JP4191960B2 - IIs型制限エンドヌクレアーゼからのエンドヌクレアーゼをニッキングする遺伝子工学的方法 - Google Patents

IIs型制限エンドヌクレアーゼからのエンドヌクレアーゼをニッキングする遺伝子工学的方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、IIs型制限エンドヌクレアーゼを部位特異的ニッキング・エンドヌクレアーゼに変換する方法に関する。該遺伝子工学的方法の主題は、IIs型制限エンドヌクレアーゼに関係するもので、天然に存在するニッキング・エンドヌクレアーゼであるN.BstNBIに基づく。一般に、IIs型エンドヌクレアーゼは特異的配列に結合し、特異的配列の中ではなく近接するDNA鎖を両方とも切断する。N.BstNBIの2本鎖切断活性は、天然の突然変異により厳密に制限されており、通常の消化条件下ではDNAの一方の鎖のみにニック(切れ目)が入る。本発明に従って、第2の鎖の切断活性を不活化するか、若しくは標的のIIs型酵素と既知の又は操作されたニッキング酵素との間で切断ドメインを交換するかのいずれかによって、IIs型エンドヌクレアーゼから新しいニッキング・エンドヌクレアーゼを遺伝子工学的に作ることができる。
【0002】
【従来の技術】
制限エンドヌクレアーゼは、特異的なDNA配列を認識し、切断する酵素である。通常、メチル化し、それ故、同族の制限エンドヌクレアーゼによる消化から内因性の宿主DNAを保護する、対応DNAメチルトランスフェラーゼが存在する。制限エンドヌクレアーゼは、補因子の必要条件に基づいて3つのグループ:I型、II型(IIs型を含む)及びIII型に分類することができる。200を超える異なった特異性を有する3000を超える制限エンドヌクレアーゼが細菌から単離されている(Roberts and Macelis, Nucleic Acids Res., 26:338-350, 1998)。II型及びIIs型制限酵素は、補因子としてMg++のみを必要とし、双方ともに特異的な位置でDNAを切断するので、遺伝子工学及び分子クローニングで有用である。
【0003】
ほとんどの制限エンドヌクレアーゼは、向き合ったDNA鎖の2つのリン酸ジエステル結合の加水分解を介して、DNA基質の2本鎖切断に触媒作用を及ぼす(Heitman, Genetic Engineering 15:57-107, 1993)。例えば、EcoRI及びEcoRVのようなII型酵素は、パリンドローム(回文構造)配列を認識し、認識配列の中で両方の鎖を対称に切断する。IIs型エンドヌクレアーゼは、非対称のDNA配列を認識し、認識配列の外側で両方の鎖を切断する。
【0004】
文献上に一方のDNA鎖のみ切断し、そのためDNA分子にニック(切れ目)を入れるタンパク質がいくつかある。そのようなタンパク質のほとんどは、DNA複製、DNA修復、及びその他のDNAに関連する事象に関与する(Kornberg and Baker, DNA複製(DNA Replication)第2版、W.H. Freeman and Company, New York, 1992年)。例えば、バクテリオファージflのgpIIタンパク質は、ファージゲノムの複製開始における極めて複雑な配列を認識し、結合する。それはプラス鎖にニックを入れ、ローリングサークル複製を開始する;それはまた、取って代わったプラス鎖の連結にも関与し、1本鎖環状ファージDNAを生じる(Geider et al., J. Biol. Chem., 257:6488-6493, 1982; Higashitani et al., J. Mol. Biol., 237:388-400, 1994)。もう1つの例は、MutHタンパク質であり、それは、大腸菌(E.coli)におけるDNAのミスマッチ修復に関与する。MutHは、ダム・メチル化部位(GATC)に結合し、そこで、ミスマッチに結合する隣接するMutSとタンパク質複合体を形成する。MutLタンパク質がこの相互作用を促進し、メチル化されていないGATC部位の5’末端におけるMutHによる1本鎖切断を誘発する。次いで、ミスマッチしたヌクレオチドを取り除くために、エンドヌクレアーゼにより、ニックが翻訳される(Modrich, J. Biol. Chem., 264:6597-6600, 1989)。
【0005】
ニッキング酵素は、通常、長く、複雑な配列を認識し、及び/又はほかのタンパク質と会合して、製造や使用が難しいタンパク質複合体を形成するという事実のゆえに、実験室でDNAを操作するにはさほど有用ではない。このようなニッキング・タンパク質で市販されているものはない。ニッキング酵素、N.BstNBIは、好熱性細菌、Bacillus stearothermophilusから見い出された(Morgan et al., Biol. Chem., 381:1123-1125,2000;米国特許第6,191,267号)。N.BstNBIは、N.BstSEIのアイソシゾマーである(Abdurashitov et al., Mol. Biol(Mosk) 30:1261-1267, 1996)。gpII及びMutHとは異なって、N.BstNBIは制限エンドヌクレアーゼのように挙動する。それは、単純な非対称配列、5’−GAGTC−3’を認識し、ほかのタンパク質と相互作用することなく、認識部位の3’末端から4塩基離れた一方のDNA鎖のみを切断する。
【0006】
N.BstNBIは制限エンドヌクレアーゼ様に作用するので、DNA工学では有用なはずである。例えば、特異的な位置にニックを含有するDNA基質を生じさせるのに用いることができる。ギャップ、長い突き出し、又はその他の構造を持つDNAを作るためにもN.BstNBIを用いることができる。ニック又はギャップを含有するDNA鋳型は、DNA複製、DNA修復及びその他のDNAに関連する主題を研究する研究者にとって有用な基質である(Kornberg and Baker, DNA複製(DNA Replication)第2版、W.H. Freeman and Company, New York, 1992年)。ニッキング・エンドヌクレアーゼの可能性ある適用の1つは、等温DNA増幅法である鎖置換増幅(SDA)における使用である。SDAは、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)に対する代替法を提供する。それは熱サイクルなしで、30分で10倍の増幅をに達成することができる。SDAは制限酵素を用いて、DNA及びDNAポリメラーゼにニックを入れ、ニックの3’−OH末端を伸長して、下流のDNA鎖を置換する(Walker et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:392-396, 1992)。SDAアッセイは、単純(温度サイクルはなく、60℃でインキュベートするのみ)で且つ極めて迅速な(15分ほどと短い)検出法を提供し、ウイルスDNA又は細菌DNAを検出するのに用いることができる。SDAは、Mycobacterium tuberculosis及びChlamydia trachomatisのような感染病因を検出する診断法としても導入されつつある(Walker and Linn, Clin. Chem., 42:1604-1608, 1996; Spears et al., Anal. Biochem., 247:130-137, 1997)。
【0007】
