JP4172448B2 - 落石防護構造物の設計方法と落石防護構造物 - Google Patents

落石防護構造物の設計方法と落石防護構造物 Download PDF

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Description

本発明は、落石防護構造物の設計方法と落石防護構造物に関するものである。
一般的な構造物の設計においては、該構造物の受ける設計荷重に対して、主に許容応力度法で強度を設定するようにしている。
例えば、落石防護構造物(特許文献1)で、緩衝層として砂層を用いたものでは、以下の式から落石衝撃力を求めることが提案されている。
Po=2.108×W2/3×λ2/5×H3/5×α…(1)式
上記(1)式で、
Po:落石による衝撃力(kN)
W:落石重量(kN)
λ:ラーメ定数(kN/m2
H:落下高さ(m)
α:砂層の厚さと落石直径の比から決定される割増係数
である。
上記(1)式から最大落石衝撃力である落石衝撃力Poを求め、これが静荷重として防護面に作用したと仮定して、許容応力度法で防護構造物の設計を行う。この場合、構造物が塑性変形を起こさない弾性範囲に収まるように強度設計がなされる。
しかし、実際の防護構造物は、降伏点を越えた塑性変形を起こしても、防護機能は損なわれないから、修復利用を考慮せずに防護機能のみを考慮する場合、弾性範囲による設計では強度が過剰になる面がある。
一方、防護構造物が塑性変形を起こす荷重より、落石衝撃力Poが大となる場合では、落石により作用するエネルギーEsを基準として防護構造物の照査がおこなわれる(例えば非特許文献1)。
Es=β×W×H+(Mg+W)×δ…(2)式
上記(2)式において
W:落石重量
H:落下高さ
M:衝突にかかわる防護構造物と緩衝材の有効質量の和
g:重力加速度
δ:変位
β:エネルギー伝達率
また、このエネルギー伝達率βは下記の(3)式に拠る。
β=1/(1+Mg/W)…(3)式
そして、防護構造物が吸収できるエネルギーEuを、図9に基き検討すると、同図は縦軸が保護構造物に加わる荷重、横軸が変位であり、荷重と変位との積であるハッチングの部分が、防護構造物の吸収できるエネルギーEuとなる。
これらから、落石により作用するエネルギーEsと、防護構造物が吸収できるエネルギーEuとを比較して安全性を照査する。
しかし、上記の落石により作用するエネルギーEsの算出では、前記エネルギー伝達率βが、落石の塑性衝突を前提とした運動量保存則に基き、落石重量Wと衝突にかかわる防護構造物と緩衝材の有効質量の和Mとの関係に基くものであるが、研究によりエネルギー伝達率は構造物の固有周期と荷重の作用時間の比などにより大きく変わることが明らかになり、上記(3)式が当てはまる条件範囲が狭いことが判ってきた。
特開平4−277207号公報 編集者 土木学会構造工学委員会衝撃問題研究小委員会 構造工学シリーズ8 ロックシェッドの耐衝撃設計 第1版・第1刷発行 編集者 土木学会構造工学委員会 発行者 社団法人土木学会 発行所 社団法人土木学会 平成10年11月1日
そこで、本発明は、終局変位に基き、防護に必要な強度を備えた落石防護構造物の設計方法と落石防護構造物を提供することを目的とする。
請求項1の設計方法は、屋根を有する落石防護構造物の設計方法において、調査等により最大落石衝撃力を設定し、この最大落石衝撃力に対して前記屋根上に緩衝層を有する前記構造物が弾性応答すると仮定した場合に受ける弾性応答時のエネルギーを算出し、前記構造物の降伏点までの弾性変形と降伏点後の塑性変形とによる弾塑性応答により前記弾性応答時のエネルギーを吸収した場合の構造物の変位が終局変位より小さく、且つ前記構造物が塑性変形を起こす強度を前記最大落石衝撃力以下に設定する設計方法である。
また、請求項2の設計方法は、実験により落石による衝撃力と時間との関係を設定し、この関係から動的弾性応答解析により前記弾性応答時の構造物の最大変位を求めて前記弾性応答時のエネルギーを算出する設計方法である。
