JP4194977B2 - 殺菌方法及び殺菌用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、殺菌方法及び殺菌用組成物に関する。特に、生鮮食品又は食品用調理機械若しくは器具の殺菌方法及び当該用途に使用する殺菌用組成物に関する。
食品衛生に関する社会の関心が益々高まりつつある。特に、ある種の生鮮食品における病原性大腸菌汚染事故や、食品製造装置に由来する乳製品の黄色ブドウ球菌汚染事故等、消費者のみならず食品製造業者及び管轄官庁においても食品に対する雑菌汚染の確実な防除は重大な関心事となっている。従来、そのような食品に対する微生物汚染の防除或いは食品原材料等の初発菌数低減技術として次亜塩素酸ナトリウムに代表される塩素酸化合物等を用いた食品、食品用調理機械類及び食品原材料の殺菌洗浄処理が一般に用いられてきた。
しかしながら、当該処理による殺菌効率自体はいっていの満足が行くものではあるが、それでもなお確実な殺菌効果を期待するためにはより高濃度の塩素酸化合物等の使用が必要となる場合があった。一方で、食品加工等に用いる添加物や食品への残留化学物質に対する消費者の関心も高まっており、消費者がいっそう安心して購買できる食品を提供するためには、塩素酸化合物等の塩素系殺菌剤の使用量や残留量を極力低減させることが極めて重要な課題となっている。
とりわけ、野菜等の生鮮食品表面は一般にワックスで保護されている。また、野菜の表面自体にも絨毛組織等、水をはじくための機構が本来から備わっているので、塩素酸化合物等の水溶液からなる水性塩素系殺菌剤だけでは有効な濃度の塩素が野菜等の表面に届きにくく、その結果として殺菌効果が弱められてしまうために、いきおい、より高濃度の塩素酸化合物が用いられる場合があった。
そこで、このような問題を解決するために、水性二酸化塩素の水溶液と乳化剤を併用する殺菌方法が特許文献1において提案されている。但し、当該文献では、使用できる乳化剤として、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロビレングリコール脂肪酸エステルが例示されているが(第0008段落)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルについての言及は無い。実際に該文献において具体的に使用された乳化剤であるソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンモノラウレート)もポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとは構造及び性質が全く異なるものであり(第0017段落)、特に、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロビレングリコール脂肪酸エステルのいずれの乳化剤も、それらを水性塩素系殺菌剤に添加すると液層の分離や濁り等を生じてしまうことがしばしば経験されている。そのような不均一溶液や濁りのある溶液で食品を処理した場合、殺菌自体の均一性や処理された食品の外観までも損なわれて食品の商品価値を損ねることが危惧されるのである。更に、特許文献1に例示されるような乳化剤を添加した場合、水性塩素系殺菌剤の殺菌成分である有効塩素の残存率が経時的に減少して、その殺菌力が低下する傾向が顕著である。加えて、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤は、使用時における泡立ちが高く、濯ぎ性にも欠けているので、食品製造時の作業効率を著しく低下させてしまうのである。
また、特許文献2は、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、グリコール酸等の有機酸によりpH調整を行った塩素系の消毒殺菌剤を記述し(第0033段落等)、それによる有毒ガス発生の低減と殺菌消毒作用の改善を提案しているが(第0057段落等)、それと乳化剤の併用を示唆するものではなく、況や、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの併用による優れた効果、例えば、水溶液状態に置かれた後の安定性の改善等を意図するものですらない(第0010〜0011段落及び第0061段落参照)。
特開平10−313839号公報 特開平11−228316号公報
しかして、本発明は、極めて高い殺菌効率を示すとともに、層分離や濁りの発生といった不均一な外観を呈すことが無い殺菌液を用いて殺菌対象を保護しつつ安定に処理し、また泡立ちの低減や濯ぎ性の改善等の高い作業性を有する生鮮食品又は食品用調理機械若しくは器具の殺菌方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、当該方法に使用可能な生鮮食品又は食品用調理機械若しくは器具の液性殺菌用組成物を提供することを目的とする。好ましくは、該液性殺菌用組成物において有効塩素濃度が極めて長時間維持される。
驚くべきことに、塩素系殺菌剤と特定の界面活性剤及び有機酸を組み合わせることにより、塩素系殺菌剤の殺菌力が飛躍的に向上し、且つ層分離や濁り等の生じない均一な殺菌液が得られ、また、泡立ちの低下や濯ぎ性の向上等の作業性が改善されるとともに、有効塩素濃度を長時間維持できることが見出された。すなわち、本発明の第1の局面では、
塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩の水性の混合溶液に接触させることを特徴とする生鮮食品又は食品用調理機械若しくは器具の殺菌方法が提供される。
好ましくは、前記塩素系殺菌剤が、次亜塩素酸及びその塩、亜塩素酸及びその塩、水性二酸化塩素、さらし粉、高度さらし粉及びジクロロイソシアヌル酸ナトリウムから成る群から選択される少なくとも1種以上の塩素系殺菌剤であり、前記有機酸が、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、酢酸、グリコール酸、フマル酸、マレイン酸及びそれらの混合物から成る群から選択される酸である。なお、これらの有機酸はその塩の形態でも使用され得る。
また、好ましくは、前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル及びそれらの混合物から成る群から選択される。
好適には、前記塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩の混合溶液中の有効塩素濃度が5乃至2000ppmであり得、該混合溶液のpHが5乃至7であってよい。
また、前記塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩の混合溶液中のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル量が0.0005乃至1(重量/容量)%であることも、本発明の好ましい態様の1つである。
上記方法は、野菜、果物、魚介類又は畜肉類等の生鮮食品の殺菌・消毒や食器類、食品加工器具若しくは装置、食品製造装置又は食品包装装置等の食品用調理機械若しくは器具の殺菌・除菌処理に特に適している。
次いで、本発明の別の側面において、塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩を含むことを特徴とする生鮮食品又は食品用調理機械若しくは器具の液性殺菌用組成物、典型的には水性殺菌用組成物が提供される。
該組成物における改善された塩素の安定性に鑑みれば、当該殺菌用組成物は一の容器に収容しておくことも可能であり、勿論、その必須構成成分である塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩を任意の組み合わせで複数の容器に収容しておき、使用に先立って混合しても差し支えない。
本発明の方法によれば、極めて効率的な殺菌が可能となり、ひいては使用する塩素系殺菌剤の用量をも低減することができる。当該方法で使用される殺菌用の液体では層分離や濁りの発生等を呈すことが無く、均一な殺菌と被処理食品の外観を保全するのに有効である。また、当該方法では、作業時の泡立ちが無く、殺菌処理後の濯ぎ性も高いので、効率的な殺菌作業を可能にする。
加えて、本発明の殺菌用組成物においては、殺菌活性成分である塩素の有効濃度を長時間に渉り維持することが可能であるので、これを任意の剤系と成して製剤化することができるのである。
本発明の殺菌方法においては、殺菌対象物である生鮮食品又は食品用調理機械若しくは器具を、塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩の混合溶液と接触させる。該接触は、殺菌対象物を前記混合溶液に浸漬することの他にも、該混合溶液を噴霧、滴下或いは流下させる等して、殺菌対象物を該混合溶液に対し所与の殺菌目的に有効な時間だけ暴露することを含む。典型的には、殺菌対象物を前記混合溶液に対して一晩程度浸漬させてもよいし、殺菌対象物の性質や汚染の程度によっては、該対象物を前記混合溶液に対して数秒〜数十分、好ましくは数十秒〜数分間、例えば約30秒〜約5分程度の間、暴露するだけでも所与の目的が達成され得る場合もある。なお、殺菌対象物の性質及び用途からして、前記接触後、該対象物を清浄な水などにより洗浄し、残留する塩素等を充分に除去することが好ましい。
前記混合溶液に用いる塩素系殺菌剤は、食品産業において周知慣用のいかなるものを用いても差し支えなく、非限定的な例示として、次亜塩素酸及びその塩、亜塩素酸及びその塩、水性二酸化塩素、さらし粉、高度さらし粉及びジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを挙げることができる。例えば、次亜塩素酸は、次亜塩素酸ナトリウムとしても添加でき、商品名「ツルクロン」として鶴見曹達(株)から入手可能である。また、高度さらし粉は商品名「パーフェクトPA」として、三慶食品工業(株)から入手でき、水性二酸化塩素は、商品名「PUROGENE」として米国のバイオサイドインターナショナル社から入手できる。
これらの塩素系殺菌剤は、勿論、求められる殺菌力の程度や対象物の性質、処理方法等に依存して変わり得るのであるが、典型的には、使用に先立つ前記混合溶液中の最終有効塩素濃度が約5乃至2000ppm(重量/容量)、好ましくは約10乃至2000ppm(重量/容量)となるように添加するのが好ましい。
