JP4197614B2 - 細胞性免疫応答を増強するためのプロアポトーシス細菌ワクチン - Google Patents

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Description

(発明の背景)
本願は、米国仮出願番号60/322,989号(2001年9月18日出願)および同出願番号60/267,328号(2001年2月7日出願)の優先権を主張する。この仮特許出願、60/322,989および60/267,328は、本明細書中で、全体が参考として援用される。
本発明は、NIH助成金番号AI35250、NIH助成金番号A137871、およびDepartment of Veterans AffairsによるMerit Review Awardの下で政府の支援によって実施された。合衆国政府は、本発明において特定の権利を有し得る。
(発明の分野)
本発明は、ワクチン生産および感染性疾患の予防または処置することの分野に関する。具体的には、本発明は、安全かつ有効なワクチンを産生する方法および細菌性病原体(例えば、Mycobacterium tuberculosis)による感染に引き続いて曝露される宿主動物における有効な免疫応答を増強するための方法に関する。
(背景技術)
組換えDNA技術が、合理的に設計された生弱毒化ワクチンを新生する能力の見込みがあるとしても、この見込みを満たす点において、この従来型の対立遺伝子不活化技術の有用性を制限する重大な問題が存在する。
組換えDNA技術を使用することによって生成されるワクチンを含む全てのワクチン開発に共通の主要な問題は、長期間存続する防御を与える免疫細胞の特定の集団において応答を誘導する際の困難であった。ワクチン接種によって、病原性微生物である抗原に対して動物が応答するように準備される。いくつかの型の免疫応答のみが防御免疫に関連し、重要な応答は、異なる病原体とともに変化するという点で、ワクチン接種は、免疫認識よりも複雑である。例えば、抗体応答は、ポリオに対する防御免疫を与えることにおいて決定的であるが、結核症に対する免疫防御においては極僅かな重要性しか有さない。
多くの病原体に関して、細胞性免疫応答は、抗体応答より重要である。細胞性免疫応答は、主に、CD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球によって媒介され、このCD4+Tリンパ球は、インターフェロンγを分泌し、かつ細胞内の微生物を殺傷するマクロファージを活性化し、そして、このCD8+Tリンパ球は、インターフェロンγを分泌することに加え、デスレセプター(death receptor)(例えば、Fas、TNF−αレセプター)または顆粒酵素(すなわち、パーフォリン/グランザイム)を介する、細胞傷害性応答を誘導する。
CD4+リンパ球およびCD8+リンパ球は、異なる抗原提示経路を使用して、免疫応答のために初回免疫される。CD4+T細胞に関して、外因性外来抗原は、抗原提示細胞内のファゴソーム内から取りこまれた微生物から、取りこまれるかまたは回収され、フラグメントに分解され、そして、CD4+T細胞に対する提示のために、MHCクラスII分子に対してこれらの細胞表面上に結合される。MHCクラスII分子は、主に、いくつかの数少ない型のリンパ球に限定される。CD8+T細胞活性化は、実質的に有核細胞において見出されるMHCクラスI分子に関連する異なる機構を介して達成される。この有核細胞において産生されるか、または誘導される、タンパク質は、ペプチドに分解され、そして、CD8+T細胞に対するMHCクラスI分子の状況において、この細胞表面に提示される。MHCクラスI抗原提示は、これを、CD4+Tリンパ球に対するMHCクラスIIレセプターを介する抗原提示のための「外因性抗原」経路と区別するために、「内因性抗原」経路として一般的に呼称される。
樹状細胞は、抗原提示において特に有効な特化したリンパ球である。これらは、アポトーシス性マクロファージまたはそれらのフラグメントを内在化する能力およびMHCクラスI経路およびMHCクラスII経路の両方を介してアポトーシス性マクロファージ内からの抗原を提示する能力を有する(Albert,Sauter,およびBhardwaj,1998;YrlidおよびWick,2000;WickおよびLjunggren,1999)。
多くの感染性疾患の場合、CD8+T細胞は、持続性抗原刺激に依存しない再感染に対する長期間の免疫の主要な決定因子であると考えられる(Lauら、1994)。これは、強力なCD8+応答の発生を、新規ワクチンのための重要な因子とする。いくつかのストラテジー(例えば、DNAワクチン接種(Felgnerら、米国特許番号第5,589,466号))は、ワクチン接種の他の方法と比較して、比較的良好なCD8+応答を生じるようである。しかし、DNAワクチン接種の有意な制限は、抗原が、単一の遺伝子または少数の微生物の免疫優勢CD8+エピトープに対応する細菌ゲノムのうちの小さな部分のみに由来することである。樹状細胞に対してより大きい細菌性抗原を送達する方法は、有用であり、この方法は、全細胞性の生弱毒化ワクチンを樹状細胞と結合させ、その結果、全ての微生物抗原が処理されるように指向するための技術を包含する。
特定の病原体に対する防御免疫応答の適切な型を誘導する全てのワクチンに共通する一般的問題は別として、対立遺伝子不活化を使用して新規の生弱毒化ワクチンを構築することに伴う特定の問題がまた存在する。そのひとつは、多くの微生物遺伝子(病原性微生物を弱毒化して新規ワクチン候補を生み出すための最良の潜在的標的のうちのいくつかを含む)が生存について必須であることである。従って、インビトロ増殖について必須である遺伝子の活性が不活化された変異体は、インビトロで培養され得ない。この問題は、外因性物質が添加されて必須遺伝子の機能をバイパスする場合に、部分的に克服され得、例えば、インビトロ培養培地にアミノ酸またはヒポキサンチンを補充して、対立遺伝子ノックアウト変異体の同定および回収を可能にし、そして、この変異体において、アミノ酸生合成またはプリン生合成のそれぞれに対する必須遺伝子が不活化されている。この制限を克服する別のストラテジーは、「インビボ発現技術」および差次的に発現された遺伝子を同定するための他の技術である(Slauch,Mahan、およびMekalanos,1994)。これらの技術は、微生物のインビボでの生存について必須であるがこれらのインビトロ培養について必須ではない遺伝子の同定を試みる。従って、「インビボ」で発現される遺伝子を不活化することによって、インビトロで培養され得るがインビボで弱毒化される候補を産生されることが理解される。
しかし、栄養要求体の外因的に補充すること、およびインビボでの細菌の生存のためのみ必須な遺伝子を同定することによって、新規生弱毒化ワクチン候補を生成するために不活化され得る遺伝子の数が増加されるとしても、インビトロにおける微生物生存およびインビボにおける細菌生存の両方にとって必須であり、かつ、これらのインビトロの生存および増殖を可能にする外因的補充を許容しない多く遺伝子が依然として存在し続ける。従って、遺伝子産物の完全な低減というより部分的な低減を可能にする方法を有することによって、新規の生弱毒化ワクチン候補を生成するために、多くのこのような必須遺伝子が変更されることが可能となる。理想的には、本方法は、病原性表現型に復帰するための最小能力を有する安定な変異体の産生を可能にする。
組換えDNA技術を使用する新規ワクチンを生成する現在の試みに伴う第2の主要な問題は、弱毒化と免疫原性との間の適切なバランスを見出す困難である。変異体が同定されるか、または生成されるほとんどの環境において、これは、依然として病原性であるためにワクチンとして使用され得ないか、宿主によってあまりにも迅速に除去されるために防御免疫を生じることができないかのいずれかである。例えば、新規の栄養要求体結核ワクチン候補は、全てにおいて十分過ぎるほど、この問題を例示する。この株が、多すぎる必須栄養素をインビボで除去し得るか否かは、この病原性表現型を前提とし得る。年間、全世界で、1億人を超える人に対して与えられるワクチン株である、Bacillus Calmette−Guerin(BCG)のメチオニン要求変異体は、インビトロで、親BCG株として良好に増殖することを考慮のこと(McAdamら、1995)。このことによって、この栄養要求体は、この増殖要求を満たすのに十分なインビボのメチオニンを利用し得、それによって、この栄養要求体をインビトロで栄養要求性とならしめている代謝性欠損をバイパスすることができることが示唆される。このことによって、病原性M.tubeculosisのメチオニン要求性変異体が、インビボで依然として病原性であることを可能にする。対照的に、増殖があまりに厳しく制限される場合、この栄養要求体は、十分に長期間耐えられないか、または、防御免疫応答を駆動するために必要とされる十分な免疫優勢抗原を生成し得ない。これは、リシン栄養要求性体において観察され、単一用量与えられた場合、免疫は効力を有さず、そして、3用量レジメンが与えられた場合、いくつかの免疫性を与える(Collinsら、2000)。ロイシン栄養要求性体およびプリン栄養要求性体は、いくつかのワクチン効力を示すが、BCGを使用した免疫よりも低い防御性を示す(Hondlusら、2000;Jacksonら、1999)。
ワクチン開発のための現在の対立遺伝子不活化ストラテジーに伴うさらなる問題は、有望なワクチン候補をその後に改変し得ないことである。対立遺伝子不活化が、弱毒化しすぎた変異体を生じると、対立遺伝子不活化技術を使用して、弱毒化と免疫原性との間の適切なバランスを達成するために、この変異体をさらに調節することは可能ではない。対立遺伝子不活化によって十分に弱毒化されていない変異体が生成されると、対立遺伝子不活化は、この変異体をさらに弱毒化する試みにおいて第2の微生物遺伝子に適用され得るが、ワクチンの効力のために弱毒化の適切なレベルを得る困難がなおも存在する。従って、対立遺伝子不活化は、弱毒化レベルの細かい調節に対して予測不能なツールである。しかし、弱毒化と免疫原性との間の適切なバランスを達成することは、新規の生弱毒化結核菌ワクチンの開発に対して重要であると認識され、ワクチン候補の漸増的な調節を可能にするストラテジーが必要とされる。
歴史的に、人類における最も重大な感染症の1つである、結核症は、依然として主要な公衆衛生問題であり、そして、ヒト疾患の原因である。罹患率および致死率が、依然として高く、1998年と2030年との間において、結核症による、2億2500万の新症例および7900万人の死亡例が予測される(MurraryおよびSalomon、1998)。有効な処置レジメンの利用可能性およびワクチンとしてのMycobacterium bovis、Bacillus Calmette−Guerin(BCG)の生弱毒化株の広範囲の使用にもかかわらず、この結果である。さらに、全世界の人口の約3分の1を構成すると推定されるMycobacterium tuberculosisに潜在的に感染した膨大な病原体保有者が存在する(Snider,Jr.およびLa Montagne,1994)。
以前の研究によって、BCGは、それほど強いCD8+応答を誘導しないことが示された(Kaufmann,2000)。しかし、MHCクラスI経路およびCD8+T細胞は、MHCクラスI抗原提示において欠損を有するマウスが結核症に迅速に屈するので、病原性のM.tuberculosisの通常の宿主封じ込めにおいて重要である(Flynnら,1992;Sousaら,2000)。TB患者および静態で自然治癒したTBを有する個体と健常者との日常的な接触に曝されることは、強力なCD8+応答(Lalvani,Brookesら、1998 618/同上)(Pathan,Wilkinsonら、2000 617/同上)を提示するので、MHCクラスI経路およびCD8+T細胞は、潜伏性結核症感染が活性な疾患となることを防ぐことにおいて特に重要である。CD8+細胞は、抗菌ペプチドグラヌリシン(guranulysin)の放出を介して細胞内桿菌を殺傷すること、およびIFN−γの産生により、M.tuberculosisに感染した宿主マクロファージの溶解を生じる細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性を含むいくつかの方法で、結核症に対する防御効果を発揮するようである(Choら、2000;SerbinaおよびFlynn,1999;Silvaら 1999;Serbinaら,2000)。結核症の宿主制御に関する古典的な概念は、CD4+T細胞に対するMHCクラスII経路を介する、ファゴソーム内のM.tuberculosisから抗原をプロセシングすることを強調してきたので、如何にしてMHCクラスI−CD8+経路がそれほど決定的でなければならないかがこれまで不明確であった。
BCGより強力なCD8+応答を誘導するためのストラテジーを考案することは、結核症ワクチン研究の主要な焦点である(Cho、Mehra、Thoma−Uszynski、Stenger、Serbina、Mazzaccaro、Flynn、Barnes、Southwood、Celis、Bloom、Modlin、およびSette、2000;Kaufmann,2000)。このようなものは、DNAワクチンを介して可能であるように見られるが、これは、BCGワクチン接種によって達成されるよりも、IFN−γを産生するCD8+/CD44hiT細胞のより多くの集団を生じる(Silva、Bonato、Lima、Faccioli、およびLeao、1999)。しかし、このT細胞応答は、このDNAワクチンによって発現される特定の遺伝子によって産生される抗原に限定される。他の研究者は、穿孔(pore−forming)特性によって、ファゴソーム内のM.tuberculosis抗原がマクロファージの細胞質に接触することを可能にし、そして、MHCクラスI経路を介してプロセシングされることを期待して、BCGへとリステリオリジン(listeriolysin)をクローニングすることにより、CD8+応答を改善することを試みてきた。
BCGワクチンが、M.tuberculosisによる肺感染を十分に阻害できないことに起因して、長期間の防御免疫、特に、CD8+Tリンパ球と最も強く相関する免疫細胞に対する抗原提示を改善する必要性が存在する。本発明は、抗原提示が増強されるように病原体が操作されるワクチン開発方法を提供することによって、この問題の解決を提供する。
十分な免疫原性を保持し、かつその病原性を弱毒化するように改変され得る細菌由来のワクチンを開発することについての多大な必要性もまた存在する。従って、弱毒化と免疫原性との間の適切なバランスを提供するワクチン開発の方法についての必要性が存在する。病原体が、インビボでの生存における完全な発現に必須の酵素が低減されたレベルで産生されるか、またはあまり有効ではない形態であるが、この生弱毒化微生物は、十分に免疫原性であるように操作されたワクチン開発を提供することによって、本発明はこの問題に対する解決を提供する。
本発明は、結核症に対して有効なワクチンを提供することによって、M.tuberculosisワクチンに伴う問題を具体的に解決する。
(発明の要旨)
本発明は、ワクチンの効力を改善する様式で、細胞内細菌によって抗原提示を増強する方法に関する。宿主細胞のアポトーシスを通常は阻害する細胞内細菌の酵素が減少したとき、プロアポトーシス(pro−apoptotic)効果が、宿主細胞に依存して与えられる。このことは、この微生物の細胞内での生存を減少し、それによって、このワクチン株のインビボでの弱毒化に寄与する利点を有する。これはまた、樹状細胞による抗原のプロセシングを増大し、そして、これは、CD8+Tリンパ球へのMHCクラスI抗原提示を増大し、ワクチンの効力を増強するように抗原の様式を実質的に変更する、工程を包含する。本発明の別の局面は、抗アポトーシス性微生物因子がこの細菌の生存能力に対して重要である環境を取り扱う。この問題を解決するために、必須細菌性酵素をコードする遺伝子を、この遺伝子の変異形態または別の種に由来する類似遺伝子で置換し、これによって、減少した酵素活性を生じ、それにより減少した疾患発症能力を有するが、なお、防御免疫応答を誘導し得る変異体細菌を産生することによって、病原性株または細菌の部分的に弱毒化された株を漸増的に弱毒化するための方法を記載する。この方法はまた、弱毒化された株を産生するための抗アポトーシス性機能を有する細菌性因子に適用され得る。
また、強力なCD8+T細胞応答を誘導することは、一般的に困難であることが、現在のワクチン接種ストラテジーを用いて達成することが、本発明の改変された微生物は、免疫系のアーム(arm)に接触するための驚く程有効な方法を提供する。この微生物は、ウイルス、細菌、原生生物、および真菌を含む他の病原性微生物由来の免疫優勢抗原をコードする外因性DNAを加えることによって、または癌抗原をコードするDNAを使用することによってさらに改変され得、そして、宿主動物にワクチン接種するのに使用され得る。従って、本発明の弱毒化された細菌は、MHCクラスI経路およびMHCクラスII経路によるプロセシングのために抗原を提供するためのワクチン送達ビヒクルとして使用され得る。ワクチンベクター中の微生物性抗原によって誘導される強力な同時刺激シグナルに起因して、これは、宿主免疫系を、免疫寛容を発生するものでなく、この外因性抗原に対して反応するように指向する。
本発明はまた、抗アポトーシス因子が必須細菌性酵素であって、その結果、対立遺伝子不活化が、この微生物のインビトロでの培養を可能にしないか、またはこの変異体がインビボであまりにも速く除去されるために十分な免疫原性とはならない場合の、微生物の変異体を産生する方法を記載する。酵素活性が、漸増的により有効でない形態をコードする変異体対立遺伝子で、この酵素をコードする野生型遺伝子を置換することによって、減少される場合、漸増的に弱毒化された変異体細菌株が産生され、これは、疾患を引き起こす程十分に病原性ではないが、宿主内での防御免疫応答をインビボで誘導するには十分長く存続する1以上の変異体株を同定することを容易にする。漸増的弱毒化は、任意の細菌種に対して適用され得る。これは、宿主細胞に対して抗アポトーシス性効果を発揮しない酵素を含む任意の必須細菌性酵素に適用され得る。しかし、細胞内細菌の特定の抗アポトーシス性酵素の活性が減少した場合、抗原提示は、上記で議論した機構によって、増強され得る。
インビボで生存する能力の漸増的な低減を有する変異体を生成し、そして、必須の免疫原性および弱毒化を保持する変異体を選択する本発明のストラテジーは、現在の対立遺伝子不活化技術によって例示される無作為に試行するストラテジーよりも、明らかな長所を有している。1つの長所は、複数の遺伝子を標的化するが、各々の中に単一の変異体のみ産生することと反対に、単一酵素中に欠損を有する複数のワクチン候補を作製することによって達成される、時間の節約および増大した効率である。さらに、ワクチンの細かい調節が可能であるという利点が存在する。例えば、野生型酵素活性のうち20%を提示する変異体は、病原性が強すぎるが、10%の活性を提示する変異体は弱毒化されすぎであり、かつ免疫原性であるほど十分に長期間インビトロで生存できない場合に、この株は、中程度の活性(例えば、15%)に改変され得、これによって、より良好なワクチンが生み出される。
さらなる利点は、ワクチンを、漸増的に弱毒化された変異体の群を産生することによって、潜在的なワクチンの中で、宿主免疫において異種性に適合するように調節する能力である。例えば、HIV/AIDSを保有する人間は、正常な免疫を有する人間において、弱毒化と免疫原性との間の適切なバランスを達成する株よりも多くの弱毒化された変異体を受容し得る。ここで、このアプローチは、漸増的弱毒化を生じる能力が、これを受容し得る大部分の免疫抑制された人間にとって必要とされるレベルまでの弱毒化されたワクチンに対する必要性を多少なりとも解決するので、大部分の受容者に対して単回用量のワクチンを可能にする。むしろ、より多くの弱毒化されたバーションのワクチンは、免疫抑制された集団に対して容易に生成される。従って、本発明は、ワクチンにおける弱毒化のレベルを、ワクチンの免疫系に適合するために精製され、かつ調整されることを可能にする。
本発明に対する別の利点は、突然変異が誘発される必須酵素が、宿主免疫系により産生される抗細菌性物質を解毒する酵素である場合に、実現される。栄養要求体が、新規ワクチン候補を構築するための平易な方法であるが、有用なワクチンとしてのこれらの能力を弱め得るこの栄養要求体の遺伝子誘導に関連する潜在的な問題が存在する。例えば、飢餓状態および栄養素制限は、細菌における特定の遺伝子誘導にとって強力な刺激である。従って、栄養要求体のインビボ増殖の持続期間が最適化され得、その結果、この宿主に対して提示された抗原の量が問題とならない場合でさえ、インビボの栄養素制限によって、この細菌が、この細菌が欠乏のストレスに適応することを補助する微生物因子を、重要な抗原産生を犠牲にして主に産生するように強いられる。結果として、免疫系に対して利用可能な抗原の型は、防御免疫応答を誘導するのに必要とされる因子ではない。対照的に、本発明の方法は、ワクチン株を宿主防御に対してより感受性にすることによってワクチン株を弱毒化し得、そして、特定の酵素を使用した場合、これは、飢餓遺伝子誘導が実質的な影響を有し得る状況をつくりださない。本発明のワクチンにおいて、微生物が遭遇するストレスは、質的に異なった型のストレスというよりも、感染の間で、この微生物が通常遭遇するストレスの強調されたものである。
従って、本発明は、微生物を改変する方法を提供し、これによって、この微生物は、被験体における免疫原性を増加し、この方法は、この微生物によって産生される抗アポトーシス酵素の活性を低減する工程を包含し、この酵素の活性を低減する工程によって、この微生物が弱毒化され、そして、この抗原提示が増強される。
本発明はまた、微生物を弱毒化する方法を提供し、これによって、この微生物は、免疫原性を保持するかまたは増強するが、被験体における病原性を低減し、この方法は、この微生物によって産生される必須酵素の活性を低減する工程を包含し、この酵素の活性を低減することによって、この微生物が弱毒化される。
本発明はまた、微生物が免疫原性を保持するかまたは増加するが、被験体において低減された病原性を有する方法に従って弱毒化された微生物を提供し、この方法は、この微生物によって産生された必須酵素の活性を低減する工程を包含する。
本発明はまた、微生物が、被験体において免疫原性を増加させるが、低下した病原性を有しており、微生物によって生成される抗アポトーシス酵素の活性を減少させる工程を包含する方法に従って改変された、微生物を提供する。
本発明はさらに、本発明の方法に従って弱毒化された微生物、および薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を提供する。
さらに、本発明は、被験体の免疫細胞による免疫応答を生ずる方法を提供し、この方法は、その細胞を、本発明の組成物と接触させる工程を包含する。
本発明はまた、被験体において免疫応答を生ずる方法を提供し、この方法は、本発明の有効量の組成物をこの被験体に投与する工程を包含する。
また、本発明は、被験体における感染性疾患を予防するかまたは感染性疾患の重篤度を減少させる方法を提供し、この方法は、有効量の本発明の組成物をこの被験体に投与する工程を包含する。
(発明の詳細な説明)
本明細書中および添付の特許請求の範囲内で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により明確に他を示さない限り、複数形の参照物を含むことが留意されるべきである。従って、例えば、「酵素(an enzyme)」に対する参照は、この酵素の複数のコピーを含み、そして1つ以上の特定の種類の酵素も含み得る。
本発明は、M.tuberculosisにより産生される抗アポトーシス酵素の減少が、大いに良好なワクチン効果を生じることを教示する。従って、本発明は、微生物性抗アポトーシス酵素(SOD、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、グルタミンシンテターゼ、およびグルタチオンレダクターゼ(グルタレドキシン)のような可能な他の酸化還元関連酵素、他のチオレドキシン様タンパク質、他のチオレドキシンレダクターゼ様タンパク質、他のグルタレドキシン様タンパク質、他のチオールレダクターゼ、および他のプロテインジスルフィドオキシドレダクターゼを含む)の産生を減少させることによって作製されるプロアポトーシスワクチンの構築を介する抗原提示を容易にするための方法を提供する。これらの酵素の多くは、全ての細胞生活形態および多くのオーバーラップにおいて高度に保存されているか、またはアポトーシスの引き金として、活性酸素中間体の中心的な役割に起因する活性酸素中間体を弱毒化する酵素と同一である。プロアポトーシスワクチンの作製の前提は、毒性のM.tuberculosis株の場合のように、病現体が宿主細胞内にある場合に細胞内病原体由来の酵素がアポトーシスをブロックする能力に関する。従って、樹状細胞および他の免疫細胞が、微生物性抗原を含むアポトーシスマクロファージをプロセシングする際に、これらの特異的な酵素の活性を減少させることによって、同時に、この微生物を弱毒化しかつその抗原提示を増加させることが可能である。
M.tuberculosisの鉄補因子スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、宿主細胞のアポトーシスおよび感染部位に対する単核細胞の増加を阻害する。M.tuberculosisの変異体株におけるSODの活性を減少させることによって、単核細胞の迅速な増殖およびこれらの細胞のアポトーシスが、増強され、その結果、この変異体株は、著しく弱毒化された。さらに、この変異体株は、マウスモデルにおけるワクチンとして非常に効果的であり、結核に対する現在のワクチンであるBCGの効果をしのぐ。増大したワクチンの効果の機構は、BCGによるワクチン接種後と比較して、SOD減少M.tuberculosisによるワクチン接種の後のより良好なCD8+ T細胞応答の誘導を含む。より良好なCD8+ T細胞応答は、M.tuberculosisによりSOD産生を減少させることによって生じ、アポトーシスマクロファージと抗原提供細胞の同時局在化を達成する自然免疫応答が、促進され、インビボでのアポトーシス関連抗原の交差提示(cross−presentation)のための条件を効果的に作製した。実際、大量の細胞外SODを産生することによって、M.tuberculosisは、強力に獲得された免疫応答の発生の助けとなる状態の発生を阻害する。このことは、M.tuberculosisに有利であり、このM.tuberculosisにおいて、アポトーシス関連抗原の交差提示を鈍らせること(それを達成するために必要とされるインビボでの状態を防ぐことによる)は、獲得される宿主免疫応答の完全な発生を阻害することによる慢性的な感染の確立を可能とする。SODを減少させることによって、本発明者らのM.tuberculosis変異体は、著しく弱毒化されかつ自然免疫に対してより感受性になっただけでなく、自然免疫応答と適応免疫応答との間の「クロストーク(cross−talk)」が、進行され得、その結果、強力に獲得された細胞性免疫応答が発生した。実際、本発明者らは、アポトーシスをブロックする抗アポトーシス微生物性因子の産生を減少させることによるインビボでのアポトーシス関連抗原の交差提示を達成する方法を身につけた。この結果は、非常に効果的な生体弱毒化された細胞全体のワクチンであり、このワクチンにおいて、実質的に全ての微生物性抗原が、宿主免疫系によりプロセシングされ得、強力な細胞性免疫応答を誘導し得る。より詳細には、本発明は、M.tuberculosis株またはM.bovis株(M.bovis BCGを含む)および物理的、化学的、または分子遺伝学的方法を用いて既に弱毒化された他の株において鉄−マグネシウムスーパーオキシドジスムターゼの活性を減少させることによって作製された結核のための細胞全体のワクチンを含む。
ワクチンの1つの例は、M.tuberculosis由来であるが、本発明は、どのように他の細胞内病原体のワクチンが、抗アポトーシス細菌性因子、および炎症性細胞の迅速な増殖に関与する宿主細胞内プロセスの活性化を阻害する細菌性因子の産生を減少または除去することにより発生され得る。
いくつかの抗アポトーシス微生物性酵素は、ワクチン株としての微生物を培養する能力に反対に影響することなく除去され得る。そのような酵素について、対立遺伝子の不活性化を含む従来の分子遺伝学技術は、改変微生物を構築するために用いられ得る。しかし、いくつかの酵素は、完全に、微生物の生存力のために必須であり、そのためこれらの酵素は、完全に除去され得ない。これらの酵素について、抗アポトーシス酵素の活性を、完全に減少させるのではなく部分的に減少させる変異体を構築するための方法が必要とされる。アンチセンスRNA過剰発現(Coleman、Green、およびInoueら、1984)は、部分的な表現型を有する変異体株を構築するための1つのそのような戦略であり、そしてプロアポトーシス表現型を与えるためにどの必須酵素が減少され得るかをスクリーニングおよび同定するためのツールとして特に有用である。
微生物を用いた以前の研究は、いくつかの出願を生み出し、ここでアポトーシスに関連する酵素は、変化されている。Fe、Mn SODに対する改変は、既に、Salmonella種について文書化されており(Tsolisら、1995、(これは、その全体について、本明細書中に参考として援用される))、そしてShigella種(Franzonら、1990(これは、その全体について、本明細書中に参考として援用される))およびM.tuberculosis(Zhangら、1992、(これは、その全体について、本明細書中に参考として援用される))について天然に生じることが見出されている。Zn、Cu SODに対する改変はまた、M.tuberculosis(Dussurgetら、2001(これは、その全体について、本明細書中に参考として援用される))、Legionella pneumophila(St.JohnおよびSteinman、1996(これは、その全体について、本明細書中に参考として援用される))、Salmonella種(Fangら、1999;Farrantら、1997;De Grooteら、1997(これは、その全体について、本明細書中に参考として援用される))、Actinobacillus pleuropneumoniae(Sheehanら、2000(これは、その全体について、本明細書中に参考として援用される))、およびBrucella abortus(Tatumら、1992;Latimerら、1992(これらは、その全体について、本明細書中に参考として援用される))について文書化されている。直接的操作を介さないが、減少したグルタチオンレダクターゼ活性は、Salmonella種(StorzおよびTartaglia、1992(これは、その全体について、本明細書中に参考として援用される))において示されている。さらに、グルタミンシンテターゼの栄養要求変異体およびヌル変異体の両方もまた、Salmonella種(FunnageおよびBrenchly、1977;KloseおよびMekalanos、1997(これは、その全体について、本明細書中に参考として援用される))において開示されている。
本発明は、微生物を安定して改変する方法を提供し、これにより、この微生物は、免疫原性を保持したままであるかまたはそれを増加させるが、被験体中の病原性を損失させるか減少させ、この方法は、この微生物により産生される酵素活性を減少させるが、除去しない工程を包含し、これにより酵素活性の減少はこの微生物を弱毒化するかまたはこの微生物をさらに弱毒化する。
