JP4193726B2 - 同期誘導電動機の回転子及び圧縮機 - Google Patents
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また、固定子鉄心(図示せず)に主巻線及び補助巻線からなる巻線が施され、起動コンデンサを介して、固定子巻線に単相交流電源が接続された場合、主巻線及び補助巻線で作られる合成磁界は楕円形状になることが多い。特に電動機の起動時は楕円磁界が強くなり、楕円磁界の方向と回転子鉄心のd軸またはq軸の方向がほぼ一致してしまうと、スロットに鎖交する磁束がなくなって、スロットに流れる二次電流が小さくなり、電動機を起動できないという課題があった。
また、起動時には誘導トルクによって確実に起動できる信頼性の高い同期誘導電動機を得ることを目的とする。
また、固定子鉄心でできる磁界と回転子鉄心のd軸及びq軸の方向とをずらすことで起動時に楕円磁界になっても確実にスロットに二次電流を流すことができ、信頼性の高い同期誘導電動機の回転子を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態1について図を用いて説明する。図1は実施の形態1である同期誘導電動機の回転子鉄心を示す断面図であり、回転軸に垂直な方向の断面を示している。同期誘導電動機の一例として、ここでは2極の磁極突起を有する回転子について説明する。
図1において、回転子鉄心1は磁性材である電磁鋼板により構成され、厚さは0.1〜1.5mm程度の円板状であり複数枚積層して回転子鉄心1を形成する。この回転子鉄心1を構成する電磁鋼板に設けられ互いに並設された複数のスリット2は、内部に非磁性材でかつ導電性材の充填材、例えばアルミニウムが充填されている。また、複数のスロット3が回転子鉄心1を構成する電磁鋼板の外周近傍の円周に沿って設けられ、大部分のスロット3は並設するスリット2の長手方向の延長線上の両端部に配置されている。このスロット3もスリット2と同様に内部に非磁性材でかつ導電性材として、アルミニウムが充填されている。隣り合うスリット2の間は電磁鋼板で構成され、磁路となるストリップ4が形成される。さらに、回転子鉄心1の外周部には、スリット2またはスロット3の外側に0.1〜数mm程度の薄い部分で連結された電磁鋼板の外周薄肉部5が形成されている。シャフト6は圧入や焼き嵌めなどにより回転子鉄心1に固着され、回転子鉄心1とシャフト6は一体で回転する。またスリット2とスロット3との間の薄肉部7は、0.1〜数mm程度の幅の磁性材である電磁鋼板であり、スリット2とそのスリット2の端部に配置されたスロット3を分離するように構成されている。以下、この薄肉部7をリブと称する。リブ7によってスリット2と分離されているスロット3の外周側の外周薄肉部5の一部には、非磁性材または空間による非磁性部分である間隙8を設け、電磁鋼板の外周薄肉部5の一部を磁気的に分離している。この非磁性部分は、ここではスロット3の外周側にある外周薄肉部5の一部を例えば切断してオープンにしたオープンスロットとし、なにも充填せずに空間で構成している。また、10は必要に応じて設けられた開口部で、回転子鉄心1の積層方向に貫通して設けられた穴であり、冷凍サイクルを構成する圧縮機などに本電動機を用いた場合に冷媒などの通路となる。
固定子巻線に50Hz及び60Hzの商用電源を接続して同期誘導電動機を運転させた場合、かご形の二次導体に二次電流が流れるため、特別な起動装置を必要とせずに電動機を起動することができる。このため、低コストな同期誘導電動機を得ることができる。
また、d軸とq軸による磁極突起を有し、リラクタンストルクを発生するので同期運転が可能となるため、通常運転時は二次銅損を低減させた高効率な電動機を得ることができる。
さらに、リブ7を設けることで、回転子の径方向の強度を強くするように作用するので、回転時の遠心力に対する強度を高めることにもなる。
本発明の実施の形態2を図に基づいて説明する。図5は実施の形態2に係る同期誘導電動機の回転子を示す断面図である。
回転子鉄心1の回転中心を通りスリット2の長手方向に延びる方向をA軸とし、回転中心を通ってA軸に電気角で90度ずれた軸をB軸とする。図5には回転子の一例として2極の構成のものを示しているので、A軸とB軸とは機械角では90度の角度をなしている。
図中、AOは固定子鉄心(図示せず)の中心であり、回転子の回転中心を示し、BOはスリット2及びスロット3をA軸及びB軸に非対称に配置した場合に回転子鉄心1に形成されるq軸とd軸との交点を示している。
例えば、上記ではB軸の向かって左側のスロットのみを移動したが、B軸の向かって右側のスロットのみを移動しても、上記と同様の構成、作用効果を得ることができる。また、B軸の左側と右側のスロットの両方を、電磁鋼板の外周に沿って互いに逆方向にずらしてもよいし、同方向にずらしてもよい。電磁鋼板の外周近傍に複数設けられるスロット3をA軸及びB軸に非対称な位置に配置することで、移動後のスロット3及びスリット2で形成されるd軸及びq軸が共に回転子の回転中心を通らないように構成すればよい。
このようにして、スロット3はかご形二次導体の一部をなすように、電磁鋼板の外周に沿ってずらし、かつ、スリット2及びスロット3の配置で形成されるd軸及びq軸が回転中心を通らないように構成すれば、起動時に楕円磁界が発生してもその方向とd軸またはq軸が一致しないので、スロット3に二次電流が流れて電動機を起動するために必要な誘導トルクを得ることができる。従って、固定子巻線に単相交流電源が接続された場合でも確実に電動機を起動することができ、起動性がよく信頼性の高い同期誘導電動機の回転子を得ることができる。
