JP4199966B2 - 水素発生方法及び水素発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水素発生方法及び水素発生装置に関するものであり、詳しくは水素化物を水の存在下で加水分解して水素を発生させる水素発生方法とその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水素は、化学工業や石油精製等に利用されている重要な化学原料としての他にクリーンエネルギー源として重要な位置を占めると考えられており、貯蔵した水素を燃料とする燃料電池の開発が各方面で進められている。水素を容易に得るための水素源としては、圧縮して容器に貯蔵する方法や水素吸蔵合金を利用する方法が提案されているが、手軽に扱える様にするには、いずれも様々な克服すべき課題が多く残っている。
【0003】
そこで水素化ナトリウム等のアルカリ金属水素化物やアルカリ土類金属の水素化物を加水分解させて水素を発生させる方法が近年注目されている。しかし、これらの水素化物、例えば水素化ナトリウムは、水と接触すると激しく反応して水素を発生するという性質があり、そのため水素化ナトリウムを樹脂皮膜でコートし、この皮膜を切断することによって水素の発生を制御しようとする方法もあるが、水素発生量を十分制御する事は難しく、安全面からも問題が残る。
【0004】
又、水素化ホウ素ナトリウム等の錯金属水素化物を加水分解させて水素を発生させる方法もある。この方法は、加温した水を用いたり、酸性水溶液や触媒の存在下で水素の発生を促進させるものであるが、これらも前述の場合と同様に水素発生量の制御や安全面に問題が残る。
【0005】
係る背景の下で新たな方法として、2種類以上の水素化物を混合させた水素発生原料を加熱する事により短時間で水素の発生を行うとする方法(特開2001−253702号公報)や、錯金属水素化物に、金属酸化物,半金属酸化物或いは炭素質材料と貴金属とからなる触媒の存在下で加水分解する方法(特開2001−199701号公報及び特開2001−342001号公報)や、加水分解反応性に乏しいアルカリ土類金属水素化物の場合に、酸性水溶液下で加水分解反応を促進させる方法(特開2002−80201号公報)や、錯金属水素化物に金属酸化物や炭素質材料からなる触媒の存在下で、実質水が存在しない状況において比較的低温である100〜170℃の温度に加熱して熱分解させる方法(特開2002−137901公報)等が、水素発生量を向上させる方法として提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし乍ら、前述した従来技術の方法では、水素を短時間に発生させることができるものの、その発生量を制御する事は極めて困難であり、且つ、反応途中で水素発生を停止させる事は事実上不可能であるという問題がある。
【0007】
本発明は、係る問題点に着目してなされたもので、水素の発生量を容易に制御する事ができ、更に、必要に応じて水素の発生を任意に停止する事の出来る新規な水素発生方法の提供を目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水素化物を加水分解して水素を発生するに当り、該水素化物は、液体の水のみならず、空気中の湿気、即ち水蒸気にも反応するとの知見に基づき、水素化物に水を直接作用させるのではなく、撥水性水蒸気透過材を通して緩やかに供給される水分子と反応させる様に構成する事によって上記課題を解決するものである。
【0009】
具体的には、本発明の水素発生方法は、密閉可能な水素発生装置の本体容器内で、前記水素化物と水とを、少なくとも一部が水蒸気透過性を有する撥水性水蒸気透過材で形成されている部材によって隔離すると共に、該撥水性水蒸気透過材を透過してくる水分子と水素化物とを反応させて水素を発生させるものである。従って、前記撥水性水蒸気透過材を透過する水分子の量を制御する事により、水素発生量の制御や水素発生の停止も容易に行う事が可能となる。
【0010】
この方法には、前記水素化物を、少なくとも一部が前記撥水性水蒸気透過材で形成された水素化物収納容器内に収納すると共に、前記撥水性水蒸気透過材の少なくとも一部を水と接触させ、該接触部を通して前記水素化物収納容器内に透過してくる水分子と前記水素化物とを反応させる方法が代表的な実施態様である。この方法では、前記撥水性水蒸気透過材と水との接触面積又は該撥水性水蒸気透過材に作用する水圧のいずれか一方又は双方を調整する事によって、前記撥水性水蒸気透過材を透過する水分子の量を制御し、これによって前記水素化物と水分子との反応を制御する事が可能となる。又、前記本体容器からの発生水素の導出量を調整する事によっても、前記水素化物と水分子との反応を制御する事も可能である。
【0011】
次に、本発明の水素発生装置は、大別して3つの方式に分けられる。第1の方式は、本体容器内に水素化物収容部と貯水部を設け、該貯水部から前記水素化物収容部への水の移動量を調整する事によって、水素発生量を制御するものであって、具体的には、水素導出管を有する容器本体と、該本体容器内に配置された少なくとも一部が撥水性水蒸気透過材で形成された水素化物収納容器と、該水素化物収納容器内に収容された水素化物と、前記本体容器内に形成された貯水部とを有し、前記撥水性水蒸気透過材を透過した前記貯水部からの水分子と前記水素化物とを反応させて水素を発生させる様になすと共に、前記貯水部中の水と前記撥水性水蒸気透過材との接触面積を調整可能となす事により、水素発生量を制御する様に構成したものである。
【0012】
又、上記装置において、前記本体容器内を、区画壁によって前記水素化物収納容器を配置した水素化物収容部と前記貯水部とに区画すると共に、前記区画壁に形成された連通管によって前記水素化物収容部と貯水部とを連通させ、該連通管を通して水を相互に移動可能となし、これにより前記撥水性水蒸気透過材と水との接触面積を調整するものがある。
【0013】
又、他の態様としては、前記本体容器内を、区画壁によって前記水素化物収納容器を配置した水素化物収容部と加圧室とに区画し、前記区画壁に形成されたノズル部の先端部に伸縮可能な水袋からなる貯水部を設けると共に、該水袋を前記加圧室内に配置し、該加圧室内の圧力を調整する事により、前記貯水部から前記水素化物収容部に移動する水量を調整し、これにより前記撥水性水蒸気透過材と水との接触面積を調整するものがある。
【0014】
次に、本発明の水素発生装置の第2の方式は、水素発生反応に必要な最低限の水を吸水性部材に保持させ、これを前記撥水性水蒸気透過材と接触させたり離反させたりする事によって水素発生と停止を行う事ができる様にしたものであり、具体的には、水素導出管を有する密閉可能な本体容器と、該本体容器内を、少なくとも一部が撥水性水蒸気透過材で形成された部材によって水素化物収容部と吸水性部材に水を吸水して保持させてなる貯水部とに画成し、前記撥水性水蒸気透過材を透過した前記貯水部中の水分子と前記水素化物とを反応させて水素を発生させる様になすと共に、前記吸水性部材を、前記撥水性水蒸気透過材に対して接触及び離反可能に構成してなるものである。この方式において、前記撥水性水蒸気透過材に対して前記吸水性部材を接触及び離反可能にする手段としては、前記吸水性部材の裏面側に押圧部材を配置するのが好ましく、該押圧部材による前記吸水性部材への押圧力を調整する事により、撥水性水蒸気透過材における水分子の透過量を調節する事が可能となる。
