JP4196672B2 - 液晶表示装置および電子機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置および電子機器に関し、特に反射モードと透過モードの双方で表示を行う半透過反射型の液晶表示装置において、高輝度、高コントラスト、広視野角の表示が得られる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
明るい場所では反射型液晶表示装置と同様に外光を利用し、暗い場所ではバックライト等の内部光源により表示を視認可能にした液晶表示装置が提案されている。つまり、この液晶表示装置は、反射型と透過型を兼ね備えた表示方式を採用しており、周囲の明るさに応じて反射モード、透過モードのいずれかの表示方式に切り替えることで消費電力を低減しつつ周囲が暗い場合でも明瞭な表示を行うことができ、携帯機器の表示部に好適なものである。以下、本明細書では、この種の液晶表示装置のことを「半透過反射型液晶表示装置」という。
【0003】
このような半透過反射型液晶表示装置としては、上基板と下基板との間に液晶層が挟持されるとともに、例えばアルミニウム等の金属膜に光透過用の開口部を形成した反射膜を下基板の内面に備え、この反射膜を半透過反射板として機能させる液晶表示装置が提案されている。この場合、反射モードでは上基板側から入射した外光が、液晶層を通過した後に下基板の内面の反射膜で反射され、再び液晶層を通過して上基板側から出射され、表示に寄与する。一方、透過モードでは下基板側から入射したバックライトからの光が、反射膜の開口部から液晶層を通過した後、上基板側から外部に出射され、表示に寄与する。したがって、反射膜の形成領域のうち、開口部が形成された領域が透過表示領域、その他の領域が反射表示領域となる。
【0004】
ところが、従来の半透過反射型液晶装置には、透過表示での視角が狭いという課題があった。これは、視差が生じないよう液晶セルの内面に半透過反射板を設けている関係で、観察者側に備えた1枚の偏光板だけで反射表示を行わなければならないという制約があり、光学設計の自由度が小さいためである。そこで、この課題を解決するために、特許文献1では、垂直配向液晶を用いる新しい半透過反射型液晶表示装置が提案されている。その特徴は、以下の3点である。
(1)誘電異方性が負の液晶を基板に対して垂直に配向させ、電圧印加によってこれを倒す「VA(Vertical Alignment)モード」を採用している点。
(2)透過表示領域と反射表示領域の液晶層厚(セルギャップ)が異なる「マルチギャップ構造」を採用している点。
(3)透過表示領域を正八角形又は円とし、この領域内で液晶が等方的に倒れるように対向基板上の透過表示領域の中央に突起を設けている点。すなわち、「配向分割構造」を採用している点。
一方、透過型カラー液晶装置では、垂直配向モードを採用し様々な形状の電極スリット,突起等の配向制御手段を設けることによりマルチドメイン化し、広視野角を実現する方法が知られている(例えば、特許文献2〜4)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−350853号公報
【特許文献2】
特開平7−28063号公報
【特許文献3】
特開平11−258606号公報
【特許文献4】
特開2001−154200号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、特許文献1の液晶表示装置においては、透過表示領域の中央に突起を設け、液晶の配向方向を制御している。ところで、現在携帯機器等への応用分野においては、より明るく、コントラストの高い表示が求められており、反射表示よりも透過表示を重視する傾向が強まっている。このような事情の下、一つのドット内で透過表示領域の占める面積が大きくなってきている。すると、上記特許文献1に開示された構成のように、透過表示領域の中央に突起を設けただけでは配向制御が完全に行われない恐れがあり、ディスクリネーションと呼ばれる配向乱れが生じ、これが残像等の表示不良の原因になるという問題がある。
また、上記特許文献2〜4に示すように、電極スリットや突起での配向制御ではその部分の液晶を完全に倒すことが難しいため、透過率が低くなるという問題があった。これは、配向制御手段を複雑にしてスリットや突起の占める面積を多くすれば一層その影響は強くなる。