以下,図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し,本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。また,本発明は荷電粒子ビーム露光方法及びその装置に適用されるが,以下の実施の形態例は電子ビーム露光方法及びその装置を例にして説明する。
図1は,本実施の形態例における電子ビーム露光装置の概略構成図である。この例では,電子ビーム露光装置は,パターンデータを有する設計データDinを入力し,近接露光効果を考慮した露光データDoutを出力する露光データ作成装置100と,その露光データDoutを供給され露光装置を制御する電子ビーム制御装置200と,鏡筒300とを有する。鏡筒300内には,電子銃31,矩形の透過マスク32,ブロックマスク等の露光用の透過マスク34,マスク偏向器33,35,フォーカスレンズ36,電磁偏向器37,静電偏向器38及びウエハ40を載せるX,Yステージ39が設けられる。透過マスク32で形成された矩形ビームが,マスク偏向器33,35で選択された透過マスク上の所定のマスクを通過し,偏向器37,38によりウエハ40の所望の位置に照射される。
マスク偏向器33,35への制御信号S1,透過マスク34を水平方向に移動させる制御信号S2,フォーカスレンズへの制御信号S3,電磁偏向器37への制御信号S4,静電偏向器38への制御信号S5,ステージの制御信号S6が,電子ビーム制御装置200により生成される。
図2は,上記の露光データ作成装置100の内部構成を示す図である。パターンデータとして設計データDinが格納されている設計データファイル102,サブフィールド領域内に補正エリアを発生する補正エリア発生部103,補正エリア内の面積密度を算出する面積密度生成部104,補正エリア間の影響を考慮して補正エリア内の面積密度を修正する面積密度修正部105,パターンに交わる補正エリアの面積密度のうち最大の面積密度をパターン面積密度(基準面積密度)とし,そのパターン面積密度に応じてパターンの主露光量を補正する露光量補正部107,パターンの主露光量と補正エリアの修正面積密度の応じて,露光不足になる補正エリア内に補助露光パターンを生成する補助露光パターン生成部108,露光データを格納する露光データファイル109を有する。更に,露光データ作成装置100は,高さhと幅wの比h/wが所定の基準値より大きい細長いパターンを,後述するアルゴリズムで分割するパターン分割部114と,電子ビームのクーロン効果によるビームぼけを考慮してパターンを収縮させるパターン変更部115とを有する。これらは,バス110を介して演算部111に接続される。
[露光データ生成方法概略]
以下,設計データから露光データを生成する方法の概略について説明する。 図3は,半導体チップ10内のメインフィールドMFとサブフィールドSFとの関係を示す図である。通常,半導体ウエハ上に複数の半導体チップ10が形成される。図3は,その半導体チップ10内のメインフィールドとサブフィールドとの関係を示す。図1の露光装置に示される通り,電子ビームの偏向器は,応答速度は遅いが偏向範囲が大きい電磁偏向器37と応答速度は速いが偏向範囲が狭い静電偏向器38とからなる。メインフィールドMFは,この電磁偏向器37により偏向可能な領域をいい,サブフィールドSFは,この静電偏向器38により偏向可能な領域をいう。
露光装置のX,Yステージ39を駆動して所望のメインフィールドMFの中心にウエハが移動され,そのメインフィールドMF内で電磁偏向器37により電子ビームが所望のサブフィールドに偏向されて,更に所望の形状にされた電子ビームが静電偏向器38により偏向されてサブフィールド内の所望の位置に照射される。図3の例では,1つのメインフィールド12内は,5行5列のサブフィールドSF00〜SF44に分けられる。
サブフィールドSFには,それぞれ異なるパターンを有するサブフィールドと,同じパターンを有して繰り返し配置されるサブフィールドとがある。繰り返し配置されるサブフィールドは,例えばメモリ装置のメモリセル領域等によく見受けられるサブフィールドである。一方,それぞれ異なるパターンを有するサブフィールドは,周辺回路やロジック回路等に見受けられるサブフィールドである。この様に,チップ10内は,複数のメインフィールドと,メインフィールド内の複数のサブフィールドに分けられ,設計データDinは,それぞれのサブフィールド内に存在するパターンデータを有する。
尚,サブフィールドは,必ずしも図3の如く重なることなく又は間隔をあけることなく敷き詰められる必要はなく,一部重なったり,間隔が存在しても良い。
図4は, 図3のメインフィールド12内のサブフィールドにかかる設計データの構成例を示す図である。この例では,サブフィールドSF00〜SF44のデータは,それぞれサブフィールドの中心座標(x,y),パターン数n,パターンアドレスadを有する。この例では,サブフィールドデータは,メインフィールド12内のサブフィールドSF00,SF01....SF11,SF12....SF44の順に並べられる。
一方,パターンデータは,例えば,パターンの左下の座標(x,y),パターンの幅wと高さhとを有する。そして,サブフィールドデータ領域内のアドレスadは,パターンデータ内のアドレスを示し,そのアドレスから連続してパターン数n個のアドレス領域のパターンが,それぞれのサブフィールド内のパターンデータであることを意味する。
したがって,それぞれ異なるパターンを有するサブフィールドSF00,SF01のデータは,それぞれ異なるパターンデータのアドレスを有する。一方,繰り返し配置されるサブフィールドSF10〜13のデータは,それぞれ同じパターンデータのアドレスを有する。
図5は,露光データの作成を含む露光工程のフローチャート図である。そして,図6は,あるサブフィールドSFの一例を示す図である。図6のサブフィールドの例を使用して,露光データの作成の方法を説明する。