また、請求項3の設計方法は、落石荷重による構造物の動的増幅率を求め、この動的増幅率と最大落石衝撃力に基き前記弾性応答時のエネルギーを算出する設計方法である。
また、請求項1の設計方法は、前記構造物が塑性変形を起こす強度を前記最大落石衝撃力以下に設定する設計方法である。
また、請求項4の落石防護構造物は、屋根を有する落石防護構造物において、設定された最大落石衝撃力に対して屋根上に緩衝層を有する前記構造物が弾性応答すると仮定した場合に受ける弾性応答時のエネルギーを算出し、前記構造物の降伏点までの弾性変形と降伏点後の塑性変形とによる弾塑性応答により前記弾性応答時のエネルギーを吸収した場合の構造物の変位が終局変位より小さく、かつ前記落石衝撃力に対して塑性変形を起こす強度を有するものである。
また、請求項5の落石防護構造物は、前記弾性応答時のエネルギーは、実験により設定した衝撃力と時間との関係から動的弾性応答解析により前記弾性応答時の構造物の最大変位を求めて算出するものである。
また、請求項6の落石防護構造物は、前記弾性応答時のエネルギーは、落石荷重による構造物の動的増幅率と最大落石衝撃力に基づくものである。
請求項1の設計方法によれば、落石により最大落石衝撃力を受けると、防護構造物が弾性変形と塑性変形を起こし、この塑性変形による変位が終局変位より小さいため、過剰な強度を要せずに防護機能を確保することができる。
また、請求項2の設計方法によれば、動的弾性応答解析を用いることにより、衝撃力の作用時間や構造物の質量,剛性を考慮した前記弾性応答時の構造物の最大変位が得られる。
また、請求項3の設計方法によれば、構造物の有効質量,剛性や固有周期などの各種のデータに基いて予め動的増幅率(動的荷重による変位/静的荷重による変位)を算出し、この動的増幅率から前記弾性応答時の構造物の最大変位を求めることにより、構造物の各種データに基いた最大変位が得られる。
また、請求項1の設計方法によれば、従来の設計方法に比べて、設計強度を抑えながら、必要十分な防護機能が得られる。
請求項4の落石防護構造物は、落石により最大落石衝撃力を受けると、防護構造物が弾性変形と塑性変形を起こし、この塑性変形による変位が終局変位より小さいため、過剰な強度を要せずに防護機能を確保される。
また、請求項5の落石防護構造物によれば、動的弾性応答解析を用いることにより、衝撃力の作用時間や構造物の質量,剛性を考慮した前記弾性応答時の構造物の最大変位が得られ、一層信頼性の高い構造物となる。
また、請求項6の設計方法によれば、構造物の有効質量,剛性や固有周期などの各種のデータに基いて予め動的増幅率(動的荷重による変位/静的荷重による変位)を算出し、この動的増幅率から前記弾性応答時の構造物の最大変位を求めることにより、構造物の各種データに基いた最大変位が得られ、一層信頼性の高い構造物となる。
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
本発明では、エネルギー一定則に基いて、防護構造物に必要な強度を算出するものである。エネルギー一定則とは、弾塑性復元力特性を有する構造物が衝撃力を受けた場合に、弾塑性応答と弾性応答の両者の吸収エネルギーが同量になるという考えに基いた近似的な非線形応答の推定法である。
これをロックシェッドなどの落石防護構造物に適用した実施例1を図1に基き説明する。尚、上記背景技術で説明した点については、同一符号を付してその詳細な説明を省略して詳述する。
図1〜図7は本発明の第1実施例を示し、図1のグラフ図は、縦軸が落石衝撃力、横軸が防護構造物の変位であり、図2は設計方法に関するブロック図であり、例えば上記(1)式から求めた最大落石衝撃力Poを最大落石衝撃力に設定する。この設定には防護構造物を設ける現場を調査(S1:ステップ1)し、その斜面状態などにより予測される最大落石衝撃力Poを設定(S2)する。次に、静的弾性応答解析(S3)に基き、最大落石衝撃力Poを防護構造物が受けた場合に該防護構造物が塑性変形を起こすかどうかを判断(S4)する。