次いで、前記混合溶液に用いるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルも、食品産業において周知慣用のいかなるものを用いても差し支えなく、例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステルを例示できるが、これに限定されない。モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル(n=20)は、商品名「ソルゲンTW−20F」として、またモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル(n=20)は、商品名「ソルゲンTW−80F」として、双方とも第一工業製薬(株)から入手できる。当該ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの使用量も、対象物の性質や殺菌処理方法等によって適宜加減してよいが、好ましくは、前記混合溶液中において0.0005%(重量/容量)、特に好ましくは、0.0015%(重量/容量)以上の濃度で存在し得る。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの使用量の上限については特に限定されるべきものではないが、経済的観点より約1%(重量/容量)前後が適切と思われ、それ以上の濃度でも得るところが少ないように思われる。
前記混合溶液においては、特に、有機酸及び/又はその塩の添加が有効であることが判明した。該混合溶液で用いる有機酸の種類についても特に限定されないが、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、酢酸、グリコール酸、フマル酸、マレイン酸を例示することができ、一般の食品に使用され得る、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸、酢酸、フマル酸の使用も好適である。上記有機酸の塩としては、そのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を例示することができ、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩が挙げられる。また、アンモニウム等の有機塩基も本発明の有機酸の対イオンと成し得よう。使用する有機酸及び/又はその塩の量は、前記混合溶液中で約0.0001乃至1%(重量/容量)と成し得るが、約0.001乃至0.02%(重量/容量)でも充分な効果が期待できる。このとき、野菜や果実、魚介類、畜肉類等の生鮮食品の変性、例えば、野菜や果実などにおいては呈味や色調等を、また魚介類等においても呈味や蛋白質変性をも考慮すれば、混合溶液のpHが約5乃至7であることが好適である。
前記混合溶液を調製するにあたっては、その必須の構成成分である塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩が充分に溶解し混和しさえすれば、いかなる手法を用いてもかまわない。特に本発明の混合溶液においては層分離や濁りが生じないので、例えば、単純に高度さらし粉等の塩素系殺菌剤を水に溶解し、そこにポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩を添加して攪拌し、それらを溶解/混和するだけでよい。又は、塩素系殺菌剤が、元来から、例えば次亜塩素酸ナトリウムの水溶液として入手されるような場合には、そこに、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩を添加して溶解/混和するだけでも本発明の殺菌方法に用いる混合溶液を簡便に得ることができる。その後、混合溶液のpHを、例えば、混合すべき有機酸の追加により調整することも可能である。或いは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に対してポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを混合しておき、そこに有機酸を添加していきながら混合溶液のpHを調整することも考えられる。
有利には、前記混合溶液を液性の殺菌用組成物とし得る。つまり、上記のようにして得られた塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩から成る水溶液をそのまま、或いはそこに任意の追加成分を添加して本発明の液性殺菌用組成物を得ることが可能である。例えば、上記混合溶液に対して、所望によりマスキングのための香料等を添加することもでき、そのような処方は当業者にとって周知であろう。或いは、当該混合溶液に相溶性の有機溶媒、例えば、グリセロール等を添加しても差し支えないが、いずれの場合においても、上記混合溶液の有する有利な効果が損なわれるような任意成分の使用は避けられるべきである。
