JP4178843B2 - 冷却装置、電子機器装置及び冷却装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却装置、この冷却装置を搭載した電子機器装置及び冷却装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
メモリスティック(登録商標)、スマートメディア(登録商標)、コンパクトフラッシュ(登録商標)等の記憶媒体は、フロッピ−(登録商標)ディスク等の従来のもと比べて小型かつ薄型であり、しかも記憶容量も非常に大きくすることが可能であることから、パソコンやディジタルカメラ等の電子機器装置に汎用されるようになってきている。これらの記憶媒体はフラッシュメモリとドライバとを一体的に有するものや、ドライバが装置本体や別のカード等に搭載されたものがあるが、いずれにしても最近では相当大容量化してきている。このように記憶媒体の記憶容量が大容量化してくると、上記のドライバから多大な熱が発生し、動作不良等の問題を生じる。
【0003】
そこで、例えば電子機器装置側に冷却装置を設けることが考えられ、そのような冷却方法としてヒートパイプを用いた冷却方法が挙げられる。
【0004】
ヒートパイプとは、管の内壁に毛細管構造を持たせた金属製パイプであり、内部は真空で、少量の水もしくは代替フロンなどが封入されている。ヒートパイプの一端を熱源に接触させて加熱すると、内部の液体が蒸発して気化し、このとき潜熱(気化熱)として、熱が取り込まれる。そして、低温部へ高速に(ほぼ音速で)移動し、そこで、冷やされてまた液体に戻り、熱を放出する(凝縮潜熱による熱放出)。液体は毛細管構造を通って(もしくは重力によって)元の場所へ戻るので、連続的に効率よく熱を移動させることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のヒートパイプは管状であり空間的に大掛かりな装置となるので、小型薄型化が求められるパソコンやディジタルカメラ等の電子機器装置の冷却装置には不向きである。
【0006】
そこで、ヒートパイプを小型化するために、シリコン基板とガラス基板との各接合面上に溝を形成し、これらの基板を接合することによってヒートパイプを構成する流路を基板間に形成した冷却装置が提案されている。なお、上記の接合の際には、少量の水もしくは代替フロンなどが封入され、それらが、ヒートパイプ内で状態変化を起こすことによって、ヒートパイプとしての役割を果たすものである。
【0007】
しかしながら、上記のようにシリコン基板を用いてヒートパイプを構成すると、シリコン自体の熱伝導性がよいため、冷却すべき対象物からの熱が拡散してしまい、内部の液体の気化が不十分であったり、或いは全く気化せず、ヒートパイプとしての機能が十分に発揮されない、という問題がある。
【0008】
また、シリコン基板は表面の粘性抵抗が大きく、封入された液体が流れる際に、シリコン基板と液体との間に抵抗を生じるため、液体がスムーズに循環しない、という問題もある。このように液体がスムーズに循環しないと、所望の温調性能が得られない場合がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、小型薄型化が可能で、かつ、温調性能が高い冷却装置、電子機器装置及び冷却装置の製造方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る冷却装置は、表面と、前記表面に形成され液体を通過させる液体流路を構成する溝と、前記表面に形成され気体を通過させる気体流路を構成する溝とを有し、フッ素樹脂でなる第1の基板と、前記表面と対向する面と、前記面を貫通するように形成された第1の孔及び第2の孔とを有し、フッ素樹脂でなり、前記第1の基板に接合される第2の基板と、前記液体流路の前記液体を導入して気化するウィックを構成する溝を有し、前記第1の孔に組み込まれた第3の基板と、前記気体流路から導入された前記気体を液化するコンデンサを構成する溝を有し、前記第2の孔に組み込まれた第4の基板とを具備する。
上記冷却装置において、前記第3の基板は、フッ素樹脂よりも熱伝導率の高い材料でなる。
上記冷却装置において、前記第4の基板は、金属、又はシリコンでなる。
上記冷却装置において、前記第3の基板は、金属、又はシリコンでなる。
上記冷却装置において、前記表面及び前記面にそれぞれ設けられた一対の薄膜層と、前記一対の薄膜層に挟みこまれ、前記第1の基板及び前記第2の基板を接合する接合層とをさらに具備する。
上記冷却装置において、前記薄膜層は、銅またはシリコンでなり、前記接合層は、熱可塑性樹脂でなる。
