JP4183557B2 - 電子文書印刷システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、アドビシステムズ(Adobe Systems)社製のAcrobatPDF(商品名)フォーマットで作成された電子文書(PDFデータ)のように、印刷すべきデータの構造を解釈するのに必要な構造記述が電子文書の最後に記述されるフォーマットで作成された電子文書データを印刷する電子文書印刷システムに関するものであり、特に、電子文書データのまま印刷装置に送信し、印刷装置側で電子文書データを解釈して印刷データに変換して印刷するダイレクト印刷機能を有する印刷装置を用い、1ページ目の印刷出力、印刷出力全体をより短時間でユーザーに提供できるようになした電子文書印刷システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ネットワーク環境におけるデータ処理装置では、多くの文書(ドキュメント)が電子化されサーバ装置やその他のコンピュータ装置のメモリ装置上に保存されるようになり、電子文書を保存した各コンピュータがインターネットを代表とするネットワークに接続されるようになってきており、AdobeSystems社製のAcrobat PDF(Portable Document Format)やXML(eXtensible MarkupLanguage)、HTML(Hyper Text MarkupLanguage)のように電子文書のフォーマットも、ネットワーク上での参照、配布に適したものが使用されるようになってきた。
【0003】
上記のようなフォーマットで作成した電子文書は、その電子文書中にURL(Uniform ResourceLocator)を記述することでコンピュータ上又はネットワーク上のURLで特定される他のドキュメントにリンクさせることができ、外部参照が可能なように構成されている。コンピュータ装置上で電子文書を閲覧する場合、インターネット接続アプリケーションを起動してURLによって電子文書のアドレスを指定して該当する電子文書を表示したり、上記外部参照を含む文書を表示しているときには外部参照として表示されるポインタをクリックすれば直ちに参照先の文書が表示されて閲覧したり、その該当文書をコンピュータ装置にダウンロードして保存することができる。
【0004】
特に、前記アドビシステムズ社の開発したソフトウェアであるアクロバットPDF(商品名)フォーマットで作成された電子文書は、その内容を見るのに同社が無償配布する「アクロバット・リーダー」(PCアプリケーション商品名)が必要であるが、一般に広く利用されるため最近では多くのコンピュータ装置(パソコン等)に標準機能としてインストールされている。このソフトウェアは、コンピュータ装置の機種を問わず、文書をもとのレイアウトどおりに表示でき、インターネット経由で配布したパンフレットや、取扱説明書などの印刷物を、もとの印刷物と同じ形式でコンピュータ装置上に表示して参照するために広く使用されている。
【0005】
従来、アドビシステムズ社製アクロバット(Acrobat)PDFフォーマットで作成された電子文書(PDFデータ)を印刷する場合には、インターネットからダウンロードしてコンピュータ装置に取り込むか、あるいは、コンピュータ装置のユーザー自身が作成したPDFフォーマットの電子文書を保存し、アクロバット・リーダーを使用して該当の電子文書(PDFデータ)を開き、コンピュータ装置のディスプレイ画面で確認したあと、そのPDFデータをコンピュータ装置もしくはネットワーク上のプリントサーバーが保有するプリンタドライバによって、印刷装置が解釈できるPDL等のページ記述言語(PageDescriptionLanguage)を用いて印刷データに再構成した上で、ネットワーク接続された印刷装置(プリンタ)に送信して印刷するのが一般的な電子文書印刷システムの構成である。
【0006】
例えば、コンピュータ装置にダウンロードして保存したPDF形式の電子文書を印刷する場合には、図4に示す手順と時間関係になる。すなわち、コンピュータ装置は保存したPDF形式の電子文書をアクロバット・リーダーによって開く。この時アクロバット・リーダーによってPDFデータの解釈が行われ、文書がディスプレイ等に表示される。このPDFデータの解釈に要する時間が図のT11である。そしてユーザーが印刷指定を行うと、コンピュータ装置はプリンタドライバによってPDFデータを印刷装置が解釈できる言語、例えば、PDL言語によって記述されたPDLデータ(印刷データ)に変換する。このPDLデータへの変換に要する時間が図のT12である。
【0007】
