JP4175624B2 - 重金属溶出抑制剤の注入制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キレート系薬剤、又はリン酸系薬剤等の重金属溶出抑制剤の薬剤注入制御に係り、特に、飛灰もしくは活性炭等の炭化物を含有する飛灰などの被処理物からの重金属の溶出を抑制するのに必要な重金属溶出抑制剤の注入量を制御する薬剤注入制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開2002−59126号公報
一般廃棄物、産業廃棄物、下水処理場の汚泥、し尿処理場の廃棄物などの処理には、減量の点から焼却処理が不可欠である。これらの廃棄物を焼却処理する際には、ゴミ焼却炉等の各種焼却炉から飛灰が発生するが、この飛灰には、鉛、カドミウム等の人体に有害な重金属類が高濃度に含有されており、作業環境を悪化させ、作業員の健康上の問題を引起す可能性がある。また、これらは雨水等の環境水と接触すると溶出を引起し、土壌や地下水、河川、海水等を汚染する。
そのため、飛灰は、特別管理産業廃棄物に指定されており、以下のような廃棄物処理方法を施した後、廃棄することが義務付けられている。
(1)酸その他の溶媒によって、重金属類を安定化する方法。
(2)重金属類を含む飛灰を溶融固化する方法。
(3)重金属類を含む飛灰をセメントで固化する方法。
(4)重金属類を含む飛灰を薬剤で処理する方法。
上記のうち、(3)、(4)の方法が近年実用化されている。
【0003】
重金属溶出抑制剤としては、キレート系薬剤が挙げられる。具体的には、ジチオカルバミン酸及びその塩、ジエチルジチオカルバミン酸及びその塩、エチレンビスジチオカルバミン酸等の脂肪族ポリジチオカルボキシル基をN置換基として導入したポリアミン誘導体、ポリエチレンイミンにジチオカルボキシル基をN置換基として導入したポリエチレンイミン誘導体、チオール等の硫黄化合物が知られている。
また、重金属溶出抑制剤としては、正リン酸、又はリン酸金属塩等を含有するリン酸系薬剤、珪酸金属塩等を含有する珪酸系薬剤が挙げられる。
重金属類には、鉛、カドミウム、水銀、6価クロム等が挙げられ、それぞれ埋立基準値が定められており、重金属を含有する被処理物に薬剤処理等を施し、定められている埋立基準値未満として排出する必要がある。
これらの重金属溶出抑制剤の必要添加量を決定するには、机上試験にて飛灰に重金属溶出抑制剤を加えて処理を施し、さらに法律の定める方法(環境庁告示第13号)で重金属類を溶出させ、溶出濃度の測定を行い、重金属溶出抑制剤の注入量を決定する手法がとられている。
【0004】
このような薬剤処理において、薬剤コストを抑えた上で、重金属の溶出を確実に防止するために、薬剤を過不足無く適正な添加量となるように添加することが重要である。
一般的には、飛灰の性状に関して過剰気味に薬剤添加率を設定するか、薬剤を添加混練り処理した後に、環境庁告示13号試験法に定める溶出試験法に従い、重金属類の溶出濃度を測定し、最適添加量を決定する手法が採用されている。
一方、飛灰の成分ないし性状は、焼却炉の運転条件、及び焼却物の種類により大きく変動するので、飛灰の性状が変動する毎に上述の試験を行うのは容易ではない。そのため、飛灰の性状変動に合わせた適正な薬剤処理を行うことは困難である。
また、薬剤添加率過剰によるランニングコストの増大、薬剤不足による未処理重金属の溶出が起こり、迅速かつ簡易に薬剤添加率を求める方法が求められていた。
【0005】
薬剤注入制御として、酸化還元電位計(ORP計)を用いた方法が提案されている。ORP計は、白金電極と参照電極の間に生じた電位を測定するものであり、対象物の酸化性や還元性の指標として用いられている。
ORP計は、酸化性や還元性の強い物質が高濃度に存在する状態では、良い指標となるが、pHや塩濃度の影響を受けやすく、飛灰の溶出液やスラリーなど、塩濃度が高くかつ還元性の弱い対象物には、十分に酸化還元状態を検知することができない。
また、活性炭を含む飛灰のスラリー中でORP計を用いると、ORP計はノイズを拾い、電位は安定しない。
以上の理由より、飛灰等を対象とする重金属溶出抑制剤の薬剤注入率制御に関しては、薬剤の注入率を増加させても酸化還元電位の変化が不十分で、注入制御には困難であるという問題があった。
他に薬剤注入制御方法として、pHを測定する方法が提案されている。
【0006】
キレート系薬剤に関しては、飛灰と液体キレート剤を水に混合して得られた溶液の酸化還元電位(ORP)及びpHを測定し、この測定結果に基づいて、液体キレート剤の必要添加量を求める方法が提案されているが、この方法ではORP計とpH計の併用が必要であり、判定が煩雑であった。
また、リン酸系薬剤に関しては、薬剤を添加して得られた処理灰に対し、処理灰と水とを加温条件下に混合し、得られた溶液のpHを測定する薬剤処理効果の予測方法が提案されている。
しかし、加温する必要があり、煩雑である点、対象となる重金属の含有量の変動に対応できない等の問題があった。
