次に、発明の実施の形態を説明する。図1は油圧装置の第一実施例に係る側面断面図、図2は油圧装置の第一実施例に係るシリンダブロックの側面断面図、図3はシリンダブロックの正面図、図4はスプール弁の斜視図、図5は油圧装置の第一実施例に係るスプール弁ガイドの斜視図、図6は油圧装置の第一実施例に係る保持部材の斜視図、図7は出力側斜板の斜視図、図8は油圧装置の第一実施例に係る要部側面図、図9は増速操作時における油圧閉回路内の作動油の流れを示す模式図、図10は減速操作時における油圧閉回路内の作動油の流れを示す模式図、図11はシリンダブロックの展開模式図、図12は本発明の油圧装置の油圧閉回路を示す模式図、図13は本発明の油圧装置における入力側油圧装置の行程容積と出力軸の回転数との関係を示す図、図14はリンクアームの側面図、図15はリンクアームの平面一部断面図、図16はリンクアーム機構を示す平面模式図、図17は回動前のリンクアームと入力側斜板との位置関係を示す図、図18は回動後のリンクアームと入力側斜板との位置関係を示す図、図19は油圧装置の第二実施例に係る側面断面図、図20は油圧装置の第二実施例に係るシリンダブロックの側面断面図、図21は油圧装置の第二実施例に係るスプール弁ガイドの斜視図、図22は油圧装置の第二実施例に係る要部側面図である。
以下では、図1から図8を用いて本発明の油圧装置の第一実施例である油圧式無段変速装置1の詳細構成について説明する。なお、本実施例の油圧式無段変速装置1は作業用車両(トラクタ等)の走行駆動力の変速に用いられるものであるが、これに限定されず、産業機械や車両等、各種の産業分野で広く利用可能である。
油圧式無段変速装置1は主に、入力軸2、入力側ハウジングフタ3、入力側軸受ハウジング4、斜板保持部材5、入力側斜板6、シリンダブロック7、入力側プランジャ8・8・・・、入力側スプール弁9・9・・・、出力側プランジャ10・10・・・、出力側スプール弁11・11・・・、出力側斜板12、出力軸13、出力側軸受ハウジング14、等で構成される。なお、以後の説明では図1の矢印Aの方向(入力軸2の軸線方向において、先端部2aが突出する方向)を「前方」と定義する。
以下では図1を用いて本実施例における第一の回転軸である入力軸2の詳細説明を行う。入力軸2は、エンジン等の駆動源からの駆動力を油圧式無段変速装置1に伝達するための軸である。入力軸2は、入力側円錐コロ軸受21および入力側針状コロ軸受22を介して入力側軸受ハウジング4に回転自在に軸支される。該入力側円錐コロ軸受21の内輪は、入力軸2に設けられた段差部と入力軸2の先端部2a側から螺装される入力側軸受締付ナット23により、入力軸2に対して相対回転不能に固定される。また、入力軸2にはシリンダブロック7がスプライン嵌合により相対回転不能に固定される。
以下では図1を用いて本実施例における第一の回転軸を軸支する軸受部材である入力側軸受ハウジング4の詳細説明を行う。入力側軸受ハウジング4の前部を形成するフランジ部4aは略円盤形状に形成され、その周縁部には油圧式無段変速装置1をミッションケース等に固定するためのボルト孔が穿設されている。本実施例の場合、フランジ部4aは作業車両の変速機を収納する変速機収納ケース24にボルト締結により固定される。また、入力側軸受ハウジング4と変速機収納ケース24との当接部にはOリングが介装される。このように、入力側軸受ハウジング4と変速機収納ケース24との当接部から変速機収納ケース24の外部に作動油が漏出することを防止するとともに、砂塵等の異物が変速機収納ケース24や油圧式無段変速装置1の内部に侵入することを防止している。一方、入力側軸受ハウジング4の後部を形成する胴体部4bは略筒状に形成され、入力軸2を貫通させるための貫通孔が穿設される。該貫通孔の内周面前部には入力側円錐コロ軸受21の外輪が嵌合し、内周面後部には入力側針状コロ軸受22が嵌合する。
以下では図1を用いて入力側ハウジングフタ3の詳細説明を行う。入力側ハウジングフタ3は略中央に入力軸2を貫通させるための貫通孔が穿設された略円盤形状の部材であり、該貫通孔において入力側ハウジングフタ3と入力軸2との間にオイルシール25が介装される。また、入力側ハウジングフタ3の貫通孔の前端部には止め輪26が設けられており、オイルシール25が入力側ハウジングフタ3から脱落することを防止している。入力側ハウジングフタ3はボルト締結により入力側軸受ハウジング4の前端部に固定され、入力側ハウジングフタ3と入力側軸受ハウジング4との当接部にはOリングが介装される。このように、入力側ハウジングフタ3の貫通孔と入力軸2との隙間、および入力側ハウジングフタ3と入力側軸受ハウジング4との当接部から変速機収納ケース24の外部に作動油が漏出することを防止するとともに、砂塵等の異物が変速機収納ケース24や油圧式無段変速装置1の内部に侵入することを防止している。
以下では図1を用いて斜板保持部材5の詳細説明を行う。斜板保持部材5は、入力側斜板6の斜板面6aの傾斜角(斜板面6aと入力軸2の軸線とが成す角度)を変更可能に、入力側斜板6を支持するための部材であり、略中央に孔が穿設された略円盤形状の取付部5a、該取付部5aから後方に突出した保持部5b等で構成される。取付部5aは入力側軸受ハウジング4の胴体部4bに嵌装され、ボルト締結により入力側軸受ハウジング4のフランジ部4aに固定される。保持部5b・5bは取付部5aから後方に突出しており、保持部5b・5bの後端部は略半円状に窪んだ形状を有している。該半円状に窪んだ部位には斜板用メタル軸受27がスプリングピン28により固設されている。
以下では図1および図2を用いて本実施例における第一の斜板である入力側斜板6の詳細説明を行う。入力側斜板6は、入力軸2の回転駆動力を入力側プランジャ8が往復動する力(すなわち、シリンダブロック7内に形成された油圧回路内の作動油の油圧)に変換するとともに、斜板面6aの傾斜角を変更することにより入力側プランジャ8の往復動時のストローク(すなわち、入力側プランジャ8が往復動時に圧送する作動油の量)を変更するものである。入力側斜板6は略中央に入力軸2が貫通する孔が穿設された部材であり、その一方に板面である斜板面6aが形成される。斜板面6aには入力側プランジャ8の突出端(当接盤8c)が当接する。一方、他方の板面には保持部6b・6bが突設される。保持部6b・6bの形状は、前記斜板保持部材5の保持部5b・5bの半円状に窪んだ部位と対応しており、入力側斜板6は保持部6b・6bにて斜板保持部材5の保持部5b・5b(より厳密には側面視において半円状に窪んだ部位に設けられた斜板用メタル軸受27)と当接しつつ回動することが可能であり、斜板面6aの傾斜角(斜板面6aと入力軸2の軸線とが成す角度)を変更することが可能である。なお、入力側斜板6の略中央に穿設された孔の直径は、入力側斜板6が回動しても入力軸2が干渉することが無い大きさとなっている。
以下では図1、図2および図3を用いて本発明の油圧装置におけるシリンダブロックの実施の一形態であるシリンダブロック7について詳細説明する。シリンダブロック7は略円柱形状の部材であり、シリンダブロック7の略中央部には入力側端面7aから出力側端面7bに入力軸2を貫通する貫通孔7cが穿設され、該貫通孔7cの内周面の後端部(出力側端面7b側の端部)にはスプライン加工が施されている。一方、シリンダブロック7に入力軸2を貫装したときに前記シリンダブロック7のスプライン加工された部位と対応する入力軸2の外周面にもスプライン加工が施されており、シリンダブロック7は入力軸2とスプライン嵌合して相対回転不能かつ一体的に回転する。入力側端面7aは入力側斜板6と対向する面であり、出力側端面7bは出力側斜板12と対向する面である。入力側端面7aおよび出力側端面7bは、いずれも入力軸2の軸線と直交している。
シリンダブロック7には、計七箇所の入力側プランジャ孔31・31・・・と、計七箇所の入力側スプール弁孔32・32・・・とが、シリンダブロック7の入力側端面7aから入力軸2の軸線方向に向けて穿設されている。入力側プランジャ孔31・31・・・は入力側プランジャ8・8・・・を収容するためにシリンダブロック7に穿設された孔であり、その長手方向は入力軸2の軸線と平行である。また、入力側プランジャ孔31・31・・・は出力側端面7bまで貫通せず、入力側端面7aと出力側端面7bとの中間となる位置よりもやや出力側端面7b寄りとなる位置まで穿たれている。入力側スプール弁孔32・32・・・は入力側スプール弁9・9・・・を収容するためにシリンダブロック7に穿設された孔であり、その長手方向は入力軸2の軸線と平行である。また、入力側スプール弁孔32・32・・・は出力側端面7bまで貫通している。
図3に示す如く、入力側プランジャ孔31・31・・・は、入力軸2の軸線方向から見て、入力軸2が貫装される貫通孔7cから等距離(同心円上)、かつ隣接する入力側プランジャ孔31・31間の距離が等距離となるように配置されている。また、入力側スプール弁孔32・32・・・も、入力軸2の軸線方向から見て、入力軸2が貫装される貫通孔7cから等距離(同心円上)、かつ隣接する入力側スプール弁孔32・32間の距離が等距離となるように配置されている。このとき、入力側スプール弁孔32・32・・・は入力側プランジャ孔31・31・・・よりも貫通孔7cからの距離が近く、かつシリンダブロック7の径方向において貫通孔7cの中心と入力側プランジャ孔31の中心を結ぶ直線上に入力側スプール弁孔32の中心が概ね来るように配置されている。
シリンダブロック7の外周面から一組の入力側プランジャ孔31および入力側スプール弁孔32を連通する連通孔33がそれぞれ(計七箇所)穿設される。このとき、連通孔33・33・・・は入力軸2の軸線方向においてシリンダブロック7の略中央となる位置に穿設され、連通孔33・33・・・のシリンダブロック7の外周面側の端部はシールプラグ34・34・・・により閉塞される。また、連通孔33・33・・・と入力側プランジャ孔31・31・・・との合流部である合流部36の内径は、入力側スプール弁孔32の内径よりも拡径して形成されている。このように構成することにより、入力側スプール弁9の拡径部9aにより入力側プランジャ孔31と入力側油室35および出力側油室45とが遮断されているとき(中立位置)に、拡径部9aの外周に均等に油圧が作用するため入力側スプール弁9が入力側スプール弁孔32の内部である特定の円周方向に押し付けられることを防止可能である。また、合流部36の軸線方向の寸法精度は、油圧回路の流路が入力側スプール弁9の往復動により切り替わるタイミングの精度に影響を及ぼすものであるが、本実施例の場合、入力側スプール弁孔32・32・・・を穿設するときに合わせて合流部36を中刳りすることにより、合流部36を寸法精度良く形成することが可能である。
シリンダブロック7には、計七箇所の出力側プランジャ孔41・41・・・と計七箇所の出力側スプール弁孔42・42・・・とがシリンダブロック7の出力側端面7bから入力軸2の軸線方向に向けて穿設されている。出力側プランジャ孔41・41・・・は出力側プランジャ10・10・・・を収容するためにシリンダブロック7に穿設された孔であり、その長手方向は入力軸2の軸線と平行である。また、出力側プランジャ孔41・41・・・は入力側端面7aまで貫通せず、入力側端面7aと出力側端面7bとの中間となる位置よりもやや入力側端面7a寄りとなる位置まで穿たれている。出力側スプール弁孔42・42・・・は出力側スプール弁11・11・・・を収容するためにシリンダブロック7に穿設された孔であり、その長手方向は入力軸2の軸線と平行である。また、出力側スプール弁孔42・42・・・は入力側端面7aまで貫通している。