静的弾性応答解析(S3)による検討により、最大落石衝撃力Poを受けると防護構造物が塑性変形を起こす強度に設計されている場合は、防護構造物が弾性応答すると仮定した場合に受ける弾性応答時のエネルギーを算出する。まず、前記最大落石衝撃力Poが防護構造物に加わり、防護構造物が弾性応答した場合の変位δd(弾性応答時変位)を得る(S5)。この場合、弾性応答とは、防護構造物が弾性範囲で変形すると仮定した場合の防護構造物の挙動である。防護構造物の防護面たる屋根上に、鉛直方向に落下する落石を受ける場合は、該屋根の鉛直方向の移動量が変位である。このように防護構造物が弾性応答したときのエネルギーEdは、図1の三角形0−A−B(δd)の面積により得られ、このようにして実際には塑性変形を起こす防護構造物が弾性応答した場合の吸収するエネルギーEdを算出する(S6)。すなわち、防護構造物が弾性変形し、最大落石衝撃力Poで変位δdが発生するに必要なエネルギーが弾性応答時エネルギーEdである。尚、図中、Cは降伏点であり、この降伏点Cの落石衝撃力がP1で、変位がδ1である。
前記弾性応答時エネルギーEdを、弾塑性応答により吸収した場合の防護構造物の変位δn(弾塑性応答時変位)を算出する(S7)。これは0−C−D−E(δn)で囲まれる面積Enが0−A−B(δd)の面積Edと等しくなるようにすることで得られる。その変位δnを防護構造物の終局変位δuと比較(S8)し、例えば終局変位δuより前記弾塑性応答時変位δnが小さければ、防護構造物は防護機能を有すると判断する。尚、終局変位とは、構造物によりいろいろな定義が可能であるが、例えば、構造物のある断面の曲率が限界に達する場合の変位と定義することも可能である。
尚、判断(S4)で防護構造物が塑性変形を起こさない場合は、過剰設計と考えて、再度、防護構造物の設計強度を下げて、静的弾性応答解析(S3)を行い、判断(S4)を行う。また、比較(S8)で弾塑性応答時変位δnが終局変位δuより大きければ、静的弾性応答解析(S3)に戻って、防護構造物の設計強度を上げる。尚、図2では静的弾性応答解析(S3)の次に、判断(S4)を行うようにしているが、判断(S4)は、変位δd算出(S5)の後でも、比較(S8)の前後でもよい。
次に、図3に示す防護構造物を例に説明する。図3は防護構造物として、コンクリート製のロックシェッドを示し、このロックシェッドは、複数の主桁1を道である道路M又は軌道長手方向に向う横締用PC鋼材2により一体に緊結して山Yに沿う屋根3を形成し、その主桁1は、道路M又は軌道幅方向に向うPC鋼材4によりプレテンション方式で緊張力が付与されており、前記屋根3の道路M又は軌道方向の両側を支持体である柱5および壁体6上に載置し、その長さ方向両側を縦締用鋼材7とアンカー7Aによりそれぞれ柱5と壁体6に結合し、屋根3と柱5は剛結され、屋根3と壁体6との間にはゴム板を介在してヒンジ結合としている。そして、前記柱5の下部にはメナーゼヒンジ状の接点部が形成され、前記柱5の下部が基礎とヒンジ結合されている。また、前記屋根3の上面3Aが防護構造物の防護面であり、前記屋根3の谷T側には囲いブロック11が設けられ、この囲いブロック11は現場打ちコンクリートにより形成されたり、あるいはプレキャスト製の囲いブロック11を屋根3に固定して設けられる。
緩衝層31として、屋根3上には囲いブロック11と山Yとの間に砂層を設けている。
このように本実施例は、山Yに沿う道路M又は鉄道軌道の少なくとも一部を覆い山Yに沿って設けられる屋根3を、支持体たる柱5および壁体6により支持してなる防護構造物の例である。
このようなロックシェッドにおける設計方法を以下に説明する。尚、図2に対応する箇所にはその符号を付して説明する。
1.設計条件の設定