また、ORP計を用いて、薬剤添加時に生じる電位変化にのみ着目して、薬剤注入制御が行われている。しかし、電極表面に付着物が生成した際、また長期使用時に電極の感度が劣化し、電位のずれや誤差が生じやすかった。そのため、所定量の薬剤を注入した際の設定電位にずれが生じ、飛灰処理に適切な薬剤注入率を制御するには不十分であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、飛灰の薬剤処理における重金属溶出抑制剤の必要添加量を容易かつ迅速に求めることができ、これにより適切な薬剤処理を行うことを可能とする重金属溶出抑制剤の薬剤注入制御方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、重金属を含有する被処理物から重金属の溶出を防止するに際し、該重金属を含有する被処理物と水とのスラリーを調製し、該スラリー中に、塩化銀電極又は甘こう電極からなる参照電極と測定する重金属のイオンに感応するイオン電極を挿入し、重金属溶出抑制剤を添加しながら該電極間に生じる電位の経時変化を測定し、電位と時間の接線を導き、その接線の傾きより薬剤注入量を決定するか、薬剤添加後設定時間までの電位変動により薬剤注入量を決定するか、又は、電位が安定するまでの時間により薬剤注入量を決定することにより、重金属溶出抑制剤の注入量を決定することを特徴とする薬剤注入制御方法としたものである。
前記制御方法において、イオン電極は、鉛イオン電極である。
【0009】
また、スラリーへの薬剤注入量から実際の装置への注入量を決定する手段として、該スラリーに注入した薬剤注入量と、実際の装置で混練処理した際に必要だった薬剤の注入量の比を、予め経験値として求めておき、上記方法から得たスラリーへの薬剤注入量決定値に経験値を掛けて、混練装置への注入量を決定する方法が挙げられている。
【0010】
被処理物は、焼却灰、特に焼却飛灰(飛灰)が挙げられ、また活性炭等の炭化物の吸着剤を含む飛灰などを対象にすることができる。
本発明に適用できる重金属溶出抑制剤としては、キレート系薬剤などの有機系薬剤、リン酸系薬剤、珪酸系薬剤などの無機系薬剤などが挙げられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、重金属溶出抑制剤を加えて重金属の溶出を抑制するにあたり、確実に溶出抑制することのできる必要最小限の重金属溶出抑制剤の注入量を決定する方法について検討した。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に示す。
本発明では、電位測定の測定値に基づいて、重金属溶出抑制剤の注入量を決定する演算の方法として、以下の4つの方法が挙げられる。
(1)重金属溶出抑制剤無添加時の測定する重金属のイオンに感応するイオン電極と参照電極間の電位を基準とし、一定量ずつ間欠的に薬剤を注入した際に薬剤注入により生じる基準との電位変化量を読み取り、変化していた電位変化量が一定になる変曲点での薬剤注入量をスラリーへの注入量とする決定方法。
【0012】
(2)無添加時の電位を基準とし、薬剤を間欠的に注入した際に生じる基準との電位変化量を読み取り、電位変化量が極小点を持つときの注入量をスラリーへの注入量とする決定方法。
また、電位の経時変化を読み取る手段は、重金属溶出抑制剤を注入直後に、測定する重金属のイオンに感応するイオン電極と参照電極間の電位が著しく低下し、その後定常状態に達する現象に着目したものである。具体的には、
(3)薬剤を一定量ずつ間欠的に注入しながら電位の経時変化を読み取り、薬剤注入後に電位が一時低下してから電位が安定するまでの時間を測定し、その時間が設定時間より短くなったときの注入量をスラリーへの注入量とする決定方法。
(4)薬剤を一定量ずつ間欠的に注入しながら電位の経時変化を読み取り、電位と時間の接線を導き、その接線の傾きが一定値より小さくなった時の薬剤注入量をスラリーへの注入量とする決定方法。
【0013】
次に、本発明における重金属溶出抑制剤の注入量の決定方法及び装置について説明する 。
本発明は、飛灰などの被処理物中の有害重金属の溶出抑制処理において、測定する重金属のイオンに感応するイオン電極と参照電極の間に生じる電位より、被処理物に対する重金属溶出抑制剤の注入量を決定する飛灰の薬剤注入制御方法である。
参照電極は、市販のpH計やORP計に使われている塩化銀電極や甘こう電極である。
測定する重金属のイオンに感応するイオン電極は、JIS・K0122によると、溶液中の重金属のイオンの活量に応答し、電位を発生する電極である。発生する電位は、参照電極を対極としたときにイオン電極で測定される電位である。具体的には、鉛イオン電極 、カドミウムイオン電極、銅イオン電極等の陽イオン電極、塩化物イオン電極、硫化物イオン電極等の陰イオン電極などが挙げられる。
【0014】
イオン電極と参照電極に電導性を有する金属線、例えば銅線を取付け、それぞれの端を電位計又は電圧計、市販の記録計、pH計の端子に接続することにより、本発明の検出部が完成する。この検出部の電位を読取り、薬剤の注入量を制御する。
イオン電極以外の白金以外の材質により構成された電極として、金属硫化物や金属酸化物などの金属化合物及びそれらの混合物、ガラス電極、液体膜電極、プラスチック膜電極、溶存ガス感応電極などが挙げられる。
