JP4169583B2 - 光学活性デオキシイノシトールリン酸エステル誘導体及びそれらの製造法 - Google Patents
光学活性デオキシイノシトールリン酸エステル誘導体及びそれらの製造法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、安価且つ大量に製造可能となった2−デオキシ−D−エピ−イノシトール及び1−デオキシ−L−キロ−イノシトール(特開平11−12210号明細書、特開平12−4890号明細書)を原料に合成される、医薬を製造するための中間体として有用であり、且つそれ自体、抗炎症剤としての使用が期待され、また、細胞内情報伝達系の解明への利用が期待される光学活性なデオキシイノシトールの一価あるいは多価リン酸エステル誘導体及びそれらの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
イノシトールトリホスフェートは、イノシトールジホスフェート、イノシトールテトラホスフェートとともに細胞内セカンドメッセンジャーとして、近年その生理的重要性が明らかにされてきている。これらのイノシトール多価リン酸エステルがレセプターに結合することによって、小胞体のカルシウムイオンを易動化して放出する。放出されたカルシウムイオンは色々な細胞内蛋白を活性化する作用を有していることが明らかにされつつある。イノシトール多価リン酸エステルの生化学的あるいは薬理学的作用を解明するため、種々のイノシトール多価リン酸エステル化合物類縁体が合成され試験に供されているが、しかし、種類が限定されており、更に多くの類縁化合物が所望されている。
【0003】
一方、イノシトール一価〜多価リン酸エステル化合物類縁体のそれ自体の活性において、抗炎症作用を有するという報告(特許文献1を参照)、あるいはインスリンミミックとしての作用が期待されるとの報告(非特許文献1を参照)があり、イノシトール一価〜多価リン酸エステル化合物類縁体の医薬的展開が期待されている。
この様に、イノシトール一価〜多価リン酸エステル化合物類縁体はイノシトール多価リン酸エステルの生化学、薬理学的役割の解明に重要な化合物であり、医薬の合成に用いる有用な中間体として、またそれ自体が有用な生物学的活性を有することが最近明らかになってきた。
【0004】
しかし、医農薬の合成原料あるいはイノシトール多価リン酸エステルの生化学、薬理学的役割の解明用試薬としての期待が高まってきたイノシトール一価〜多価リン酸エステル化合物類縁体は、必要条件として光学活性体であり、且つ光学純度の高い光学異性体であることが要求される。しかし、光学活性体であり、且つ光学純度の高い光学異性体を得るためには、煩雑な操作を余儀なくされ、必然的に収量の大幅な低下を引き起こす。
【0005】
現在、以下のようなイノシトール一価〜多価リン酸エステル化合物類縁体が知られており、以下のような製造法が知られている。
前記一般式(V)で表され、且つ下記式(V−1)
【化13】
で表される、2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 3−リン酸エステルは、β−D−ガラクトピラノシドを出発原料にして、フェリエ環化反応(Ferrier rearrangement)の後、リン酸化することによって合成されている(非特許文献2を参照)。また、前記一般式(VI)で表され、且つ下記式(VI−1)
【化14】
で表される、2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 1,3,6−三リン酸エステルも、β−D−ガラクトピラノシドを出発原料にして、フェリエ環化反応(Ferrier rearrangement)の後、リン酸化することによって合成されている(非特許文献3を参照)。また、前記一般式(VIII)で表され、且つ下記式(VIII-1-a)
【化15】
で表される、1−デオキシ−L−キロ−イノシトール 2,3,5−三リン酸エステルは、クエブラキトールを出発原料にし、適当な保護剤を入れた後、リン酸化することによって合成されている(非特許文献4を参照)。また、前記一般式(VII)で表され、且つ下記式(VII-1)
【化16】
で表される、1D−2,3−ジデオキシ−ミオ−イノシトール 1,4,5−三リン酸エステルは、クエブラキトールを出発原料にし、適当な保護剤を入れた後、リン酸化することによって合成されている(非特許文献5を参照)。
【0006】
最近、微生物の発酵生産物として、D−ミオ−イノシトールの3位あるいは6位が脱水酸化された構造を有し、且つ光学活性な2−デオキシ−D−エピ−イノシトール((+)−エピ−クエルシトール)及び1−デオキシ−L−キロ−イノシトール((−)−ビボ−クエルシトール)が大量且つ安価に製造可能となった(特許文献2及び3を参照)。従って、様々な生理活性を有することが今後期待される新たなイノシトール一価〜多価リン酸エステル化合物類縁体を合成するための原料の一つが容易に入手可能になった。しかしながら、これらの2−デオキシ−D−エピ−イノシトール((+)−エピ−クエルシトール)及び1−デオキシ−L−キロ−イノシトール((−)−ビボ−クエルシトール)を原料にして、純度の高い光学活性を有する、イノシトール一価〜多価リン酸エステル化合物類縁体を効率よく且つ安価に製造する方法については知られていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−149773号明細書
【特許文献2】
特開平11−12210号明細書
【特許文献3】
特開平12−4890号明細書
【非特許文献1】
Tetrahedoron 47巻、21頁(1991年)
【非特許文献2】
J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1383頁(1989)
【非特許文献3】
Bioorg.Med.Chem.Lett.5巻、831頁(1995)
【非特許文献4】
J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1638頁(1990)
【非特許文献5】
J.Am.Chem.Soc.115巻、4429頁(1993)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題の第1は、それ自体が生物活性を有し、また、医農薬原料として用いるために必要な条件である、純度の高い光学活性を有する、イノシトール一価〜多価リン酸エステル化合物類縁体を提供することにある。本発明の第2の課題は、大量且つ安価に製造可能となった2−デオキシ−D−エピ−イノシトール((+)−エピ−クエルシトール)及び1−デオキシ−L−キロ−イノシトール((−)−ビボ−クエルシトール)を原料にして、純度の高い光学活性を有する、新規なイノシトール一価〜多価リン酸エステル化合物類縁体を効率よく且つ安価に製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、本発明者は、後記の一般式(I)〜(IV)で総括的に化合物が新規な化合物であることを知見した。この知見に基づいて、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、第1の本発明は、新規な化合物である下記一般式(I)
【化17】
(式中、R2、R4は同一もしくは異なり、水素原子あるいは水酸基の保護基を表し、R1が −P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)で表されるとき、R3は水素原子あるいは水酸基の保護基を表し、R1が水素原子あるいは水酸基の保護基で表されるとき、R3は −P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)を表す)で表される、2−デオキシ−D−エピ−イノシトールのモノリン酸エステル誘導体又はそれらの塩に関する。
【0011】
第2の本発明は、新規化合物である下記一般式(II)
【化18】
(式中、R2は水素原子あるいは水酸基の保護基を表し、R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)で表される、2−デオキシ−D−エピ−イノシトールのトリリン酸エステル誘導体又はそれらの塩に関する。
【0012】
第3の本発明は、新規化合物である下記一般式(III)
【化19】
(式中、R6は水酸基あるいはハロゲン原子を表し、R2は水素原子または水酸基の保護基を表し、R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)で表される、1−デオキシ−D−シロ−イノシトールのリン酸エステル誘導体又はそれらの塩に関する。
【0013】
第4の本発明は、新規化合物である下記一般式(IV)
【化20】
(式中、R7は水酸基あるいはハロゲン原子あるいは−P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)を表し、R7がハロゲン原子あるいは−P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)を表す時、R8は−P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)を表し、R7が水酸基の時、R8は−(CH2)n−O−P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表し、ここでnは2または3を表す)を表し、R2は水素原子あるいは水酸基の保護基を表し、R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)で表される1−デオキシ−L−キロ−イノシトールのリン酸エステル誘導体又はそれらの塩に関する。
【0014】
また、第5の本発明は、次式(A)
【化21】
で表される2−デオキシ−D−エピ−イノシトール((+)−エピ−クエルシトール)を出発原料とし、
a)隣り合った水酸基を架橋剤で保護し、
b)架橋剤で保護されていない遊離の水酸基をリン酸化し、
必要に応じて架橋剤により生成させた架橋基を脱保護することを特徴とする、
下記一般式(V)
【化22】
(式中、R2は水素原子あるいは水酸基の保護基を表し、R1が −P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)で表されるとき、R3及びR4は水素原子あるいは水酸基の保護基を表し、R1が水素原子あるいは水酸基の保護基で表されるとき、R3は −P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)を表し、R4は水素原子あるいは水酸基の保護基を表すか、又は、R3は水素原子あるいは水酸基の保護基を表し、R4は −P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)を表す)で表される、2−デオキシ−D−エピ−イノシトールのモノリン酸エステル誘導体又はそれらの塩の製造方法に関する。
【0015】
第6の本発明は、次式(A)
【化23】
で表される2−デオキシ−D−エピ−イノシトール((+)−エピ−クエルシトール)を出発原料とし、
a)隣り合った水酸基を架橋剤で保護し、
b)架橋剤により生成した架橋基の一部を脱保護し、
c)架橋剤で保護されていない遊離の水酸基をリン酸化し、
必要に応じて架橋剤により生成させた架橋基を脱保護することを特徴とする、
下記一般式(VI)
【化24】
(式中、R2は水素原子あるいは水酸基の保護基を表し、R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表し、R1が−P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)で表されるとき、R3は水素原子あるいは水酸基の保護基を表し、R1が水素原子あるいは水酸基の保護基で表わされる時、R3は−P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)を表す)で表される、2−デオキシ−D−エピ−イノシトールのトリリン酸エステル誘導体又はそれらの塩の製造方法に関する。