上記冷却装置において、前記薄膜層は、シリコン、または、イオン注入により改質されたアルミニウムでなり、前記接合層は、アルカリガラスでなる。
本発明の他の観点に係る冷却装置は、表面と、前記表面に形成され液体を通過させる液体流路を構成する溝と、前記表面に形成され気体を通過させる気体流路を構成する溝とを有する第1の基板と、前記表面と対向する面と、前記面を貫通するように形成された第1の孔及び第2の孔とを有し、フッ素樹脂でなり、前記第1の基板に接合される第2の基板と、前記液体流路の前記液体を導入して気化するウィックを構成する溝を有し、フッ素樹脂よりも熱伝導率が高い材料でなり、前記第1の孔に組み込まれた第3の基板と、前記気体流路から導入された前記気体を液化するコンデンサを構成する溝を有し、前記第2の孔に組み込まれた第4の基板とを具備する。
【0011】
本発明では、第1の基板と第2の基板とが接合し、その対向する面上の溝がヒートパイプの流路を構成するので、小型薄型化が可能となる。加えて、ウィック部分が熱伝導率の高い材料例えば、銅またはニッケルで形成されるために、この部分において熱の移動を効果的に行うことができる。さらに、コンデンサ部分もウィックと同様に取り外し可能であり、かつ、熱伝導率の高い材料で形成される。これによって、ヒートパイプの冷却性能を向上することができる。さらに、第1の基板と第2の基板はフッ素樹脂で形成されており、このフッ素樹脂は、表面の粘性抵抗が小さく潤滑特性が高い。そのため、内部を流れる液体との間に生じる抵抗を減少させることができ、これにより循環効率を高めることができる。また、第1の基板と第2の基板は、フッ素樹脂で形成されているため加工性においては実用化が高いが、基板間において接着性が悪くなる。そこで、本発明では、これらを補完するために基板間に接着部材を介在させることがより好ましい。この場合、接着部材としては熱可塑性ポリイミドなどの熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0012】
本発明に係る電子機器装置は、フラッシュメモリとドライバとを有するカード型の記憶媒体が着脱可能な電子機器装置であって、前記記憶媒体が着脱可能なスロットと、表面と、前記表面に形成され液体を通過させる液体流路を構成する溝と、前記表面に形成され気体を通過させる気体流路を構成する溝とを有し、フッ素樹脂でなる第1の基板と、前記表面と対向する面と、前記面を貫通するように形成された第1の孔及び第2の孔とを有し、フッ素樹脂でなり、前記第1の基板に接合される第2の基板と、前記液体流路の前記液体を導入して、前記ドライバの熱により前記液体を気化するウィックを構成する溝を有し、前記第1の孔に組み込まれた第3の基板と、前記気体流路から導入された前記気体を液化するコンデンサを構成する溝を有し、前記第2の孔に組み込まれた第4の基板とを含み、前記スロットに近接するように配置された冷却装置とを具備する。
【0013】
本発明では、上記構成の、すなわち小型薄型化しかつ循環効率が良く、冷却性能の良い冷却装置を搭載することになるので、電子機器装置自体は熱による動作不良等が生じることがなくなる。
本発明に係る表示装置は、表示部と、前記表示部を駆動するドライバと、表面と、前記表面に形成され液体を通過させる液体流路を構成する溝と、前記表面に形成され気体を通過させる気体流路を構成する溝とを有し、フッ素樹脂でなる第1の基板と、前記表面と対向する面と、前記面を貫通するように形成された第1の孔及び第2の孔とを有し、フッ素樹脂でなり、前記第1の基板に接合される第2の基板と、前記液体流路の前記液体を導入して、前記表示部または前記ドライバの熱により前記液体を気化するウィックを構成する溝を有し、前記第1の孔に組み込まれた第3の基板と、前記気体流路から導入された前記気体を液化するコンデンサを構成する溝を有し、前記第2の孔に組み込まれた第4の基板とを含み、前記表示部または前記ドライバに近接するように配置された冷却装置とを具備する。
本発明の他の観点に係る電子機器装置は、熱源と、表面と、前記表面に形成され液体を通過させる液体流路を構成する溝と、前記表面に形成され気体を通過させる気体流路を構成する溝とを有し、フッ素樹脂でなる第1の基板と、前記表面と対向する面と、前記面を貫通するように形成された第1の孔及び第2の孔とを有し、フッ素樹脂でなり、前記第1の基板に接合される第2の基板と、前記液体流路の前記液体を導入して、前記熱源からの熱により前記液体を気化するウィックを構成する溝を有し、前記第1の孔に組み込まれた第3の基板と、前記気体流路から導入された前記気体を液化するコンデンサを構成する溝を有し、前記第2の孔に組み込まれた第4の基板とを含み、前記熱源に近接するように配置された冷却装置とを具備する。