本発明の改変を達成する1つの方法は、標的化された漸増的弱毒化のプロセス(以下では、「TIA」という)の適用を含む。この方法は、以下の工程を包含する:a)この微生物のインビボでの生存の完全な発現に必須である酵素を同定する工程、b)必須の微生物性酵素をコードする遺伝子を変異させるかまたは別の種から相同性遺伝子を得る工程、c)微生物中の、この必須の微生物性酵素をコードする遺伝子と工程b)からの変異遺伝子または相同性遺伝子の1つ以上を置換する工程であって、これによりこの微生物中の、工程a)において同定された必須の酵素の活性を減少させるが、除去しない、工程、およびd)インビボで生存して保護免疫を与える工程c)の弱毒化微生物を同定する工程。TIAが、以下のように記載されそして例示されるように、このプロセスの各々の工程は、その工程の目的を達成するために、他の工程と独立して実施され得ることは、明らかである。例えば、プロアポトーシス酵素を置換または変異させる工程は、TIAプロセスとは独立して実施され得る。
TIAにおいて2つの必要不可欠な因子が存在している。第1に、この酵素の機能に必ずしも必須でないいくつかのアミノ酸残基が存在していることは明らかである。ほとんどの酵素が、他の酵素から進化しておりそしてこれらの酵素学的活性は、これらが現在実施している仕事について段階的にのみ最適化させる。従って、酵素中に導入されるほとんどの重要でない変異(例えば、1つのアミノ酸の欠失、置換)は、酵素活性が必須の領域に指向されなければ、それらの酵素活性を除去するよりむしろ、減少させるようである。X線結晶データおよびコンセンサス配列データの評価に基づき、必須ではないようであるこの酵素の領域で最初に開始することは、アミノ酸が、連続的に(すなわち、1つのアミノ酸、次いで2つのアミノ酸、次いで3つのアミノ酸)欠失され得る領域を同定することであり、それが完全に破壊される前の酵素活性の連続的な減少を生じる。全ての必須な酵素を有する病原性細菌および他の微生物の弱毒化した変異体を構築するための方法としてTIAを行うことは、実行可能であるはずである。そのような変異体の例は、以下に提供される。
第2に、この酵素の変異体が、野生型を置換するために用いられる場合、これらの酵素変異体は、これらの酵素活性の変化に対応する病原性の変化を生じる。活性と毒性との間に直接的で粗い相関が存在している酵素活性の範囲が存在しているようである。従って、例えばSODを用いた場合、30%より高いSOD活性を有する変異体は、インビボで十分に毒性であり得、10%〜30%のSOD活性を有する変異体は、最小限からほとんど全ての毒性の範囲であるインビボでの増殖速度および疾患誘発能力を示し、そして10%未満のSOD活性を有する変異体は、完全に有毒であると予想される。
工程1:必須酵素および抗アポトーシス酵素の同定
(必須酵素および抗アポトーシス酵素の型)
当業者は、インビボでの微生物生存にとって全部を発現することが必須であり、および/または宿主細胞に抗アポトーシス効果を与える酵素を同定し得る。TIAにおいて使用するための必須の抗アポトーシス酵素の同定法の手引きは、以下に、ならびに実施例1および13に提供される。
必須の酵素は、微生物に必須の代謝経路に関与する酵素であり得る。例えば、この酵素は、基本的な細胞の代謝および呼吸に関与する酵素であり得、解糖、ペントースリン酸経路、トリカルボン酸回路、またはグリオキシル酸回路に必須の酵素を含む。この酵素は、アミノ酸生合成または核酸生合成(プリン合成を含む)に関与する、酵素であり得る。この酵素は、核酸の複製に関与する酵素(DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼを含む)、および核酸修復酵素であり得る。この酵素は、脂質生合成に関与する酵素であり得、アセチルCoA合成酵素、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、アセチルCoA C−アセチルトランスフェラーゼ、および合成的カルボキシラーゼが挙げられる。他のカテゴリーの見込みがある必須酵素として、オキシドレダクターゼ、オキシゲナーゼ、およびデヒドロゲナーゼ、ならびにユビキノンシトクロムbレダクターゼ複合体、シトクロムcオキシダーゼ、ならびに好気性および嫌気性リン酸化電子伝達鎖(phosphorylative electron tranport chain)についての酵素が挙げられる。いくつかの微生物は、ミコバクテリアミコール酸合成およびポリケチド合成に関する酵素のような、特有の必須酵素を有する。M.tuberculosisを含むいくつかの微生物は、鉄を必要とし、鉄除去シデロホア(siderophore)、ミコバクチンおよびエキソケリン(exochelin)の産生のための特殊な酵素を有する。他の微生物は、特殊化した酵素を産生し、この酵素は、宿主細胞構造におけるその作用に起因する、毒性因子として作用する。これらの酵素として、ホスホリパーゼ、リパーゼおよびエステラーゼ(これらは、細胞膜または液胞膜を攻撃し得る)、ならびにプロテアーゼが挙げられる。さらに、シグナル伝達に関与する酵素(センサーヒスチジンキナーゼのセンサーおよび応答調節因子が挙げられる)は、TIAの潜在的な標的である。
本方法の標的とされる必須酵素は、正常な宿主の免疫応答から微生物を保護するのに役立つ酵素であり得、この酵素活性があまり存在しない場合、宿主細胞の免疫系は、病原体の制御および根絶についてより効果的になる。例えば、細胞内の細菌性病原体に対して、好中球およびマクロファージが微生物の死滅を媒介するために生成する、反応性酸素中間体(ROI)および反応性窒素中間体(RNI)を、無害化する細菌の酵素は、特定の微生物の十分な生存のために必須である。微生物がインビボにおいて生き残るための能力に特異的に影響すると見込まれる得る酵素の他の型は、通常、ストレス条件下において誘導され、熱ショックストレス制御酵素が挙げられる。従って、これらの酵素は、本発明の方法による改変のためのよい標的である。
通常、宿主細胞に対して抗アポトーシス効果を有する細胞内細菌の酵素は、本方法において、標的とされ得る。抗アポトーシス酵素の活性の減少は、細胞内細菌を有するマクロファージおよび他の細胞のアポトーシスを強め、これによって微生物の死滅を付随する宿主細胞のアポトーシスの増加を起こす。これは、ワクチンの効力を改善する方法と比べて、先天的な免疫応答を増強し、そして抗原提示経路を本質的に変えるという利点がある。
後者のカテゴリーの酵素の具体的な例として、鉄−マンガンスーパーオキシドジムスターゼ(SOD)、亜鉛−銅スーパーオキシドジムスターゼ、カタラーゼ、硝酸還元酵素、および細胞内酸化還元環境に影響を及ぼす微生物の他の酵素(チオレドキシン系、グルタチオンレダクターゼ(グルタレドキシン(glutaredoxin)、他のチオレドキシン様タンパク質、他のチオレドキシンレダクターゼ様タンパク質、他のグルタレドキシン様タンパク質、他のチオレダクターゼ、および他のプロテインジスルフィドオキシドレダクターゼを含む)が挙げられる。さらに、ClpC Atpアーゼは、微生物の酸化還元関連酵素の誘導に関与するストレス誘導型酵素であるので、天然の標的である。これらの酵素の変異体を開発するための具体的なアプローチが、以下に議論される。
(必須酵素および抗アポトーシス酵素の同定のための方法)
インビボにおける増殖のための必須酵素は、酵素活性が減少された変異体を作製し、そしてインビボにおいて変異体が親株よりも生存率の低いことを決定することにより同定され得る。必須酵素を直接的に同定するために、種々の技術が使用され得、対立遺伝子の不活性化、アンチセンス技術、または減少された酵素活性を有する変異体酵素の作製[図1]が挙げられる。抗アポトーシス酵素は、減少された酵素活性を有する細胞内病原体の変異体を作製し、そしてインビボ[実施例4]または細胞培養のどちらかにおいて宿主細胞のアポトーシスが増加されることを決定することによって同定され得る。いくつかの酵素は、本質的に必須で、かつ抗アポトーシス性の両方であり、そして本発明の2重の局面を必要とする酵素を用いて、ワクチンとして使用するために、どのように安定な前アポトーシス変異体を構築するかを教示する。
いくつかの場合において、ある酵素は、他の微生物種のまたは真核生物種の相同のまたは類似の酵素の重要な役割に基づいて、インビボでの生存のために必須であると推測され得る。このような場合、酵素の効率性のより低い変異体を作製するために、TIAの工程(b)に直接進められ得る。
多くの場合において、特に、対立遺伝子の不活性化が時間を浪費する病原微生物を伴うか、または、インビトロでの培養のために必須の遺伝子の重要性を評価する場合、アンチセンス技術は、その宿主細胞に抗アポトーシス効果を与える遺伝子を含む、インビボにおいて必須の遺伝子を同定するための、最も時間効率のよい方法を提供する。例えば、微生物(例えば、細菌または真菌類)を、核酸の翻訳効率を低下するアンチセンス核酸を用いて形質転換することによって、微生物によって産生される酵素の量が、減少され得る。このアンチセンス核酸は、酵素についての遺伝子のコード配列から転写されたメッセンジャーRNAの領域と相補的であり得る。当業者は、以下の実施例1に記載されるように、アンチセンス核酸を生成しそして使用し得る。
アンチセンス法(Coleman、GreenおよびInouye、1984)は、細菌の毒性株を弱毒化し、そしてインビボでの病原性に関する特定の微生物の遺伝子の重要性を評価するのに有用であることが示されてきた(Kernodleら、1997;Wilsonら、1998)。これらの方法はまた、ワクチンの1つの安全な、非復帰形態を作製するか、または弱毒化の範囲内にある多数のワクチン候補を構築するために、TIAを使用する前に、ワクチンの候補として酵素が弱められた変異体の可能性を評価するために使用され得る。従って、酵素がインビボにおいて必須であることを実証するための先立つ証拠が存在しない酵素に対し、TIA発明を実施するための、最も時間効率のよい方法は、酵素が弱められた変異体の弱毒化を実証するためのアンチセンス技術の使用か、またはおそらく、最終的なワクチン候補を作製するためのTIAの実施の前にワクチン効力の予備的な証拠をなお示すことである[図1]。
例えば、M.tuberculosisのインビボでの必須の遺伝子を同定するために、アンチセンス変異体は、新規のpHV202プラスミド[図2]またはpLUC10(Cookseyら、1993)のどちらかにおいて、あるいは両方のベクターにおいて構築された[注:この文書を通して、用語pHV202およびpHV203は、交換可能に使用される:pHV203は、アンチセンスフラグメントの発現を駆動する65kDa熱ショックタンパク質のプロモーター領域における変異の修復によってpHV202から得られた。株およびプラスミドを、表1に要約する]。pHV202およびpLUC10の両方は、E.coliならびにミコバクテリア種(M.tuberculosisを含む)において複製し得る、E.coli−ミコバクテリアシャトルベクターである。通常、抑制されるタンパク質をコードする遺伝子の150〜300bpのDNAフラグメントが、利用され、そしてpHV202のマルチクローニング部位またはpLUC10のルシフェラーゼ遺伝子の上流のHindIII部位のどちらかにクローニングされる(Cooksey、Crawford、Jacobs,Jr.およびShinnick、1993)。pLUC10におけるHindIII部位は、1つだけではない;従って、さらなるいくつかの操作および検証が、これらのベクターに対し、連結産物が、正しい配向性を有しそして種々のDNAフラグメントの再アセンブリを有することを確かめるために必要とされる。両方の場合において、DNAフラグメントは、65kDaの熱ショックタンパク質(Pr−HSP)のプロモーターの後ろに、配向され、この配向は、M.tuberculosis染色体の内因性のプロモーターの後ろの配向に対し、アンチセンス方向である。従って、プラスミド上でのPr−HSPの発現は、染色体遺伝子のmRNA転写物とアニールするアンチセンスmRNA転写物を生成し、RNAseによる分解を刺激し、そして遺伝子産物の減縮された合成により翻訳の減少を引き起こす。オープンリーディングフレームの(ORF)5’に近いフラグメントは、より強い阻害を引き起こすようであるが、いくつかのタンパク質においては、このような領域は、より無関係のタンパク質に類似しがちである(例えば、類似のリーダーペプチド領域に起因する)ので、ORFの中間領域におけるDNAフラグメントが、効果の特異性を増強するために選択された。
アンチセンス構築物は、M.tuberculosis遺伝子に対して以下のように作製された:SOD(sodA)、チオレドキシン(trx)およびClpC Atpアーゼ(Rv3596遺伝子)。結核におけるSODの役割は、議論されてきたが、他のいくつかの感染の病因においても重要なようである(Igweら、1999;Fangら、1999)。M.tuberculosisは、2つのスーパーオキシドジムスターゼ、sodAにコードされる鉄−マンガン補因子型酵素およびsodCにコードされる銅−亜鉛酵素を生成する。sodCの対立遺伝子の不活性化が、M.tuberculosisを反応性酸素中間体(ROI)に対しより感受性を高くするが、モルモットにおいては、毒性を弱めない(Dussurgetら、2001)。この著者らはまた、それらがsodAを不活性化できず、そしてこの酵素が生存のために必須であることを示唆し、このことは、インビボにおけるこの酵素の重要性を決定するための、アンチセンス技術を使用する現在の戦略の価値を裏付けている。注目すべきことに、Legionella pneumophilaにおいて、鉄補因子型SODは、生存性のために必須であり、そして、対立遺伝子の第2のエピソームのコピーが存在するのでなければ、染色体遺伝子の対立遺伝子の不活性化は、起こりそうもない(Sadoskyら、1994)。チオレドキシン(TRX)は、SODと類似のROI除去活性を有するtrxにコードされる12kDaのタンパク質である(Powis、BriehlおよびOblong、1995)。M.tuberculosis TRXと85〜90%の同一性を共有するM.lepraeのTRXは、M.smegmatisの中にクローニングされ、そしてヒトマクロファージによる殺傷に対する耐性を与える(Wielesら、1995;Wielesら、1997)。チオレドキシンおよびチオレドキシンレダクターゼの遺伝子は、多シストロン性のゲノムエレメント上に存在するので、このアンチセンスエレメントは、チオレドキシンおよびチオレドキシンレダクターゼの両方の発現を減じることが予期される。ClpC Atpアーゼは、他の細胞内病原体によって引き起こされる感染の病原論におけるその重要性に基づいて選択される(Rouquetteら、1998;Nair、MilohanicおよびBerche、2000)。SOD減少変異体は、ゆっくりと増殖し、極小のコロニーを生成するのに4週間以上、そしてM.tuberculosisの親株の3週のコロニーのサイズに達するのに、7〜8週間を要する。
AS−SOD発現ベクターのはじめの評価は、ミコバクテリアにおける151bpのAS−sodA RNAの強い発現を示唆した[図3]。ノザンハイブリダイゼーションは増殖の遅いミコバクテリアにおいて実施するのがよりいっそう困難であるので、M.smegmatisを、Pr−HSPの機能を試験するために使用し、そしてPr−HSPは、M.tuberculosisおよびM.smegmatisの両方において認識され(DasGuptaら、1998)、後者は前者での発現の代理として使用されることが可能とされた。AS−SODベクターのH37Rvへのエレクトロポレ−ションの後、SODの減じられた発現が観測された[図4]。さらに、SODが減じられたH37Rv株は、過酸化水素に対するより大きな感受性を示した[図5]。
インビボ実験は、C57B1/6マウスにおいて、コントロール株と比較してSODの減じられた株が顕著に弱毒化されることを示す[図6]。弱められたTRX産生およびclpC Atpアーゼ産生を伴う変異体もまた、弱毒化されたが、SODが弱められた株ほどは弱毒化されなかった。従って、これらの3つの酵素の各々は、M.tuberculosisのインビボでの生存に全ての発現が必須であることが同定された。
SOD弱毒化H37Rv株およびその毒性のコントロールの肺への感染は、顕著に異なる組織病理学的な知見を生じた[図7]。特に、注目すべきは、SOD弱毒化H37Rvに感染したマウスにおいて、24時間でこの時点では生存する細菌はより少数であるにも関わらず、単核細胞(ほとんどはマクロファージ)を伴う強められた間質性浸潤であった。さらに、微視的な特徴は、2つの群に対して時間がたつにつれて異なって発達した。初期の間質性の単核細胞は、SOD弱毒化H37Rvに感染したマウスにおいてはじめの2週間にわたり弱く浸潤し、そして28日までには再び顕著になり、感染後の第3週および第4週における細胞性免疫の発達に起因するようであった。逆に、毒性のH37Rvコントロール株に感染したマウスの肺は、24時間後に最小の間質性浸潤を示し、7日目まで穏やかな中壁の壁厚増大を伴った。しかし、14日目までには、顕著な間質性単核細胞の浸潤ならびに顕著な壊死を伴う肺胞の多形核細胞および単核細胞の浸潤を起こした。マウスが生き残った場合、浸潤および壊死は、28日後においてよりいっそう激しかった。
SODの弱められたH37Rvに感染したマウスの肺におけるDNA断片化のTUNEL(TdT[ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ]媒介型dUTPニック末端標識化)評価は、約30%の間質性単核細胞が、1日目、7日目および14日目にアポトーシスを生じたことをついて示す[図8]。28日目において、顕著に増加したアポトーシスは、総細胞の60パーセントまでを巻き込み、この時点で、再生した間質性単核細胞の浸潤と一致する[図7]。逆に、アポトーシスは、毒性M.Tuberculosisに感染したマウスにおいて1日目と7日目で、アポトーシスが同定されたが、主に肺胞空間で層をなす細胞を含むようであり、そして間質性空間においては、アポトーシスを生じた単核細胞はほとんど観察されなかった。14日後までに、毒性の桿菌に感染したマウスは、顕著な間質性の浸潤および肺胞の浸潤の発達にも関わらず、最小のアポトーシス(<5%)を示した。間質の炎症性の浸潤における単核細胞のアポトーシスは、SOD弱毒型H37Rvに感染したマウスの肺においてほとんど独占的に生じた。
別の実験が、SODの弱められたH37RvとBCG Ticeとの長い持続時間にわたる感染に、どのようにマウスが応答するかを比較するために設定され、はじめの16週間にわたり頻繁なサンプリングを行い、続けて最後に動物の屠殺および培養を行った。BCGを受けたマウスと比較すると、SODの減じられたH37Rv株を受けているマウスは、17ヶ月にわたり6.3gmより多く体重が増加し[図9]、そして脾臓からの桿菌のより優れた根絶を示した[図10]。さらに、17ヶ月目において、マウスの肺の全体的な概観が異なった[図11]。条件が知らされていない評価者(a−blined reviewer)による種々の組織病理学的な特徴のスコアリングは、概して、BCGを受けたマウスの間でより大きい肺胞の炎症が浸潤し、そして肺の一部との硬化を示した[表2;図12]。これは望まれない結果であり、そしてSODが弱められた株は、現在の結核用のワクチンであるBCGよりもこの結果をより少なく生じる。また、SODが弱められたH37Rvを受容したマウス中で、より多量の、リンパ球、マクロファージ、およびプラスマ細胞をともなう脈管周囲の浸潤を生じた[表2;図12]。このことは、BCGと比較して、SODが弱められたH37Rvによって誘導される免疫応答における差異が存在し、そして同様の脈管周囲の集合がワクチンが関与するいくつかの動物モデル研究における防御免疫と相関することを示唆する。組み合わせると、これらの結果は、SODが弱められたH37Rvへの長期化した感染が、結核のための現在のワクチンであるBCGよりも良好に耐性があることを示す。
次に、ワクチンとしての、SODが弱められたH37RvおよびBCG Ticeの効力を比較した。静脈内ワクチンの6週間後、C57B1/6マウスをM.tuberculosisの毒性Erdman株の鼻内接種物(チャレンジの1日後に屠殺したマウスの肺からのホモジネートのバックカウント(backcount)によって評価した場合、肺に対して10〜10pfuの接種物を送達する)を用いてチャレンジした。これは、非常に厳格なチャレンジである。なぜなら、ワクチン接種したマウスは、IV経路によって投与した毒性M.tuberculosisよりも、醸気的に投与した毒性M.tuberculosisに対してより感受性であり (North,LaCourse,and Ryan,1999)、そして大量の接種物が使用されたからである。例えば、新規なワクチン候補に関する他の最近の治験において、Jacksonらは、IVチャレンジを用い(Jackson,Phalen,Lagranderie,Ensergueix,Chavarot,Marchal,McMurray,Gicquel,and Guilhot,1999)、一方Hondulasらは、エアロゾルによって、ほんの5〜10cfuを用いてチャレンジした(Hondalus,Bardarov,Russell,Chan,Jacobs,Jr., and Bloom,2000)。詳細な計数を、最初の10週間行い、ワクチン接種していないコントロールと比較して、ワクチン接種した両方のグループのマウスにおいて、毒性Erdman株の顕著に制限された増殖を示した[図13]。チャレンジの15ヵ月後、生存したマウスの最終的な屠殺の時までに、SODが弱められたH37Rvを用いてワクチン接種したマウスの肺は、BCGを受容したマウスの肺よりも顕著に健常であった[図14、図15]。
ワクチン効力との免疫相関を決定するために、時間ともに進展するCD4+ T細胞応答およびCD8+ T細胞応答をモニターする、マウス肺の単一細胞懸濁液の蛍光活性化細胞分析分離(FACS)を含む反復実験を行った。最初のT細胞実験において、BVVまたはBCGのいずれかを用いるワクチン接種は、最終的に総リンパ球の40%を含むCD4+表面抗原を提示する細胞の割合の増加をもたらした[図16]。対照的に、CD8+ T細胞応答においては、顕著な違いが示され、BVVワクチン接種マウスは、BCGワクチン接種されたマウスと比較して、チャレンジ後4ヶ月において、CD8+表面抗原を発現するリンパ球の割合の2倍を超える量を示した[図16]。さらなる実験は、BCGよりも、BVVによって、より大量のCD8+ T細胞応答の誘導、ならびにワクチン接種に対する用量依存性応答の観察が再現された[表3〜6]。CD8+ T細胞についての免疫組織化学染色[図24]は、FACSの結果を確認し、BVVがBCGよりも強力なCD8+ T細胞応答を誘導する独立のアッセイを介して確認する。このことは、肺内部のCD8+ T細胞の位置についての情報を提供し、これら細胞が、間質空間中、およびリンパ系細胞の大量な脈管周囲集合中に、多数存在したことを示し[図25]、このことは、BVVワクチン接種したマウスにおいて非常に顕著である[図12]。
次に、本発明者らは、先天的な免疫応答と、獲得したT細胞応答の発達との間の関係に焦点を当てた。本発明者らは、上記において、BVVで感染されたマウスが、肺への迅速な単核細胞浸潤[図7]、およびこれら細胞のアポトーシス[図8]を示すことを示し、一方、毒性H37Rvを用いる感染に対する宿主応答は、ゆっくりと発達する。H37Rvを用いた場合、BCGはまた、豊富な量のSODを産生し(Florio et al.,1997)、そして他の手段によって弱毒化される(Behr et al.,1999)。強力な細胞性免疫応答の発達の基礎となる感染に対する初期の宿主応答を評価するために、C57B1/6マウスを、BCGまたはSODが弱められたH37Rvのいずれかを用いて静脈内接種し、そして肺を24時間で収集し、そして顕微鏡観察した。H37Rvの場合において以前に示されるように、BCGを用いて感染したマウスは、BVV感染マウスの肺中に存在する初期の間質炎症とは全く対照的に、肺の最小の初期の単核細胞浸潤を示した[図17]。BCG、BVV、またはH37Rvを用いて静脈内接種3日後のマウスの肺から調製した単一細胞懸濁液は、優勢な単球誘導を示すF4/80表面抗原を発現する細胞がBVV感染マウスにおいて最も多いことを示した[表7]。対照的にT細胞増殖は、この初期の時点においてワクチン接種グループの中で同様であり[図8]、このことは、ワクチン接種の数週間後までに、増強されたCD8+応答のその後の発達をもたらすものが、単球誘導の細胞の初期の流入であることの、さらなる証拠を提供する。別の実験は、樹状細胞もまた、H37Rvに感染したマウスの場合よりも多量に、BVV感染したマウスの肺に存在したことを示した[表9]。最後に、SODが弱められたBCGは、強いCD8+ T細胞応答を誘導し、この誘導は、BCGでワクチン接種した後に観察されるCD8+ T細胞よりもかなり大きく[表10]、BVVによって誘導されたCD8+ T細胞応答の大きさに匹敵した[図16、表4〜6]。SODが弱められたBCGの同系の親BCG株と比較した場合、そのSODが弱められたBCGを用いてワクチン接種したマウスにおいてかなり大きなCD8+ T細胞応答が生じることは、CD8+ T細胞応答を増強する原因がSOD活性の減少であるということを確立する。このことは、ワクチンとして使用するために既に十分に弱毒化された細菌株(BCGを含む)を改変して、抗アポトーシス微生物因子の活性を減少することによってその免疫原性を増強し得ることを示す。
上記において、いかにしてアンチセンス核酸の発現を用いて、どの酵素がインビボにおける微生物の生存に必須であるかを同定し、そしてそのような弱毒化された微生物がワクチンとして有用であることを実証し得るということを例示する。従って、本発明は、その効力がM.tuberculosisによるSOD産生が減少される場合に、より大きな初期の先天的な宿主応答(すなわち、宿主細胞のアポトーシスをともなう、より大きな迅速な炎症細胞の浸潤)が存在することに起因する、高度に効果的な結核ワクチンを提供する。より大きな先天的宿主応答は、BCGを用いるワクチン接種の後に達成されるよりも強力な順応性のある免疫応答の発生を許容する状態(すなわち、抗原提示細胞によってその後プロセシングされる微生物抗原を含むアポトーシスマクロファージ(インビボにおいて、アポトーシス関連抗原の交差提示(cross−presentation)を達成する樹状細胞を含む)を確立する[図18]。さらに、これらの実験は、鉄を補因子として含むM.tuberculosisのSODが、疾患を生じるその活性の中心であることを示す。それは、先天性の免疫応答(アポトーシスを含む)を阻害し、このことは、強力な順応性の免疫応答を発生させるために必要である[図19]。BVVのワクチン効力に関連する重要な観察、メカニズム、仮説、および関連性の概要を、図20に示す。
結核の病原に対するSODの重要性が本明細書において実証されているので、TIAをこの必須酵素に適用し、連続した弱毒化を網羅する、さらなる安定な、復帰しない(non−reverting)ワクチン候補を構築し得る。そして上記のように、対立遺伝子の不活化を用いる、M.tuberculosisを鉄を補因子とするSOD産生について欠損とする試みは、鉄を補因子とするSODは、M.tuberculosisの増殖のために絶対的に必須であるためか、または鉄を補因子とするSODを不活化した変異体はあまりに増殖が遅く、同定および培養ができないために、成功していないことが記載されている(Dussurget,Stewart,Neyrolles,Pescher,Young, and Marchal,2001)。本発明のアンチセンス核酸は、部分的に弱毒化された細菌をさらに弱毒化するための手段として、または微生物の抗アポトーシス酵素の産生を減少するために、直接的に有用であり、それによってインビボにおける抗原提示を、免疫原性を改善する様式において改変する。例えば、BCGにおけるSOD産生の減少は、本明細書において実証されるように、その免疫原性を改善する[実施例10を参照のこと]。
細菌が宿主細胞の内側にある場合に、宿主細胞に対して抗アポトーシス効果を発揮する、その細胞内細菌によって生成される酵素の同定は、細胞の酸化還元(レドックス)状態に関連する生物学的活性を有するか、または細胞内のアポトーシスシグナル伝達を直接妨害する1つ以上の酵素の生成が減少した、微生物の変異体を作製することによって実行され得る。細胞内レドックス状態に関与するかまたは宿主細胞内でアポトーシスシグナル伝達と直接相互作用する好ましい酵素は、以下を含む一覧から得られ得る:鉄−マンガンSOD、亜鉛−銅SOD、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、グルタチオンレダクターゼ(グルタレドキシン)、グルタミンシンテターゼ、他のチオレドキシン様タンパク質、他のチオレドキシンレダクターゼ様タンパク質、他のグルタレドキシン様タンパク質、他のチオールレダクターゼ、および他のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ。減少した酵素活性を有する変異体は、TIA、または周知の分子プロトコル(対立遺伝子の不活化、アンチセンス技術を含む)を用いることによって作製され得る。次いで、その変異体は、当業者に周知のインビトロアッセイおよびインビボアッセイを用いて、その微生物が細胞内に存在するマクロファージまたは他の真核生物細胞のアポトーシスを誘導するその能力について親株と比較され得る。例えば、親の細菌および改変された細菌は、骨髄または末梢血由来の単球由来マクロファージを用いて、マウス、他の哺乳動物、またはヒト宿主に由来するマクロファージ細胞培養物に感染させるために使用され得る。その細菌が細胞内に存在する、マクロファージまたは他の細胞株(例えば、ヒトU−937細胞)が、使用され得る。アポトーシスが、DNAフラグメント化アッセイ(DNAフラグメント化が容易に同定され得るマウスのような種について)またはアポトーシスについて特定の株を用いて同定され得る。アポトーシス株は、TUNEL(TdT[末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ]媒介dUTPニック末端標識)を含み、そして親によって感染された細胞において見出されるDNAフラグメント化の量と改変された細菌によって感染された細胞において見出されるDNAフラグメント化の量とを評価および比較するために使用され得る。あるいは、アポトーシスと関連する真核生物の遺伝子の誘導は、実施例9に例示されるようなRNAse保護アッセイ[図19Bを参照のこと]、RNAハイブリダイゼーションメンブレン、マイクロアレイ遺伝子チップ、または当業者に公知のほかの技術を用いて、比較され得る。インビボモデルもまた、微生物酵素の生成を減少することが、宿主細胞のアポトーシスを増加するか否かを決定するために使用され得る。例えば、TUNELによって染色された肺組織の顕微鏡検査は、病原性のH37Rvコントロールによる感染と比較して、SOD−減少H37Rvが、肺の間質における単核細胞のアポトーシスをかなり多く誘導することを示した[図8]。
