JP4199992B2 - アルカリ乾電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、正極缶の開口を負極端子とポリアミド樹脂製ガスケットで封口するアルカリ乾電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
有底筒状で正極端子を兼ねる金属製正極缶に発電要素をアルカリ電解液と共に収容するアルカリ乾電池では、その正極缶の開口部に負極端子を絶縁ガスケットを介して嵌合させることにより、その正極缶を封口する。
【0003】
図1は従来のアルカリ乾電池10の封口部を示す。同図において、負極端子21は正極缶11の開口部に絶縁ガスケット31を介して嵌合している。
ガスケット31はポリアミド樹脂製の一体成型品で、中央ボス部32の外周囲に薄肉部33が形成され、その外側に中間連結部34および周縁部35がそれぞれ環状に形成され、その最外周の周縁部35が正極缶11と負極端子21間に被圧縮状態で介在することにより、その正極缶11内を気密封止する。薄肉部33は、電池内圧が異常上昇したときに先行破断することにより電池の破裂を防止する一種の防爆安全弁を構成する。
【0004】
負極端子21は、平坦な端子面22と環状鍔部23を有する皿状の金属製であって、その内側に負極集電子24が溶接・固定されるとともに、上記ガスケット31が組み付けられて上記正極缶11の封口体を形成している。
【0005】
この種のアルカリ乾電池10では、クリープ性の強いアルカリ電解液(水酸化カリウム水溶液)の漏液を阻止するため、上記構成に加えて、たとえば、正極缶11の開口部にシール剤41を塗布したり、さらに、ガスケット31の薄肉部33を水分透過防止膜42で覆ったりすることが行われている。シール剤41はアルカリ電解液のクリープによる漏液を阻止する効果がある。
【0006】
絶縁ガスケット31の材質には、ナイロンの商標名で知られているポリアミド樹脂が使用される。ポリアミド樹脂は耐熱性や耐磨耗性にすぐれているが、若干ながら水分透過性があるため、上記薄肉部33から電池内に水分が侵入することがある。水分が侵入すると、電池内の空隙余裕が減少して、わずかなガス発生でも電池内圧が異常上昇するようになってしまう。
【0007】
電池内圧の異常上昇による破裂は上記薄肉部33の先行破断によって防止されるが、そのときに漏液が生じて周辺の機器に悪影響が及ぶ。したがって、薄肉部33が安全弁として作動する事態に至ることは、できるたけ回避しなければならない。そこで、その薄肉部33を水分防止透過膜42で覆うことが行われているる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したアルカリ乾電池10の封口部に使用されているポリアミド樹脂製ガスケット31はイオン透過性を有し、負極電位となっている負極端子21や集電子24と接する部分で電解液のカリウムイオンを透過させる。この場合、集電子24と接する部分は厚みのあるボス部32でイオン透過経路が長いために問題になりにくいが、負極端子21の周縁部と接する部分ではカリウムイオンが透過しやすい。このイオン透過によってカリウムイオンが電池外側に出ると、空気中の水分と反応してアルカリ水溶液(KOH)となるため、あたかもアルカリ電解液が直接漏液したかのような状態になる。このイオン透過による疑似的な漏液現象は、アルカリ電解液が直接滲み出して生じる本来の漏液とは異なるが、両者の区別はつきにくく、不良品とみなされてクレームの対象となることがある。したがって、封口部は、アルカリ電解液の直接的な漏液を防止することはもちろん、そのアルカリ電解液中のイオン透過も防止できることが望まれる。
【0009】
上記イオン透過を防止するための手段としては、ポリアミド樹脂製ガスケットと負極端子間に金属ワッシャを介在させるとともに、この金属ワッシャを負極端子から電気的に絶縁するという手段が提案されている(特開平1−283760)。この手段によれば、ガスケットが負極電位部分に接することによるイオン透過を抑えることができる。しかし、この手段は、ガスケットを負極端子から絶縁するために、金属ワッシャおよびこの金属ワッシャの絶縁手段が別途必要となる。すなわち、構造が複雑で部品点数が多く、組み立て工程も複雑でコスト高になってしまうという問題があった。
