JP4196916B2 - ハイブリッド車のエンジン動作点制御装置 - Google Patents
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Description
前記エンジンとモータを動力源とするハイブリッド車無段変速モードにて走行する際、エンジントルクとエンジン回転数によるエンジン動作点を決めるにあたり、エンジントルク指令値に正の値による下限リミットを設定し、車速とエンジン回転数と車両の駆動力目標値とバッテリの充放電目標値に基づきエンジントルクとエンジン回転数を計算し、計算したエンジントルクが設定したエンジントルク下限値を超えているときは計算値をエンジントルク指令値及びエンジン回転数指令値として出力し、計算したエンジントルクが設定したエンジントルク下限値以下であるときは、エンジントルク計算値がエンジントルク下限値を超えるまで前記エンジン回転数を修正するエンジン動作点制御手段を設けた。
図1は実施例1のエンジン動作点制御装置が適用されたハイブリッド車の駆動系を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1モータジェネレータMG1(モータ)と、第2モータジェネレータMG2(モータ)と、出力ギヤOG(出力部材)と、駆動力合成変速機TMと、を有する。
ここで、「共線図」とは、差動歯車のギヤ比を考える場合、式により求める方法に代え、より簡単で分かりやすい作図により求める方法で用いられる速度線図であり、縦軸に各回転要素の回転数(回転速度)をとり、横軸に各回転要素をとり、各回転要素の間隔をサンギヤとリングギヤの歯数比に基づく共線図レバー比になるように配置したものである。
実施例1におけるハイブリッド車の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、油圧制御装置5と、統合コントローラ6と、アクセル開度センサ7と、車速センサ8と、エンジン回転数センサ9(エンジン回転数検出手段)と、第1モータジェネレータ回転数センサ10と、第2モータジェネレータ回転数センサ11と、第2リングギヤ回転数センサ12と、を有して構成されている。
実施例1のハイブリッド車における走行モードとしては、電気自動車無段変速モード(以下、「EVモード」という。)と、電気自動車固定変速モード(以下、「EV-LBモード」という。)と、ハイブリッド車固定変速モード(以下、「LBモード」という。)と、ハイブリッド車無段変速モード(以下、「E-iVTモード」という。)と、を有する。
[エンジン動作点制御処理]
図5は実施例1の統合コントローラ6において実行されるエンジン動作点制御処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する(エンジン動作点制御手段)。
このエンジン動作点制御処理は、上記走行モードマップ上において、要求駆動力Fdrvと車速VSPによる運転点が、図3に示す「E-iVTモード」の設定範囲の存在し、かつ、他のモードへの遷移が無い間は、所定の計算周期により繰り返し実行される。
Teref=(Pv−Pb+Ploss)/(Ne*2*pi/60) …(1)
Pv=VSP*F …(2)
尚、Pvは車両目標駆動力、Pbは充放電目標値(=充電指令値)、Plossは各種ロス推定値、Neはエンジン回転数、VSPは車速、Fは駆動力目標値である。
ここで、「エンジントルク下限値TeLL(Ne)」は、エンジン回転数Neの関数として与えられる。すなわち、図6に示すように、エンジン回転数Neが低回転数領域ではエンジントルクが安定しないので高い値にて与えられ、エンジン回転数Neが高回転数領域ではエンジントルクが安定するので低い値にて与えられるというように、エンジン回転数Neが高いほど徐々に低くなる正の値にて与えられる。
この充放電目標値Pbの修正は、充放電目標修正値をPb'としたとき、
Pb'=Pb−dTe*Ne …(3)
dTe=TeLL(Ne)−Teref …(4)
の式を用いて計算される。つまり、充放電目標修正値Pb'は、エンジントルク指令値Terefとエンジントルク下限値TeLL(Ne)との差dTeとエンジン回転数Neとを掛け合わせた値だけ、今回の充放電目標値Pbから減じた値で与えられる。
なお、エンジン動作点(Ne,Te)と、車速VSPと駆動力目標値Fとから出力ギヤOGの動作点(No,To)が決まると、「E-iVTモード」での共線図上でのレバー位置が決まり、レバーの回転数バランス式とトルクバランス式を用い、第1モータジェネレータMG1のモータ動作点(N1,T1)と第2モータジェネレータMG2のモータ動作点(N2,T2)が決定される。
