JP4177545B2 - フラップの試験装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飛行機の主翼に設けられたフラップに荷重を加えて強度を試験するフラップの試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
飛行機の主翼にスパン方向に分布する荷重を入力して荷重負荷試験を行う装置が、特開平8−159938号公報により公知である。このものは、主翼の下面側に上下動可能な多数の可動電磁石プローブをスパン方向に整列して配置するとともに、主翼の上面側に前記各々の可動電磁石プローブに対応する多数の固定電磁石プローブを配置し、固定電磁石プローブに吸引された可動電磁石プローブで主翼の下面を上向きに押圧してスパン方向に任意の荷重分布を与えるようになっている。
【0003】
また従来のフラップの静荷重試験は、フラップの上に砂袋等のウエイトを載置して空力荷重を模した荷重を与え、フラップの各部の歪みを歪みゲージで測定することにより行っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のフラップの静荷重試験方法は、作業者の人力によりフラップ状態(格納、離陸、巡航、着陸)の変更と、それに応じた空力荷重用のウエイトの着脱とを行わなければならないので大きな労力が必要であるばかりか、荷重の作用方向や荷重の大きさを精密に調整することができないため、フラップに実際に作用する空力荷重を正確に再現することができず、精度の高い試験を行うことが困難であった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、実際の空力荷重を正確に再現す荷重をフラップに入力して精密な荷重試験や耐久試験を行えるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、飛行機の主翼に設けられたフラップに荷重を加えて強度を試験するフラップの試験装置であって、フラップを所定の下げ位置に駆動するフラップ作動手段と、フラップに所定の荷重を入力する荷重入力手段と、フラップの下げ位置に追従するように荷重入力手段を移動させる移動手段と、フラップを予め設定した下げ位置に駆動すべくフラップ作動手段の作動を制御するとともに、フラップにその下げ位置に応じた荷重を加えるべく荷重入力手段および移動手段の作動を制御する制御手段と、下げ位置に応じたフラップの各部の歪みを検出する歪み検出手段とを備えたことを特徴とするフラップの試験装置が提案される。
【0007】
上記構成によれば、フラップ作動手段でフラップを所定の下げ位置に駆動するとともに、移動手段で前記下げ位置に追従するように移動させた荷重入力手段でフラップに前記下げ位置に応じた荷重を加えながら、歪み検出手段でフラップの各部の歪みを検出するので、フラップの下げ位置に応じた大きさおよび方向の荷重を加えて実際の空力荷重を正確に再現し、精密な荷重試験や耐久試験を自動で行うことができる。
【0008】
尚、実施例の第1油圧シリンダ17は本発明のフラップ作動手段に対応し、実施例のXYテーブル19は本発明の移動手段に対応し、実施例の第2油圧シリンダ21は本発明の荷重入力手段に対応し、実施例の制御用コンピュータ33は本発明の制御手段に対応し、実施例の歪みゲージ56は本発明の歪み検出手段に対応する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図3は本発明の一実施例を示すもので、図1はフラップ試験装置の全体構成を示す図、図2は図1の2方向矢視図、図3はフラップ試験装置の制御系のブロック図である。
【0011】
図1および図2には、飛行機の主翼11の後縁に設けられたスロッテッドフラップ12の静荷重試験、動荷重試験および耐久試験を行うためのフラップ試験装置が示される。フラップ12は架台13に支持された飛行機の主翼11の後縁に3個のリンク機構14,15,16を介して支持されており、第1油圧シリンダ17によって後下方に向かって展開するようになっている。フラップ12は、例えば下げ角が0°の格納位置と、下げ角が20°の離陸位置と、下げ角が35°の着陸位置とにおいて停止可能である。尚、図1では第1油圧シリンダ17がフラップ12から離れた位置に示されているが、実際には第1油圧シリンダ17はフラップ12の近傍の主翼11内に設けられている。
【0012】