また、電極スリットによる配向制御においてはスリットの加工が難しく断線等の問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、半透過反射型液晶表示装置において、残像等の表示不良が抑えられ、さらには高輝度化、高コントラスト化が可能な液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、一対の基板間に誘電異方性が負の液晶を有した液晶層を挟持してなり、略矩形の1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられ、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板と前記液晶層との間には、前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層の層厚を異ならせる液晶層厚調整層が少なくとも前記反射表示領域に設けられた液晶表示装置であって、前記反射表示領域に対応して設けられた前記液晶層厚調整層は、前記1つのドット領域内において十字状に交差した第1の領域と第2の領域とに設けられ、該第1の領域及び該記第2の領域は前記略矩形のドット領域の隣接した2辺のそれぞれに沿う方向に延びており、前記反射表示領域と前記透過表示領域との間には、前記ドット領域の内側に向けて屈曲した4つの傾斜面を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の液晶表示装置は、半透過反射型液晶表示装置に垂直配向モードの液晶を組み合わせたものである。近年、半透過反射型液晶表示装置において、反射、透過両表示モードにおけるリタデーション差によるコントラスト低下の問題を解消するために、例えば下基板上の反射表示領域内に所定の厚みを有する絶縁膜を液晶層側に向けて突出するように形成することによって、反射表示領域と透過表示領域とで液晶層の厚みを変えた構造のものが提案されている。この種の液晶表示装置に関する発明は本出願人も既に多数出願している。この構成によれば、絶縁膜(本明細書では、この種の機能を果たす絶縁膜のことを「液晶層厚調整層」と言う)の存在によって反射表示領域の液晶層の厚みを透過表示領域の液晶層の厚みよりも小さくすることができるので、反射表示領域におけるリタデーションと透過表示領域におけるリタデーションを充分に近づける、もしくは略等しくすることができ、これによりコントラストの向上を図ることができる。
【0010】
そこで、本発明者らは、上記の絶縁膜を備えた液晶表示装置に垂直配向モードの液晶層を組み合わせることによって、垂直配向モードの液晶における電界印加時の配向方向を制御できることを見い出した。すなわち、垂直配向モードを採用した場合には一般に誘電異方性が負の液晶(ネガ型液晶)を用いるが、初期配向状態で液晶分子が基板面に対して垂直に立っているものを、電界印加により倒すわけであるから、何も工夫をしなければ(プレチルトが付与されていなければ)液晶分子の倒れる方向を制御できず、配向乱れ(ディスクリネーション)が生じて表示不良が生じ、表示品位を落としてしまう。そのため、垂直配向モードの採用にあたっては、電界印加時の液晶分子の配向方向の制御が重要な要素となる。そこで、上記の液晶層厚調整層を備えた液晶表示装置においては、液晶層厚調整層が液晶層に向けて突出し、しかも液晶層厚調整層が自身の膜厚が連続的に変化するような傾斜面を有しているので、液晶分子が傾斜面に対して垂直に立ち、傾斜面の角度に応じたプレチルトを持つ。
【0011】
しかしながら、このような傾斜面による配向制御力は傾斜面近傍にしか及ばず、仮に傾斜面をドット領域の中央部にのみ設けた場合にはドット領域周縁部に配向制御力の十分に及ばない領域が生じる。そこで、本発明では、この液晶層厚調整層をドット領域の中央部に十字状に設け、液晶分子に配向制御力を付与する傾斜面をドット領域の周縁部にまで配置した。このような構成とすることで、透過表示領域全域でディスクリネーションのない高コントラストな表示が可能となる。また、液晶層厚調整層の第1の領域と第2の領域とをドット中央部で十字状に交差させるようにすることで、電圧印加時に透過表示領域を上下左右で対称な4つのドメインに分割でき(即ち、配向分割構造を実現でき)、広視野角化を図ることができる。さらに、上記構成では、特許文献2〜4に開示されるような電極スリットや突起等を設けていないため、開口率が高く高輝度な表示が可能となる。
【0012】
また、本発明の液晶表示装置は、一対の基板間に誘電異方性が負の液晶を有した液晶層を挟持してなり、略矩形の1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられ、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板と前記液晶層との間には、前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層の層厚を異ならせる液晶層厚調整層が少なくとも前記反射表示領域に設けられた液晶表示装置であって、前記反射表示領域に対応して設けられた前記液晶層厚調整層は、前記1つのドット領域内においてX字状に交差した第1の領域と第2の領域とに設けられ、前記反射表示領域と前記透過表示領域との間には、前記ドット領域の内側に向けて屈曲した4つの傾斜面を備えていることを特徴とする。
