JP4189742B2 - 寸法安定性ゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents

寸法安定性ゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業資材用に適したポリエステル繊維及びその製造方法に関するものである。特に、改善された強度および寸法安定性を有し、タイヤコードやVベルトなどのゴム補強用途に好適なポリエステル繊維及びその繊維を経済的にかつ安定的に製造する方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルタイヤコードに代表されるポリエステル高強力糸は物性面、コスト面でのバランスに優れた有機繊維であり、産業資材用繊維として広くかつ大量に使用されている。中でも、自動車タイヤ特に乗用車用タイヤは、タイヤ構造のラジアル化が進み、高速走行時の乗り心地や操縦安定性が優れ、かつ、燃費節約のため、軽量であることが要求されており、そのため、タイヤ補強用繊維としては、高強力で高弾性率かつ低収縮性繊維が強く求められている。また、大型タイヤに使用する場合には、耐疲労性の向上が要望される。
【0003】
一方、Vベルト用のポリエステル繊維では、メンテナンスフリーとするために、高弾性率化が求められている。
【0004】
このような市場の要求に対して、たとえば、特許文献1および2に見られるような高速紡糸による高張力により高配向未延伸糸を得、これを延伸することで、寸法安定性に優れ、弾性率も高いポリエステル繊維が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、紡糸速度2000〜5500m/分で引き取った複屈折率Δnが0.113に至るような、さらに高配向の未延伸糸を延伸することで優れた高弾性率、低収縮率繊維を得る方法が提案されている。
【0006】
このように、より高速紡糸化することでより高性能のポリエステル繊維が得られることが知られているものの、産業資材用に使用される比較的高重合度のポリエステルでの紡糸速度の高速化は極端な曵糸性の低下につながり、紡糸工程での糸切れ頻度が増大する。
【0007】
条件の最適化を実施し、紡糸工程での糸切れが抑制された状態においても、タイヤコードの生産手法として大半を占める紡糸直接延伸法においては、高速での延伸が強いられるために、延伸時の単糸切れ極端には糸切れが発生してしまい、生産としては好ましいとはいえない。
【0008】
これを解決するためにたとえば、特許文献4には延伸を多段階にし、その第1段目の延伸を特に加熱することなく雰囲気温度で延伸し、その後、スチームジェットのような加熱装置を用いて、第2段の延伸を行うことで、安定な高速紡糸直接延伸を行う方法が開示されている。
【0009】
この技術は配向度の高くなった、未延伸糸は通常良く実施されるようなガラス転移温度付近での延伸を行うように加熱すると、結晶化が進行し、かえって、延伸を阻害してしまうことをさけるためと考えられる。
【0010】
しかしながら、本技術ではこの第1段の延伸温度は雰囲気(ambient)温度であって、工程の変動、環境の変動の影響を受けやすいことは明らかである。
【0011】
一方、特許文献5には、同様の技術に加え、第2段目の延伸ゾーンへ糸条を供給するローラーの表面粗度をある一定の範囲内とすることで、延伸張力をコントロールするとともに、安定な延伸を行う技術が開示されている。
【0012】
これは従来、第2段目の延伸として、スチームジェットのような延伸点固定装置を使用した場合、その供給ロールには延伸点を安定化させるために鏡面仕上げのローラーを使用することが多かったが、表面粗度をある範囲に限定することで、安定な延伸が行えることを開示している。
【0013】
【特許文献1】
特公昭58−4089号公報
【特許文献2】
特公昭63−528号公報
【特許文献3】
特公平1−27164号公報
【特許文献4】
米国特許第4414169号公報
【特許文献5】
特許第2749168号公報
【0014】
しかしながら、基本的に上述の技術は2段以上の多段延伸を前提としており、延伸工程の後の弛緩熱処理工程を考慮すれば、最低でも4対8本の駆動ローラー、好ましくはこれに紡糸工程の張力変動などを延伸ゾーンに伝えないためのプリテンションロール対が必要となり、延伸装置の大型化につながり、作業上、操作性が低下するのみならず、経済的にも負担が大きいものであった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来の技術の問題点を解決し、寸法安定性に優れた高強度ポリエステル繊維を提供すると共に、高速紡糸直接延伸法における延伸性を向上せしめ、糸切れを低下せしめた高強度ポリエステル繊維の安定的生産方法の提供を課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような状況を鑑み、紡糸直接延伸法において、延伸条件、方法を鋭意検討した結果、得られたものである。すなわち、本発明の第1は、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする極限粘度0.75以上のポリエステルを紡糸口金から溶融吐出した後、3000m/分以上の表面速度を有する引き取りローラーで引き取る糸条の紡糸直接延伸法において、プリテンションロールでの引き取り後の未延伸糸の複屈折率Δnを0.07以上とし、総延伸倍率1.5〜2.5倍で延伸を行い、且つ、下記条件(1)〜(4)を満足することを特徴とする、寸法安定性ゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法であり、
