JP4166254B2 - ボールカインポリペプチド及び核酸 - Google Patents

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(発明の分野)
本発明は、一般に、新規なDNAの同定及び単離、並びに新規なポリペプチドの組換え生産に関する。本発明はまたボールカイン(Bolekine)と免疫系及び細胞分化におけるその役割の使用方法にも関する。
(発明の背景)
白血球は単球、マクロファージ、好塩基球、及び好酸球を含み、免疫応答において重要な役割を果たしている。これらの細胞はT及び/又はBリンパ球により開始される機構において重要であり、他の炎症性細胞を補充して活性化させ組織破壊に寄与するある範囲のサイトカインを分泌する。
従って、白血球がその適切な目的地まで移動し他の細胞と相互作用する調節プロセスの研究は重要である。現在、白血球は血管壁の内皮細胞に沿って転がることにより損傷を受けたあるいは炎症を起こした組織まで移動すると考えられている。この移動は、セレクチンとそのリガンドの間の一過性の相互作用により媒介される。次に、白血球は血管壁に沿って組織内部まで移動しなければならない。この血液からの漏出と管外遊出工程は、またインテグリンとそのリガンドにより媒介される、より安定した白血球−内皮細胞相互作用を促進する細胞活性化を含む。
ケモカインは構造的に関連したポリペプチドサイトカインの大きなファミリーである。これらの分子は白血球の動きを刺激し、異なった炎症状況における白血球の情報交換を説明する。ケモカインは内皮細胞上で特定の接着分子の発現を媒介し、それらが特定の細胞型を活性化する化学誘因物質をつくりだす。また、ケモカインは特定の細胞型の増殖を刺激し活性化を調節する。これらの活動の双方において、ケモカインは高度の標的細胞特異性を示す。
ケモカインファミリーは、二つのアミノ末端システイン残基が直ぐに隣接しているか(C-C)、一つのアミノ酸によって分離しているか(C-X-C)に基づいて二つのサブファミリーに分割される。C-X-Cファミリーのケモカインは一般に好中球と線維芽細胞を活性化させる一方、C-Cケモカインは単球/マクロファージ、好塩基球、好酸球及びTリンパ球を含むより広範なグループ標的細胞に作用する。両方のサブファミリーの既知のケモカインは、Thomson A. (1994) The Cytokine Handbook, 第2版, Academic Press, N.Y.において概説されているように、多くの多様な細胞型により合成される。ケモカインはまたSchall TJ (1994) Chemotactic Cytokines: Targets for Therapeutic Development. International Business Communications, Southborough Mass. pp180-270及びPaul WE (1993) Fundamental Immunology, 第3版, Raven Press, N.Y. pp822-826において概説されている。
C-X-Cサブファミリーの既知のケモカインには、マクロファージ炎症タンパク質アルファ及びベータ(MIP-1及びMIP-2)、インターロイキン-8(IL-8)及び成長調節タンパク質(GRO-アルファ及びベータ)が含まれる。
MIP-2は最初はリポ多糖類(LPS)での刺激時にマウスマクロファージ細胞株RAW264.7により分泌された6kDaのヘパリン結合タンパク質として同定された。MIP-2はケモカインのC-X-C(又はCXC)サブファミリーのメンバーである。マウスMIP-2はヒト好中球に対して化学走化性であり、マウスの足の裏に注射した場合、局所的好中球浸潤を誘発する。ラットMIP-2はマウスMIP-2に対して86%のアミノ酸相同性を示し、ラット好中球に対して化学走化性であるが、ラット肺胞マクロファージ又はヒト末梢血好酸球又はリンパ球の遊走を刺激しない。また、ラットMIP-2はラット肺胞内皮細胞の増殖を刺激するが線維芽細胞の増殖は刺激しないことが実証されている。
炎症を生じた又は羅患した組織における異常の診断に対する現在の技術は、臨床的徴候の観察又はホルモン、ポリペプチド又は様々な代謝物に対する体組織又は体液の血清学的検査に主に依存している。問題はこれらの診断法にある。第1に、患者は疾患の初期段階では臨床的徴候を表さないかもしれない。第2に、血清学的検査は浸潤性疾患と遺伝的症候群とを必ずしも区別しない。従って、発現されたケモカインを同定することは、新規な診断法、効果的な治療法の開発、並びに分子的病原の理解の助けとして重要である。
今日まで、ケモカインは少なくとも次の症状に関与している:乾癬、炎症性腸疾患、腎疾患、関節炎、免疫媒介脱毛症、脳卒中、脳炎、MS、肝炎等々。また、非ELR含有ケモカインは血管形成誘導の阻害に関与しており、よって、これらのケモカインが腫瘍血管新生及び腫瘍形成においてある役割を有していることを示している。
従って、サイトカイン誘導好中球化学誘引物質、例えばMIP-1、MIP-2、並びにその他の関連タンパク質と配列同一性及び類似性を有するポリペプチド及びそれをコードする核酸を同定することが本発明の目的である。
我々はここにボールカイン(Bolekine)ポリペプチドと命名した新規なケモカインファミリーポリペプチドの同定と特徴付けを記載する。
(発明の概要)
一実施態様では、本発明はボールカインポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を提供する。
一態様では、単離された核酸分子は、(a)ここに開示された全長アミノ酸配列、ここに開示されたシグナルペプチドを欠くアミノ酸配列、ここに開示されたシグナルペプチドを伴うか伴わない膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、又はここに開示された全長アミノ酸配列の他に特別に定められた任意の断片を有するボールカインポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約89%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約99%の核酸配列同一性を有しているヌクレオチド配列を含む。
他の態様では、単離された核酸分子は、(a)ここに開示された全長ボールカインポリペプチドcDNAのコード配列、ここに開示されたシグナルペプチドを欠くボールカインポリペプチドのコード配列、ここに開示されたシグナルペプチドを伴うか伴わない膜貫通ボールカインポリペプチドの細胞外ドメインのコード配列、又はここに開示された全長アミノ酸配列の他に特に定められた任意の断片のコード配列を含むDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約89%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約99%の核酸配列同一性を有しているヌクレオチド配列を含む。
さらなる態様では、本発明は、(a)ここに開示されたATCCに寄託されたヒトタンパク質cDNAの任意のものによりコードされる同じ成熟ポリペプチドをコードするDNA分子、又は(b)(a)のDNA分子の相補鎖に対して、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約89%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約99%の核酸配列同一性を有しているヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。
本発明の他の態様は、膜貫通ドメインが欠失されているか膜貫通ドメインが不活性化されているボールカインポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はそのようなコード化ヌクレオチド配列に相補的であるものを含んでなる単離された核酸分子を提供し、ここでそのようなポリペプチドの膜貫通ドメインがここに開示される。従って、ここに記載されたボールカインポリペプチドの可溶性細胞外ドメインが考えられる。
他の実施態様は、ボールカインポリペプチドコード配列の断片、又はその相補鎖に関し、それらは、例えば、場合によっては抗ボールカイン抗体に対する結合部位を含むポリペプチドをコードするボールカインポリペプチドの断片をコードする、ハイブリダイゼーションプローブとして、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドプローブとしての用途が見いだされる。そのような核酸断片は通常少なくとも約10のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約15のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約20のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約30のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約40のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約50のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約60のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約70のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約80のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約90のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約100のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約110のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約120のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約130のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約140のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約150のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約160のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約170のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約180のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約190のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約200のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約250のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約300のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約350のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約400のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約450のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約500のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約600のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約700のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約800のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約900のヌクレオチド長、あるいは少なくとも約1000のヌクレオチド長であり、ここで、「約」という用語は、その参照している長さのプラス又はマイナス10%の参照ヌクレオチド配列長を意味する。ボールカインポリペプチドコード化ヌクレオチド配列の新規な断片は、多くのよく知られた配列アラインメントプログラムの任意のものを使用して、ボールカインポリペプチドコードヌクレオチド配列を他の既知のヌクレオチド配列にアラインメントさせ、どのボールカインポリペプチドコード化ヌクレオチド配列断片(群)が新規であるかを決定することにより常套的に決定することができることに留意される。そのようなボールカインポリペプチドコード化ヌクレオチド配列の全てがここで考えられる。また考えられるものは、これらのヌクレオチド分子断片によりコードされるボールカインポリペプチド断片、好ましくは抗ボールカイン抗体に対する結合部位を含んでなるボールカインポリペプチド断片である。
他の実施態様では、本発明は、上記で同定された単離核酸配列の任意のものにコードされる単離ボールカインポリペプチドを提供する。
ある態様では、本発明は、ここに開示された全長アミノ酸配列、ここに開示されたシグナルペプチドを欠くアミノ酸配列、ここに開示されたシグナルペプチドを伴うか伴わない膜貫通タンパク質の細胞外ドメイン、又はここに開示された全長アミノ酸配列の任意の他の特に定められた断片を有するボールカインポリペプチドに対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約89%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有しているアミノ酸配列を含む単離されたボールカインポリペプチドに関する。
さらなる態様では、本発明は、ここに開示されたATCCに寄託されたヒトタンパク質cDNAの任意のものによりコードされるアミノ酸配列に対して、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約89%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有しているアミノ酸配列を含む単離されたボールカインポリペプチドに関する。
特定の態様では、本発明は、N末端シグナル配列及び/又は開始メチオニンを持たない単離されたボールカインポリペプチドを提供し、それは上述したそのようなアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列によりコードされる。これを生産する方法もまたここに記載され、ここで、これらの方法はボールカインポリペプチドの発現に適した条件下で適当なコード化核酸分子を含むベクターを含んでなる宿主細胞を培養し、細胞培養物からボールカインポリペプチドを回収することを含んでなる。
本発明の他の態様は、膜貫通ドメインが欠失されたか膜貫通ドメインが不活性化された単離されたボールカインポリペプチドを提供する。これを生産する方法もまたここに記載され、ここで、これらの方法はボールカインポリペプチドの発現に適した条件下で適当なコード化核酸分子を含むベクターを含んでなる宿主細胞を培養し、細胞培養物からボールカインポリペプチドを回収することを含んでなる。
さらに他の実施態様では、本発明は、ここで定められる天然ボールカインポリペプチドのアゴニスト及びアンタゴニストに関する。特定の実施態様では、アゴニスト又はアンタゴニストは抗ボールカイン抗体又は小分子である。
更なる実施態様では、本発明は、ボールカインポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストを同定する方法に関し、それは、ボールカインポリペプチドを候補分子と接触させ、上記ボールカインポリペプチドによって媒介される生物学的活性をモニターすることを含む。好ましくは、ボールカインポリペプチドは天然ボールカインポリペプチドである。
また更なる実施態様では、本発明は、ボールカインポリペプチド、又はここに記載するボールカインポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニスト、又は抗ボールカイン抗体を、担体と組み合わせて含有する組成物に関する。場合によっては、担体は薬学的に許容される担体である。
本発明の他の実施態様は、ボールカインポリペプチド、又は上記したようなそのアゴニスト又はアンタゴニスト、又は抗ボールカイン抗体の、ボールカインポリペプチド、そのアゴニスト又はアンタゴニスト又は抗ボールカイン抗体に応答性の病状の治療に有用な医薬の調製のための使用に関する。
本発明の他の実施態様では、本発明は、ここに記載の任意のポリペプチドをコードするDNAを含んでなるベクターを提供する。任意のそのようなベクターを含んでなる宿主細胞もまた提供される。例としては、宿主細胞はCHO細胞、大腸菌、又は酵母であってもよい。ここに記載の任意のポリペプチドの製造方法が更に提供され、それは、宿主細胞を所望のポリペプチドの発現に適した条件下で培養し、細胞培地から所望のポリペプチドを回収することを含む。
他の実施態様では、本発明は、異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合した、ここに記載の任意のポリペプチドを含んでなるキメラ分子を提供する。そのようなキメラ分子の例は、エピトープタグ配列又は免疫グロブリンのFc領域に融合したここに記載の任意のポリペプチドを含む。
更に他の実施態様では、本発明は、上記又は下記のポリペプチドの任意のものに特異的に結合する抗体を提供する。場合によっては、抗体はモノクローナル抗体、ヒト化抗体、抗体断片又は一本鎖抗体である。
更に他の実施態様では、本発明は、ゲノム及びcDNAヌクレオチド配列を単離し、関連遺伝子の発現を測定又は検出するために、又はアンチセンスプローブとして有用でありうるオリゴヌクレオチドプローブを提供し、ここでそのプローブは上記又は下記のヌクレオチド配列の任意のものから誘導されうる。好適なプローブ長は上述の通りである。
更に他の実施態様では、本発明は以下の実施例において提示した機能性生物学的アッセイに基づいて様々な用途に対して本発明のボールカインポリペプチドを使用する方法に関する。
更に他の実施態様では、本発明は実施例10に提示されたように免疫細胞の増殖を増加させる方法に関する。
更に他の実施態様では、本発明は実施例11に提示されたように血管透過性を増加させる使用方法に関する。
(好適な実施態様の詳細な説明)
I.定義
ここで使用される際の「ボールカイン」という用語は、天然配列ポリペプチド及びポリペプチド変異体(ここで更に詳細に定義する)を含む。ここで記載されているボールカインポリペプチドは、ヒト組織型又は他の供給源といった種々の供給源から単離され、あるいは組換え又は合成方法によって調製されうる。「ボールカインポリペプチド」という用語は、ここで開示されている各個々のボールカインポリペプチドを指す。「ボールカインポリペプチド」を指すこの明細書中の全ての開示は、各ポリペプチドのそれぞれも組み合わせものも指す。例えば、その調製、その精製、その誘導、それへの又はそれに対する抗体の形成、その投与、それを含有する組成物、それでの疾患の治療等々の記述は、本発明の各ポリペプチドのそれぞれに関係する。また、「ボールカインポリペプチド」という用語は、ここに開示されているボールカインポリペプチドの変異体を含む。
「天然配列ボールカインポリペプチド」は、天然由来の対応するボールカインポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでいる。このような天然配列ボールカインポリペプチドは、自然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列ボールカインポリペプチド」という用語には、特に、特定のボールカインポリペプチドの自然に生じる切断又は分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然に生じる変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及びそのポリペプチドの自然に生じる対立遺伝子変異体が含まれる。本発明の種々の実施態様では、ここに開示されている天然配列ボールカインポリペプチドは、添付図に示されている完全長アミノ酸配列を含有する成熟又は完全長天然配列ポリペプチドである。開始及び終止コドンは、図中において太い書体及び下線で示されている。しかし、添付図に開示されているボールカインポリペプチドは図中でアミノ酸位置1としてここに示されたメチオニン残基で始まることが示されているが、図中のアミノ酸位置1より上流又は下流のいずれかに位置する他のメチオニン残基を、ボールカインポリペプチドの開始アミノ酸残基として用いることも考えられるしまた可能である。
ボールカインポリペプチド「細胞外ドメイン」又は「ECD」は、膜貫通及び細胞質ドメインを実質的に持たないボールカインポリペプチドの形態を意味する。通常、ボールカインポリペプチドECDは、そのような膜貫通及び/又は細胞質ドメインを1%未満、好ましくはそのようなドメインを0.5%未満しか持たない。本発明のボールカインポリペプチドについて同定される任意の膜貫通ドメインは、疎水性ドメインのそのタイプを同定するために当該分野において日常的に使用されている基準に従い同定されることが理解されるであろう。膜貫通ドメインの厳密な境界は変わり得るが、最初にここで同定されたドメインのいずれかの末端から約5アミノ酸を越えない可能性が高い。従って、ボールカインポリペプチド細胞外ドメインは、場合によっては、実施例又は明細書において同定された膜貫通ドメイン/細胞外ドメイン境界のいずれかの側から約5又はそれ以下のアミノ酸を含みうるし、関連するシグナルペプチドを有するか有しないそのようなポリペプチド及びそれらをコードする核酸は、本発明において考慮される。
ここに開示する種々のボールカインポリペプチドの「シグナルペプチド」の適切な位置は、本明細書及び/又は添付図に示される。しかし、シグナルペプチドのC-末端境界は変化しうるが、ここで最初に定義したようにシグナルペプチドC-末端境界のいずれかの側で約5アミノ酸未満である可能性が最も高く、シグナルペプチドのC-末端境界は、そのようなタイプのアミノ酸配列成分を同定するのに日常的に使用されている基準に従って同定しうることに留意されたい(例えば、Nielsenら, Prot. Eng. 10: 1-6 (1997)及びvon Heinjeら, Nucl. Acids. Res. 14: 4683-4690 (1986))。さらに、幾つかの場合には、分泌ポリペプチドからのシグナルペプチドの切断は完全に均一ではなく、1つ以上の分泌種をもたらすことも認められる。シグナルペプチドがここに同定されるシグナルペプチドのC-末端境界の何れかの側の約5アミノ酸未満内で切断されるこれらの成熟ポリペプチド、及びそれらをコードするポリヌクレオチドは、本発明で考慮される。
「ボールカインポリペプチド変異体」とは、上記又は下記に定義されるように、ここに開示される完全長天然配列ボールカインポリペプチド、ここに開示されたシグナルペプチドを欠く完全長天然配列ボールカインポリペプチド配列、シグナルペプチドを伴うか伴わないここに開示されたボールカインの細胞外ドメイン又はここに開示された完全長ボールカインポリペプチドの他の断片と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する活性なボールカインポリペプチドを意味する。このようなボールカインポリペプチド変異体には、例えば、完全長天然アミノ酸配列のN-又はC-末端に一又は複数のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失されたボールカインポリペプチドが含まれる。通常、ボールカインポリペプチド変異体は、ここに開示される完全長天然配列ボールカインポリペプチド配列、ここに開示されたシグナルペプチドを欠くボールカインポリペプチド配列、シグナルペプチドを有するか有しないここに開示されたボールカインポリペプチドの細胞外ドメイン又はここに開示された完全長ボールカインポリペプチド配列の任意の他の特に定まった断片と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約89%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、そして、あるいは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有している。通常は、ボールカイン変異体ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長、あるいは少なくとも約20アミノ酸長、あるいは少なくとも約30アミノ酸長、あるいは少なくとも約40アミノ酸長、あるいは少なくとも約50アミノ酸長、あるいは少なくとも約60アミノ酸長、あるいは少なくとも約70アミノ酸長、あるいは少なくとも約80アミノ酸長、あるいは少なくとも約90アミノ酸長、あるいは少なくとも約100アミノ酸長、あるいは少なくとも約150アミノ酸長、あるいは少なくとも約200アミノ酸長、あるいは少なくとも約300アミノ酸長、又はそれ以上である。
