JP4190199B2 - マグネシア含有不定形耐火物の乾燥制御方法 - Google Patents

マグネシア含有不定形耐火物の乾燥制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、 RH,DH等の二次精錬炉、溶鋼鍋,転炉、溶銑予備処理ランス等に使用されるマグネシア含有不定形耐火物をマイクロ波を用いて乾燥する技術において、乾燥制御によりマグネシアの水和反応を制御し、高耐用のマグネシア含有不定形耐火物を得るための乾燥技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マグネシアは、高耐火性、高塩基度スラグに対する高耐食性などの優れた性質を有するため、不定形耐火物にも広く用いられている。しかしながら、マグネシアは水分と容易に反応して劣化するため、その水和特性は不定形耐火物の性能に大きく影響する。例えば、乾燥時に、マグネシアの水和反応によって引き起こされる消化の問題があり、体積変化を起因とする割れが頻発するという欠陥があった。マグネシアの水和機構については、例えば、耐火物,48,3,112-122(1996)に記載されている。
【0003】
このように、マグネシアは本質的には水と反応して、水酸化マグネシウムに変化する、すなわち消化する性質をもっているが、空気中に放置しても急速に消化することはない。しかし、水蒸気に触れると消化は速くなる。したがって、不定形耐火物の乾燥では、消化を避けることが重要であった。これに対して、従来、各種の対策が講じられてきた。例えば、特開平8-183673号公報では、マグネシア微粉の表面を水和しない親水性無機材料によってコーティング処理することで、マグネシア含有不定形耐火物の消化を抑制する発明が開示されている。特開平9-59017号公報では、平均粒径20μm以下のマグネシア微粉にシリカ微粒子を予め混合し、マグネシア微粉表面にシリカ成分を被覆することで、マグネシア微粉の耐消化性を確実に付与する発明が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの既知の発明では、高耐食性と耐消化性を両立させることが、極めて困難であることが明らかになった。例えば、水和抑制のために添加されたシリカは、高塩基度スラグに対する耐食性が低く、耐消化性を向上させるほど、耐火物としての耐用性は著しく低下することが明らかになった。このことから、添加物によりマグネシア含有不定形耐火物の耐消化性を向上させることよりも、乾燥を最適に制御することにより、乾燥中のマグネシアの水和反応を極力抑制し、体積変化を起因とする割れの発生をおさえることが極めて重要である。
【0005】
本発明は、上記のような点を鑑みて、マイクロ波を使用したマグネシア含有不定形耐火物の乾燥制御に際して、乾燥中のマグネシアの水和反応を極力抑制し、耐用性に優れた不定形耐火物の乾燥制御方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は下記(1)〜(3)のとおりである。
【0007】
(1)マイクロ波を用いてマグネシア原料を含有する不定形耐火物を乾燥する際に、耐火物表面、耐火物内部のいずれかの最高到達温度T(℃)と常温から乾燥終了までの時間t(hr.)の関係(T、t)を120≦T≦170、かつ26.72e−0.011T≦t≦42.43e−0.0099Tの範囲とし、乾燥前に含有する耐火物中の自由水の90質量%以上を脱水することを特徴とするマグネシア含有不定形耐火物の乾燥制御方法。
【0008】
(2)乾燥中の炉内雰囲気、耐火物表面、耐火物内部のいずれか1又は2以上の温度を光ファイバー式温度センサーを用いて測定することを特徴とする前記(1)記載のマグネシア含有不定形耐火物の乾燥制御方法。
【0009】
(3)前記(1)記載の(T、t)の範囲で、耐火物表面、耐火物内部のいずれかの温度を、±10℃の範囲内で、2時間以上24時間以下保持することを特徴とする前記(1)又は(2)記載のマグネシア含有不定形耐火物の乾燥制御方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、自由水は、不定形耐火物に水を加えて流動状にしたときに、結合材に用いられているアルミナセメント等と反応にあずからなかった自由な水と定義する。自由水の重量は、恒温槽中で110℃24時間乾燥後の重量減少量により測定できる。