このPDLデータが印刷装置に転送される。この転送処理に要する時間が図のT13である。印刷装置は転送されたPDLデータを受信すると、印刷文書を1ページ分づつラスタライズ処理(ビットマップデータに展開)して印刷する。このラスタライズに要する時間が図のT14であり、ラスタライズ処理は、文書のページが複数ページにわたる場合にはPDLデータのページ区切り毎に順次行われる。ラスタライズ処理によって作成されたビットマップデータに基づいて印刷処理する時間が図のT15で表されている。
【0008】
印刷は1ページ目の印刷データ(PDLデータ)を受信し終わり、1ページ目がビットマップ化されたところで始まり、各ページはそのページの印刷データを受信し終わってそのページの印刷データがビットマップ化されたところで行われる。このため全ページの印刷出力までに時間を要するので、ユーザーが待機する時間を長く感じるため、印刷出力をより短時間で得られる電子文書の印刷システムが求められていた。
【0009】
また、このような一般的な印刷システムの構成によると、ネットワーク上での参照、配布に適したフォーマットの電子文書であっても、印刷する場合にはPDL言語などを利用した印刷データに変換して印刷装置に送信するため、もとの電子文書サイズよりも大きなサイズのデータとなってしまい、受信バッファやページバッファの容量が抑えられたローエンドの印刷装置においては印刷データを受信しきれないケースが生じ、印刷に支障を来すことがあった。
【0010】
このような背景から、例えば、下記の特許文献1には、PDF(Portable Document Format)、XML(eXtensibleMarkup Language)、HTML(Hyper Text MarkupLanguage)などの電子文書を直接受け取り、印刷装置側で上記の各フォーマットの電子文書の解釈を行い、印刷データに変換する機能を持った直接印刷方式の印刷装置が開示されている。
【0011】
この特許文献1に開示されたような直接印刷方式の場合、一般に、PDFデータはページ記述言語であるPDL等を用いて再構成した印刷データよりも小さいため、記憶容量が抑えられたローエンドの印刷装置でも容易にデータ全体を受信することができ、またコンピュータ装置から印刷装置へのデータ転送時間が短くなるという利点を有する。
【0012】
この印刷装置を用いて、コンピュータ装置に保存したPDF形式の電子文書を印刷する場合には、図5に示す手順と時間関係になる。すなわち、コンピュータ装置は保存したPDFフォーマットの電子文書をそのままの形式で印刷装置に転送する。この転送処理に要する時間が図のT23である。印刷装置は転送されたPDFデータの全体を受信し終わると、PDF解釈部によりPDFデータの解釈を開始し、1ページ分づつラスタライズ処理(ビットマップデータに展開)して印刷する。このラスタライズに要する時間が図のT24であり、ラスタライズ処理は文書のページが複数ページにわたる場合には、PDFデータのページ構成毎に順次行われる。ラスタライズ処理によって作成されたビットマップデータに基づいて印刷機構が印刷する処理時間が図のT25で表されている。
【0013】
【特許文献1】
特開2002−358183号公報(図3、段落番号〔0005〕欄)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにPDFデータを直接転送する印刷システムでは、印刷はPDFデータを最後まで受信し終わったところから始まるので、ネットワーク等を経由して印刷データを転送する時間T23と、印刷装置がPDFデータを解釈して実際にビットマップ化(ラスタライズ)する時間T24はオーバーラップできないという制約がある。
【0015】
ところで、これはPDFフォーマットの電子文書の構造に起因する制約であり、以下この点について説明する。図6はPDFフォーマットの電子文書の構成を示す概念図である。PDFフォーマットは図6に示すように構造的に、ヘッダ部、ボディ部、相互互換テーブル部、トレーラ部の4種に種別され、PDFデータの転送はヘッダ部、ボディ部、相互互換テーブル部、トレーラ部の順で行われる。
【0016】
ヘッダ部はそのPDFデータの作成に使用されたアプリケーション(アクロバット・PDF)のバージョン情報であり、ボディ部は文書のページ構成を記述したページオブジェクトや文書の本体となるテキストやイメージの描画データ(コンテンツ)およびこれらのデータの描画に使用されるフォントなどのリソースを記述したデータオブジェクトがならべられた部分であり、相互互換テーブル部は、ボディ部の全てのオブジェクトの位置を示す情報、すなわち、各オブジェクトのPDFデータの先頭からの位置(場所)を示す情報(ポインタ)の一覧表が記述された部分であり、トレーラ部は相互互換テーブル部の先頭位置を示す情報と、ボディ部に記述されるカタログオブジェクトのルートアドレスを示す情報が記述される部分である。
【0017】
カタログオブジェクトはPDFデータの木構造の根幹をなす情報であり、カタログオブジェクトの記述から、PDFデータ(文書)のページ構成を示すページオブジェクトやサムネールオブジェクトなどを参照する構造になっている。