ここで特定されるボールカインポリペプチドに対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとして、特定のボールカインポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2プログラム用の完全なソースコードが下記の表1に提供されている配列比較プログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作成され、下記の表1に示したソースコードは米国著作権庁, ワシントンD.C., 20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、サウスサンフランシスコ, カリフォルニアから好適に入手可能であり、あるいは下記の表1に提供されたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標) V4.0Dでの使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータがALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、XはA及びBの配列アラインメントプログラムALIGN-2においてその配列アラインメントプログラムによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。この方法を用いた%アミノ酸配列同一性の計算の例として、表2及び3は、「比較タンパク質」と称されるアミノ酸配列の「ボールカイン」と称されるアミノ酸配列に対する%アミノ酸配列同一性の計算方法を示し、ここで「ボールカイン」は対象となる仮説的ボールカインポリペプチドのアミノ酸配列を表し、「比較タンパク質」は対象となる「ボールカイン」ポリペプチドが比較されているポリペプチドのアミノ酸配列を表し、「X」、「Y」及び「Z」はそれぞれ異なった仮説的アミノ酸残基を表す。
特に断らない限りは、ここでの全ての%アミノ酸配列同一性値は上記のようにALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られる。しかしながら、%アミノ酸配列同一性値は、WU-BLAST-2コンピュータプログラム(Altschulら, Methods in Enzymology 266: 460-480(1996))を用いて以下に記載されるようにして決定してもよい。殆どのWU-BLAST-2検索パラメータは初期値に設定される。初期値に設定されないもの、即ち調節可能なパラメータは以下の値に設定する:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11、及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62。WU-BLAST2が用いられる場合には、%アミノ酸配列同一性値は、(a)天然ボールカインポリペプチドから誘導された配列を有する対象とするボールカインポリペプチドのアミノ酸配列と、対象とする比較アミノ酸配列(すなわち、対象とするボールカインポリペプチドが比較されるボールカインポリペプチド変異体であってもよい配列)との間の、WU-BLAST-2によって決定した一致する同一アミノ酸残基の数を、(b)対象とするボールカインポリペプチドの残基の総数で除した商によって決定される。例えば、「アミノ酸配列Bに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を持つ又は持っているアミノ酸配列Aを含んでなるポリペプチド」という表現では、アミノ酸配列Aが対象の比較アミノ酸配列であり、アミノ酸配列Bが対象のボールカインポリペプチドのアミノ酸配列である。
また、%アミノ酸配列同一性は、配列比較プログラムNCBI-BLAST2(Altschulら, Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402 (1997))を用いて決定してもよい。NCBI-BLAST2配列比較プログラムは、http://www.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードでき、又は別な方法で米国国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランドから得ることができる。NCBI-BLAST2は幾つかの検索パラメータを使用し、それら検索パラメータの全ては初期値に設定され、例えば、unmask=可、鎖=全て、予測される発生=10、最小低複合長=15/5、マルチパスe-値=0.01、マルチパスの定数=25、最終ギャップアラインメントのドロップオフ=25、及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62を含む。
アミノ酸配列の比較にNCBI-BLAST2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムNCBI-BLAST2のA及びBのアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。
「ボールカイン変異体ポリヌクレオチド」又は「ボールカイン変異体核酸配列」とは、下記に定義されるように、活性ボールカインポリペプチドをコードし、ここに開示する完全長天然配列ボールカインポリペプチド配列、ここに開示するシグナルペプチドを欠いた完全長天然配列ボールカインポリペプチド配列、シグナルペプチドを有する又は有しないここに開示するボールカインポリペプチドの細胞外ドメイン、又はここに開示する完全長ボールカインポリペプチド配列の他の任意の断片をコードする核酸配列と少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する核酸分子を意味する。通常、ボールカイン変異体ポリペプチドは、ここに開示する完全長天然配列ボールカインポリペプチド配列、ここに開示するシグナルペプチドを欠いた完全長天然配列ボールカインポリペプチド配列、シグナル配列を有する又は有しないここに開示するボールカインポリペプチドの細胞外ドメイン、又はここに開示する完全長ボールカインポリペプチド配列の他の任意の断片をコードする核酸配列と、少なくとも約80%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約82%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約83%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約84%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約86%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約87%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約88%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約89%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約90%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約91%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約92%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約93%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約94%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約95%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約96%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約97%の核酸配列同一性、あるいは少なくとも約98%の核酸配列同一性、そして、あるいは少なくとも約99%の核酸配列同一性を有している。変異体は、天然ヌクレオチド配列を含まない。
通常は、ボールカイン変異体ポリヌクレオチドは、少なくとも約30ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約60ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約90ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約120ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約150ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約180ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約210ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約240ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約270ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約300ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約450ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約600ヌクレオチド長、あるいは少なくとも約900ヌクレオチド長、又はそれ以上である。
ここで同定されるボールカインコード化核酸配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、ボールカイン配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することにより達成可能である。ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2プログラム用の完全なソースコードが下記の表1に提供されている配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作成され、下記の表1に示したソースコードは米国著作権庁,ワシントン D.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはジェネンテック社、サウスサンフランシスコ, カリフォルニアから好適に入手可能であり、あるいは下記の表1に提供されたソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標) V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータがALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
核酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられた核酸配列Cの、与えられた核酸配列Dとの、又はそれに対する%核酸配列同一性(あるいは、与えられたアミノ酸配列Dと、又はそれに対して或る程度の%核酸配列同一性を持つ又は含む与えられた核酸配列Cと言うこともできる)は次のように計算される:
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムALIGN-2のC及びDのアラインメントによって同一であると一致したスコアの核酸残基の数であり、ZはDの全核酸残基数である。核酸配列Cの長さがアミノ酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。この方法を用いた%核酸配列同一性の計算の例として、表4及び5は「比較DNA」と称される核酸配列の「ボールカイン-DNA」と称される核酸配列に対する%核酸配列同一性の計算方法を実証し、ここで「ボールカイン-DNA」が対象の仮説的ボールカインコード化核酸配列を表し、「比較DNA」が対象の「ボールカイン-DNA」核酸分子が比較されている核酸配列を表し、「N」、「L」及び「V」はそれぞれ異なった仮説的アミノ酸残基を表す。
特に断らない限りは、ここでの全ての%核酸配列同一性値は、直ぐ上の段落に示したようにALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られる。しかしながら、%核酸配列同一性値は、WU-BLAST-2コンピュータプログラム(Altschulら, Methods in Enzymology 266: 460-480 (1996))を用いて決定してもよい。さらに、殆どのWU-BLAST-2検索パラメータは初期値に設定される。初期値に設定されない、即ち調節可能なパラメータは以下の値に設定する:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11、及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62。WU-BLAST-2が用いられた場合、%核酸配列同一性値は、(a)天然配列ボールカインポリペプチドコード化核酸から誘導された配列を有する対象とするボールカインポリペプチドコード化核酸分子の核酸配列と、対象とする比較核酸配列(即ち、対象とするボールカインポリペプチドコード化核酸分子が比較されるボールカインポリペプチド変異体であってもよい配列)との間の、WU-BLAST-2によって決定した一致する同一核酸残基の数を、(b)対象とするボールカインポリペプチドコード化核酸分子のヌクレオチドの総数で除した商によって決定される。例えば、「核酸配列Bに対して少なくとも80%の核酸配列同一性を持つ又は持っている核酸配列Aを含んでなる単離された核酸分子」という表現では、核酸配列Aが対象の比較核酸配列であり、核酸配列Bが対象のボールカインポリペプチドコード化核酸分子の核酸配列である。
また、%核酸配列同一性は、配列比較プログラムNCBI-BLAST2(Altschulら, Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402 (1997))を用いて決定してもよい。NCBI-BLAST2配列比較プログラムは、http://www.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードでき、又は別な方法で米国国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランドから得ることができる。NCBI-BLAST2は幾つかの検索パラメータを使用し、それら検索パラメータの全ては初期値に設定され、例えば、unmask=可、鎖=全て、予測される発生=10、最小低複合長=15/5、マルチパスe-値=0.01、マルチパスの定数=25、最終ギャップアラインメントのドロップオフ=25、及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62を含む。
核酸配列比較にNCBI-BLAST2が用いられる状況では、与えられた核酸配列Cの、与えられた核酸配列Dとの、又はそれに対する%核酸配列同一性(あるいは、与えられた核酸配列Dと、又はそれに対して或る程度の%核酸配列同一性を持つ又は含む与えられた核酸配列Cと言うこともできる)は次のように計算される:
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムNCBI-BLAST2のC及びDのアラインメントによって同一であると一致したスコアの核酸残基の数であり、ZはDの全核酸残基数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。
他の実施態様では、ボールカイン変異体ポリヌクレオチドは、活性なボールカインポリペプチドをコードし、好ましくは緊縮性ハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で、ここに開示する完全長ボールカインポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする核酸分子である。ボールカイン変異体ポリペプチドは、ボールカイン変異体ポリヌクレオチドにコードされるものであってもよい。
「単離された」とは、ここで開示された種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離されたポリペプチドには、ボールカインポリペプチドの自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも一つの精製工程により調製される。
「単離された」ボールカインポリペプチドコード化核酸又は他のポリペプチドコード化核酸は、同定され、該ポリペプチドをコードする核酸の天然源に通常付随している少なくとも一つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、天然に見出される形態あるいは設定以外のものである。ゆえに、単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、天然の細胞中に存在する特定のポリペプチドコード化核酸分子とは区別される。しかし、単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なった染色体位置にあるポリペプチドを通常発現する細胞に含まれるポリペプチド核酸分子を含む。
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読み枠にあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
「抗体」という用語は最も広義に使用され、例えば、単一の抗ボールカインポリペプチドモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、及び中和抗体を含む)、多エピトープ特異性を持つ抗ボールカイン抗体組成物、一本鎖抗ボールカイン抗体、及び抗ボールカイン抗体の断片を特に包含する(下記参照)。ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である集団から得られる抗体を指す。
ハイブリダイゼーション反応の「緊縮性」は、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補的鎖がその融点に近いがそれより低い環境に存在する場合における変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をより緊縮性にするが、低い温度は緊縮性を低下させる。さらに、緊縮性は塩濃度に逆比例する。ハイブリダイゼーション反応の緊縮性の更なる詳細及び説明は、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照のこと。
ここで定義される「緊縮性条件」又は「高度の緊縮性条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤、例えば、42℃において50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを用いるもの;(3)42℃における50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5xデンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸と、42℃における0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中の洗浄及び55℃での50%ホルムアミド、次いで55℃におけるEDTAを含む0.1xSSCからなる高緊縮性洗浄を用いるものによって同定される。
「中程度の緊縮性条件」は、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Press, 1989に記載されているように同定され、上記の緊縮性より低い洗浄溶液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度の緊縮性条件は、20%ホルムアミド、5xSSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハード液、10%デキストラン硫酸、及び20mg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中の37℃での終夜インキュベーション、次いで1xSSC中37−50℃でのフィルターの洗浄といった条件である。当業者であれば、プローブ長などの因子に適合させる必要に応じて、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかを認識する。
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合したボールカインポリペプチド、又はそれらのドメイン配列を含むキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープ、又は幾つかの他の試薬によって同定できるエピトープを提供するに十分な数の残基を有しているが、その長さは対象とするポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20のアミノ酸残基)を有する。
ここで用いられる「イムノアドヘシン」なる用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインとを結合した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を持ち、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(すなわち「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
ここでの目的に対する「活性な」又は「活性」とは、天然又は天然に生じるボールカインの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持するボールカインポリペプチドの形態を意味し、ここで「生物学的」活性とは、天然又は天然に生じるボールカインが保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力以外の、天然又は天然に生じるボールカインによって引き起こされる生物機能(阻害又は刺激)を意味し、また「免疫学的」活性とは、天然又は天然に生じるボールカインが保持する抗原性エピトープに対する抗体の生成を誘発する能力を意味する。
「アンタゴニスト」なる用語は最も広義に用いられ、ここに開示した天然ボールカインポリペプチドの生物学的活性を部分的又は完全に阻止、阻害、又は中和する任意の分子を含む。同様に「アゴニスト」なる用語は最も広義に用いられ、ここに開示した天然ボールカインポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子を含む。好適なアゴニスト又はアンタゴニスト分子は特に、アゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体断片、天然ボールカインポリペプチドの断片又はアミノ酸配列変異体、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、有機小分子等々を含む。ボールカインポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの同定方法は、ボールカインポリペプチドを候補アンタゴニスト又はアゴニストと接触させ、ボールカインポリペプチドに通常は伴っている一又は複数の生物学的活性の検出可能な変化を測定することを含みうる。