SDAが機能するために、制限酵素によってDNA鋳型にニックが導入されなければならない。制限エンドヌクレアーゼのほとんどは2本鎖切断を行う。従って、以前の技術では、置換されたα−チオデオキシヌクレオチド(dNTPαS)がDNAに導入されていた。多数の制限エンドヌクレアーゼは、α−チオ置換によってリン酸ジエステル結合を切断しなくなる。従って、エンドヌクレアーゼは、プライマー領域の中に設計される置換されていない結合のみを切断する。α−チオデオキシヌクレオチドは通常のdNTP(ファルマシア社製)よりも8倍高価であり、通常のデオキシヌクレオチドに比べてBstDNAポリメラーゼによってうまく取り込まれない(J. Aliotta, L. Higgins and H. Kongの未発表データ)。別の方法としては、もし、ニッキング・エンドヌクレアーゼがSDAで使われたとしたら、DNA鋳型の中に自然にニックを導入しただろう。従って、ニッキング・エンドヌクレアーゼが使われる場合、SDA反応にdNTPαSはもはや必要でなくなるといえる。この考えがを試され、そしてその結果は本発明者らの推測に一致した。ニッキング・エンドヌクレアーゼであるN.BstNBI、dNTPs及びBstDNAポリメラーゼの存在下で目的のDNAを増幅することができる(米国特許第6,191,267号)。
【0008】
SDA及びその他のDNA工学への適用に有用であるため、さらなるニッキング・エンドヌクレアーゼに対する需要が高まっている。本発明者らは、ニッキング・エンドヌクレアーゼであるN.BstNBIをクローニングし、特徴付けしてみたが、本発明者らの結果は、N.BstNBIが低下した2本鎖切断活性を持つ自然に突然変異したIIs型エンドヌクレアーゼであることを示している(米国特許第6,191,267号)。この種のエンドヌクレアーゼの自然発生は、全く限られており、いかなる事象においても、それらを明瞭に検出する方法はない。今までにたった2つのニッキング・エンドヌクレアーゼが報告されており、両者は同一の特異性を認識する(米国特許第6,191,267号)。本明細書で開示される方法は、タンパク質工学のアプローチを用いた新しいニッキング・エンドヌクレアーゼを作製する新規なアプローチを提供する。
【0009】
新規のエンドヌクレアーゼを遺伝子工学的に作製するために長い間努力が尽くされたが、ほとんど成功しなかった。FokIは二者分担的性質(bipartite nature)である、すなわち、N−末端のDNA認識ドメイン及びC末端のDNA切断ドメインを示すIIs型制限酵素である(Wah et al., Nature 388:97-100, 1997)。規格構造的性質を有するFokIが認識ドメインについてその他のDNA結合タンパク質を置換することによって、新しい特異性を持った数種の酵素の発明を導いた。UbxホメオドメインのFokI切断ドメインへの融合によって、Ubx認識部位の両側で切断する酵素が得られた(Kim and Chandrasegaran, proc Natl. Acad. Sci. USA 91:883-887, 1994)。Z−DNAの近傍を切断することができる(Kim et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:12875-12879, 1997)及びGal4認識部位(Kim et al., Biol. Chem., 379:489-495, 1998)を切断することができる酵素を創出するためにも同様のアプローチが利用されてきた。しかしながら、かかるキメラ酵素には2つの大きな障害がつきまとっている。第1に、キメラ酵素は認識配列の両側の複数部位で切断する;従って、切断特異性がかなり弱くなる。第2に、キメラ酵素の酵素的切断活性は極めて低い。
【0010】
FokIの二量体形成界面(dimerization interface)は、そのPD−DTKの触媒部位から10アミノ酸残基も離れていないところに位置する平行の螺旋、α4及びα5によって形成される(Wah et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:10564-10569, 1998)。α4螺旋におけるD483A及びR487Aの変化は、FokIのDNA切断活性を大きく損なう(Bitinaite et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:10570-10575, 1998)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本特許出願では、配列特異性の高く且つ極めて活性の高いニッキング・エンドヌクレアーゼの創出を導くタンパク質工学的アプローチ及び方法を開示する。第1の実施例では、IIs型エンドヌクレアーゼMlyIの二量体形成ドメインを破壊することによってニッキング酵素を遺伝子工学的に作る方法を開示する。第2の実施例では、ドメイン交換アプローチを用いたIIs型エンドヌクレアーゼAlwIをニッキング酵素に変換する方法を開示する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、IIs型制限エンドヌクレアーゼをニッキング・エンドヌクレアーゼに変換するために、いくつかの方法が提供される。その最も単純な形態では、該方法は、好適な2本鎖ヌクレアーゼを同定すること、次いで、突然変異させたヌクレアーゼが認識配列内における又は認識配列に隣接している特異的位置にて一方のDNA鎖だけを切断するように2本鎖の切断に関与する二量体形成界面を突然変異させることを含む。
【0013】
好ましい実施態様の1つでは、突然変異は、二量体形成/切断に必要な1又はそれより多くのアミノ酸残基を置換することによって生じる。アプローチを説明する特に好ましい実施態様の1つでは、アミノ酸の改変によってIIs型制限エンドヌクレアーゼMlyIを突然変異させる。
【0014】
IIs型制限エンドヌクレアーゼMlyIは、N.BstNBIと同様に同じGAGTC配列を認識するが、MlyIは認識部位から5塩基目の両方のDNA鎖を切断し、一方N.BstNBIは認識部位から4塩基目の上の鎖のみを切断する(図1A及びB)。2つのアミノ酸残基(Tyr491及びLys494)をアラニンに変え、ニッキング・エンドヌクレアーゼN.MlyIを生じた。遺伝子工学的に作られたN.MlyIは依然として同じGAGTC配列を認識するが、GAGTCから5塩基下流の上の鎖のみを切断する(図1C)。
【0015】
もう1つの好ましい実施態様では、突然変異は、両方のDNA鎖ではなく、一方の鎖のみの切断を生じる二量体形成欠損であることが判っているものと、二量体形成界面を含有する領域を交換すること又はそれで置換することを含む。特に好ましい実施態様では、AlwIの二量体形成界面をN.BstNBIのそれに相当するドメインで置き換える。IIs型エンドヌクレアーゼ、AlwIは、N.BstNBIにより認識されるGAGTC配列とは異なったGGATC配列を認識する(図1D)。AlwIの二量体形成ドメインをN.BstNBIのそれに相当するドメインで置き換えた(図3)。得られたキメラエンドヌクレアーゼは、AlwIが認識するのと同じGGATC配列を認識するが、遺伝子工学的に作られたN.AlwIは、ニッキング酵素N.BstNBIと同様に一方のDNA鎖を切断する(図1E)。遺伝子工学的に作られた、N.MlyI及びN.AlwIは双方とも、極めて活性の高い、配列特異的で且つ鎖特異的なニッキング酵素である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、特異的認識配列内か又はその近傍の特異的位置において一方の鎖のみでDNAを切断するニッキング・エンドヌクレアーゼを創出する方法に関する。最も単純な形態では、本方法は、好適な2本鎖ヌクレアーゼを同定すること、次いで、一方の鎖のみで切断が生じるように、2本鎖切断に必要とされる二量体形成界面を突然変異させることを含む。突然変異は、二量体形成に必要な1又はそれより多くの残基の改変、若しくは二量体形成欠損が判っている相当する領域による二量体形成界面を含有する領域の置換のいずれを含んでもよい。もう1つの好ましい実施態様では、所望の結果を達成するために両方のタイプの突然変異を用いてもよい。
