JP4170665B2 - フェニル基を有する核酸塩基アナログが導入された核酸 - Google Patents
フェニル基を有する核酸塩基アナログが導入された核酸 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4170665B2 JP4170665B2 JP2002139154A JP2002139154A JP4170665B2 JP 4170665 B2 JP4170665 B2 JP 4170665B2 JP 2002139154 A JP2002139154 A JP 2002139154A JP 2002139154 A JP2002139154 A JP 2002139154A JP 4170665 B2 JP4170665 B2 JP 4170665B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- dna
- compound
- residue
- lane
- mmol
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Saccharide Compounds (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、核酸塩基アナログ、該核酸塩基アナログが導入された核酸、例えば、DNA及び核酸、例えば、DNAの酸化耐性能の増強方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、フェニル基を有する核酸塩基アナログが導入されたDNA、該DNAの製造方法、DNAの酸化耐性能の増強方法及びフェニル基を有する核酸塩基に関する。
【0002】
【従来の技術】
DNAは、ヌクレオチド塩基対のπ電子がスタックした構造からなるものであり、電荷移動の媒体として認識され、実際に、実験理論的研究により、ある距離の電荷移動を媒介することが知られている。DNAの一電子酸化反応により生じたグアニンラジカルカチオン(ホール)は、近傍のG(デオキシグアニル酸残基)間の連続的なホッピングにより、離れたG部位に移動しうる。すなわち、DNAの酸化損傷は、グアニン塩基(デオキシグアニル酸残基)で生じ、離れた場所のグアニン塩基(デオキシグアニル酸残基)に伝搬する。
【0003】
前記DNAは、例えば、疾患の遺伝子診断、個体の同定等の診断分野又は研究分野において、DNAチップ等として利用されている。
【0004】
しかしながら、前記DNAを、DNAチップ等に用いる場合、前記一電子酸化反応を介したDNAの酸化損傷(例えば、切断等)及びDNA全体への該酸化損傷の伝搬により、診断の精度、装置の耐久性が低下する場合があるという欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、一電子酸化反応を介した酸化損傷及び該酸化損傷の伝搬を抑制し、一電子酸化反応を介した酸化に対して耐性である、フェニル基を有する核酸塩基アナログが導入された核酸、例えば、DNAなどを提供することを目的とする。また、本発明は、前記核酸、例えば、DNAを簡便かつ効率よく製造することができる、酸化耐性能を有するDNAの製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、所望の塩基配列を有する核酸の酸化耐性能を向上させることができる、核酸の酸化耐性能の増強方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、一電子酸化反応を介した核酸の酸化損傷及び核酸全体への該酸化損傷の伝搬を抑制すること、一電子酸化反応を介した酸化に対する耐性を核酸に付与することを可能にするプリンヌクレオチド誘導体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 DNAにおけるデオキシグアニル酸残基(G)を、N 2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換することを特徴とする、DNAの酸化耐性能の増強方法、
〔2〕 塩基配列中のG n (G n は、デオキシグアニル酸残基の連続配列を示し、nは、2以上の整数を示す)から10塩基長未満の位置に存在するGを、N 2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換する、前記〔1〕記載の増強方法、並びに
〔3〕 塩基配列中のG n (G n は、デオキシグアニル酸残基の連続配列を示し、nは、2以上の整数を示す)中のGを、N 2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換する、前記〔1〕又は〔2〕記載の増強方法、
に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のDNAは、フェニル基を有する核酸塩基アナログが導入されたDNAであり、グアニンのN2 位にフェニル基が導入されたフェニルグアニン残基を有するプリンデオキシリボヌクレオチド残基を構成単位の1つとして含有したDNAである。
【0010】
なお、本明細書において、「核酸塩基」とは、核酸の構成単位であるデオキシリボヌクレオチド残基を構成する塩基を意味する。
【0011】
また、「残基」とは、特定の化合物から誘導される官能基を意味し、例えば、フェニルグアニン残基とは、フェニルグアニル基を意味し、グアニン残基とは、グアニル基を意味する。
【0012】
さらに、本明細書において、「フェニル基を有する核酸塩基アナログ」とは、フェニルグアニンなどをいう。
【0013】
また、前記「フェニルグアニン残基を有するプリンデオキシリボヌクレオチド」としては、N2 −フェニルデオキシグアニル酸が挙げられる。
【0014】
DNAの構成単位としては、具体的には、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基、デオキシグアニル酸残基、デオキシアデニル酸残基、デオキシシチジル酸残基、デオキシチミジル酸残基などが挙げられている。なお、本発明においては、前記「DNAの構成単位」には、前記「(フェニル基を有する)核酸塩基アナログ残基を有するデオキシリボヌクレオチド」以外の慣用のデオキシリボヌクレオチドアナログをも包含する。
【0015】
本発明のDNAは、フェニル基を有する核酸塩基、特に、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基を構成単位として含有するため、デオキシグアニル酸残基を構成単位として含有するDNAよりも、一電子酸化反応を介した酸化損傷(切断)及び該酸化損傷の伝搬が抑制され、一電子酸化反応を介した酸化に対して耐性であるという優れた性質を発現する。したがって、本発明のDNAにより、安定性、特に、酸化条件下での安定性に優れた核酸材料を提供することが可能になる。
【0016】
本発明のDNAは、所望の塩基配列中の所望の位置のGが、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換された核酸であればよく、具体的には、塩基配列中のG(デオキシグアニル酸残基)の代わりに、下記式(I):
【0017】
【化3】
【0018】
で表わされる基(N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基)を構成単位として含有するDNAが挙げられる。
【0019】