エンジンEとモータジェネレータMG1,MG2を用いて無段変速比にて走行する「E-iVTモード」と、モータジェネレータMG1,MG2のみを用いて無段変速比にて走行する「EVモード」とを有し、例えば、「E-iVTモード」を選択しての中高速での走行中、車両の運転点a(車速VSPと駆動力Fdrvにて決まる点)が極低駆動力領域あるいは負駆動力領域の運転点a’へ変化し、「E-iVTモード」の選択領域から「EVモード」の選択領域へと移行する場合(図3参照)、エンジンクラッチECを切り離し、エンジンEを停止することで、「EVモード」へのモード遷移を行っていた。
理由1:「E-iVTモード」→「EVモード」のモード遷移時時間がかかる(準備変速・エンジン始動等)。
理由2:エンジンクラッチECの締結時に駆動力ショックがある。
よって、過渡駆動力波形が乱れてしまうことになり、この過渡駆動力波形を整形する必要性がある。
・第1モータジェネレータトルク指令値T1ref、第2モータジェネレータトルク指令値T2ref、エンジントルク指令値Terefの全てがゼロになってしまう。
・フリクション補償量が正確に分からないため、エンジンEはゼロトルク指令が苦手(精度が出ない)である。また、吸入空気量で制御されるエンジントルク制御も、吸入空気量が極小であり、安定しないため、実エンジントルクの脈動などがでやすい。
・モータトルクゼロ付近も、モータのフリクション補償量が正確には分からないため、モータは苦手であるが、エンジンEほどではない。
・実エンジントルクの脈動は、「E-iVTモード」では、変速比と関係なく、駆動力の脈動となる。これにより、車両の不快な振動などを励起するため、走行フィーリングが悪化する。
例えば、通常の自動変速機や手動変速機などでは、エンジントルクゼロが変速比がハイの時に発生するので、エンジントルク→駆動力の倍率が低く、あまり問題とならない。変速比がローの時は車両振動など同様の問題を発生させる。しかし、ハイブリッド車で「E-iVTモード」が選択されている時は、変速比がハイだから倍率が低いということはなく、モータイナーシャがゼロではない限り、駆動力に影響する。
また、従来のハイブリッド車では、エンジントルクゼロの時には、エンジン回転数もゼロとしてエンジンを完全に停止することで燃費の向上を狙うため、このときの駆動力脈動は発生しない(例えば、特開平11−93727号公報参照)。その代わり、エンジンを始動する場合にはエンジン再加速のための時間・バッテリパワーを必要とし、駆動力の応答性に欠けることになる。
・燃費走行の場合、エンジン出力が極低の場合、エンジントルクが小さくなると共にエンジン回転数も低くなる。これは吸入空気量のさらなる減少を引き起こし、吸入空気量によりトルク制御されているエンジンEの運転状態は、さらに不安定化し、トルク脈動も大きく、周波数も低くなる。よって、車両振動などの悪影響はさらに大きくなり、走行フィーリングも悪化する。
上記問題は、主にエンジン動作点に依存しているので、
(1)エンジントルク状態を変更する(大きくする)。
(2)エンジン回転数状態を変更する(高くする)。
(3)エンジンパワーを変更する(トルクも回転数も変更する)。
などの対処法により改善することができるが、本来の目的をできるだけ損なわないように改善することが必要である。
「E-iVTモード」を選択しての走行時であって、今回の周期にて計算されたエンジントルク指令値Terefがエンジントルク下限値TeLL(Ne)を超える場合には、図5のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6→ステップS7へと進む。
また、今回の周期にて計算されたエンジントルク指令値Terefがエンジントルク下限値TeLL(Ne)以下となるような場合には、図5のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進み、ステップS4でのエンジントルク下限条件をクリアしない限り、ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進む流れが繰り返される。