【0017】
本方法の実施態様の1つでは、認識部位に対して特定の位置で両方のDNA鎖を切断する既存のIIs型制限エンドヌクレアーゼを改変して、一方の鎖のみを切断するようにする。
【0018】
本発明は、好ましくは、MlyIやAlwIのような研究されている例と同様にIIs型エンドヌクレアーゼで開始し、N末端配列特異的DNA結合部分を、1又はそれより多くのアミノ酸によってC末端配列の非特異的切断部分に結合する。
【0019】
さらに好ましくは、出発エンドヌクレアーゼは、2本鎖切断の経過中に少量のニッキング中間生成物が認められるように2つの連続工程で切断するものである。
【0020】
本発明の方法は、第2の鎖の切断活性の不活化を可能にする切断部分における位置を同定する種々の手段を提供する。
【0021】
本発明のこの態様の好ましい実施態様において、有利な手段は、第2の鎖の切断に必要とされる二量体形成機能に決定的な候補残基の同定を可能にするために、関連する酵素、特に、N.BstNBIのアミノ酸配列によって標的酵素の切断部位のアミノ酸配列の多重配置を創出すること、次いで、第2の鎖の切断活性の抑制を評価することである。
【0022】
本発明の本態様のもう1つの実施形態において、多重配置(multiple alignment)によって決定的な二量体形成領域が同定できない場合、別の手段としては、標的酵素の切断部分で無作為に突然変異を創出し、次いで、第2の鎖の切断活性の抑制を評価することである。
【0023】
本発明の方法は、第2の鎖の切断活性の選択的不活化を可能にするために、二量体形成可能なエンドヌクレアーゼの切断部位を置換してもよい二量体形成欠損の切断部位も提供する。好ましい実施態様の1つでは、有利な手段は、配列認識部分と切断部分の境界の同定を可能にするために、関連する酵素のアミノ酸配列によって標的酵素の切断部位のアミノ酸配列の多重配置を創出することである。特に好ましい実施態様では、二量体形成面を含有する切断ドメインのその部分のみが置換の対象となる。
【0024】
もう1つの実施態様では、本発明は、認識部位GAGTCを持ち、認識部位の3’−側5塩基目を切断する制限酵素MylIに由来するニッキング酵素を提供する。
【0025】
さらにもう1つの実施態様では、本発明は認識配列GGATCを持ち、認識配列の3’側5塩基目を切断するAlwIに由来するニッキング酵素を提供する。
【0026】
一般に、1又はそれより多くのアミノ酸置換によってIIs型エンドヌクレアーゼをニッキング酵素に変換するには、以下の工程を用いることができる:
【0027】
工程1. 目的のIIs型エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子をクローニングし、配列決定をして、配列配置を行う。
【0028】
工程2. 目的のIIs型エンドヌクレアーゼが、性状分析されたIIs型制限エンドヌクレアーゼ、好ましくはニッキング酵素N.BstNBIとの配列類似性を共有していたら、配列配置によって、目的エンドヌクレアーゼの切断部分及び二量体形成部分を明らかにすることができる。もしそうでなければ、以下を参照のこと。
【0029】
工程3. いったん、切断/二量体形成の可能性がある部分の位置を決めたら、その部分に保存された荷電したアミノ酸残基を、好ましくはアラニンのような中性アミノ酸で置換する。次いで、一方のDNA鎖のみを切断する能力について、このような変異体の表現型をスクリーニングする(以下のMlyIの例を参照のこと)。
【0030】
別の方法として、単独で又はアミノ酸置換法と共に、ドメイン交換法を用いることができる。ドメイン交換法は以下の工程を含む。
【0031】
工程1. 目的のIIs型エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子をクローニングし、配列決定して、配列配置を行う。
【0032】
工程2. 目的のIIs型エンドヌクレアーゼが、性状分析されたIIs型制限エンドヌクレアーゼ、好ましくはニッキング酵素N.BstNBIとの配列類似性を共有していたら、配列配置によって、目的エンドヌクレアーゼの切断部分及び二量体形成部分を明らかにすることができる。もしそうでなければ、以下を参照のこと。
【0033】
工程3. いったん、切断/二量体形成の可能性がある部分の位置を決めたら、N.BstNBIのようなニッキング・エンドヌクレアーゼの相当する部分で上記部分を置き換える。遺伝子工学的に作ったニッキング・エンドヌクレアーゼと同様に天然のニッキング・エンドヌクレアーゼも両方共この目的に用いてもよい。一方のDNA鎖のみを切断する能力について、このような交換変異体の表現型をスクリーニングする(以下のAlwIの例を参照のこと)。
【0034】
アミノ酸の置換及びドメインの交換法は、別々に又は互いに関連して用いることができる。
【0035】
目的のIIs型エンドヌクレアーゼが、性状分析されたIIs型制限エンドヌクレアーゼとの配列類似性を共有していない場合、無作為の突然変異誘発を用いることができる。目的のIIs型エンドヌクレアーゼの突然変異誘発を行うには、一般に1又はそれより多くの以下のアプローチを用いることができる。
【0036】
配置法からの情報がない場合、以下の工程を用いてニッキング酵素を明らかにすることができる。手順は以下の3つの仮定条件に依存する。第1に、突然変異によって二量体形成機能が失われた場合、突然変異したエンドヌクレアーゼはモノマーとしてのみ存在する可能性があり、従って一方のDNA鎖のみ切断する。野生型よりも低いレベルの保護的メチル化の存在下で、おそらく非存在下であったとしても、かかる変異体は目で見えるはずである。第2に、それでもやはり、ニッキング活性を持つ酵素は宿主細胞のDNAに損傷を与え、それはDNA損傷反応(SOS)システムにより検出され、第3に、かかるニッキング・エンドヌクレアーゼの存在下では高いレベルのDNAリガーゼによって宿主細胞は、SOS反応から逃れることができる。
【0037】
好ましい実施態様では、2本鎖の切断活性を欠く候補を作製するには、先ず、無作為突然変異誘発を用いることができる。例えば、DNA酵素は、ヒドロキシルアミンで処理することができ、C/TトランジションをDNA鋳型に導入する、又は大腸菌のmutS株若しくはmutD株のような突然変異誘発が進む高い率を有する細胞中でDNAを増やすことができ;又はエチルメタンスルホネートのようなアルキル化剤の存在下で細胞を増殖させることができ、又は紫外線で細胞を処理することができる(Miller, Jeffrey H.Aの細菌遺伝学の短期コース:大腸菌及びそれに関連する細菌に関する実験室マニュアル及びハンドブック、単位4:突然変異誘発の83〜211ページ(1992年、Cold Spring Harbor Laboratory Pressより出版))。保護的修飾メチルトランスフェラーゼを欠くか、又は、さらに好ましくは、DNAを不完全に保護するレベルでそれを発現している宿主株を突然変異したプールで形質転換することにより、DNAの切断を大きく減らすか又は失くす突然変異を単離することができる。
【0038】
