JP4179534B2 - 潜像入り回折格子表示体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、潜像入り回折格子表示体に関し、特に、金券や物品等に適用することによりその真正性を証明する回折格子表示体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、回折格子を用いた表示体は種々知られている。しかしながら、回折格子自身のセキュリティ性は薄れつつあり、その向上が求められている。
【0003】
この間題点を解決するために、回折格子にセキュリティ性を付与する方法が種々考案されている。
【0004】
実用新案登録公報第2582847号のものは、回折格子中に周囲の色彩とは異なる回折効果を発生させる0.3mm以下の最大寸法の部分を設け、その部分を適宜文字・記号・数字等とすることで、肉眼では観祭しづらい情報を回折格子中に作成することを提案している。その情報をルーぺ等で拡大することで、回折格子の真偽判定が可能となるものである。
【0005】
また、特開平9−73261号のものは、回折格子の層構成中に紫外線発光する物質を混合させることにより、目視による真偽判定の他、ブラックライト等の紫外線照射によっても真偽判定が可能なものを提案している。
【0006】
また、特許公報第2842015号のものは、回折格子に不可視なコード情報を付与し、その情報をレーザー照射等によって読み取ることにより真偽判定が可能なものを提案している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来の回折格子表示体においては、真偽判定のために、ルーぺ、ブラックライト、専用読取り機、レーザー等の特定の器具や装置を要するものが多く、汎用性、経済性に欠ける場合が多かった。
【0008】
本発明は従来技術のこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、回折格子(又は、ホログラム、以下同様)のセキュリティ性向上を目的として、通常の目視では所在や内容を判別することが困難で、なおかつ特別な装置や判別器具を用いることなく容易にその内容を確認することができる潜像を記録した回折格子表示体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の潜像入り回折格子表示体は、表示すべき文字等の意味のあるパターンを微細な画素の2次元的集合で表したとき、その2次元的集合の画素間の間隔を特定の1次元方向に所定距離だけ広げた位置の各画素に対応領域に、その1次元方向であって表示面に対して斜めの方向に回折光を回折する特性の回折格子が設けられてなることを特徴とするものである。
【0010】
この場合に、その回折格子がブレーズド回折格子からなることが望ましい。
【0011】
また、その回折格子が設けられる画素に対応する領域のドット径及びライン幅が0.1mm以下であることが望ましい。
【0012】
また、その回折格子の周囲あるいは回折格子間の領域には、ホログラムのレリーフ干渉縞が形成されていてもよい。
【0013】
その場合、ホログラムのレリーフ干渉縞には立体像を記録することができる。
【0014】
また、その回折格子の周囲あるいは回折格子間の領域には、その回折格子と異なる回折特性のレリーフ回折格子が形成されていてもよい。
【0015】
また、その回折格子の周囲あるいは回折格子間の領域には、印刷インキによる印刷が施されていてもよい。
【0016】
本発明においては、表示すべき文字等の意味のあるパターンを微細な画素の2次元的集合で表したとき、その2次元的集合の画素間の間隔を特定の1次元方向に所定距離だけ広げた位置の各画素に対応領域に、その1次元方向であって表示面に対して斜めの方向に回折光を回折する特性の回折格子が設けられてなるので、通常の正面からの目視では回折格子で記録された文字等の意味のあるパターンの所在や内容を判別することは困難であるが、回折格子の斜めの回折方向から見ると、画素間の間隔を広げた分がキャンセルされて、その回折格子が存在する領域が集合して意味のある文字等として明確に認識できるようになる。そのため、特別な装置や判別器具を用いることなく、その情報の内容を容易に確認することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の潜像入り回折格子表示体の実施例を説明する。
【0018】
まず、本発明の1実施例の潜像入り回折格子表示体をその製造方法に基づいて説明する。図1はその製造工程の概略を示す図であり、図1(a)に示すように、多重電子線描画、あるいは、ルーリングマシン等によってブレーズド回折格子2を表面に刻んでそれを複製したブレーズド回折格子樹脂版1を用意する。ブレーズド回折格子2とは、回折格子の断面が鋸歯状あるいは三角波状の回折格子で、所定の次数の回折光のみを選択的に回折する特性のもので、図の例では1つの格子が二等辺三角形をしており、反射型回折格子とする場合に正面から入射する特定波長の±1次光を選択的に左右斜め方向に回折する特性のものである。このブレーズド回折格子樹脂版1上に例えばポジ型のフォトレジスト膜3を塗布する。そして、そのフォトレジスト膜3上に可干渉な任意の物体光4と参照光5とを同時に照射して干渉させてホログラム露光をする。
【0019】