図3に示す如く、出力側プランジャ孔41・41・・・は、入力軸2の軸線方向から見て、入力軸2が貫装される貫通孔7cから等距離(同心円上)、かつ隣接する出力側プランジャ孔41・41間の距離が等距離となるように配置されている。また、出力側スプール弁孔42・42・・・も、入力軸2の軸線方向から見て、入力軸2が貫装される貫通孔7cから等距離(同心円上)、かつ隣接する出力側スプール弁孔42・42間の距離が等距離となるように配置されている。このとき、出力側スプール弁孔42・42・・・は出力側プランジャ孔41・41・・・よりも貫通孔7cからの距離が近く、かつシリンダブロック7の径方向において貫通孔7cの中心と出力側プランジャ孔41の中心を結ぶ直線上に出力側スプール弁孔42の中心が概ね来るように配置されている。
シリンダブロック7の外周面から一組の出力側プランジャ孔41および出力側スプール弁孔42を連通する連通孔43がそれぞれ(計七箇所)穿設される。このとき、連通孔43・43・・・は入力軸2の軸線方向においてシリンダブロック7の略中央となる位置に穿設され、連通孔43・43・・・のシリンダブロック7の外周面側の端部はシールプラグ44・44・・・により閉塞される。また、連通孔43・43・・・と出力側プランジャ孔41・41・・・との合流部である合流部46の内径は、出力側スプール弁孔42の内径よりも拡径して形成されている。このように構成することにより、出力側スプール弁11の拡径部11aにより出力側プランジャ孔41と入力側油室35および出力側油室45とが遮断されているとき(中立位置)に、拡径部11aの外周に均等に油圧が作用するため出力側スプール弁11が出力側スプール弁孔42の内部である特定の円周方向に押し付けられることを防止可能である。また、合流部46の軸線方向の寸法精度は、油圧回路の流路が出力側スプール弁11の往復動により切り替わるタイミングの精度に影響を及ぼすものであるが、本実施例の場合、出力側スプール弁孔42・42・・・を穿設するときに合わせて合流部46を中刳りすることにより、合流部46を寸法精度良く形成することが可能である。
図3に示す如く、入力側プランジャ孔31・31・・・と、出力側プランジャ孔41・41・・・とは、入力軸2の軸線方向から見て、交互に隣接する(すなわち、貫通孔7cを中心とする同心円上において入力側プランジャ孔31→出力側プランジャ孔41→入力側プランジャ孔31→出力側プランジャ孔41→・・・の順に配列される)。また、出力側スプール弁孔32・32・・・と、出力側スプール弁孔42・42・・・とは、同じく入力軸2の軸線方向から見て、交互に隣接する(すなわち、貫通孔7cを中心とする同心円上において入力側スプール弁孔32→出力側スプール弁孔42→入力側スプール弁孔32→出力側スプール弁孔42→・・・の順に配列される)。
図2に示す如く、シリンダブロック7の貫通孔7cの内周面には、第一の内周溝および第二の内周溝からなる計二箇所の内周溝が形成されている。該内周溝は内周面の周方向にリング状に形成されており、いずれの内周溝も入力側スプール弁孔32・32・・・および出力側スプール弁孔42・42・・・と連通している。なお、以後の説明では、入力側端面7aに近い第一の内周溝と入力軸2の外周面とで囲まれた空間を入力側油室35とし、出力側端面7bに近い第二の内周溝と入力軸2の外周面とで囲まれた空間を出力側油室45とする。
なお、本実施例においてはシリンダブロック7に収容される入力側プランジャ8、入力側スプール弁9、出力側プランジャ10、出力側スプール弁11の個数はそれぞれ七個であるがこれに限定されず、複数個であれば同様の効果を奏する。
以下では、図1および図2を用いて本発明の油圧装置における第一のプランジャの実施の一形態である入力側プランジャ8、および本発明の油圧装置における第二のプランジャの実施の一形態である出力側プランジャ10の詳細説明を行う。なお、本実施例においては入力側プランジャ8と出力側プランジャ10とは部品共用化のために同一形状としているが、これに限定されず、入力側プランジャ8と出力側プランジャ10とが異なる形状でも良い。
入力側プランジャ8は、入力軸2の回転駆動力をシリンダブロック7に形成された油圧回路内の作動油の圧力に変換するものである。また、出力側プランジャ10は、シリンダブロック7に形成された油圧回路内の作動油の圧力を出力軸13の回転駆動力に変換するものである。入力側プランジャ8・8・・・は入力側プランジャ孔31・31・・・に収容され、出力側プランジャ10・10・・・は出力側プランジャ孔41・41・・・に収容される。
図2に示す如く、入力側プランジャ8は主にプランジャ部8a、ボール8b、当接盤8c等で構成される。プランジャ部8aは略円筒形状の部材であり、シリンダブロック7の入力側プランジャ孔31に摺接しつつ往復動可能である。ボール8bは略球状の部材であり、略円盤形状の部材である当接盤8cが固設される。当接盤8cはボール8bによりプランジャ部8aの突出端(入力側端面7aより入力側斜板6に向かって突出している側の端部)に揺動可能に連結されるとともに、プランジャ部8aの突出端はボール8bにより閉塞される(より厳密には、ボール8bおよび当接盤8cには潤滑用油路が穿設されており、入力側プランジャ孔31内の作動油は少量ずつ該潤滑用油路から当接盤8cと入力側斜板6との当接面に漏出し、該当接面を潤滑している)。
プランジャ部8aの内部にはバネ押さえ29およびバネ30が収容される。バネ30はその一端がバネ押さえ29と当接し、他端がプランジャ部8aの開口端から突出して入力側プランジャ孔31の壁面に当接している。従って、入力側プランジャ8はバネ30により、シリンダブロック7の入力側端面7aから突出する方向(すなわち、入力側斜板6の斜板面6aに当接盤8cが当接する方向)に付勢されている。
図2に示す如く、出力側プランジャ10は主にプランジャ部10a、ボール10b、当接盤10c等で構成される。プランジャ部10aは略円筒形状の部材であり、シリンダブロック7の出力側プランジャ孔41に摺接しつつ往復動可能である。ボール10bは略球状の部材であり、略円盤形状の部材である当接盤10cが固設される。当接盤10cはボール10bによりプランジャ部10aの突出端(出力側端面7bより出力側斜板12に向かって突出している側の端部)に揺動可能に連結されるとともに、プランジャ部10aの突出端はボール10bにより閉塞される(より厳密には、ボール10bおよび当接盤10cには潤滑用油路が穿設されており、出力側プランジャ孔41内の作動油は少量ずつ該潤滑用油路から当接盤10cと出力側斜板12との当接面に漏出し、該当接面を潤滑している)。
プランジャ部10aの内部にはバネ押さえ29およびバネ30が収容される。バネ30はその一端がバネ押さえ29と当接し、他端がプランジャ部10aの開口端から突出して出力側プランジャ孔41の壁面に当接している。従って、出力側プランジャ10はバネ30により、シリンダブロック7の出力側端面7bから突出する方向(すなわち、出力側斜板12の斜板面12aに当接盤10cが当接する方向)に付勢されている。
以下では、図2および図4を用いて本発明の油圧装置における第一のスプール弁の実施の一形態である入力側スプール弁9、および本発明の油圧装置における第二のスプール弁の実施の一形態である出力側スプール弁11の詳細説明を行う。なお、本実施例においては入力側スプール弁9と出力側スプール弁11とは部品共用化のために同一形状としているが、これに限定されず、入力側スプール弁9と出力側スプール弁11とが異なる形状でも良い。
入力側スプール弁9は、入力側プランジャ8を収容する入力側プランジャ孔31に出入する作動油の流路を切り替えるものである。入力側スプール弁9は外径の異なる略円柱形状の部材を有し、主に拡径部9a、拡径部9b・9b、弁軸部9c・9c、係合部9d等で構成される。拡径部9aおよび拡径部9b・9bは略円柱形状の部位であり、その外径はシリンダブロック7に形成された入力側スプール弁孔32の内径と略同じとなっている。従って、拡径部9aおよび拡径部9b・9bは入力側スプール弁孔32に対して気密的に摺接しつつ往復動することが可能である。拡径部9aは入力側スプール弁9の長手方向(往復動する方向)において中間部(または略中央部)に配置される。また、拡径部9b・9bは入力側スプール弁9の長手方向において両端に位置する。弁軸部9cは拡径部9aおよび拡径部9b・9bよりも外径が小さい略円柱形状の部位であり、拡径部9aと拡径部9b・9bとの間に位置する。係合部9dは一方の拡径部9bから入力側スプール弁9の長手方向に向けて突設される。係合部9dと拡径部9bとの接続部はくびれた形状であり、入力側スプール弁ガイド37に係合する。
入力側スプール弁9は係合部9dがシリンダブロック7の入力側端面7aから突出する向きとなるように、入力側スプール弁孔32に摺動可能に嵌装される。係合部9dに連なる拡径部9bは、入力側スプール弁9が入力側スプール弁孔32内で往復動しても、常に第一の内周溝により形成される入力側油室35と入力側スプール弁孔32とが連通する連絡部よりも入力側端面7a側に位置する。また、係合部9dから遠い方の拡径部9bは、入力側スプール弁9が入力側スプール弁孔32内で往復動しても、常に第二の内周溝により形成される出力側油室45と入力側スプール弁孔32とが連通する連絡部よりも出力側端面7b側に位置する。
さらに、拡径部9aは、入力側プランジャ孔31と入力側スプール弁孔32とを連通する連絡油路(連通孔33)と、入力側スプール弁孔32との合流部36と対応する位置に配置される。このとき、合流部36の内径は拡径部9aの外径よりも大きくなるように構成されており、かつ、入力側スプール弁9の長手方向(往復動する方向)における合流部36の長さと拡径部9aの長さとが略同じに構成される。従って、拡径部9aは、入力側スプール弁9が入力側スプール弁孔32内で摺動することにより、(1)入力側油室35と入力側プランジャ孔31とが遮断されて出力側油室45と入力側プランジャ孔31とが連通される位置と、(2)入力側油室35と出力側油室45と入力側プランジャ孔31とがいずれも遮断される位置と、(3)入力側油室35と入力側プランジャ孔31とが連通されて出力側油室45と入力側プランジャ孔31とが遮断される位置、の計三つの位置をとることが可能である。
なお、入力側スプール弁9の長手方向における合流部36の長さと拡径部9aの長さとの関係は本発明の油圧装置の駆動特性に応じて適宜選択されるものであるため、本実施例の如く、入力側スプール弁9の長手方向における合流部36の長さと拡径部9aの長さとを略同じに構成する場合に限定されない。すなわち、入力側スプール弁9の長手方向において、合流部36を拡径部9aよりも長くしても、短くしても良い。
出力側スプール弁11は、出力側プランジャ10を収容する出力側プランジャ孔41に出入する作動油の流路を切り替えるものである。出力側スプール弁11は外径の異なる略円柱形状の部材を有し、主に拡径部11a、拡径部11b・11b、弁軸部11c・11c、係合部11d等で構成される。拡径部11aおよび拡径部11b・11bは略円柱形状の部位であり、その外径はシリンダブロック7に形成された出力側スプール弁孔42の内径と略同じとなっている。従って、拡径部11aおよび拡径部11b・11bは出力側スプール弁孔42に対して気密的に摺接しつつ往復動することが可能である。拡径部11aは出力側スプール弁11の長手方向(往復動する方向)において中間部(または略中央部)に配置される。また、拡径部11b・11bは出力側スプール弁11の長手方向において両端に位置する。弁軸部11cは拡径部11aおよび拡径部11b・11bよりも外径が小さい略円柱形状の部位であり、拡径部11aと拡径部11b・11bとの間に位置する。係合部11dは一方の拡径部11bから出力側スプール弁11の長手方向に向けて突設される。係合部11dと拡径部9bとの接続部はくびれた形状であり、出力側スプール弁ガイド47に係合する。
