JP4189149B2 - 水性液のための濾過助剤としての粒子状ポリマーの使用 - Google Patents

水性液のための濾過助剤としての粒子状ポリマーの使用 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粒子状の水不溶性ポリマー調製物の、水性液を濾過するための濾過助剤としての使用、ならびにこれらの濾過助剤を用いる水性液の濾過方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体−液体混合物を濾過により分別することは、多くの工業的製造方法において重要な処理工程である。特に、水性液を濾過する場合には、濾過助剤を用いることが多い。濾過助剤は、粒子状(例えば顆粒状、粉状または繊維状)の物質であり、これらは濾過しようとする液体中に存在する固体の種類や量によって異なるが、濾過ケーキを形成することが可能であり、またはこれをバラバラにほぐすためのものである。
【0003】
濾過助剤の作用は、濾過ケーキ内に毛細管を発生させることに基づくものであり、その毛細管は、第1に固体を維持するのに十分小さいものであるが、第2に液相を容易に流出させるのに十分な数で存在する。この目的のために、濾過助剤は、濾過しようとする懸濁液(パルプ(pulp))に添加するか、および/または、濾過の前に、フィルター表面(濾布)上に補助層として適用すればよい。プレコート濾過では、例えば、濾過を始める前に、濾過助剤プレコートを支持体表面(濾布)に適用する。次に、濾過助剤をパルプに(好ましくは連続的に)添加する。濾過の間、濾過助剤のばらばらの濾過ケーキが形成され、これがパルプの固形物を保持しているので、液体分散媒は、清澄な濾液として流出できる[「Roempp Chemielexikon」(Roempp’s chemistry lexikon)、第9版, Georg Thiemer Verlag Stuttgard, 1357ff頁, 濾過助剤および濾過の項も参照されたい]。
【0004】
当然、濾過助剤は、化学的に不活性で、かつ濾過しようとするパルプに不溶性でなければならない。加えて、濾過助剤は、圧力の作用下において、濾過ケーキ内の孔がつぶれてしまわないように、変形してはならない。更に、濾過助剤は再生できることが望ましい。
【0005】
大部分の慣用の濾過助剤は、セルロース、木炭および木粉などの有機物質に加えて、ケイソウ土(kieselguhr)、パーライト、ケイソウ土(diatomaceous earths)およびベントナイトなどの特にケイ酸塩の性質を持つ無機物質を含んでいる。しかし、これらの物質には、再生できず、したがって廃棄処分しなければならない、という欠点がある。
【0006】
特に飲料産業では、水性液のための濾過助剤が非常に必要とされている。何故ならば、果汁飲料やビール等の発酵飲料は濾過に供されることが多いからである。飲料産業において頻繁に用いられる濾過助剤はケイソウ土である。例えばビールの製造においては、ビール1hL当たり150〜200gの濾過助剤(特にケイソウ土)が必要である。これらの濾過助剤の濾過作用は、ある一定時間後には低下するので、それらを取り出したり、再生不能の濾過助剤の場合には廃棄処分しなければならず、これは明らかに高コストに繋がる。更に、現在では、飲料産業において用いられるケイソウ土の発癌作用が議論の対象となっている。
【0007】
したがって、合成濾過助剤を提供しようとする多くの試みがある。例えば、米国特許第4,344,846号は、プレコート濾過における発泡ポリスチレンの使用を記載している。
【0008】
WO96/35497およびEP48309は、球状で非圧縮性のポリマー(例えばポリビニルピロリドンやナイロン11)をベースとするプレコート濾過のための濾過助剤を記載しており、これらは0.3〜0.5の範囲の多孔度を持つ濾過ケーキを形成する。
【0009】
EP-A879629は、粒子状または繊維状の支持体とその上に適用された疎水性コーティングとからなる濾過助剤を記載している。
【0010】
EP-A177812およびEP-A351363は、濾過助剤として使用可能な、N-ビニルピロリドンをベースとする、高度に架橋した殆ど膨張性でない粉状ポリマーを開示している。
【0011】
DE-A19920944は、スチレンおよびN-ビニルラクタムをベースとする、不溶性で、殆ど膨張性でないポップコーン状ポリマーを記載している。これらのポップコーン状ポリマーを濾過助剤として使用することが提案されている。
【0012】