また、上記において、本発明の液晶表示装置は、前記第1の領域は前記ドット領域の一方の対角線に沿う方向に設けられており、前記第2の領域は前記ドット領域の他方の対角線に沿う方向に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本構成では、液晶層厚調整層をX字形状としているため、1ドット領域の中には、隣接する頂点同士を結ぶように、ドット中央部に向けて屈曲した4つの傾斜面が形成される。このような構成では、例えば4つの傾斜面の面積(即ち、透過表示領域の液晶分子が接する部分の面積)を略等しくすることで配向制御が容易となり、又、4分割された各透過表示領域の面積を略等しくすることで、視野角特性を上下左右で等しくすることができ、更に広視野角な表示を実現できる。
【0014】
さらに、本発明の液晶表示装置は、一対の基板間に誘電異方性が負の液晶を有した液晶層を挟持してなり、略矩形の1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられ、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板と前記液晶層との間には、前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層の層厚を異ならせる液晶層厚調整層が少なくとも前記反射表示領域に設けられた液晶表示装置であって、前記反射表示領域に対応して設けられた前記液晶層厚調整層は、前記1つのドット領域内において、前記略矩形のドット領域の一辺側とその対辺側のそれぞれに分けて設けられ、前記反射表示領域と前記透過表示領域との間には、前記一辺側及びその対辺側から前記ドット領域の内側に向けて屈曲した2つの傾斜面を備えていることを特徴とする。
【0015】
本構成でも、傾斜面による配向制御力をドット領域周縁部にまで及ぼすことができ、ディスクリネーションのない高品質な表示を実現できる。また、電極スリットや突起等を設けることなく1ドット領域内に少なくとも2つの異なる配向方向を持つ領域ができ、配向分割構造を実現できるので、高輝度化及び広視野角化を図ることができる。
【0016】
さらに、本発明の液晶表示装置は、一対の基板間に誘電異方性が負の液晶を有した液晶層を挟持してなり、1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられ、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板と前記液晶層との間には、前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層の層厚を異ならせる液晶層厚調整層が少なくとも前記反射表示領域に設けられた液晶表示装置であって、前記ドット領域内において、前記反射表示領域に対応して設けられた前記液晶層厚調整層は、略直線状の本線部と、当該本線部の両端部のそれぞれから2つの方向に分岐して延びた4つの分岐部とを有して構成され、前記反射表示領域と前記透過表示領域との間には、前記ドット領域の内側に向けて屈曲した4つの傾斜面を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、透過表示領域を4つに配向分割することができ、高輝度,広視野角,高コントラストな表示が可能となる。
【0017】
また、前記略矩形の1つのドット領域内において、前記略矩形のドットを構成する端辺とその対辺とのそれぞれに沿って2つの前記反射表示領域に対応する前記液晶層厚調整層を設けた構成としてもよい。この構成でも、1ドット領域内に、ドットの隣接する頂点同士を結ぶような連続した2つの傾斜面を形成することができ、視野角の広い表示が可能となる。勿論、同様な形状を有する液晶層厚調整層を4つの端辺全てに設けることも可能であり、これにより、一層の広視野角化を図ることができる。
【0018】
なお、前記一対の基板のうちのいずれか一方の基板の内面にカラーフィルターを備えた構成とすることができる。この構成によれば、光抜け等の表示不良がなく、高コントラスト、広視野角のカラー表示を実現することができる。
【0019】
本発明の電子機器は、上記本発明の液晶表示装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、使用環境によらずに明るく、高輝度、高コントラスト、広視野角の液晶表示部を備えた電子機器を提供することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態を図1〜図3を参照して説明する。
本実施の形態の液晶表示装置は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, 以下、TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス型の液晶表示装置の例である。
【0021】