出力側スプール弁11は係合部11dがシリンダブロック7の出力側端面7bから突出する向きとなるように、出力側スプール弁孔42に摺動可能に嵌装される。係合部11dに連なる拡径部11bは、出力側スプール弁11が出力側スプール弁孔42内で往復動しても、常に第二の内周溝により形成される出力側油室45と出力側スプール弁孔42とが連通する連絡部よりも出力側端面7b側に位置する。また、係合部11dから遠い方の拡径部11bは、出力側スプール弁11が出力側スプール弁孔42内で往復動しても、常に第一の内周溝により形成される入力側油室35と出力側スプール弁孔42とが連通する連絡部よりも入力側端面7a側に位置する。
さらに、拡径部11aは、出力側プランジャ孔41と出力側スプール弁孔42とを連通する連絡油路(連通孔43)と、出力側スプール弁孔42との合流部46と対応する位置に配置される。このとき、合流部46の内径は拡径部11aの外径よりも大きくなるように構成されており、かつ、出力側スプール弁11の長手方向(往復動する方向)における合流部46の長さと拡径部11aの長さとが略同じに構成される。従って、拡径部11aは、出力側スプール弁11が出力側スプール弁孔42内で摺動することにより、(1)入力側油室35と出力側プランジャ孔41とが遮断されて出力側油室45と出力側プランジャ孔41とが連通される位置と、(2)入力側油室35と出力側油室45と出力側プランジャ孔41とがいずれも遮断される位置と、(3)入力側油室35と出力側プランジャ孔41とが連通されて出力側油室45と出力側プランジャ孔41とが遮断される位置、の計三つの位置をとることが可能である。
なお、出力側スプール弁11の長手方向における合流部46の長さと拡径部11aの長さとの関係は本発明の油圧装置の駆動特性に応じて適宜選択されるものであるため、本実施例の如く、出力側スプール弁11の長手方向における合流部46の長さと拡径部11aの長さとを略同じに構成する場合に限定されない。すなわち、出力側スプール弁11の長手方向において、合流部46を拡径部11aよりも長くしても、短くしても良い。
以下では図1および図2を用いてスペーサ50の詳細説明を行う。スペーサ50は略円筒形状の部材であり、シリンダブロック7よりも出力側斜板12側において入力軸2に外嵌される。スペーサ50の前端面はシリンダブロック7の出力側端面7bに当接し、スペーサ50の後端面は入力軸2に外嵌された出力側円錐コロ軸受51の内輪と当接する。このとき、出力側円錐コロ軸受51の内輪およびスペーサ50は、入力軸2の後端に螺装される出力側軸受締付ナット53により、シリンダブロック7の出力側端面7bを前方に押し付けることとなる。従って、シリンダブロック7の入力側端面7aは入力軸2に設けられた段差に押し付けられ、シリンダブロック7は入力軸2に固定される。
以下では図1を用いて本実施例における第二の回転軸を軸支する軸受部材である出力側軸受ハウジング14の詳細説明を行う。出力側軸受ハウジング14は、中央に出力軸13を貫通する貫通孔が設けられた略円筒形状の部材である胴体部14bの周縁部にフランジ部14aが形成された構成となっている。フランジ部14aには油圧式無段変速装置1をミッションケース等に固定するためのボルト孔が穿設されている。本実施例の場合、フランジ部14aは作業車両の変速機を収納する変速機収納ケース24にボルト締結により固定される。出力側軸受ハウジング14の貫通孔の前端部には玉軸受54が嵌装され、該玉軸受54を介して出力軸13を軸支する。また、出力側軸受ハウジング14の貫通孔の後端部と出力軸13との間にはオイルシール55が介装されるとともに、胴体部14bの外周面と出力側軸受ハウジング14との当接部にはOリングが介装される。このように、出力側ハウジング14の貫通孔と出力軸13との隙間、および出力側軸受ハウジング14と変速機収納ケース24との当接部から変速機収納ケース24の外部に作動油が漏出することを防止するとともに、砂塵等の異物が変速機収納ケース24や油圧式無段変速装置1の内部に侵入することを防止している。
以下では図1を用いて本実施例における第二の回転軸である出力軸13の詳細説明を行う。出力軸13は、入力軸2により油圧式無段変速装置1に伝達された駆動力を、油圧式無段変速装置1にて変速した後、外部に出力するための軸である。出力軸13は胴体部13bとフランジ部13aで構成される。出力軸13は入力軸2の後方に配置され、かつ入力軸2と出力軸13とはその軸線が一直線となるように配置される。胴体部13bは略円柱形状であり、玉軸受54が外嵌されて出力側ハウジング14に回転自在に軸支される。胴体部13bの後端部は出力側ハウジング14の後方に突出している。フランジ部13aは胴体部13bの前端部に設けられた略円盤形状の部材であり、出力側斜板12と連結するためのボルト孔が穿設される。
以下では図1、図2、図7および図8を用いて本実施例における第二の斜板である出力側斜板12の詳細説明を行う。出力側斜板12は、出力側プランジャ10を往復動させる力(すなわち、シリンダブロック7内に形成された油圧回路内の作動油の圧力)を出力軸13の回転駆動力に変換するものである。出力側斜板12は入力軸2(厳密には入力軸2に外嵌されたスペーサ50)が貫通する貫通孔が設けられた略円筒形状の部材であり、その前部には斜板面12aが設けられている。斜板面12aは平面であり、斜板面12aには出力側プランジャ10の突出端(当接盤10c)が当接する。斜板面12aは入力軸2の軸線に対して所定の傾斜角(斜板面12aと入力軸2の軸線とが成す角度)を成している。出力側斜板12の後端は出力軸13のフランジ部13aにボルト締結により固定され、出力側斜板12と出力軸13とは一体的に回転する。なお、出力側斜板12の貫通孔後端には出力側円錐コロ軸受51の外輪が嵌設され、出力側斜板12の貫通孔とスペーサ50との間には出力側針状コロ軸受52が介装されるので、出力側斜板12は入力軸2と相対回転可能である。
以下では、図1、図2、図5、図6、図7および図8を用いて本発明の油圧装置の第一実施例におけるスプール弁ガイドである入力側スプール弁ガイド37および出力側スプール弁ガイド47の詳細説明を行う。なお、本実施例においては入力側スプール弁ガイド37と出力側スプール弁ガイド47とは部品共用化のため同一形状であるが、これに限定されず、入力側スプール弁ガイド37と出力側スプール弁ガイド47とが異なる形状でも良い。
入力側スプール弁ガイド37は略円筒形状の部材の外周面や内周面に種々の機械加工を施して形成され、入力軸2(シリンダブロック7)の回転と連携して入力側スプール弁9・9・・・を往復動させるものである。入力側スプール弁ガイド37は、入力軸2に遊嵌されるとともに、第一の回転軸である入力軸2を軸支する軸受部材である入力側軸受ハウジング4の胴体部4bの後端部と、シリンダブロック7の入力側端面7aとの間に介装される。入力側スプール弁ガイド37と入力側軸受ハウジング4とが当接する面において、入力側スプール弁ガイド37には凹部37a・37a、胴体部4bの後端面には凸部4c・4cが形成されている。該凹部37a・37aと凸部4c・4cとが係合することにより、入力側スプール弁ガイド37は入力軸2に対して相対回転不能となる。また、凸部4c・4cおよび凹部37a・37aは略台形形状を成し、入力軸2の軸線に対して傾斜した(入力軸2の軸線に直交する面とは平行でない)面を有している。入力軸2およびシリンダブロック7の回転に伴い入力側スプール弁ガイド37が回転しようとすると、凸部4c・4cおよび凹部37a・37aが有する入力軸2の軸線に対して傾斜した面同士の当接により、入力側スプール弁ガイド37をシリンダブロック7の入力側端面7aに当接する方向に押し付ける力が発生する。従って、油圧式無段変速装置1の作動時(入力軸2の回転時)において、入力側スプール弁ガイド37がシリンダブロック7と連れ回りすることを防止できるとともに、入力側スプール弁ガイド37が常にシリンダブロック7の入力側端面7aに押し付けられているので、入力側スプール弁ガイド37に形成されたガイド溝37bと入力側端面7aとの距離が精度良く保持される。なお、入力側スプール弁ガイド37に凸部を形成し、軸受ハウジング4に凹部を形成しても略同様の効果を奏する。
入力側スプール弁ガイド37の外周面にはリング状にガイド溝37bが形成される。該ガイド溝37bを通る仮想平面は、入力側スプール弁ガイド37の軸線(入力軸2の軸線に略一致)に対して直交せず、傾斜している。従って、ガイド溝37bは、入力側スプール弁ガイド37の外周面における位置により、シリンダブロック7と当接する面である当接面37cとの距離が変化する。なお、当接面37cは入力軸2の軸線に直交する。入力側保持部材38は略リング状の部材であり、入力側スプール弁ガイド37のガイド溝37bに回転可能に遊嵌される。入力側保持部材38の外縁部には入力側スプール弁9・9・・・の個数に対応する数の保持溝38a・38a・・・が形成される。保持溝38a・38a・・・には入力側スプール弁9・9・・・の係合部9d・9d・・・が係合される。入力側保持部材押さえ39は、入力側保持部材38が入力側スプール弁ガイド37のガイド溝37bから脱落しないように押さえる略リング状の部材である。
入力側スプール弁ガイド37の内周面には周方向に作動油溝37dが形成され、該作動油溝37dに溜まった作動油を当接面37cとシリンダブロック7の入力側端面7aとの当接部位に供給して潤滑させるための供給溝37e・37e・・・が設けられている。また、作動油溝37dとガイド溝37bとを連通する作動油孔37f・37fが穿設され、該作動油孔37f・37fにより作動油溝37dに溜まった作動油がガイド溝37b、入力側保持部材38、入力側保持部材押さえ39および入力側スプール弁9・9・・・の当接部位を潤滑し、摩耗を防止して各部材の寸法精度を保持している。
入力軸2が変速機収納ケース24に固定されている入力側軸受ハウジング4に対して一回転すると、シリンダブロック7も入力側軸受ハウジング4に対して一回転する。従って、入力側保持部材38によりガイド溝37bに係合している入力側スプール弁9・9・・・は、入力側スプール弁ガイド37の外周面をガイド溝37bに沿って一周する。このとき、ガイド溝37bが成す仮想平面は入力軸2の軸線に直交する面に対して平行ではなく、傾斜しているため、入力側スプール弁9・9・・・は入力軸2の軸線方向に一回往復動することとなる。
入力側スプール弁ガイド37のうち、入力側スプール弁9・9・・・の往復動(突出量)の精度を保持するために特に高い寸法精度(または平面度)が求められる部位は、シリンダブロック7の入力側端面7aと当接する当接面37c、入力側スプール弁9・9・・・の係合部9d・9d・・・が係合する入力側保持部材38が遊嵌されるガイド溝37bのみであり、製造コストの削減に寄与する。そして、往復動精度に関連する部材点数を削減可能であることから、各部材の加工誤差の累積を削減する(すなわち、往復動精度を向上する)ことも可能となる。
出力側スプール弁ガイド47は略円筒形状の部材の外周面や内周面に種々の機械加工を施して形成され、入力軸2(シリンダブロック7)と、出力軸13との相対的な回転に連動して出力側スプール弁11・11・・・を往復動させるものである。出力側スプール弁ガイド47は、入力軸2と一体的に回転するスペーサ50の外周面前端部に遊嵌されるとともに、第二の回転軸である出力軸13と一体的に回転する部材である出力側斜板12の前端部に形成された当接面12bと、シリンダブロック7の出力側端面7bとの間に介装される。出力側スプール弁ガイド47と出力側斜板12とが当接する面において、出力側スプール弁ガイド47には凹部47a・47a、出力側斜板12の前端部に形成された当接面12bには凸部12c・12cが形成されている。該凹部47a・47aと凸部12c・12cとが係合することにより、出力側スプール弁ガイド47は出力側斜板12に対して相対回転不能となり、出力側斜板12と一体的に回転する。また、凸部12c・12cおよび凹部47a・47aは略台形形状を成し、入力軸2の軸線に対して傾斜した(入力軸2の軸線に直交する面とは平行でない)面を有している。入力軸2およびシリンダブロック7の回転に伴い出力側スプール弁ガイド47が出力側斜板12に対して相対的に回転しようとすると、凸部12c・12cおよび凹部47a・47aが有する入力軸2の軸線に対して傾斜した面同士の当接により、出力側スプール弁ガイド47をシリンダブロック7の出力側端面7bに当接する方向に押し付ける力が発生する。従って、油圧式無段変速装置1の作動時(入力軸2および出力軸13の回転時)において、出力側スプール弁ガイド47がシリンダブロック7と連れ回りすることを防止できるとともに、出力側スプール弁ガイド47が常にシリンダブロック7の出力側端面7bに押し付けられているので、出力側スプール弁ガイド47に形成されたガイド溝47bと出力側端面7bとの距離が精度良く保持される。なお、出力側スプール弁ガイド47に凸部を形成し、出力側斜板12に凹部を形成しても略同様の効果を奏する。