【0015】
次に、本発明の水素発生装置の第3の方式は、自由水を用いて、撥水性水蒸気透過材と水との接触を行わせて水素発生を行うものであり、具体的には、水素導出管を有する密閉可能な容器本体内を、少なくとも一部が撥水性水蒸気透過材によって形成された部材によって、水素化物収容部と自由水を貯蔵した貯水部とに画成し、本体容器の傾動に伴う貯水部内の自由水と前記撥水性水蒸気透過材との接触により、前記撥水性水蒸気透過材に接触した前記貯水部内の自由水から前記撥水性水蒸気透過材を透過した水分子と前記水素化物とを反応させて水素を発生させる様にしたものである。この方式における前記貯水部内の自由水と前記撥水性水蒸気透過材との接触面積を調整する手段としては、前記水素発生容器を傾動可能となし、その傾動角度によって前記貯水部内の自由水と前記撥水性水蒸気透過材との接触面積を調整するものが一般的である。
【0016】
上記第1〜第3の方式において、いずれも前記水素導出管に水素流量調節弁を設けて前記本体容器から導出される水素量を調整する事により水素発生量を制御する様になす事も可能である。
【0017】
上記第2,第3の方式において、前記少なくとも一部が撥水性水蒸気透過材によって形成された部材を、水素化物収納容器となし、これを、金網,多孔板,セラミックス粉末焼結体又は金属粉末焼結体等の水の通過の容易な多孔質部材によって、該水素化物収納容器を前記本体容器内に支持する様になすのが好ましい。この場合には、前記撥水性水蒸気透過材を薄く形成できるので、水分子の透過抵抗を小さくすることが可能となる。
【0018】
又、上記第2,第3の方式において、前記水素化物収納容器の上面に、弾性を有し発生水素の通過を許容する緩衝材を配置して、加水分解による水素化物の膨潤を吸収する様になすのが好ましい。
【0019】
本発明で使用する前記水素化物としては、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4),水素化硼素リチウム(LiBH4),水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH4),水素化硼素ナトリウム(NaBH4),水素化アルミニウムカリウム(KAlH4),水素化硼素カリウム(KBH4),水素化硼素マグネシウム(Mg(BH4)2),水素化硼素カルシウム(Ca(BH4)2),水素化硼素バリウム(Ba(BH4)2),水素化硼素ストロンチウム(Sr(BH4)2),水素化硼素鉄(Fe(BH4)2),水素化リチウム(LiH),水素化ナトリウム(NaH),水素化カリウム(KH),水素化バリウム(BaH2),水素化マグネシウム(MgH2),水素化カルシウム(CaH2),水素化ストロンチウム(SrH2),水素化アルミニウム(AlH3)からなる群から選択された1種以上を、粉末状,粒子状,顆粒状,ペレット状,板状,ハニカム状のいずれかに成形したものが上げられる。
【0020】
又、本発明で使用する前記撥水性水蒸気透過材としては、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアミド樹脂,ポリエステル樹脂,フッ素樹脂,シリコン樹脂,アセタール樹脂,アクリル樹脂,メラミン樹脂の群から選択された1種以上の合成樹脂、又は、撥水処理された紙から形成された水蒸気の透過を許容するが液体の水の透過は許容しない程度の連通する微細孔を有するものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の水素発生方法と装置について、図面に示す実施例に基づいて説明すると共に、各項目について詳細に説明する。図1は、本発明に係る水素発生装置の第1の方式、即ち、撥水性水蒸気透過材と水との接触面積を調整する事によって水素発生量を制御する方式の第1実施例を示す要部断面図であり、水素発生装置1の本体容器2は、ロート状の区画壁3によって上部の水素化物収容部4と下部の貯水部5とに区画され、前記区画壁3の中央部から下方に突出し前記貯水部5の底部近傍で開口する連通管6によって前記水素化物収容部4と貯水部5とは連通されている。前記水素化物収容部4には、水素化物8を収容した水素化物収納容器11が前記本体容器2の上蓋12の裏面に配置されている保持部13に保持されて固定されている。前記水素化物収納容器11は、少なくとも側面及び下面を撥水性水蒸気透過材7で形成されており、その側面及び底面が水Wと接触すると、その接触部から該撥水性水蒸気透過材7を透過して水分子が前記水素化物収納容器11内に入り、内部の水素化物8と反応して水素を生成する様になっている。
【0022】
水Wは、最初から充填しておくと、輸送時に前記水素化物収納容器11と接して、水蒸気が前記撥水性水蒸気透過材7を透過して水素生成反応を生じるおそれがあるので、水素発生時に水の充填を行うのが好ましい。即ち、図示の例は、小型のバッテリーに充電するための燃料電池用の水素発生装置に使用される小型水素発生装置であり、前記本体容器2の貯水部5の適所に給水穴24が形成され、該給水穴24内にはシリコンゴム等の弾性を有するシール材25が装填されており、水の充填時には、水を吸い込ませた注射器(図示せず)の針を該シール材25を貫通させて貯水部5の内部に臨ませ、該注射器のピストンを押して該貯水部5内に所定量の水を注入する。尚、水の充填を行っている間は、前記蓋部材12に設けられた水素導出管9に設けられている流量調節弁10を開いておき、注入した水量に相当する内部の空気或いは予め充填されている不活性ガスをパージしつつ所定量の水の充填を行う。続いて、空の注射器(空気が入った注射器)を前記吸水穴24に差し込んで、適量の空気を注入し、前記流量調節弁10を閉じると、図示の如き状態となる。尚、前記注射器の針を抜いた後の前記シール材25の針穴は、その弾性により自閉する事は、周知の通りである。
【0023】
この状態になると、前記水素化物収納容器11の前記撥水性水蒸気透過材7における水Wと接触している部分から、該撥水性水蒸気透過材7を透過して水分子が前記水素化物収納容器11内に侵入し、該容器11内の水素化物8と反応して水素を発生する。この状態で、前記水素導出管9に設けられている流量調整調節弁10が閉じられていると、水分子よりも遙に小さな水素分子は、前記撥水性水蒸気透過材7を容易に透過して前記水素化物収納容器11外に流出するので、前記水素化物収容部4内の圧力が次第に上昇する。すると、前記水素化物収容部4内の水は、前記連通管6を経て前記貯水部5に移動し、前記水素化物収容部4内の水位は低下して、前記撥水性水蒸気透過材7と水との接触面積は次第に縮小する。この結果、該撥水性水蒸気透過材7を透過して水素化物収納容器11内に透過する水分子の量も少なくなり、次第に反応量も低下する。ある程度の反応が進行した時点で前記調節弁10を開くと、前記水素導出管9から燃料電池その他の水素消費機器に供給される事になる。水素の流出が始まると、前記水素化物収容部4内の圧力は低下するので、再び水位は上昇し、水素発生反応は活発となる。尚、前記調節弁10を閉じた状態で維持しておくと、本体容器2内の圧力は上昇して上述の通り前記水素化物収容部4内の水位は低下し、前記撥水性水蒸気透過材7と水との接触面積は次第に縮小して水素発生反応も次第に低下する。該撥水性水蒸気透過材7と水との接触がなくなると、遂には水素発生は停止する事になる。又、水素化物8が消耗してなくなると、前記撥水性水蒸気透過材7と水とが接触していても水素発生が終了する事は言うまでもない。