【0011】
以下に、本発明の乾燥方法について説明する。
【0012】
乾燥時間が図1のDとCを結ぶ線より上の場合、つまり、最高到達温度をT(℃)、常温から乾燥終了までの時間をt(hr.)としたとき、t>42.43e-0.0099Tの場合、マグネシアの水和反応が顕著に進行し、体積変化による亀裂が多数発生するため、実炉で高耐用を得ることが困難になる。乾燥時間が、図1のAとBを結ぶ線より下の場合、つまり、t<26.72 e-0.011Tの場合、乾燥速度が極めて速く、内部蒸気圧の急激な変化に伴う亀裂、爆裂発生につながる可能性があり、マグネシア含有不定形耐火物を高品質に乾燥することが困難になる。なお、t=f(T)の曲線の式は、乾燥実験により経験的に求めたものである。
【0013】
図1のAとDを結ぶ線よりも左側すなわち60℃よりも乾燥温度が低い場合、自由水の蒸発がほとんど進行せず、極めて長時間の乾燥操作が必要になり、好ましくない。また、図1のBとCを結ぶ線よりも右側すなわち200℃よりも乾燥温度が高い場合、水蒸気圧が極めて高くなり、短時間でマグネシアの水和反応が急速に進行するため、好ましくない。本発明は最高到達温度と常温から自由水が90質量%脱水されるまでの乾燥終了時間を規定するものであり、この条件を満たせば、最高到達温度に至るまでの温度履歴は特に規定せず、最高温度で保持することも、最高到達温度に達した瞬間に乾燥を終了することも、耐火物表面、耐火物内部のいずれかの最高到達温度T(℃)と常温から乾燥終了までの時間t(hr . )の関係(T、t)を120≦T≦170、かつ26.72e −0.011T ≦t≦42.43e −0.0099T の範囲を満たせば、特に制約することはない。
【0014】
耐火物表面、耐火物内部のいずれかの最高到達温度T(℃)と常温から乾燥終了までの時間t(hr . )の関係(T、t)を120≦T≦170、かつ26.72e −0.011T ≦t≦42.43e −0.0099T の範囲で、耐火物の表面、内部のいずれかの温度を、±10℃の範囲内で1時間以上24時間以下保持することで、乾燥時の入熱分が効率的に水の蒸発に使われるために、短時間での乾燥が可能になり、マグネシアの水和反応に伴う亀裂発生を抑制し、高耐用のマグネシア含有不定形耐火物を得ることができる.+10℃よりも保持温度が上昇する場合、材料の昇温にも熱が用いられ、また、急激に温度が上昇すると爆裂の危険性があるために好ましくない。一方、−10℃よりも保持温度が低下する場合、不定形耐火物に含まれる水を蒸発させるのに十分な熱量がなく、乾燥がほとんど進行しないことになるので好ましくない。保持時間が2時間未満では、乾燥時間短縮の効果が低く、また、保持時間が24時間を超えると、不定形耐火物中のマグネシアと水の反応が進行しやすく、水和に伴う体積変化が大きくなり、亀裂発生の危険性が高くなるために、好ましくない。
【0015】
耐火物表面、耐火物内部のいずれかの最高到達温度T(℃)と常温から乾燥終了までの時間t(hr . )の関係(T、t)を120≦T≦170、かつ26.72e −0.011T ≦t≦42.43e −0.0099T 条件における乾燥終了時の自由水の脱水率は、マグネシアの水和に伴う体積変化による亀裂発生を抑えるために、90質量%以上であることが必要である。
【0016】
乾燥中の不定形耐火物の温度管理には、C/A熱電対や光ファイバー式温度計の使用が挙げられるが、特に、電界への影響を極力抑制する点から、光ファイバー式温度計の使用が望ましい。光ファイバー式温度計は、通常400℃程度に耐えることができる光ファイバーの端面に接着された半導体結晶の光吸収作用を利用している。具体的に、使用する光ファイバー式温度計としては、例えば、Canada NORTECH FIBRONIC INC.社のモデルNoEMI-TSシリーズ、USA LUXTRON CORP.社のフロロプチック光ファイバー方式温度計、Canada FISO TECHNOLOGIES INC.社の白色光ファブリーペローファイバーセンサーなどを使用することができる。センサー部分は、通常、直径1〜2mm,長さ50〜100mm程度である。