【0018】
PDF解釈部は、PDFデータの最後尾のトレーラ部(本当の意味でのPDFデータの開始部分)を受信すると、相互互換テーブルの先頭位置情報に基づいて相互互換テーブルを記憶装置に保存するとともに、カタログオブジェクトを参照してページ構成をたどり、先頭ページのページオブジェクトを解析し、そのページオブジェクトに記述されたデータオブジェクトを得てラスタライズする。PDF解析部は、各オブジェクトの内容を得るために記憶した相互互換テーブルを参照する。すなわち、PDFフォーマットは相互互換テーブルに記述されたオブジェクトとその位置情報から、PDFデータの中の当位置情報を得て目的とするオブジェクトの記述を解析するように構成されている。すなわち、PDFフォーマットの電子文書は、印刷すべきデータの構造を解釈するのに必要な構造記述が電子文書の最後に記述される構成となっている。
【0019】
従って、PDFデータを解釈する場合には最初に必ず、データの最後に存在するトレーラ部を参照して、このデータのどこに相互互換テーブルとカタログオブジェクトが存在するか調べなければならない。図6の矢印はこのPDFデータの解釈の流れを示すものであり、まず矢印Aのようにトレーラ部の相互互換テーブル先頭位置情報(データ全体のどこにあるかを示す「startxref」フラグに続くポインタ値)をデータ全体の先頭からの指標として、相互互換テーブルを探し、相互互換テーブルを記憶部に保存する。
【0020】
次に、矢印Bに示すようにカタログオブジェクトを参照し、ページオブジェクトを探す。ページが複数の場合には1ページ目であるページオブジェクト1を見つけ相互互換テーブルからページオブジェクト1の位置を得て、矢印Cのようにページオブジェクト1を検索し、その記述から1ページ目に入るべきデータオブジェクト、例えば、データオブジェクト1を知り、相互互換テーブルからデータオブジェクト1の位置を得て、矢印Dのようにデータオブジェクト1を検索してそこに記述されたコンテンツ、リソース等に基づいてラスタライズする。
このように最後尾のトレーラ部を受信した後、相互互換テーブルを使用してボディ部のオブジェクトの検索が行われるため、PDFデータを転送する時間T23と印刷装置内のPDF解釈部がPDFデータを解釈してビットマップ化(ラスタライズ)する時間T24とはオーバーラップさせることができず印刷までに時間を要するのである。
【0021】
このように、複数ページからなるアクロバットPDF(商品名)フォーマットで作成された電子文書を印刷する場合に、1ページ目の印刷出力までに時間を要し、ひいては文書全体の印刷出力を得るのに時間を要するため、印刷出力をより短時間でユーザーに提供することができる電子文書の印刷システムが求められていた。
【0022】
本願の発明者は、上述のような問題点を解決すべく種々検討を重ねた結果、図4のコンピュータ装置でPDFデータを解釈して印刷データに変換して印刷装置に転送する印刷システムでは、印刷データを転送する時間T13と印刷装置が印刷データを実際にビットマップ化(ラスタライズ)する時間T14が一部オーバーラップできるのに対して、図5のPDFフォーマットの電子文書を直接印刷装置で処理する場合はネットワーク等を経由して印刷データを転送する時間T23と印刷装置がPDFを実際にビットマップ化(ラスタライズ)する時間T24がオーバーラップできない事に着目した。
【0023】
そこで本発明者は種々考察の結果、PDFフォーマットで作成された電子文書のように、印刷すべきデータの構造を解釈するのに必要な構造記述が電子文書の最後に記述される電子文書データの印刷を行う際、コンピュータ装置の電子文書データ処理部により複数ページの電子文書データを分解して、1ページ毎の電子文書データに再構成して順次印刷装置に送信することによって、電子文書データのデータ転送時間とビットマップ化(ラスタライズ)する時間をオーバーラップさせることが可能になり、ユーザーにより短時間で印刷出力を提供出来ることに気付き本発明に至ったものである。
【0024】
さらにまた、本発明者は、図5の転送時間T23に着目した。印刷すべきPDFデータの転送時間T23の長さは、転送するPDFデータのファイル容量に依存する。PDFデータの印刷は、転送時間T23の時間が経過しなければ開始されない。そこで、PDFデータをページ毎のPDFデータに分割、再構成して順次転送することにより、1ページ目を出力するまでにかかる時間を短縮できることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0025】