手動の種々の細胞内細菌は、特定の抗アポトーシス酵素が変化し、この抗アポトーシス酵素は、アポトーシスをしないように宿主細胞を維持するのを助けるため細胞内最近が生成する。細菌が、その環境を制御する細胞外因子を使用する場合、特定の酵素が、特定の細菌種について抗アポトーシス機能を発揮することを示唆する強い手がかりは、その細菌種による酵素の細胞外生成である。グラム陰性の細菌種において、ペリプラズム空間中に分泌される酵素は、同様の重要性を有し得る。宿主細胞に分泌酵素の例は、病原性マイコバクテリアによる大量の抗アポトーシス効果を発揮する、鉄−補因子SODの生成がある。鉄−補因子SODの分泌は、この酵素が、マイコバクテリアに対して抗アポトーシス効果を発揮する生存のために重要であることを示唆し、そして本発明者らは、その効果が宿主細胞アポトーシスの阻害および感染部位への単核細胞の浸潤によって主に媒介されることを見出した。病原性のマイコバクテリアはまた、細胞外チオレドキシンシンテターゼおよび細胞外グルタミンシンテターゼ(シンターゼ)を生成し、この酵素はまた、抗アポトーシス効果を発揮すると考えられる[以下を参照のこと]。これは、プロアポローシス効果を与えるように変更され得る細菌によって生成される1つより多くの抗アポトーシス酵素があり得ることを例示する。反対に、上記に列挙されるいくつかの酵素は、特定の細菌種に対し、プロアポローシス表現型を与え得ない。例えば、ヌル変異体を作製し、そして試験した場合、M.tuberculosisの亜鉛−銅スーパーオキシドジスムターゼは、細胞外にはなく、そしてその不活化は、M.tuberculosisの病原性に影響しなかった(Dussurgetら、2001)。
細菌の抗アポトーシス酵素は、その宿主細胞に対して直接的な抗アポトーシス効果を示すとは限らないが、代わりに、酵素ではないが微生物によって分泌される抗アポトーシス因子の合成または維持のいずれかに関連し得る。例えば、Salmonella種は、大量の細胞外グルタチオンを分泌し、このグルタチオンは細胞のレドックス状態に影響する還元剤であり、そして3つのアミノ酸、グリシン、グルタミン、およびシステインから構成される。このことは、還元型のグルタチオンを維持することを助ける、グルタチオンレダクターゼ(グルタレドキシン)、またはグルタチオンの成分であるグルタミンの生合成に関するグルタミンシンテターゼの活性を減少するが、Salmonella種に対してプロアポローシスの表現型を与え、これによって、抗原提示を増強する。
(工程2:必須酵素の変異体生成)
酵素コード遺伝子を変異する工程、または野生型遺伝子を変異遺伝子もしくは相同遺伝子で置換する工程において、標準の分子方法が、使用される。これらの方法の例が、以下に記載される。
その後、当業者は、必須酵素の1次構造を変化すること、または必須酵素をコードするか、もしくはその転写および翻訳を調節するヌクレオチドを改変することによって、必須酵素の変異体を作製し得る。これらの変異は、酵素効率の漸減、酵素生成の減少、もしくはある環境における減少、酵素局在化の変化によって酵素活性の減少を生じるべきである。ある環境において、病原性微生物の酵素は、変異を病原性微生物の酵素中に導入することよりもむしろ、別の種由来のより効率が低い酵素によって置換され得る。これらの変異体は、例えば、親の天然酵素の活性の95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2%などのみである酵素活性を示す。この活性減少範囲内にある活性を有する一連の変異体酵素が、生成され得る。
(ネイティブ酵素の量の減少)
酵素の活性は、微生物によって生成される酵素の量を減少することによって、減少され得る。1つの実施形態において、微生物によって生成される酵素の量は、その酵素をコードする核酸の発現を減少し、それによって、微生物によって生成される酵素の量を減少するように、微生物におけるプロモーターを変更することによって、減少される。変異は、天然に存在するプロモーター中に、そのプロモーターの効果を椎作するように導入され得る。例えば、−35〜−10のリボソーム結合部位に影響する変異(遺伝子の変異)が、リボソーム結合および転写が、正常なプロモーターで示されるものに対して減少されるような、細菌の酵素生成を減少するプロモーター中に導入され得ることを当業者は理解する。あるいは、天然に存在するプロモーターは、同じ微生物または異なる微生物種由来のより弱いプロモーターとか、あるいは十分に発現されない別の微生物因子についてのプロモーターと置換され得る。異なるタンパク質が、同じ細菌によって種々の程度で発現されること、および高発現酵素のプロモーターをあまり十分には発現しないタンパク質のプロモーターと置換することにより酵素活性の減少が達成され得ることを、当業者は理解する。
例えば、M.tuberculosisにおいて、sodAプロモーターを変更することは、酵素SODのより少ない発現を生じ得る。M.tuberculosisおよび他のマイコバクテリアの種由来のより弱いプロモーターが、天然のSODプロモーターを置換するために使用され得る。従って、プロモーターを変更することは、細菌におけるSODの発現の減少を生じ得、これによって、インビボで完全に生存する可能性が少ない改変された細菌が生成される。
本発明の別の実施形態において、微生物によって生成される酵素の量は、この酵素をコードする天然に存在する核酸中のコドンを、この酵素のmRNAの翻訳の効率を減少するコドンと置換することによって減少され得る。細菌の種が、他よりもより効率的にいくつかのコドンを使用することが、周知である。従って、当業者は、効率的に使用されるコドンを、より低効率で使用されるコドンと置換し得、その結果、必須酵素の変更されたmRNAの翻訳は、より効率が小さくなるようにし得る。従って、このmRNAの翻訳の効率を減少することによって、その酵素のアミノ酸配列を変更することなく、より少ない酵素が生成される。例えば、ロイシン(Leu)に関して:UUGコドン、CUCコドン、およびCUGコドンは、比較的頻繁に使用され、一方で、UUAコドン、CUCコドン、およびCUAコドンは、余り頻繁に使用されない。低使用頻度のロイシンコドンでSOD遺伝子全体にわたる、多数の高使用頻度のロイシンコドンを置換することによって、翻訳効率が減少され得、そしてこれによって、SODの1次構造を変化することなく、M.tuberculosis SODの定量的な生成が減少される。コドン置換の案内を助けるために、コドン使用表が、M.tuberculosisおよび他の微生物について利用可能である。同様の置換が、他のアミノ酸についてなされ得る。翻訳を減少するための別のストラテジーは、様々な低使用頻度のコドンを、オープンリーディングフレーム内に続けて置くことである。低使用頻度のコドンが、隣り合って配置される場合、翻訳に対して強い遅延効果がある(Lakeyら、2000)。おそらく、これは、mRNA転写物とリボソームとの間の分離を導く、リボソームの休止を生じ、これによって、翻訳に影響し、そして遺伝子産物の形成の減少を生じる。従って、SODリーディングフレーム初期への(2、3、4など)低使用頻度のコドンの挿入は、翻訳効率の漸減を達成する。
E.coli中のSODを含む、M.tuberculosis遺伝子産物の合成の改善におけるこのストラテジーの成功が、示されている(Lakely,Voladri,Edwards,Hager,Samten,Wallis,Barnes,およびKernodle 2000)。同じストラテジーによる遺伝子産物の形成の減少が、非常に実現可能である。マイコバクテリアの背景におけるコドン変更遺伝子の転写/翻訳における差異は、野生型M.tuberculosis対立遺伝子について記載されるように、M.vaccaeにおける各変異体SOD遺伝子を発現すること(Zhangら、1992;Cooperら,1994)、およびアガロースゲルアッセイにおけるM.tuberculosis SODテトラマーの相対量についてアッセイすることによって決定される。これは、種々の変異体SOD対立遺伝子の発現の比較範囲、およびM.tuberculosisにおける対立遺伝子置換に使用するためにどの変異対立遺伝子を選択のために使用され得る翻訳されたSODの量を提供するべきである。
(酵素の効率の減少)
本発明の別の実施形態において、酵素(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD))の活性は、酵素の効率を減少することによって、減少され得る。例えば、酵素の効率は、この酵素をコードする天然に存在する核酸を変更することによって減少され得、この変更は、天然に存在する核酸中のコドンの欠失、挿入および/または置換を含み、ここで迅速に欠失、挿入、または置換を有する核酸は、減少された効率を有する酵素をコードする。酵素の欠失、変異体挿入および置換を迅速に作製する当業者に公知のPCRベースの方法がある(Hoら、1989)。酵素の一部の内部欠失を含む酵素の再形成のための他の遺伝的ストラテジーが、記載されている(Ostermeier,Nixon,およびBenkovic,1999)。
M.tuberculosis酵素または他の種由来の(M.tuberculosis酵素とのアミノ酸配列の整列によって決定た場合)高度に相同な酵素のいずれかから、直接決定されるX線結晶学的データは、これらの酵素の多くについて利用可能である。このようなデータは、TIAの間に導入する変異を導くための貴重な案内であり得る。結晶構造の知見は、変更が、酵素を完全には不活化しない可能性がより小さい活性部位から離れた領域に対して標的化されるべきアミノ酸の欠失、挿入および置換を可能にする。そして、M.tuberculosis SOD実施例[実施例11、表11および図21〜22]において実行されるように、内部ドメイン領域におけるアミノ酸欠失は、ドメイン内での変化をなすよりも酵素構造を深刻に変化する可能性がより小さいと予測される。
特定のアミノ酸の欠失、置換および挿入を導くことを助けるX線結晶データの非存在下で、アミノ酸または免疫原生および減少した病原性を有する微生物において改変された酵素を生成するための酵素のアミノ酸の置換は、その酵素のアミノ末端から開始して、その酵素における各アミノ酸の連続的な置換を含む系統的アプローチによって実行され得る。1アミノ酸置換を有する酵素を有し、かつ免疫原性および減少された病原性を示す微生物が、同定され得、そして第2のアミノ酸置換が、単置換酵素のアミノ末端から開始して、その単置換酵素のアミノ酸の配列中に連続的に導入され得る。次いで、二重置換酵素を含む微生物は、免疫原性および弱毒化された病原性について試験され得、そしてそのような免疫原性および弱毒化された病原性を示す細菌は、本明細書中に記載される系統的な連続的な方法によってなされるアミノ酸置換を有し得る。従って、種々の病原性のレベル変化を有する複数の細菌株が、さらに生成され得る。例えば、以下の実施例11および12を参照のこと。
酵素のアミノ末端から開始する、酵素における1つ以上のアミノ酸の連続的な欠失を含む同様の系統的アプローチが、欠失変異体を構築するために利用され得る。1アミノ酸欠失を有する酵素を有し、かつ免疫原性および減少された病原性を有する微生物が、同定され得、そして第2のアミノ酸欠失が、その一欠失酵素のアミノ末端から開始して、その一欠失酵素のアミノ酸配列において連続的になされ得る。次いで、二重欠失酵素を含む微生物が、免疫原性および弱毒化された病原性について試験され得、そしてこのような免疫原性および弱毒化された病原性を示す細菌は、本明細書中に記載される系統的な連続的な方法によって作られるさらなるアミノ酸欠失を有し得る。従って、種々の弱毒化のレベルを有する複数の細菌株が生成され得る[実施例11および12、表11、ならびに図22を参照のこと]。
(酵素の局在化変更)
本発明の別の実施形態において、酵素の活性が、その酵素の局在化を変更することによって減少され得、ここで、その酵素の局在化を変更することが、その酵素の活性を減少する。いくつかの酵素において、細胞からの搬出は、リーダーペプチドによって媒介される。これが、変更される場合、微生物からの細胞外環境への酵素の搬出を妨害し得る。従って、酵素におけるリーダーペプチドの変更は、酵素の局在化を変更し得、これによって、その酵素の活性を減少する。例えば、プロ酵素中の切断部位に近接する1つ以上のアミノ酸、特に切断部位を含む2つのアミノ酸を置換することは、その酵素の局在化を変更し得る。微生物のプロテアーゼは、酵素の成熟形態を放出するように切断部位に対して通常は作用する。従って、それらのアミノ酸を置換することは、切断部位を変更し、その結果その切断部位はプロテアーゼによって認識されず;それ故、切断は生じず;そして成熟酵素は、生成されるが、その適切な位置に放出され得ない。
(酵素と類似の酵素との置換)
本発明の別の実施形態において、酵素の効率は、別の細菌種に由来する、その酵素の天然に存在する核酸についてより効率の低いバージョンをコードする核酸を置換することによって減少され得る。
例えば、SODは、多数の原核生物および真核生物によって生成される遍在性の酵素である。様々なマイコバクテリア属(M.avium(Escuyerら、1996)、M.smegmatis(HarthおよびHorwitz,1999)、およびM.fortuitum(Menendezら,1995)を含む)由来の鉄−マンガンSOD遺伝子は、無関係の細菌種(E.coliおよびS.aureusを含む)由来の対立遺伝子と一緒に、対立遺伝子置換のためのDNAを提供するために、直接クローン化され得るか、またはPCRによって増幅され得る。後者の2つは、M.tuberculosisとはGC含量(グアノシンおよびシトシン)(それぞれ、約50%、28%、および65%)、ならびにコドン使用法において著しく異なり、一方で、前者の3つは、これらが鉄よりもむしろそれぞれ、マンガンを、金属補因子として使用することを除いて、M.tuberculosis SODと高く相同性である。これらのうちの1つのみ、M.aviumのSODは、任意の有意な程度で分泌され(Escuyer,Haddad,Frehel,およびBerche,1996)、一方で、その他は、細胞内または膜結合型である。金属補因子、コドン使用法に従属する翻訳効率、および局在化におけるこれらの酵素間の差異は、それぞれの酵素の活性における差異を生じる。活性におけるこれらの差異は、本方法における利点のために使用される。
(工程3:天然の酵素と変異体対立遺伝子との置換)
本発明の遺伝子置換工程は、当業者に周知の標準的な核酸操作を含む。本明細書中で使用される場合、「核酸」は、1本鎖分子または2本鎖分子をいい、これは、ヌクレオチド塩基A、T、CおよびGから構成されるDNA、または塩基A、U(Tの代わり)、CおよびGから構成されるRNAであり得る。この核酸は、コード鎖またはその相補鎖を表し得る。核酸は、天然に存在する配列と配列が同一であり得るか、または、同じアミノ酸をコードする代替のコドン(天然に存在する配列中に見出される)を含み得る。さらに、核酸は、当該分野において周知のようなアミノ酸の保存的置換を表すコドンを含み得る。さらに、核酸は、アンチセンス核酸であり得る。
本明細書中で使用される場合、用語「単離された核酸」は、天然に存在する生物の他の成分のうちの少なくともいくつか(例えば、細胞環境における核酸および/または他の核酸と、通常関連して共通して見出される細胞構造成分)から分離されるか、または実質的に無関係の核酸を意味する。「細胞」は、細菌を含むがこれに限定されない、任意の生物由来の細胞であり得る。それ故、核酸の単離は、技術(例えば、細胞溶解に核酸の続くフェノールとクロロホルムでの抽出、これに続く核酸のエタノール沈殿)によって達成され得る。本発明の核酸は、核酸を単離するための当該分野において周知の方法に従って、細胞から単離され得る。あるいは、本発明の核酸は、核酸合成についての文献によく記載される標準的なプロトコルに従って合成され得る。本発明の核酸に対する改変がまた企図されるが、但し、その核酸によってコードされる酵素の必須構造および機能は、維持される。しかし、本発明の酵素をコードする核酸の改変が、その酵素の活性を減少することが企図される。
プロモーター配列もしくは他の調節配列を含む核酸、および/または本発明の酵素をコードする核酸は、分子クローニングおよび他の組換えDNA操作を容易にする当該分野において周知の制限部位および/または機能的エレメントの任意の組合せを含む組換え核酸構築物の一部であり得る。従って、本発明は、本発明によって改変される酵素をコードする核酸を含む組換え核酸構築物をさらに提供する。
その核酸配列は、その配列が発現制御配列の機能を確実にするように位置された後、宿主中で発現され得る。TIAほとんどの適用において、対立遺伝子置換ベクターは、細菌の染色体上の天然の酵素をコードする遺伝子を、この遺伝子の変異体型と置換するために使用される。特定の細菌の種と共に使用するための適切なベクターおよび技術は、当業者に公知である。例えば、M.tuberculosisにおいて、最終的な株において抗生物質耐性遺伝子を残さない対立遺伝子の目立たない置換を与えるシステムが、記載されている(ParishおよびStoker,2000)。あるいは、変異体遺伝子は、ファージ組込み部位を介して染色体中に挿入され得、次いで酵素の天然型をコードする遺伝子が、対立遺伝子の不活性化技術を用いて不活性化され、その結果、その変異体遺伝子のみが、最終的な株において発現される。あるいは、酵素の天然型をコードする遺伝子が、まず対立遺伝子の不活性化技術を用いて不活性化され得、次いで、変異体遺伝子が、プラスミドベクター上で微生物に戻し導入される。
本発明の核酸は、細胞中にあり得、この細胞は、その核酸を発現する細胞であり得、これによって、本発明の酵素が、細胞中で生成される。さらに、本発明のベクターは、細胞中にあり得、この細胞はそのベクターの核酸を発現する細胞であり得、これによって、本発明の酵素が細胞中で生成される。
本発明の酵素をコードする核酸は、本発明の酵素を機能的にコードする任意の核酸であり得る。機能的に酵素をコードする(すなわち、その核酸が発現するのを可能にする)ために、本発明の核酸は、例えば、発現制御配列(例えば、複製起点、プロモーター、エンハンサー)ならびに必要な情報処理部位(例えば、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、および転写のターミネーター配列)を含み得る。
選択された酵素をコードする核酸は、選択された酵素のアミノ酸配列に対する遺伝子コード、および任意の選択された酵素をコードする多くの核酸に基づいて容易に決定され得る。この酵素をコードする核酸配列における改変もまた、企図される。このような方法は、当該分野において標準的である。本発明の核酸は、当該分野において標準的な手段(例えば、組換え核酸技術および合成的核酸合成またはインビトロでの酵素的合成)によって生成され得る。
(工程4:ワクチンとして使用するための変異体の同定)
上記に記載されるように、病原性微生物において天然に存在する酵素をコードする遺伝子は、弱毒化した病原性を有する微生物を作製するための1つ以上の変異遺伝子または相同遺伝子で置換される。微生物の病原性の弱毒化とそのワクチン株として使用するためのその免疫原性との間の適切なバランスを達成する変異体は、次いで同定され得る。
本明細書中で使用される場合、「弱毒化した」とは、低減した疾患を引き起こす能力を有することを意味する。従って、弱毒化とは、この変異体が誘導された親の微生物と比較してTIAを使用して構築された変異株の疾患を引き起こす能力における任意の減少についていう。微生物の弱毒化は、一般的には、3つの特徴の1つ以上によって証明される。
第一に、親の病原性株と比較して弱毒化した変異体で感染された動物の中で減少した(または欠いた)死亡率が存在し得る。
第二に、感染動物由来の器官が、ホモジネートされ、そしてその微生物が、親の株の生存の動態と比較して列挙される場合、弱毒化は、通常、時間にわたって生存する変異微生物の数においてより早い減少に反映される(例えば、図6)。酵素標的の性質に依存して、親株と比較される変異株の生存可能な生物の数における減少は、初期に示され得るかまたは宿主の免疫応答が発生するまで明らかにならないかもしれない。例えば、必須生合成酵素の活性の減少は、インビボで複製する微生物の能力に即座に影響し得、その結果、変異体の微生物の数は、ほぼ播種の直後に親株の数よりも少なく、そして時間にわたって漸次減少する。対照的に、宿主免疫応答(例えば、SOD)に対する防御に関する酵素の発現の変更は、発生(onset)からのいくつかの微生物種の数における漸次的な減少を生じないかもしれないが、強力な免疫応答が発生した後にのみ明らかとなる。例えば、SODが減少した株は、1日目と14日目との間でインビボでいくらかの増殖を示すが、28日目でより低い器官計数まで均一に減少することを図6において、そして生存可能なSODが減少した桿菌の数は、感染後少なくとも17ヵ月の間連続して減少することを図10において注意せよ。CD8+ T細胞の比率における増加(図15、表4〜6)および間質性空間におけるそれらの局在化(図25)と一緒に、28日目までにアポトーシスにおける顕著な増加(図8)の提示に基づいて、この細菌性計数における連続した減少は、感染の第3週および第4週の間、細胞傷害性Tリンパ球に関する宿主細胞性免疫応答の発生に関連するようである。従って、この場合において、減少したSODが、インビボでのM.tuberculosisの生存に対して即座に影響したことは明らかであるが、強力な順応性の細胞性免疫応答の発生を妨げ、そしてこのような応答に対してそれ自身を保護する微生物の能力がまた、損なわれる。TIAにより達成された弱毒化は、微生物の完全な根絶をもたらし得る。しかし、このことは、必須ではなく、そしていくつかの場合において、変異株は、無制限に持続する。例えば、生存可能なSOD減少性H37Rvは、感染17ヵ月後もなお検出され得るが、安全性の非常に確立した記録を有する、結核(BCG)に関する現代のワクチン株よりもより少ない数で生存した(図10を参照のこと)。
第三に、変異株の弱毒化はまた、一般的に、経時的に減少した炎症性応答および/または微生物が正常に感染した宿主器官に対する少ない損傷によって示される。変異株および親株で感染された動物由来の器官の全体的および組織病理学的な試験は、一般的には、これらの測定を実施するのに有用である(図11および図12を参照のこと)。初期の宿主の炎症性応答が、弱毒化された微生物のインビボでの増殖を制限することを必要とされ得るので、器官損傷における差は、最初に明らかでないかもしれない。
さらなる指標は、弱毒化された微生物が、細胞性免疫応答を増強するプロアポトーシス(proapoptotic)の性質を有することを検証するために使用され得る。初期の手がかりは、ワクチン株が、典型的に存在する宿主細胞(例えば、マクロファージ)のより大きな比率が、感染後の最初の数日においてアポトーシスを生じるという観察である。ワクチン株にプロアポトーシスを与える機構がまた、宿主細胞の酸化還元状態を変更する場合、このワクチン株はまた、このワクチン株が送達される器官または組織に対して、単球および樹状細胞を含む単核細胞の急速な浸潤を誘導し得る(図7および図23を参照のこと)。これらの状況において、いくつかの浸潤性細胞は、アポトーシスを生じ得る。これは、図8において図示され、そして図19において説明される。ここで、M.tuberculosisによる鉄を補因子とするSOD産物の還元は、マクロファージの酸化還元状態を変更したと考えられ、その結果、核因子−κB(NF−κB)およびおそらく活性化タンパク質−1(AP−1)の活性化が、肺への炎症性細胞の増加した浸潤をもたらす増加したサイトカイン産生の結果と共に好まれた。本質において、炎症性細胞の浸潤および宿主細胞のアポトーシスの組合わせは、インビボで生じるようなアポトーシス関連抗原交差提示(cross−presentation)についての段階を設定する。従って、細胞浸潤およびアポトーシスの両方を誘導する弱毒化された変異体は、強力な細胞性免疫応答を誘導するのに最も効果的であるようであり、そしてNF−κB活性化およびアポトーシスの両方を支持するように宿主細胞の酸化還元状態を変更する変異体の構築は、特に好ましい。
弱毒化された変異体が、プロアポトーシスの性質を有する別の指標は、増加したCD8+ T細胞応答に関するリンパ球の再分布である。インビトロでの研究は、樹状細胞が、アポトーシスのマクロファージ由来の微生物性抗原を獲得し、そして強力なCD8+ 細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導することを示す(Albert、Sauter、およびBhardwaj、1998;YrlidおよびWick、2000)。BCGでのワクチン接種と比較してSODが減少したM.tuberculosisでのワクチン接種に続く、CD8+ T細胞の増加した割合は、一貫して観察され(図16および表3〜6)、そして同様な差は、SODが減少したBCGおよびBCGが比較される場合に、注目された(表10)。CD8+細胞傷害性Tリンパ球は、一般的には、それらの内部において病原体を制御する手段として、アポトーシスの誘導、感染細胞の殺傷によって機能する。アポトーシスの増強は、本SODが減少したワクチン株でのワクチン接種後4週間で明らかであり、そして肺間質への炎症性細胞の増加した浸潤と同時であり(図8)、そして多数のCD8+ T細胞が、BVVでワクチン接種したマウスの肺の間質において観察されている(図24および図25)。このことは、ワクチン接種が、増強された細胞傷害性Tリンパ球活性、高度に所望される応答を生成したことを示す。
本明細書中に使用される場合、「免疫原性」とは、宿主において免疫応答(例えば、宿主が引き続いて同一種または密接に関連した種の病原性微生物でチャレンジされる場合、疾患の重症度を減少させる免疫応答)を生成する弱毒化された微生物の能力を意味する。
動物モデルは、図13に示されるように、免疫原性の評価において有用であり、ここでBCGおよびSODが減少したH37Rvの両方が、ワクチン接種していない動物と比較した病原性M.tuberculosis株でのチャレンジに対して強力な保護を提供した。免疫原性および防御性免疫の相関は、しばしば、インビトロで測定され得る。インビトロでの免疫原性を測定するための適切な試験は、病原体、および通常インビボでの微生物の制御に関わる宿主免疫機構のタイプに依存する。しかし、本発明が、微生物の変更によってどのように細胞性免疫を増強させて、インビボでのアポトーシス関連抗原交差提示を容易にするかを教示するので、T細胞機能のアッセイが、強調され、そして当業者に周知である。例えば、M.tuberculosis特異性抗原と反応し得る多数のTリンパ球の決定(インターフェロンγ発現のElispotまたはFACS評価によって)に従って、M.tuberculosis特異性抗原に曝した後、インターフェロンγの産生の大きさを比較する、M.tuberculosisを用いるインビトロでのアッセイは、ワクチン効力と相関し得、特定のワクチン候補を用いるワクチン接種が有利なT細胞応答性を誘導するか否かの決定に役立ち得る。図16、図24、図25、ならびに表4〜6および表10にも例示されるように、FACSおよび組織免疫組織化学は、ワクチン接種後のCD8+ T細胞の応答を立証するために使用され得る。このようなインビトロでのアッセイは、病原性細菌を用いるチャレンジ実験が、ワクチン効力を直接的に測定するために実施できない、ヒトまたは他の被験体におけるワクチン候補の比較において特に有用である。従って、本発明は、弱毒化および免疫原性の適切なバランスを有する弱毒化した微生物の選択に関する手引きを提供し、そしてこれは、所望される細胞性免疫応答を誘導する。この選択は、必要とされるような特定の患者集団に対して合わせられ得る。
本方法によって弱毒化される微生物は、細菌、原生動物、ウイルス、または真菌であり得る。微生物が細菌である場合、この細菌は、例えば、Mycobacterium種であり得るが、これらに限定されない。Mycobacteriumの種の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:M.tuberculosis、M.bovis、BCG亜株(substrain)を含むM.bovis株BCG、M.avium、M.intracellulare、M.africanum、M.kansasii、M.marinum、M.ulceransおよびM.paratuberculosis。Nocardia asteroidesまたはNocardia farcinicaを含むNocardia種もあり得る。これらの種のSODが減少した変異体の構築は、鉄−マンガンSODの分泌がミコバクテリア(Raynaudら、1998)およびNocardiaの多くの病原性種の共通および特有な性質であるので、本SODが減少したM.tuberculosisワクチンおよび本SODが減少したBCGワクチンと類似した様式において、強力な細胞性免疫応答の発生を増強する、プロアポトーシス性質の付与および弱毒化の両方を達成し得る。従って、これらの他のミコバクテリア種およびNocardiaのSODが減少したワクチンは、高い有効性のワクチン株であることも予想される。本発明中に企図される他の絶対および通性の細胞内細菌種の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Legionella pneumophila、他のLegionella種、Salmonella typhi、他のSalmonella種、Shigella種、Listeria monocytogenes、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Bacteroides fragilis、他のBacteroides種、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia trachomatis、Chlamydia psittaci、Coxiella burnetii、他のRickettsial種、およびEhrlichia種。
さらに、家畜、動物およびペットにおいて疾患を引き起こす細菌は、本発明の方法の標的であり得る。獣医学の細菌病原体の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Brucella abortusおよび他のBrucella種、Yersinia pestis、Pasteurella haemolytica、Pasteurella multocidaおよび他のPasteurella種、Actinobacillus pleuropneumomia、Cowdria ruminantium、Mycobacterium avium亜種paratuberculosis、ならびにListeria ivanovii。
抗アポトーシス性効果を主に媒介する微生物の酵素の活性が減少される場合、それらの宿主細胞に対して抗アポトーシス性効果を発揮する他の細胞内微生物(例えば、原生動物および真菌)は、弱毒化およびプロアポトーシス性の両方になりそうであり、従ってワクチン株として有用である。従って、本発明は、原生動物を改変する方法を提供して、原生動物の免疫原性を増強させて、原生動物によって産生される抗アポトーシス性酵素の活性を減少させる工程を包含し、これによってこの原生動物が、被験体において増強された免疫原性を有し、そして真菌を改変する方法を提供して、真菌の免疫原性を増強させて、真菌によって産生される抗アポトーシス性酵素の活性を減少させる工程を包含し、これによってこの真菌が、被験体において増強された免疫原性を有する。本発明において企図される原生生物種および真菌種の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Plasmodium falciparum、他のPlasmodium種、Toxoplasma gondii、Pneumocystis carinii、Trypanosoma cruzi、他のtrypanosomal種、Leishmania donovani、他のLeishmania種、Theileria annulata、他のTheileria種、Eimeria tenella、他のEimeria種、Histoplasma capsulatum、Cryptococcus neoformans、Blastomyces dermatitidis、Coccidioides immitis、Paracoccidioides brasiliensis、Pneumocystis carinii、Penicillium marneffei、およびCandida種。原生動物種および酵母種の組換え変異体および弱毒化変異体の作製についての方法が、記載されており、そして当業者に公知である。例えば、挿入変異および異種抗原の発現についてのトランスフェクション技術およびベクターは、Toxoplasma gondiiにおいて記載されている(Chiangら、1999;Charestら、2000)。Toxoplasma gondiiの鉄が補因子のSODが、記載されるように(Odberg−Ferragutら、2000)、このようなベクターおよび方法は、対立遺伝子不活性、アンチセンス技術、またはTIAの使用によって、その産生、または別の抗アポトーシス性酵素の産生を減少させるために使用され得る。同様に、トリパノソーマ種およびリーシュマニア種は、DNAの形質転換および染色体の組込みに感受性であり(Brooksら、2000;Dumasら、1997)、それによって同様な操作を可能にする。真菌病原体における遺伝的操作を実施するための方法はまた、最近利用可能になってきている(Retallackら、1999;Woods、Heinecke、およびGoldman、1998;VarmaおよびKwon−Chung、2000;Enloe、Diamond、およびMitchell、2000;Wilsonら、2000)。本発明の方法に従って作製される原生動物は、本発明の方法に従って作製される真菌のように提供される。