上記のポリマーをベースとする合成濾過助剤は、向上した再生性を有する。しかし、それらの濾過作用には往々にして改善の余地がある。合成濾過助剤の中には、水中で沈降しないか、あるいはほんの僅かしか沈降しないという理由から、水性液のプレコート濾過にはあまり適さないものがある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、水性液を濾過するための濾過助剤であって、良好な濾過作用を持ち、プレコート濾過に適する濾過助剤を提供することである。加えて、濾過助剤の良好な再生性が望まれる。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この目的が、驚くべきことに、親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとから構成されるポリマーPを含む粒子状ポリマー調製物により達成されることを見い出した。
【0015】
したがって、本発明は、親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとから本質的に構成される少なくとも1種のポリマーPを含む粒子状の水不溶性ポリマー調製物の、水性液を濾過するための、特にプレコート濾過のための濾過助剤としての使用に関する。本発明はまた、そのようなポリマー調製物を用いる水性液の濾過方法、特にプレコート濾過の方法により行われる方法に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に従って用いられるポリマーPにおいて、ポリマー粒子は、本質的に、親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとからなる。ポリマーセグメントとは、当業者には、複数個の、通常は少なくとも10個、好ましくは少なくとも20個、本発明により好ましくは少なくとも30個の同一の繰返し単位から構成されるポリマー鎖またはポリマー下位構造として理解される。したがって、疎水性ポリマーセグメントとは、互いに連結している複数個の疎水性モノマー構成単位からなるポリマー下位構造またはポリマー鎖である。同様に、親水性ポリマーセグメントとは、繰返し単位として複数個の親水性モノマー構成単位からなるポリマー鎖またはポリマー下位構造である。親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとは、ブロックポリマーまたはグラフト化ポリマーの様式で互いに化学結合により結合していてもよい。また、それらは、本発明に従って用いられるポリマーP中で、均質な物理的混合物として存在することもできる。唯一重要なのは、ポリマーPの個々のポリマー粒子が親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントの両者から構成されていることだけである。
【0017】
本発明による水不溶性に関しては、親水性ポリマーセグメントの重量比が疎水性ポリマーセグメントの重量比を超えない場合に有利である。したがって、概して、ポリマーP中での親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとの重量比は、1:1〜1:100の範囲、好ましくは1:2〜1:50の範囲、特に好ましくは1:3〜1:20の範囲である。
【0018】
更に、親水性ポリマーセグメントが非イオン性のものである場合、つまりカルボキシレート、スルホネートまたはアミノ基などのイオン性もしくはイオノゲン性の基が0.1mol/kg未満である場合、好都合であると判明している。特に好ましくは、親水性ポリマーセグメントは、イオン性もしくはイオノゲン性の基を全く含んでいない。非イオン性の親水性ポリマーセグメントの例は、水溶解度が(25℃、1barにて)50g/Lを超え、しかもポリビニルアルコール構造およびポリエーテル鎖を有する、エチレン性不飽和モノマーから構成されるものである。50g/Lを超える水溶解度を有するモノマーの例は、アクリル酸メチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシアルキルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキルであり、例えばアクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、メチルビニルエーテルおよび同様のモノマーが挙げられる。
【0019】
