JP4192622B2 - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を主要成分として含有するジカルボン酸から誘導されるポリアミド樹脂に、無機充填材を溶融混練して得られる、機械的特性、耐熱性、耐薬品性に優れたポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は、機械的性質、熱的性質に優れるため、広い範囲で工業的に用いられている。その中でもナイロン66は、その強靱性、電気特性、耐熱性、耐油性を生かして電気製品や自動車の部品分野に利用されている。また、ナイロン66を無機充填材で強化した材料は、機械的特性に優れるため、より高度な機械部品分野において使用されている。
【0003】
しかしながら、ガラス繊維強化ナイロン66は、ガラス転移温度以上の高温雰囲気下においては剛性が低下して寸法が変化するという問題があり、このことは高温雰囲気下で使用される電子部品材料としては致命的な欠陥となる。また、自動車エンジン冷却水である不凍液(ロングライフクーラント)の用いられる用途、例えばラジエータータンク、リザーバタンクあるいはヒートコアのような冷却系部品用途としては、特に吸水により剛性が低下して寸法が変化したり、長時間に亘る高温不凍液との接触によってポリマー材料の劣化が促進されるなどの問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、ポリアミドの主鎖中に芳香族基を導入してガラス転移温度を高め、吸水性を抑制する方法が有効であることが知られている。その例として、特許文献1、特許文献2では、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸から成るポリアミド樹脂が開示されているが、ガラス転移温度は未だ十分とは言えず、無機充填材としてガラス繊維で強化した材料においても、高温雰囲気下や不凍液接触下での使用においては満足できるものではなかった。このように従来技術では、機械的特性、耐熱性、耐薬品性を十分に満足するポリアミド樹脂組成物を得ることは困難であった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−156130号公報(実施例1〜6)
【特許文献2】
特開平3−7761号公報(実施例1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸を主要成分として構成されるポリアミド樹脂に無機充填材を溶融混練して得られるポリアミド樹脂組成物が、優れた機械的特性、耐熱性、更に耐薬品性を有することを見出し、本発明に至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、
(1)(A)ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸から構成されるポリアミド樹脂100重量部に、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維5〜100重量部を溶融混練して成ることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【0008】
(2)(A)のポリアミド樹脂の構成成分として、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸以外の共重合成分を10モル%未満含む前記(1)記載のポリアミド樹脂組成物。
【0009】
(3)(A)のポリアミド樹脂の融点が290〜330℃であり、かつガラス転移温度が130℃以上であることを特徴とする前記(1)または(2)記載のポリアミド樹脂組成物。
【0010】
(4)(A)のポリアミド樹脂の相対粘度が1.5〜5.0であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
【0011】
(5)自動車不凍液との接触下、130℃/500時間浸漬処理を行った際の相対粘度保持率が80%以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
【0012】
(6)(A)のポリアミド樹脂がペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を加熱重縮合して得られることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
【0013】
(7)(A)のポリアミド樹脂が、ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(5T塩)および全体の塩量に対して30重量%以上、69重量%以下のヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(6T塩)の混合物を加熱重縮合して得られることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明は、(A)ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸を主要成分として構成された共重合ポリアミド樹脂に(B)無機充填材を溶融混練して得られる、強度、剛性、耐熱性、耐薬品性に優れたポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【0016】
本発明において主要成分とは、構成成分のうち、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸の全モル数が少なくとも90モル%以上、好ましくは95モル%以上含むポリアミドを言う。
【0017】
本発明で用いられる融点は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、溶融状態から20℃/minの降温速度で30℃まで降温した後、20℃/minの昇温速度で昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度と定義する。但し吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、温度の高いピークを融点とする。
