JP4174374B2 - 母材表面がメッキ処理された成形品、及びその表面処理方法 - Google Patents

母材表面がメッキ処理された成形品、及びその表面処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属母材又は樹脂母材の表面にメッキ処理が施されてなる成形品、及び、その表面処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属母材又は樹脂母材の表面にメッキ処理を施すことにより、該母材の質感や色彩を変化させて、高級感や趣味感を生じさせるようにした成形品は数多く存在している。このような成形品として、例えば、自動車のアルミニウム合金ホイールにあっては、近年、その意匠感を向上させるため、ホイールの意匠面にメッキ処理を施したものが増加する傾向にあり、このメッキ処理を行う表面処理方法が種々提案されている。
【0003】
このような表面処理方法として、アルミニウム合金ホイールの表面に粉体塗装し、その上に樹脂製のベースコート層を形成し、さらにアルミニウム合金をスパッタリングしてなる金属反射膜を形成し、その上にトップコート層を形成するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1)。この構成では、アルミニウム合金からなる金属反射膜により、高い光反射性を有する金属調を表現している。また、トップクリアコート層により、金属反射膜を水分や塩分による浸食から保護している。
【0004】
また、金属母材の表面に形成されたベースコート層の上に、スパッタリング等の乾式メッキ法によりステンレス鋼、チタン合金、ニッケル合金をメッキ処理することによって金属反射膜を形成するようにした構成も提案されている(例えば、特許文献2)。このステンレス鋼、チタン合金、ニッケル合金からなる金属反射膜は、上述したアルミニウム合金からなる金属反射膜に比して高い耐食性を有する。そのため、トップクリアコート層に傷が付いたり、剥がれたりした場合にも、金属反射膜が浸食されることを抑制でき、所望の金属調の外観を維持できる。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−130822号公報
【特許文献2】
特開2001−88243号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述のステンレス鋼、チタン合金、ニッケル合金を用いて乾式メッキにより金属反射膜を形成する構成にあっては、所望の光反射性を有する外観を形成するために、メッキ材となるターゲットに用いるステンレス鋼、チタン合金、ニッケル合金を適正に設定する必要がある。例えば、ステンレス鋼にあっては、オーステナイト系やマルテンサイト系等の系の調整を必要とする。一方、チタン合金やニッケル合金にあっては、チタン、ニッケル、クロム等の含有率を適正に調整する必要がある。そのため、このようなターゲットを製造するには高い費用が必要となり、製造コストが増大することとなっていた。また、前記したステンレス鋼では、アルミニウム合金に比して光反射性が不充分となる。チタン合金やニッケル合金では、チタンやニッケル等を比較的多量に含有するため、相対的にアルミニウムの含有率が低く、アルミニウムの有する高い光反射性を充分に発揮できない。而して、ステンレス鋼、チタン合金、ニッケル合金からなる金属反射膜では、アルミニウム合金に比して、金属調の乏しい外観になり得るという問題があった。
【0007】
一方、上述のように、アルミニウム合金をスパッタリングして金属反射膜を形成する構成にあっては、アルミニウムの高い光反射性によって優れた外観を比較的容易に形成することが可能である。また、アルミニウム合金は、上述のように、耐食性に限界があるため、トップクリアコート層により保護されている。ところで、アルミニウム合金ホイールでは、走行中の飛び石等により意匠面に比較的深い傷が生じることもある。例えば、この傷がベースコート層まで達していた場合には、該ベースコート層の樹脂に水分が浸透し、この水分によって、傷により露出した部分だけでなく比較的広い範囲で、金属反射膜が下側から浸食されることとなっていた。特に、海辺などでは、塩分を含んだ空気によって金属反射膜の浸食作用が高まるため、所望の外観が大きく低下するという問題が生じていた。