【0016】
第7の本発明は、次式(B)
【化25】
で表される1−デオキシ−L−キロ−イノシトール((−)−ビボ−クエルシトール)を出発原料とし、
a)隣り合った水酸基を架橋剤で保護し、
b)遊離の水酸基を保護剤で保護し、
c)架橋剤により生成された架橋基の一部を脱保護し、
d)遊離の水酸基を保護剤で保護し、
e)c)工程で脱保護されていない、残りの架橋基を脱保護し、
f)6位以外の遊離の水酸基を保護剤で保護し、
g)6位の基を反転させ、
h)特定の基の保護剤を脱保護し、
i)特定の基をリン酸化し、
必要に応じて脱保護されていない、残りの保護剤を脱保護することを特徴とする、
下記一般式(VII)
【化26】
(式中、R6は水素原子あるいは水酸基あるいはハロゲン原子を表し、R2は水素原子または水酸基の保護基を表し、R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)で表される、1−デオキシ−D−シロ−イノシトールのリン酸エステル誘導体又はそれらの塩の製造方法に関する。
【0017】
第8の本発明は、次式(B)
【化27】
で表される1−デオキシ−L−キロ−イノシトール((−)−ビボ−クエルシトール)を出発原料とし、
a)隣り合った水酸基を架橋剤で保護し、
b)遊離の水酸基を保護剤で保護し、
c)架橋剤により生成された架橋基の一部を脱保護し、
d)遊離の水酸基を保護剤で保護し、
e)c)工程において脱保護されていない、残りの架橋基を脱保護し、
f)遊離の水酸基を保護剤で保護し、
g)特定の基の保護剤を脱保護し、
h)特定の基をリン酸化し、
必要に応じて脱保護されていない、残りの保護剤を脱保護することを特徴とする、
下記一般式(VIII)
【化28】
(式中、R2は水素原子あるいは水酸基の保護基を表し、R5は(水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表し、R7は水酸基あるいはハロゲン原子あるいは−P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)を表し、R7がハロゲン原子あるいは−P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)を表す時、R8は−P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)を表し、R7が水酸基の時、R8は−P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表す)または−(CH2)n−O−P(O)(OR5)2基(R5は水素原子またはアルカリ金属原子またはフェニル基またはベンジル基を表し、ここでnは2または3を表す)を表す)で表される1−デオキシ−L−キロ−イノシトールのリン酸エステル誘導体又はそれらの塩の製造方法に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、多量に入手可能になった前記式(A)で表される2−デオキシ−D−エピ−イノシトール((+)−エピ−クエルシトール)あるいは(B)で表される1−デオキシ−L−キロ−イノシトール((−)−ビボ−クエルシトール)を出発原料にして合成され、前記一般式(I)〜(IV)で表され且つ光学活性なイノシトール1価〜多価リン酸エステル誘導体に関する。さらに本発明は、前記一般式(V)〜(VIII)で表されるイノシトール1価〜多価リン酸エステル誘導体製造法に関するものである。
【0019】
なお、本明細書において「水酸基の保護基」とは、隣り合った水酸基を架橋剤で架橋したときの架橋基、又は水酸基を保護剤で保護したときの保護基のことをいう。
【0020】
2−デオキシ−D−エピ−イノシトールあるいは1−デオキシ−L−キロ−イノシトールを出発原料とした、本発明のモノ(あるいはジ)デオキシ−イノシトール 一価〜多価リン酸エステル誘導体の製造方法としては、特に制限はないが、好ましくは以下の合成法により合成できる。
【0021】
一つの特定の位置の水酸基をリン酸化する方法としては、2−デオキシ−D−エピ−イノシトールあるいは1−デオキシ−L−キロ−イノシトールの隣り合わせの任意の水酸基を、2,2−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシシクロヘキサン等の架橋剤で保護し、遊離の水酸基を、ジフェニルホスホリルクロライドやジベンジルホスホロクロライド等のホスホロクロライドによりリン酸化するか、あるいは、テトラベンジルピロリン酸等のピロリン酸でリン酸化するか、あるいは、ジベンジルホスホロアミタイド等のジアルキリホスホロアミタイドを作用させ亜リン酸化した後、これを精製することなくm−クロロ過安息香酸やヨウ素などで酸化することにより、リン酸エステル化することができる。その後、必要に応じて触媒下で水素を添加する方法等により架橋基を脱保護することができる。
【0022】
さらに、複数の特定の位置の水酸基をリン酸化する方法としては、1つの特定の位置の水酸基をリン酸化する方法と同様に、2−デオキシ−D−エピ−イノシトールあるいは1−デオキシ−L−キロ−イノシトールの隣り合わせの任意の水酸基を、2,2−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシシクロヘキサン等の架橋剤で保護し、さらに架橋基の一部をp−トルエンスルホン酸等で除去した後、遊離水酸基を上記のリン酸化剤でリン酸化することができる。その後、必要に応じて上記の方法等により架橋基を脱保護することができる。
【0023】
あるいは、a)2−デオキシ−D−エピ−イノシトールあるいは1−デオキシ−L−キロ−イノシトールの隣り合わせの任意の水酸基を、2,2−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシシクロヘキサン等の架橋剤で保護し、b)一部の架橋基を除去する前に、遊離の水酸基をベンジルブロミド等のアルキル化剤で保護した後、c)一部の架橋基を除去し、その後、d)遊離水酸基を除去方法が異なる水酸基の保護剤、すなわち、無水酢酸などのアシル化剤、クロロメチルメチルエーテルやベンジルブロミド等のアルキル化剤で保護後、e)c)工程において脱保護されていない残りの水酸基を上記の方法等により脱保護し、f)遊離の水酸基を上記の保護剤で保護し、g)リン酸化する特定の位置の保護剤を常法による適当な保護剤の除去法で脱保護し、h)得られた遊離水酸基に上記の適当なリン酸化剤を作用させることにより、多価リン酸エステル誘導体を合成することができる。その後、必要に応じて保護剤を常法により脱保護することができる。
【0024】
ここで、6位にリン酸基を導入する場合には、e)のc)工程において脱保護されていない残りの水酸基を脱保護する工程は、d)の遊離の水酸基を保護する工程の前に行ってもよい。そのような場合、d)工程とf)工程を一つの工程とし、遊離の水酸基を保護することができる。
【0025】
ここで、f)の遊離の水酸基を上記の保護剤で保護する工程においては、6位の水酸基と6位以外の水酸基を同じ保護剤で同時に保護してもよく、6位の水酸基を選択的に保護剤で保護した後、該保護剤とは別の保護剤で保護してもよく、また、6位以外の水酸基を選択的に保護した後、以下に示す方法により6位の水酸基を反転させてもよい。反転させた6位の水酸基はさらに上記の保護剤により保護をしてもよい。また、反転させた6位の水酸基をハロゲン化させてもよい。このハロゲン化により、6位を除去または再度反転することができる。
【0026】
さらに、f)の遊離の水酸基を上記の保護剤で保護する工程においては、6位以外の水酸基を選択的に保護した後、ハロゲンに置換する方法により、6位の水酸基を反転させ、得られた化合物をその後の反応に用いてもよい。
【0027】
また、f)の遊離の水酸基を上記の保護剤で保護する工程においては、遊離の水酸基の一部に水酸化アルキル基を導入し、続いて遊離の水酸基を保護してもよい。h)のリン酸化工程においては、通常の水酸基と同様に導入された水酸化アルキル基をリン酸化してもよい。
【0028】
本発明の一価〜多価リン酸エステル誘導体は、常法によりリン酸エステル誘導体塩とすることができる。
【0029】
ジフェニルリン酸エステル基あるいはジベンジルリン酸エステル基からフェニル基あるいはベンジル基を脱保護する方法としては、二酸化白金あるいはパラジウムカーボン粉末等の触媒下、水素を添加することにより、還元的に保護剤を脱離する方法があげられる。
また、水酸基をハロゲン原子に置換する方法としては、塩化スルフリルやジエチルアミノサルファートリフルオライド(DAST)等のハロゲン化剤でハロゲン化することができる。
【0030】
水酸基を除去する方法としては、まず、上記の方法により、水酸基をハロゲン原子に置換した後、アゾイソビスブチロニトリル及びトリブチルチンハイドライド等の脱ハロゲン化剤を作用させることにより除去する方法があげられる。
また、水酸基を反転する方法としては、任意の位置の遊離水酸基にピリジニウムクロロクロメート(PCC)等の酸化剤でオキソ基に酸化し、後、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤でオキソ基を水酸基に還元することにより反転する方法があげられる。
【0031】
水酸基に水酸化アルキル基を導入する方法としては、例えば、水酸化エチル基を導入する方法として、水酸基にアリルブロミドを作用させ、アリル基を導入した後、オレフィンをオゾンによる酸化開裂後、水素化ホウ素ナトリウムで還元する方法があげられ、また、水酸基に、水酸化プロピル基を導入する方法としては、上記アリル基にボラン−THF錯体を作用させて合成する方法があげられる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下、2−デオキシ−D−エピ−イノシトールあるいは1−デオキシ−L−キロ−イノシトールを出発原料としたモノデオキシ−イノシトール 一価〜多価リン酸エステルの合成を詳細に説明する。
式(A)で表される原料化合物、2−デオキシ−D−エピ−イノシトールあるいは1−デオキシ−L−キロ−イノシトールは、例えば、特開平11−12210号明細書、特開平12−4890号明細書に記載の方法、すなわち、安価に入手できるミオ−イノシトールを、微生物を用いた生物変換によって容易に製造することができる。
【0033】
【実施例1】
2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 3−ホスフェート(式V−1)の合成
(1)2−デオキシ−1,6:4,5−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール(式A−1)、2−デオキシ−1,6:3,4−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール(式A−2)、 2−デオキシ−3,4:5,6−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール(式A−3)の合成
【化29】
式(A)で表される2−デオキシ−D−エピ−イノシトール(500mg、3.05mmol)をジメチルフォルムアミド(DMF)10mlに溶解し、p−トシル酸水和物(62.5mg)及び2,2−ジメトキシプロパン(5ml)を加えて、室温にて6時間攪拌したところ上記3化合物(式A−1、式A−2、式A−3)が生成していた。反応液をトリエチルアミンによって中和し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山 60、30gm、アセトン/トルエン=1/10)にて精製し、化合物(式A−1)、(式A−2)、(式A−3)を白色結晶としてそれぞれ、237mg、197mg、179mg得た。
【0034】
(2)2−デオキシ−1,6:4,5−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 3−ジフェニルホスフェート(式V−1−a)及び2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 3−ホスフェート(式V−1)の合成