本発明のDNAにおいて、塩基配列におけるN2 −フェニルデオキシグアニル酸残基への置換の数は、DNAのGC含量及び配列により適宜設定されうるが、例えば、少なくとも1個、具体的には、1個若しくは数個又はそれ以上が挙げられる。また、DNAの塩基配列中の全てのGが、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換されていてもよい。
【0020】
また、本発明のDNAにおいて、塩基配列におけるN2 −フェニルデオキシグアニル酸残基の導入部位は、特に限定されないが、例えば、一電子酸化反応を介した酸化損傷の伝搬を抑制する観点から、塩基配列中のGn 中のG、該塩基配列中のGG塩基連鎖から、好ましくは、10塩基長未満、より好ましくは、6塩基長以下、さらに好ましくは、4塩基長以下の位置等が挙げられる。なお、前記「Gn 」は、デオキシグアニル酸残基の連続配列を示し、nは、少なくとも2の整数、具体的には、2以上の整数を示す。
【0021】
本発明のDNAは、DNAにおけるデオキシグアニル酸残基を、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換することにより得ることができる。かかるDNAの製造方法も本発明に包含される。
【0022】
本発明のDNAの製造方法は、DNAにおけるデオキシグアニル酸残基を、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換することを1つの特徴とする。具体的には、本発明のDNAの製造方法は、(A)DNAの化学合成に際し、塩基配列中におけるN2 −フェニルデオキシグアニル酸残基の導入対象位置に対応して、デオキシグアニル酸誘導体の代わりに2−フルオロデオキシイノシン酸誘導体を導入して、2−フルオロデオキシイノシン酸残基を有するDNAを合成する工程、及び
(B)前記工程(A)で得られたDNA中の2−フルオロデオキシイノシン酸残基を、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に変換する工程、
を含む方法等が挙げられる。本発明のDNAの製造方法によれば、DNAにおけるデオキシグアニル酸残基を、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換するため、本発明のDNAを簡便かつ効率よく製造することができ、従来、核酸の化学合成に用いられている方法及び装置をそのまま適用することができる。
【0023】
前記工程(A)において、2−フルオロデオキシイノシン酸残基を有するDNAの合成は、慣用のホスホロアミダイト(phosphoramidite)法、ホスホトリエステル(phosphotriester) 法等に従って行なわれる。ここで、所望の塩基配列中の所望のGの位置に、2−フルオロデオキシイノシン酸残基が導入されたDNAが得られる。
【0024】
前記工程(A)において、慣用のホスホロアミダイト(phosphoramidite)法によりDNAを合成する場合、2−フルオロデオキシイノシン酸誘導体とは、2−フルオロ−5’−O(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシイノシン 3’−O−(2−シアノエチル N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイトをいう。
【0025】
前記2−フルオロ−5’−O(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシイノシン 3’−O−(2−シアノエチル N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイトは、図1に示される合成スキームに従って合成されうる。
【0026】
図1に示される合成スキームにおいて、まず、例えば、アセド(Acedo, M.) ら、Nucleic Acid Res., 22, 2982-2989 (1994) に従って、2−デオキシグアノシン(図1中、化合物1)を出発物質として、2−フルオロ−3’−O,5’−O−ビス(ターシャリーブチルジメチルシリル)−O6(p−ニトロフェネチル)−2’−デオキシイノシン(図1中、化合物4)を合成する。ここで、ジメチルホルムアミドを溶媒として、イミダゾール存在下に、化合物1と、ターシャリーブチルメチルシリルクロリド(TBDMSCL) とを反応させ、該化合物1の2つの水酸基をシリル化して、化合物2を得る。化合物1とTBDMSCL との反応における使用量の量比は、1〜5(重量比)、好ましくは、1〜3(重量比)、より好ましくは、1〜1.8(重量比)であることが望ましい。また、反応条件としては、例えば、室温で24時間などが挙げられる。ついで、1,4−ジオキサンを溶媒として、前記化合物2と、ジエチルアゾダイカルボキシレート(DEAD)と、トリフェニルフォスフィン(Ph3P)と、パラニトロフェニルェタノール(NPE) とを反応させ、化合物3を得る。前記化合物2と、DEADと、Ph3Pと、NPE との反応における使用量の量比は、1:0.5:0.5:0.5〜1:5:5:5(重量比)、好ましくは、1:0.5:0.5:0.5〜1:3:3:3(重量比)、より好ましくは、1:0.5:0.5:0.5〜1:1:1:1(重量比)であることが望ましい。また、反応条件は、−10℃〜50℃であることが望ましい。その後、得られた化合物3を、トルエン中ターシャリーブチルナイトライト(t-Butyl nitrite) と反応させ、ジアゾニウム塩を系中で発生させ、続いて、ポリビニルピリジンフッ化水素塩(PVPHP) と反応させて、アミノ基をフッ素に置換して、化合物4を得る。前記化合物3とt-Butyl nitrite との反応における使用量の量比は、10:1〜2:1(重量比)、好ましくは、5:1〜2:1(重量比)、より好ましくは、3:1〜1:1(重量比)であることが望ましい。また、反応条件は、−20℃〜10℃であることが望ましい。
【0027】
ついで、化合物4から、2−フルオロ−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−O6−(p−ニトロフェネチル)−2’−デオキシイノシン(図中、化合物5)を合成する。ここで、酢酸及びテトラヒドロフラン(THF) 中、化合物4とテトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)とを攪拌する。酢酸とTHF と化合物4とTBAFとの量比は、1:10:1:3〜5:50:1:15(重量比)、好ましくは、1:10:1:3〜2:20:1:6(重量比)であることが望ましい。ついで、得られた混合物から、溶媒を留去し、得られた産物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相は、n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)に供して精製し、粗生成物を得る。得られた粗生成物とジメチルアミノピリジン(DMAP)の無水ピリジン溶液に、ジメトキシトリチルクロライドを添加し、室温で攪拌する。粗生成物とDMAPとジメトキシトリチルクロライドとの量比は、2:0.01:1〜2:0.5:1(重量比)、好ましくは、2:0.01:1〜2:0.1:1(重量比)であることが望ましい。得られた混合物から、溶媒を留去し、得られた産物を、酢酸エチルで抽出し、さらに、得られた抽出物を、水及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥させる。得られた産物から、溶媒を留去し、濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相は、n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)に供して精製し、無色泡状の化合物5を得る。
