転換技術により、最終的には電力、燃料油、熱、化学製品等が製造される。この中で、木材等の植物系バイオマスを用いて発電する技術がある。
【0003】
植物系バイオマスを用いて発電する方式には、1)燃焼して蒸気タービンで発電する、2)熱分解して燃料油を製造し、これを用いてボイラー又はガスタービン又はデイーゼルエンジンで発電する、3)ガス化してガスタービンで発電する、4)ガス化してガスエンジンで発電する、5)ガス化して生成ガスをボイラ燃料とする、等がある。
【0004】
現時点では、1)は実用段階にある。2)については研究・開発途上であり、例えば、Proceedings of the 4th Biomass Conference of the Americas,Oakland,August,1999(文献1)には、熱分解油の品質向上法等が記載されている(p.1229〜p.1273)。3)については同じく文献1にガス化技術やガス精製技術が大型のプラントにより実証中であることが記載されている(p.1061〜p.1127)。
【0005】
4)の方式は、古くはわが国で用いられた木炭自動車のシステムが該当し、例えば、塩ノ谷幸造著、木炭自動車、パワー社、1995年(文献2)に記載されている。これはガス発生炉、ガス清浄器、ガス冷却器、ガス混合器、エンジンで構成されており、ガス化に必要な空気は送風機でガス発生炉に導入される。木炭自動車は車を走らせることが目的であるが、これと基本的に同様なシステムで電力を発生させる方法が、上記文献1に記載されている(p.1026)。これは、熱分解装置、ガス化装置、ガス清浄器、ガス貯蔵タンク、内燃機関及び発電機より構成されている。ここでは内燃機関からの排気ガスを熱分解の熱源に用いている。ガス化剤の空気はガス化炉からの生成ガスと熱交換することで予熱し、ガス化炉へ供給している。また、同じく文献1に木材乾燥器、ガス化炉、脱塵器、ガス昇圧機、エンジン及び発電機より構成されるシステムが述べられている(p.1069)。ここでは、エンジンの排気ガスは木材乾燥の熱源に利用されている。またガス化剤の空気は独立した系統から供給される。さらに、おが屑を原料とし、発生したガスをガスエンジンに供して発電することが、上記文献2に記載されている(p.60)。ここではガス化に必要な空気はエンジンの吸引力を利用してガス発生炉に導入される。なお、原料は木材ではないが、古タイヤを、ガス発生塔、不純物除去装置、消臭・タール清浄器、貯蔵タンク、エンジン及び発電機で構成された装置で処理することが、特開平7−113092号公報に記載されている。ガス化剤の空気は送風機で供給している。
【0006】
5)については、発電所で実証中であることが、例えば、Symposium of Power Production from BiomassIII,Gasification and Pyrolysis,September,Espo,1999(文献3)に記載されている。既設の微粉炭焚きボイラ又はガス焚きボイラにバイオマスのガス化ガスを供給することで、既設ボイラのリパワリングや燃料節約を目的としている(いわゆる混焼方式)。バイオマスを一旦ガス化するのは、ガス炊きボイラの場合は直接バイオマスを燃焼できないこと、また微粉炭焚きボイラではバイオマスの性状が微粉炭と異なり種々弊害が懸念されるため、とされている。特開昭63−210188号公報には、同様にバイオマスをガス化して生成ガスをボイラで燃焼させるが、その際、ガス化剤の酸素源をガスタービン燃焼排ガスとすることが記載されている。これは、バイオマス、特に木質系燃料は原料自体にガス化剤として機能する水分、酸素を保有していることから比較的低温でガス化し易いこと、一方、ガスタービンの排気ガスは一般に500〜600℃であると同時に、酸素をかなり(例えば15%)含んでおり、ガス化剤の補助剤の役割がある、という知見に基づいている。
【0007】
これらの発電方法において、蒸気タービンやガスタービンは大型ほど熱効率が高いので、1)や3)の方式は、木材を多量に集積することが比較的容易にできるところに立地されている。一方、木材が偏在しており、多く集積しようとするほど集積や輸送のコストが嵩む場合は、小規模でも熱効率が高いガスエンジンを用いた4)の方式が好適である。5)の場合でも、既設ボイラーは中、大規模の出力であるが、全体の燃料に対してバイオマス自身の量は原料の割合で3〜15%程度である。
【0008】
なお、特開平8−252824号公報には、廃棄プラスチックを熱分解して燃料油やガスを得、これを熱機関で使用して電力を製造する際に、熱機関からの排出熱を廃棄プラスチック熱分解の加熱源にすることが記載されているが、ここでは排ガスの熱のみを利用するもので、ガス化剤そのものに利用するものではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように植物系バイオマス利用の発電では、原料処理量と発電効率の観点で熱機関の使い分けがあるが、バイオマス単独の場合は、いずれにしても分散電源としての役割を担うのが好適でる。この場合、大規模発電と比較して電力単価を下げることが課題であり、このためには発電効率の一層の向上と設備費の低減が重要である。特に上記2)〜5)の発電効率はガスエンジン、ガスタービンの熱効率とガス化効率の積になるので、ガス化効率の向上が望まれる。また、生成したガスの性状が内燃機関の良好な燃焼や出力に対してより適性にする余地がある。
【0010】
設備面では、空気供給設備、ガス化炉、ガス精製装置、内燃機関、ボイラ等を具備しているが、より簡素な構成とするのがよい。特にガス化剤である空気を供給する設備の構成、仕様はガス化効率と設備費に大きく影響する。