(1)プリテンションロールと第1ゴデットロール間のローラー表面速度比率1.01〜1.10、
(2)第1ゴデットロール最終ラップでの延伸前糸条の糸温度が20℃以上40℃以下であること、
(3)第1ゴデットロールの少なくとも延伸開始点側のロールの表面粗度が、Rmax=3s〜9s、Pc=30〜60であること、
(4)第1ゴデットロールと第2ゴデットロール間のローラー表面速度比率が1.5〜2.5であって、両ロール間に非接触式の糸条加熱装置が設置されていること。
【0017】
その第2は、プリテンションロール及び/または第1ゴデットロール雰囲気に空調された風を送り、延伸前糸条温度を20℃以上40℃以下に維持する請求項1記載の寸法安定性ゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法であり、
【0018】
その第3は、第1ゴデットロールが水冷式の温調ロールである請求項1または2に記載の寸法安定性ゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法であり、
【0019】
その第4は、糸条加熱装置がスチームジェット加熱装置である請求項1〜3のいずれかに記載の寸法安定性ゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、少なくとも一種のグリコール、好ましくはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールから選ばれた少なくとも一種のアルキレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルを対象とする。また、テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置き換えたポリエステルであってもよく、および/またはグリコール成分の一部を主成分以外の上記グリコールもしくは他のジオール成分で置き換えたポリエステルであってもよい。ここで使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸を挙げることができる。また上記グリコール以外のジオール成分としては、例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコールビスフェノールA、ビスフェノールSの如き脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール等を挙げることができる。さらに、ポリエステルが実質的に線状である範囲でトリメリット酸、ピロメリット酸の如きポリカルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如きポリオール、5−ヒドロキシイソフタル酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸の如き三官能以上のエステル形成基を有するモノマーを使用することができる。
【0021】
本発明においては、上記のジカルボン酸成分とジオール成分から構成されるポリエステル繊維は、その繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。
【0022】
エチレンテレフタレートが80モル%未満では本発明が目標とする高強度や、高寸法安定性が実現できない。
【0023】
さらに、前記ポリエステル中には少量の他の任意の重合体や酸化防止剤、制電剤、染色改良剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、不活性微粒子その他の添加剤が含有されていてもよい。特に不活性微粒子を添加する場合は外部析出法および内部析出法のいずれも採用可能である。
【0024】
かかるポリエステルを得る方法としては、特別な重合条件を採用する必要はなく、ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体とグリコールとの反応生成物を重縮合して、ポリエステルにする際に採用される任意の方法で合成することができる。
【0025】
本発明で使用できるポリエステルの重合触媒としては、アンチモン、ゲルマニウム、チタンおよびアルミニウム化合物などがある。これらの重縮合触媒は、それぞれ単独あるいは複合的に用いることができる。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが挙げられ、特に三酸化アンチモンが好ましい。