【0028】
その後、前記化合物をアセトニトリルで共沸し、得られた産物を、アセトニトリルに溶解する。ついで、得られた産物に、テトラゾール、2−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロアミダイトを添加し、さらに、室温で攪拌する。得られた産物を、酢酸エチルで抽出し、得られた抽出物を、水及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。得られた産物から、溶媒を留去して濃縮する。以上の操作により、淡黄色泡状の2−フルオロ−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシイノシン 3’−O−(2−シアノエチル N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(図中、化合物6)が得られる。
【0029】
ついで、工程(B)において、前記工程(A)で得られたDNA中の2−フルオロデオキシイノシン酸残基を、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に変換する。
【0030】
2−フルオロデオキシイノシン酸残基のN2 −フェニルデオキシグアニル酸残基への置換には、アニリンなどが用いられる。ここで、2−フルオロデオキシイノシン酸残基のN2 −フェニルデオキシグアニン残基への置換に際し、アニリンは、大過剰であることが望ましい。2−フルオロデオキシイノシン酸残基のN2 −フェニルデオキシグアニル酸残基への置換の反応条件としては、例えば、反応系に、3M アニリン−塩酸塩と3M トリエチルアミンとを含有した水溶液500μlを添加し、得られた混合物を60℃で40時間インキュベートすることなどが挙げられる。
【0031】
本発明により、DNAの酸化耐性能の増強方法も提供される。本発明のDNAの酸化耐性能の増強方法は、DNAにおけるデオキシグアニル酸残基を、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換することに1つの特徴がある。
【0032】
本発明のDNAの酸化耐性能の増強方法によれば、DNAにおけるデオキシグアニル酸残基を、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換するため、得られたDNAに酸化耐性能を付与すること又は向上させることができるという優れた効果を発揮する。
【0033】
本発明のDNAの酸化耐性能の増強方法は、前記DNAの製造方法と同様の操作及び条件で実施できる。
【0034】
なお、本発明によれば、グアニンのN2 位にフェニル基が導入されたフェニルグアニン残基により、一電子酸化反応による損傷を防ぐことに基づき、グアニンのN2 位にフェニル基が導入されたフェニルグアニン残基を有するプリンリボヌクレオチド残基を構成単位の1つとして含有した、フェニル基を有する核酸塩基アナログが導入されたRNA、及びRNAにおけるグアニル酸残基をN2 −フェニルグアニル酸残基に置換することにより、RNAの酸化耐性能を増強する方法が提供される。本発明のRNAは、所望の塩基配列中の所望の位置のグアニル酸残基をN2 −フェニルグアニル酸に置換することにより得られうる。例えば、所望の塩基配列中の所望の位置に2−フルオロイノシン酸残基が導入されたRNAを合成し、ついで、得られた産物とアニリンとを反応させることにより得られうる。
【0035】
ここで、RNAの構成単位としては、具体的には、N2 −フェニルグアニル酸、グアニル酸残基、アデニル酸残基、シチジル酸残基、チミジル酸残基などが挙げられている。なお、本発明においては、前記「RNAの構成単位」には、「(フェニル基を有する)核酸塩基アナログ残基を有するリボヌクレオチド」(すなわち、前記N2 −フェニルグアニル酸)以外の慣用のリボヌクレオチドアナログをも包含する。
【0036】
また、本発明によれば、グアニンのN2 位にフェニル基が導入されたフェニルグアニン残基を有したプリンデオキシリボヌクレオチド誘導体、すなわち、N2 −フェニルデオキシグアニル酸などが提供される。前記N2 −フェニルデオキシグアニル酸は、例えば、2−フルオロデオキシイノシン酸とアニリンとの反応により得られうる。
【0037】
さらに、本発明によれば、グアニンのN2 位にフェニル基が導入されたフェニルグアニン残基を有したプリンリボヌクレオチド誘導体、すなわち、N2 −フェニルグアニル酸などが提供される。前記N2 −フェニルグアニル酸は、例えば、2−フルオロイノシン酸とアニリンとの反応により得られうる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
【0039】
実施例1 N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基が導入されたDNAの合成
表1に列挙されたN2 −フェニルデオキシグアニル酸残基(dPhG)が導入されたDNAオリゴマーとその相補鎖とを合成した。なお、以下、本実施例においては、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基(dPhG)が導入されたDNAオリゴマー及びその相補鎖を、「dPhG含有DNA」と表記する。
【0040】
【表1】
【0041】
表1において、PhGG1は、21マーのGG1中におけるG15G二塩基連鎖のG15がdPhGに置換されたものである。CNBPU1は、前記GG1に相補的な配列を有するものであり、シアノベンゾフェノン置換ウリジル酸残基(dCNBPU)を光誘導一電子酸化剤として含むものである。なお、かかるCNBPU1は、後述の製造例1に従って、製造される。T1は、前記CNBPU1におけるdCNBPUの代わりにチミジンを含むものである。二本鎖GG1/CNBPU1及び二本鎖PhGG1/CNBPU1において、グアニンラジカルカチオンは、光励起したdCNBPUへの一電子移動によりG8 に選択的に生じた部位である。GG5は、GG1と同じ隣接配列を有し、かつ5つのGG二塩基連鎖を含むものである。PhGGG5(8)及びPhGG5(16)は、GG5のG8 及びG16のそれぞれがdPhGに置換されたものである。GG4及びPhGG4(8)は、それぞれ、GG5のG16G部位及びPhGG5(8)のG16G部位がT16Aに置換されたものである。c−GG5及びc−GG4は、それぞれ、GG5及びGG4に対する相補鎖である。
【0042】
dPhG含有DNAを、2−フルオロデオキシイノシン酸残基が導入された対応のDNAから、アニリンによるフッ素の置換により合成した。dPhG含有DNAの合成スキームを図1及び図2に示す。
【0043】
図1は、2−フルオロ−5’−O(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシイノシン 3’−O−(2−シアノエチル N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト(図中、化合物6)の合成スキームを示す。
【0044】
(1)2−フルオロ−3’−O,5’−O−ビス(ターシャリーブチルジメチルシリル)−O6(p−ニトロフェネチル)−2’−デオキシイノシン[2-fluoro-3'-O,5'-O-bis(tert-butyldimethylsilyl)-O6-(p-nitrophenetyl)-2'-deoxyinosine](化合物4)の合成