「治療」とは、治癒的処置と予防的療法又は防止的療法の両方を意味し、患者は標的とする病理学的状態又は疾患を防止又は遅延化(減少)させることである。治療が必要な者とは、既に疾患に罹っている者、並びに疾患に罹りやすい者又は疾患が防止されている者を含む。
「慢性」投与とは、急性態様とは異なり連続的な態様での薬剤を投与し、初期の治療効果(活性)を長時間に渡って維持することを意味する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処置である。
治療のための「哺乳動物」は、ヒト、家庭及び農業用動物、動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む哺乳類に分類される任意の動物を意味する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
一又は複数の治療薬と「組み合わせた」投与とは、同時(同時期)及び任意の順序での連続した投与を含む。
ここで用いられる「担体」は、製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる用量及び濃度でそれらに暴露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEENTM、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSTMを含む。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')、及びFv断片;ダイアボディ(diabodies);直鎖状抗体(Zapataら, Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]);一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。この配置において各ドメインの3つのCDRが相互作用してV−V二量体の表面に抗原結合部位を決定する。正しくは、6つのCDRが抗体に対する抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
また、Fab断片は、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されていることによりFab'断片と相違する。ここで、Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を持つFab'を表す。F(ab')抗体断片は、最初はFab'断片の対として生成され、それらの間にヒンジシステインを有する。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる二つの明らかに異なる型の一方に分類される。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに分類できる。免疫グロブリンの五つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、それらの幾つかは更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分類される。
「一本鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含む抗体断片を含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合にとって望ましい構造の形成を可能にする、V及びVドメイン間のポリペプチドリンカーを更に含む。sFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
「ダイアボディ(diabodies)」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小型の抗体断片を意味し、その断片は同じポリペプチド鎖(V−V)内で軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を含む。同じ鎖の二つのドメイン間に対形成するには短すぎるリンカーを用いることにより、ドメインは強制的に他の鎖の相補的ドメインと対形成して二つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHollingerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により十分に記載されている。
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され分離及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、その抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様では、抗体は、(1)ローリー法で測定した場合95重量%を越える抗体、最も好ましくは99重量%を越えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端あるいは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、あるいは、(3)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一の精製工程により調製される。
「特異的に結合する」抗体、又は特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープへ「特異的な」抗体とは、他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープとは実質的に結合せずに、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープへ結合するものである。
「標識」なる語は、ここで用いられる場合、「標識」抗体が生成されるように、抗体に直接又は間接的に抱合している検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識は、それ自身検出可能でもよく(例えば、放射性標識又は蛍光標識)、又は酵素標識の場合、検出可能な基質化合物又は組成物の化学変換を触媒してもよい。
「固相」とは、本発明の抗体がそれに付着することのできる非水性マトリクスを意味する。ここに意図する固相の例は、部分的又は全体的に、ガラス(例えば、孔制御ガラス)、多糖類(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンから形成されたものを含む。或る種の実施態様では、内容に応じて、固相はアッセイプレートのウェルを構成することができ;その他では精製カラム(例えばアフィニティクロマトグラフィーカラム)とすることもできる。また、この用語は、米国特許第4,275,149号に記載されたような、別個の粒子の不連続な固相も包含する。
「リポソーム」は、種々の型の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤からなる小型の小胞であり、哺乳動物への薬物(ボールカインポリペプチド又はその抗体など)の輸送に有用である。リポソームの成分は、通常は生体膜の脂質配列に類似する二層形式に配列させる。
「小分子」とは、ここで、約500ダルトン未満の分子量を持つと定義される。
ここに開示されたポリペプチド又はそのアゴニスト又はアンタゴニストの「有効量」とは、特に記載した目的を実施するのに十分な量である。「有効量」は述べられた目的との関連で経験的かつ常套的に決定されうる。
「多能性細胞」は発生系統に固定されない細胞としてここに定義される。
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II. 本発明の組成物と方法
A.完全長ボールカインポリペプチド
本発明は、本出願でボールカインポリペプチドと呼ばれるポリペプチドをコードする新規に同定され単離された核酸配列を提供する。特に下記の実施例でさらに詳細に説明するように、種々のボールカインポリペプチドをコードするcDNAが同定され単離された。しかしながら、単純化のために、本明細書において、ここに開示した完全長天然核酸分子にコードされるタンパク質並びに上記のボールカインの定義に含まれる更なる天然相同体及び変異体は、それらの由来又は調製方法に関わらず、ボールカインと称する。
下記の実施例に開示されるように、ボールカインcDNAクローンはATCCに寄託されている。これらのクローンの実際のヌクレオチド配列は、この分野で日常的な方法を用いて寄託されたクローンを配列決定することにより容易に決定することができる。予測されるアミノ酸配列は、ヌクレオチド配列から常套的技量を用いて決定できる。ここに記載したボールカインポリペプチド及びコード化核酸について、本出願人は、現時点で入手可能な配列情報と最も良く一致するリーディングフレームであると考えられるものを同定した。
B.ボールカインポリペプチド変異体
ここに記載した完全長天然配列ボールカインポリペプチドに加えて、ボールカイン変異体も調製できると考えられる。ボールカイン変異体は、ボールカインDNAに適当なヌクレオチド変化を導入することにより、あるいは所望のボールカインポリペプチドを合成することにより調製できる。当業者は、グリコシル化部位の数又は位置の変化あるいは膜固着特性の変化などのアミノ酸変化がボールカインポリペプチドの翻訳後プロセスを変えうることを理解するであろう。
天然完全長配列ボールカイン又はここに記載したボールカインの種々のドメインにおける変異は、例えば、米国特許第5,364,934号に記載されている保存的及び非保存的変異についての技術及び指針の任意のものを用いてなすことができる。変異は、結果として天然配列ボールカインと比較してボールカインのアミノ酸配列が変化するボールカインをコードする一又は複数のコドンの置換、欠失又は挿入であってよい。場合によっては、変異は少なくとも一のアミノ酸のボールカインの一又は複数のドメインの任意の他のアミノ酸による置換である。いずれのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換又は欠失されるかの指針は、ボールカインの配列を相同性の知られたタンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域内でなされるアミノ酸配列変化を最小にすることによって見出される。アミノ酸置換は、一つのアミノ酸の類似した構造及び/又は化学特性を持つ他のアミノ酸での置換、例えばロイシンのセリンでの置換、すなわち保存的アミノ酸置換の結果とすることができる。挿入及び欠失は、場合によっては約1から5のアミノ酸の範囲内とすることができる。許容される変異は、配列におけるアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的になし、得られた変異体を完全長又は成熟天然配列が示す活性について試験することにより決定される。
ボールカインポリペプチド断片がここに提供される。このような断片は、例えば、完全長天然タンパク質と比較した際に、N-末端又はC-末端で切断されてもよく、又は内部残基を欠いていてもよい。ある種の断片は、ボールカインポリペプチドの所望の生物学的活性に必須ではないアミノ酸残基を欠いている。
ボールカイン断片は、多くの一般的な技術の任意のものによって調製することができる。所望のペプチド断片は化学合成してもよい。代替的方法は、酵素的消化、例えば特定のアミノ酸残基によって決定される部位のタンパク質を切断することが知られた酵素でタンパク質を処理することにより、あるいは適当な制限酵素でDNAを消化して所望の断片を単離することによるボールカイン断片の生成を含む。さらに他の好適な技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、所望のポリペプチド断片をコードするDNA断片を単離し増幅することを含む。DNA断片の所望の末端を決定するオリゴヌクレオチドは、PCRの5’及び3’プライマーで用いられる。好ましくは、ボールカインポリペプチド断片は、ここに開示した天然ボールカインポリペプチドと少なくとも一つの生物学的及び/又は免疫学的活性を共有する。
特定の実施態様では、対象とする保存的置換を、好ましい置換と題した表6に示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表6に例示的置換と名前を付けた又は以下にアミノ酸分類でさらに記載するように、より実質的な変化が導入され生成物がスクリーニングされる。
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ボールカインポリペプチドの機能又は免疫学的同一性の実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持しながら、それらの効果が有意に異なる置換基を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づくグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性の親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:asn, gln, his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, pro; 及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。また、そのように置換された残基は、保存的置換部位、より好ましくは残された(非保存)部位に導入されうる。
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発のようなこの分野で知られた方法を用いてなすことができる。部位特異的突然変異誘発[Carterら, Nucl. Acids Res., 13: 4331 (1986); Zollerら, Nucl. Acids Res., 10: 6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wellsら, Gene, 34: 315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wellsら, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317: 415 (1986)]あるいは他の知られた技術をクローニングしたDNAに対して実施してボールカイン変異体DNAを製造することもできる。
また、隣接配列に沿って一又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。好ましいスキャンニングアミノ酸は比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である[Cunningham及びWells, Science, 244: 1081-1085 (1989)]。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的に好ましい。さらに、それは埋もれた位置と露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150:1(1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
C.ボールカインの修飾
ボールカインポリペプチドの共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一つのタイプは、ボールカインポリペプチドの標的とするアミノ酸残基を、ボールカインの選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応可能な有機誘導体化試薬と反応させることである。二官能性試薬での誘導体化は、例えば抗ボールカイン抗体の精製方法に使用される水不溶性支持体マトリクス又は表面にボールカインを架橋させるためにあるいはその逆の場合に有用である。通常用いられる架橋剤は、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸とのエステル、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬を含む。
他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
本発明の範囲内に含まれるボールカインポリペプチドの共有結合的修飾の他のタイプは、ポリペプチドの天然グリコシル化パターンの変更を含む。「天然グリコシル化パターンの変更」とは、ここで意図されるのは、天然配列ボールカインに見られる一又は複数の炭水化物部分の欠失(存在するグリコシル化部位の除去又は化学的及び/又は酵素的手段によるグリコシル化の削除のいずれかによる)、及び/又は天然配列ボールカインに存在しない1又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。さらに、この文節は、存在する種々の炭水化物部分の性質及び特性の変化を含む、天然タンパク質のグリコシル化における定性的変化を含む。
ボールカインポリペプチドへのグリコシル化部位の付加はアミノ酸配列の変更を伴ってもよい。この変更は、例えば、1又は複数のセリン又はトレオニン残基の天然配列ボールカイン(O-結合グリコシル化部位)への付加、又は置換によってなされてもよい。ボールカインアミノ酸配列は、場合によっては、DNAレベルでの変化、特に、ボールカインポリペプチドをコードするDNAを予め選択された塩基において変異させ、所望のアミノ酸に翻訳されるコドンを生成させることを通して変更されてもよい。
ボールカインポリペプチド上に炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的又は酵素的結合による。このような方法は、この技術分野において、例えば、1987年9月11日に公開された国際公開87/05330、及びAplin及びWriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
ボールカインポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に、あるいはグルコシル化の標的として提示されたアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によってなすことができる。化学的脱グリコシル化技術は、この分野で知られており、例えば、Hakimuddinら, Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)により、及びEdgeら, Anal. Biochem., 118: 131 (1981)により記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら, Meth. Enzymol. 138:350 (1987)に記載されているように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを用いることにより達成される。
ボールカインの共有結合的修飾の他のタイプは、ボールカインポリぺプチドの、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンの一つへの、米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号又は第4,179,337号に記載された方法での結合を含む。
また、本発明のボールカインポリペプチドは、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したボールカインポリペプチドを含むキメラ分子を形成する方法で修飾してもよい。
一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとボールカインポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般的にはボールカインポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このようなボールカインのエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によってボールカインを容易に精製できるようにする。種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(ポリ-his)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Fieldら, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evanら, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616(1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborskyら, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hoppら, BioTechnology, 6:1204-1210(1988)];KT3エピトープペプチド[Martinら, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinnerら, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuthら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397(1990)]を含む。
別の実施態様では、キメラ分子はボールカインの免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含んでもよい。キメラ分子の二価形態(「イムノアドヘシン」とも呼ばれる)については、そのような融合体はIgG分子のFc領域であり得る。Ig融合体は、好ましくはIg分子内の少なくとも一つの可変領域に換えてボールカインポリペプチドの可溶化(膜貫通ドメイン欠失又は不活性化)形態を含む。特に好ましい実施態様では、免疫グロブリン融合体は、IgG1分子のヒンジ、CH2及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合体の製造については、1995年6月27日発行の米国特許第5,428,130号を参照のこと。
D.ボールカインの調製
以下の説明は、主として、ボールカイン核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することによりボールカインを生産する方法に関する。もちろん、当該分野においてよく知られている他の方法を用いてボールカインを調製することができると考えられる。例えば、ボールカイン配列、又はその一部は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生産してもよい[例えば、Stewartら, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., サンフランシスコ, カリフォルニア(1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。マニュアル技術又は自動によるインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(フォスター シティー, カリフォルニア)を用いて、製造者の指示により実施してもよい。ボールカインの種々の部分は、別々に化学的に合成され、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて完全長ボールカインを生産してもよい。
1.ボールカインをコードするDNAの単離
ボールカインをコードするDNAは、ボールカインmRNAを保有していてそれを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリから得ることができる。従って、ヒトボールカインDNAは、実施例に記載されるように、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリから簡便に得ることができる。またボールカイン-コード化遺伝子は、ゲノムライブラリから又は公知の合成方法(例えば、自動化核酸合成)により得ることもできる。