【0011】
ところで、上記特開昭63−210188号公報では、ガスタービン排ガスをガス化剤に用いているので、特別の空気供給系統が不用である点で優れているが、生成ガスは内燃機関自身で使用するのではなくボイラ燃料としているので、その分、ガスタービン用の燃料が多く必要となり、ガス化効率を向上させる点では不利である。
【0012】
本発明は、簡素な設備でガス化効率を向上させることのできる炭化水素を原料とした動力発生装置、および動力発生方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の動力発生装置は、炭化水素原料をガス化し可燃性ガスを発生するガス化手段と、このガス化手段で発生した可燃性ガスを精製するガス精製手段と、このガス精製手段で精製した可燃性ガスを燃料として駆動し、且つ補助燃料が供給可能な内燃機関と、この内燃機関で生じた燃焼排ガスの一部を冷却することなくガス化手段に導入する排ガス導入手段とを備えて前記燃焼排ガスの循環系を構成し、ガス化手段は、燃焼排ガスを炭化水素原料に接触させることによりガス化を行うことを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、内燃機関で生じた燃焼排ガスの一部は排ガス導入手段によってガス化手段に導入され、炭化水素原料と接触して該炭化水素原料をガス化するので、特別なガス化剤供給源が不要となり、設備が簡単になると同時に、ガス化効率も向上できる。
【0015】
また、本発明では、排ガス導入手段が、内燃機関の排気管を分岐してガス化手段に接続された排ガス導入配管と、排気管の先端側に設けられ開口端が大気開放された排ガス放出配管とを有し、排ガス放出配管には、燃焼排ガスのガス化手段への導入量と大気中への放出量の分配割合を調節する燃焼排ガス分配弁が設けられていることを特徴としている。このように構成すれば、内燃機関からの高温の燃焼排ガスを冷却させることなく、かつ、ガス化にとって常に良好な条件でガス化手段に導入することができ、ガス化効率がより一層向上する。なお、燃焼排ガス分配弁の開度を小さくすれば、ガス化手段への燃焼排ガスの導入量は増加し、大気中への燃焼排ガスの排出量は減少する。逆に、燃焼排ガス分配弁の開度を大きくすれば、ガス化手段への燃焼排ガスの導入量は減少し、大気中への燃焼排ガスの排出量は増加する。
【0016】
上記内燃機関はガスエンジンまたはガスタービンである。ガスエンジンの場合は、ガス精製手段の冷却系統はガスエンジンの冷却系統と接続され、ガスエンジン冷却系統に設けられた冷却手段によって冷却される。このようにすれば、冷却手段の設備を合理化することができる。
【0017】
炭化水素原料としては、木材、プラスチック、紙、石炭、発熱量を有する産業廃棄物、発熱量を有する農耕生産物、種子類、油類、廃油及びこれら複数個の混合物が可能である。石炭の場合には揮発分が多い石炭が好適である。
【0018】
上記動力発生装置の運転制御方法としては、内燃機関がガスエンジンの場合は次のように行う。すなわち、炭化水素原料をガス化し可燃性ガスを発生するガス化器と、このガス化器で発生した可燃性ガスを精製するガス精製装置と、このガス精製装置で精製した精製ガスを燃料とし、且つ補助燃料が供給可能なガスエンジンと、このガスエンジンで生じた燃焼排ガスの一部を冷却することなくガス化器に導入する排ガス導入配管とを備えて前記燃焼排ガスの循環系が構成され、燃焼排ガスのガス化器への導入量と大気中への放出量の分配割合を調節する燃焼排ガス分配弁とを備えた動力発生装置を運転する際に、ガスエンジンに設けられたスロットル弁の開度に比例させて、ガス化器への炭化水素原料の供給量を変化させることにより、ガスエンジン出力を調節すると同時に、ガス化器内の温度又は精製ガスの組成に応じて、燃焼排ガス分配弁の開度を調節することにより、ガス化器に導入する燃焼排ガス量を制御する。
【0019】
また、内燃機関がガスタービンの場合は次のように運転制御を行う。すなわち、炭化水素原料をガス化し可燃性ガスを発生するガス化器と、このガス化器で発生した可燃性ガスを精製するガス精製装置と、このガス精製装置で精製した精製ガスを燃料とし、且つ補助燃料が供給可能なガスタービンと、このガスタービンで生じた燃焼排ガスの一部を冷却することなく前記ガス化器に導入する排ガス導入配管とを備えて前記燃焼排ガスの循環系が構成され、燃焼排ガスのガス化器への導入量と大気中への放出量の分配割合を調節する燃焼排ガス分配弁とを備えた動力発生装置を運転する際に、ガスタービンに設けられた燃料供給弁の開度に比例させて、ガス化器への炭化水素原料の供給量を変化させることにより、ガスタービン出力を調節すると同時に、ガス化器内の可燃性ガス温度又は精製ガスの組成に応じて、燃焼排ガス分配弁の開度を調節することにより、ガス化器に導入する燃焼排ガス量を制御する。
【0020】
なお、上記の運転制御方法において、燃焼排ガスの酸素濃度を測定し、その測定値が所定値より小さくなった場合、内燃機関の空気吸入量を増加させる。
【0021】
次に、本発明の原理と作用について木材を例として説明する。木材の性状の一例を、化石燃料と比較して表1に示す。乾燥した木材は瀝青炭に比べ灰分や硫黄分が少なく、重油並である。また酸素の割合が極めて多い。これらの性状はガスする場合に好都合である。なお、水分については、屋外にあったものを一旦105℃で乾燥し、その後室内で放置した状態で測定した結果である。
【0022】
【表1】
Figure 0004200255
【0023】