すなわち、本発明は前記の不都合を解消することを課題とし、印刷すべきデータの構造を解釈するのに必要な構造記述が電子文書の最後に記述されるフォーマットで作成された電子文書データを印刷する電子文書印刷システムにおいて、電子文書データのまま印刷装置に送信し、印刷装置側で電子文書データを解釈して印刷データに変換して印刷するダイレクト印刷機能を有する印刷装置を用い、1ページ目の印刷出力、印刷出力全体をより短時間でユーザーに提供できるようになした電子文書印刷システムを提供することを目的とするものである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。すなわち、本発明に係る電子文書の印刷システムは、コンピュータ装置と、該コンピュータ装置に直接あるいはネットワークを介して接続された印刷装置とからなり、コンピュータ装置は、印刷すべきデータの構造を解釈するのに必要な構造記述が電子文書の最後に記述されるフォーマットで作成された電子文書データを印刷装置に送信し、受信された前記電子文書データをラスタライズして前記印刷装置で印刷する電子文書印刷システムにおいて、
前記コンピュータ装置は、電子文書データ処理部を備え、
前記電子文書データ処理部は、印刷すべき前記電子文書データをページ毎に新たな電子文書データに編集し、編集した前記電子文書データを前記印刷装置に1ページ分ずつ送信するようになし、
前記印刷装置は、1ページ分ずつの新たな前記電子文書データを受信する毎に、受信した当該電子文書データを次ページの前記電子文書データ受信中に解釈してラスタライズする電子文書データ解釈部と、
を備えたことを特徴とする。
【0027】
かかる構成となすことによって、ページラスタライズと印刷を並行処理することができるため、PDFフォーマットのようなフォーマットで作成された電子文書の印刷出力を、より短時間でユーザーに提供することができる印刷システムを提供することができる。
【0028】
更に、本発明に係る電子文書印刷システムの別の態様によれば、コンピュータ装置は、編集したページ毎の電子文書データを、もとの電子文書データの各ページと同一の順序により前記印刷装置に送信するようになしたことを特徴とし、また、コンピュータ装置は、編集したページ毎の電子文書データを、任意に設定した順序により前記印刷装置に送信するようになしたことを特徴とする。
【0029】
かかる構成となすことによって、ユーザーは、編集したページ毎の電子文書データと、もとの電子文書データの各ページとを、その昇順,降順または任意のページ番号のファイルと言うように、指定通りの順序により印刷装置に送信することができ、電子文書印刷の自由度が高まる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る電子文書印刷システムについてPDFフォーマットで作成された電子文書(PDFデータ)を例にとり、詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための電子文書印刷システムを例示するものであって、本発明を特定の実施形態の電子文書印刷システムに限定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれる他の態様にも等しく適用し得るものである。
【0031】
図1は、本発明に係る電子文書の印刷システムの概略構成を示す図であり、図2は印刷装置の構成を示すブロック図、図3は本発明に係る電子文書印刷システムにおける印刷処理の手順と時間関係を示すタイムチャートである。
【0032】
本発明に係る電子文書印刷システム10は、図1の如くLAN(Local AreaNetwork)14などのイントラネットワークを介して接続されたコンピュータ装置20と印刷装置30からなる。コンピュータ装置20はインターネットなどのネットワーク12を介してWWWサーバー装置40などに接続することができ、コンピュータ装置20自身によりPDFフォーマットに従った電子文書を作成し、または、インターネット12を介してWWWサーバー装置40からPDFフォーマットで作成された電子文書をダウンロードして保存することができる。
【0033】
コンピュータ装置20は、電子文書データ処理部を備えている。この電子文書データ処理部は具体的にはPDFデータ処理部21(以下PDFデータ処理部21と称する)であり、コンピュータ装置20がPDFフォーマットで作成された複数ページの電子文書を印刷する場合、PDFデータ処理部21により印刷すべきPDFデータをページ毎に分割して新たなPDFデータに編集し直し、この新たに編集したPDFデータを1ページ分づつ印刷装置30に転送する。
【0034】
印刷装置30は、前述のような構造を持った電子文書データを解釈するための電子文書データ解釈部を有する。この電子文書データ解釈部は、具体的にはアドビシステムズ(AdobeSystems)社製アクロバット(Acrobat)PDF(商品名)フォーマットで作成された電子文書を直接ラスタライズ可能なPDF解釈部33であり、コンピュータ装置20から転送される1ページ分のPDFデータを受信する毎に、PDFデータを解析しラスタライズして印刷する。