【化30】
上記実施例1(1)で得た、2−デオキシ−1,6:4,5−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール(式A−1、56.3mg、0.23mmol)をピリジン(1.0ml)に溶解し、氷冷下、ジフェニルホスホリルクロライド(0.14ml)を加え、室温で1時間攪拌した。反応液を重曹で中和し、トルエンでピリジンを共沸除去した。こうして得られた残渣を酢酸エチルにて希釈し、水で洗浄した後芒硝にて乾燥した。芒硝を濾別し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山 60、5gm、アセトン/ヘキサン=1/5)にて精製し、2−デオキシ−1,6:4,5−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 3−ジフェニルホスフェート(式V−1−a)を無色シロップとして95.4mg得た。
【0035】
この化合物(式V−1−a、39mg、0.082mmol)をエタノール(1.0ml)に溶解し、二酸化白金(9,2mg)触媒下、常温、常圧で5時間水素を添加した。反応終了後、二酸化白金を濾別して、濾液をシクロヘキシルアミンで中和し減圧濃縮した後、アセトンを加え、冷蔵庫に一晩放置し、2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 3−ホスフェートのシクロヘキシルアミン塩結晶化させた。得られた結晶を濾別し、減圧乾燥した後、水(1.0ml)に溶解し、Dowex 50W×2を加え、シクロヘキシルアミンをはずした。Dowex 50W×2を濾別除去し、濾液を濃縮して、2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 3−ホスフェート(式V−1)を無色シロップとして16.1mg得た(収率80%)。2−デオキシ−1,6:4,5−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 3−ジフェニルホスフェートの物性は以下のとおりである。
分子式:C24H29O8P
比旋光度: [α]D 19 −1.47°(c 4.00、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 特殊吸収無し
1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.39、1.40、1.44、1.55(s、それぞれ3H、4×CH3)
2.06(ddd、1H、J2eq,2ax=11.7Hz、J2eq,3=3.1Hz、J2eq,1=4.6Hz、H−2eq)
2.35(ddd、1H、J2eq,2ax=11.7Hz、J2ax,3=12.2Hz、J2ax,1=10.2Hz、H−2ax)
3.34(ddd、1H、J1,2eq=4.6Hz、J1,2ax=10.2Hz、J1,6=8.7Hz、H−5)
3.76(dd、1H、J6,5=7.5Hz、J6,1=8.7Hz、H−6)
4.21(dd、1H、J5,4=5.6Hz、J5,6=7.5Hz、H−5)
4.37(dd、1H、J4,3=5.1Hz、J4,5=5.6Hz、H−4)
4.92(ddd、1H、J3,2ax=12.2Hz、J3,2eq=3.1Hz、J3,4=5.1Hz、H−3)
7.17−7.38(m、10H、2×Ph)
【0036】
また、2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 3−ホスフェートの物性は以下のとおりである。
分子式:C6H13O8P
1H−NMR(300MHz、D2O、内部標準 アセトン)
dH(ppm)=1.64−1.95(m、2H、H−2eq及びH−2ax)
3.25−3.38(m、3H、H−5及びH−6及びH−1)
3.95(br、1H、H−4)
4.00(ddd、1H、J3,4=5.0Hz、J3,2ax=10.0Hz、、J3,2eq=7.5Hz、H−3)
【0037】
【実施例2】
2−デオキシ−1,6:3,4−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 5−ジフェニルホスフェート(式I−1−b)及び2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 5−ホスフェート(式I−1−a)の合成
【化31】
上記実施例1(1)で得た、2−デオキシ−1,6:3,4−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール(式A−2、30.0mg、0.12mmol)をピリジン(1.0ml)に溶解し、氷冷下、ジフェニルホスホリルクロライド(0.077ml)を加え、室温で2時間30分攪拌した。反応終了後、反応液を重曹で中和し、トルエンでピリジンを共沸除去した。こうして得られた残渣を酢酸エチルにて希釈し、水で洗浄した後芒硝にて乾燥した。芒硝を濾別し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山 60、3.0gm、アセトン/ヘキサン=1/5)にて精製し、2−デオキシ−1,6:3,4−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 5−ジフェニルホスフェート(式I−1−b)を白色結晶として50.2mg得た(収率86%)。
【0038】
次に、得られた化合物(式I−1−b、47.8mg、0.10mmol)をエタノール(1.5ml)に溶解し、二酸化白金(11.6mg)触媒下、常温、常圧で5時間30分水素を添加した。反応終了後、二酸化白金を濾別して、濾液をシクロヘキシルアミンで中和し減圧濃縮した後、アセトンを加え、冷蔵庫に一晩放置し、2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 5−ホスフェート(式I−1−a)のシクロヘキシルアミン塩結晶化させた。得られた結晶を濾別し、減圧乾燥した後、水(1.5ml)に溶解し、Dowex 50W×2を加え、シクロヘキシルアミンをはずした。Dowex 50W×2を濾別除去し、濾液を濃縮して、2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 5−ホスフェート(式I−1−a)を無色シロップとして17.6mg得た(収率70%)。2−デオキシ−1,6:3,4−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 5−ジフェニルホスフェートの物性は以下のとおりである。
分子式:C24H29O8P
比旋光度: [α]D 19 +13.5°(c 2.50、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 特殊吸収無し
1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.21、1.40、1.44、1.59(s、それぞれ3H、4×CH3)
1.69(ddd、1H、J2ax,2eq=2.9Hz、J2ax,3=12.2Hz、J2ax,1=9.2Hz、H−2ax)
2.39(ddd、1H、J2eq,2ax=2.9Hz、J2eq,3=6.8Hz、J2eq,1=3.6Hz、H−2eq)
3.31(ddd、1H、J1,2eq=3.6Hz、J1,2ax=J1,6=9.2Hz、H−5)
3.99(dd、1H、J6,5=10.0Hz、J6、1=9.2Hz、H−6)
4.27(ddd、1H、J3,2ax=12.2Hz、J3,2eq=6.8Hz、J3,4=4.3Hz、H−3)
4.46(dd、1H、J4,3=4.3Hz、J4,5=4.1Hz、H−4)
4.85(ddd、1H、J5,4=4.1Hz、J5,6=10.0Hz、J5,3=2.4Hz、H−5)
7.15−7.39(m、10H、2×Ph)
【0039】
また、2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 5−ホスフェートの物性は以下のとおりである。
分子式:C6H13O8P
1H−NMR(300MHz、D2O、内部標準 アセトン)
dH(ppm)=1.63(ddd、1H、J2ax,2eq=J2ax,3=12.2Hz、J2ax ,1=9.2Hz、H−2ax)
1.83−1.92(m、1H、H−2eq)
3.43(ddd、1H、J1,2ax=12.5Hz、J1,6=9.3Hz、J1,2eq=2.9Hz、H−1)
3.54(dd、1H、J5,4=8.8Hz、J5,6=13.2Hz、H−5)
3.65−3.75(br、1H、H−6)
3.85(m、1H、H−3)
4.09(br、1H、H−4)
【0040】
【実施例3】
2−デオキシ−3,4:5,6−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 1−ジフェニルホスフェート(I−2−b)及び2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 1−ホスフェート(式I−2−a)の合成
【化32】
上記実施例1(1)で得た、2−デオキシ−3,4:5,6−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール(式A−3、30.0mg、0.12mmol)をピリジン(1.0ml)に溶解し、氷冷下、ジフェニルホスホリルクロライド(0.077ml)を加え、室温で2時間30分攪拌した。反応終了後、反応液を重曹で中和し、トルエンでピリジンを共沸除去した。こうして得られた残渣を酢酸エチルにて希釈し、水で洗浄した後芒硝にて乾燥した。芒硝を濾別し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山 60、3.0gm、アセトン/ヘキサン=1/5)にて精製し、2−デオキシ−3,4:5,6−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 1−ジフェニルホスフェート(式I−2−b)を白色結晶として45.0mg得た(収率77%)。
【0041】
次に、得られた化合物(式I−2−b、45.1mg、0.095mmol)をエタノール(1.5ml)に溶解し、二酸化白金(10.7mg)触媒下、常温、常圧で6時間水素を添加した。反応終了後、二酸化白金を濾別して、濾液をシクロヘキシルアミンで中和し減圧濃縮した後、アセトンを加え、冷蔵庫に一晩放置し、2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 1−ホスフェート(式I−2−a)のシクロヘキシルアミン塩結晶化させた。得られた結晶を濾別し、減圧乾燥した後、水(1.5ml)に溶解し、Dowex 50W×2を加え、シクロヘキシルアミンをはずした。Dowex 50W×2を濾別除去し、濾液を濃縮して、2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 1−ホスフェート(式I−2−a)を無色シロップとして20.4mg得た(収率88%)。2−デオキシ−3,4:5,6−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 1−ジフェニルホスフェートの物性は以下のとおりである。
分子式:C24H29O8P
比旋光度: [α]D 19 −10.9°(c 2.25、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 特殊吸収無し
1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.34、1.42、1.44、1.52(s、それぞれ3H、4×CH3)
2.22(br、2H、H−2eq及びH−2ax)
3.42(dd、1H、J5,4=3.1Hz、J5,6=10.5Hz、H−5)
4.28(dd、1H、J6,5=10.5Hz、J6,1=7.8Hz、H−6)