前提として,各パターンに対してデフォルトの主露光量Qmが設定されている。この主露光量Qmは,例えば基本露光量が設定される。そして,各パターンデータにその設定された主露光量Qmが加えられている。この主露光量Qmの設定の方法は,パターン形状に応じて設定する種々の方法もあるが,本実施の形態例では本質的な部分ではないので省略する。
設計データは,ウエハ上のレジスト層に形成したいパターンを含むのみである。ところが,ウエハ上のレジスト層に電子ビームを照射すると,パターン密度が高い領域では近接露光効果によりより多くのビームエネルギーを受けることになる。その反面,パターン密度が低い領域では近接露光効果がなく,より少ないビームエネルギーにより露光される。したがって,かかる近接露光効果を考慮して,設計データのパターンに対して,その主露光量を補正し,必要な場合は補助露光を行って,現像後のパターン形状の精度を高くする。本実施の形態例では,設計データをもとに露光データを生成する為に,図6に示される通り,チップ全面にサブフィールドより小さいメッシュ状の補正エリアを発生させる(S10)。そして,その補正エリア内の面積密度をもとに,上記主露光量の補正と補助露光パターンの生成を行う。
更に,本実施の形態例では,高さhと幅wとの比h/wが所定の基準値を超えるような細長いパターンに対して,後述するアルゴリズムでその長辺方向について分割を行う(S12)。具体的には,細長いパターンの先端部を分割して,複数のパターンデータにする。それに伴い,分割後のパターンにはそれぞれ補正された主露光量が割り当てられ,パターン先端部により適切な主露光量が割り当てられ,先端部での補助露光パターンの発生を抑えることができる。
また,本実施の形態例では,電子ビームのクーロン効果によるビームの広がり(ビームボケ)を考慮して,パターンサイズを縮小するパターン変更を行う(S14)。本実施の形態例では,後述する通り,パターンを描画するためのビームサイズに応じてビームボケを検出し,そのビームボケに応じてパターンサイズを縮小する。
図6に示されたサブフィールドSFには,パターンP1,P2,P3が含まれる。そして,それぞれのパターンP1,P2,P3には,露光量Q1,Q2,Q3が初期設定されている。更に,サブフィールドSF上には,5行5列の補正エリアa11〜a55が存在している。この補正エリアは,図2に示される補正エリア発生部103により生成される。補正エリアの発生方法は,例えばチップ原点を基準にして,所定の大きさの領域をマトリクス状に配置する。
図6の例では,パターンP1が補正エリアa21,a22,a31,a32,a41,a42上に位置する。また,パターンP2が補正エリアa13,a23,a33,a43,a53上に位置する。更に,パターンP3が補正エリアa24,a25,a34,a35,a44,a45上に位置する。
そこで,ステップS16にて,各補正エリア内のパターンの面積密度を求める。即ち,図2中の面積密度生成部104により求められる。図7は,図6の例のサブフィールド上に存在する補正エリア毎の面積密度Smnを記入した例である。即ち,補正エリアa32,a34等が補正エリア面積に対するパターン面積の比率(面積密度)が75%と高く,パターンが存在しない補正エリアa11等の面積密度は0%である。
次に,ステップS18にて,補正エリア間の近接露光効果による影響に応じてそれぞれの補正エリア内の面積密度を見直す。この面積密度の見直しは,図2中の面積密度修正部105にて行われる。近接露光効果にしたがい,補正エリアの周囲の補正エリア内のパターンに照射される電子ビームのエネルギーが,当該補正エリアに対してエリア間の距離に応じた影響を及ぼす。より近い位置の補正エリアからはその影響が大きく,より遠い位置の補正エリアからはその影響が少ない。そこで,本実施の形態例では,距離に略反比例する係数β(r)(rはエリア間の距離)を予め設定しておき,周囲の補正エリアの面積密度Smnと露光量の積にその係数β(r)を乗算し,注目している補正エリアの面積密度に加算し,最後に注目している補正エリアの露光量で割る。
さて,各補正エリアの面積密度が修正されると,その修正面積密度SRmnに基づいて,各パターンP1,P2,P3の露光量の補正が行われる(S20)。この工程では,パターン内の複数の補正エリアのうち最も高い修正面積密度SRmnを有する補正エリアを検出し,その修正面積密度(パターンの基準面積密度またはパターン面積密度)から計算される露光エネルギーが解像レベルになるように主露光量Qmを求める。その結果,各パターンの主露光量が補正され,主露光量が高すぎてパターンが膨張したり,低すぎて縮小したりすることが防止される。
パターンの主露光量の補正に伴い,ステップS18で考慮した周辺の補正エリアからの影響にも変動が生じるので,図5に示される通り,ある程度収束するまで,ステップS18とS20とを繰り返し行うことが好ましい。
本実施の形態例では,後述するとおり,主露光量の補正を行う場合,パターンの境界に位置する補正エリアのうち,最大の修正面積密度に応じて主露光量の補正を行う。それにより,ライン・アンド・スペースなどの細長いパターンも,複数の補正エリアにまたがる大きなパターンも,より最適な主露光量に補正され,補助露光パターンの数を減らすことができる。
次に,パターン毎に与えられた主露光量によると,パターンの角部や先端部では露光量不足が発生する。即ち,ステップS18で面積密度を見直した補正エリアの露光エネルギーが解像レベルよりも低い場合は,近接露光効果の影響が少なく,露光量不足でレジストを反転することができない。かかる補正エリアに対しては補助露光を行う為に,補助露光パターンを発生させて露光データに追加する(S22)。このとき,補助露光量の下限値をあらかじめ設定しておき,下限値未満であって,現像後のパターン寸法精度にほとんど影響しない程の低い露光量の補助露光パターンは発生させないようにする。ここで,補助露光パターンとは,露光エネルギーが低い領域に対して近接露光効果に該当する量のエネルギーを与える為の露光パターンであり,露光されるエネルギーの例えば数%程度の低い露光量を均一に有する露光パターンである。その補助露光パターンの大きさは,補正エリア程度の大きさが好ましい。但し,補助露光パターンの位置は,必ずしも面積密度見直しに発生させた補正エリアと同一である必要はない。むろん,同一でも良い。