出力側スプール弁ガイド47の外周面にはリング状にガイド溝47bが形成される。該ガイド溝47bを通る仮想平面は、出力側スプール弁ガイド47の軸線(入力軸2の軸線に略一致)に対して直交せず、傾斜している。従って、ガイド溝47bは、出力側スプール弁ガイド47の外周面における位置により、シリンダブロック7と当接する面である当接面47cとの距離が変化する。なお、当接面47cは入力軸2の軸線に直交する。出力側保持部材48は略リング状の部材であり、出力側スプール弁ガイド47のガイド溝47bに回転可能に遊嵌される。出力側保持部材48の外縁部には出力側スプール弁11・11・・・の個数に対応する数の保持溝48a・48a・・・が形成される。保持溝48a・48a・・・には出力側スプール弁11・11・・・の係合部11d・11d・・・が係合される。出力側保持部材押さえ49は、出力側保持部材48が出力側スプール弁ガイド47のガイド溝47bから脱落しないように押さえる略リング状の部材である。
出力側スプール弁ガイド47の内周面には周方向に作動油溝47dが形成され、該作動油溝47dに溜まった作動油を当接面47cとシリンダブロック7の出力側端面7bとの当接部位に供給して潤滑させるための供給溝47e・47e・・・が設けられている。また、作動油溝47dとガイド溝47bとを連通する作動油孔47f・47fが穿設され、該作動油孔47f・47fにより作動油溝47dに溜まった作動油がガイド溝47b、出力側保持部材48、出力側保持部材押さえ49および出力側スプール弁11・11・・・の当接部位を潤滑し、摩耗を防止して各部材の寸法精度を保持している。
出力軸13が入力軸2に対して相対的に一回転すると、出力側保持部材48によりガイド溝47bに係合している出力側スプール弁11・11・・・は、出力軸13に対して相対回転不能な出力側スプール弁ガイド47の外周面をガイド溝47bに沿って一周する。このとき、ガイド溝47bが成す仮想平面は入力軸2の軸線に直交する面に対して平行ではなく、傾斜しているため、出力側スプール弁11・11・・・は入力軸2の軸線方向に一回往復動することとなる。
出力側スプール弁ガイド47のうち、出力側スプール弁11・11・・・の往復動(突出量)の精度を保持するために特に高い寸法精度(または平面度)が求められる部位は、シリンダブロック7の出力側端面7bと当接する当接面47c、出力側スプール弁11・11・・・の係合部11d・11d・・・が係合する出力側保持部材48が遊嵌されるガイド溝47bのみであり、製造コストの削減に寄与する。そして、往復動精度に関連する部材点数を削減可能であることから、各部材の加工誤差の累積を削減する(すなわち、往復動精度を向上する)ことも可能となる。
以下では図1および図2を用いてチャージ回路の詳細説明を行う。チャージ回路は、油圧式無段変速装置1の外部に設けられた油圧ポンプ(図示せず)から圧送されてきた作動油を、シリンダブロック7内の油圧閉回路に補充するとともに、油圧式無段変速装置1の各部材同士の当接箇所を潤滑する。
入力側軸受ハウジング4のフランジ部4aの前面には差込孔70が穿設され、該差込孔70には油圧ポンプ(図示せず)とチャージ回路とを連通する油圧配管が接続される。差込孔70は入力側軸受ハウジング4のフランジ部4aの後面まで貫通しており、該フランジ部4aの後面と当接する斜板保持部材5の取付部5aに穿設された連絡孔71の一端と連通している。連絡孔71の他端は斜板保持部材5の取付部5aの内周面に向けて開口しており、該取付部5aの内周面と当接する軸受ハウジング4の胴体部4bに穿設された連絡孔72の一端と連通している。連絡孔72の他端は、胴体部4bの貫通孔の内周面に連通している。
また、連絡孔72は中途部にて前後に分岐しており、前方に分岐した油路により入力側円錐コロ軸受21に作動油が供給されて潤滑が行われる。入力側円錐コロ軸受21を潤滑した後の作動油は、入力側軸受ハウジング4に穿設された戻り油路73を経て変速機収納ケース24内に戻される。一方、連絡孔72は中途部にて後方に分岐した油路により、入力側針状コロ軸受22に作動油が供給されて潤滑が行われる。そして、入力軸2の供給孔2bと連通する図示せぬ油孔により、入力軸2の外周面と入力側スプール弁ガイド37の内周面との間に作動油が供給されて潤滑が行われる。入力側針状コロ軸受22および入力側スプール弁ガイド37を潤滑した後の作動油は、変速機収納ケース24内に戻される。
胴体部4bの貫通孔の内周面に連通している連絡孔72の他端と対面する位置において、入力軸2にはリング状の導入溝73が形成される。
入力軸2には、その前端面の中心から軸線方向に供給孔2bが穿設される。該供給孔2bの後端は出力側円錐コロ軸受51の内輪の前端部と対応する位置であり、該供給孔2bの後端と入力軸2の外周面とを連通する油路2cが穿設される。供給孔2bの前端はシールプラグ76により閉塞される。また、入力軸2には導入溝73と供給孔2bとを連通する連絡孔77が穿設されている。
入力軸2には、供給孔2bと入力側油室35とを連通する入力側連絡孔78が穿設されるとともに、該連絡孔78の中途部には入力側逆止弁79が設けられる。また、入力軸2には、供給孔2bと出力側油室45とを連通する出力側連絡孔80が穿設されるとともに、該連絡孔80の中途部には入力側逆止弁81が設けられる。入力側逆止弁79は、入力側油室35から供給孔2bへの作動油の逆流を防止するものであり、出力側逆止弁81は、出力側油室45から供給孔2bへの作動油の逆流を防止するものである。なお、出力側油室45は入力軸2に形成されたスプライン部(シリンダブロック7とスプライン嵌合する部位)と重なっており、該スプライン部に出力側油室45内の作動油の一部が漏出して潤滑が行われる。
前記油路2cは、スペーサ50の後端面に形成された油路50aと連通している。従って、油路50aにより出力側針状コロ軸受52および出力側スプール弁ガイド47に作動油が供給されて潤滑が行われる。また、スペーサ50を貫通して入力軸2の供給孔2bと連通する図示せぬ油孔により、スペーサ50の外周面と出力側スプール弁ガイド47の内周面との間に作動油が供給されて潤滑が行われる。出力側針状コロ軸受52および出力側スプール弁ガイド47を潤滑した後の作動油は、変速機収納ケース24内に戻される。また、油路50aにより出力側円錐コロ軸受51に作動油が供給されて潤滑が行われる。出力側円錐コロ軸受51を潤滑した後の作動油は、出力軸13に穿設された戻り油路13c・13cを経て玉軸受54に供給されて玉軸受54を潤滑し、変速機収納ケース24内に戻される。
以上の如く、油圧式無段変速装置1の外部に設けられた油圧ポンプ(図示せず)から差込孔70、連絡孔71、連絡孔72、導入溝73、連絡孔77、供給孔2bを経て、入力側連絡孔78または出力側連絡孔80からシリンダブロック7内の油圧閉回路に作動油(の不足分)が供給される。
なお、チャージ回路の構成は本実施例に限定されず、作動油をシリンダブロック7内の油圧閉回路に補充するとともに、油圧式無段変速装置1の各部材同士の当接箇所に供給可能であればよい。
以下では図1および図2を用いて、本実施例の油圧式無段変速装置1の組立方法について説明する。まず、シリンダブロック7の入力側端面7aが入力軸2中途部に設けられた段差に当接するまでシリンダブロック7を入力軸2にその後端部より貫装する。このとき、シリンダブロック7と入力軸2とはスプライン嵌合している。次に、スペーサ50を入力軸2にその後端部より貫装し、前記出力側スプール弁ガイド47をスペーサ50に遊嵌する。続いて、出力側スプール弁ガイド47に出力側保持部材48および出力側保持部材押さえ49を取り付け、出力側保持部材48の保持溝48a・48a・・・に出力側スプール弁11・11・・・の係合部11d・11d・・・を係合した状態で出力側スプール弁11・11・・・を出力側スプール弁孔42・42・・・に収容する。また、出力側プランジャ10・10・・・をバネ押さえ29・29・・・およびバネ30・30・・・とともに出力側プランジャ孔41・41・・・に収容する。
そして、出力側針状軸受52および出力側円錐コロ軸受51の外輪を出力側斜板12に嵌装した後、スペーサ50の外周に挿入し、出力側円錐コロ軸受51の内輪をスペーサ50の後端面に当接させつつ嵌装して、出力側軸受締付ナット53にて締結する。
続いて、入力側スプール弁ガイド37に入力側保持部材38および入力側保持部材押さえ39を取り付け、入力側保持部材38の保持溝38a・38a・・・に入力側スプール弁9・9・・・の係合部9d・9d・・・を係合した状態で入力側スプール弁9・9・・・を入力側スプール弁孔32・32・・・に収容する。また、入力側プランジャ8・8・・・をバネ押さえ29・29・・・およびバネ30・30・・・とともに入力側プランジャ孔31・31・・・に収容する。
次に、入力側軸受ハウジング4に予め斜板保持部材5、入力側針状コロ軸受22を取り付け、入力側斜板6を入力側プランジャ8・8・・・に当接させた状態で、入力側軸受ハウジング4を入力軸2の前端部から入力軸2に貫装する。このとき、入力側斜板6の保持部6b・6bを、斜板保持部材5の保持部5b・5bに回動可能に嵌合させる。なお、予め入力側斜板6の保持部6b・6bを、斜板保持部材5の保持部5b・5bに回動可能に嵌合させてから、斜板保持部材5および入力側針状コロ軸受22が取り付けられた入力側軸受ハウジング4を入力軸2の前端部から入力軸2に貫装してもよい。
続いて、入力側円錐コロ軸受21の外輪を入力側軸受ハウジング4に嵌装し、入力側円錐コロ軸受21の内輪を入力軸2の外周面に設けられた段差に係合するまで外嵌し、入力側軸受締付ナット23にて締結する。さらに、入力側ハウジングフタ3を入力軸2の前端側から貫装しつつ入力側軸受ハウジング4に当接させ、オイルシール25および止め輪26を介装した後に入力側ハウジングフタ3と入力側軸受ハウジング4とをボルト締結する。
最後に、出力側軸受ハウジング14に玉軸受54を介して予め貫装された出力軸13と、出力側斜板12とをボルト締結する。
以上の如く、本実施例の油圧式無段変速装置1においては、入力側プランジャ8・8・・・により発生する入力軸2の軸線方向に働く力は、入力側斜板6および入力側円錐コロ軸受21を経て入力軸2にのみ伝達される。また、出力側プランジャ10・10・・・により発生する入力軸2の軸線方向に働く力は、出力側斜板12および出力側円錐コロ軸受51を経て入力軸2にのみ伝達される。このように構成することにより、入力側プランジャ8・8・・・および出力側プランジャ10・10・・・により入力軸2の軸線方向に発生する力は油圧式無段変速装置1が取り付けられるミッションケース等の起振源とならないので、騒音が低減される。
以下では図2、図3、図9、図10、図11および図12を用いて油圧式無段変速装置1の油圧閉回路および該油圧閉回路内の作動油による変速のメカニズムについて詳細説明する。図2および図3に示す如く、油圧式無段変速装置1のシリンダブロック7内には、入力側プランジャ孔31、入力側スプール弁孔32、連通孔33、入力側油室35、合流部36、出力側プランジャ孔41、出力側スプール弁孔42、連通孔43、出力側油室45、合流部46等で構成される油圧閉回路が形成されている。入力側プランジャ孔31は、連通孔33、入力側スプール弁孔32を経て入力側油室35および出力側油室45と連通し、出力側プランジャ孔41は、連通孔43、出力側スプール弁孔42を経て入力側油室35および出力側油室45と連通していることから、該油圧閉回路は入力側プランジャ孔31と出力側プランジャ孔41とを連通するものである。