最初に、このような原料を空気でガス化した場合の特性を図6に示す。ガス化器は流動層形式で、木材を一定量で連続的に供給し、空気量を変化させた場合である。空気は20℃の場合と280℃予熱した場合である。横軸は空気量と木材量の比率(Nm/kg)であり、縦軸はガス化器内温度及び、次式で定義した炭素ガス化率、冷ガス効率である。ガス化反応の基本はどちらの効率も高くすることである。
【0024】
【数1】
Figure 0004200255
【0025】
空気を予熱しない場合、空気量を増やすと炭素ガス化率は増大するが冷ガス効率は低下した。空気量を増やすと燃焼が進むので炭素ガス化率は増大するが、生成ガス中のCOやNの割合が多くなり発熱量が低くなるため、冷ガス効率は低下する。ガス化しなかった炭素は未反応の木材(以下、チャーと称す)と油状物(以降、タールと称す)である。空気を予熱すると、ガス化器の温度が高くなりガス化反応がより進むので、同じ空気量/木材量比でも炭素ガス化率や冷ガス効率は高くなった。
【0026】
このような特性において、ガス化器の好適な操作条件は次のように決める。すなわち、冷ガス効率を高くするため少ない空気量でガス化するのが好ましいが、少なすぎると温度が低下する。このため、チャーやタールの割合が増える炭素ガス化率が低下する。タールの生成が多いと後続のガス精製装置の閉塞や内燃機関で付着、燃焼悪化という弊害をもたらし、好ましくない。したがって、好適な空気量はガス化温度や炭素ガス化率の観点で規定される。予熱しない空気の場合は例えばA点が、予熱した場合は例えばB点である。空気を予熱すると空気量が少ない所で操作が可能となり、高い冷ガス効率をもたらす。なお、図6の横軸の空気量/木材量比は酸素量/木材量比に置きかえることができる。すなわち、上記ガス化特性は酸素量/木材量比の変化によるものである。
【0027】
次に内燃機関の燃焼排ガス性状がガス化剤になりうることについて説明する。上述の特開昭63−210188号公報に記載されているように、例えば大型の高温・高効率ガスタービンでは天然ガスを用いた場合、排気ガスの温度は600℃前後であり、また排ガス中の酸素濃度は10〜14%である。近年、100kW程度またはそれ以下の超小型のガスタービンが開発中であるが、この場合は圧縮比は小さいので熱効率は低く、したがって排気ガスの温度は700〜800℃で、排ガス中の酸素濃度は12〜17%である。希薄燃焼を行うディーゼルエンジンの場合、天然ガスを燃料とした時には、例えば排気ガスの温度は600℃前後であり、排ガス中の酸素濃度は8〜12%である。このように内燃機関の燃焼排ガスは通常のガス/ガス熱交換器で得られるよりも高い温度であるが、当然ながら空気より酸素濃度は低い。
【0028】
低濃度酸素のガス化剤を用いた時のガス化特性を図7に示す。ガス化剤量と木材の供給量の比率(Nm/kg)およびガス化剤の温度が一定の場合、酸素濃度が低いガスほど、酸素量/木材量の値は小さくなり、図7で示したと同様、ガス化温度は下がり、ガス化効率も低下する。しかし、同じガス化剤量/木材量でも、ガス化剤の温度が高いほどガス化温度は高くなり、ガス効率も向上する。植物系バイオマスは表1に示したように、自身酸素を多く含んでいるので、本来少ない酸素量でガス化できるものであるが、少ない酸素量ゆえガス化温度が上がりにくい。それをガス化剤の顕熱で補うことにより温度の確保が可能となり、良好なガス化が行える。上記の例で挙げた燃焼排ガス温度や酸素濃度は天然ガスの場合であり、木材のガス化ガスを燃焼した時の温度や酸素濃度がどの程度になるかは知られていない。本発明では、そのようなガスでもガス化が高効率で行える条件にあることを見出したものである。なお、図7において、酸素濃度が低すぎる場合にはガス化剤の温度が高くても好適なガス化温度は維持できない。このような限界が存在するので、内燃機関はできるだけ希薄燃焼を行うのが好ましい。このため、燃焼排ガスの酸素濃度を測定し、その測定値が所定値より小さくなった場合、内燃機関の空気吸入量を増加させるようにした制御方法を採用している。
【0029】
最後に、内燃機関でうまく燃焼できる性状のガスを得る原理について説明する。
ガスに要求される性状で一番重要なのはガス発熱量である。ガスエンジンの場合にはこれにノック性が加味される。発熱量が低すぎると、失火や出力低下、燃焼温度の低下による熱効率の低下を招くので、一定以上の発熱量のガスを製造することが必要である。一定以上の発熱量を確保するということは、前述の(2)式で示したように、冷ガス効率をできるだけ高くすることである。すなわち、図6および図7で説明したような高い効率が得られる好適な条件を維持することが、ガス発熱量を確保することであり、内燃機関にとって好適な性状のガスを発生させることである。燃焼排ガスには酸素以外に N,CO,HOが含まれるが、最も濃度が高いのはNなので、ガス発熱量はガス中の窒素濃度に強く影響される。本発明ではある窒素濃度Cinの燃焼排ガスがガス化炉に入り、ここで生成ガスと混ざり、窒素濃度Coutのガスとなり、このガスを燃料にして内燃機関を作動させ、窒素濃度Cin’の排ガスを再びガス化剤に用いる、という循環を繰り返す。このような循環系において、好適なガス化条件を維持することが重要で、その方法は次のようである。まず、図6に示したように原料とガス化剤の割合を適性にすることが重要である。適性かどうかは、ガス化器の温度で判断する。原料供給量が一定の場合、ガス化剤量が多すぎると温度が上がり、ガス発熱量は小さくなり、冷ガス効率は下がる。このため、燃焼排ガス分配弁の開度を開き、ガス化器へ流れる排ガス量を少なくする。これによりガス発熱量は増大し、ガス効率は高くなる。このようにして、ガス化器の温度が常に一定の範囲に収まるよう、分配弁を調節する。
【0030】