【0017】
本発明の対象とする不定形耐火物は、マグネシア-ライム質、アルミナ−マグネシア質、粘土質、ろう石質、マグネシア質、マグネシア・クロム質、ドロマイト質、マグネシア・カーボン質、アルミナ・カーボン質、アルミナ・炭化珪素・カーボン質、アルミナ・マグネシア・カーボン質など、マグネシアを含有するものであれば、限定するものではない。また、硬化法も、アルミナセメントのように水和反応を用いる水硬性に限らず、化学硬化性、熱硬性、気硬性のいずれでもよく特に限定するものではない。施工法も流し込み、こて塗り、吹き付け、振動施工、打ち込み、圧入等のいずれでも構わない。化学組成や形状も特に規定しない。
【0018】
マイクロ波については、電波法でISM周波数帯として、915MHz,2450MHzを含む4種類が割り与えられているが、周波数が大きいほど耐火物内部に浸透する深さは浅くなるので、厚み方向の均一加熱性を考慮して、915MHzと2450MHzを用いることが望ましい。必要に応じ、耐火物の周囲に設置する囲いは銅、アルミニウム、ステンレス等の金属を用いることが、マイクロ波は壁反射され、炉内は均一な電界を形成しやすい環境にあるので好ましい。特に、構造体としての安定性から金属製で構成された加熱炉では、マイクロ波は壁反射され、炉内は均一な電界を形成しやすい環境にあるので、囲いを設置することが、好ましい。被加熱物に集中的な電界が加わるように、例えば、電熱,No.27,p.7〜10(1986)に記載されているように、工夫することが必要である。
【0019】
炉内雰囲気を測温する場所は、特に限定するものではないが、空気(熱風)吹き込み口では、風速の変化等の影響も受けて温度の変動が激しいことから、空気(熱風)吹き込み口よりも乾燥対象の試料表面に近い位置で測温することが好ましい。耐火物表面は凹凸もあり、位置によって水の移動及び蒸発速度が異なる場合もあるので、少なくとも3点以上測温することが好ましい。耐火物内部は、施工時に表面から少なくとも深さ100mおきに、温度センサーを埋め込むことが好ましい。さらに、耐火物内部を管理する観点から、表面から少なくとも100mmおきに3点以上、背面側まで測温することが好ましい。耐火物表面、耐火物内部のいずれか1又は2以上を測定し、いずれかの最高温度が耐火物表面、耐火物内部のいずれかの最高到達温度T(℃)と常温から乾燥終了までの時間t(hr . )の関係(T、t)を120≦T≦170、かつ26.72e −0.011T ≦t≦42.43e −0.0099T 範囲となれば、自由水を90%以上脱水することができる。
【0020】
不定形耐火物又はプレキャストブロックの施工水分量は、特に限定するものではないが、3質量%未満では流動性が不足し施工が困難である。8質量%を超えると、乾燥後の気孔率が高く、実炉における耐用性が不十分になる。したがって、水分量を3〜8質量%とすることが好ましい。
【0021】
【実施例】
[実施例1]
以下に本発明を実施例によって説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0022】
ステンレス(SUS304)で大きさ600×1000×500mmの囲いで構成された加熱炉に、アルミナ92質量%、マグネシア4質量%,アルミナセメント4質量%、施工水分として外掛けで5%の水を添加し、予め200×200×200mmの所定形状に流し込み施工し、養生、脱枠しプレキャストブロックとした。この200×200×200mmのアルミナ質プレキャストブロックを4個、合計100kgを鋼製の囲い(大きさ1000×1000×1500mm)内部にセットした。ブロックの周囲をシリカ系断熱材で接触させて覆い、熱放散を抑制した。プレキャストブロックを載置した鋼製の囲いと開口部を覆う金属蓋で形成した空間を空洞共振器として、周波数2450MHzに対して±50MHzの範囲で誘電加熱を行った。プレキャストブロックの表面,表面から100mm及び背面の計3点に、センサー部分の長さ15mm,直径0.6mmの光ファイバー式温度センサーを取り付け、この温度を監視しながら、乾燥を実施した。一部については、光ファイバー式温度センサーと同じ位置にC/A熱電対を設置して測温した。
