JP4166254B2 - ボールカインポリペプチド及び核酸 - Google Patents
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Description
本発明は、一般に、新規なDNAの同定及び単離、並びに新規なポリペプチドの組換え生産に関する。本発明はまたボールカイン(Bolekine)と免疫系及び細胞分化におけるその役割の使用方法にも関する。
白血球は単球、マクロファージ、好塩基球、及び好酸球を含み、免疫応答において重要な役割を果たしている。これらの細胞はT及び/又はBリンパ球により開始される機構において重要であり、他の炎症性細胞を補充して活性化させ組織破壊に寄与するある範囲のサイトカインを分泌する。
従って、白血球がその適切な目的地まで移動し他の細胞と相互作用する調節プロセスの研究は重要である。現在、白血球は血管壁の内皮細胞に沿って転がることにより損傷を受けたあるいは炎症を起こした組織まで移動すると考えられている。この移動は、セレクチンとそのリガンドの間の一過性の相互作用により媒介される。次に、白血球は血管壁に沿って組織内部まで移動しなければならない。この血液からの漏出と管外遊出工程は、またインテグリンとそのリガンドにより媒介される、より安定した白血球−内皮細胞相互作用を促進する細胞活性化を含む。
MIP-2は最初はリポ多糖類(LPS)での刺激時にマウスマクロファージ細胞株RAW264.7により分泌された6kDaのヘパリン結合タンパク質として同定された。MIP-2はケモカインのC-X-C(又はCXC)サブファミリーのメンバーである。マウスMIP-2はヒト好中球に対して化学走化性であり、マウスの足の裏に注射した場合、局所的好中球浸潤を誘発する。ラットMIP-2はマウスMIP-2に対して86%のアミノ酸相同性を示し、ラット好中球に対して化学走化性であるが、ラット肺胞マクロファージ又はヒト末梢血好酸球又はリンパ球の遊走を刺激しない。また、ラットMIP-2はラット肺胞内皮細胞の増殖を刺激するが線維芽細胞の増殖は刺激しないことが実証されている。
従って、サイトカイン誘導好中球化学誘引物質、例えばMIP-1、MIP-2、並びにその他の関連タンパク質と配列同一性及び類似性を有するポリペプチド及びそれをコードする核酸を同定することが本発明の目的である。
我々はここにボールカイン(Bolekine)ポリペプチドと命名した新規なケモカインファミリーポリペプチドの同定と特徴付けを記載する。
一実施態様では、本発明はボールカインポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を提供する。
一態様では、単離された核酸分子は、(a)ここに開示された全長アミノ酸配列、ここに開示されたシグナルペプチドを欠くアミノ酸配列、ここに開示されたシグナルペプチドを伴うか伴わない膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、又はここに開示された全長アミノ酸配列の他に特別に定められた任意の断片を有するボールカインポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約89%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約99%の核酸配列同一性を有しているヌクレオチド配列を含む。
本発明の他の態様は、膜貫通ドメインが欠失されているか膜貫通ドメインが不活性化されているボールカインポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はそのようなコード化ヌクレオチド配列に相補的であるものを含んでなる単離された核酸分子を提供し、ここでそのようなポリペプチドの膜貫通ドメインがここに開示される。従って、ここに記載されたボールカインポリペプチドの可溶性細胞外ドメインが考えられる。
ある態様では、本発明は、ここに開示された全長アミノ酸配列、ここに開示されたシグナルペプチドを欠くアミノ酸配列、ここに開示されたシグナルペプチドを伴うか伴わない膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、又はここに開示された全長アミノ酸配列の任意の他の特に定められた断片を有するボールカインポリペプチドに対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約89%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有しているアミノ酸配列を含む単離されたボールカインポリペプチドに関する。
本発明の他の態様は、膜貫通ドメインが欠失されたか膜貫通ドメインが不活性化された単離されたボールカインポリペプチドを提供する。これを生産する方法もまたここに記載され、ここで、これらの方法はボールカインポリペプチドの発現に適した条件下で適当なコード化核酸分子を含むベクターを含んでなる宿主細胞を培養し、細胞培養物からボールカインポリペプチドを回収することを含んでなる。
さらに他の実施態様では、本発明は、ここで定められる天然ボールカインポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストに関する。特定の実施態様では、アゴニスト又はアンタゴニストは抗ボールカイン抗体又は小分子である。
また更なる実施態様では、本発明は、ボールカインポリペプチド、又はここに記載するボールカインポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニスト、又は抗ボールカイン抗体を、担体と組み合わせて含有する組成物に関する。場合によっては、担体は薬学的に許容される担体である。
本発明の他の実施態様は、ボールカインポリペプチド、又は上記したようなそのアゴニスト又はアンタゴニスト、又は抗ボールカイン抗体の、ボールカインポリペプチド、そのアゴニスト又はアンタゴニスト又は抗ボールカイン抗体に応答性の病状の治療に有用な医薬の調製のための使用に関する。
他の実施態様では、本発明は、異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合した、ここに記載の任意のポリペプチドを含んでなるキメラ分子を提供する。そのようなキメラ分子の例は、エピトープタグ配列又は免疫グロブリンのFc領域に融合したここに記載の任意のポリペプチドを含む。
更に他の実施態様では、本発明は、上記又は下記のポリペプチドの任意のものに特異的に結合する抗体を提供する。場合によっては、抗体はモノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗体断片又は一本鎖抗体である。
更に他の実施態様では、本発明は以下の実施例において提示した機能性生物学的アッセイに基づいて様々な用途に対して本発明のボールカインポリペプチドを使用する方法に関する。
更に他の実施態様では、本発明は実施例10に提示されたように免疫細胞の増殖を増加させる方法に関する。
更に他の実施態様では、本発明は実施例11に提示されたように血管透過性を増加させる使用方法に関する。
I.定義
ここで使用される際の「ボールカイン」という用語は、天然配列ポリペプチド及びポリペプチド変異体(ここで更に詳細に定義する)を含む。ここで記載されているボールカインポリペプチドは、ヒト組織型又は他の供給源といった種々の供給源から単離され、あるいは組換え又は合成方法によって調製されうる。「ボールカインポリペプチド」という用語は、ここで開示されている各個々のボールカインポリペプチドを指す。「ボールカインポリペプチド」を指すこの明細書中の全ての開示は、各ポリペプチドのそれぞれも組み合わせものも指す。例えば、その調製、その精製、その誘導、それへの又はそれに対する抗体の形成、その投与、それを含有する組成物、それでの疾患の治療等々の記述は、本発明の各ポリペプチドのそれぞれに関係する。また、「ボールカインポリペプチド」という用語は、ここに開示されているボールカインポリペプチドの変異体を含む。
分率X/Yの100倍
ここで、XはA及びBの配列アラインメントプログラムALIGN-2においてその配列アラインメントプログラムによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。この方法を用いた%アミノ酸配列同一性の計算の例として、表2及び3は、「比較タンパク質」と称されるアミノ酸配列の「ボールカイン」と称されるアミノ酸配列に対する%アミノ酸配列同一性の計算方法を示し、ここで「ボールカイン」は対象となる仮説的ボールカインポリペプチドのアミノ酸配列を表し、「比較タンパク質」は対象となる「ボールカイン」ポリペプチドが比較されているポリペプチドのアミノ酸配列を表し、「X」、「Y」及び「Z」はそれぞれ異なった仮説的アミノ酸残基を表す。
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムNCBI-BLAST2のA及びBのアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムALIGN-2のC及びDのアラインメントによって同一であると一致したスコアの核酸残基の数であり、ZはDの全核酸残基数である。核酸配列Cの長さがアミノ酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。この方法を用いた%核酸配列同一性の計算の例として、表4及び5は「比較DNA」と称される核酸配列の「ボールカイン-DNA」と称される核酸配列に対する%核酸配列同一性の計算方法を実証し、ここで「ボールカイン-DNA」が対象の仮説的ボールカインコード化核酸配列を表し、「比較DNA」が対象の「ボールカイン-DNA」核酸分子が比較されている核酸配列を表し、「N」、「L」及び「V」はそれぞれ異なった仮説的アミノ酸残基を表す。
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムNCBI-BLAST2のC及びDのアラインメントによって同一であると一致したスコアの核酸残基の数であり、ZはDの全核酸残基数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。
「単離された」とは、ここで開示された種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離されたポリペプチドには、ボールカインポリペプチドの自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも一つの精製工程により調製される。
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
「抗体」という用語は最も広義に使用され、例えば、単一の抗ボールカインポリペプチドモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、及び中和抗体を含む)、多エピトープ特異性を持つ抗ボールカイン抗体組成物、一本鎖抗ボールカイン抗体、及び抗ボールカイン抗体の断片を特に包含する(下記参照)。ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である集団から得られる抗体を指す。
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合したボールカインポリペプチド、又はそれらのドメイン配列を含むキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープ、又は幾つかの他の試薬によって同定できるエピトープを提供するに十分な数の残基を有しているが、その長さは対象とするポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20のアミノ酸残基)を有する。