つまり、図8において、エンジン等パワー線(Pe=Pv−Pb)上で、かつ、エンジントルク下限値TeLL(Ne)の設定線以下である(1)の点から、エンジン回転数Neを変えないでエンジントルクTeを高めるように移動させ、エンジントルク下限値TeLL(Ne)の設定線上の(2)の点まで達すると、この点でのエンジントルクTeとエンジン回転数Neがエンジントルク指令値Terefとエンジン回転数Nerefとされる。
実施例1のハイブリッド車のエンジン動作点制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
[エンジン動作点制御処理]
図7は実施例2の統合コントローラ6において実行されるエンジン動作点制御処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する(エンジン動作点制御手段)。なお、ステップS21,S22,S26,S27は、それぞれ実施例1の図5におけるステップS1,S2,S6,S7と同様の処理であるので、説明を省略する。
Teref=(Pv−Pb+Ploss)/(Ne*2*pi/60) …(1)
Pv=VSP*F …(2)
Ne=Neref …(5)
尚、Pvは車両目標駆動力、Pbは充放電目標値(=充電指令値)、Plossは各種ロス推定値、Neはエンジン回転数、VSPは車速、Fは駆動力目標値である。
ここで、「エンジントルク下限値TeLL(Ne)」は、実施例1と同様に、エンジン回転数Neの関数として与えられる。
このエンジン回転数指令値Nerefの修正は、エンジン回転数指令修正値をNeref'としたとき、
Neref'=Neref−(dTe*Ne)/Teref …(6)
dTe=TeLL(Ne)−Teref …(4)
の式を用いて計算される。つまり、エンジン回転数指令修正値Neref'は、エンジントルク指令値Terefとエンジントルク下限値TeLL(Ne)との差dTeとエンジン回転数Neとを掛け合わせた値を、エンジントルク指令値Terefにより除した分だけ、今回のエンジン回転数指令値Nerefから減じた値で与えられる。本プロセスは、1回のみでも、あるいは、有限回の繰り返しで収束させても良い。繰り返す場合、Ne=Neref'としてエンジントルク下限値TeLL(Ne)のマップを引き直し、(4)式によるdTe計算→(6)式によるNeref'の計算、を繰り返す。
「E-iVTモード」を選択しての走行時であって、今回の周期にて計算されたエンジントルク指令値Terefがエンジントルク下限値TeLL(Ne)を超える場合には、図7のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS24→ステップS26→ステップS27へと進む。
また、今回の周期にて計算されたエンジントルク指令値Terefがエンジントルク下限値TeLL(Ne)以下となるような場合には、図7のフローチャートにおいて、ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS24→ステップS25へと進み、ステップS24でのエンジントルク下限条件をクリアしない限り、ステップS23→ステップS24→ステップS25へと進む流れが繰り返される。
つまり、図8において、エンジン等パワー線(Pe=Pv−Pb)上で、かつ、エンジントルク下限値TeLL(Ne)の設定線以下である(1)の点から、エンジン等パワー線上に沿ってエンジン回転数を低下させながら移動し、エンジン等パワー線とエンジントルク下限値TeLL(Ne)の設定線と交わる(3)の点に達すると、この点でのエンジントルクTeとエンジン回転数Neがエンジントルク指令値Terefとエンジン回転数指令値Nerefとされる。
実施例2のハイブリッド車のエンジン動作点制御装置にあっては、実施例1の(1),(3),(4)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
[エンジン動作点制御処理]
図9は実施例3の統合コントローラ6において実行されるエンジン動作点制御処理の流れを示すフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する(エンジン動作点制御手段)。なお、ステップS31,S32,S37は、それぞれ実施例1の図5におけるステップS1,S2,S7と同様の処理であるので、説明を省略する。
Peref=(Pv−Pb+Ploss) …(7)
Pv=VSP*F …(2)
尚、Pvは車両目標駆動力、Pbは充放電目標値(=充電指令値)、Plossは各種ロス推定値、VSPは車速、Fは駆動力目標値である。