【0014】
本発明に係る冷却装置の製造方法は、フッ素樹脂でなる第1の基板の表面に、液体を通過させる液体流路を構成する溝と、気体を通過させる気体流路を構成する溝とを形成し、フッ素樹脂でなる第2の基板の、前記表面と対向する面を貫通するように、第1の孔及び第2の孔を形成し、
前記液体流路から液体を導入して気化するウィックを構成する溝を有する第3の基板を形成し、前記気体流路から導入された前記気体を液化するコンデンサを構成する溝を有する第4の基板を形成し、前記第1の孔及び前記第2の孔に、前記第3の基板及び前記第4の基板をそれぞれ組み込み、前記第1の基板の前記表面と、前記第2の基板の前記面とを接合する。
【0015】
上記冷却装置の製造方法において、前記第3の基板は、フッ素樹脂よりも熱伝導率の高い材料でなってもよい。
上記冷却装置の製造方法において、前記第4の基板は、金属、又はシリコンでなってもよい。これによって、熱の移動をさらに効果的にすることができる。
【0016】
上記冷却装置の製造方法において、前記第1の基板に前記液体流路を構成する溝と前記気体流路を構成する溝とを形成する工程は、TIEGA(Teflon Included Etching Galvanicforming)プロセスにより、前記各溝をそれぞれ形成する。
上記冷却装置の製造方法において、前記第2の基板に前記第1の孔及び前記第2の孔を形成する工程は、TIEGA(Teflon Included Etching Galvanicforming)プロセスにより、前記各孔をそれぞれ形成する。
フッ素樹脂は、通常、フッ素樹脂の紛体を型に入れて焼結する焼結法により加工される。しかし、この方法による加工では、焼結するまでの時間が長く、加工時間が長くなってしまう。本発明のこのような構成によれば、短時間で効率的に基板を形成することができる。
【0017】
上記冷却装置の製造方法において、前記第1の基板の前記表面と、前記第2の基板の前記面とを接合する工程は、前記表面及び前記面にそれぞれ薄膜層を形成し、前記各薄膜層の間に、熱可塑性樹脂でなる接合層を挟みこんで熱圧着する。
上記冷却装置の製造方法において、前記薄膜層を形成する工程は、FCVA( Filtered Cathodic Vacuum Arc )法により銅、またはシリコンでなる薄膜層を形成する。
上記冷却装置の製造方法において、前記第1の基板の前記表面と、前記第2の基板の前記面とを接合する工程は、前記表面及び前記面にそれぞれ薄膜層を形成し、前記各薄膜層のいずれか一方に接合層を形成して陽極接合する。
上記冷却装置の製造方法において、前記薄膜層を形成する工程は、前記表面及び前記面に形成されたアルミニウムを、イオン注入法により改質する。
このような構成によれば、確実に接合することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0019】
(冷却装置)
図1は本発明の冷却装置を分解した斜視図であり、図2は冷却装置の組み立てた状態の断面図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、冷却装置1は4枚の基板10、20、30、40からなる。流路基板10は例えばテフロン(登録商標)からなる矩形状の基板であり、下側に配置される。コンデンサ基板20、エバポレータ基板40は例えばニッケル等の金属からなる矩形状の基板である。中間基板30は例えばテフロン(登録商標)からなる矩形状の基板であり、上側に配置される。コンデンサ基板20、エバポレータ基板40はそれぞれ中間基板30の孔31、32に組み込まれる。これら4枚の基板10、20、30、40が例えばUPILEX(登録商標)等の熱可塑性ポリイミドの接着層50を挟んで真空中(約2660Pa)で銅薄膜を介し、約350℃の熱を加え、熱圧着により接着固定される。流路基板10の表面10a、コンデンサ基板20の表面20a、及びエバポレータ基板の表面40aには溝11、21及び41が、また中間基板30には孔31、32がそれぞれ形成されている。これらの溝及び孔は4枚の基板が接着する際にループ状のヒートパイプとして機能するように形成されている。
【0021】
次に、図3、図4及び図5を用いて各基板10、20、30及び40に形成された溝の構成について説明する。
【0022】