好適なガス化状態はガス化器温度以外に、ガス化ガスの組成を検知しても判断できる。ガス化剤量が多いと、ガス中のCO濃度が増え、CO、H濃度が減少する。これを検出して分配弁を調節してもよいが、ガス化温度の方が、ガス化剤量の変化に対して感度が高いので、検出因子としては好適である。
【0031】
以上のようにしても、ガス発熱量が低く内燃機関の作動に支障をきたす場合は、そもそも燃焼排ガス中の窒素濃度が高い場合なので、内燃機関への空気供給量を減らす。しかし、内燃機関の空気量は内燃機関の作動に最も好適な条件で決めるので、おのずと限界がある。前述したように、内燃機関は出きるだけ希薄燃焼し、酸素濃度が高く、窒素濃度が低くなるものが好適である。なお、内燃機関の出力を変更する方法は、ガスエンジンの場合はスロットル弁の開度に、またガスタービンの場合は燃料ガス調節弁の開度に比例して、ガス化装置への原料供給速度をそれぞれ変化させることにより行う。
【0032】
本発明で対象となるガスは都市ガスに比べるとメタンガス等の炭化水素ガスの濃度が低いのでオクタン価が低くなるが、点火プラグの設置、点火時期の調整、圧力の設定など、エンジンの仕様によってある範囲でノッキング対策が可能である。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。なお、原料には前述した表1に示した性状のカラマツを用いている。
図1は本発明に係る動力発生装置の基本システムを示している。本動力発生装置は、内燃機関10、発電機20、燃焼排ガス分配弁15、ガス化器30、原料供給機40、ガス精製装置50、および補助燃料供給装置60を備えている。
内燃機関10の排気管は分岐して、一方はガス化器30に接続され、他方は開口端が大気開放されている。そして、内燃機関10から排出された燃焼排ガス11は、ガス化器30へ流れるガス化剤13と大気放出ガス12に分岐される。ここでは、ガス化剤13が流れるラインが排ガス導入配管で、大気放出ガス12が流れるラインが排ガス放出配管である。燃焼排ガス分配弁15は排ガス放出配管に設けられ、燃焼排ガスのガス化器30への導入量と大気中への放出量の分配割合を調節する。この分配割合は、燃焼排ガス分配弁15の開度を調節して行う。すなわち、燃焼排ガス分配弁15の開度を小さくすると、排ガス放出配管内におけるガス抵抗が増えるので、ガス化器30に導入される燃焼排ガスの流量が増加し、大気中へ放出される燃焼排ガスの流量が減少する。逆に、燃焼排ガス分配弁15の開度を大きくすると、排ガス放出配管内におけるガス抵抗が減るので、ガス化器30に導入される燃焼排ガスの流量が減少し、大気中へ放出される燃焼排ガスの流量が増加する。なお、ガス化剤13の温度は高い方が好ましいので、排ガス導入配管はできるだけ断熱状態に保つ必要がある。
【0034】
ガス化器30では、原料2がガス化剤13に直接接触してガス化される。原料2は原料供給機40により供給量が制御される。ガス化器30には様々な形式がある。本実施の形態には公知のどの形式でも適用が可能であるが、できるだけタールが発生しない形式が好ましい。原料2には灰分等の無機物が含まれている場合があるが、この無機物は、ガス化器30において固形残渣32として分離されガス化器30から連続的に排出される。
【0035】
原料2はガス化器30でガス化され、ガス化ガス31としてガス化器30からガス精製装置50に導入される。ガス精製装置50に導入されたガス化ガス31は、ガス精製装置50でサイクロンやフィルタ等の乾式法によりダスト54が除去される。また、ガス化ガス31を内燃機関10で燃焼させる際に、ガス化ガス31中の水分が弊害となる場合には、ガス精製装置50でガス化ガス31を洗浄し、水分を排水55として取り出す。精製されたガス56は内燃機関10の燃料供給管に導入される。なお、補助燃料供給装置60は本動力発生装置の起動用に用いられる。
【0036】
次に、図2は内燃機関がガスエンジンの場合の例である。この動力発生装置は、空気・燃料ガス混合器5、スロットル弁7、空気流量調節器8、ガスエンジン10、ラジエータ14、発電機20、燃焼排ガス分配弁15、ガス化器30、ガス化器温度センサ35、原料供給機40、ガス冷却器51、脱塵装置52、ガス浄化装置53、補助燃料供給装置60、酸素センサ90、制御装置100、およびガス分析計110を備えている。
【0037】
ガスエンジン10としては、例えば希薄燃焼のディーゼルエンジンであり、作用は従来例と同様である。すなわち、精製ガス56は空気・燃料ガス混合器5のベンチュリ部に吸引されて空気1と混合される。空気・燃料ガス混合器5へ導入される空気1の流量は、空気流量調節器8で調節される。スロットル弁7はガスエンジン10の出力を変えるもので、この開度を大きくすると、空気量すなわち空気・燃料混合ガス6の流量が増える。混合ガス6は吸気管内を流れガスエンジン10に供給される。ガスエンジン10からの燃焼排ガス11の温度は、例えば580℃である。ガスエンジン10にはラジエータ14を有する冷却系統が設けられており、この冷却系統はガス冷却器51の冷却系統に接続されている。そして、ラジエータ14によって冷却された冷却水16がガスエンジン10とガス冷却器50間を循環して、ガスエンジン10およびガス冷却器50を冷却する。
【0038】
ガスエンジン10出口の排気管には酸素センサ90が設置され、燃焼排ガス11中の酸素量が検出され、その検出信号は制御装置100に入力される。ガスエンジン10出口の排気管には、排気管から分岐してガス化器30に接続された排気ガス導入配管と、排気管の先端側に接続され開口端が大気開放された排ガス放出配管と、が設けられている。そして、燃焼排ガス11は、その一部が排ガス導入配管を通ってガス化剤13としてガス化器30へ導入される。排ガス放出配管の低温部分には通常のバタフライ弁からなる燃焼排ガス分配弁15が設置されており、この燃焼排ガス分配弁15の開度を調節することにより、ガス化器30へのガス化剤13の導入量を制御する。