次いで、図1(b)に示すように、ホログラム露光後のフォトレジスト膜3(符号3’で示す。)上に多数の微細な開口7を有するマスク版6を密着あるいは近接させて、そのマスク版6を介して紫外線8を照射する。ここで、マスク版6上の開口7に関しては、後記の例から明らかなように、表示しようとする文字等の意味のあるパターンを微細な画素の2次元的集合で表したとき、その2次元的集合の画素間の間隔を特定の1次元方向に所定距離だけ広げた場合の各画素に対応するものであり、マスク版6を正面方向から目視で見た場合に、1個1個の開口7は認識できても、多数の開口7が集合して意味のある文字等のパターンを形成しているとは認識困難なものである。なお、各開口7の寸法については後記する。
【0020】
次に、このようなホログラム露光と紫外線パターン露光を受けたフォトレジスト膜3(符号3”で示す。)を所定の現像処理をすると、図1(c)に示すように、マスク版6の開口7が対応する微細領域では、ブレーズド回折格子2が露出し、それ以外の領域の表面ではホログラムのレリーフ干渉縞9が形成された版10が形成される。
【0021】
なお、以上において、フォトレジスト膜3上に露光するホログラム露光(図1(a))と紫外線パターン露光(図1(b))とは順序が逆であってもよい。
【0022】
このようにして形成された版10を用いて、その微細領域のブレーズド回折格子2とそれ以外の領域のホログラムのレリーフ干渉縞9とを型複製する。その方法の1例として、図1(d)に示すように、その版10の表面に紫外線硬化型樹脂11を塗布し、その紫外線硬化型樹脂11に紫外線12を照射して紫外線硬化型樹脂11を硬化させる。その後、版10よりその硬化した紫外線硬化型樹脂11(符号11’で示す。)を剥離することにより、図1(e)に示すように、微細領域のブレーズド回折格子2の複製ブレーズド回折格子2’とそれ以外の領域のホログラムのレリーフ干渉縞9の複製レリーフ干渉縞9’とを有する複製原版20が得られる。
【0023】
そして、特に図示しないが、このようにして得られた複製原版20を版として公知の種々の方法で複製を奇数回繰り返すことにより、複製ブレーズド回折格子2’と複製レリーフ干渉縞9’とを同時に樹脂層表面に複製することにより、図1(f)に示すように、版10と同様の微細領域のブレーズド回折格子2”とそれ以外の領域のホログラムのレリーフ干渉縞9”とを有する複製品が得られる。そして、そのブレーズド回折格子2”とレリーフ干渉縞9”上に金属反射層13を金属蒸着をすることにより、本発明の1例の潜像入り回折格子表示体30が得られる。
【0024】
このような潜像入り回折格子表示体30の作用について説明する。潜像入り回折格子表示体30を通常の観察位置で見たとき、例えば図2に示すように、そのレリーフ干渉縞9”から再生される立体像31が見える。一方、ブレーズド回折格子2”が存在する領域は、マスク版6上の多数の微細な開口7に対応する領域である。これら多数の微細な開口7は、上記のように、表示しようとする文字等の意味のあるパターンを微細な画素の2次元的集合で表したとき、その2次元的集合の画素間の間隔を特定の1次元方向に所定距離だけ広げた場合の各画素に対応するものであり、そのため、ブレーズド回折格子2”が存在する領域は、図3に例示するような分布となっている。図3の例示から分かるように、回折格子表示体30を正面からみたとき、個々のブレーズド回折格子2”が存在する領域が認識できたとしても、目視で全体を見ると、それらが集合して意味のある文字等のパターンを形成しているとは認識し難いものである。したがって、通常の目視でこの潜像入り回折格子表示体30を正面から見ると、ホログラムからの再生立体像31しか見えないことになる。
【0025】
ところが、ブレーズド回折格子2”は、反射型であり、この場合には正面から入射する特定波長の±1次光を選択的に左右斜め方向、この例では表示体30の面に対して約25°の方向に回折する特性のものであるので、その方向に眼を位置させると、ブレーズド回折格子2”が存在する各微細領域から強い+1次回折光又は−1次回折光が眼に同時に入り、かつ、その見る方向が斜め方向であるので、画素(ブレーズド回折格子2”の存在領域)間の間隔を広げた分がキャンセルされることになり、図4に例示するように、ブレーズド回折格子2”が存在する領域が集合して意味のある文字等、この例では、「GENUINE PRODUCT」(真正品)として明確に認識できるようになる。
【0026】
したがって、通常の目視ではブレーズド回折格子2”で記録された情報(潜像)の所在や内容を判別することは困難で、しかも、特別な装置や判別器具を用いることなく、特定の斜め方向から見ることにより、その情報の内容を容易に確認することができる。
【0027】
ここで、上記のマスク版6の個々の開口7の形状については、通常の画素のような多角形、円形、星型等の網点形状あるいは万線等いかなるものでもよいが、その寸法(開口径、開口幅)、すなわち、ブレーズド回折格子2”を形成する微細領域の寸法(ドットの径、ラインの幅)については、可能なら通常の明視距離(25cm)では分解できない寸法とすることが望ましい。パターンの径あるいは線幅では具体的に0.1mm以下、好ましくは0.05mm以下のものである。このような寸法に選択すると、潜像入り回折格子表示体30を通常の正面の観察位置で見たとき、例えば図3に示すような分布は決して見えることがなくよりセキュリティ性が向上する。
【0028】