【0026】
ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、特に二酸化ゲルマニウムが好ましい。チタン化合物としては、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネートなどが挙げられ、特に、テトラブチルチタネートが好ましい。
【0027】
本発明のアルミニウム化合物からなる重合触媒は、リン化合物またはフェノール構造を有する化合物、特にフェノール部を同一分子内に有するリン化合物と併用することが好ましい。
【0028】
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうち酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。
【0029】
併用するリン化合物としては特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果がとくに大きく好ましい。これらのリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0030】
本発明に用いるポリエステルの重合度はその力学特性の要求から、極限粘度(IV)で0.75以上であることが好ましく、0.80以上であることが特に好ましい。IVが0.75以下では目的とする高強度繊維を得るのが困難となる。
【0031】
一方、IV>1.2では重合、紡糸装置に特別なものを用意する必要があり、経済的に好ましくない。
【0032】
このような高重合度ポリエステルを得るには、溶融重合後、ペレタイズした後、さらに、固相重合を行う方法、溶融重合のみで高重合度ポリエステルを得る方法など任意に採用でき、後者の場合、ペレタイズすることなく、そのまま紡糸ヘッドに溶融ポリマーを導入することも可能である。
【0033】
本発明の紡糸条件としては、常法の製糸条件を採用できるが、紡糸速度は3000〜5000m/分、好ましくは3000〜4000m/分で紡糸される。3000m/分以下の紡糸速度では通常の紡糸条件では、未延伸糸の配向度をΔn≧0.070に高めるのに十分な紡糸応力を与えることができず、目的とする寸法安定性が得られない。
【0034】
ポリマーの重合度を上げ、溶融粘度をあげることで、3000m/分以下の紡糸速度でも、高配向度を得ることは可能ではあるが、高重合度化するためのコストが大きくなり、かつ生産性も低くコストの高いものとなってしまい、実用的でない。
【0035】
また、4000m/分以上の紡糸することは、理論的な生産性を考えると好ましいが、紡糸時に発生する、随伴流の制御など工学的に解決しなければならない問題が大きくなり、紡糸装置などの改造を実施しなければ、紡糸での糸切れが多発し、好ましくない。
【0036】
本発明においては、紡糸に引き続き連続して、延伸を実施するがその延伸倍率は1.5〜2.5倍である。1.5倍未満では本発明の目的の一つである、高強度が得られない。また、2.5倍以上では、本発明の技術を持ってしても、安定な延伸は不可能となる。
【0037】
本発明においては、第1ゴデットロールに先行し、紡糸張力などの工程変動をを延伸ゾーンに伝えないためにプリテンションロール対が設置される。
【0038】
ここで、プリテンションロールと第1ゴデットロールとの間に設定される、プリテンション比率は1.01〜1.10であり、好ましくは1.02〜1.05である。
【0039】
1.01未満ではプリテンションロールと第1ゴデットロール間で糸揺れが発生し、後の延伸が不安定となり好ましくない。また、1.10以上では実質的に延伸が開始して、未延伸糸の糸質が変化し、後の延伸性を阻害する。
【0040】
本発明において、延伸ゾーンに糸条を供給する第1ゴデットロールの少なくとも糸条の出口側のロールの表面粗度はRmax=3s〜9s、Pc=30〜60であることが必要である。
【0041】
Rmaxが3s以下では糸離れ性が低下するため、単糸のローラーへの糸とられなどが多発し、生産性が著しく低下する。また、9以上では後述のように糸条温度を制御しても延伸点が固定できず、やはり操業性が悪化する。
【0042】
Pcが30〜60の範囲に無い場合、原因は定かではないが、延伸毛羽が多発する。おそらく、Pcが高すぎる場合にはローラー表面と走行糸条の間での接触摩擦で糸条にダメージが与えられ、低すぎる場合には糸離れ性が悪くなり、スティックスリップのような延伸点変動が生じてしまうのではないかと推定される。
【0043】
本発明において、第1ゴデットロール最終ラップでの延伸前糸条の糸温度が25℃以上40℃以下であることは工程を安定化させる上で、きわめて重要である。
【0044】
延伸前の糸条は各温度で図1に示すようにそれぞれの応力−ひずみ曲線(S−S曲線)を有している。ここで、各温度において、図中Aの応力線を越えると、回復不可能な変形すなわち塑性変形が発生し、延伸が始まる。
【0045】