その後、DNAニッキング活性を発現する突然変異体に関して生き残りの間でスクリーニングするのに遺伝的スクリーニング法である、「エンドブルー」法を用いることができる。無作為の突然変異誘発及び機能喪失変異体に関する選抜に続いて、3種の機能喪失変異体が生じる可能性がある:1)完全に不活性;2)DNA切断を失うがDNAに結合することはできる;3)2本鎖DNAの切断活性を喪失するが、一方のDNA鎖を切断することができる(ニッキング活性)の3種である。相当するメチラーゼがない大腸菌細胞(dinD1::LacZ+融合を伴ったER1992)におけるエンドヌクレアーゼ遺伝子の限られた発現は、in vivoでDNAを損傷することができ、SOS反応を誘発し、その結果、X−galを含有する指示薬プレート上でSOS誘発の青いコロニーを生じる(米国特許第5,498,535号)。ニューイングランドバイオラブズ社(米国マサチューセッツ州、バーバリ)では、数種の好熱性制限エンドヌクレアーゼ遺伝子を直接クローニングするのに「エンドブルー」選抜法が上手く用いられてきた。この例では、保護的メチルトランスフェラーゼの非存在下若しくは低レベルのメチルトランスフェラーゼの存在下で生き残る遺伝子のプールでこの株を、又は、低レベルのメチルトランスフェラーゼの存在下若しくは非存在下の類似の株を形質転換し、依然として青色を誘導することができるクローンをさらなる研究のために保持する。
【0039】
最終的に、DNAニッキング活性を発現しているクローンを同定するために、N.AlwI及びN.MlyIに関する前の説明で記載したように、2本鎖エンドヌクレアーゼに対する単一部位を含有するプラスミド基質を用いて、DNAに切れ目(ニック:nick)を入れる能力について、機能喪失選抜で回収し、依然としてSOS反応を誘発することができる(従って、無意味な変異体でもなく、DNA結合の欠損変異体でもない)DNAプラスミドをスクリーニングする。
【0040】
2つの標的のIIs型エンドヌクレアーゼ、すなわちMlyI及びAlwIに対する方法の適用によって、以下に本発明をより十分に説明する。IIs型制限エンドヌクレアーゼ、MlyIの二量体形成機能は、切断−二量体形成ドメインにおける鍵となるアミノ酸残基の置換によって不活化された。IIs型エンドヌクレアーゼ、AlwIの切断−二量体形成ドメインは、二量体形成界面が不活化されている、N.BstNBIの相当するドメインと置き換えた。
【0041】
1. 二量体形成ドメインにおける部位特異的突然変異誘発によるIIs型エンドヌクレアーゼMlyIのニッキング・エンドヌクレアーゼへの変換
IIs型制限エンドヌクレアーゼMlyIは、N.BstNBIと同様にGAGTC配列を認識するが、MlyIは両方のDNA鎖を切断する一方で、N.BstNBIは上部の鎖しか切断しない(図1A及びB)。MlyIは、N.BstNBIと十分な配列類似性を共有する(45.3%の配列類似性及び32.1%の配列同一性、図2)。時間経過による切断反応は、MlyIが、先ずDNAにニックを入れ、次いで、さらに消化して最終的な線状形態にする連続方式でDNAの2本鎖を切断することを示した。ニッキング・エンドヌクレアーゼN.BstNBIの場合、おそらく自然の突然変異によって、その2本目の鎖の切断活性が損なわれており、このためニックの入ったDNAは効率的に線状DNAに変換されない。このことによって、通常の消化条件下において、ニックの入ったDNAの蓄積が生じる。ゲルろ過実験は、DNA及びMg++の存在下においてMlyIが二量体を形成することを示し、同一条件下ではN.BstNBIの二量体は認められなかった(C. Besnier and H. Kong、未発表データ)。このことは、第2の鎖の切断活性には、FokIの場合と同様に、おそらく二量体形成が介在していることを示唆している。このモデルに基づいて、突然変異誘発により二量体形成機能を破壊することによって、かかるIIs型エンドヌクレアーゼをニッキング・エンドヌクレアーゼに変換することができると仮定した。
【0042】
このようなエンドヌクレアーゼの切断ドメインとモデル酵素FokI(示さず)の間の配列配置によって、FokIのα4及びα5螺旋に相当するMlyIの推定二量体形成螺旋が同定された。第1のアプローチでは、MlyIにおいて、推定上のα4螺旋の中で又はその近傍で、二量体形成の可能性がある9つの残基を個々にアラニンに変えた(図2中、下線で示す)。変異体は、依然として2本鎖DNAの切断を行うことができた。従って、この配置法は決定的な残基を同定するには十分ではなかった。次いで、α5螺旋を調べた。推定上のα5螺旋領域における多重配列配置は、YGGKのモチーフを示し、それはMlyI及びPleI(示さず)には存在するが、N.BstNBIには存在しない(図2中、太字で強調した)。MlyIのYGGKモチーフにおけるTyr及びLys残基をAlaに変えた。
【0043】
PCRによる突然変異誘発法を用いて、プラスミドpUC19においてMlyI−Y491A/K494Aを発現する変異体コンストラクト(N.MlyIと命名、以下を参照のこと)を作った(Morrison and Desrosiers, Biotechniques 14:454-457, 1993)。組換えプラスミドの配列決定を行い、所望の二重変異を確認し、PCRの誤差をチェックした。変異体MlyIを含有する細胞の粗抽出物による予備的活性試験は有望だった。さらに精度の高い試験を行うためにN.MlyIタンパク質を精製した。精製工程には、アニオン交換体、カチオン交換体、及び2つのアフィニティカラムが含まれていた。最終試料の純度はSDS−ポリアクリルアミドゲルで調べた。N.MlyIは、タンパク質全体の95%を超えていた。
【0044】
ラムダDNAによって精製N.MlyIを調べた。2本鎖DNAの切断は検出されなかった。プラスミドDNAを用いてN.MlyIのニッキング活性をさらに調べた。ニッキング・エンドヌクレアーゼにより一方の鎖が切断された場合、未消化プラスミドの高次コイル形態は、ニックの入った閉鎖環状形態に変換され、制限酵素により近傍で2本鎖が切断された場合、線状形態に変換される。消化アッセイにプラスミドpNBI(MlyI認識部位を1つ含有する)を用いた場合、N.MlyI及びニッキング酵素であるN.BstNBIによってpNBIは、ニックの入った開放環状形態に変換され、野生型MlyIによって線状形態に変換された(図4)。同じアッセイにプラスミドpNB0(MlyI認識部位を含有しない)を用いた場合、pNB0は消化の後も高次コイル形態のままであった(図4)この結果は、N.MlyIのニッキング活性が配列特異的であることを示唆していた。pNB1を用いてN.MlyI活性を滴定した。37℃にて1時間で1μgのpNB1の完全なニッキングを達成するのに必要であるN.MlyIの量として、1単位を定義した。突然変異型MlyIの比活性は、タンパク質のmg当りおよそ400,000単位であり、それは野生型MlyIの比活性に極めてよく似ていた(37℃にて1時間で1μgのpNB1の完全な消化を達成するのに必要であるMlyIの量として単位を定義した場合)。
【0045】
N.MlyIの切断位置を正確に決定するために、遺伝子工学的に作ったN.MlyI及び野生型MlyIで消化した重合伸長産物とジデオキシ配列ラダーを比較することにより、各DNA鎖における切断部位をマッピングした。プラスミドpUC19を鋳型として用い、2つのプライマー、上の鎖にはプライマー1224及び下の鎖にはプライマー1233を用いた(図5)。上の鎖の伸長産物は、MlyI(図5のレーン5)及びN.MlyI(図5のレーン6)の双方により5’−GAGTC−3’配列の3’側における5塩基対で切断された。下の鎖は、MlyI(図5のレーン1)のみで切断され、N.MlyIエンドヌクレアーゼ(図5のレーン2)では切断されなかった。配列決定ゲルの結果は、N.MlyIは上の鎖のみを切断し、切断部位は、認識配列の3’側への5塩基対に位置することを示している。大腸菌のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片を消化産物に加えた場合、MlyI切断断片についてさらなる伸長は検出されなかったということは、MlyI切断は平滑末端の断片を生じることを示している(図5のレーン3及び7)。しかしながら、N.MlyIの場合、ニックトランスレーション反応(図5のレーン8)におけるクレノウ断片によって切断バンドはもっと大きなサイズのバンド(図5における表示枠を超える)に伸長され、それはさらにN.MlyIで切断したDNAにおけるニックの存在を裏付けている。これらの結果は、遺伝子工学的に作ったN.MlyIには、活性があり、配列特異的且つ鎖特異的なニッキング・エンドヌクレアーゼであることを示した。