現地調査(S1)等により前記ロックシェッドに対する照査すべき最大の落石条件を設定する。落石条件としては、落石重量、換算落下高さ(あるいは衝突速度)、落下位置、衝突の方向などが挙げられ、これら落石条件は現地調査によらずに、無前提的に与えられる場合もあり得る。前記換算落下高さあるいは衝突速度は、残存係数を用いて決められる場合もあるし、シュミレーションなどにより決められる場合もある。
落石条件は、落石の大きさ(重量W)、換算落下高さH(もしくは防護面と衝突するときの速度v(v=√(2gH)))、入射角、衝突位置などである。
一般に、入射角や衝突位置などは特定することが困難であるので構造物に不利になるように設定する。
ここで砂を緩衝材とするロックシェッドのスパンセンターに鉛直落下する場合について検討する。尚、他のクッション材を用いる場合でも考え方は同様である。
2.弾性応答時の衝撃力Po
剛基礎上の砂緩衝材の落石衝撃力の式を用いて、構造物が弾性応答する場合の最大落石衝撃力Poを設定(S2)する。
Po=2.108×W2/3×λ2/5×H3/5×α
上記(1)式で、
Po:落石による衝撃力(kN)
W:落石重量(kN)
λ:ラーメ定数(kN/m2
H:落下高さ(m)
α:砂層(緩衝層31)の厚さと落石直径の比から決定される割増係数である。
3.静的弾性解析
静的弾性骨組解析を用いて、ロックシェッドのスパンセンターに衝撃力Poを鉛直に載置した場合の載荷点32の鉛直方向の変位δd(S5)及び弾性吸収エネルギーEd(S6)を求める。弾性吸収エネルギーEdは、図5に示すハッチング部分の面積であり、載荷点の鉛直変位と衝撃力Poの積の2分の1である。尚、図4はロックシェッドの屋根3と柱5の骨組構造を示す。
4,静的弾塑性解析
断面分割法などにより、各部材の曲げモーメントと曲率の関係を求める。(図6及び図7参照)
断面分割法とは、部材断面内を多層に分解し、曲率を増加させながら断面内での力のつり合いを求めることで、力のつり合いが取れる中立軸が存在しなくなる終局時までの曲率と抵抗曲げモーメントの関係を調べる方法である。この断面分割法により求めた関係の傾きを曲げ剛性として、荷重増分法による静的弾塑性骨組解析を行う。
ロックシェッドのいずれかの部分が終局曲率φuに達したら破壊と判定しそのときの変位を終局変位δuとする。
本解析で得られた荷重変位曲線から弾塑性吸収エネルギーが、静的弾性解析により求めた弾性応答時エネルギーEdと等しくなる弾塑性応答時変位δn(S7)を求める。そして、前記弾塑性応答時変位δnが終局変位δuより小さいならば防護機能を確保できると判定(S8)する。
このように本実施例においては、請求項1に対応して、落石を受ける屋根3を有する落石防護構造物たるロックシェッドの設計方法において、調査により最大落石衝撃力Poを設定し、この最大落石衝撃力Poに対して屋根3上に緩衝層を有するロックシェッドが弾性応答すると仮定した場合に受ける弾性応答時のエネルギーEdを算出し、ロックシェッドの降伏点Cまでの弾性応答と降伏点C後の塑性変形とによる弾塑性応答により前記弾性応答時のエネルギーEdを吸収した場合のロックシェッドの変位δnが終局変位δuより小さくなるように設定するから、過剰な強度を要せずに防護機能を確保することができる設計方法を提供できる。
また、このように本実施例では、請求項1に対応して、構造物が塑性変形を起こす強度を、前記最大落石衝撃力Po以下に設定し、すなわち、最大落石衝撃力Poが静荷重として作用した場合、前記構造物が塑性変形を起こす設計強度としたから、従来の設計方法で最大落石衝撃力Poに対して弾性変形範囲で対応し、塑性変形しないように設計したものに比べて、設計強度を抑えながら、この種の防護構造物として安全性を確保する上で必要十分な防護機能が得られる。
また、このように本実施例では、請求項4に対して、落石を受ける屋根3を有する落石防護構造物たるロックシェッドにおいて、設定された最大落石衝撃力Poに対して屋根3上に緩衝層を有するロックシェッドの部位が弾性応答すると仮定した場合に受ける弾性応答時のエネルギーEdを算出し、ロックシェッドの降伏点Cまでの弾性変形と降伏点C後の塑性変形とによる弾塑性応答により前記弾性応答時のエネルギーEdを吸収した場合のロックシェッドの変位δnが終局変位δuより小さく、かつ前記落石衝撃力に対して塑性変形を起こす強度を有するから、ロックシェッドが弾性変形と塑性変形を起こし、この塑性変形による変位が終局変位δuより小さいため、過剰な強度を要せずに防護機能を確保することができる。
図8は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、防護構造物としてのコンクリート製キーパーを示し、複数の主桁11を道路長手方向に向う横締用PC鋼材12により一体に緊結して屋根13を形成し、この屋根13の道路側周縁上部に囲いブロック15を立設する。また、前記屋根13の中央側を柱19、山Y側を下部工20の上に斜めに設置し、屋根13は山Y側が低くなる傾斜であり、それぞれアンカー21Aと縦締用鋼材21により定着一体化してキーパーを構成し、前記屋根13の端面の下方には道路22又は鉄道用軌道等がある。前記屋根13の上面が防護面13Mであり、この防護面13M上には、緩衝層31として、囲いブロック15と山Yとの間に砂層を設けている。
このように本実施例は、山Yに沿う道路M又は鉄道軌道の少なくとも一部を覆い山Yに沿って設けられる屋根13を、支持体たる柱19および下部工20により支持してなる防護構造物に係り、各請求項に対応して上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
図10〜図12は本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。図10は、本実施例で例示する衝撃力と時間との関係を示すグラフ図である。また、この例では、上述した図2のステップ3の「静的弾性応答解析」に換えて後述する動的弾性応答解析を用いる。尚、この例では、図11に示すように、判断(S4)は、ステップ7の後で、比較(S8)の前に行われる。
図10(A)は防護構造物の防護面たる屋根上に砂層(サンドクッション材)を設けた場合のグラフであり、衝撃力Poと作用時間Toとの関係を半正弦曲線に仮定した曲線である。図10(A)において、衝撃力Poは、上記(1)式により求められ、衝撃力と時間との関係は、次式で表される。
P(t)=Po×sin(π/To×t)…(4)式
上記(4)式で、Toは作用時間であり、これは次式で表される。
To=π×m×v/2/Po…(5)式
上記(5)式で、衝突速度v=√(2gH)である(g:重力加速度、H:換算落下高さ)。また、落石質量m=W/gである。
このように、実験などにより衝撃力と時間との関係を設定し、この関係から動的弾性応答解析(S3´)により、前記弾性応答時の最大変位δdを求め、ステップ6に移行し、防護構造物が弾性応答した場合の吸収するエネルギーEdを算出(S6)し、弾塑性応答により吸収した場合の防護構造物の変位δn(弾塑性応答時変位)を算出(S7)し、算出(S7)の後、前記判断(S4)を行い、塑性変形を起こす場合は、前記変位δnを防護構造物の終局変位δuと比較(S8)し、例えば終局変位δuより前記弾塑性応答時変位δdが小さければ、防護構造物は防護機能を有すると判断する。尚、判断(S4)で防護構造物が塑性変形を起こさない場合は、過剰設計と考えて、再度、防護構造物の設計強度を下げて、ステップ3´で動的弾性応答解析を行う。
上記動的弾性応答解析(S3´)には、各種の公知の方法を用いることができ、例えばDuhamel積分や動的弾性骨組解析などが用いられる。尚、Duhamel積分は、外力をΔtきざみごとの力積のパルス:f(t)Δtの連続作用と考え、各パルスによる応答を時間をずらしながら重ね合わせ積分する計算方法である。
また、衝撃力と時間との関係を設定する場合、実験による方法が挙げられる。実験は、剛基礎上で行う場合と、実物モデルの構造物で行う場合があり、落石による衝撃力を測定し、荷重時間曲線を求める。測定には、落石を模した重錘に加速度計を設置し、重錘の質量に加速度を乗じて衝撃力を測定する方法や、衝撃力が作用する面に圧力計を複数点配置し、衝撃力を測定する方法や、構造物の応力から衝撃力を推定する方法がある。
図12は実験装置の概略断面図を示し、剛基礎51の上に砂層52を設ける。調査(S1)などで求めた落石重量、換算落下高さ(あるいは衝突速度)に基き、重錘53の重量及び落下高さを設定する。その重錘53には、加速度計54をその重心位置に配置する。一方、剛基礎上51には、土圧を測定する圧力計55を複数配置する。これら圧力計55は、重錘53の落下位置中心と、この落下中心位置から水平方向に距離Lのピッチで離れた位置に配置し、さらに、所定距離だけ離れた位置では、距離2L(Lの2倍)のピッチで離れた位置に配置する。そして、所定の落下高さから重錘53を自由落下させ、砂層53を伝わって加わる衝撃土圧を圧力計55で測定し、時間と重錘衝撃力の関係を示す図10(B)のグラフ図が得られる。また、加速度計54で測定される加速度と重錘質量を乗じることでも、時間と重錘衝撃力の関係を得ることができる。
このように本実施例では、請求項2及5に対応して、実験により落石による衝撃力と時間との関係を設定し、この関係から動的弾性応答解析により弾性応答時の構造物の最大変位δdを求めて弾性応答時のエネルギーEdを算出するから、衝撃力作用時間や構造物の質量,剛性を考慮した前記弾性応答時の構造物の最大変位δdが得られ、信頼性の高い設計方法及び構造物が得られる。
図13及び図14は本発明の実施例4を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、上記実施例3と同様に、防護構造物に対する落石の衝撃力と作用時間との曲線を設定、あるいは最大衝撃力Poと作用時間Toを設定し、上述した図11のステップ3´の「動的弾性応答解析」に換えて後述する静的弾性応答解析と動的増幅率Dに基く設計を行う。
防護構造物の防護面たる屋根上に砂層(サンドクッション材)を設けた場合では、最大衝撃力Poは、同様に上記(1)式により求められる。
ここで、構造物(この例では、砂層を設けた屋根)の有効質量,剛性,固有周期などのデータを算出する。
そして、落石の衝撃力と作用時間との曲線(あるいは最大衝撃力Poと作用時間To)と前記データからあらかじめ与えられた式もしくはグラフを用いて、構造物の動的増幅率Dを求める。
尚、動的増幅率Dとは、設定した荷重時間曲線で動的荷重として作用させた場合の構造物の応答(この場合は変位)と落石荷重の最大値を静的に作用させた場合の構造物の応答の比である。
このように荷重時間曲線の形を仮定し、予め動的弾性応答解析を行い、「荷重作用時間/構造物の一次固有周期」と動的増幅率の関係を求めておく。したがって、個々の構造物の設計では、静的弾性応答解析を行い、その結果に動的増幅率Dを乗じて動的応答を推定する。尚、動的弾性応答解析は、上述した実施例4のようにして行うことができる。
静的弾性応答解析と動的増幅率Dに基く算出(S3´´)を行い、この算出(S3´´)から前記弾性応答時の最大変位δd(δd=δ´d×D)を求め(S5)、ステップ6に移行し、防護構造物が弾性応答した場合の吸収するエネルギーEdを算出(S6)し、弾塑性応答により吸収した場合の防護構造物の変位δn(弾塑性応答時変位)を算出(S7)し、その変位δnを防護構造物の終局変位δuと比較(S8)し、例えば終局変位δuより前記弾塑性応答時変位δdが小さければ、防護構造物は防護機能を有すると判断する。尚、判断(S4)で防護構造物が塑性変形を起こさない場合は、過剰設計と考えて、再度、防護構造物の設計強度を下げて、ステップ3´´へ戻る。
このように本実施例では、請求項3及び6に対応して、落石荷重による構造物の動的増幅率Dを求め、この動的増幅率Dと最大落石衝撃力Poに基き弾性応答時のエネルギーEdを算出するから、構造物の各種データに基いた最大変位δdが得られ、信頼性の高い設計方法及び構造物が得られる。
したがって、動的増幅率Dを用いることにより、計算で得られる静的弾性応答解析に基いて動的弾性応答解析と同様に構造物の動的応答を推定し、信頼性の高い結果を得ることができる。このように予め動的弾性応答解析を用いて動的増幅率Dを求めておくことにより、その都度、動的弾性応答解析を行うことなく、構造物の動的応答を推定することができる。
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、比較(S8)の後、判断(S4)を行うようにしてもよい。
以上のように、本発明のかかる落石防護構造物とその設計方法は、終局変位に基き、保護に必要な強度を備えた落石防護構造物を提供できると共に、防護構造物の終局耐力を精度よく設計することができる。
本発明の第1実施例を示す落石衝撃力と変位の関係を示すグラフ図である。 同上、設計方法のフローチャート図である。 同上、防護構造物の断面図である。 同上、防護構造物の骨組図である。 同上、作用衝撃力と載荷点鉛直変位のグラフ図である。 同上、屋根における曲げモーメントと曲率のグラフ図である。 同上、荷重と変位の関係を示すグラフ図である。 本発明の第2実施例を示す防護構造物の断面図である。 従来の設計に用いる荷重と変位の関係を示すグラフ図である。 本発明の第3実施例を示す衝撃力と時間との関係を示すグラフ図であり、図10(A)は半正弦曲線に仮定して得られたもの、図10(B)は実験データに基くものである。 同上、設計方法のフローチャート図である。 同上、実験装置の概略断面図である。 本発明の第4実施例を示す落石衝撃力と変位の関係を示すグラフ図である 同上、設計方法のフローチャート図である。
符号の説明
3 屋根
3A,13M 防護面
31 緩衝層
Po 設定された最大落石衝撃力
Ed 弾性応答時エネルギー
δd 弾性応答時変位
δu 終局変位
D 動的増幅率

Claims (6)

  1. 屋根を有する落石防護構造物の設計方法において、調査等により最大落石衝撃力を設定し、この最大落石衝撃力に対して前記屋根上に緩衝層を有する前記構造物が弾性応答すると仮定した場合に受ける弾性応答時のエネルギーを算出し、前記構造物の降伏点までの弾性変形と降伏点後の塑性変形とによる弾塑性応答により前記弾性応答時のエネルギーを吸収した場合の構造物の変位が終局変位より小さく、且つ前記構造物が塑性変形を起こす強度を前記最大落石衝撃力以下に設定することを特徴とする落石防護構造物の設計方法。
  2. 実験により落石による衝撃力と時間との関係を設定し、この関係から動的弾性応答解析により前記弾性応答時の構造物の最大変位を求めて前記弾性応答時のエネルギーを算出することを特徴とする請求項1記載の落石防護構造物の設計方法。
  3. 落石荷重による構造物の動的増幅率を求め、この動的増幅率と最大落石衝撃力に基き前記弾性応答時のエネルギーを算出することを特徴とする請求項1記載の落石防護構造物の設計方法。
  4. 屋根を有する落石防護構造物において、設定された最大落石衝撃力に対して前記屋根上に緩衝層を有する前記構造物が弾性応答すると仮定した場合に受ける弾性応答時のエネルギーを算出し、前記構造物の降伏点までの弾性変形と降伏点後の塑性変形とによる弾塑性応答により前記弾性応答時のエネルギーを吸収した場合の構造物の変位が終局変位より小さく、かつ前記落石衝撃力に対して塑性変形を起こす強度を有することを特徴とする落石防護構造物。
  5. 前記弾性応答時のエネルギーは、実験により設定した衝撃力と時間との関係から動的弾性応答解析により前記弾性応答時の構造物の最大変位を求めて算出するものであることを特徴とする請求項4記載の落石防護構造物。
  6. 前記弾性応答時のエネルギーは、落石荷重による構造物の動的増幅率と最大落石衝撃力に基づくものであることを特徴とする請求項4記載の落石防護構造物。
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