【0010】
この発明は以上のような問題を鑑みてなされたもので、その目的は、構造および組み立て工程を複雑にすることなく、少ない部品点数でもって、アルカリイオンの透過による擬似的な漏液現象を実用上支障無いレベルにまで抑制することができるようにしたアルカリ乾電池を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の手段は、有底筒状で正極端子を兼ねる金属製正極缶と、平坦な端子面を形成する皿状の金属製負極端子と、上記負極端子の内側に組み付けられて上記正極缶の封口体を形成する絶縁ガスケットを有し、上記正極缶は発電要素をアルカリ電解液と共に収容し、上記負極端子は上記正極缶の開口部に上記ガスケットを介して嵌合し、上記ガスケットはポリアミド樹脂製の一体成型品で、中央ボス部の外周囲に薄肉部が形成され、この外側に中間連結部および周縁部がそれぞれ環状に形成され、その最外周の周縁部が上記正極缶と上記負極端子間に被圧縮状態で介在することにより上記正極缶内を気密封止するアルカリ乾電池において、上記ガスケットは、上記負極端子の電池内側面に接する環状接触部の面積が200mm以下であるとともに、その環状接触部に沿って電池内側に張り出すスカート部が形成され、このスカート部により、上記接触部から電池内側までの最短ガスケット長を上記面積×0.013mm以上としたことを特徴とする。
【0012】
上記手段によれば、ガスケットと負極端子間を金属ワッシャ等で絶縁および隔離しなくても、アルカリ電解液中のアルカリイオンがガスケットを透過して電池外側に出るのを十分に遅延させることができ、これにより、構造および組み立て工程を複雑にすることなく、少ない部品点数でもって、アルカリイオンの透過による擬似的な漏液現象を実用上支障無いレベルにまで抑制することができる。
【0013】
上記手段において、上記接触部の面積が80mm以上100mm以下である場合は、上記最短ガスケット長を1.3mm以上とすればよい。また、上記ガスケットは、透湿度が11g/m・24hr・300μm以下のポリアミド樹脂を用いて構成することが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態であるアルカリ乾電池の封口部を示し、図2はそのアルカリ乾電池の全体を示す。
まず、図2において、同図に示すアルカリ乾電池はLR型と呼ばれるものであって、外観サイズは単1〜単5までの種類があるが、基本的な構成は同じである。
【0015】
このアルカリ乾電池10は、図2に示すように、有底筒状の金属製正極缶11内に正極合剤13、セパレータ14、ゲル状負極合剤15が装填されるとともに、その正極缶11の開口が負極端子21と絶縁ガスケット31により封口されている。
【0016】
正極缶11はニッケルメッキされた鋼板をプレス等で有底筒状に加工した金属製であって、正極端子を兼ねている。正極缶11の底部には凸状の正極端子部12が形成されている。この正極端子部12を除く正極缶11の外周囲はラベル印刷を施した外装材(図示省略)で被覆・包装される。
【0017】
正極合剤13は、二酸化マンガンあるいはオキシ水酸化ニッケル等の活物質を含む環状(または管状)の成形合剤であって、上記正極缶11内に圧入状態で装填されている。この正極合剤13の内側にセパレータ14が配置されている。セパレータ14には高濃度の水酸化カリウム溶液(KOH水溶液)からなるアルカリ電解液が含浸されている。このセパレータ14の内側にゲル状亜鉛を主剤とする負極合剤15が充填されている。そして、この負極合剤15中に棒状の負極集電子24が挿入されている。
【0018】
負極集電子24の上端部は負極端子21の内側面にスポット溶接により固定されている。この集電子24は、上記絶縁ガスケット31の中央ボス部32を貫通して上記負極合剤15中に挿入されている。負極端子21、集電子24、および絶縁ガスケット31は、上記正極缶11の開口を塞いで封止する封口体を形成している。