図1において、2−デオキシグアノシン(化合物1)からの化合物4の合成は、例えば、アセド(Acedo, M.) ら、Nucleic Acid Res., 22, 2982-2989 (1994) に従って行なわれうる。
【0045】
まず、ジメチルホルムアミドを溶媒として、化合物1 10.0gを、イミダゾール13.7g 存在下に、ターシャリーブチルメチルシリルクロリド(TBDMSCL) 17.4g と37℃12時間反応させ、該化合物1の2つの水酸基をシリル化して、化合物2を得た。ついで、1,4−ジオキサンを溶媒として、前記化合物2 5.1g と、ジエチルアゾダイカルボキシレート(DEAD)40%トルエン溶液を5.9 mLと、トリフェニルフォスフィン(Ph3P)3.4gと、パラニトロフェニルェタノール(NPE) 2.1gとを、37℃20時間の条件下に反応させ、化合物3を得た。前記化合物3 1.8g を、トルエン50mL中ターシャリーブチルナイトライト(t-Butyl nitrite) 750 μl とポリビニルピリジンフッ化水素塩(PVPHP) 6.1gを-4℃2時間反応させて、アミノ基をフッ素に置換して、化合物4を得た。
【0046】
(2)2−フルオロ−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−O6−(p−ニトロフェネチル)−2’−デオキシイノシン[2-fluoro-5'-O-(4,4'-dimethoxytirityl)-O6-(p-nitorophenetyl)-2'-deoxyinosine] (化合物5)の合成
前記(1)で得られた化合物4 650.0mg (1.01mmol)と酢酸145 μl (2.53mmol)を含むテトラヒドロフラン(THF) 溶液12mlにテトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)の1M THF溶液2.5ml (2.50mmol)を添加し、90分間攪拌した。得られた混合物から、溶媒を留去し、得られた産物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相は、n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)に供して精製し、2-fluoro-2'-deoxyinosineの粗生成物を得た。
【0047】
得られた粗生成物とジメチルアミノピリジン(DMAP) 1.3mg(0.01mmol)の無水ピリジン溶液10mlに、ジメトキシトリチルクロライド 375.0mg (1.11mmol) を添加し、室温で4時間攪拌した。得られた混合物から、溶媒を留去し、得られた産物を、酢酸エチルで抽出した。得られた抽出物を、水及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、ついで、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた産物から、溶媒を留去し、濃縮した。得られた産物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相は、n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)に供して精製し、無色泡状の2−フルオロ−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−O6−(p−ニトロフェネチル)−2’−デオキシイノシン[2-fluoro-5'-O-(4,4'-dimethoxytirityl)-O6-(p-nitorophenetyl)-2'-deoxyinosine] (図1中の化合物5)484.0mg (0.671mmol, 2段階合計収率67%)を得た。
【0048】
化合物5の核磁気共鳴スペクトルデータは、 1H NMR(CDCl3, 400MHz) 2.50 (ddd, 1H, J=13.2, 6.4, 4.0 Hz), 2.74 (ddd, 1H, J=13.2, 6.8, 6.4 Hz), 3.28 (t, 2H, J=6.8 Hz), 3.34 (dd, 1H, J=10.2, 5.0 Hz), 3.40 (dd, 1H, J=10.2, 4.6 Hz), 3.72 (m, 1H), 3.74 (s, 6H), 4.64 (m, 1H), 4.80 (t, 2H, J=6.8 Hz), 6.34 (pseudo t, 1H, J=6.6 Hz), 6.74-6.78 (4H), 7.14-7.37 (9H), 7.46 (d, 2H, J=8.8 Hz), 8.02 (s, 1H), 8.14 (d, 2H, J=8.8Hz); FAB-MS m/z 722 [(M+H)+]である。
【0049】
(3)2−フルオロ−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシイノシン 3’−O−(2−シアノエチル N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)[2-fluoro-5'-0-(4,4'-dimethoxytrityl)-2'-deoxyinosine 3'-O-(2-cyanoetyl N,N-diisopropylphosphoramidite)](化合物6)の合成
前記(2)で得られた化合物5 111.8mg (0.155mmol)をアセトニトリルで共沸した。得られた産物を、アセトニトリル(1.5ml) に溶解し、得られた溶解物に、テトラゾール 16mg(0.228mmol)、2−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロアミダイト 65ml (0.226 mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。得られた産物を、酢酸エチルで抽出した。得られた抽出物を、水及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた産物から、溶媒を留去して濃縮し、淡黄色泡状の化合物6(ホスホロアミダイト化合物)を158.5mg 得た。
【0050】
(4)dPhG含有DNAの合成
図2に示すように、dPhG含有DNAの合成は、まず、2−フルオロデオキシイノシンが導入されたDNAを得、ついで、ポストモデイフイヶーションにより、前記2−フルオロデオキシイノシンが導入されたDNA中の2−フルオロデオキシイノシンを、dPhGに変換することによって行なった。
【0051】
前記2−フルオロデオキシイノシンを含むDNAの合成は、前記化合物6(ホスホロアミダイト化合物)を用いた標準的な固相合成法により行なった。
【0052】
支持体を保持したまま、合成したDNAを取り出した。ついで、前記DNAをそのまま、0.5M DBU(1,8−ジアザビシクロウンデセン)のアセトニトリル溶液で、室温で20分間処理して、6位のp−ニトロフェニル基を脱離させた。得られた産物を、1% トリエチルアミンのアセトニトリル溶液及びアセトニトリルで洗浄し、さらに、3Mアニリンで、60℃、40時間処理して、2位へのフェニル基の導入、脱保護及び支持体からの切り出しを同時に行なった。得られた産物を、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供して、精製し、dPhG含有DNAを得た。
【0053】
製造例1 シアノベンゾフェノン置換ウリジンが導入されたDNAの合成
図3及び図4に示す合成スキームに従って、m−ブロモ安息香酸(化合物2)から、5’−O−DMTr−dCNBPU 1とそのホスホロアミダイト誘導体(化合物14)とを合成した。