【0035】
図2は、印刷装置30の構成を示すブロック図である。印刷装置30は、インターフェース部31、PDFデータ受信部32、PDF解釈部33、印刷機構部34、制御部35、記憶部36から構成される。制御部35は通常のMPU(マイクロプロセッサユニット)から構成され、上記各部の動作制御を行う。記憶部36はRAM、ROM、HDDなどで構成され、制御部35が各部の制御を行うための制御プログラムがROMに記憶されている。また、RAMは制御のための一時記憶部として使用され、HDDはデータの保存等に使用される。
【0036】
コンピュータ装置20から送信されるPDFデータ(印刷すべき電子文書)はLAN14からインターフェース部31を介してPDFデータ受信部32に受信される。PDFデータ受信部32に1ページ分のPDFデータ(コンピュータ装置20によって編集された1ページ毎のデータ)が受信されると、前述のようにPDF解釈部33によってPDFデータの解析が行われ、相互互換テーブルが検索されて記憶部36に記憶される。
【0037】
PDF解釈部33は記憶部36に記憶した相互互換テーブルを参照しながらボディ部の各オブジェクトのPDFデータ中の位置を検索してページラスタライズを行う。印刷機構部34はラスタライズされたビットマップデータに基づいて印刷を行う。
【0038】
図3は、本発明にかかる電子文書印刷システムの印刷の手順と時間関係を示す図である。本発明の態様においては、PDFデータの印刷を行う際、コンピュータ装置20のPDFデータ処理部21により、PDFデータをページ毎に分割して、ページ毎の新たなPDFデータに再構成して印刷装置30に送信することを特徴としている。
【0039】
さらに、本発明の態様においては、PDFデータの印刷を行う際、前記のようにPDFデータをページ毎に分割して、ページ毎の新たなPDFデータに再構成して印刷装置30に送信することによって、次ページのPDFデータ転送時間T3と受信した当該電子文書データをビットマップ化(ラスタライズ)する時間T4をオーバーラップさせることを特徴としている。
【0040】
すなわち、図3に示すように、PDFデータを印刷する際、PDFデータが複数のページを含む場合には、コンピュータ装置20はPDFデータ処理部21によって、そのPDFデータを分割して1ページ毎の新たなPDFデータに編集し直す。この処理に要する時間が図のT1である。コンピュータ装置20は1ページ分の新たなPDFデータが編集される毎に印刷装置30にPDFデータを転送する。この転送に要する時間が図のT3である。
【0041】
印刷装置は1ページ分のPDFデータの受信が完了する毎に、PDF解釈部33によってPDFデータを解析し、ページラスタライズを行う。このページラスタライズに要する時間が図のT4である。印刷機構部34はページラスタライズされたデータ(ビットマップデータ)を受取り印刷を行う。この印刷に要する時間が図のT5で表されている。
【0042】
前述したように、PDFデータは図6のような構成であり、ヘッダ部、ボディ部、相互互換テーブル部、トレーラ部の4種に種別される。PDFデータを解釈する場合には最初に必ず、データの最後に存在するトレーラ部を参照して、このデータのどこに相互互換テーブルが存在するか調べる。そして、トレーラ部の「startxref」フラグから、その値をデータ全体の先頭からの指標(ポインタ)として、相互互換テーブルをさがし、この相互互換テーブルを記憶装置に記憶しておく。そして、その相互互換テーブルを参照しながら、ページオブジェクトをたどり、そのページに含まれるデータオブジェクトを知り、そのデータオブジェクトに記述された情報によって対象データの実体を得てラスタライズする。
【0043】
すなわち、本発明においては、コンピュータ装置20においてPDFデータ処理部21で最初にトレーラ部からページオブジェクトをたどり、相互互換テーブルを検索し、ページオブジェクトに記述されたデータオブジェクトを判別し、そのデータオブジェクトのポインタから描画すべきデータ(コンテンツやリソース)を検索する段階で各ページ毎に編集し、各ページ毎にそれぞれ図6のようなPDFデータに再構成して印刷装置30に送信する。印刷装置30は1ページ毎に新たに編集されたPDFデータを受信し終わると直ちにそのページのPDFデータの解釈を行ってラスタライズ処理するものである。
【0044】