【0018】
本発明で用いられるガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、溶融状態からドライアイスで急冷後、20℃/minの昇温速度で昇温した場合に現れる階段状吸熱ピークの終点の温度と定義する。
【0019】
本発明のポリアミド樹脂組成物の内、(A)成分として用いられるポリアミド樹脂の融点は290〜330℃であることが好ましい。融点が290℃未満の場合は耐熱性が低下するため、融点が330℃より高い場合には無機充填材との溶融混練や成形の際に分解が促進されて分子量の低下が著しくなるため、融点は290〜330℃であることが好ましい。ガラス転移温度は130℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度が130℃未満の場合には、高温の自動車不凍液に長時間接触した際の吸液率が大きく加水分解による機械的強度の低下が大きいため、ガラス転移温度は130℃以上であることが好ましい。またガラス転移温度は180℃を越えることはない。
【0020】
(A)成分のポリアミド樹脂の重合度に関しては、0.01g/mlとした98%硫酸溶液の25℃における相対粘度が1.5〜5.0であることが好ましく、1.8〜4.0であることがさらに好ましい。相対粘度が1.5未満では無機充填材と溶融混練した組成物においても実用的強度が不十分であり、5.0以上では流動性が低下し成形加工性が損なわれるので好ましくない。
【0021】
(A)成分のポリアミド樹脂の製造方法としては、公知の方法が適用可能であり、例えば「ポリアミド樹脂ハンドブック」(福本修編)等に開示されている方法が使用できる。ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンと、テレフタル酸の混合物を、高温で加熱し脱水反応を進行させる加熱重縮合法、また、ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンの混合物を水に溶解し、テレフタル酸クロリドを水と混ざらない有機溶媒に溶解しておき、これら水相と有機相の界面で重縮合させる方法(界面重縮合法)などが挙げられる。ここで、加熱重縮合法とは、製造時のポリアミド樹脂の最高到達温度を200℃以上に上昇させる製造プロセスと定義する。界面重縮合法は、有機溶媒を用いること、重縮合時の副生成物となる塩酸を中和することが必要であることなどプロセスが複雑であるため、ポリアミド樹脂の製造方法としては加熱重縮合法を用いることが好ましい。
【0022】
加熱重縮合法としては、(1)ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(5T塩)とヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(6T塩)の混合水溶液を15〜50kg/cm2の水蒸気圧下で加熱反応せしめ、次いで系内の水を放出させながら溶融重縮合を行う溶融重合法、(2)原料水溶液を150〜300℃で加熱して一旦プレポリマーを作り、これをさらに融点以下の温度で固相重合する方法あるいは溶融押出機で高重合度化する方法などが挙げられる。本発明のポリアミド樹脂は融点が熱分解温度に近く、(1)の重合方法では融点以上での長時間の熱履歴がポリマーの分解や劣化を引き起こす懸念がある。そのため低温重合プロセスである(2)の重合方法が好ましい。
【0023】
ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(5T塩)、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(6T塩)の混合比を変化させることによって、ポリアミド中の共重合組成比を変化させることができる。
【0024】
6T塩が全体の塩量に対して、70重量%以上、あるいは29重量%以下である場合には、得られるポリアミドの融点が330℃より大きくなり無機充填材との溶融混練や成形の際に分解が促進されて分子量の低下が著しくなるため、6T塩は全体の塩量に対して、30重量%以上、69重量%以下にすることが好ましい。
【0025】
(A)成分のポリアミド樹脂を製造する際には、構成成分のうち10モル%未満、好ましくは5モル%未満で、かつ、本発明の効果を損なわない量で他の成分を共重合することができる。代表的な共重合成分としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタンのような脂環式ジアミン、キシリレンジアミンのような芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0026】
本発明を構成するペンタメチレンジアミンの製法に制限はないが、例えば、2−シクロヘキセン−1−オンなどのビニルケトン類を触媒としてリジンから合成する方法(Chemistry Letters,893(1986)、特公平4−10452)や、リジン脱炭酸酵素を用いてリジンから転換する方法などが既に提案されている。前者の方法では、反応温度が約150℃と高いのに対し、後者の方法は100℃未満であり、後者の方法を用いる方が、副反応をより低減できると考えられるため、原料としては後者の方法によって得られたペンタメチレンジアミンを用いることが好ましい。
【0027】
後者の方法で使用するリジン脱炭酸酵素は、リジンをペンタメチレンジアミンに転換させる酵素であり、Escherichia coli K12株をはじめとするエシェリシア属微生物のみならず、多くの生物に存在することが知られている。
【0028】
本発明において使用するのが好ましいリジン脱炭酸酵素は、これらの生物に存在するものを使用することができ、リジン脱炭酸酵素の細胞内での活性が上昇した組換え細胞由来のものも使用できる。
【0029】
組換え細胞としては、微生物、動物、植物、または昆虫由来のものが好ましく使用できる。例えば動物を用いる場合、マウス、ラットやそれらの培養細胞などが用いられる。植物を用いる場合、例えばシロイヌナズナ、タバコやそれらの培養細胞が用いられる。また、昆虫を用いる場合、例えばカイコやその培養細胞などが用いられる。また、微生物を用いる場合、例えば、大腸菌などが用いられる。