ここでの目的に対する「活性な」又は「活性」とは、天然又は天然に生じるボールカインの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するボールカインポリペプチドの形態を意味し、ここで「生物学的」活性とは、天然又は天然に生じるボールカインが保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力以外の、天然又は天然に生じるボールカインによって引き起こされる生物機能(阻害又は刺激)を意味し、また「免疫学的」活性とは、天然又は天然に生じるボールカインが保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力を意味する。
「慢性」投与とは、急性態様とは異なり連続的な態様での薬剤を投与し、初期の治療効果(活性)を長時間に渡って維持することを意味する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処置である。
治療のための「哺乳動物」は、ヒト、家庭及び農業用動物、動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む哺乳類に分類される任意の動物を意味する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
一又は複数の治療薬と「組み合わせた」投与とは、同時(同時期)及び任意の順序での連続した投与を含む。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')2断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。この配置において各ドメインの3つのCDRが相互作用してVH−VL二量体の表面に抗原結合部位を決定する。正しくは、6つのCDRが抗体に対する抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる二つの明らかに異なる型の一方に分類される。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに分類できる。免疫グロブリンの五つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、それらの幾つかは更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分類される。
「ダイアボディ(diabodies)」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小型の抗体断片を意味し、その断片は同じポリペプチド鎖(VH−VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖の二つのドメイン間に対形成するには短すぎるリンカーを用いることにより、ドメインは強制的に他の鎖の相補的ドメインと対形成して二つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHollingerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により十分に記載されている。
「特異的に結合する」抗体、又は特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープへ「特異的な」抗体とは、他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープとは実質的に結合せずに、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープへ結合するものである。
「固相」とは、本発明の抗体がそれに付着することのできる非水性マトリクスを意味する。ここに意図する固相の例は、部分的又は全体的に、ガラス(例えば、孔制御ガラス)、多糖類(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンから形成されたものを含む。或る種の実施態様では、内容に応じて、固相はアッセイプレートのウェルを構成することができ;その他では精製カラム(例えばアフィニティクロマトグラフィーカラム)とすることもできる。また、この用語は、米国特許第4,275,149号に記載されたような、別個の粒子の不連続な固相も包含する。
「小分子」とは、ここで、約500ダルトン未満の分子量を持つと定義される。
ここに開示されたポリペプチド又はそのアゴニスト又はアンタゴニストの「有効量」とは、特に記載した目的を実施するのに十分な量である。「有効量」は述べられた目的との関連で経験的かつ常套的に決定されうる。
「多能性細胞」は発生系統に固定されない細胞としてここに定義される。
A.完全長ボールカインポリペプチド
本発明は、本出願でボールカインポリペプチドと呼ばれるポリペプチドをコードする新規に同定され単離された核酸配列を提供する。特に下記の実施例でさらに詳細に説明するように、種々のボールカインポリペプチドをコードするcDNAが同定され単離された。しかしながら、単純化のために、本明細書において、ここに開示した完全長天然核酸分子にコードされるタンパク質並びに上記のボールカインの定義に含まれる更なる天然相同体及び変異体は、それらの由来又は調製方法に関わらず、ボールカインと称する。
下記の実施例に開示されるように、ボールカインcDNAクローンはATCCに寄託されている。これらのクローンの実際のヌクレオチド配列は、この分野で日常的な方法を用いて寄託されたクローンを配列決定することにより容易に決定することができる。予測されるアミノ酸配列は、ヌクレオチド配列から常套的技量を用いて決定できる。ここに記載したボールカインポリペプチド及びコード化核酸について、本出願人は、現時点で入手可能な配列情報と最も良く一致するリーディングフレームであると考えられるものを同定した。
ここに記載した完全長天然配列ボールカインポリペプチドに加えて、ボールカイン変異体も調製できると考えられる。ボールカイン変異体は、ボールカインDNAに適当なヌクレオチド変化を導入することにより、あるいは所望のボールカインポリペプチドを合成することにより調製できる。当業者は、グリコシル化部位の数又は位置の変化あるいは膜固着特性の変化などのアミノ酸変化がボールカインポリペプチドの翻訳後プロセスを変えうることを理解するであろう。
ボールカイン断片は、多くの一般的な技術の任意のものによって調製することができる。所望のペプチド断片は化学合成してもよい。代替的方法は、酵素的消化、例えば特定のアミノ酸残基によって決定される部位のタンパク質を切断することが知られた酵素でタンパク質を処理することにより、あるいは適当な制限酵素でDNAを消化して所望の断片を単離することによるボールカイン断片の生成を含む。さらに他の好適な技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、所望のポリペプチド断片をコードするDNA断片を単離し増幅することを含む。DNA断片の所望の末端を決定するオリゴヌクレオチドは、PCRの5’及び3’プライマーで用いられる。好ましくは、ボールカインポリペプチド断片は、ここに開示した天然ボールカインポリペプチドと少なくとも一つの生物学的及び/又は免疫学的活性を共有する。
特定の実施態様では、対象とする保存的置換を、好ましい置換と題した表6に示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表6に例示的置換と名前を付けた又は以下にアミノ酸分類でさらに記載するように、より実質的な変化が導入され生成物がスクリーニングされる。
(1)疎水性:ノルロイシン, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性の親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:asn, gln, his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, pro; 及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。また、そのように置換された残基は、保存的置換部位、より好ましくは残された(非保存)部位に導入されうる。
また、隣接配列に沿って一又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。好ましいスキャンニングアミノ酸は比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である[Cunningham及びWells, Science, 244: 1081-1085 (1989)]。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的に好ましい。さらに、それは埋もれた位置と露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150:1(1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
ボールカインポリペプチドの共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一つのタイプは、ボールカインポリペプチドの標的とするアミノ酸残基を、ボールカインの選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応可能な有機誘導体化試薬と反応させることである。二官能性試薬での誘導体化は、例えば抗ボールカイン抗体の精製方法に使用される水不溶性支持体マトリクス又は表面にボールカインを架橋させるためにあるいはその逆の場合に有用である。通常用いられる架橋剤は、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸とのエステル、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬を含む。
他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
ボールカインポリペプチドへのグリコシル化部位の付加はアミノ酸配列の変更を伴ってもよい。この変更は、例えば、1又は複数のセリン又はトレオニン残基の天然配列ボールカイン(O-結合グリコシル化部位)への付加、又は置換によってなされてもよい。ボールカインアミノ酸配列は、場合によっては、DNAレベルでの変化、特に、ボールカインポリペプチドをコードするDNAを予め選択された塩基において変異させ、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンを生成させることを通して変更されてもよい。
ボールカインポリペプチド上に炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的又は酵素的結合による。このような方法は、この技術分野において、例えば、1987年9月11日に公開された国際公開87/05330、及びAplin及びWriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