【0023】
本発明例1では、プレキャストブロックの表面から100mmの位置が、光ファイバー式温度センサーを用いた計測で120℃に達するまで6時間で昇温させたのちに、120℃で5時間保持させて、ブロックに含まれる水を乾燥させた。本発明例2では、プレキャストブロックの表面から100mmの位置が、光ファイバー式温度センサーを用いた計測で170℃に達するまで6時間で昇温させたのちに、170℃で2時間保持して、ブロックに含まれる水を乾燥させた。本発明例3では、本発明例1と同様の乾燥条件で、通常の熱電対を用いて温度計測を行った。本発明例4では、プレキャストブロックの表面から100mmの位置が、光ファイバー式温度センサーを用いた計測で100℃に達するまで5時間で昇温させたのちに、図2に示すように、緩やかに昇温させながら、常温から乾燥終了まで8時間で乾燥を行った。本発明例1及び2は、請求項1〜3のいずれをも満たす例であり、本発明例3は、請求項1及び3を満たす例である。本発明例4は、請求項1及び2を満たす例である。
【0024】
比較例では、プレキャストブロックの表面から100mmの位置が、光ファイバー式温度センサーを用いた計測で110℃に達するまで5時間で昇温させたのちに、110℃で25時間保持して乾燥した。
【0025】
乾燥後の試料の品質及び観察結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0004190199
【0027】
本発明例1及び2では、乾燥後に得られたプレキャストブロックの上部と中央部の気孔率及び強度の差は小さく、均質で高耐用なブロックを得ることができた。温度管理にC/A熱電対を使用した本発明例3では、電界の影響を受け、精密な温度制御ができなかったために、電界の影響を受けずに高精度な温度測定が可能である光ファイバー式温度センサーを用いた本発明例1に比べて、上部と中央部の気孔率や強度の差がやや開き、本発明例1及び2と比べると均一な乾燥ができなかった。また、本発明例1〜3のように、昇温した後に、2時間以上24時間以下の保持を設けなかった本発明例4では、保持を設けた本発明例1及び2と比べると、乾燥後に得られたプレキャストブロックの上部と中央部の気孔率及び強度の差はやや開き、本発明例1及び2と比べると均一な乾燥ができなかった。
【0028】
【発明の効果】
本発明により、マグネシアを含有する不定形耐火物をマイクロ波で乾燥するときに、乾燥中のマグネシアの水和反応による亀裂発生を抑制することができ、目的通り、均一で高耐用な耐火物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マグネシア含有不定形耐火物の乾燥時間と温度との関係を示す図。
【図2】マグネシア含有不定形耐火物の乾燥昇温パターンを示す図。

Claims (3)

  1. マイクロ波を用いてマグネシア原料を含有する不定形耐火物を乾燥する際に、耐火物表面、耐火物内部のいずれかの最高到達温度T(℃)と常温から乾燥終了までの時間t(hr.)の関係(T、t)を120≦T≦170、かつ26.72e−0.011T≦t≦42.43e−0.0099Tの範囲とし、乾燥前に含有する耐火物中の自由水の90質量%以上を脱水することを特徴とするマグネシア含有不定形耐火物の乾燥制御方法。
  2. 乾燥中の炉内雰囲気、耐火物表面、耐火物内部のいずれか1又は2以上の温度を光ファイバー式温度センサーを用いて測定することを特徴とする請求項1記載のマグネシア含有不定形耐火物の乾燥制御方法。
  3. 請求項1記載の(T、t)の範囲で、耐火物表面、耐火物内部のいずれかの温度を、±10℃の範囲内で2時間以上24時間以下保持することを特徴とする請求項1又は2記載のマグネシア含有不定形耐火物の乾燥制御方法。
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