本発明においては、必要なローラー数を減少させ、経済的な紡糸直接延伸技術を提供するために、一対の延伸ロールシステムを用いて、延伸を完了させることを目的としている。
【0046】
機械的に1対の延伸ロールシステムで延伸を行う場合に留意すべき点は、延伸張力を延伸ゾーンに限定させることであり、他のゾーンたとえば本発明では第1ゴデットロール内に多くの延伸張力が伝わると、第1ゴデットロール内、特に最終ラップで延伸が開始してしまい、延伸が不安定となる。
【0047】
これを実現するために本発明が採用した方法はΔn>0.07の未延伸糸に対し、延伸前の温度を40℃以下に維持すること、第1ゴデットロールの少なくとの糸条の出口側のローラー表面粗度をRmax≦9sとすることである。
【0048】
Raを9s以下に維持することで、ある程度の延伸張力が第1ゴデットロール内に伝わることを防ぐことは可能となるが、糸条温度が40℃以上を保持している場合、上記、図1に見られるように、糸条の降伏応力が高くなく、わずかな応力伝播でも延伸が開始され、不安定な延伸系となってしまう。
【0049】
これを避けるには、延伸応力の遮断を強くするため、ローラーと走行糸条との間の摩擦係数を高くすればよいが、このためにはローラーの仕上げを細かくする必要があるが、前述のように、Ra<3sでは単糸とられが多発するため、本系では採用できない。
【0050】
そのため、本発明が採用した手法は延伸張力を遮断してしまうのではなく、糸条の方の降伏応力を高め、延伸されにくくする方法である。すなわち、このために、本発明では延伸前の糸条温度を40℃以下好ましくは35℃以下に維持することで、糸条の降伏応力を高め、多少の応力では延伸が始まらないようにしたことに特徴がある。
【0051】
延伸点を安定化させるという目的に対しては、延伸前の糸条温度を下げれば下げるほど好ましいが、温度を下げすぎると、今度は必要な延伸も実施できなくなる。このため、好ましい糸条温度としては20℃以上、さらに好ましくは25℃以上となる。
【0052】
本発明において、1対の機械的な延伸システムの中で、実質的には3段の延伸が行われていることが実験的に確認されている。
【0053】
すなわち、第1ゴデットロール出口から糸条加熱装置入り口に至る領域、特に第1ゴデットロール出口近傍での冷延伸(ポリマーのガラス転移温度以下の温度での延伸)、糸条加熱装置内における高温熱延伸、第2ゴデットロール入り口から第2ゴデットロール内における高温熱延伸である。
【0054】
このうち、最後の第2ゴデットロール入り口から第2ゴデットロール内における高温熱延伸については、その一部の張力が第2ゴデットロール表面と、走行糸条との摩擦により、失われるものの、基本的にこれら3つの延伸が張力が断ち切られることなく、実現されている。
【0055】
このような延伸形態は従来、不安定な延伸とされ、たとえば先に引用した米国特許第4414169号や特許2749168号などでも張力を遮断することを必要としている。
【0056】
ところが、極めて驚くべきことに、本発明のように、Δn>0.07の未延伸糸を延伸前糸条の温度を一定範囲に抑え、規定の表面粗度を有するローラーを使用することで、上記のような同一延伸張力内で、3種の延伸を行っても、極めて安定な延伸が実施できることが明らかになった。
【0057】
本発明が対象とするような高繊度の系では、紡糸時に繊維は冷却固化されているものの、溶融ポリマーに由来する持ち込み熱を完全に除去することは困難であり、たとえ実施できてもユーティリティーコストを考慮すれば、あまりに非効率、非経済的である。このため延伸前糸条温度を20〜40℃に維持するためには、通常、糸条を冷却する必要がある。
【0058】
糸条の冷却方法としては種々の方法が考えられるが、温調された冷水を内部に循環させた水冷式のローラー対を使用すること、温調された風をプリテンションロール部から第1ゴデットロール部に局所的に送風する方法などが考えられ、もちろん、それらを組み合わせても良い。
【0059】
第1ゴデットロールと第2ゴデットロール間に設置する糸条加熱装置は、張力を遮断しないために非接触の加熱装置である必要があるが、そのような例として、過熱蒸気を用いるスチームジェット加熱装置が良く知られている。
【0060】
使用する蒸気温度、量は冷延伸後の糸条を加熱延伸するために十分な熱量が必要である。また、高温延伸、及び繊維の微細構造の再構成のために必要な時間を稼ぐために、蒸気吹き出し部に引き続き、保温領域を有するものも好ましい。
【0061】
このように延伸を完了した糸条は通常、構造の安定化を図るため、弛緩熱処理を行った後、巻き取り機で巻き取られる。
【0062】
このようにして得られた繊維は高強度であり、高寸法安定性を有するものであり、その生産時の操業性も極めた優れたものとなる。
【0063】
【実施例】
以下、実施例で本発明を具体的に説明する。尚、本発明における各種特性の評価方法および測定方法は下記の方法に従った。
【0064】
表面粗度(Rmax及びPc):
JIS B0601に基づき、表面粗度計を用い、ドライブスピード0.5mm/sで測定した。
【0065】