これらの宿主細胞の細胞質におけるウイルス複製は、強力なCD8+ T細胞応答を誘導するようなMHCクラスI経路を介して示されるようなウイルス抗原についての機構をすでに提供している点で、ウイルスは、上記に引用されるほとんどの微生物と異なるが、ウイルス病原体はまた、プロアポトーシス性になるように改変され得る。従って、ウイルスの抗アポトーシス酵素の活性における減少が、CD8+ T細胞の応答を増強させると予想され得るのに対して、この効果は、SODが減少したM.tuberculosisにより示されるほど顕著(profound)であり得ない。しかし、TIAは、病原性において漸増性の差を生じる重要な酵素における変異を誘導するために使用され得、それによって、弱毒化と免疫原性との間の適切なバランスを達成する適切に弱毒化した変異体の作製を容易にする。遺伝子操作を実施するための技術は、多くのウイルス種について記載されている(Heiderら、2002;Durbinら、1999)。重要または抗アポトーシス性のウイルス酵素の活性を減少させるために必要な分子操作は、慣用的である。従って、本出願の教示に従って改変されたウイルスは、提供される。
上記で同定されたほとんどの細菌(クラミジア、リケッチア、およびエールリヒアを含む)、原生生物、および真菌は、絶対もしくは通性のいずれかの細胞内病原体であるか、またはファゴリソソーム内に存在し、そしてMHCクラスI抗原提示に関する細胞の細胞質への通路を有さない。これらの病原体について、アポトーシス関連交差提示は、強力なCD8+ T細胞応答を誘導するための唯一の機構を提供し得る。マクロファージおよびリンパ球よりもむしろ免疫系の好中球、抗体、相補体、および他の成分によって優勢に制御される細胞外病原体に対してプロアポトーシスの性質を与えることは、上記に列挙した生物が有する同じ免疫増強効果を有することが予想されないが、TIAは、弱毒化のそれらのレベルを微調整するため、および新しい生弱毒化ワクチンを構築するために細胞外細菌で使用され得る。本発明において企図され、TIAが実施され得る細菌種の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:上記に列挙される全ての細菌、Streptococcus pyogenes、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus agalactiae、Bacillus anthracis、Escherichia coli、Vibrio cholerae、Campylobacter種、Neiserria meningitidis、Neiserria gonorrhea、Pseudomonas種、およびHaemophilus influenzae。TIAはまた、ウイルスの弱毒化のレベルを微調整するために使用され得る。
従って、本発明は、微生物により産生される酵素の活性を減少させることを包含する、微生物を弱毒化する方法を提供し、これによって、この微生物は、被験体において、宿主免疫応答を刺激する抗原の完全なレパートリーを保持するが、病原性を失う。
本発明は、本出願において記載される方法に従って弱毒化された微生物を提供する。詳細には、本発明は、被験体において、免疫原性を保持または増加するが、病原性を失うかまたは減少する微生物を提供し、ここで、この微生物は、天然に存在する酵素の活性のレベルと比較して減少した活性を有する改変された酵素を有する。この微生物は、細菌、原生動物、ウイルス、または真菌であり得る。
微生物の免疫原性を増強させるために微生物を改変する方法が提供され、この方法は、微生物によって産生された抗アポトーシス酵素の活性の減少を包含し、これによって、この細菌は、被験体において増強された免疫原性を有する。従って、微生物の抗アポトーシス酵素の活性を減少させるために改変された細胞内微生物はまた提供される。
本発明はまた、弱毒化された微生物により産生される抗アポトーシス酵素の活性を減少させる工程を包含する、弱毒化された微生物の免疫原性を増強するために弱毒化された微生物を改変する方法を提供し、これによってこの弱毒化された細菌は、被験体において増強された免疫原性を有する。従って、弱毒化された細胞内微生物はまた提供され、この微生物の抗アポトーシス酵素の活性を減少させるためにさらに改変される。
上記に記載されるように、この微生物は、本明細書中に記載されるいずれかの微生物であり得る。この微生物は、細胞内病原体または偏性細胞内病原体であり得る。本発明はまた、細菌が、Yersinia enterocoliticaでない方法および微生物の実施形態を企図する。
従って、本発明の特定の実施形態は、M.tuberculosisの株における鉄−マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性を減少させることによって誘導される結核に対する生ワクチンを提供する。減少したSODは、ゆっくりと増殖する変異ミコバクテリアを産生し、過酸化水素によって殺傷されるように高度に感受性であり、そして哺乳動物宿主においてその病原性において弱毒化される。SODが減少したM.tuberculosis複合体株は、本明細書中に記載されるようなアンチセンス技術または標的化された漸増的弱毒化(incremental attenuation)の使用によって作製され得る。本発明は、SOD欠乏性変異体のインビトロでの増殖を可能にする外因性のSOD模倣物または抗酸化剤が同定される場合、対立遺伝子の不活性化によるM.tuberculosis複合体株のSOD欠乏性変異体を作製することが、最終的に実現可能であり得る可能性を予測する。
欠失変異により作製される微生物の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:グルタミン酸が、スーパーオキシドジスムターゼの位置54で欠失される変異体M.tuberculosis;グリシンが、スーパーオキシドジスムターゼの位置88で欠失される変異体M.tuberculosis;グリシンが、スーパーオキシドジスムターゼの位置87および位置88で欠失される変異体M.tuberculosis;グリシンが、スーパーオキシドジスムターゼの位置134で欠失される変異体M.tuberculosis;プロリンが、スーパーオキシドジスムターゼの位置150で欠失される変異体M.tuberculosis;およびバリンが、スーパーオキシドジスムターゼの位置184で欠失される変異体M.tuberculosis。
置換変異により作製される微生物の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:リシンが、スーパーオキシドジスムターゼの位置28でヒスチジンの代わりに使用される変異体M.tuberculosis;リシンが、スーパーオキシドジスムターゼの位置76でヒスチジンの代わりに使用される変異体M.tuberculosis;リシンが、スーパーオキシドジスムターゼの位置145でヒスチジンの代わりに使用される変異体M.tuberculosis;およびリシンが、スーパーオキシドジスムターゼの位置164でヒスチジンの代わりに使用される変異体M.tuberculosis。
本発明はまた、アンチセンス技術が、SOD、チオレドキシン、およびClpC Atpaseの産生を減少させるために使用されてきた、M.tuberculosis複合体株の変異体を提供し、それによってこの株を弱毒化する。本発明はまた、BCGを含む既に弱毒化されている、M.tuberculosisおよびM.bovisの株中に導入されるようなこれらまたは同様なアンチセンスプラスミド構築物について提供する。従って、本発明の細菌のさらなる例は、アンチセンス−SOD(AS−SOD)も発現するBCG株である。このことは、BCGが、既にヒトへの投与に対して十分に安全である点でSODが減少したM.tuberculosisよりも利点を有し、一方で、このAS−SOD構築物は、抗原プロセシングにおいて利点を与える。反応性酸素種または反応性窒素種に対する防御に関するSODまたは他の酵素の活性を減少させる他の方法は、既に弱毒化された株において使用され得る。
本発明は、さらに、本発明の弱毒化され、さらに異種の抗原を発現する微生物を提供する。プロアポトーシスの、本発明の弱毒化細菌は、必要に応じて、1つ以上の異種の抗原を発現し得る。特定の例として、異種の抗原は、本発明のSOD減少されたBCG細菌において発現される。生きたままの弱毒化ワクチンは、他の病原種からの異種抗原の発現に対するベクターを提供する可能性を有する(Douganら、米国特許第5,980,907号;Bloomら、同第5,504,005号)。従って、抗アポトーシス酵素または必須の酵素の発現または活性の減少を有する本発明の細菌は、異なる細菌由来の抗原を発現するようにさらに改変され得る。そのような抗原は、ウイルス、細菌、原生動物または真菌微生物由来であり得る。次いで、組換えプロアポトーシス微生物は、二価ワクチンまたは多価ワクチンの基本を形成する。この様式において、複数の抗原は、単一のワクチン株によって、標的化され得る。本発明は、異種抗原をコードする本発明の核酸のプロアポトーシス細菌を形質転換することを含む多価ワクチンを産出する方法を提供する。例えば、免疫優性のCD4+およびCD8+エピトープを含む麻疹ウイルスの抗原は、Bloomらによって教示される技術(参考としてその全体が本明細書に援用される、米国特許第5,504,005号)を使用して、本発明のプロアポトーシスBCGのゲノムDNA内に、目的の麻疹抗原をコードするDNAを安定に組み込むことによって、達成される発現を伴って、SOD減少されたBCGにおいて発現され得る。あるいは、抗原をコードする遺伝子は、例えば、当業者に周知である組換え抗原を発現するための標準的な技術を使用して、65kDaの熱ショックタンパク質であるpHV203のプロモーターの後で、プラスミドベクター上で発現され得る。麻疹抗原を発現する組換えプロアポトーシスBCGワクチンは、麻疹由来の高い幼児死亡率を有する発展途上国において、誕生時に投与するためのワクチンとして、正規のBCGに取って代わり得る。組換えワクチンは、麻疹由来の死が最大である場合、最初の数ヶ月の生命において、幼児を保護する麻疹抗原に対する細胞免疫応答を刺激する。麻疹抗原を発現する、組換えプロアポトーシスBCGは、母の抗体の存在が、6ヶ月齢以前の予防接種に干渉するように、現在生存する弱毒化麻疹ワクチン全体にわたって利点を有し、これらが、高いリスクで麻疹由来の死にある場合、生存期間の間、麻疹に幼児を感受性のままにする。その代わりに、麻疹抗原を発現する組換えプロアポトーシスBCGは、母の抗体によって不活性化されることはなく、生存期間の初期において、保護的な細胞免疫応答を誘導し得る。本発明によって企図される他の感染性病原体の他の異種抗原としては、マラリアスポロゾイトの抗原、マラリアメロゾイトの抗原、ヒト免疫不全ウイルス抗原、インフルエンザウイルス抗原、およびリーシュマニア抗原が挙げられるがそれらに限定されない。また、本発明の細菌は、悪性新生物に対する免疫療法としての使用に対する癌抗原を発現するように、さらに改変され得る。本発明によって企図される異種の癌抗原としてはメラノーマ−メラノサイト分化抗原(MART−1、gp100、チロシナーゼならびにチロシナーゼ関連タンパク質1および2)、癌−精巣抗原(MAGE−1、−2、−3、−12、BAGE、GAGE),β−カテニン、MUM−1、CDK−4、α−フェトプロテイン、テロメラーゼ、G250、MUC−1、p53、Her−2/neu、および癌胎児抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明はまた、(外因性核酸としての本発明の核酸またはベクターを含む本発明の細胞を産出することを含む)本発明の酵素を産出するための方法、(それによって、細胞内の外因性核酸が発現され、コードされる酵素が産出され得る)条件下で細胞を培養するための方法、および細胞から酵素を単離するための方法を提供する。当業者は、本発明の方法によって改変される細胞によって産出される酵素の量を測定し、この量と天然に存在する細胞によって産出される酵素量とを比較し、改変された細胞によって産出される酵素量の減少を検出し得る。
本発明は、細菌によって産出される抗アポトーシス酵素の活性を減少することを含む、細菌ワクチンの作製方法を提供し、抗アポトーシス酵素の活性における減少は細菌を弱め、それによって、細菌のワクチンを産出する。
本発明は、細菌によって、産出された抗アポトーシス酵素の活性を、弱毒化細胞において減少することを含む、細菌のワクチンを作製する方法を提供し、それによって、細菌のワクチンを産出する。
本発明は、本発明の方法によって改変される酵素を含む細胞を含む、組成物を提供する。この組成物は、薬学的に受容可能なキャリアおよび適切なアジュバントをさらに含み得る。そのような組成物は、ワクチンとして使用され得る。
本発明は、さらに、本発明の任意の組成物を被験体に投与することによって、被験体内における免疫応答を生成する方法を提供し、その方法は、本明細書中で教示される方法に従って改変される、インビボでの生存可能性に対して必要な酵素を含む、薬学的に受容可能なキャリアおよび細胞を含む組成物を含む。この組成物は、本明細書中に示されるような、適切なアジュバントをさらに含み得る。この被験体は、哺乳動物であり得、好ましくはヒトである。
本発明は、被験体において、感染症を予防する方法を提供し、有効量の本発明の組成物を被験体に投与する工程を含む。細菌の疾患(例えば、結核)を予防することに加えて、本発明は、真菌、ウイルスおよび原生動物病因の感染症を予防し得ることが企図される。被験体は哺乳動物であり、そして好ましくは、ヒトであり得る。
本発明の、上に記載される組成物が、感染を妨げる治療的利益または免疫性を分け与えるために、被験体または被験体の細胞に投与し得ることが企図される。従って、本発明は、被験体の免疫細胞における免疫応答を生成する方法をさらに提供し、この方法は、本発明の組成物と細胞とを接触させることを含み、その中で、インビボでの生存可能性に必要な酵素は、本明細書中に教示される任意の方法によって改変された細菌を含む。この細胞は、インビボまたはエキソビボにおいて、(樹状細胞、マクロファージまたは単核細胞のような)MHC I発現抗原提示細胞が挙げられ得るが、それらに限定されない。本明細書で使用される場合、「被験体」によって、個体が意味される。従って、「被験体」は、(ネコ、イヌなど)家畜化動物、家畜(例えば、蓄牛、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)、および鳥類が挙げられ得る。好ましくは、被験体は霊長類のような哺乳動物であり、そしてより好ましくは、ヒトである。
従って、本発明は、微生物によって産出される抗アポトーシス酵素の活性を減少することを含む、弱毒化微生物の免疫原性を強化する方法を提供し、それによって、この微生物は、被験体において免疫原性を強化した。抗アポトーシス酵素の活性を減少することによって改変された微生物は、M.tuberculosis、M.bovis、M.avium、M.intracellulare、M.africanum、M.kansasii、M.marinum、M.ulcerans、M.paratuberculosis、Legionella pneumophila、他のLegionella種、Salmonella typhi、他のSalmonella種、Shigella種、Listeria monocytogenes、Nocardia asteroides、Listeria ivanovii、Brucella abortus、他のBrucella種、およびCowdria ruminantiumからなる群から選択され得る。例えば、サルモネラの生きたまま弱毒化された株は、サルモネラ感染に対するワクチンとしてのそれらの免疫原性を強化し、かつそれらの有用性を増加するために、そして異種の抗原に対する防護的な細胞免疫応答を誘導するそれらの能力を強化するために、本発明を使用してさらに改変し得、この異種の抗原は、他の感染性生物体および癌抗原由来の抗原を含む。本発明のプロアポトーシス改変によって改変され得る、弱毒化サルモネラの例は、以下の表に列挙される。
特許番号
5,843,426 Millerら サルモネラワクチン
5,804,194 Douganら htra遺伝子の変異によって弱毒化されたサルモネラ細菌を含むワクチン
5,792,452 Linde 増加した安定性を有する生存サルモネラワクチン
5,770,214 Douganら 芳香族アミノ酸生合成経路の2つの遺伝子における変異によって弱毒化されたサルモネラ細菌を含むワクチン
5,733,760 Luら 短縮型のpag融合タンパク質をコードするサルモネラベクター、その作製方法、およびその使用法
5,695,983 Millerら サルモネラワクチン
5,580,557 Kramer 動物における免疫応答を誘導するために使用される、生きた無毒性の豚コレラ菌ワクチン
5,527,529 Douganら ompr遺伝子における変異を有する弱毒化サルモネラ菌を含むワクチン
5,436,001 Kramer ブタにおける免疫応答を誘導するために使用される、生きた無毒性の豚コレラ菌ワクチン
5,387,744 Curtiss,III 無毒性細菌およびその使用法:Salmonella typhi
5,294,441 Curtiss,III 無毒性細菌およびその使用法:salmonella typhi
5,110,588 Morona 混合サルモネラ、E. coli.、コレラ菌ワクチン株
4,764,370 Fieldsら Salmonella typhimuriumの無毒性株を使用するワクチン
4,735,801 Stocker 新規非復帰性サルモネラ生育ワクチン
4,550,081 Stocker 非復帰性サルモネラ
4,350,684 Pardonら サルモネラヒツジ流産菌株およびそれらを含むワクチン組成物の調製
この改変に関して標的化された酵素は、鉄−マンガンスーパーオキシドジスムターゼ、亜鉛−銅スーパーオキシドジスムターゼ、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、グルタチオンレダクターゼ(グルタレドキン)、グルタミン合成酵素、他のチオレドキシン様タンパク質、他のチオレドキシンレダクターゼ様タンパク質、他のグルタレドキン様タンパク質、他のチオールレダクターゼ、および他のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼであり得る。現在知られているまたは後に抗アポトーシスであると同定された、他の抗アポトーシス酵素は、本明細書中に記載される方法に従って、活性の減少に関してもまた標的化され得る。
抗アポトーシス酵素の活性を減少する工程は、抗アポトーシス酵素をコードする核酸の、翻訳効率を減少するアンチセンス核酸を有する細菌を形質転換することを含み得る。同様に、本明細書中に記載されるTIA法は、技術分野で周知である、対立遺伝子の不活性化をし得るように、抗アポトーシス酵素の活性を減少するために使用され得る。抗アポトーシス酵素の活性を減少する工程は、細菌が他の手段によって弱毒化前または後のいずれかに引き起こり得る。いくつかの場合、抗アポトーシス酵素単独の活性を減少することは.細菌を弱めるためのさらなる測定を必要としないように、強化された抗原提示および十分な弱毒化の両方を同時に達成する。
宿主細胞の酸化還元状態に影響する、細菌の抗アポトーシス酵素の活性を減少することは、感染部位への単核細胞の迅速な流入と共同するプロアポトーシス効果を同時に達成するための好ましい方法であるにも関わらず、同じ効果を達成するための他の方法は、本発明の背景で明らかになる。アポトーシスは、アポトーシスを阻害または活性化のいずれかをする複数の細胞内因子の制御下にある。同時に、単核細胞の流入を導くサイトカイン産出はNF−κBの活性化を引き起こすシグナル伝達経路の制御下にある。当業者は、アポトーシスの活性化およびNF−κBの活性化の両方を刺激する組換え細胞内細菌を作製し得る。例えば、baxおよびIL−1レセプター関連キナーゼ(IRAK)をコードする遺伝子を発現する、組換えベクターは、(Arafatら、2000;Mascheraら、1999)アポトーシスおよびNF−κBの活性化のそれぞれを過剰発現することが報告される。その報告は、1つまたは両方の因子を生成する組換え細胞内細菌を構築し、それによって、宿主細胞の酸化還元状態に影響する細菌酵素の活性を減少する場合、引き起こる同じ効果を達成するための本発明の教示の範囲内である。従って、本発明は、抗アポトーシス酵素の発現を減少する発現構築物およびNF−κBおよび/またはプロアポトーシス因子の発現レベルを増加する発現構築物を含むように改変された細胞内細菌を提供する。本発明は、ネイティブの抗アポトーシス酵素の活性の減少ならびにプロアポトーシス因子および/またはNF−κB活性化因子の過剰発現の両方を有する細菌もまた提供する。
SOD減少M.tuberculosisおよびSOD減少BCGワクチンは、現在入手可能なBCGワクチンよりも、結核に対する免疫性がより大きな被験体を提供する。M.tuberculosisおよびBCGの両方は、マクロファージのアポトーシスをブロックする大量のSODを分泌し、それによって、バシラスが、増殖または細胞内分裂可能になる。食胞におけるミコバクテリア抗原は、通常には、MHCクラスII経路を介して、IFN−γを分泌する、CD4+T細胞へ提示され、それによって、CD4+T細胞が一酸化窒素(NO)を産出するよう活性化される。宿主は、感染を制御する能力を有するが、バシラスを殺傷するためのNOに対する優勢的な信用はまた、バイスタンダー(bystander)細胞において、壊死を誘導する。対照的に、SOD減少M.tuberculosisおよびSOD減少BCGは、マクロファージのアポトーシスをブロックするのに十分なSODを産出しない。従って、バシラスを含むマクロファージが、アポトーシスを受ける場合、ミコバクテリアの抗原を含むアポトーシス体は、樹状細胞によってエンドサイトーシスされ、MHCクラスI経路を介して、CD8+T細胞に実質的に提示される。従って、SOD減少細菌において、M.tuberculosisの宿主封じ込めは、CD4+応答およびCD8+応答の組合せによって達成され、最小の壊死を伴うより良好な制御を達成する。この改善された抗原プロセシングは、図18に示される。この改善は、実施例10に記載される、このSOD減少BCG株において利用される。
細菌の免疫原性を改善する好ましい方法は、細菌がM.tuberculosisまたはM.bovis(例えば、AS−SOD構築物(例えば、実施例1に記載されるpHV203−AS−SOD構築物)で、形質転換され、エレクトロポーレーションされ、または形質導入されるBCG)の一部または完全に弱毒化された株である。
上記に記載される免疫原性を改善する方法に従って、改変され弱毒化された細胞内細菌が提供され、ここで、病原体の抗アポトーシス酵素の活性が減少される。そのように改変された細菌は、Mycobacteria種、BCG、Legionella種、Salmonella種、Shigella種、Listeria種、Brucella種、およびCowdria ruminantiumからなる群から選択され得る。標的化された酵素は、上に記載される酵素である。この改変された細菌の特定の例において、細菌がM.tuberculosisまたはM.bovis(例えば、AS−SOD構築物(例えば、実施例1に記載されるpHV203−AS−SOD構築物)で形質導入されるBCG)の一部または完全に弱毒化された株である。
本発明の組成物は、細胞の集団に接触して組成物をもたらすような方法で、組成物を投与するために一般に使用される方法によって、それを必要とする被験体にインビボで投与し得る。本発明の組成物は、口内的、非経口的、筋肉内的、経皮的(transdermally)、経皮的(percutaneously)、皮下的、体外的、または局所的(など)に投与され得るが、経口投与または経皮投与が、代表的に好ましい。この組成物は、循環もしくは体腔への導入によって、経口摂取によって、または吸入によってもまた送達され得る。このワクチン株は、薬学的に受容可能な液体キャリアと共に動物に注入またはそうでなければ送達される。この液体キャリアは、発熱物質フリーの水、生理食塩水、または緩衝化された溶液を含み、水性キャリアまたは部分的に水性キャリアである。例えば、M.tuberculosisワクチンは、US BCG Tice株で使用された方法(滅菌された多数穴のあるディスクを経皮的に使用する)に類似して投与されるのが最もありそうである。
本発明の組成物の経皮的投与は、使用される場合、一般的に注射によって特徴付けられる。注入物は、液体溶液もしくは懸濁物、注入前に溶液中の懸濁物の溶液に適した固体形態、または乳濁液のいずれかとして、従来の形態で調製される。本明細書中で使用される場合、「経皮的投与」としては、皮内的、皮下的、筋肉内的、腹腔内的、静脈的、関節内的および気管内的経路が挙げられる。
組成物の用量は、体重、年齢、性別、および投与の方法に依存して変化する。1つの実施形態において、化合物の用量は、生存可能な弱毒化された細菌株の0.5×10コロニー形成単位〜5×10コロニー形成単位である。より好ましくは、化合物は、インビボで、生存可能な弱毒化された細菌株の約1×10コロニー形成単位〜5×10コロニー形成単位の量で投与される。この用量はまた、特定の状況に基づく用量を要求するように、個々の医師によって調整され得る。
この組成物は、要求される薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈液(すなわち、キャリアまたはビヒクル)に関連して、所望の治療的効果または免疫学的効果を生成するために計算された、あらかじめ決定された活性な物質の量として、活性な組成物を含むワクチンとして、従来どおりに投与され得る。「薬学的に受け入れ可能」とは、生物学的でないか、そうでなければ所望でない物質を意味し、すなわち、この物質は、所望でないどの生物学的効果も示さず、それが含まれる薬学的組成物の任意の他の成分を用いる有害な様式での相互作用もせずに、選択された組成物に従って、個体に投与され得る。
(宿主防護に対する細菌保護を減少するために、そして細胞内病原体を伴うマクロファージのアポトーシスを強化するために、好ましい酵素を使用したTIAの実施を容易にするための特定の詳細)
当業者は、TIAの利益をさらに認識する。マクロファージ内で通常に出会う微生物の、反応性酸素中間体、反応性窒素中間体、および他のストレスによる殺傷に対する病原体の保護に、通常に関与する細菌の酵素を減少する利点については、上に概略を述べる。生存する生物体は、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、および種々のヒドロペルオキシダーゼのような酵素、チオレドキシンまたはグルタレドキシンのような小タンパク質、ならびにグルタチオンのような分子を有する、酸化的ストレスに対してそれら自体を保護するために発達した機構を有する。同様に、細胞内病原体に対して毒性である反応性窒素中間体は、マクロファージおよび他の細胞によって産出され得、これらの物質は、反応性酸素中間体と相互作用し、過酸化亜硝酸塩のようなさらなる毒性の分子を生成する。従って、種々の一酸化窒素レダクターゼ、アルキルヒドロペルオキシダーゼCを含む過酸化亜硝酸塩レダクターゼおよび他の脱窒素酵素は、TIAを利用して標的化する酵素の良好な例である。それら細菌が連続体の「還元」末端に対して感染する、宿主細胞のレドックス状態を変える細菌によって産出される酵素は、TIAに対する標的として特に好ましい。細菌は、そのような酵素をこれらの宿主細胞のレドックス状態を制御するために使用し、細菌は、それによって、複数の細胞内シグナル伝達プロセスが、細胞のレドックス状態によって影響されるように、アポトーシスおよび感染部位への単核細胞の迅速な流れの両方を阻害する。
上または下に列挙される酵素は、ほとんどの細菌種に見られ、共通の先祖から進化し、これらのアミノ酸配列および三次元的配座において、高く保存されたままである。従って、1つの細菌種によって産出される酵素由来のX線結晶構造は、特定の細菌に対するだけでなく、別の種における相同な酵素に対しても欠失および置換変異の指向を補助するために使用され得る。時折、この酵素は、真核生物由来のX線結晶構造が使用され得る、全ての生命形態の間で、それほど高度に保存される。当業者は、X線結晶データ、および上に概略を述べられかつさらに実施例11に例示されるアミノ酸欠失戦略を使用して、これらの任意の酵素の、酵素的により低効率の形態を作製し得るはずである。種々の酵素のより低効率の変異型の産出の指向を補助するために使用される、情報の特定の供給源として以下が挙げられる:
(鉄−マンガンスーパーオキシドジスムターゼ)
SODの漸増変異体群を作製するためのTIAの使用は、実施例11に記載される。鉄−マンガンスーパーオキシドジスムターゼのアミノ酸配列および結晶構造は、微生物種の間で高度に保存されており、その結果、実施例11においてM.tuberculosis SODについて列挙される欠失および置換、またはこれらの変化に近いものもまた使用して、他の細菌種からFe,Mn SODの漸増変異体群を構築し得る。複数のFe,Mnスーパーオキシドジスムターゼのアミノ酸配列のアラインメントおよび酵素の構造的特徴との相関は、Lah(Lahら,1995)およびUrsby(Ursbyら,1999)により報告されている。
(亜鉛−銅スーパーオキシドジスムターゼ:)
Cu,Znスーパーオキシドジスムターゼはまた、スーパーオキシドの不同変化を触媒する。この複数のCu,Znスーパーオキシドジスムターゼのアミノ酸配列のアラインメントおよび酵素の構造的特徴との相関は、Pesce(Pesceら,2000)およびForest(Forestら,2000)により報告されている。
(カタラーゼ:)
カタラーゼは、大部分の真核生物および好気性原核生物に存在する。このカタラーゼは、水および分子酸素を生じる不同変化反応において電子供与体および電子受容体の両方として過酸化水素を利用し得る。いくつかのカタラーゼは、X線結晶学により分析されており、そして全て、密接に関連したコンホメーションを有する約470残基のコア構造を有する(Bravoら,1999)。複数のカタラーゼのアミノ酸配列のアラインメントおよびこの酵素の構造的特徴との相関は、Gouet(Gouet,Jouve,およびDideberg,1995)により報告されている。