【0008】
本発明は、かかる問題を解決し、アルミニウムをスパッタリングしてなる金属反射膜の耐食性を向上させ得る、母材表面がメッキ処理された成形品、及びその表面処理方法を提案する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属母材又は樹脂母材と、該母材の所要表面の上に形成されたベースコート層と、該ベースコート層の直上に形成された、純アルミニウム又はアルミニウム合金を酸化又は窒化してなる下保護膜と、該下保護膜の表面上に形成された、純アルミニウム又はアルミニウム合金をスパッタリングしてなる金属反射膜と、該金属反射膜の上に形成されたトップクリアコート層とを備えていることを特徴とする成形品である(請求項1)。ここで、トップクリアコート層は、透光性を有し、その下層に配した金属反射膜の光反射性を適正に発揮させ得るものである。すなわち、このトップクリアコート層には、透明のものや、透明性の有色のものを適用することができる。
【0010】
かかる構成にあっては、トップクリアコート層が、アルミニウムからなる金属反射膜の表面側(上側)を保護すると共に、該金属反射膜の直下に、水分や塩分に対する耐食性の高いアルミニウムの酸化薄膜又は窒化薄膜からなる下保護膜を形成することにより、金属反射膜の下側を保護するようにしたものである。ここで、下保護膜は、比較的深い傷が生じてベースコート層に水分や塩分が浸透した場合にあって、これら水分や塩分が金属反射膜に直接接触することを防止する。このように、金属反射膜を上下から保護することにより、アルミニウムからなる金属反射膜の耐食性を向上させることができるため、該金属反射膜の奏する優れた外観を長期間劣化することなく適正に保持することが可能となる。
【0011】
ここで、上記した下保護膜が、約0.005μm〜0.1μmの膜厚であるとした構成(請求項2)が提案される。下保護膜は、上述のように、傷等からベースコート層に浸透した水分や塩分が金属反射膜を浸食することを防ぐものであり、その膜厚を前記範囲とすることにより適正な防止作用が発揮される。ここで、膜厚が0.1μmより厚くなると、膜を固着するための焼き付け処理等によって亀裂が発生し易い。特に下保護膜が窒化膜である場合には、比較的薄い膜厚で亀裂が生じることもある。この下保護膜に生じた亀裂は、その形状が金属反射膜にも表現されることとなり、外観を損なうこととなる。そのため、窒化膜の場合には、0.01μm〜0.03μmの膜厚とすることが好ましい。一方、酸化膜の場合には、窒化膜に比して膜厚を厚くすることも可能であり、0.01μm〜0.05μmの膜厚とすることが好ましい。また、膜厚は厚みを増加させるに応じて成膜に要する時間が長くなることから、0.1μmより厚くすることは単に製造コストの増加となるにすぎないという問題も生ある。一方、膜厚が0.005μmより薄いと、水分や塩分を防止する作用が不充分となる。
【0012】
また、金属母材又は樹脂母材の、ベースコート層が形成される所要表面の直上に、前処理が施されている構成(請求項3)が提案される。この前処理は、該処理面の直上に形成される所定層(例えば、ベースコート層又は粉体塗装層)の密着性を向上させるものであり、該所定層と母材との両者と優れた親和性を発揮するような皮膜を形成する。また、前処理として、母材表面を脱脂することによって密着性を高めるようにすることもできる。このような前処理により、衝撃力等の負荷が作用した場合にあっても、母材と所定層との間に剥離が生じることを防止できるから、メッキ処理の耐久性を向上させることが可能である。ここで、金属母材に施される前処理としては、上述のように比較的深い傷が生じた場合に、ベースコート層に浸透した水分や塩分等による母材の浸食を防止し、該母材の耐食性を向上させ得るものが良い。このような金属母材への前処理には、化成処理が好適に用いられる。一方、樹脂母材への前処理には、脱脂や界面活性剤処理が好適に用いられる。
【0013】
また、金属母材とベースコート層との間に、粉体塗装層が形成されている構成(請求項4)が提案される。かかる構成により、滑らかな厚み感が生じ、かつ艶や光沢感が一様に向上するから、一層優れた質感の表面形態を有する成形品を提供できる。尚、上述した前処理を施す構成にあっては、該前処理により粉体塗装層の密着性が向上することとなり得る。ここで、アルミニウム合金ホイールの場合にあって、鋳造成形又は鍛造成形されたアルミホイール母材は梨地肌となっているから、粉体塗装層を形成することにより、平滑な表面形態とすることができる。