【0046】
2. AlwIの二量体形成ドメインをN.BstNBIの機能しない二量体形成ドメインと交換することによるIIs型エンドヌクレアーゼAlwIのニッキング・エンドヌクレアーゼへの変換
AlwIとN.BstNBIの推定ポリペプチド配列は、28.7%の配列同一性及び41.5%の配列類似性を示す。先の結果は、IIs型エンドヌクレアーゼの2本鎖切断活性が二量体形成に依存することを示唆している。AlwIをニッキング・エンドヌクレアーゼに変換するために、AlwIの二量体形成ドメインをN.BstNBIの機能しないドメインと交換した。これが、AlwIの認識配列を認識するが、ニッキング酵素N.BstNBIの切断特性を持つキメラ・エンドヌクレアーゼを導くと仮説を立てた。以下に記載する2つの試みの1つによってこのことは首尾良く立証された。
【0047】
成功の機会を最大にするために、2つの交換点を選択した。AlwIの推定上のDNA認識ドメイン(N末端半分、残基1〜320に位置する)をN.BstNBIのC末端領域(推定上の触媒ドメイン及び二量体形成ドメインの双方を含む、残基361〜604、図3)に融合することによって、交換コンストラクトの1つを作製した。しかしながら、このキメラタンパク質(図3、交換コンストラクト1)は検出可能な切断活性を示さなかった(データは示さず)。この接合部における交換はタンパク質の折り畳みを損なう可能性があり、結果として完全に不活性な酵素を生じた。従って、別の状況では、このアプローチは目的どおり機能するといえる。
【0048】
図3のに交換コンストラクト2に示すようなほかのキメラ酵素は、推定上のDNA結合ドメイン及び触媒中心の双方を含むAlwIのさらに長いN末端部分(残基1〜430)を極端なC末端でのN.BstNBIの推定上の二量体形成ドメイン(残基467〜604)に融合することにより構築した。N.BstNBIの二量体形成ドメインを含有する、このキメラエンドヌクレアーゼは、DNAニッキング活性を示し、N.AlwIと命名された。N.AlwIを発現させ、約80%の均質性に精製した。
【0049】
先ず、プラスミドDNAを用いてN.AlwIのニッキング活性を調べた。N.AlwIのニッキング活性が配列依存性であるかどうかを調べるために、2つのプラスミドを構築した:AlwIの認識配列を1つ持つpAC1とそれを持たないpAC0である。プラスミドpAC0及びpAC1はそれぞれ2つ及び3つのN.BstNBIの認識部位を含有する。予想どおり、高次コイルのpAC0(図6のレーン1)はAlwI(レーン2)又はN.AlwI(レーン3)では消化されなかったが、N.BstNBI(レーン4)によってニックが入れられた。プラスミドpAC1(レーン5)を野生型AlwIと共にインキュベートすると、高次コイル形態は線状形態に変換された(レーン6)。それに対して、遺伝子工学的に作られたN.AlwIと共にpAC1をインキュベートすると、高次コイル形態はニックの入った開放環状形態(レーン7)に変換され、N.BstNBIにより生じる緩められた形態(レーン8)と同じ位置に移動した。このような結果は、N.AlwIのニッキング活性が5’−GGATC−3’配列の存在に依存していることを立証している。
【0050】
N.AlwIの切断部位を正確にマッピングするために、N.AlwIの切断産物を修飾配列反応における配列決定ラダーと比較した。図7に示すように、AlwI及びN.AlwIの双方共、上の鎖を切断した;切断部位は両者の場合で、認識部位5’−GGATC−3’の4塩基下流に位置していた。野生型AlwIは同様に下の鎖も切断したが、N.AlwIは切断しなかった(図8)。従って、N.AlwIのニッキング部位は上の鎖に位置し、認識配列から4塩基離れている(5’−GGATCNNNN−3’)。
【0051】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。このような実施例は本発明を理解するのを助けるために提供されるのであって、それを限定するものとして解釈されるのではない。
【0052】
上記及び以下に引用される参考文献は、参考として本明細書に組み入れられている。
【0053】
【実施例】
実施例1
PCRが介在する突然変異誘発によるIIs型エンドヌクレアーゼMlyIのニッキング酵素への変換及び遺伝子工学的に操作されたMlyIの精製
1. MlyIエンドヌクレアーゼ遺伝子のPCRによる部位特異的突然変異誘発
PleI、MlyI、N.BstNBI及びFokIの最後から180個のアミノ酸の間での配列比較に基づいて、二量体形成過程に関与する可能性のある残基としてチロシン及びリジンが同定された。それらは短い領域(5個のアミノ酸)に属し、N.BstNBIでは欠損するが、PleI、MlyI及びFokIでは保存されていると考えられる。この2つの残基が二量体形成で鍵となる残基であるということであれば、二量体形成機能を劇的に低下させるために、チロシン及びリジンを両方共アラニンに変えた。
【0054】
モリソンとデスロシアズ(Morrisson,H. and Desrosiers,R., Biotechniques 14:454-457, 1993)の方法に従ってPCRの部位特異的突然変異誘発を行った。
【0055】
第1回目のPCRは、pUC19−MlyIRクローン(ジーンバンク受入番号AF355462)で行う2つの別々の反応から構成されていた。
【0056】
以下のプライマーを用いてエンドヌクレアーゼ遺伝子の5’末端と突然変異部位の間の部分を増幅する1つの反応を構築した:
5’−TTAAGCTTAAGGAGGTGATCTAATGGCATCGTTATCAAAGACT−3’(228−22)(SEQ ID NO:5)
5’−GGAATAATCTTTGTTGCTCCACCAGCATGT−3’(7508−022)(SEQ ID NO:6)
【0057】
オリゴヌクレオチド・プライマー228−22は、クローニングを円滑にするためのHindIII部位、保存されたリボソーム結合部位(RBS)、ATG開始コドン及びハイブリッド形成のためのMlyIRの5’末端に相補的な18個のヌクレオチドを含有する。オリゴヌクレオチド・プライマー7508−022は、逆方向の突然変異誘発プライマーであり、Y491A及びK494Aの突然変異を導入する。
【0058】
突然変異部位とエンドヌクレアーゼ遺伝子の3’末端の間の部分を増幅する他の反応は、以下のプライマーを用いて行った:
5’−ATTTCTAGACTATATAGCCCATGTAGAAATTT−3’(228−23)(SEQ ID NO:7)
5’−ACATGCTGGTGGAGCAACAAAGATTATTCC−3’(7508−021)(SEQ ID NO:8)
【0059】
オリゴヌクレオチド・プライマー228−23は、クローニングを円滑にするためのXbaI部位、停止コドン及びハイブリッド形成のためのMlyIRの3’末端に相補的な23個のヌクレオチドを含有する。7508−021は、正方向の突然変異誘発プライマーであり、Y491A及びK494Aの突然変異を導入する。
【0060】
PCRは、以下を混合して行われた:
10xTaqポリメラーゼ緩衝液を10μl、