具体的には、硫化銀、硫化鉛、硫化カドミウム、酸化銅、及びそれらの混合物、ニッケル、チタン、クロム、金、銀、鉛、ガラス等が挙げられ、イオン電極と同様に電位を読み取り、薬剤の注入量を制御する。
【0015】
本発明における飛灰処理用重金属溶出抑制剤の注入量決定方法は、以下の過程を必要とする。
(1)飛灰と水とを別々に秤量して、スラリーを調製する手段
(2)該スラリーに、重金属溶出抑制剤を注入しながら、白金以外の材質で構成される電極、望ましくはイオン電極と参照電極間の電位を測定する手段、
(3)(2)で測定した電位により、薬剤スラリーへの薬剤注入率を決定する手段、
(4)スラリーの薬剤注入量から実際の装置での注入量を決定する手段。
【0016】
まず、(1)のスラリー調製方法について説明する。
灰ホッパー、もしくは灰処理装置入口部から採取した重金属含有灰を秤量し、重金属含有灰10重量部と、水50〜500重量部、好ましくは80〜120重量部とを混合し、灰の水スラリーを調製する。
スラリーは、スターラー又は撹拌機等の撹拌装置で撹拌しておくことが望ましい。撹拌条件によっても、電位が安定するまでの時間が異なってくる。
撹拌条件は、回転数50rpm〜500rpm、望ましくは100rpm〜300rpmがよい。50rpm未満では、被処理物が沈殿し、均一なスラリーを調製するのが難しい。また、500rpmを超えると、撹拌によってスラリーが飛び散り、電位にぶれが生じてしまうため好ましくない。
【0017】
(2)の電位測定方法について、
先の過程で調製したスラリーにイオン電極などの白金以外の材質から構成された電極と参照電極を挿入し、薬剤無添加時に2本の電極間に生じる電位を測定する。
続いて、スラリーに重金属溶出抑制剤を所定量ずつ間欠的に又は連続で注入し、電位変化、つまりは電位変化量又は電位の経時変化を読み取り、重金属溶出抑制剤の注入による電位変化を測定する。図1に、電位の経時変化と電位変化量の図を示す。
この際、重金属溶出抑制剤は、原液のまま注入しても良いし、2〜100倍、好ましくは5〜20倍に希釈して注入してもかまわない。
電位は、ペンレコーダー、もしくはpH計の電位モード等による計測機器において測定することができる。
【0018】
(3)の重金属溶出抑制剤注入量決定方法について、
従来技術の白金電極、つまりORP計を用いた制御では、電位の変位が小さく制御に困難であった。一方、本発明による方法では、電位の変化が大きいため、以下に示すようないくつかの方法で重金属溶出抑制剤の注入量を見出すことができる。
前記(2)で測定した重金属溶出抑制剤注入による電位変化量もしくは電位の経時変化から、薬剤注入量を決定する方法について説明する。
【0019】
(3−1)電位変化量の変曲点における薬剤注入、
図2は、薬剤注入率と電位変化量の関係を示すグラフである。
白金以外の材質から構成される電極、特にイオン電極と参照電極間に生じる電位について、重金属溶出抑制剤が無添加時の電位を基準とし、薬剤添加により生じた電位変化量により薬剤の注入量を決定する薬剤注入制御方法においては、まず薬剤無添加時での電位の定常値を測定する。薬剤を所定量ずつ、飛灰の重量当り0.1%以上、望ましくは0.5から1.0%ずつ間欠的に注入し、電位が定常に達した値を測定し、電位変化量を測定する。
薬剤注入後、電位は一時的に大きく低下し、その後定常に達する。この一時的電位低下の原因は、以下の点が考えられる。
▲1▼薬剤注入により生じる電位変化。
▲2▼薬剤と重金属類との反応により生じる電位変化。
▲3▼スラリー中に含有される重金属類を除く成分の、平衡移動等により生じる電位変化。
【0020】
一時的に低下した電位が安定し、5秒以上、望ましくは10秒以上一定値を採れば電位が定常になったと見なすことにする。
薬剤の注入量と電位変化量を測定すると、薬剤注入が重金属の溶出抑制に不十分であると電位変化量が大きく、薬剤注入が満たされてくると電位変化量が小さくなる。
この電位変化量が、大から小へと変化する変曲点を示す薬剤注入量が重金属の溶出抑制を満たす、つまり、スラリーの重金属が、埋立基準値未満となる注入量とほぼ一致することを確認した。
具体的には、薬剤注入による電位変化量の差が、前注入時から0〜30mV、好ましくは5〜10mVとなった時の注入量を変曲点での注入量とみなし、つまりは重金属の溶出抑制を満たす注入量であると判断することができる。
このような操作を数回行い、注入量の平均値より求めても構わない。
【0021】
(3−2)設定電位変化量を予め定める方法、
図3は、電位変化量と薬剤注入率との関係を示すグラフである。
電位変化量により重金属溶出抑制剤の注入量を求める方法において、重金属溶出抑制剤を間欠的に注入しながら電位変化量を測定し、予め設定電位変化量を設定しておき、その設定電位変化量に達したときの薬剤注入量を、被処理物の重金属溶出抑制を満たす注入量とする方法である。
予め設定電位変化量を設定する方法において、同一現場において事前に採取した被処理物で、(3−1)の方法により重金属溶出が埋立て基準値を満たす注入量の設定電位変化量を求めておく。その際、複数回試行を行い、平均値をとっても構わない。
設定電位変化量を求めておいた同一現場の被処理物に関して注入量を決定する際、(3−1)と同一の方法で薬剤を間欠的に注入していき、設定電位変化量を満たした注入量をスラリーの重金属溶出抑制を満たす注入量として決定する。