ボールカインの共有結合的修飾の他のタイプは、ボールカインポリぺプチドの、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンの一つへの、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号に記載された方法での結合を含む。
また、本発明のボールカインポリペプチドは、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したボールカインポリペプチドを含むキメラ分子を形成する方法で修飾してもよい。
以下の説明は、主として、ボールカイン核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することによりボールカインを生産する方法に関する。もちろん、当該分野においてよく知られている他の方法を用いてボールカインを調製することができると考えられる。例えば、ボールカイン配列、又はその一部は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生産してもよい[例えば、Stewartら, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., サンフランシスコ, カリフォルニア(1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。マニュアル技術又は自動によるインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(フォスター シティー, カリフォルニア)を用いて、製造者の指示により実施してもよい。ボールカインの種々の部分は、別々に化学的に合成され、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて完全長ボールカインを生産してもよい。
ボールカインをコードするDNAは、ボールカインmRNAを保有していてそれを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリから得ることができる。従って、ヒトボールカインDNAは、実施例に記載されるように、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリから簡便に得ることができる。またボールカイン-コード化遺伝子は、ゲノムライブラリから又は公知の合成方法(例えば、自動化核酸合成)により得ることもできる。
ライブラリは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(ボールカインに対する抗体又は少なくとも約20-80塩基のオリゴヌクレオチド等)によってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリのスクリーニングは、例えばSambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。ボールカインをコードする遺伝子を単離する他の方法はPCR法を使用するものである[Sambrookら,上掲;Dieffenbachら, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
このようなライブラリスクリーニング法において同定された配列は、GenBankなどの公的なデータベース又は私的な配列データベースに寄託され公衆に利用可能とされている周知の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の決定された領域内又は全長に渡っての(アミノ酸又は核酸レベルのいずれかでの)配列同一性は、当該分野で知られた、及びここに記載した方法を用いて決定することができる。
タンパク質コード化配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用し、また必要ならば、cDNAに逆転写されていないmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrookらに記述されているような従来のプライマー伸展法を使用して選択されたcDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることによって得られる。
宿主細胞を、ここに記載したボールカイン生産のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及び上掲のSambrookらに見出すことができる。
ボールカインをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの作成には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
ボールカインは直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN-末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産される。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、ベクターに挿入されるボールカイン-コード化DNAの一部である。シグナル配列は、例えばアルカリフォスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択された原核生物シグナル配列であってよい。酵母の分泌に関しては、シグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(サッカロミセス(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含み、後者は米国特許第5,010,182号に記載されている)、又は酸ホスファターゼリーダー、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日公開の欧州特許第362179号)、又は1990年11月15日に公開された国際公開90/13646に記載されているシグナルであり得る。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳動物シグナル配列は、同一あるいは関連ある種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダーのようなタンパク質の直接分泌に使用してもよい。
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリのD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子のような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
発現及びクローニングベクターは、通常、ボールカイン-コード化核酸配列に作用可能に結合し、mRNA合成を制御するプロモーターを含む。種々の可能な宿主細胞により認識される好適なプロモーターが知られている。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Changら, Nature, 275:615 (1978); Goeddelら, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリフォスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモーターもまたボールカインをコードするDNAと作用可能に結合したシャイン-ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
他の酵母プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸フォスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモーターは欧州特許第73,657号に更に記載されている。
より高等の真核生物による所望のボールカインをコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100-270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、ボールカインコード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
組換え脊椎動物細胞培養でのボールカインの合成に適応化するのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gethingら, Nature, 293:620-625 (1981); Manteiら, Nature, 281:40-46 (1979);欧州特許第117,060号;及び欧州特許第117,058号に記載されている。
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:5201-5205 (1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリダイゼーション法によって、直接的に試料中で測定することができる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA-RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。次いで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列ボールカインポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はボールカインDNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
ボールカインの形態は、培地又は宿主細胞の溶菌液から回収することができる。膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)又は酵素的切断を用いて膜から引き離すことができる。ボールカインの発現に用いられる細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
ボールカインを、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及びボールカインのエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutscher, Methods in Enzymology, 182(1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる生産方法及び特に生産される特定のボールカインの性質に依存する。
ボールカインをコードする核酸配列(又はそれらの相補鎖)は、ハイブリダイゼーションプローブとしての使用を含む分子生物学の分野において、染色体及び遺伝子マッピングにおいて、及びアンチセンスRNA及びDNAの生成において種々の用途を有している。また、ボールカイン核酸も、ここに記載される組換え技術によるボールカインポリペプチドの調製に有用である。
