JP4179314B2 - 脆性材料のフルカット割断装置 - Google Patents
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25μm以下である。第五に、ガラス板厚0.2mmまでの薄さに使用でき、今後の液晶TV用ガラスに使用できる。
そこで、特許文献2に記載されているレーザ割断方法の原理を説明する。ガラスに高エネルギー密度のCO2レーザビームを照射すると、一般的には照射スポットにおいてレーザビームの吸収が起こり、急激な加熱の結果放射状にクラックが発生してしまい、進行方向のみに割断を進行させることは出来ない。
しかしながら、レーザビームのエネルギー密度をこうしたクラックを発生させるものより十分低いものに設定すると、ガラスは加熱されるだけで、溶融もクラック発生も起こらない。この時ガラスは熱膨張しようとするが、局所加熱なので膨張ができず、照射点を中心にその周辺には圧縮応力が発生する。この局所加熱源を割断したい方向に移動させるのである。加熱後に冷却液を噴射して冷却を行うと、今度は逆に引っ張り張力が発生する。
この様子を図1に示す。図1に示すように加熱レーザビーム1の断面形状を適当なものに成形すると、加熱レーザビーム1の移動方向7と直交する方向のみに、引っ張り張力4が発生する。この引っ張り張力の作用で割断亀裂5が生じる。図1において、2はガラス内部の圧縮応力、3は冷却液、6はガラス板である。なお、ガラス板6の加熱レーザビーム1による加熱後に冷却液3の噴射を行わなくてもガラス板6に引っ張り張力4は発生し、この引っ張り張力4の作用で割断亀裂5を生じさせることができる。
図2に示すガラス板6において、始点に機械的方法によるトリガークラック8をつけておくと、割断亀裂5はこのトリガークラック8から発生し、加熱レーザビーム1の移動方向7に沿って進行させることができる。こうした現象が理想的に発生するためには、照射加熱レーザビームのエネルギー分布が、引っ張り張力4を生じさせるために最適である必要がある。種々のガラスの割断において、こうした最適分布が研究されている。図1および図2に示す加熱レーザビーム1は、この最適化がなされたものである。
このガラス割断へのレーザ応用は、これから需要が急増するファイン・ガラス全般の加工において、必要不可欠のものであるといえる。
請求項2に記載の本発明の脆性材料のフルカット割断装置は、光パラメトリック発振器または複数の混晶半導体レーザエレメントにより構成されたレーザスタックと、前記レーザスタックからのレーザ光を受光する結合光学系と、前記結合光学系に連結された1本のファイバーと、前記1本のファイバーからの射出光を目標とする割断形状に適合した断面形状に変換する断面形状制御用光学系を有することを特徴とする脆性材料のフルカット割断装置。
請求項3に記載の本発明の脆性材料のフルカット割断装置は、レーザスタックとして複数の混晶半導体レーザエレメントを使用した請求項1および請求項2のいずれかに記載のフルカット割断装置を複数使用し、前記複数のフルカット割断装置における各々のレーザスタックが発振するレーザ光の波長を互いに異ならせ、前記複数のフルカット割断装置を切替えて、異なる板厚の脆性材料を順次フルカットすることを特徴とする脆性材料のフルカット割断装置。
請求項4に記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の脆性材料のフルカット割断装置において、前記ファイバーバンドルの出射端の断面形状が直線状であるものである。
請求項5に記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の脆性材料のフルカット割断装置において、前記ファイバーバンドルの出射端の断面形状が円弧状であるものである。
請求項6に記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の脆性材料のフルカット割断装置において、レーザスタックを構成する混晶半導体レーザが複数の化合物半導体の混晶比を変えて得る混晶半導体レーザであるものである。
請求項7に記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の脆性材料のフルカット割断装置において、レーザスタックを構成する混晶半導体レーザがPbEuSeTe、InAsSbP、InGaAsSbおよび、AlInAsSbのいずれかを活性層とする混晶半導体レーザであるものである。
こうした加熱レーザビーム1の透過は、脆性材料の加熱レーザビームに対する吸収係数αを最適化しておこなうことができる。
1) 割断位置精度が高い。
2) 割断面が鏡面で、面粗さが良好である。
3) 割断面がガラス表面に対して、十分に垂直である。
4) 割断面にカレットの付着がなく、清浄である。
5) 割断の自動化ができる。
6) 割断が高速度で行える。
7) 研磨、洗浄などの後工程が大幅に省略できる。
1)曲線割断が可能である。これはレーザによる金属加工にも匹敵する。
2)複層構造板の割断が可能である。液晶ディスプレィやプラズマディスプレィガラスに適用できる。
3)マイクロワークの割断が可能である。ICタッグに適用できる。
4)強化ガラスの割断が可能である。建築用ガラスに適用できる。
5)曲面ガラスの割断が可能である。自動車用ガラスに適用できる。
このように、レーザによるガラス割断が産業界の各分野に普及すれば、加工速度、加工品質、経済性、難易度の克服などにおいて、その効果にははかり知れないものがある。
I= I0・e―αx (1)
(1) 式から、透過距離の所要値が分かれば必要な吸収係数αを求めることができる。次
に、前記同吸収係数αの上限値、最適値、下限値を求めることにする。
上限値としては、発明者達の経験によれば、ガラス板厚の1/4までスクライブするとフルカットになってしまうことがよくあるので、ガラス板厚の1/4までスクライブする条件を上限値と設定する。(1)式に、I/I0=0.99、x=L/4を代入すると、α=18.42/Lとなる。これが吸収係数αの上限値である。