ライブラリは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(ボールカインに対する抗体又は少なくとも約20-80塩基のオリゴヌクレオチド等)によってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリのスクリーニングは、例えばSambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。ボールカインをコードする遺伝子を単離する他の方法はPCR法を使用するものである[Sambrookら,上掲;Dieffenbachら, PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
下記の実施例には、cDNAライブラリのスクリーニング技術を記載している。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さで、疑陽性が最小化されるよう充分に明瞭でなければならない。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリ内のDNAとのハイブリダイゼーション時に検出可能であるように標識されていることが好ましい。標識化の方法は当該分野において良く知られており、32P標識されたATPのような放射線標識、ビオチン化あるいは酵素標識の使用が含まれる。中程度の厳密性及び高度の厳密性を含むハイブリダイゼーション条件は、上掲のSambrookらに示されている。
このようなライブラリスクリーニング法において同定された配列は、GenBankなどの公的なデータベース又は私的な配列データベースに寄託され公衆に利用可能とされている周知の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の決定された領域内又は全長に渡っての(アミノ酸又は核酸レベルのいずれかでの)配列同一性は、当該分野で知られた、及びここに記載した方法を用いて決定することができる。
タンパク質コード化配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用し、また必要ならば、cDNAに逆転写されていないmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrookらに記述されているような従来のプライマー伸展法を使用して選択されたcDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることによって得られる。
2.宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載したボールカイン生産のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及び上掲のSambrookらに見出すことができる。
原核生物細胞形質移入及び真核生物細胞形質移入の方法、例えば、CaCl、CaPO、リポソーム媒介及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrookらに記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、一般的に原核生物に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shawら, Gene, 23:315(1983)及び1989年6月29日公開の国際公開89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van Solingenら, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiaoら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keownら, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansourら, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
ここに記載のベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大腸菌のような腸内細菌科を含む。種々の大腸菌株が公衆に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31,446);大腸菌X1776(ATCC31,537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)及びK5772(ATCC53,635)である。他の好ましい原核動物宿主細胞は、大腸菌、例えば、E. coli、エンテロバクター、エルビニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、例えば、ネズミチフス菌、セラチア、例えば、セラチア・マルセサンス(Serratia marcescans) 、及び赤痢菌などの腸内細菌科、並びに桿菌、例えばバチルス・スブチルス(B. subtilis)及びバチルス・リチェニフォルミス(B. licheniformis)(例えば、1989年4月12日発行のDD266,710に記載されたバチルス・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えば緑膿菌及びストレプトマイセスを含む。これらの例は限定ではなく例示である。株W3110は、組換えDNA生産物発酵のための共通の宿主株であるので一つの特に好ましい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、株W3110は、細胞に外来のタンパク質をコードする遺伝子における遺伝子変異をするように修飾してもよく、そのような宿主の例としては、完全な遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF-lac)169 degP ompT kanを有する大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244);完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF-lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kanを有する大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を持つ37D6株である大腸菌W3110株40B4;及び1990年8月7日発行の米国特許第4,946,783号に開示された変異周辺質プロテアーゼを有する大腸菌株を含む。あるいは、クローニングのインビトロ法、例えばPCR又は他の核酸ポリメラーゼ反応が好ましい。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、ボールカインコード化ベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。他に、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(Beach及びNurse, Nature, 290: 140 [1981]; 1985年5月2日公開の欧州特許第139,383号);クルベロミセス宿主(Kluyveromyces hosts)(米国特許第4,943,529号; Fleerら, Bio/Technology, 9: 968-975 (1991))、例えばクルベロミセスラクチス(K. lactis)(MW98-8C, CBS683, CBS4574; Louvencourtら, J. Bacteriol.154(2): 737-742 [1983])、クルベロミセス・フラギリス(K. fragilis)(ATCC 12,424)、クルベロミセス・ブルガリクス(K. bulgaricus)(ATCC 16,045)、クルベロミセス・ウィケラミイ(K. wickeramii)(ATCC 24,178)、クルベロミセス・ワルチイ(K. waltii)(ATCC 56,500)、クルベロミセス・ドロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC 36,906; Van den Bergら, Bio/Technology, 8: 135 (1990))、クルベロミセス・テモトレランス(K. thermotolerans)及びクルベロミセス・マルキシアナス(K. marxianus);ヤロウィア(yarrowia)(欧州特許第402,226号);ピチア・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許第183,070号; Sreekrishnaら, J. Basic Microbiol, 28: 265-278 [1988]);カンジダ;トリコデルマ・レーシア(Trichoderma reesia)(欧州特許第244,234号);アカパンカビ(Caseら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76: 5259-5263 [1979]);シュワニオマイセス(Schwanniomyces)、例えばシュワニオマイセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)(1990年10月31日公開の欧州特許第394,538号);及び糸状真菌、例えば、ニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)(1991年1月10日公開の国際公開91/00357);及びアスペルギルス宿主、例えばアスペルギルスニダランス(Ballanceら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 112: 284-289 [1983]; Tilburnら, Gene, 26: 205-221 [1983]; Yeltonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 1470-1474 [1984])及びアスペルギルスニガー(Kelly及びHynes, EMBO J., 4: 475-479 [1985])が含まれる。ここで好ましいメチロトロピック(C1化合物資化性、Methylotropic)酵母は、これらに限られないが、ハンセヌラ(Hansenula)、カンジダ、クロエケラ(Kloeckera)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス、トルロプシス(Torulopsis)、及びロドトルラ(Rhodotorula)からなる属から選択されたメタノールで成長可能な酵母を含む。この酵母の分類の例示である特定の種のリストは、C. Anthony, The Biochemistry of Methylotrophs, 269 (1982)に記載されている。
グリコシル化ボールカインの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、ショウジョウバエS2及びスポドプテラSf9のような昆虫細胞並びに植物細胞が含まれる。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びCOS細胞を含む。より詳細な例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7,ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Grahamら, J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980))ヒト肺細胞 (W138,ATCC CCL 75); ヒト肝細胞 (Hep G2,HB 8065); 及びマウス乳房腫瘍細胞 (MMT 060562,ATCC CCL51)を含む。適切な宿主細胞の選択は、この分野の技術常識内にある。
3.複製可能なベクターの選択及び使用
ボールカインをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの作成には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
ボールカインは直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN-末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産される。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、ベクターに挿入されるボールカイン-コード化DNAの一部である。シグナル配列は、例えばアルカリフォスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択された原核生物シグナル配列であってよい。酵母の分泌に関しては、シグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(サッカロミセス(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含み、後者は米国特許第5,010,182号に記載されている)、又は酸ホスファターゼリーダー、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日公開の欧州特許第362179号)、又は1990年11月15日に公開された国際公開90/13646に記載されているシグナルであり得る。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳動物シグナル配列は、同一あるいは関連ある種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダーのようなタンパク質の直接分泌に使用してもよい。
発現及びクローニングベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリのD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子のような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
哺乳動物細胞に適切な選べるマーカーの例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのようにボールカイン-コード化核酸を取り込むことのできる細胞成分を同定することのできるものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaubらにより Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるCHO株化細胞である。酵母菌中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcombら, Nature, 282:39(1979);Kingsmanら, Gene, 7:141(1979);Tschemperら, Gene, 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC番号44076あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
発現及びクローニングベクターは、通常、ボールカイン-コード化核酸配列に作用可能に結合し、mRNA合成を制御するプロモーターを含む。種々の可能な宿主細胞により認識される好適なプロモーターが知られている。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Changら, Nature, 275:615 (1978); Goeddelら, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリフォスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモーターもまたボールカインをコードするDNAと作用可能に結合したシャイン-ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman ら, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess ら, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1978)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
他の酵母プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸フォスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモーターは欧州特許第73,657号に更に記載されている。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのボールカイン転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開のUK2,211,504)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
より高等の真核生物による所望のボールカインをコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100-270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、ボールカインコード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
また真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの通常は5’、時には3’の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、ボールカインをコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え脊椎動物細胞培養でのボールカインの合成に適応化するのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gethingら, Nature, 293:620-625 (1981); Manteiら, Nature, 281:40-46 (1979);欧州特許第117,060号;及び欧州特許第117,058号に記載されている。
4.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:5201-5205 (1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリダイゼーション法によって、直接的に試料中で測定することができる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA-RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。次いで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
あるいは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列ボールカインポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はボールカインDNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
5.ポリペプチドの精製
ボールカインの形態は、培地又は宿主細胞の溶菌液から回収することができる。膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)又は酵素的切断を用いて膜から引き離すことができる。ボールカインの発現に用いられる細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
ボールカインを、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及びボールカインのエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutscher, Methods in Enzymology, 182(1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる生産方法及び特に生産される特定のボールカインの性質に依存する。
E.ボールカインの用途
ボールカインをコードする核酸配列(又はそれらの相補鎖)は、ハイブリダイゼーションプローブとしての使用を含む分子生物学の分野において、染色体及び遺伝子マッピングにおいて、及びアンチセンスRNA及びDNAの生成において種々の用途を有している。また、ボールカイン核酸も、ここに記載される組換え技術によるボールカインポリペプチドの調製に有用である。
完全長天然配列ボールカイン遺伝子又はその一部は、全長ボールカインcDNAの単離又はここに開示した天然ボールカイン配列に対して所望の配列同一性を持つ更に他のcDNA(例えば、ボールカインの天然発生変異体又は他の種からのボールカインをコードするもの)の単離のためのcDNAライブラリ用のハイブリダイゼーションプローブとして使用できる。場合によっては、プローブの長さは約20〜約50塩基である。ハイブリダイゼーションプローブは、少なくとも部分的に完全長天然ヌクレオチド配列の新規な領域から誘導してもよく、それらの領域は、過度の実験をすることなく、天然配列ボールカインのプロモーター、エンハンサー成分及びイントロンを含むゲノム配列から誘導され得る。例えば、スクリーニング法は、ボールカイン遺伝子のコード化領域を周知のDNA配列を用いて単離して約40塩基の選択されたプローブを合成することを含む。ハイブリダイゼーションプローブは、32P又は35S等の放射性ヌクレオチド、又はアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合したアルカリホスファターゼ等の酵素標識を含む種々の標識で標識されうる。本発明のボールカイン遺伝子に相補的な配列を有する標識されたプローブは、ヒトcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリをスクリーニングし、そのライブラリの何れのメンバーがプローブにハイブリダイズするかを決定するのに使用できる。ハイブリダイゼーション技術は、以下の実施例において更に詳細に記載する。
本出願で開示する任意のESTは、同様に、ここに記載した方法を用いてプローブとして用いることができる。
ボールカイン核酸の他の有用な断片は、標的ボールカイン mRNA(センス)又はボールカイン DNA(アンチセンス)配列に結合できる一本鎖核酸配列(RNA又はDNAのいずれか)を含むアンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを含む。アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、本発明によると、ボールカイン DNAのコード化領域の断片を含む。このような断片は、一般的には少なくとも約14ヌクレオチド、好ましくは約14から30ヌクレオチドを含む。与えられたタンパク質をコードするcDNA配列に基づく、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドを制御する可能性は、例えば、Stein及びCohen(Cancer Res. 48: 2659: [1988])及び van der Krolら,(BioTechniques 6: 958, [1988])に記載されている。
アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドの標的核酸配列への結合は二重鎖の形成をもたらし、それは、二重鎖の分解の促進、転写又は翻訳の期外停止を含む幾つかの方法の一つ、又は他の方法により、標的配列の転写又は翻訳を阻止する。よって、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ボールカインタンパク質の発現を阻止するのに用いられる。アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、修飾糖−ホスホジエステル骨格(又は他の糖結合、国際公開91/06629に記載のもの等)を有するオリゴヌクレオチドをさらに含み、そのような糖結合は内因性ヌクレアーゼ耐性である。そのような耐性糖結合を持つオリゴヌクレオチドは、インビボで安定であるが(すなわち、酵素分解に耐えうるが)、標的ヌクレオチド配列に結合できる配列特異性は保持している。
センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの他の例は、国際公開90/10048に記載されているもののような、有機部分、及びオリゴヌクレオチドの標的核酸配列への親和性を向上させる他の部分、例えばポリ-(L-リジン)に共有結合したオリゴヌクレオチドを含む。さらにまた、エリプチシン等の挿入剤、アルキル化剤又は金属錯体をセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合させ、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドの標的ヌクレオチド配列への結合特異性を改変してもよい。
アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、CaPO-媒介DNA形質移入、エレクトロポレーションを含む任意の遺伝子転換方法により、又はエプスタイン-バーウイルスなどの遺伝子転換ベクターを用いることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入される。好ましい方法では、アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチドは、適切なレトロウイルスベクターに挿入される。標的核酸配列を含む細胞は、インビボ又はエキソビボで組換えレトロウイルスベクターに接触させる。好適なレトロウイルスベクターは、これらに限られないが、マウスレトロウイルスM-MuLVから誘導されるもの、N2(M-MuLVから誘導されたレトロウイルス)、又はDCT5A、DCT5B及びDCT5Cと命名されたダブルコピーベクター(国際公開90/13641参照)を含む。
また、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、国際公開91/04753に記載されているように、リガンド結合分子との複合体の形成により標的配列を含む細胞に導入してもよい。適切なリガンド結合分子は、これらに限られないが、細胞表面レセプター、成長因子、他のサイトカイン、又は細胞表面レセプターに結合する他のリガンドを含む。好ましくは、リガンド結合分子の複合体形成は、リガンド結合分子がその対応する分子又はレセプターに結合する、あるいはセンス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその複合体の細胞への侵入を阻止する能力を実質的に阻害しない。
あるいは、センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、国際公開90/10448に記載されたように、オリゴヌクレオチド−脂質複合体の形成により標的核酸配列を含む細胞に導入してもよい。センス又はアンチセンスオリゴヌクレオチド−脂質複合体は、好ましくは内因性リパーゼにより細胞内で分解される。
アンチセンス又はセンスRNA又はDNA分子は一般に少なくとも約5塩基長、約10塩基長、約15塩基長、約20塩基長、約25塩基長、約30塩基長、約35塩基長、約40塩基長、約45塩基長、約50塩基長、約55塩基長、約60塩基長、約65塩基長、約70塩基長、約75塩基長、約80塩基長、約85塩基長、約90塩基長、約95塩基長、約100塩基長、あるいはそれよりも長い。
また、プローブは、PCR技術に用いて、密接に関連したボールカインコード化配列の同定のための配列のプールを作成することができる。
また、ボールカインをコードするヌクレオチド配列は、そのボールカインをコードする遺伝子のマッピングのため、及び遺伝子疾患を持つ個体の遺伝子分析のためのハイブリダイゼーションプローブの作成にも用いることができる。ここに提供されるヌクレオチド配列は、インサイツハイブリダイゼーション、既知の染色体マーカーに対する結合分析、及びライブラリでのハイブリダイゼーションスクリーニング等の周知の技術を用いて、染色体及び染色体の特定領域にマッピングすることができる。
ボールカインのコード化配列が他のタンパク質に結合するタンパク質をコードする場合(例えば、ボールカインがレセプターである場合)、ボールカインは、結合相互作用に関与している他のタンパク質又は分子を同定するためのアッセイに用いることができる。このような方法により、レセプター/リガンド結合性相互作用の阻害剤を同定することができる。このような結合性相互作用に含まれるタンパク質も、ペプチド又は小分子阻害剤又は結合性相互作用のアゴニストのスクリーニングに用いることができる。また、レセプターボールカインは関連するリガンドの単離にも使用できる。スクリーニングアッセイは、天然ボールカイン又はボールカインのレセプターの生物学的活性に似たリード化合物の発見のために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリの高スループットスクリーニングにも用いられ、小分子候補薬剤の同定に特に適したものとする。考慮される小分子は、合成有機又は無機化合物を含む。アッセイは、この分野で良く特徴付けられているタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生物学的スクリーニングアッセイ、免疫検定及び細胞ベースのアッセイを含む種々の型式で実施される。
また、ボールカイン又はその修飾型をコードする核酸は、トランスジェニック動物又は「ノックアウト」動物のいずれかを産生することに使用でき、これらは治療的に有用な試薬の開発やスクリーニングに有用である。トランスジェニック動物(例えばマウス又はラット)とは、出生前、例えば胚段階で、その動物又はその動物の祖先に導入された導入遺伝子を含む細胞を有する動物である。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれたDNAである。一実施形態では、ボールカインをコードするcDNAは、ボールカインをコードするDNAを発現する細胞を含むトランスジェニック動物を作製するために使用するゲノム配列及び確立された技術に基づいて、ボールカインをコードするゲノムDNAをクローン化するために使用することができる。トランスジェニック動物、特にマウス又はラット等の特定の動物を産生する方法は、当該分野において常套的になっており、例えば米国特許第4,736,866号や第4,870,009号に記述されている。典型的には、特定の細胞を組織特異的エンハンサーでのボールカイン導入遺伝子の導入の標的にする。胚段階で動物の生殖系列に導入されたボールカインコード化導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物はボールカインをコードするDNAの増大した発現の影響を調べるために使用できる。このような動物は、例えばその過剰発現を伴う病理学的状態に対して保護をもたらすと思われる試薬のテスター動物として使用できる。本発明のこの態様においては、動物を試薬で治療し、導入遺伝子を有する未治療の動物に比べ病理学的状態の発症率が低ければ、病理学的状態に対する治療上の処置の可能性が示される。
あるいは、ボールカインの非ヒト相同体は、動物の胚幹細胞に導入されたボールカインをコードする変更ゲノムDNAと、ボールカインをコードする内在性遺伝子との間の相同的組換えによって、ボールカインをコードする欠陥又は変更遺伝子を有するボールカイン「ノックアウト」動物を作成するために使用できる。例えば、ボールカインをコードするcDNAは、確立された技術に従い、ボールカインをコードするゲノムDNAのクローニングに使用できる。ボールカインをコードするゲノムDNAの一部を欠失したり、組み込みを監視するために使用する選択可能なマーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、ベクターは無変化のフランキングDNA(5’と3’末端の両方)を数キロベース含む[例えば、相同的組換えベクターについてはThomas及びCapecchi, Cell, 51:503(1987)を参照のこと]。ベクターは胚幹細胞に(例えばエレクトロポレーションによって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞が選択された[例えば、Liら, Cell, 69:915(1992)参照]。選択された細胞は次に動物(例えばマウス又はラット)の胚盤胞内に注入されて集合キメラを形成する[例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照のこと]。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、期間をおいて「ノックアウト」動物を作り出す。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、例えば、ボールカインポリペプチドの欠乏によるある種の病理的状態及びその病理的状態の進行に対する防御能力によって特徴付けられる。
また、ボールカインポリペプチドをコードする核酸は遺伝子治療にも使用できる。遺伝子治療用途においては、例えば欠陥遺伝子を置換するため、治療的有効量の遺伝子産物のインビボ合成を達成するために遺伝子が導入される。「遺伝子治療」とは、1回の処理により継続的効果が達成される従来の遺伝子治療と、治療的に有効なDNA又はmRNAの1回又は繰り返し投与を含む遺伝子治療薬の投与の両方を含む。アンチセンスRNA及びDNAは、ある種の遺伝子のインビボ発現を阻止する治療薬として用いることができる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチドを、細胞膜による制限された取り込みに起因する低い細胞内濃度にもかかわらず、それが阻害剤として作用する細胞中に移入できることは既に示されている(Zamecnikら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83: 4143-4146 [1986])。オリゴヌクレオチドは、それらの負に荷電したリン酸ジエステル基を非荷電基で置換することによって取り込みを促進するように修飾してもよい。
生存可能な細胞に核酸を導入するための種々の技術が存在する。これらの技術は、核酸が培養細胞にインビトロで、あるいは意図する宿主の細胞においてインビボで移入されるかに応じて変わる。核酸を哺乳動物細胞にインビトロで移入するのに適した方法は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法などを含む。現在好ましいインビボ遺伝子移入技術は、ウイルス(典型的にはレトロウイルス)ベクターでの形質移入及びウイルス被覆タンパク質-リポソーム媒介形質移入である(Dzauら, Trends in Biotechnology 11, 205-210(1993))。幾つかの状況では、核酸供給源を、細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上のレセプターに対するリガンド等の標的細胞を標的化する薬剤とともに提供するのが望ましい。リポソームを用いる場合、エンドサイトーシスを伴って細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質、例えば、特定の細胞型向性のキャプシドタンパク質又はその断片、サイクルにおいて内部移行を受けるタンパク質に対する抗体、細胞内局在化を標的とし細胞内半減期を向上させるタンパク質が、標的化及び/又は取り込みの促進のために用いられる。レセプター媒介エンドサイトーシスは、例えば、Wuら, J. Biol. Chem. 262, 4429-4432 (1987); 及びWagnerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 3410-3414 (1990)によって記述されている。遺伝子作成及び遺伝子治療のプロトコールの概説については、Andersonら, Science 256, 808-813 (1992)を参照のこと。
ここに記載したボールカインポリペプチドをタンパク質電気泳動目的の分子量マーカーとして用いてもよく、単離された核酸配列を、これらのマーカーを組み換え発現に用いてもよい。
ここに記載したボールカインポリペプチド又はその断片をコードする核酸分子は、染色体の同定に有用である。この点において、実際の配列に基づく染色体マーキング試薬は殆ど利用可能ではないため、新規な染色体マーカーの同定が必要である。本発明の各ボールカイン核酸分子は染色体マーカーとして使用できる。
また、本発明のボールカインポリペプチド及び核酸分子は組織タイピングに使用でき、本発明のボールカインポリペプチドは、好ましくは同じ型の正常組織に比較して疾患性組織において、一方の組織で他方に比較して異なる発現をする。ボールカイン核酸分子には、PCR、ノーザン分析、サザン分析及びウェスタン分析のプローブ生成のための用途が見出されるであろう。
ここに記載したボールカインポリペプチドは治療薬として用いてもよい。本発明のボールカインポリペプチドは、製薬的に有用な組成物を調製するのに知られた方法に従って製剤され、これにより、このボールカイン生成物は製薬的に許容される担体媒体と混合される。治療用製剤は、凍結乾燥された製剤又は水性溶液の形態で、任意的な製薬上許容可能なキャリア、賦形剤又は安定剤と、所望の精製度を有する活性成分とを混合することにより(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. Ed., [1980])、調製され保管される。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、用いる投与量及び濃度ではレシピエントに対して無毒性であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(残基数10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類又は他の炭水化物;EDTA等のキレート剤、マンニトール又はソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はPEG等の非イオン性界面活性剤を含む。
インビボ投与に使用される製剤は滅菌されていなくてはならない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、滅菌フィルター膜を通す濾過により容易に達成される。
ここで、本発明の製薬組成物は一般に、無菌のアクセスポートを具備する容器、例えば、皮下注射針で貫通可能なストッパーを持つ静脈内バッグ又はバイアル内に配される。
投与経路は周知の方法、例えば、静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内又は病巣内経路での注射又は注入、局所投与、又は徐放系による。
本発明の製薬組成物の用量及び望ましい薬物濃度は、意図する特定の用途に応じて変化する。適切な用量又は投与経路の決定は、通常の内科医の技量の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効量の決定についての信頼できるガイダンスを提供する。有効量の種間スケーリングは、Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobiら, 編, Pergamon Press, New York 1989, pp. 42-96のMordenti, J. 及びChappell, W. 「The use of interspecies scaling in toxicokinetics」に記載された原理に従って実施できる。
ボールカインポリペプチド又はそのアゴニスト又はアンタゴニストのインビボ投与が用いられる場合、正常な投与量は、投与経路に応じて、哺乳動物の体重当たり1日に約10ng/kgから100mg/kgまで、好ましくは約1μg/kg/日から10mg/kg/日である。特定の用量及び輸送方法の指針は文献に与えられている;例えば、米国特許第4,657,760号、第5,206,344号、又は第5,225,212号参照。異なる製剤が異なる治療用化合物及び異なる疾患に有効であること、例えば一つの器官又は組織を標的とする投与には、他の器官又は組織とは異なる方式で輸送することが必要であることが予想される。
ボールカインポリペプチドの投与を必要とする任意の疾患又は疾病の治療に適した放出特性を持つ製剤でボールカインポリペプチドの持続放出が望まれる場合、ボールカインポリペプチドのマイクロカプセル化が考えられる。持続放出のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン-(rhIFN-)、インターロイキン-2、及びMN rgp120で成功裏に実施されている。Johnsonら, Nat. Med., 2: 795-799 (1996); Yasuda, Biomed. Ther., 27: 1221-1223 (1993); Horaら, Bio/Technology, 8: 755-758 (1990); Cleland, 「Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polylactide Polyglycolide Microsphere Systems」Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell 及び Newman編, (Plenum Press: New York, 1995), p.439-462; 国際公開97/03692,国際公開96/40072,国際公開96/07399;及び米国特許第5,654,010号。
これらのタンパク質の持続放出製剤は、ポリ-乳酸-コグリコール酸(PLGA)ポリマーを用い、その生体適合性及び広範囲の生分解特性に基づいて開発された。PLGAの分解生成物である乳酸及びグリコール酸は、ヒト身体内で即座にクリアされる。さらに、このポリマーの分解性は、分子量及び組成に依存して数ヶ月から数年まで調節できる。Lewis, 「Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer」: M. Chasin及び R. Langer (編), Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems (Marcel Dekker: New York, 1990), pp. 1-41。
本発明は、ボールカインポリペプチドに類似する(アゴニスト)又はボールカインポリペプチドの効果を阻害する(アンタゴニスト)ものを同定するための化合物のスクリーニング方法も包含する。アンタゴニスト候補薬のスクリーニングアッセイは、ここに同定した遺伝子にコードされるボールカインポリペプチドと結合又は複合体形成する化合物、又は他にコード化ポリペプチドの他の細胞性タンパク質との相互作用を阻害する化合物を同定するために設計される。このようなスクリーニングアッセイは、それを特に小分子候補薬の同定に適したものにする、化学的ライブラリのハイスループットスクリーニングに適用可能なアッセイを含む。
該アッセイは、タンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイ、及び細胞ベースのアッセイで、この分野で知られたものを含む種々の方式で実施される。
アンタゴニストについての全てのアッセイは、それらが候補薬をここで同定された核酸にコードされるボールカインポリペプチドと、これら2つの成分が相互作用するのに十分な条件下及び時間で接触させることを必要とすることにおいて共通する。
結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、形成された複合体は単離されるか、又は反応混合物中で検出される。特定の実施態様では、ここに同定された遺伝子にコードされるボールカインポリペプチド又は候補薬が、共有又は非共有結合により固相、例えばミクロタイタープレートに固定化される。非共有結合は、一般的に固体表面をボールカインポリペプチドの溶液で被覆し乾燥させることにより達成される。あるいは、固定化されるボールカインポリペプチドに特異的な固定化抗体、例えばモノクローナル抗体を、それを固体表面に固着させるために用いることができる。アッセイは、固定化成分、例えば固着成分を含む被覆表面に、検出可能な標識で標識されていてもよい非固定化成分を添加することにより実施される。反応が完了したとき、未反応成分を例えば洗浄により除去し、固体表面に固着した複合体を検出する。最初の非固定化成分が検出可能な標識を有している場合、表面に固定化された標識の検出は複合体形成が起こったことを示す。最初の非固定化成分が標識を持たない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体によって検出できる。
候補化合物が相互作用するがここに同定した遺伝子にコードされる特定のボールカインポリペプチドに結合しない場合、そのポリペプチドとの相互作用は、タンパク質-タンパク質相互作用を検出するために良く知られている方法によってアッセイすることができる。そのようなアッセイは、架橋、同時免疫沈降、及び勾配又はクロマトグラフィーカラムを通す同時精製などの伝統的な手法を含む。さらに、タンパク質-タンパク質相互作用は、Chevray及びNathans[Proc.Natl. Acad. Sci. USA 89, 5789-5793 (1991)]に開示されているように、Fields及び共同研究者ら[Fields及びSong, Nature(London) 340, 245-246 (1989); Chienら, Proc.Natl. Acad. Sci. USA 88, 9578-9582 (1991)]に記載された酵母ベースの遺伝子系を用いることによってモニターすることができる。酵母GAL4などの多くの転写活性化剤は、2つの物理的に別個のモジュラードメインからなり、一方はDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する。前出の文献に記載された酵母発現系(一般に「2-ハイブリッド系」と呼ばれる)は、この特性の長所を利用し、並びに2つのハイブリッドタンパク質を用い、一方では標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合し、他方では候補となる活性化タンパク質が活性化ドメインに融合している。GAL1-lacZリポーター遺伝子のGAL4活性化プロモーターの制御下での発現は、タンパク質-タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β-ガラクトシダーゼに対する色素生産性物質で検出される。2-ハイブリッド技術を用いた2つの特定なタンパク質間のタンパク質-タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKER(商品名))は、Clontechから商業的に入手可能である。また、この系は、特定のタンパク質相互作用に含まれるタンパク質ドメインのマッピング、並びにこれら相互作用にとって重要なアミノ酸残基の特定へ拡大適用することができる。
ここで同定されたボールカインポリペプチドをコードする遺伝子と細胞内又は細胞外成分との相互作用を阻害する化合物は、次のように試験できる:通常、反応混合物は、遺伝子産物と細胞外又は細胞内成分を、これら2つの生成物の相互作用及び結合が可能な条件下及び時間に渡って含むように調製される。候補化合物が結合を阻害する能力を試験するために、反応は試験化合物の不存在及び存在下で実施される。さらに、プラシーボを第3の反応混合物に添加してポジティブコントロールを提供してもよい。混合物中に存在する試験化合物と細胞内又は細胞外成分との結合(複合体形成)は上記のようにモニターされる。試験化合物を含有する反応混合物ではなく、コントロール反応における複合体の形成は、試験化合物が試験化合物とその結合パートナーとの相互作用を阻害することを示す。
アンタゴニストをアッセイするためには、特定の活性についてスクリーニングされる化合物とともにボールカインポリペプチドを細胞へ添加してもよく、ボールカインポリペプチド存在下における対象活性を阻害する化合物の能力は、化合物がボールカインポリペプチドのアンタゴニストであることを示す。あるいは、ボールカインポリペプチドと膜結合ボールカインポリペプチドレセプター又は組換えレセプターを有する潜在的アンタゴニストを競合的阻害アッセイに適した条件下で結合させることによって、アンタゴニストを検出してもよい。放射活性などでボールカインポリペプチドを標識することが可能であり、潜在的アンタゴニストの有効性を判断するためにレセプターに結合したボールカインポリペプチドの数を利用することができる。レセプターをコードする遺伝子は、当業者に知られた多くの方法、例えばリガンドパンニング及びFACSソートによって同定できる。Coliganら, Current Protocols in Immun.,1(2): 第5章(1991)。好ましくは、発現クローニングが用いられ、ポリアデニル化RNAがボールカインポリペプチドに反応性の細胞から調製され、このRNAから生成されたcDNAライブラリがプールに分配され、COS細胞又はボールカインポリペプチドに対して反応性ではない他の細胞の形質移入に使用される。スライドガラスで成長させた形質移入細胞を、標識したボールカインポリペプチドで暴露する。このボールカインポリペプチドは、ヨウ素化又は部位特異的タンパク質キナーゼの認識部位の封入を含む種々の手段で標識できる。固定及びインキュベーションの後、スライドにオートラジオグラフィ分析を施す。ポジティブプールを同定し、相互作用サブプール化及び再スクリーニング工程を用いてサブプールを調製して再形質移入し、最終的に推定レセプターをコードする単一のクローンを生成する。