ボールカイン核酸の他の有用な断片は、標的ボールカイン mRNA(センス)又はボールカイン DNA(アンチセンス)配列に結合できる一本鎖核酸配列(RNA又はDNAのいずれか)を含むアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを含む。アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、本発明によると、ボールカイン DNAのコード化領域の断片を含む。このような断片は、一般的には少なくとも約14ヌクレオチド、好ましくは約14から30ヌクレオチドを含む。与えられたタンパク質をコードするcDNA配列に基づく、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを制御する可能性は、例えば、Stein及びCohen(Cancer Res. 48: 2659: [1988])及び van der Krolら,(BioTechniques 6: 958, [1988])に記載されている。
センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの他の例は、国際公開90/10048に記載されているもののような、有機部分、及びオリゴヌクレオチドの標的核酸配列への親和性を向上させる他の部分、例えばポリ-(L-リジン)に共有結合したオリゴヌクレオチドを含む。さらにまた、エリプチシン等の挿入剤、アルキル化剤又は金属錯体をセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合させ、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドの標的ヌクレオチド配列への結合特異性を改変してもよい。
また、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、国際公開91/04753に記載されているように、リガンド結合分子との複合体の形成により標的配列を含む細胞に導入してもよい。適切なリガンド結合分子は、これらに限られないが、細胞表面レセプター、成長因子、他のサイトカイン、又は細胞表面レセプターに結合する他のリガンドを含む。好ましくは、リガンド結合分子の複合体形成は、リガンド結合分子がその対応する分子又はレセプターに結合する、あるいはセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその複合体の細胞への侵入を阻止する能力を実質的に阻害しない。
アンチセンス又はセンスRNA又はDNA分子は一般に少なくとも約5塩基長、約10塩基長、約15塩基長、約20塩基長、約25塩基長、約30塩基長、約35塩基長、約40塩基長、約45塩基長、約50塩基長、約55塩基長、約60塩基長、約65塩基長、約70塩基長、約75塩基長、約80塩基長、約85塩基長、約90塩基長、約95塩基長、約100塩基長、あるいはそれよりも長い。
また、プローブは、PCR技術に用いて、密接に関連したボールカインコード化配列の同定のための配列のプールを作成することができる。
また、ボールカインをコードするヌクレオチド配列は、そのボールカインをコードする遺伝子のマッピングのため、及び遺伝子疾患を持つ個体の遺伝子分析のためのハイブリダイゼーションプローブの作成にも用いることができる。ここに提供されるヌクレオチド配列は、インサイツハイブリダイゼーション、既知の染色体マーカーに対する結合分析、及びライブラリでのハイブリダイゼーションスクリーニング等の周知の技術を用いて、染色体及び染色体の特定領域にマッピングすることができる。
ここに記載したボールカインポリペプチド又はその断片をコードする核酸分子は、染色体の同定に有用である。この点において、実際の配列に基づく染色体マーキング試薬は殆ど利用可能ではないため、新規な染色体マーカーの同定が必要である。本発明の各ボールカイン核酸分子は染色体マーカーとして使用できる。
また、本発明のボールカインポリペプチド及び核酸分子は組織タイピングに使用でき、本発明のボールカインポリペプチドは、好ましくは同じ型の正常組織に比較して疾患性組織において、一方の組織で他方に比較して異なる発現をする。ボールカイン核酸分子には、PCR、ノーザン分析、サザン分析及びウェスタン分析のプローブ生成のための用途が見出されるであろう。
ここで、本発明の製薬組成物は一般に、無菌のアクセスポートを具備する容器、例えば、皮下注射針で貫通可能なストッパーを持つ静脈内バッグ又はバイアル内に配される。
投与経路は周知の方法、例えば、静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内又は病巣内経路での注射又は注入、局所投与、又は徐放系による。
本発明の製薬組成物の用量及び望ましい薬物濃度は、意図する特定の用途に応じて変化する。適切な用量又は投与経路の決定は、通常の内科医の技量の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効量の決定についての信頼できるガイダンスを提供する。有効量の種間スケーリングは、Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobiら, 編, Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-96のMordenti, J. 及びChappell, W. 「The use of interspecies scaling in toxicokinetics」に記載された原理に従って実施できる。
ボールカインポリペプチドの投与を必要とする任意の疾患又は疾病の治療に適した放出特性を持つ製剤でボールカインポリペプチドの持続放出が望まれる場合、ボールカインポリペプチドのマイクロカプセル化が考えられる。持続放出のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン-(rhIFN-)、インターロイキン-2、及びMN rgp120で成功裏に実施されている。Johnsonら, Nat. Med., 2: 795-799 (1996); Yasuda, Biomed. Ther., 27: 1221-1223 (1993); Horaら, Bio/Technology, 8: 755-758 (1990); Cleland, 「Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polylactide Polyglycolide Microsphere Systems」Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell 及び Newman編, (Plenum Press: New York, 1995), p.439-462; 国際公開97/03692,国際公開96/40072,国際公開96/07399;及び米国特許第5,654,010号。
本発明は、ボールカインポリペプチドに類似する(アゴニスト)又はボールカインポリペプチドの効果を阻害する(アンタゴニスト)ものを同定するための化合物のスクリーニング方法も包含する。アンタゴニスト候補薬のスクリーニングアッセイは、ここに同定した遺伝子にコードされるボールカインポリペプチドと結合又は複合体形成する化合物、又は他にコード化ポリペプチドの他の細胞性タンパク質との相互作用を阻害する化合物を同定するために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、それを特に小分子候補薬の同定に適したものにする、化学的ライブラリのハイスループットスクリーニングに適用可能なアッセイを含む。
該アッセイは、タンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ、及び細胞ベースのアッセイで、この分野で知られたものを含む種々の方式で実施される。
アンタゴニストについての全てのアッセイは、それらが候補薬をここで同定された核酸にコードされるボールカインポリペプチドと、これら2つの成分が相互作用するのに十分な条件下及び時間で接触させることを必要とすることにおいて共通する。
ここで同定されたボールカインポリペプチドをコードする遺伝子と細胞内又は細胞外成分との相互作用を阻害する化合物は、次のように試験できる:通常、反応混合物は、遺伝子産物と細胞外又は細胞内成分を、これら2つの生成物の相互作用及び結合が可能な条件下及び時間に渡って含むように調製される。候補化合物が結合を阻害する能力を試験するために、反応は試験化合物の不存在及び存在下で実施される。さらに、プラシーボを第3の反応混合物に添加してポジティブコントロールを提供してもよい。混合物中に存在する試験化合物と細胞内又は細胞外成分との結合(複合体形成)は上記のようにモニターされる。試験化合物を含有する反応混合物ではなく、コントロール反応における複合体の形成は、試験化合物が試験化合物とその結合パートナーとの相互作用を阻害することを示す。
アンタゴニストの他のアッセイでは、レセプターを発現する哺乳動物細胞又は膜調製物を、候補化合物の存在下で標識ボールカインポリペプチドとともにインキュベートする。次いで、この相互作用を促進又は阻止する化合物の能力を測定する。
潜在的なアンタゴニストのより特別な例は、免疫グロブリンとボールカインポリペプチドとの融合体に結合するオリゴヌクレオチド、特に、限られないが、ポリ-及びモノクローナル抗体及び抗体断片、一本鎖抗体、抗-イディオタイプ抗体、及びこれらの抗体又は断片のキメラ又はヒト化形態、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体を含んでいる。あるいは、潜在的アンタゴニストは、密接に関連したタンパク質、例えば、レセプターを認識するが効果を与えず、従ってボールカインポリペプチドの作用を競合的に阻害するボールカインポリペプチドの変異形態であってもよい。
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒できる酵素的RNA分子である。リボザイムは、相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、ついで内ヌクレオチド結合分解性切断により作用する。潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、既知の技術で同定できる。更なる詳細は、例えば、上掲のRossi, Current Biology 4:469-471 (1994)及びPCT公報番号、国際公開97/33551(1997年9月18日公開)を参照。
これらの小分子は、上記で検討したスクリーニングアッセイの一又は複数の任意のものにより及び/又は当業者に良く知られた他の任意のスクリーニング技術により同定できる。
また、ここで開示されている分子の診断的及び治療的利用は、下記に開示及び記載のポジティブ機能アッセイヒットに基づいている。
ケモカインは、CXCケモカインによる好中球の活性化が示されているので(Baggioliniら Adv Immunology 1994; 55:97-179)、免疫細胞を活性化することができ、また非CXCケモカインは主としてTリンパ球に対して化学走性である。ボールカインは、そのポリペプチドを局所投与すると感染部位に既に存在している免疫細胞を刺激し、より多くの免疫細胞を誘導してその部位に移動させ、より速い速度で感染を取り除くので感染の治療に有用であろう。
本発明はさらに抗ボールカイン抗体を提供する。例示的な抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロ結合体抗体が含まれる。
1.ポリクローナル抗体
抗ボールカイン抗体はポリクローナル抗体を含む。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで産生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、ボールカインポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に結合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