なお、以下の説明では、本実施例の油圧式無段変速装置1は、入力軸2の前方から軸線方向に見て時計回りに回転(右回転)する場合を「正転」とし、入力側斜板6は上下に回動(入力側斜板6の斜板面6aの垂線が入力軸2の軸線に対して上下に傾斜角を変更)するものとする。また、説明の便宜上、入力軸2は略一定の回転数で正転しているものとする(Nin>0)。
また、入力側プランジャ8および出力側プランジャ10のシリンダブロック7からの突出量は、該プランジャがシリンダブロック7から突出する側を「正」、シリンダブロック7に没入する側を「負」とする。入力側スプール弁9および出力側スプール弁11のシリンダブロック7からの突出量は、該スプール弁が入力側油室35および出力側油室45の両方を閉塞する位置(中立位置)をゼロとしてシリンダブロック7から突出する側を「正」、シリンダブロック7に没入する側を「負」とする。図9および図10に示す如く、入力側スプール弁9のシリンダブロック7からの突出量が最も大きくなる位置(入力側スプール弁9の上死点102)は、入力軸2の前方から軸線方向に見て油圧式無段変速装置1の右側方とし、入力側スプール弁9のシリンダブロック7からの突出量が最も小さくなる位置(入力側スプール弁9の下死点112)は、入力軸2の前方から軸線方向に見て油圧式無段変速装置1の左側方とする。出力側スプール弁11のシリンダブロック7からの突出量が最も大きくなる位置(出力側スプール弁11の上死点104)は、入力軸2の前方から軸線方向に見て、出力側斜板12の斜板面12aがシリンダブロック7から最も遠くなる位置(出力側プランジャ10がシリンダブロック7から最も突出している位置)から反時計回り(左回り)に90度回転した位置とする。出力側スプール弁11のシリンダブロック7からの突出量が最も小さくなる位置(出力側スプール弁11の下死点114)は、入力軸2の前方から軸線方向に見て、出力側斜板12の斜板面12aがシリンダブロック7から最も近くなる位置(出力側プランジャ10がシリンダブロック7から最も突出している位置)から時計回り(右回り)に90度回転した位置とする。
以下では図9を用いて「増速操作」(入力軸2の回転数をNin、出力軸13の回転数をNoutとして、|Nin|<|Nout|となるように変速操作すること)時における油圧閉回路内の作動油の流れを詳細説明する。増速操作時には、入力側プランジャ8の上死点101が、油圧式無段変速装置1の上方に来るように入力側斜板6が回動されている。
図9の(a)は、入力軸2の前方から軸線方向に見た時の、入力側プランジャ8の突出量および入力側スプール弁9の突出量の位置関係と、入力側斜板6に対するシリンダブロック7(入力軸2)の回転方向と、入力側プランジャ8に係る油圧閉回路の作動油の流れとを模式的に表したものである。
入力側プランジャ8が下死点111から上死点101に向かって回転しているとき(図9(a)において太い点線の矢印で表され、入力側プランジャ8がシリンダブロック7から突出するとき)は、入力側スプール弁9は入力側スプール弁9の下死点112側に移動している。従って、入力側プランジャ孔31と入力側油室35とが連通し、入力側油室35から入力側プランジャ孔31に作動油が流入する。
入力側プランジャ8が上死点101から下死点111に向かって回転しているとき(図9(a)において太い実線の矢印で表され、入力側プランジャ8がシリンダブロック7に没入するとき)は、入力側スプール弁9は入力側スプール弁9の上死点102側に移動している。従って、入力側プランジャ孔31と出力側油室45とが連通し、入力側プランジャ孔31から出力側油室45に作動油を排出する。
図11を用いて説明すると、作動油を排出中の入力側プランジャ孔31に対応する入力側スプール弁9は(B)、(C)、(D)に位置するものであり、作動油が流入中の入力側プランジャ孔31に対応する入力側スプール弁9は(E)、(F)、(G)に位置するものである。なお、(A)に位置する入力側スプール弁9はちょうど中立位置にあり、該入力側スプール弁9に対応する入力側プランジャ孔31は油圧閉回路から遮断された状態である。
以上の如く、増速操作時には、入力側プランジャ8に係る閉油圧回路は入力側油室35から一部の入力側プランジャ孔31に作動油が流入するとともに、他の入力側プランジャ孔31から出力側油室45に作動油を排出する。
図9の(b)は、入力軸2の前方から軸線方向に見た時の、出力側プランジャ10の突出量および出力側スプール弁11の突出量の位置関係と、出力側斜板12に対するシリンダブロック7(入力軸2)の回転方向と、出力側プランジャ10に係る油圧閉回路の作動油の流れとを表したものである。なお、増速操作時には、出力軸13は入力軸2と同じ回転方向、かつ回転数が大きい(|Nin|<|Nout|)ので、出力側斜板12を基準とすると、シリンダブロック7は相対的には逆転(反時計回りに回転)しているように見える。
出力側プランジャ10が下死点113から上死点103に向かって回転しているとき(図9(b)において太い点線の矢印で表され、出力側プランジャ10がシリンダブロック7から突出するとき)は、出力側スプール弁11は出力側スプール弁11の下死点114側に移動している。従って、出力側プランジャ孔41と出力側油室45とが連通し、出力側油室45から出力側プランジャ孔41に向かって作動油が流入する。
出力側プランジャ10が上死点103から下死点113に向かって回転しているとき(図9(b)において太い実線の矢印で表され、出力側プランジャ10がシリンダブロック7に没入するとき)は、出力側スプール弁11は出力側スプール弁11の上死点104側に移動している。従って、出力側プランジャ孔41と入力側油室35とが連通し、出力側プランジャ孔41から入力側油室35に向かって作動油を排出する。
図11を用いて説明すると、作動油を排出中の出力側プランジャ孔41に対応する出力側スプール弁11は(ii)、(iii)、(iv)に位置するものであり、作動油が流入中の出力側プランジャ孔41に対応する出力側スプール弁11は(v)、(vi)、(vii)に位置するものである。なお、(i)に位置する出力側スプール弁11はちょうど中立位置にあり、該出力側スプール弁11に対応する出力側プランジャ孔41は油圧閉回路から遮断された状態である。
以上の如く、増速操作時には、出力側プランジャ10に係る閉油圧回路は、出力側油室45から一部の出力側プランジャ孔41に作動油が流入するとともに、他の出力側プランジャ孔41から入力側油室35に作動油を排出する。従って、増速操作時には、シリンダブロック7内の油圧閉回路内において、図12に示す如く、入力側油圧装置56→入力側油室35→出力側油圧装置57→出力側油室45→入力側油圧装置56という作動油の流れ(より厳密には、入力側プランジャ孔31→連通孔33→合流部36→入力側スプール弁孔32→入力側油室35→出力側スプール弁孔42→連通孔42→出力側プランジャ孔41という作動油の流れと、出力側プランジャ孔41→連通孔42→出力側スプール弁孔42→出力側油室45→入力側スプール弁孔32→合流部36→連通孔33→入力側プランジャ孔31という作動油の流れとを合わせたもの)が生じている。なお、入力側油圧装置56は入力側プランジャ8・8・・・、入力側スプール弁9・9・・・およびこれらを往復動させる機構を指し、出力側油圧装置57は出力側プランジャ10・10・・・、入力側スプール弁11・11・・・およびこれらを往復動させる機構を指す。
以下では図10を用いて「減速操作」(入力軸2の回転数をNin、出力軸13の回転数をNoutとして、|Nin|>|Nout|となるように変速操作すること)時における油圧閉回路内の作動油の流れを詳細説明する。減速操作時には、入力側プランジャ8の上死点101が、油圧式無段変速装置1の下方に来るように入力側斜板6が回動されている。
図10の(a)は、入力軸2の前方から軸線方向に見た時の、入力側プランジャ8の突出量および入力側スプール弁9の突出量の位置関係と、入力側斜板6に対するシリンダブロック7(入力軸2)の回転方向と、入力側プランジャ8に係る油圧閉回路の作動油の流れとを模式的に表したものである。
入力側プランジャ8が下死点111から上死点101に向かって回転しているとき(図10(a)において太い点線の矢印で表され、入力側プランジャ8がシリンダブロック7から突出するとき)は、入力側スプール弁9は入力側スプール弁9の上死点102側に移動している。従って、入力側プランジャ孔31と出力側油室45とが連通し、出力側油室45から入力側プランジャ孔31に作動油が流入する。
入力側プランジャ8が上死点101から下死点111に向かって回転しているとき(図10(a)において太い実線の矢印で表され、入力側プランジャ8がシリンダブロック7に没入するとき)は、入力側スプール弁9は入力側スプール弁9の下死点112側に移動している。従って、入力側プランジャ孔31と入力側油室35とが連通し、入力側プランジャ孔31から入力側油室35に作動油を排出する。
図11を用いて説明すると、作動油を排出中の入力側プランジャ孔31に対応する入力側スプール弁9は(E)、(F)、(G)に位置するものであり、作動油が流入中の入力側プランジャ孔31に対応する入力側スプール弁9は(B)、(C)、(D)に位置するものである。なお、(A)に位置する入力側スプール弁9はちょうど中立位置にあり、該入力側スプール弁9に対応する入力側プランジャ孔31は油圧閉回路から遮断された状態である。
以上の如く、減速操作時には、入力側プランジャ8に係る閉油圧回路は出力側油室45から一部の入力側プランジャ孔31に作動油が流入するとともに、他の入力側プランジャ孔31から入力側油室35に作動油を排出する。
図10の(b)は、入力軸2の前方から軸線方向に見た時の、出力側プランジャ10の突出量および出力側スプール弁11の突出量の位置関係と、出力側斜板12に対するシリンダブロック7(入力軸2)の回転方向と、出力側プランジャ10に係る油圧閉回路の作動油の流れとを表したものである。なお、減速操作時には、出力軸13は入力軸2と同じ回転方向、かつ回転数が小さい(|Nin|>|Nout|)ので、出力側斜板12を基準とすると、シリンダブロック7は相対的には正転(時計回りに回転)しているように見える。
出力側プランジャ10が下死点113から上死点103に向かって回転しているとき(図10(b)において太い点線の矢印で表され、出力側プランジャ10がシリンダブロック7から突出するとき)は、出力側スプール弁11は出力側スプール弁11の上死点104側に移動している。従って、出力側プランジャ孔41と入力側油室35とが連通し、入力側油室35から出力側プランジャ孔41に向かって作動油が流入する。
出力側プランジャ10が上死点103から下死点113に向かって回転しているとき(図10(b)において太い実線の矢印で表され、出力側プランジャ10がシリンダブロック7に没入するとき)は、出力側スプール弁11は出力側スプール弁11の下死点114側に移動している。従って、出力側プランジャ孔41と出力側油室45とが連通し、出力側プランジャ孔41から出力側油室45に向かって作動油を排出する。
図11を用いて説明すると、作動油を排出中の出力側プランジャ孔41に対応する出力側スプール弁11は(v)、(vi)、(vii)に位置するものであり、作動油が流入中の出力側プランジャ孔41に対応する出力側スプール弁11は(ii)、(iii)、(iv)に位置するものである。なお、(i)に位置する出力側スプール弁11はちょうど中立位置にあり、該出力側スプール弁11に対応する出力側プランジャ孔41は油圧閉回路から遮断された状態である。
