JP4196810B2 - 高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車や各種産業機械などの構造部品に用いられる、加工性と溶接性に優れる高強度冷延鋼板およびその製造方法に関する。
以下、自動車用鋼板を例にとって本発明を説明する。
車体の軽量化ならびに衝突特性を向上させるため、引張強度が700MPaを超える高強度薄鋼板の自動車部品への適用が進んでいる。例えば、衝突時にキャビンの変形を抑制するために使用されるバンパー部品やインパクトビーム等の補強部品には、高強度薄鋼板が採用されている。近年は、さらなる軽量化を達成するため、高強度薄鋼板を適用する部品の種類の拡大が積極的に検討されており、シート部品やピラー類等の車体部品に対しても採用されるようになってきた。このように適用部品の範囲が拡大すると、部品成形時に厳しい加工が行われる場合や部品組み付け時に溶接が施される場合も生じてくる。したがって、強度を確保するだけでなく、加工性や溶接性にも優れた高強度薄鋼板が求められている。
しかしながら、一般に、高強度になると延性が低下し、加工性が劣化するだけでなく、合金元素を多量に含むことにより、溶接性も劣化する。
また、自動車の衝突特性を向上させるといっても、衝突時の運転者および同乗者の安全性、つまり衝突安全性がより重視されるようになっており、単に高強度であるだけでなく、衝突時の変形が少ない材料への要求が高まっている。従来にあっても、衝突時の変形を少なくするためには、材料の降伏点を高めればよいことが知られている。
しかし、従来の高強度鋼板は降伏比が低いという問題があった。
ところで、加工性に優れた高強度薄鋼板として、フェライトを主相とし、マルテンサイトやベイナイト等の低温変態相を第二相とする複合組織鋼板が提案されている。例えば、特許文献1には、フェライトを主相とする複合組織を有し、引張強度が80kgf/mm2以上で降伏比が60%以下の溶融めっき鋼板が開示されている。この鋼板は、引張強度-伸びバランス(TS×El)が17000〜25000MPa・%と優れた加工性を示している。しかしながら、このように、硬質な低温変態相を利用した高強度薄鋼板は、硬質相と軟質相の界面で亀裂が形成しやすくなるので、曲げ性やいわゆる伸びフランジ性で評価する加工性が十分でない。また、溶接時に熱影響部の硬質相が軟化するので、溶接性も十分でないという問題がある。
亀裂発生を抑制するためには、硬度差が小さい均一組織にする必要があり、また、溶接時にHAZ軟化し難くするためには、硬質相の利用をできるだけ抑える必要がある。したがって、加工性と溶接性に優れた高強度薄鋼板を製造するために、硬質相を利用する変態強化でない析出強化を積極的に活用した鋼板が提案されている。
特許文献2には、引張強度が45kg/mm2で降伏比が80%以上の非複合組織の高強度高降伏比型溶融亜鉛めっき鋼板が開示されている。この鋼板は、炭窒化物形成元素であるTiとNbを添加し、連続焼鈍中にフェライトとオーステナイト相の二相組織にすることによって、引張強度が700MPa以上で降伏比が70%以上の高強度を示している。しかしながら、TiとNbを添加した鋼を二相組織となる温度で焼鈍すると、バンド組織となり機械特性のばらつきが大きくなるという問題がある。
特許文献3には、粒径が10nm未満の微細析出物が分散したフェライト単相組織を有し、引張強度が550MPa以上の薄鋼板が開示されている。この鋼板は、熱間圧延条件を最適化することにより、700MPa以上の引張強度を確保した上、引張強度-伸びバランス(TS×El)が17000MPa・%と優れた加工性を示している。
しかしながら、熱延鋼板に比べて薄物が可能で、表面粗度と板厚制御性に優れる冷延鋼板の製造プロセスを考慮すると、多量の炭窒化物形成元素を添加すると再結晶温度の上昇が起こり、高温焼鈍が必要となるために、析出物の粗大化や冷延焼鈍板の組織が粗粒となり加工性がかえって劣化するという問題がある。