このようにスリット2及びスロット3をA軸及びB軸に対して非対称に配置すると、固定子鉄心の中心AOと回転子鉄心のd軸及びq軸の中心BOがずれることになる。このため、起動時に楕円磁界が発生してもその方向とd軸またはq軸が一致しないので、2極の場合と同様、スロット3に二次電流が流れて電動機を起動するために必要な誘導トルクを得ることができる。従って、固定子巻線に単相交流電源が接続された場合でも確実に電動機を起動することができ、起動性がよく信頼性の高い同期誘導電動機の回転子を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態3を図に基づいて説明する。図7は実施の形態3である同期誘導電動機の回転子に係り、リブ7近傍を拡大して示す説明図である。リブ7及びスロット3で形成された角部と、リブ7及びスリット2で形成された角部7aをなるべく小さい寸法の丸取り形状に構成したものである。
また、この実施の形態におけるリブ7の角部7aの丸取りは、図1に示す実施の形態1または実施の形態2のどちらにも適用できる。
以下、本発明の実施の形態4を図に基づいて説明する。図8は本発明の実施の形態4に係る同期誘導電動機の回転子を示す断面図であり、スロット3とスリット2とを分離する薄肉部であるリブ7の一部に、そのリブ7を通る磁束の流れを妨げる非磁性材または空間による非磁性部分13を設けたものである。この図では非磁性部分13として、非磁性材であるアルミニウムを充填している。図9は図8の丸で囲んだa部を拡大して示す説明図である。
本実施の形態は、リブ7の一部の例えば中央部に、スリット2及びスロット3を接続する非磁性部分13を設けた。非磁性部分13では磁気抵抗が高くなるため、リブ7を通るq軸方向の漏れ磁束を低減することが可能であり、効率のよい同期誘導電動機の回転子を得ることができる。
この非磁性部分13は、例えばスロット3やスリット2などに充填されている非磁性材でかつ導電性材であるアルミニウムをダイカスト法により充填させると、製造工程を変更することなく回転子鉄心1の形状を変更するだけで製造することができる。
また、図1、図3、図4ではスロット3の全てに関し、その外周側にスロット3と電磁鋼板の外周を接続するオープンスロット8を設けたが、これに限るものではない。リブ7で分離されたスロット3のうちで、少なくとも一つのスロット3の外周側に非磁性部分を設けることで、その部分の外周薄肉部5を通る磁束を防止でき、そのスロット3に有効にニ次電流を有効に流すことができ、さらにq軸方向の漏れ磁束を低減できるので、ある程度の効果がある。
さらに、図8、図9における非磁性部分13もすべてのスロット3やリブ7に設けなくてもよく、少なくとも一つに設ければ、ある程度の効果を奏することができる。
2 スリット
3 スロット
4 ストリップ
5 外周薄肉部
6 シャフト
7、7a 薄肉部
8 非磁性部分
11 固定子鉄心
12 固定子巻線
13 非磁性部分
14 固定子スロット
Claims (9)
- 複数枚積層して回転子鉄心を形成する円板状の電磁鋼板と、前記電磁鋼板に設けられ、磁束の流れやすい方向であるd軸及び磁束の流れにくい方向であるq軸で磁極突起を形成するよう互いに並設された細長い形状の複数のスリットと、前記電磁鋼板の外周近傍に複数設けた導電性材が充填されたスロットであって、その一部を前記スリットの両端部に配置したスロットと、を備え、前記回転子鉄心の回転中心を通り前記スリットの長手方向に延びる方向をA軸とし、前記回転中心を通って前記A軸に電気角で90度ずれた軸をB軸として、前記A軸及び前記B軸のそれぞれに前記スリット及び前記スロットを対称に配置した時の前記スリット及び前記スロットの位置に対し、少なくとも一つの前記スロットを前記対称な位置から前記電磁鋼板の外周に沿ってずれた位置に配置して、前記スリット及び前記スロットで形成される前記d軸及び前記q軸がそれぞれ前記回転中心を通らないように構成したことを特徴とする同期誘導電動機の回転子。
- 前記磁束の流れやすいd軸が通る前記電磁鋼板の外周部に対し、前記回転中心に対して電気角で180度ずれた位置の外周部近傍に前記スロットの1つを配置したことを特徴とする請求項1記載の同期誘導電動機の回転子。
- 少なくとも一つの前記スリットとそのスリットの端部に配置する前記スロットとを分離する磁性材の薄肉部を設けたことを特徴とする請求項2記載の同期誘導電動機の回転子。
- 前記薄肉部で前記スリットと分離された前記スロットのうち、少なくとも一つのスロットの外周側に設けられた電磁鋼板の外周部の一部に設けた非磁性材または空間による非磁性部分を備えたことを特徴とする請求項3記載の同期誘導電動機の回転子。
- 前記スロットの外周側に設けた非磁性部分の周方向の長さを、前記回転子鉄心とその周囲に配置される固定子鉄心の空隙の長さ以上としたことを特徴とする請求項1または請求項4記載の同期誘導電動機の回転子。
- 外周側に前記非磁性部分を有するスロットを複数備え、隣接する前記非磁性部分間の前記回転中心から見た角度の少なくとも1つが、他の隣接する非磁性部分間の角度と異なるように前記非磁性部分を配置し、前記回転子が回転する際、前記非磁性部分が不規則に回転位置にくるよう配置したことを特徴とする請求項1または請求項4記載の同期誘導電動機の回転子。
- 前記スロットと前記スリットとを分離する前記薄肉部の一部に非磁性材または空間による非磁性部分を設けたことを特徴とする請求項3記載の同期誘導電動機の回転子。
- 単相交流電源を印加して運転することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の同期誘導電動機。
- 請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の同期誘導電動機の回転子を備えたことを特徴とする圧縮機。
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