【0039】
一方、原料2は図示していないバンカから原料供給機40に送られ、原料供給機40で流量が調節されてガス化器30に供給される。原料供給機40には、スクリューフィーダ、ロータリーフィーダまたはピストンフィーダ等公知の供給装置が設置されており、この供給装置の回転数を変えることにより原料2の供給量を変化させる。
【0040】
ガス化器30の内部には流動層に近いものが形成され、原料2がガス化剤13に直接接触してガス化される。ガス化器30にはガス化器30内のガス温度を検出するガス化器温度センサ35が設けられ、その検出信号は制御装置100に入力される。ガス化で発生する固形残渣32は原料供給と同様な装置によりガス化器30から連続的に排出される。
【0041】
ガス化器30からのガス化ガス31は温度が800〜900℃と高温なため、ガス冷却器51に通されて冷却される。ガス冷却器51は単純な2重管熱交換器で、内管にガス化ガス31が、外管に冷却水16が通るようになっている。冷却水16は前述のガスエンジン10の冷却水が使用される。これにより、ガス化ガス31は200〜300℃に冷却される。
【0042】
次に、ガス冷却器51で冷却されたガス化ガス31は脱塵装置52に導入され、ガス中のダスト54が分離される。脱塵装置52としては、サイクロン、フィルタ、充填層等公知のものでよいが、後続の空気・燃料ガス混合器5での吸引動力を軽減するためには、できるだけ圧力損失の少ないものが好ましい。続いて、ガス化ガス31はガス洗浄装置53に導入され精製される。ここでは、脱塵装置52では除去できない水分やタール等55が回収される。
【0043】
ガス洗浄装置53で精製された精製ガス56は空気・燃料ガス混合器5へ導入される。このとき、精製ガス56のガス成分はガス分析計110で分析され、その分析結果の信号は制御装置100に入力される。空気・燃料ガス混合器5においては、精製ガス56と空気1が混合され、空気・燃料混合ガス6としてスロットル弁7を介してガスエンジン10に供給される。空気・燃料ガス混合器5に流入する空気1の流量は、空気流量調節器8により調節される。
【0044】
本動力発生装置の起動時には補助燃料供給装置60が用いられる。補助燃料としては気体が望ましく、例えば天然ガスや液体プロパンガス等で、ボンベから供給される。補助燃料の供給量は、補助燃料調節弁61によって調節される。
【0045】
制御装置100には、上述したように、ガス化器温度センサ35、酸素センサ90、およびガス分析計110からの信号が入力されており、制御装置100は、これらの信号に基づいて、スロットル弁7と燃焼排ガス分配弁15の開度、空気流量調節器8での空気流量、および原料供給機40での原料供給の制御を行い、本動力発生装置全体を最適な運転条件に維持する。
【0046】
次に本動力発生装置の運転・制御方法について説明する。運転にあたっては、ガス化条件を最適に保ちつつ、必要な電力を発生させることが重要である。最初に燃焼排ガス分配弁15は特定の開度に設定しておく。起動時には補助燃料供給装置60を用いてガスエンジン10を作動させ、燃焼排ガス11の一部をガス化器30に導入してガス化器30や脱塵装置52を暖める。
【0047】
ガス化器30内には前回の運転で残った流動媒体があるが、層内の温度が特定の温度になったら原料2の供給を開始する。特定の温度は原料によって異なるが、その原料のガス化が顕著に始まる温度で、例えば木材の場合は400〜500℃である。原料2の供給によりガス化器30の温度は上昇する。ガス化器30の温度がガス化に好適な温度になった時点で、調節弁61を作動させて補助燃料からガスへの運転に切り変える。
【0048】
出力を増やす場合は、スロットル弁7の開度を大きくするが、この際、開度と原料供給機40の回転数を連動させ、スロットル弁7の開度を開くと、原料2の供給量が増大するに制御を行う。原料2を増大すると、精製ガス56の量が増え、これによって燃焼排ガスの量が増大する。このとき、燃焼排ガス分配弁15の開度は一定なので、ガス化器30へ導入されるガス化剤13の量も増大し、原料2の増量に見合ってガス化剤13の量がよい条件に保たれる。ガス化条件が好適かどうかは、ガス化器温度センサ35で検出したガス化器31内の温度で判断し、この温度が規定温度内にあるように、例えば850±20℃に制御する。ガス化器30内の温度が前記温度範囲より低い場合は、ガス化剤31の量が少ないので、燃焼排ガス分配弁15を閉じ、ガス化器30へ導入する燃焼排ガスの量を増やす。前記温度範囲より高い場合は、逆に燃焼排ガス分配弁15を開く。以上のように、負荷変動はスロットル弁7とこれに連動した原料供給機40の調節で行い、最適ガス化条件の設定は、ガス化器30出口温度とこれに連動した燃焼排ガス分配弁15の調整で行う。
【0049】
表2は、図2の動力発生装置での運転結果の一例で実施例1として示してある。また表2には、280℃で予熱した空気を用いた場合の結果も比較例として示してある。100%負荷時の原料供給量は約10kg/hである。本動力発生装置では作動ガスが循環するので、起動してから暫くは各所の温度やガス組成が変動するが、分配弁の調節によりこれらを安定させた。
【0050】
【表2】
Figure 0004200255
【0051】