あるいは、抗ボールカイン抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的にはボールカインポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBLs」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培養培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培養培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
ついでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、ボールカインに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合アッセイによって測定される。このような技術及びアッセイは、当該分野において既知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の断片、特にFab断片を生成するための抗体の消化は、当該分野において知られている定法的技術を使用して達成できる。
本発明の抗ボールカイン抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりWinter及び共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
また、抗体は上述した既知の選択及び/又は突然変異誘発法を使用し、親和成熟させてもよい。好ましい親和成熟抗体は、成熟抗体が調製された(一般的にマウス、ヒト化又はヒトの)出発抗体のものよりも、5倍、より好ましくは10倍、さらに好ましくは20又は30倍の親和性を有する。
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。この場合、結合特異性の一方はボールカインに対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539(1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開のWO 93/08829、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3659 (1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインと行われる。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab')2二重特異性抗体)として調製できる。抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')2断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
大腸菌からFab'断片を直接回収でき、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby等, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')2分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞及び正常なヒトT細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。
例示的な二重特異性抗体は、ここに与えられたボールカインポリペプチドの2つの異なるエピトープに結合しうる。あるいは、抗ボールカインポリペプチドアームは、特定のボールカインポリペプチド発現細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、T細胞レセプター分子(例えばCD2、CD3、CD28、又はB7)等の白血球上のトリガー分子又はFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプターに結合するアームと結合しうる。また、二重特異性抗体は特定のボールカインポリペプチドを発現する細胞に細胞障害薬を局在化させるためにも使用されうる。これらの抗体はボールカイン-結合アーム及び細胞障害薬又は放射性キレート化剤、例えばEOTUBE、DPTA、DOTA、又はTETAと結合するアームを有する。対象の他の二重特異性抗体はボールカインポリペプチドに結合し、そしてさらに組織因子(TF)に結合する。
ヘテロ結合抗体も本発明の範囲内に入る。ヘテロ結合抗体は2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4,676,980号]及びHIV感染の治療のために[WO 91/00360; WO 92/200373; EP 03089]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,676,980号に開示されているものが含まれる。
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えば癌の治療における抗体の有効性を向上させるのが望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成させるようにしてもよい。そのようにして生成されたホモダイマー抗体は、向上した内部移行能力及び/又は増加した補体媒介細胞殺傷及び抗体-依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を有しうる。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes, J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。また、向上した抗腫瘍活性を持つホモダイマー抗体は、Wolff等, Cancer research 53: 2560-2565 (1993)に記載されたような異種二官能性架橋を用いても調製しうる。あるいは、抗体は、2つのFc領域を有するように加工して、それにより補体溶解及びADCC能力を向上させることもできる。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照。
本発明はまた、化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)などの細胞障害薬、あるいは放射性同位体(即ち、放射性結合)に結合された抗体を含む免疫複合体にも関する。
このような免疫結合体の生成に有用な化学療法剤は上記した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリアトキシンの非結合活性断片、(緑膿菌からの)エクソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ツルレイシインヒビター、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)を含む。様々な放射性ヌクレオチドが放射性結合抗体の生成に利用可能である。例として、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reを含む。
抗体及び細胞障害薬の結合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されたように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への結合のためのキレート剤の例である。WO 94/11026参照。
他の実施態様では、腫瘍の予備標的化で使用するために、抗体は「レセプター」(ストレプトアビジン等)に結合されてもよく、抗体-レセプター結合体は患者に投与され、次いで清澄化剤を用いて未結合結合体を循環から除去し、次に細胞障害薬(放射性ヌクレオチド等)に結合された「リガンド」(アビジン等)を投与する。
また、ここに開示するタンパク質、抗体は、免疫リポソームとして調製してもよい。抗体を含むリポソームは、Epstein等, Proc. Natl. acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwang等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980); 及び米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号に記載されたような、この分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成される。リポソームは、定められた孔サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab'断片は、Martin等, J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームに結合され得る。化学療法剤(ドキソルビシン等)は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst. 81(19) 1484 (1989)参照。
ここで同定されたボールカインポリペプチドに特異的に結合する抗体、並びに上記に開示したスクリーニングアッセイによって同定された他の分子は、種々の疾患の治療のために、製薬組成物の形態で投与することができる。
ボールカインポリペプチドが細胞内にあり、全抗体が阻害剤として用いられる場合、取り込める抗体が好ましい。しかし、リポフェクション又はリポソームも抗体、又は抗体断片を細胞に導入するのために使用できる。抗体断片が用いられる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持したペプチド分子が設計できる。このようなペプチドは、化学的に合成でき、又は組換えDNA技術によって生成できる。例えば、Marascoら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 7889-7893 (1993)参照。ここでの製剤は、治療すべき特定の徴候に必要な場合に1つ以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、細胞毒性薬、サイトカイン又は成長阻害剤を含んでもよい。これらの分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなけらばならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。除放性マトリクスの例は、ポリエステルヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタメート、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商品名)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物学的活性の低下及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S−S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の付加、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