【0030】
また、リジン脱炭酸酵素を複数種組み合わせて使用しても良い。
【0031】
このようなリジン脱炭酸酵素を持つ微生物としては、バシラス・ハロドゥランス(Bacillus halodurans)、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、セレノモナス・ルミナンチウム(Selenomonas ruminantium)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ストレプトマイセス・コエリカーラ(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・ピロサス(Streptomyces pilosus)、エイケネラ・コロデンス(Eikenella corrodens)、イユバクテリウム・アシダミノフィルム(Eubacterium acidaminophilum)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、ナイセリア・メニンギチデス(Neisseria meningitidis)、テルモプラズマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum)、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)またはコリネバクテリウム・グルタミカス(Corynebacterium glutamicum)等が挙げられる。
【0032】
リジン脱炭酸酵素を得る方法に特に制限はないが、例えば、リジン脱炭酸酵素を有する微生物や、リジン脱炭酸酵素の細胞内での活性が上昇した組換え細胞などを適当な培地で培養し、増殖した菌体を回収し、休止菌体として用いることも可能であり、また当該菌体を破砕して無細胞抽出液を調製して用いることも可能であり、また必要に応じて精製して用いることも可能である。
【0033】
リジン脱炭酸酵素を抽出するために、リジン脱炭酸酵素を有する微生物や組換え細胞を培養する方法に特に制限はないが、例えば微生物を培養する場合、使用する培地は、炭素源、窒素源、無機イオンおよび必要に応じその他有機成分を含有する培地が用いられる。例えば、E.coliの場合しばしばLB培地が用いられる。炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボースや澱粉の加水分解物などの糖類、グリセロール、マンニトールやソルビトールなどのアルコール類、グルコン酸、フマール酸、クエン酸やコハク酸等の有機酸類を用いることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。有機微量栄養素としては、各種アミノ酸、ビタミンB1等のビタミン類、RNA等の核酸類などの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。それらの他に、必要に応じて、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
【0034】
培養条件にも特に制限はなく、例えばE.coliの場合、好気条件下で16〜72時間程度実施するのが良く、培養温度は30℃〜45℃に、特に好ましくは37℃に、培養pHは5〜8に、特に好ましくはpH7に制御するのがよい。なおpH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、さらにアンモニアガス等を使用することができる。
【0035】
増殖した微生物や組換え細胞は、遠心分離等により培養液から回収することができる。回収した微生物や組換え細胞から無細胞抽出液を調整するには、通常の方法が用いられる。すなわち、微生物や組換え細胞を超音波処理、ダイノミル、フレンチプレス等の方法にて破砕し、遠心分離により菌体残渣を除去することにより無細胞抽出液が得られる。
【0036】
無細胞抽出液からリジン脱炭酸酵素を精製するには、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、等電点沈殿、熱処理、pH処理等酵素の精製に通常用いられる手法が適宜組み合わされて用いられる。精製は、完全精製である必要は必ずしもなく、リジン脱炭酸酵素以外のリジンの分解に関与する酵素、生成物であるペンタメチレンジアミンの分解酵素等の夾雑物が除去できればよい。
【0037】
リジン脱炭酸酵素によるリジンからペンタメチレンジアミンへの変換は、上記のようにして得られるリジン脱炭酸酵素を、リジンに接触させることによって行うことができる。
【0038】
反応溶液中のリジンの濃度については、特に制限はない。
【0039】
リジン脱炭酸酵素の量は、リジンをペンタメチレンジアミンに変換する反応を触媒するのに十分な量であればよい。
【0040】
反応温度は、通常、28〜55℃、好ましくは40℃前後である。
【0041】
反応pHは、通常、5〜8、好ましくは、約6である。ペンタメチレンジアミンが生成するにつれ、反応溶液はアルカリ性へ変わるので、反応pHを維持するために無機あるいは有機の酸性物質を添加することが好ましい。好ましくは塩酸を使用することができる。
反応には静置または攪拌のいずれの方法も採用し得る。
リジン脱炭酸酵素は固定化されていてもよい。
反応時間は、使用する酵素活性、基質濃度などの条件によって異なるが、通常、1〜72時間である。また、反応は、リジンを供給しながら連続的に行ってもよい。
【0042】
このように生成したペンタメチレンジアミンを反応終了後、反応液から採取する方法としては、イオン交換樹脂を用いる方法や沈殿剤を用いる方法、溶媒抽出する方法、単蒸留する方法、その他通常の採取分離方法が採用できる。
【0043】
本発明のポリアミド樹脂組成物の内、(B)成分として用いられる無機充填材としては、繊維状/非繊維状無機強化材を挙げることができ、強度、剛性、耐熱性、寸法安定性の他、耐薬品性も改良できる。その充填材の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、タルク、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、モンモリロナイト、アスベスト、アルミノシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素およびシリカなどの非繊維状充填材が挙げられる。中でも繊維状充填材が好ましい。これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填材を2種類以上併用することも可能である。