【0022】
(3−3)極小点までの薬剤注入、
図4は、薬剤注入率と電位変化量の関係を示すグラフである。
この電位変化量より重金属溶出抑制剤の注入量を求める方法は、重金属溶出抑制剤、特に無機系薬剤のリン酸系薬剤など重金属溶出抑制剤注入によりpHが変化する場合に関して、適用することができる。
まず、(3−1)と同様に重金属溶出抑制剤を間欠的に注入し、電位が安定して5秒以上、好ましくは10秒以上一定値をとった際の定常値を測定する。
電位変化量は低下したのち、ある注入量を境に上昇に転じる、極小点を持つ。
電位変化量が低下する理由は、薬剤注入により対象重金属の濃度が減少することに依存する。また、電位変化量が上昇する理由は、pHが低下したことにより電位へ影響を与えたためである。
電位変化量の極小点での薬剤注入量が、重金属溶出を埋立基準値未満とする薬剤注入量と一致することを見出した。
このような操作を複数回行い、注入量の平均値を求めてもよい。
【0023】
(3−4)電位が定常に達するまでの時間で決定する薬剤注入、
図5は、電位が定常に達するまでの時間を説明する説明図である。
電位の経時変化による薬剤注入制御方法において、電位の経時変化を読み取り、電位が定常に達するまでの時間△tを測定する。電位が安定するまでの時間により薬剤注入量を決定する方法である。
電位が定常に達するまでの時間が変化する原因は以下の理由が考えられる。
(a) 薬剤注入後、スラリー全体が均一になるのにかかる時間。
(b) 重金属が薬剤と反応するのにかかる時間。
(c) 重金属を除く成分が平衡に達する時間。
【0024】
薬剤注入量が不十分であると、(a)、(b)、(c)に起因する時間がかかり、定常に達するまでの経過時間が長くなる。薬剤注入量が満たされると、定常に達するまでの時間の原因が(a)のみであり、薬剤注入時に電位が平衡に達するまでの時間が短くなる。
薬剤注入量が不十分では、電位が安定するまで60秒以上かかることもあり、また薬剤注入量が十分であると、注入後数秒で安定することもある。
電位が定常になるまでの経過時間により、薬剤注入量を決定する。
具体的には、定常に達するまでの時間が、20秒以内になれば、薬剤の注入量が十分であると決定できる。
【0025】
(3−5)接線の傾きを設定する薬剤注入、
図6は、接線の傾きによる薬剤注入を説明するための説明図である。
この方法は、電位の経時変化による重金属溶出抑制剤の注入量決定方法において、経時変化の記録より電位と時間の接線を導き、接線の傾きを求め、その傾きにより注入量を決定する方法である。
薬剤注入後、電位は一時的に大きく低下し、その後定常に達する。この原因は、次のように考えられる。
▲1▼薬剤注入により生じる電位変化。
▲2▼薬剤と重金属類との反応により生じる電位変化。
▲3▼スラリー中に含有される重金属類を除く成分の平衡移動等により生じる電位変化。
【0026】
薬剤の注入量と電位の関係を検討すると、薬剤注入量が重金属の溶出抑制に不十分であると、薬剤注入直後の電位が大きく変化し、薬剤注入量が満たされてくると薬剤注入直後の電位変化が小さくなる。
また、(3−4)に記述のように、電位が定常に達するまでの時間は、飛灰に対し重金属抑制のための薬剤注入が十分であれば短く、不十分であれば長くなる。
薬剤注入直後の電位の一時低下を制御に利用した方法は、従来技術でも述べたが、電極の表面状態により低下する電位は変化するので、連続で使用する際など電位のみで制御を行うのは好ましくない。
接線傾きにより注入量を制御する方法は、薬剤を間欠的に注入していく毎に接線の傾きを計算し、その接線傾きが設定した値よりも小さくなった注入量が、重金属溶出抑制を満たす注入量であると決定することができる。
【0027】
ここで、接線傾きにより、注入量を決定する方法について、図6を用いて具体的に説明する。
(2)の過程で測定された電位の経時変化は、ペンレコーダー、計測機器による電位の出力をパソコン等に表示したものでもかまわない。
接線傾きの求めかたは、図6の(イ)〜(ニ)に示すされる以下の4通りが考えられる。
▲1▼、図6の(イ)のように、重金属溶出抑制剤注入直後から電位が定常に達するまでの時間△tと、注入直後に低下した電位から定常に達した際の電位変化量△V(以下、経時電位変化量という)より、
(傾き)=(経時電位変化量△V)÷(定常に達するまでの時間△t)
の式より求めるものとする。
【0028】
▲2▼、図6の(ロ)のように、重金属溶出抑制剤注入直後から設定時間t’経過後までの経時電位変化量V’より、
(傾き)=(設定時間までの経時電位変化量V’)÷(設定時間t’)
の式より求めるものとする。
設定時間は、5〜60秒、好ましくは10〜30秒が望ましい。5秒未満であると、電位低下の影響が大きく、電極表面の状態によっては安定した制御が困難になる。60秒を超えると、既に電位が定常に達している可能性が高い。
▲3▼、図6の(ハ)のように、重金属溶出抑制剤注入後、ある経過時間T1からより長い経過時間T2までの経時電位変化量より求める方法である。T1、T2での電位をそれぞれVl、V2とすると、
(傾き)=(V2−V1)÷(T2−T1)