2mMのdNTPsを10μl、
pUC19−MlyIRクローンを1(100ng)、
プライマー228−22(反応1)又は228−23(反応2)を1μl (150ng)、
プライマー7508−022(反応1)又は7508−021(反応2)を1μl(150ng)、
蒸留水を74μl、
ディープベント(Deep Vent(登録商標))ポリメラーゼを1μl(0. 05単位)、
TaqDNAポリメラーゼを1μl(5単位);
これらを、95℃にて30秒間、50℃にて1分間及び72℃にて2分間を15サイクル行って増幅した。QIAクイックPCR精製キット(キアゲン)を用いて得られたDNA断片を精製した。
【0061】
反応1及び反応2からの1回目のDNA断片を1:1のモル比で鋳型として用い、MlyIRの5’末端と3’末端に相当するプライマーを加えた第2回目のPCRを行った:
10xTaqポリメラーゼ緩衝液を10μl、
2mMのdNTPsを10μl、
反応1からのMlyIR断片を1μl(88ng)、
反応2からのMlyIR断片を 1μl(12ng)、
プライマー228−22を1.5μl(150ng)、
プライマー228−23を1.5μl(150ng)、
蒸留水を73μl、
ディープベント(Deep Vent(登録商標))ポリメラーゼを1μl(0.05単位)、
TaqDNAポリメラーゼを1μl(5単位);
これらを、95℃にて30秒間、50℃にて1分間及び72℃にて2分間を15サイクル行って増幅した。QIAクイックPCR精製キット(キアゲン)を用いて得られたDNA断片を精製した。そのような2回のPCRによって、2つの予想した突然変異(Y491AおよびK494A)を持つ完全長のエンドヌクレアーゼ遺伝子が提供された。
【0062】
50μlの反応物中にて、1xNEB緩衝液2中の0.1mg/mlのBSAを加えたHindIIIの20単位とXbaIの20単位との両方で、37℃にて1時間インキュベートして、2回目の増幅産物(MlyIRのPCR産物)及び1μgのpUC19を消化した。1%の低融点アガロースゲル(ゲノム・パーフォマンス・グレード、アメリカン・バイオアナリティカル)上にて消化物を分画した。PCRのDNAバンドとベクターのDNAバンドを切り出し、ゲル片を65℃にて10分間インキュベートした。温度を40℃まで下げ、40℃にて以下を混合することによって、ゲル内連結反応を行った:
MlyIRのPCR産物(250ng)を25μl、
調製されたpUC19(100ng)を5μl、
10xのT4DNAリガーゼ緩衝液を5μl、
βアガラーゼ(2単位)を2μl、
T4DNAリガーゼ(400単位)を1μl、
蒸留水を12μl。
【0063】
反応物を37℃にて1時間、次いで、16℃にて一晩インキュベートした。予めN.BstNBIのメチラーゼ遺伝子で修飾した大腸菌株ER2502を5μlの連結反応物で形質転換した(およそ107個の細胞)。クローニング酵素でミニプレップ(キアゲンQIAプレップ・スピンミニプレップキット)を消化することにより、個々のクローンを単離し、分析して、実際にMlyIRがベクターにクローニングされていることを確認した:
ミニプレップを3μl、
10xNEB緩衝液2を2μl、
BSA(1mg/ml)を2μl、
HindIII(20単位)を1μl、
XbaI(20単位)を1μl、
蒸留水を11μl;
消化物を37℃にて1時間インキュベートした。
【0064】
2. N.MlyI(Y491A/K494AのMlyI)の精製
0.1mg/mlのアンピシリンを加えた24リットルのLB培地中で37℃にて、予めN.BstNBIのメチラーゼ遺伝子で修飾された、pUC19−MlyIR−Y491A/K494Aを含有する大腸菌ER2502を増殖させた。遠心により細胞を回収した。以下の手順は、すべて氷上又は4℃にて行った。109gの細胞沈殿物を50mMのNaClに加えた327mlの緩衝液A(20mMのKPO(pH6.9)、0.1mMのEDTA、7mMのβME、5%のグリセロール)に再浮遊し、マントン−ガウリン(Manton-Gaulin)ホモゲナイザーで破壊した。最初のパスの後、25mlのシグマ・プロテアーゼ阻害剤溶液を加えた。4℃で15,000gにて40分間、抽出物を遠心した。
【0065】
以下の精製工程は、すべてファルマシアのAKTAFPLCシステムを用いて行った。MlyI部位での特異的なニッキング活性を検出するために、活性のアッセイはT7DNAで行ったが、この中では部位は十分に接近した間隔となっており;これらの部位が、ニックの入ったDNAが断片化される基となる。
【0066】
395mlの遠心処理した細胞の粗抽出物を、緩衝液A1(50mMのNaClを補完した緩衝液A)で平衡化した395mlのヘパリンハイパーD AP5にロードした。次いで、800mlの緩衝液A1でカラムを洗浄した。緩衝液A中の0.05M〜0.7MのNaCl勾配、3.5リットルで酵素を溶出した(流速:30ml/分)。15mlの分画を集め、ニッキング活性を測定した。分画96〜124(平均塩濃度330mM)が最も高い活性を有しており、プールして、2リットルの緩衝液B(20mMのトリス塩酸(pH8.0)、0.1mMのEDTA、7mMのβ−ME、5%のグリセロール)に対して透析した。塩濃度を50mMにするために100mMのNaClを補完した緩衝液Bを試料に加えた。
【0067】
次いで、緩衝液B1(50mMのNaClを補完した緩衝液B)で平衡化した80ml(3.5cmx8.3cm)のソース−15Qファインライン35に試料(850ml)をかけた。次いで160mlの緩衝液B1でカラムを洗浄した。緩衝液B中の0.05M〜1MのNaCl勾配1.5リットルにより酵素を溶出した(流速:20ml/分)。15mlの分画を回収し、ニッキング活性を測定した。分画14〜19(平均塩濃度140mM)が最も高い活性を有し、プールして緩衝液Bで50mMのNaClに希釈した。
【0068】
第3のカラムは6ml(1.6cmx3.0cm)のソース15Sカラムであった。それを緩衝液A1で平衡化し、320mlの試料をこのカラムにかけた。15mlの緩衝液A1でカラムを洗浄し、緩衝液A中0.05mM〜1MのNaCl勾配、120mlにて酵素を溶出した(流速:6ml/分)。3mlの分画を回収してニッキング活性を測定した。しかしながら、突然変異タンパク質は樹脂に結合しなかったので、活性のあるタンパク質は流出液及び洗浄液中に見い出されることが判明した。
【0069】
ソース15Sカラムの流出液及び洗浄液(400ml)を、緩衝液A1で平衡化した8ml(1cmx11.3cm)のヘパリンTSK5pwにかけた。16mlの緩衝液A1でカラムを洗浄し、緩衝液A中の0.05mM〜1MのNaCl勾配、240mlにて酵素を溶出した(流速:4ml/分)。4mlの分画を回収し、ニッキング活性を測定した。ニッキング活性は分画18〜24(平均塩濃度270mM)に見い出された。40mMのDTT(NEB)を補完した還元SDS泳動緩衝液を20μgのピーク分画(18〜24)に加え、95℃にて4分間変性させ、10〜20%のプレ−キャストの10x10cmのSDSポリアクリルアミドゲル(アウル・セパレーションシステム)で泳動した。ゲルコードブルーステイン(ピアース)を用いてゲルを染色し、蒸留水にて脱色した。最も純度の高い分画(B20〜24)を一緒にプールし、保存緩衝液(50mMのKCl、10mMのトリス塩酸(pH7.4)、0.1mMのEDTA、1mMのジチオスレイトール及び50%のグリセロール)に対して透析した。
【0070】
実施例2
ドメイン交換によるIIs型制限エンドヌクレアーゼのニッキング・エンドヌクレアーゼへの変換