図1は本実施の形態の液晶表示装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数のドットの等価回路図、図2はTFTアレイ基板のドット内の構造を示す平面図、図3は同液晶装置の1ドットの断面構造を示す図であって、図2のA−A’線に沿う断面図、である。なお、以下の各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0022】
本実施の形態の液晶表示装置において、図1に示すように、画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数のドットには、画素電極9と当該画素電極9を制御するためのスイッチング素子であるTFT30がそれぞれ形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給されるか、あるいは相隣接する複数のデータ線6aに対してグループ毎に供給される。また、走査線3aがTFT30のゲートに電気的に接続されており、複数の走査線3aに対して走査信号G1、G2、…、Gmが所定のタイミングでパルス的に線順次で印加される。また、画素電極9はTFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオンすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0023】
画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、後述する共通電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ここで、保持された画像信号がリークすることを防止するために、画素電極9と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。なお、符号3bは容量線である。
【0024】
次に、図2に基づいて、本実施の形態の液晶装置を構成するTFTアレイ基板の平面構造について説明する。
図2に示すように、TFTアレイ基板10上に、複数の矩形状の画素電極9(点線部9Aにより輪郭を示す)がマトリクス状に設けられており、画素電極9の縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3aおよび容量線3bが設けられている。本実施の形態において、各画素電極9および各画素電極9を囲むように配設されたデータ線6a、走査線3a、容量線3b等が形成された領域の内側が一つのドット領域であり、マトリクス状に配置された各ドット領域毎に表示が可能な構造になっている。
【0025】
データ線6aは、TFT30を構成する、例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち、後述のソース領域にコンタクトホール5を介して電気的に接続されており、画素電極9は、半導体層1aのうち、後述のドレイン領域にコンタクトホール8を介して電気的に接続されている。また、半導体層1aのうち、チャネル領域(図中左上がりの斜線の領域)に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはチャネル領域に対向する部分でゲート電極として機能する。
【0026】
容量線3bは、走査線3aに沿って略直線状に延びる本線部(すなわち、平面的に見て、走査線3aに沿って形成された第1領域)と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図中上向き)に突出した突出部(すなわち、平面的に見て、データ線6aに沿って延設された第2領域)とを有する。そして、図2中、右上がりの斜線で示した領域には、複数の第1遮光膜11aが設けられている。
【0027】
より具体的には、第1遮光膜11aは、各々、半導体層1aのチャネル領域を含むTFT30をTFTアレイ基板側から見て覆う位置に設けられており、さらに、容量線3bの本線部に対向して走査線3aに沿って直線状に延びる本線部と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って隣接する後段側(すなわち、図中下向き)に突出した突出部とを有する。第1遮光膜11aの各段(画素行)における下向きの突出部の先端は、データ線6a下において次段における容量線3bの上向きの突出部の先端と重なっている。この重なった箇所には、第1遮光膜11aと容量線3bとを相互に電気的に接続するコンタクトホール13が設けられている。すなわち、本実施の形態では、第1遮光膜11aは、コンタクトホール13によって前段あるいは後段の容量線3bに電気的に接続されている。
【0028】