で求めることができる。
T1は、5〜60秒、好ましくは10〜30秒が望ましい。
T2は、60秒以下であることが望ましい。
(T2−T1)は30秒以下、望ましくは5〜15秒が望ましい。
【0029】
▲4▼、図6の(ニ)のように、重金属溶出抑制剤注入直後から設定時間dt経過後における電位dvの時間微分の値
(傾き)=dv/dt(t=t0)
で求めることができる。
設定時間は、5〜60秒、好ましくは10〜30秒が望ましい。設定時間における電位の時間微分値により、注入量が満たされているか評価する。
▲1▼〜▲4▼の方法において、接線の傾きが0.5mV/秒未満であれば重金属溶出抑制剤の注入量は十分である。
【0030】
(4)スラリーへの注入量から実際の灰処理装置への注入量を算出する方法、
実際の灰処理装置、つまり混練装置への重金属溶出抑制剤注入量と、スラリーにおける重金属溶出抑制剤の注入量が異なる。これは、スラリーの方が、重金属含有灰中の重金属と、重金属溶出抑制剤の反応が効率よく進行するし、また、実装置では、灰処理する際に加熱され、大気中のガスと吸収反応しやすいため、重金属溶出抑制剤の注入量が異なり、経験的に実装置の注入量がスラリーへの注入量より多くなる傾向にある。
前に記載したスラリーへの重金属溶出抑制剤の注入量から、混練装置への重金属溶出抑制剤の注入量を、実験室的に決定する方法を以下に示す。
混練り装置の手前で採取した灰への薬剤の注入量を実験室的に求め、この決定した注入量が、経験的に灰処理装置における注入量とすることができる。実験室的に注入量を求める一例として以下に示す。
【0031】
飛灰試料30gに加湿水30重量%加え、重金属溶出抑制剤を数通りの任意の注入率に振って添加し、約1分間混練し、1日間養生する。
得られた試料を、環境庁告示第13号の試験法により溶出濃度を測定する。溶出濃度が埋立基準値以下となる注入量を決定する。
前記で求めたスラリーにおける重金属溶出抑制剤の注入量と、実験室的に求めた実際の灰処理装置での注入量との比を求め、経験値とする。
スラリーで得られた薬剤注入量に前記の経験値を掛けることにより、灰処理装置、つまりは混練装置での薬剤注入量を求めることができる。
経験値は、0.5〜3.0、大部分が経験的に1.2〜1.8くらいになるため、スラリーで決定した注入量を0.5〜3倍、好ましくは1.2〜1.8倍することにより、実装置、つまり混練装置への注入量を求めることができる。
【0032】
さらに、本発明の装置ついて詳細を説明する。
本発明における重金属溶出抑制剤注入制御装置の概略図を図7に示す。
装置は、以下の手段及び装置、又は手段の一部からなる。
すなわち、被処理物と水とを別々に秤量する手段と、スラリーを調製する手段と、スラリーに重金属溶出抑制剤を間欠的かつ連続に添加する手段とを有する参照電極と白金以外の材質で構成された電極を備えた電位を測定する電位測定装置、
測定した電位変化量もしくは電位の経時変化より重金属溶出抑制剤の注入量を決定する手段、
決定した注入量から実装置に注入する注入量を決定する手段、
制御装置による制御状況をパソコン上、グラフィックパネル、又はプリンター等の印刷物に表示、記録する手段、
決定した注入量を被処理物中に注入する手段から構成される。
【0033】
まず、薬剤無添加時の飛灰を混練機手前よりサンプリングし、装置に送りこみ、装置内で飛灰に水を加えて均一になるまで混合、スラリーを調製する。次に該スラリーに重金属溶出抑制剤を間欠的に連続かつ添加する。
本発明の白金以外の材質からなる電極、望ましくはイオン電極と参照電極間の電位もしくは電位の経時変化を測定する。
このときの薬剤注入は、自動滴定装置で行われるのが望ましい。
電位や電位の経時変化の測定は、ペンレコーダーやpHやORPなど電位測定装置の内蔵プログラム、又は電位もしくは電位の経時変化を出力し、パソコンに変換するなどの方法がある。
スラリーでの重金属溶出抑制剤注入量を決定したのち、実装置に注入する量を決定する装置として、スラリー注入量の値を演算装置に転送し、演算装置で予め作成しておいた検量線の傾きや経験値の倍率から実装置への注入量を求める方法、又はパソコンに注入量の決定値を送り、その値よりパソコン上のプログラムで検量線傾き等を掛け、計算する方法がある。
【0034】
続いて、実装置への注入量をパソコンのディスプレー、もしくは印刷等で表記する。
実装置制御盤と接続できる場合は、実装置の薬剤注入装置に信号を送り、注入量を混練機に添加する手段を持合せても良い。
また、本方法は、灰処理装置、つまり混練機より排出された重金属含有処理灰に関しても、上記方法を同様に適用することができる。このフローの概略図を図8に示す。
混練装置よりサンプリングした処理物を粉砕後、水とのスラリーを調製する。その後の行程は前記図7と同様である。処理が不十分な場合は、新たに薬剤を注入して処理するもしくは混練機の注入量を増やすなどで対処することができる。
【0035】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下の実施例では、次ぎの飛灰、薬剤、電位測定により行った。
−供試飛灰A−
試験で用いた飛灰試料の代表例の組成分析結果、また、環境庁告示第13号試験法による有害重金属類溶出試験結果を表1に示した。
