JP4194895B2 - 炉の内張耐火物の温度を測定する温度計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炉の内張耐火物中に設けた測温用の穴に挿入し、測温部の先端部を常に穴の底部に接触させて温度を測定する温度計に関する。
【0002】
【従来の技術】
炉の内張耐火物は、長期間の連続操業中に徐々に化学的及び物理的に損耗していく。このため、炉の寿命を延長するための補修時期の判断や、炉の寿命時期の判断を正確に行うためには、炉の内張耐火物の損耗状態を常時監視することが必要になる。
例えば、炉の一例である高炉の場合では、従来から高炉の炉底耐火物に複数の穴を設けてそれぞれ温度計を埋め込み、穴の底部の温度を測定し、この測定値を用いて炉底耐火物の損耗状態を推定していた。
【0003】
ここで、高炉の炉底耐火物に穴を設けて炉底耐火物の温度を正確に測定するには、温度計の測温部の先端部を穴の底部に常に接触させておく必要がある。
そのため、この穴の内側に高炉鉄皮に基部が固定されたガイドパイプを挿入し、このガイドパイプ内に温度計の測温部の先部が突出するようにバネを介して挿入し、温度計が先端方向に常時押し付けられるようにして、温度計の測温部の先端部と穴の底部とが常に密接状態を保つようにしていた。これによって、穴の底部の正確な温度の測定を可能にしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第3313555号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
高炉では炉底耐火物と鉄皮の間にステーブクーラーを設けて、炉底耐火物を冷却している。このとき、ステーブクーラーの冷却力を高めるため、ステーブクーラーと炉底耐火物、及びステーブクーラーと高炉鉄皮の間にはそれぞれスタンプ材が充填されている。
しかし、炉底耐火物や鉄皮が温度変動により膨張と収縮を繰り返していると、ステーブクーラーとスタンプ材との間に隙間が発生して、ステーブクーラーの冷却能力が低下する。
そこで、例えば、100μm以下のカーボン粉末に重油を加えて調製したペースト状の流動物(以下、重油ペーストという)を高炉鉄皮の外側から供給用の配管を介して発生した隙間に常時圧入して、発生した隙間を消失させステーブクーラーの冷却能力の低下を防止している。このとき、重油ペーストは発生した隙間を徐々に充填していくが、一部の重油ペーストは炉底耐火物中に設けた測温用の穴の内面とガイドパイプの外面との間に形成されている隙間を通過して、ガイドパイプの先端側に達する。
【0006】
ここで、ガイドパイプ内に温度計の測温部を挿入する際に、ガイドパイプの内面に温度計の測温部外周面が接触して挿入の作業性が低下すること、ガイドパイプの内面及び/又は温度計の測温部外周面に損傷が発生することを防止するため、ガイドパイプの内面と温度計の測温部外面との間には、例えば3mm程度の隙間を設けている。このため、ガイドパイプの先端では、温度計とガイドパイプの間に3mm程度の隙間が形成される。このため、ガイドパイプの先端側に達した重油ペーストはこの隙間を通過してガイドパイプの内側に侵入する。
重油ペーストがガイドパイプの内側に侵入すると、重油ペーストの粘性が高いため、温度計の測温部がガイドパイプ内で進退移動することができなくなる。このため、鉄皮及び炉底耐火物が膨張した際に、温度計の測温部の先端部が穴の底部に接触しなくなって、正確な温度測定を行うことができないという問題が発生していた。逆に、鉄皮及び炉底耐火物が収縮した際には、温度計の測温部の先端部が穴の底部に押し付けられて変形し、温度計が破損するという問題が発生していた。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、炉の内張耐火物中に設けた測温用の穴に挿入し、測温部の先端部を常に穴の底部に接触させて温度を正確に測定することが可能な炉の内張耐火物の温度を測定する温度計を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明に係る炉の内張耐火物の温度を測定する温度計は、炉の内張耐火物中に設けた測温用の穴に挿入され、基部が前記炉の鉄皮に固定されるガイドパイプと、