【0054】
(1)3’−ブロモ−4−メトキシベンゾフェノン(化合物8)の合成
ベンゼン(35ml)中化合物7(10.4g、51.8mmol)の懸濁物に、塩化オキサリル(7.0ml、80.2mmol)と、触媒としてDMFとを添加し、得られた混合物を室温で3時間攪拌した。得られた産物を真空下、蒸発乾固させ、得られた残渣をCS2 (40ml)に溶解させた。ついで、得られた溶液に、アニソール(11.3ml、104mmol)と三塩化アルミニウム無水物(10.9g、82.1mmol)とを添加し、得られた混合物を室温で3時間攪拌した。得られた産物を、クラッシュアイス(45g)上、濃塩酸(10ml)に注ぎ、30分間攪拌した。得られた粗生成物をヘキサンと酢酸エチルで再結晶化し、化合物8を得た(12.0g、収率80%)。
【0055】
(2)3’−ブロモ−4−ヒドロキシベンゾフェノン(化合物9)の合成
ベンゼン(45ml)中化合物8(10.1g,34.7mmol)の溶液に三塩化アルミニウム(11.6g,86.7mmol)を添加し、得られた混合物を還流下2時間攪拌した。得られた産物をクラッシュアイス(40g)上、濃塩酸(5ml)に注ぎ、30分間攪拌した。得られた粗生成物をヘキサンと酢酸エチルとで再結晶化し、化合物9を得た(6.81g,収率72%)。
【0056】
(3)3’−トリメチルシリルエチニル−4−ヒドロキシベンゾフェノン(化合物10)の合成
トリエチルアミン(20ml)中化合物9(1.51g,5.41mmol)と酢酸パラジウム(II)(31.7mg,0.14mmol)とトリフェニルホスフィン(103mg,0.39mmol)との混合物にエチニルトリメチルシラン(1.50ml,10.6mmol)を添加し、得られた混合物を窒素還流下5時間攪拌し、得られた産物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相として、n−ヘキサン:酢酸エチル=8:1を使用)に供して、化合物10を得た(1.28g,80%)。
【0057】
(4)4−(3’−トリメチルシリルエチニルベンゾイル)フェニル トリフルオロメタンスルフォネート(化合物11)の合成
化合物10(1.04g,3.52mmol)のピリジン(15ml)溶液に、穏やかにトリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.68ml,4.04mmol)を添加した。得られた混合物を0℃で5分間攪拌し、室温まで温め、さらに、2時間攪拌し、得られた産物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相として、n−ヘキサン:酢酸エチル=20:1を使用)に供して、化合物11を得た(1.42g,94%)。
【0058】
(5)4−(3−トリメチルシリルエチニルベンゾイル)ベンゾニトリル(化合物12)の合成
ベンゼン(12ml)中化合物11(537mg,1.26mmol)とシアン化カリウム(98.6mg,1.51mmol)と18−クラウン−6(132mg,0.50mmol)との混合物に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(290mg,0.25mmol)を添加した。得られた混合物を窒素還流下2時間攪拌し、得られた産物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相として、n−ヘキサン:酢酸エチル=20:1を使用)に供して、化合物12を得た(152mg,40%)。
【0059】
(6)4−(3−エチニルベンゾイル)ベンゾニトリル(化合物13)の合成
THF(10ml)中化合物7(730mg,2.40mmol)に酢酸(0.2ml,3.5mmol)とフッ化テトラブチルアンモニウム(3.60mlの1.0M フッ化テトラブチルアンモニウムのTHF溶液,3.6mmol)とを添加し、得られた混合物を室温で2時間攪拌し、得られた産物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相として、n−ヘキサン:酢酸エチル=15:1を使用)に供して、化合物13を得た(513mg,92%)。
【0060】
(7)5−〔3−(4−シアノベンゾイル)フェニルエチニル〕−2’−デオキシ−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン(化合物15)の合成
10mlの脱気DMF中化合物13(275mg,1.19mmol)と2’−デオキシ−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−5−ヨードウリジン(化合物14)とトリエチルアミン(0.28ml,2.0mmol)との溶液に、窒素雰囲気下、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(121mg,0.11mmol)とヨウ化銅(189mg,1.0mmol)を添加した。得られた混合物を室温で5時間攪拌し、得られた産物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相として、クロロホルム:メタノール=100:1を使用)に供して、淡黄色泡状の化合物15を得た(720mg,93%)。 1H NMR(CDCl3, 400MHz)δ2.33(m, 1H), 2.53(m, 1H), 3.31(m, 1H), 3.42(m, 1H), 3.66(s, 3H), 3.67(s, 3H), 4.09(m, 1H), 4.57(m, 1H), 6.34(m, 1H), 6.72-6.76 (4H), 7.07-7.42 (12H), 7.65-7.77 (5H), 8.26(s, 1H); 13C NMR (CDCl3, 100MHz)δ40.4, 54.9, 63.4, 70.4, 79.1, 83.1, 85.2, 85.9, 86.1, 90.7, 98.0, 113.1, 113.2, 114.7, 118.0, 122.6, 126.6, 127.5, 127.8, 129.1, 129.3, 129.4, 129.5, 129.7, 129.9, 131.7, 135.2, 135.5, 136.3, 140.4, 143.1, 144.5, 149.2, 158.0, 158.0, 161.3, 194.0; FAB-MS m/z 760 [(M+H) + ] ;HRMS C46H38O8N3 [(M+H)+ ] 計算値760.2660, 測定値760.2660。
【0061】
(8)5−〔3−(4−シアノベンゾイル)フェニルエチニル〕−2’−デオキシ−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)ウリジン 3’−O−(2−シアノエチル N,N−ジイソ−プロピルホスホロアミダイト)(化合物16)の合成
無水アセトニトリル(2ml)中化合物15(241mg,0.34mmol)の溶液に、窒素雰囲気下、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.13ml,0.45mmol)とテトラゾール(0.93mlの0.5M テトラゾールCH3 CN溶液,0.47mmol)とを添加した。得られた混合物を室温で1.5時間攪拌した。得られた混合物を酢酸エチルで希釈し、水及び塩水で洗浄し、無水MgSO4 で乾燥した。その後、溶媒を除去することにより、2つのジアステレオマーの混合物として、化合物14を得た(292mg,収率96%)。前記化合物16を、精製せずに、自動化DNA合成に用いた。ホスホロアミダイトの形成について、31P NMR により確認した。31P NMR (C6D6, 162MHz)δ149.5, 149.1。