【0024】
尚、上記説明では、貯水部5に注射器で水を注入する例について説明したが、前記水素化物収容部4及び貯水部5に適宜のノズルを配置しておき、水素発生を行う使用時に、該ノズルから図示の如き状態に水を注入した後、該ノズルを閉止する様になす事ができる事は言うまでもない。
【0025】
ここで、本発明で使用する前記水素化物8について説明する。本発明で使用する水素化物は、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4),水素化硼素リチウム(LiBH4),水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH4),水素化硼素ナトリウム(NaBH4),水素化アルミニウムカリウム(KAlH4),水素化硼素カリウム(KBH4),水素化硼素マグネシウム(Mg(BH4)2),水素化硼素カルシウム(Ca(BH4)2),水素化硼素バリウム(Ba(BH4)2),水素化硼素ストロンチウム(Sr(BH4)2),水素化硼素鉄(Fe(BH4)2)等の錯金属水素化物や、水素化リチウム(LiH),水素化ナトリウム(NaH),水素化カリウム(KH)等のアルカリ金属水素化物や、水素化バリウム(BaH2),水素化マグネシウム(MgH2),水素化カルシウム(CaH2),水素化ストロンチウム(SrH2)等のアルカリ土類金属水素化物、或いは水素化アルミニウム(AlH3)等の共有性水素化物からなる群から選択された1種以上である。この水素化物を、粉末状,粒子状,顆粒状,ペレット状,板状,ハニカム状のいずれかに成形したものが用いられるが、表面積が大きいと反応性が高くなる傾向にあることから、粉末状,粒子状,或いは顆粒状が好ましい。
【0026】
次に、本発明で使用する前記撥水性水蒸気透過材7について説明する。本発明で使用する撥水性水蒸気透過材7は、半導体工場やバイオ研究室等のクリーンルームでエアフィルタとして使用されているヘパフィルタや限外濾過膜或いはスキーウエアやゴルフやテニス等のウインドブレーカーに使用されている透湿性防水布等の、空気や湿気(水蒸気)の透過は許容するが液体の水の透過は許容しない性質のものであり、その素材としては、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアミド樹脂,ポリエステル樹脂,フッ素樹脂,シリコン樹脂,アセタール樹脂,アクリル樹脂,メラミン樹脂の群から選択された1種以上の合成樹脂が代表的である。これらを前記透湿性防水布の如く加工したり、或いは、これらの樹脂をフィルム状に延伸処理する事により多数の微細孔を形成したものである。
【0027】
尚、フィルム等の薄膜では前記水素化物収納容器11を形成するに必要な強度を保持させるのは困難な場合には、肉厚で且つ多数の連通する微細孔を形成したものを使用する事も可能である。この多数の連通する微細孔を有する任意の肉厚や形状の部材を製造する方法としては、特開2001−2825号公報に記載されている方法がある。この方法は、基材となる任意の高分子材料(合成樹脂)に気孔形成材としての常温で固体(融点が40℃以上)の多価アルコールを混合して分散させ、これを前記気孔形成材の溶解する温度で任意の形状に成形して充実成形体を作成し、次に、この成形体を、前記基材の高分子材料は溶解しないが前記気孔形成材としての多価アルコールを溶解する溶媒(例えば水)で洗浄する事によって、極めて微細な連通孔を任意の気孔率で形成するものである。
【0028】
この様にして形成した撥水性水蒸気透過材7は、膜厚が5μm以上のフィルム状の場合には、その微細孔の平均孔径は0.01〜30μm、好ましくは0.1〜10μm、気孔率は30〜95%、好ましくは40〜95%とする。平均孔径が0.1μm未満であると、水分子の透過抵抗が大きくなったり、不純物の付着堆積により水分子の透過量が低下するおそれがあり、逆に10μmを超えると水がしみ込み、水素発生量が安定しない傾向になる。又、気孔率が40%未満となると、透過性能が低くなり実用上の問題が生じるおそれがある。逆に95%を超えると不純物の付着堆積の影響から透過量が低下する傾向が見られる。そして膜厚が5μm未満であると、膜の強度上の問題から実用上の問題がある。但し、上記孔径には膜厚との関係があり、膜厚が厚い場合には多少孔径が大きくても使用可能である。
【0029】
水は、液体と気体とでは水分子の大きさが異なり、液体の水の場合には、数十個(通常15〜50個程度)の水分子が会合して大きなクラスターを形成しているが、気体(水蒸気)の水の場合には、1分子づつに分離して大きな自由度を有している。この水蒸気の平均分子径は、0.0004μm程度で、撥水性水蒸気透過材の前記平均孔径に比べて三桁も小さい事から、水蒸気は該撥水性水蒸気透過材を自由に透過する事ができるが、水は大きな塊となっているので、自由な透過が阻害される事になる。図示の例の如く、液体の水が該撥水性水蒸気透過材7に接すると、該撥水性水蒸気透過材は撥水性を有しているので、その水との接触境界面には、微細な空気層が形成され、該空気層には平衡な水蒸気分圧に達すべく水蒸気が生成し、この水蒸気(水分子)が、前述の微細孔を透過して前記水素化物収納容器11内に向かって拡散する事になる。この拡散してきた水分子は、前記水素化物8の外面から内部に浸透する様にゆっくりと加水分解させて水素を発生させ、該水分子が消耗すると、その低下した水蒸気分圧を補うように、更なる水蒸気の生成と透過が生じるので、見掛け上は、連続的に水分子が撥水性水蒸気透過材7を透過して内部の水素化物8と反応する事になる。
【0030】
尚、透過する水分子の量は、同一の撥水性水蒸気透過材の場合には、該撥水性水蒸気透過材と水との接触面積に比例するから、比表面積の大きなものが好ましい。従って、単純な平面膜よりも蛇腹状の如く凹凸を形成したものの方が好ましい。
【0031】
又、本発明方法においては、撥水性水蒸気透過材7で制御された水分子を透過させる際の周囲温度は特に限定されない。水素化物は乾燥空気中においては比較的高い温度域でも安定するが、加水分解により発熱し発生する水素は可燃性であることから、安全性の面から0〜50℃が好ましく、より好ましくは10〜30℃の温度範囲である。0℃以下の場合には、水や水蒸気が前記撥水性水蒸気透過材7内で凍結して水分子の透過量が低下するおそれがあり、一方、50℃を超えると前記撥水性水蒸気透過材7の材質によっては強度が低下し、前記水素化物収納容器11内から水素化物が漏れる等の安全上の問題が生じるおそれがある。
【0032】
以上の通り、本発明においては、前記撥水性水蒸気透過材7の平均孔径、気孔率、透過材の厚みと表面積を設定する事によって、一定温度下での水蒸気透過量を制御する事が可能になる。
【0033】
次に、図2は、本発明に係る水素発生装置の第1の方式の第2実施例を示す要部概念図であり、以下に、図1の装置と異なる構成について説明し、同一構成は同一符号を付して重複説明を省略する。同図において、水素発生装置1の本体容器2内は、区画壁3によって上部の水素化物収容部4と下部の加圧室16とに画成され、前記区画壁3から前記加圧室16内にノズル部18が突出しており、その先端部には、水Wが充填される水袋14が固着されており、この水袋14が貯水部5を形成している。又、前記水素化物収容部4内には、対向する上下2面が前記撥水性水蒸気透過材7で形成された水素化物収納容器11が、本体容器2の胴部に取り付けられている保持部材13によって保持されており、その内部には前述の水素化物8が充填されている。又、前記加圧室16内には、加圧手段としてのプランジャ15が配置されている。