図8は,各パターンの主露光量が補正され,パターンは存在するが露光エネルギーが低い補正エリアに補助露光パターン(太線)を発生させた結果を示す図である。この例では,パターンP1,P2,P3の主露光量が,補正後の露光量Q1',Q2',Q3'になっている。また,低い露光エネルギーを有するエリアa13,a21,a25,a31,a35〜a42,a44,a45,a53には,補助露光パターン(太線)が発生される。
補助露光パターンを発生させると,修正面積密度にも影響を及ぼす。したがって,図5に示される通り,工程S18,S20,S22がある程度収束するまで繰り返されることが好ましい。また,繰り返すことにより,上記発生されなかった下限値未満の露光量の補助露光パターンの露光エネルギーを,周辺の補助露光パターンの露光量が調整されることで,ある程度補うこともできる。
図5に示される通り,チップ全面に補正エリアを発生してその面積密度を求め,周囲の補正エリアからの影響で面積密度を修正し,その修正面積密度をもとにして,パターンの主露光量Qmの補正と補助露光パターンの発生を行う。その結果,露光後のパターン精度を高くできる露光データが作成される。
図9は,作成された露光データの構成例を示す図である。第1に,図4の設計データは,パターンデータは,その位置データ(x,y)と幅wと高さhを有するのに対して,露光データのパターンデータは,更に露光量Qを有する。この露光量Qは,通常パターンに対しては補正された主露光量である。第2に,設計データは,サブフィールドSF00〜SF44とそのサブフィールドが有するパターンデータとから構成される。しかし,露光データには,サブフィールドとして補助露光パターンを有する補助露光用のサブフィールドTSF1〜TSFnが追加される。この補助露光パターンには,露光エネルギーの不足分に応じた補助露光量Qが与えられる。
サブフィールドは,必ずしも図3に示される通り,メインフィールド内に一面に敷き詰められた領域ではなく,内部の露光パターンによって,お互いに一部重なり合う領域であってもよい。露光工程においては,単にそれぞれのサブフィールドの位置にそのサブフィールドに含まれる露光パターンに電子ビームが照射されるだけである。したがって,露光パターンのサブフィールドに,補助露光パターンのサブフィールドが重なって登録されることも許される。これにより,露光データの階層化データ構造を壊すことなく,補助露光パターンを露光データに追加することができる。
上記のようにして作成された露光データDoutが電子ビーム制御装置に供給されて,その露光データにしたがって電子ビーム露光が行われる(S24)。その結果,露光現像後のパターンは,設計データにより近い高精度のパターンになる。
[パターン分割工程]
図10は,本実施の形態例におけるパターン分割工程を説明する図である。本実施の形態例のパターン分割工程では,高さhと幅wの比h/wがある基準値よりも高いような細長いパターンを,長手方向に分割して,複数のパターンにする。そして,分割されたパターンそれぞれに主露光量が割り当てられる。パターンの主露光量は,前述した通り,パターンに属する補正エリアの修正面積密度のうち,最大の面積密度にしたがって決定される。より好ましくは,パターンの境界に属する補正エリアのうち最大の面積密度を持つ補正エリアにしたがって決定される。
図10(a)は,一例としての細長いパターンP0とメッシュ状の補正エリアCAとを示す。最初の設計データでは,一つの細長いパターンP0である。図10(b)は,パターンP0が複数のパターンP1〜P5にパターン分割された状態を示す。このパターン分割では,元のパターンP0を,先端部では細かく,中央部になるほど大きく分割する。より好ましくは,補正エリア単位の大きさに分割する。図10の例では,最先端のパターンP1,P5は,補正エリア1個の大きさに,次のパターンP2,P4は,補正エリア2個の大きさであり,中央パターンP3は,その残りの大きさである。
そして,図10(c)に示される通り,分割された5つのパターンP1〜P5に対して,それぞれ補正された主露光量Qm1〜Qm5が与えられる。この主露光量Qm1〜Qm5は,それぞれのパターンに属する補正エリアのうち最大の修正面積密度(パターン面積密度)にしたがって決定される。したがって,中央のパターンP3のように修正パターン面積密度が高いものには主露光量が少なく決定され,先端パターンP1,P5のように修正パターン面積密度が低いものには主露光量が高く決定される。その結果,一つのパターンP0に一つの主露光量を与えた場合に必要となる補助露光パターンの数を減らすことができる。
図11は,単一パターンと分割パターンの場合の主露光量と補助露光量との関係を示す図である。図11(A)は,単一パターンP0に単一の主露光量Qmが与えられた場合の主露光量と補助露光量との関係を示す。左側の平面図にはパターンP0と補正エリアCAが示され,右側のグラフには主露光量Qmと補助露光量Qsが,位置(縦軸)に対応して示される。右側のグラフの位置は,左側の平面図の位置に対応する。
図11(A)の単一パターンP0の場合は,単一の主露光量Qmが与えられる。したがって,パターンP0内では,中央部も先端部も同じ主露光量Qmで露光が行われる。しかし,近接露光効果により,実際に与えられる露光エネルギーEngは,図示されるとおり面積密度が高い中央部で高く,面積密度が低い先端部で低い。したがって,先端部で露光量不足になる。