4.45(ddd、1H、J3,2ax=10.5Hz、J3,2eq=6.8Hz、J3,4=3.6Hz、H−3)
4.54(dd、1H、J4,3=6.8Hz、J4,5=3.1Hz、H−4)
4.94(br、1H、H−1)
7.16−7.35(m、10H、2×Ph)
【0042】
また、2−デオキシ−D−エピ−イノシトール 1−ホスフェートの物性は以下のとおりである。
分子式:C6H13O8P
1H−NMR(300MHz、D2O、内部標準 アセトン)
dH(ppm)=1.64−1.95(m、2H、H−2eq及びH−2ax)
3.25−3.38(m、3H、H−5及びH−6及びH−1)
3.95(br、1H、H−2)
4.00(ddd、1H、J3,4=5.0Hz、J3,2ax=10.0Hz、J3,2eq=7.5Hz、H−3)
【0043】
【実施例4】
2−デオキシ−4,5−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 1,3,6−トリ(ジフェニルホスフェート)(式VI-1−a)の合成
【化33】
前記実施例1(1)で得た2−デオキシ−1,6:4,5−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール(式A−1、1.2gm、4.91mmol)をメタノール(30ml)に溶解し、氷冷下、p−トシル酸水和物をpH4になるまで加えた。氷冷下、40分間攪拌後、反応溶液をトリエチルアミンで中和した。次に、この溶液中を濃縮乾固し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山 60、50gm、メタノール/クロロホルム=1/7)にて精製することによって、2−デオキシ−4,5−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール(式A−1−1)の白色結晶を782mg得た(収率78%)。
【0044】
こうして得られた化合物(式A−1−1、20mg、0.098mmol)をピリジン(1.0ml)に溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン(DMAP、20mg)及びジフェニルホスホリルクロライド(0.18ml)を加え、室温で6時間30分攪拌した。反応終了後、反応溶液を重曹で中和し、ピリジンをトルエンにて共沸除去した。減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C300、3.5gm、アセトン/ヘキサン=1/3)にて精製し、2−デオキシ−4,5−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 1,3,6−トリ(ジフェニルホスフェート)(式VI−1−a)を無色シロップとして53.6mg得た(収率60%)。2−デオキシ−4,5−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 1,3,6−トリ(ジフェニルホスフェート)の物性は以下のとおりである。
分子式:C45H43O14P3
比旋光度: [α]D 17 +1.70°(c 1.60、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 特殊吸収無し
1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.26、1.56(s、それぞれ3H、2×CH3)
2.31(ddd、1H、J2ax,2eq=J2ax,3=J2ax,1=11.7Hz、H−2ax)
2.43−2.50(m、1H、H−2eq)
4.17(dd、1H、J5,4=5.1Hz、J5,6=6.6Hz、H−5)
4.39(dd、1H、J4,3=8.5Hz、J4,5=5.1Hz、H−4)
4.50−4.55(m、1H、H−1)
4.80−4.93(m、2H、H−3及びH−6)
7.09−7.32(m、30H、6×Ph)
【0045】
【実施例5】
2−デオキシ−3,4−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 1,5,6−トリ(ジフェニルホスフェート)(式II−1)の合成
【化34】
前記実施例1(1)で得た2−デオキシ−1,6:3,4−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール(式A−2、100mg、0.41mmol)をメタノール(3ml)に溶解し、氷冷下、p−トシル酸水和物をpH4になるまで加えた。氷冷下、1時間攪拌後、反応溶液をトリエチルアミンで中和した。次に、この溶液中を濃縮乾固し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山 60、5gm、メタノール/クロロホルム=1/5)にて精製することによって、2−デオキシ−3,4−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール(式A−4)の白色結晶を51.8mg得た(収率62%)。また、前記1(1)で得た2−デオキシ−3,4:5,6−ジ−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール(式A−3、100mg、0.41mmol)を上記と同様な処理を行なうことにより、2−デオキシ−3,4−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール(式A−4)の白色結晶を58.5mg得た(収率70%)。
【0046】
こうして得られた化合物(式A−4、23mg、0.100mmol)をピリジン(1.1ml)に溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン(DMAP、20.8mg)及びジフェニルホスホリルクロライド(0.19ml)を加え、50℃で2日間半攪拌した。反応終了後、反応溶液を重曹で中和し、ピリジンをトルエンにて共沸除去した。減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C300、3.5gm、アセトン/ヘキサン=1/3)にて精製し、2−デオキシ−3,4−O−D−エピ−イノシトール 1,5,6−トリ(ジフェニルホスフェート)(式II−1)を無色シロップとして11.6mg得た(収率12%)。2−デオキシ−3,4−O−イソプロピリデニル−D−エピ−イノシトール 1,5,6−トリ(ジフェニルホスフェート)の物性は以下のとおりである。
分子式:C45H43O14P3
比旋光度: [α]D 17 +2.14°(c 0.75、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 特殊吸収無し
1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.21、1.49(s、それぞれ3H、2×CH3)
2.11(ddd、1H、J2ax,2eq=3.2Hz、J2ax,3=13.9Hz、J2ax,1=12.2Hz、H−2ax)
2.44(ddd、1H、J2eq,2ax=3.2Hz、J2eq,3=5.6Hz、J2eq,1=2.5Hz、H−2eq)
4.31(ddd、1H、J3,2eq=5.6Hz、J3,2ax=13.9Hz、J3,4=9.3Hz、H−3)
4.62(dd、1H、J4,3=8.5Hz、J4,5=5.1Hz、H−4)
4.74(ddd、1H、J1,2eq=2.5Hz、J1,2ax=12.2Hz、J1,6=9.0Hz、H−1)
4.87(dd、1H、J5,4=5.3Hz、J5,6=7.8Hz、H−5)
5.34(dd、1H、J6,5=7.8Hz、J6,1=9.0Hz、H−6)
7.05−7.31(m、30H、6×Ph)
【0047】
【実施例6】
4、6−O−ジベンジル−1−デオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)(式III−1−b)及び1−デオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩(式III−1−a)の合成
(1)4−O−ベンジル−1−デオキシ−5,6−O−イソプロピリデニル−L−キロ−イノシトール(式B−3−1)の合成
【化35】
1−デオキシ−L−キロ−イノシトール(式B、5.0gm、30.0mmol)をジメチルフォルムアミド(100ml)に溶解し、0℃にて2−メトキシプロパン(14.6ml、0.150mmol)、p−トルエンスルフォン酸一水和物(575mg、3.000mmol)を加え、室温にて3時間攪拌した。氷冷下、反応液をトリエチルアミンで中和し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、400gm、アセトン:トルエン=1:2)にて精製し、1−デオキシ−2,3:5,6−O−ジイソプロピリデニル−L−キロ−イノシトール(式B−1−1)及び1−デオキシ−3,4:5,6−O−ジイソプロピリデニル−L−キロ−イノシトール(式B−1−2)の混合物(7.29gm、収率98%)をシロップとして得た。この混合物(6.12gm、25.1mmol)をジメチルフォルムアミド(120ml)に溶解し、0℃にて水素化ナトリウム(2.00gm、50.0mmol)を加え攪拌した。15分後、0℃にてベンジルブロミド(4.47ml、37.3mmol)を加え、室温にて3時間攪拌した。反応溶液をメタノールにて過剰量のベンジルブロミドを分解した後、酢酸エチル(900ml)で希釈し、水(300ml、3回)で洗浄した。この酢酸エチル層を分取し、芒硝にて乾燥させ、後芒硝を濾別した。濾液を濃縮乾固し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、300gm、酢酸エチル:ヘキサン=1:8)にて精製し、4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3:5,6−O−ジイソプロピリデニル−L−キロ−イノシトール(式B−2−1)及び2−O−ベンジル−1−デオキシ−3,4:5,6−O−ジイソプロピリデニル−L−キロ−イノシトール(式B−2−2)の混合物(8.19gm、収率98%)をシロップとして得た。この混合物(4.00gm、11.6mmol)をメタノールに溶解し、0℃にてカンファースルフォン酸を反応液のpHが4になるまで加え、30分間攪拌した。反応液をトリエチルアミンで中和し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、150gm、アセトン:トルエン=1:4)にて精製し、混合物から2−O−ベンジル−1−デオキシ−5,6−O−イソプロピリデニル−L−キロ−イノシトール(式B−3−2)を分離して、化合物4−O−ベンジル−1−デオキシ−5,6−O−イソプロピリデニル−L−キロ−イノシトール(式B−3−1、1.94gm、収率55%)をシロップとして得た。
【0048】
(2)4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3−O−ジメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式B−5)の合成
【化36】
実施例6(1)記載の方法によって得られた4−O−ベンジル−1−デオキシ−5,6−O−イソプロピリデニル−L−キロ−イノシトール(式B−3−1、100mg、0.340mmol)を塩化メチレン(2.1ml)及びクロロメチルメチルエーテル(0.103ml、1.36mmol)を順次加え、40℃にて4時間攪拌した。反応液をクロロホルム(30ml)で希釈し、飽和食塩水(20ml、3回)で洗浄した後、有機層を芒硝にて乾燥し、濾別した、濾液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(C300、10gm、酢酸エチル:トルエン=1:10)にて精製し、4−O−ベンジル−1−デオキシ−5,6−O−イソプロピリデニル−2,3−O−ジメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式B−4)をシロップ(115mg、収率89%)として得た。