本発明の抗ボールカイン抗体は様々な有用性を有している。例えば、抗ボールカイン抗体は、ボールカインの診断アッセイ、例えばその特定細胞、組織、又は血清での発現の検出に用いられる。競合的結合アッセイ、直接又は間接サンドウィッチアッセイ及び不均一又は均一相で行われる免疫沈降アッセイ[Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147-158]等のこの分野で知られた種々の診断アッセイ技術が使用される。診断アッセイで用いられる抗体は、検出可能な部位で標識される。検出可能な部位は、直接又は間接に、検出可能なシグナルを発生しなければならない。例えば、検出可能な部位は、3H、14C、32P、35S又は125I等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光又は化学発光化合物、あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってよい。抗体に検出可能な部位を抱合させるためにこの分野で知られた任意の方法が用いられ、それにはHunterら, Nature 144:945 (1962);Davidら, Biochemistry, 13: 1014 (1974);Painら, J. Immunol. Meth., 40:219 (1981);及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)に記載された方法が含まれる。
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び参考文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
Swiss-Prot公的データベースからの約950の既知の分泌タンパク質からの細胞外ドメイン(ECD)配列(もしあれば、分泌シグナル配列を含む)を、配列データベースの検索に使用した。データベースは、公的データベース(例えば、GenBank)と私的ESTDNAデータベース(LIFESEQTM, Incyte Pharmaceuticals, Palo Alto, CA)を含んでいた。検索は、コンピュータプログラムBLAST又はBLAST-2(Altschul等, Methods in Enzymology 266: 460-480 (1996))を用いて、ECDタンパク質配列と配列の6フレーム翻訳との比較として実施した。既知のタンパク質をコードせず、BLASTスコア70(90の場合もある)又はそれ以上となる比較物は、プログラム「phrap」(Phil Green, University of Washington, Seattle, WA; http://bozeman.mbt.washington.edu/phrap.docs/phrap.html)で集団化してコンセンサスDNA配列を構築した。
phrapを用いて他のEST配列に対してコンセンサスDNA配列を構築した。そのコンセンサス配列に基づいて、1)PCRにより対象の配列を含むcDNAライブラリを同定するため、及び2)ボールカインの全長コード化配列のクローンを単離するプローブとして用いるためにオリゴヌクレオチドを合成した。正方向及び逆方向PCRプライマーは一般的に20から30ヌクレオチドの範囲であり、しばしば約100−1000bp長のPCR産物を与えるために設計される。プローブ配列は、典型的に40−55bp長である。幾つかの場合には、コンセンサス配列が約1−1.5kbpより大きいときに付加的なオリゴヌクレオチドが合成される。全長クローンについて幾つかのライブラリをスクリーニングするために、ライブラリからのDNAを、上掲のAusubel等, Current Protocols in Molecular Biologyにあるように、PCRプライマー対でのPCR増幅によりスクリーニングした。ついで、ポジティブライブラリを、プローブオリゴヌクレオチド及びプライマー対の一方を用いて対象とする遺伝子をコードするクローンを単離するのに使用した。
正方向PCRプライマー 5'-CAGCGCCCTCCCCATGTCCCTG-3' (配列番号:3)
逆方向PCRプライマー 5'-TCCCAACTGGTTTGGAGTTTTCCC-3' (配列番号:4)
また、合成オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを次のヌクレオチド配列を有するコンセンサス配列から構築した:
ハイブリダイゼーションプローブ
5'-CTCCGGTCAGCATGAGGCTCCTGGCGGCCGCTGCTCCTGCTGCTG-3' (配列番号:5)。
全長クローンソースの幾つかのライブラリをスクリーニングするために、上で特定したPCRプライマイー対を用いたPCR増幅によってライブラリのDNAをスクリーニングした。ついでポジティブなライブラリを用いて、プローブオリゴヌクレオチドとPCRプライマーの一方を用いてボールカイン遺伝子をコードするクローンを単離した。
cDNAライブラリの構築のためのRNAはヒト胎児腎臓組織から単離した。cDNAクローンの単離に用いたcDNAライブラリは、Invitrogen, San Diego, CAからのもの等の市販試薬を用いて標準的な方法によって作成した。cDNAは、NotI部位を含むオリゴdTでプライムし、平滑末端でSalIヘミキナーゼアダプターに結合させ、NotIで切断し、ゲル電気泳動でおよそのサイズ分類し、そして適切なクローニングベクター(pRKB又はpRKD等;pRK5BはSfiI部位を含まないpRK5Dの前駆体である;Holmes等, Science, 253: 1278-1280 (1991)参照)に、独特のXhoI及びNotI部位において、所定の方向でクローニングした。
上記のように単離したクローンのDNA配列決定により、ボールカインの全長DNA配列(配列番号:1)及びボールカインの誘導タンパク質配列が得られた。
完全長ボールカインポリペプチドのアミノ酸配列の分析により、その部分がヒトマクロファージタンパク-2、サイトカイン誘発好中球化学誘引物質2、及び好中球化学走化性因子2-ベータと配列同一性を有していることが示唆され、これはボールカインは新規なケモカインであることが示している。
更に以下において検討するように、cDNAをバキュロウイルスベクター中にサブクローニングし、C末端タグIgG融合タンパク質として昆虫細胞中に発現させた。得られたタンパク質のN末端配列決定により、シグナル配列切断部位が同定され、77アミノ酸の成熟ポリペプチドが得られた。他のヒトCXCケモカインと31−40%の同一性を示す成熟配列は4のカノニカルなシステイン残基を含むがELRモチーフを欠いている。
以下の方法はボールカインをコードしているヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションプローブとしての使用を記載するものである。
全長ボールカインのコード化配列(図1に示す、配列番号:1)を含んでなるDNAを、ヒト組織cDNAライブラリ又はヒト組織ゲノムライブラリでの相同的DNA(例えば、ボールカインの天然に生じる変異体をコードしているもの)をスクリーニングするためのプローブとして用いる。
いずれかのライブラリーDNAを含むフィルターのハイブリダイゼーション及び洗浄を以下の高緊縮条件下で実施する。放射標識ボールカイン誘導プローブのフィルターへのハイブリダイゼーションは、50%ホルムアルデヒド、5xSSC、0.1%SDS、0.1%ピロリン酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム、pH6.8、2xデンハード溶液、及び10%デキストラン硫酸の溶液中で、42℃において20時間実施される。フィルターの洗浄は、0.1xSSC及び0.1%SDSの水溶液中、42℃で実施される。
ついで、全長天然配列ボールカインをコードするDNAと所望の配列同一性を有するDNAは、この分野で知られた標準的な方法を用いて同定できる。
この実施例は、大腸菌中における組み換え発現によるボールカインポリペプチドの非グリコシル化型の調製を例証する。
ボールカインコード化DNA配列(配列番号:1)は選択されたPCRプライマーを利用して最初に増幅される。このプライマーは、選択された発現ベクター上の制限酵素部位に対応する制限酵素部位を含まなければならない。様々な発現ベクターを使用することができる。適したベクターの例としては、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性に対する遺伝子を含むpBR322(大腸菌由来;Bolivarら, Gene, 2:95 (1997)を参照のこと)がある。ベクターは制限酵素によって消化され、脱リン酸化される。ついで、PCR増幅配列がベクターにライゲーションされる。ベクターは好ましくは抗生物質耐性遺伝子、trpプロモーター、ポリhisリーダー(最初の6つのSTIIコドン、ポリhisリーダー、及びエンテロキナーゼ切断部位を含む)、ボールカインコード領域、ラムダ転写集結因子及びargU遺伝子をコードする配列を含む。
選択されたクローンを、抗生物質が補填されたLBブロスのような液体培地で一晩かけて増殖させることができる。この一晩の培養を、引き続きより大きなスケールでの培養を播種するために使用してもよい。細胞を所望の光学密度になるまで増殖させると、その間に発現プロモーターが作用し始める。
更に数時間、細胞を培養した後に、遠心分離によって細胞を収集することが可能である。遠心分離によって得られた細胞ペレットは、当該分野で公知の様々な薬剤を使用して可溶化でき、ついで、この溶解したボールカインタンパク質を、タンパク質の堅固な結合を可能にする条件下において金属キレート化カラムを用いて精製すること可能である。
この実施例は、哺乳動物細胞における組換え発現によるグリコシル化した形態のボールカインの調製を例証する。
発現ベクターとしてベクターpRK5(1989年3月15日公開のEP307,247参照)を用いる。場合によっては、ボールカイン DNAを選択した制限酵素を持つpRK5に結合させ、上記のSambrook等に記載されたようなライゲーション方法を用いてボールカインDNAを挿入させる。得られたベクターは、pRK5-ボールカインと呼ばれる。
一実施態様では、選択された宿主細胞は293細胞でもよい。ヒト293細胞(ATCC CCL 1573)は、ウシ胎児血清及び場合によっては滋養成分及び/又は抗生物質を添加したDMEMなどの培地中で組織培養プレートにおいて増殖させて集密化した。約10μgのpRK5-ボールカインDNAを約1μgのVA RNA遺伝子コード化DNA[Thimmappayaら, Cell, 31:543 (1982))]と混合し、500μlの1mM トリス-HCl、0.1mM EDTA、0.227M CaCl2に溶解させる。この混合物に、500μlの50mM HEPES(pH7.35)、280mM NaCl、1.5mM NaPO4を一滴づつ添加し、25℃で10分間析出物を形成させた。析出物を懸濁し、293細胞に加えて37℃で約4時間定着させる。培地を吸引し、2mlのPBS中20%グリセロールを30秒間添加した。293細胞は、ついで無血清培地で洗浄し、新鮮な培地を添加し、細胞を約5日間インキュベートする。