図2に示すように、一つのドット領域の中央部には十字形状の反射膜20が形成されており、この反射膜20が形成された領域が反射表示領域Rとなり、その外側の反射膜20が形成されていない領域が透過表示領域Tとなる。また、平面視した際に反射膜20の形成領域を内部に含むように、十字形状の絶縁膜21(反射表示領域に対応した液晶層厚調整層)が形成されている。この絶縁膜21は、ドットの一方の端辺に沿った方向に設けられた第1の領域211と、ドットの他方の端辺に沿った方向に設けられた第2の領域212とを有し、これらの領域211,212がドットの中心部において十字状に交差した構造となっている。また、これらの領域211,212はそれぞれドットの周縁部まで形成されており、1ドット領域内において、透過表示領域Tは略均等に4分割された状態となっている。本実施の形態の場合、絶縁膜21は傾斜面21aを有しており、本明細書では、この部分を反射表示領域Rと透過表示領域Tとの境界領域と定義する。
【0029】
次に、図3に基づいて本実施の形態の液晶表示装置の断面構造について説明する。図3は図2のA−A’線に沿う1ドットの断面図であるが、本発明は絶縁膜や電極の構成に特徴があり、TFTやその他の配線等の断面構造は従来のものと変わらないため、TFTや配線部分の図示および説明は省略する。
【0030】
図3に示すように、TFTアレイ基板10とこれに対向配置された対向基板25との間に初期配向状態が垂直配向を呈する誘電異方性が負の液晶からなる液晶層50が挟持されている。TFTアレイ基板10は、石英、ガラス等の透光性材料からなる基板本体10Aの表面にアルミニウム、銀等の反射率の高い金属膜からなる反射膜20が形成されている。上述したように、反射膜20の形成領域が反射表示領域Rとなり、反射膜20の非形成領域が透過表示領域Tとなる。
【0031】
基板本体10A上には、反射表示領域Rに対応する位置(ドット領域の周縁部)に液晶層の層厚を薄くするような厚みを有した絶縁膜21が形成されている。絶縁膜21は例えば膜厚が2μm±1μm程度のアクリル樹脂等の有機膜からなり、反射表示領域Rと透過表示領域Tとの境界付近において、自身の層厚が連続的に変化するべく傾斜面21aを有している。絶縁膜21が存在しない部分の液晶層50の厚みが2〜6μm程度であるから、反射表示領域Rにおける液晶層50の厚みは透過表示領域Tにおける液晶層50の厚みの約半分となる。つまり、絶縁膜21は、自身の膜厚によって反射表示領域Rと透過表示領域Tとの液晶層50の層厚を異ならせる液晶層厚調整層として機能している。本実施の形態の場合、絶縁膜21の上部の平坦面の縁と反射膜20(反射表示領域)の縁とが略一致しており、傾斜面21aは透過表示領域Tに含まれることになる。また、液晶層厚調整層は反射表示領域Rに対応して厚く形成されるものであるが、透過表示領域Tにも薄く形成されて存在する場合もある。また、本実施例では反射膜20を絶縁膜21(反射表示領域に対応した液晶層厚調整層)の下に形成したが、絶縁膜21の平坦面上、即ち絶縁膜21と透明導電膜からなる画素電極9との間に設けても良い。従って、反射表示領域Rに対応した絶縁膜21とは、透過表示領域Tより反射表示領域Rの液晶層の層厚を薄くさせている(或いは、透過表示領域Tにおける層厚より反射表示領域Rにおける層厚を厚くした)絶縁膜を示すものである。
【0032】
そして、絶縁膜21の表面を含むTFTアレイ基板10の表面には、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide, 以下、ITOと略記する)等の透明導電膜からなる画素電極9が形成されている。画素電極9上に、ポリイミド等からなる配向膜23が形成されている。
【0033】
一方、対向基板25側は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体25A上に、カラーフィルターを構成する色素層32が設けられている。この色素層32は、隣接するドット領域毎に赤(R)、緑(G)、青(B)の異なる色の色素層が配置されており、隣接する3つのドット領域で1つの画素を構成する。あるいは、反射表示と透過表示とで表示色の彩度が異なるのを補償すべく、反射表示領域Rと透過表示領域Tとで色純度を変えた色素層を別個に設けてもよい。そして、この色素層32の上には、ITO等の透明導電膜からなる共通電極31、ポリイミド等からなる配向膜33が順次形成されている。
【0034】
TFTアレイ基板10、対向基板25の双方の配向膜23,33には、ともに垂直配向処理が施されているが、ラビングなどのプレチルトを付与する手段は施されていない。
また、TFTアレイ基板10の外面側、および対向基板25の外面側には、それぞれ基板本体側から位相差板(円偏光入射手段)43,41、偏光板44,42が設けられている。位相差板43,41は可視光の波長に対して略1/4波長の位相差を持つものであり、この位相差板43,41と偏光板44,42との組み合わせによりTFTアレイ基板10側および対向基板25側の双方から液晶層50に円偏光が入射されるようになっている。また、TFTアレイ基板10の外面側にあたる液晶セルの外側には、光源61、リフレクタ62、導光板63などを有するバックライト64が設置されている。
【0035】