特許文献4には、析出強化と変態強化を併せて利用した低降伏比高強度熱延鋼板が開示されている。しかしながら、硬質なマルテンサイト相を利用しているので、曲げ性や穴フランジ性などの加工性が不十分であるだけでなく、降伏点が低いという問題がある。
特開平4-236741号公報 特開平10-273754号公報 特開2002-322539号公報 特開平5-179396号公報
本発明によれば、引張強度が700MPa以上、降伏比が0.7以上の加工性と溶接性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法が提供される。なお、本発明にかかる鋼板では、加工性の目標値は、Elが15%以上、最小曲げ半径が0.5t以下とする。したがて、特にことわりがない限り、本明細書における加工性はそのような物性によって評価される特性を云う。
本発明者らは、上記の特性を備えた鋼板を提供すべく、鋼組成、鋼組織、製造条件のそれぞれの観点から検討を重ねた。その結果、鋼組成と製造条件を適正範囲に調整することによって、フェライトおよびベイナイトの平均粒径が1〜4μmであり、フェライトとベイナイトを面積率で合計80%以上含み、さらに上記フェライトとベイナイト中に粒径が1〜15nmの析出物を100個/μm2以上含む金属組織とすることができ、これにより、強度レベルを低下させることなく、加工性と溶接性に優れた高強度薄鋼板が得られることを見出した。
ここに、本発明は、鋼組成が、質量%で、C:0.06〜0.16%、Si:0.005〜1.0%、Mn:1.8〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下、TiおよびNbの1種または2種を合計で0.05〜0.25%含有し、残部が鉄および不純物からなり、鋼組織が、面積率で、フェライトおよびベイナイトを合計で80%以上含有し、前記フェライトおよびベイナイトの平均粒径が1〜4μmであり、前記フェライトおよびベイナイトの粒内に粒径が1〜15nmの析出物を100個/μm2以上含有し、引張強度が700MPa以上、降伏比が0.7以上の機械特性を備えることを特徴とする高強度冷延鋼板である。
また、別の面からは、本発明は、下記(A)〜(C)の各工程を備えることを特徴とする高強度冷延鋼板の製造方法である。
(A)上記の鋼組成を備える鋼材に、仕上温度800℃〜950℃、巻取温度500〜700℃として熱間圧延を施す熱間圧延工程。
(B)(A)の工程により得られる熱延鋼板に冷間圧延を施す冷間圧延工程。
(C)(B)の工程により得られる冷延鋼板をオーステナイト単相組織の状態に10秒以上300秒以下保時し、ついでオーステナイト単相状態から、フェライトの析出開始温度が500℃〜700℃となる冷却条件にて、300〜500℃の冷却停止温度域まで冷却し、その後300〜500℃の温度範囲に30秒から10分保持する連続焼鈍工程。
本発明によれば、析出強化鋼板の持つ長所を損なうことなく、高強度化することが可能となり、引張強度が700MPa以上、降伏比が0.7以上の機械特性を有することを特徴とする加工性と溶接性に優れた高強度冷延鋼板を製造することが提供できるので、自動車の車体部品の軽量化や衝突安全性の向上に寄与する効果は顕著である。
次に、本発明で規定した諸条件について説明する。
まず,本発明の高強度冷延鋼板の鋼組成の限定理由について説明する。なお、以下において、特に断らないかぎり鋼組成を示す%は質量%を表す。
(C:0.06〜0.16%)
Cはオーステナイト安定化元素であり、硬質相を生成させ鋼を強化する変態組織強化に有効に作用する。引張強度700MPa以上を確保するために、少なくとも0.06%以上含有させる。ただし、0.16%超含有させると溶接性が劣化する。このため、C量を0.06〜0.16%の範囲に限定した。なお、好ましい下限は0.08%、上限は0.12%である。