好ましい親水性ポリマーセグメントは、ポリエーテル構造、特にポリ-C2-C4-アルキレンエーテル構造を持つ。特に好ましくは、親水性ポリマーセグメントは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、および/またはポリエチレン/ポリプロピレンオキシド・ブロックコポリマー(例えば、中心のポリプロピレンオキシドセグメントと末端のポリエチレンオキシドセグメントとを持つブロックコポリマー)から誘導される。
【0020】
更に、親水性ポリマーセグメントは、単独で考えた場合、限られた水溶解度しか持たない場合に有利であることが判明している。これは、例えば、高分子量とすることにより(例えば10,000ダルトン、好ましくは50,000ダルトン、特には100,000ダルトンを超える分子量)、または、限られた水溶解度を持つオリゴマーブロックを有するブロック型構造の親水性セグメント(例えばポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドセグメント。ここでポリプロピレンブロックは、親水性セグメントの水溶解度を低下させる。)を用いることにより達成できる。ここで、1,000〜20,000ダルトンの範囲の分子量であれば十分である。当然のことながら、両者の尺度を互いに組み合せてもよい。
【0021】
本発明の1つの好ましい実施形態において、親水性セグメントがポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド・ブロックコポリマー(EO/POブロックコポリマー)、特に中心にポリプロピレンオキシドブロックを有するトリブロックコポリマーから選ばれる粒子状ポリマーが用いられる。ポリプロピレンオキシドブロックの割合は、EO/POブロックコポリマーの好ましくは10〜90重量%、特には30〜80重量%を構成する。
【0022】
好ましいものは、親水性ポリマーセグメントが上記のポリアルキレンオキシド、特にポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド・ブロックコポリマーから選ばれ、かつ疎水性ポリマーセグメントが本質的にビニル芳香族モノマーAから形成される粒子状ポリマーである。
【0023】
疎水性ポリマーセグメントは、通常、疎水性のエチレン性不飽和モノマーAから構成される。このモノマーAの疎水的性質は、それらの低い水溶解度で表わされ、通常は25℃で10g/L以下、特には1g/L以下である。疎水性モノマーAの例は、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和カルボン酸(例えばアクリル酸またはメタクリル酸)と炭素原子数が少なくとも2個、好ましくは少なくとも4個、例えば炭素原子数が2〜10個のアルコールとのエステルである。疎水性モノマーAの更なる例は、エテンやプロペン等のオレフィン、およびブタジエン等のジオレフィンである。好ましいモノマーAは、ビニル芳香族モノマー、特にはスチレン、α-メチルスチレン、およびベンゼン環にアルキル基を有するスチレン誘導体(例えばビニルトルエンおよび4-tert-ブチルスチレン)である。特に好ましいビニル芳香族モノマーAはスチレンである。一般に、疎水性ポリマーセグメントは、モノマーAとは異なる共重合化コモノマーBを20重量%未満、好ましくは10重量%未満含み、特には全く含まない。好ましくは、少なくとも80重量%、特には少なくとも90重量%、特には全てのモノマーAがビニル芳香族モノマーから選ばれる。考慮に入れるあらゆるコモノマーBは、上記の親水性モノマー、およびスチレンと共重合できる他の慣用のモノマーであり、例えば、アクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルまたは酢酸ビニルが挙げられる。
【0024】
更に、疎水性ポリマーセグメントが50℃より高い、特には70℃より高い、特に好ましくは80℃より高いガラス転移温度を持つ場合に有利であることが判明している。ここで、ガラス転移温度とは、DSCにより測定した中間点温度である(ASTM-D3418-82を参照されたい)。特にポリマーPに低い圧縮度が望まれることを考慮すると、高いガラス転移温度が有利である。
【0025】
更に、粒子状ポリマー調製物の粒径が1mm未満、好ましくは1μm〜700μmの範囲、特に2μm〜500μm、特に好ましくは5〜200μmである場合に好都合であることが判明している。ここで特定される値は、ポリマー調製物の粒子の90重量%がその特定した範囲内の直径を有することを意味するものである。粒径は、常法により、例えば光散乱法またはふるい法により測定することができる。
【0026】