図3に示すように、流路基板10の表面10aには溝11が形成されている。この溝11は、液体及び気体が流れる流路と、液を供給する貯蔵タンクとから主要部を構成されている。より詳細な構造については、水などの液体が流れる流路12があり、液体はその流路12から後述のエバポレータ基板40へ導入される。導入された液体はエバポレータ基板40により気体になり、蒸発部14へ導入される。その気体は、流路15からコンデンサ基板20へ導入され、凝縮されて液体に変化し低温部16へ移動する。さらに、また流路12へ戻る。このようにして液体と気体の循環が行われる。リザーバ13には、液体が貯蔵される。リザーバ13内の液体は、蒸発部14内に液量がある一定以下になったときに流入するようになっている。つまり、リザーバ13は、ヒートパイプ内がドライアウトしないようにするために液体を貯蔵してあり、必要に応じて液体がこのリザーバ13内に流入するようになっている。
【0023】
図4は、中間基板30を示したものである。この中間基板30に設けられた孔31、32はそれぞれ、中間基板を貫通するように形成されている。
【0024】
図5は、コンデンサ基板20及びエバポレータ基板40を示したものである。
【0025】
コンデンサ基板20の表面20a上には溝21が形成されている。この溝21は、流路15から導入された気体を液体へ凝縮させるコンデンサとして機能し、凝縮した液体を低温部16へ循環させる。
【0026】
エバポレータ基板40の表面40a上には溝41が形成される。この溝41は、冷却部として機能するもので、流路12またはリザーバ13から導入された液体を気化し、気化した気体を蒸発部14へ流入させる。
【0027】
図6は、上記の各基板10、20、30及び40を接着層50を介して接合した状態を示している。
【0028】
これら各基板10、20、30及び40との接合により構成されるヒートパイプの内部には液体が封入されている。封入された液体はヒートパイプ内で液体から気体または気体から液体へと状態変化しながら循環する。これにより熱移動を行わせ、冷却装置1として機能する。
【0029】
以下、その液体/気体の循環の様子を便宜的に流路12を始点として説明する。
【0030】
まず、液体が流路12から蒸発部14へ流入する。その際に蒸発部14に流入する液体の量が所定以下であるときにはドライアウトを回避するために、リザーバ13から不足分の液体が供給されるようになっている。
【0031】
蒸発部14に流入した液体は、加熱され沸騰する。沸騰することによって気化した気体は、流路15を介して低温部16へ流入し、液体に凝縮される。このとき凝縮された液体は、低温部16から流路12へ再度循環される。
【0032】
なお、本実施形態では、基板の材料としてテフロン(登録商標)を用いたが、他のフッ素樹脂材料を用いても良いし、テフロン(登録商標)と他のフッ素樹脂材料との組み合わせであっても良い。また、コンデンサ基板20及びエバポレータ基板40の材料としてニッケルからなるものとしたが、他に材料、例えば銅を用いても良い。
【0033】
図7は基板上をある一定時間で熱が拡散した領域を模式的に図に示したもので、図7(a)はシリコン基板を用いた場合を示し、図7(b)はフッ素樹脂基板を用いた場合を示し、図7(c)はフッ素樹脂基板にニッケル等の金属を組み込んだフッ素樹脂・金属複合基板を示している。
【0034】
図7(a)に示すように、シリコン基板の熱源A−1の熱は矢印に示すように熱が広域にわたり拡散する(A−2)。これに対して図7(b)に示すようにフッ素樹脂基板の熱源B−1の熱は矢印に示すように熱がそれほど広い領域まで拡散しない(B−2)。
【0035】
ヒートパイプとして機能するためには、エバポレータに一定以上の熱が集中しなければならないが、図7(a)に示したように基板の材料がシリコンからなる場合には熱の拡散が大きくその機能を十分に果たさない。
【0036】
また、ヒートパイプとして機能するためには、エバポレータに一定以上の熱伝導率がなければならないが、図7(b)に示したようにフッ素樹脂基板のみの場合には熱伝導率がほとんどなくその機能を十分に果たさない。
【0037】
以上の点に対し、本発明では、図7(c)に示したように、フッ素樹脂・金属複合基板の熱源C−1の熱は金属部については高い拡散性を有し、その周りのフッ素樹脂領域にはほとんど拡散せず(C−2)、エバポレータにおいては熱が十分に伝わり、周囲のフッ素樹脂の部分に熱が拡散しにくいので、つまり熱がエバポレータに集中し、ヒートパイプとしての機能を十分に果たすことになる。
【0038】
図8は流路を流れる液体の様子を模式的に示したものである。図8(a)は、シリコン基板で形成された流路を流れる液体の様子を表したものであり、図8(b)は、フッ素樹脂基板で形成された流路を流れる液体の様子を表したものである。
【0039】
図8(a)に示すように、シリコンで形成された流路を流れる液体は、流路を流れる際にシリコンとの間で生じる摩擦により、スムーズな循環を妨げられることになる。
【0040】