(Si:0.005〜1.0%)
Siは強度向上に寄与する元素であり、本発明では0.005%以上含有させる。ただし、1.0%超含有させるとスポット溶接した際のナゲット部が硬化し靱性が劣化する。このため、Si量を0.005〜1.0%とした。なお、好ましい下限は0.2%、上限は0.5%である。
(Mn:1.8〜3.0%)
Mnはオーステナイト安定化元素であり、Ac3、Ar1変態点を低下させる。連続焼鈍中のオーステナイト単相域焼鈍を可能にするために、少なくとも1.8%以上含有させる。ただし、3.0%超含有させると硬質相主体の組織となるために加工性が劣化する。このため、Mn量を1.8〜3.0%とした。なお、好ましい下限は2.0%、上限は2.7%である。
(P:0.02%以下)
Pは不可避的不純物であり、過多に含有させると不均一な組織となり加工性が劣化する。このため、P量を0.02%以下とした。なお、好ましくは0.005〜0.015%である。
(S:0.01%以下)
Sは鋼中で硫化物として存在し、応力集中源となるために曲げ性等の加工性が劣化する。このため、S量をできるだけ低減させるのが望ましいが、0.01%以下であれば、本発明で目的とするような高強度材でも加工性に悪影響を及ぼさない。なお、好ましくは0.003%以下である。
(Al:0.1%以下)
Alは鋼を脱酸させるために添加される元素であり、Ti等の炭窒化物形成元素の歩留まりを向上させるのに有効に作用する。ただし、0.1%超含有させると酸化物系介在物が増加するために表面性状や加工性が劣化する。このため、Al量を0.1%以下とした。なお,好ましくは0.02〜0.06%である。
(N:0.01%以下)
Nは不可避的不純物であり,過多に含有させると粗大な窒化物が析出するため加工性が劣化する。このため、N量をできるだけ低減させるのが望ましいが、0.01%以下であれば、本発明で目的とするような高強度材でも加工性に悪影響を及ぼさない。このため,N量を0.01%以下とした。なお、好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.003%以下である。
(Ti、Nb:1種または2種を合計で0.05〜0.25%)
これらの元素は本発明で重要な元素の一つであり、炭化物を形成させ鋼を強化する析出強化ならびに結晶粒微細化に有効に作用する。微量添加により強度あるいは伸びが著しく上昇して、引張特性のばらつきを低減させるために、少なくとも合計で0.05%以上含有させる。ただし、合計で0.25%超含有させると、鋼中の析出物が粗大化するため曲げ性などの加工性が劣化するだけでなく、700MPa以上の引張強度を確保するのが困難となる。なお、好ましい下限は0.06%、上限は0.20%である。
なお、上記した成分以外の残部はFeおよび不純物である。不純物としては、例えば、O:0.006%以下、Cr:0.05%以下、Mo:0.05%以下が許容できる。
次に,本発明の高強度冷延鋼板の鋼組織の限定理由について説明する。なお、以下において、特にことわらないかぎり、鋼組織を示す%は面積率を表す。
上記した組成を有する本発明の高強度冷延鋼板は、フェライトおよびベイナイトを主相とし、フェライトおよびベイナイトの平均粒径が1μm〜4μmであり、フェライトおよびベイナイトを面積率で合計80%以上含む組織である。さらに、フェライトおよびベイナイト中に粒径が1〜15nmの析出物が100個/μm2以上の密度で分散する。