【0019】
負極端子21は、図1に示すように、平坦な端子面22と環状鍔部23を有する皿状の金属製であって、その内側に負極集電子24が溶接・固定されるとともに、上記ガスケット31が組み付けられて上記正極缶11の封口体を形成している。正極缶11の開口部には、アルカリ電解液のクリープを阻止するためのシール剤41が塗布されている。
【0020】
絶縁ガスケット31は、図1の(a)と(b)に示すように、中央ボス部32の外周囲に薄肉部33が形成され、その外側に中間連結部34および周縁部35がそれぞれ環状に形成され、最外周の周縁部35が上記正極缶11と上記負極端子21間に被圧縮状態で介在することにより上記正極缶11内を気密封止する。中央ボス部32には貫通孔が設けられ、この貫通孔に上記負極集電子24が圧入状態で挿通させられている。
【0021】
ガスケット31の薄肉部33は、電池内圧が異常上昇したときに先行破断することにより電池の破裂を防止する一種の防爆安全弁を構成する。この薄肉部33の電池内側面側には水分透過防止膜42が設けられている。
【0022】
上記絶縁ガスケット31は、材質として電気絶縁性かつ耐アルカリ性で耐熱性および耐磨耗性にすぐれるポリアミド樹脂が使用され、金型成形により作製される。ここで、上記絶縁ガスケット31は、図1の(a)と(b)に示すように、上記負極端子21の電池内側面に接する環状接触部36の面積S(斜線部分)が200mm以下であるとともに、その環状接触部36に沿って、電池内側に張り出すスカート部37が一体形成されている。そして、そのスカート部37により、上記接触部36から電池内側までの最短ガスケット長tが上記面積S×0.013mm以上となるように構成されている。
【0023】
アルカリ電解液中のカリウムイオンの透過は、負極電位となる負極端子31と接触する上記接触部36にて集中的に生じるが、本発明者が知得したところによれば、上記接触部36の面積Sと上記最短ガスケット長tをそれぞれ適当の範囲に設定することにより、ガスケットと負極端子間を金属ワッシャ等で絶縁および隔離しなくても、アルカリ電解液中のカリウムイオンがガスケットを透過して電池外側に出るのを十分に遅延させられることが判明した。
【0024】
すなわち、上記負極端子21の電池内側面に接する環状接触部36の面積Sが200mm以下であるとともに、上記接触部36から電池内側までの最短ガスケット長tが上記面積S×0.013mm以上となる範囲では、カリウムイオンの透過による疑似的な漏液を実用上支障無いレベルにまで抑制できることが判明した。これにより、構造および組み立て工程を複雑にすることなく、少ない部品点数でもって、アルカリイオンの透過による擬似的な漏液現象を実用上支障無いレベルにまで抑制することができる。
【0025】
以下、本発明の具体的な実施例を示す。
(実施例1)
図1および図2に示した構造のアルカリ乾電池10において、上記接触部36の面積Sが200mmとなるように構成するとともに、上記最短ガスケット長tが2.6mmとなるように構成した。
このアルカリ乾電池10を高温度(60℃)かつ高湿度(90%RH)の加速環境条件で保存試験したところ、カリウムイオンがガスケットを透過して電池外側に現れるまでの日数を10日以上にすることができた。
【0026】
(比較例1)
上記最短ガスケット長tだけが0.8mmとなるように構成し、他は実施例と同様の構成にして、実施例1と同じ条件で保存試験したところ、カリウムイオンは3.5日で電池外側まで透過してきた。
【0027】
(実施例2)
図1および図2に示した構造のアルカリ乾電池10において、上記接触部36の面積Sが80〜100mmとなるように構成するとともに、上記最短ガスケット長tが1.3mmとなるように構成した。
このアルカリ乾電池を実施例1と同じ条件で保存試験したところ、カリウムイオンが電池外側に現れるまでの日数を20日以上に延ばすことができた。
【0028】
(実施例3)
実施例2において、上記最短ガスケット長tが3.2mmとなるように構成したところ、カリウムイオンが電池外側に現れるまでの日数は約30日に延ばすことができた。