(チオレドキシン系:)
チオレドキシン(TRX)、チオレドキシンレダクターゼ(TR)およびNADPHは、チオレドキシン系を構成し、この系は遍在しており、そしてレドックス活性ジスルフィドを介して作動し、広範な種々の異なる代謝プロセスに電子を提供する(Powis,BriehlおよびOblong,1995)。TRXはまた、一般的なタンパク質ジスルフィドレダクターゼとして機能する。従って、これらの酵素の活性は、微生物に最適な細胞内レドックス環境を維持する際に重要である。宿主細胞のレドックス状態に対するその効果により付与される一般的な抗アポトーシス効果に加えて、TRXはまた、アポトーシスシグナル調節キナーゼ(ASK1)に結合しそして阻害することにより、直接アポトーシスを阻害する(Saitoh,Nishitoh,Fujii,Takeda,Tobiume,Sawada,Kawabata,MiyazonoおよびIchijo,1998)。チオレドキシン産生が減少したM.tuberculosisの変異体を、アンチセンス技術を使用することにより構築し、そしてこれがインビボで弱毒化されることを実証した[図6」。SOD減少M.tuberculosisを用いて観察された様式と同様の様式で、単核細胞の肺への急速な浸潤[図23]もまた誘導された。TRX減少M.tuberculosis変異体を作製する方法が教示されてきたが、弱毒と免疫原性との間のバランスを改善するように微調節することを可能にし、そしてプロアポトーシス(pro−apoptotic)効果を付与するために、この酵素の活性はまた、対立遺伝子不活性化または別の酵素のTIAのいずれかにより既に部分的に弱毒された変異体において減少され得る。
E.coliおよび多くの他の原核生物種および真核生物種由来のチオレドキシンのX線結晶構造が決定され、そして高度に保存された機能的に重要なアミノ酸の同定を含めて、異なる種のチオレドキシン間には高度な同一性が存在する(Eklund,GleasonおよびHolmgren,1991)。同様のデータが、チオレドキシンレダクターゼについて利用可能である(Daiら、1996)。このようなデータを使用して、減少した活性を有する変異体の構築を誘導し得る。
(グルタチオンレダクターゼ:)
グルタチオンレダクターゼおよびグルタレドキシンは、細胞内レドックス環境の維持において重要であり、そしてこれらは、チオレドキシン系とは進化学的に異なって出現したが、細胞に対して多くの同じ機能を果たす。複数のグルタチオンレダクターゼ(グルタレドキシン)のアミノ酸配列のアラインメントおよびこの酵素の構造的特徴との相関は、Mittl(MittlおよびSchulz,1994)により報告されている。
(グルタミンシンテターゼ:)
グルタミンシンテターゼは、窒素代謝において鍵となる酵素であり、そしてアンモニア、グルタメートおよびATPからのグルタミンの形成を触媒する。グルタミン飢餓は、特定のカスパーゼを選択的に活性化し、アポトーシスの誘導に至る(Papaconstantinouら,2000)。さらに、真核生物のグルタミンシンテターゼの阻害は、アポトーシスと関連付けられている(Tumani,Smirnov,Barchfeld,Olgemoller,Maier,Lange,Bruck,およびNau,2000)。M.tuberculosisは、SODに類似の膜透過性形態を有する大量のグルタミンシンテターゼを分泌し、そしてこのグルタミンシンテターゼは、感染に必須であるようであり、SODのように、M.tuberculosis感染マクロファージにおける抗アポトーシス酵素として機能するという可能性を提起する。このM.tuberculosisのグルタミンシンテターゼは、Gill(Gill,PflueglおよびEisenberg,1999)により結晶化されている。複数のグルタミンシンテターゼのアミノ酸配列のアラインメントおよびその酵素の構造的特徴との相関は、Liaw(LiawおよびEisenberg,1994)により報告されている。
(ClpC ATPアーゼ:)
ClpC ATPアーゼは、Clp 100kDa熱ショックタンパク質ファミリーのメンバーであり、このファミリーは、多くの原核生物および真核生物のストレス耐性に関与する高度に保存されたタンパク質のクラスである。SODおよびチオレドキシンに加えて、減少したClpC ATPアーゼ活性を有するM.tuberculosisの変異体はまた、インビボで弱毒される[図6]。ClpC ATPアーゼ減少M.tuberculosis変異体が使用可能にされると、弱毒と免疫原性との間のバランスを改善するように微調節することを可能にするために、この酵素の活性は、対立遺伝子不活性化または別の酵素TIAのいずれかにより既に部分的に弱毒された変異体において減少され得る。
最後に、生合成酵素は、TIAの標的として上記で議論された、抗酸素中間体酵素、抗アポトーシス酵素、および抗ストレス酵素よりは好ましくないが、TIAをなお使用して、結核および他の感染性疾患のために構築された栄養素要求性ワクチン候補のうちいくつかの効力を改善し得る。例えば、アミノ酸生合成に関与する遺伝子(leuD、3−イソプロピルマレートデヒドラターゼの小サブユニットをコードする)およびプリン生合成に関与する遺伝子(purC、ホスホリボシルアミノイミダゾールスクシノカルボキサミドシンターゼをコードする)は、病原性のM.tuberculosis株において不活性化された場合に、この変異体を動物モデルから急速に除去させることが同定された(Hondalus,Bardarov,Russell,Chan,Jacobs,Jr.,およびBloom,2000;Jackson,Phalen,Lagranderie,Ensergueix,Chavarot,Marchal,McMurray,GicquelおよびGuilhot,1999)。いくらかのレベルの防御免疫がこれらの株のワクチン接種により与えられるが、BCGを用いるワクチン接種後に示されるレベルより一般的に低い。インビボでの動物の器官からのこれらの株の急速なクリアランスは、最適な免疫応答を生じるための、鍵となる微生物抗原と宿主免疫系(immune)との間の十分な相互作用を可能にしないことが観察された。従って、TIAを使用して生成されたこれらの酵素の活性におけるあまり重篤でない減少が、このようなM.tuberculosis変異体を、対立遺伝子ノックアウト変異体よりも長く生存することを可能にし得、それにより宿主免疫系との相互作用の時間を長くし、そしてより強い防御免疫応答を誘導するようである。さらに、TIAを使用してleuDおよびpurCの一定範囲の変異体(これらは、野生型酵素と比較して減少した酵素活性(50%,45%,40%,35%,30%,25%,20%,15%,10%,5%,2%,1%など)を示す)を作製することにより、そしてこれらの変異体を使用して野生型対立遺伝子を置き換えることにより、インビボでのある範囲の生存時間を示すM.tuberculosis変異体が観察される。これらから、疾患を引き起こさないほど明らかに十分に弱毒化されているが、同じ遺伝子を含む対立遺伝子ノックアウト変異体を用いるワクチン接種後に示すよりも優れた免疫応答を生じるために十分長く持続する、1つ以上の変異体が選択され得る。M.tuberculosis酵素との強い同一性を有する、酵母由来のホスホリボシルアミノイミダゾールスクシノ−カルボキサミドシンターゼ(purC)酵素のX線結晶構造が決定されており(Levdikovら,1998)、そしてこれを使用して減少した活性を有する変異体を得るような特定のアミノ酸の欠失および置換のガイドを補助し得る。
本発明は、以下の実施例においてより詳細に記載され、これらの実施例は、例示のみとして意図される。なぜなら、これらの実施例における多数の改変および変形は、当業者に明らかであるからである。
(実施例1:SOD減少M.tuberculosis(本明細書では以下「バチルスヴァンダービルトーVA」または「BVV」と呼ぶ)の構築およびインビボでの弱毒化方法の証明)
細菌単離株、プラスミド、化学物質、および培養培地:使用される細菌単離株およびプラスミドを、表1に示す。他に示さなければ、E.coli株DH5αを、分子遺伝操作のための宿主として使用し、そしてLB培地において増殖させた(Gibco/BRL,Gaithersburg,Maryland)。M.smegmatis mc155およびM.tuberculosis H37Rvを、0.2%のグリセロールおよび10%のMiddlebrook OADC特殊添加培地(Becton Dickinson & Co.,Cockeysville,Maryland)を補充したMiddlebrook 7H9液体培地(Difco Laboratories,Detroit,Michigan)中で増殖させるか、またはグリセロールおよびOADCを補充したMiddlebrook 7H10寒天培地(Difco)上にプレーティングした。pHV202、pLUC10またはそれらの誘導体プラスミドをE.coli DH5αまたはM.tuberculosis H37Rv中に含有する形質転換体について選択するために、それぞれ50μg/mlまたは25μg/mlの濃度のカナマイシンを使用した。
アンチセンスDNA過剰発現のためのシャトルベクターの構築:M.fortuitumプラスミドpAL5000の複製起点を、pBAK14由来の2.6kbのDNAフラグメントとして回収した(Zhangら,1991)。カナマイシンに対する耐性をコードする遺伝子(aph)を、pY6002由来の1.2kb DNAフラグメントとして回収した(Aldovini,HussonおよびYoung,1993)。65kDaの熱ショックタンパク質のプロモーター(Pr−HSP)を、M.tuberculosis株H37Raの染色体DNAから、2つのオリゴヌクレオチドプライマーの構築を誘導するために、公開DNA配列データ(Shinnick,1987)を使用して、PCR増幅した。順方向プライマーおよび逆方向プライマーの配列は、それぞれ、5’AGGCGGCCGCTCGAACGAGGGGCGTGACCCGおよび5’CAGTCTAGAGACGGGCCTCTTCGTCGTACGであった。M.tuberculosis単離株H37Ra由来の染色体DNAを、PCRのテンプレートとして使用し、そしてvan Soolingenら(van Soolingenら,1991)により記載される方法を使用して得た。ORI myc、aphおよびPr−HSPを、pBCSK+に連結してpHV202を作製した[図2]。別のマイコバクテリア−E.coliシャトルプラスミド(pLUC10)を、アンチセンスDNAのための第2のベクターとして使用した。
H37Rv株のSOD減少変異体および同系型コントロール株の構築:第1のアンチセンス−sodAプラスミド(pHV202−AS−SOD)を作製するために、sodAの151bpフラグメント(オープンリーディングフレームのアミノ酸139〜189に対応する)を、M.tuberculosis H37Raの染色体DNAをテンプレートとして使用してPCR増幅した。GenBankからのアクセッション番号X52861(Zhangら,1991)のDNA配列データを、それぞれ以下の配列を有するPCR用の順方向オリゴヌクレオチドプライマーおよび逆方向オリゴヌクレオチドプライマーを設計および構築するために使用した:5’CAGATCGATACGCGTGCTAGCATTCCAGGTTTACGACCACCおよび5’CAGACTAGTATCGGCCCAGTTCACGACGTT。そのPCR産物を、中間ベクターとしてpBCSK+(Stratagene,La Jolla,California)を使用して、そして、これらの制限酵素を使用してpHV202に連結した。この制限酵素は、Pr−HSPの後方のsodAフラグメントを、M.tuberculosis染色体上のsodAオープンリーディングフレームと比較して逆方向にさせる。
第2のアンチセンスsodAプラスミドを、pLUC10を使用して作製した。最初に、pBCSK+でクローン化されたsodAフラグメントを、HindIII制限部位およびBamHI制限部位を用いてPCR増幅した。また、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を含有するpLUC10由来のHindIIIフラグメント(Cooksey,Crawford,Jacobs,Jr.およびShinnick,1993)を、ルシフェラーゼ遺伝子の5’末端においてBamHI制限部位を含み、かつ遠位のHindIII制限部位を保持するプライマーを使用して、近位の75bpを除いてPCR増幅した。続いて、sodAおよびルシフェラーゼPCR産物を、それらのBamHI末端において一緒に連結した。共に結合された部分的SOD−ルシフェラーゼDNAを、pLUC10にクローン化し、元のルシフェラーゼ−HindIIIフラグメントを置き換え、そしてpLUClO−AS−SODを生成した。
プラスミドpHV202、pLUC10、pHV202−AS−SODおよびpLUC10−AS−SODを、標準の方法(Hondalusら,2000)を使用してM.tuberculosis H37Rvにエレクトポレーションした。ただし、マイコバクテリア培養物のA600が0.6に達した場合、エレクトロポレーションの効率を増大させるために、1.5%のグリシンおよび50μg/mlのm−フルオロ−DL−フェニルアラニン(MFP)と共に、37℃にて5%CO中で48時間その培養物をインキュベートした。そのマイコバクテリアを、2回洗浄し、そして氷冷した10%グリセロールに再懸濁した。Pulse Controllerアクセサリを備えたGene Pulser装置(Bio−Rad Laboratories,Hercules,California)を、1000オームに設定したパルスコントローラーを用いて、25Fおよび2.5kVで全てのエレクトポレーションのために使用した。エレクトロポレーションの後、1mlのMiddlebrook 7H9培地をサンプルに添加し、そして形質転換体を、37℃および5%COにて24時間インキュベートさせた。形質転換体を、25μg/mlのカナマイシンを含有するMiddlebrook 7H10寒天培地上にプレーティングし、そして首尾良い形質転換を、そのプラスミド構築物に固有のDNAのPCRにより確認した。
ノーザンハイブリダイゼーション:M.smegmatis mc155およびその形質転換体からの全細胞RNAを、Cheungらの方法(Cheung,EberhardtおよびFischetti,1994)を使用して採集した。RNAを、臭化エチジウムを含有する1.5%アガロース−ホルムアルデヒドゲルを通して電気泳動し、Hybondナイロン膜に移し、そしてカナマイシン(aph)に特異的な二本鎖化学発光DNAプローブ、ホタルルシフェラーゼ、およびATリッチなS.aureusβ−ラクタマーゼ遺伝子(blaZ)の300bpフラグメント(これは、pHV202においてアンチセンスsodAフラグメントの下流に挿入されている)を用いてハイブリダイズした。M.tuberculosis sodAとM.smegmatis SodAとの間には強い相同性(これは、そのRNA転写物を識別する能力を制限し得る)が存在するので(Harth and Horwitz,1999)、それぞれpLUC10−AS−SODおよびpHV202−AS−SOD中のアンチセンスM.tuberculosis sodAフラグメントの発現をモニタリングするための代理遺伝子として使用するために、DNAプローブを、ルシフェラーゼ遺伝子およびblaZ遺伝子フラグメントについて構築した。アンチセンスsodAフラグメントはプロモーターと代理遺伝子との間にあるので、sodAフラグメントの発現とプローブされた転写物の間には直接的な相関があると想定した。
ウェスタンハイブリダイゼーション:溶解された細菌細胞からなるサンプルを、タンパク質標準としてBSAを用いてBio−Radタンパク質アッセイ(Bio−Rad,Hercules,CA)を使用して測定した場合に2.2mg/mlのタンパク質濃度になるように調整した。これらの調整されたサンプルの100μgアリコートを、12%PAGEゲル上で泳動し、そしてHybond ECLニトロセルロース膜(Amersham,Arlington Heights,IL)に移した。H37Rv由来形質転換体に由来するタンパク質を含む膜を、NIH(NIAID Contract N01 AI−75320)(Tuberculosis Research Materials and Vaccine Testing)の下でColorado State Universityから得られたH37Rv全細胞溶解物に対するポリクローナル抗血清(E−293抗血清)の1:24,000希釈物を用いてハイブリダイズした。さらに、膜上のSODの位置を同定するために、これらをまた剥して、T7プロモーターの後方にsodAを保有するE.coli JM109において産生された組換えM.tuberculosis SODを用いてウサギを免疫することにより作製された1:100希釈のポリクローナルウサギ抗血清とハイブリダイズさせた(Lakeyら,2000)。組換えSODを、ニッケルアフィニティカラムクロマトグラフィーにより精製した。ニトロセルロース膜を、上記の希釈で抗血清と共に最初にインキュベートし、次いで西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(Boehringer Mannheim,
Indianapolis,Indiana)の1:1000希釈物と共にインキュベートした。免疫ブロットを、ECLウェスタンブロット検出試薬(Amersham Pharmacia,Arlington Heights,Illinois)を用いて発色させた。
殺傷速度論アッセイ:H37Rv形質転換体を、10%アルブミン−デキストロースおよび0.2%グリセロールの両方を含むがオレイン酸およびカタラーゼを欠くMiddlebrook 7H9のブロス中の2つの濃度の過酸化水素(Sigma Chemicals,St.Louis,Missouri)に6時間曝露した。曝露後、連続希釈を、ブロスで行い、そして50μlアリコートを、OADCを含む7H10寒天を含む4つの4連プレート上にプレーティングした。6週間後、コロニーを計数した。3連の測定の平均値を報告する。
マウス接種研究およびクリアランス研究:C57BL/6マウスへの注射用の接種物を調製するために、M.tuberculosis H37Rvおよび形質転換体を、10%OADC(Difco)を含む改変されたMiddlebrook 7H10ブロス(マラカイトグリーンおよび寒天を削除された7H10寒天処方物)で増殖させた。この懸濁液を、Klett−Summerson比色計(Klett Manufacturing,Brooklyn,NY)において100Klett単位の読取り(約5×10cfu/ml)を達成するように希釈した。接種物のアリコートを、連続的に希釈し、そして正確な接種物サイズを決定するためのバックカウント用に10%OADCを含有する7H10寒天に対して直接プレーティングした。
5〜6週齢の雌性C57BL/6マウスを、Jackson Laboratories,Bar Harbor,Maineから購入した。感染したマウスおよび感染していないコントロールマウスを、Syracuse VA Medical Centerにおける病原体の無いバイオセイフティーレベル3の設備に維持した。動物実験は、
Syracuse VAMC Subcommittee on Animal Studiesにより承認され、そしてAALAC認可設備で行われた。
2回の28日接種実験およびクリアランス実験を行った。C57BL/7マウスに、6つの単離株のうち1つの約1×10cfu(サンプルの分光光度法吸光度により評価した場合)を側尾静脈を介して投与した。7つの系統を含む合計8つの実験アーム(arm)を評価し、H37Rv(pLUC10−AS−SOD)を両方の実験において使用した。各アームは24匹のマウスを含み、これらは、6マウスずつの4グループに分けられ、そしてそのグループが接種後1日目、7日目、14日目または28日目において屠殺され得るか否かに基づいてケージに入れることにより隔離した。CO吸入により安楽死させた。脾臓および右肺を無菌除去し、Glas−Col Homogenizer(Terre Haute,IN)に装着された密閉された粉砕アセンブリ(IdeaWorks! Laboratory Products,Syracuse,NY)に組織を置いた。生細胞数を、10%OADCを含有する7H10寒天プレートに対する力価測定により決定した。
組織病理学評価:左肺を、マウスから採取し、そして10%ホルマリン(Accustain,Sigma)に固定した。肺を、パラフィンで包埋し、4μmの切片に切断し、そしてヘマトキシリンおよびエオシン、Ziehl−Neelsenおよび三色染料で染色した。実験アームについて知らない病理学者が、各マウスからの肺切片を評価した。
(結果)
H37RvのSOD減少変異体およびコントロール株の構築:H37RvのSOD減少変異体を構築するために、スーパーオキシドジスムターゼをコードするM.tuberculosis遺伝子(sodA)の151bpの部分を、マイコバクテリア−E.coliシャトルベクターpHV202[図2]およびpLUC10に連結して、pHV202−AS−SODおよびpLUC10−AS−SODをそれぞれ得た。この連結部位は、65kDaの熱ショックタンパク質のATG開始コドンの直ぐ後方にあり、そしてsodAフラグメントは、染色体においてsodAプロモーターの後方にその通常の方向に対してアンチセンスの方向で挿入された。従って、熱ショックタンパク質のプロモーター(Pr−HSP)の活性化は、通常のsodA mRNAに対して「アンチセンス」であるRNA転写物を産生することが期待された。各プラスミドを、M.smegmatis株 mc155および病原性M.tuberculosis株H37Rvにエレクトポレーションした。
M.smegmatisを、Pr−HSPの後方のアンチセンスsodA転写物の発現をモニタリングするためにマイコバクテリア宿主として使用した。pLUC10−AS−SODを含有するM.smegmatis形質転換体におけるアンチセンスsodAの発現を、ノーザンハイブリダイゼーション[図3]により確かめたが、pHV202−AS−SODを含む形質転換体は、転写物を多くは産生せず、プロモーターの完全性についての疑問が持ち上がった。プロモーターからのアンチセンスsodAフラグメントにわたるDNA配列決定により、熱ショックプロモーターの−10リボソーム結合部位におけるヌクレオチド配列中の4つの塩基の変更が同定された。これを修復してpHV203−AS−SODを得た。
SOD減少変異体の遅増殖表現型:pHV202含む形質転換体およびpLUC10を含む形質転換体が親H37Rv株に匹敵する速度で増殖し、そして3週間のインキュベーション後に寒天上で別個のコロニーとして現れた一方、pLUC10−AS−SODを含む形質転換体およびpHV202−AS−SODを含む形質転換体は、かなり遅く増殖した。4週目ではピンポイントのコロニーとして現れるが、親株およびコントロール株の3〜4週間の増殖に匹敵するコロニーサイズに達するまでには7〜8週かかった。
スーパーオキシドジスムターゼのインビトロ産生:H37Rv、H37Rv(pLUC10)、およびH37Rv(pLUC10−AS−SOD)によるSODの定量的産生を、ウェスタンハイブリダイゼーションと比較した[図4]。pLUC10を用いた形質転換は、H37RvによるSOD産生に対して効果がなかった。対照的に、H37Rv(pLUC10−AS−SOD)は、コントロール株よりも少ないSODを産生したが、他のタンパク質のバンドの密度は同等であり、SODの特異的な減少を示唆していた。H37Rv(pLUC10−AS−SOD)のような株により産生されたSODバンドの相対強度のデンシトメトリー計算は、コントロール株の13%の量のSODしか生じなかった。
(過酸化水素による死滅)
過酸化水素に対する、SOD減少H37Rvの感受性を決定するために、約2×10cfuのH37Rv(pLUC10)およびH37Rv(pLUC10−AS−SOD)の接種物を、カタラーゼを欠損し、5mMまたは10mMの過酸化水素を含む、Middlebrook 7H9ブロス中で6時間インキュベートした。SOD減少改変体は、過酸化水素によって死滅するコントロール株よりもさらに感受性であり(図5)、曝露後の生存可能な細菌の数は、100倍より多く減少した。
(マウスモデルにおけるM.tuberculosis株の速度論)
SOD産生の減少がインビボでのM.tuberculosisの生存に影響を及ぼすか否かを決定するために、H37Rvおよびその形質転換体を、C57Bl/6マウスに尾の側静脈を介して投与した。SOD減少株は、コントロール株と比較して、増殖が顕著に制限された(図6)。これは、インキュベーション後から最初の24時間において明らかに速い初期クリアランス、ほとんどの場合において14日目までのいくらか緩やかなインビボでの増殖、そして第三週および第四週の間に細胞性免疫応答の発生におそらく関連する、その後の28日目までの減少を含んだ。対照的に、コントロール株の細菌数は、28日間にわたって、肺および脾臓において着実に増加し、そしてこれらの菌株に感染したマウスの数匹が、第三週目および第四週目に死亡した。28日目までに、SOD減少株 対 コントロール株の生存可能な細菌数の差は、100,000に近くであった。
(実施例2:BVVの弱毒化と結核に対する現行のワクチンであるBCG(カルメット−ゲラン桿菌)の弱毒化との比較)
(方法)
別の実施形態において、BCG(Tice株)およびH37Rv(pLUC10−AS−SOD)に感染した後のマイコバクテリアのクリアランスを比較した。2つの実験アーム(arms)の各々を、群を接種後の1日目に屠殺すべきか、4週目に屠殺すべきか、8週目に屠殺すべきか、12週目に屠殺すべきか、16週目に屠殺すべきか、または72週目に屠殺すべきかに基づいてかごに入れて、隔離した群に分けた。接種物を、尾の側静脈を介して投与した。安楽死および器官の摘出を、上記のように実施した。
(結果)
(SOD減少H37Rv 対 BCG(Tice)の比較クリアランス:)
次に、H37Rv(pLUC10−AS−SOD)のクリアランスと別の弱毒化したM.tuberculosis複合株、BCG Ticeのクリアランスとを比較することによって、SOD減少株を用いた最初の28日間に観察された、生存可能な細菌の減少が、より長い継続時間にわたって維持されるか否かを決定した。各々の株の3.8×10cfu/マウスの接種物を、尾の静脈を介してマウスの別個の群に投与した。H37Rv(pLUC10−AS−SOD)に感染したマウスは、BCGを受けたマウスよりも体重が増加した(図9)。最初の16週間にわたって、肺におけるSOD減少H37Rvのクリアランスは、BCG Ticeのクリアランスにほぼ匹敵し、両方の株において、細菌数は、100倍よりも大きい減少を示した(図10)。対照的に、最初の16週間で、このSOD減少株は、BCG Ticeよりも、脾臓においてかなりより急速に消失し、1日目の数値と比較して、それぞれ10,000倍 対 10倍の減少を示した。続いて、肺における細菌数は、16週間と17ヶ月との間で、両方の株について、適度に減少しながらほぼ一定であった。しかし、脾臓において、生存可能なBCG細菌およびSOD減少細菌の数は、減少し続け、そしてH37Rv(AS−SOD)を受けた12匹のマウスのうち5匹において、検出の下限(10cfu)を下回った。
(肺のグロス出現および組織病理学的出現:)
接種後17ヶ月のマウスの肺は、それらが受けた弱毒化された株に基づくグロス出現において特有の差異を示した。結節性病変および広範囲の硬化が、BCGに感染したマウスの肺において明らかになった(図11)。対照的に、SOD減少H37Rvに感染したマウスの肺は、より黒く、見かけ上は、より均質であった。
各マウスがどの株を受けたかがわからない病理学者は、各肺の顕微鏡検査に基づいて、種々の組織病理学的特徴をスコア付けした。この穏やかな間質性浸潤および細気管支周囲浸潤は、2つの群のマウスについて類似していた(表2、図12)。BCGに感染したマウス由来の肺は、グロス検査によって観察された硬化領域および小結節領域に対応する、より高い肺胞性浸潤を示した。泡沫状マクロファージが、Ziehl−Neelsen染色によって可視できるAFBをしばしば有する肺胞性硬化領域内で顕著であった。SOD減少H37Rvに感染したマウス由来の肺は、リンパ球、マクロファージ、および形質細胞のより多くの静脈周囲収集物を示した。
(実施例3:BVV 対 BCGのワクチン効果の比較)
次に、BVVとBCG Ticeを、ワクチンとして比較した。IVワクチン接種の6週間後に、C57B1/6マウスを、M.tuberculosisの病原性Erdman株の鼻腔内接種物を用いてチャレンジし、このチャレンンジの1日後に屠殺したマウスの肺における細菌数によって評価しながら、肺に対して10〜10cfuの接種物を送達した。ワクチン接種したマウスが、IV経路によるよりも、気体状で投与された病原性M.tuberculosisに対して、より感受性であり(North,LaCourse,およびRyan,1999)、かつ本発明らは大きな接種物を使用するので、このことは、非常に厳密なチャレンジであった。例えば、新しいワクチン候補物を含む他の現行の試験において、Jacksonらは、IVチャレンジを使用し(Jackson,Phalen,Lagranderie,Ensergueix,Chavarot,Marchal,McMurray,Gicquel,およびGuilhot,1999)、一方、Hondalusらは、エアロゾルによって、5〜10cfuでチャレンジした(Hondalus,Bardarov,Russell,Chan,Jacobs,Jr.、およびBloom,2000)。詳細な計数を、最初の10週間にわたって行い、このことは、ワクチン接種していないコントロールと比較して、ワクチン接種した群の両方において、病原性Erdman株の増殖の顕著な制限を示した(図13)。チャレンジから10週間後までに、BCGと比較して、BVVを用いたワクチン接種には、明らかな利点が存在し、肺における細菌数においては40倍の差異(それぞれ、log4.2 対log5.8、P<0.05)を有し、かつ肺での出現において顕著な差異を有した。チャレンジから9ヶ月後、BCGと比較して、BVVでワクチン接種したマウスの間に、生存に有利な傾向が存在した(それぞれ、18匹のうち16匹 対 18匹のうち12匹)。肺での出現におけるグロスの差異および組織病理学的差異は、チャレンジから15ヶ月後にわずかに生存するマウスの最終的な屠殺の時に、より印象付けられた(図14および15)。
(弱毒化効果およびワクチン効果の機構)
実施例2および3における観察は、より高いアポトーシスが自然免疫応答および獲得免疫応答の両方に寄与することを示している。細胞壊死とは対照的に、アポトーシスは、伝統的に、炎症性応答を含まない細胞または免疫系を誘発する細胞を取り除くための、穏やかな死の手段として特徴付けられる。実際には、BCGと比較して、BVVを受けたマウスにおける、優位な体重増加の1つの解釈は、アポトーシスが、根絶したSOD減少細菌の宿主機構として、より顕著である場合に予測され得るように、前者を伴う炎症性サイトカイン(例えば、TNF−α)の減少する可能性が存在することである。また、BCGと比較して、BVVのワクチン効果における顕著な改善は、BCGを欠失した主要抗原を有する、BCGおよびSOD減少H37Rv株によって産生される抗原における差異よりも、増強された抗原提示に関係していたことを意味するようである。比較ゲノム分析は、約4,000のうち約129のみ(3%)のM.tuberculosisのオープンリーディングフレームが、BCGから欠失されていることを示唆し(Behr,Wilson,Gill,Salamon,Schoolnik,Rane,およびSmall,1999;Kaufmann,2000)。それゆえ、H37Rvに特有な抗原がワクチン効果における差異を担う場合、本発明者らは、弱毒化したM.tuberculosis株からの保護の、多くても適度な増強を予測した。代わりに、本発明者らは、ワクチン効果のより劇的な差異を観察し、このことから、本発明者らは、抗原が提示される様式において重要な差異が存在し得ると考えられた。