また、コンピュータ装置20は、ページ毎に編集して新たなPDFデータを作成する際に、ユーザーが設定するページ順に従ってもとのPDFデータを再構成して印刷装置30に転送し、印刷装置30は、転送されたPDFデータの順に印刷処理を行うように構成することができる。例えば、もとのPDFデータのページ順に対して、印刷したいページの順序を設定する入力をユーザーが行なうことによって、PDFデータ処理部21は設定されたページ順に新たなPDFデータの再構成をして印刷装置30に転送するように動作し、ユーザーの希望するページ順でPDFデータの印刷を行うことができる。すなわち、ユーザーは、もとのPDFデータを昇順、降順、あるいは設定入力する任意のページ順など自由な順序で印刷することができる。
【0045】
PDFデータを処理するためには、一旦PDFデータ全体を何らかの記憶手段に記憶する必要がある、当然、PDFデータのサイズ(ファイル容量)が大きくなればなる程、転送・スプール時間は長くなり1ページ目の印刷に要する時間は長くなる。印刷装置内の記憶装置をそのサイズ分使用するために、記憶容量に制約のあるローエンドの印刷装置ではサイズの大きな電子文書の印刷に支障を来す場合が生じる。
【0046】
しかし、コンピュータ装置20の処理によりPDFデータをページ毎に分割し送信することで、印刷装置30内での処理はページ毎となり、転送・スプールの時間は短くなり、1枚目の出力を得るまでの時間は短くなる。更に、転送時間と、印字時間のオーバーラップが可能となり、データ全体の印字速度も速くなる。また、一度に用いる印刷装置内の記憶容量は小さくてすむため、ローエンドの印刷装置であってもサイズの大きな電子文書の印刷が支障なく行える。
【0047】
さらに、PDFを用い印刷を行う際、コンピュータ装置20のPDFデータ処理部によりPDFデータをページ毎に分割し送信することによって、データ転送時間T3とビットマップ化(ラスタライズ)する時間T4をオーバーラップさせることが可能になる。これによりユーザーはより短時間で印刷出力を得ることが出来るようになる。
【0048】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の電子文書印刷システムによれば、転送時間と印字時間をオーバーラップさせることができ,結果として利用者が短い時間で出来上がった印刷物を手にすることができる。この方法はPDFフォーマットのようなフォーマットで作成されたページ数の多い電子文書の印刷に関して特に有効であり、電子文書印刷システムとして、優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子文書の印刷システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明に係る電子文書印刷システムにおける印刷装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る電子文書印刷システムのPDFデータ印刷処理の手順と時間関係を示すタイムチャートである。
【図4】従来の一般的な電子文書印刷システムにおけるPDFデータ印刷処理の手順と時間関係を示すタイムチャートである。
【図5】特許文献1に開示された印刷装置を用いた電子文書印刷システムにおけるPDFデータ印刷処理の手順と時間関係を示すタイムチャートである。
【図6】PDFフォーマットで作成された電子文書の構成とPDFデータの解釈手順を示す概念図である。
【符号の説明】
10…電子文書印刷システム
12…インターネット(ネットワーク)
14…LAN(イントラネット)
20…コンピュータ装置
21…PDFデータ処理部
30…印刷装置
33…PDF解釈部
Claims (3)
- コンピュータ装置と、該コンピュータ装置に直接あるいはネットワークを介して接続された印刷装置とからなり、コンピュータ装置は、印刷すべきデータの構造を解釈するのに必要な構造記述が電子文書の最後に記述されるフォーマットで作成された電子文書データを印刷装置に送信し、受信された前記電子文書データをラスタライズして前記印刷装置で印刷する電子文書印刷システムにおいて、
前記コンピュータ装置は、電子文書データ処理部を備え、
前記電子文書データ処理部は、印刷すべき前記電子文書データをページ毎に新たな電子文書データに編集し、編集した前記電子文書データを前記印刷装置に1ページ分ずつ送信するようになし、
前記印刷装置は、1ページ分ずつの新たな前記電子文書データを受信する毎に、受信した当該電子文書データを次ページの前記電子文書データ受信中に解釈してラスタライズする電子文書データ解釈部と、
を備えたことを特徴とする電子文書印刷システム。 - 前記コンピュータ装置は、編集したページ毎の電子文書データを、もとの電子文書データの各ページと同一の順序により前記印刷装置に送信するようになしたことを特徴とする請求項1に記載の電子文書印刷システム。
- 前記コンピュータ装置は、編集したページ毎の電子文書データを、任意に設定した順序により前記印刷装置に送信するようになしたことを特徴とする請求項1に記載の電子文書印刷システム。
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