そこで,破線で示される通り補助露光Qs0が必要になる。この補助露光量Qs0は,パターンの先端部で大きく,中央部に向かって徐々に小さくなる。しかも,必要な補助露光量Qs0の変化は,先端部で大きく減少し,中央部に向かって徐々に小さくなる。但し,実際の補助露光パターンは,補正エリアの大きさ単位で設定されるので,実際の補助露光量Qsは,破線のように階段状になる。平面図の斜線部が補助露光パターンを示す。つまり,パターン先端部から6個の補正エリアに補助露光が行われ,その露光量Qsは,先端から徐々に減少する。
そこで,図10のように,パターンの先端部を分割して複数のパターンにすると,分割したパターンそれぞれに個別の主露光量Qmを設定することができる。図11(B)は,分割パターンの場合の主露光量と補助露光量との関係を示す。前述した露光量補正の工程で,先端のパターンP1の修正パターン面積密度は低く,次のパターンP2の修正パターン面積密度はそれよりやや高く,中央部のパターンP3の修正パターン面積密度は一番高くなると予想される。したがって,露光量補正により,先端のパターンP1の主露光量Qm1は最も高く,次のパターンP2の主露光量Qm2はそれよりも低く,中央部のパターンP3の主露光量Qm3は最も低く補正される。その結果,近接露光効果を考慮した露光エネルギーEngは,図示されるとおり,パターン先端部でも現像の十分なレベルを有することになり,パターン先端部での露光量不足は解消される。そのため,パターンP1,P2の領域での補助露光パターンは不要になり,補助露光パターン数を減らすことができるようになる。図11(B)の左側の平面図によれば,補助露光パターンはパターンP3の上の2個の補正エリアだけになっている。
分割するパターンの形状は,図11(A)の補助露光量Qsの分布に対応して,先端部で分割パターンは小さく,中央になるにしたがって分割パターンが大きくなることが好ましい。それにより,補正された主露光量Qm1,Qm2,Qm3の変化も,先端部で急峻に変化し中央になるにしたがってなだらかに変化させることができる。つまり,分割で新たに生成されたパターンP1,P2に,補助露光パターンの補助露光量をそのまま割り当てることができ,無駄な補助露光パターンの発生を抑えることができる。
パターン分割の単位は,例えば,補正エリアの大きさの倍数であって,先端部から中央部にかけて,徐々に倍数が大きくなることが好ましい。一例として,先端部で補正エリア1個分,次に補正エリア2個分,次に補正エリア3個分というように徐々に大きくする。或いは,補正エリア1個分の大きさを初項として,等比数列(20,21,22....2n)倍にする。
補正エリア大きさを単位としてパターンを分割し,且つ複数の補正エリアに対応する分割パターンP2を生成することにより,分割したことに伴うパターンの増加より補助露光パターンの減少のほうが多くなる。つまり,図11(B)の左側の平面図に示される通り,分割によりパターンP1,P2が増加したが,補助露光パターン数は,3補正エリア分減少し,トータルではパターン数が1個減る(増加2と減少3)ことになる。この場合,分割パターンP2が補正エリア2個分の大きさになっていることが原因である。分割パターンが全て補正エリア1個分の大きさでは,全体のパターンの減少にはつながらない。
パターンの分割は,長辺方向についてのみ行うことが好ましい。特に,ライン・アンド・スペースのような,図10に示されるような長いパターンの場合は,補助露光パターンは主にパターンの両先端部にのみ発生する。したがって,先端部を分離して別のパターンにすることで,補助露光パターンを減少させることができる。パターンの短辺方向まで図形分割をすると,分割によりパターン数は増加したが,補助露光パターン数は減少しないことになり,有効ではない。
図12は,隣接するパターンの場合の分割方法を示す図である。設計データが,連続する1つのパターンに対して,図12のように複数の隣接するパターンP10,P11,P12,P13で構成される場合がある。その場合は,パターンP10〜P13をそれぞれ分割する必要はない。隣接する複数のパターンのうち,両端のパターンP10の先端側を,パターンP1,P2のように分割すれば良い。パターンP11,P12の両端には補助露光パターンが発生する可能性が低く,分割によりむやみにパターン数が増大することを避けることができる。
[パターン変更]
図13は,パターン変更を説明するための図である。荷電粒子ビームの一種である電子ビームは,電子間のクーロン効果によりビーム形状が大きくなる傾向にある。このビームボケδは,電流密度Jとパターン面積Sの積に比例する。つまり,δ=k・J・Sである。電流密度Jが大きければそれだけ電子間の反発力が大きくなり,ビームサイズは大きくなる。また,ビームのサイズ自体が大きくなると同様に膨張率も大きくなる。このビームボケδは,より正確には露光強度分布である。クーロン効果により分布が拡がるのである。
従来は,パターン寸法が比較的大きかったため,このクーロン効果によるビームボケを考慮する必要はなかった。或いは,考慮する場合は,設計パターンの面積Sと,露光装置に設定された電流密度Jとからビームボケを推定し,その分パターンを縮小するパターン変更が行われている。しかし,パターン寸法が0.1μmのオーダになると,このビームボケによるパターンの膨張は無視できなくなる。
そこで,本実施の形態例では,設計パターンを矩形ビームで描画する場合,パターンを描画矩形ビームに仮想的に分割し,その描画ビームの中で最大の面積を有する描画ビームサイズから,ビームボケを求める。そして,求められたビームボケに応じて,そのパターンを縮小するように変更する。