以上の如く、減速操作時には、出力側プランジャ10に係る閉油圧回路は、入力側油室35から一部の出力側プランジャ孔41に作動油が流入するとともに、他の出力側プランジャ孔41から出力側油室45に作動油を排出する。従って、減速操作時には、シリンダブロック7内の油圧閉回路内において、図12に示す如く、入力側油圧装置56→出力側油室45→出力側油圧装置57→入力側油室35→入力側油圧装置56という作動油の流れ(より厳密には、入力側プランジャ孔31→連通孔33→合流部36→入力側スプール弁孔32→出力側油室45→出力側スプール弁孔42→連通孔42→出力側プランジャ孔41という作動油の流れと、出力側プランジャ孔41→連通孔42→出力側スプール弁孔42→入力側油室35→入力側スプール弁孔32→合流部36→連通孔33→入力側プランジャ孔31という作動油の流れとを合わせたもの)が生じている。
以下では、図2および図12を用いて「等速操作」(入力軸2の回転数をNin、出力軸13の回転数をNoutとして、|Nin|=|Nout|となるように変速操作すること)時における油圧閉回路内の作動油の流れを詳細説明する。等速操作時には、入力側斜板6の斜板面6aと入力側端面7aとが平行となる(入力側斜板6の斜板面6aが入力軸2の軸線と直交する)ように入力側斜板6が回動されている。このとき、入力側プランジャ8は、シリンダブロック7が斜板6に対して相対的に回転しても往復動しないので、入力側プランジャ8による作動油の流れが生じない。すなわち、図12において、油圧回路内の作動油の循環が停止した状態となる。
等速操作時に出力軸13がシリンダブロック7に対して増速回転しようとしても、作動油の循環が停止しているため、該作動油を排出しようとする出力側プランジャ10は軸線方向に移動不能である。同様に、出力軸13がシリンダブロック7に対して減速回転しようとしても、作動油の循環が停止しているため、該作動油を排出しようとする出力側プランジャ10は軸線方向に移動不能である。従って、等速操作時において出力軸13はシリンダブロック7に対して相対的に回転することができず、入力軸2と出力軸13とは一体的に(同方向に同回転数で)回転する。
以下では、図12および図13を用いて油圧式無段変速装置1の変速作用について説明する。本発明の油圧式無段変速装置1は、入力側斜板6が取り得る斜板面6aの傾斜角の範囲で、入力軸2の回転数に対する出力軸13の回転数の比(=Nout/Nin)を無段階に変更する(無段変速)ことが可能である。なお、図13中の通常のHSTとは、略同じ構成の油圧ポンプ(入力側油圧装置)と油圧モータ(出力側油圧装置)が一対となったHST(Hydro Static Transmission)を指すものとする。また、該「通常のHST」は、油圧モータ側の斜板が所定の傾斜角度を有する固定式であり、油圧ポンプ側の斜板の傾斜角度を該油圧モータの斜板の傾斜角と同じ絶対値で正負の値に変更可能とする。
通常のHSTの場合、出力軸の回転数Noutは、入力軸の回転数Nin、入力側油圧装置の行程容積Vin、出力側油圧装置の行程容積Voutを用いて、以下の(式1)で表される。
Nout=Nin×(Vin/Vout) (式1)
なお、(式1)中における入力軸の回転数Ninは、通常のHSTがエンジン等の駆動源に回転方向を正逆変換する機構を介さずに接続されている場合にはゼロまたは正の値を取る。入力側油圧装置の行程容積Vinは入力軸が一回転したときに入力側油圧装置から出力側油圧装置に圧送される作動油の体積、出力側油圧装置の行程容積Voutは出力軸が一回転したときに出力側油圧装置から入力側油圧装置に圧送される作動油の体積である。また、入力側油圧装置の行程容積Vinは入力側の斜板の傾斜角により変化し、かつ油圧回路内の圧送方向により正または負の値を取り得るのに対して、出力側油圧装置の行程容積Voutは出力側の斜板の傾斜角が所定値に固定されていることから正の定数となっている。
上記(式1)に示す如く、通常のHSTの入力側油圧装置の行程容積Vinがゼロの時、すなわち、入力側油圧装置の斜板の傾斜角がシリンダブロックの回転軸の軸線と直交し、入力側油圧装置が回転しても作動油が圧送されない状態の時には、出力側油圧装置の出力軸の回転数Noutもゼロである。通常のHSTの入力側油圧装置の斜板を正転側に(入力軸の回転方向と出力軸の回転方向とが同方向となるように)傾斜させて、正の値を取りつつ行程容積Vinの絶対値を増大させると、出力軸の回転数Noutは、該行程容積Vinに比例して正の値を取りつつその絶対値が増大する。また、通常のHSTの入力側油圧装置の斜板を逆転側に(入力軸の回転方向と出力軸の回転方向とが逆方向となるように)傾斜させて、負の値を取りつつ行程容積Vinの絶対値を増大させると、出力軸の回転数Noutは、該行程容積Vinに比例して負の値を取りつつその絶対値が増大する。従って、通常のHSTにおける出力軸の回転数Noutは、入力軸の回転数をNinとして、―Nin≦Nout≦Ninの値を取り得る(図13中の太い点線)。
一方、本実施例の油圧式無段変速装置1の場合、出力軸13の回転数Noutは、入力軸2の回転数Nin、シリンダブロック7に対する出力軸13の相対的な回転数Nr、入力側油圧装置56の行程容積Vin、出力側油圧装置57の行程容積Voutを用いて、以下の(式2)、(式3)および(式4)で表される。
Nout=Nin+Nr (式2)
Nr=Nin×(Vin/Vout) (式3)
Nout=Nin×(1+Vin/Vout) (式4)
なお、(式2)、(式3)および(式4)中における入力軸2の回転数Ninは、油圧式無段変速装置1がエンジン等の駆動源に回転方向を正逆変換する機構を介さずに接続されている場合にはゼロまたは正の値を取る。シリンダブロック7に対する出力軸13の相対的な回転数Nrは、シリンダブロック7に対して出力軸13が正転しているときは正の値、逆転しているときには負の値を取るものとする。入力側油圧装置56の行程容積Vinは入力軸2が一回転したときに入力側油圧装置56から出力側油圧装置57に圧送される作動油の体積、出力側油圧装置57の行程容積Voutは出力軸13がシリンダブロック7に対して相対的に一回転したときに出力側油圧装置56から入力側油圧装置に圧送される作動油の体積である。また、入力側油圧装置56の行程容積Vinは入力側斜板6の傾斜角により変化し、かつ油圧回路内の圧送方向により正または負の値を取り得るのに対して、出力側油圧装置57の行程容積Voutは出力側斜板12の傾斜角が所定値に固定されていることから正の定数となっている。さらに、出力側斜板12の傾斜角と、入力側斜板6の傾斜角の絶対値の最大値とは等しいことから、|Vin max|=Voutが成立する。
上記(式2)、(式3)および(式4)に示す如く、入力側油圧装置56の行程容積Vinがゼロの時、すなわち、入力側斜板6の斜板面6aがシリンダブロック7の回転軸(入力軸2)の軸線と直交し、入力側油圧装置56が回転しても作動油が圧送されない状態の時には、出力側油圧装置57の出力軸13の回転数Noutは入力軸2の回転数Ninに等しい。入力側斜板6を増速側に(入力軸2の回転方向と出力軸の回転方向とが同方向かつNin<Noutとなるように)傾斜させ、正の値を取りつつ行程容積Vinの絶対値を増大させると、シリンダブロック7に対する出力軸13の相対的な回転数Nrは該行程容積Vinに比例して正の値を取りつつその絶対値が増大する。また、入力側斜板6を減速側に(入力軸2の回転方向と出力軸の回転方向とが同方向かつNin>Noutとなるように)傾斜させて、負の値を取りつつ行程容積Vinの絶対値を増大させると、シリンダブロック7に対する出力軸13の相対的な回転数Nrは該行程容積Vinに比例して負の値を取りつつその絶対値が増大する。従って、本実施例の油圧式無段変速装置1における出力軸13の回転数Noutは、入力軸2の回転数をNinとして、0≦Nout≦2×Ninの値を取り得る(図13中の太い実線)。
以上の如く、通常のHSTの場合、入力側油圧装置の斜板の傾斜角を変化させることにより、出力軸の回転数はゼロを中心として、その絶対値が入力軸の回転数の大きさと同じで正逆の値を取る(―Nin≦Nout≦Nin)のに対し、油圧式無段変速装置1の場合、入力側斜板6の傾斜角を変化させることにより、出力軸13の回転数はNinを中心として、ゼロからNinの二倍の回転数を取る(0≦Nout≦2×Nin)。
このように構成することは、以下の如き利点を有する。すなわち、通常のHSTは、出力軸の回転数NoutがNin近傍となる条件下で使用する場合には、該HSTの油圧回路内の作動油の循環量が大きい(|Vin|が大きい)。従って、作動油の温度上昇やHST各部からの作動油の漏出に伴うエネルギーのロスが大きいという問題があった。一方、本実施例の油圧式無段変速装置1は、出力軸の回転数NoutがNin近傍となる条件下で使用する場合には、該油圧式無段変速装置1の油圧回路内の作動油の循環量は少ない(|Vin|が小さい)。従って、作動油の温度上昇や油圧式無段変速装置1各部からの作動油の漏出に伴うエネルギーのロスが小さい。従って、油圧式無段変速装置1を適用する場合に入力軸2の回転数Ninが当該使用目的において使用頻度が高い出力軸の回転数域となるように設計することにより、使用頻度が高い出力軸の回転数域で出力軸13が回転しているときの油圧式無段変速装置1によるエネルギーロスを抑え、エネルギー効率(燃費)を向上させることが可能である。
以上の如く、本発明の油圧装置の第一実施例である油圧式無段変速装置1は、第一の回転軸である入力軸2および第二の回転軸である出力軸13と、軸線方向に往復動する第一のプランジャである入力側プランジャ8・8・・・および第二のプランジャである出力側プランジャ10・10・・・と、同じく軸線方向に往復動する第一のスプール弁である入力側スプール弁9・9・・・および第二のスプール弁である出力側スプール弁11・11・・・と、該入力側プランジャ8・8・・・、出力側プランジャ10・10・・・、入力側スプール弁9・9・・・および出力側スプール弁11・11・・・を収容して入力軸2と一体的に回転するシリンダブロック7と、軸線に対する傾斜角を変更可能な斜板面6aにおいて入力側プランジャ8・8・・・と当接する第一の斜板である入力側斜板6と、軸線に対して所定の傾斜角を成す斜板面12aにおいて出力側プランジャ10・10・・・と当接しつつ出力軸13と一体的に回転する第二の斜板である出力側斜板12と、を具備し、第一のプランジャを収容する孔である入力側プランジャ孔31・31・・・と第二のプランジャを収容する孔である出力側プランジャ孔41・41・・・とを連通する油圧回路をシリンダブロック7に形成し、入力側スプール弁9・9・・・により入力側プランジャ8・8・・・を収容する入力側プランジャ孔31・31・・・に出入する作動油の流路を切り替え、出力側スプール弁11・11・・・により出力側プランジャ10・10・・・を収容する出力側プランジャ孔41・41・・・に出入する作動油の流路を切り替える構成であって、軸線に対して傾斜したガイド溝37bが形成されたスプール弁ガイド37と、同じく軸線に対して傾斜したガイド溝47bが形成されたスプール弁ガイド47からなる一対のスプール弁ガイドを具備し、入力側スプール弁9・9・・・は、ガイド溝37bに取り付けられた保持部材である入力側保持部材38に係合するとともに、出力側スプール弁11・11・・・はガイド溝47bに取り付けられた保持部材である出力側保持部材48に係合するので、入力側スプール弁9・9・・・および出力側スプール弁11・11・・・の軸線方向の往復動の精度を保持するために高い寸法精度が求められる部品(本実施例においては、入力側スプール弁ガイド37、出力側スプール弁ガイド47、シリンダブロック7)、の部品点数を削減することが可能であり、製造コストの削減が可能である。