レセプター同定の代替的方法として、標識ボールカインポリペプチドをレセプター分子を発現する細胞膜又は抽出調製物に光親和性結合させることができる。架橋材料をPAGEで溶解させ、X線フィルムへ暴露する。レセプターを含む標識複合体を励起し、ペプチド断片へ分解し、タンパク質マイクロ配列決定を施すことができる。マイクロ配列決定から得たアミノ酸配列は、推定レセプターをコードする遺伝子を同定するcDNAライブラリをスクリーニングする縮重オリゴヌクレオチドプローブの一組の設計に用いられる。
アンタゴニストの他のアッセイでは、レセプターを発現する哺乳動物細胞又は膜調製物を、候補化合物の存在下で標識ボールカインポリペプチドとともにインキュベートする。次いで、この相互作用を促進又は阻止する化合物の能力を測定する。
潜在的なアンタゴニストのより特別な例は、免疫グロブリンとボールカインポリペプチドとの融合体に結合するオリゴヌクレオチド、特に、限られないが、ポリ-及びモノクローナル抗体及び抗体断片、一本鎖抗体、抗-イディオタイプ抗体、及びこれらの抗体又は断片のキメラ又はヒト化形態、並びにヒト抗体及び抗体断片を含む抗体を含んでいる。あるいは、潜在的アンタゴニストは、密接に関連したタンパク質、例えば、レセプターを認識するが効果を与えず、従ってボールカインポリペプチドの作用を競合的に阻害するボールカインポリペプチドの変異形態であってもよい。
他の潜在的なボールカインポリペプチドアンタゴニストは、アンチセンス技術を用いて調製されたアンチセンスRNA又はDNA作成物であり、例えば、アンチセンスRNA又はDNA分子は、標的mRNAにハイブリダイズしてタンパク質翻訳を妨害することによりmRNAの翻訳を直接阻止するように作用する。アンチセンス技術は、トリプルへリックス形成又はアンチセンスDNA又はRNAを通して遺伝子発現を制御するのに使用でき、それらの方法はともに、ポリヌクレオチドのDNA又はRNAへの結合に基づく。例えば、ここでの成熟ボールカインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の5’コード化部分は、約10から40塩基対長のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドの設計に使用される。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に含まれる遺伝子の領域に相補的であるように設計され(トリプルへリックス−Leeら, Nucl, Acid Res., 6: 3073 (1979); Cooneyら, Science, 241: 456 (1988); Dervanら, Science, 251: 1360 (1991)参照)、それによりボールカインポリペプチドの転写及び生成を防止する。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドはインビボでmRNAにハイブリダイズしてmRNA分子のボールカインポリペプチドへの翻訳を阻止する(アンチセンス−Okano, Neurochem., 56: 560 (1991); Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression (CRC Press: Boca Raton, FL, 1988))。上記のオリゴヌクレオチドは、細胞に輸送され、アンチセンスRNA又はDNAをインビボで発現させて、ボールカインポリペプチドの生産を阻害することもできる。アンチセンスDNAが用いられる場合、翻訳開始部位、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列の−10から+10位置の間から誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
潜在的アンタゴニストは、ボールカインポリペプチドの活性部位、レセプター結合部位、又は成長因子又は他の関連結合部位に結合し、それによりボールカインポリペプチドの正常な生物学的活性を阻止する小分子を含む。小分子の例は、これらに限られないが、小型ペプチド又はペプチド様分子、好ましくは可溶性ペプチド、及び合成非ペプチジル有機又は無機化合物を含む。
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒できる酵素的RNA分子である。リボザイムは、相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、ついで内ヌクレオチド結合分解性切断により作用する。潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、既知の技術で同定できる。更なる詳細は、例えば、上掲のRossi, Current Biology 4:469-471 (1994)及びPCT公報番号、国際公開97/33551(1997年9月18日公開)を参照。
転写阻害に用いられるトリプルヘリックス形成における核酸分子は一本鎖でデオキシヌクレオチドからなる。これらのオリゴヌクレオチドの基本組成は、フーグスチン塩基対則を介するトリプルヘリックス形成を促進するように設計され、それは一般に二重鎖の一方の鎖上のプリン又はピリミジンのサイズ変更可能な伸展を必要とする。さらなる詳細は、例えば、PCT公報番号、国際公開97/33551、上掲を参照。
これらの小分子は、上記で検討したスクリーニングアッセイの一又は複数の任意のものにより及び/又は当業者に良く知られた他の任意のスクリーニング技術により同定できる。
また、ここで開示されている分子の診断的及び治療的利用は、下記に開示及び記載のポジティブ機能アッセイヒットに基づいている。
ボールカインのようなELRモチーフを欠くケモカインはアンジオスタティックであるので(Strieter RM.ら Journal of Biological Chemistry 1995; 270: 27348-27357)、ボールカインは腫瘍成長に付随する新血管形成を阻害することによって腫瘍を治療するのに有用であろう。単独で又は抗VEGFのような他のアンジオスタティック因子と組み合わせてボールカインポリペプチドを投与すると腫瘍成長を制限し又は低減するのに有用であることが判明するであろう。
ケモカインは、CXCケモカインによる好中球の活性化が示されているので(Baggioliniら Adv Immunology 1994; 55:97-179)、免疫細胞を活性化することができ、また非CXCケモカインは主としてTリンパ球に対して化学走性である。ボールカインは、そのポリペプチドを局所投与すると感染部位に既に存在している免疫細胞を刺激し、より多くの免疫細胞を誘導してその部位に移動させ、より速い速度で感染を取り除くので感染の治療に有用であろう。
F.抗ボールカイン抗体
本発明はさらに抗ボールカイン抗体を提供する。例示的な抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロ結合体抗体が含まれる。
1.ポリクローナル抗体
抗ボールカイン抗体はポリクローナル抗体を含む。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで産生させることができる。典型的には、免疫化剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫化剤は、ボールカインポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に結合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
2.モノクローナル抗体
あるいは、抗ボールカイン抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫化剤により免疫化することで、免疫化剤に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成可能なリンパ球を誘発する。また、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫化剤は、典型的にはボールカインポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBLs」)が使用され、あるいは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培養培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培養培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現をサポートし、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやバージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も記載されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
ついでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、ボールカインに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合アッセイによって測定される。このような技術及びアッセイは、当該分野において既知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって測定することができる。
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作製することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に組込むことができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンタンパク質を生成等しない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[米国特許第4,816,567号;Morrison等, 上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、あるいは本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られてる。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製にはインビトロ法がまた適している。抗体の断片、特にFab断片を生成するための抗体の消化は、当該分野において知られている定法的技術を使用して達成できる。
3.ヒト及びヒト化抗体
本発明の抗ボールカイン抗体は、さらにヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりWinter及び共同研究者[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
また、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。また、Cole等及びBoerner等の技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる(Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77(1985);Boerner等, J. Immunol., 147(1):86-95(1991)]。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子は部分的又は完全に不活性化してマウスに導入することにより産生することができる。投与の際に、遺伝子再配列、組立、及び抗体レパートリーを含むあらゆる観点においてヒトに見られるものに非常に類似しているヒト抗体の生産が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、及び次の科学文献:Marks等, Bio/Technology 10, 779-783 (1992); Lonberg等, Nature 368 856-859 (1994); Morrison, Nature 368, 812-13 (1994); Fishwild等, Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996); Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)に記載されている。
また、抗体は上述した既知の選択及び/又は突然変異誘発法を使用し、親和成熟させてもよい。好ましい親和成熟抗体は、成熟抗体が調製された(一般的にマウス、ヒト化又はヒトの)出発抗体のものよりも、5倍、より好ましくは10倍、さらに好ましくは20又は30倍の親和性を有する。
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。この場合、結合特異性の一方はボールカインに対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539(1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開のWO 93/08829、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3659 (1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインと行われる。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
WO 96/27011に記載された他のアプローチによれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収される異種二量体の割合を最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」は、大きなアミノ酸側鎖が小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えられた第2の抗体分子の界面に作り出される。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab')二重特異性抗体)として調製できる。抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
大腸菌からFab'断片を直接回収でき、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby等, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の製造を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞及び正常なヒトT細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し単離する様々な技術もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelnyら, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J.Immunol. 147:60(1991)。
例示的な二重特異性抗体は、ここに与えられたボールカインポリペプチドの2つの異なるエピトープに結合しうる。あるいは、抗ボールカインポリペプチドアームは、特定のボールカインポリペプチド発現細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、T細胞レセプター分子(例えばCD2、CD3、CD28、又はB7)等の白血球上のトリガー分子又はFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプターに結合するアームと結合しうる。また、二重特異性抗体は特定のボールカインポリペプチドを発現する細胞に細胞障害薬を局在化させるためにも使用されうる。これらの抗体はボールカイン-結合アーム及び細胞障害薬又は放射性キレート化剤、例えばEOTUBE、DPTA、DOTA、又はTETAと結合するアームを有する。対象の他の二重特異性抗体はボールカインポリペプチドに結合し、そしてさらに組織因子(TF)に結合する。
5.ヘテロ結合体抗体
ヘテロ結合抗体も本発明の範囲内に入る。ヘテロ結合抗体は2つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4,676,980号]及びHIV感染の治療のために[WO 91/00360; WO 92/200373; EP 03089]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,676,980号に開示されているものが含まれる。
6.エフェクター機能の加工
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えば癌の治療における抗体の有効性を向上させるのが望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成させるようにしてもよい。そのようにして生成されたホモダイマー抗体は、向上した内部移行能力及び/又は増加した補体媒介細胞殺傷及び抗体-依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を有しうる。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes, J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。また、向上した抗腫瘍活性を持つホモダイマー抗体は、Wolff等, Cancer research 53: 2560-2565 (1993)に記載されたような異種二官能性架橋を用いても調製しうる。あるいは、抗体は、2つのFc領域を有するように加工して、それにより補体溶解及びADCC能力を向上させることもできる。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照。
7.免疫結合体
本発明はまた、化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素、又はその断片)などの細胞障害薬、あるいは放射性同位体(即ち、放射性結合)に結合された抗体を含む免疫複合体にも関する。
このような免疫結合体の生成に有用な化学療法剤は上記した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリアトキシンの非結合活性断片、(緑膿菌からの)エクソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ツルレイシインヒビター、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)を含む。様々な放射性ヌクレオチドが放射性結合抗体の生成に利用可能である。例として、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reを含む。
抗体及び細胞障害薬の結合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されたように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への結合のためのキレート剤の例である。WO 94/11026参照。
他の実施態様では、腫瘍の予備標的化で使用するために、抗体は「レセプター」(ストレプトアビジン等)に結合されてもよく、抗体-レセプター結合体は患者に投与され、次いで清澄化剤を用いて未結合結合体を循環から除去し、次に細胞障害薬(放射性ヌクレオチド等)に結合された「リガンド」(アビジン等)を投与する。
8.免疫リポソーム
また、ここに開示するタンパク質、抗体は、免疫リポソームとして調製してもよい。抗体を含むリポソームは、Epstein等, Proc. Natl. acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwang等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980); 及び米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号に記載されたような、この分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成される。リポソームは、定められた孔サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab'断片は、Martin等, J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームに結合され得る。化学療法剤(ドキソルビシン等)は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst. 81(19) 1484 (1989)参照。
9.抗体の製薬組成物
ここで同定されたボールカインポリペプチドに特異的に結合する抗体、並びに上記に開示したスクリーニングアッセイによって同定された他の分子は、種々の疾患の治療のために、製薬組成物の形態で投与することができる。
ボールカインポリペプチドが細胞内にあり、全抗体が阻害剤として用いられる場合、取り込める抗体が好ましい。しかし、リポフェクション又はリポソームも抗体、又は抗体断片を細胞に導入するのために使用できる。抗体断片が用いられる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持したペプチド分子が設計できる。このようなペプチドは、化学的に合成でき、又は組換えDNA技術によって生成できる。例えば、Marascoら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 7889-7893 (1993)参照。ここでの製剤は、治療すべき特定の徴候に必要な場合に1つ以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、細胞毒性薬、サイトカイン又は成長阻害剤を含んでもよい。これらの分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は上掲のRemington's Pharmaceutical Science に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなけらばならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。除放性マトリクスの例は、ポリエステルヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタメート、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商品名)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-3-ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物学的活性の低下及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S−S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の付加、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
G.抗ボールカイン抗体の用途