これに対して、図8(b)に示すように、シリコンと比べて動摩擦係数の値が小さいフッ素樹脂で形成された流路を流れる液体は、この流路を流れる際に生じる摩擦がシリコンで形成された流路を流れる場合よりも少なく、スムーズな循環が確保されるため、循環効率が高まることになる。
【0041】
(冷却装置の製造方法)
図9は冷却装置の製造工程を示したものである。
【0042】
まず、ヒートパイプとして機能するための流路基板10及び中間基板30の溝及び孔を形成する(ステップ901)。フッ素樹脂からなる流路基板10の表面10aには、流路、リザーバ、蒸発部及び低温部として機能する溝11を形成する。プラスチックからなる中間基板30には、中間基板30を貫通するように孔31、32を形成する。
【0043】
流路基板10及び中間基板30はTIEGA(Teflon Included Etching Galvanicforming)法と呼ばれる方法によって形成される。図10に基づき、TIEGA法について具体的に説明する。
【0044】
図10(a)において、流路基板10又は中間基板30上に、マスクとして、パターンニングされたメタルマスク71を配置する。
【0045】
次に、図10(b)において、シンクロトロン光を照射することによって、フッ素樹脂を加工し、流路基板10又は中間基板30上に形成された溝又は孔を形成する。ここで、シンクロトロン光とは、電子又は陽電子を光速近くまで加速し、磁場の中で進行方向を曲げることにより発生する電磁波をいう。
【0046】
次に、図10(c)において、メタルマスク71を除去し、流路基板10又は中間基板30の孔の形成が完了する。
【0047】
次に、図10(d)において、熱圧着時に必要な接着層の形成を行う。流路基板10又は中間基板30上に形成された溝又は孔の部分にレジスト層73を形成する。さらに、フッ素樹脂表面に、FCVA(Filtered Cathodic Vacuum Arc)法によって注入層を形成する。本実施例では注入層として銅層72が用いられているが、シリコンを注入層として用いてもよい。
【0048】
次に、図10(e)において、レジスト層73を剥離し、接着層が形成され、流路の形成された流路基板10又は孔の形成された中間基板30が完成する。なお、中間基板30に関しては、流路基板10との接合面の反対面に、コンデンサ基板20及びエバポレータ基板40を後の工程で接合するため、上記(d)及び(e)の工程を繰り返して接着層を形成する(図示せず)。
【0049】
なお、流路基板10及び中間基板30はシンクロトロン光の照射により形成されているが、例えばエキシマレーザー等のレーザー光の照射による形成や金型成型による形成、又は反応性イオンエッチング法等により形成しても良い。さらに、銅層72を形成する際には、エキシマレーザーなどによってフッ素樹脂の表面を改質させた後に、蒸着やスパッタリングなどの方法によって形成しても良い。この方法により、効率的に基板を形成することができる。
【0050】
次に、コンデンサ又はエバポレータとして機能するコンデンサ基板20及びエバポレータ基板40を形成する(ステップ902)。溝を有するコンデンサ基板20及びエバポレータ基板40は例えばUV−LIGAと呼ばれる方法によって形成される。図11に基づきUV−LIGAの工程について具体的に説明する。
【0051】
まず、図11(a)に示すように、プレート82上例えば有機材料であるSU−8からなるレジスト層81を形成し、その上にパターンニングされたレジスト膜83を形成する。これをパターン基板80と呼ぶ。
【0052】
次に、図11(b)に示すように、パターン基板80の上方からUVを照射し、レジスト層81のエッチングを行う。
【0053】
次に、図11(c)に示すように、このパターン基板80からレジスト膜83を剥離し、この表面にニッケルNiの電鋳でニッケル層84を形成する。
【0054】
そして、図11(d)に示すように、パターン基板80からニッケル層84を剥離する。剥離したニッケル層84が溝を有するコンデンサ基板20及びエバポレータ基板40となる。
【0055】
なお、コンデンサ基板20及びエバポレータ基板40の形成は、反応性イオンエッチング法によっても可能である。
【0056】
次に、図12に示すように、流路基板10と中間基板30との間に接着層50を挟みこみ、真空中(約2660Pa)でステップ901の工程で形成した銅層72を介し、約350℃の熱を加え、熱圧着により接着固定される(ステップ903)。接着層としては、例えばUPILEX(登録商標)等の熱可塑性ポリイミドを用いる。また、流路基板10と中間基板30のそれぞれの接合面にイオン注入法等により改質層アルミニウム薄膜やシリコン薄膜を形成し、接合する一方の基板の接合面に、形成された改質層アルミニウム薄膜又はシリコン薄膜の上層部にアルカリガラスをスパッターし、陽極接合法によって両基板を接合することも可能である。これにより、確実な接合が可能となる。