本発明により用いられるポリマー調製物の調製は、基本的には公知であり、目的とする粒径に応じて、ポリマーPおよび/または別の濾過助剤を含む配合材料の造粒、シュレッディング(shredding)および/または粉砕により、あるいはポリマーPの溶液もしくは懸濁液(これは別の濾過助剤を含んでもよい)の乾燥、つまり該溶液もしくは懸濁液からの揮発性成分の除去により行われる。好ましくは、ポリマーPまたはポリマーPの混合物の水性分散液/懸濁液を乾燥に用いる。
【0027】
乾燥すべき分散液/懸濁液は、単に水性の一次分散液であってもよいし、二次分散液であってもよい。一次分散液は、公知のように、水性分散媒中で、好ましくは界面活性物質としての親水性ポリマーの存在下で、疎水性モノマー構成単位を重合化することにより調製される。二次分散液は、例えば、別の方法で(例えば、溶液重合もしくは無溶媒重合により)調製したポリマーAを水性分散媒に分散させることにより得られる。また二次分散液は、ポリマーPの有機溶媒溶液を水性乳化媒体中に乳化させることによっても調製できる。次に、これらの溶液を公知の方法により水性分散液または懸濁液にする。この目的のためには、例えば、そのポリマー溶液に十分な量の水を添加し、次に有機溶媒を除去(例えば留去)すればよく、この際、減圧をかけることが好ましい。二次分散液を調製するのに好適な有機溶媒は、親水性セグメントおよび疎水性セグメントを含むポリマーを溶解でき、かつ蒸留により除去できるものである。当然のことながら、それぞれの溶媒の種類は、親水性セグメントおよび疎水性セグメントの種類に応じて異なり、当業者であれば簡易な慣例実験により決定できる。
【0028】
好適な有機溶媒の例としては、酢酸またはプロピオン酸などの脂肪族カルボン酸のC1〜C10アルキルエステル(例えば酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸tert-ブチル)、芳香族炭化水素(例えばトルエン、またはtert-ブチルベンゼン)、エーテル(例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、またはtert-ブチルメチルエーテル)、ケトン(例えばアセトン、またはメチルエチルケトン)などが挙げられる。
【0029】
次に、得られた水性分散液から揮発性成分を、粉末製造の一般的な方法、例えば凍結乾燥もしくは噴霧乾燥により、あるいは粗製懸濁液の場合には濾過により除去することで、粒子状ポリマーを得る。
【0030】
本発明に従って用いられる粒子状ポリマー調製物を調製するための、親水性セグメントと疎水性セグメントとを含むポリマーPは、従来技術から公知であるか、あるいは慣用の方法により調製できる。
【0031】
本発明による使用の場合、粒子状ポリマーPを調製するためには、以下に記載する調製方法のうちの1つにより調製してあるポリマーを用いることが特に有利であることが判明している:
i)少なくとも1種の親水性ポリマーの存在下で、疎水性モノマー構成単位を重合化すること;または
ii)少なくとも1種の疎水性ポリマーの存在下で、親水性モノマー構成単位を重合化すること。
【0032】
i)の方法による重合ならびにii)の方法による重合は、慣用の重合法、例えば重付加法、重縮合法またはラジカル重合法により行うことができ、最後の手法が一般に好ましいとされる。
【0033】
通常、ポリマーPを調製するためには、ポリマーセグメント同士の間で連結が起こる(つまり化学結合が生じる)重合条件が選ばれる。したがって、重付加法の場合、グラフト化ベースとして、モノマー構成単位と反応できる官能基を有するポリマーを用いることが好ましい。ラジカル重合法の場合、用いるグラフト化ベースがグラフト活性炭素原子を有するポリマーであるように手順を取り、かつ、重合条件を、重合させようとするモノマーの導入ポリマーへの活性グラフト化が起こるように選ぶことが好ましい。このためのプロセスは従来技術から公知である。
【0034】
多くの場合、親水性ポリマーの存在下で、疎水性のエチレン性不飽和モノマーAを、該モノマーAとは異なるコポリマーBの存在下もしくは不在下でラジカル重合することにより得ることができるポリマーPが用いられる。次に、この親水性ポリマーがポリマーP中で親水性セグメントを形成し、一方、重合したモノマーAにより疎水性セグメントは形成される。この手順においては、上記の疎水性モノマーAは、適切な親水性ポリマー(好ましくは上記の特徴を持つもの)の存在下で反応する。
【0035】