【0044】
これら無機充填材の中でも本発明において好ましく用いられるのはガラス繊維または炭素繊維である。
【0045】
ガラス繊維は平均繊維径5〜15μmのガラス繊維であり、その繊維長には特に制限はない。通常、押出混練作業性の高いストランド長3mmのガラス繊維が使用できるが、ストランド長1mm以上のガラス繊維と繊維長20〜500μmのガラス繊維を混合物として原料に使用することもできる。またストランド長の異なるガラス繊維を2種以上併用する際には、用いるガラス繊維の平均径が2μm以上異なる種類のものを使用することも好ましい方法である。
【0046】
炭素繊維はPAN(ポリアクリロニトリル)系またはピッチ系の炭素繊維が挙げられる。また繊維形状としても、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョプドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。本発明においては、成形時などの繊維折損を抑えるため引張強度3.5GPa以上、引張伸び1%以上の炭素繊維を用いることが好ましい。高強度・高伸度タイプのものを用いることで、溶融混練、成形時に繊維の折損が無く、機械的特性の向上効果が著しいポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0047】
本発明のポリアミド樹脂組成物中の無機充填材含有量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して5〜100重量部の範囲である必要があり、30〜80重量部の範囲がより好ましい。含有量が5重量部未満の場合には強度、剛性、耐薬品性の向上効果が小さいため5重量部以上であることが必要である。また100重量部より多い場合には溶融時の流動性が悪くなり成形品を射出成形することが困難となるばかりでなく、成形品外観が悪くなるため100重量部以下である必要がある。
【0048】
これら無機充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。また、モンモリロナイトについては、有機アンモニウム塩で層間イオンをカチオン交換した有機化モンモリロナイトを用いてもよい。
【0049】
また本発明のポリアミド樹脂組成物にエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランの添加は、機械的強度、靭性などの向上に有効である。その具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0050】
更に他種ポリマーを添加することで、耐衝撃性を改良することもできる。他種ポリマーとしては、他のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、SAN樹脂、ポリスチレン等を挙げることができ、オレフィン系化合物および/または共役ジエン系化合物を重合して得られる(共)重合体などの変性ポリオレフィンが好ましく用いられる。
【0051】
上記(共)重合体としては、エチレン系共重合体、共役ジエン系重合体、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体などが挙げられる。
【0052】
ここで、エチレン系共重合体とは、エチレンと他の単量体との共重合体および多元共重合体をさし、エチレンと共重合する他の単量体としては炭素数3以上のα−オレフィン、非共役ジエン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、α,β−不飽和カルボン酸およびその誘導体などの中から選択することができる。
【0053】
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテン−1、オクタセン−1などが挙げられ、プロピレン、ブテン−1が好ましく使用できる。非共役系ジエンとしては5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−クロチル−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−メチル−5−ビニルノルボルネンなどのノルボルネン化合物、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、4,7,8,9−テトラヒドロインデン、1,5−シクロオクタジエン1,4−ヘキサジエン、イソプレン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11−トリデカジエンなどが挙げられ、好ましくは5−メチリデン−2−ノルブルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどである。α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸などが挙げられ、その誘導体としてはアルキルエステル、アリールエステル、グリシジルエステル、酸無水物、イミドを例として挙げることができる。
【0054】
また、共役ジエン系重合体とは少なくとも1種以上の共役ジエンを構成成分とする重合体であり、例えば1,3−ブタジエンの如き単独重合体や1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンから選ばれる1種以上の単量体の共重合体などが挙げられる。これらの重合体の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。
【0055】