【0057】
次に、図13に示すように、ステップ903で流路基板10と接合した中間基板30の孔31、32に対し、コンデンサ基板20及びエバポレータ基板40の接合を行う(ステップ904)。接合は、ステップ903と同様に接着層として熱可塑性ポリイミドを用いて熱圧着により行われる。中間基板30とコンデンサ基板20及びエバポレータ基板40との間に熱可塑性ポリイミドを挟み込み、真空中(約2660Pa)で、約350℃の熱を加えて接着固定される。
【0058】
本発明の実施例において、コンデンサ基板20及びエバポレータ基板40の材質としてニッケルNiを用いているが、シリコンなどの材料を用いることもできる。
【0059】
上に述べた製造方法により、ヒートパイプを効率よく製造できる。
【0060】
(冷却装置の他の例)
図14はコンデンサ基材142とエバポレータ基材144とをフレキシブル基板141で繋げているフレキシブル冷却装置140を示したものである。
【0061】
コンデンサ基材142、エバポレータ基材144はそれぞれフッ素樹脂からなり、上述した方法によってコンデンサ基板20、エバポレータ基板40が組み込まれたものである。
【0062】
フレキシブル基板141はプラスチックからなり、内部にヒートパイプの流路143を含んでいる。これらの基材又は基板が一体となってヒートパイプを構成する。
【0063】
フレキシブル基板141は自由な変形が可能である。例えば電子機器の発熱部にエバポレータ基材144を装着させ、電子機器の外部表面の形状に沿うようにフレキシブル基板を密着させることができる。
【0064】
このような構成の冷却装置によれば、狭い空間にも効率的にヒートパイプを装着させることができ、電子機器等の小型薄型化が図れる。
【0065】
(電子機器装置)
図15は本発明に係る冷却装置が搭載されたパソコンの概略斜視図である。
【0066】
パソコン150は、フラッシュメモリ153とドライバ152とを有する記録媒体154を着脱するためのスロット151、及び処理部155を有する。本発明に係る冷却装置1はスロット151を介して装着された記録媒体154の例えばドライバ152の直下にウィックが位置するようにパソコン150内に配置されている。
【0067】
また、本発明に係る冷却装置1は、エバポレータが処理部155に隣接するように配置されてもよい。この場合、コンデンサは図示しない例えば冷却ファンなどに隣接するように設置するのが好ましい。これにより、処理部155から発せられた熱は、エバポレータで吸収され、冷却ファンの働きによってコンデンサから放出されることとなるため、処理部155を冷却することができる。
【0068】
なお、ここでは、電子機器装置としてパソコンを例にとり説明したが、本発明に係る冷却装置はディジタルカメラやビデオカメラ等の他の電子機器装置にも搭載することが可能である。
【0069】
(表示装置)
図16は本発明に係る冷却装置が搭載された液晶ディスプレイの概略斜視図である。
【0070】
液晶ディスプレイ160は、ドライバ161、表示部162、冷却ファン163とを有する。本発明に係る冷却装置1はドライバ162に隣接してエバポレータが位置するように、さらに冷却ファン163に隣接してコンデンサが位置するように液晶ディスプレイ内に配置されている。液晶ディスプレイ160の起動によってドライバ161から発生した熱は、エバポレータに吸収され、この吸収熱により冷却装置1の内部の液体が気化し、流路を通ってコンデンサに流れる。冷却ファン163はコンデンサを冷却し、コンデンサに流れてきた気体の熱を放出させ、この気体を再び液化させる。コンデンサで液化された液体は流路を通ってエバポレータに流れ、ドライバ161から発生した熱を吸収して再び気化する。このように冷却装置1内部の液体の循環によってドライバ161を冷却することができる。同様にして、エバポレータを表示部163に隣接して設置することにより、表示部163を冷却することも可能である。
【0071】
なお、ここでは、表示装置として液晶ディスプレイを例にとり説明したが、本発明に係る冷却装置はプラズマディスプレイや有機ELディスプレイ等の他の表示装置にも搭載することが可能である。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、小型薄型化が可能で、かつ、循環効率が良く、温調性能が高い冷却装置、電子機器装置、表示装置及び冷却装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一の形態に係る冷却装置の構成を表す分解した斜視図である。