前記ガイドパイプ内に隙間を開けて挿入され、基部が前記ガイドパイプに固定され、その先部側が該ガイドパイプの先端から突出し、先端部に内径が縮小した縮径部が設けられている支持管と、
前記支持管内に隙間を開けて挿入されてバネを介して前後進可能に設けられ、該支持管の先端から測温部の先部側が突出して該測温部の先端部が前記穴の底部と密接する温度計本体とを有する。
【0009】
ここで、支持管の先端部に縮径部を設けることにより、測温部と支持管との隙間に外部から重油ペーストが侵入するのを防止することができる。また、測温部に撓みや変形が生じた場合、縮径部で測温部の外周側が支持されることにより、測温部に大きな撓みや変形が生じることを規制でき、温度計本体の破損を防止できる。
更に、測温部の先端部を穴の底部に密接させることにより、底部からの熱を確実に測温部の先端部に伝達させることができる。
ここで、支持管の先端から突出させる測温部の長さは、短過ぎると支持管の断熱の影響を受ける。一方、長過ぎると先部側が撓み易くなる。このため、突出させる測温部の長さは、例えば、50〜150mmとするのがよい。
【0010】
温度計本体がバネを介して支持管に連結されることにより、バネに発生する弾性力を利用して温度計本体を支持管の軸方向に対して進退させることができる。
例えば、温度変動で内張耐火物が収縮したり、鉄皮が膨張した場合、温度計本体を炉内側に押し込み(温度計本体の先端側に移動させ)、測温部の先端部と測温用の穴の底部の間に隙間が発生するのを防止できる。
また、温度変動で内張耐火物が膨張したり、鉄皮が収縮した場合、測温部の先端部を穴の底部に密接させた状態で温度計本体を炉内側から押し出させ(温度計本体の基部側に移動させ)ることができる。
【0011】
本発明に係る炉の内張耐火物の温度を測定する温度計において、前記縮径部と前記温度計本体の外表面との間に0.1〜0.4mm幅の隙間が形成されることが好ましい。
【0012】
縮径部における温度計本体の外表面との間に形成される隙間の幅を0.1〜0.4mmにすることにより、温度計本体と支持管との隙間に外部から重油ペーストが侵入するのを防止しながら、温度計本体の測温部を支持管の内側で自由に進退させることが可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る炉の内張耐火物の温度を測定する温度計を説明する部分側断面図、図2は同炉の内張耐火物の温度を測定する温度計の支持管及び温度計本体を説明する部分側断面図、図3は同炉の内張耐火物の温度を測定する温度計を高炉の炉底に設置した場合の説明図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る炉の内張耐火物の温度を測定する温度計10は、炉の内張耐火物11中に測温用に設けた穴12に挿入されるガイドパイプ13と、ガイドパイプ13内に隙間を開けて挿入され、ガイドパイプ13の先端から先部側が突出する支持管14を有している。
更に、温度計10は、支持管14内に隙間を開けて挿入され、支持管14の先端から測温部15が突出し測温部15の先端部が穴12の底部16と密接する温度計本体17とを有している。以下、これらについて詳細に説明する。
【0015】
ガイドパイプ13は、炉の外殻を構成する鉄皮18に設けられた開口部19から内張耐火物11中に設けられた穴12に挿入される挿入管部20と、挿入管部20の基部に取付けられたフランジ21を有している。
ここで、挿入管部20及びフランジ21は、例えば、ステンレス鋼等の耐熱鋼を用いて構成されている。そして、鉄皮18側にガイドパイプ13のフランジ21を、例えば溶接で取付けることにより、穴12に挿入したガイドパイプ13の基部を鉄皮18に対して固定している。
【0016】
支持管14は、ガイドパイプ13内に挿入される支持管本体22と、支持管本体22の基部に取付けられ、中央部に測温部15を挿通する孔が形成された取付けフランジ23を有している。そして、支持管14の先端内部には支持管14の内径より縮径した内径を有する円環部材24が、例えば溶接により取付けられて縮径部25を構成している。