【表1】
【0036】
−供試飛灰B−
供給飛灰Aに、活性炭を飛灰100重量部当り5重量部加え、供給飛灰Bとした。
−使用薬剤−
重金属溶出抑制剤には、(株)荏原製作所製「アッシュクリーンC−350(ジチオカルバミン酸塩)」の10倍希釈液又は和光純薬(株)製、正リン酸(98%、試薬特級)の10倍希釈液を用いた。
【0037】
−薬剤添加による電位の測定−
供試飛灰についてイオン電極と参照電極の間に生じる電位及び添加量を以下の手順で求めた。
200mLのビーカーに供試飛灰10gと純水100mLを入れ、マグネチックスターラーで撹拌した。撹拌条件は、回転数200rpmとする。
撹拌後、イオン電極と参照電極の定常後の電位を測定し、この薬剤無添加時の電位を基準値とする。
次に、重金属溶出抑制剤を飛灰に対して0.1〜0.5重量%ずつ滴下し、滴下する毎に電位が10秒以上一定値をとった電位を測定する。薬剤注入により生じる基準値との電位の差(電位変化量)、及び重金属溶出濃度の測定を行った。
供試飛灰を混練り処理した対象物の、重金属溶出濃度を0.10mg/L以下とするのに必要な重金属溶出抑制剤添加量を環境庁告示13号の試験法により求めた。
【0038】
参考例1
イオン電極として、(a)鉛イオン電極、(b)カドミウムイオン電極を用い、参照電極に塩化銀電極を用いて、2本の電極間に生じる電位を上記の方法により測定し、試験を行った。重金属溶出抑制剤には、(株)荏原製作所製「アッシュクリーンC−350」の10倍希釈液を用いた。
また、薬剤注入量の決定は、電位変化量を測定する方法で決定した。
比較として、電極に白金電極(比較例1)を用いて参照電極との間の電位を測定し、参考例1と同様の試験を行った。
本発明による参考例1と比較例1で得られた重金属溶出抑制剤添加量とその時の電位、電位変化量、及びスラリーと混練処理後の重金属溶出濃度を、表2にまとめた。
【0039】
【表2】
【0040】
一比較一
比較例1のORP計では電位変動が小さく、またノイズも大きかったため、電位変化量の変曲点が現れず、薬剤添加量を見出すのは困難であった。
それに対し、参考例1の方法によると、電位変化量が大きくなり、電位変化量の変曲点が見られた。前注入量との電位変化量の差が10mV未満となった薬剤注入率2.0%において変曲点が生じた。また、注入量とスラリーの重金属溶出濃度が埋立基準未満となる注入量が一致した。
さらに、スラリーの重金属溶出濃度が、埋立基準未満になる薬剤注入量を1.25倍すると混練処理後の重金属溶出濃度が埋立基準以下になる薬剤添加率と一致した。
【0041】
参考例2
供試飛灰Bを用い、イオン電極の代表として鉛イオン電極を用いて参照電極との間に生じる電位を測定し、参考例1の方法で試験を行った。重金属溶出抑制剤には、前記の「アッシュクリーンC−350」の10倍希釈液を用いた。
比較として、イオン電極の代わりに白金電極(比較例2)を用いて参照電極との間の電位を測定し、実施例2と同様の試験を行った。
参考例2と比較例2で得られた重金属溶出抑制剤注入率とその時の電位、電位変化量、及びスラリーと練処理後の重金属溶出濃度を表3にまとめた。
【0042】
【表3】
【0043】
一比較一
比較例2のORP計ではノイズが大きく、電位を測定することが困難で電位変化量を求めることができず、薬剤注入量を決定するのは困難であった。
それに対し、参考例2の方法によると、電位変化量が大きくなり、電位変化量の変曲点が見られた。前注入量との電位変化量の差が10mV未満となった薬剤注入率2.0%において変曲点が生じた。また、注入量とスラリーの重金属溶出濃度が埋立基準未満となる注入量が一致した。
さらに、スラリーの重金属溶出濃度が埋立基準未満になる薬剤注入量を1.25倍すると、混練処理後の重金属溶出濃度が埋立基準以下になる薬剤添加率と一致した。
【0044】
参考例3
供試飛灰Aを用い、白金以外の材質からなる電極の代表として、鉛イオン電極を用い、参照電極に塩化銀電極を用いた。
重金属溶出抑制剤としては、リン酸系薬剤の代表として和光純薬(株)製、正リン酸(98%、試薬特級)の10倍希釈液を用いた。
比較とした、白金電極(比較例3)を用いて電位を測定し、参考例3と同様の試験を行った。
参考例3と比較例3で得られた重金属溶出抑制剤注入率とその時の電位、電位変化量、及びスラリーと混練処理後の重金属溶出濃度を表4にまとめた。
【0045】
【表4】
【0046】
一比較一
比較例3のORP計では電位が緩やかに上昇するだけであり、薬剤注入量を決定するような電位変化が見られず、注入量決定は困難であった。
それに対し、参考例3では、電位変化量の極小点における薬剤注入量が重金属溶出を抑制する注入量と決定する。
薬剤注入量が5.0%において、電位変化量が極小点を採り、またその注入量のときに、鉛のスラリー濃度が、埋立基準未満になり、電位変化量が極小点をとる薬剤注入量とスラリーの重金属溶出濃度が、埋立基準未満となる注入量が一致した。
さらに、スラリーの重金属溶出濃度が、埋立基準未満になる薬剤注入量を1.50倍すると、混練処理後の重金属溶出濃度が、埋立基準以下になる薬剤注入量になった。
【0047】
参考例4