上記保存日数は加速環境下での試験結果であって、この試験条件にてカリウムイオンが電池外側に現れるまでの日数が10日以上あれば、一般市場において推奨使用期限内でのクレーム発生を防止するのには十分である。
さらに、上記ガスケット31は、透湿度が11g/m・24hr・300μm以下のポリアミド樹脂を用いて構成することにより、上記イオン透過の速度をさらに遅延させることができることが判明した。
【0029】
図3は、上記最短ガスケット長tを0.8mm〜3.2mmまで変えた場合の、上記接触部36の面積(mm)とカリウムイオン透過日数の関係をグラフ化して示す特性図である。同図からもあきらかなように、上記接触部36の面積Sが200mm以下であるとともに、上記接触部36から電池内側までの最短ガスケット長tが上記面積S×0.013mm以上となるように構成することで、ガスケット中のイオン透過による疑似的な漏液発生を実用上支障無いところまで遅延させることができる。
【0030】
また、上記接触部の面積が80mm以上100mm以下である場合は、上記最短ガスケット長を1.3mm以上とすることにより、ガスケット中のイオン透過による疑似的な漏液発生をさらに大幅に遅延させることができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、ガスケットと負極端子間を金属ワッシャ等で絶縁および隔離しなくても、アルカリ電解液中のアルカリイオンがガスケットを透過して電池外部に出るのを十分に遅延させることができ、これにより、構造および組み立て工程を複雑にすることなく、少ない部品点数でもって、アルカリイオンの透過による擬似的な漏液現象を実用上支障無いレベルにまで抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルカリ乾電池の要部を示す断面図である。
【図2】図1に要部を示したアルカリ乾電池の全体を示す断面図である。
【図3】ガスケットの構成とイオン透過日数の関係を示す特性図である。
【図4】従来のアルカリ乾電池の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
10 アルカリ乾電池
11 正極缶
12 正極端子部
13 正極合剤
14 セパレータ
15 負極合剤
21 負極端子
22 負極端子面
23 環状鍔部
24 負極集電子
31 ポリアミド樹脂製絶縁ガスケット
32 中央ボス部
33 薄肉部
34 中間連結部
35 周縁部
36 接触部
37 スカート部
41 シール剤
42 水分透過防止膜
S 接触面積
t 最短ガスケット長

Claims (3)

  1. 有底筒状で正極端子を兼ねる金属製正極缶と、平坦な端子面を形成する皿状の金属製負極端子と、上記負極端子の内側に組み付けられて上記正極缶の封口体を形成する絶縁ガスケットを有し、上記正極缶は発電要素をアルカリ電解液と共に収容し、上記負極端子は上記正極缶の開口部に上記ガスケットを介して嵌合し、上記ガスケットはポリアミド樹脂製の一体成型品で、中央ボス部の外周囲に薄肉部が形成され、この外側に中間連結部および周縁部がそれぞれ環状に形成され、その最外周の周縁部が上記正極缶と上記負極端子間に被圧縮状態で介在することにより上記正極缶内を気密封止するアルカリ乾電池において、上記ガスケットは、上記負極端子の電池内側面に接する環状接触部の面積が200mm以下であるとともに、その環状接触部に沿って電池内側に張り出すスカート部が形成され、このスカート部により、上記接触部から電池内側までの最短ガスケット長を上記面積×0.013mm以上としたことを特徴とするアルカリ乾電池。
  2. 請求項1において、前記接触部の面積が80mm以上100mm以下であるとともに、前記ガスケット長を1.3mm以上であることを特徴とするアルカリ乾電池。
  3. 請求項1または2において、前記ガスケットを透湿度が11g/m・24hr・300μm以下のポリアミド樹脂を用いて構成したことを特徴とするアルカリ乾電池。
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