したがって、親水性ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、主にビニルラクタム(例えばN-ビニルピロリドン)から構成されるホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ならびにポリアルキレンオキシドであり、最後に挙げたものが好ましい。特に好ましいものは、分子量が10,000ダルトンより大きい上記のポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド・ブロックコポリマーおよびポリエチレンオキシドである。このタイプのポリマーは、親水性ポリマー鎖と、形成する疎水性ポリマー鎖との少なくとも部分的な連結を確実にするために、ラジカル重合条件下で十分にグラフト活性である。
【0036】
少なくとも1種の親水性ポリマーの存在下での疎水性モノマーのラジカル重合は、好ましくは、双方の成分を溶解できる有機溶媒中での溶液重合または無溶媒重合として行われる。
【0037】
一般に、ラジカル重合は、このために一般的であり、かつ加熱されると分解してラジカル重合中心を形成する重合開始剤の存在下で行われる。かかる化合物の例は、有機過酸化物であり、例えばtert-アミルペルピバレート、tert-ブチルペルピバレート、tert-ブチルペルネオヘキサノエート、tert-ブチルペルイソブチレート、tert-ブチルペル-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルイソノナノエート、tert-ブチルペルマレエート、tert-ブチルペルベンゾエートなどのカルボン酸の過酸エステル;ジ-(2-エチルヘキシル)ペルオキソジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキソジカーボネート、ジ-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキソジカーボネートなどのペルカーボネート;アセチルアセトンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシドなどのケトンペルオキシド;tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド;ならびに、2-2’-アゾビス(アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレン)イソブチルアミジン二塩酸塩、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2-アゾビスイソブチロニトリルまたは4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)などのアゾ開始剤が挙げられる。このタイプの開始剤は、通常、重合させようとするモノマーの量に基づき、0.01〜5重量%の量、好ましくは0.05〜2.0重量%の量で用いられる。必要とされる重合温度は、公知のように、重合させようとするモノマーの種類に応じて決まり、通常は20℃〜200℃の範囲、特には50℃〜180℃の範囲である。用いる溶媒の種類やモノマーの種類によっては、圧力容器を用いて重合温度を達成する。しかし、多くの場合、大気圧での操作も可能である。
【0038】
ラジカル重合が溶液重合として行われる場合、これに慣用の溶媒を考慮に入れるが、好ましくは、脂肪族カルボン酸のジエステル(例えば酢酸のジエステルおよび/もしくはプロピオン酸のジエステル)、芳香族炭化水素またはケトン(例えばアセトンもしくはメチルエチルケトン)などの上記の溶媒である。更に、溶液重合には、得られるポリマー溶液をそのまま、生じたポリマーの水性分散液に変換することができる、という利点があり、その溶液自体がポリマー粉末の製造に好ましい。
【0039】
出発物質は、それぞれの重合法に応じて、当然ながら所望の組成にしたがって決まるものであり、つまり、疎水性モノマー構成単位の種類や量は、ポリマーPにおける疎水性ポリマーセグメントのタイプや重量比に対応し、ならびに親水性ポリマーの種類および量は、ポリマーPにおける親水性ポリマーセグメントのタイプおよび量に対応する。
【0040】
本発明に従って用いられる粒子状ポリマーPは、良好な濾過作用を特徴とし、従来の濾過助剤とは違ってより容易に再生できる。加えて、それらは水中で向上した沈降を示すので、特に水性液のプレコート濾過のための濾過助剤として好適である。
【0041】
本発明に従って用いられるポリマー調製物は、ポリマーPだけから構成されてもよい。しかし、該ポリマー調製物は、他の慣用の濾過助剤も含み得る。これらの慣用の濾過助剤の含有量は、通常、ポリマーPと該慣用の濾過助剤との合計量の80重量%、好ましくは50重量%を超えない量である。