本実施の形態の液晶表示装置によれば、反射表示領域Rに絶縁膜21を設けたことによって反射表示領域Rの液晶層50の厚みを透過表示領域Tの液晶層50の厚みの略半分と小さくすることができるので、反射表示領域Rにおけるリタデーションと透過表示領域Tにおけるリタデーションを略等しくすることができ、これによりコントラストの向上を図ることができる。さらに、絶縁膜21が傾斜面21aを有する突起物であるため、液晶分子50bに対してこの傾斜面21aの傾斜角度に応じたプレチルト角を付与でき、液晶分子50bの配向方向を制御することができる。
【0036】
また、本実施形態では、このような絶縁膜21を十字に形成し、傾斜面21aによる配向制御力の及ぶ領域をドット領域の周縁部にまで広げているため、透過表示領域全域でディスクリネーションの発生のない高コントラストな表示が可能となる。また、十字状に設けられた液晶層厚調整層により、電圧印加時に透過表示領域を上下左右で対称な4つのドメインに分割できる(即ち、配向分割構造を実現できる)ため、広視野角化を図ることができる。
さらに、本実施形態の構成は、上述の特許文献2〜4に開示されるような電極スリットや突起部等を設けない構成となっているため、開口率が高く高輝度な表示が可能となる。
【0037】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態を図4を参照して説明する。
図4は本実施の形態の液晶表示装置を示す平面図である。本実施の形態の液晶表示装置の基本構成は第1の実施の形態と同様であるため、図4において図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施の形態の場合、図4に示すように、反射膜20(即ち、反射表示領域R)をX字状に形成するとともに、平面視した際に反射膜20の形成領域を内部に含むように、X字形状の絶縁膜(反射表示領域に対応した液晶層厚調整層)21を設けた構成となっている。この絶縁膜21は、略矩形のドットのそれぞれの対角線に略沿うように設けられた2つの領域211,212を有し、これらの領域211,212がドットの中心部においてX字状に交差した構造となっている。また、これらの領域211,212はそれぞれドットの周縁部まで形成されており、1ドット領域の中には、ドット中央部に向けて屈曲した4つの傾斜面21a,21b,21c,21dが形成されている。つまり、傾斜面を備えた4つの屈曲した境界線(透過表示領域Tと反射表示領域Rの境界)の頂部がドット中央部に向けられている。従って、略矩形の1つのドット領域内において透過表示領域Rがドットの中央部から略矩形のドットを構成する端辺に向けて面積的に拡大させるような形状で形成されている。そして、これらの傾斜面21a〜21dにより、1ドット領域内において、透過表示領域T(反射表示領域Rの外側の領域)は4分割された状態となっている。また、これらの傾斜面21a〜21dの面積(即ち、透過表示領域の液晶分子が接する部分の面積)は略等しく構成され、更に、4分割された透過表示領域の面積はそれぞれ等しく構成されている。
【0039】
したがって、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、傾斜面による配向制御力をドット領域周縁部にまで及ぼすことができ、ディスクリネーションのない高輝度,高コントラストな表示を実現できる。また、本実施形態では、絶縁膜21をX字状に構成し、この絶縁膜の傾斜面21a〜21dの面積を等しくしているため、配向制御が容易となり、又、4分割された各透過表示領域の面積を等しく構成しているため、視野角特性が上下左右で等しくなり、広視野角な表示が実現される。
【0040】
[変形例]
以下、図5を参照して本発明の変形例に係る液晶表示装置について説明する。
図5(a)〜図5(c)はいずれも本発明の変形例に係る液晶表示装置の1ドットの構成を示す平面図である。本変形例の基本構成は上記第1実施形態と全く同様であるため、図5において図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0041】
図5(a)〜図5(c)に示す構成は、いずれも上記第1実施形態の絶縁膜21の構成を変形したものである。
図5(a),図5(b)に示す構成では、反射表示領域Rに対応した絶縁膜21は略矩形のドット領域を構成する端辺とこれに対向する端辺(対辺)の2箇所に分けられてそれぞれ端辺に隣接して設けられている。この反射表示領域Rに対応した絶縁膜21は、平面視したときに中央部がドット中心部に向けて凸状に湾曲又は屈曲するような境界及び傾斜面を有するように構成されている。具体的には、図5(a)では、反射表示領域Rに対応した絶縁膜21の形成領域は、平面視したときに、底辺がドットの端辺の長さ程度に構成された2等辺三角形の形状を有し、透過表示領域Tと反射表示領域の境界となる傾斜面は略矩形のドットの角近傍まで設けられている。また、図5(b)では、反射表示領域Rに対応した絶縁膜21の形成領域は、平面視したときに、略半楕円形状を有し、傾斜面は略矩形のドットの角近傍まで設けられている。なお、反射膜は反射表示領域Rに対応した絶縁膜21の形成領域に設けられている。反射表示領域Rに対応した絶縁膜21とは、透過表示領域Tより反射表示領域Rの液晶層の層厚を薄くさせている(或いは、透過表示領域Tにおける層厚より反射表示領域Rにおける層厚を厚くした)絶縁膜を示すものであり、この絶縁膜の形成された領域が反射領域Rとなり、この反射領域Rの外側部分が透過領域Tとなる。