【0049】
上記の方法をスケールアップし得られた化合物(式B−4、1.09g、2.85mmol)を80%酢酸水溶液(10ml)に溶解し、室温にて12時間攪拌した。反応液にエタノール及びトルエンを加え酢酸を共沸除去し、減圧乾燥した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、400gm、アセトン:トルエン=1:3)にて精製し、4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3−O−ジメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式B−5)をシロップ(954mg、収率98%)として得た。
(3)4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式B−6)及び6−O−アセチル−4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式B−6−1)の合成
【化37】
実施例6(2)に準じて合成した4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3−O−ジメトキシメチル−L−キロ−イノシトール((式B−5)1.54gm、4.50mmol)をトルエン(30ml)に溶解し、ジブチルチンオキシド(2.25g、9.00mmol)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(291mg、0.900mmol)を順次加え、40℃にて1時間攪拌した。反応液を濃縮して得られた残渣を酢酸エチル(300ml)に溶解し、水(100ml、3回)で洗浄した後、有機層を芒硝で乾燥し濾別した。ろ液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、100gm、アセトン:トルエン=1:5)にて精製し、4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−L−キロ−イノシトールをシロップ(式B−6、1.51gm、収率87%)として得た。つぎに、機器分析用サンプルとして、上記化合物のアセチル化物を調整した。
【0050】
すなわち、上記化合物(式B−6、35mg、0.0906mmol)をピリジン(1.0ml)に溶解し、0℃で無水酢酸(0.5ml)を加え、15時間攪拌した。反応液を氷冷下メタノールで過剰の無水酢酸を分解し、トルエンで酢酸及びピリジンを共沸除去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、5gm、酢酸エチル:トルエン=1:4)で精製し、6−O−アセチル−4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式B−6−1)をシロップ(39mg、収率
定量的)として得た。
【0051】
(4)4、6−O−ジベンジル−1−デオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)(式III−1−b)及び1−デオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩(式III−1−a)の合成
【化38】
▲1▼4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式B−6、65mg、0.168mmol)を塩化メチレン(1.3ml)に溶解し、0℃にてモレキュラーシーブス4A(150mg)及びピリジニウムクロロクロメート(PCC、148mg、0.673mmol)を加え、室温で6時間攪拌した。反応液を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、400gm、アセトン:トルエン=1:2)にて精製し、4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−6−オキソ−D−シロ−イノシトール(式B−6−2、62mg、収率96%)を得た。
【0052】
▲2▼上記方法に準じて得られた化合物(式B−6−2、72mg、0.187mmol)をメタノール(1.5mg)に溶解し、0℃にて水素化ホウ素ナトリウム(47mg、1.123mmol)を加え、室温にて1時間攪拌した。反応液を酢酸エチル(60ml)で希釈し、水(20ml 3回)で洗浄した後、芒硝乾燥し濾別した。濾液を減圧乾燥し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、400gm、アセトン:トルエン=1:2)にて精製し、4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−D−シロ−イノシトール(式III−1−1)をシロップ(40mg、収率56%)として得た。
【0053】
▲3▼次にこの化合物(式III−1−1、34mg、0.0897mmol)をジメチルフォルムアミド(1.0ml)に溶解し、0℃にて水素化ナトリウム(7mg、0.176mmol)を加え、攪拌した。15分後、0℃にてベンジルブロミド(0.016ml、0.132mmol)を加え、室温にて2時間攪拌した。反応液をメタノールにて過剰のベンジルブロミドを分解した後、酢酸エチル(30ml)で希釈し、水(10ml 3回)で洗浄した後、芒硝乾燥し濾別した。濾液を減圧乾燥し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、3gm、酢酸エチル:ヘキサン=1:4)にて精製し、4、6−O−ジベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−D−シロ−イノシトール(式III−1−2)をシロップ(40mg、収率95%)として得た。
【0054】
▲4▼次に、上記の化合物(式III−1−2、37mg、0.0776mmol)をテトラヒドロフラン(1.0ml)に溶解し、4N 塩酸水溶液(1.0ml)を加え、50℃にて5時間攪拌した。反応液を濃縮して得られた残渣をピリジン(2.0ml)に溶解し、0℃にて無水酢酸(1.0ml)を加え、室温にて15時間攪拌した。反応液を氷冷下メタノールを加え、過剰の無水酢酸を分解し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、3gm、アセトン:ヘキサン=1:8)にて精製した。その結果、4、6−O−ジベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリアセチル−D−シロ−イノシトール(式III−1−3)をシロップ(33mg、収率90%)として得た。
【0055】
▲5▼次に、この化合物(式III−1−3、32mg、0.068mmol)をメタノール(2.0ml)に溶解し、0℃にて1N ナトリウムメトキシド(1.0ml)を加え、室温にて2時間攪拌した。反応液を強酸性陽イオン交換樹脂で中和し、樹脂を濾別した。濾液を濃縮して得られた残渣及び1H−テトラゾール(61mg、0.871mmol)の混合物をジメチルフォルムアミド(0.5ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、0℃にてジベンジルイソプロピルホスホロアミダイト(0.135ml、0.402mmol)を加え、室温にて2時間攪拌した。反応液に氷冷下水を加え、過剰のジベンジルイソプロピルホスホロアミダイトを分解し、遮光下、−40℃にてm−クロロ過安息香酸(98mg、0.568mmol)を加え、室温にて1時間攪拌した。反応液を濃縮してえられた残渣を酢酸エチル(30ml)に溶解し、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(10ml)、飽和重曹水(10ml)、水(10ml)、飽和食塩水(10ml)で順次洗浄した後、有機層を芒硝乾燥し、濾別した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、400gm、アセトン:トルエン=1:2)にて精製し、濾液を減圧乾燥し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、3gm、酢酸エチル:ヘキサン=1:4)にて精製し、4、6−O−ジベンジル−1−デオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)(式III−1−b)をシロップ(42mg、収率56%)として得た。
【0056】
▲6▼次に、このジベンジルリン酸化合物(式III−1−b、38mg、0.0338mmol)をエタノール−水の混合溶媒(1.2ml、2/1(v/v))に溶解し、10%パラジウムカーボン粉末を触媒として加え、水素雰囲気下室温にて12時間攪拌した。触媒を濾別し、濾液を濃縮した後、残渣を水に溶解し、シクロヘキシルアミンで中和した。濃縮して得られた塩をアセトン中で一晩放置し結晶化させた。塩を濾別し、水に溶解後、Dowex 50W×2にてシクロヘキシルアミンを除去した。樹脂を濾別し、濾液に1N ナトリウムメトキシドをpHが10になるまで加え、減圧濃縮して1−デオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩(式III−1−a、23mg、収率97%)を得た。
【0057】
4、6−O−ジベンジル−1−デオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)の物性は以下のとおりである。
分子式:C62H63O14P3
比旋光度: [α]D 23 +3.3°(c 1.60、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 1275cm-1及び1020cm-1(P−O)1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.55(ddd、1H、J1ax,6=11.5Hz、J1ax,2=11.5Hz、J1ax,1eq=12.9Hz、H−1ax)
2.67(ddd、1H、J1eq,6=4.6Hz、J1eq,2=4.6Hz、J1eq,1ax=12.9Hz、H−1eq)
3.50(dd、1H、J4,5=9.5Hz、J4,3=9.5Hz、H−4)
4.07(m、1H、H−6)
4.21−4.32(m、1H、H−2)
4.41−5.03(m、18H、H3及びH5及び8×CH 2 Ph)
6.96−7.39(m、40H、8×Ph)
【0058】
また、1−デオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩の物性は以下のとおりである。
分子式:C6H9Na6O8P
比旋光度: [α]D 26 −4.0°(c 0.85、H2O)
1H−NMR(300MHz、D2O、内部標準 アセトン)
dH(ppm)=1.38−1.50(m、1H、H−1ax)
2.11−2.18(m、1H、H−1eq)
3.36(dd、1H、J4,5=9.0Hz、J4,3=9.0Hz、H−4)
3.46(ddd、1H、J5,6=7.1Hz、J5,4=7.1Hz、J5,P=14.1Hz、H−5)
3.70(ddd、1H、J3,4=9.0Hz、J3,2=8.8Hz、J5,P=16.8Hz、H−3)
3.80−3.93(m、2H、H−2及びH−6)
【0059】
【実施例7】
4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)(式VII-1−b)及び1,6−ジデオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩(式VII-1−a)の合成
【化39】