(実施例4:単核細胞のアポトーシスを伴う感染部位においてBVVが急激な単核細胞浸潤を誘導することの証明)
上記で概要を述べた考察から、本発明者らは、BVVおよび病原性H37Rvコントロールによる感染の初期過程の間に収集した、マウスの肺切片におけるアポトーシスを測定した。これは、炎症性細胞浸潤のパターンにおいて、このような特有の差異を示した(図7)。本発明者らは、アポトーシス細胞を同定するために、TUNEL(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介性2’−デオキシウリジン5’−トリホスフェート−ビオチンニック末端標識)によって、DNA断片化を評価した。中程度のアポトーシスが、BVVに感染させたマウスの単核細胞浸潤物において、1日目、7日目、および14日目に観察され、これは、28日目に増加した間質性浸潤として増強した(図8)。対照的に、アポトーシスは、病原性M.tuberculosisに感染したマウスにおいて、1日目および7日目に同定されたが、第一に、肺胞空間の内面の(lining)細胞を主に含むことが明らかであり、かつ間質空間にアポトーシスの単核細胞は、ほとんど存在しない。14日目までに、病原性細菌に感染したマウスは、間質性浸潤および肺胞性浸潤について、最小のアポトーシスを示した。要約すると、病原性株およびSOD減少株について、14日目までに観察されたアポトーシス細胞の存在下で、顕著な定量的差異が存在した。さらに、間質単核細胞の浸潤の規模における差異もまた考慮する場合、炎症性細胞のアポトーシス(これは、病理学者の総説により、主にマクロファージから構成されることが明らかである)は、BVVに感染したマウスにおいてほとんど排他的に生じ、かつ病原性H37Rvに感染したマウスにおいて無視できることは、明らかである。
従って、本発明者らは、病原性M.tuberculosis株によって作製される、多量の細胞外SODが、間質単核細胞の浸潤の初期増加およびこれらの細胞間のアポトーシスの両方をブロックすると結論付けた。H37RvにおけるSOD産生を減少させることによって、本発明者らは、M.tuberculosis感染を、より迅速な炎症性プロセスに変換したが、このプロセスは、急性的感染よりむしろ慢性的感染に一般に関連する優勢な単核細胞を用いた。本発明者らはまた、宿主防御機構としてのアポトーシスをアンマスキングし(unmasked)、これにより、マクロファージのアポトーシスが結核細菌を殺傷し、ミコバクテリア感染を制御する際に重要であるという高い証拠が増すにつれて、感染の良好な初期制御が可能になった(Fratazziら、1999;Kornfeld,Mancino,およびColizzi,1999;Molloy,Laochumroonvorapong,およびKaplan,1994;Oddoら、1998)。
(実施例5:BVVでのワクチン接種がBCGでのワクチン接種よりも、肺において、より初期の間質単核細胞の浸潤を誘導することの証明)
アポトーシスを伴う、急激な単核細胞の浸潤の証明は、アポトーシス関連MHCクラスI経路を介する増強された抗原提示が、BVVのワクチン効果の基礎であるという見解を支持する。
この仮定を試験するために、本発明者らは、BCG Tice 対 BVVの接種後に観察される間質性肺浸潤の量を比較した。各細菌性接種物を、分光光度的に調整して、1.4×10cfuに対応する細菌密度を生じた。1日目に収集した肺の組織病理学的試験は、BCG Ticeのレシピエントの間の最小の炎症性応答と比較して、BVVを受けたマウスにおける激しい間質性浸潤を示した(図17)。
このことは、BCGがワクチンとして有用な、弱毒化された細菌であるが、BVVと同じ型の初期炎症性応答を誘導しないことを示している。実際には、特定の染色体ゲノムエレメントの欠失を含む他の手段によって弱毒化されるが(Behr,Wilson,Gill,Salamon,Schoolnik,Rane,およびSmall,1999;Kaufmann,2000)、SOD産生の減少は生じない。BCGは、BVVが増強する様式では、自然免疫応答を増強しない。
(実施例6:BVVでのワクチン接種が、BCGでのワクチン接種よりも強いCD8+T細胞応答を誘導することの証明)
BVVの増強したワクチン効果を媒介する宿主免疫応答の研究は、BCGワクチン接種マウスおよびBVVワクチン接種マウスにおけるCD4+Tリンパ球応答およびCD8+Tリンパ球応答の測定を含んでおり、これを、繰返しワクチン効力試験の間に行った。
FACS(蛍光細胞分析分離装置)についてのサンプルを、以下の様式で調製した:個々の肺を、実験マウスおよびコントロールマウスから収集した。次いで、各肺を、肺動脈へのカニューレ挿入を介して、DMEM+10%FCS(ウシ胎仔血清)で還流した。次いで、肺を、氷冷DMEM中に置き、そして外科用メスを用いて、滅菌様式で1mm四方の立方体に切り、そしてワイヤメッシュを通して、単一の細胞懸濁液(SCS)を得、そしてRBC溶解を行った。次いで、このSCSを、Mリンパ球(Cedarlane Labs,Ontario,CA)上で層状にし、そして界面を、製造業者の指示によって遠心分離した後に、単離した。次いで、細胞を、洗浄用緩衝液(2% FCSおよび0.1% ナトリウムアジドを有するPBS)で数回洗浄し、そして計数した。樹状マーカ分析用の細胞を単離するために、肺の断片をコラゲナーゼとともに30分間インキュベートし、続いて、赤血球溶解緩衝液で処理した。リンパ球勾配は、行わなかった。全ての細胞について、生存度を、トリパンブルー排除によってアッセイし、そしてこの生存度は、一貫して、90%より高かった。大部分の場合において、1×10個の細胞を、染色する前にサンプルに等分した。1×10個未満の細胞が存在する総細胞調製物について、全ての細胞を使用した。表3は、FACSおよび免疫組織化学のために使用した抗体の、型、供給源、および量を示す。
次いで、個々のサンプルを、適切な抗体とともに、氷上で30分間インキュベートした。次いで、サンプルを、上記で詳述した洗浄緩衝液を使用して、2回洗浄した。次いで、サンプルを、承認されたバイオセイフティープロトコルに従って、2%のパラホルムアルデヒド中で一晩固定し、そしてMac Workstationを備えるBecton−Dickinson FACScalibur機器を使用する、3色または4色のいずれかのフロー分析によって分析した。
1つの実施形態において、C57Bl/6マウスを、分光光度的に調節したBVVまたはBCGの接種物を用いて、尾の側静脈を介してワクチン接種し、1.4×10cfuに対応する細菌密度を得た。このワクチン接種から6週間後、マウスに、鼻腔内の投与を介してM.tuberculosisの病原性Erdman株の5×10cfuを与えた。チャレンジの4ヶ月後、各群からのマウスを、収集し、そして上記のようにFACSのためにSCS調製した。細胞集団の分析は、両方のワクチンが強力なCD4+T細胞応答を誘導することを示した(図16)。対照的に、BCGは、弱いCD8+T細胞応答のみを誘導し、このことは、免疫応答のこのアームを刺激するBCGの乏しい性能に関する他の研究の観察を、追認した(Silva,Bonato,Lima,Faccioli,およびLeao,1999;Hess,Miko,Catic,Lehmensiek,Russell,およびKaufmann,1998;Kaufmann,2000)。しかしながら、BVVは、非常に強力なCD8+T細胞応答を誘導し、その結果、病原性M.tuberculosisを用いたチャレンジから16週間後、BCGワクチン接種マウス由来の18%のリンパ球と比較して、BVVをワクチン接種したマウス由来の38.4%のリンパ球が、CD8+T細胞であった。
第二の実施形態において、マウスを、より少ない数のBCGまたはBVVをワクチン接種した(約5×10cfuを、尾の側静脈を介して投与した)。さらに、2つの異なるBVV構築物を評価して、異なるアンチセンスSODプラスミドを使用して、このSOD減少表現型を与える際に、上で観察されるCD8+T細胞応答が、再現可能であることを証明した。表4は、マウスが9週間前に受けたワクチン株に従ってグループ化した、病原性M.tuberculosisでのチャレンジから24時間後の、マウスの肺における細胞を示す。
第三の実施形態において、マウスを、尾の側静脈を介して、5×10cfuのBVVまたはBCGを予防接種した。マウスを、ワクチン接種の1ヶ月後に収集し、そしてSCSを、調製し、上記のようにFACSによって分析した。さらに、結果は、BCGでのワクチン接種よりも高い、BVVでのワクチン接種に対するCD8+T細胞応答を示した(表5)。
要約すると、これらの結果は、BVVによって誘導される強力なCD8+T細胞応答を実証している。さらに、CD4+T細胞応答は、BCGでのワクチン接種後に生じる応答と少なくとも同じ強さを示す。一緒に考慮する場合、実施例4〜6の結果は、BVVに感染したマクロファージのアポトーシスが、おそらく、CD8+T細胞に対するミコバクテリア抗原のアポトーシス関連交差提示(apotosis−associated cross−presentation)を介して、増強したMHCクラスI抗原提示を導くことを示す。
BCGが、なぜ結核の肺形態を制御する際のワクチンとしてそれほど有用でないかという見識を与える、これらの結果のさらなる意味がまた、本発明のデータによって示唆される。本質的には、CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)応答は、BCGに対する宿主免疫応答において顕著ではないので(Kaufmann,2000)、これは、本発明者らのワクチン効力結果に例示されるように、宿主に、BCGワクチン株と病原性M.tuberculosisでのその後の任意のチャレンジの両方を含むために、より炎症性の免疫機構および壊死性の免疫応答を利用させ得る(図14および15)。このように、BCGは、優勢なCD4+T細胞応答を誘導するが、BVVは、より高い保護を提供する。なぜなら、BVVは、CD4+T細胞応答とCD8+T細胞応答の両方を誘導するからである。実際には、再生された間質単核細胞の浸潤を伴う、28日目のアポトーシス(図8)の顕著な増加は、おそらく、CTL応答によって最も良く説明され、これは、死レセプター(例えば、Fas)およびパーフォリン−グランザイム経路を介してアポトーシスを誘導し得る(SederおよびHill,2000)。
(実施例7:BVVでのワクチン接種後のCD8+応答に対する用量応答の効果の証明)
T細胞応答に対するワクチン用量の効果を説明するために、マウスの群を、BVVの2種の異なる調製物(すなわち、H37Rv(pLUC10−AS−SOD)およびH37Rv(pHV203−AS−SOD))でワクチン接種した。BCG TiceおよびH37Rv(pLUC10−AS−SOD)を、尾の側静脈を介して、5×10cfuの用量で投与し、一方、H37Rv(pHV203−AS−SOD)を、約5×10cfu、5×10cfu、および5×10cfuの異なる用量で与えた。これらの用量は、24時間にて、log1.5〜log3.8の範囲の、肺における生存可能な細菌数を生じた。ワクチン接種から9週間後、マウスを、M.tuberculosiの5×10cfuの病原性Erdman株でチャレンジした。マウスを、チャレンジから14ヶ月後に収集し、そしてT細胞集団を、上記のように、FACSによって数えた。ワクチン接種/感染後に達成されるCD8+値の割合は、以前の実験において示されるほど、この実験において高くはなかったが、CD4+T細胞応答とCD8+T細胞応答の両方における用量応答の証拠が存在した(図6)。
(実施例8:BVVが単球および樹状細胞によって、肺の初期浸潤を誘導することの証明)
BVVワクチン接種によって誘導される、増強されたCD8+T細胞応答の基礎となる機構を解明するための研究は、樹状細胞による細菌抗原のアポトーシス関連交差提示が関与するという仮説に集中している。BVVワクチン接種マウスにおいて28日目に観察された、増強されたアポトーシスおよび再生された間質性浸潤(図8)の最も信憑性のある解釈は、それがCD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)応答によって引き起こされるという解釈であるので、おそらく、これは、感染後の最初の数日間に生じる。上記のように(図8および図17)、BVVのワクチン接種から24時間以内にアポトーシスを伴う顕著な間質性肺浸潤の、本発明者らの考察は、感染期間後早い期間でのアポトーシス関連抗原交差提示が、増強されたMHCクラスI抗原提示を達成し、それによって、強力なCD8+T細胞応答を導くための機構であるという見解と一致する。
BVVによって誘導される初期の間隙性肺浸潤を含む細胞の型を決定するために、C57Bl/6マウスに、5×10cfuのBVVまたはBCGのいずれかを、側方の尾の静脈を介して接種した。マウスを、感染後67時間で屠殺した。単一細胞の懸濁物を、リンパ球研究について上に記載されたように調製した(次いでこの懸濁物を、上記のようにコラゲナーゼDと共にインキュベートしたことを除く)。次いで、この反応を、DMEM+10%FCSで停止した。上に概説した方法ならびに表4に概説する抗体および条件を使用して、FACSを実施して、単球/マクロファージ、顆粒球、およびNK細胞を含む細胞集団を計数した。これは、単球の増加および対応する顆粒球の低下を、ワクチン接種していないコントロールと比較した全ての感染したマウスについて示し、最も高い値は、BVVを受けたマウスにおいて観察された[表7]。この初期の時点におけるリンパ球集団と、NK細胞の可能な予測との差異が最小であった[表8]。感染の67時間後におけるCD4+およびCD8+のTリンパ球亜集団における差異の欠如[表8](これは、4週間以降の時点で注目される明らかな差異となる[表4−6])は、ワクチン接種の結果として、順応細胞免疫応答の発生と一致する。
樹状細胞の、肺のワクチン接種後への浸潤を評価して、BVVがアポトーシス関連抗原のインビボでの交差提示を誘導する条件を確立するか否かをさらに決定するために、実験を行った。C57Bl/6マウスに、5×10cfuのBVVまたはH31Rvのいずれかを、側方の尾の静脈を介して接種した。マウスを、感染後20時間で屠殺した。単一細胞の懸濁物を、上記のように調製した。上に概説した方法ならびに表3に概説する抗体および条件を使用して、FACSを実施して、樹状細胞を計数した。これは、CD11cマーカーおよびCD80マーカー(活性化樹状細胞の指標である)を同時発現する細胞の、H37Rvと比較してBVVに感染したマウスにおける増加を示した[表9]。
(実施例9:BVVは、マウスマクロファージにおいて、アポトーシス関連遺伝子の発現に影響を与える)
インビボで、樹状細胞とのアポトーシス性マクロファージの同時局在を達成する機構には、NF−κB活性化およびBVVの両方の迅速な誘導によるアポトーシスが関与し得る[図19a]。
BVVによって誘導される、初期のアポトーシス遺伝子シグナル伝達を評価するために、本発明者らは、マウス骨髄単球由来のマクロファージ培養物およびRNase保護アッセイ(RPA)を使用した[図19b]。この細胞培養物を、BVVまたは有毒なH37Rvに、3:1の感染多重度で感染させた。インビトロでの3日目の生存性は、両方の培養物について、90%を超えた。これらの結果は、感染の3日後までの、有毒なH37Rvに感染した細胞における、TNF−αレセプター関連死ドメイン(TRADD)およびfas関連死ドメイン(FADD)の発現のダウンレギュレーションを示し、これが、インビトロでのマクロファージアポトーシスの際の、M.tuberculosis感染の阻害効果の機構であり得ることを示唆する(Durrbaum−Landmannら、1996)。対照的に、これらの遺伝子のより高レベルの発現は、BVVに感染した細胞において、維持された(Oddo,Renno,Attinger,Bakker,MacDonald,およびMeylan,1998)。
鉄を補因子とするM.tuberculosisのSODは、スーパーオキシドを清掃(scavenging)することによって、感染の病因に寄与し、これによって、NK−κBの活性化および単球細胞のアポトーシスの両方をブロックし、これによって、感染に対する先天免疫を欠如させ、そしてその生物が存続することを可能にするようである。BVVにおけるSOD産生の減少によって、NF−κBの活性化とアポトーシスとの両方が増強され、これによって、インビボでのアポトーシス関連交差提示を容易にした。
(実施例10:SODが減少したBCGの構築)
上記実施例の1つの示唆は、SODの活性をBCGによって減少させることによって、同様に、その抗原提示を増強し得、結核症に対するより良好なワクチンになり得、一方でなおさらに弱毒化され、そしておそらく、より良好に耐性になることである。従って、実施例1に概説した方法を使用して、pHV203−AS−SODプラスミドを、BCG Ticeにエレクトロポレーションした。形質転換体は、ゆっくりと増殖する表現型を示し、これは、H37RvにおけるSOD産生の減少に特徴的であった。BCGおよびBCG(pHV203−AS−SOD)での静脈内ワクチン接種の4週間後の肺におけるT細胞亜集団の比較は、予測どおりに、SOD集団の減少がCD8+ T細胞応答を増強することを示す[表10]。このことは、ワクチンとして広範に使用されている、すでに弱毒化された細菌が、その免疫原性を、本発明の実施によって増強され得ることを実証する。このことは、結核症に対するワクチンとしてのBCGの性能を改善するのみでなく、これはまた、異種抗原(他の病原性微生物および癌腫瘍抗原由来の抗原を含む)を発現するためのベクターとしての有用性も増強する。
(実施例11:SOD活性が低下したSOD酵素変異体の生成)
上述のように、TIAストラテジーは、微生物の因子の本質的な性質に起因して、対立遺伝子の不活性化が都合がよくない遺伝子を扱うために、設計された。TIAストラテジーの主要な特徴は、転換の危険なしにワクチン株を生成することである。具体的な方法は、標準的な分子遺伝子ストラテジーを包含し、そしてインビボでの試験およびヒトでの試験のための株を生成する。標的化漸増弱毒化(TIA)は、病原性微生物に対する弱毒化された生ワクチンを開発するための、新たな模範を代表する。一般に、包含される4つの工程が、以下に要約され、そして詳細に記載される。
(工程1)
インビボにおける微生物生存に必須である酵素を同定する。アンチセンス(AS)技術を使用して、病原体を弱毒化するか、またはプロ−アポトーシス効果を与える必須の遺伝子を迅速に同定する。このAS/TIAストラテジーは、毒力に必須であるが、栄養分の欠乏を引き起こし、そしておそらく飢餓ストレスに応答して細菌遺伝子発現を変化させる中心的な代謝経路の成分(すなわち、栄養素要求株)ではない酵素に対して適用される場合、最良にはたらく。M.tuberculosisのSODは、必須酵素の例であり、そして本実施例において記載される標的酵素である。しかし、記載される方法が他の病原体中の他の酵素に対して慣用的に適用され得ることが、理解される。
(工程2)
転写および翻訳を調節するヌクレオチドを改変することによってか、またはあまり有効ではないプロモーターでそのプロモーターを置換することによって、その一次構造を変化させるかまたはその発現を低下させる酵素をコードする遺伝子の変異形態を作製する。
(工程3)
野生型遺伝子を1つ以上の変異形態と置換して、弱毒化された微生物を生成する。これはまた、別の種由来の相同であるがあまり効果的ではない酵素を置換することによって達成され得る。従って、この生成される変異体は、酵素の効果または産生における漸増する低下、それゆえ生じる弱毒化を証明する。弱毒化された微生物は、インビボ弱毒化を評価することによって漸増して弱毒化される変異体として同定される。酵素に依存して、インビトロでの差異(例えば、減弱したSOD活性を有する変異体についての過酸化水素または超酸化物アニオンに対するその感受性における攪拌工程の差異)を測定することもまた、可能であり得る。例えば、M.tuberculosisのSOD遺伝子における変異が作製され、インビボにおける病原性の攪拌工程での低下が本明細書中に記載される分子方法を用いて生成されることを示す、SOD活性における攪拌工程での低下を伴なう微生物を生成する。SODの活性は、標的化された漸増する弱毒化について記載された技術のいずれかによって、野生型酵素の活性の35%、25%、15%、10%、5%などに低下される。
(工程4)
ワクチンとしての使用のために弱毒化と免疫原性との間の適切なバランスを達成する株について、弱毒化された微生物をスクリーニングする。単一のワクチン候補物を有するよりも、複数のワクチン候補物を生成することによって、複数の変異体を試験して、ワクチンとして最も大きい効果を有する変異体ワクチン同定し得る。この同定は、各変異体についての免疫原性および弱毒化の評価に基づき、免疫原性と弱毒化との間に正当なバランスを有する変異体を選択する。この技術を他の方法によってすでに十分に弱毒化されている株(例えば、BCG)に対して適用し、そして導入されている変異が、抗原提示を増強するためにプロ−アポトーシス効果を与えるためのものである場合、その目的は、免疫原性を最適化することである。
より詳細には、野生型M.tuberculosisのSOD遺伝子をE.coliベクターにクローン化する。SOD遺伝子の2つのバージョンをクローン化する:一方はpNBV−1中にネイティブのsodAプロモーターを有し(Howard,Gomezら、1995 370/同書)、そしてもう一方は、開始ATGコドンに制限部位を有する発現プラスミドpKK233−2(Pharmacia)中のプロモーターを含まないsodAであり、その結果、その成熟SOD産物は、融合タンパク質として作製されない(HarthおよびHorwitz,1999)。PCRに基づく変異誘発(Ho,Hunt,Horton,PullenおよびPease,1989)または他の変異誘発技術を使用して、クローン化したSOD遺伝子のヌクレオチド配列を変化させ、アミノ酸(AA)欠失および置換を生成し、これらをDNA配列決定によって確認した。
欠失に関して、中心となるのは、AA変化がおそらく酵素機能を完全には排除しない、SODの部分である。SODの結晶構造は公知である(Cooperら、1995)(図21)。従って、変異プロセスは活性部位から離れた標的領域で開始する。なぜなら、これらはおそらく、酵素活性の完全な損失よりも、酵素活性の部分的な損失を伴なう変異体酵素を生じるからである。ドメイン内領域中(すなわち、2つのαヘリックス間)に単一AA欠失および1個の二重欠失(図21、表11)を有するいくつかの変異体を、作製した。これらの変異体SODは親酵素と比較して活性が低下していた(表11)。
酵素活性におけるより大きな低下を達成するために、表11に示す欠失ならびにドメイン内領域中の2〜3個のAA欠失の組み合わせを有する変異体を生成し得る。このような変異体の例としては、E54−D55欠失変異体、K53−E54−D55欠変異体、G87−G88−D89欠失変異体、N86−G87−G88−D89欠失変異体、L133−G134欠失変異体、L133−G134−N135欠失変異体、F149−P150欠失変異体、F149−P150−L151欠失変異体、V184−V185欠失変異体、ならびにN183−V184−V185欠失変異体が挙げられる(SOD内でのこれらの欠失の位置を同定するためには、図21を参照のこと)。他の欠失および置換もまた導入されて、SOD活性におけるさらなる低下を達成し得るか、または必要である場合、表11に列挙される変異体よりも大きいSOD活性(例えば、35%、40%、45%、50%)を有する変異体を同定し得る。
例えば、ドメイン間の領域の残基を順次除去するストラテジーを使用して、漸増的に酵素活性を減少させる変異体を作製するために、X線結晶構造データに基づいて、秩序だった様式で、SODに他の変化がなされ得る。例えば、
1.V37とF67との間(α1−α2ヘリックスおよび結合領域)のアミノ酸を進行的に欠失させる
−最初に、G39、次いで、G39〜A40、次いで、K38〜A40を欠失させる;
−最初に、E54、次いで、E54〜D55、次いで、K53〜D55;次いで、K53〜H56、次いで、K53〜S57、次いで、K53〜A58、次いで、K53〜I59、次いで、K53〜L60、次いで、K53〜L61、次いで、K53〜N62、次いで、K53〜E63、次いで、K53〜K64、次いで、K53〜N65、次いで、K53〜L66、次いで、K53〜A67を欠失させる。
このストラテジーの後ろにある原理は、H28、H32、Y36が、不変であり、H28が、鉄補因子の結合に関与し、残基41〜50が、維持されるべき高度に相同なM.leprae SODにおいて免疫原性エピトープ形成すること、およびα1−α2ループが、他の種におけるテトラマー形成において重要であるが、M.tuberculosisのSODにおいては重要でないことである。
2.α2−α3ヘリックス間(残基S84〜T92)の隙間を短くする
−最初に、G88、次いで、G87〜G88、次いで、G87〜D89、次いで、N86〜D89、次いで、N86〜K90、次いで、P85〜K90、次いで、P85〜P91、次いで、S84〜P91、次いで、S84〜T92を欠失させ;次いで、α3ヘリックスを一度に1つのアミノ酸に切断し続け、そしてV120を通って、様々に、α4ヘリックスをとおして、同じことを行う;このドメインリンカー領域は、タンパク質の残りよりも有意により可撓性である。
3.β1鎖とβ2鎖との間でT132〜N135ストレッチから残基を除去する
−最初に、G134、次いで、L133〜G134、次いで、L133〜N135、次いで、T132〜N135を欠失させる
4.β2鎖とβ3鎖との間でD144〜G152ループから残基を除去する
−最初に、P150、次いで、F149〜P150、次いで、F149〜L151、次いで、N148〜L151、次いで、N148〜G152、次いで、T147〜G152、次いで、T147〜L153;次いで、Q146〜L153を欠失させる
5.α5−α6間の結合領域の残基を除去する
−最初に、V184、次いで、V184〜V185、次いで、N183〜V185、次いで、N183〜N186を欠失させる
これは、α6をα2に引っ張り、そして触媒部位近くに立体障害を及ぼす。
6.進行的にN末端を欠失させる
7.進行的にC末端を欠失させる。
置換に関して、直接またはヒドロキシル基を介してのいずれかで、触媒性鉄補因子に配位するSODの4つのヒスチジン残基が存在する(Cooper、McIntyre、Badasso、Wood、Zhang、Garbe、およびYoung、1995)。これらは、個々にリシン残基に変換されており、野生型SODと比較して、減少した活性を有することが見いだされた[表11]。アルギニンのような他の塩基性アミノ酸もまた、使用され得る。全ての置換変異は、野生型酵素へ逆転して戻る単一点変異の可能性を減少させるために、2以上のヌクレオチド置換を含む。
変異sodA遺伝子は、pKK233−2およびpNBV−1にクローニングされる。野生型または変異のsodA対立遺伝子を含むpKK233−2を、SOD二重ネガティブ(sodA−、sodB−)E.coli株CK9C1891に形質転換される(Danielle Touati、Institut Jacques Monod、Paris)(CarliozおよびTouati、1986)。組換え体M.tuberculosis SODは、SOD欠失E.coliが、最小培地において増殖し得ることを以前に示され(HarthおよびHorwitz、1999)、そして本発明のデータは、この観測を確認した[表11]。
(減少したSOD活性を有する変異体についてのスクリーニング)
2つのスクリーニング技術が使用されており、これらを、野生型酵素と比較して減少したSOD活性を有する変異体SODを同定するために使用する。増殖速度をM9またはM63最小培地において研究する。変異sodA対立遺伝子を含むCK9C1891形質転換体の増殖速度を、図22に示されるように計算する。SOD変異体が最小培地において非複製SOD二重ネガティブ株の増殖速度を増加させる能力[表11]が、変異体SODの活性とおおまかに比例することが期待される。
一般的に、過酸化水素感受性は、SOD+株とSODネガティブ株との間の差を検出することについて、パラクアット生成スーパーオキシドに対する感受性よりも、より感受性であり(HarthおよびHorwitz、1999)、従って、スクリーニング試験としてより適切である。これは、一部において、過酸化水素によるM.tuberculosisの鉄SODの不可逆な不活化に起因し得る(Buntingら、1998)。
本発明において必須ではないが、SOD変異体の酵素活性のより正確な決定は、変異sodA対立遺伝子をM.vaccaeにクローニングして、特異的活性の決定のための組換えSODを産生することによって達成され得る。他者が、M.vaccaeを使用して、X線結晶解析のために、変異体M.tuberculosisSODを産生し、そして精製する(Cooper、McIntyre、Badasso、Wood、Zhang、Garbe、およびYoung、1995;Bunting、Cooper、Badasso、Tickle、Newton、Wood、Zhang、およびYoung、1998)。野生型sodA対立遺伝子を含むプラスミドベクター(p16R1)を使用する。しかし、任意のミコバクテリア−E.coliシャトルベクター(例えば、pHV202)が使用され得る。M.tuberculosis SODモノマーとM.vaccae SODモノマーとのオリゴマー化を表すハイブリッド酵素を避けるために、SOD結晶を調製するために開発されたKusunose精製手順(Kusunoseら、1976)の改変を使用する。このプロトコルは、M.vaccae細胞の超音波処理、硫酸アンモニウム沈降、およびアニオン交換クロマトグラフィー(M.tuberculosis SODテトラマーが、3:1ハイブリッド、2:2ハイブリッド、1:3ハイブリッド、または、M.vaccae SODテトラマーより前に溶出する)を含む。収率は、代表的に、1リットル当たり1.5〜2mgのM.vaccaeである。SODアッセイを、記録スペクトロフォトメーターを用いてシトクロムCの還元の阻害をモニタリングすることによって実行し(Beyer、Jr.およびFridovich、1987)、そしてタンパク質濃度を、BioRadタンパク質アッセイキットを使用して決定した。精製された組換え変異体SOD酵素の特異的活性は、野生型SODの活性と比較される。ある範囲の活性(例えば、親のSOD活性の1%〜35%)を示す8〜10個のSOD変異体が、同定される。最後に、導入される置換および欠失が金属補因子をFe3+からMn3+に変更し得るので、イオン含有量は、Fe−SODを不可逆的に阻害するが、Mn−SODを阻害しない過酸化物阻害アッセイを使用することによって、決定される(Bunting、Cooper、Badasso、Tickle、Newton、Wood、Zhang、およびYoung、1998)。