共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体とは共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素からなるブロック共重合体またはランダム共重合体であり、これを構成する共役ジエンの例としては前記の単量体が挙げられ、特に1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。芳香族ビニル炭化水素の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、中でもスチレンが好ましく使用できる。また、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体の芳香環以外の二重結合以外の不飽和結合の一部または全部が水添により還元されているものも好ましく使用できる。
【0056】
また、ポリアミド系エラストマーやポリエステル系エラストマーを用いることもできる。これらの耐衝撃性改良材は2種以上併用することも可能である。
【0057】
このような耐衝撃性改良剤の具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、未水添または水添スチレン/イソプレン/スチレントリブロック共重合体、未水添または水添スチレン/ブタジエン/スチレントリブロック共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、(「g」はグラフトを表わす、以下同じ)、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−マレイミド共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−N−フェニルマレイミド共重合体およびこれら共重合体の部分ケン化物、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート/グリシジルアクリレート共重合体、エチレン/グリシジルエーテル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン/2,5−ノルボルナジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−N−フェニルマレイミド共重合体、エチレン/ブテン−1−g−N−フェニルマレイミド共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/イソプレン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ナイロン12/ポリトリメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート/ポリトリメチレングリコール共重合体などを挙げることができる。この中で、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、水添スチレン/ブタジエン/スチレン−g−無水マレイン酸共重合体がさらに好ましく、エチレン/メタクリル酸共重合体およびこれら共重合体中のカルボン酸部分の一部または全てをナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、カルシウムとの塩としたもの、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体が特に好ましい。
【0058】
さらに、本発明のポリアミド樹脂には本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)を任意の時点で添加することができる。
【0059】
本発明のポリアミド樹脂組成物の調整方法は特定の方法に限定されないが、具体的かつ効率的な例として、原料のポリアミド樹脂、ガラス繊維などの無機充填材の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど公知の溶融混練機に供給して、用いるポリアミド樹脂の融点に応じて330〜350℃の温度で溶融混練する方法などが挙げることができる。
【0060】
本発明で得られるポリアミド樹脂組成物は、上述のとおり、耐薬品性、特に耐不凍液性に優れている。耐不凍液性は、自動車不凍液(ロングライフクーラント)を水で希釈した50vol%水溶液に試験片を浸漬し、130℃、500時間処理後の相対粘度を測定して、処理後/処理前×100で算出される相対粘度保持率で評価する。相対粘度保持率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。
【0061】
以上のように、本発明で得られるポリアミド樹脂組成物は、機械的特性、耐熱性の他、耐薬品性に優れるため、自動車や電気製品の部品に好適に使用することができ、当該組成物を溶融成形して得られる成形品は実用価値の非常に高いものである。
【0062】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0063】
[融点、ガラス転移温度測定]
セイコー電子工業製 ロボットDSC RDC220を用い、窒素雰囲気下、試料を約5mgを採取し、次の条件で測定した。
【0064】
試料を完全に融解させて3分間保持した後、ドライアイスで急冷し、20℃/minの昇温速度で昇温したときに観測される階段状吸熱ピークの終点をガラス転移温度(Tg)とした。またこれに続いて、溶融状態まで昇温し、20℃/minの降温速度で30℃まで降温した後、20℃/minの昇温速度で昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度を融点(Tm)とした。
【0065】
[相対粘度(ηr)測定]
98%硫酸中、0.01g/ml濃度、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定を行った。尚、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂に関しては、ガラスの重量分だけ余分に仕込み、硫酸溶解後、フィルターでガラスを除去して測定した。
【0066】
[引張試験]
ASTM D638に準じて23℃で実施した。
【0067】
[曲げ試験]
ASTM D790に準じて23℃で実施した。
【0068】
[耐不凍液性試験]