【0034】
係る装置においては、前記図1において説明した如く、前記プランジャ15を下げつつ注射器等を用いて水を前記水袋14内に充填した後、図示の如くプランジャ15を前進させて前記水袋14内の水を前記水素化物収納部4内に押し出すと、該水素化物収納部4内の水位は上昇して前記水素化物収納容器11の前記撥水性水蒸気透過材7に接する様になる。この状態になると、前述の如く該撥水性水蒸気透過材7を通して水分子が該水素化物収納容器11内に透過し、水素化物8と反応して水素を発生させる。発生した水素は前述の場合と同様に調整弁10を開けて水素導管9から消費機器に供給される事になる。水素発生反応を停止する場合には、前記プランジャ15を後退させると、水Wは前記水袋14に戻り、前記水素化物収納容器11の前記撥水性水蒸気透過材7との接触が絶たれ、水素の発生は停止する事になる。又、前記水素導管9の調整弁10を絞る事によっても、水素排出量を低下させて前記水素化物収納部4内の内圧が上昇し、水を前記水袋14内に戻して水位を下げ、水素発生反応を低下させる事も可能である。尚、図中17は、前記プランジャ15の背圧抜きのための空気抜き孔である。
【0035】
尚、図2においては、前記水素化物収納容器11を、本体容器2の胴部に保持部材13によって保持させているが、これは図1に示した如く、蓋部材12に取り付ける事も可能である。この場合の例を図3に示す。尚、図2と同一構成は同一符号を付して重複説明は省略する。
【0036】
次に、上記第1の方式の実施例について説明する。
〔実施例1〕
水素化物としての粉末状態の水素化カルシウム(CaH2)1.0gを、撥水性水蒸気透過材としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム(平均孔径:0.3μm,30mm×40mm,2面袋)にて包装し、これを水素化物収納容器11とした。これを、図1に示したアクリル製容器(内径:48mmφ,内長:120mm、水素化物収容部4及び貯水部5の内容量は共に約100cc,耐圧強度:約0.3MPa)からなる本体容器2内に、注射器を用いて水60ccを封入して水素発生量を測定した。水素流量測定器は、ジーエルサイエンス社製デジタルフローメータ(石鹸膜式)、型式OPTIFLOW520を使用した。水素導出量は約20ml/分の一定になる様に、水素導出管9に設けた水素流量調節弁10で流量調整を行った。その結果を図4に示す。反応開始には多少の時間を要するが、同図に示されている様に、反応開始後1分以内に水素発生量は20〜22ml/分程度にまで上昇し、反応開始後約8分を経過するまでは、略一定の水素発生量を保っている。以後は徐々に水素発生量の減少が見られ、反応開始後、約100分経過後には完全に反応が停止した。この状態では、前記2面袋と水との接触は維持されていたから、水素化物の加水分解反応が完了したものと判断した。
【0037】
上記実施例1の試験結果から、撥水性水蒸気透過材7と水との接触面積を更に増やすか水素化物8の量を増やせば、水素発生量を増加させる事ができ、一方、導出水素量を絞れば、更に長時間に亘って一定量の水素発生を維持できる事が推定される。
【0038】
〔実施例2〕
水素化物としての粉末状態のCaH21.0gを、撥水性水蒸気透過材としてのPTFEフィルム(平均孔径:0.3μm,30mm×40mm)を片面に用い、他面を水蒸気が透過しないアルミニウム箔で構成した2面袋にて包装して水素化物収納容器11とした。水素導出量を10ml/分に調整する以外は前記実施例1と同一の要領で水素発生試験を行った。その結果を図5に示す。反応開始に多少の時間を要するが、同図に示されている様に、反応開始後、約1分30秒後に10〜13ml/分の水素発生量まで上昇し、反応開始後、約15分を経過するまでは略一定の水素発生量を保っている。以後は徐々に水素発生量の減少が見られ、反応開始後約120分経過後には完全に反応が停止した。この状態でも、前記2面袋と水との接触は維持されていたから、水素化物の加水分解反応が完了したものと判断した。
【0039】
上記実施例2の試験結果から、撥水性水蒸気透過材7と水との接触面積を減少させたり、導出水素量を絞れば、実施例1よりも長時間に亘って水素発生を維持できる事が推定される。
【0040】
〔実施例3〕
水素化物として粉末状態の水素化硼素ナトリウム(NaBH4)0.3gを、実施例1と同一のPTFEフィルム製2面袋にて包装した水素化物収納容器4を用い、これを図2に示した如く本体容器2としてのアクリル製容器(内径:48mmφ,内長:120mm,耐圧強度:約0.3MPa)に装着すると共に、水袋14内に注射器を用いて50℃の水を60cc充填し、下部のプランジャ15を押して、前記PTFEの2面袋が完全に水没する位置でプランジャ15による加圧を停止して水素発生試験を行った。尚、この水素発生装置は、恒温水槽内に入れて50℃に保って試験を行った。水素導出量は5ml/分となる様に前記水素流量調整弁10の開度を調整した。その他の条件は前記実施例1と同一である。この試験結果を図6に示す。反応開始には時間を要し、約3分30秒後に水素発生が始まったが、同図に示されている様に、反応開始後、約5分後には水素発生量は3〜5ml/分程度にまで上昇し、以後は、反応開始後約45分を経過するまで略一定の水素発生量を保っている。以後は徐々に水素発生量の減少が見られ、反応開始後、約240分経過後には完全に反応が停止した。この状態では、前記PTFEフィルム製2面袋と水との接触は維持されていたから、水素化物の加水分解反応が完了したものと判断した。
【0041】
上記実施例3の試験結果から、水素化物の量が少なくても、導出水素量を絞れば長時間に亘って一定量の水素発生を維持できる事が分かる。
【0042】
〔実施例4〕
水素化物としての粉末状態のCaH21.0gを、前記実施例2で用いたPTFEフィルムとアルミニウム箔とで形成した2面袋で包装し、これを、アクリル製水素発生装置(諸元は前記実施例1と同じ)に、図3に示した如く取り付け、水袋14内に注射器を用いて水60mlを供給し、プランジャ15を押して水がPTFEフィルムの大部分を覆う様な状態となし、前記実施例3と同様にして発生する水素の発生量を測定した。尚、水素導出量調整弁10は全開のままとした。その結果を図7に示す。反応開始10秒後には100〜110ml/分まで上昇したが直ちに減少傾向となり、反応開始30秒後には90ml/分程度になった。開始1分後(80ml/分以上)にプランジャを下げて水素化物収容部4の水位を低下させ、水とPTFEフィルム(撥水性水蒸気透過材)とを分離した。分離直後から30秒後程度までの水素発生量は余り変化がなく、逆に90ml/分程度にまで上昇した。反応開始後90秒の時点で、再度プランジャを押して水をPTFEフィルムに接触させたが、接触直後には40〜50ml/分にまで減少し、更に10秒後(反応開始後100秒)には60〜70ml/分にまで再上昇した。
【0043】
上記実施例4の試験結果から、水素導出量調整弁を全開にしておば、単位時間当たりの水素発生量を多くできるが、その発生持続時間は短くなる事が分かる。又、プランジャの操作による水の供給と排出を行っても、水素発生量変化には時間的な遅れが生じる事が分かる。特に、プランジャを下げて水を水袋に戻した場合には、水素化物収容部4が減圧される結果、水素化物収納容器11内の圧力も低下するため、