ここで、「エンジン要求出力下限値PeLL」は、ステップS36にて計算されるエンジントルク指令値Terefが、例えば、実施例1,2でのエンジントルク下限値TeLL(Ne)を上回る値となる固定値により与えられる。
すなわち、このエンジン要求出力指令値Perefの修正は、エンジン要求出力下限値PeLLまでエンジン要求出力を嵩上げすることにより行われる。
エンジントルク指令Terefは、上記(1)式と(7)式に基づく、
Teref=(Pv−Pb+Ploss)/(Ne*2*pi/60)=(Peref)/(Ne*2*pi/60) …(8)
の式により計算され、エンジン回転数指令値Nerefは、
Neref=Teref/Peref …(9)
の式により計算される。
「E-iVTモード」を選択しての走行時であって、今回の周期にて計算されたエンジン要求出力指令値Perefがエンジン要求出力下限値PeLLを超える場合には、図7のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS34→ステップS36→ステップS37へと進む。
また、今回の周期にて計算されたエンジン要求出力指令値Perefがエンジン要求出力下限値PeLL以下となるような場合には、図9のフローチャートにおいて、ステップS31→ステップS32→ステップS33→ステップS34→ステップS35→ステップS36→ステップS37へと進む。
実施例3のハイブリッド車のエンジン動作点制御装置にあっては、実施例1の(1),(3),(4)の効果に加え、下記の効果を得ることができる。
MG1 第1モータジェネレータ(モータ)
MG2 第2モータジェネレータ(モータ)
OG 出力ギヤ(出力部材)
TM 駆動力合成変速機
PGR ラビニョウ型遊星歯車列(差動装置)
EC エンジンクラッチ
LB ローブレーキ
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 油圧制御装置
6 統合コントローラ
7 アクセル開度センサ
8 車速センサ
9 エンジン回転数センサ
10 第1モータジェネレータ回転数センサ
11 第2モータジェネレータ回転数センサ
12 第2リングギヤ回転数センサ
Claims (3)
- エンジンと少なくとも1つのモータを動力源とし、該動力源とタイヤへの出力部材が連結される差動装置を有する駆動力合成変速機を備えたハイブリッド車において、
前記エンジンとモータを動力源とするハイブリッド車無段変速モードにて走行する際、エンジントルクとエンジン回転数によるエンジン動作点を決めるにあたり、エンジントルク指令値に正の値による下限リミットを設定し、車速とエンジン回転数と車両の駆動力目標値とバッテリの充放電目標値に基づきエンジントルクとエンジン回転数を計算し、計算したエンジントルクが設定したエンジントルク下限値を超えているときは計算値をエンジントルク指令値及びエンジン回転数指令値として出力し、計算したエンジントルクが設定したエンジントルク下限値以下であるときは、エンジントルク計算値がエンジントルク下限値を超えるまで前記エンジン回転数を修正するエンジン動作点制御手段を設けたことを特徴とするハイブリッド車のエンジン動作点制御装置。 - 請求項1に記載されたハイブリッド車のエンジン動作点制御装置において、
実エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段を設け、
前記エンジン動作点制御手段は、実エンジン回転数が低回転数であるほど高い正の値によるエンジントルク下限値を設定することを特徴とするハイブリッド車のエンジン動作点制御装置。 - 請求項1または請求項2に記載されたハイブリッド車のエンジン動作点制御装置において、
前記差動装置は、共線図上に4つ以上の回転要素が配列され、各回転要素のうちの内側に配列される2つの回転要素の一方にエンジンからの入力を、他方に駆動系統への出力部材をそれぞれ割り当てると共に、前記内側の回転要素の両外側に配列される2つの回転要素にそれぞれ第1モータジェネレータと第2モータジェネレータとを連結した遊星歯車列であり、
前記エンジン動作点制御手段は、エンジンと第1モータジェネレータと第2モータジェネレータを動力源とするハイブリッド車無段変速モードにて走行する際、エンジントルクとエンジン回転数によるエンジン動作点を決めるにあたり、エンジントルク指令値に正の値による下限リミットを設定することを特徴とするハイブリッド車のエンジン動作点制御装置。
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