とりわけ、本発明の塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩の混合溶液中では、有効塩素濃度が長時間維持されるので、塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩の混合溶液を予め処方して本発明の殺菌用組成物としておき、それを一の容器内に保管しておくことも可能である。また、いっそうの有効塩素濃度維持の観点から、前記成分を任意の組み合わせにより複数の容器に収容して流通・保管しておき、使用に先立ってそれらを混合する場合であっても、大規模な食品製造工程においては、それら複数の容器の収容物を合して多量の混合溶液を一時に調製し、そこから必要な量だけを適宜に取り出して使用することもしばしば行われるが、そのような場合には、前記3種の成分の混合溶液状態が少なくとも24時間以上持続する場合がある。ここで、従来の乳化剤を用いた混合液では、そのような比較的短時間の間にも有効塩素の濃度が顕著に減少することが見出され、従って、そのような混合溶液では確実で安定した殺菌を大規模且つ連続的に行うことができない。これに対し、本発明の殺菌用組成物からなる殺菌製剤では、そのような比較的短時間では実質的な有効塩素濃度の低下が観察されないのであり、本願発明の塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩の併用の極めて優れた効果の1つが発揮されるのである。
従って、本発明の殺菌用組成物は、上記のような塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩の全てを含有する溶液としての1剤系、又は前記成分を任意の組み合わせにより複数の容器に収容して使用に先立ちそれらを混合するような2剤型、又は前記成分の夫々を別個の容器に収容して使用に先立ちそれらを混合するような3剤型の形態として殺菌製剤とすることができる。そのような2剤型殺菌製剤への製剤化態様に関しては、「漂白洗浄剤組成物」と題し、有毒ガス発生防止を目的としたアルカリ性のカビ取り組成物に関する特開平6−9998号公報に記載の製剤化態様を例示でき、該文献を引用することによりここに援用する。
更に説明せずとも、これまでの説明を与えられた当業者は、本発明を充分に活用し得る。以下、説明のみの目的で実施例を与える。
I.材料:
本実施例及び比較例においては、以下の、材料を用いた。
塩素系殺菌剤
・次亜塩素酸ナトリウム:商品名「ツルクロン」(鶴見曹達(株)より入手)
・高度さらし粉:商品名「パーフェクトPA」(三慶食品工業(株)より入手)
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
・モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル(n=20):商品名「ソルゲンTW−20F」(第一工業製薬(株)より入手)
・モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル(n=20):商品名「ソルゲンTW−80F」(第一工業製薬(株)より入手)
有機酸
・リンゴ酸(ラサ晃栄(株)より入手)
ショ糖脂肪酸エステル(比較例)
・ショ糖ラウリン酸エステル:商品名「DKエステルL−160」(第一工業製薬(株)より入手)
グリセリン脂肪酸エステル(比較例)
・デカグリセンリンモノラウレート:商品名「ML−750」(阪本薬品工業(株)より入手)
ソルビタン脂肪酸エステル(比較例)
・ソルビタンモノラウレート:商品名「エマゾールスーパーL−10F」(花王(株)より入手)
プロピレングリコール脂肪酸エステル(比較例)
・モノオレイン酸プロピレングリコール:商品名「サンソフトNo.25OD」(太陽化学(株)より入手)
II.供試混合溶液の調製:
上記各成分を、結果を示す表中の組成に従って充分に混合した。なお、水は水道水を用いたが、表中の数値は有効成分量(塩素系殺菌剤については有効塩素濃度)の%(重量/容量)で示してある。従って、表中の水の量は水道水と次亜塩素酸塩、界面活性剤又は有機酸等の含水化合物または水溶液に由来する水分の総和として表されている。
III.効果の測定及び評価:
以下の6項目について測定し、評価した。
1)pH
・試験方法:pHメーター(pH METER F−21、堀場製作所製)を用いて、供試混合溶液の25℃でのpHを測定した。
・評価基準:
○:5以上〜7以下である。
×:上記範囲外である。
2)外観
・試験方法:供試混合溶液の調製後24時間における外観を目視にて評価した。なお、供試混合溶液は、調製後室温にて放置した。
・評価基準:
○:分離や濁りがなく、透明である。
×:分離や濁りを生じているか、または不透明である。
3)抗菌力
・試験方法:供試菌としてE.coliを用いた。該供試菌をNutrient Broth内で37℃、24時間前培養した菌液を菌数約10乃至10/mlに調節し、その菌液1mlを各混合溶液の10mlと30分間接触させた。その10μlをNutrient Brothに植菌し、37℃、24時間培養した後、目視にて培地の濁りを観察した。
・評価基準:
○:培地が濁らない(充分な殺菌力を有する)。
×:培地が濁る(殺菌力に乏しい)。
4)起泡性
・試験方法:各供試混合溶液を10mlずつ直径18mm×長さ18cmの試験管に入れ、15秒間激しく振り、その泡の高さを測定する。
・評価基準:
○:泡が10cm以下である。
×:泡が10cm以上である。
5)有効塩素
・試験方法:有効塩素の測定はヨウ素滴定法にて実施した。塩素の残存率(%)は、まず、各供試混合溶液の混合直後の有効塩素濃度を100%として、24時間後の各混合溶液の有効塩素を測定し、該24時間後の有効塩素測定値をその混合直後の測定値で除すことで算出した。なお、供試混合溶液は調製後、室温にて放置した。