【0042】
慣用の濾過助剤は、上記のケイ酸塩系濾過助剤およびポリマー性濾過助剤から選択される。好ましいものは、架橋ポリビニルピロリドン、ポリスチレンまたはポリアミドなどのポリマー性濾過助剤である。1つの好ましい実施形態において、用いられるポリマー調製物は以下のものを含んで成る:
a.10〜95重量%、特には15〜80重量%、特に好ましくは25〜70重量%の少なくとも1種のポリマーP、および
b.5〜90重量%、特には20〜85重量%、特に好ましくは30〜75重量%の少なくとも1種の別の慣用の濾過助剤。
【0043】
これらの使用に好ましい慣用の濾過助剤は、有機ポリマーをベースとする合成濾過助剤、特にスチレンポリマーおよび/またはポリアミドをベースとする合成濾過助剤から選択される。
【0044】
「スチレンポリマー」という用語は、A. Aechte; Handbuch der technischen Polymerchemie [Handbook of Industrial Polymer Chemistry(工業ポリマー化学のハンドブック)], VCH Weinheim 1993に記載されているような「スチレンホモポリマーおよびコポリマー」の群全体を意味するものとして取られるべきである。この定義には、ホモポリスチレンおよびスチレンのコポリマー(特にアクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリレートおよび同様のコモノマーとのコポリマー)の両者、ならびにそれらのゴム改質誘導体もしくは強化誘導体が含まれる。適切なポリアミドとしては、特にナイロン12が挙げられる。
【0045】
本発明はまた、水性液の濾過方法、特にプレコート濾過の方法により行われる方法に関する。本発明に従って用いられるポリマー粉末は、化学的に不活性であることから、特に食品産業における使用、例えば果汁飲料や発酵飲料の濾過に適する。本発明に従って用いられるポリマー粉末は、良好な濾過作用を持つことから、特にビールの濾過に適する。
【0046】
上記の濾過方法は、冒頭で記載した従来技術の濾過方法と同様にして、上記のポリマー粉末を濾過助剤として用いて行うことができる。
【0047】
プレコート濾過の場合、一般に、濾過を開始する前に、本発明に従って用いられるポリマー粉末のプレコートを支持体の表面(濾布)に適用する。次に、濾過しようとする液体を、圧力差をかけることによりフィルター層を通膜させるが、この場合、濾過操作の間中、本発明に従って用いられる追加のポリマー粉末を、濾過しようとする液体に濾過助剤として添加することが好ましい。
【0048】
【実施例】
実施例
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0049】
I.親水性セグメントと疎水性セグメントとを持つポリマー(ポリマー P1 P2 および P3 )の調製
反応容器内で、スチレン、ポリエーテル(トリブロックEO/PO/EOポリマー)および溶媒としての酢酸エチルを溶解する。この反応容器を不活性化し、78℃に加熱し、次に開始剤としてtert-ブチルペルピバレートを添加する。温度を維持しながら重合を2時間行い、次にその混合物を室温まで冷却する。得られたポリマー溶液を更に処理して、ポリマー粉末を得る。出発物質を表1に示す。
【0050】
【表1】
Figure 0004189149
【0051】
II .ポリマー調製物(粉末 FH1 FH4 )の製造
Iからのポリマー溶液を360gの酢酸エチル中にポリスチレンと共に、またはポリスチレンを加えずに溶解させる。次に、この溶液に360gの水を添加する。次いで、この混合物を減圧下で濃縮して約半分の容量にする。これにより水性懸濁液が得られ、それを濾過し、水で洗浄することで濾過残留物を得る。これにより、直径が5〜500μmの範囲の小さなポリマービーズからなる易流動性の粉末が得られる。
【0052】
この反応の出発物質を表2に記載する。
【0053】
【表2】
Figure 0004189149
【0054】
III .特定用途向けの試験
III.1 水中での沈降
沈降を視覚的に判定した。このために、濾過助剤のアリコートをメスシリンダー内で振盪させながら水に懸濁した。90%を上回る粒子が沈降したら、試験は陽性とみなす。
【0055】
【表3】
Figure 0004189149
【0056】
表3から、本発明の濾過助剤が良好な沈降を示し、従って水性液のプレコート濾過に適することが確認される。
【0057】
III.2 標準曇り (haze) 溶液の濾過