【0062】
(9)オリゴマー合成
アプライド・バイオシステム 392 DNAシンセサイザーを用い、標準のβ−(シアノエチル)ホスホロアミダイト法により自動化DNA合成を行なった。化合物16のカップリングに際し、カップリング時間を15分間としてことを除き、通常条件にて行なった。濃アンモニアで37℃で3時間の処理により、合成オリゴマーを脱保護し、固相から取り除いた。オリゴマーの精製は、CHEMCOBOND 5−ODS−H HPLCカラム(10×150mm)上、100mMトリエチルアンモニウム酢酸(TEAA)中5−25%アセトニトリル、20分間のリニアグラジェントで行なった。
【0063】
実施例2 dPhG及びdPhG含有DNAの評価
0.1M LiClO4 を含むDMF中において、サイクリックボルタンメトリーにより、dPhGの酸化電位を測定した。その結果、dPhGの酸化電位は、0.70V(Ag/Ag+ 比,なお、Gは0.67Vである)であった。
【0064】
また、50μM 塩基濃度、100mM NaCl下において、10マーのdPhG含有DNA(二本鎖)であるd(GATAGTPhGGAC)[配列番号:12]/d(GTCCACTATC)[配列番号:13] の融解温度(Tm値)を、260nm の吸光度の温度変化により求めた。その結果、前記dPhG含有DNAのTm値は、対応するG含有DNA(二本鎖)よりも3.7℃高かった。
【0065】
また、前記dPhG含有DNAの円二色性(CD)スペクトルを調べた。その結果を図5に示す。
【0066】
図5に示すCDスペクトルの結果より、前記dPhG含有DNAは、典型的なB型構造を有することがわかる。
【0067】
実施例3 dPhG含有DNAの評価
(1)内部酸化剤含有DNAを用いた酸化反応
二本鎖DNA CNBPU1/GG1及びdPhG含有二本鎖DNA CNBPU1/PhGG1のそれぞれに対して、312nmで0℃、60分間、光照射した。得られた各産物を、Neatピペリジン200 μl と共に、90℃20分間インキュベートした。得られた各産物を、それぞれ、変性15%ポリアクリルアミド/7M尿素ゲルで電気泳動した。 各レーンでゲルにサプライする前にシンチレーションカウンターで同じカウント数になるように揃えた。各レーン間の比較のため、バンド強度はデンシトメトリーで定量した。結果を図6のパネルa)に示す。なお、図6中、dCNBPUは、四角で囲んで示されたAの逆側に位置する。図6のパネルa)において、レーン1は、GG1のマキサム−ギルバートA+Gシークエンス反応の結果を示し、レーン2は、二本鎖DNA CNBPU1/GG1の結果を示し、レーン3は、dPhG含有二本鎖DNA CNBPU1/PhGG1の結果を示す。また、各レーンの最上部のバンドは、未切断の全長GG1に対応する。
【0068】
図6のパネルa)のレーン2に示すように、二本鎖DNA CNBPU1/GG1への光照射及びピペリジン処理により、G15G二塩基連鎖の5’末端側のGの酸化を介した切断を示す強いバンドの生成が観察される。顕著に対照的に、パネルa)のレーン3に示すように、dPhG含有二本鎖DNA PhGG1/CNBPU1におけるPhG15の酸化を介した切断を示すバンドは、レーン2の二本鎖DNA GG1/CNBPU1におけるG15の酸化を介した切断を示すバンドよりも顕著に弱いことがわかる。
【0069】
また、未切断の完全長GG1に対するG15の酸化を介した切断を示すバンドの相対バンド強度は、0.31であり、PhGG1のPhG15の酸化を介した切断を示すバンドの相対バンド強度は、わずか0.05であった。
【0070】
以上の結果より、内部酸化剤を含有した二本鎖DNAにおいて、dPhGは、酸化反応を介した切断を抑制することがわかる。
【0071】
(2)一電子酸化剤リボフラビンを用いたdPhGにおける酸化反応
リボフラビンの存在下、dPhG含有二本鎖DNA T1/PhGG1及び二本鎖DNA T1/GG1のそれぞれに対して、366nmで0℃、60分間光照射した。得られた各産物を、ピペリジン200 μl と共に、90℃20分間インキュベートした。得られた各産物を、それぞれ、変性15%ポリアクリルアミド/7M尿素ゲルで電気泳動した。結果を、図6のパネルb)に示す。図6のパネルb)において、レーン1は、二本鎖DNA T1/GG1の結果を示し、レーン2は、dPhG含有二本鎖DNA T1/PhGG1の結果を示し、レーン3は、GG1のマキサム−ギルバートA+Gシークエンス反応の結果を示す。また、各レーンの最上部のバンドは、未切断の全長GG1に対応する。
【0072】
図6のパネルb)のレーン1に示すように、二本鎖DNA GG1/T1におけるG15の酸化を介した切断を示す強いバンドの生成が観察されたが、レーン2に示すように、dPhG含有二本鎖DNA T1/PhGG1におけるPhG15の酸化を介した切断を示すバンドは、かすかなバンドであった。
【0073】
以上の結果より、二本鎖DNAにおいて、dPhGは、リボフラビンの存在下の酸化反応を介した切断を抑制することがわかる。
【0074】
(3)切断部位の確認
リボフラビンの存在下、一本鎖dPhG含有オリゴマーd(ATTTATAGTAGTAGTAPhGTATTT)[配列番号:14] に対して、366nmで0℃、60分間光照射した。得られた産物を、ピペリジン200 μl と共に、90℃20分間インキュベートした。
【0075】
ついで、得られた各産物を、それぞれ、変性15%ポリアクリルアミド/7M尿素ゲルで電気泳動した。その結果を図7に示す。
【0076】
図7に示すように、リボフラビン存在下での光照射及び続くピペリジン処理により、鎖切断が、dPhGで実際に生じることが確認された。
【0077】
(4)dPhG含有DNAの酸化耐性の評価
dPhG含有DNAについて、酸化耐性を調べた。
【0078】
リボフラビン200 μM の存在下、dPhG含有DNA 50 μM strand濃度に対して、366nmで0℃、60分間光照射した。得られた産物を、alkaline phosphatase (33U/μl) 、ヘビ毒リン酸ジエステラーゼ (0.1 U/μl) とP1 nuclease (33 U/μl) を加え、0℃で12時間反応させた。
【0079】
ついで、得られた産物を、逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供した。移動相は、0.1M TEAA pH7.0-アセトニトリルであり、流速は、3.0 ml/minである。結果を図8に示す。
【0080】
図8に示すように、二本鎖で68%のdPhGが、無傷のままであり、一本鎖で36%のdPhGが、無傷のままであることがわかった。
【0081】
また、複数個のGG二塩基連鎖を有するdPhG含有DNAについて、酸化耐性を調べた。
【0082】
リボフラビンの存在下、複数個のGG二塩基連鎖を有するDNA〔GG5/c−GG5、PhGG5(8)/c−GG5、PhGG5(16)/c−GG5、PhGG5(16)/c−GG5、PhGG4(16)/c−GG4及びGG4/c−GG4〕のそれぞれに対して、366nmで0℃、60分間光照射した。得られた各産物を、ピペリジン200 μlと共に、90℃20分間インキュベートした。得られた各産物を、それぞれ、変性15%ポリアクリルアミド/7M尿素ゲルで電気泳動した。結果を、図9に示す。図9中、レーン1は、GG5のマキサム−ギルバートA+Gシークエンス反応の結果を示し、レーン2は、二本鎖DNA GG5/c−GG5の結果を示し、レーン3は、dPhG含有二本鎖DNA PhGG5(16)/c−GG5の結果を示し、レーン4は、dPhG含有二本鎖DNA PhGG5(8)/c−GG5の結果を示し、レーン4は、dPhG含有二本鎖DNA PhGG5(16)/c−GG5の結果を示し、レーン5は、dPhG含有二本鎖DNA PhGG4(16)/c−GG4の結果を示し、レーン6は、二本鎖DNA GG4/c−GG4の結果を示し、レーン7は、GG4のマキサム−ギルバートA+Gシークエンス反応の結果を示す。