この新規なアプローチは、天然に生じたニッキング酵素であるN.BstNBIの非機能的二量体形成ドメインの利点を活かした。AlwIの二量体形成ドメインを、N.BstNBIの相当するドメインで置き換えた(図3)。得られた組換えエンドヌクレアーゼは、2本鎖DNAに関する特異的なニッキング活性を示す。ドメイン交換戦略は、以下の工程を活用した:
【0071】
1. PCRによるAlwIの5’末端の増幅
野生型AlwIの配列に基づいて特異的なプライマーを設計した。正方向のプライマー(SEQ ID NO:9)はクローニングを円滑にするためにAgeI制限部位を含有した。逆方向プライマー(SEQ ID NO:10)は、N.BstNBIの1387〜1407のヌクレオチド配列に相補的な21個のヌクレオチド(1〜21)を有する。
5’−TTACCGGTAAGGAGGTGATCTAATGAGCACGTGGCTTCTTGGAA(SEQ ID NO:9)
5’−TTCACCAAGAACAATAAAGTCTTCATACTCAAAGATCACATCAG (SEQ ID NO:10)
【0072】
このような2つのプライマーを用いて、以下を混合して、pLT7K−AlwIR(K. Lunnen and G. Wilson, New England Biolabs)からのAlwIの5’領域を増幅した:
10xPCR緩衝液(パーキンエルマー)を10μl、
2mMのdNTPsを5μl、
pLT7K−AlwIRを2μl(100ng)、
Taqポリメラーゼ(パーキンエルマー)を0.2μl(1単位)、
ディープベント(Deep Vent(登録商標))ポリメラーゼ(ニュー・イングランド・バイオラブズ社)を0.2μl(0.1単位)、
正方向プライマー(SEQ ID NO:9)を5μl(20μM)、
逆方向プライマー(SEQ ID NO:10)を5μl(20μM)、
蒸留水を73μl;
増幅は、95℃にて30秒間、50℃にて30秒間、72℃にて1分間を15サイクル行った。キアゲンPCR精製キットを用いて、増幅産物を精製し、30μlの蒸留水中に溶出した。
【0073】
2. PCRによるN.BstNBIの3’末端の増幅
野生型N.BstNBIの配列に基づいて特異的なプライマーを設計した。正方向のプライマー(SEQ ID NO:11)は、SEQ ID NO:10に相補的である。逆方向プライマー(SEQ ID NO:12)は、クローニングを円滑にするためにXhoI制限部位を含有した。
5’−GACTTTATTGTTCTTGGTGAA(SEQ ID NO:11)
5’−TTCTCGAGTTAAAACCTTACCTCCTTGTCAACAA(SEQ ID NO:12)
【0074】
これらの2つのプライマーを用いて、以下を混合して、プラスミド、pHKT7−n.bstNBI(米国特許第6,191,267号)からN.BstNBI遺伝子の3’領域を増幅した:
10xPCR緩衝液(パーキンエルマー)を10μl、
2mMのdNTPsを5μl、
pHKT7−n.bstNBIを5μl(200ng)、
Taqポリメラーゼ(パーキンエルマー)を0.2μl(1単位)、
ディープベント(Deep Vent(登録商標))ポリメラーゼ(ニュー・イングランド・バイオラブズ社)を0.2μl(0.1単位)、
正方向プライマー(SEQ ID NO:11)を5μl(20μM)、
逆方向プライマー(SEQ ID NO:12)を5μl(20μM)、
蒸留水を70μl;
増幅は、95℃にて30秒間、50℃にて30秒間、72℃にて1分間を15サイクル行った。キアゲンPCR精製キットを用いて、増幅産物を精製し、30μlの蒸留水中に溶出した。
【0075】
3. 組換えN.AlwIエンドヌクレアーゼ遺伝子の構築及びその後のプラスミドへのクローニング
工程1及び工程2で増幅したPCR産物を用いて、長さ1707塩基のN.AlwIPCR産物(図2)を以下のPCR手順により作成した:
10xのPCR緩衝液(パーキンエルマー)を10μl、
2mMのdNTPsを5μl、
工程1のPCR産物を10μl、
工程2のPCR産物を10μl、
Taqポリメラーゼ(パーキンエルマー)を0.2μl(1単位)、
ディープベント(Deep Vent(登録商標))ポリメラーゼ(ニュー・イングランド・バイオラブズ社)を0.2μl(0.1単位)、
正方向プライマー(SEQ ID NO:9)を5μl(20μM)、
逆方向プライマー(SEQ ID NO:12)を5μl(20μM)、
蒸留水を55μl。
【0076】
増幅は、95℃にて30秒間、50℃にて30秒間、72℃にて1分間を15サイクル行った。キアゲンPCR精製キットを用いて、増幅産物を精製した。10μlの反応物中にて1xNEB緩衝液2中の0.1mg/mlのBSAを加えた10単位のAgeIと10単位のXhoIと共に、37℃にて1時間インキュベートして、100ngのpLT7Kベクター(Kong, H. et al., Nuc. Acids Res., 28:3216-3223, 2000)及びN.AlwIPCR産物(〜100ng)を消化した。TAE緩衝液中の1%低融点アガロースゲル(FMCバイオプロダクツ)で消化物を泳動した。PCRのDNAバンド及びベクターのDNAバンドを含有するゲル片を切り出し、等量のTE緩衝液(10mMのトリスpH8.0、1mMのEDTA)で希釈し、65℃にて50分間インキュベートした。以下を混合することによりゲル内連結反応を行った:
調製したpHKUV5(100ng)を2μl、
PCR産物(200ng)を6μl、
10xT4DNAリガーゼ緩衝液を2μl、
T4DNAリガーゼ(400単位)を1μl、
βアガラーゼ(0.5単位)を0.5μl、
蒸留水を8.5μl。
【0077】
37℃にて1時間、反応物をインキュベートし、3μlの連結反応物で大腸菌株ER2566を形質転換した。N.AlwIの存在について個々のクローンをアッセイし、その後、配列を決定した。正しいN.AlwIの配列を含有するプラスミドをpAB2と命名した。
【0078】
4. N.AlwIの配列特異的ニッキング活性の測定
30℃にて4時間、0.3mMのIPTGによりN.AlwIタンパク質の発現を誘導した。100mlの緩衝液A(20mMのトリス塩酸pH7.4、0.1mMのEDTA、1mMのジチオスレイトール及び50mMのNaCl)に、pAB2を含有する40gの大腸菌株ER2566細胞を再浮遊し、超音波処理して、4℃にて30,000gで30分間遠心した。緩衝液Aで平衡化した30mlのヘパリンハイパーDカラムに上清をかけた。次いで、150mlの緩衝液Aでカラムを洗浄した。緩衝液A中の0.05M〜1MのNaClの線形勾配により酵素を溶出した。5mlの分画を回収し、DNAのニッキング活性を測定した。活性のある分画をプールし、緩衝液Aで平衡化した20mlのモノQカラムにかけた。200mlの緩衝液Aで洗浄した後、緩衝液A中の0.05M〜0.7MのNaClの線形勾配により酵素を溶出した。3mlの分画を回収し、ニッキング活性を測定した。活性のある分画をプールし、緩衝液Aで平衡化した1mlのHPLKカラムにかけた。30mlの緩衝液Aでカラムを洗浄し、緩衝液A中の0.05M〜1MのNaCl勾配、30mlにより酵素を溶出した。1mlの分画を回収し、活性を測定した。活性のある分画をプールし、保存緩衝液(50mMのトリス塩酸pH7.4、0.1mMのEDTA、1mMのジチオスレイトール、50mMのNaCl及び50%のグリセロール)に対して透析した。透析後、N.AlwIタンパク質は80%の純度に達し、以下のアッセイに使用した。
【0079】
単一のAlwI部位(5’−GGATC−3’)を含有するプラスミドを構築するために、SfcI及びAvaIによりプラスミドpACYC184(NEB)を消化し、クレノウ酵素を用いて埋め合わせ、自己連結させてプラスミドpAC1を作製した。いかなるAlwI部位も持たないプラスミドを得るために、sfcI及びBsaBIにより、プラスミドpACYC184を消化し、クレノウ酵素を用いて埋め合わせ、自己連結させてプラスミドpAC0を作製した。