本発明にかかる鋼板の組織は、フェライトおよびベイナイトの平均粒径を1〜4μmとする。フェライトおよびベイナイトの平均粒径を4μm以下にすることにより、加工性を劣化することなく高強度を確保することが可能となる。ただし、平均粒径が1μm未満になると加工性が劣化する。このため、フェライトおよびベイナイトの平均粒径を1〜4μmとした。なお、引張強度700MPa以上を確保するためには、フェライトおよびベイナイトの平均粒径を1〜3μmとするのが好ましい。
フェライトおよびベイナイトの平均粒径を1〜4μm、好ましくは1〜3μmとするためには、Ti、Nb、Mn等の合金元素を前述のように適量含有するとともに、後述する熱間圧延条件、焼鈍、および焼鈍後冷却条件を適正に制御することが好ましい。
また、本発明鋼板の組織は面積率で評価した分率で、フェライトおよびベイナイトを合計80%以上含有する。マルテンサイトおよび残留オーステナイトを合計20%未満、好ましくは15%以下含有してもよい。マルテンサイトおよび残留オーステナイトを合計20%以上含有すると曲げ性等の加工性が低下するだけでなく、降伏比が低くなり、十分な降伏強度が得られない。フェライトおよびベイナイトを合計80%以上含有する組織とすることにより、加工性の劣化を抑制して700MPa以上の引張強度と0.7以上の降伏比の機械特性を実現することが可能となる。なお、さらに良好な加工性が要求されるときは、フェライトを50%以上の分率で含有する組織とするのが好ましい。
また、本発明鋼板の組織は、フェライトおよびベイナイトの粒内中に粒径が1〜15nmの析出物が100個/μm2以上の密度で分散する。粒径が15nm超の析出物は強化に有効に作用しない。また、粒径が1〜15nmの析出物が100個/μm2 未満では強化量が小さくなり、所望の強度が得られない。
このときの析出物はTiおよび/またはNbの炭窒化物であり、熱間圧延後の巻取り、ならびに、連続焼鈍時の加熱、冷却に由来して析出するものであり、硬質で微細な析出物であるために、TS、YS等の機械特性の上昇に大きく寄与するものである。
フェライトおよびベイナイトの粒内に粒径が1〜15nmの析出物を100個/μm2以上の密度で分散させるためには、Ti、Nb等の合金元素を適量含有するとともに、後述する熱間圧延条件、焼鈍、および焼鈍後冷却条件を適正に制御することが好ましい。
次に,本発明の高強度冷延鋼板の製造方法の限定理由について説明する。
上記した成分の溶鋼を転炉、電気炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法でスラブ等の鋼素材とするのが望ましい。なお、連続鋳造法に代えて、造塊法、薄スラブ鋳造法などを採用してもよい。この鋼素材に熱間圧延を施し熱間圧延鋼板とする。熱間圧延は、鋳造された鋼素材を室温まで冷却せず温片のまま加熱炉に装入して加熱した後に圧延する直送圧延、あるいは、わずかの保熱を行った後、直ちに圧延する直接圧延を行うか、あるいは、一旦、鋼素材を冷却した後に再加熱して圧延を行ってもよい。
(鋼素材の再加熱温度:1050〜1300℃)
再加熱する場合には、加工性を劣化させないためにTiCやNbCを再固溶させる必要がある。このような効果は、上記した組成の本発明鋼板に対して、1050℃以上に加熱することで認められるが、1300℃以上に加熱しても効果が飽和するだけでなく、スケールロスが増加する。このため、このときの鋼素材の再加熱温度を好ましくは1050℃〜1300℃とした。また、前記再固溶を確実に行うためには加熱時間を10分以上とすることが好ましく、過度のスケールロスを抑制するために3時間以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、30分以上2時間以下である。
もちろん、直送圧延または直接圧延を行う場合、TiC、NbCが固溶している限り、そのまま圧延を開始すればよいが、その場合にも圧延開始温度としては、好ましくは1050〜1300℃とする。
(仕上げ圧延終了温度800〜950℃)
本発明では、仕上げ圧延終了温度を800℃〜950℃の範囲とする。仕上げ圧延終了温度が800℃未満では、圧延時の変形抵抗が大きく、組織が不均一なバンド組織となり、連続焼鈍後の加工性が劣化する。一方、950℃を超えると、その後の冷却で粒成長が生じ、均一微細な組織が得られない。
(巻取温度:500〜700℃)
本発明では、巻取温度を500〜700℃の範囲とする。巻取温度が500℃未満では、硬質なベイナイトやマルテンサイトが生成し、その後の冷間圧延が困難となる。また、巻取温度が700℃を超えると、炭化物が粗大化して冷延焼鈍後の強度確保が困難になるとともに、加工性が劣化する。
熱延鋼板は通常の方法で酸洗を施された後に冷間圧延が行われ、冷延鋼板とされる。冷延焼鈍鋼板の組織を微細化するためには、冷間圧延の圧下率は40%以上とするのが好ましい。
(冷延鋼板の加熱温度:冷延鋼板がオーステナイト単相組織となる温度以上)
冷延鋼板の焼鈍は連続焼鈍とし、冷延鋼板がオーステナイト単相組織となる温度以上(オーステナイト単相化温度)になるまで加熱する。一旦、冷延鋼板をオーステナイト単相組織にすることにより、均一微細な組織を有する冷延焼鈍鋼板となる。加熱温度がオーステナイト単相化温度未満では、冷延組織の影響が残りバンド組織となり加工性が著しく劣化する。なお、オーステナイト単相化の確認は、熱膨張曲線の解析により行うことができる。
(冷延鋼板の焼鈍条件:オーステナイト単相状態で10秒以上300秒以下保持する)
オーステナイト単相化温度以上の範囲に加熱した後、オーステナイト単相組織の状態に10秒以上保時する。保持時間が10秒未満であれば、置換型元素であるMn等の偏析が残存し、冷延焼鈍鋼板の組織が不均一となる。このため、冷延鋼板の焼鈍条件をオーステナイト単相状態で10秒以上保持するとした。なお、長時間のオーステナイト単相組織の保持はオーステナイト粒径の粗大化を起こし、微細な組織を有する冷延焼鈍鋼板が得られなくするので、300秒以下保持するとした。
(冷延鋼板の冷却条件:フェライトの析出開始500〜700℃)
冷延鋼板は、次いで、オーステナイト単相状態から、フェライトの析出開始が500℃〜700℃となる冷却条件で、300〜500℃の冷却停止温度域まで冷却する。冷却条件の決定は熱膨張曲線の解析により行う。フェライトが700℃超で析出開始すると、結晶粒の粗大化や軟質なフェライト相が多量に生成するため、700MPa以上の引張強度を確保するのが困難となるだけでなく、冷却速度が遅い場合には、フェライトだけでなくパーライトが生成し易くなり加工性が劣化する。
本発明では、上述のような冷却速度で、300〜500℃の冷却停止温度域まで冷却する。冷却停止温度をこのような狭い範囲に制御することにより、マルテンサイトの生成を抑制することができ、冷延焼鈍鋼板の降伏比が高くなる。なお、マルテンサイトおよび残留オーステナイトの面積率を合計20%未満にするためには、冷却停止温度を320〜450℃とするのが好ましい。
冷却停止温度まで連続冷却した後、300〜500℃の温度範囲に30秒から10分保持し、その後に室温まで冷却する。オーステナイト相を分解し、ベイナイト相を生成するためには、このときの保持時間は30秒以上とする。ただし、10分超保持することはエネルギーの無駄や生産性の低下につながる。
このように、鋼素材成分の調整、熱間圧延と冷延後焼鈍条件の適正化により、フェライトおよびベイナイトを主相とする均一微細な組織の冷延鋼板を得ることができ、引張強度700MPa以上、降伏比0.7以上、Elが15%以上、最小曲げ半径が0.5t以下となる加工性に優れた高強度冷延鋼板が得られる。
本発明にかかる高強度冷延鋼板は、降伏比が高いため、バンパー部品、インパクトビームなどの補強用の自動車用部品として、されにはシート部品やピラー等の部品としても用いられ、優れた衝突安全性の効果を発揮できるが、本発明の場合、特に、溶接性が改善されることから、従来高強度鋼板の適用が行われていないテーラードブランク溶接が必要となる部品への適用も可能となる。さらに、自動車以外のプレス成形が必要な機械の構造部品としてもその適用を可能とするなど、高強度鋼板の適用範囲をこれまでより大きく拡大するという優れた効果が発揮される。
本発明の実施例を以下に示す。
本例では、表1に示す鋼組成を有する鋼片を1250℃に加熱し、表2に示す条件で熱間圧延をした後、巻取を行い、その後、冷却を行って熱延鋼板(板厚3.5mm)とした。次いで、熱延鋼板に酸洗、そして1.2mmまでの冷間圧延を施し冷延鋼板とした。その後、冷延鋼板を10℃/秒の加熱速度で表2に示す温度まで加熱し、60秒間保持して、焼鈍後、3℃/秒で660℃まで徐冷却し、660℃から表2に示す冷却停止温度まで60℃/秒で冷却し、当該温度で180秒保持した。
表1に示す成分を有する鋼片の各種熱処理条件におけるオーステナイト単相化の確認とフェライト析出開始温度を測定するとともに、得られた冷延焼鈍鋼板について、組織観察、引張試験、曲げ試験を実施した。このときの試験方法を下記に示す。
(実験方法)
(1)オーステナイト単相化の確認とフェライト析出開始温度を測定
各種冷延鋼板から試験片を採取し、図1に示す条件で熱処理を行った際の膨張率変化を解析することによって、オーステナイト単相化の確認とフェライト析出開始温度を測定した。
(2)組織観察
各種冷延焼鈍鋼板の圧延方向および圧延方向と圧延直角方向から試験片を採取し、圧延方向断面、圧延方向と直角方向断面の組織を光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡で撮影し、画像解析により各相の分率および各相の粒径を測定した。粒径の測定は、圧延方向断面および圧延方向と直角方向断面で板厚の全厚について、JIS G 0552の交差線分法の規定に準拠して測定し、それらの平均値で表した。
析出物粒径と密度の測定は、電子顕微鏡のレプリカ法を採用し、各試料につき倍率10万倍で5視野を撮影し、円換算粒径で算出し、粒径が1〜15nmの析出物の全個数を測定し、その個数を撮影視野の面積で割り、規格化することにより密度を算出した。
(3)引張試験
各種冷延焼鈍鋼板の圧延方向に直角方向からJIS5号引張試験片を採取し、引張特性(降伏強度YS、引張強度TS、伸びEl)を調査した。
(4)曲げ試験
各種冷延焼鈍鋼板から圧延方向に直角方向を長手方向とするJIS3号曲げ試験片を採取し、JIS Z 2248の規定に準拠したVブロック法により、曲げ性を調査した。その際、頂角90°の押し金具をバリが内側となるように押し込んだ。試験後の評価は目視にて調査し、試験後に割れが認められない押し金具の最小半径を板厚で割り、規格化することにより最小曲げ半径を算出した。
これらの結果を表3に示す。
本発明例の鋼板は、いずれもフェライトおよびベイナイトの平均粒径が1〜4μmであり、フェライトとベイナイトを面積率で合計80%以上含み、さらに上記フェライトとベイナイト中に粒径が1〜15nmの析出物を100個/μm2以上含む組織を有し、引張強度が700MPa以上、降伏比が0.7以上、Elが15%以上、最小曲げ半径が0.5t以下の機械特性を有する加工性と溶接性に優れた高強度冷延鋼板となっている。さらに、これらの鋼板は、別途調査したスポット溶接部の強度も良好であった。
これに対し、比較例の鋼板No.1は、鋼組成、つまり化学成分が本発明範囲から外れており、ベイナイト主体の組織となるために加工性が悪い。また、鋼板No2は、化学成分と製造条件が本発明の範囲から外れており、硬質相がマルテンサイト相主体となるために降伏比が低い。また、鋼板No.3は、化学成分が本発明範囲から外れており、ベイナイト主体の組織となるために加工性が悪い。また、鋼板No.4、7、10は、化学成分が本発明範囲から外れており、鋼板No.11、15は、化学成分および製造条件が本発明範囲から外れており、所定の強度が確保できない。