【0042】
このような構成でも、略矩形の1つのドット領域内において透過表示領域Rがドットの中央部から略矩形のドットを構成する互いに対向する一対の端辺に向けて面積的に拡大させるような形状で形成され、他の互いに対向する一対の端辺にそれぞれ隣接して反射表示領域Rが配置され、透過表示領域Tと反射表示領域Rとの境界に傾斜面21a,21bが存在している。したがって、図5(a),(b)の構成でも、高輝度,広視野角,高コントラストな表示が実現される。勿論、絶縁膜21をドットの4端辺全てに設け、一層の広視野角化を図ることもできる。
【0043】
一方、図5(c)の構成では、反射表示領域Rに対応した絶縁膜21は、ドットの中心部を通る略直線状の本線部21Qと、この本線部21Qの両端部から略矩形のドットの各角に向けて分岐した4つの分岐部21Pとを有している。これらの分岐部Pはドットの周縁部まで形成されており、1ドット領域の中にはドット中央部に向けて屈曲した境界からなる4つの傾斜面21a〜21dが形成されている。即ち、略矩形の1つのドット領域内において透過表示領域Rがドットの中央部から略矩形のドットを構成する端辺に向けて面積的に拡大させるような形状で形成されている。そして、これらの傾斜面21a〜21dにより、1ドット領域内において、透過表示領域Tは4分割された状態となっている。なお、反射膜は絶縁膜21の形成領域に設けられており、この絶縁膜の形成された領域が反射領域Rとなり、この反射領域Rの外側部分が透過領域Tとなる。
【0044】
したがって、図5(c)の構成でも、高輝度,広視野角,高コントラストな表示が実現される。なお、4分割された各透過表示領域の面積は等しく構成することが好ましく、これにより、視野角特性を上下左右で等しくでき、更なる広視野角化を実現できる。
【0045】
[電子機器]
次に、本発明の上記実施の形態の液晶表示装置を備えた電子機器の具体例について説明する。
図6は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図6において、符号500は携帯電話本体を示し、符号501は上記液晶表示装置を用いた表示部を示している。
図6に示す電子機器は、上記実施の形態の液晶表示装置を用いた表示部を備えているので、使用環境によらずに明るく、コントラストが高く、広視野角の液晶表示部を備えた電子機器を実現することができる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、絶縁膜21の形状は上述の構成に限定されるものではなく、絶縁膜21は、傾斜面による配向制御力を透過表示領域全域に及ぼすべく、ドット周縁部にまで配置されていればよい。具体的には、絶縁膜を、その傾斜面がドットの隣接する頂点同士を結ぶように連続して形成されるような形状とし、更に、このような傾斜面を複数設けて各傾斜面をドット中心部に対して対称な構成とすればよい。これにより、傾斜面による配向制御力をドット領域周縁部にまで及ぼすことができ、ディスクリネーションのない表示が可能となる。また、ドット中心部に対して対称に設けられた傾斜面により、透過表示領域が配向分割され、広視野角化が実現される。
【0047】
また、上記実施形態では、位相差版41,42を単板で構成したが、この代わりに、1/2波長板と1/4波長板との積層体として構成してもよい。この積層体は広帯域円偏光板として機能し、黒表示をより無彩色化にすることができる。さらに、この積層体に負のCレートを積層させることで更に広視野角化を図ることもできる。なお、Cプレートとは、膜厚方向に光軸を有する位相差板である。
【0048】
さらに、上記実施の形態ではTFTをスイッチング素子としたアクティブマトリクス型液晶表示装置に本発明を適用した例を示したが、薄膜ダイオード(Thin Film Diode,TFD)スイッチング素子としたアクティブマトリクス型液晶表示装置、パッシブマトリクス型液晶表示装置などに本発明を適用することも可能である。その他、各種構成要素の材料、寸法、形状等に関する具体的な記載は、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態の液晶表示装置の等価回路図である。
【図2】 同、液晶表示装置の1ドットの構成を示す平面図である。
【図3】 同、液晶表示装置の図2のA−A’線に沿う断面図である。
【図4】 本発明の第2実施形態の液晶表示装置の1ドットの平面図。
【図5】 本発明の変形例の液晶表示装置の1ドットの平面図である。
【図6】 本発明の電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