CaH2+H2O→2H2+CaO
の一次反応と
CaO+H2O→Ca(OH)2
の二次反応が併発している状態においては、ルシャトリエの法則に従って、系内の圧力を回復させる方向への一次反応(右方向への水素発生反応)が促進されて水素発生量が一時的に増加したものと考えられる。又、前記水袋から水を水素化物収容部4に移行させた場合には、前記とは逆に反応系内の圧力が上昇するため、水素発生反応は抑制されて急激な水素発生量の低下が生じたものと考えられる。
【0044】
〔比較例1〕
水素化物としての粉末状態のCaH20.3gを、水透過性の濾過用定性濾紙(JIS P 3801 1種)を用いて製作した30mm×40mmの2面袋にて包装し、水素化物収納容器11とした。水素導出量を30ml/分に調整する以外は前記実施例1と同一条件で試験を行った。この結果を図12に示す。この反応では、濾紙を透過して大量の水が濾紙製の水素化物収納容器11内に浸透した結果、急激な水素の発生が生じ、その圧力によって濾紙が破損した。このため、水素導出量を30ml/分に設定する事が不可能となり、止むを得ず、水素導出量を100ml/分に再調整を試みたが、水が浸透すると直ちに急激な反応が進行するため、流量調整弁10の一次側圧力が安定せず、水素発生量は5〜150ml/分の範囲で大きく変動し、反応開始後2〜3分で最大値を示し、以後は急速に反応が終了した。
【0045】
上記本発明の実施例と比較例の対比から明らかな様に、水蒸気の浸透による本発明の反応系では、その制御が可能であるが、液体の水の浸透による反応系では制御が不可能である事が理解される。
【0046】
次に、本発明の第2の方式について説明する。前記第1の方式では、大量の水を水素発生装置1の本体容器2内に予め封入しておき、前記水素化物収納容器11の撥水性水蒸気透過材7と水との接触面積を調整したり、水素導出管からの導出水素量を調整する事により、水素化物と水との反応を制御する方式であるが、上記実施例4から明らかな様に、水の水位を下げて前記撥水性水蒸気透過材7と水との接触を絶っても、前記撥水性水蒸気透過材7の表面上や本体容器2の内面に水が残存するのは避け難く、この残存する水分が無くなるまでの暫くの間は水素が発生していた。第2の方式は、この問題を解決するものである。
【0047】
この問題を解決するため、先ず、同程度の水素発生量が得られる方法を検討した結果、比較的僅かな必要最小限の水量でも水素化物と作用させれば、理論上の水素量が取り出せるという知見を得た。そこで、密閉された容器内に水素化物との反応に必要な水の量(化学量論量)を若干上回る程度の水を封入し、これを前記撥水性水蒸気透過材の近傍に配置し、反応時に、この水を水素化物収納容器の前記撥水性水蒸気透過材と接触させる事により、前記第1の方式と同程度の水素発生量が得られる事を見出した。以下に図面に基づいて詳細に説明する。
【0048】
図8は、上記第2の方式に係る水素発生装置の概念図であり、反応に必要な最低限の水を吸水性部材に保持させて、該吸水性部材に保持させた水を前記撥水性水蒸気透過材と接触させるものである。即ち、水素発生装置1は、密閉可能な本体容器2の内部に、底面が撥水性水蒸気透過材7で形成された円筒状の水素化物収納容器11が配置され、その内部には前記水素化物8が収納されており、その下部には、スポンジ等の吸水性部材20に水を吸水保持させる貯水部5が、進退自在のプランジャ15に保持されて設けられている。又、前記水素化物収納容器11の上部には、ロックウール或いはウレタンスポンジ等の伸縮可能な緩衝材21が配置されている。
【0049】
係る構成の装置を用いて水素を発生させる場合には、前記プランジャ15を前進させ、前記吸水性部材20を前記撥水性水蒸気透過材7に接触させて押圧し、該吸水性部材20中に保持されている水を押し出すと、押し出された水は前記撥水性水蒸気透過材7に接し、該撥水性水蒸気透過材7と水との界面に発生した水蒸気が該撥水性水蒸気透過材7を透過して前記水素化物収納容器11内に浸透し内部の水素化物8と反応して水素を発生させる事になる。尚、プランジャ15による前記吸水性部材20への押圧力を変化させる事よって、水の前記撥水性水蒸気透過材7への接触圧力を変化させ、前記水素化物収納容器11内への水蒸気の透過量を調整し、水素発生量を調整する事も可能な様になっている。水素の発生を停止したい場合には、前記プランジャ15を下げて、前記吸水性部材20を後退させて前記撥水性水蒸気透過材7から離反させると共に、この過程で、水を再度前記吸水性部材20に吸水させて、水と撥水性水蒸気透過材7との接触を絶つ事により行われる。即ち、前記プランジャ15を下げると、水は前記吸水性部材20に吸水され、前記撥水性水蒸気透過材7自体は、その撥水性により表面には殆ど付着水が残らず、残存付着水に起因する水蒸気発生と、これによる水素発生は急速に低下する事になり、水素発生停止は速やかに行える様になっている。
【0050】
次に、前記吸水性部材20に保持される水は、該吸水性部材20の吸水能力一杯に吸水させて保持させるのではなく、前記水素化物8との反応に必要な水の理論量(化学量論量)と該吸水性部材20に不可避的に残存する水の量を加えた程度の水量でよいから、図中点線で示したレベル程度の吸水度となし、吸水性部材の上部20aは乾いた状態になる程度となすのが好ましい。これは、満水に吸水させたのでは、前記吸水性部材20中の水が蒸発して前記撥水性水蒸気透過材7を透過し、前記水素化物8と反応を生じる可能性が高くなるからである。又、吸水性部材20としては、吸水状態での水の流動性の小さいものが好ましく、この意味から、多数の微細孔を有するスポンジや前述の特開2001−2825号公報に記載されている方法で形成された吸水性のゴムや吸水紙、或いは、紙おむつ等に使用されている吸水性ポリマー等が好ましい。
【0051】
又、吸水性部材20に保持される水の量を、反応に必要な量を若干上回る程度の量となす事により、過剰な水の存在による反応系の冷却効果を低減させて、前記撥水性水蒸気透過材7と水素化物8との境界部分近傍における水素化物と反応した際の反応温度を高め、この高温化が水の蒸発を促進し、この結果、少ない水量ながら水素化物に作用する水蒸気発生量を多くする事が可能となり、水素発生速度を高める事が可能になっている。同時に、前記吸水性部材20には、反応に必要な水量程度しか存在していないので、反応を途中で停止する際にも、前記撥水性水蒸気透過材7やその近傍に付着している残存水も該吸水性部材20によって吸い取られるので、水蒸気発生は直ちに低下し、水素発生量を急激に低減させる事が可能となる。
【0052】
次に、前記水素化物8は、反応によって1.5〜2倍程度に膨潤するので、該水素化物8を上部から保持する緩衝材21には、この膨張分を吸収しつつ該水素化物8を保持し且つ発生水素を透過させる機能が要求される。従って、係る緩衝材21としては、ウレタンスポンジやロックウール等が用いられる。この緩衝材21は、図では前記水素化物収納容器11の直接接する様に配置しているが、該水素化物収納容器11の保護の目的で、水素を透過させる多孔質部材を該水素化物収納容器11と前記緩衝材21との間に介在させる事も可能である。この多孔質部材の材質としては、発生した水素を透過させる機能と前記水素化物8の膨潤力を前記緩衝材に伝達する機能さえあればよいから、フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂製の多孔板、或いは、金属粒子やセラミックス粒子等の焼結体製の多孔板が好ましく、且つ、前記水素化物8の膨潤により、前記緩衝材21の方に容易に移動できる様に配置される事が肝要である。