また、鋼板No.17は、化学成分と製造条件が本発明範囲から外れており、マルテンサイト相の面積率が大きいために加工性が悪い。鋼板No.20は、製造条件が本発明範囲から外れており、バンド組織となるために加工性い。鋼板No.22は、製造条件が本発明範囲から外れており、硬質相がマルテンサイト相主体となるために降伏比が低い。鋼板No.23は、化学成分が本発明範囲から外れており、溶接した際にナゲット部が硬化し靱性が劣化する。鋼板No.24は、化学成分と製造条件が本発明範囲から外れており、バンド組織となるために加工性が悪い。
鋼板No.18とNo.2の化学成分と機械特性を有する複合組織鋼板のテーラードブランク特性について調査した。板厚1.6mmの母材をプラズマ溶接による突き合わせ溶接を行った試験片を作製し、その試験片に対して球頭張り出しを行い、溶接しない母材の成形高さと溶接材料の成形高さの差、および破断位置により評価した。
その際の溶接線は、図2に示すように試験片1の長手方向に対して溶接線2が直角方向となる方向とした。領域3はHAZを示す。
溶接は、下記に示す条件で行った。
(溶接条件)
入熱条件:150A
ノズル径:直径φ=2.8mm
溶接速度:1m/min
シールドガス:アルゴン+10%H2、10L/min
プラズマガス:0.5L/min
表4に上記試験の結果を示す。本発明例の鋼板は、球頭張り出し高さの溶接の有無による差が小さく、破断位置が母材となっており、テーラードブランク特性に優れている。
これに対し、比較例の鋼板No.2は、球頭張り出し高さの溶接の有無による差が大きく、破断位置がHAZ部となっており、HAZ軟化による破断が発生している。
Figure 0004196810
Figure 0004196810
Figure 0004196810
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冷間圧延の後の熱処理におけるオーステナイト単相化の確認とフェライト析出開始温度を測定するための熱処理条件を示した線図である。 テーラードブランク特性を調査するための試験片を示した模式説明図である。

Claims (2)

  1. 鋼組成が、質量%で、C:0.06〜0.16%、Si:0.005〜1.0%、Mn:1.8〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下、TiおよびNbの1種または2種を合計で0.05〜0.25%含有し、残部が鉄および不純物からなり、鋼組織が、面積率で、フェライトおよびベイナイトを合計で80%以上含有し、前記フェライトおよびベイナイトの平均粒径が1〜4μmであり、前記フェライトおよびベイナイトの粒内に粒径が1〜15nmの析出物を100個/μm2以上含有し、引張強度が700MPa以上、降伏比が0.7以上の機械特性を備えることを特徴とする高強度冷延鋼板。
  2. 下記(A)〜(C)の各工程を備えることを特徴とする高強度冷延鋼板の製造方法:
    (A)請求項1に記載の鋼組成を備える鋼材に、仕上温度800℃〜950℃、巻取温度500〜700℃として熱間圧延を施す熱間圧延工程;
    (B)(A)の工程により得られる熱延鋼板に冷間圧延を施す冷間圧延工程;
    (C)(B)の工程により得られる冷延鋼板をオーステナイト単相組織の状態に10秒以上300秒以下保時し、次いでオーステナイト単相状態から、フェライトの析出開始温度が500℃〜700℃となる冷却条件にて、300〜500℃の冷却停止温度域まで冷却し、その後300〜500℃の温度範囲に30秒から10分保持する連続焼鈍工程。
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