実施例1で用いたガスエンジンの排ガス温度は570℃であった。ガス化器の温度は870℃前後であり、このとき、精製ガス中の窒素濃度は54.8%となり、ガス発熱量は4.89MJ/Nmとなった。これをエンジンの燃焼用空気と混合すると、空気・燃料混合ガスの発熱量は2.41MJ/Nmとなり、このガスでエンジンは良好に作動した。なお、ダスト54は木材の未燃焼分で微粒子で、発生量は原料木材の約0.1wt%であった。ガス洗浄装置53からの排水55にはタールが含まれていた。粘性は比較的低く、収率は原料木材の約0.5wt%であった。冷ガス効率は75.6%となった。予熱空気でガス化した場合は、ガス化温度は実施例1に近い条件とした。空気を用いたので、精製ガス中の窒素濃度は45.5%と実施例1より小さくなり、その結果、発熱量は6.62MJ/Nmと高くなった。したがって、エンジンの作動、出力は良好であった。しかし冷ガス効率は68.4%となり、実施例1より小さくなった。これはガス化温度を維持するため、実施例1より過剰の酸素量を要したからである。
【0052】
図3は、実施例1において空気量1を一定にして、表2の場合よりも開度を狭くし、ガス化器へ流れるガス化剤の量を増やしたときの特性である。ガス化剤量が増えるに伴いガス化器の温度は上昇する。ガス化器に流れる窒素ガスの絶対量が増えるので、精製ガスの発熱量が下がりそれに伴い冷ガス効率も下がった。なお、このとき、空気・燃料混合ガスの発熱量もわずかに低下した。燃焼排ガス分配弁の開度を図3の横軸の範囲で変化させた場合、一番感度が高いのはガス化器出口温度であることがわかる。したがって、ガス化器温度を制御因子にするのが、高効率ガス化を維持するのに最も好適である。
【0053】
内燃機関がガスエンジンの場合は小型でも熱効率が高く、発電効率も高くなる。中小の発電を考えた場合、植物系バイオマスのみをボイラで燃焼し蒸気タービンで発電した場合の効率は15〜20%である。これに対して、ガスエンジンの場合、天然ガスと比べれば発熱量が低いので出力的には不利になるが、それでも実施例1では25%程度の発電効率となる。
【0054】
図4は、内燃機関がガスタービンの場合の例である。この動力発生装置は、燃焼排ガス分配器15、発電機20、ガス化器30、ガス化器温度センサ35、原料供給機40、ガス冷却器51、脱塵装置52、補助燃料供給装置60、精製ガス加圧機70、空気圧縮機81、燃焼器82、タービン83、空気流量調節器84、酸素センサ90、および制御装置100を備えている。
【0055】
起動は既存のガスタービン起動法と同様であり、補助燃料供給装置60からの気体補助燃料を用いる。空気圧縮機81により空気1が吸引され、所定の圧力に加圧される。本実施の形態では超小型のガスタービンを対象とし、例えば燃焼器82入口での0.35MPaに加圧される。また、空気圧縮機81への空気1の流量は空気流量調節器84により調節される。
【0056】
空気圧縮機81で加圧された空気は燃焼器82に導入され、ここで精製ガス56を燃焼させる。燃焼温度はタービンの仕様により種々異なるが、例えば800〜1000℃である。燃焼器82での燃焼ガスはタービン83に通して動力を回収する。タービン83からの燃焼排ガス11の温度もタービンの仕様で異なるが、例えば700〜800℃である。
【0057】
タービン83出口の排気管には酸素センサ90が設置され、燃焼排ガス11中の酸素量が検出され、その検出信号は制御装置100に入力される。タービン83出口の排気管には、排気管から分岐してガス化器30に接続された排気ガス導入配管と、排気管の先端側に接続され開口端が大気開放された排ガス放出配管と、が設けられている。そして、燃焼排ガス11は、その一部が排ガス導入配管を通ってガス化剤13としてガス化器30へ導入される。排ガス放出配管の低温部分には通常のバタフライ弁からなる燃焼排ガス分配弁15が設置されており、この燃焼排ガス分配弁15の開度を調節することにより、ガス化器30へのガス化剤13の導入量が制御される。
【0058】
ガス化器30内では、図2の場合と同様に、原料2がガス化剤13に直接接触してガス化される。ガス化器30内の温度はガス化気温度センサ35で検出され、その検出信号は制御装置100に入力される。ガス化器30からのガス化ガス31はガス冷却器51へ導入され、ここでガス温度が200〜300℃に冷却される。この場合、冷却系統はガスタービン側からは得られないので、ガス化工程に独自に設けられている。
【0059】
冷却されたガス化ガス31は脱塵装置52に導入され、ガス中のダストが除去される。ダスト除去の方式としては、サイクロン、フィルタなど、いわゆる乾式法である。ガス化ガス13の温度は200〜300℃であるから、バグフィルタが適用できる。本実施の形態では、精製ガスガス加圧機70があるので、図2のところでで言及した圧力損失に関しては特に制約はない。このようにして得られた精製ガス56は精製ガス加圧機70で加圧される。加圧の圧力はガスタービンの仕様に合わせて、たとえば0.4MPaより僅かに高い圧力である。そして、加圧した精製ガス56は弁71で流量調節されつつガスタービンの燃焼器82に導入される。
【0060】
制御装置100には、上述したように、ガス化器温度センサ35および酸素センサ90からの信号が入力されており、制御装置100は、これらの信号に基づいて、燃焼排ガス分配弁15の開度、原料供給機40での原料供給、空気流量調節器84での空気流量の制御を行い、本動力発生装置全体を最適な運転条件に維持する。
【0061】
なお、本実施の形態では、脱塵した後の精製ガスの温度は脱塵装置の温度に近く、200〜300℃であった。表1に示したように、木材は硫黄分が少ないので、硫黄酸化物(HS、COS)の発生が少なく、ガス化ガスからこれらの不純ガスを除去しなくても、環境上の規制を満たす場合がある。すなわち、ガス精製装置は乾式法が採用でき、これはガスタービンの効率向上に寄与する。規制が厳しい場合や、精製ガス中のタール分がタービンで弊害をもたらす程度に多い場合は、ガスエンジンの場合と同様、ガス洗浄工程を設ける必要がある。