これに代わる方法では、ボールカインは、Somparyracら, Proc. Natl. Acad. Sci., 12:7575 (1981)に記載されたデキストラン硫酸法を用いて293細胞に一過的に導入される。293細胞は、スピナーフラスコ内で最大密度まで増殖させ、700μgのpRK5-ボールカイン DNAを添加する。細胞は、まずスピナーフラスコから遠心分離によって濃縮し、PBSで洗浄した。DNA-デキストラン沈殿物を細胞ペレット上で4時間インキュベートした。細胞を20%グリセロールで90秒間処理し、組織培地で洗浄し、組織培地、5μg/mlウシインシュリン及び0.1μg/mlウシトランスフェリンを含むスピナーフラスコに再度導入した。約4日後に、条件培地を遠心分離して濾過し、細胞及び細胞片を除去した。次いで発現されたボールカインを含む試料を濃縮し、透析及び/又はカラムクロマトグラフィー等の選択した方法によって精製した。
また、エピトープタグボールカインは、宿主CHO細胞において発現させてもよい。ボールカインはpRK5ベクターからサブクローニングしてもよい。サブクローン挿入物は、PCRを施してバキュロウイルス発現ベクター中のポリ-hisタグ等の選択されたエピトープタグを持つ枠に融合できる。ポリ-hisタグボールカイン挿入物は、次いで、安定なクローンの選択のためのDHFR等の選択マーカーを含むSV40誘導ベクターにサブクローニングできる。最後に、CHO細胞をSV40誘導ベクターで(上記のように)形質移入した。発現を確認するために、上記のように標識化を行ってもよい。発現されたポリ-hisタグボールカインを含む培地は、次いで濃縮し、Ni2+-キレートアフィニティクロマトグラフィー等の選択された方法により精製できる。
以下の方法は、酵母菌中でのボールカインの組換え発現を記載する。最初に、ADH2/GAPDHプロモーターからのボールカインの細胞内生産又は分泌のための酵母菌発現ベクターを作成する。ボールカインをコードするDNA及びプロモーターを選択したプラスミドの適当な制限酵素部位に挿入してボールカインの細胞内発現を指示する。分泌のために、ボールカインをコードするDNAを選択したプラスミドに、ADH2/GAPDHプロモーターをコードするDNA、天然ボールカインシグナルペプチド又は他の哺乳動物シグナルペプチド、又は、例えば酵母菌α因子又はインベルターゼ分泌シグナル/リーダー配列、及び(必要ならば)ボールカインの発現のためのリンカー配列とともにクローニングすることができる。
酵母菌株AB110酵母菌株は、ついで上記の発現プラスミドで形質転換し、選択された発酵培地中で培養できる。形質転換した酵母菌上清は、10%トリクロロ酢酸での沈降及びSDS-PAGEによる分離で分析し、次いでクーマシーブルー染色でゲルの染色をすることができる。
続いて組換えボールカインは、発酵培地から遠心分離により酵母菌細胞を除去し、次いで選択されたカートリッジフィルターを用いて培地を濃縮することによって単離及び精製できる。ボールカインを含む濃縮物は、選択されたカラムクロマトグラフィー樹脂を用いてさらに精製してもよい。
この実施例は、ボールカインに特異的に結合できるモノクローナル抗体の調製を例示する。
モノクローナル抗体の生産のための技術は、当該分野で知られており、例えば上記のGodingに記載されている。用いることができる免疫原は、精製ボールカイン、ボールカインを含む融合タンパク質、細胞表面に組換えボールカインを発現する細胞を含む。免疫原の選択は、当業者が過度の実験をすることなくなすことができる。
Balb/c等のマウスを、完全フロイントアジュバントに乳化して皮下又は腹腔内に1−100マイクログラムで注入したボールカイン免疫原で免疫化する。あるいは、免疫原をMPL-TDMアジュバント(Ribi Immunochemical Research, ハミルトン, モンタナ)に乳化し、動物の後フットパッドに注入してもよい。免疫化したマウスは、ついで10から12日後に、選択したアジュバント中に乳化した付加的免疫源で追加免疫する。その後、数週間、マウスをさらなる免疫化注射で追加免疫する。抗ボールカイン抗体の検出のためのエライザアッセイで試験するために、レトロオービタル出血からの血清試料をマウスから周期的に採取してもよい。
ハイブリドーマ細胞は、ボールカインに対する反応性についてのエライザでスクリーニングされる。ボールカインに対する所望のモノクローナル抗体を分泌する「陽性(ポジティブ)」ハイブリドーマ細胞の決定は、技術常識の範囲内である。
陽性ハイブリドーマ細胞を同系のBalb/cマウスに腹腔内注入し、抗ボールカインモノクローナル抗体を含む腹水を生成させる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、組織培養フラスコ又はローラーボトルで増殖させることもできる。腹水中に生成されたモノクローナル抗体の精製は、硫酸アンモニウム沈降、それに続くゲル排除クロマトグラフィ−を用いて行うことができる。あるいは、抗体のプロテインA又はプロテインGへの親和性に基づくアフィニティクロマトグラフィーを用いることもできる。
以下の方法は、バキュロウイルス感染昆虫細胞中におけるボールカインポリペプチドの組換え発現を記載する。
一般に、ボールカインをコードする配列を、バキュロウイルス発現ベクターに含まれるエピトープタグの上流に融合させる。このようなエピトープタグは、ポリ-hisタグ及び免疫グロブリンタグ(IgGのFc領域など)を含む。pVL1393(Novagen)などの市販されているプラスミドから誘導されるプラスミドを含む種々のプラスミドを用いることができる。簡単には、ボールカインコード化DNA又はボールカインコード化DNAの所望部分(例えば膜貫通タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列)が、5'及び3'領域に相補的なプライマーでのPCRにより増幅される。5'プライマーは、隣接する(選択された)制限酵素部位を包含していてもよい。生産物は、ついで、選択された制限酵素で消化され、発現ベクターにサブクローニングされる。
ついで断片をその各部位を介してpb.PH.IgG中にサブクローニングした。pb.PH.IgGプラスミドはpVL1393プラスミド(Pharmingen)の誘導体であり、クローニング部位の下流にヒトIgG遺伝子のFc領域をコードしている。
一般に組換えバキュロウイルスは、上記のプラスミド及びBaculoGold(商品名)ウイルスDNA(Pharmingen)を、Spodoptera frugiperda(「Sf9」)細胞(ATCC CRL 1711)中にリポフェクチン(GIBCO-BRLから市販)を用いて同時形質移入することにより作成される。28℃で4−5日インキュベートした後、放出されたウイルスを回収し、更なる増幅に用いた。ウイルス感染及びタンパク質発現は、O'Reilleyら, Baculovirus expression vectors: A Laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994)に記載されているように実施した。
最初のウイルス増幅上清を用いて、0.1の近似MOIでESF-921培地(Expression Systems LLC)中で成長させたSf9細胞の500mLの撹拌培養物を感染させた。細胞を28℃で3日間インキュベートした。上清を集めて濾過した。バッチ結合とSDS-PAGE分析を繰り返して撹拌培養物中の発現を確認した。続いて500mLの上清を精製にまわした。
あるいは、IgGタグ(又はFcタグ)ボールカインポリペプチドの精製は、例えば、プロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィーを含む既知のクロマトグラフィー技術を用いて実施できる。
ボールカインによってコードされた精製タンパク質をトリス-HClゲルで分離し、PVDFメンブレンにエレクトロブロッティングした。対象のバンドを切り取った後、タンパク質産物を確認するためにエドマン分解法にかけた。
ヒト組織におけるボールカインmRNAの発現をノーザンブロット分析によって検査した。一般に、ヒトRNAブロットを、全長ボールカインcDNAに基づいて32P標識DNAプローブにハイブリダイズさせた;プローブはボールカインcDNA挿入断片を消化し精製することにより産生した。ヒト胎児RNAブロットMTN(クローンテック)及び成人RNAブロットMTN-II(クローンテック)をDNAプローブと共にインキュベートした。ブロットはハイブリダイゼーションバッファー(5X SSPE;2X デンハード溶液;100mg/mLの変性剪断サケ精子DNA;50%のホルムアミド;2%のSDS)中でプローブと共に42℃で60時間インキュベートした。ブロットを2X SSC;0.05%のSDS中、室温で1時間、数回洗浄し、ついで0.1X SSC;0.1%のSDS中、50℃で30分間洗浄した。ブロットを終夜露出した後、リン光体イメージャー分析(Fuji)により現像した。
この場合、様々な組織由来のヒトポリ(A)+RNAを含むノーザンブロット(2μl/レーン)をクローンテックから購入した。ボールカインの全コード化領域を含む469bpの断片を、それぞれ正方向及び逆方向の次の二つのプライマー:
正方向プライマー:5'AGCGCACGGCCACAGACAG3'(配列番号:6)
及び
逆方向プライマー:5'GACCCTGCGCTTCTCGTTCCA3'(配列番号:7)
を用いてPCRにより増幅させた。
ボールカイン特異的[32P]dCTP標識cDNAプローブを、この469bpの断片のランダムプライミング(High Prime, Boehringer Mannheim)によって合成し、導入されなかったヌクレオチドを除去した(NucTrap Probe Purification Column, Stratagene)。メンブレンを過去に記載されているようにして(McMaster, M.T.ら, J.Immunol. 154(8):3778, 1995)ノーザンブロットハイブリダイゼーションによって分析した。
図3に示されるように、ボールカインmRNA転写物が検出された。2kbの転写物が様々な組織中に低いレベルで検出された。脾臓、リンパ節、大腸において中程度の発現で、腎臓と小腸で最も高いレベルの発現であった。肺及び刺激されていない末梢血白血球(PBL)では発現が検出することができない。
ホルマリン固定、パラフィン包埋した正常な及び病気のヒト胎児及び成体組織を切片化し、脱パラフィンし、プロテイナーゼK(20mg/ml)で37℃にて15分間脱タンパクし、さらに、記載されているようにして(Lu L.H.及びGillett NA(Cell Vision 1: 169-176, 1994)、インサイツハイブリダイゼーションのために加工した。[33-P]UTP標識アンチセンスリボプローブを463bpのPCR産物(ノーザン分析に対して記載したプライマー配列)から生成した。スライドをコダックNTB2核トラックエマルションに浸漬し4週間露出させた。
検査した胎児組織は次のものを含む:胎盤、臍帯、肝臓、腎臓、副腎、甲状腺、肺、心臓、大血管、食道、胃、小腸、脾臓、胸腺、膵臓、脳、眼、脊髄、体壁、骨盤及び下肢。検査した成体組織は、肝臓、腎臓、副腎、心筋、大動脈、脾臓、リンパ節、膵臓、肺、皮膚、大脳皮質(rm)、海馬(rm)、眼、胃、胃癌、大腸、大腸癌、甲状腺(チンパンジー)、副甲状腺(チンパンジー)、卵巣(チンパンジー)及び軟骨肉腫を含む。アセトアミノフェンは肝臓障害及び肝硬変を誘発した。
この実施例は、本発明の所定のペプチドが、Tリンパ球の増殖の刺激剤として活性であることを示す。リンパ球の増殖を刺激する化合物は、免疫応答の増強が有益な場合に治療的に有用である。治療剤は、ボールカインのアンタゴニストの形をとり得、例えば、ポリペプチドに対するマウス-ヒトキメラ、ヒト化又はヒト抗体であり、Tリンパ球の増殖を阻害することが期待される。
このアッセイの基本的プロトコールは、Current Protocols in Immunology, unit3.12;J E Coligan, A M Kruisbeek, D H Marglies, E M Shevach, W Strober編, 国立衛生研究所, John Wiley & Sons, Incに記載されている。