図13には,3つのパターン(a)(b)(c)が示されている。パターン(a)は,細長いパターンであるが,描画ビームで分割すると図示されるとおりである。そこで,斜線部の描画ビームサイズに応じてパターン縮小量が決定される。パターン(b)は,三角形であるが,6個の可変矩形ビームで描画される。したがって,斜線で示される描画ビームサイズに応じてパターン縮小量が決定される。パターン(c)は,平行四辺形でありパターン(b)よりも大きい。しかし,パターン(c)を描画する描画ビームサイズのうち最大サイズは,パターン(b)と同じ斜線部である。したがって,パターン(c)に対するビームボケ量は,パターン(b)に対するビームボケ量と同じである。その結果,パターン(c)のパターン縮小量はパターン(b)と同じになる。
図5に示した通り,パターン変更工程S14は,パターン分割後に行われる。このパターン変更工程により,設計パターンは描画ビームサイズに応じて縮小変更される。したがって,クーロン効果により描画ビームサイズが大きくなっても,露光後現像されるパターン形状は,設計パターンの形状に近いものになり,クーロン効果によるパターン精度の低下を避けることができる。
[露光量補正]
図14は,本実施の形態例における露光量補正を説明する図である。図14.Aは比較例1を,図14.Bは比較例2をそれぞれ示す。この例は,幅方向と高さ方向の両方に複数の補正エリアが形成される比較的大きなパターンP20についての露光量補正である。露光量補正は,前述した通り,パターンに与えられている主露光量を,パターン内の補正エリアの修正面積密度の代表であるパターン面積密度に応じて補正をする工程である。
その場合,パターン内のどの補正エリアの修正面積密度を基準にするかが問題になる。比較例1は,パターンP20内の補正エリアのうち,最も高い修正面積密度を有する補正エリアを基準にして露光量補正をする。その場合,図中左側に示す通り,比較的大きなパターンP20では,一般的にパターンの中央部の補正エリアCA1で修正面積密度SR1が最も高く,パターンの境界の一辺の中央の補正エリアCA2の面積密度SR2はそれより低く,パターンの角部の補正エリアCA3,4の面積密度SR3,4は最も低いと考えられる。比較例1では,パターン内の補正エリアで最も高い修正面積密度を基準にして主露光量を補正する。
その結果,補正された主露光量は小さく,その小さな主露光量でパターンP20が露光されると,パターン境界近傍の補正エリアでは露光量不足が発生する。その結果,図中右側に斜線で示す通り,補助露光パターンが,パターンP20の周辺全てに必要になる。
比較例1の方法は,パターン内で最大の修正面積密度を基準にして主露光量を補正することで,少なくとも主露光量が過剰になり現像後のパターンが設計値よりも太くなることを防止する。但し,比較的大きなパターンでは,前述の通り,パターンの境界付近で補助露光パターンが必要になる。
比較例2は,本実施の形態例に従う方法であり,パターンP20の境界の補正エリアのうち,最大の修正面積密度を基準エリアにして,主露光量を補正する。図14.Bに示される例では,パターンP20の境界に位置する16個の補正エリアのうち,一辺の中央部の補正エリアCA2が境界補正エリアで最大の修正面積密度を持つので,その面積密度を基準に主露光量が補正される。その結果,補正エリアCA2の領域では主露光量が最適化されているので,補助露光パターンの発生は不要になる。また,パターンP20の中央部の補正エリアCA1では,露光量が過剰になるが,中央部であるのでパターン自体が膨張することはない。そして,結局のところ,パターンP20の角部の補正エリアCA3,4で露光量不足が発生し,図中右側に斜線で示される通り,その領域にのみ補助露光パターンが生成される。
比較例1と2を比較すると明らかな通り,露光量補正をパターン中央の補正エリアCA1の面積密度を基準にすると多くの補助露光パターンが必要になるのに対して,パターン境界の補正エリアCA2の面積密度を基準にすると少ない補正露光パターンですむことになる。つまり,主露光量を補正する工程では,パターン形状に最も影響を与えるパターン境界の補正エリアの面積密度を基準にすることが,過剰露光量によるパターンの膨張を防止し,補助露光パターンを減らすことに寄与するのである。
図15は,細長いパターンが一定間隔で配置されるライン・アンド・スペースタイプのパターンでの露光量補正を説明する図である。図15の例では,10本のライン状のパターンが一定スペースを隔てて並べられる。この場合も,補正エリアを発生させ,各補正エリアでの面積密度を求め,近接露光効果を考慮して修正し,パターン内の補正エリアの最大修正面積密度(パターン面積密度)を基準にして主露光量を補正する。
図15の10本のパターンに対しては,補正エリアCA11で修正面積密度が最大になり,パターン群の境界領域の補正エリアCA12の修正面積密度はそれより低くなり,更に,パターン群の角部の補正エリアCA13,14の修正面積密度は最も低くなる。
そこで,前述の通り,露光量補正の基準エリアをパターン境界と交わる補正エリアのうち最大修正面積密度を有する補正エリアとすると,中央部のパターンP22では,中央部の補正エリアCA11が最も修正面積密度が高く,それを基準にしてパターンP22の主露光量が補正される。同様に,片隅のパターンP24でも,中央部の補正エリアCA12が最も修正面積密度が高く,それを基準にしてパターンP24の主露光量が補正される。その場合,補正エリアCA12の修正面積密度は中央の補正エリアCA11よりも低いので,パターンP24の主露光量は中央のパターンP22の主露光量よりは大きくなるように補正される。
いずれにしても,それぞれのパターンP22,P24において,最適な主露光量に補正されるので,露光量不足を補う補助露光パターンは,図中斜線で示す通り,上下端の補正エリアCA13,14に生成される。