最適値としてはガラス板6によって加熱レーザビーム1の50%が吸収される場合であって(1)式から同様にα=0.693/Lとなる。
この結果、ガラス板6における光の吸収係数αが0.105/L<α<18.42/Lを満足するような光を照射すればガラス板6はフルカットされることがわかる。
α下限値(cm−1)最適値(cm−1)α上限値(cm−1)
板厚 0.02cm 5.25 34.65 921
板厚 0.07cm 1.50 9.90 263
板厚 0.28cm 0.38 2.48 65.8
周知のように、光の吸収係数αは光の波長の関数である。したがって、ガラス板6における光の吸収係数αを0.105/L<α<18.42/Lを満足するように制御するには、照射レーザ光1の波長を制御すればよい。以下の実施例に、これらの数値を実現するために照射レーザ光1の波長を変えて得るαの制御技術について説明する。
図7は波長1.06μmのYAGレーザ光を励起光としてKTP結晶に照射してタイプIIで角度位相整合した場合の位相整合角に対するシグナル光とアイドラー光の波長を示すもので、Walter Koechnerの著書“Solid-State Laser Engineering”(Fifth edition Springer-Verlag 1999)から引用して示す。この場合の光パラメトリック発振の波長域は1.6μmから4μmにいたり、無アルカリガラスの板厚0.02cmから0.28cmの場合の吸収係数αの最適値である約2.4cm−1から35cm−1を得ることができる波長域をほぼカバーできる。
この光パラメトリック発振器を用いれば、板厚の異なる複数のガラスをフルカットする場合、その板厚に最適な吸収係数αの得られる波長を位相整合角を変えて選び、その板厚に最適なレーザ出力を選ぶのみで対応でき、複数の板厚のガラスをフルカットする場合に作業変えの段取り効率が極めて良くなる利点が生じる。
図8において15は多数個の混晶半導体レーザエレメントからなるレーザスタックであり、16はそれぞれの混晶半導体レーザエレメントからの加熱レーザビームを導光するファイバーを1本に束ねたファイバーバンドルである。このファイバーバンドル16の入射端17はコネクターとして脱着可能になっている。出射端18ではファイバーバンドル16はレーザ光断面形状が種々の形状を取れるように配列されている。図8では直線状の割断に最適な直線状断面形状19用になっている。異なった直径の円形割断のためには図9に示すようにファイバー出射端は円弧状配列20にするが、直径制御のために射出端と脆性材料表面の間に図10のような拡大・縮小光学系21を設置する。直線や円弧以外の任意形状の割断のためにはそれに最適のファイバー配列を行えばよい。
2 脆性材料内部の圧縮応力
3 冷却液
4 脆性材料内部の引っ張り張力
5 脆性材料に生じる割断亀裂
6 ガラス板
7 加熱レーザビームの移動方向
8 トリガークラック
9 レーザスクライブ面
10 レーザスクライブ後のブレーク面
11 機械スクライブ面
12 機械スクライブ後のブレーク面
13 熱伝導による熱源
14 透過レーザビーム吸収による熱源
15 混晶半導体レーザスタック
16 ファイバーバンドル
17 ファイバーバンドル入射端
18 ファイバーバンドル出射端
19 直線配列ファイバー出射端からの照射レーザ光
20 円弧配列ファイバー出射端からの照射レーザ光
21 拡大・縮小光学系
22 ファイバー結合用光学系
23 断面形状制御用光学系
Claims (7)
- 複数の混晶半導体レーザエレメントにより構成されたレーザスタックと、入射端が前記レーザスタックに脱着が可能であり、出射端が脆性材料の割断形状に適合した断面形状に配列されたファイバーバンドルと、前記ファイバーバンドルの出射端に近接して配された拡大縮小光学系を有することを特徴とする脆性材料のフルカット割断装置。
- 複数の混晶半導体レーザエレメントにより構成されたレーザスタックと、前記レーザスタックからのレーザ光を受光する結合光学系と、前記結合光学系に連結された1本のファイバーと、前記1本のファイバーからの射出光を目標とする割断形状に適合した断面形状に変換する断面形状制御用光学系を有することを特徴とする脆性材料のフルカット割断装置。
- レーザスタックとして複数の混晶半導体レーザエレメントを使用した請求項1および請求項2のいずれかに記載のフルカット割断装置を複数使用し、前記複数のフルカット割断装置における各々のレーザスタックが発振するレーザ光の波長を互いに異ならせ、前記複数のフルカット割断装置を切替えて、異なる板厚の脆性材料を順次フルカットすることを特徴とする脆性材料のフルカット割断装置。
- 前記ファイバーバンドルの出射端の断面形状が直線状であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の脆性材料のフルカット割断装置。
- 前記ファイバーバンドルの出射端の断面形状が円弧状であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の脆性材料のフルカット割断装置。
- レーザスタックを構成する混晶半導体レーザが複数の化合物半導体の混晶比を変えて得る混晶半導体レーザであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の脆性材料のフルカット割断装置。
- レーザスタックを構成する混晶半導体レーザがPbEuSeTe、InAsSbP、InGaAsSbおよび、AlInAsSbのいずれかを活性層とする混晶半導体レーザであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の脆性材料のフルカット割断装置。
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