JP4191411B2 - 二次電池容器およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、内圧の上昇に破壊されることにより、内圧の異常上昇を防止する機能を持った二次電池容器、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、さまざまな分野で二次電池が用いられている。例えば、小型のものであれば、携帯電話機やビデオカメラ等の電子機器の電源として用いられている。また、大型のものであれば、電気自動車の電源や家庭用等の電力貯蔵装置として用いられている。このような用途に用いられる二次電池として、従来からの鉛二次電池やニッケル・カドミウム二次電池に代わって、より軽量でコンパクトなリチウム二次電池が普及しつつある。
【0003】
このリチウム二次電池は、有機材料の電解液を使用しており、例えば、短絡などによる大電流の放出に伴って電池内部の温度が上昇すると、電解液がガス化して電池容器内部の圧力が上昇することがある。
図8および図9は、このような場合に電池容器内のガスを放出して容器自体の破損を防止するための安全弁を備えたリチウム二次電池の一従来例を示すものである。
符号101は容器、102は安全弁の弁体、103は内部の電極に接続された陽極端子、104は内部の他の電極に接続された陰極端子である。この一従来例にあっては、容器101の内圧が上昇すると、容器101の上面板105に貫通孔106を覆って設けられた弁体102が破壊され、内部の高圧ガスが放出されて、容器101自体の破損が防止される。
【0004】
前記弁体102は、上面板105より薄い板材からなり、図9に示すように、溶接部107を介して上面板105に溶接されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記弁体102の溶接には、レーザ溶接が用いられるが、図9に示すような溶接構造では、弁体102の機能が確実に発揮されない場合がある。具体的には、弁体102を構成する板材は、容器101内の圧力上昇によって確実に破壊されることが必要であるため、極めて薄く、このため、溶接に際して、上面板105と弁体102とを充分にとけ込ませて、溶接部107の厚さを確保することが難しいという問題がある。
【0006】
そして、溶接部107の厚さが不十分であると、二次電池容器に求められる密閉性が得られないだけでなく、弁体102が破壊されるべき圧力以下で溶接部107が破壊されると、二次電池が所定の性能を発揮することができないという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、弁体と二次電池容器とを確実に溶接してその信頼性を高めることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、複数積層した電極板と該電極板が浸漬される電解液とを収容する容器において、前記容器に設けられた貫通孔の周囲に厚さ方向へ突出する環状に形成され、半径方向外方へ環状に突出する第一のフランジ部を有する突出部を設け、該突出部の前記第一のフランジ部に重ねて、前記貫通孔を覆う板状の弁体を設け、該弁体の上に前記第一のフランジ部との間に弁体を挟む第二のフランジ部を設け、前記第一のフランジ部、前記弁体、及び、前記第二のフランジ部の外周に互いを溶け込ませた溶接部を設けたことを特徴とする。
また本発明は、複数積層した電極板と該電極板が浸漬される電解液とを収容する容器において、前記容器に設けられた貫通孔の周囲に厚さ方向へ突出する環状に形成され、半径方向外方へ環状に突出する第一のフランジ部を有する突出部を設け、該突出部の前記第一のフランジ部に、前記貫通孔を覆う板状の弁体を重ね、該弁体の上に前記第一のフランジ部との間に該弁体を挟むように第二のフランジ部を重ね、前記突出部の前記第一のフランジ部の外周と前記弁体の外周と前記第二のフランジ部の外周とを溶接して互いに溶け込ませたことを特徴とする。
また本発明は、互いに重ねられた前記突出部の前記第一のフランジ部と弁体と前記第二のフランジ部とを互いに接近する方向へ付勢してこれらを一体に保持し、この状態で前記溶接を行うことを特徴とする。
また本発明は、前記容器、前記弁体及び前記第二のフランジ部を、これらと平行な平面内で回転させながら、これらの外周を溶接することを特徴とする。
また本発明は、前記容器、前記弁体及び前記第二のフランジ部を一方向へ回転させながら溶接する工程と、他方向へ回転させながら溶接する工程とによって、前記第一のフランジ部、前記弁体及び前記第二のフランジ部の全周を溶接することを特徴とする。