実施例6(3)記載の方法に準じて合成した4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式B−6、125mg、0.323mmol)をピリジン(2.5ml)に溶解し、0℃にて塩化スルフリル(0.079ml、0.963mmol)、ジメチルアミノピリジン(4mg、0.0323mmol)を順次加え、室温にて6時間攪拌した。反応液にトルエンを加え、ピリジンを共沸除去した。得られた残渣をクロロホルム(60ml)に溶解し、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(20ml)、水(20ml)、飽和食塩水(20ml)で順次洗浄した後、有機層を芒硝乾燥し濾別した。濾液を減圧乾燥し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、15gm、酢酸エチル:ヘキサン=1:6)にて精製し、4−O−ベンジル−6−クロロ−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−D−シロ−イノシトール(式III−2−1)をシロップ(91mg、収率 70%)として得た。
【0060】
次に、上記化合物(式III−2−1、67mg、0.165mmol)とアゾイソビスブチロニトリル(AIBN、3.0ml、0.0165mmol)の混合物をトルエン(1.5ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、トリブチルチンハイドライド(0.138ml、0.495mmol)を加え、120℃にて15分間還流した。反応液を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、8gm、酢酸エチル:トルエン=1:6)にて精製し、4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−D−シロ−イノシトール(式III−2−2)をシロップ(57mg、収率 94%)として得た。
【0061】
次に、この化合物(式III−2−2、37mg、0.0945mmol)を実施例6(3)に準じて脱メトキシメチル化した後、アセチル化操作を行い、2,3,5−トリアセチル−4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−D−シロ−イノシトール(式III−2−3、33mg、収率 96%)を得た。次に、このトリアセチル化合物(式III−2−3、32mg、0.878mmol)を、実施例6(4)▲4▼に記載した方法に準じて脱アセチル化後、同じく実施例6(4)▲5▼に記載した方法に準じて4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)(式VII-1−b)、を合成した(シロップ、77mg、収率 86%)。この化合物(式VII-1−b、24mg、0.0236mmol)を同じく実施例6(4)▲6▼に記載した方法に準じて、脱ベンジル化し、1,6−ジデオキシ−D−シロ−イノシトール
2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩(式VII-1−a)を合成した(12mg、定量的収率)。
【0062】
4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)の物性は以下のとおりである。
分子式:C55H57O13P3
比旋光度: [α]D 26 +58.4°(c 0.60、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 1275cm-1及び1020cm-1(P−O)
1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.32−1.48(m、2H、H−1ax及びH−6ax)
2.13−2.25(m、2H、H−1eq及びH−6eq)
3.45(dd、1H、J4,5=8.8Hz、J4,3=9.2Hz、H−4)
4.27(m、2H、H−2及びH−5)
4.45(ddd、1H、J3,4=9.2Hz、J3,2=9.0Hz、J3、P=9.1Hz、H−3)
4.67−5.08(m、14H、7×CH 2 Ph)
7.00−7.34(m、35H、7×Ph)
【0063】
また、1,6−ジデオキシ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩の物性は以下のとおりである。
分子式:C6H9Na6O13P3
比旋光度: [α]D 26 −18.0°(c 0.60、H2O)
IRスペクトル(neat): 3450cm-1(OH)、1020cm-1(P−O)
1H−NMR(300MHz、D2O、内部標準 アセトン)
dH(ppm)=1.03−1.26(m、2H、H−1ax及びH−6ax)
1.73−1.97(m、2H、H−1eq及びH−6eq)
3.30(dd、1H、J3,4=9.2Hz、J3,2=9.0Hz、H−3)
3.70−3.78(m、3H、H−2及びH−4及びH−5)
【0064】
【実施例8】
4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)(式III−3−b)及び1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩(式III−3−a)の合成
【化40】
実施例6(3)に記載した方法に準じて合成した4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式B−6、98mg、0.254mmol)を塩化メチレン(2.0ml)に溶解し、0℃にてジエチルアミノサルファートリフルオライド(DAST、0.1ml、0.760mmol)を加え室温にて1時間攪拌した。氷重曹水中に反応液を滴下し、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和重曹水(10ml)、水(10ml)、飽和食塩水(10ml)で順次洗浄した後、有機層を芒硝乾燥し濾別した。濾役を減圧乾燥し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、10gm、酢酸エチル:ヘキサン=1:6)にて精製し、4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−D−シロ−イノシトール(III−3−1)をシロップ(69mg、収率 70%)として得た。
【0065】
次に、上記方法に準じて合成した上記化合物(式III−3−1、70mg、0.180mmol)を実施例6(3)に記載した方法に準じて脱メトキシメチル化した後、アセチル化操作を行い、4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−2,3,5−トリアセチル−D−シロ−イノシトール(式III−3−2、65mg、収率 95%)を得た。次に、この化合物(式III−3−2、65mg、0.170mmol)を、実施例6(4)▲4▼に記載した方法に準じて脱アセチル化後、同じく実施例6(4)▲5▼に記載した方法に準じて4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)(式III−3−b)を合成した(シロップ、125mg、収率 71%)。この化合物(式III−3−b、105mg、0.101mmol)を同じく実施例6(4)▲6▼に記載した方法に準じて、脱ベンジル化し、1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩(式III−3−a)を合成した(50mg、収率 92%)。
【0066】
4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)の物性は以下のとおりである。
分子式:C55H56FO13P3
比旋光度: [α]D 22 −13.6°(c 1.25、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 1270cm-1(P−O)及び1020cm-1(P−O、C−F)
1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.51−1.86(m、1H、H−1ax)
2.67−2.76(m、1H、H−1eq)
3.48(dd、1H、J4,5=9.5Hz、J4,3=9.2Hz、H−4)
4.29−4.39(m、1H、H−2)
4.51−5.76(m、17H、H−3及びH−5及びH−6及び7×CH 2 Ph)
6.97−7.35(m、35H、7×Ph)
【0067】
また、1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−D−シロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩の物性は以下のとおりである。
分子式:C6H9Na6O13P3
比旋光度: [α]D 21 +7.3°(c 2.50、H2O)
IRスペクトル(neat): 1180cm-1(P−O)、1040cm-1(P−O、C−F)
1H−NMR(300MHz、D2O、内部標準 アセトン)
dH(ppm)=1.65−1.75(m、1H、H−1ax)
2.35−2.41(m、1H、H−1eq)
3.30(dd、1H、J4,5=8.8Hz、J4,3=8.5Hz、H−4)
3.85−4.06(m、3H、H−2及びH−3及びH−5)
4.29−4.53(m、1H、H−6)
【0068】
【実施例9】
4,6−O−ジベンジル−1−デオキシ−L−キロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)(VIII−1−b)及び1−デオキシ−L−キロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェート(VIII−1−a)の合成
【化41】
実施例6(3)に記載した方法に準じて合成した4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式B−6、560mg、1.45mmol)をジメチルホルムアミド(10ml)に溶解し、0℃にて水素化ナトリウム(120mg、2.90mmol)を加え攪拌した。15分後、0℃にてベンジルブロミド(0.26ml、2.18mmol)を加え、室温にて10時間攪拌した。氷冷下、反応液にメタノールを加え過剰のベンジルブロミドを分解したのち、酢酸エチル(120ml)を加え、水(40ml×3)で洗浄し、有機層を芒硝乾燥し濾別した。濾液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、400gm、アセトン:トルエン=1:2)にて精製し、化合物4,6−O−ジベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式VIII−1−1、シロップ、628mg、収率 91%)を得た。
【0069】
次に、上記方法に準じて合成した上記化合物(式VIII−1−1、240mg、0.504mmol)を実施例6(3)に準じて脱メトキシメチル化した後、アセチル化操作を行い、4,6−O−ジベンジル−1−デオキシ−2,3,5−トリアセチル−L−キロ−イノシトール(式VIII−1−2、213mg、収率 90%)を得た。次に、この化合物(式VIII−1−2、172mg、0.366mmol)を、実施例6(4)▲4▼に記載した方法に準じて脱アセチル化後、同じく実施例6(4)▲5▼に記載した方法に準じて4,6−O−ジベンジル−1−デオキシ−L−キロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)を合成した(VIII−1−b、シロップ、381mg、収率93%)。この化合物(VIII−1−b、50mg、0.044mmol)を同じく実施例6(4)▲6▼に記載した方法に準じて、脱ベンジル化し、1−デオキシ−L−キロ−イノシトール2,3,5−トリホスフェート(式VIII−1−a)のナトリウム塩を合成した(23mg、収率 97%)。
【0070】
4,6−O−ジベンジル−1−デオキシ−L−キロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)の物性は以下のとおりである。