【0053】
前記緩衝材21は、水素を透過させる多孔板23によって容器本体2内に保持されている。これは、発生水素と共に前記ロックウール等の緩衝材21が水素導出管9に飛散するのを防止するものであるが、該緩衝材21がウレタンスポンジ等の飛散し難い物質で形成されている場合には、前記本体容器2の上部空間全てに装填する事も可能である。
【0054】
尚、上記装置においては、前記撥水性水蒸気透過材7は、吸水性部材20に直接接した構造となっているが、該撥水性水蒸気透過材7を合成樹脂の薄膜で形成する様な場合には、前記水素化物8の反応時の膨潤による圧力を受けるので、この圧力を前記プランジャ15による前記吸水性部材20によって支持する事も可能であるが、前記撥水性水蒸気透過材7の下部に、水の透過を許容する多孔質支持部材を配置しておく事が好ましく、その材質としては、フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂製の多孔板、或いは、金属粒子やセラミックス粒子等の焼結体製の多孔板で撥水性を有するものが好ましい。
【0055】
上記装置において、前記吸水性部材20に所定量の水を供給するに当り、前述の通り、本体容器2の前記吸水性部材20の側部に形成された給水穴24から注射器を用いて該吸水性部材20に水を供給する事も可能であるが、前記吸水性部材20として、吸水ポリマーや特開2001−2825号公報に記載の方法で形成された多孔質ゴムの如く、吸水した水の該吸水性部材20内部での自然流動が生じない様なものの場合には、予め該吸水性部材20に所定量の水を保持させておく事も可能である。
【0056】
次に、上記第2の方式の実施例について説明する。
〔実施例5〕
水素化物8としての粉末状態のCaH21.0gを、底面に撥水性水蒸気透過材7としてのPTFEフィルム(平均孔径0.3μm,直径20mm,厚さ0.1mm)が配置された水素化物収納容器11(内径20mm×高さ20mm)に収納し、これを図8に示したアクリル製の本体容器2(耐圧力約0.3MPa)内に固定的に配置すると共に、その下部に、水2g(化学量論量の約2.3倍量)を吸水保持させた吸水性部材20としてのフエルト(ウール40%+ポリエステル60%,直径18mm×厚さ5mm)を配置し、更に、前記水素化物収納容器11の上部には、上記吸水性部材20と同一のフェルト(直径20mm×厚さ10mm)を緩衝材21として載置し、その上部にポリエチレン多孔板(直径18mm×厚さ1mm)を配置して水素発生装置1を製作し、プランジャ15を前進させて水素発生試験を開始した。発生水素量を測定するために使用した測定機器は、実施例1と同一である。その結果を図10に示す。同図に示されている様に、反応開始後、10秒後には20〜30ml/分程度にまで上昇し、開始30秒後には40ml/分以上に達している。又、水素発生量が100ml/分以上に達した反応開始後60秒を経過した時点で、前記吸水性部材20を押圧しているプランジャを後退させて、該吸水性部材20を撥水性水蒸気透過材7から分離した。分離後10秒後(反応開始後70秒)には40ml/分以下にまで水素発生量は減少し、更に、分離後30秒後(反応開始後90秒)には5〜10ml/分程度にまで減少した。この時点で直ちに前記プランジャを前進させて前記吸水性部材20を前記撥水性水蒸気透過材7に接触させると、10秒後(反応開始後100秒)には、再び100ml/分以上にまで上昇した。
【0057】
上記試験結果から、前記吸水性部材20を前記撥水性水蒸気透過材7から離反させると、水素発生量は速やかに低下し、再度接触させると速やかに水素発生反応が開始される事が分かる。即ち、前記プランジャ15の操作によって、容易に水素発生量の制御を行う事ができる様になっている。
【0058】
次に、本発明の第3の方式について説明する。この第3の方式は、第2の方式と同様に、必要最低限の水を自由水の状態で前記本体容器2内に予め封入しておき、この自由水を前記撥水性水蒸気透過材7と接触させる事によって水素の発生を行うものである。以下に、図面を用いて詳細に説明する。
【0059】
図9は、上記第3の方式に係る水素発生装置の概念図であり、前記図8と相違する部分のみを説明し、同一構成は同一符号を付して重複説明は省略する。同図において、水素化物8を内蔵した水素化物収納容器11の下面は、前記撥水性水蒸気透過材7で形成されており、その下面には水の透過を許容する多孔板22が配置され、該多孔板22によって前記水素化物収納容器11は本体容器2内に保持されている。この多孔板22は、フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂製の多孔板、或いは、金属粒子やセラミックス粒子等の焼結体製の多孔板で撥水性を有するものが好ましい。又、前記水素化物収納容器11の下方には、貯水部5となる空間が形成されており、前記水素化物収納容器11の上部には、図8と同様に緩衝材21が配置されている。
【0060】
係る構成の装置を用いて、水素を発生させる場合には、本体容器2の前記貯水部5の空間の側壁に形成された給水穴24から、前述の通り注射器によって所定量の水Wを供給する。供給された水は、貯水部5の中で自由に流動する状態の水(自由水)となっているから、本体容器2の天地を逆にしたり、傾けると、水Wは前記水素化物収納容器11の撥水性水蒸気透過材7に接触し、前述の場合と同様に水素の発生が始まる事になる。
【0061】
次に、上記第3の方式の実施例について説明する。
〔実施例6〕
水素化物8としての粉末状態のCaH21.0gを、底面が撥水性水蒸気透過材7としてのPTFEフィルム(平均孔径0.3μm,直径20mm,厚さ0.1mm)が配置された水素化物収納容器11(内径20mm×高さ20mm)に収納し、これを図9に示した様にアクリル製の本体容器2(耐圧力約0.3MPa)内に固定的に配置すると共に、その下部の貯水部5内に、注射器によって水2g(化学量論量の約2.3倍の水量)を注入した。この状態で、水素発生装置を反転させて水素発生反応を開始させて、上記実施例と同様にして水素発生量の測定を行った。その結果を図11に示す。図11に示されている様に、反応開始10秒後には20〜30ml/分にまで上昇し、反応開始30秒後には50〜60ml/分にまでに達した。又、100ml/分以上に達した反応開始1分後に、水素発生装置を反転させて水を撥水性水蒸気透過材7から分離した。分離してから約30秒後(図中の反応開始から約115秒後)には50〜60ml/分程度にまで減少した。その後、再度、装置を反転させて水を撥水性水蒸気透過材7に接触させたところ、反転10秒後(図中の反応開始から120秒後)には再び80ml/分程度まで上昇した。
【0062】
この試験結果からも、自由水を単に撥水性水蒸気透過材7に接触させたり離したりするだけでも、水素発生量の調整ができる事が分かる。しかしながら、撥水性水蒸気透過材7と水とを離反させる場合に、前記実施例5に示した吸水性部材20で前記撥水性水蒸気透過材7の付着水を吸水除去する方式に比して、接触,離反の際の切れが悪いが、自由水を使用できる点は、装置の部品点数を少なくできるので、装置のコストダウンには効果が期待される。
【0063】
以上に、本発明の内容を図面と実施例に基づいて説明したが、本発明は、これら実施例に限定されるものではなく、種々のバリエーションが存在する事は言うまでもない。