供試飛灰Aに、前記の「アッシュクリーンC−350」の10倍希釈液を1.5%注入し処理した処理灰を試験に用いた。イオン電極の代表として鉛イオン電極を用いて参照電極との間に生じる電位を測定し、参考例1の方法で試験を行った。
比較として、イオン電極の代わりに白金電極(比較例4)を用いて参照電極との間の電位を測定し、参考例4と同様の試験を行った。
参考例4と比較例4で得られた重金属溶出抑制斉悟入率と、その時の電位、電位変化量、及びスラリーと混練処理後の重金属溶出濃度を表5にまとめた。
【0048】
【表5】
【0049】
一比較一
比較例4のORP計ではノイズが大きく、電位変化量の変曲点が現れなかったため、薬剤注入量を決定するのは困難であった。
それに対し、参考例4の方法によると、電位変化量が大きくなり、電位変化量の変曲点が見られた。前注入量との電位変化量の差が10mV未満となった薬剤注入率0.6%において変曲点が生じた。また、注入量とスラリーの重金属溶出濃度が埋立基準未満となる注入量が一致した。
さらに、スラリーの重金属溶出濃度が、埋立基準未満になる薬剤注入量を1.25倍すると、混練処理後の重金属溶出濃度が、埋立基準以下になる薬剤添加率と一致した。
【0050】
実施例1
白金以外の材質から構成された電極として、鉛イオン電極を用い、参照電極に塩化銀電極を用いて、2本の電極間に生じる電位を測定し、参考例1と同様にスラリーを調製し、試験を行った。重金属溶出抑制剤には、前記の「アッシュクリーンC−350」の10倍希釈液を用いた。
また、薬剤注入量の決定は、電位の経時変化より注入量を決定する方法で検討を行った。
詳しくは、薬剤注入後電位が低下してから定常に達するまでの時間を測定した。定常に達するまでの時間が20秒以内になれば、スラリー中の重金属溶出濃度を抑制することができる。
比較として、電極の代わりに白金電極(比較例5)を用いて、参照電極との間の電位を測定し、実施例1と同様の試験を行った。それらの結果を表6に示す。
【0051】
実施例2
白金以外の材質から構成された電極として、鉛イオン電極を用い、参照電極に塩化銀電極を用いて、2本の電極間に生じる電位を測定し、参考例1と同様にスラリーを調製し、試験を行った。重金属溶出抑制剤には、前記の「アッシュクリーンC−350」の10倍希釈液を用いた。
また、薬剤注入量の決定は、電位の経時変化より時間電位の傾きを計算し、その傾きの値により注入量を行った。
経時変化により電位と時間の傾きを求め、薬剤注入量を決定する。接線傾きの求めかたは、以下の4通りがあり、それぞれ次ぎのような結果となった。
(1)重金属溶出抑制剤注入直後から電位が定常に達するまでの時間と、注入直後に低下した電位から定常に達した際の電位変化量(以下、経時電位変化量)より
(傾き)=(経時電位変化量)÷(定常に達するまでの時間)
の式より求めるものとする。
このとき、傾きの値が0.50mV/s以下になった注入量で重金属類の溶出濃度が埋立基準値未満とする。
【0052】
▲2▼重金属溶出抑制剤注入直後から設定時間経過後までの経時電位変化量より、
(傾き)=(設定時間までの経時電位変化量)÷(設定時間)
の式より求めるものとする。
設定時間は15秒とし、傾きの値が0.50mV/s以下になった注入量で重金属類の溶出濃度が埋立基準値未満とする。
▲3▼重金属溶出抑制剤注入後、ある経過時間T1からより長い経過時間T2までの経時電位変化量より求める方法である。T1、T2での電位をそれぞれV1、V2とすると、
(傾き)=(V2−V1)÷(T2−T1)
で求めることができる。
T1=5秒、T2=15秒のとき、傾きの値が0.50mV/s以下になった注入量で、重金属類の溶出濃度が埋立基準値未満となる。
【0053】
(4)重金属溶出抑制剤の注入直後から設定時間経過後における電位の時間微分の値
(傾き)=dv/dt
で求めることができる。
今回は、15秒での接線傾きで評価する。傾きの値が0.50mV/s以下になった注入量で重金属類の溶出濃度が埋立基準値未満となる。
比較として、白金電極(比較例6)を用いて参照電極との間の電位を測定し、実施例2と同様の試験を行った。
実施例1、2及び、比較例5、6で得られた重金属溶出抑制剤添加量とその時の電位、経時電位変化量、及びスラリーと混練処理後の重金属溶出濃度を表6にまとめた。
【0054】
【表6】
【0055】
一比較一
比較例5、6のORP計では電位変化が小さく、またノイズも大きく、電位が定常に達する時間もまちまちであった。薬剤注入量を見出すのは困難であった。
それに対し、実施例1の方法によると、定常まで達する時間が薬剤注入により短くなり、20秒を下回った時とスラリーの重金属溶出濃度が埋立基準値未満となった注入率とが一致した。
実施例2の方法によると、(1)〜(4)までの傾きを求める手段において、設定値未満となった注入量とスラリーの重金属溶出濃度が埋立基準値未満となった注入量とが一致した。
さらにスラリーの重金属溶出濃度が埋立基準未満になる薬剤注入量を1.25倍すると混練処理後の重金属溶出濃度が埋立基準以下になる薬剤添加率と一致した。
【0056】
参考例5
供試飛灰Aを用い、白金以外の材質の電極の代表として、硫化銀を主とする材質からなる電極、及び参照電極に塩化銀電極を用い心重金属溶出抑制剤としては、(株)荏原製作所製「アッシュクリーンC−350」の10倍希釈液を用いた。