分子式:C62H63O14P3
比旋光度: [α]D 23 −38.1°(c 1.50、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 3340cm-1(OH)、1280cm-1及び1050cm-1(P−O)
1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.39−1.48(m、1H、H−1ax)
2.61(ddd、1H、J1eq,6=3.9Hz、J1eq,2=4.4Hz、J1eq,1ax=14.4Hz、H−1eq)
3.99(dd、1H、J4,5=9.1Hz、J4,3=9.0Hz、H−4)
4.07(br、1H、H−6)
4.28−4.35(m、1H、H−5)
4.58−4.46(m、2H、H−2及びH−3)
4.67−5.06(m、16H、8×CH 2 Ph)
7.16−7.36(m、40H、8×Ph)
【0071】
また、1−デオキシ−L−キロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩の物性は以下のとおりである。
分子式:C6H9Na6O14P3
比旋光度: [α]D 23 −30.5°(c 1.00、H2O)
IRスペクトル(neat): 1050cm-1(P−O)
1H−NMR(300MHz、D2O、内部標準 アセトン)
dH(ppm)=1.50−1.59(m、1H、H−1ax)
2.10−2.18(m、1H、H−1eq)
3.68−3.74(m、1H、H−4)
3.81−3.87(m、2H、H−3及びH−5)
4.11−4.18(m、2H、H−2、H−6)
【0072】
【実施例10】
4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−L−キロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)(式IV−1−b)及び1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−L−キロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩(式IV−1−a)の合成
【化42】
実施例6(4)▲1▼−▲2▼記載の方法に準じて合成した4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−D−シロ−イノシトール(式III−1−1、116mg、0.300mmol)の6位の水酸基を、実施例8記載の方法によりフッ素基に置換することにより、4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−2,3,5−O−トリメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式IV−1−1)をシロップとして得た。次に,この化合物(式IV−1−1)を実施例8記載の方法により、メトキシメチル基をはずした後、遊離の水酸基をアセチル化することにより、4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−2,3,5−O−トリアセチル−L−キロ−イノシトール(式IV−1−2、93mg、収率81%)をシロップとして得た。
【0073】
次に、上記化合物(式IV−1−2、37mg、0.0968mmol)を実施例6(4)▲4▼記載の方法に準じて、脱アセチル化後、同じく実施例6(4)▲5▼記載の方法に準じて、遊離の水酸基をジベンジルリン酸エステル化することによって、4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−L−キロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)を合成した(式IV−1−b、シロップ、79mg、収率 79%)。
次に、上記化合物(式IV−1−b、53mg、0.0511mmol)を同じく実施例6(4)▲6▼記載の方法により脱ベンジル化し、1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−L−キロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩(式IV−1−a)を合成した(27mg、収率 99%)。
【0074】
4−O−ベンジル−1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−L−キロ−イノシトール 2,3,5−トリ(ジベンジルホスフェート)の物性は以下のとおりである。
分子式:C62H63O14P3
比旋光度: [α]D 23 −14.9°(c 2.50、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 1275cm-1及び1020cm-1(P−O)及び1040cm-1(C−F)
1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.51−1.66(m、1H、H−1ax)
2.66−2.72(m、1H、H−1eq)
3.87(dd、1H、J4,5=9.0Hz、J4,3=9.3Hz、H−4)
4.32(ddd、1H、J5,6=3.2Hz、J5,4=9.0Hz、J5、P=19.2Hz、H−5)
4.48−5.10(m、17H、H−2及びH−3及びH−6及び7×CH 2 Ph)F
7.00−7.32(m、35H、7×Ph)
【0075】
また、1,6−ジデオキシ−6−フルオロ−L−キロ−イノシトール 2,3,5−トリホスフェートのナトリウム塩の物性は以下のとおりである。
分子式:C6H8FNa6O13P3
比旋光度: [α]D 23 +7.5°(c 1.35、H2O)
IRスペクトル(neat): 1100cm-1(P−O)、1025cm-1(C−F)
1H−NMR(300MHz、D2O、内部標準 アセトン)
dH(ppm)=1.60(dddd、1H、J1ax,6=2.2Hz、J1ax,2=12.9Hz、J1ax,1eq=13.7Hz、J1ax,F=46.9Hz、H−1ax)
2.30−2.41(m、1H、H−1eq)
3.67(dd、1H、J4,5=9.5Hz、J4,3=9.5Hz、H−4)
3.82−3.98(m、2H、H−3及びH−5)
4.02−4.16(m、1H、H−2)
4.90(d、1H、J6,F=48.6Hz、H−6)
【0076】
【実施例11】
4−O−ベンジル−1−デオキシ−L−キロ−イノシトール 2,3,5,6−テトラ(ジベンジルホスフェート)(IV−2−b)及び1−デオキシ−L−キロ−イノシトール 2,3,5,6−テトラホスフェートのナトリウム塩(IV−2−a)の合成
【化43】
実施例6(1)の方法に準じて合成した4−O−ベンジル−1−デオキシ−5,6−O−イソプロピリデニル−L−キロ−イノシトール(式B−3−1、211mg、0.510mmol)の遊離水酸基を常法によりアセチル化し、4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3,5,6−テトラアセチル−L−キロ−イノシトール(式IV−2−1、150mg、収率 98%)をシロップとして得た。
【0077】
上記の方法に準じて合成したこのテトラアセチル体(式IV−2−1、250mg、0.592mmol)を実施例6(4)▲4▼に準じて脱アセチル化後、同じく実施例6(4)▲5▼に記載した方法に準じて遊離の水酸基をジベンジルホスフェートエステル化し、4−O−ベンジル−1−デオキシ−L−キロ−イノシトール 2,3,5,6−テトラ(ジベンジルホスフェート)(式IV−2−b、シロップ、530mg、収率 70%)を得た。
次に、上記化合物(式IV−2−b、186mg、0.145mmol)を実施例6(4)▲6▼に準じた方法で脱ベンジル化し、化合物1−デオキシ−L−キロ−イノシトール 2,3,5,6−テトラホスフェートのナトリウム塩(式IV−2−a、79mg、収率 83%)を得た。
【0078】
4−O−ベンジル−1−デオキシ−L−キロ−イノシトール 2,3,5,6−テトラ(ジベンジルホスフェート)の物性は以下のとおりである。
分子式:C69H70O17P4
比旋光度: [α]D 26 −9.4°(c 1.70、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 1280cm-1及び1020cm-1(P−O)1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.65(m、1H、H−1ax)
2.78(ddd、1H、J1eq,6=3.9Hz、J1eq,2=4.4Hz、J1eq,1ax=14.6Hz、H−1eq)
3.84(dd、1H、J4,5=8.8Hz、J4,3=9.1Hz、H−4)
4.36(br、1H、H−3)
4.55(ddd、1H、J5,6=2.9Hz、J5,4=8.8Hz、J5、P=17.8Hz、H−5)
4.66−5.09(m、20H、H−2及びH−6及び9×CH 2 Ph)
7.00−7.35(m、40H、8×Ph)
【0079】
また、1−デオキシ−L−キロ−イノシトール 2,3,5,6−テトラホスフェートのナトリウム塩の物性は以下のとおりである。
分子式:C6H8Na8O17P4
比旋光度: [α]D 21 −18.9°(c 3.70、H2O)
IRスペクトル(neat): 1220cm-1及び1025cm-1(P−O)
1H−NMR(300MHz、D2O、内部標準 アセトン)
dH(ppm)=1.60(m、1H、H−1ax)
2.27(ddd、1H、J1eq,6=4.4Hz、J1eq,2=4.7Hz、J1eq,1ax=14.4Hz、H−1eq)
3.70(dd、1H、J4,5=9.6Hz、J4,3=9.2Hz、H−4)
3.81−3.90(m、2H、H−3及びH−5)
4.12−4.23(m、1H、H−2)
4.47−4.50(m、1H、H−6)
【0080】
【実施例12】
1−デオキシ−4−O−ジベンジル−5−O−(2−ヒドロキシエチル)−L−キロ−イノシトール 2,3,2'−トリ(ジベンジルホスフェート)(IV−3−b)及び1−デオキシ−5−O−(2−ヒドロキシエチル)−L−キロ−イノシトール 2,3,2'−トリホスフェートのナトリウム塩(IV−3−a)の合成
【化44】
実施例6(2)記載の方法に準じて合成した化合物4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3−O−ジメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式B−5、255mg、0.745mmol)をトルエン(5.0ml)に溶解し、ジブチルチンオキシド(370mg、1.49mmol)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(48mg、0.149mmol)を順次加え、120℃で15時間還流させた。反応液を放冷し、アリルブロミド(0.126ml、1.49mmol)を加え、120℃にて15時間攪拌した。反応液を濃縮して得られた残渣を酢酸エチル(45ml)に溶解し、飽和食塩水(15ml×3回)で洗浄した後、有機層を芒硝乾燥し濾別した。濾液を減圧乾燥し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、25gm、アセトン:ヘキサン=1:5)にて精製し、化合物5−O−アリル−4−O−ベンジル−1−デオキシ−2,3−O−ジメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式IV−3−1、256mg、収率 90%)をシロップとして得た。
【0081】
上記化合物(式IV−3−1、138mg、0.361mmol)を実施例8記載の方法に準じて6位の遊離水酸基をベンジル化し、化合物5−O−アリル−1−デオキシ−4,6−O−ジベンジル−2,3−O−ジメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式IV−3−2、140mg、収率 82%)をシロップとして得た。