10…TFTアレイ基板、21…絶縁膜(液晶層厚調整層)、21a,21b,21c,21d…傾斜面、21P…分岐部、21Q…本線部、25…対向基板、50…液晶層、211…第1の領域、212…第2の領域、R…反射表示領域、T…透過表示領域
Claims (7)
- 一対の基板間に誘電異方性が負の液晶を有した液晶層を挟持してなり、略矩形の1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられ、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板と前記液晶層との間には、前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層の層厚を異ならせる液晶層厚調整層が少なくとも前記反射表示領域に設けられた液晶表示装置であって、
前記反射表示領域に対応して設けられた前記液晶層厚調整層は、前記1つのドット領域内において十字状に交差した第1の領域と第2の領域とに設けられ、該第1の領域及び該記第2の領域は前記略矩形のドット領域の隣接した2辺のそれぞれに沿う方向に延びており、前記反射表示領域と前記透過表示領域との間には、前記ドット領域の内側に向けて屈曲した4つの傾斜面を備えていることを特徴とする、液晶表示装置。 - 一対の基板間に誘電異方性が負の液晶を有した液晶層を挟持してなり、略矩形の1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられ、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板と前記液晶層との間には、前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層の層厚を異ならせる液晶層厚調整層が少なくとも前記反射表示領域に設けられた液晶表示装置であって、
前記反射表示領域に対応して設けられた前記液晶層厚調整層は、前記1つのドット領域内においてX字状に交差した第1の領域と第2の領域とに設けられ、前記反射表示領域と前記透過表示領域との間には、前記ドット領域の内側に向けて屈曲した4つの傾斜面を備えていることを特徴とする、液晶表示装置。 - 前記第1の領域は前記ドット領域の一方の対角線に沿う方向に設けられており、前記第2の領域は前記ドット領域の他方の対角線に沿う方向に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
- 一対の基板間に誘電異方性が負の液晶を有した液晶層を挟持してなり、1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられ、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板と前記液晶層との間には、前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層の層厚を異ならせる液晶層厚調整層が少なくとも前記反射表示領域に設けられた液晶表示装置であって、
前記ドット領域内において、前記反射表示領域に対応して設けられた前記液晶層厚調整層は、略直線状の本線部と、当該本線部の両端部のそれぞれから2つの方向に分岐して延びた4つの分岐部とを有して構成され、前記反射表示領域と前記透過表示領域との間には、前記ドット領域の内側に向けて屈曲した4つの傾斜面を備えていることを特徴とする、液晶表示装置。 - 一対の基板間に誘電異方性が負の液晶を有した液晶層を挟持してなり、略矩形の1つのドット領域内に透過表示を行う透過表示領域と反射表示を行う反射表示領域とが設けられ、前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板と前記液晶層との間には、前記反射表示領域と前記透過表示領域とで前記液晶層の層厚を異ならせる液晶層厚調整層が少なくとも前記反射表示領域に設けられた液晶表示装置であって、
前記反射表示領域に対応して設けられた前記液晶層厚調整層は、前記1つのドット領域内において、前記略矩形のドット領域の一辺側とその対辺側のそれぞれに分けて設けられ、前記反射表示領域と前記透過表示領域との間には、前記一辺側及びその対辺側から前記ドット領域の内側に向けて屈曲した2つの傾斜面を備えていることを特徴とする、液晶表示装置。 - 前記一対の基板のうちのいずれか一方の基板の内面にカラーフィルターが備えられたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの項に記載の液晶表示装置。
- 請求項1〜6のいずれかの項に記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とする、電子機器。
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