Rmax(最大高さ):
断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分(以下抜取り部分という)の平均線に平行な2直線で抜取り部分を挟んだとき、この2直線の間隔を断面曲線の縦倍率の方向に測定して、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0066】
Pc (ピークカウント):
粗さ曲線の中心線に平行な2本のピークカウントレベル(ヒステリシス)を設け、この下側のピークカウントレベルと曲線が交差する2点間において、上側のピークカウントレベルと曲線が交差する点が1回以上存在するとき1山としてこの山数を基準長さL内で求めたものを言う。
【0067】
走行糸条温度:
カノマックス製赤外線サーモビューアーを用いて、GR1の最終ラップの糸温度を測定した。温度は測定位置近傍に黒体スプレーで塗装したアルミ板を設置し、このアルミ板温度とサーモビューアーの温度が一致するように調整すると共に、巻きあがった完成糸を20℃糸環境下に一昼夜放置した糸をサーモビューアーで測定したとき温度差から輻射率を求めて、補正した。
【0068】
固有粘度:
ポリマーを0.4g/dlの濃度でパラクロロフェノール/テトラクロロエタン=3/1混合溶媒に溶解し、30℃において測定した。
【0069】
強伸度:
JIS−L1017の定義により、20℃、65%RHの温湿度管理された部屋で24時間放置後、引張試験機により、破断強度、破断伸度、初期弾性率を得た。
【0070】
複屈折率Δn:偏光顕微鏡を用い、ベレックコンペンセーター法により測定した。
【0071】
操業性:
操業性は1トンの完成糸を生産する間に発生した糸切れ頻度を、基準条件(実施例4)での糸切れ頻度を100としたときの指数で表した。
【0072】
実施例1〜7:延伸条件依存性
プリテンションロールに至る紡糸条件はすべて同一であり、未延伸糸の複屈折率Δn=0.08の条件を採用した。
【0073】
各実施例共通延伸条件は表1の通りである。
プリテンション比(GR1/PTR):1.03
延伸倍率(GR2/GR1):2.0
リラックス比(GR3/GR2):0.97
加熱装置:スチームジェット(500℃)
GR2温度:230℃
GR3温度:130℃
【0074】
【表1】
Figure 0004189742
【0075】
実施例8:プリテンションの効果
実施例3において、糸道を変更し、プリテンションロールを経由せず、直接、GR1へ未延伸糸を導いた以外、同一の条件で操業性を評価した。このときの操業性は実施例4を100とすると、110であった。
【0076】
【発明の効果】
本発明の条件において高強度、高寸法安定性ポリエステル繊維を製造することで、少ないローラー数すなわち、より小型な延伸装置を用い、安定した操業性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の延伸前の糸条の各温度におけるそれぞれの応力―歪の関係を示す図である。

Claims (4)

  1. エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする極限粘度0.75以上のポリエステルを紡糸口金から溶融吐出した後、3000m/分以上の表面速度を有する引き取りローラーで引き取る糸条の紡糸直接延伸法において、プリテンションロールでの引き取り後の未延伸糸の複屈折率Δnを0.07以上とし、総延伸倍率1.5〜2.5倍で延伸を行い、且つ、下記条件(1)〜(4)を満足することを特徴とする、寸法安定性ゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法。
    (1)プリテンションロールと第1ゴデットロール間のローラー表面速度比率1.01〜1.10、
    (2)第1ゴデットロール最終ラップでの延伸前糸条の糸温度が20℃以上40℃以下であること、
    (3)第1ゴデットロールの少なくとも延伸開始点側のロールの表面粗度が、Rmax=3s〜9s、Pc=30〜60であること、
    (4)第1ゴデットロールと第2ゴデットロール間のローラー表面速度比率が1.5〜2.5であって、両ロール間に非接触式の糸条加熱装置が設置されていること。
  2. プリテンションロール及び/または第1ゴデットロール雰囲気に空調された風を送り、延伸前糸条温度を20℃以上40℃以下に維持する請求項1記載の寸法安定性ゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法。
  3. 第1ゴデットロールが水冷式の温調ロールである請求項1または2に記載の寸法安定性ゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法。
  4. 糸条加熱装置がスチームジェット加熱装置である請求項1〜3のいずれかに記載の寸法安定性ゴム補強用ポリエステル繊維の製造方法。
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