次に、この化合物(式IV−3−2、50mg、0.106mmol)を塩化メチレンとメタノールの混合溶媒(1,5ml、1:1、v/v)に溶解し、オゾン雰囲気下、−78℃にて10分間攪拌した。その後、0℃にて水素化ホウ素ナトリウム(22mg、0.530mmol)を加え、室温にて1時間攪拌した。反応液を濃縮して得られた残渣を酢酸エチル(30ml)に溶解し、1N塩酸水溶液(10ml)、飽和重曹水(10ml)、水(10ml)で順次洗浄した後、有機層を芒硝乾燥し濾別した。濾液を減圧濃縮し、得られた残渣をピリジン(1.0ml)に溶解し、0℃にて無水酢酸(0.5ml)を加え、10時間攪拌した。反応液を氷冷下メタノールを加え過剰の無水酢酸を分解した。トルエンを加え、ピリジンを共沸除去した後減圧乾燥した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、3gm、アセトン:ヘキサン=1:6)にて精製し、化合物5−O−(2−アセトキシエチル)−1−デオキシ−4,6−O−ジベンジル−2,3−O−ジメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式IV−3−3、33mg、収率 60%)をシロップとして得た。
【0082】
次に、上記化合物(式IV−3−3、32mg、0.0617mmol)を実施例6(3)記載の方法に準じて、脱メトキシメチル化した後アセチル化操作を行い化合物5−O−(2−アセトキシエチル)−1−デオキシ−2,3−O−ジアセチル−4,6−O−ジベンジル−L−キロ−イノシトール(式IV−3−4、25mg、収率 80%)をシロップとして得た。
次に、上記化合物(式IV−3−4、24mg、0.0466mmol)を実施例6(4)▲4▼に準じて脱アセチル化後、同じく実施例6(4)▲5▼に記載した方法に準じて遊離の水酸基をジベンジルホスフェートエステル化し、1−デオキシ−4,6−O−ジベンジル−5−O−(2−ヒドロキシエチル)−L−キロ−イノシトール 2,3,2'−トリ(ジベンジルホスフェート)をシロップ(式IV−3−b、40mg、収率70%)として得た。
次に、上記の方法に準じて合成したジベンジルリン酸化合物(式IV−3−b、48mg、0.0411mmol)を同様に実施例6(4)▲6▼に記載した方法に準じて脱ベンジル化し、化合物1−デオキシ−5−O−(2−ヒドロキシエチル)−L−キロ−イノシトール 2,3,2'−トリホスフェート(式IV−3−a、24mg、収率 定量的)を得た。
【0083】
1−デオキシ−4,6−O−ジベンジル−5−O−(2−ヒドロキシエチル)−L−キロ−イノシトール 2,3,2'−トリ(ジベンジルホスフェート)の物性は以下のとおりである。
分子式:C64H67O15P3
比旋光度: [α]D 23 +16.6°(c 2.42、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 1280cm-1及び1020cm-1(P−O)
1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.28−1.39(m、1H、H−1ax)
2.61(ddd、1H、J1eq,6=4.4Hz、J1eq,2=4.4Hz、J1eq,1ax=13.9Hz、H−1eq)
3.26(dd、1H、J5,6=2.7Hz、J5,4=9.8Hz、H−5)
3.55−3.60(m、2H、H−1')
3.78(br、1H、H−6)
3.89(dd、1H、J4,5=9.8Hz、J4,3=9.4Hz、H−4)
3.98−4.03(m、2H、H−2')
4.44−5.08(m、18H、H−2及びH−3及び8×CH 2 Ph)
7.01−7.34(m、40H、8×Ph)
【0084】
また、1−デオキシ−5−O−(2−ヒドロキシエチル)−L−キロ−イノシトール 2,3,2'−トリホスフェートのナトリウム塩の物性は以下のとおりである。
分子式:C8H13Na6O15P3
比旋光度: [α]D 21 −12.6°(c 1.20、H2O)
IRスペクトル(neat): 1210cm-1及び1050cm-1(P−O)
1H−NMR(300MHz、D2O、内部標準 アセトン)
dH(ppm)=1.42−1.51(m、1H、H−1ax)
2.12(ddd、1H、J1eq,6=4.2Hz、J1eq,2=4.4Hz、J1eq,1ax=14.2Hz、H−1eq)
3.18(dd、1H、J5,6=2.9Hz、J5,4=10.0Hz、H−5)
3.41−3.48(m、1H、H−3)
3.58−3.67(m、2H、H−4、H−2a 3.74−3.84(m、3H、H−1'、H−2b 4.08−4.14(m、1H、H−2)
4.15(br、1H、H−6)
【0085】
【実施例13】
1−デオキシ−4,6,−O−ジベンジル−5−O−(3−ヒドロキシプロピル)−L−キロ−イノシトール 2,3,3'−トリ(ジベンジルホスフェート)(IV−4−b)及び1−デオキシ−5−O−(3−ヒドロキシプロピル)−L−キロ−イノシトール 2,3,3'−トリホスフェートのナトリウム塩(IV−4−a)の合成
【化45】
実施例12に記載した方法に準じて合成した化合物5−O−アリル−1−デオキシ−4,6−O−ジベンジル−2,3−O−ジメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(式IV−3−2、115mg、0.234mmol)をテトラヒドロフラン(THF、2.4ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下、−15℃にてボラン−THF錯体(2.4ml、2.43mmol)を加え、1.5時間攪拌した。反応液中のボラン−THF錯体を水で分解し、氷冷下3N 水酸化ナトリウム水溶液(1.0ml)を加え、更に10分後35%過酸化水素水溶液(1.0ml)を加え室温にて30分間攪拌した。反応液を濃縮して得られた残渣を酢酸エチル(30ml)に溶解し、飽和食塩水(10ml×3回)、水(10ml×3回)で順次洗浄した後、有機層を芒硝乾燥し濾別した。濾液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(片山60、10gm、アセトン:ヘキサン=1:5)にて精製し、化合物1−デオキシ−4,6−O−ジベンジル−2,3−O−ジメトキシメチル−5−O−(3−ヒドロキシプロピル)−L−キロ−イノシトール(96mg、収率 74%)をシロップとして得た。この化合物1−デオキシ−4,6−O−ジベンジル−2,3−O−ジメトキシメチル−5−O−(3−ヒドロキシプロピル)−L−キロ−イノシトール(96mg、0.196mmol)を常法によりアセチル化し、化合物5−O−(3−アセトキシプロピル)−1−デオキシ−4,6−O−ジベンジル−2,3−O−ジメトキシメチル−L−キロ−イノシトール(IV−4−1、104mg、収率 定量的)をシロップとして得た。
【0086】
次に、上記化合物(IV−4−1、65mg、0.122mmol)を実施例6(3)記載の方法に準じて、脱メトキシメチル化した後アセチル化操作を行い化合物5−O−(3−アセトキシプロピル)−1−デオキシ−2,3−O−ジアセチル−4,6−O−ジベンジル−L−キロ−イノシトール(IV−4−2、61mg、収率 95%)をシロップとして得た。
次に、この化合物(IV−4−2、58mg、0.110mmol)を実施例6(4)▲4▼に準じて脱アセチル化後、同じく実施例6(4)▲5▼に記載した方法に準じて遊離の水酸基をジベンジルホスフェートエステル化し、1−デオキシ−4,6−O−ジベンジル−5−O−(3−ヒドロキシプロピル)−L−キロ−イノシトール 2,3,3'−トリ(ジベンジルホスフェート)をシロップ(IV−4−b、106mg、収率 82%)として得た。
次に、上記の方法に準じて合成した化合物(IV−4−b、25mg、0.0211mmol)を同様に実施例6(4)▲6▼に記載した方法に準じて脱ベンジル化し、化合物1−デオキシ−5−O−(3−ヒドロキシプロピル)−L−キロ−イノシトール 2,3,3'−トリホスフェートのナトリウム塩(IV−4−a、24mg、収率 定量的)を得た。
【0087】
1−デオキシ−4,6−O−ジベンジル−5−O−(3−ヒドロキシプロピル)−L−キロ−イノシトール 2,3,3'−トリ(ジベンジルホスフェート)の物性は以下のとおりである。
分子式:C65H69O15P3
比旋光度: [α]D 23 −128.9°(c 1.33、CHCl3)
IRスペクトル(neat): 1280cm-1及び1020cm-1(P−O)
1H−NMR(300MHz、CDCl3、内部標準 TMS)
dH(ppm)=1.30−1.39(m、1H、H−1ax)
1.79−1.83(m、2H、H−2')
2.65(ddd、1H、J1eq,6=4.1Hz、J1eq,2=4.4Hz、J1eq,1ax=14.4Hz、H−1eq)
3.22(dd、1H、J5,6=2.7Hz、J5,4=9.5Hz、H−5)
3.38−3.75(m、2H、H−1')
3.76(br、1H、H−6)
3.87(dd、1H、J4,5=9.5Hz、J4,3=9.3Hz、H−4)
3.95−4.05(m、2H、H−3')
4.52(dd、1H、J3,4=9.3Hz、J3,2=9.0Hz、H−3)
4.56−5.08(m、17H、H−2及び8×CH 2 Ph)
7.01−7.36(m、40H、8×Ph)
【0088】
また、1−デオキシ−5−O−(3−ヒドロキシプロピル)−L−キロ−イノシトール 2,3,3'−トリホスフェートのナトリウム塩の物性は以下のとおりである。
分子式:C8H13Na6O15P3
比旋光度: [α]D 21 −7.1°(c 0.70、H2O)
IRスペクトル(neat): 1040cm-1(P−O)
1H−NMR(300MHz、D2O、内部標準 アセトン)
dH(ppm)=0.98−1.59(m、2H、H−2')
1.34−1.43(m、1H、H−1ax)
2.32−2.37(m、1H、H−1eq)
3.17−3.21(m、1H、H−5)
3.48(dd、1H、J3,4=7.1Hz、J3,2=7.0Hz、H−3)
3.67−3.73(m、3H、H−4及びH−1')
3.95−4.01(m、1H、H−2)
4.17(br、1H、H−6)
4.57−4.72(m、2H、H−3')
【0089】
【発明の効果】
それ自体が生物活性を有し、また、医農薬原料として用いるために必要な条件である、純度の高い光学活性を有する、新規なイノシトール一価〜多価リン酸エステル誘導体が提供される。また、2−デオキシ−D−エピ−イノシトール((+)−エピ−クエルシトール)及び1−デオキシ−L−キロ−イノシトール((−)−ビボ−クエルシトール)を原料にして、純度の高い光学活性を有する、新規なイノシトール一価〜多価リン酸エステル誘導体を効率よく且つ安価に製造する方法が提供される。
Claims (8)
- 下記一般式(IV)
- 次式(A)
a)隣り合った水酸基を架橋剤で保護し、
b)架橋剤で保護されていない遊離の水酸基をリン酸化し、
必要に応じて架橋剤により生成させた架橋基を脱保護することを特徴とする、
下記一般式(V)
- 次式(A)
a)隣り合った水酸基を架橋剤で保護し、
b)架橋剤により生成した架橋基の一部を脱保護し、
c)架橋剤で保護されていない遊離の水酸基をリン酸化し、
必要に応じて架橋剤により生成させた架橋基を脱保護することを特徴とする、
下記一般式(VI)
- 次式(B)
a)隣り合った水酸基を架橋剤で保護し、
b)遊離の水酸基を保護剤で保護し、
c)架橋剤により生成された架橋基の一部を脱保護し、
d)遊離の水酸基を保護剤で保護し、
e)c)工程で脱保護されていない、残りの架橋基を脱保護し、
f)6位以外の遊離の水酸基を保護剤で保護し、
g)6位の基を反転させ、
h)特定の基の保護剤を脱保護し、
i)特定の基をリン酸化し、
必要に応じて脱保護されていない、残りの保護剤を脱保護することを特徴とする、
下記一般式(VII)
- 次式(B)
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