【0064】
例えば、環境温度が低い場合には、水蒸気発生量も少なくなり水素発生能力も低下するため、適宜の加温手段を設ける事も可能である。具体的には、水素発生時に水が流入して来る前記水蒸気透過材7の近傍に、生石灰等の水と反応して発熱する物質を少量配置しておき、初期反応温度を高める方策が簡便で好ましい。又、使用される地域の気温に応じて水素化物の種類等の仕様を変える事も可能である。例えば、寒冷地で使用される場合には、反応性の高いアルカリ金属水素化物の比率を高め、又、高温地の場合には、水蒸気透過材の面積を小さくする等がある。又、前述の実施例では、加圧手段としてプランジャを用いているが、これもバネ等の弾性材をトリガ機構と共に用いて、加圧時はトリガ機構を解除してバネ等による押圧を行い、非加圧時には該トリガ機構を作動させてバネ等の動きを規制する様になす事も可能である。更に、上記実施例では、水を注射器等により使用時に供給する例について説明しているが、これも、予め水を注入しておき、その水の上面側にシャッター部材を配置しておき、使用時に、このシャッターを開ける等の方式も可能である。以上の通り本発明は、特許請求の範囲に記載された思想の範囲で、種々の変形態様が存在するものである。
【0065】
【発明の効果】
以上に詳述した如く、本発明の水素発生方法によれば、従来法の如く水素化物と水とを直接接触させて反応させるのではなく撥水性水蒸気透過材7を透過した水分子と反応させるものであるから、その反応は穏やかなものとなり、従って、その制御も、透過する水蒸気の量を調整する事により、容易に行う事が可能となる。この事は、水素化物8を用いた水素発生技術の実用化を大きく前進させ、同時に係る水素発生技術を用いた小型燃料電池の実用化をも促進させ、クリーンなエネルギーの普及に大きく貢献する事が期待される。
【0066】
発生水素量の制御も、前記撥水性水蒸気透過材7と水との接触面積又は接触圧力或いは導出水素量の1以上を調整する事により容易に行う事が可能であり、しかも、従来の水と水素化物8との接触による水素発生法では不可能であった反応途中での水素発生の停止も、水と水蒸気透過材7との接触を絶つ事によって行う事ができるので、必要なときに必要な量の水素を発生させる事が可能となる。
【0067】
又、水素発生装置も、水のみを本体容器の貯水部5に供給すれば、直ちに水素発生反応を生じさせる事ができるので、必要な時に何時でも何処ででも水素発生を行わせる事が可能となる。従って、携帯電話等の小型燃料電池用の水素発生装置として用いれば、該水素発生装置を携帯電話に装入できる程度に小型カートリッジ式にしておき、該携帯電話の充電時に水を注入した当該小型水素発生装置を携帯電話内に装入するだけで、容易に発電と充電を行う事が可能となる。
【0068】
一方、反応に必要最低限の水を、吸水保持した水が流動しない様な吸水性部材20に予め吸水保持させておけば、吸水保持量も少なくなるので小型化が可能となるのみならず、輸送中にも水と撥水性水蒸気透過材との接触が生じる事がないので、前記吸水性部材20と前記水素化物収納容器11とを予めモジュール化しておき、使用済の水素発生装置の前記モジュールのみを交換する事によって水素発生装置の再生が行われ、省資源化にも貢献する事が期待される。
【0069】
具体的構成についても、前記水素化物収納容器11の上部に、弾性を有する緩衝材を配置する事により、反応時に生じる水素化物の膨潤を該緩衝材21によって吸収する事ができるので、反応時における水素化物の移動が防止され、水素発生反応を安定して行わせる事が可能となる。
【0070】
又、本発明では、撥水性水蒸気透過材7を透過した水蒸気(水分子)と水素化物8とを反応させる方式であるので、その反応は穏やかとなり、反応温度も30〜40℃で、高くとも50℃程度であるから、合成樹脂等の可燃性材料も装置構成材料として使用することが可能となり、資材選択の幅が広がると共に、コスト低減も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る水素発生装置の第1の方式の実施例を示す概念図である。
【図2】 本発明に係る水素発生装置の第1の方式の他の実施例を示す概念図である。
【図3】 本発明に係る水素発生装置の第1の方式の更に他の実施例を示す概念図である。
【図4】 本発明に係る水素発生装置の第1の方式による実施例1における水素発生量の経時変化を示すチャートである。
【図5】 本発明に係る水素発生装置の第1の方式による実施例2における水素発生量の経時変化を示すチャートである。
【図6】 本発明に係る水素発生装置の第1の方式による実施例3における水素発生量の経時変化を示すチャートである。
【図7】 本発明に係る水素発生装置の第1の方式による実施例4における水素発生量の経時変化を示すチャートである。
【図8】 本発明に係る水素発生装置の第2の方式の実施例を示す概念図である。
【図9】 本発明に係る水素発生装置の第3の方式の実施例を示す概念図である。
【図10】 本発明に係る水素発生装置の第2の方式による実施例5における水素発生量の経時変化を示すチャートである。
【図11】 本発明に係る水素発生装置の第3の方式による実施例6における水素発生量の経時変化を示すチャートである。
【図12】 比較例における水素発生量の経時変化を示すチャートである。
【符号の説明】
1…水素発生装置、2…本体容器、3…区画壁、4…水素化物収容部、5…貯水部、6…連通管、7…撥水性水蒸気透過材、8…水素化物、9…水素導出管、10…流量調整弁、11…水素化物収納容器、14…水袋、15…加圧手段、 16…加圧室、18…ノズル部、20…吸水性部材、21…緩衝材、24…吸水穴、W…水。
Claims (18)
- 密閉可能な本体容器(2)内で、水素化物(8)を加水分解させて水素を発生させる水素発生方法において、前記水素化物(8)と水(W)とを、少なくとも一部が水蒸気透過性を有する撥水性水蒸気透過材(7)で形成されている部材によって隔離すると共に、該撥水性水蒸気透過材(7)を透過してくる水分子と前記水素化物(8)とを反応させて水素を発生させる事を特徴とする水素発生方法。
- 少なくとも一部が前記撥水性水蒸気透過材(7)で形成された水素化物収納容器(11)内に前記水素化物(8)を収納し、前記水素化物収納容器(11)の前記撥水性水蒸気透過材(7)の少なくとも一部を水(W)と接触させ、該接触部を通して前記水素化物収納容器(11)内に透過してくる水分子と前記水素化物(8)とを反応させるものである請求項1に記載の水素発生方法。
- 前記撥水性水蒸気透過材(7)と水(W)との接触面積又は該撥水性水蒸気透過材(7)に作用する水圧のいずれか一方又は双方を調整する事によって、前記撥水性水蒸気透過材(7)を透過する水分子の量を制御し、これによって前記水素化物と水分子との反応を制御する様にしてなる請求項1又は2に記載の水素発生方法。
- 前記本体容器(2)からの発生水素の導出量を調整する事によって、前記水素化物(8)と水分子との反応を制御する様にしてなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水素発生方法。