架台13の上方を囲む門型のフレーム18に設けられたXYテーブル19は、X軸方向(主翼11の翼弦方向)およびY軸方向(上下方向)に移動自在な第2油圧シリンダ支持部20を備えており、この第2油圧シリンダ支持部20に第2油圧シリンダ21がピン22を介して枢支される。第2油圧シリンダ21の出力ロッド21aをフラップ12に連結するトーナメントバー23は、出力ロッド21aに接続された第1バー24と、第1バー24の一端にロッド25を介して接続された第2バー26と、第1バー24の他端にロッド27を介して接続された第3バー28と、第2バー26の両端をフラップ12に接続する2本のロッド29,30と、第3バー28の両端をフラップ12に接続する2本のロッド31,32とから構成される。
【0013】
制御用コンピュータ33はCPU34と、D/Aコンバータ35と、A/Dコンバータ36とを備えており、CPU34はD/Aコンバータ35を介して第1油圧シリンダ17の第1油圧制御装置37と、第2油圧シリンダ21の第2油圧制御装置38と、XYテーブル19のXYテーブル制御装置39とに接続される。
【0014】
油圧ポンプ40と第1油圧シリンダ17とが電磁弁41を介して接続されており、電磁弁41の作動が第1油圧制御装置37により制御される。第1油圧シリンダ17に設けた変位計42およびロードセル43からの信号が、第1油圧制御装置37およびA/Dコンバータ36を経て制御用コンピュータ33のCPU34に入力される。油圧ポンプ40と第2油圧シリンダ21とが電磁弁44を介して接続されており、電磁弁44の作動が第2油圧制御装置38により制御される。第2油圧シリンダ21に設けた変位計45およびロードセル46からの信号が、第2油圧制御装置38およびA/Dコンバータ36を経て制御用コンピュータ33のCPU34に入力される。
【0015】
XYテーブル制御装置39はXYテーブル19のX軸駆動モータ47およびY軸駆動モータ48の作動を制御し、X軸方向の変位計49およびY軸方向の変位計50からの信号がXYテーブル制御装置39およびA/Dコンバータ36を経て制御用コンピュータ33のCPU34に入力される。また制御用コンピュータ33にはプリンター51が接続される。
【0016】
制御用コンピュータ33のCPU34に接続された計測用コンピュータ52はCPU53とSCSI54とを備える。歪み測定器55にはフラップ12の各部材に取り付けられた歪みゲージ56からの信号がブリッジボックス57を介して入力され、歪み測定器55の出力はSCSI54を介して計測用コンピュータ52のCPU53に入力される。
【0017】
次に、上記構成を備えた本発明の実施例の作用について説明する。
【0018】
図1および図3に示すように、制御用コンピュータ33にはフラップ12の作動シーケンスと、フラップ12の各作動位置において加えられる荷重の大きさと、フラップ12の各作動位置に対応したXYテーブル19の位置(前記荷重の入力方向)とが予め記憶されている。制御用コンピュータ33からの指令で第1油圧制御装置37が電磁弁41を制御すると、油圧ポンプ40からの作動油が第1油圧シリンダ17に供給され、フラップ12が所定の下げ位置に移動する。これと同時に制御用コンピュータ33からの指令でXYテーブル19が作動して第2油圧シリンダ21の位置を移動させ、第2油圧シリンダ21からフラップ12に入力する荷重の方向を設定するとともに、第2油圧シリンダ21が作動してフラップ12に所定の荷重を入力する。第2油圧シリンダ21の出力はトーナメントバー23(図2参照)を介してフラップ12のスパン方向の4か所に入力されるが、第1、第2および第3バー24,26,28のアーム比を適宜設定することにより、飛行中にフラップ12に加わる実際の空力荷重を模した荷重分布を再現することができる。
【0019】
静荷重試験を行うには、第1油圧シリンダ17で予め設定した所定の下げ角にフラップ12を作動させて停止させ、XYテーブル19および第2油圧シリンダ21によって予め設定した所定の方向および大きさの荷重をフラップ12に入力する。そしてフラップ12の各部の変形に伴う複数の歪みゲージ56の出力をブリッジボックス57を介して歪み測定器55に入力し、歪み測定器55で算出したフラップ12の各部の歪みを計測用コンピュータ52に入力する。
【0020】
動荷重試験を行うには、第1油圧シリンダ17で予め設定したシーケンスに応じてフラップ12を所定の下げ角に作動させながら、XYテーブル19および第2油圧シリンダ21によって予め設定したシーケンスに応じて所定の方向および大きさの荷重をフラップ12に入力し、前記荷重によって発生する歪みゲージ56の出力をブリッジボックス57を介して歪み測定器55に入力する。