また、入力側スプール弁ガイド37とシリンダブロック7とが互いに対向する面(当接面37cおよび入力側端面7a)にて当接し、出力側スプール弁ガイド47とシリンダブロック7とが互いに対向する面(当接面47cおよび出力側端面7b)にて当接し、該互いに対向する面は入力軸2の軸線と直交するので、該互いに対向する面を精度良く加工することにより容易に入力側スプール弁9・9・・・および出力側スプール弁11・11・・・の軸線方向の往復動の精度を確保することが可能であり、部品の製造が容易であり、製造コストの削減に寄与する。
さらに、一方のスプール弁ガイドである入力側スプール弁ガイド37と、入力軸2を軸支する軸受部材(本実施例の場合、入力側軸受ハウジング4)とが当接する部位、または、他方のスプール弁ガイドである出力側スプール弁ガイド47と、出力軸13と一体的に回転する部材(本実施例の場合、出力側斜板12)とが当接する部位、に入力軸2の軸線と直交する面に対して傾斜した面にて互いに係合する凹部37a・37aおよび凸部4c・4c、または、凹部47a・47aおよび凸部12c・12cを形成するので、入力側スプール弁ガイド37および出力側スプール弁ガイド47には、それぞれシリンダブロック7の入力側端面7a、出力側端面7bに向かって当接する方向の力が作用する。従って、入力側スプール弁ガイド37および出力側スプール弁ガイド47と、シリンダブロック7とが当接する面(当接面37c、当接面47c、入力側端面7a、出力側端面7b)を精度良く加工することにより容易に入力側スプール弁9・9・・・および出力側スプール弁11・11・・・の軸線方向の往復動の精度を確保することが可能であり、部品の製造が容易であり、製造コストの削減に寄与する。
以下では図1、図14、図15、図16、図17および図18を用いて油圧式無段変速装置1の入力側斜板6の傾斜角を変更するリンクアーム機構60の詳細構成について説明する。本実施例の油圧式無段変速装置1の場合、変速操作(入力軸2の回転数に対する出力軸13の回転数の比を変更する操作)は入力側斜板6の傾斜角を変更することによって行われるが、該入力側斜板6の傾斜角は、リンクアーム機構60によって変更される。
リンクアーム機構60は、主に第一アーム係合部材61、第二アーム係合部材62、リンクアーム63、ピストン64、第一係合ピン65、第二係合ピン66、アクチュエータ67等で構成される。
リンクアーム63は側面視略L字型の部材であり、その屈曲部には回動軸63aが突設され、該回動軸63aは変速機収納ケース24等に回動可能に枢着される。このとき、回動軸63aの軸中心69と、斜板保持部材5に当接して回動する入力側斜板6の仮想的な回動中心68の軸線とは略一致する(厳密には、図17および図18に示す如く、少しずれている場合がある)。リンクアーム63の回動軸63aからの距離が小さい方の端部には係合溝63bが穿設され、該係合溝63bには第二アーム係合部材62が係合しつつ摺動可能である。このとき、係合溝63bは回動軸63aと、回動軸63aからの距離が小さい方の端部とを結んだ直線上に沿って形成されていることから、第二アーム係合部材62と回動軸63aとの距離は可変である。
第二アーム係合部材62は略直方体の部材であり、その中央に貫通孔が設けられている。該貫通孔には、入力側斜板6の一方の保持部6bに設けられた突出部材である第二係合ピン66が貫装される。
一方、リンクアーム63の回動軸63aからの距離が大きい方の端部には第一係合ピン65が突設され、該第一係合ピン65は第一アーム係合部材61に回転可能に貫装される。第一アーム係合部材61は前記第二アーム係合部材62と略同じ形状の部材であり、ピストン64の切り欠き溝64aに係合し、該切り欠き溝64aの長手方向に摺動可能である。
ピストン64は略円柱形状の部材であり、入力軸2の軸線方向に摺動可能に図示せぬ筐体に収容されている。該ピストン64の外周面には切り欠き溝64aが穿設されており、該切り欠き溝64aの長手方向はピストン64の往復動方向(入力軸2の軸線方向)と略直交している。
アクチュエータ67はピストン64を往復動させるものであり、より具体的には油圧モータや油圧シリンダ、電気モータやエアシリンダ等である。
アクチュエータ67の作動によりピストン64が往復動すると、該ピストン64の外周面に第一アーム係合部材61および第一係合ピン65を介して係合しているリンクアーム63が回動軸63aを中心として回動する。そして、該リンクアーム63に第二アーム係合部材62および第二係合ピン66を介して係合している入力側斜板6が回動し、その傾斜角が変化する。
入力側斜板6の保持部6b・6bは、入力側斜板6が回動して入力側斜板6の斜板面6aの傾斜角を変更するための回動中心となる部材であるとともに、入力側プランジャ8・8・・・により入力側斜板6に作用する入力軸2の軸線方向の荷重を担持する部材でもある。そして、保持部6b・6bを略半円筒状として、入力側斜板6を斜板保持部材5で保持しつつ、リンクアーム63を介して回動可能な構成としている。しかし、このような構成とすると、保持部6b・6bの仮想的な斜板の回動中心とリンクアーム63の回動軸63aの中心69とを一致させる必要が生じ、厳しい組立精度が要求されることとなる。そこで、第二アーム係合部材62と回動軸63aとの距離が可変となるように構成しておけば、以下のような効果を奏するため、保持部6b・6bの仮想的な斜板の回動中心とリンクアーム63の回動軸63aの中心69の多少のずれを許容できる。
図17に示す如く、入力側斜板6の保持部6b・6bの仮想的な回動中心68とリンクアーム63の回動軸63aの軸中心69とが一致していない場合、入力側斜板6が回動すると、保持部6b・6bに突設された第二係合ピン66の軸中心66aは、回動中心68を中心とした円弧状の軌跡68a上を移動することとなる。一方、回動軸63aの軸中心69を中心とした円弧状の軌跡69aは、第二係合ピン66と回動軸63aとの距離が変化せずにリンクアーム63が回動すると仮定したときに第二係合ピン66の軸中心66aが通過する軌跡である。
図17に示す如く、入力側斜板6の保持部6b・6bの仮想的な回動中心68とリンクアーム63の回動軸63aの軸中心69とが一致していない場合、軌跡68aと軌跡69aとが一致しない。このような場合には、仮に第二係合ピン66と回動軸63aとの距離が固定された構成だと、入力側斜板6と斜板保持部材5とが当接している部位(保持部6bと斜板用メタル軸受27)が浮いたり、過度に強く当接するといった問題が生じる。
しかし、本実施例のように、第二アーム係合部材62がリンクアーム63の一端に設けた係合溝63bに摺動可能な構成だと、図18に示す如く、第二アーム係合部材62が係合溝63bに沿って摺動することにより、軌跡68aと軌跡69aとが一致するので、前記のような問題の発生を防止することができる。
また、入力側斜板6の保持部6b・6bの仮想的な回動中心68とリンクアーム63の回動軸63aの軸中心69とを組立作業時に完全に一致させることは困難であるが、本実施例のリンクアーム機構60の如く構成することにより、多少の組立誤差が許容されるので、組立時の作業性が向上する。さらに、リンクアーム63の回動軸63aと第二係合ピン66との距離(可変)は、リンクアーム63の回動軸63aと第一係合ピン65との距離(固定)よりも短いので、挺子の原理によりピストン64を往復動させる力を該リンクアーム63にて増大させて入力側斜板6を回動する力(斜板傾動トルク)に変換できる。従って、入力側斜板6を回動させるためのピストン64の駆動力を低減できる。
なお、本実施例においてはリンクアーム63を側面視略L字型としたがこれに限定されず、一直線状のものや、「く」の字型としても良い。つまり、リンクアーム63は、その回動軸63aの軸中心69を支点とする第一アームおよび第二アームを有する部材であればよい。
以下では、図19、図20、図21および図22を用いて本発明の油圧装置の第二実施例である油圧式無段変速装置101の詳細構成について説明する。なお、本実施例の油圧式無段変速装置101は作業用車両(トラクタ等)の走行駆動力の変速に用いられるものであるが、これに限定されず、産業機械や車両等、各種の産業分野で広く利用可能である。また、本発明の油圧装置の第一実施例である油圧式無段変速装置1と略同じ構成、同じ機能を有する部材については同じ部材番号を付すものとし、本発明の油圧装置の第一実施例である油圧式無段変速装置1との相違点について詳細説明する。
油圧式無段変速装置101と油圧式無段変速装置1との相違点は、入力側スプール弁9・9・・・および出力側スプール弁11・11・・・を入力軸2の軸線方向に往復動させる入力側スプール弁ガイドおよび出力側スプール弁ガイドの構成である。
以下では、図19、図20、図21および図22を用いて本発明の油圧装置の第二実施例におけるスプール弁ガイドである入力側スプール弁ガイド137および出力側スプール弁ガイド147の詳細説明を行う。なお、本実施例においては入力側スプール弁ガイド137と出力側スプール弁ガイド147とは部品共用化のため同一形状であるが、これに限定されず、入力側スプール弁ガイド137と出力側スプール弁ガイド147とが異なる形状でも良い。
入力側スプール弁ガイド137は略円筒形状の部材の外周面や内周面に種々の機械加工を施して形成され、入力軸2(シリンダブロック7)の回転と連携して入力側スプール弁9・9・・・を往復動させるものである。入力側スプール弁ガイド137は、入力軸2に遊嵌されるとともに、第一の回転軸である入力軸2を軸支する軸受部材である入力側軸受ハウジング4の胴体部4bの後端部と、シリンダブロック7の入力側端面7aとの間に介装される。入力側スプール弁ガイド137と入力側軸受ハウジング4とが当接する面において、入力側スプール弁ガイド137には凹部137a・137a、胴体部4bの後端面には凸部4c・4cが形成されている。該凹部137a・137aと凸部4c・4cとが係合することにより、入力側スプール弁ガイド137は入力軸2に対して相対回転不能となる。また、凸部4c・4cおよび凹部137a・137aは略台形形状を成し、入力軸2の軸線に対して傾斜した(入力軸2の軸線に直交する面とは平行でない)面を有している。入力軸2およびシリンダブロック7の回転に伴い入力側スプール弁ガイド137が回転しようとすると、凸部4c・4cおよび凹部137a・137aが有する入力軸2の軸線に対して傾斜した面同士の当接により、入力側スプール弁ガイド137をシリンダブロック7の入力側端面7aに当接する方向に押し付ける力が発生する。従って、油圧式無段変速装置101の作動時(入力軸2の回転時)において、入力側スプール弁ガイド137がシリンダブロック7と連れ回りすることを防止できるとともに、入力側スプール弁ガイド137が常にシリンダブロック7の入力側端面7aに押し付けられているので、入力側スプール弁ガイド137に形成されたガイド溝137bと入力側端面7aとの距離が精度良く保持される。なお、入力側スプール弁ガイド137に凸部を形成し、軸受ハウジング4に凹部を形成しても略同様の効果を奏する。
入力側スプール弁ガイド137の外周面にはリング状にガイド溝137bが形成される。該ガイド溝137bを通る仮想平面は、入力側スプール弁ガイド137の軸線(入力軸2の軸線に略一致)に対して直交せず、傾斜している。従って、ガイド溝137bは、入力側スプール弁ガイド137の外周面における位置により、シリンダブロック7と当接する面である当接面137cとの距離が変化する。なお、当接面137cは入力軸2の軸線に直交する。ガイド溝137bには入力側スプール弁9・9・・・の係合部9d・9d・・・が係合される。