濾過作用は、標準曇り溶液(すなわち規定の曇り度を有するホルマジン(formazin)懸濁液)の清澄化により判定する。これらの溶液は、飲料産業での濾過助剤の特性決定用として、当業者には公知である。試験はプレコート濾過として行う。このために、本発明の濾過助剤を含むホルマジン懸濁液を、EBC(European Brewery Convention)試験法に従って、4.5barのプレコート圧および20 L/時の流速(それぞれ初期値)で濾過した。フィルターに5L、10Lおよび15L通膜させた後、曇り度をEBC法により測定した。EBC値が1未満であれば、濾液は清澄であると考える。あるいはまた、EBC値は、比濁曇り度(FNU値)を測定することにより求めることもでき、この場合、1EBC=4FNUである。結果を表4に報告する。
【0058】
試験の間ずっと、プレコート圧および濾過速度は両者とも一定のままであり、これは本発明の濾過助剤の有利な特性(長い寿命)を実証するものである。
【0059】
曇り度は、標準的EBC試験法により測定する。EBC曇り値が1未満であれば、液体は清澄であると判定する。
【0060】
以下の試験は、IIからのポリマー粉末FH4〜FH6を用いて行った。
【0061】
【表4】
Figure 0004189149

Claims (11)

  1. 親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとから本質的に構成される少なくとも1種のポリマーPを含む粒子状水不溶性ポリマー調製物の、水性液を濾過するための濾過助剤としての使用であって、
    ポリマーPが、ポリマーP中の親水性セグメントを形成する少なくとも1種の親水性ポリマーの存在下で、少なくとも 80 重量%の疎水性モノマーAを含み、かつ該モノマーAとは異なる 20 重量%以下のコモノマーBを含むまたは含まないエチレン性不飽和モノマーをラジカル重合することにより得られるものであり、
    親水性ポリマーセグメントがポリ -C 2 -C 4 - アルキレンエーテル構造を持ち、
    親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとの重量比が1:1〜1:100の範囲である、上記使用
  2. 親水性ポリマーセグメントが非イオン性のものである、請求項1記載の使用。
  3. モノマーAがビニル芳香族モノマーから選ばれる、請求項1または2に記載の使用。
  4. ポリマーPのポリマー粒子の平均粒径が1〜700μmの範囲である、請求項1〜のいずれか1項に記載の使用。
  5. 濾過しようとする液体が果汁飲料または発酵飲料である、請求項1〜のいずれか1項に記載の使用。
  6. 発酵飲料がビールである、請求項に記載の使用。
  7. ポリマー調製物が更に、ケイ酸塩系濾過助剤およびポリマー性濾過助剤から選択される慣用の過助剤を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の使用。
  8. 慣用の過助剤がポリアミドおよびポリスチレンから選ばれる、請求項に記載の使用。
  9. 濾過助剤を用いる水性液の濾過方法であって、濾過助剤として請求項1〜のいずれか1項に記載のポリマー調製物を用いることを含む上記方法。
  10. 濾過がプレコート濾過として行われる、請求項に記載の方法。
  11. 粒子状の水不溶性ポリマー調製物の形態である濾過助剤であって、
    a.親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとから本質的に構成される、水性液を濾過するための濾過助剤としてのポリマーP(ポリマーPは、ポリマーP中の親水性セグメントを形成する少なくとも1種の親水性ポリマーの存在下で、少なくとも 80 重量%の疎水性モノマーAを含み、かつ該モノマーAとは異なる 20 重量%以下のコモノマーBを含むまたは含まないエチレン性不飽和モノマーをラジカル重合することにより得られ、親水性ポリマーセグメントがポリ -C 2 -C 4 - アルキレンエーテル構造を持ち、親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとの重量比が1:1〜1:100の範囲である)の少なくとも1種を10〜95重量%、
    b.ケイ酸塩系濾過助剤、架橋ポリビニルピロリドン、ポリスチレンおよびポリアミドから選択される少なくとも1種の慣用の濾過助剤を5〜90重量%、
    含んでなる、上記濾過助剤。
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