【図2】本発明の一の形態に係る冷却装置の組み立てた状態の断面図である。
【図3】本発明の一の形態に係るの冷却装置の流路基板を示す平面図である。
【図4】本発明の一の形態に係る冷却装置の中間基板を示す平面図である。
【図5】本発明の一の形態に係る冷却装置のコンデンサ基板及びエバポレータ基板を示す平面図である。
【図6】本発明の一の形態に係る冷却装置の流路基板、中間基板、コンデンサ基板及びエバポレータ基板を組み立てた状態を示した平面図である。
【図7】シリコン基板、フッ素樹脂基板及び本発明のフッ素樹脂・金属複合基板に対して熱拡散性の観点から比較した図である。
【図8】シリコン基板及び本発明において流路を形成するフッ素樹脂基板に対して潤滑特性の観点から比較した図である。
【図9】本発明の冷却装置の製造工程を示した図である。
【図10】本発明の冷却装置に用いる流路基板及び中間基板を形成する工程を示した概略図である。
【図11】本発明の冷却装置に用いるコンデンサ基板及びエバポレータ基板を形成する工程を示した概略図である。
【図12】本発明の冷却装置の用いる流路基板と中間基板とを接合する工程を示した概略図である。
【図13】本発明の冷却装置に用いる中間基板にコンデンサ基板及びエバポレータ基板を組み込む工程を示した概略図である。
【図14】本発明の他の形態に係る冷却装置を示した概略図である。
【図15】本発明の冷却装置を搭載したパソコンの概略斜視図である。
【図16】本発明の冷却装置を搭載した液晶ディスプレイの概略斜視図である。
【符号の説明】
1…冷却装置
10…流路基板
11…溝
12…流路
13…リザーバ
14…蒸発部
15…流路
16…低温部
20…コンデンサ基板
30…中間基板
40…エバポレータ基板
50…接着層
140…フレキシブル冷却装置
150…パソコン
160…液晶ディスプレイ
Claims (20)
- 表面と、前記表面に形成され液体を通過させる液体流路を構成する溝と、前記表面に形成され気体を通過させる気体流路を構成する溝とを有し、フッ素樹脂でなる第1の基板と、
前記表面と対向する面と、前記面を貫通するように形成された第1の孔及び第2の孔とを有し、フッ素樹脂でなり、前記第1の基板に接合される第2の基板と、
前記液体流路の前記液体を導入して気化するウィックを構成する溝を有し、前記第1の孔に組み込まれた第3の基板と、
前記気体流路から導入された前記気体を液化するコンデンサを構成する溝を有し、前記第2の孔に組み込まれた第4の基板と
を具備する冷却装置。 - 請求項1に記載の冷却装置であって、
前記第3の基板は、フッ素樹脂よりも熱伝導率が高い材料でなる冷却装置。 - 請求項2に記載の冷却装置であって、
前記第4の基板は、金属、又はシリコンでなる冷却装置。 - 請求項2に記載の冷却装置であって、
前記第3の基板は、金属、又はシリコンでなる冷却装置。 - 請求項1に記載の冷却装置であって、
前記表面及び前記面にそれぞれ設けられた一対の薄膜層と、
前記一対の薄膜層に挟みこまれ、前記第1の基板及び前記第2の基板を接合する接合層と
をさらに具備する冷却装置。 - 請求項5に記載の冷却装置であって、
前記薄膜層は、銅またはシリコンでなり、
前記接合層は、熱可塑性樹脂でなる
冷却装置。 - 請求項5に記載の冷却装置であって、
前記薄膜層は、シリコン、または、イオン注入により改質されたアルミニウムでなり、
前記接合層は、アルカリガラスでなる
冷却装置。 - 表面と、前記表面に形成され液体を通過させる液体流路を構成する溝と、前記表面に形成され気体を通過させる気体流路を構成する溝とを有する第1の基板と、
前記表面と対向する面と、前記面を貫通するように形成された第1の孔及び第2の孔とを有し、フッ素樹脂でなり、前記第1の基板に接合される第2の基板と、
前記液体流路の前記液体を導入して気化するウィックを構成する溝を有し、フッ素樹脂よりも熱伝導率が高い材料でなり、前記第1の孔に組み込まれた第3の基板と、
前記気体流路から導入された前記気体を液化するコンデンサを構成する溝を有し、前記第2の孔に組み込まれた第4の基板と
を具備する冷却装置。 - フラッシュメモリとドライバとを有するカード型の記憶媒体が着脱可能な電子機器装置であって、
前記記憶媒体が着脱可能なスロットと、
表面と、前記表面に形成され液体を通過させる液体流路を構成する溝と、前記表面に形成され気体を通過させる気体流路を構成する溝とを有し、フッ素樹脂でなる第1の基板と、前記表面と対向する面と、前記面を貫通するように形成された第1の孔及び第2の孔とを有し、フッ素樹脂でなり、前記第1の基板に接合される第2の基板と、前記液体流路の前記液体を導入して、前記ドライバの熱により前記液体を気化するウィックを構成する溝を有し、前記第1の孔に組み込まれた第3の基板と、前記気体流路から導入された前記気体を液化するコンデンサを構成する溝を有し、前記第2の孔に組み込まれた第4の基板とを含み、前記スロットに近接するように配置された冷却装置と