ところで、以上の例では、潜像を形成するブレーズド回折格子2”の周囲あるいはブレーズド回折格子2”間の領域にはホログラムのレリーフ干渉縞9を形成しているが、ブランクあるいは何も記録・表示していなくてもよい。あるいは、通常の印刷を施してもよい。ただし、印刷する場合は、印刷インキとしてブレーズド回折格子2”から回折される特定波長の光を透過する特性のものを選択するか、ブレーズド回折格子2”の領域に印刷インキがかからないようにしなければならない。さらには、ブレーズド回折格子2”と異なる回折特性のレリーフ回折格子等の回折格子を配置してもよい。
【0029】
以上のように、本発明の潜像入り回折格子表示体30においては、表示しようとする文字等の意味のあるパターンを微細な画素の2次元的集合で表したとき、その2次元的集合の画素間の間隔を特定の1次元方向に所定距離だけ広げた場合の各画素に対応する領域に、その1次元方向であって回折格子表示体30の表示面に対して斜めの方向に回折光を回折する特性のブレーズド回折格子2”が設けられているので、通常の正面からの目視ではブレーズド回折格子2”で記録された文字等の意味のある情報(パターン)の所在や内容を判別することは困難であるが、ブレーズド回折格子2”の斜めの回折方向から見ると、画素間の間隔を広げた分がキャンセルされて、そのブレーズド回折格子2”が存在する領域が集合して意味のある文字等として明確に認識できるようになる。そのため、特別な装置や判別器具を用いることなく、その情報の内容を容易に確認することができるものである。
【0030】
以上、本発明の潜像入り回折格子表示体を実施例に基づいて説明してきたが、上記実施例に限定されず種々の変形が可能である。なお、所定の次数の回折光のみを選択的に回折する回折格子としては、上記のブレーズド回折格子の外、ホログラムのレリーフ干渉縞を用いてもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の潜像入り回折格子表示体によると、表示すべき文字等の意味のあるパターンを微細な画素の2次元的集合で表したとき、その2次元的集合の画素間の間隔を特定の1次元方向に所定距離だけ広げた位置の各画素に対応領域に、その1次元方向であって表示面に対して斜めの方向に回折光を回折する特性の回折格子が設けられてなるので、通常の正面からの目視では回折格子で記録された文字等の意味のあるパターンの所在や内容を判別することは困難であるが、回折格子の斜めの回折方向から見ると、画素間の間隔を広げた分がキャンセルされて、その回折格子が存在する領域が集合して意味のある文字等として明確に認識できるようになる。そのため、特別な装置や判別器具を用いることなく、その情報の内容を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例の潜像入り回折格子表示体の製造工程の概略を示す図である。
【図2】図1による潜像入り回折格子表示体を通常の観察位置で見たときに見える像を説明するための図である。
【図3】図1による潜像入り回折格子表示体のブレーズド回折格子が存在する領域の分布を示す図である。
【図4】ブレーズド回折格子の斜めの回折方向から見たときに見える像を説明するための図である。
【符号の説明】
1…ブレーズド回折格子樹脂版
2…ブレーズド回折格子
2’…複製ブレーズド回折格子
2”…ブレーズド回折格子
3…フォトレジスト膜
3’…ホログラム露光後のフォトレジスト膜
3”…ホログラム露光と紫外線パターン露光を受けたフォトレジスト膜
4…物体光
5…参照光
6…マスク版
7…開口
8…紫外線
9…レリーフ干渉縞
9’…複製レリーフ干渉縞
9”…レリーフ干渉縞
10…版
11…紫外線硬化型樹脂
11’…硬化した紫外線硬化型樹脂
12…紫外線
13…金属反射層
20…複製原版
30…潜像入り回折格子表示体
31…ホログラムから再生される立体像

Claims (7)

  1. 表示すべき文字等の意味のあるパターンを微細な画素の2次元的集合で表したとき、その2次元的集合の画素間の間隔を特定の1次元方向に所定距離だけ広げた位置の各画素に対応領域に、その1次元方向であって表示面に対して斜めの方向に回折光を回折する特性の回折格子が設けられてなることを特徴とする潜像入り回折格子表示体。
  2. 前記回折格子がブレーズド回折格子からなることを特徴とする請求項1記載の潜像入り回折格子表示体。
  3. 前記回折格子が設けられる画素に対応する領域のドット径及びライン幅が0.1mm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の潜像入り回折格子表示体。
  4. 前記回折格子の周囲あるいは前記回折格子間の領域には、ホログラムのレリーフ干渉縞が形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の潜像入り回折格子表示体。
  5. 前記ホログラムのレリーフ干渉縞には立体像が記録されていることを特徴とする請求項4記載の潜像入り回折格子表示体。
  6. 前記回折格子の周囲あるいは前記回折格子間の領域には、前記回折格子と異なる回折特性のレリーフ回折格子が形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の潜像入り回折格子表示体。
  7. 前記回折格子の周囲あるいは前記回折格子間の領域には、印刷インキによる印刷が施されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の潜像入り回折格子表示体。
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