自動車不凍液(トヨタ純正ロングライフクーラント)をイオン交換水で希釈した50vol%水溶液に上記引張試験片を浸漬し、ギヤオーブン中130℃で500時間処理後の引張強度および相対粘度を測定し、処理後/処理前×100で算出される保持率で評価した。
【0069】
参考例1(リジン脱炭酸酵素の調整)
E.coli JM109株の培養は以下のように行った。まず、この菌株をLB培地5mlに1白金耳植菌し、30℃で24時間振とうして前培養を行った。
【0070】
次に、LB培地50mlを500mlの三角フラスコに入れ、予め115℃、10分間蒸気滅菌した。この培地に前培養した上記菌株を植え継ぎ、振幅30cmで、180rpmの条件下で、1N塩酸水溶液でpHを6.0に調整しながら、24時間培養した。こうして得られた菌体を集め、超音波破砕および遠心分離により無細胞抽出液を調製した。これらのリジン脱炭酸酵素活性の測定を定法に従って行った(左右田健次,味園春雄,生化学実験講座,vol.11上,P.179-191(1976))。
【0071】
リジンを基質とした場合、本来の主経路と考えられるリジンモノオキシゲナーゼ、リジンオキシダーゼおよびリジンムターゼによる転換が起こり得るので、この反応系を遮断する目的で75℃で5分間、E.coli JM109株の無細胞抽出液を加熱した。さらにこの無細胞抽出液を40%飽和および55%飽和硫酸アンモニウムにより分画した。こうして得られた粗精製リジン脱炭酸酵素溶液を用いて、リジンからペンタメチレンジアミンの生成を行った。
【0072】
参考例2(ペンタメチレンジアミンの製造)
50mM リジン塩酸塩(和光純薬工業製)、0.1mM ピリドキサルリン酸(和光純薬工業製)、40mg/L−粗精製リジン脱炭酸酵素(参考例1で調製)となるように調製した水溶液1000mlを、0.1N塩酸水溶液でpHを5.5〜6.5に維持しながら、45℃で48時間反応させ、ペンタメチレンジアミン塩酸塩を得た。この水溶液に水酸化ナトリウムを添加することによってペンタメチレンジアミン塩酸塩をペンタメチレンジアミンに変換し、クロロホルムで抽出して、減圧蒸留(8mmHg、70℃)することにより、ペンタメチレンジアミンを得た。
【0073】
参考例3(ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(5T塩)の調製)
参考例2のペンタメチレンジアミンの水溶液を、60℃のウォーターバスに浸して撹拌しているところに、テレフタル酸を添加していき、テレフタル酸添加量に対する水溶液のpH変化を調べ中和点を求めると、濃度30wt%においてpH7.24であった。pHが7.24になるように、ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩を調製した。
【0074】
参考例4(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(6T塩)の調製)
ヘキサメチレンジアミンの水溶液を、60℃のウォーターバスに浸して撹拌しているところに、テレフタル酸(三井化学製)を添加していき、テレフタル酸添加量に対する水溶液のpH変化を調べ中和点を求めると、濃度30wt%においてpH7.14であった。pHが7.14になるように、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩を調製した。
【0075】
参考例5(ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の塩(6I塩)の調製)
ヘキサメチレンジアミンの水溶液を、60℃のウォーターバスに浸して撹拌しているところに、イソフタル酸(AGIC製)を添加していき、イソフタル酸添加量に対する水溶液のpH変化を調べ中和点を求めると、濃度30wt%においてpH7.15であった。pHが7.15になるように、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の等モル塩を調製した。
【0076】
実施例1〜5
参考例3で調製した5T塩、参考例4で調製した6T塩、および過剰ペンタメチレンジアミン22.4倍mol/kmol5T塩を表1に示した組成になるように配合し、さらに全仕込量に対して水含有量が30wt%になるように、水を反応容器に仕込み、密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が25kg/cm2に到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力25kg/cm2、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出した。これを120℃で24時間真空乾燥して低次縮合物を得、得られた低次縮合物を240℃、0.3torrで12時間固相重合しポリアミド樹脂を得た。前記ポリアミド樹脂と無機充填材を表1に示す配合比でドライブレンドした後、40mmφ単軸押出機のホッパーに供給し、シリンダー温度を融点+20℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、無機充填材強化組成物を得た。この組成物を射出成形機により、シリンダー温度融点+15℃、金型温度140℃の条件でASTM規格の物性試験片を成形した。機械物性評価、耐不凍液性評価を行った結果を表1に示す。
【0077】
比較例1
ガラス繊維を溶融混練しない以外は、実施例1と同様に重合、成形、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0078】
比較例2
ガラス繊維300重量部を溶融混練する以外は、実施例1と同様に重合、溶融混練、成形、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0079】
比較例3