【0062】
次に、本動力発生装置の運転方法について説明する。運用にあたっては、ガスエンジンの場合と同様、ガス化条件を最適に保ちつつ、必要な消費電力を得ることである。最初に排ガス分配弁15を特定の開度に設定しておく。起動はガスエンジンの場合と同様で、最初に補助燃料供給装置60からの補助燃料を用いてガスタービンを起動し、ガス化器30や精製工程を所定の温度に暖める。ガス化気0内の層内温度が約500℃になったところで、原料2の供給を開始する。そして、ガス化器30の温度が設定値になった時点で、補助燃料からガスに切り換える。
【0063】
負荷を上げる場合は原料供給機40を操作して原料を増やす。これにより燃焼排ガス11の量が増大する。ガス化条件が適切かどうかは、ガスエンジンの場合と同様、ガス化器温度センサ35によってガス化器30内の温度を監視し、この温度が所定温度より高くなったら、制御装置100は燃焼排ガス分配弁15の開度を開け、ガス化器30への燃焼排ガスの量を減らす。
【0064】
表3は、図4の動力発生装置での運転結果の一例で実施例2として示してある。安定化の操作は実施例1と同様である。原料供給量は実施例1と同じく、10kg/hとした。
【0065】
【表3】
Figure 0004200255
【0066】
本実施例2では、ガスエンジンと違って、ガスタービン燃焼排ガス中の酸素濃度が高かったので、ガス化剤量は少なくてよい。ガス化器温度は制御の結果840℃程度となった。また燃焼排ガス中の窒素濃度が低いので精製ガス中の窒素濃度は低くなり、このため発熱量は約7MJ/Nmと、ガスエンジンに比べて高くなった。この程度の発熱量であれば、ガスタービンでの高温燃焼が可能であるが、用いたガスタービンは燃焼器の制約が900℃程度なので、燃焼時の空気過剰率を高くする必要があり、その結果、燃焼排ガス中の酸素濃度が高くなったものである。冷ガス効率は73.6%と、ガスエンジンに比べ小さくなった。本実施例2では、上記のようにガス化器へのガス化剤供給量が少なくなるが、このことでガス化器へ持ち込まれる顕熱が少なくなり、ガス化温度を維持するのにガスエンジンよりも多い酸素量を供給する必要があった。その結果,酸素量/木材量の比率がガスエンジンより大きくなり、図7で説明した原理により、冷ガス効率が下がったものである。それでも、表2で示した空気加熱法よりは高くなった。
【0067】
図5は、実施例1の場合と同様に、空気1の量を一定にして、表3のときよりも開度を狭くし、ガス化器へ流れるガス化剤の量を増やしたときの特性である。実施例1と同様、ガス化剤量が増えるに伴いガス化器の温度は上昇する。また精製ガスの発熱量が下がり、それに伴い冷ガス効率も下がり、混合器発熱量も低下したが、その感度は実施例1より高い。燃焼排ガス分配弁の開度をこの程度変化させた場合、一番感度が高いのはやはりガス化器出口温度であることがわかる。
【0068】
ガスタービン燃焼温度が1100℃付近の場合、ガス化剤量は13.8Nm/h、精製ガス発熱量は6.9MJ/Nm、冷ガス効率は74.6%である。またガスタービン燃焼温度が1200℃付近の場合、ガス化剤量15.5Nm/h、精製ガス発熱量は6.6MJ/Nm、冷ガス効率は75.5%である。実施例2のガスタービン燃焼温度900℃程度の場合に比べると、燃焼排ガス11中の酸素濃度が低いので、ガス化剤13の量としては増やす必要があり、また精製ガスの窒素割合が増えるので発熱量は小さくなる。ただ、ガス化剤の供給量が増える分だけ持ち込む顕熱が増えるのでガス化温度は高くなりやすく、その分だけ、酸素量/木材量の割合は小さくでき、結果として冷ガス効率は高くなった。
【0069】
なお、実施例2は超小型のガスタービンを例としたが、原理的には本発明は任意のガスタービン、例えば高温・高圧ガスタービンに適用できる。その場合には燃焼器圧力は高くなるので、精製ガス加圧機70は高圧用が必要である。また高温燃焼をするため、空気1の量は相対的に少なくなり、燃焼排ガス11中の酸素濃度は小さくなる。
【0070】
内燃機関の大気へ放出する燃焼排ガス12は温度が高く、その顕熱を利用することが考えられる。例えば、原料の乾燥である。本実施例2では表1に示したように、水分8%の原料であったが、一般に木材は20〜60%の水分を含む。ガス化するにはガス化温度の確保が需要なので、事前に乾燥させる必要があるが、本実施例2で排出する排ガスの熱量でこの範囲の水分を10%程度まで乾燥できる。また超小型のガスタービンの場合には熱効率を上げるため、圧縮された空気と燃焼排ガスを熱交換して高温空気を得ることが知られている。本発明では、燃焼排ガスの一部をガス化剤に回すが、その量は全排ガス量の9〜15%程度である。したがって、残りの排ガスは、空気を加熱にするのに充分な熱量を有しているので、いわゆる再生サイクルが実施できる。
【0071】
実施例2では燃焼温度が低いものを対象にしたので、発電効率自体は11%、再生サイクルの場合は22%程度であった。熱効率は燃焼器温度に比例して高くなるので、より高温のガスタービンを用いれば、より高い効率が得られる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガス化の際に必要な空気供給設備が不要であり、内燃機関とガス製造装置のみの簡素な設備で、ガス化効率を向上させることができる。
【0073】