要約すると、野生型SODの活性の1%〜36%を示す鉄補因子化SODの変異体(最小培地における、SODネガティブE.coliの増殖速度を補完するそれらの能力に基づく)が、構築された。TIAストラテジーの教示に従って、変異sodA対立遺伝子を使用して、免疫原性を保持/増強しながら、弱毒化を達成するために、有毒なM.tuberculosis中の野生型sodAを置換し得る。これらはまた、他の手段によって弱毒化されたM.tuberculosisまたはM.bovisの菌株(例えば、BCG)に配置されて、免疫原性を増加することによってワクチン効率を増強し得る。
(実施例12:M.tuberculosisおよびBCGの安定なSOD弱毒化変異体の構築)
(変異体M.tuberculosisの作製:)
M.tuberculosis H37Rv中の野生型sodAを、変異sodA対立遺伝子で置換する。あまり効果的でない酵素での野生型SODの置換は、現在のAS−SOD変異体を用いて見いだされる杆菌と類似の、生存可能であるが弱まった杆菌を生じる。
対立遺伝子置換を達成するためのいくつかの実行可能な方法が存在する。1つの技術は、ParishおよびStokerの「可撓性カセット法」(ParishおよびStoker、2000)の使用を包含し、これは、顕著でない変異およびさらに二重の顕著でない変異を生じ得ることが示された。ベクターp1NIL、p2NIL、pGOAL17、およびpGOAL19は、この研究を行うために使用され得る。このParishおよびStokerの参考文献は、幅広く利用可能である遺伝子を使用してベクターを構築するための方法を記載する。当業者は、これらのベクターを再構築するための方法または類似のベクターを作製するための方法を知る。基本的に、このシステムは、変異対立遺伝子を送達するために自殺ベクターを使用し、そして中間工程として、単一交差事象の選択によって実行可能になる。
変異sodAでの野生型sodAの対立遺伝子置換を達成するために、オープンリーディングフレーム(ORF)の上流の541bpおよび下流の155bpを有するプロモーター領域を含む全長変異sodA対立遺伝子が、p2NIL上のマルチクローニング部位(MCS)にクローンニングされ、これはまた、カナマイシン耐性のための遺伝子(kan)も含む。続いて、ハイグロマイシン耐性のための遺伝子(hyg)、抗原85プロモーターの制御下のlacZ(すなわち、十分に発現されたM.tuberculosisタンパク質)、および熱ショックタンパク質60についてのプロモーターの制御下のsacB(スクロースによる殺傷を生じる)を含むpGOAL19由来のカセット(hyg,PAg85−lacZ,Phsp60−sacB)を、p2NILにクローニングして、SOD変異の性質を示すために名付けられたpBVVシリーズのプラスミド(すなわち、pBVV−H145K、pBVV−ΔE54など)を得る。プラスミドDNAを、100mJ UV光/cmで前処理して、相同組換えを刺激し、そして非正統的な(illegitimate)組換えを減少させ(ParishおよびStoker、2000)、そしてH37Rvにエレクトロポレートする。hygkan表現型を有する形質転換体は、カナマイシン(20μg/ml)およびハイグロマイシン(100μg/ml)を含む10%(w/v)のOADCを補充した7H10寒天プレート上で選択し、そして単一交差組換えを表す。
非選択的7H10培地上にコロニーをプレートし、そして3〜4週間後に、ループのある(loopful)細胞を7H9ブロス中に再懸濁し、そして1mmのガラスビーズを伴う単一の細胞を生成するためにボルテックスして分散させた。連続希釈をスクロースプレート上にプレートし、そして6〜8週間インキュベートした。lacZおよびsacBの両方の使用は、二重交差組換えのために濃縮しながら、試験されるコロニーの数を減少させる。白色コロニー(suc)を、カナマイシンを伴うかまたは伴わないで、プレート上にストリークして、kanコロニーを同定し、kan遺伝子の欠失を確かめる。一部のkanコロニーは、対立遺伝子置換とともに単一交差から二重交差に進み、一方、他のkanコロニーは、一緒に構築物を除去し、そして野生型sodA対立遺伝子を維持する。小さなコロニーは、減少したSOD活性を有するM.tuberculosisに特徴的な信頼できる表現型である。従って、より小さなコロニーが、好ましくは、試験される。変異sodA対立遺伝子に対して特異的なプライマーを使用するPCRは、推測される遺伝子型を実証するために使用され、そしてDNA配列決定は、さらなる確認のために、完全なSOD遺伝子のPCR産物で実施される。
代替の戦略は2段階置換を含み、ここでは、最初に、変異体SODが、組込み−熟練プラスミドpMH94(Leeら、1991)または類似のベクターを用いて、M.tuberculosis染色体上のattBファージ組込み部位中にクローン化される。これは、高効率操作である。次いで、正常SOD遺伝子を標的にし、そして、対立遺伝子不活性化を高効率で達成されることを可能にする、Bardarovら(Bardarovら、1997)により記載のファスミドを基礎にしたトランスポゾン不活性化系の改変法を用いて不活性化される。attB部位中の変異体sodAを標的にしないように、正常染色体sodAに特有の上流/下流DNAに基づくノックアウトベクターを構築するように注意すべきである。さらなる代替例では、Pelicicらにより記載される(Pelicicら、1997)温度感受性プラスミドベクターが用いられ得る。
消失するSOD産生を記録するために、H37Rv変異体を、ウェスタンハイブリダイゼーションにより評価し、そしてそれらの過酸化水素に対する感受性を、AS−SOD株で記載のように[実施例1]評価する。さらに、変異体M.tuberculosis株を、SOD活性について、BeauchampおよびFridovichの非変性PAGEゲル法(BeauchampおよびFridovich、1971)を用いて直接アッセイする。活性が特定のタンパク質バンドと相関し得るゲル技法が、リポアラビノマンナンなどのようなその他のマイコバクテリアの産物が、スーパーオキシドを除去および解毒することよる結果を同時に見出し得るという可能性に起因して、液体媒体中のSOD活性のアッセイに好適である。
(復帰変異体のスクリーニング:)
以下は、TIAの実施に必須ではないが、TIA戦略を用いて、構築されたM.tuberculosisのSOD−消失株の安全性を示すことで有用である。欠失およびAA置換をもつSOD−消失変異体を作成する理論的根拠は、毒性に戻る復帰の可能性を低減することであり、復帰分析が実施される。焦点は、親形態の酵素に復帰するまさに正確な変異率を測定することではなく(これは、導入されている変異の性質を考えると、非常に低い)、主に、変異体SOD酵素の適合性を改善する任意の補償変異が生じるか否かを観察することである。インビボで弱毒化された(以下を参照のこと)、H37Rv変異体を生じるに十分非効率的であるSOD変異体が研究される。2つの基本的戦略を採用する。
E.coli株CK9C1891中に形質転換されたpKK233−2中のsodA変異体は、エルチメタンスルホネート(EMS)での化学的変異誘発に曝され、そしてM63最小培地中で逐次的に継代培養する。酵素的により効率的なSODの変異は、もとのsodA改変体に対して増殖速度を高めるので、増加したSOD活性をもつ変異体は、最終的には、もとの株を超えて増殖し、そして優勢単離物となる。EMSに曝した後、変異体を、M63培地中で2日培養を10回逐次的に継代し、その時点で、アリコートを連続的に希釈し、そして固形培地上に撒く。個々のコロニーを、もとの変異体と、上記のように、最小培地中の増殖速度および過酸化水素に対する感受性について比較する。これらのアッセイに関してもとの規定された変異体より良好なコロニーは、決定されたそれらの完全sodA配列を有し、増加した活性と関連するDNA配列変化を同定する。
M.tuberculosisの宿主のバックグラウンドはE.coliとは異なるので、復帰分析は、H37Rv変異体で直接実施する。目的は、その他の酵素の産生における任意の補償変化を含む、sodA変異体を保持するH37Rv株の任意の増加した適合性の検出を可能にする様式でインビボ表現型をモニターすることである。例えば、M.tuberculosisのいくつかのカタラーゼ(katG)ネガティブ変異体は、インビボ病原性のある程度の回復を生じる、アルキルヒドロペルオキシダーゼC(ahpC)の増加した産生を示す(Wilson、deLisle、Marcinkeviciene、Blanchard、およびCollins、1998)。類推によって、sodA対立遺伝子における復帰または補償変異の可能性に加え、毒性を部分的に回復し得るsodCによりコードされる亜鉛−銅SODの補償過剰産生が存在し得る。Fe−SODの特有の分泌された性質のため、高レベルの非分泌sodC過剰産生でさえ、sodA変異体を完全に補償し得ない可能性がある。
回復された適合性をもつ変異体のスクリーニングは、2つの方法で行われる。第1は、本明細書に記載のクリアランス研究[実施例2]からの長期間インビボ生存物を、C57Bl/6マウス中に再接種し、それらが、初期試験の間より毒性であるか否かを決定する。変異体株のストックからの新鮮培養を、比較のために用いる。第2は、H37Rv(sodA変異体)株を、6ヶ月の間6〜8週間毎に継代培養してブロス培地中で逐次的に継代し、そして、ストック培養と比較して6ヶ月目に培養中の優勢株の毒性に増加があるか否か決定する。毒性に復帰した任意の単離物の完全sodAおよびsodC遺伝子をそれらのプロモーターを含めて決定する。このプロセスは、いくつかの変異体が、その他より毒性表現型に復帰しやすいか否かを決定し得る。安定なSOD−消失表現型を最も維持するようである有用なワクチン候補を産生する弱毒化の範囲内の変異体が同定される。
(変異体のインビボ評価:)
選択された変異体SOD株を、本明細書および[図6]に記載のように、弱毒化についてインビボで評価する。例えば、初期実験において、正常SODのインビトロ活性の約35%、25%、15%、10%、および5%のインビトロ活性をもつ変異体SOD酵素を含む5つのH37Rv株の各々を、24C57Bl/6マウス中に10cfuの接種として尾静脈から与える。コントロールは、正常H37RvおよびAS−SOD−消失H37Rv株を含める。マウスの体重を毎週測定し、そして各群から6匹を、1日目、2週、4週、および12週に、計数および組織病理学的比較のために回収する。これらの結果は、病原性における増加する減少の、SOD活性における増加する減少との関連を確立し、それによって、ワクチンの弱毒化成分の存在を確認する。同様のインビボ実験が、プロモーター、コドン、およびsodA遺伝子における差異の代替戦略を用いて構築される変異体sodA対立遺伝子をもつH37Rv株について実施される。
AS−SOD−消失H37Rv株により示される弱毒化に匹敵するか、またはそれより大きい弱毒化をインビボで示す、選択された変異体は、本明細書に記載の[実施例2および3]長期間クリアランスとワクチンの効目と同様の様式で、それらについて、BCGおよびAS−SOD−消失H37Rv株と比較される。
毒性M.tuberculosis中の野生型sodAを置換するために変異体sodA対立遺伝子を用い、免疫原性を保持/増加しながら弱毒化を達成する。変異体sodA対立遺伝子座はまた、他の手段、例えば、BCGにより弱毒化されたM.tuberculosisまたはM.bovisの株中に配置され得、免疫原性を増加することによりワクチンの効目を増大する。
(実施例13:TRX−消失およびTR−消失H37RvおよびBCGの構築)
上記のように、SODに加え、哺乳動物細胞に対し、抗アポトーシス効果を有するような、細胞内感染体により産生されるその他の微生物因子が存在する。チオレドキシン(TRX)は、M.tuberculosisにより産生される別の著名な細胞外タンパク質である。TRXが抗アポトーシス性であり、そしてM.tuberculosisの感染を引き起こす能力と関連するか否かを決定するために、本発明者らは、アンチセンスRNA発現を用い、実施例1に概説するように、消失したTRX産生のH37Rvの変異体を作成し、それをH37Rv(pHV203−AS−TRX)と呼ぶ。TRXおよびTRXレダクターゼは、ポリシストロン性の遺伝子要素上にあるので、この変異体は、両因子の消失した産生をもつ。血管内感染モデル中で評価されるとき、H37Rv(pHV203−AS−SOD)は、H37Rv親とコントロール株と比較して消失した毒性を示したが、アンチセンス−SOD株より毒性であった[図6]。それは、アンチセンス−ClpC変異体と弱毒化において匹敵した。顕微鏡による肺切片の観察から、H37Rv(pHV203−AS−TRX)は、SOD−消失H37Rvと類似の様式で初期の間質内浸潤を誘導したことが観察された[図23]。さらに、感染後28日に、SOD−消失H37Rvにより示されたそれと類似の様式で間質内浸潤を再び始めた。これらの結果は、TRXもまた、M.tuberculosisでの感染に応答する初期の生得免疫応答を阻害することを示唆する。同様に、28日までの再び始まった間質内浸潤は、おそらく、BVVにより誘導されたようなCD8+T細胞応答を含む、後天的免疫応答を反映し得る。
H37Rv(pHV203−AS−TRX)で達成される弱毒化のレベルは、BVVにより示されたそれより少なかったが、TRX発現における同じ減少が、BCGまたは別の弱毒化マイコバクテリウム株でなされ得、さらなる弱毒化を達成し、そして免疫原性を増加する。従って、本発明者らは、減少したTRX発現のBCGの単離物を構築した。第1に、pHV203−AS−TRXを、BCG Tice中にエレクトロポーレーションし、BCG(pHV203−AS−TRX)を生成した。また、より安定な変異体を構築するために、TRXの活性部位を含む4つのコドン(12ヌクレオチド)(すなわち、Cys−Gly−Pro−Cys;Eklundらにおける番号付け[Eklundら、1991]によるアミノ酸32〜35またはSwissProt受託番号P52229[GI:1729947]におけるアミノ酸37〜40)を、PCRを基礎にした変異誘発(Hoら、1989)を用いることにより、TRXをコードする遺伝子中で排除した。この変異体対立遺伝子を、ParishおよびStoker(ParishおよびStoker、2000)のp2NIL/pGOAL19ベクター系を用いて、BCG中にエレクトロポレートし、変異体対立遺伝子で野生型遺伝子を置き換えた。さらに、TRXレダクターゼをコードする遺伝子を、同様の様式で、活性部位を含む4つのアミノ酸(C−A−T−C;Daiら[Daiら、1996]中の番号付けによるアミノ酸135〜138)を排除することにより改変した。最後に、TRX4−コドン欠失およびTRXレダクターゼ4−コドン欠失の両方が存在する変異体DNAフラグメントを構築した。これら変異体遺伝子の各々を、BCG中にエレクトロポレートし、野生型遺伝子を変異体対立遺伝子で置き換えた。
(実施例14:BVVでワクチン接種されたマウス中のCD8+T細胞の局在化)
上記のように、BVVでのワクチン接種およびSOD−消失BCGでのワクチン接種は、BCGでのワクチン接種または毒性M.tuberculosisH37Rvでの感染と比較して、肺において、リンパ球の中で高い比率のCD8+T細胞を誘導する[表4−6、表10、図16]。また、CD8+T細胞は、一般に、死滅レセプターまたはペルフォリン/グランザイムを基礎にした機構を経由してアポトーシスを引き起こす細胞傷害性T−リンパ球(CTL)応答をともなうので、ワクチン接種後28日までの肺におけるアポトーシスにおける顕著な増加[図8]は、これらのCD8+T細胞がアポトーシスの誘導に関与し得ることを示唆する。
BVV対BCGでワクチン接種されたマウス肺組織におけるCD8+T細胞の位置を決定するため、および細胞のこのサブ集団とワクチンの効目との間の関連を強めるために、免疫組織化学を実施した。実施例2に記載の実験からのワクチン接種後17ヶ月の肺のホルマリン固定パラフィン包埋切片[図9−12]を、5μmスライスに切断し、そして標準的な手順を利用して顕微鏡スライド上に固定した。個々のスライドを、次いで、組織学グレードのp−キシレンに各5分間2回交換して浸漬することによりパラフィンを取り除いた。次いで、これらスライドを、100%、95%、および70%エタノールに連続的に各5分間浸漬することにより水和した。これらスライドをさらに、PBS中で90分間水和した。ホルマリン固定から抗原を放出するために、次いで、これらスライドを、1mMクエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝液中10分間マイクロ波処理した。次いで、スライドを、ImmunoCruz Staining System(Santa CruzBiochem、UK)を用い、製造業者により提供された標準的なプロトコールを用いて抗体染色した。ウサギポリクローナル抗−マウスCD8(カタログ番号sc−7188,Santa Cruz Biochem)を染色に利用した。スライドを、ペルオキシダーゼブロックおよび一致する血清でブロックし、ペルオキシダーゼ活性および非特異的抗体結合を排除した。スライドを、Mayerのヘマトキシリンで対比染色し、そして次に水性マウンティング溶液でマウントした。
肺切片の調査は、BCGでワクチン接種したマウスと比較して、BVVでワクチン接種したマウスの間質内空間中のかなり多い数のCD8+T細胞を示した[図24および25]。さらに、BVV−感染マウス中の、リンパ球、ブラスマ細胞、およびマクロファージの目立った気管支周囲血管凝集物[図12、表2]は、抗−CD8抗体で強い染色を示し[表25]、細胞のこれらのコレクションが、BVV−ワクチン接種中の増加したCD8+T細胞応答に一体化し、そして、多くの結核結節桿菌が位置する間質内空間に移動する前に、マイコバクテリア抗原に応答するためにT細胞が活性化される場所でさえあり得ることを示唆する。これらのデータは、BVVでワクチン接種されたマウスが、M.tuberculosisによる感染に、CD4+およびCD8+T細胞の両方を含む激しい応答で反応し、その一方、BCGでワクチン接種されたマウスは、強いCD8+応答を欠くというさらなる証拠を提供する。
本出願を通じて、種々の刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、その全体が、本発明が関係する技術分野の状態をより完全に記載するために、本出願中に参考として援用される。
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本発明の範囲または思想を逸脱することなく、本発明において、種々の改変および変形がなされ得ることを当業者に明らかである。本発明のその他の実施形態は、本明細書に開示の本発明の詳細および実施を考慮して当業者に明らかである。
新しい生の弱毒化ワクチンの開発における重要な工程、および微生物を改変し、そして不可欠かつ抗アポトーシス性の酵素の活性を減少させるために使用され得る、種々の遺伝子技術の長所と短所との比較における重要な工程を概説するフローシート。現在のパラダイム(対立遺伝子不活性化、「遺伝子ノックアウト」とも呼ばれる)の重要な特性は、アンチセンス(AS)RNA発現および新しい戦略(標的化された漸増した弱毒化(Targeted Incremental Attenuation)、または「TIA」)と対比される。AS技術およびTIAは、対立遺伝子不活化に関して利点を有し、この不活化において、それらの技術は、部分的な表現型を有する変異体を構築するために使用され得、それにより、インビトロ増殖に不可欠な微生物遺伝子が標的化されることを可能にする。TIAを使用して、ある範囲の酵素活性網羅する変異酵素を生成し得、そして野生型酵素をコードする対立遺伝子を変異体立遺伝子によって置換して、付加的に弱毒化された変異体を生じ得る。対立遺伝子不活化変異体およびTIA変異体の両方は、AS変異体を越える安定性の利点を有する。例外的に運良く対立遺伝子不活生化を伴わない限り、組み換えDNA技術を使用して、ワクチンとしての使用のための新規の生の弱毒化微生物を作製するための最も時間効率の良い方法(太字または矢印で示されるように)は、インビボでの微生物生存を媒介するために重要な遺伝子を同定するためにASを使用する工程、およびその遺伝子発現の減少を伴う変異体がワクチンとして有効であるかどうかを決定する(工程#3による)工程を包含する。次いで、TIAは、より安定なバージョンのワクチンを構築するために使用され得る。このAS/TIA戦略は、従来の対立遺伝子不活化戦略を越える利点、およびAS技術単独を越える利点を提供し、弱毒化および免疫原性の間の適切な均衡を達成するためのワクチンの微調整(fine−tuning)を可能にするが、なお、本来の表現型に戻る危険性を最小化した安定なワクチンを生じる。TIAは、抗アポトーシス微生物性因子の活性を減少させ、そして免疫原性およびワクチンとしての有効性を増大した微生物に対してプロアポトーシス性(pro−apoptotic)効果を提供するために、他の手段により既に弱毒化された微生物に対して実施され得る。 アンチセンス発現およびシャトルベクターpHV202の地図および特性。このE.coliの複製起点およびミコバクテリアの複製起点は、E.coliおよびミコバクテリア種(M.tuberculosisを含む)の両方においてプラスミドが複製することを可能にする。クロラムフェニコール耐性遺伝子およびカナマイシン耐性遺伝子を選択マーカーとして使用して、形質転換株を同定する。アンチセンスDNAフラグメントを、65kDaの熱ショックタンパク質(Pr−HSP)のプロモーターの後ろにあるマルチクローニングサイト(MCS)中の制限酵素部位内にクローン化する。そのMCSは、以下の固有の(unique)部位を含む:XbaI、SpeI、MluI、およびBamHI。アンチセンスプラスミドを構築するための遺伝子操作は、次の、M.tuberculosis株内へのエレクトロポレーションによりE.coliにおいて行われる。 アンチセンスsodA mRNAの発現。プラスミドベクターにより形質転換されたM.smegmatis mc155の単離物(isolate)由来のRNAのノーザンハイブリダイゼーション。レーン1、M.smegmatis mc155;レーン2、pHV202−AS−SODにより形質転換されたM.smegmatis mc155;レーン3、pLUC10−AS−SODにより形質転換されたM.smegmatis mc155。M.tuberculosisのsodAとM.smegmatisのsodAとの間の高い相同性に起因して、プローブを、2つのベクター中のアンチセンスM.tuberculosis sodAフラグメントのすぐ下流のDNAに対して、作製した。AT−リッチなS.aureus blaZ DNAの300bpフラグメントを、プローブ標的としての使用のためのアンチセンスsodA挿入物の下流のマルチクローニングサイトにおいて、pHV202−AS−SOD内に配置した。pLUC10−AS−SODにおいて、ルシフェラーゼ遺伝子の一部分を、標的として使用した。以下のプローブを用いて、ノーザンハイブリダイゼーションを行った:(A)両プラスミドベクターに含まれる、カナマイシン耐性遺伝子(aph);(B)pHV202−AS−SOD中に存在する、blaZのフラグメント;および(C)pLUCl0−AS−SOD中に存在する、ホタルルシフェラーゼ遺伝子。アンチセンスsodAフラグメントの弱い転写を示唆するpHV202−AS−SOD形質転換株では低レベルのblaZ RNAしか検出されず、そしてDNA塩基配列決定は、pHV202−AS−SODのPr−HSPの−10リボソーム結合領域における4塩基変化を検出した。pHV202中のPr−HSPは、後にpHV203を生じるように修復されたが、pLUC10−AS−SODにおける強力なアンチセンスM.tuberculosis sodA転写の事前の検証により、本発明者等は、最初のインビトロおよびインビボ評価において優先的にpLUC10−AS−SOD構築物を使用するに至った。この変更された(reviced)pHV202 SOD減少株[H37Rv(pHV203−AS−SOD)およびBCG(pHV203−AS−SOD)]を、上記のように続けて評価した。 M.tuberculosis株H37Rvおよび誘導体により産生された、鉄補因子(iron−cofactored)スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)のウェスタンハイブリダイゼーション。レーン1、H37Rvを、レーン2、H37Rv(pLUC10);レーン3、H37Rv(pLUC10−AS−SOD);レーン4、E.coli中で産生された組換えM.tuberculosisのSOD。溶解した細菌細胞からなるサンプルを、PAGE前に、同じ総タンパク質濃度を有するように調整した。1:24,000希釈した、H37Rvの全細胞溶解物に対するポリクローナル抗血清(E−293抗血清)(NIH、NIAID Contract N01 AI−75320(Tuberculosis Research Materials and Vaccine Testing)の下、Colorado State Universityから入手した)を用いて、メンブレンをハイブリダイズした。矢印は、メンブレンをストリップ(strip)し、そして組換えSODに対するポリクローナル抗血清を用いて再染色することにより決定された、SODのバンドを示す。組み換えSODを、ニッケルアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより精製した。この組み換えSODは、ヒスチジンタグとの融合に起因して、M.tuberculosisにより産生されるSODより3kDa大きい。H37Rv(pLUC10−AS−SOD)は、コントロール株により産生されるSOD量のたった13%を産生した。 図5は、SODが減少したH37Rvの過酸化水素による死。約2×10cfuのH37Rv(pLUC10)(白いバー)およびH37Rv(pLUC10−AS−SOD)(グレーのバー)の接種物(inocula)を、PBS単独または2つの濃度の過酸化水素(H)を含むPBS中で6時間インキュベートし、そして7H10寒天上にプレートした。生き残った杆菌の数(3連の定量の平均値)を示す。このアンチセンス−SOD変異体は、過酸化水素による死に対して、コントロール株よりも非常に感受性があり、両濃度に対する生存能力において約2log倍大きな減少を示した。 図6は、C57BL/6マウスモデルにおけるH37Rvおよびその形質転換株のインビボでの生存。グレーの符号は、親株およびコントロール株を表わし;白い符号は、酵素活性が、上記のアンチセンス技術を用いることにより減少された株を表す。接種物を、分光測定法により標準の吸光度値に対して調整し、そして側尾静脈を介して静脈内に投与した。初期接種物のバックカウント(backcount)を、0日目のカウントとして示す。AS−SOD株の値は、AS−SOD桿菌が、コントロール株および他の変異株のように単独の生物としてもはや散在しないように、グリセロール含有培地中での長期間の増殖に関するこれらの接種物のより大きな凝集に起因して見かけ上低いと考えられた。1日目、7日目、14日目、および28日目の値は、均質化した器官から数えたコロニー形成単位を表す。各々のデータポイントは、6匹のマウス由来の平均値±標準誤差を示す。最終のH37Rv(pLUC10)群の6匹中5匹が、28日よりも前に終了したので、最終のデータポイントは、このグループについて除外された。注目すべきは、接種時と最初の群の1日目の回収時との間で、コントロール株よりもAS−SOD株について、生存桿菌における大きな減少が見られた。AS−ClpC Atpase株およびAS−TRX株は、最初の24時間において、生存能力(viability)において中程度の減少を示した。この初期の減少の後、通常、AS−SOD株、AS−ClpC Atpase株およびAS−TRX株のいくらかの成長は、インビボで14日まで観察される。M.tuberculosisに対するマウスの細胞性免疫応答は、概して、感染後3週間の間に現れ、そして、おそらく、14日目と比較して28日目におけるAS−SOD桿菌の数の明らかな減少を説明する。同様に、AS−ClpC AtpaseおよびAS−TRX桿菌の数も、わずかに減少するか、または14日目と28日目との間で安定するかのいずれかであり、そしてこれらの株に感染したマウスは、健康に見え、0日目から5gm増えた。このコントロールマウスは、28日目までに死ぬか、あるいは外見上非常に調子が悪くなる。 図7は、病原性のコントロール株(H37Rv(pLUC10))に感染したマウスと比較した、2つのSOD減少株(H37Rv(pLUC10−AS−SOD)およびH37Rv(pHV203−AS−SOD))に感染したマウスの肺における、経時的な炎症性細胞の浸潤。1日目、7日目、14日目、および28日目の代表的なH&E染色した切片を、DP10 Microscope Digital Camera Systemを有するOlympus BX40 顕微鏡の10倍の対物レンズを使用して写真に撮った。H37Rv(pLUC10)に感染したマウスは、28日目まで生存しなかった。パネルは、SOD減少株に感染したマウスの肺の間質性単核細胞の顕著な初期浸潤を示す。これは、おそらく感染後第3週目と第4週目の間に獲得した免疫応答の発生に起因して、14日目までに改善されたが28日目までに再び増加した。対照的に、毒性株は、1日目に比較的少ない初期細胞応答を生じたが、14日目までに、肺胞浸潤および間質性浸潤を示した。 図8は、SOD減少株(H37Rv(pLUC10−AS−SOD))およびその毒性のコントロール(H37Rv(pLUC10))に感染したマウス肺におけるアポトーシス。代表的なTUNEL染色した像を、拡大のために顕微鏡の40倍対物レンズを使用して写真に撮った。アポトーシスを起こした細胞の核は、TUNELにより濃青色に染まり、一方、淡青色に染まる細胞外の無構造物質は、背景強度を示す(例えば、H37Rv(pLUC10)の14日目のパネル)。グラフは、複数の40倍拡大視野の像から定量された場合、アポトーシスを示す細胞の割合を経時的にプロットした(H37Rv(pLUC10)(白いバー)およびH37Rv(pLUC10−AS−SOD)(グレーのバー)。H37Rv(pLUC10)に感染したマウスは、28日目まで生存しなかった(*)。アポトーシスを示す細胞の割合は、1日目において2つの群のマウスで同等であったが、H37Rv(pLUC10)に感染したマウスよりもH37Rv(pLUC10−AS−SOD)に感染したマウスにおいて、単核細胞の間質性浸潤およびこれらの細胞のアポトーシスが多かった。H37Rv(pLUC10)に感染したマウスにおいて、アポトーシスは、ほとんど14日目までに終止した。対照的に、H37Rv(pLUC10−AS−SOD)に感染したマウスにおいては、28日までにさらにより高レベルに増加し、そしてその時点では新たな間質性肺浸潤を伴っており[図7]、それは、表5に示されるように、感染後1ヶ月までに獲得した細胞性免疫応答の発達を反映している。 図9は、BCGを接種されたマウス体重対SODの減少したH37Rvを接種されたマウスの体重。各々のマウスに、3.8×10cfuのBCGまたはSODの減少したH37Rvを、側尾静脈を介して0日目に接種した。示される時点で、この群のマウスの体重を量った。データポイントは、6〜12匹のマウスの体重の平均値±標準誤差(0日目の値を除く)(接種前の全ての群からの平均値である)を示す。BCGを接種したマウスは、17ヶ月目で、SODの減少したH37Rvを接種したマウスより約6gm体重が少なかった(34.1±4.6gm対27.8±4.9gm、P<0.01、2つのサンプルのスチューデントT検定)。 図10は、C57BL/6マウスの脾臓および右肺からの、BCG対SODの減少したH37Rvのクリアランス。