参考例4で調製した6T塩、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩(66塩、Rhodia製)、安息香酸(シグマアルドリッチジャパン製)10倍mol/kmol塩を表1に示した組成になるように配合し、さらに全仕込量に対して水含有量が30wt%になるように、水を反応容器に仕込み、密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が25kg/cm2に到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力25kg/cm2、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出した。これを120℃で24時間真空乾燥して低次縮合物を得、得られた低次縮合物を240℃、0.3torrで3時間固相重合しポリアミド樹脂を得た。前記ポリアミド樹脂とガラス繊維を表1に示す配合比でドライブレンドした後、40mmφ単軸押出機のホッパーに供給し、シリンダー温度316℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、ガラス繊維強化組成物を得た。この組成物を射出成形機により、シリンダー温度311℃、金型温度140℃の条件でASTM規格の物性試験片を成形した。機械物性評価、耐不凍液性評価を行った結果を表1に示す。
【0080】
比較例4
参考例4で調製した6T塩、参考例5で調製した6I塩、66塩、安息香酸10倍mol/kmol塩を表1に示した組成になるように配合し、さらに全仕込量に対して水含有量が30wt%になるように、水を反応容器に仕込み、密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が25kg/cm2に到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力25kg/cm2、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出した。これを120℃で24時間真空乾燥して低次縮合物を得、得られた低次縮合物を240℃、0.3torrで8時間固相重合しポリアミド樹脂を得た。前記ポリアミド樹脂とガラス繊維を表1に示す配合比でドライブレンドした後、40mmφ単軸押出機のホッパーに供給し、シリンダー温度332℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、ガラス繊維強化組成物を得た。この組成物を射出成形機により、シリンダー温度327℃、金型温度140℃の条件でASTM規格の物性試験片を成形した。機械物性評価、耐不凍液性評価を行った結果を表1に示す。
【0081】
比較例5
66塩、安息香酸(シグマアルドリッチジャパン製)5倍mol/kmol塩を配合し、さらに全仕込量に対して水含有量が30wt%になるように、水を反応容器に仕込み、密閉し、窒素置換した。加熱を開始して、缶内圧力が17.5kg/cm2に到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力を17.5kg/cm2で2時間保持した。その後1時間かけて缶内圧力を常圧に放圧し、更に−160mmHgの減圧下280℃で10分間反応させ重合を完了した。その後、重合缶からポリマーをガット状に吐出してペレタイズし、これを80℃で24時間真空乾燥して、ポリアミド樹脂を得た。前記ポリアミド樹脂とガラス繊維を表1に示す配合比でドライブレンドした後、40mmφ単軸押出機のホッパーに供給し、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、ガラス繊維強化組成物を得た。この組成物を射出成形機により、シリンダー温度280℃、金型温度80の条件でASTM規格の物性試験片を成形した。機械物性評価、耐不凍液性評価を行った結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【発明の効果】
本発明で得られるポリアミド樹脂組成物は、機械的特性、耐熱性、耐薬品性に優れるため、自動車や電気製品の部品に好適に使用することができ、当該組成物を溶融成形して得られる成形品は実用価値の非常に高いものである。
Claims (7)
- (A)ペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸から構成されるポリアミド樹脂100重量部に、(B)ガラス繊維および/または炭素繊維5〜100重量部を溶融混練して成ることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
- (A)のポリアミド樹脂の構成成分として、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸以外の共重合成分を10モル%未満含む請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
- (A)のポリアミド樹脂の融点が290〜330℃であり、かつガラス転移温度が130℃以上であることを特徴とする請求項1または2記載のポリアミド樹脂組成物。
- (A)のポリアミド樹脂の相対粘度が1.5〜5.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
- 自動車不凍液との接触下、130℃/500時間浸漬処理を行った際の相対粘度保持率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
- (A)のポリアミド樹脂がペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンを主要成分として含有する脂肪族ジアミンと、テレフタル酸を加熱重縮合して得られることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
- (A)のポリアミド樹脂が、ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(5T塩)および全体の塩量に対して30重量%以上、69重量%以下のヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の塩(6T塩)の混合物を加熱重縮合して得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
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