【0021】
耐久試験を行うには、フラップの格納(無負荷)、離陸、巡航、着陸、フラップの格納(無負荷)を1サイクルとするシーケンスで第1油圧シリンダ17によりフラップ12を駆動する。例えば、離陸時にフラップは格納位置から下げ角20°の位置まで下げられ、離陸の終了後に格納位置に戻されて巡航に移行し、着陸時に下げ角35°の位置まで下げられ、着陸の終了後に格納位置に戻される。上記シーケンスの過程でXYテーブル19および第2油圧シリンダ21によって予め設定した方向および大きさの荷重をフラップ12に入力し、前記荷重によって発生する歪みゲージ56の出力を歪み測定器55に入力する。
【0022】
歪み測定器55が出力するフラップ12の歪みデータに加えて、変位計42,45で検出した第1、第2油圧シリンダ17,21の変位データと、ロードセル43,46で検出した第1、第2油圧シリンダ17,21の荷重データと、変位計49,50で検出したXYテーブル19の変位データとは、計測用コンピュータ52においてリアルタイムでグラフ化され、制御用コンピュータ33に接続されたプリンター51からプリントアウトされる。
【0023】
以上のように、1台のフラップ試験装置においてフラップ12の静荷重試験、動荷重試験および耐久試験を自動で行うことができるので、作業者の労力を大幅に軽減することができる。特に、動荷重試験および耐久試験において、フラップ12の下げ位置や飛行状態に応じて変化する空力荷重の大きさおよび方向を、時間の経過に応じた任意のシーケンスでフラップ12に入力することができるので、実際の飛行状態を精密にシミュレートして精度の高い試験を行うことができる。
【0024】
上述した各試験の実行中に以下の▲1▼,▲2▼,▲3▼,▲4▼の何れかの事態が発生した場合には、計測用コンピュータ52から制御用コンピュータ33を経て第1油圧制御装置37、第2油圧制御装置38およびXYテーブル制御装置39に停止命令が送られ、XYテーブル19がそのときの位置で停止するとともに、第1油圧シリンダ17および第2油圧シリンダ21への油圧の供給が停止する。これにより、フラップ12やフラップ試験装置が過剰な負荷により損傷するのを未然に回避することができる。
▲1▼ 歪みゲージ56で検出したフラップ12の各部の実歪みが、計測用コンピュータ52に予め記憶した基準歪みを越えた場合
▲2▼ 変位計42で検出した第1油圧シリンダ17の変位あるいはロードセル43で検出した第1油圧シリンダ17の荷重が、計測用コンピュータ52に予め記憶した基準変位あるいは基準荷重を越えた場合
▲3▼ 変位計45で検出した第2油圧シリンダ21の変位あるいはロードセル46で検出した第2油圧シリンダ21の荷重が、計測用コンピュータ52に予め記憶した基準変位あるいは基準荷重を越えた場合
▲4▼ 変位計49,50で検出したXYテーブル19の変位が計測用コンピュータ52に予め記憶した基準変位を越えた場合
上記▲1▼,▲2▼,▲3▼,▲4▼の異常事態以外にも、以下のような場合に第1油圧シリンダ17、第2油圧シリンダ21の作動およびXYテーブル19の作動が停止する。即ち、第1油圧制御装置37、第2油圧制御装置38およびXYテーブル制御装置39にはリミッターが設けられており、これらのリミッターの何れかが作動すると第1油圧シリンダ17、第2油圧シリンダ21およびXYテーブル19の作動が強制的に停止して2重の安全装置が構成される。
【0025】
例えば、第1油圧制御装置37、第2油圧制御装置38にはフラップの前記基準歪みに対応する第1油圧シリンダ17および第2油圧シリンダ21の基準荷重および基準変位と、これら基準荷重および基準変位よりも高く設定された限界荷重および限界変位とが記憶されており、第1油圧シリンダ17および第2油圧シリンダ21の実荷重および実変位の少なくとも一方が前記限界荷重および限界変位を越えると、第1油圧制御装置37、第2油圧制御装置38によって第1油圧シリンダ17および第2油圧シリンダ21の作動が強制的に停止する。
【0026】
同様に、XYテーブル制御装置39にはフラップに追従するように予め記憶されたXYテーブル19の基準変位よりも高く設定された限界変位が記憶されており、XYテーブル19の実変位が前記限界変位を越えると、XYテーブル制御装置39によってXYテーブル19の作動が強制的に停止する。
【0027】