また本発明は、前記容器の下方および前記第二のフランジ部の上方のいずれか一方に設けられた磁石と、いずれか他方に設けられて該磁石の磁力の作用を受ける強磁性体とによって前記付勢を行うことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は第1参考例を示すものである。二次電池容器の一部をなす上面板105の貫通孔106の周囲には、突出部10が設けられている。この突出部10の上部にはラプチャと呼ばれる板状の弁体102が前記貫通孔106およびその周囲の突出部10を覆って設けられている。これら突出部10および弁体102は、図1に示すように重ねられ、この状態で外周に沿ってレーザ溶接機等により溶接を施して、図中破線で示すように溶接部11を形成することにより一体化され、貫通孔106が密閉されるようになっている。
【0010】
この溶接にあっては、外周に沿って溶接機のトーチを移動させることにより、環状の突出部10の半径方向内方へ上面板105および弁体102の双方をとけ込ませながら溶接するので、溶接部11に十分な厚さを持たせて必要な強度および密閉性を確保することができる。
【0011】
図2は第2参考例を示すものである。この参考例は、突出部10の周囲に半径方向外方へ突出する環状のフランジ部12を設け、このフランジ部12に弁体102の外周部を重ねて、外周をレーザ溶接したものである。前記フランジ部12は、弁体102とほぼ等しい厚さに構成され、溶接に際して、フランジ部12と弁体102との吸熱量をできるだけ等しくするよう配慮されている。
【0012】
この参考例では、図2の状態で外周をレーザ溶接することにより、フランジ部12と弁体102とにほぼ均等にエネルギーを吸収させて両者を十分にとけ込ませてさらに十分な強度および密閉性を確保することができる。
【0013】
図3は本発明の第1実施形態を示すものである。この実施形態では、前記第2参考例における弁体102の上に、さらに前記フランジ部12とほぼ同じ板厚の第2のフランジ部13を重ねて、これらの外周を溶接したものである。この実施形態では、フランジ部12、弁体102、フランジ部13が互いに重ねられているので、これらの外周を溶接して互いに溶け込ませることにより、前記第2参考例の場合よりもさらに大きな溶接部11を確保することができる。
【0014】
図4〜図6は本発明の第2実施形態を示すものである。この実施形態は、上記参考例及び実施形態における溶接に際して治具を用いたものである。図4は前記第1参考例の弁体102に押さえ治具を適用した例を示している。符号20は椀型に形成された押さえ部材であって、この押さえ部材20は、突出部10、弁体102の上に重ねられ、これらが全体として、挟持部材23に挟持されている。この挟持部材23の下部材21は上面板105の下側に設けられ、また上部材22は弁体102の上側に設けられて、弁体102を突出部10に押し付けて固定するようになっている(なお図4は、弁体102が突出部10に密着する直前の状態を示している)。
【0015】
この実施形態にあっては、挟持部材23によって弁体102が突出部10に固定されているので、これらの外周を溶接するに際してこれらを互いに位置決めすることができる。この溶接は、前記上面板105等をターンテーブル(図示略)の上に載せ、軸線Cを中心として回転させることにより行うことができる。なお、図4における角度αは、レーザ溶接機等の先端部を被溶接部の前方側へ傾ける角度である前進角であり、角度βは、レーザ溶接機等の先端部を回転中心Cから倒れる方向へ傾ける角度である内向角である。この溶接は、図6に示すように、挟持部材23が設けられた位置を中心として、前記ターンテーブルを略180度ずつ反対方向へ回転させることにより、挟持部材23による挟持位置を避けながら行われる。
【0016】
図7は本発明の第3実施形態を示すものである。この実施形態は、軸24を中心として回転するターンテーブル25上に中心を一致させて上面板105を置き、さらに弁体102を載せて押さえ部材20により押さえ、さらに上方に設けられた磁石26を設けて弁体102を固定するようにしたものである。すなわち、前記ターンテーブル25を鋼などの強磁性体により構成することにより、前記磁石26との間に作用する磁力によって弁体102を固定することができる。
【0017】
この実施形態にあっては、前記弁体102が磁石26によって固定されているから、例えば図7に示すようにレーザ溶接機のトーチ27を半径方向外方から接近させた場合であっても、弁体102、上面板105、さらには磁石26等の軸24を中心とする回転軌跡と干渉することがない。したがって、前記トーチ27を被溶接部に近接させた状態でターンテーブル25を360度にわたって回転させることにより、1行程で弁体102の全周を溶接することができる。
【0018】
なお、前記前進角αは、レーザ溶接に際して、被溶接部からの溶接光の反射による溶接機の損傷を防止すべく設けられるもので、表1に示すように、前進角を5度〜15度にすることにより、レーザ溶接機で通常用いられるパルス当たりのエネルギー(J/P)を変化させた場合にも、所望の品質の溶接を行うことができる。
【表1】
Figure 0004191411