本発明の抗ボールカイン抗体は様々な有用性を有している。例えば、抗ボールカイン抗体は、ボールカインの診断アッセイ、例えばその特定細胞、組織、又は血清での発現の検出に用いられる。競合的結合アッセイ、直接又は間接サンドウィッチアッセイ及び不均一又は均一相で行われる免疫沈降アッセイ[Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, CRC Press, Inc. (1987) pp. 147-158]等のこの分野で知られた種々の診断アッセイ技術が使用される。診断アッセイで用いられる抗体は、検出可能な部位で標識される。検出可能な部位は、直接又は間接に、検出可能なシグナルを発生しなければならない。例えば、検出可能な部位は、H、14C、32P、35S又は125I等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光又は化学発光化合物、あるいはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素であってよい。抗体に検出可能な部位を抱合させるためにこの分野で知られた任意の方法が用いられ、それにはHunterら, Nature 144:945 (1962);Davidら, Biochemistry, 13: 1014 (1974);Painら, J. Immunol. Meth., 40:219 (1981);及びNygren, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)に記載された方法が含まれる。
また、抗ボールカイン抗体は、組換え細胞培養又は天然供給源からのボールカインのアフィニティー精製にも有用である。この方法においては、ボールカインに対する抗体を、当該分野でよく知られている方法を使用して、セファデックス樹脂や濾紙のような適当な支持体に固定化する。次に、固定化された抗体を精製するボールカインを含む試料と接触させた後、固定化された抗体に結合したボールカイン以外の試料中の物質を実質的に全て除去する適当な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、ボールカインを抗体から脱離させる他の適当な溶媒で支持体を洗浄する。
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
本明細書で引用した全ての特許及び参考文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
実施例で言及されている全ての市販試薬は、特に示さない限りは製造者の使用説明に従い使用した。ATCC受託番号により以下の実施例及び明細書全体を通して特定されている細胞の供給源はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、マナッサス、バージニアである。
実施例1:ヒトボールカインをコードするcDNAクローンの単離
Swiss-Prot公的データベースからの約950の既知の分泌タンパク質からの細胞外ドメイン(ECD)配列(もしあれば、分泌シグナル配列を含む)を、配列データベースの検索に使用した。データベースは、公的データベース(例えば、GenBank)と私的ESTDNAデータベース(LIFESEQTM, Incyte Pharmaceuticals, Palo Alto, CA)を含んでいた。検索は、コンピュータプログラムBLAST又はBLAST-2(Altschul等, Methods in Enzymology 266: 460-480 (1996))を用いて、ECDタンパク質配列と配列の6フレーム翻訳との比較として実施した。既知のタンパク質をコードせず、BLASTスコア70(90の場合もある)又はそれ以上となる比較物は、プログラム「phrap」(Phil Green, University of Washington, Seattle, WA; http://bozeman.mbt.washington.edu/phrap.docs/phrap.html)で集団化してコンセンサスDNA配列を構築した。
phrapを用いて他のEST配列に対してコンセンサスDNA配列を構築した。そのコンセンサス配列に基づいて、1)PCRにより対象の配列を含むcDNAライブラリを同定するため、及び2)ボールカインの全長コード化配列のクローンを単離するプローブとして用いるためにオリゴヌクレオチドを合成した。正方向及び逆方向PCRプライマーは一般的に20から30ヌクレオチドの範囲であり、しばしば約100−1000bp長のPCR産物を与えるために設計される。プローブ配列は、典型的に40−55bp長である。幾つかの場合には、コンセンサス配列が約1−1.5kbpより大きいときに付加的なオリゴヌクレオチドが合成される。全長クローンについて幾つかのライブラリをスクリーニングするために、ライブラリからのDNAを、上掲のAusubel等, Current Protocols in Molecular Biologyにあるように、PCRプライマー対でのPCR増幅によりスクリーニングした。ついで、ポジティブライブラリを、プローブオリゴヌクレオチド及びプライマー対の一方を用いて対象とする遺伝子をコードするクローンを単離するのに使用した。
一対のPCRプライマー(正方向と逆方向)を合成した:
正方向PCRプライマー 5'-CAGCGCCCTCCCCATGTCCCTG-3' (配列番号:3)
逆方向PCRプライマー 5'-TCCCAACTGGTTTGGAGTTTTCCC-3' (配列番号:4)
また、合成オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを次のヌクレオチド配列を有するコンセンサス配列から構築した:
ハイブリダイゼーションプローブ
5'-CTCCGGTCAGCATGAGGCTCCTGGCGGCCGCTGCTCCTGCTGCTG-3' (配列番号:5)。
全長クローンソースの幾つかのライブラリをスクリーニングするために、上で特定したPCRプライマイー対を用いたPCR増幅によってライブラリのDNAをスクリーニングした。ついでポジティブなライブラリを用いて、プローブオリゴヌクレオチドとPCRプライマーの一方を用いてボールカイン遺伝子をコードするクローンを単離した。
cDNAライブラリの構築のためのRNAはヒト胎児腎臓組織から単離した。cDNAクローンの単離に用いたcDNAライブラリは、Invitrogen, San Diego, CAからのもの等の市販試薬を用いて標準的な方法によって作成した。cDNAは、NotI部位を含むオリゴdTでプライムし、平滑末端でSalIヘミキナーゼアダプターに結合させ、NotIで切断し、ゲル電気泳動でおよそのサイズ分類し、そして適切なクローニングベクター(pRKB又はpRKD等;pRK5BはSfiI部位を含まないpRK5Dの前駆体である;Holmes等, Science, 253: 1278-1280 (1991)参照)に、独特のXhoI及びNotI部位において、所定の方向でクローニングした。
上記のように単離したクローンのDNA配列決定により、ボールカインの全長DNA配列(配列番号:1)及びボールカインの誘導タンパク質配列が得られた。
ボールカインの全ヌクレオチド配列は図1(配列番号:1)に示される。ボールカイン配列は単一のオープンリーディングフレームを含み、ヌクレオチド位置167−169に見かけの翻訳開始部位[上掲のKozakら]を持ち、ヌクレオチド位置500−502の終止コドンで終端する。予測されるポリペプチド前駆体は111アミノ酸長である(図2(配列番号:2))。ボールカインはATCCに寄託した。寄託したクローンが実際の配列を含み、ここに提供される配列は現在の配列決定技術に基づく単なる代表的なものであることが理解される。更に、ここに提供された配列と普遍的な遺伝暗号の知識があれば、任意の与えられたアミノ酸に対応するヌクレオチドを常套的に特定することができ、またその逆もしかりである。
完全長ボールカインポリペプチドのアミノ酸配列の分析により、その部分がヒトマクロファージタンパク-2、サイトカイン誘発好中球化学誘引物質2、及び好中球化学走化性因子2-ベータと配列同一性を有していることが示唆され、これはボールカインは新規なケモカインであることが示している。
更に以下において検討するように、cDNAをバキュロウイルスベクター中にサブクローニングし、C末端タグIgG融合タンパク質として昆虫細胞中に発現させた。得られたタンパク質のN末端配列決定により、シグナル配列切断部位が同定され、77アミノ酸の成熟ポリペプチドが得られた。他のヒトCXCケモカインと31−40%の同一性を示す成熟配列は4のカノニカルなシステイン残基を含むがELRモチーフを欠いている。
実施例2:ボールカインコード化DNAのハイブリダイゼーションプローブとしての使用
以下の方法はボールカインをコードしているヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションプローブとしての使用を記載するものである。
全長ボールカインのコード化配列(図1に示す、配列番号:1)を含んでなるDNAを、ヒト組織cDNAライブラリ又はヒト組織ゲノムライブラリでの相同的DNA(例えば、ボールカインの天然に生じる変異体をコードしているもの)をスクリーニングするためのプローブとして用いる。
いずれかのライブラリーDNAを含むフィルターのハイブリダイゼーション及び洗浄を以下の高緊縮条件下で実施する。放射標識ボールカイン誘導プローブのフィルターへのハイブリダイゼーションは、50%ホルムアルデヒド、5xSSC、0.1%SDS、0.1%ピロリン酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム、pH6.8、2xデンハード溶液、及び10%デキストラン硫酸の溶液中で、42℃において20時間実施される。フィルターの洗浄は、0.1xSSC及び0.1%SDSの水溶液中、42℃で実施される。
ついで、全長天然配列ボールカインをコードするDNAと所望の配列同一性を有するDNAは、この分野で知られた標準的な方法を用いて同定できる。
実施例3:大腸菌におけるボールカインポリペプチドの発現
この実施例は、大腸菌中における組み換え発現によるボールカインポリペプチドの非グリコシル化型の調製を例証する。
ボールカインコード化DNA配列(配列番号:1)は選択されたPCRプライマーを利用して最初に増幅される。このプライマーは、選択された発現ベクター上の制限酵素部位に対応する制限酵素部位を含まなければならない。様々な発現ベクターを使用することができる。適したベクターの例としては、アンピシリン及びテトラサイクリン耐性に対する遺伝子を含むpBR322(大腸菌由来;Bolivarら, Gene, 2:95 (1997)を参照のこと)がある。ベクターは制限酵素によって消化され、脱リン酸化される。ついで、PCR増幅配列がベクターにライゲーションされる。ベクターは好ましくは抗生物質耐性遺伝子、trpプロモーター、ポリhisリーダー(最初の6つのSTIIコドン、ポリhisリーダー、及びエンテロキナーゼ切断部位を含む)、ボールカインコード領域、ラムダ転写集結因子及びargU遺伝子をコードする配列を含む。
ついで、上掲のSambrookらに記載されている方法を用いて選択された大腸菌株を形質転換するために、このライゲーション混合物を利用した。形質転換体をLBプレート上でのその増殖能力によって同定し、ついで抗生物質耐性コロニーを選択する。プラスミドDNAを単離し、それを制限酵素分析及びDNA配列決定によって確認することができる。
選択されたクローンを、抗生物質が補填されたLBブロスのような液体培地で一晩かけて増殖させることができる。この一晩の培養を、引き続きより大きなスケールでの培養を播種するために使用してもよい。細胞を所望の光学密度になるまで増殖させると、その間に発現プロモーターが作用し始める。
更に数時間、細胞を培養した後に、遠心分離によって細胞を収集することが可能である。遠心分離によって得られた細胞ペレットは、当該分野で公知の様々な薬剤を使用して可溶化でき、ついで、この溶解したボールカインタンパク質を、タンパク質の堅固な結合を可能にする条件下において金属キレート化カラムを用いて精製すること可能である。
実施例4:哺乳動物細胞におけるボールカインポリペプチドの発現
この実施例は、哺乳動物細胞における組換え発現によるグリコシル化した形態のボールカインの調製を例証する。
発現ベクターとしてベクターpRK5(1989年3月15日公開のEP307,247参照)を用いる。場合によっては、ボールカイン DNAを選択した制限酵素を持つpRK5に結合させ、上記のSambrook等に記載されたようなライゲーション方法を用いてボールカインDNAを挿入させる。得られたベクターは、pRK5-ボールカインと呼ばれる。
一実施態様では、選択された宿主細胞は293細胞でもよい。ヒト293細胞(ATCC CCL 1573)は、ウシ胎児血清及び場合によっては滋養成分及び/又は抗生物質を添加したDMEMなどの培地中で組織培養プレートにおいて増殖させて集密化した。約10μgのpRK5-ボールカインDNAを約1μgのVA RNA遺伝子コード化DNA[Thimmappayaら, Cell, 31:543 (1982))]と混合し、500μlの1mM トリス-HCl、0.1mM EDTA、0.227M CaClに溶解させる。この混合物に、500μlの50mM HEPES(pH7.35)、280mM NaCl、1.5mM NaPOを一滴づつ添加し、25℃で10分間析出物を形成させた。析出物を懸濁し、293細胞に加えて37℃で約4時間定着させる。培地を吸引し、2mlのPBS中20%グリセロールを30秒間添加した。293細胞は、ついで無血清培地で洗浄し、新鮮な培地を添加し、細胞を約5日間インキュベートする。
形質移入の約24時間後、培地を除去し、培地(単独)又は200μCi/ml35S-システイン及び200μCi/ml35S-メチオニンを含む培地で置換した。12時間のインキュベーションの後、条件培地を回収し、スピンフィルターで濃縮し、16%SDSゲルに添加した。処理したゲルを乾燥させ、ボールカインポリペプチドの存在を現す選択された時間にわたってフィルムにさらした。形質転換した細胞を含む培地に、更なるインキュベーションを施し(無血清培地で)、培地を選択されたバイオアッセイで試験する。
これに代わる方法では、ボールカインは、Somparyracら, Proc. Natl. Acad. Sci., 12:7575 (1981)に記載されたデキストラン硫酸法を用いて293細胞に一過的に導入される。293細胞は、スピナーフラスコ内で最大密度まで増殖させ、700μgのpRK5-ボールカイン DNAを添加する。細胞は、まずスピナーフラスコから遠心分離によって濃縮し、PBSで洗浄した。DNA-デキストラン沈殿物を細胞ペレット上で4時間インキュベートした。細胞を20%グリセロールで90秒間処理し、組織培地で洗浄し、組織培地、5μg/mlウシインシュリン及び0.1μg/mlウシトランスフェリンを含むスピナーフラスコに再度導入した。約4日後に、条件培地を遠心分離して濾過し、細胞及び細胞片を除去した。次いで発現されたボールカインを含む試料を濃縮し、透析及び/又はカラムクロマトグラフィー等の選択した方法によって精製した。
他の実施態様では、ボールカインをCHO細胞で発現させることができる。pRK5-ボールカインは、CaPO又はDEAE-デキストランなどの公知の試薬を用いてCHO細胞に形質移入することができる。上記したように、細胞培地をインキュベートし、培地を培養培地(単独)又は35S-メチオニン等の放射性標識を含む培地に置換することができる。ボールカインポリペプチドの存在を同定した後、培地を無血清培地に置換してもよい。好ましくは、培地を約6日間インキュベートし、次いで条件培地を収集する。次いで、発現されたボールカインを含む培地を濃縮して、任意の選択した方法によって精製することができる。
また、エピトープタグボールカインは、宿主CHO細胞において発現させてもよい。ボールカインはpRK5ベクターからサブクローニングしてもよい。サブクローン挿入物は、PCRを施してバキュロウイルス発現ベクター中のポリ-hisタグ等の選択されたエピトープタグを持つ枠に融合できる。ポリ-hisタグボールカイン挿入物は、次いで、安定なクローンの選択のためのDHFR等の選択マーカーを含むSV40誘導ベクターにサブクローニングできる。最後に、CHO細胞をSV40誘導ベクターで(上記のように)形質移入した。発現を確認するために、上記のように標識化を行ってもよい。発現されたポリ-hisタグボールカインを含む培地は、次いで濃縮し、Ni2+-キレートアフィニティクロマトグラフィー等の選択された方法により精製できる。
実施例5:酵母菌でのボールカインポリペプチドの発現
以下の方法は、酵母菌中でのボールカインの組換え発現を記載する。最初に、ADH2/GAPDHプロモーターからのボールカインの細胞内生産又は分泌のための酵母菌発現ベクターを作成する。ボールカインをコードするDNA及びプロモーターを選択したプラスミドの適当な制限酵素部位に挿入してボールカインの細胞内発現を指示する。分泌のために、ボールカインをコードするDNAを選択したプラスミドに、ADH2/GAPDHプロモーターをコードするDNA、天然ボールカインシグナルペプチド又は他の哺乳動物シグナルペプチド、又は、例えば酵母菌α因子又はインベルターゼ分泌シグナル/リーダー配列、及び(必要ならば)ボールカインの発現のためのリンカー配列とともにクローニングすることができる。
酵母菌株AB110酵母菌株は、ついで上記の発現プラスミドで形質転換し、選択された発酵培地中で培養できる。形質転換した酵母菌上清は、10%トリクロロ酢酸での沈降及びSDS-PAGEによる分離で分析し、次いでクーマシーブルー染色でゲルの染色をすることができる。
続いて組換えボールカインは、発酵培地から遠心分離により酵母菌細胞を除去し、次いで選択されたカートリッジフィルターを用いて培地を濃縮することによって単離及び精製できる。ボールカインを含む濃縮物は、選択されたカラムクロマトグラフィー樹脂を用いてさらに精製してもよい。
実施例6:ボールカインポリペプチドに結合する抗体の調製
この実施例は、ボールカインに特異的に結合できるモノクローナル抗体の調製を例示する。
モノクローナル抗体の生産のための技術は、当該分野で知られており、例えば上記のGodingに記載されている。用いることができる免疫原は、精製ボールカイン、ボールカインを含む融合タンパク質、細胞表面に組換えボールカインを発現する細胞を含む。免疫原の選択は、当業者が過度の実験をすることなくなすことができる。
Balb/c等のマウスを、完全フロイントアジュバントに乳化して皮下又は腹腔内に1−100マイクログラムで注入したボールカイン免疫原で免疫化する。あるいは、免疫原をMPL-TDMアジュバント(Ribi Immunochemical Research, ハミルトン, モンタナ)に乳化し、動物の後フットパッドに注入してもよい。免疫化したマウスは、ついで10から12日後に、選択したアジュバント中に乳化した付加的免疫源で追加免疫する。その後、数週間、マウスをさらなる免疫化注射で追加免疫する。抗ボールカイン抗体の検出のためのエライザアッセイで試験するために、レトロオービタル出血からの血清試料をマウスから周期的に採取してもよい。
適当な抗体力価が検出された後、抗体に「陽性」の動物に、ボールカイン静脈内注射の最後の注入をすることができる。3から4日後、マウスを屠殺し、脾臓細胞を取り出した。次いで脾臓細胞を(35%ポリエチレングリコールを用いて)、ATCCから番号CRL1597で入手可能なP3X63AgU.1等の選択されたマウス骨髄腫株化細胞に融合させた。融合によりハイブリドーマ細胞が生成され、ついで、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン)培地を含む96ウェル組織培養プレートに蒔き、非融合細胞、骨髄腫ハイブリッド、及び脾臓細胞ハイブリッドの増殖を阻害した。
ハイブリドーマ細胞は、ボールカインに対する反応性についてのエライザでスクリーニングされる。ボールカインに対する所望のモノクローナル抗体を分泌する「陽性(ポジティブ)」ハイブリドーマ細胞の決定は、技術常識の範囲内である。
陽性ハイブリドーマ細胞を同系のBalb/cマウスに腹腔内注入し、抗ボールカインモノクローナル抗体を含む腹水を生成させる。あるいは、ハイブリドーマ細胞を、組織培養フラスコ又はローラーボトルで増殖させることもできる。腹水中に生成されたモノクローナル抗体の精製は、硫酸アンモニウム沈降、それに続くゲル排除クロマトグラフィ−を用いて行うことができる。あるいは、抗体のプロテインA又はプロテインGへの親和性に基づくアフィニティクロマトグラフィーを用いることもできる。
実施例7:バキュロウイルス感染昆虫細胞でのボールカインポリペプチドの発現
以下の方法は、バキュロウイルス感染昆虫細胞中におけるボールカインポリペプチドの組換え発現を記載する。
一般に、ボールカインをコードする配列を、バキュロウイルス発現ベクターに含まれるエピトープタグの上流に融合させる。このようなエピトープタグは、ポリ-hisタグ及び免疫グロブリンタグ(IgGのFc領域など)を含む。pVL1393(Novagen)などの市販されているプラスミドから誘導されるプラスミドを含む種々のプラスミドを用いることができる。簡単には、ボールカインコード化DNA又はボールカインコード化DNAの所望部分(例えば膜貫通タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列)が、5'及び3'領域に相補的なプライマーでのPCRにより増幅される。5'プライマーは、隣接する(選択された)制限酵素部位を包含していてもよい。生産物は、ついで、選択された制限酵素で消化され、発現ベクターにサブクローニングされる。
ついで断片をその各部位を介してpb.PH.IgG中にサブクローニングした。pb.PH.IgGプラスミドはpVL1393プラスミド(Pharmingen)の誘導体であり、クローニング部位の下流にヒトIgG遺伝子のFc領域をコードしている。
一般に組換えバキュロウイルスは、上記のプラスミド及びBaculoGold(商品名)ウイルスDNA(Pharmingen)を、Spodoptera frugiperda(「Sf9」)細胞(ATCC CRL 1711)中にリポフェクチン(GIBCO-BRLから市販)を用いて同時形質移入することにより作成される。28℃で4−5日インキュベートした後、放出されたウイルスを回収し、更なる増幅に用いた。ウイルス感染及びタンパク質発現は、O'Reilleyら, Baculovirus expression vectors: A Laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994)に記載されているように実施した。
この場合、pb.PH.SST DNA.IgGプラスミドを、10%仔ウシ血清(FBS)(Hyclone)を補填したHinkのTNM-FH培地(JRH Biosciences)中で成長させた10のSf9細胞中にリポフェクチン(Gibco BRL)を使用してBaculogoldバキュロウイルスDNA(Pharmingen)と共に同時形質移入した。細胞を28℃で5日間インキュベートした。上清を集めた後、10の近似感染効率(MOI)で10%FBSを補填したHinkのTNM-FH培地中でSf9細胞を感染させることによって第一回ウイルス増幅に使用した。細胞を28℃で3日間インキュベートした。上清を集め、組換えボールカイン-IgGの発現を、30μLのプロテイン-AセファロースCL-4Bビーズ(Pharmacia)へ1mLの上清をバッチ結合させた後、クーマシーブルー染色によって既知の濃度のタンパク質標準マーカーと比較する続くSDS-PAGEによって決定した。
最初のウイルス増幅上清を用いて、0.1の近似MOIでESF-921培地(Expression Systems LLC)中で成長させたSf9細胞の500mLの撹拌培養物を感染させた。細胞を28℃で3日間インキュベートした。上清を集めて濾過した。バッチ結合とSDS-PAGE分析を繰り返して撹拌培養物中の発現を確認した。続いて500mLの上清を精製にまわした。
一般に、発現されたポリ-hisタグボールカインポリペプチドは、次に、例えばNi2+-キレートアフィニティクロマトグラフィーにより次のようにして精製される。抽出物は、Rupertら, Nature, 362:175-179 (1993)に記載されているように、ウイルス感染した組換えSf9細胞から調製される。簡便には、Sf9細胞を洗浄し、超音波処理用バッファー(25mLのHepes、pH7.9;12.5mMのMgCl;0.1mMのEDTA;10%グリセロール;0.1%のNP-40;0.1MのKCl)中に再懸濁し、氷上で2回20秒間超音波処理する。超音波処理物を遠心分離で透明化し、上清を充填バッファー(50mMのリン酸塩、300mMNaCl、10%のグリセロール、pH7.8)で50倍希釈し、0.45ミクロンのフィルターで濾過する。Ni2+-NTAアガロースカラム(Qiagenから市販)を5mLの総容積で調製し、25mLの水で洗浄し、25mLの充填バッファーで平衡化させる。濾過した細胞抽出物は、毎分0.5mLでカラムに充填される。カラムを、分画回収が始まる点であるA280のベースラインまで充填バッファーで洗浄する。次に、カラムを、結合タンパク質を非特異的に溶離する二次洗浄バッファー(50mMのリン酸塩;300mMのNaCl、10%のグリセロール、pH6.0)で洗浄した。A280のベースラインに再度到達した後、カラムを二次洗浄バッファー中で0から500mMのイミダゾール勾配で展開した。1mLの分画を回収し、SDS-PAGE及び銀染色又はアルカリホスファターゼ(Qiagen)に結合したNi2+-NTAでのウェスタンブロットにより分析する。溶離したHis10-タグボールカインポリペプチドを含む画分をプールして充填バッファーで透析する。