【0083】
図9に示されるように、dPhG含有二本鎖の酸化分解は、dPhGだけでなく、dPhGから離れたGG部位でも顕著に抑制されることがわかる。リボフラビン存在下での光照射されたGG5の鎖切断は、同等の効率で全GG部位で生じたが、PhGG5(8)のGG部位の切断は、PhG8 Gに加え、G12G及びG16Gで抑制された。
【0084】
また、G12Gと対照的に、G24Gでの切断は、GG5における切断に比べて弱くしか抑制されず、鎖切断の抑制の効率は、dPhGからの距離が増えるにつれて減少することを示す。切断抑制の距離依存性は、5つのGG部位の中央にdPhGを含むPhGG5(16)の酸化反応で明らかに示された。PhGG部位に加え、全4つのGG部位で切断の効率は、顕著に減少した。
【0085】
dPhGによる切断抑制の機構における顕著な見識が、GG4及びPhGG4(8)のリボフラビン感受性酸化により得られた。GG4の鎖切断は、全4つのGG部位で観察され、PhGG4(8)の切断は、G8 G部位及びG12G部位で強く抑制されるが、G20G部位及びG24G部位では全く抑制されなかった。
【0086】
PhGG4(8)/c−GG4におけるG12G部位及びG20G部位は、6つの介在AT塩基対で分離されており、2つの部位間のホール移動速度は、G8 とG12との間のホール移動速度(例えば、G.+TTGからGTTG.+に関して2.5×106 s-1)及びG部位における水でのホールトラッピングの推測速度(例えば、6×104 s-1)よりも極めて小さいことが予想された。したがって、dPhG含有二本鎖における任意のG部位における酸化分解の抑制の効率は、dPhGへのホール移動の速度の増加に伴い増加したことが明らかである。
【0087】
以上の結果より、
1)dGの環外アミノ基の置換が、一電子酸化反応に対するdGの化学的性質を調節するのに有効であること、
2)グアニンラジカルカチオンの分解が、dPhG付近で効率よく抑制されることが示された。これらの結果から、dPhGが、一電子酸化反応に対する二本鎖DNAの内部抗酸化剤として用いることができることが示唆される。また、DNAへのかかるdPhGの多数の取り込みは、好気性条件でのDNA、特に高GC含量のDNAの化学的不安定性を補うことが期待される。
【0088】
配列表フリーテキスト
配列番号:1は、合成DNAの配列である。
【0089】
配列番号:2は、合成DNAの配列であり、該配列中、15位のnは、N2 −フェニルデオキシグアノシンである。
【0090】
配列番号:3は、合成DNAの配列である。
【0091】
配列番号:4は、合成DNAの配列であり、該配列中、7位のnは、N2 −シアノベンゾフェノン置換デオキシウリジンである。
【0092】
配列番号:5は、合成DNAの配列である。
【0093】
配列番号:6は、合成DNAの配列であり、該配列中、8位のnは、N2 −フェニルデオキシグアノシンである。
【0094】
配列番号:7は、合成DNAの配列であり、該配列中、16位のnは、N2 −フェニルデオキシグアノシンである。
【0095】
配列番号:8は、合成DNAの配列である。
【0096】
配列番号:9は、合成DNAの配列である。
【0097】
配列番号:10は、合成DNAの配列であり、該配列中、8位のnは、N2 −フェニルデオキシグアノシンである。
【0098】
配列番号:11は、合成DNAの配列である。
【0099】
配列番号:12は、合成DNAの配列であり、該配列中、7位のnは、N2 −フェニルデオキシグアノシンである。
【0100】
配列番号:13は、合成DNAの配列である。
【0101】
配列番号:14は、合成DNAの配列であり、該配列中、17位のnは、N2 −フェニルデオキシグアノシンである。
【0102】
【発明の効果】
本発明の核酸によれば、一電子酸化反応を介した酸化損傷(切断)及び該酸化損傷の伝搬を抑制し、一電子酸化反応を介した酸化に対して耐性であるため、安定性、特に、酸化条件下での安定性に優れた核酸材料を提供することが可能になるという優れた効果を奏する。また、本発明のDNAの製造方法によれば、酸化耐性能を有するDNAを簡便かつ効率よく製造することができ、従来、核酸の化学合成に用いられている方法及び装置をそのまま適用することができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の核酸の酸化耐性能の増強方法によれば、所望の塩基配列を有する核酸の酸化耐性能を向上させることができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明のプリンヌクレオチド誘導体によれば、一電子酸化反応を介した核酸の酸化損傷(切断)及び核酸全体への該酸化損傷の伝搬を抑制すること、一電子酸化反応を介した酸化に対する耐性を核酸に付与することを可能にするという優れた効果を奏する。
【0103】
【配列表】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、2−フルオロ−5’−O(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシイノシン 3’−O−(2−シアノエチル N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト(図中、化合物6)の合成スキームを示す。
【図2】図2は、dPhG含有DNAの合成スキームの一例を示す。なお、配列は、任意である。
【図3】図3は、4−(3−エチニルベンゾイル)ベンゾニトリル(図中、化合物13)の合成スキームを示す。
【図4】図4は、dCNBPU含有DNAの合成スキームを示す。
【図5】図5は、dPhG含有DNAの円二色性(CD)スペクトルの結果を示す。
【図6】図6は、酸化反応に曝露したdPhG含有DNAを電気泳動した変性シークエンスゲルのオートラジオグラムを示す。塩基配列をオートラジオグラムの横に示す。dCNBPUは、四角で囲んで示されたAの逆側に位置する。パネルa)は、312nm60分の光照射した二本鎖の結果を示す。パネルa)において、レーン1は、GG1のマキサム−ギルバートA+Gシークエンス反応の結果を示し、レーン2は、二本鎖DNA CNBPU1/GG1の結果を示し、レーン3は、dPhG含有二本鎖DNA CNBPU1/PhGG1の結果を示す。また、各レーンの最上部のバンドは、未切断の全長GG1に対応する。パネルb)において、レーン1は、二本鎖DNA T1/GG1の結果を示し、レーン2は、dPhG含有二本鎖DNA T1/PhGG1の結果を示し、レーン3は、GG1のマキサム−ギルバートA+Gシークエンス反応の結果を示す。また、各レーンの最上部のバンドは、未切断の全長GG1に対応する。
【図7】図7は、リボフラビン存在下での光照射及び続くピペリジン処理による鎖切断の部位を調べた結果を示す。
【図8】図8は、リボフラビン存在下での光照射及び続くピペリジン処理に供したdPhG含有DNAをHPLCにより解析した結果を示す。