従って、前記▲1▼,▲2▼,▲3▼,▲4▼による停止命令が何らかの理由で作動しないような場合でも、第1油圧制御装置37、第2油圧制御装置38あるいはXYテーブル制御装置39に設けられた停止装置の何れかが作動すれば第1油圧シリンダ17、第2油圧シリンダ21およびXYテーブル19の作動を強制的に停止させることができ、安全性が向上する。
【0028】
尚、本発明のフラップ試験装置において、計測用コンピュータ52から制御用コンピュータ33を介して第1油圧制御装置37、第2油圧制御装置38およびXYテーブル制御装置39に保持命令を出し、第1油圧シリンダ17および第2油圧シリンダ21の油圧を保持し、またXYテーブル19をその位置で停止させることも可能である。この場合、フラップ12やフラップ試験装置の変形、損傷等の異常の有無を確認した後、異常がなければ試験を再開して続行することができる。
【0029】
以上のように、フラップ12に人手で砂袋を乗せて荷重を加える等の面倒な作業を必要とすることなく、静荷重試験、動荷重試験および耐久試験を共通のフラップ試験装置を用いて自動で行うことができるので、作業性が大幅に向上するだけでなく精度の高い試験を行うことができ、しかもフラップ12やフラップ試験装置が破損する前に試験を中断することができるので、それらを繰り返し使用することが可能となってコストの削減に寄与することができる。特に、従来は困難であった動荷重試験および耐久試験が可能になったので、離陸時や着陸時にフラップ12に作用する空力荷重の経時的変化を精密にシミュレートすることができるだけでなく、多数の飛行回数に対する耐久性を少ない労力で短時間で評価することができる。その結果、フラップ12の強度を不必要に高めることなく必要な強度を確保し、機体重量を軽減して飛行性能を高めるとともに燃料消費量の節減に寄与することができる。
【0030】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は前記実施例に限定されるものでなく、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0031】
例えば、実施例では制御用コンピュータ33および計測用コンピュータ52を別個に設けているが、それらを1台のコンピュータに統合することも可能である。また実施例では、リンク機構14,15,16に支持されて後退しながら下降するスロッテッドフラップ12を例示したが、本発明は単純フラップ、スプリットフラップ、ファウラーフラップ、ザップフラップ、クルーガフラップ等の他種のフラップに対しても適用することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、フラップ作動手段でフラップを所定の下げ位置に駆動するとともに、移動手段で前記下げ位置に追従するように移動させた荷重入力手段でフラップに前記下げ位置に応じた荷重を加えながら、歪み検出手段でフラップの各部の歪みを検出するので、フラップの下げ位置に応じた大きさおよび方向の荷重を加えて実際の空力荷重を正確に再現し、精密な荷重試験や耐久試験を自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フラップの試験装置の全体構成を示す図
【図2】図1の2方向矢視図
【図3】フラップの試験装置の制御系のブロック図
【符号の説明】
11 主翼
12 フラップ
17 第1油圧シリンダ(フラップ作動手段)
19 XYテーブル(移動手段)
21 第2油圧シリンダ(荷重入力手段)
33 制御用コンピュータ(制御手段)
56 歪みゲージ(歪み検出手段)
Claims (1)
- 飛行機の主翼(11)に設けられたフラップ(12)に荷重を加えて強度を試験するフラップの試験装置であって、
フラップ(12)を所定の下げ位置に駆動するフラップ作動手段(17)と、
フラップ(12)に所定の荷重を入力する荷重入力手段(21)と、
フラップ(12)の下げ位置に追従するように荷重入力手段(21)を移動させる移動手段(19)と、
フラップ(12)を予め設定した下げ位置に駆動すべくフラップ作動手段(17)の作動を制御するとともに、フラップ(12)にその下げ位置に応じた荷重を加えるべく荷重入力手段(21)および移動手段(19)の作動を制御する制御手段(33)と、
下げ位置に応じたフラップ(12)の各部の歪みを検出する歪み検出手段(56)と、
を備えたことを特徴とするフラップの試験装置。
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