各々のデータポイントは、6匹のマウスからの平均値±標準誤差(17ヶ月目の値を除く)(11匹のマウス(BCG)または12匹のマウス(SODの減少したH37Rv)由来である)を示す。最初の接種物は、側尾静脈を介して0日目に投与された3.8×10cfuであった。最初の24時間におけるSODの弱毒化されたH37Rvのより大きな初期クリアランスの後、肺における生存桿菌の数の減少速度は、2つのマウスの群において同等であり、その結果、株間で約10倍の差異が、観察17ヶ月にわたり維持された。対照的に、SOD弱毒化株は、脾臓からBCGよりもより急速除去され、そして8週間を越えて生存桿菌の数における2〜4log倍の差異が、株間で明らかであった。17ヶ月の時点で、脾臓における生存桿菌の数は、BCGに感染した11匹のマウスのうち一匹も生存していないことと比較して、H37Rv(pLUC10−AS−SOD)を投与された12匹のマウスのうち5匹において、検出の下限(10CFU)より低かった。 弱毒化株を用いた静脈内接種から17ヶ月後のC57BL/6マウスの左肺の全体の様子。上段のパネル、BCGを投与されたマウス;下段のパネル、SODの減少したH37Rvを投与されたマウス。何匹かのBCGをワクチン接種されたマウスの肺の尖における白い領域は、顕微鏡により、泡沫状マクロファージを有する肺胞硬化領域に一致する[図12A〜C、H〜Jを参照のこと]。長手方向の断面の拡大した肺を示す文字A〜Fを、図12に示す。 図12は、接種17ヶ月後の、BCGおよびSODの減少したH37Rvに感染したマウス肺の組織病理学的特徴。パネルA〜Cは、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色された、BCGに感染したマウス由来の3つの肺の長手方向の断面を示し、そしてパネルD〜Fは、SODの減少したH37Rvに感染したマウス由来の肺を示す[図11を参照のこと]。これらは拡大され、そして4倍顕微鏡対物レンズを用いて撮影され、約30〜40%の肺の長さに相当する領域を示す。各々の肺に対する肺間隙、肺胞腔、および気管支周囲の腔および脈管周囲の腔内への炎症性細胞の浸潤は、盲検観察者(blinded observer)によって検討され、そして定量され、その結果は表2に示される。パネルG〜Lは、2つの弱毒化株による感染の重要な微視的特徴のいくつかを示し、そして対比させる。間質性肥厚は、両方の群のマウスにおいて、顕著である(パネルG、H&E染色)。肺胞浸潤は、BCGを受けたマウスにおいて最大であり、多数の泡沫状マクロファージにより特徴付けられた[パネルH&I、H&E染色;パネルJ、トリコーム染色]。AFBは、時々、Ziehl Neelsen染色において、BCGに感染したマウスのそれらの領域で見られる(示さず)。対照的に、SODの減少したH37Rv(AS−SOD)を受けたマウスは、肺胞浸潤をあまり有さず、そしてより多数のリンパ球、マクロファージ、および形質細胞の脈管周囲浸潤を有していた[パネルD&Fにおける脈管周囲の多数の細胞堆積の、パネルA〜Cにおける最小の堆積との比較]。これらの血管周囲への浸潤のいくつかは、リンパ球が血管壁を通じて往来する事を示唆するパターンにおいて、血管壁(mural wall of the vessel)を含んでいた[パネルK&L、H&E染色]。 BCG(Tice)またはSODの減少したH37Rvによりワクチン接種されたマウスの肺における結核菌の数は、毒性のM.tuberculosis Erdman株をチャレンジした後の時点で発現された。3.8×10cfuのBCG(Tice)またはSODの減少したH37Rvを側尾静脈中に注射することにより、C57BL6マウスを免疫した。6週間後、これらのマウスを、1×10cfuのErdman株の鼻腔内接種物でチャレンジした(0日目)。選択した時点でマウスを安楽死させ、そして右肺を均質化し、Middlebrook 7H10寒天上で桿菌を数えた。事前にワクチン接種を受けていない、Erdmanを受けたコントロール群由来の10週目までの値もまた示される。各々のデータポイントは、6匹のマウス由来の平均値±標準誤差を示す(各データポイントについて1〜4匹のマウスを含むコントロール群、およびこの時点で生き残っている数匹のマウス由来の15ヶ月目の値を除く)。10週目で、BCG Ticeをワクチン接種されたマウス対SODの減少したH37Rvをワクチン接種されたマウスから回収した桿菌数の間には、40倍の差異があった(log5.8対log4.2、それぞれ、P<0.05)。桿菌数における最大の差異(3log倍)は、チャレンジの15ヶ月後に生存しているマウスにおいてなお示されている。 毒性のM.tuberculosis株Erdmanによる経気感染性(鼻腔内)チャレンジから15ヶ月後の、ワクチン接種を受けたマウスの肺の全体の様子を示す。左のパネルは、BCG Ticeによるワクチン接種を受けたマウスの左肺である。右のパネルは、SODの減少したH37Rvによるワクチン接種を受けたマウスの左肺である。この写真の準備において、肺を並列に配置し、そして同程度に広げた。SODの減少したH37Rvによるワクチン接種を受けたマウス由来の肺は、ワクチン接種を受けたがチャレンジされなかったマウスの肺とほとんど同じサイズであり[図11]、一方、BCGによるワクチン接種を受けたマウスの肺は、非常に大きかった。これは、BCGワクチン接種を受けたマウスが、SODの減少したH37Rvによるワクチン接種を受けたマウスについて24gmと比較して、たった20gmの重量であったにもかかわらずである。15ヶ月の時点での、カナマイシンを含む寒天上でのSODの減少したH37Rvの特異的算出は、ワクチン接種を受けたがチャレンジされなかったマウスにおいて比較可能な時点でなお存在している約5×10cfuと比較して、本発明者等のアッセイの感度(10cfu)の低限であることを示した[図10]。しかし、この肺には、肺壊死が存在しないにも関わらず、なお10cfuより多くの毒性株Erdmanが存在した[図13]。これは、SODの減少したH37Rvによるワクチン接種が、感染を封じ込め、そして毒性のM.tuberculosis株の継続的存在にもかかわらず、肺損傷の防止においてBCGよりもより効果的であったことを示す。 毒性のM.tuberculosis株Erdmanによる鼻腔内チャレンジから15ヶ月後の、ワクチン接種を受けたマウスの肺の組織病理学的外観。図14の肺の組織病理学的に重要な特徴は、顕微鏡で拡大すると、H&Eで染色した後に示される。左のパネルは、BCG Tice[パネルA]またはSODの減少したH37Rv[パネルB]をワクチン接種されたマウスの肺の約20〜40%にわたる長手方向の断面を、4倍顕微鏡対物レンズ用いて拡大した。パネルC〜Eは、BCGをワクチン接種されたマウスの肺における特徴(25倍顕微鏡対物レンズまたは40倍顕微鏡対物レンズ)の拡大を示す。SODの減少したH37Rv株によりワクチン接種されたマウスの肺は、中程度の間質性浸潤を有するが、その他の点では、突出した(prominent)肺門リンパ節、正常な気管支、およびほとんどの領域におけるわずかな肺胞浸潤のみを有し、比較的健康に見えたいくつかの領域を示す[パネルB]。対照的に、BCGをワクチン接種されたマウス由来の肺は、気管支を満たした多数の好中球を有する気管支内の激しい壊死の領域を含む、拡散する肺胞浸潤[パネルAおよびC]、および潰瘍性気管支拡張[パネルD]を示した。いくつかの領域は、角質化および肺胞内滲出を伴う肺胞腔の扁平化生を示した[パネルE]。 図16は、SOD減少H37Rvに対するBCG Tice(以下で、Bacillus Vanderbilt−VAまたは「BVV」ともいわれる)を用いるワクチン接種の後のCD4+Tリンパ球応答およびCD8+Tリンパ球応答の発生を示す。この図は、M.tuberculosis株Erdmanによるチャレンジの16週間後のワクチン接種マウスの肺から回収したリンパ球のFACSを示す。結果は、このマウスが、BCG TiceまたはBVVでワクチン接種されているか否かに従い、グループ化され、そしてワクチン接種は、Erdmanチャレンジの6週間前に行った。コントロールマウスは、ワクチン接種も、チャレンジもされていなかった。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞のパーセンテージを、図に示し、そして総リンパ球ゲートのパーセントとして報告する。これは、ワクチン接種されていないコントロールについては、13.2%のCD4+ T細胞および6.5%CD8+ T細胞を示し、BCG Ticeによりワクチン接種されたマウスについては38.3%のCD4+ T細胞および18.0%のCD8+ T細胞を示し、そしてBVVによりワクチン接種されたマウスについては39.9%のCD4+ T細胞および38.4%のCD8+ T細胞を示す。 図17は、BCG TiceおよびBVVの静脈内投与の24時間後のマウスの肺における間隙性の浸潤を示す。左肺の縦断断面の約40%のH&E染色された映像は、4倍拡大の対物レンズを用いて写真撮影された。BCG感染した肺は、単核細胞の最も少ない間隙性浸潤を示し、このパターンにおいては、BVVよりも有毒なH37Rvに類似していた。H&E染色された組織の写真は、4倍顕微鏡対物レンズを用いて撮影された。 図18は、(B)BVVに対する(A)代表的なM.tuberculosisおよびBCG株の食作用の後の、抗原提示および免疫応答の提唱されるモデルを示す。(A)M.tuberculosisおよびBCGは、大量のSODを分泌し、このSODは、マクロファージのアポトーシスをブロックし、これにより細胞内でのバシラスの複製を可能とする。SODはまた、恐らくマイコバクテリア因子によるToll様レセプターの刺激に応答したNF−κBの活性化により引き起こされるサイトカイン産生を阻害することによって、感染部位への単核細胞および樹状細胞の迅速な浸潤を鈍らせる。このバシラスが、食胞内で増殖するにつれて、これらの抗原は、CD4+ T細胞に対して、MHCクラスII経路を介して示される。この様式で活性化されたCD4+ T細胞は、その時、結節抗原を示す他のマクロファージとの相互作用の際に、IFN−γを分泌し得、これによりマクロファージを活性化して、酸化窒素および活性酸素中間体を産生させる。このことにより、宿主は、感染を制御するいくらかの能力を有するが、バシラスを殺傷する酸化窒素および活性酸素中間体に対する有力な依存はまた、他の細胞を傷つけ、肺組織の壊死を引き起こす。(B)SOD減少H37Rv(BVV)は、マクロファージのアポトーシスをブロックするのに十分なSODを作製せず、それにより、バシラスを殺傷するための機構としてのアポトーシスを遮断しない。さらに、SODが、NF−κBの活性化の阻害を示さないので、サイトカイン産生が増強され、そして感染部位への単核細胞および樹状細胞の迅速な流入を誘導する(図7および表9に示される)。マイコバクテリア抗原を含むアポトーシス体は、樹状細胞によりエンドサイトーシスされ、そしてMHCクラスI経路を介してCD8+細胞に示される。CD8+ T細胞は、死レセプター関連機構およびパーフォリン/グランザイム関連機構による免疫応答に寄与する。樹状細胞はまた、CD4+ T細胞に対する抗原の提供に非常に効果的である。従って、感染の宿主閉じ込めは、CD4+応答およびCD+8応答の組み合わせ(図16、表4〜6に示される)により達成され、最小の壊死を伴う、より良好な制御を達成する(図14および図15に示される)。 図19は、細胞内結節バシラスにより誘導されるマクロファージ内のアポトーシスおよびサイトカインシグナル伝達の可能な初期の機構およびSODによってこれらがどのように阻害されるかを示す。(A)漫画は、有毒なH37RvおよびBCGにより産生されるSODがどのようにNF−κB活性化およびアポトーシスを阻害し得るかを示す。このモデルにおいて、アポトーシスおよび初期の炎症性応答の両方は、微生物性因子とToll様レセプター(TLR)との間の相互作用により引き起こされる。TLR2およびTLR4が、マイコバクテリアに対する応答に関連することが示されている(Meansら、1999;Meansら、2001;FlynnおよびChan、2001)。これらのToll様レセプター(TLR)は、食胞に対して採用され、そして骨髄の分化因子88(MyD88)を活性化する。MyD88は、二官能性であり、そして、fas関連死ドメイン(FADD)との直接的な二量体化(Aliprantisら、2000)および/またはアラキドン酸中間体経路を介するROI産生に対するホスホリパーゼA2を媒介する効果を含み得る、明らかでない機構によりアポトーシスを開始し得る。これはまた、NF−κB活性化および核へのトランスロケーションを生じる細胞内シグナル伝達のカスケードを開始し得る。これは、免疫応答(IR)遺伝子活性化ならびにサイトカインおよびケモカインの産生を引き起こす。TNF−αは、レセプターに結合し、そしてBIDおよび増加した活性酸素中間体(ROI)を介するプロアポトーシス効果を媒介する。NF−κB活性化およびアポトーシスが、酸化還元感受性のプロセスであり、スーパーオキシドがこれら両方の強力な触媒であるので、食胞内でバシラスにより産生される細胞外SODは、両方の事象についてのマクロファージの閾値を、高め得る。実質的には、SODは、Toll様レセプターにより引き起こされる自然免疫応答をブロックする。さらに、有害なM.tuberculosisが初期細胞浸潤およびアポトーシスの両方をブロックする能力は、慢性的な感染を確立する能力の主要部であるようであり、このことは、増加する細胞の感染の開始およびその応答を誘導するために必要とされる微生物性抗原の提示を防ぐことにより、免疫応答MHCクラスI−CD8+アームを効果的にブロックする。チオレドキシンおよびグルタミンシンテターゼを含む、M.tuberculosisの他の顕著な細胞外因子のホモログは、抗アポトーシス効果を有し(Powis、Briehl、およびOblong、1995;Saitohら、1998;Tumaniら、2000)、このことは、これらのM.tuberculosis酵素が、Toll様レセプターにより開始される細胞内シグナル伝達プロセスの効果を鈍らせるように、類似の作用をし得ることを示唆する。(B)は、BBV対H37Rvにより感染した培養マウスマクロファージにおけるアポトーシス遺伝子発現を示す。RNAse保護アッセイ(RPA)は、BVVおよびH37Rvの両方がFADDおよびTRADD(TNFレセプター関連死ドメイン)が、感染していないコントロールマクロファージより良好な初期の活性化を誘導することを示す。しかし、2〜3日後、TRADD発現およびFADD発現は、H37Rv感染マクロファージにおいて減少し、BVV感染マクロファージにおいて強く維持され、そして感染されていないマクロファージにおいて増加する。初期遺伝子発現は、プロアポトーシスマイコバクテリア部分の、より一般化された移植片関連効果(コードファクターを含む)を反映し得るが、一方、2〜3日後、食胞内バシラスにより産生されたSODは、H37Rvにより感染したマクロファージ培養物中のTRADD発現およびFADD発現を減少させる。実際、有害M.tuberculosisは、この宿主細胞のアポトーシスを阻害し、その結果、M.tuberculosisは、宿主細胞内で、複製し続け得る。反対に、BVVにより感染した培養物中においてSOD産生が減少するので、この阻害は、生じず、TRADD発現およびFADD発現は、長時間にわたって増殖する。従って、図8においてインビボで例示されるように、アポトーシスは、有害M.tuberculosisにより感染した細胞より、BVVにより感染した細胞において生じるようである。 図20は、BVVにより示されるワクチンの効率に関連する、鍵となる観察、機構、仮説、および推測の要旨を示す。 図21は、欠失アミノ酸および置換アミノ酸の位置を示す、本発明のSOD変異体のSODモノマーの帯状の図を示す。 図22は、細菌密度対時間のプロットを示し、これは、最小培地におけるSOD欠損E.coliの増殖を補う能力により決定されるような、M.tuberculosisのSOD変異体の酵素活性を見積もるために用いられる。変異体は、SODの内部ドメイン領域におけるアミノ酸を除去することによってか、またはリシンによる金属補因子の結合に関連する必須のヒスチジン残基を置換することによって作製された[表11を参照のこと]。SOD欠損E.coliは、逆方向の細胞内酸化還元環境に対するいくつかの代謝経路の感受性に起因して、最小培地において増殖し得ないが、増殖は、SODの存在下で回複する。(A)は、最小培地中でのインキュベーションの時間にわたる、細菌密度(ナノメーター[A600]での吸光度)によって影響されるような、最小培地中でのSOD二重陰性E.coli株CK9C1891の増殖曲線を示す。この移植片は、栄養寒天から最小培地にコロニーを移すことによって作製され、そしてA600値の減少は、それ以前に活発に増殖していた株の増殖の急な休止により誘導される自己消化に影響を及ぼす。(B)は、野生型M.tuberculosis sodA 対立遺伝子を補われたCK9C1891の増殖曲線を示し、この曲線は、回復した増殖および155分毎に倍増する速度を示す。(C)は、G134が欠失している変異体M.tuberculosis sodA対立遺伝子を補われたCK9C1891の増殖曲線を示し、この曲線は、ゆっくりとした増殖および算出された1,360分の倍増時間を示す。従って、このG134変異体は、野生型sodA対立遺伝子を含むCK9C1891の速度の13%で増殖し、このことは、この変異体SODが野生型M.tuberculosis SODの約13%の活性を有することを示唆する[図10]。 図23は、M.tuberculosisのTRX減少変異体により誘導される肺の炎症を示す。パネルAおよびパネルBは、H37Rv(pHV203−AS−TRX)による感染の24時間後での単核細胞を有する2匹のマウスの肺の迅速な間隙性の浸潤を示す。このことは、両方の変異体株が、肺の中に同等の数のバシラスを有するが、H37Rv(pHV203−AS−ClpC Atpase)(パネルC)により誘導される、より少ない間隙性の浸潤と対称的であった(図6)。しかし、肺全体の観察の際(パネルD、より白い外観は、白血球の肺へのより多い浸潤を示す)より多い肺の硬化、および組織病理学的外観(パネルEおよびパネルF)により証拠付けられるように、28日後に、H37Rv(pHV203−AS−ClpC Atpase)により感染した肺は、H37Rv(pHV203−AS−TRX)により感染した肺よりも、非常に多い肺胞の浸潤を示した。H37Rv(pHV203−AS−TRX)およびH37Rv(pHV203−AS−ClpC Atpase)の両方は、有毒なH37Rvに対して弱毒化されているが[図6]、TRX減少株は、1日および28日にて、SOD減少株により示される組織病理学的知見と類似する組織病理学的知見を示し、このことは、自然免疫応答および適応免疫応答の両方が、抗アポトーシス微生物性因子および抗炎症微生物性因子の減少により増強されたことを示唆した。 図24は、BVV対BCGによるワクチン接種の17ヶ月後での肺におけるCD8+ T細胞を示す。組織切片は、抗CD8抗血清と共にインキュベートされ、そして反応性の細胞は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いて同定された。CD8+ T細胞は、稠密な青色の核を伴い、一方、他の細胞型は、稠密な青色の核を伴い、明らかに灰色/青色となる。両方の顕微鏡写真は、肺を通して観察されたものの代表であり、そして20倍の顕微鏡対物レンズを用いて拡大されている。パネルAは、肺の間隙空間中にBVVワクチン接種したマウスにおける多くのCD8+ T細胞を示す。パネルBは、BCGワクチン接種したマウスにおける、相対的に少ないCD8+ T細胞を示す。 図25は、BVVによりワクチン接種したマウスの肺の間隙空間中および気管支周辺血管リンパ球凝集物内のCD8+ T細胞を示す。パネルAは、H&E染色した肺の切片を示し、この切片は、代表的な気管支周辺血管リンパ球凝集物を含む。ボックス内のパネルAの部分は、パネルBにおいて拡大され、そして抗CD8抗血清および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いた染色は、リンパ球凝集物中の複数のCD8+ T細胞を示す。パネルCは、H&Eを用いて染色され、そして大静脈、大きな血管周囲リンパ球凝集物および間隙浸潤領域を示す。ボックスの中の部分は、パネルDおよびパネルEにおいて拡大され(各々、40倍および100倍)、そして抗CD8抗血清およびHRPを用いて染色されている。これは、血管周囲浸潤および肺の間隙における多数のCD8+ T細胞を示す。
配列表
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Claims (45)

  1. 細菌の免疫原性を増強するために該細菌を改変する方法であって、該細菌によって産生される抗アポトーシス酵素の活性を減少させて、それによって、該細菌が被験体において増強した免疫原性を有する、工程を包含し、ここで、該抗アポトーシス酵素が、鉄−マンガンスーパーオキシドジスムターゼ、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、グルタチオンレダクターゼ(グルタレドキシン)、グルタミンシンテターゼ、チオレドキシン様タンパク質、チオレドキシンレダクターゼ様タンパク質、グルタレドキシン様タンパク質、チオールレダクターゼ、およびタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼからなる群より選択され、そして、該細菌が、マイコバクテリウム・チューバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)、M.ボビス(M.bovis)、M.ボビス(M.bovis)株BCG、およびBCG亜株からなる群より選択される、方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、ここで、前記酵素活性が減少しているが、依然として存在する、方法。
  3. 改変された細菌であって、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法に従って作製される、改変された細菌。
  4. 請求項に記載の改変された細菌を含む、免疫原性組成物。
  5. 弱毒化された細菌の免疫原性を増強するために、該弱毒化された細菌を改変する方法であって、該弱毒化された細菌によって産生される抗アポトーシス酵素の活性を減少させて、それによって、該弱毒化された細菌が、被験体において増強された免疫原性を有する、工程、を包含し、ここで、該抗アポトーシス酵素が、鉄−マンガンスーパーオキシドジスムターゼ、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、グルタチオンレダクターゼ(グルタレドキシン)、グルタミンシンテターゼ、チオレドキシン様タンパク質、チオレドキシンレダクターゼ様タンパク質、グルタレドキシン様タンパク質、チオールレダクターゼ、およびタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼからなる群より選択され、そして、該弱毒化された細菌が、マイコバクテリウム・チューバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)、M.ボビス(M.bovis)、M.ボビス(M.bovis)株BCG、およびBCG亜株からなる群より選択される、方法。
  6. 請求項に記載の方法であって、ここで、前記細菌が、BCGである、方法。
  7. 請求項に記載の方法であって、ここで、前記抗アポトーシス酵素の活性を減少させる工程が、前記抗アポトーシス酵素の産生を減少させるアンチセンス核酸を用いて前記細菌を形質転換する工程を包含する、方法。
  8. 弱毒化された細胞内細菌であって、該細菌のアポトーシス酵素の活性を減少するように改変されており、ここで、該抗アポトーシス酵素が、鉄−マンガンスーパーオキシドジスムターゼ、チオレドキシン、チオレドキシンレダクターゼ、グルタチオンレダクターゼ(グルタレドキシン)、グルタミンシンテターゼ、チオレドキシン様タンパク質、チオレドキシンレダクターゼ様タンパク質、グルタレドキシン様タンパク質、チオールレダクターゼ、およびタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼからなる群より選択され、そして、該弱毒化された細胞内細菌が、マイコバクテリウム・チューバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)、M.ボビス(M.bovis)、M.ボビス(M.bovis)株BCG、およびBCG亜株からなる群より選択される、細菌。
  9. 前記細菌が、BCGである、請求項に記載の細菌。
  10. 前記酵素がスーパーオキシドジスムターゼである、請求項に記載の細菌。
  11. 前記酵素がチオレドキシンである、請求項に記載の細菌。
  12. 前記酵素がチオレドキシンレダクターゼである、請求項に記載の細菌。
  13. 請求項に記載の細菌であって、ここで、チオレドキシンおよびチオレドキシンレダクターゼの両方の活性が減少している、細菌。
  14. 請求項に記載の方法であって、ここで、前記酵素の活性が、前記細菌によって産生される酵素の量を減少させることによって減少する、方法。
  15. 請求項14に記載の方法であって、ここで、前記細菌によって産生される酵素の量が、該細菌内においてプロモーターを変更して、該酵素をコードする核酸の発現を減少させ、それによって、該細菌によって産生される酵素の量を減少させることによって、減少する、方法。
  16. 請求項14に記載の方法であって、ここで、前記細菌によって産生される酵素の量が、該酵素をコードする天然に存在する核酸のコドンを、該核酸の翻訳の効率を減少させるコドンで置き換え、これによって、該細菌によって産生される酵素の量を減少させることよって、減少する、方法。
  17. 請求項に記載の方法であって、ここで、前記酵素の活性が、該酵素の効率を減少させることによって減少する、方法。
  18. 請求項17に記載の方法であって、ここで、前記酵素の効率が、該酵素をコードする天然に存在する核酸を変更することによって減少し、該方法が、天然に存在する核酸のコドンを欠失させ、挿入し、そして/または置換する工程を包含し、ここで、該欠失、挿入、または置換を有する核酸が、減少した効率を有する酵素をコードする、方法。
  19. 請求項17に記載の方法であって、ここで、前記酵素の効率が、天然に存在する核酸に対する酵素のあまり効率的でないアナログまたはホモログをコードする別の細菌種由来の核酸に置換し、それによって、該酵素の効率を減少させることによって、減少する、方法。
  20. 請求項に記載の方法であって、ここで、前記酵素の活性が、該酵素の局在を変更することによって減少し、これによって、該酵素の局在を変更する工程が、該酵素の活性を減少させる、方法。
  21. 請求項20に記載の方法であって、ここで、前記酵素の局在を変更する工程が、リーダーペプチドを変更する工程を包含し、これによって、該リーダーペプチドを変更する工程が、該酵素の局在を変更する、方法。
  22. 請求項17に記載の方法に従って改変された、細菌。
  23. 請求項22に記載の細菌であって、ここで、前記細菌が、グルタミン酸がスーパーオキシドジスムターゼの54位で欠失している、変異体マイコバクテリウム・チューバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)である、細菌。
  24. 請求項22に記載の細菌であって、ここで、前記細菌が、グリシンがスーパーオキシドジスムターゼの88位で欠失している、変異体マイコバクテリウム・チューバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)である、細菌。
  25. 請求項22に記載の細菌であって、ここで、前記細菌が、グリシンがスーパーオキシドジスムターゼの87位および88位で欠失している、変異体マイコバクテリウム・チューバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)である、細菌。
  26. 請求項22に記載の細菌であって、ここで、前記細菌が、グリシンがスーパーオキシドジスムターゼの134位で欠失している、変異体マイコバクテリウム・チューバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)である、細菌。
  27. 請求項22に記載の細菌であって、ここで、前記細菌が、プロリンがスーパーオキシドジスムターゼの150位で欠失している、変異体M.tuberculosisである、細菌。
  28. 請求項22に記載の細菌であって、ここで、前記細菌が、バリンがスーパーオキシドジスムターゼの184位で欠失している、変異体マイコバクテリウム・チューバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)である、細菌。
  29. 請求項22に記載の細菌であって、ここで、前記細菌が、リシンがスーパーオキシドジスムターゼの28位でヒスチジンを置換している、変異体マイコバクテリウム・チューバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)である、細菌。
  30. 請求項22に記載の細菌であって、ここで、前記細菌が、リシンがスーパーオキシドジスムターゼの76位でヒスチジンを置換している、変異体マイコバクテリウム・チューバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)である、細菌。
  31. 請求項22に記載の細菌であって、ここで、前記細菌が、リシンがスーパーオキシドジスムターゼの145位でヒスチジンを置換している、変異体マイコバクテリウム・チューバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)である、細菌。
  32. 請求項22に記載の細菌であって、ここで、前記細菌が、リシンがスーパーオキシドジスムターゼの164位でヒスチジンを置換している、変異体マイコバクテリウム・チューバクロシス(Mycobacterium tuberculosis)である、細菌。
  33. 請求項3、8〜13、または22〜32に記載の細菌からなる群より選択される細菌および薬学的に受容可能なキャリアを含む、免疫原性組成物。
  34. 被験体の免疫細胞によって免疫応答を生成するための請求項33に記載の組成物であって、該組成物が、該細胞との接触用である、組成物
  35. 前記被験体が哺乳動物である、請求項34に記載の組成物
  36. 前記哺乳動物がヒトである、請求項35に記載の組成物
  37. 被験体において免疫応答を生成するための有効量の請求項33に記載の組成物
  38. 前記被験体が哺乳動物である、請求項37に記載の組成物
  39. 前記哺乳動物がヒトである、請求項38に記載の組成物
  40. 被験体における感染性疾患を予防するための有効量の請求項33に記載の組成物
  41. 前記組成物が細菌である、請求項40に記載の組成物
  42. 前記疾患が結核である、請求項41に記載の組成物
  43. 前記被験体が哺乳動物である、請求項40に記載の組成物
  44. 前記哺乳動物がヒトである、請求項43に記載の組成物
  45. 請求項3、8〜13、33または34のいずれか一項に記載の細菌であって、ここで、前記細菌が、異種抗原をコードする核酸を含む、細菌。
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