図15のように,補正エリアよりもパターン幅が狭い場合は,パターン内の補正エリアのうち最大の修正面積密度を基準にしてパターンの主露光量を補正しても,上記と同じ結果になる。しかし,図14のように,パターン幅,高さ内に複数の補正エリアが交わる場合は,パターン内の補正エリアで最大の修正面積密度を基準にして露光量補正を行うと,比較例1のように補正露光パターン数が増大する。したがって,比較例2のように,パターンの境界(露光領域と非露光領域の境界,露光境界)と交わる複数の補正エリアのなかで最大の修正面積密度を基準にして露光量補正を行うことが,補正露光パターン数を減少させることになる。
以上の通り,パターンの境界上の補正エリアで最大の修正面積密度を基準にして主露光量を決定することで,パターン境界での露光量不足する領域が減り,補助露光パターン数を減らすことができる。また,基準となる補正エリアを,パターンの境界に限定したことで,露光量補正での計算量を減らすことができる。しかも,露光量補正の基準エリアをパターン境界上に限定したことで,パターンの形状が図14のように大きな場合も, 図15のように細い場合も汎用的に適用することができる。
上記の露光量補正のアルゴリズムを採用する場合,パターンの境界に交わる補正エリアを検出する必要がある。図16は,露光境界上の補正エリアを検出する方法を説明する図である。図16には,2つのパターンP30,P31が接している例である。通常の設計パターンは,矩形で幅と高さで定義されるので,図16のようなT字形のパターンは,2つのパターンに分割される。
パターンの境界に交わる補正エリアを検出する第1の例では,あるパターンに交わる補正エリアでの当該パターンについての面積密度を算出し,その面積密度が100%未満であれば,パターンの境界に交わる補正エリアと判断する。つまり,周辺に存在するパターンの存在にかかわらず,単独のパターンのエッジをパターン境界とみなす。この方法によれば,パターンP30の境界上の全ての補正エリアが該当し,パターンP32の境界上の全ての補正エリアが該当する。したがって,検出される露光境界上の補正エリアは,図中の斜線で示したエリアになる。
この検出アルゴリズムは,単に注目パターンについて補正エリア内の面積密度を求めて判断することができるので,演算が簡単になり,演算処理の負荷が軽い。しかし,パターンP30とP31の接している領域も境界上の補正エリアとして検出されてしまう。
図17は,上記第1の例で境界上の補正エリアを求める工程を含めた露光工程のフローチャート図である。
図5と同じ工程には同じ番号を与えている。図17において,ステップS30にて,あるパターンについて,補正エリアの面積密度を求め,ステップS32にて,その面積密度が100%未満であれば,その補正エリアを境界エリアとする(S34)。このステップS30,S32,S34を,あるパターンの全ての補正エリアについて行う。また,これらのステップを全てのパターンについて行う。その結果,図16に示す通り,全てのパターンの境界エリアを検出することができる。
ステップS18の補正エリアの面積密度を近接露光補正を考慮して修正するのは,図5と同じである。しかし,ステップS20では,境界エリアで最大の修正面積密度を基準にして主露光量の補正が行われる。ステップS18,S20は収束するまで繰り返されることが好ましい。更に,露光量補正が行われてパターンの主露光量が求められた後,ステップS22にて,露光量不足の補正エリアに補助露光パターンを発生する。
図18は,パターン境界の補正エリアを求める第2の例を説明する図である。第2の例は,隣接する他のパターンを考慮して,パターンの境界上の補正エリアを求める方法である。即ち,パターンP30に交わる補正エリアのうち,パターンP31にも交わる補正エリアCA1,CA2は,境界上の補正エリアとはみなさない。
具体的には,各補正エリアの面積密度を全てのパターンを考慮して求め,その面積密度が100%であって,回りに面積密度が0%の補正エリアが存在しない場合は,境界上の補正エリアとはみなさない。逆に言えば,回りに面積密度が0%の補正エリアが存在する時は,境界に交わる補正エリアと判定する。このアルゴリズムによれば,補正エリアCA1,CA2は,境界エリアから除外され,より最適化された境界エリアの検出方法となる。
このようにして求めた境界エリアのうち,最大修正面積密度にしたがって,各パターンの主露光量が決定されるのは,前述の通りである。
[ブロックマスク]
電子ビーム露光による直接描画は,露光ショット数が膨大になりスループットの低下を招いている。その理由は,所定のサイズの矩形の透過マスクを2枚重ねることで,所望のサイズの矩形ビームを生成し,その矩形ビームで描画していくからである。そのようなスループットの低下を防止するために,ブロックマスクが提案されている。
図19は,ブロックマスクの一例を示す図である。図1に示した透過マスク34として,図19のようなブロックマスクが利用される。ブロックマスク34は,使用頻度の高いパターンBM1〜BM9をあらかじめ透過マスクとして用意したものであり,それらのパターンに電子ビームを照射することで,特殊なパターンを一回のショットで露光する。したがって,ショット数を少なくすることでき,露光工程全体のスループットを向上させる。
このようなブロックマスクの特異な点は,一つのブロックマスクBMに対して,同じ主露光量しか与えることができないことにある。したがって,ブロックマスクに対してどのようにして主露光量を決定するかが問題になる。
図20は,本実施の形態例におけるブロックマスクの主露光量を求める方法について説明する図である。本実施の形態例において,ブロックマスクBM内に複数のパターンP40,P41が含まれる場合は,前述した通り,補正エリアを発生し,その補正エリアの面積密度を求め,近接露光効果を考慮して面積密度を修正し,パターン境界の補正エリアの修正面積密度の最大値に応じて,各パターンP40,P41の主露光量を補正する。そして,ブロックマスクBMに含まれる複数のパターンの補正露光量のうち,最小の露光量をブロックマスクの露光量に決定する。