あるいは、IgGタグ(又はFcタグ)ボールカインポリペプチドの精製は、例えば、プロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィーを含む既知のクロマトグラフィー技術を用いて実施できる。
この場合、形質移入したSf9細胞からの馴化培地(500mL、上記を参照)を遠心分離で集めて細胞を除去し、0.22ミクロンフィルターで濾過した。ボールカインタンパク質のイムノアドヘシン(Fc含有)構築物を馴化培地から精製した。その馴化培地を、20mMのリン酸Na、pH6.8バッファーで平衡にした5mlのプロテインAカラム(Pharmacia)にポンプで供給した。充填後、100mMのクエン酸、pH3.5と共に溶離前の平衡バッファーでカラムを十分に洗浄した。溶離したタンパク質を、275μLの1Mトリス、pH9バッファーを含むチューブ中に1mlの画分を収集することによって即座に中和させた。つづいて高度に精製したタンパク質を、25mlのG25Superfine(Pharmacia)カラムと共に10mMのHepes、0.14MのNaCl及び4%のマンニトール、pH6.8を含む貯蔵バッファー中で脱塩し、−80℃で貯蔵した。タンパク質の均質性をSDSポリアクリルアミドゲル及びエドマン分解法によるN末端アミノ酸シークエンシングによって評価した。
ボールカインによってコードされた精製タンパク質をトリス-HClゲルで分離し、PVDFメンブレンにエレクトロブロッティングした。対象のバンドを切り取った後、タンパク質産物を確認するためにエドマン分解法にかけた。
実施例8:ノーザンブロット分析
ヒト組織におけるボールカインmRNAの発現をノーザンブロット分析によって検査した。一般に、ヒトRNAブロットを、全長ボールカインcDNAに基づいて32P標識DNAプローブにハイブリダイズさせた;プローブはボールカインcDNA挿入断片を消化し精製することにより産生した。ヒト胎児RNAブロットMTN(クローンテック)及び成人RNAブロットMTN-II(クローンテック)をDNAプローブと共にインキュベートした。ブロットはハイブリダイゼーションバッファー(5X SSPE;2X デンハード溶液;100mg/mLの変性剪断サケ精子DNA;50%のホルムアミド;2%のSDS)中でプローブと共に42℃で60時間インキュベートした。ブロットを2X SSC;0.05%のSDS中、室温で1時間、数回洗浄し、ついで0.1X SSC;0.1%のSDS中、50℃で30分間洗浄した。ブロットを終夜露出した後、リン光体イメージャー分析(Fuji)により現像した。
この場合、様々な組織由来のヒトポリ(A)+RNAを含むノーザンブロット(2μl/レーン)をクローンテックから購入した。ボールカインの全コード化領域を含む469bpの断片を、それぞれ正方向及び逆方向の次の二つのプライマー:
正方向プライマー:5'AGCGCACGGCCACAGACAG3'(配列番号:6)
及び
逆方向プライマー:5'GACCCTGCGCTTCTCGTTCCA3'(配列番号:7)
を用いてPCRにより増幅させた。
ボールカイン特異的[32P]dCTP標識cDNAプローブを、この469bpの断片のランダムプライミング(High Prime, Boehringer Mannheim)によって合成し、導入されなかったヌクレオチドを除去した(NucTrap Probe Purification Column, Stratagene)。メンブレンを過去に記載されているようにして(McMaster, M.T.ら, J.Immunol. 154(8):3778, 1995)ノーザンブロットハイブリダイゼーションによって分析した。
図3に示されるように、ボールカインmRNA転写物が検出された。2kbの転写物が様々な組織中に低いレベルで検出された。脾臓、リンパ節、大腸において中程度の発現で、腎臓と小腸で最も高いレベルの発現であった。肺及び刺激されていない末梢血白血球(PBL)では発現が検出することができない。
実施例9:発現パターンを示すインサイツハイブリダイゼーション
ホルマリン固定、パラフィン包埋した正常な及び病気のヒト胎児及び成体組織を切片化し、脱パラフィンし、プロテイナーゼK(20mg/ml)で37℃にて15分間脱タンパクし、さらに、記載されているようにして(Lu L.H.及びGillett NA(Cell Vision 1: 169-176, 1994)、インサイツハイブリダイゼーションのために加工した。[33-P]UTP標識アンチセンスリボプローブを463bpのPCR産物(ノーザン分析に対して記載したプライマー配列)から生成した。スライドをコダックNTB2核トラックエマルションに浸漬し4週間露出させた。
検査した胎児組織は次のものを含む:胎盤、臍帯、肝臓、腎臓、副腎、甲状腺、肺、心臓、大血管、食道、胃、小腸、脾臓、胸腺、膵臓、脳、眼、脊髄、体壁、骨盤及び下肢。検査した成体組織は、肝臓、腎臓、副腎、心筋、大動脈、脾臓、リンパ節、膵臓、肺、皮膚、大脳皮質(rm)、海馬(rm)、眼、胃、胃癌、大腸、大腸癌、甲状腺(チンパンジー)、副甲状腺(チンパンジー)、卵巣(チンパンジー)及び軟骨肉腫を含む。アセトアミノフェンは肝臓障害及び肝硬変を誘発した。
結果は、暗視野(右の枠)と明視野のH&E染色組織(左の枠)の双方を含む顕微鏡写真である図4A−4Eに示される。強いシグナルが様々なヒト組織で見られた。図4Aは基底層の上皮細胞中に特異的な強い発現を示した正常な皮膚を示す;表皮のこの最も深く最も多い層は、皮膚中のかぶさる上皮細胞の全てに対する前駆体である基底膜に沿う細胞の単細胞厚層である。下側の層(有棘層、顆粒層等々)の上皮細胞中には発現はなかった。発現は表皮の直ぐ下にある結合組織である真皮中でまた明らかであった。図4Bは胎児の腎臓を示している。胎児の腎臓では、発現は発育中の細管において特異的であり、発現は細管上皮に見られた。図4C及び図4Dはそれぞれ胎児腸及び成体腸である。正常な成人のヒト大腸及び胎児腸の切片について発現を評価した。両方の腸試料には、絨毛の固有層内に多巣的パターンでの中程度から強い特異的発現があった。図4Eは発現について評価した大脳の切片である。大脳切片では、浅皮質ニューロンのサブセット中に強い特異的な発現があった;そのパターンは明確であり、皮質中に存在する特異的ニューロン集団であることが示唆される。
実施例10:混合リンパ球反応(MLR)アッセイ(24番)における刺激活性
この実施例は、本発明の所定のペプチドが、Tリンパ球の増殖の刺激剤として活性であることを示す。リンパ球の増殖を刺激する化合物は、免疫応答の増強が有益な場合に治療的に有用である。治療剤は、ボールカインのアンタゴニストの形をとり得、例えば、ポリペプチドに対するマウス-ヒトキメラ、ヒト化又はヒト抗体であり、Tリンパ球の増殖を阻害することが期待される。
このアッセイの基本的プロトコールは、Current Protocols in Immunology, unit3.12;J E Coligan, A M Kruisbeek, D H Marglies, E M Shevach, W Strober編, 国立衛生研究所, John Wiley & Sons, Incに記載されている。
さらに具体的には、このアッセイの一変形例では、末梢血単核細胞(PBMC)を個々の哺乳類、例えばヒトのボランティアからロイコフェレーシスにより単離する(一人のドナーにはスティミュレーターPBMCを供給し、他のドナーにはレスポンダーPBMCを供給する)。所望される場合、単離後に、細胞を仔ウシ血清及びDMSO中で凍結する。凍結細胞をアッセイ用培地(37℃、5%CO)で一晩解凍し、ついで洗浄し、3x10細胞/mlのアッセイ用培地(RPMI;10%仔ウシ血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%グルタミン、1%HEPES、1%非必須アミノ酸、1%ピルビン酸塩)に再懸濁する。スティミュレーターPBMCは、細胞に照射する(約300ラド)ことによって調製される。このアッセイは100:1の1%又は0.1%に希釈された被験試料、50:1の照射を受けたスティミュレーター細胞、及び50:1のレスポンダーPBMC細胞の混合物を三組ウェルに蒔くことによって調製される。100マイクロリットルの細胞培養培地又は100マイクロリットルのCD4-IgGをコントロールとして使用する。ついで、ウェルを37℃、5%COで4日間インキュベートする。5日目に、各ウェルへトリチウム化チミジン(1.0mCi/ウェル;Amersham)を適用する。6時間後に細胞を3回洗浄し、ついで標識の取込を評価する。
このアッセイの他の変形例では、PBMCをBalb/cマウス及びC57B6マウスの脾臓から単離する。細胞を、アッセイ用培地(RPMI;10%仔ウシ血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1%グルタミン、1%HEPES、1%非必須アミノ酸、1%ピルバート)において、新たに収集した脾臓から取り出して細かく切断し、PMBCを、リンパライトM(Lympholyte M)(Organon Teknika)上にこれらの細胞をオーバーレイし、2000rpmで20分間遠心分離し、回収し、アッセイ用培地で単核細胞層を洗浄し、アッセイ用培地で1x10細胞/mlになるように細胞を再懸濁させることによって単離する。ついで、このアッセイは上述のように行われる。本発明の化合物に対するこのアッセイの結果は以下の表7に示される。コントロールに対する増加はポジティブであると考えられ、180%以上又は180%と同等の増加が好ましい。しかしながら、コントロールより大きい全ての値は、試験タンパク質に対して刺激効果を示す。
Figure 0004166254
実施例11:皮膚血管透過性アッセイ(64番)
このアッセイは、ボールカインが免疫系を刺激し、動物の注射部位に単核球、好酸球及びPMN浸潤を誘導することにより炎症を誘発し得ることを示す。この皮膚血管透過性アッセイは以下のように行われる。350g又はそれ以上の無毛モルモットにケタミン(70−80mg/kg)と5mg/Kgのキシラジンを筋肉内投与(IM)して麻酔をかける。精製したボールカインポリペプチド又は馴化培地被験試料を、注射部位当たり100mLで試験動物の背に皮内注射する。動物当たりおよそ10−30、好ましくは16−24の注射部位を有することが可能である。ついで1mLのエバンスブルー染料(1%の緩衝化された生理的食塩水)を心臓内注射する。そして、注射部位の斑点を注射後1時間、6時間及び24時間の時点で測定する(mm直径)。動物は、注射から適当な時間経過後に犠牲にした。各々の皮膚注射部位を切り取ってパラホルムアルデヒドに固定する。そして、その皮膚を、組織病理学的評価のために調製する。各々の部位は、皮膚への炎症性細胞湿潤について評価される。可視可能な炎症細胞炎症を持つ部位は、陽性と記録される。炎症細胞は、好中球、好酸球、単核球又はリンパ球である可能性がある。
少なくとも、注射部位の最小血管周囲湿潤物は陽性と記録され、注射部位の湿潤物でないものは陰性と記録される。このアッセイにおいてボールカインは陽性であった。
実施例12:ES細胞のニューロン分化(137番)
ES細胞を2日間ES+LIF培地[分化を停止させるため]中、24ウェルプレートにてクローン密度で成長させ、小コロニーを形成させる。ついで培地を様々な量のボールカインタンパク質を含むLIF、KSR培地に変え、ESクローンを培養物中で7日間、成長させ分化させる。7日目に細胞を固定しニューロンマーカーMAP2に対する抗体を用いる免疫細胞化学検査のために加工する。ニューロンの分化の程度は蛍光顕微鏡を使用して評価する。
ES培地−高グルコースDMEM−10%仔ウシ血清−SC培地補填−プラスLIF−KSR培地−GMEM−10%KSR[ノックアウト血清置換サプリメント]−グルタミン−Pen/Strep−非必須アミノ酸−及び2−ME。固定−4%パラホルムアルデヒド−3%正常ヤギ血清を伴うPBST[0.1%トリトン]中で1:1000で希釈されたMAP2抗体[Pharmingen]。
結果はニューロンを含むESコロニーの%と個々のコロニー内のニューロンの%として計算する。
ニューロンコロニーとバックグラウンドより10xの細胞カウントのウェルを、陽性で、ニューロン分化に影響を及ぼすタンパク質を含むと考える。124.00nMの最終濃度のボールカインはニューロン分化が陽性であるとの試験結果となった。
実施例13:特異的抗体を用いたボールカインポリペプチドの精製
天然又は組換えボールカインポリペプチドは、タンパク質精製の分野の種々の標準的な方法によって精製できる。例えば、プロボールカインポリペプチド、成熟ボールカインポリペプチド、又はプレボールカインポリペプチドは、対象とするボールカインポリペプチドに特異的な抗体を用いた免疫親和性クロマトグラフィーによって精製される。一般に、免疫親和性カラムは抗ボールカインポリペプチド抗体を活性化クロマトグラフィー樹脂に共有結合させて構築される。
ポリクローナル免疫グロブリンは、硫酸アンモニウムでの沈殿又は固定化プロテインA(Pharmacia LKB Biotechnology, Piscataway, N.J.)での精製のいずれかにより免疫血清から調製される。同様に、モノクローナル抗体は、硫酸アンモニウム沈殿又は固定化プロテインAでのクロマトグラフィーによりマウス腹水液から調製される。部分的に精製された免疫グロブリンは、CnBr活性化SEPHAROSETM(Pharmacia LKB Biotechnology)等のクロマトグラフィー樹脂に共有結合される。抗体が樹脂に結合され、樹脂がブロックされ、誘導体樹脂は製造者の指示に従って洗浄される。
このような免疫親和性カラムは、可溶化形態のボールカインポリペプチドを含む細胞からの画分を調製することによるボールカインポリペプチドの精製において利用される。この調製物は、界面活性剤の添加又はこの分野で公知の方法により分画遠心法を介して得られる全細胞又は細胞成分画分の可溶化により得られる。あるいは、シグナル配列を含む可溶性ボールカインポリペプチドは、細胞が増殖される培地中に有用な量で分泌されうる。
可溶性ボールカインポリペプチド含有調製物は、免疫親和性カラムを通され、カラムはボールカインポリペプチドの好ましい吸着を可能ならしめる条件下(例えば、洗浄剤存在下の高イオン強度バッファー)で洗浄される。ついで、カラムは、抗体/ボールカインポリペプチド結合を分解する条件下(例えば、約2−3といった低pH、又は高濃度の尿素又はチオシアン酸イオン等のカオトロープ)で溶離され、ボールカインポリペプチドが回収される。
実施例14:薬物スクリーニング
本発明は、種々の薬物スクリーニング技術の任意のものにおいてボールカインポリペプチド又はその結合断片を使用することによる化合物のスクリーニングに対して特に有用である。そのような試験に用いられるボールカインポリペプチド又は断片は、溶液中に遊離した状態でも、固体支持体に固定されても、細胞表面に担持されていても、あるいは細胞内に位置していてもよい。薬剤スクリーニングの一つの方法では、ボールカインポリペプチド又は断片を発現する組換え核酸で安定に形質移入される真核生物又は原核生物宿主細胞を利用する。薬剤は、そのような形質移入細胞に対して、競合的結合アッセイによってスクリーニングされる。生存可能又は固定化形態のいずれかによって、このような細胞は標準的な結合アッセイで使用できる。例えば、ボールカインポリペプチド又は断片と試験される試薬の間での複合体の形成を測定してよい。あるいは、試験する試薬によって生ずるボールカインポリペプチドとその標的細胞又は標的レセプターとの間の複合体形成における減少を試験することもできる。
従って、本発明は、ボールカインポリペプチド関連疾患又は障害に影響を与えうる薬剤又は任意の他の試薬のスクリーニング方法を提供する。これらの方法は、当該分野で良く知られている手法により、その試薬をボールカインポリペプチド又は断片に接触させ、(i)試薬とボールカインポリペプチド又は断片との間の複合体の存在について、又は(ii)ボールカインポリペプチド又は断片と細胞との間の複合体の存在について検定することを含む。これらの競合結合アッセイでは、ボールカインポリペプチド又は断片が典型的には標識される。適切なインキュベーションの後、遊離のボールカインポリペプチド又は断片を結合形態のものから分離し、遊離又は未複合の標識の量が、特定の試薬がボールカインポリペプチドに結合する又はボールカインポリペプチド/細胞複合体を阻害する能力の尺度となる。
薬剤スクリーニングのための他の技術は、ポリペプチドに対して適当な結合親和性を持つ化合物についてのハイスループットスクリーニングを提供し、1984年9月13日に公開されたWO84/03564に詳細に記載されている。簡単に述べれば、多数の異なる小型ペプチド試験化合物が、プラスチックピン等の固体支持体又は幾つかの他の表面上で合成される。ボールカインポリペプチドに適用すると、ペプチド試験化合物はボールカインポリペプチドと反応して洗浄される。結合したボールカインポリペプチドはこの分野で良く知られた方法により検出される。精製したボールカインポリペプチドは、上記の薬剤スクリーニング技術に使用するためにプレート上に直接被覆することもできる。さらに、非中和抗体は、ペプチドを捕捉し、それを固体支持体上に固定化するのに使用できる。
また、本発明は、ボールカインポリペプチドに結合可能な中和抗体がボールカインポリペプチド又はその断片について試験化合物と特異的に競合する競合薬剤スクリーニングアッセイの使用も考慮する。このようにして、抗体は、ボールカインポリペプチドで、一又は複数の抗原決定基を持つ任意のペプチドの存在を検出するのに使用できる。
実施例15:合理的薬物設計
合理的薬物設計の目的は、対象とする生物学的活性ポリペプチド(すなわち、ボールカインポリペプチド)又はそれらが相互作用する小分子、例えばアゴニスト、アンタゴニスト、又はインヒビターの構造的類似物を製造することである。これらの例の任意のものが、ボールカインポリペプチドのより活性で安定な形態又はインビボでボールカインポリペプチドに機能を促進又は阻害する薬物の創り出すのに使用できる(参考、Hodgson, Bio/Technology, 9: 19-21 (1991))。
一つのアプローチ法では、ボールカインポリペプチド、又はボールカインポリペプチド-インヒビター複合体の三次元構造が、x-線結晶学により、コンピュータモデル化により、最も典型的には2つの方法の組み合わせにより決定される。分子の構造を解明し活性部位を決定するためには、ボールカインポリペプチドの形状及び電荷の両方が確認されなければならない。数は少ないが、ボールカインポリペプチドの構造に関する有用な情報が相同タンパク質の構造に基づいたモデル化によって得られることもある。両方の場合において、関連する構造情報は、類似ボールカインポリペプチド様分子の設計又は効果的なインヒビターの同定に使用される。合理的な薬剤設計の有用な例は、Braxton及びWells, Biochemistry, 31: 7796-7801 (1992)に示されているような向上した活性又は安定性を持つ分子、又はAthaudaら,J. Biochem., 113: 742-746 (1993)に示されているような天然ペプチドのインヒビター、アゴニスト、又はアンタゴニストとして作用する分子を含みうる。
また、上記のような機能アッセイによって選択された標的特異的な抗体を単離しその結晶構造を解明することもできる。この方法は、原理的には、それに続く薬剤設計が基礎をおくことのできるファーマコア(pharmacore)を生成する。機能的な薬理学的に活性な抗体に対する抗-イディオタイプ抗体(抗-ids)を生成することにより、タンパク質結晶学をバイパスすることができる。鏡像の鏡像として、抗-idsの結合部位は最初のレセプターの類似物であると予測できる。抗-idは、ついで、化学的又は生物学的に製造したペプチドのバンクからペプチドを同定及び単離するのに使用できる。単離されたペプチドは、ファーマコアとして機能するであろう。
本発明によって、X線結晶学などの分析実験を実施するために十分な量のボールカインポリペプチドが入手可能である。さらに、ここに提供したボールカインポリペプチドアミノ酸配列の知識は、X線結晶学に代わる又はそれに加わるコンピュータモデル化技術で用いられるガイダンスを提供する。
材料の寄託
次の材料をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション, 10801 ユニバーシティ・ブルバード、マナッサス、バージニア20110-2209米国(ATCC)へ寄託した:
Figure 0004166254
これらの寄託は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約及びその規則(ブダペスト条約)の規定に従って行われた。これは、寄託の日付から30年間、寄託の生存培養物が維持されることを保証するものである。寄託物はブダペスト条約の条項に従い、またジェネンテック社とATCCとの間の合意に従い、ATCCから入手することができ、これは、何れが最初に来ようとも、関連した米国特許の発行時又は任意の米国又は外国特許出願の公開時に、寄託培養物の後代を永久かつ非制限的に入手可能とすることを保証し、米国特許法第122条及びそれに従う特許庁長官規則(特に参照番号886OG638の37CFR第1.14条を含む)に従って権利を有すると米国特許庁長官が決定した者に子孫を入手可能とすることを保証するものである。
本出願の譲受人は、寄託した材料の培養物が、適切な条件下で培養されていた場合に死滅もしくは損失又は破壊されたならば、材料は通知時に同一の他のものと速やかに取り替えることに同意する。寄託物質の入手可能性は、特許法に従いあらゆる政府の権限下で認められた権利に違反して、本発明を実施するライセンスであるとみなされるものではない
上記の文書による明細書は、当業者に本発明を実施できるようにするために十分であると考えられる。寄託した態様は、本発明のある側面の一つの説明として意図されており、機能的に等価なあらゆる作成物がこの発明の範囲内にあるため、寄託された作成物により、本発明の範囲が限定されるものではない。ここでの材料の寄託は、ここに含まれる文書による説明が、そのベストモードを含む、本発明の任意の側面の実施を可能にするために不十分であることを認めるものではないし、それが表す特定の例証に対して請求の範囲を制限するものと解釈されるものでもない。実際、ここに示し記載したものに加えて、本発明を様々に変形することは、前記の記載から当業者にとっては明らかなものであり、添付の請求の範囲内に入るものである。
天然配列ボールカインcDNAのヌクレオチド配列(配列番号:1)を示し、ここで配列番号:1はここにおいてボールカインと命名したクローンである。 図1に示された配列番号:1のコード化配列から誘導されたアミノ酸配列(配列番号:2)を示す。 ボールカインをコードする核酸を分析するノーザンブロットの結果を示す。 ボールカインをコードする核酸について実施したインサイツハイブリダイゼーションの結果を示す顕微鏡写真である。胎児の皮膚を示し、右の枠は暗視野顕微鏡検査で、インサイツを示し、左の枠は通常の明視野顕微鏡検査である。 ボールカインをコードする核酸について実施したインサイツハイブリダイゼーションの結果を示す顕微鏡写真である。胎児の腎臓を示し、右の枠は暗視野顕微鏡検査で、インサイツを示し、左の枠は通常の明視野顕微鏡検査である。 ボールカインをコードする核酸について実施したインサイツハイブリダイゼーションの結果を示す顕微鏡写真である。胎児の腸を示し、右の枠は暗視野顕微鏡検査で、インサイツを示し、左の枠は通常の明視野顕微鏡検査である。 ボールカインをコードする核酸について実施したインサイツハイブリダイゼーションの結果を示す顕微鏡写真である。成人の腸を示し、右の枠は暗視野顕微鏡検査で、インサイツを示し、左の枠は通常の明視野顕微鏡検査である。 ボールカインをコードする核酸について実施したインサイツハイブリダイゼーションの結果を示す顕微鏡写真である。大脳を示し、右の枠は暗視野顕微鏡検査で、インサイツを示し、左の枠は通常の明視野顕微鏡検査である。

Claims (4)

  1. ニューロン細胞への多能性細胞の分化を誘導するインビトロの方法であって、有効量のボールカインポリペプチドを投与することを含んでなり、前記細胞をニューロンマーカーが検出可能な状態まで分化させる方法。
  2. 前記ニューロンマーカーがMAP2である、請求項1に記載の方法。
  3. ニューロン細胞への多能性細胞の分化を誘導するための薬剤であって、有効量のボールカインポリペプチドを含んでなり、前記細胞をニューロンマーカーが検出可能な状態まで分化させる薬剤。
  4. 前記ニューロンマーカーがMAP2である、請求項3に記載の薬剤。
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