また、植物系バイオマスは分散している一方、集めて大規模に発電するのは集積の経費が嵩み得策ではないが、本発明により、少量のものでも有効利用できるので、廃棄物問題やエネルギ問題の解消に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る動力発生装置の基本システムのフローダイアグラムを示した図である。
【図2】本発明をガスエンジンに適用した場合の動力発生装置のフローダイアグラムを示した図である。
【図3】実施例1の運転特性を示した図である。
【図4】本発明をガスタービンに適用した場合の動力発生装置のフローダイアグラムを示した図である。
【図5】実施例2の運転特性を示した図である。
【図6】原料を空気でガス化したときの特性図である。
【図7】低濃度酸素のガス化剤を用いたときのガス化特性図である。
【符号の説明】
1 空気
2 炭化水素原料
5 空気・燃料ガス混合器
6 空気燃料混合ガス
7 スロットル弁
8 空気流量調節器
10 内燃機関(ガスエンジン、ガスタービン)
11 燃焼排ガス
12 大気放出ガス
13 ガス化剤
14 ラジエータ
15 燃焼排ガス分配弁
16 冷却水
20 発電機
30 ガス化器
31 ガス化ガス
32 固形残渣
35 ガス化器温度センサ
40 原料供給機
50 ガス精製装置
51 ガス冷却器
52 脱塵装置
53 ガス洗浄装置
54 ダスト
55 排水
56 精製ガス
60 補助燃料供給装置
61 補助燃料調節弁
70 精製ガス加圧機
71 流量調節弁
81 空気圧縮機
82 燃焼器
83 タービン
84 空気流量調節器
90 酸素センサ
100 制御装置
110 ガス分析計

Claims (8)

  1. 炭化水素原料をガス化し可燃性ガスを発生するガス化手段と、このガス化手段で発生した可燃性ガスを精製するガス精製手段と、このガス精製手段で精製した可燃性ガスを燃料とし、且つ補助燃料が供給可能な内燃機関と、この内燃機関で生じた燃焼排ガスの一部を冷却することなく前記ガス化手段に導入する排ガス導入手段とを備えて前記燃焼排ガスの循環系を構成し、前記ガス化手段は、前記燃焼排ガスを前記炭化水素原料に接触させることによりガス化を行い、前記排ガス導入手段は、前記内燃機関の排気管を分岐して前記ガス化手段に接続された排ガス導入配管と、前記排気管の先端側に設けられ開口端が大気開放された排ガス放出配管とを有し、前記排ガス放出配管には、前記燃焼排ガスの前記ガス化手段への導入量と大気中への放出量の分配割合を調節する燃焼排ガス分配弁が設けられていることを特徴とする炭化水素を原料とした動力発生装置。
  2. 請求項に記載の動力発生装置において、前記内燃機関はガスエンジンであることを特徴とする炭化水素を原料とした動力発生装置。
  3. 請求項に記載の動力発生装置において、前記ガス精製手段は冷却系統を有し、該冷却系統が前記ガスエンジンの冷却系統と接続され、前記ガスエンジン冷却系統に設けられた冷却手段によって冷却されることを特徴とする炭化水素を原料とした動力発生装置。
  4. 請求項に記載の動力発生装置において、前記内燃機関はガスタービンであることを特徴とする炭化水素を原料とした動力発生装置。
  5. 請求項に記載の動力発生装置において、前記炭化水素原料は、木材、プラスチック、紙、石炭、発熱量を有する産業廃棄物、発熱量を有する農耕生産物、種子類、油類、廃油及びこれら複数個の混合物であることを特徴とする炭化水素を原料とした動力発生装置。
  6. 炭化水素原料をガス化し可燃性ガスを発生するガス化器と、このガス化器で発生した可燃性ガスを精製するガス精製装置と、このガス精製装置で精製した精製ガスを燃料とし、且つ補助燃料が供給可能なガスエンジンと、このガスエンジンで生じた燃焼排ガスの一部を冷却することなく前記ガス化器に導入する排ガス導入配管とを備えて前記燃焼排ガスの循環系が構成され、該燃焼排ガスの前記ガス化器への導入量と大気中への放出量の分配割合を調節する燃焼排ガス分配弁とを備えた動力発生装置を運転する際に、前記ガスエンジンに設けられたスロットル弁の開度に比例させて、前記ガス化器への炭化水素原料の供給量を変化させることにより、前記ガスエンジン出力を調節すると同時に、前記ガス化器内の温度又は精製ガスの組成に応じて、前記燃焼排ガス分配弁の開度を調節することにより、前記ガス化器に導入する燃焼排ガス量を制御することを特徴とする動力発生装置の運転制御方法。
  7. 炭化水素原料をガス化し可燃性ガスを発生するガス化器と、このガス化器で発生した可燃性ガスを精製するガス精製装置と、このガス精製装置で精製した精製ガスを燃料とし、且つ補助燃料が供給可能なガスタービンと、このガスタービンで生じた燃焼排ガスの一部を冷却することなく前記ガス化器に導入する排ガス導入配管とを備えて前記燃焼排ガスの循環系が構成され、該燃焼排ガスの前記ガス化器への導入量と大気中への放出量の分配割合を調節する燃焼排ガス分配弁とを備えた動力発生装置を運転する際に、前記ガスタービンに設けられた燃料供給弁の開度に比例させて、前記ガス化器への炭化水素原料の供給量を変化させることにより、前記ガスタービン出力を調節すると同時に、前記ガス化器内の温度又は精製ガスの組成に応じて、前記燃焼排ガス分配弁の開度を調節することにより、前記ガス化器に導入する燃焼排ガス量を制御することを特徴とする動力発生装置の運転制御方法。
  8. 請求項6又は7に記載の運転制御方法において、燃焼排ガスの酸素濃度を測定し、その測定値が所定値より小さくなった場合、前記内燃機関の空気吸入量を増加させることを特徴とする動力発生装置の運転制御方法。
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