上記のアルゴリズムによれば,図20の例では,パターンP40の露光量補正は,境界の補正エリアCA2の修正面積密度SR2に基づいて行われる。一方,パターンP41の露光量補正も,境界の補正エリアCA3の修正面積密度SR3に基づいて行われる。したがって,パターンP40の補正露光量Q2は,パターンP41の補正露光量Q3より大きくなることが予想される。パターンP41の補正エリアCA3のほうが密度が低いからである。したがって,その場合は,ブロックマスクBMの主露光量は,小さい方のパターンP41の補正露光量Q3になる。そして,ブロックマスクBM内で露光量不足になる補正エリアには,補助露光パターンが生成される。
図中,パターンP40の中央部の補正エリアCA1の面積密度SR1を基準にした補正露光量Q1は,最も低く,それをブロックマスクの露光量に設定すると,補助露光パターンの数が増大することが予測される。
上記の実施の形態例では,露光量補正を行って,パターン内で補正された主露光量では露光エネルギーが不足する補正エリアには,全て補助露光パターンを発生させた。その場合,補助露光パターンの補助露光量は,主露光量と修正面積密度との関係から求められる。そして,その補助露光量が基準値よりも小さい場合は,かかる補助露光パターンの発生を行わないようにすることもできる。それにより補助露光パターンの数を更に抑えることができる。
以上の実施の形態例を次の付記に示す通りまとめる。
(付記1)複数のパターンを有するパターンデータから露光パターンデータを有する露光データを生成し,該露光データにしたがって試料を露光する荷電粒子ビーム露光方法において,(a)前記パターンに対して複数の補正エリアを発生する工程と,(b)前記パターンデータのパターンであって,高さと幅の比が基準値より大きい細長いパターンを,複数のパターンに分割する工程と,(c)前記補正エリア内のパターンの面積密度を求め,当該補正エリアの周囲の補正エリアの面積密度及び補正エリア間の距離にしたがって,当該補正エリアの面積密度を修正する工程と,(d)前記パターンに交わる補正エリアの前記修正された面積密度のうち最大の修正面積密度にしたがって,各パターンの主露光量を決定する工程と,(e)前記パターン内であって前記主露光量では露光エネルギー不足になる前記補正エリアに補助露光パターンを発生する工程と,(f)前記パターンデータに前記補助露光パターンを追加した露光パターンデータにしたがって,前記試料を露光する工程とを有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
(付記2)付記1において,工程(b)において,前記パターンの長辺方向に対してのみ分割を行うことを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
(付記3)付記1において,工程(b)において,前記分割されたパターンは,前記補正エリア単位のサイズであることを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
(付記4)付記3において,工程(b)において,前記分割されたパターンのサイズは,前記パターンの先端から順に徐々に大きくなっていることを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
(付記5)付記1において,工程(b)において,複数のパターンが互いに接するように1列に配置される場合は,当該1列に配置された複数のパターンのうち,両端側のパターンを分割することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
(付記6)複数のパターンを有するパターンデータから露光パターンデータを有する露光データを生成し,該露光データにしたがって試料を露光する荷電粒子ビーム露光方法において,(a)前記パターンを描画する露光ビームサイズのうち,最大サイズに応じて前記ビームの広がりによるビームボケを求め,当該ビームボケに応じて前記パターンを縮小するように変更する工程と,(b)前記変更されたパターンにしたがって求められた露光パターンデータにしたがって,前記試料を露光する工程とを有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
(付記7)複数のパターンを有するパターンデータから露光パターンデータを有する露光データを生成し,該露光データにしたがって試料を露光する荷電粒子ビーム露光方法において,(a)前記パターンに対して複数の補正エリアを発生する工程と,(b)前記補正エリア内のパターンの面積密度を求め,当該補正エリアの周囲の補正エリアの面積密度及び補正エリア間の距離にしたがって,当該補正エリアの面積密度を修正する工程と,(c)前記パターンの境界に交わる補正エリアの前記修正された面積密度のうち最大の修正面積密度にしたがって,各パターンの主露光量を決定する工程と,(d)前記パターン内であって前記主露光量では露光エネルギー不足になる前記補正エリアに補助露光パターンを発生する工程と,(e)前記パターンデータに前記補助露光パターンを追加した露光パターンデータにしたがって,前記試料を露光する工程とを有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
(付記8)付記7において,工程(c)において,前記パターンそれぞれの境界に交わる補正エリアを検出し,当該検出された補正エリアのうち最大の修正面積密度にしたがって,前記各パターンの主露光量を決定することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
(付記9)付記7において,工程(c)において,前記パターンそれぞれの境界に交わる補正エリアであって,周囲に面積密度がゼロの補正エリアを有する補正エリアを検出し,当該検出された補正エリアのうち最大の修正面積密度にしたがって,前記各パターンの主露光量を決定することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