・評価基準:
○:有効塩素の残存率が90%以上である。
△:有効塩素の残存率が50%以上90%未満である。
×:有効塩素の残存率は50%未満である。
6)食品素材に対する影響
・試験方法:冷凍生イカ(モンゴウ)を解凍し、幅1cmにカットした後、各供試混合溶液に投入した(イカと混合液の重量比は約1:2)。30分間浸漬した後、そのイカの外観を確認する。
・評価基準:
○:イカは透明であり、たん白変性を認めない。
×:イカは白くなり、たん白変性を認めた。または、イカの表面に油分が浮かんでいた。
IV.結果:
実施例についての結果を表1乃至2に、比較例の結果を表3乃至6に示した。
Figure 0004194977
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上記の結果から、いずれの実施例も、各評価項目において、ほぼ万遍なく良好な評価が得られていることがわかる。これに対して、比較例は、少なくとも1つの評価項目において実用上支障となる問題がある。
とりわけ、比較例No.18及び21を参照すると、塩素系殺菌剤とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの2者の組み合わせは、外観、pH、起泡性、残存塩素において優れているものの、抗菌力や食品素材に対する影響に劣ることが判り、本発明の有機酸及び/又はその塩の併用効果が明確に示されている。また、比較例No.25乃至30を参照すると、単に塩素系殺菌剤、界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステル)並びに有機酸及び/又はその塩の組み合わせであっても、外観、残留塩素、抗菌力及び食品素材に対する影響に劣っており、本発明のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを特定的に使用する有利な効果は予期し得ない驚嘆すべきものであった。
その他の有機酸の効果を確認すべく、リンゴ酸に代えて酢酸/酢酸ナトリウムの組み合わせ或いはフマル酸を用いる他は実施例1と同様の試験を行った。なお、酢酸は商品名「粉末酢酸」(日本合成化学工業(株)製)を、酢酸ナトリウムは商品名「酢酸ナトリウム(無水)」(日本合成化学工業(株)製)を、及びフマル酸は商品名「フマル酸」(扶桑化学工業(株)製)を用いた。結果を以下に示す。
Figure 0004194977
表7の結果から、本発明における各種の有機酸/有機酸塩の効果が確認された。
本発明により、極めて優れた生鮮食品又は食品用調理機械若しくは器具の殺菌方法及び殺菌用組成物が提供される。当該方法及び組成物は、特に、食品製造業において好適に使用し得る。

Claims (7)

  1. 生鮮食品を、塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩の混合溶液に対して30分以下の接触時間で接触させることを特徴とする生鮮食品殺菌方法であって、但し、前記混合溶液中の有効塩素濃度が5乃至2000ppmであり、該混合溶液のpHは5乃至7であり、且つ該混合溶液中のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル量が0.0005乃至1(重量/容量)%である、前記殺菌方法
  2. 前記塩素系殺菌剤が、次亜塩素酸及びその塩、亜塩素酸及びその塩、水性二酸化塩素、さらし粉、高度さらし粉及びジクロロイソシアヌル酸ナトリウムから成る群から選択される少なくとも1種以上の塩素系殺菌剤の水溶液である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記有機酸が、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、酢酸、グリコール酸、フマル酸、マレイン酸及びそれらの混合物から成る群から選択される請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル及びそれらの混合物から成る群から選択される請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記生鮮食品が、野菜、果物、魚介類又は畜肉類である請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記混合溶液が、塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩の混合溶液として予め一の容器に収容されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 塩素系殺菌剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル並びに有機酸及び/又はその塩を任意の組合せにより複数の容器に予め収容しておき、使用に先立ってそれらを混合して前記混合溶液を調製する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
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