【0014】
さらにまた、トップクリアコート層が、金属反射膜の表面上に、プライマー層を介して形成されている構成(請求項5)が提案される。かかる構成にあっては、金属反射膜とトップクリアコート層との親和性に優れるプライマー層を形成することにより、トップクリアコート層の密着性を向上させることができる。これにより、トップクリアコート層の外側から鋭利的な力や面圧力等が作用した場合にあっても、傷や剥がれを生じ難くなり、金属反射膜を表面側から保護する耐久性が向上する。また、このプライマー層に防錆性を有するものを適用することもできる。このようなプライマー層とトップクリアコート層とによって、金属反射膜を二重に保護することとなるから、その耐久性と耐食性とを一層高めることができる。
【0015】
一方、本発明は、金属母材又は樹脂母材の所要表面の上にベースコート層を形成し、該ベースコート層の直上に、酸素ガス又は窒素ガスを添加したアルゴンガス中で純アルミニウム又はアルミニウム合金をスパッタリングすることにより下保護膜を形成し、該下保護膜の表面上に、純アルミニウム又はアルミニウム合金をスパッタリングすることにより金属反射膜を形成し、該金属反射膜の上にトップクリアコート層を順次形成するようにしたことを特徴とする母材表面がメッキ処理された成形品の表面処理方法(請求項6)である。かかる方法にあっては、純アルミニウム又はアルミニウム合金のターゲットを、酸素ガス又は窒素ガスの存在するアルゴンガス雰囲気中でスパッタリングすることによって、下保護膜となるアルミニウム酸化膜又は窒化膜を成膜するようにしたものである。このようなアルミニウム酸化膜又は窒化膜は、上述した請求項1から請求項5のいずれの下保護膜にも好適である。また、金属反射膜は、アルゴンガス雰囲気中で、純アルミニウム又はアルミニウム合金をターゲットとしてスパッタリングを行うことにより形成される。そのため、この金属反射膜と前記下保護膜とは、同一の純アルミニウム又はアルミニウム合金をターゲットとしてスパッタリングを行うことにより形成することができるから、製造コストを抑制することが可能である。かかる表面処理方法により、上述した請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された、母材表面がメッキ処理された成形品を好適に製造することが可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の各構成を添付図面にしたがって説明する。
図1は、本発明に係るアルミニウム合金ホイール1の、メッキ処理された意匠面の表面形態を表している。このアルミニウム合金ホイール1は、意匠面のアルミホイール母材2の表面上に粉体塗装層3と、ベースコート層4と、下保護膜5と、金属反射膜6と、プライマー層7と、トップクリアコート層8とが順次積層されてなる構成を有している。ここで、アルミニウム合金ホイール1が本発明の成形品である。
【0017】
このように意匠面がメッキ処理されたアルミニウム合金ホイール1の表面処理方法を説明する。
図2のように、まず、アルミホイール母材2の意匠面に、前処理として脱脂・洗浄、及び所定の処理液を塗布して該意匠面上に皮膜(図示省略)を形成する化成処理を施す。この化成処理によって、アルミホイール母材2を保護し耐食性を高めると共に、この上に塗布される粉体塗料の密着性を向上させる。そして、この前処理した表面に粉体塗料を塗布した後、焼き付け乾燥させ、約70〜150μmの粉体塗装層3を形成する。この粉体塗装層3によって、アルミホイール母材2の、鋳造や鍛造による梨地肌を隠して平滑な表面を形成すると共に、滑らかな厚み感と、艶や高光沢感とを高めるようにしている。その後、粉体塗装層3の表面にベースコート塗装した後、焼き付け乾燥させ、金属反射膜6の下地となるベースコート層4を所定の厚さ(約15〜25μm)で形成する。このベースコート層4によって、金属反射膜6の光沢性を高めるようにしている。尚、このベースコート層4を、クリアや所定色とすることによって、金属反射膜6の色調感を様々に調整することもできる。本実施形態例にあっては、クリアのベースコート層4とした。
【0018】
次に、本発明の要部にかかる、下保護膜5と金属反射膜6とを説明する。
上述のように、意匠面にベースコート層4を形成したアルミニウム合金ホイール1を、スパッタリング装置(図示省略)により、該意匠面にスパッタリングを行う。すなわち、アルミニウム合金ホイール1を真空容器内にセットし、該真空容器内を1×10-3Pa程度の真空度とする。そして、ターゲットにアルミニウム合金を使用し、プロセスガスとしてアルゴンガスを約1.9×10-1Pa・m3/sで真空容器内に流入する。さらに、このアルゴンガスの流入と同時に酸素ガスを約1.4×10-1Pa・m3/sで流入する。このアルゴンガスと酸素ガスは、所定の排出口から排出されるようになっており、真空容器内の圧力を約0.8Paに保持している。このような一定圧力の雰囲気中でスパッタさせることにより、ベースコート層4の表面上に、アルミニウム酸化膜を所定の厚さ約0.01μmまで成膜し、下保護膜5を形成する。
【0019】
上記のように下保護膜5を形成した後、酸素ガスの流入を停止すると共に、アルゴンガスの流量を約5.1×10-1Pa・m3/sとして、真空容器内の圧力を約1.0Paに保持する。これにより、真空容器内の酸素ガスは排気される。そして、この雰囲気中でスパッタさせることによって、前記の下保護膜5の表面上に、アルミニウムの薄膜を所定の厚さ(0.03μ〜0.2μm)まで成膜し、金属反射膜6を形成する。このように、下保護膜5と金属反射膜6とは、同じ真空容器内で、同一のアルミニウム合金をターゲットとしてスパッタリングを行うようにしている。すなわち、金属反射膜6の下側を保護する下保護膜5は、該金属反射膜6を形成する工程に、新たな過程を付加する程度で比較的容易に形成することが可能である。而して、この下保護膜5は、製造コストを増大させることなく、形成できるという優れた利点を有する。
【0020】
次に、上述のように形成した金属反射膜6の表面上に、クリアのプライマー塗装を行った後、焼き付け乾燥させ、約5〜10μmのプライマー層7を形成する。このプライマー層7は、金属反射膜6とトップクリアコート層との親和性に優れるものであり、両者と強く密着した状態が形成される。さらに、このプライマー層7は、金属反射膜6を保護し防錆性を高めることができる。その後、プライマー層7の表面上にトップクリアコート塗装した後、焼き付け乾燥させ、約20〜30μmの厚さのトップクリアコート層8を形成する。このトップクリアコート層8により、金属反射膜6を保護し耐食性を向上させる。さらに、トップクリアコート層8は、透光性を有していることから、クリアのプライマー層7と共に、金属反射膜6の高い光沢性を適正に発揮し得る。このように、金属反射膜6の上層に、プライマー層7及びトップクリアコート層8を形成することによって該金属反射膜6を二重コートして、その保護作用を高めている。尚、金属反射膜6の表面上に、プライマー層7を介してトップクリアコート層8を形成するようにしたから、前述のように、各層間の密着性は高くなる。このため、表面側から衝撃等を受けた場合にあっても、この層間に剥離が生じることを防止でき、高い耐久性を発揮できる。
【0021】
このような表面処理方法によって形成された、アルミホイール母材2の意匠面をメッキ処理してなるアルミニウム合金ホイール1にあっては、アルミニウム合金をターゲットとしてスパッタリングを行うことによって、金属反射膜6を形成したものであるから、アルミニウムの優れた反射性を有する意匠面が形成されている。すなわち、この意匠面は、重厚かつ光沢性に優れた金属調を表す外観となった。
【0022】
次に、このような意匠面を有するアルミニウム合金ホイール1の耐食性を評価した。この耐食性の評価は、JIS D 0201に記載されている耐食性試験に従って行った。また、このアルミニウム合金ホイール1の耐食性を把握するため、比較例として、下保護膜5を形成しない表面処理方法によって、意匠面をメッキ処理したアルミニウム合金ホイール11を成形した(図3参照)。尚、この比較例は、下保護膜5を形成する工程を省略した以外は、上述の実施形態例と同じ材料及び同じ工程により表面処理を行っている。
【0023】
耐食性試験は、まず図4のように、アルミニウム合金ホイール1の意匠面に、刃物によって、アルミホイール母材2の表面まで削る程度の深さの傷12を、約100mmの長さとなるように形成する。同様の傷を、比較例のアルミニウム合金ホイール11の意匠面にも形成する。そして、このアルミニウム合金ホイール1,11を所定の耐食試験装置(図示省略)内に配置した後、該試験装置内に、塩化ナトリウム溶液の濃度40g/l、塩化第二銅溶液の濃度0.205g/l、PH3.0の調整試験液を約240時間噴霧する。その後、耐食性試験装置から取り出し、前記傷の周囲の状況を観察する。この耐食性試験の結果、比較例のアルミニウム合金ホイール11では、傷の周囲に、該傷から片側約5mm以上の領域で、光沢性が消失しており、金属反射膜6が溶けていることを確認した。これは、下保護膜5の無いアルミニウム合金ホイール11では、傷からベースコート層4に浸透した水分と塩分とが、金属反射膜6を下側から浸食したためである。一方、本実施形態例のアルミニウム合金ホイール1では、金属反射膜6の溶けている領域は、傷から片側約1mm以下の周囲でしかなかった。このアルミニウム合金ホイール1では、ベースコート層4に浸透した塩分と水分とが、下保護膜5によって、金属反射膜6と接触できない。すなわち、下保護膜5が金属反射膜6の下側を適正に保護し、耐食性を向上させている。ここで、傷の周囲でわずかに溶けた金属反射膜6は、傷面から直接浸食されたものと思われる。而して、本発明にかかるアルミニウム合金ホイール1では、その意匠面に比較的深い傷が生じた場合でも、意匠面の外観が適正に維持され得る。
【0024】
上述の実施形態例にあっては、下保護膜5をアルミニウム酸化膜とする構成であるが、その他の構成として、アルミニウム窒化膜とすることもできる。かかるアルミニウム窒化膜は、上述した真空容器に流入する酸素ガスの代わりに、窒素ガスを流入してスパッタリングすることにより形成できる。このアルミニウム窒化膜にあっても、アルミニウム酸化膜と同様に、金属反射膜6の下側を保護し耐食性を向上させることが可能である。ここで、アルミニウム窒化膜は、膜厚をアルミニウム酸化膜に比して薄厚とするように形成することが好ましい。また、スパッタリングにあって、ターゲットを、上述のアルミニウム合金の代わりに純アルミニウムを用いることもできる。純アルミニウムを用いることにより、さらに高い反射性を有する金属反射膜6を形成することが可能である。
【0025】
また、上述した実施形態例は、アルミニウム合金ホイール1に本発明を適用したものであるが、他の用途に適用することも可能であり、アルミホイール母材2のような金属母材の他に樹脂母材にも適用できる。例えば、自動車のバンパー、携帯電話、ノート型パソコンの筐体等、メッキ処理を行う様々な成形品に適用可能である。また、利用させる用途によっては、粉体塗装層を形成しない場合もある。
【0026】
【発明の効果】
本発明は、金属母材又は樹脂母材の所要表面の上に、ベースコート層が形成され、この直上に、純アルミニウム又はアルミニウム合金を酸化又は窒化してなる下保護膜が形成され、該下保護膜の表面上に、純アルミニウム又はアルミニウム合金をスパッタリングしてなる金属反射膜が形成され、該金属反射膜の上にトップクリアコート層が形成されてなる成形品であるから(請求項1)、当該成形品に比較的深い傷が生じた場合にあって、ベースコート層に浸透した水分や塩分により金属反射膜が浸食されることを、下保護膜によって防止できる。かかる構成は、アルミニウムからなる金属反射膜を上下から保護するものであるから、耐食性を向上でき、該金属反射膜の奏する優れた外観を長期間、適正に保持することが可能である。また、本発明は、純アルミニウムやアルミニウム合金をターゲットに用いてスパッタリングしてなる金属反射膜を有する構成であるから、アルミニウムの優れた光反射性が発揮される外観の成形品を提供できる。
【0027】
ここで、上記した下保護膜が、約0.005μm〜0.1μmの膜厚であるとした構成(請求項2)にあっては、ベースコート層に浸透した水分や塩分によって生じる金属反射膜の浸食を、適正かつ充分に防止できる。
【0028】
また、金属母材又は樹脂母材の、ベースコート層が形成される所要表面の直上に、前処理が施されているものとした構成(請求項3)にあっては、該前処理した表面直上に形成される所定層の密着性を向上させることができる。また、この前処理によって、金属母材の耐食性を向上させることもできる。
【0029】
また、金属母材とベースコート層との間に、粉体塗装層が形成されているものとした構成(請求項4)にあっては、滑らかな厚み感と艶や光沢感とが一様に高められ、優れた質感を有する成形品を提供できる。
【0030】
上述したトップクリアコート層が、金属反射膜の表面に、プライマー層を介して形成されているものとした構成(請求項5)にあっては、該プライマー層によってトップクリアコート層の密着性が高められ、金属反射膜を保護する耐久性が向上する。また、プライマー層とトップクリアコート層とによって金属反射膜を二重に保護でき、その耐久性が一層向上する。
【0031】
一方、本発明は、金属母材又は樹脂母材の所要表面の上にベースコート層を形成し、この直上に、酸素ガス又は窒素ガスを添加したアルゴンガス中で純アルミニウム又はアルミニウム合金をスパッタリングすることにより下保護膜を形成し、該下保護膜の表面上に、純アルミニウム又はアルミニウム合金をスパッタリングすることにより金属反射膜を形成し、該金属反射膜の上にトップクリアコート層を順次形成するようにした表面処理方法であるから(請求項6)、上述した請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の、母材表面がメッキ処理された成形品を好適に製造することが可能である。また、この下保護膜と金属反射膜とを、同一の純アルミニウム又はアルミニウム合金をターゲットとしてスパッタリングを行うことにより形成でき、製造コストを増大することなく、メッキ処理を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるアルミニウム合金ホイール1の、意匠面の表面構成を表す断面図である。
【図2】本発明にかかるアルミニウム合金ホイール1の、意匠面の表面処理方法を示す説明図である。
【図3】比較例のアルミニウム合金ホイール11の、意匠面の表面構成を表す断面図である。
【図4】耐食性試験にかかる、意匠面に傷を形成した、本実施形態例のアルミニウム合金ホイール1を表す断面図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム合金ホイール(成形品)
2 アルミホイール母材(金属母材)
3 粉体塗装層
4 ベースコート層
5 下保護膜
6 金属反射膜
7 プライマー層
8 トップクリアコート層

Claims (6)

  1. 金属母材又は樹脂母材と、
    該母材の所要表面の上に形成されたベースコート層と、
    該ベースコート層の直上に形成された、純アルミニウム又はアルミニウム合金を酸化又は窒化してなる下保護膜と、
    該下保護膜の表面上に形成された、純アルミニウム又はアルミニウム合金をスパッタリングしてなる金属反射膜と、
    該金属反射膜の上に形成されたトップクリアコート層と
    を備えていることを特徴とする母材表面がメッキ処理された成形品。
  2. 下保護膜が、約0.005μm〜0.1μmの膜厚であることを特徴とする請求項1に記載の母材表面がメッキ処理された成形品。
  3. 金属母材又は樹脂母材の、ベースコート層が形成される所要表面の直上に、前処理が施されているものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の母材表面がメッキ処理された成形品。
  4. 金属母材とベースコート層との間に、粉体塗装層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の母材表面がメッキ処理された成形品。
  5. トップクリアコート層が、金属反射膜の表面上に、プライマー層を介して形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の母材表面がメッキ処理された成形品。
  6. 金属母材又は樹脂母材の所要表面の上にベースコート層を形成し、該ベースコート層の直上に、酸素ガス又は窒素ガスを添加したアルゴンガス中で純アルミニウム又はアルミニウム合金をスパッタリングすることにより下保護膜を形成し、該下保護膜の表面上に、純アルミニウム又はアルミニウム合金をスパッタリングすることにより金属反射膜を形成し、該金属反射膜の上にトップクリアコート層を形成するようにしたことを特徴とする母材表面がメッキ処理された成形品の表面処理方法。
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