【0080】
図5に示すように、認識部位がないので、N.AlwIもAlwIもプラスミドpAC0を切断しない(図6のレーン2及び3)。従って、反応産物は、未消化のプラスミド(図6のレーン1)と同様に移動する。pAC0には2つのN.BstNBI部位があるので、N.BstNBIはpAC0にニックを入れ、それを緩めた(図6のレーン4)。pAC1を基質として用いた場合、AlwIは両方の鎖を切断してそれを線状化した(図6のレーン6)。それに対して、N.AlwIは一方の鎖にニックを入れ、pAC1の緩んだ形態を生じたが(図6のレーン7)、それは、N.BstNBIにより生じた緩んだ形態(図6のレーン8)と同じ分子量で移動した。結果は、N.AlwIが5’−GGATC−3’を認識し、DNAにニックを入れることを示している。
【0081】
N.AlwIの正確なニッキング部位をマッピングするために、N.AlwIで消化したpAC1のニッキング産物を、配列ラダーと平行してポリアクリルアミド配列ゲルで分画した(図7及び8)。プライマーAlwI5f(SEQ ID NO:13)を正方向反応(図7)に用い、プライマーAlwI6r(SEQ ID NO:14)を逆方向反応(図8)に用いた。
AlwI5f 5’−CACGGGGCCTGCCACCATA(SEQ IDNO:13)
AlwI6r 5’−AACGGTTAGCGCTTCGTTA(SEQ IDNO:14)
【0082】
図7に説明するように、AlwI及びN.AlwIの双方は上の鎖を切断し、切断部位は認識部位から4塩基離れて位置している。しかしながら、N.AlwIは、下の鎖に対しては切断活性を有していなかった(図8)。それに対して、AlwIは同様に下の鎖も切断した。結果は、N.AlwIのニッキング活性は(5’−GGATCNNN↓N−3’)であることを示唆している。
【0083】
プラスミドpLT7K−N.AlwIを含有する大腸菌株NEB#1322の試料は、ブタペスト条約の期間と条件のもと、2001年5月31日、米国菌培養収集所(ATCC)に供託され、ATCC受入番号PTA−3420を受領し、プラスミドpUC19−MlyIR−Y491A/K494Aを含有する大腸菌株NEB#1367の試料は、ブタペスト条約の期間と条件のもと、2001年5月31日、米国菌培養収集所(ATCC)に供託され、ATCC受入番号PTA−3421を受領した。
【0084】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】Aは、N.BstNBI、ニッキング・エンドヌクレアーゼの認識配列及び切断部位を示す(SEQ ID NO:1);
Bは、IIs型制限エンドヌクレアーゼMlyIの認識配列と部位を示す(SEQ ID NO:1);
Cは、遺伝子工学的に作製したニッキング・エンドヌクレアーゼ、N.MlyIの認識配列と部位を示す(SEQ ID NO:1);
Dは、IIs型制限エンドヌクレアーゼ、AlwIの認識配列と部位を示す(SEQ ID NO:2);
Eは、キメラのニッキング・エンドヌクレアーゼ、N.AlwIの認識配列と部位を示す(SEQ ID NO:2)。
A〜Eの認識配列は太字で示し、切断部位は矢印により示す。
【図2】図2は、IIs型制限エンドヌクレアーゼ、MlyI(上部の配列;ジェンバンク受入番号AF355462、SEQ ID NO:3)とニッキング・エンドヌクレアーゼN.BstNBI(下部の配列、ジェンバンク受入番号AF329098、SEQ ID NO:4)の間のアミノ酸配列配置を示す。
【図3】図3は、キメラのニッキング・エンドヌクレアーゼN.AlwIを作製するためのドメイン交換法の模式図を示す。数字はアミノ酸残基の位置を示す。交差は、交換点を示す。
【図4】図4は、遺伝子工学的に作製したN.MlyIニッキング・エンドヌクレアーゼのDNA切断活性の性状分析を示す。
未消化の(C=対照)、MlyI、N.MlyI及びN.BstNBIによって消化されたプラスミド、pNB1を示すアガロースゲル電気泳動。未消化の(C)、N.MlyI又はMlyIで消化した特異性対照としてプラスミドpNB0も用いた。M=分子量マーカー(ラムダDNA/HindIII及びΦX174/HaeIII)。
【図5】図5は、遺伝子工学的に作製したN.MlyIニッキング・エンドヌクレアーゼのDNA切断活性の性状分析を示す。
N.MlyIの切断部位の決定。ジデオキシヌクレオチド鎖停止法に基づく配列決定反応に、GAGTC認識配列を含有するプラスミド、pUC19及び2つの合成プライマーを用いた。同一プライマー、及び4種のデオキシヌクレオチド並びに[33P]dATPの存在下のプライマーと共に追加の伸長反応を行った。次いで標識された基質をMlyI又は遺伝子工学的に作製したN.MlyIで消化した。消化の後、反応混合物を二等分し:1つは直ちに停止溶液と混合し(クレノウ−レーン);もう一方は、室温にて10分間クレノウ断片で処理し、次いで停止溶液と混合した(クレノウ+レーン)。次いで、切断反応産物を標準A、C、G、Tラダーと共に8%の変性ポリアクリルアミドゲルで分画し、オートラジオグラフィで検出した。
【図6】図6は、キメラのニッキング・エンドヌクレアーゼ、N.AlwIのDNA切断活性の性状分析を示す。
プラスミドDNAにおけるN.AlwI切断活性。レーン1、高次コイルのプラスミドpAC0;レーン2、AlwIで消化したpAC0;レーン3、N.AlwIで消化したpAC0;レーン4、N.BstNBIで消化したpAC0;レーン5、高次コイルのプラスミドpAC1;レーン6、AlwIで消化したpAC1;レーン7、N.AlwIで消化したpAC1;レーン8、N.BstNBIで消化したpAC1。S:DNAの高次コイル形態。L:DNAの線状化形態。N:DNAのニックが入った形態。
【図7】図7は、キメラのニッキング・エンドヌクレアーゼ、N.AlwIのDNA切断活性の性状分析を示す。
改変配列決定反応による切断部位のマッピング。AlwI5fをプライマーにした手動配列決定反応において単一の5’−GGTAC−3’配列を含有する4μgのpAC1を用いた。同一プライマーの2つの追加反応物はジデオキシヌクレオチドを添加しないで完全に伸長され、次いで、AlwIまたはN.AlwIのいずれかで消化した。8%のポリアクリルアミドゲルで反応物を分画し、オートラジオグラフィにより検出した。
【図8】図8は、キメラのニッキング・エンドヌクレアーゼ、N.AlwIのDNA切断活性の性状分析を示す。
プライマーAlwI6rを用いたことを除いて、図7と同一である。

Claims (3)

  1. IIs型制限エンドヌクレアーゼを部位特異的ニッキング・エンドヌクレアーゼに変換する方法であって、前記方法がAlwI制限エンドヌクレアーゼのN末端領域とN.BstNBI制限エンドヌクレアーゼのC末端領域とを融合させたキメラタンパク質を作製することでIIs型制限エンドヌクレアーゼの二量体形成機能を破壊すること、及び当該キメラタンパク質のニッキング活性を試験することを含む方法。
  2. ATCC受入番号PTA−3420として寄託されたプラスミドにコードされる、部位特異的ニッキング・エンドヌクレアーゼに変換されたAlwI制限エンドヌクレアーゼ。
  3. 配列番号3のアミノ酸配列において491番目及び494番目のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなる、部位特異的ニッキング・エンドヌクレアーゼに変換されたMlyI制限エンドヌクレアーゼ。
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