を具備する電子機器装置。 - 表示部と、
前記表示部を駆動するドライバと、
表面と、前記表面に形成され液体を通過させる液体流路を構成する溝と、前記表面に形成され気体を通過させる気体流路を構成する溝とを有し、フッ素樹脂でなる第1の基板と、前記表面と対向する面と、前記面を貫通するように形成された第1の孔及び第2の孔とを有し、フッ素樹脂でなり、前記第1の基板に接合される第2の基板と、前記液体流路の前記液体を導入して、前記表示部または前記ドライバの熱により前記液体を気化するウィックを構成する溝を有し、前記第1の孔に組み込まれた第3の基板と、前記気体流路から導入された前記気体を液化するコンデンサを構成する溝を有し、前記第2の孔に組み込まれた第4の基板とを含み、前記表示部または前記ドライバに近接するように配置された冷却装置と
を具備する表示装置。 - 熱源と、
表面と、前記表面に形成され液体を通過させる液体流路を構成する溝と、前記表面に形成され気体を通過させる気体流路を構成する溝とを有し、フッ素樹脂でなる第1の基板と、前記表面と対向する面と、前記面を貫通するように形成された第1の孔及び第2の孔とを有し、フッ素樹脂でなり、前記第1の基板に接合される第2の基板と、前記液体流路の前記液体を導入して、前記熱源からの熱により前記液体を気化するウィックを構成する溝を有し、前記第1の孔に組み込まれた第3の基板と、前記気体流路から導入された前記気体を液化するコンデンサを構成する溝を有し、前記第2の孔に組み込まれた第4の基板とを含み、前記熱源に近接するように配置された冷却装置と
を具備する電子機器装置。 - フッ素樹脂でなる第1の基板の表面に、液体を通過させる液体流路を構成する溝と、気体を通過させる気体流路を構成する溝とを形成し、
フッ素樹脂でなる第2の基板の、前記表面と対向する面を貫通するように、第1の孔及び第2の孔を形成し、
前記液体流路から液体を導入して気化するウィックを構成する溝を有する第3の基板を形成し、
前記気体流路から導入された前記気体を液化するコンデンサを構成する溝を有する第4の基板を形成し、
前記第1の孔及び前記第2の孔に、前記第3の基板及び前記第4の基板をそれぞれ組み込み、
前記第1の基板の前記表面と、前記第2の基板の前記面とを接合する
冷却装置の製造方法。 - 請求項12に記載の冷却装置の製造方法であって、
前記第3の基板は、フッ素樹脂よりも熱伝導率の高い材料でなる冷却装置の製造方法。 - 請求項13に記載の冷却装置の製造方法であって、
前記第4の基板は、金属、又はシリコンでなる冷却装置の製造方法。 - 請求項12に記載の冷却装置の製造方法であって、
前記第1の基板に前記液体流路を構成する溝と前記気体流路を構成する溝とを形成する工程は、TIEGA(Teflon Included Etching Galvanicforming)プロセスにより、前記各溝をそれぞれ形成する冷却装置の製造方法。 - 請求項12に記載の冷却装置の製造方法であって、
前記第2の基板に前記第1の孔及び前記第2の孔を形成する工程は、TIEGA(Teflon Included Etching Galvanicforming)プロセスにより、前記各孔をそれぞれ形成する冷却装置の製造方法。 - 請求項12に記載の冷却装置の製造方法であって、
前記第1の基板の前記表面と、前記第2の基板の前記面とを接合する工程は、
前記表面及び前記面にそれぞれ薄膜層を形成し、
前記各薄膜層の間に、熱可塑性樹脂でなる接合層を挟みこんで熱圧着する
冷却装置の製造方法。 - 請求項17に記載の冷却装置の製造方法であって、
前記薄膜層を形成する工程は、FCVA(Filtered Cathodic Vacuum Arc)法により銅、またはシリコンでなる薄膜層を形成する冷却装置の製造方法。 - 請求項12に記載の冷却装置の製造方法であって、
前記第1の基板の前記表面と、前記第2の基板の前記面とを接合する工程は、
前記表面及び前記面にそれぞれ薄膜層を形成し、
前記各薄膜層のいずれか一方に接合層を形成して陽極接合する
冷却装置の製造方法。 - 請求項19に記載の冷却装置の製造方法であって、
前記薄膜層を形成する工程は、前記表面及び前記面に形成されたアルミニウムを、イオン注入法により改質する冷却装置の製造方法。
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