入力側スプール弁ガイド137の内周面には周方向に作動油溝137dが形成され、該作動油溝137dに溜まった作動油を当接面137cとシリンダブロック7の入力側端面7aとの当接部位に供給して潤滑させるための供給溝137e・137e・・・が設けられている。また、作動油溝137dとガイド溝137bとを連通する作動油孔137f・137fが穿設され、該作動油孔137f・137fにより作動油溝137dに溜まった作動油がガイド溝137bおよび入力側スプール弁9・9・・・の当接部位を潤滑し、摩耗を防止して各部材の寸法精度を保持している。
入力軸2が変速機収納ケース24に固定されている入力側軸受ハウジング4に対して一回転すると、シリンダブロック7も入力側軸受ハウジング4に対して一回転する。従って、ガイド溝137bに係合している入力側スプール弁9・9・・・は、入力側スプール弁ガイド137の外周面をガイド溝137bに沿って一周する。このとき、ガイド溝137bが成す仮想平面は入力軸2の軸線に直交する面に対して平行ではなく、傾斜しているため、入力側スプール弁9・9・・・は入力軸2の軸線方向に一回往復動することとなる。
入力側スプール弁ガイド137のうち、入力側スプール弁9・9・・・の往復動(突出量)の精度を保持するために特に高い寸法精度(または平面度)が求められる部位は、シリンダブロック7の入力側端面7aと当接する当接面137c、入力側スプール弁9・9・・・の係合部9d・9d・・・が係合するガイド溝37bのみであり、製造コストの削減に寄与する。そして、往復動精度に関連する部材点数を削減可能であることから、各部材の加工誤差の累積を削減する(すなわち、往復動精度を向上する)ことも可能となる。
出力側スプール弁ガイド147は略円筒形状の部材の外周面や内周面に種々の機械加工を施して形成され、入力軸2(シリンダブロック7)と、出力軸13との相対的な回転に連動して出力側スプール弁11・11・・・を往復動させるものである。出力側スプール弁ガイド147は、入力軸2と一体的に回転するスペーサ50の外周面前端部に遊嵌されるとともに、第二の回転軸である出力軸13と一体的に回転する部材である出力側斜板12の前端部に形成された当接面12bと、シリンダブロック7の出力側端面7bとの間に介装される。出力側スプール弁ガイド147と出力側斜板12とが当接する面において、出力側スプール弁ガイド147には凹部147a・147a、出力側斜板12の前端部に形成された当接面12bには凸部12c・12cが形成されている。該凹部147a・147aと凸部12c・12cとが係合することにより、出力側スプール弁ガイド147は出力側斜板12に対して相対回転不能となり、出力側斜板12と一体的に回転する。また、凸部12c・12cおよび凹部147a・147aは略台形形状を成し、入力軸2の軸線に対して傾斜した(入力軸2の軸線に直交する面とは平行でない)面を有している。入力軸2およびシリンダブロック7の回転に伴い出力側スプール弁ガイド147が出力側斜板12に対して相対的に回転しようとすると、凸部12c・12cおよび凹部147a・147aが有する入力軸2の軸線に対して傾斜した面同士の当接により、出力側スプール弁ガイド147をシリンダブロック7の出力側端面7bに当接する方向に押し付ける力が発生する。従って、油圧式無段変速装置101の作動時(入力軸2および出力軸13の回転時)おいて、出力側スプール弁ガイド147がシリンダブロック7と連れ回りすることを防止できるとともに、出力側スプール弁ガイド147が常にシリンダブロック7の出力側端面7bに押し付けられているので、出力側スプール弁ガイド147に形成されたガイド溝147bと出力側端面7bとの距離が精度良く保持される。なお、出力側スプール弁ガイド147に凸部を形成し、出力側斜板12に凹部を形成しても略同様の効果を奏する。
出力側スプール弁ガイド147の外周面にはリング状にガイド溝147bが形成される。該ガイド溝147bを通る仮想平面は、出力側スプール弁ガイド147の軸線(入力軸2の軸線に略一致)に対して直交せず、傾斜している。従って、ガイド溝147bは、出力側スプール弁ガイド147の外周面における位置により、シリンダブロック7と当接する面である当接面147cとの距離が変化する。なお、当接面147cは入力軸2の軸線に直交する。ガイド溝147bには出力側スプール弁11・11・・・の係合部11d・11d・・・が係合される。
出力側スプール弁ガイド147の内周面には周方向に作動油溝147dが形成され、該作動油溝147dに溜まった作動油を当接面147cとシリンダブロック7の出力側端面7bとの当接部位に供給して潤滑させるための供給溝147e・147e・・・が設けられている。また、作動油溝147dとガイド溝147bとを連通する作動油孔147f・147fが穿設され、該作動油孔147f・147fにより作動油溝147dに溜まった作動油がガイド溝147bおよび出力側スプール弁11・11・・・の当接部位を潤滑している。
出力軸13が入力軸2に対して相対的に一回転すると、出力軸13はシリンダブロック7に対しても相対的に一回転する。従って、ガイド溝147bに係合している出力側スプール弁11・11・・・は、出力軸13に対して相対回転不能な出力側スプール弁ガイド147の外周面をガイド溝147bに沿って一周する。このとき、ガイド溝147bが成す仮想平面は入力軸2の軸線に直交する面に対して平行ではなく、傾斜しているため、出力側スプール弁11・11・・・は入力軸2の軸線方向に一回往復摺動することとなる。
出力側スプール弁ガイド147のうち、出力側スプール弁11・11・・・の往復動(突出量)の精度を保持するために特に高い寸法精度(または平面度)が求められる部位は、シリンダブロック7の出力側端面7bと当接する当接面147c、出力側スプール弁11・11・・・の係合部11d・11d・・・が係合するガイド溝147bのみであり、製造コストの削減に寄与する。そして、往復動精度に関連する部材点数を削減可能であることから、各部材の加工誤差の累積を削減する(すなわち、往復動精度を向上する)ことも可能となる。
以上の如く、本発明の油圧装置の第二実施例である油圧式無段変速装置101は、第一の回転軸である入力軸2および第二の回転軸である出力軸13と、軸線方向に往復動する第一のプランジャである入力側プランジャ8・8・・・および第二のプランジャである出力側プランジャ10・10・・・と、同じく軸線方向に往復動する第一のスプール弁である入力側スプール弁9・9・・・および第二のスプール弁である出力側スプール弁11・11・・・と、該入力側プランジャ8・8・・・、出力側プランジャ10・10・・・、入力側スプール弁9・9・・・および出力側スプール弁11・11・・・を収容して入力軸2と一体的に回転するシリンダブロック7と、軸線に対する傾斜角を変更可能な斜板面6aにおいて入力側プランジャ8・8・・・と当接する第一の斜板である入力側斜板6と、軸線に対して所定の傾斜角を成す斜板面12aにおいて出力側プランジャ10・10・・・と当接しつつ出力軸13と一体的に回転する第二の斜板である出力側斜板12と、を具備し、第一のプランジャを収容する孔である入力側プランジャ孔31・31・・・と第二のプランジャを収容する孔である出力側プランジャ孔41・41・・・とを連通する油圧回路をシリンダブロック7に形成し、入力側スプール弁9・9・・・により入力側プランジャ8・8・・・を収容する入力側プランジャ孔31・31・・・に出入する作動油の流路を切り替え、出力側スプール弁11・11・・・により出力側プランジャ10・10・・・を収容する出力側プランジャ孔41・41・・・に出入する作動油の流路を切り替える構成であって、軸線方向に変位するガイド溝137bが穿設された入力側スプール弁ガイド137と、同じく軸線方向に変位するガイド溝147bが穿設された出力側スプール弁ガイド147からなる一対のスプール弁ガイドを具備し、入力側スプール弁9・9・・・は、ガイド溝137bに係合するとともに、出力側スプール弁11・11・・・はガイド溝147bに係合するので、入力側スプール弁9・9・・・および出力側スプール弁11・11・・・の軸線方向の往復動の精度を保持するために高い寸法精度が求められる部品(本実施例においては、入力側スプール弁ガイド137、出力側スプール弁ガイド147、シリンダブロック7)、の部品点数を削減することが可能であり、製造コストの削減が可能である。
また、入力側スプール弁ガイド137とシリンダブロック7とが互いに対向する面(当接面137cおよび入力側端面7a)にて当接し、出力側スプール弁ガイド147とシリンダブロック7とが互いに対向する面(当接面147cおよび出力側端面7b)にて当接し、該互いに対向する面は入力軸2の軸線と直交するので、該互いに対向する面を精度良く加工することにより容易に入力側スプール弁9・9・・・および出力側スプール弁11・11・・・の軸線方向の往復動の精度を確保することが可能であり、部品作製時の作業性に優れ、製造コストの削減に寄与する。
さらに、一方のスプール弁ガイドである入力側スプール弁ガイド137と、入力軸2を軸支する軸受部材(本実施例の場合、入力側軸受ハウジング4)とが当接する部位、または、他方のスプール弁ガイドである出力側スプール弁ガイド147と、出力軸13と一体的に回転する部材(本実施例の場合、出力側斜板12)とが当接する部位、に入力軸2の軸線と直交する面に対して傾斜した面にて互いに係合する凹部137a・137aおよび凸部4c・4c、または、凹部147a・147aおよび凸部12c・12cを形成するので、入力側スプール弁ガイド137および出力側スプール弁ガイド147には、それぞれシリンダブロック7の入力側端面7a、出力側端面7bに向かって当接する方向の力が作用する。従って、入力側スプール弁ガイド137および出力側スプール弁ガイド147と、シリンダブロック7とが当接する面(当接面137c、当接面147c、入力側端面7a、出力側端面7b)を精度良く加工することにより容易に入力側スプール弁9・9・・・および出力側スプール弁11・11・・・の軸線方向の往復動の精度を確保することが可能であり、部品作製時の作業性に優れ、製造コストの削減に寄与する。
そして、本発明の油圧装置の第二実施例におけるスプール弁ガイドである入力側スプール弁ガイド137および出力側スプール弁ガイド147は、本発明の油圧装置の第一実施例におけるスプール弁ガイドである入力側スプール弁ガイド37および出力側スプール弁ガイド47と異なり、ガイド溝137bに入力側スプール弁9・9・・・の係合部9d・9d・・・を直接係合させ、ガイド溝147bに出力側スプール弁11・11・・・の係合部11d・11d・・・を直接係合させる構成であるため、入力側スプール弁ガイド37および出力側スプール弁ガイド47における入力側保持部材38、入力側保持部材押え39、出力側保持部材48、出力側保持部材押え49といった部品を省略することが可能であり、一層の製造コストの削減に寄与する。
なお、本実施例においては、ガイド溝137bおよびガイド溝147bは、入力軸2に対して傾斜した仮想平面上に乗る構成であるがこれに限定されない。例えば、スプール弁が下死点から上死点に向かうときには前半は軸線方向の変位が大きく後半は軸線方向の変位が小さい溝とし、スプール弁が上死点から下死点に向かうときには前半は軸線方向の変位が小さく後半は軸線方向の変位が大きい溝とするなどしてもよい。このような溝の形状は油圧装置の駆動特性に応じて適宜選択することが可能である。
また、本実施例においては第一の回転軸を入力軸2、第二の回転軸を出力軸13として用いたが、これに限定されず、第一の回転軸を出力軸、第二の回転軸を入力軸として用いても良い。なお、この場合は、出力軸としての第一の回転軸の回転数Noutと、入力軸としての第二の回転軸の回転数Ninとの関係は、(式4)におけるNoutとNinとを入れ替えたものとして整理される。すなわち、Nout=Nin×Vin/(Vin+Vout)となる。ここで、Vinは固定式の斜板に当接している側のプランジャの行程容積であり、Vinを一定とし、可変式の斜板に当接している側のプランジャの行程容積Voutを−Vin≦Vout≦Vinの範囲で可変させると、理論的には、(1/2)×Nin≦Nout<+∞となる。