一電極の作成方法一
電極の作成方法は、硫化銀の粉末を主とする金属粉を型に入れ、リード線を挟み込み、圧カプレスをかけることにより電極を作成した。また、リード線に溶液等が触れないよう、周りをセラミックス製の筒でカバーリングし、電極とした。
比較として白金電極(比較例7)を肺、て、電位を測定し、参考例5と同様の試験を行った。
本発明の方法により、参考例5と比較例7で得られた重金属溶出抑制剤添加率とその時の電位変化量、及びスラリーと混練処理後の重金属溶出濃度を表7にまとめた。
【0057】
【表7】
【0058】
一比較一
比較例7のORP計では電位変化が小さく、またノイズも大きかったため、薬剤添加率を決定するのは困難であった。
参考例5の方法によると、電位変化量が変曲点をとる添加率とスラリーの重金属溶出濃度が埋立基準以下となる添加率が一致する。
また、スラリーの重金属溶出濃度が、埋立基準以下になる薬剤添加率を1.33倍すると、混練処理後の重金属溶出濃度が、埋立基準以下になる薬剤添加率と一致する。
【0059】
参考例6
供試飛灰Bを用い、参考例5と同様に電極を作成し、また薬剤添加量による電位変化量の測定を行った
比較として、白金電極(比較例8)を用いて、電位を測定し、参考例6と同様の試験を行った。
本発明の方法により、参考例6と比較例8で得られた重金属溶出抑篭耳剤添加率と、その時の電位変化量、及びスラリーと混練処理後の重金属溶出濃度を、表8にまとめた。
【0060】
【表8】
【0061】
一比較一
比較例8のORP計ではノイズが大きく、電位を測定することが困難で電位変化量を求めることができず、薬剤添加率を決定するのは困難であった。
参考例6は、参考例5と同様、電位変化量が変曲点をとる添加率と、スラリーの重金属溶出濃度が埋立基準以下となる添加率が一致し、スラリーの薬剤添加率を1.25倍すると、混練処理後の重金属溶出濃度が、埋立基準以下になる薬剤添加率と一致する。
【0062】
実施例3
本発明の方法により決定したスラリーへの薬剤添加量(スラリー)と、混練後の処理物の重金属溶出濃度が埋立基準値未満になったときの薬剤添加量を、表9に示す。また、飛灰の性状を併せて示す。
【表9】
【0063】
比較のために白金電極(比較例9)を用いた時のスラリー、混練後の添加量を表9に示す。
実施例3では、Pb濃度の大小、活性炭含有量の大小に関係無く、スラリーへの薬剤添加量と混練に要する薬剤添加量の比はほぼ一致する。
この比を経験値として用いることにより、Pb含有量、活性炭含有量の大小などに関係無く、実装置での混練時に重金属含有灰に添加する重金属溶出抑制剤の最適添加量を、本発明の方法により決定することができる。
それに対し、比較例9ではORP電位の電位変化が小さく、また活性炭が少量含まれるだけでノイズが大きく、電位測定が困難になり、重金属溶出抑制剤の添加量を決定するのは困難である。
【0064】
【発明の効果】
本発明における白金以外の材質で構成される電極、特に、イオン電極を用いた重金属溶出抑制剤の必要添加量決定する薬剤注入制御方法及び装置によれば、重金属含有灰の処理に関して重金属溶出抑制剤の必要添加量を容易かつ的確に求めることができる。
現場における測定も容易であることから、処理する重金属含有灰の性状変動に対応して、即時にかっきめ細かい薬剤注入制御を行うことができ、これにより安定かつ確実な処理を行える。また、重金属溶出抑制剤の過剰添加が不要となり、薬剤コストの低減を図ることができる。
また、活性炭を含む重金属含有灰についても適用が可能であるため、あらゆる飛灰に対して本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】薬剤注入による電位の経時変化を示すグラフ。
【図2】薬剤注入による電位変化量の関係を示すグラフ。
【図3】設定電位変化量と薬剤注入率の関係を示すグラフ。
【図4】薬剤注入率と電位変化量(極小点)の関係を示すグラフ。
【図5】図1の一部を示し定常までの時間による薬剤注入制御の説明図。
【図6】(イ)〜(ニ)は接線傾きによる薬剤注入制御の説明図。
【図7】本発明に用いる薬剤注入装置の一例を示す概略図である。
【図8】本発明に用いる薬剤注入装置の他の例を示す概略図である。
Claims (2)
- 重金属を含有する被処理物から重金属の溶出を防止するに際し、該重金属を含有する被処理物と水とのスラリーを調製し、該スラリー中に、塩化銀電極又は甘こう電極からなる参照電極と測定する重金属のイオンに感応するイオン電極を挿入し、重金属溶出抑制剤を添加しながら該電極間に生じる電位の経時変化を測定し、電位と時間の接線を導き、その接線の傾きより薬剤注入量を決定するか、薬剤添加後設定時間までの電位変動により薬剤注入量を決定するか、又は、電位が安定するまでの時間により薬剤注入量を決定することにより、重金属溶出抑制剤の注入量を決定することを特徴とする薬剤注入制御方法。
- 前記イオン電極は、鉛イオン電極であることを特徴とする請求項1記載の薬剤注入制御方法。
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