さらに具体的には、このアッセイの一変形例では、末梢血単核細胞(PBMC)を個々の哺乳類、例えばヒトのボランティアからロイコフェレーシスにより単離する(一人のドナーにはスティミュレーターPBMCを供給し、他のドナーにはレスポンダーPBMCを供給する)。所望される場合、単離後に、細胞を仔ウシ血清及びDMSO中で凍結する。凍結細胞をアッセイ用培地(37℃、5%CO2)で一晩解凍し、ついで洗浄し、3x106細胞/mlのアッセイ用培地(RPMI;10%仔ウシ血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%グルタミン、1%HEPES、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸塩)に再懸濁する。スティミュレーターPBMCは、細胞に照射する(約300ラド)ことによって調製される。このアッセイは100:1の1%又は0.1%に希釈された被験試料、50:1の照射を受けたスティミュレーター細胞、及び50:1のレスポンダーPBMC細胞の混合物を三組ウェルに蒔くことによって調製される。100マイクロリットルの細胞培養培地又は100マイクロリットルのCD4-IgGをコントロールとして使用する。ついで、ウェルを37℃、5%CO2で4日間インキュベートする。5日目に、各ウェルへトリチウム化チミジン(1.0mCi/ウェル;Amersham)を適用する。6時間後に細胞を3回洗浄し、ついで標識の取込を評価する。
このアッセイは、ボールカインが免疫系を刺激し、動物の注射部位に単核球、好酸球及びPMN浸潤を誘導することにより炎症を誘発し得ることを示す。この皮膚血管透過性アッセイは以下のように行われる。350g又はそれ以上の無毛モルモットにケタミン(70−80mg/kg)と5mg/Kgのキシラジンを筋肉内投与(IM)して麻酔をかける。精製したボールカインポリペプチド又は馴化培地被験試料を、注射部位当たり100mLで試験動物の背に皮内注射する。動物当たりおよそ10−30、好ましくは16−24の注射部位を有することが可能である。ついで1mLのエバンスブルー染料(1%の緩衝化された生理的食塩水)を心臓内注射する。そして、注射部位の斑点を注射後1時間、6時間及び24時間の時点で測定する(mm直径)。動物は、注射から適当な時間経過後に犠牲にした。各々の皮膚注射部位を切り取ってパラホルムアルデヒドに固定する。そして、その皮膚を、組織病理学的評価のために調製する。各々の部位は、皮膚への炎症性細胞湿潤について評価される。可視可能な炎症細胞炎症を持つ部位は、陽性と記録される。炎症細胞は、好中球、好酸球、単核球又はリンパ球である可能性がある。
少なくとも、注射部位の最小血管周囲湿潤物は陽性と記録され、注射部位の湿潤物でないものは陰性と記録される。このアッセイにおいてボールカインは陽性であった。
ES細胞を2日間ES+LIF培地[分化を停止させるため]中、24ウェルプレートにてクローン密度で成長させ、小コロニーを形成させる。ついで培地を様々な量のボールカインタンパク質を含むLIF、KSR培地に変え、ESクローンを培養物中で7日間、成長させ分化させる。7日目に細胞を固定しニューロンマーカーMAP2に対する抗体を用いる免疫細胞化学検査のために加工する。ニューロンの分化の程度は蛍光顕微鏡を使用して評価する。
ES培地−高グルコースDMEM−10%仔ウシ血清−SC培地補填−プラスLIF−KSR培地−GMEM−10%KSR[ノックアウト血清置換サプリメント]−グルタミン−Pen/Strep−非必須アミノ酸−及び2−ME。固定−4%パラホルムアルデヒド−3%正常ヤギ血清を伴うPBST[0.1%トリトン]中で1:1000で希釈されたMAP2抗体[Pharmingen]。
結果はニューロンを含むESコロニーの%と個々のコロニー内のニューロンの%として計算する。
ニューロンコロニーとバックグラウンドより10xの細胞カウントのウェルを、陽性で、ニューロン分化に影響を及ぼすタンパク質を含むと考える。124.00nMの最終濃度のボールカインはニューロン分化が陽性であるとの試験結果となった。
天然又は組換えボールカインポリペプチドは、タンパク質精製の分野の種々の標準的な方法によって精製できる。例えば、プロボールカインポリペプチド、成熟ボールカインポリペプチド、又はプレボールカインポリペプチドは、対象とするボールカインポリペプチドに特異的な抗体を用いた免疫親和性クロマトグラフィーによって精製される。一般に、免疫親和性カラムは抗ボールカインポリペプチド抗体を活性化クロマトグラフィー樹脂に共有結合させて構築される。
ポリクローナル免疫グロブリンは、硫酸アンモニウムでの沈殿又は固定化プロテインA(Pharmacia LKB Biotechnology, Piscataway, N.J.)での精製のいずれかにより免疫血清から調製される。同様に、モノクローナル抗体は、硫酸アンモニウム沈殿又は固定化プロテインAでのクロマトグラフィーによりマウス腹水液から調製される。部分的に精製された免疫グロブリンは、CnBr活性化SEPHAROSETM(Pharmacia LKB Biotechnology)等のクロマトグラフィー樹脂に共有結合される。抗体が樹脂に結合され、樹脂がブロックされ、誘導体樹脂は製造者の指示に従って洗浄される。
可溶性ボールカインポリペプチド含有調製物は、免疫親和性カラムを通され、カラムはボールカインポリペプチドの好ましい吸着を可能ならしめる条件下(例えば、洗浄剤存在下の高イオン強度バッファー)で洗浄される。ついで、カラムは、抗体/ボールカインポリペプチド結合を分解する条件下(例えば、約2−3といった低pH、又は高濃度の尿素又はチオシアン酸イオン等のカオトロープ)で溶離され、ボールカインポリペプチドが回収される。
本発明は、種々の薬物スクリーニング技術の任意のものにおいてボールカインポリペプチド又はその結合断片を使用することによる化合物のスクリーニングに対して特に有用である。そのような試験に用いられるボールカインポリペプチド又は断片は、溶液中に遊離した状態でも、固体支持体に固定されても、細胞表面に担持されていても、あるいは細胞内に位置していてもよい。薬剤スクリーニングの一つの方法では、ボールカインポリペプチド又は断片を発現する組換え核酸で安定に形質移入される真核生物又は原核生物宿主細胞を利用する。薬剤は、そのような形質移入細胞に対して、競合的結合アッセイによってスクリーニングされる。生存可能又は固定化形態のいずれかによって、このような細胞は標準的な結合アッセイで使用できる。例えば、ボールカインポリペプチド又は断片と試験される試薬の間での複合体の形成を測定してよい。あるいは、試験する試薬によって生ずるボールカインポリペプチドとその標的細胞又は標的レセプターとの間の複合体形成における減少を試験することもできる。
従って、本発明は、ボールカインポリペプチド関連疾患又は障害に影響を与えうる薬剤又は任意の他の試薬のスクリーニング方法を提供する。これらの方法は、当該分野で良く知られている手法により、その試薬をボールカインポリペプチド又は断片に接触させ、(i)試薬とボールカインポリペプチド又は断片との間の複合体の存在について、又は(ii)ボールカインポリペプチド又は断片と細胞との間の複合体の存在について検定することを含む。これらの競合結合アッセイでは、ボールカインポリペプチド又は断片が典型的には標識される。適切なインキュベーションの後、遊離のボールカインポリペプチド又は断片を結合形態のものから分離し、遊離又は未複合の標識の量が、特定の試薬がボールカインポリペプチドに結合する又はボールカインポリペプチド/細胞複合体を阻害する能力の尺度となる。
また、本発明は、ボールカインポリペプチドに結合可能な中和抗体がボールカインポリペプチド又はその断片について試験化合物と特異的に競合する競合薬剤スクリーニングアッセイの使用も考慮する。このようにして、抗体は、ボールカインポリペプチドで、一又は複数の抗原決定基を持つ任意のペプチドの存在を検出するのに使用できる。
合理的薬物設計の目的は、対象とする生物学的活性ポリペプチド(すなわち、ボールカインポリペプチド)又はそれらが相互作用する小分子、例えばアゴニスト、アンタゴニスト、又はインヒビターの構造的類似物を製造することである。これらの例の任意のものが、ボールカインポリペプチドのより活性で安定な形態又はインビボでボールカインポリペプチドに機能を促進又は阻害する薬物の創り出すのに使用できる(参考、Hodgson, Bio/Technology, 9: 19-21 (1991))。
一つのアプローチ法では、ボールカインポリペプチド、又はボールカインポリペプチド-インヒビター複合体の三次元構造が、x-線結晶学により、コンピュータモデル化により、最も典型的には2つの方法の組み合わせにより決定される。分子の構造を解明し活性部位を決定するためには、ボールカインポリペプチドの形状及び電荷の両方が確認されなければならない。数は少ないが、ボールカインポリペプチドの構造に関する有用な情報が相同タンパク質の構造に基づいたモデル化によって得られることもある。両方の場合において、関連する構造情報は、類似ボールカインポリペプチド様分子の設計又は効果的なインヒビターの同定に使用される。合理的な薬剤設計の有用な例は、Braxton及びWells, Biochemistry, 31: 7796-7801 (1992)に示されているような向上した活性又は安定性を持つ分子、又はAthaudaら,J. Biochem., 113: 742-746 (1993)に示されているような天然ペプチドのインヒビター、アゴニスト、又はアンタゴニストとして作用する分子を含みうる。
本発明によって、X線結晶学などの分析実験を実施するために十分な量のボールカインポリペプチドが入手可能である。さらに、ここに提供したボールカインポリペプチドアミノ酸配列の知識は、X線結晶学に代わる又はそれに加わるコンピュータモデル化技術で用いられるガイダンスを提供する。
本出願の譲受人は、寄託した材料の培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死滅もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと速やかに取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。寄託した態様は、本発明のある側面の一つの説明として意図されており、機能的に等価なあらゆる作成物がこの発明の範囲内にあるため、寄託された作成物により、本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの材料の寄託は、ここに含まれる文書による説明が、そのベストモードを含む、本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に変形することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。
Claims (4)
- ニューロン細胞への多能性細胞の分化を誘導するインビトロの方法であって、有効量のボールカインポリペプチドを投与することを含んでなり、前記細胞をニューロンマーカーが検出可能な状態まで分化させる方法。
- 前記ニューロンマーカーがMAP2である、請求項1に記載の方法。
- ニューロン細胞への多能性細胞の分化を誘導するための薬剤であって、有効量のボールカインポリペプチドを含んでなり、前記細胞をニューロンマーカーが検出可能な状態まで分化させる薬剤。
- 前記ニューロンマーカーがMAP2である、請求項3に記載の薬剤。
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