【図9】図9は、酸化反応に曝露したdPhG含有DNAを電気泳動した変性シークエンスゲルのオートラジオグラムを示す。塩基配列をオートラジオグラムの横に示す。図中、レーン1は、GG5のA+G反応の結果を示し、レーン2は、GG5/c−GG5の結果を示し、レーン3は、PhGG5(8)/c−GG5の結果を示し、レーン4は、PhGG5(16)/c−GG5の結果を示し、レーン4は、PhGG5(16)/c−GG5の結果を示し、レーン5は、PhGG4(16)/c−GG4の結果を示し、レーン6は、GG4/c−GG4の結果を示し、レーン7は、GG4のA+G反応の結果を示す。
Claims (3)
- DNAにおけるデオキシグアニル酸残基(G)を、N 2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換することを特徴とする、DNAの酸化耐性能の増強方法。
- 塩基配列中のGn (Gn は、デオキシグアニル酸残基の連続配列を示し、nは、2以上の整数を示す)から10塩基長未満の位置に存在するGを、N2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換する、請求項1記載の増強方法。
- 塩基配列中のG n (G n は、デオキシグアニル酸残基の連続配列を示し、nは、2以上の整数を示す)中のGを、N 2 −フェニルデオキシグアニル酸残基に置換する、請求項1又は2記載の増強方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002139154A JP4170665B2 (ja) | 2002-05-14 | 2002-05-14 | フェニル基を有する核酸塩基アナログが導入された核酸 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002139154A JP4170665B2 (ja) | 2002-05-14 | 2002-05-14 | フェニル基を有する核酸塩基アナログが導入された核酸 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003335794A JP2003335794A (ja) | 2003-11-28 |
JP4170665B2 true JP4170665B2 (ja) | 2008-10-22 |
Family
ID=29700407
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002139154A Expired - Fee Related JP4170665B2 (ja) | 2002-05-14 | 2002-05-14 | フェニル基を有する核酸塩基アナログが導入された核酸 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4170665B2 (ja) |
-
2002
- 2002-05-14 JP JP2002139154A patent/JP4170665B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003335794A (ja) | 2003-11-28 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6268490B1 (en) | Bicyclonucleoside and oligonucleotide analogues | |
US5393877A (en) | Linkers for the synthesis of multiple oligonucleotides in seriatim from a single support attachment | |
JP5228002B2 (ja) | リボヌクレオチド又はリボヌクレオチド誘導体の製造方法 | |
US6770748B2 (en) | Bicyclonucleoside and oligonucleotide analogue | |
JP5689054B2 (ja) | Rna化学合成方法 | |
JP5342881B2 (ja) | 6−修飾された二環式核酸類似体 | |
EP1314734A1 (en) | Novel nucleoside analogs and oligonucleotide derivatives containing these analogs | |
AU716391B2 (en) | Solid phase synthesis of oligonucleotides | |
EP0885237B1 (en) | Oligonucleotide analogues | |
US5807837A (en) | Composition and method for the treatment or prophylaxis of viral infections using modified oligodeoxyribonucleotides | |
JP4170665B2 (ja) | フェニル基を有する核酸塩基アナログが導入された核酸 | |
JP2008195648A (ja) | 4’−セレノヌクレオシド及び4’−セレノヌクレオチド | |
JP3681338B2 (ja) | シクロプロピル基導入塩基を含有したdna | |
Seio et al. | Synthesis of oligodeoxynucleotides using the oxidatively cleavable 4-methoxytritylthio (MMTrS) group for protection of the 5′-hydroxyl group | |
JP2002069093A (ja) | チミングリコールの構築ブロック及びそれを有するdna | |
JP2006077013A (ja) | Rna合成に有用な水酸基の新規保護基を有する化合物 | |
JPH08301878A (ja) | 三フッ化ホウ素配位化合物およびオリゴヌクレオチドの合成方法 | |
JP2000086692A (ja) | 光感応性ヌクレオシドおよびそのフォスフォロアミダイト | |
FR2612930A1 (fr) | Sondes oligonucleotidiques a | |
AU5334900A (en) | Novel bicyclonucleoside and oligonucleotide analogue |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20031031 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20040129 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040412 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040927 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080501 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20080630 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20080730 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080807 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110815 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |