(A)実施形態
以下、本発明にかかる伝送媒体アクセス制御装置、伝送媒体アクセス制御方法、および伝送媒体アクセス制御プログラムの実施形態について説明する。
本実施形態は新たな通信プロトコルを提案するものである。この通信プロトコルはTDMAの一種である。
(A−1)第1の実施形態の構成
本実施形態にかかる通信システム10の全体構成例を図2に示す。
図2において、当該通信システム10は、ノードA〜Gを備えている。
各ノードは、インパルス信号およびデータ信号を送信する送信機能、他ノードが送信したインパルス信号およびデータ信号を受信する受信機能、他ノードから送信されたデータ信号を別の他ノードに送信する中継機能など、同じ機能を備えている。インパルス信号は各ノードが自身のタイムスロットの位相位置を他のノードに伝える際などに使用する制御信号(タイミング信号)である。データ信号は、所定の通信アプリケーションで使用するユーザデータである。この通信アプリケーションには、電子メールなどの一般的なもののほか、経路制御用プログラムも含まれる。したがって本実施形態では、経路制御用プログラムが経路制御のために送受する制御信号(経路設定要求信号および返答信号)も、データ信号であるものとする。本実施形態では、この経路制御が重要である。
前記各ノードA〜Gはアドホックネットワークを構成することができる。
タイムスロットは各ノードの送信権を制限するためのものであり、受信権のほうはすべてのノードが常に保有しているのが基本であるが、本実施形態では、各ノードが自身の受信権を使用しない期間を設けることを特徴とする。
なお、前記インパルス信号やデータ信号などの無線信号が届く範囲には物理的な限界(カバーエリア)があるため、各ノードは、自身のカバーエリア内に存在する他ノードにのみ、インパルス信号やデータ信号を届けることができる。また、後述するように、インパルス信号のカバーエリアはデータ信号のカバーエリアより大きくすることが望ましい。
各ノードA〜Gは例えばノート型パソコンなどのように移動性を有するものであってもよいが、移動性を持たないものであってもよい。
図2上では、ノードGが送信したデータ信号RG1をノードEおよびFが受信し、ノードFが送信したデータ信号RF1をノードAが受信し、ノードAが送信したデータ信号RA1をノードB〜Dが受信し、ノードEが送信したデータ信号RE1をノードAおよびDが受信し、ノードDが送信したデータ信号RD1をノードCが受信し、ノードBが送信したデータ信号RB1をノードCが受信している。
ここでは主として、これらのデータ信号RG1、RF1,RA1,RE1、RB1,RD1は、前記経路設定要求信号であるものとする。経路設定要求信号はその当初の送信元である当初送信元ノードがデータ信号(例えば、電子メールの内容を構成するデータ信号(ユーザデータ)など)を通信するための経路の設定を要求するために用いる制御信号である。どのような経路を設定可能であるか、当初送信元ノードには予測できないため、経路設定の過程には経路探索の処理が含まれる。経路探索の方法としては様々なものを使用可能であるが、ここでは、フラッディングを用いるものとする。
なお、経路設定要求信号RG1、RF1,RA1,RE1、RB1,RD1は、送受するノードが異なるという点で外形的には別な信号であるが、ノードGが経路設定を要求するために送信した信号またはその信号に由来する信号である点で内容的にはほとんど同じ信号である。したがって、特に区別する必要のないときには、これらRG1、RF1,RA1,RE1、RB1,RD1を、単に「経路設定要求信号」と総称する。
通信システム10中のすべてのノードが経路設定要求信号の当初送信元ノードになることが可能であるが、図2の例では、経路設定要求信号の当初送信元ノードは、Gである。そして、前記経路設定要求信号RG1、RF1,RA1,RE1、RB1,RD1は最初にノードGが送信した時点では、1つの経路設定要求信号RG1であるが、異なるノードによって中継される過程で、RG1、RF1,RA1,RE1、RB1,RD1などになる。
図2の例では、ノードA〜Fは相互に、インパルス信号およびデータ信号のカバーエリアに属しているため、インパルス信号およびデータ信号のやり取りが可能である。同様に、ノードG、E、Fは相互にインパルス信号およびデータ信号のカバーエリアに属しているため、インパルス信号およびデータ信号のやり取りが可能である。ただし、ノードGとノードA、B、C、Dは相互にカバーエリア内に属していないため、直接、インパルス信号およびデータ信号をやり取りすることはできない。
なお、説明を簡単にするため、ノードA〜G以外のノードについては基本的に言及しないが、実際には、図2に示したノードA〜Gと図2に示していないノードとのあいだで、データ信号の通信やインパルスの通信が行われてよいことは当然である。
また、以下の説明では、必要に応じて図8を用いる。図8上の各ノードN1〜N16は、前記ノードA等と同じ機能を持つノードである。
図8において、着目ノードN1やN2を中心とする実線円は、他ノードが送信した前記インパルス信号をノードN1やN2が受信できる範囲(インパルス信号のカバーエリア)を示している。図8の例では、着目ノードN1は、ノードN2、N3、N9が送信したインパルス信号を受信でき、着目ノードN2は、ノードN1、N3〜N12が送信したインパルス信号を受信できる。
また、実線円より狭い範囲の着目ノードN1やN2を中心とする点線円は、他ノードと着目ノードN1やN2がデータ信号を授受できる範囲(データ信号のカバーエリア)を示している。図8の例では、着目ノードN1は、ノードN3とのみデータ信号を授受でき、着目ノードN2は、ノードN3、N7、N8とデータ信号を授受できる。
本実施形態では、図8に示すようにノードの配置に偏りがあっても、各ノードでのタイムスロットをできるだけ均等に割当て(再割当てによる場合を含む)ることができる。
前記ノードAの内部構成は例えば図1に示す通りである。他のノードB〜G、ノードN1〜N16の内部構成もこれと同じである。
(A−1−1)ノードの内部構成例
図1において、当該ノードAは、インパルス信号受信手段11と、通信タイミング計算手段12と、インパルス信号送信手段13と、同調判定手段14と、データ信号通信手段15と、タイムスロット幅計測手段16と、角速度変更手段17と、経路設定手段18と、経路情報格納手段19とを備えている。
このうちインパルス信号受信手段11は、近傍のノード(例えば、自ノードAに関する前記インパルス信号のカバーエリア内に存在する他ノード)が送信したインパルス信号(宛先情報は含まれていない)を受信するものである。インパルス信号は、例えば、ガウス分布形状等のインパルス形状を有するものである。インパルス信号受信手段11は、受信したインパルス信号そのもの、それを波形整形したもの、又は、受信したインパルス信号に基づき再生成し直したインパルス信号を通信タイミング計算手段12や同調判定手段14に与える。
通信タイミング計算手段12は、インパルス信号受信手段11から与えられた信号(および後述する経路情報テーブルTB1など)に基づき、ノードAでの通信タイミングを規定する位相信号を形成して出力するものである。
ここで、当該ノードAを一般化するためノードiとし、その位相信号の時刻tでの位相値をθi(t)とすると、通信タイミング計算手段12は、(1)式に示すような変化分ずつ位相信号θi(t)を変化させる。なお、(1)式は、非線形振動をモデル化した式であるが、他の非線形振動をモデル化した式を適用することも可能である。また、位相信号θi(t)は、当該ノードの状態変数信号と見ることができる。
(1)式は、インパルス信号受信手段11から与えられた信号に応じて、自ノードiの位相信号θi(t)の非線形振動のリズムを変化させる規則を表している。(1)式において、右辺第1項ω(固有角振動数パラメータ)は、各ノードが備える基本的な変化リズム(「自己の動作状態を遷移させる基本速度」に対応する)を表しており、右辺第2項が非線形変化分を表している。ここで、ωの値は、例えば、システム全体で同一値に統一している。関数Pk(t)は、近傍ノードkから受信したインパルス信号に基づいて、インパルス信号受信手段11が出力した信号を表しており、関数R(θi(t),σ(t))は、他ノードからのインパルス信号の受信に応じて自己の基本的なリズムを変化させる応答特性を表現する位相応答関数であり、例えば、(2)式に従っている。
(2)式は、時刻tにおける位相信号θi(t)の逆相にランダムノイズを重畳させた位相値の正弦波で位相応答関数を定めていることを表している。近傍のノード同士が逆相(振動の位相が反転位相)になろうとする非線形特性を実現し、その特性を用いて衝突回避を実行させようとしたものである。すなわち、近傍のノード間におけるインパルス信号の送信タイミングなどが衝突しないように、各ノードの位相信号の値が同じ値になるタイミングに、適当な時間関係(時間差)を形成させようとしている。
(2)式において、関数σ(t)を表現する定数項π[rad]は、近傍のノード同士が逆相になろうとする非線形特性の働きをし、ランダムノイズ関数φ(t)は、その非線形特性にランダムな変動性を与える働きをする(関数φ(t)は、例えば、平均値が0のガウス分布に従う)。ここで、上記非線形特性にランダムな変動性を与えているのは、システムが目的とする安定状態(最適解)に到達せず、別の安定状態(局所解)に陥ってしまう現象に対処するためである。
なお、(2)式では、位相応答関数R(θi(t),σ(t))の最も簡単な例としてsin関数を用いる形態を示したが、位相応答関数として他の関数を用いても良い。また、関数σ(t)の定数項πに代え、π以外の定数λ(0<λ<2π)を用いても良く、この場合、近傍のノード同士が逆相ではなく、異なる位相になろうと機能する。
通信タイミング計算手段12の上述した機能の意味合いを、図9及び図10を用いて詳述する。図9及び図10は、ある1つのノードiに着目したときに、着目ノード(自ノード)iと近傍のノード(他ノード)jとの間に形成される関係、すなわち、それぞれの非線形振動リズム間の位相関係が時間的に変化していく様子を示している。
図9は、着目ノードiに対して近傍ノードjが1個存在する場合である。図9において、円上を回転する2つの質点の運動は、着目ノードと近傍ノードに対応する非線形振動リズムを表しており、質点の円上の角度がその時刻での位相信号の値を表している。質点の回転運動を縦軸あるいは横軸に射影した点の運動が非線形振動リズムに対応する。(1)式及び(2)式に基づく動作により、2つの質点には相互に逆相になろうとし、仮に、図9(A)に示すように初期状態で2つの質点の位相が近くても、時間経過と共に、図9(B)に示す状態(過渡状態)を経て、図9(C)に示すような2つの質点の位相差がほぼπである定常状態に変化していく。
2つの質点は、それぞれ固有角振動数パラメータωを基本的な角速度(自己の動作状態を遷移させる基本速度に相当)として回転している。ここで、ノード間でインパルス信号の授受に基づく相互作用(位相相互作用)が生じると、これらの質点は、それぞれ角速度を変化(緩急)させ、結果的に、適当な位相関係を維持する定常状態に到達する。この動作は、2つの質点が回転しながら相互に反発しあうことによって、安定な位相関係を形成するものと見ることができる。定常状態では、後述するように、それぞれのノードが所定の位相α(例えばα=0)のときにインパルス信号を送信するとした場合、互いのノードにおける送信タイミングは、適当な時間関係を形成していることになる。
また、図10は、着目ノードiに対して2個の近傍ノードj1、j2が存在する場合を表している。近傍ノードが2個存在する場合においても、上述と同様に、それぞれの質点が回転しながら相互に反発しあうことによって、安定な位相関係(時間的な関係に関する安定性)を形成する。近傍ノード数が3個以上の場合についても同様である。
上述の安定な位相関係(定常状態)の形成は、近傍ノード数の変化に対して非常に適応的(柔軟)な性質を持つ。例えば、今、着目ノードに対して近傍ノードが1個存在し、安定な位相関係(定常状態)が形成されているときに、近傍ノードが1個追加されたとする。定常状態は一旦崩壊するが、過渡状態を経た後、近傍ノードが2個の場合における新たな定常状態を再形成する。また、近傍ノードが削除された場合や故障等により機能しなくなった場合においても、同様に適応的な動作をする。
なお、図9及び図10は、着目ノードの近傍にインパルス信号を授受する他のノードが1個又は2個の場合を示したが、図2や図8に例示したように、実際の複数のノードの配置関係はこれら図9や図10が前提とする場合より複雑である。
通信タイミング計算手段12は、得られた位相信号θi(t)を、インパルス信号送信手段13、同調判定手段14、データ信号通信手段15及びタイムスロット幅計測手段16に出力する。
インパルス信号送信手段13は、位相信号θi(t)に基づいて、インパルス信号を送信出力する。すなわち、位相信号θi(t)が所定の位相α(0≦α<2π)になると、インパルス信号を送信出力する。ここで、所定の位相αは、予めシステム全体で統一しておくことが好ましい。以下では、α=0にシステム全体で統一されているとして説明する。図9の例で言えば、ノードiとノードjとでは、定常状態で相互の位相信号θi(t)及びθj(t)がπだけずれているので、α=0にシステム全体で統一しても、ノードiからのインパルス信号の送信タイミングと、ノードjからのインパルス信号の送信タイミングとはπだけずれる。
同調判定手段14は、自ノードや1又は複数の近傍ノードの間で行われる出力インパルス信号の送信タイミングの相互調整が、「過渡状態」(図9(B)、図10(B)参照)あるいは「定常状態」(図9(C)、図10(C)参照)のいずれの状態にあるかを判定するものである。同調判定手段14は、インパルス信号の受信タイミング(他ノードの出力タイミングに対応する)及びインパルス信号の自ノードからの送信タイミングを観測し、インパルス信号を授受し合う複数のノードの送信タイミング間の時間差が時間的に安定している場合に「定常状態」であると判定する。同調判定手段14には、自ノードからのインパルス信号の送信タイミングを捉えるための信号として、位相信号θi(t)が入力されている。
同調判定手段14は、例えば、以下の(A)〜(D)のような処理を実行して同調判定を行う。
(A)インパルス信号受信手段11からの信号の出力タイミングにおける位相信号θi(t)の値βを、位相信号θi(t)の1周期に亘って観測する。上記の観測を行った結果、得られる位相信号θi(t)の値βをそれぞれ、β1,β2,…,βN (0<β1<β2<…<βN<2π)とする。
(B)観測された位相信号θi(t)の値βに基づいて、隣接値間の差(位相差)Δ1=β1,Δ2=β2−β1,…,ΔN=βN−β(N−1)を算出する。
(C)上記(A)及び(B)の処理を位相信号θi(t)の周期単位に行い、相前後する周期における位相差Δの変化量(差分)γ1=Δ1(τ+1)−Δ1(τ),γ2=Δ2(τ+1)−Δ2(τ),…,γN=ΔN(τ+1)−ΔN(τ)を算出する。ここで、τは、位相信号θi(t)のある周期を示しており、τ+1は、位相信号θi(t)のその次の周期を示している。
(D)上述の変化量γが、いずれも微小パラメータ(閾値)εよりも小さい場合、すなわち、γ1<ε,γ2<ε,…,γN<εの場合に、「定常状態」であると判定する。
なお、γ1<ε,γ2<ε,…,γN<εという条件がM周期にわたって満足される場合を定常状態と判定するようにしても良い。Mの値を大きくするほど、より安定性の高い状態で「定常状態」と判定できる。また、一部の受信インパルス信号に基づいて、「定常状態」の判定を行っても構わない。
同調判定手段14は、位相信号θi(t)の周期毎に、判定結果を示す同調判定信号と、インパルス信号の受信タイミングにおける位相信号θi(t)の値βの最小値β1をスロット信号としてデータ信号通信手段15に出力する。
データ信号通信手段15は、内部にデータ信号送信手段15Aとデータ信号受信手段15Bを備えている。データ信号送信手段15Aがデータ信号の送信を行い、データ信号受信手段15Bがデータ信号の受信を行う。これらの手段15A、15Bを備えることにより、データ信号通信手段15は、自身が当初の送信元となるデータ(データ信号)を送信したり、自身が最終的な宛先となるデータを受信したりすることができるとともに、自身が中継するデータを送受することができる。
データ信号通信手段15は、データ送信(データ信号の送信)を、同調判定信号が「定常状態」を示すときに、後述するタイムスロット(システム(前記管理ノードに相当)などが割り当てた固定的な時間区間ではないが、「タイムスロット」という用語を用いる)で行ない、同調判定信号が「過渡状態」を示すときには送信動作を停止する。
タイムスロットは、位相信号θi(t)がδ1≦θi(t)≦β1−δ2である期間である。タイムスロットの開始点(そのときの位相信号の値をδ1とする)は、インパルス信号の送信が終了したタイミングであり、タイムスロットの終了点(そのときの位相信号の値をβ1−δ2とする)は、位相信号の周期毎の最初の受信インパルス信号のタイミングより多少のオフセット分δ2だけ前のタイミングとしている。δ1やδ2は、当該ノードの近傍の無線空間で、インパルス信号(送信元は自ノードの場合、他ノードの場合の双方を含む)と、データ信号(送信元は自ノードの場合、他ノードの場合の双方を含む)とが同時に存在しないことを補償するためのごく短い時間に対応する位相幅である。
例えば、図9(C)に示すような「定常状態」の場合、ノードiは、位相θiが0からインパルス信号を送信し始め、位相θiがδ1になる前に、インパルス信号の送信を終了させておき、位相θiがδ1からデータ信号を送信し始め、位相θiがβ1−δ2になると(但しβ1≒π)、データ信号の送信を終了させ、それ以降、位相θiが再び0になるまで、インパルス信号の送信もデータ信号の送信も停止させる。他方のノードjも、位相θjに基づいて同様な動作を実行するが、位相θiと位相θjとがほぼπだけずれているので、送信動作が競合してデータ信号などが衝突することはない。ノード数が3以上の場合も同様に動作し、送信動作が競合することはない。
上述のように、固有角振動数パラメータωは、例えば、通信システム(ネットワーク)全体で同一の値に統一することとしている。固有角振動数ωが統一されていると、各ノードで不規則にばらついている場合に比べ、定常状態に入りやすく、逆に、固有角振動数ωが統一されていないと、異常なインパルス信号を送信するノードも多くなり、定常状態に入り難い。
上述したインパルス信号受信手段11、通信タイミング計算手段12、インパルス信号送信手段13、同調判定手段14及びデータ信号通信手段15の機能により、割り当てられたタイムスロットを見直すために(タイムスロットの幅をできるだけ均等にするために)、タイムスロット幅計測手段16及び角速度変更手段17が設けられている。タイムスロット幅計測手段16及び角速度変更手段17は、図示しない見直し起動スイッチが操作された場合に機能するようにしても良く、外部からの操作を待たずに、常に機能するものであっても良い。
タイムスロット幅計測手段16は、当該ノードが受信するインパルス信号の受信間隔を計測するものである。また、タイムスロット幅計測手段16は、1周期(自ノードのインパルス信号の送信間隔)での受信インパルス数を計測し、自ノードとインパルス信号の送受信可能なノード数を調べるものである。さらに、タイムスロット幅計測手段16は、自ノードに割り当てられたタイムスロット幅及び周期から、割り当てタイムスロット幅を広くする制御を行うか否かを判定するものである。
角速度変更手段17は、タイムスロット幅計測手段16が割り当てタイムスロット幅を広くする制御を行うと判定したときに、通信タイミング計算手段12に対して、位相変更を要求することで、インパルス信号の送信タイミングをずらす機能を担っている。
タイムスロット幅計測手段16および角速度変更手段17の機能を、図11(A)〜(D)を用いてさらに詳細に説明する。
図11(A)および(B)はそれぞれ、図2に示すようなノード配置の場合において、ノードN1、ノードN2から見た各ノードのタイムスロットの割当てを示している。ノードN1から見ると、半径R(実線円の半径)内にノードが4個(ノードN1も含む)あり、ノードN2から見ると、ノードが12個(ノードN2も含む)あり、それぞれ、1周期が4分割(図11(A))、又は、12分割(図11(B))され、タイムスロットが割り振られる。
図11において「N1」から「N12」を付与したタイムスロットは、それぞれ、図8のノードN1からノードN12に割り当てられたタイムスロットを表している。ノードN1、N2、N3及びN9は同様なノードであるのに拘わらず、近傍ノードの位相相互作用の影響を受け、図11(A)に示すように、割り当てられたタイムスロットの幅に大きな相違を有している。このような割当てのアンバランスを少しでも是正するために(割り当てられたタイムスロットを見直すために)、当該タイムスロット幅計測手段16及び角速度変更手段17が設けられ、タイムスロットの再割り当てがなされる。
タイムスロットの再割当ての動作は、(S1)タイムスロット幅拡張必要性の判定、(S2)位相シフト制御、という2段階でなされる。
(S1)タイムスロット幅拡張必要性の判定
各ノードのタイムスロット幅計測手段16は、自インパルス信号を送信してから次に自インパルス信号を送信するまでの1周期の受信インパルス信号数をカウントし、インパルス信号の受信可能範囲(インパルス信号のカバーエリア内)のノード数を調べる。例えば、ノードN1のタイムスロット幅計測手段16は、図11(A)における<1>のタイミングで、自インパルス信号を送信してから、次に自インパルス信号を送信するまでの1周期の受信インパルス信号数をカウントし、インパルス信号のカバーエリア内のノード数を調べる。これにより、ノードN1のタイムスロット幅計測手段16は、ノード数「4」を得る。また、各ノードのタイムスロット幅計測手段16は、自インパルス信号を送信してから、他ノードからのインパルス信号を受信するまでの時間を計測する。これにより、ノードN1のタイムスロット幅計測手段16は、図11(A)における<1>と<2>の間の時間、<1>と<3>の間の時間、<1>と<9>の間の時間を計測し、これら計測時間を整理することにより、各タイムスロットの割当て時間が得られる。
以上のようにして1周期分を計測すると、角速度変更手段17は、自ノードのタイムスロット割当て幅が均等に割り当てられた場合に比べて、少ないか否かを判定する。例えば、「2π/ノード数−自ノードのタイムスロット幅」(ここでは差分であるが、比であっても良い)という値が、予め定められている閾値以下ならば、位相シフト制御を行うと判定する。図11(A)の例の場合、ノードN1のタイムスロット幅が均等に割り当てた場合に比べて小さいので、角速度変更手段17によって、位相シフト制御を行うと判定される。
なお、位相シフト制御を行うか否かの判定基準は、これに限定されない。例えば、以下のような条件(PA)や条件(PB)が成り立つならば、位相シフト制御を行うようにしても良く、また、複数の条件が満たされる場合に、位相シフト制御を行うようにしても良い。
条件(PA):自ノードに割り当てられたタイムスロット幅<最大タイムスロット幅/2
条件(PB):自インパルス信号の前後のタイムスロットの合計<最大タイムスロット幅
(S2)位相シフト制御
角速度変更手段17は、自ノードのタイムスロットの終了を規定するインパルス信号を受信したとき(図11(A)の<2>)の位相θi(t)を保持し、次に後続するインパルス信号を受信した時点(図11(A)の<3>)の位相θi(t+1)との位相差を調べ、位相差θi(t+1)−θi(t)を保持する。さらに、角速度変更手段17は、次のインパルス信号を受信した時点(図11(A)の<9>)の位相差θi(t+2)−θi(t+1)を調べ、この位相差が大きければ、インパルス信号の位相θi(t+1)及び位相差θi(t+2)−θi(t+1)を保持する。このような動作を、再び自インパルス信号を送信する段階まで繰り返す。そして、保持している位相+(位相差の1/2)の位置まで、自ノードのインパルス信号の送信位相を変化させる。ノードN1から見ると、ノードN3に割り当てられたタイムスロットが最も大きいので(保持している位相差から分かる)、図11(A)に示すように、この位置に当該ノードN1の位相をシフトし、インパルス信号の送信を開始する。
図11(C)および(D)は、位相シフト制御を行なった時点でのノードN1、ノードN2のそれぞれから見たタイムスロット幅である。ノードN1は、前後のノードの影響でタイムスロット幅が小さかったのが、割り当て幅が増加する。このとき、図12上では、図12(A)に示す状態から図12(B)に示す状態に遷移する。
位相シフト先は単純に最大タイムスロットの範囲内の位相に限定されず、これ以外でも良い。例えば、連続するタイムスロット(次のタイムスロット)が最も大きい位置に移動するようにしても良い。
実際には、この例のように、ノードの配置状況などによって、タイムスロットを各ノードに完全に均等に割り当てる(同じ時間幅のタイムスロットを各ノードに割り当てる)ことが難しい場合も少なくないが、以下では、説明を簡単にするため、定常状態では、基本的に各ノードに均等な時間幅のタイムスロットが割り当てられているものとする。
前記経路設定手段18は、自ノードAが当初の送信元となって経路設定要求信号を送信したり、他ノードから受信した前記経路設定要求信号または返答信号をもとに、経路設定を実行するもので、上述した経路制御用プログラムの機能は主として当該経路設定手段18に対応する。他ノードから受信した前記経路設定要求信号または返答信号をもとに経路設定を行う場合、当該経路設定は、例えば、図4に示すような経路情報テーブルTB1を経路情報格納手段19に格納することによって実行される。
図4の経路情報テーブルTB1は、データ項目として当初送信元と、受信タイミングとを備えている。
ここで、当初送信元は、前記経路設定要求信号または返答信号の当初の送信元である当初送信元ノードのアドレスを登録し、受信タイミングは、自ノードであるノードAがこれら経路設定要求信号または返答信号を直接、受信した近傍の他ノードのタイムスロットが、ノードAのタイムスロットATSから見て何番目であるかを示す値を登録する。
ここでは、相互にデータ信号の授受が可能な近傍の6ノードA〜Fに割り当てられるタイムスロット(ATS〜FTS)の1周期が一例として図7(A)に示す通りで、A→B→C→…→Fの順番に循環しているものとする。図3は、図7(A)の各タイムスロットを順番に横に並べたものである。
タイムスロットATSは、ノードAのタイムスロットで、タイムスロットATSの期間中、ノードAがインパルス信号およびデータ信号の送信権を持つ。
同様に、タイムスロットBTSはノードBのタイムスロットで、タイムスロットBTSの期間中、ノードBがインパルス信号およびデータ信号の送信権を持ち、タイムスロットCTSはノードCのタイムスロットで、タイムスロットCTSの期間中、ノードCがインパルス信号およびデータ信号の送信権を持ち、タイムスロットDTSはノードDのタイムスロットで、タイムスロットDTSの期間中、ノードDがインパルス信号およびデータ信号の送信権を持ち、タイムスロットETSはノードEのタイムスロットで、タイムスロットETSの期間中、ノードEがインパルス信号およびデータ信号の送信権を持ち、タイムスロットFTSはノードFのタイムスロットで、タイムスロットFTSの期間中、ノードFがインパルス信号およびデータ信号の送信権を持つ。
経路設定のためのデータ信号である経路設定要求信号や返答信号の送信でも、各ノードは自身のタイムスロットが到来するまで、その送信を行うことができない。
上述したように、タイムスロットは各ノードの送信権を制限するためのものであり、受信権のほうはすべてのノードが常に保有しているのが基本であるが、本実施形態では、各ノードが、経路設定に応じて、経路の設定されていない不要なタイムスロットの期間内では、前記データ信号受信手段15Bを動作させない(非動作状態とする)構成を取る。
一方、相互にデータ信号の授受が可能な近傍の3ノードG〜Fに割り当てられるタイムスロット(GTS〜FTS)の1周期は一例として図7(B)に示す通りであってよい。図7(B)では、G→F→Eの順番に循環している。
図7(B)において、タイムスロットGTSはノードGのタイムスロットで、タイムスロットGTSの期間中、ノードGがインパルス信号およびデータ信号の送信権を持ち、タイムスロットETSはノードEのタイムスロットで、タイムスロットETSの期間中、ノードEがインパルス信号およびデータ信号の送信権を持ち、タイムスロットFTSはノードFのタイムスロットで、タイムスロットFTSの期間中、ノードFがインパルス信号およびデータ信号の送信権を持つ。
図4に示した前記経路情報テーブルTB1には2つの行L1、L2が含まれているが、行L1は、ノードAが受信した前記経路設定要求信号に対応するものであり、行L2は、ノードAが受信した返答信号に対応するものである。ここで、行は、経路情報テーブルTB1中でデータ項目を除く横の並びを示す。
経路設定要求信号の当初送信元ノードはGであるが、直接の送信元はノードFであり、当該ノードFのタイムスロットFTSは図7(A)に示すようにATSからみて5番目であるから、行L1の受信タイミングとして「5」が登録される。
返答信号については当初送信元ノードと直接の送信元が同じノードCであり、当該ノードCのタイムスロットCTSは図7(A)に示すようにATSからみて2番目であるから、行L2の受信タイミングとして「2」が登録される。
このように登録しておけば、通信タイミング計算手段12は、図7(A)に示した1周期のうち、ATSから2番目のタイムスロットCTSと、ATSから5番目のタイムスロットFTSに相当する期間のみ、データ信号受信手段15Bを動作状態(受信待ち状態)とさせ、その他の期間は非動作状態とさせる制御を実行することができる。なお、受信待ち状態とは、データ信号受信手段15Bの動作状態に属する1つの状態で、いつ受信できるか予測できないデータ信号が、いつ到着しても対応できるようにその到着を待ち受けている状態である。単位時間あたりのタイムスロットの利用率が極端に高いケースを除き、データ信号受信手段15Bの動作状態の大半は、受信待ち状態になるものと考えられる。
以下、上記のような構成を有する本実施形態の動作について説明する。
(A−2)第1の実施形態の動作
前記通信システム10内に経路が設定されていないものとすると、送信したいユーザデータを持つノードは、当該ユーザデータを送信する前に経路設定を行うことが必要になる。ここでは、前記ノードGがこのようなノードであるものとする。なお、経路が設定されていないということは、すべてのノードA〜G内で、前記データ信号受信手段15Bが1周期の全期間にわたって動作状態にあることを意味する。したがって、その時点で受信すべき有効なデータ信号が存在しない場合には、各ノードA〜G内の当該データ信号受信手段15Bは上述した受信待ち状態を維持する。
図2上で、ノードGのデータ信号のカバーエリア内に位置するのは、ノードEとFだけであるため、ノードGが経路設定要求信号RG1を送信すると、当該経路設定要求信号RG1は、ノードEとFに受信される。
なお、当該経路設定要求信号RG1はノードGのタイムスロットである図7(B)のGTSで送信されるが、当該タイムスロットGTSの期間内では、ノードGはデータ信号受信手段15Bを非動作状態にすることができる。自身のタイムスロットGTSの期間内では、カバーエリア内に位置する他ノードEおよびFがデータ信号を送信することはあり得ないし、他ノードE、Fと自ノードGがほぼ同じ送信電力で、同じ周波数のデータ信号を送信するものとすると、離れた位置から到来する他ノードが送信したデータ信号を自ノードが有効に受信することは電波工学的に困難で、受信待ち状態にしても実益がないからである。
当該経路設定要求信号RG1には様々な情報が含まれ得るが、少なくとも、当初送信元ノードであるGのアドレスGAD1が含まれているものとする。また、当該経路設定要求信号RG1には経路設定要求信号の最終的な宛先であるノード(最終宛先ノード)のアドレスが含まれていてもよい。最終宛先ノードのアドレスとともに、または最終宛先ノードのアドレスに替えて、有効期限情報が含まれるようにしてもよい。有効期限情報は、RG1に由来する経路設定要求信号が通信システム10内を中継されるホップ数や時間などの上限値を指定する情報で、中継することが不要なノードまで当該経路設定要求信号が中継されたり、不必要な通信トラフィックの増大を防ぐために用いることができる。
ここで、ノード(例えば、G)のアドレスは少なくとも当該通信システム10内で各ノードを一意に識別することのできる識別情報である。
経路設定要求信号RG1には、直接、受信するノードE、Fのアドレスが含まれている必要はないが、通信プロトコルの仕様上、そのアドレスを記述することが必須である場合には、不特定多数のノードを宛先として指定するブロードキャストアドレスなどを記述しておくものであってよい。もちろん、その時点で通信システム10内の各ノードA〜Gに近傍のノードのアドレスが認識できているのならば、個々にそのアドレスを指定して経路設定要求信号を次のノードへ送信するようにしてもよいが、ここでは主として、近傍ノードのアドレスは認識できておらず、ブロードキャストするケースを想定する。ブロードキャストした経路設定要求信号に送信元のノード(ここでは、G)のアドレスを記述しておけば、当該経路設定要求信号を受信したノード(ここでは、EまたはF)はその記述から、ブロードキャストしたノード(例えば、G)のアドレスを認識できるので、前記返答信号を送信するときには、ユニキャストを行うことができる。
ノードGが送信した経路設定要求信号RG1は、前記ノードEとFのデータ信号受信手段15Bに、ほぼ同時に受信される。受信待ち状態にあった当該データ信号受信手段15Bでは、受信した経路設定要求信号RG1をすでに主記憶装置(図示せず)上に確保してある前記バッファ内に一時的に記憶するほか、自ノード内の経路情報テーブルTB1に、前記行L1に相当する行を追加することによって経路設定を行う。これは、当初送信元ノードであるノードGが送信したデータ信号(ユーザデータ)を中継する往路方向の中継のための経路設定である。
図7(B)から明らかなように、ノードFから見ると、ノードGのタイムスロットGTSは2番目であるため、ノードF内の経路情報テーブルの受信タイミングとしては「2」が登録される。同様に、ノードEから見ると、ノードGのタイムスロットGTSは1番目であるため、ノードE内の経路情報テーブルの受信タイミングとしては「1」が登録される。
各ノード(ここでは、EとF)における経路設定要求信号の中継では、基本的に、受信したものをそのまま送信するものであってよい。この場合、各ノード(例えば、F)が受信した経路設定要求信号RG1と、送信した経路設定要求信号RF1の内容は同じである。ただし、経路設定要求信号に前記有効期限情報が含まれている場合には、その値をデクリメント(あるいは、減算)する処理などが中継時に行われるものであってよい。
2つのノードE、Fは中継のため、それぞれ自ノード中の前記バッファに記憶されている経路設定要求信号を送信する。
ただし、図7(B)から明らかなように、GTSの直後のタイムスロットはFTSで、その次がETSであるため、先に送信するのは、ノードFである。ノードFが送信したあと、自身のタイムスロットETSが到来したときに、ノードEが送信する。
前記ノードAは、ノードFのカバーエリアにもノードEのカバーエリアにも属しているが、ノードFが中継のために送信した経路設定要求信号であるRF1が、最初にノードAに受信される。このとき、前記RG1を受信したときノードFやEで行われたものと同様な往路方向の経路設定がノードA内で行われる。この経路設定で、経路情報テーブルTB1に上述した行L1が登録される。
図7(A)に示すように、ノードFのタイムスロットFTSは、ノードAから見ると、自ノードのタイムスロットATSの直前にあるため、経路設定要求信号RF1を受信後、ただちに経路設定要求信号RA1がノードAから送信されることになる。
なお、前記ノードFから送信されたRF1のあとで、ノードEから送信されたRE2がノードAに届くが、このRE2は、ノードA内の前記バッファ上で削除(破棄)され、中継の対象とはならない。ノードAに限らず、通信システム10内の全ノードは、同一の経路設定要求信号(例えば、当初送信元ノードが同じである経路設定要求信号)を所定時間以内に(例えば、1周期中に)異なるノードから受信した場合、最初に受信した経路設定要求信号のみを経路設定などに用い、そのあとで受信した他の経路設定要求信号は、このように削除する。削除された経路設定要求信号は、ノードAにおける経路設定や中継の対象とされないことは当然である。
これにより、各ノードの内部では、記憶容量(バッファの容量)や処理能力を節約することができる。また、ノード間では、無限ループの発生などを防止して、通信トラフィックの増大を抑制することができる。しかも、後述する経路の選択により、各ノードが自身のタイムスロットの到来を待つことによって発生する中継のための遅延時間が短い経路が選択されることになり、経路設定後に実行されるユーザデータの通信に関するリアルタイム性を高める上でも有利である。
なお、ノード(ここでは、A)内でいずれかの経路設定要求信号を破棄した場合、その直接の送信元であるノード(ここでは、E)へ、破棄したことを通知するようにしてもよい。送信した経路設定要求信号が破棄されたことが分かれば、自ノード(ここでは、E)が今回、設定される経路から外れたことを認識できるので、当該ノード(ここでは、E)は、その前に往路方向のために実行していた経路設定を解除してデータ信号受信手段15Bを非動作状態の時間を長くすることができるからである。あるいは、今回の経路設定に対応する前記返答信号が所定時間(例えば、5周期)以内に受信できないときに、各ノードがこの解除を実行するようにしてもよい。
前記経路設定要求信号RF1を受信したノードAから送信(前記ブロードキャスト)される経路設定要求信号RA1は、物理的には、ノードAのカバーエリア内に存在するノードB〜Fに受信され得るが、ノードE、Fなど、すでに同一の経路設定要求信号を受信しているノード内では、削除される(図2上では、ノードAからノードE、Fに届く経路設定要求信号RA1は、図示していない)。
なお、図7(A)のタイムスロットの1周期上には、ノードGのタイムスロットGTSが存在しないが、図7(B)に示すノードGのタイムスロットGTSは、ノードFのタイムスロットであるFTSの直前であって、なおかつ、ノードEのタイムスロットであるETSの直後にあるため、図7(A)の1周期上でも、ETSとFTSのあいだの位相位置に相当する。したがって、図7(A)から明らかなように、ノードB〜Dにとっては、ノードAから届く経路設定要求信号RA1が最も早く届くため、それ以降に受信された経路設定要求信号(例えば、ノードEからノードDに届くRE1など)は、削除することになる。
このようにして各ノード内で往路方向の経路が設定されて行く。
当初送信元ノードGが経路設定要求信号の前記最終的宛先ノードとしてCを指定したものとすると、この経路設定要求信号は、ノードGからCのあいだの1つの経路の設定を要求するものである。各ノードが上述した解除を実行することにより、可能性のある複数の経路のうち、ただ1つの経路だけが選択されて残るとともに、経路から外れたノード内の各種資源が節約できる。本実施形態の場合、図2、図7(A)および(B)を前提とすると、残る経路は、G→F→A→Cの経路である。
次に、前記返答信号の処理について説明する。
返答信号は、往路方向の経路設定が完了したことの確認とともに、復路方向の経路設定を行うために用いる経路設定用の制御信号である。したがって、この2つの目的を達成することのできるものであれば、返答信号自体の仕様(含まれる情報)や、各ノードがどのような場合に返答信号を送信するかについての方法には、様々な変形が可能で、例えば、次の第1〜第3の方法を用いることもできる。ただし、これらは、前記経路設定要求信号に含まれる情報によっても制約を受けることは当然である。
例えば、第1の方法では、経路設定要求信号を受信した(破棄しなかった)ノードが、自身に対して経路設定要求信号を送信した直前のノード(例えば、ノードAから見るとノードF)へ、返答信号を送信し、各ノードは返答信号を往路と同じ経路を逆方向に中継して、当初送信元ノードであるノードGまで届ける。この場合、経路設定要求信号を受信した全ノードから返答信号が送信されるため、返答信号の中継などに、各ノードの処理能力が消費され、通信トラフィックが増大するが、当初送信元ノードGを根とする木構造の経路を設定することができ、経路設定要求信号には、最終宛先ノードのアドレスを含む必要がない。また、返答信号の当初の送信元であるノード(例えば、C)のアドレスを記述しておけば、その返答信号を受信した各ノード(例えば、AやG)は、その返答信号の記述から、自身が通信可能な全ノードを特定することができる。
第2の方法では、経路設定要求信号に前記有効期限情報が含まれていることを前提に、自ノードにおける処理(有効期限情報の減算など)で、有効期限情報が所定の値(例えば、0)になった場合、そのノードが返答信号を送信する。この場合、返答信号の中継などのために消費される処理能力や、必要な通信トラフィックは、第1の方法ほど大きくなく、経路設定要求信号に最終宛先ノードのアドレスを含む必要もない。また、中継時に各ノードが自身のアドレスを返答信号に追加するようにすれば、最後に当該返答信号を受信する当初送信元ノードGには、経路上の全ノードのアドレスが認識されるため、当初送信元ノードGは、経路上の任意のノードとユーザデータをやり取りすることができる。
第3の方法では、経路設定要求信号に最終宛先ノードのアドレスが含まれていることを前提に、その最終宛先ノードのみが返答信号を送信する。例えば、最終宛先ノードのアドレスがノードCを指定するアドレスである場合、ノードCのみが返答信号を送信し、ノードG、F、A、Cのあいだに往路と復路の経路設定が行われることになる。もちろん、最終宛先ノードは必ずしも1つである必要はない。また第2の方法で行ったように、中継時に各ノードが自身のアドレスを返答信号に追加するようにすれば、当初送信元ノードGは、経路上の任意のノードとユーザデータをやり取りすることもできる。
なお、第1の方法や第3の方法でも、一般的には、経路設定要求信号の通信トラフィックの増大を抑制すること等のため、経路設定要求信号に有効期限情報を含めることが必要になる可能性が高い。また、第2の方法や第3の方法でも、当初送信元ノードGを根とする木構造の経路を設定することが可能である。
復路方向の経路設定に、第1〜第3のいずれの方法を用いるにしても、ここでは、前記経路設定要求信号の中継にともなってノードG、F、A、Cのあいだに往路の経路設定が行われ、次に、返答信号の中継などにともなって復路の経路設定が行われるものとする。復路は、往路と同じ経路を逆方向にたどるものである。
返答信号の送信を前述のユニキャストで行う場合、返答信号には、最終的な宛先となる前記ノードGのアドレスのほか、直接の宛先となる近傍のノードのアドレスを記述することになる。例えば、ノードCが返答信号を送信する場合、当該返答信号には、最終的な宛先となるノードGのアドレスとともに、直接の宛先となるノードAのアドレスを記述する。この場合、ノードCが送信した返答信号は物理的には近傍のノードB、Dなどにも届くが、宛先として指定されていないこれらのノード内では返答信号の受信処理が行われず、宛先として指定されたノードAでのみ、返答信号の受信処理が行われる。また、ここでは、当該返答信号にその当初送信元ノードであるノードCのアドレスCAD1を記述しておくものとする。
本実施形態の場合、各ノードは、往路方向の経路設定が行われただけでは、1周期の全期間でデータ信号受信手段15Bの受信待ち状態を維持する必要がある。いずれのタイムスロットで、返答信号が送信されるか予測できないからである。したがってこの時点では、ノードAもタイムスロットの1周期の全期間にわたってデータ信号受信手段15Bを動作状態(受信待ち状態)に維持しており、ノードCが送信した返答信号を受信することができる。
ノードAは、タイムスロットCTS(すなわち、自ノードAから送信するインパルス信号から数えて、2番目のインパルス信号と3番目のインパルス信号のあいだの期間)に、当該返答信号を受信したことにより、復路方向の経路設定では、当該タイムスロットCTSを用いることを認識できる。また、当該返答信号に、当初送信元ノードであるノードCのアドレスCAD1が記述されていれば、当該CAD1を認識することもできる。このような認識に基づいて、ノードA内では、図4に示す経路情報テーブルTB1の行L2が登録される。
これと同様の動作により、ノードFおよびGでも、復路方向の経路設定が行われる。
また、ノードG、F、A、Cのあいだに往路と復路の経路設定が行われた場合、ノードGはノードFに対応する図7(B)のタイムスロットFTSの期間のみ、自身が搭載するデータ信号受信手段15Bを、前記動作状態(受信待ち状態)とし、それ以外の期間(GTSおよびETS)は、データ信号受信手段15Bを非動作状態とする。
経路上のその他のノードF、A、Cでもこれと同様な処理を行う。例えば、ノードAでは、図7(A)に示すタイムスロットFTSおよびCTSの期間のみ、自身が搭載するデータ信号受信手段15Bを動作状態とし、それ以外の期間(ATS、BTS、DTS、ETS)は、データ信号受信手段15Bを非動作状態とする。
ノードAなどにおけるこのような動作を実現させる具体的な方法には様々なものがあり得るが、例えば、自ノードAがインパルス信号を送信(この送信が行われるタイミングは、図7(A)上の「A」の位相位置)してから、近傍の他ノードが送信するインパルス信号の数をカウントして、そのカウント結果と経路情報テーブルTB1の受信タイミングの値とを比較し、両者が一致したとき、1タイムスロット分(例えば、次のインパルス信号が受信できるまでの時間に対応)だけデータ信号受信手段15Bを受信待ち状態とさせることによってこのような動作を実現させることができる。
経路情報テーブルTB1の内容が図4の通りであると、ノードA自身がインパルス信号を送信してから2つ目のインパルス信号(これはノードCが送信する)が受信できたタイミングでノードA内のデータ信号受信手段15Bをそれまでの非動作状態から受信待ち状態に移行させ、3つ目のインパルス信号(これはノードDが送信する)が受信できたタイミングで当該データ信号受信手段15Bを非動作状態に戻し、4つ目のインパルス信号が受信できたタイミングでは非動作状態を維持し、5つ目のインパルス信号(これは、ノードFが送信する)が受信できたタイミングで受信待ち状態に移行させる。このあと、再度、ノードAがインパルス信号を送信するタイミングでは、非動作状態に戻して、図7(A)の1周期の処理が終わる。以降は、前記定常状態が維持される限り、同様な処理が繰り返される。
この1周期中、非動作状態のデータ信号受信手段15Bでは例えば動作状態への移行の速さを重視して微弱な電流を流すようにすること等も可能であるが、非動作状態に、データ信号受信手段15Bに対する電力供給を完全に断ち(OFFとし)、動作状態(受信待ち状態)に電力供給を再開する(ONとする)場合、CTSとFTSにおいてのみデータ信号受信手段15Bに対する電力供給を行うノードAのタイムチャートは、図3に示すものとなる。
1周期中の受信待ち状態において、実際にデータ信号が受信されると、各ノードのデータ信号受信手段15Bがその受信処理を実行することは当然である。
従来のノードでは、1周期の全期間にわたってデータ信号受信手段15Bの動作状態(受信待ち状態)を維持する必要があったことと比較すると、本実施形態では、受信待ち状態の期間が短くなって、従来より、各ノードの各種資源(記憶容量、処理能力、電力など)を節約することができる。
(A−3)第1の実施形態の効果
本実施形態によれば、対等分散型の環境でTDMAを実現できる上、ノード(例えば、A)内の各種資源の実質的な利用効率が高まる。
(B)第2の実施形態
以下では、本実施形態が第1の実施形態と相違する点についてのみ説明する。
上記第1の実施形態の方法をそのまま厳格に適用すると、設定した経路上に存在するノード(例えば、A)は、経路上に存在しないノード(例えば、E)からデータ信号をいっさい受信できないため、データ信号の一種である経路設定要求信号の受信もできず、経路上に存在しないノードから経路上に存在するノードを含む新たな経路を設定することができなくなってしまう。この問題を解決する方法として、本実施形態で用いる方法が有効である。
本実施形態では、通信システム10上の各ノードが、1周期上に設定した所定の期間(経路設定用期間)だけ、必ず、データ信号受信手段15Bを動作状態としておくことにより、この問題を解決することを特徴とする。
この経路設定用期間は、近傍ノード間で周知させることができれば、どのように決めてもかまわないが、経路上に存在するか否かにかかわらず、近傍ノード間ではインパルス信号が送受されるため、このインパルス信号が送受されるタイミングを基準として経路設定用期間を決めるのが簡便である。
本実施形態では、インパルス信号が送信されるタイミングの前後の期間を経路設定用期間としている。
以下の説明でも、ノードG、F、A、Cのあいだに往路と復路の経路設定が行われるものと仮定する。
(B−1)第2の実施形態の構成および動作
構成上、本実施形態が第1の実施形態と相違するのは、ノードA〜Gの内部構成に関する点に限られる。
本実施形態のノードAの内部構成は例えば図5に示す通りである。その他のノードB〜Gの内部構成もこれと同じである。
図7において、当該ノードAは、インパルス信号受信手段11と、インパルス信号送信手段13と、同調判定手段14と、データ信号通信手段15と、経路設定手段18と、経路情報格納手段19と、通信タイミング計算手段20とを備えている。
このうち図1と同じ符号を付与した各構成要素11、13〜15、18,19の機能は基本的に第1の実施形態と同じなので、その詳しい説明は省略する。なお、図7には図示していないが、本実施形態のノードAが、第1の実施形態と同じ機能を持つ前記タイムスロット幅計測手段16と、角速度変更手段17を備えていてよいことは当然である。
前記通信タイミング計算手段20は、基本的に第1の実施形態の通信タイミング計算手段12と同じ機能を持つものであるが、計算部20Aと、受信タイミング格納部20Bを有する点が相違する。
受信タイミング格納部20Bは、自ノードAと位相相互作用を行うノード(すなわち、近傍のノード)の数と同数だけ生成される主としてソフトウエア的な機能体である。一例としては、図4に示したテーブルTB1のようなテーブルの1つの行(例えば、L1など)として、1つの受信タイミング格納部20Bを実現することができる。
また、前記計算部20Aは、受信タイミングに関連する計算を実行するものである。この計算には、例えば、後述の式(A1)および(A2)に基づく計算なども含む。
図7(A)は定常状態の例であるが、過渡状態における位相相互作用でも、近傍の各ノードA〜Fがインパルス信号を送受し合う点は同じである。また、過渡状態のなかでも定常状態に近い状態では、各ノードが送信するインパルス信号の位相位置も定常状態におけるものと近い。
前記計算部20Aは自ノードA内のインパルス信号受信手段11を介して、近傍のノードB〜Fが送信したインパルス信号を受信し、受信した位相位置と、自ノードAがインパルス信号を送信した位相位置との位相差に応じた時間を、受信予測時間として、各受信タイミング格納部20Bに格納する。例えば、1周期(ノードAがインパルス信号を送信した直後から、ノードAが次にインパルス信号を送信するまでの時間)中に各近傍ノードが1回だけインパルス信号を送信するものとすると、1周期中に受信できたインパルス信号の数から簡単に近傍ノードの数を求め、それと同数の受信タイミング格納部20Bを生成することができる。また、各受信タイミング格納部20Bに受信予測時間を格納することができる。
各受信タイミング格納部20Bには、ノードAの内部でのみ各近傍ノードを一意に識別するためのノード番号を付与しておくとよい。もちろん、近傍ノードのアドレスが判明した場合には、そのアドレスをノード番号として用いることもできる。
ノードAの近傍ノードが、第1の実施形態と同じノードB〜Fであるものとすると、通信タイミング計算手段20内には、5つの受信タイミング格納部20Bが生成されることになる。
そして、前記受信予測時間を受信タイミング格納部20Bに格納する動作を1周期つづけると、5つの受信タイミング格納部20Bすべてに、受信予測時間が格納される。過渡状態から定常状態に移行するとき、前記位相差は変動するのが普通なので、定常状態になったあと直ちにデータ信号の送受を開始したい場合などには、定常状態になるまで、5つの受信タイミング格納部20Bに受信予測時間を格納する動作をつづける必要がある。
定常状態になると前記位相差は安定して変動しなくなるため、特にその必要がない場合には、過渡状態では受信予測時間の格納を行わず、定常状態になったことを前記同調判定手段14が判定したあとで、位相差(受信予測時間)の計測および受信タイミング格納部20Bへの格納を開始するようにすると効率的である。
第1の実施形態では、経路上の近傍ノード以外のノードのタイムスロットでは、データ信号受信手段15Bを非動作状態としたが、本実施形態では、すべての近傍ノードについて、インパルス信号が送信される位相位置を、前記受信予測時間として管理しているため、経路上に存在するか否かにかかわらず、この受信予測時間の前後の所定の時間幅(すなわち、前記経路設定用期間)は、データ信号受信手段15Bを動作状態とすることができる。これによって、設定した経路上に存在するノード(例えば、A)は、経路上に存在しないノード(例えば、E)から、当該経路設定用期間のあいだ、経路設定要求信号を受信することができる。
ノード内の各種資源の利用効率を高めるには、前記経路設定用期間は短いほうがよいが、経路設定要求信号は確実に送受できる必要がある。したがって、1つの経路設定用期間の時間幅tw1は、次の式(A1)に基づいて決めるとよい。
tw1=2×t1+t2 …(A1)
ここで、t1は定常状態の判定値である前記微少パラメータεよりも大きな値であり、t2は、経路設定要求信号のサイズの変動範囲の最大値の情報量を受信できる最短の時間である。したがって、t2の値は、近傍ノード間のデータ伝送速度に依存して決まる。
また、各経路設定用期間のため、データ信号受信手段15Bを動作状態とする受信タイミングtm1は、次の式(A2)に基づいて決まる。
tm1=自ノードインパルス信号送信時刻+受信予測時間−t1 …(A2) すなわち、ノードAは当該式(A2)が示す受信タイミングtm1ごとに(その時点で非動作状態であれば)データ信号受信手段15Bを動作状態とし、その動作状態は、前記式(A1)が示す時間幅tw1経過後に非動作状態に戻す。なお、そのタイムスロットが経路上の近傍ノードに対応するものである場合には、時間幅tw1経過後に非動作状態に戻す必要はないことは当然である。
なお、前記式(A1)と(A2)で決まる経路設定用期間は、経路設定の前でも後でも有効である。
したがって、本実施形態におけるノードAの動作は図6(A)〜(D)にまとめることができる。
図6(A)は、1周期分のタイムスロットATS〜FTSを順番に横に並べて図示したものである。
ノードAは、図6(B)に示すように、前記式(A2)にしたがって、各ノードA〜Fがインパルス信号を送信するタイミングの近傍に経路設定用期間を設定するので、各近傍ノードは経路上にあるか否かにかかわらず、必要ならば図6(C)に示すようにこの経路設定用期間のあいだに経路設定要求信号を送信し、経路上のノードAに届けることができる。なお、ノードAから近傍ノードへ経路設定用信号を届ける場合、その近傍ノードが経路上にあるか否かにかかわらず、その送信タイミングは、ノードAのタイムスロットATSの先頭に設定された経路設定用期間の一部と重なる。
ここでは、ノードA自身も含め、各ノードは自身のタイムスロットのなかで経路設定要求信号の送信を行っている。例えば、ノードBはタイムスロットBTS内の前記時間幅tw1に対応する位相位置で、経路設定要求信号の送信を行う。この経路設定要求信号は、ノードBが当初の送信元として送信したものであっても、中継のために送信したものであってもよいことは当然である。
ノードG、F、A、Cのあいだに上述した往路と復路の経路が設定されたあと、ノードAの受信タイミングは、図6(D)に示す通りとなる。
なお、経路が設定されたときには、該当する前記受信タイミング格納部20Bに所定の情報(設定識別子)を登録し、経路設定が行われたことを示すようにするとよい。
この場合、設定識別子が登録された受信タイミングでは、インパルス信号の前後だけでなく、例えば、図6(D)のタイムスロットCTSやFTSのように、次のインパルス信号を受信するまでの期間(ほぼ1タイムスロット)、受信タイミング格納部20Bの格納内容に基づいて、データ信号受信手段15Bが動作状態とされる。
(B−2)第2の実施形態の効果
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果とほぼ同等な効果を得ることができる。
加えて、本実施形態では、設定された経路上に存在しないノード(例えば、E)から、経路上に存在するノード(例えば、A)へ経路設定要求信号を届けること等が可能となるため、経路設定の自由度が高まり、柔軟性が高い。
(C)他の実施形態
上記第1、第2の実施形態では、主として近傍のノードの数が6つの場合について説明したが、近傍のノードの数が6つより少なくてもよく、多くてもよいことは当然である。
なお、図10では、円形のカバーエリアを示したが、カバーエリアの形状が必ずしも円形である必要がないことは当然である。カバーエリアの形状は、主として、各ノードが搭載し、無線信号(インパルス信号やデータ信号)の送信や受信に使用するアンテナの指向性によって決まる。
また、上記第1の実施形態では、経路の設定を往路方向と復路方向について行ったが、いずれか一方の方向についてのみ行うことも可能である。
例えば、通信アプリケーションなどの種類によっては、ユーザデータの双方向の伝送や、ユーザデータの送達確認のための制御信号のやり取りも省略できる場合があるため、このような通信アプリケーションを使用する場合などには、例えば、往路方向についてのみ経路設定を行うこと等も可能である。
さらに、図4の経路情報テーブルTB1の構成は変更することが可能である。
例えば、受信タイミングとしては、上述した自ノードAのタイムスロットATSから見て何番目であるかを示す値以外の情報を用いることもできる。定常状態では、各タイムスロットの時間幅(インパルス信号の間隔)は安定しているから、例えば、自ノードAがインパルス信号を送信してからそのインパルス信号(またはタイムスロット)までの時間を利用することもできる。
また、当初送信元は省略することも可能である。該当するタイムスロット(例えば、CTS)にデータ信号の送信を行うのは、該当するノード(例えば、C)だけであるから、経路情報テーブルTB1から当初送信元を省略しても、矛盾なく機能する可能性が高い。
なお、上記第2の実施形態では、インパルス信号の前後に経路設定用期間を設定するようにしたが、経路設定用期間をこれ以外の位相位置に設定できることは、すでに説明した通りである。
以上の説明で、ハードウエア的に実現した構成要素の大部分はソフトウエア的に実現することが可能であり、ソフトウエア的に実現した構成要素のほとんどすべては、ハードウエア的に実現することが可能である。
10…通信システム、11…インパルス信号受信手段、12、20…通信タイミング計算手段、13…インパルス信号送信手段、14…同調判定手段、15…データ信号通信手段、15A…データ信号送信手段、15B…データ信号受信手段、16…タイムスロット幅計測手段、17…角速度変更手段、18…経路設定手段、19…経路情報格納手段、20A…計算部、20B…受信タイミング格納部、A〜G…ノード、RG1,RE1,RF1,RA1,RB1、RD1…経路設定要求信号。