ここで、支持管本体22、円環部材24、及び取付けフランジ23は、例えば、ステンレス鋼等の耐熱鋼を用いて構成されている。
なお、円環部材24の内径は、挿通する測温部15の外表面と円環部材24の内側面との間に、例えば、0.1〜0.4mm幅の隙間Cが形成されるように設定する。
【0017】
温度計本体17は、シース型熱電対から構成される測温部15と、測温部15の基部に設けられた端板26を介して接続されて測温部15からの出力信号を導出する端子27を有している。また、温度計本体17は、端子27に一端が接続された伸縮性接続ケーブル28を有している。この伸縮性接続ケーブル28は、相互に絶縁された1対の熱電対素線をコイル状に形成して構成されている。なお、符号35は外管31の基部側が挿入され伸縮性接続ケーブル28の他端が接続される端子部(図示せず)が設けられた端子台である。
【0018】
ここで、外管31の先部の内面には所定長さにわたって拡径した段付き加工部36が形成されている。そして、この段付き加工部36に端子27が挿通可能な内径を有するコイル状スプリング(バネの一例)37が一端側から挿入され、コイル状スプリング37の他端側が端板26で固定されている。
なお、符号38は端子部に接続する補償導線用の挿入口、符号39は外管31に端子台35を固定するロックナット、符号40は取付けフランジ23をフランジ21に固定するボルトを挿通させる挿通孔である。
【0019】
次に、本発明の一実施の形態に係る炉の内張耐火物の温度を測定する温度計10を用いて、高炉の炉底耐火物41の温度を測定する場合について詳細に説明する。
図3に示すように、先ず、高炉の炉底耐火物41に設けた測温用の穴42にガイドパイプ13の挿入管部20を挿入し、フランジ21を高炉の炉底鉄皮43に当接させて溶接により固定する。
次いで、ガイドパイプ13内に温度計本体17の測温部15が挿入されている支持管14を挿入し、図示しないガスケットを介して取付けフランジ23とフランジ21を、例えばボルトを用いて締結する。
【0020】
ここで、支持管14の先端からは、穴42の深さに応じて設定される長さだけ測温部15の先部側が突出するように調整しておく。このため、支持管14をガイドパイプ13に挿入していくと穴42の底部44に測温部15の先端部が先ず接触する。
そして、取付けフランジ23をフランジ21に当接した状態では、測温部15の先端部が穴42の底部44から押されて測温部15が後退しコイル状スプリング37が収縮して、測温部15を先端側に押す反力が発生している。このため、測温部15の先端部と穴42の底部44とは密接状態になっている。
その結果、穴42の底部44の温度を正確に測温することができる。また、測温部15が後退した長さは、伸縮性接続ケーブル28が収縮することにより吸収される。
なお、符号45は高炉炉底に設けられたステーブクーラー、符号46、47は、ステーブクーラー45と炉底耐火物41の間、ステーブクーラー45と炉底鉄皮43の間にそれぞれ充填されたスタンプ材を示す。
【0021】
高炉の操業中に、炉底耐火物41や炉底鉄皮43が温度変動により膨張と収縮を繰り返していると、例えば、ステーブクーラー45とスタンプ材46との間に隙間が発生してステーブクーラー45の冷却能力が低下するようになる。
そこで、重油ペースト48を供給管49を介して発生した隙間に常時圧入して、発生した隙間を消失させステーブクーラー45の冷却能力の低下を防止する処置がとられる。
【0022】
圧入された重油ペースト48は発生した隙間を徐々に充填していくが、一部の重油ペースト48は炉底耐火物41中に設けた測温用の穴42の内面とガイドパイプ13の外面との間に形成されている隙間を通過して、ガイドパイプ13の先端に達し、穴42内に流出して、穴42内に充満し、支持管14内に流入しようとする。
【0023】
しかし、支持管14の先端部には縮径部25が設けられて、縮径部25の円環部材24の内側面と測温部15の外表面との間の隙間は0.1〜0.4mm幅に形成されている。
このため、重油ペースト48は形成されている隙間を通って支持管14の内側に侵入することができず、重油ペースト48を圧入しても測温部15の先端部が穴42の底部44から離脱することはない。
その結果、重油ペースト48を圧入してステーブクーラー45の冷却能力の低下を防止しながら、穴42の底部44側に測温部15の先端側を密接させて、炉底耐火物41の温度を正確に測温することができる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記した実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の炉の内張耐火物の温度を測定する温度計を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。例えば、端子及び伸縮性接続ケーブルにそれぞれ使用する熱電対素線は、測温部に使用するシース型熱電対に用いた熱電対素線と同一の熱電対素線を使用したが、シース型熱電対に用いた熱電対用の補償導線に使用されている素線を使用することもできる。
また、温度計を高炉の炉底耐火物の温度測定に対して適用した場合について説明したが、高炉の他の部位の内張耐火物の温度測定や、加熱炉、焼却炉等の一般的な工業炉の内張耐火物の温度測定に対しても適用できる。
【0025】
【発明の効果】
請求項1及び2記載の炉の内張耐火物の温度を測定する温度計においては、炉の内張耐火物中に設けた測温用の穴にそれぞれ挿入され、基部が炉の鉄皮に固定されるガイドパイプと、ガイドパイプ内に隙間を開けて挿入され、基部がガイドパイプに固定され、その先部側がガイドパイプの先端から突出し、先端部に内径が縮小した縮径部が設けられている支持管と、支持管内に隙間を開けて挿入され、支持管の先端から測温部の先部側が突出して測温部の先端部が穴の底部と密接する温度計本体とを有し、縮径部と温度計本体の外表面との間に0.1〜0.4mm幅の隙間が形成されるので、温度計本体を支持管の内側で自由に進退させると共に、温度計本体と支持管との隙間に外部から物質、例えば、高粘性物質の侵入を防止することができ、温度計本体の測温部の先端部を測温用の穴の底部に常時密接させることが可能になる。
その結果、内張耐火物中に測温用に設けた穴の底部の温度を正確に測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る炉の内張耐火物の温度を測定する温度計を説明する部分側断面図である。
【図2】同炉の内張耐火物の温度を測定する温度計の支持管及び温度計本体を説明する部分側断面図である。
【図3】同炉の内張耐火物の温度を測定する温度計を高炉の炉底に設置した場合の説明図である。
【符号の説明】
10:温度計、11:内張耐火物、12:穴、13:ガイドパイプ、14:支持管、15:測温部、16:底部、17:温度計本体、18:鉄皮、19:開口部、20:挿入管部、21:フランジ、22:支持管本体、23:取付けフランジ、24:円環部材、25:縮径部、26:端板、27:端子、28:伸縮性接続ケーブル、31:外管、35:端子台、36:段付き加工部、37:コイル状スプリング、38:挿入口、39:ロックナット、40:挿通孔、41:高炉の炉底耐火物、42:穴、43:炉底鉄皮、44:底部、45:ステーブクーラー、46、47:スタンプ材、48:重油ペースト、49:供給管
Claims (2)
- 炉の内張耐火物中に設けた測温用の穴に挿入され、基部が前記炉の鉄皮に固定されるガイドパイプと、
前記ガイドパイプ内に隙間を開けて挿入され、基部が前記ガイドパイプに固定され、その先部側が該ガイドパイプの先端から突出し、先端部に内径が縮小した縮径部が設けられている支持管と、
前記支持管内に隙間を開けて挿入されてバネを介して前後進可能に設けられ、該支持管の先端から測温部の先部側が突出して該測温部の先端部が前記穴の底部と密接する温度計本体とを有することを特徴とする炉の内張耐火物の温度を測定する温度計。 - 請求項1記載の炉の内張耐火物の温度を測定する温度計において、前記縮径部と前記温度計本体の外表面との間に0.1〜0.4mm幅の隙間が形成されることを特徴とする炉の内張耐火物の温度を測定する温度計。
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