(付記10)複数のパターンを有するブロックマスクを透過した荷電粒子ビームにより試料を露光する荷電粒子ビーム露光方法において,(a)前記ブロックマスクのパターンに対して複数の補正エリアを発生する工程と,(b)前記補正エリア内のパターンの面積密度を求め,当該補正エリアの周囲の補正エリアの面積密度及び補正エリア間の距離にしたがって,当該補正エリアの面積密度を修正する工程と,(c)前記パターンの境界に交わる補正エリアの前記修正された面積密度のうち最大の修正面積密度にしたがって,各パターンの露光量を決定し,前記ブロックマスク内の複数のパターンの露光量のうち最小の露光量を,当該ブロックマスクの主露光量にする工程と,(d)前記パターン内であって前記主露光量では露光エネルギー不足になる前記補正エリアに補助露光パターンを発生する工程と,(e)前記ブロックマスクを通過した荷電粒子ビームで前記主露光量にしたがって前記試料を露光し,更に,前記補助露光パターンで前記試料を露光する工程とを有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光方法。
(付記11)複数のパターンを有するパターンデータから露光パターンデータを有する露光データを生成し,該露光データにしたがって試料を露光する荷電粒子ビーム露光装置において,(a)前記パターンに対して複数の補正エリアを発生する補正エリア発生部と,(b)前記パターンデータのパターンであって,高さと幅の比が基準値より大きい細長いパターンを,複数のパターンに分割するパターン分割部と,(c)前記補正エリア内のパターンの面積密度を求め,当該補正エリアの周囲の補正エリアの面積密度及び補正エリア間の距離にしたがって,当該補正エリアの面積密度を修正する面積密度生成部と,(d)前記パターンに交わる補正エリアの前記修正された面積密度のうち最大の修正面積密度にしたがって,各パターンの主露光量を決定する露光量補正部と,(e)前記パターン内であって前記主露光量では露光エネルギー不足になる前記補正エリアに補助露光パターンを発生する補助露光パターン生成部と,(f)前記パターンデータに前記補助露光パターンを追加した露光パターンデータにしたがって,前記試料を露光する露光部とを有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光装置。
(付記12)複数のパターンを有するパターンデータから露光パターンデータを有する露光データを生成し,該露光データにしたがって試料を露光する荷電粒子ビーム露光装置において,(a)前記パターンを描画する露光ビームサイズのうち,最大サイズに応じて前記ビームの広がりによるビームボケを求め,当該ビームボケに応じて前記パターンを縮小するように変更するパターン変更部と,(b)前記変更されたパターンにしたがって求められた露光パターンデータにしたがって,前記試料を露光する露光部とを有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光装置。
(付記13)複数のパターンを有するパターンデータから露光パターンデータを有する露光データを生成し,該露光データにしたがって試料を露光する荷電粒子ビーム露光装置において,(a)前記パターンに対して複数の補正エリアを発生する補正エリア生成部と,(b)前記補正エリア内のパターンの面積密度を求め,当該補正エリアの周囲の補正エリアの面積密度及び補正エリア間の距離にしたがって,当該補正エリアの面積密度を修正する面積密度生成部と,(c)前記パターンの境界に交わる補正エリアの前記修正された面積密度のうち最大の修正面積密度にしたがって,各パターンの主露光量を決定する露光量補正部と,(d)前記パターン内であって前記主露光量では露光エネルギー不足になる前記補正エリアに補助露光パターンを発生する補助露光パターン生成部と,(e)前記パターンデータに前記補助露光パターンを追加した露光パターンデータにしたがって,前記試料を露光する露光部とを有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光装置。
(付記14)複数のパターンを有するブロックマスクを透過した荷電粒子ビームにより試料を露光する荷電粒子ビーム露光装置において,(a)前記ブロックマスクのパターンに対して複数の補正エリアを発生する補正エリア生成部と,(b)前記補正エリア内のパターンの面積密度を求め,当該補正エリアの周囲の補正エリアの面積密度及び補正エリア間の距離にしたがって,当該補正エリアの面積密度を修正する面積密度生成部と,(c)前記パターンの境界に交わる補正エリアの前記修正された面積密度のうち最大の修正面積密度にしたがって,各パターンの露光量を決定し,前記ブロックマスク内の複数のパターンの露光量のうち最小の露光量を,当該ブロックマスクの主露光量にする露光量補正部と,(d)前記パターン内であって前記主露光量では露光エネルギー不足になる前記補正エリアに補助露光パターンを発生する補助露光パターン生成部と,(e)前記ブロックマスクを通過した荷電粒子ビームで前記主露光量にしたがって前記試料を露光し,更に,前記補助露光パターンで前記試料を露光する露光部とを有することを特徴とする荷電粒子ビーム露光装置。
以上,本発明によれば,補助露光パターンの発生をできるだけ少なくすることができ,露光工程のスループットを向上し,露光・現像後のパターン形状がシャープになる。更に,ビームサイズのクーロン効果による膨張を適切に防止することができる。また,ブロックマスク露光を適切に行うことができる。
100 露光データ作成装置200,300 露光部102 設計データ,パターンデータファイル103 補正エリア発生部104 面積密度生成部105 面積密度修正部107 露光量補正部108 補助露光パターン生成部109 露光データファイル114 パターン分割部115 パターン変更部