- 前記水素化物(8)が、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4),水素化硼素リチウム(LiBH4),水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH4),水素化硼素ナトリウム(NaBH4),水素化アルミニウムカリウム(KAlH4),水素化硼素カリウム(KBH4),水素化硼素マグネシウム(Mg(BH4)2),水素化硼素カルシウム(Ca(BH4)2),水素化硼素バリウム(Ba(BH4)2),水素化硼素ストロンチウム(Sr(BH4)2),水素化硼素鉄(Fe(BH4)2),水素化リチウム(LiH),水素化ナトリウム(NaH),水素化カリウム(KH),水素化バリウム(BaH2),水素化マグネシウム(MgH2),水素化カルシウム(CaH2),水素化ストロンチウム(SrH2),水素化アルミニウム(AlH3)からなる群から選択された1種以上を、粉末状,粒子状,顆粒状,ペレット状,板状,ハニカム状のいずれかに成形したものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水素発生方法。
- 前記撥水性水蒸気透過材(7)が、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアミド樹脂,ポリエステル樹脂,フッ素樹脂,シリコン樹脂,アセタール樹脂,アクリル樹脂,メラミン樹脂の群から選択された1種以上の合成樹脂又は撥水処理された紙から形成された水蒸気の透過を許容する連通する微細孔を有するものである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水素発生方法。
- 水素化物(8)を加水分解して水素を発生させる水素発生装置において、水素導出管(9)を有する密閉可能な本体容器(2)と、該本体容器(2)内に配置された少なくとも一部が撥水性水蒸気透過材(7)で形成された水素化物収納容器(11)と、該水素化物収納容器(11)内に収容された水素化物(8)と、前記本体容器(2)内に形成された貯水部(5)とを有し、前記撥水性水蒸気透過材(7)を透過した前記貯水部(5)からの水分子と前記水素化物(8)とを反応させて水素を発生させる様になすと共に、前記貯水部(5)中の水(W)と前記撥水性水蒸気透過材(7)との接触面積を調整可能となす事により、水素発生量を制御する様に構成してなる事を特徴とする水素発生装置。
- 前記本体容器(2)内を、区画壁(3)によって、前記水素化物収納容器(11)を配置した水素化物収容部(4)と前記貯水部(5)とに区画すると共に、前記区画壁(3)に形成された連通管(6)によって前記水素化物収容部(4)と貯水部(5)とを連通させ、該連通管(6)を通して水を相互に移動可能となし、これにより前記撥水性水蒸気透過材(7)と水との接触面積を調整する様に構成してなる請求項7に記載の水素発生装置。
- 前記本体容器(2)内を、区画壁(3)によって、前記水素化物収納容器(11)を配置した水素化物収容部(4)と加圧室(16)とに区画し、前記区画壁(3)に形成されたノズル部(18)の先端部に伸縮可能な水袋(14)からなる貯水部(5)を設けると共に、該水袋(14)を前記加圧室(16)内に配置し、前記加圧室(16)内の圧力を調整する事により、前記貯水部(5)から前記水素化物収容部(4)に移動する水量を調整し、これによって、前記撥水性水蒸気透過材(7)と水との接触面積を調整する様に構成してなる請求項7に記載の水素発生装置。
- 水素化物(8)を加水分解して水素を発生させる水素発生装置において、水素導出管(9)を有する密閉可能な本体容器(2)と、該本体容器(2)内を、少なくとも一部が撥水性水蒸気透過材(7)で形成された部材によって、水素化物収容部(4)と吸水性部材(20)に水を吸水して保持させる貯水部(5)とに画成し、前記撥水性水蒸気透過材(7)を透過した前記貯水部(5)中の水分子と前記水素化物(8)とを反応させて水素を発生させる様になすと共に、前記吸水性部材(20)を、前記撥水性水蒸気透過材(7)に対して接触及び離反可能に構成してなる事を特徴とする水素発生装置。
- 前記吸水性部材(20)の裏面側を押圧部材(15)によって押圧可能となし、該押圧部材(15)による前記吸水性部材(20)への押圧力を調整する事により、前記貯水部(5)内の水の前記撥水性水蒸気透過材(7)に対する圧力を調整する様にしてなる請求項10に記載の水素発生装置。
- 水素化物(8)を加水分解して水素を発生させる水素発生装置において、水素導出管(9)を有する密閉可能な本体容器(2)と、該本体容器(2)内を、少なくとも一部に撥水性水蒸気透過材(7)によって形成された部材によって、水素化物収容部(4)と自由水を収容する貯水部(5)とに画成し、本体容器 ( 2 ) の傾動に伴う貯水部 ( 5 ) 内の自由水と前記撥水性水蒸気透過材 ( 7 ) との接触により、前記撥水性水蒸気透過材(7)を透過した水分子と前記水素化物(8)とを反応させて水素を発生させる様に構成してなる事を特徴とする水素発生装置。
- 前記本体容器(2)を傾動可能となし、傾動角度によって前記貯水部(5)内の自由水と前記撥水性水蒸気透過材(7)との接触面積を調整可能にしてなる請求項12に記載の水素発生装置。
- 前記少なくとも一部に撥水性水蒸気透過材(7)によって形成された部材が水素化物(8)を収納する水素化物収納容器(11)であり、該水素化物収納容器(11)の下部が、水の通過の容易な多孔質部材によって、前記本体容器(2)内に支持されている請求項10乃至13のいずれか1項に記載の水素発生装置。
- 前記本体容器(2)内の前記水素化物収納容器(11)の上面に、弾性を有し発生水素の通過を許容する緩衝材(21)を配置してなる請求項14に記載の水素発生装置。
- 前記水素導出管(9)に水素流量調節弁(10)を設け、前記本体容器(2)から導出される水素量を調整する事により水素発生量を制御する様に構成してなる請求項7乃至15のいずれか1項に記載の水素発生装置。
- 前記水素化物(8)が、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4),水素化硼素リチウム(LiBH4),水素化アルミニウムナトリウム(NaAlH4),水素化硼素ナトリウム(NaBH4),水素化アルミニウムカリウム(KAlH4),水素化硼素カリウム(KBH4),水素化硼素マグネシウム (Mg(BH4)2),水素化硼素カルシウム(Ca(BH4)2),水素化硼素バリウム(Ba(BH4)2),水素化硼素ストロンチウム(Sr(BH4)2),水素化硼素鉄(Fe(BH4)2),水素化リチウム(LiH),水素化ナトリウム(NaH),水素化カリウム(KH),水素化バリウム(BaH2),水素化マグネシウム (MgH2),水素化カルシウム(CaH2),水素化ストロンチウム(SrH2),水素化アルミニウム(AlH3)からなる群から選択された1種以上を、粉末状,粒子状,顆粒状,ペレット状,板状,ハニカム状のいずれかに成形したものである請求項7乃至16のいずれか1項に記載の水素発生装置。
- 前記撥水性水分子透過材(7)が、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリアミド樹脂,ポリエステル樹脂,フッ素樹脂,シリコン樹脂,アセタール樹脂,アクリル樹脂,メラミン樹脂の群から選択された1種以上の合成樹脂又は撥水処理された紙から形成された水分子の透過を許容する連通する微細孔を有するものである請求項7乃至17のいずれか1項に記載の水素発生装置。
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