表1において、○は管理水準以上の気密性および良好な外観が得られ、△は、管理水準以上の気密性が得られ、外観にやや不良が見られたことを示している。このように、前進角を所定範囲とすることにより、パルスエネルギーの許容範囲が広がるため、溶接部に必要なエネルギーを与えて、より確実に弁体を取り付けることができる。
【0019】
なお、第2実施形態および第3実施形態に適用された溶接用治具等は、第1参考例の形状の上面板や弁体のみならず、第2参考例第1実施形態、さらには、他の態様にも適用することができるのはもちろんである。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、二次電池用容器を構成する金属板の少なくともいずれかの面に、容器内が所定以上の圧力となることにより破壊されて容器内外を連通する安全弁の弁体を設けたものであって、前記容器に設けられた貫通孔の周囲に厚さ方向へ突出する環状に形成され、半径方向外方へ環状に突出する第一のフランジ部を有する突出部を設け、該突出部の前記第一のフランジ部に重ねて、前記貫通孔を覆う板状の弁体を設け、該弁体の上に前記第一のフランジ部との間に弁体を挟む第二のフランジ部を設け、前記第一のフランジ部、前記弁体、及び、前記第二のフランジ部の外周に互いを溶け込ませた溶接部を設けたから、溶接部の肉厚を十分に確保して良好な気密性あるいは強度を発揮することができる。また本発明は、前記溶接に際して、互いに重ねられた前記突出部の前記第一のフランジ部と弁体と前記第二のフランジ部とを互いに接近する方向へ付勢してこれらを一体に保持し、この状態で前記溶接を行うから、弁体の位置がずれることなく溶接を行うことができる。また本発明は、前記容器、前記弁体及び前記第二のフランジ部を、これらと平行な平面内で回転させながらレーザ溶接機等のトーチを接近させて溶接を行うから、弁体の溶接を能率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1参考例の要部の縦断面図。
【図2】 第2参考例の要部の縦断面図。
【図3】 第1実施形態の要部の縦断面図。
【図4】 第2実施形態の要部の縦断面図。
【図5】 第2実施形態の要部の他の断面における縦断面図。
【図6】 第2実施形態の平面図。
【図7】 第3実施形態の縦断面図。
【図8】 一従来例の斜視図。
【図9】 一従来例の要部の縦断面図。
【符号の説明】
10 突出部11 溶接部12 フランジ部13 (第2の)フランジ部20 押さえ部材21 下部材22 上部材23 挟持部材25 ターンテーブル26 磁石102 弁体105 上面板106 貫通孔

Claims (6)

  1. 複数積層した電極板と該電極板が浸漬される電解液とを収容する容器において、
    前記容器に設けられた貫通孔の周囲に厚さ方向へ突出する環状に形成され、半径方向外方へ環状に突出する第一のフランジ部を有する突出部を設け、
    該突出部の前記第一のフランジ部に重ねて、前記貫通孔を覆う板状の弁体を設け、
    該弁体の上に前記第一のフランジ部との間に弁体を挟む第二のフランジ部を設け、
    前記第一のフランジ部、前記弁体、及び、前記第二のフランジ部の外周に互いを溶け込ませた溶接部を設けたことを特徴とする二次電池容器。
  2. 複数積層した電極板と該電極板が浸漬される電解液とを収容する容器において、
    前記容器に設けられた貫通孔の周囲に厚さ方向へ突出する環状に形成され、半径方向外方へ環状に突出する第一のフランジ部を有する突出部を設け、
    該突出部の前記第一のフランジ部に、前記貫通孔を覆う板状の弁体を重ね、
    該弁体の上に前記第一のフランジ部との間に該弁体を挟むように第二のフランジ部を重ね、
    前記突出部の前記第一のフランジ部の外周と前記弁体の外周と前記第二のフランジ部の外周とを溶接して互いに溶け込ませたことを特徴とする二次電池容器の製造方法。
  3. 互いに重ねられた前記突出部の前記第一のフランジ部と弁体と前記第二のフランジ部とを互いに接近する方向へ付勢してこれらを一体に保持し、この状態で前記溶接を行うことを特徴とする請求項2に記載の二次電池容器の製造方法。
  4. 前記容器、前記弁体及び前記第二のフランジ部を、これらと平行な平面内で回転させながら、これらの外周を溶接することを特徴とする請求項またはに記載の二次電池容器の製造方法。
  5. 前記容器、前記弁体及び前記第二のフランジ部を一方向へ回転させながら溶接する工程と、他方向へ回転させながら溶接する工程とによって、前記第一のフランジ部、前記弁体及び前記第二のフランジ部の全周を溶接することを特徴とする請求項に記載の二次電池容器の製造方法。
  6. 前記容器の下方および前記第二のフランジ部の上方のいずれか一方に設けられた磁石と、いずれか他方に設けられて該磁石の磁力の作用を受ける強磁性体とによって前記付勢を行うことを特徴とする請求項に記載の二次電池容器の製造方法。
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