紙葉類収納装置の一例として、自動現金取引装置等の内部に装填され、複数枚の紙幣を内部に整列させかつ積層させた状態で収納するとともに、収納した紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す紙幣収納繰出用のカートリッジがある(例えば、特許文献1参照)。
図5〜図7は、従来のカートリッジの概略構造を示す側方断面図である。図5(a)において、紙幣2が自動現金取引装置等に設けられた搬送機構により搬送されて、カートリッジ51の本体フレーム53に設けられた挿入口55に挿入されると、図示しないモータを駆動してフィードローラ57を時計回りに回転させることで、挿入された紙幣2はフィードローラ57とゲートローラ58との間を通って、内部に設けられた収納空間Aに取り込まれる。取り込まれた紙幣2は、図示する紙幣2aのように、収納空間Aに昇降可能に設けられた押圧板60の上に整列しかつ積層した状態で収納される。また、押圧板60を上昇させて、紙幣2aをピックアップローラ59に当接させた後に、モータを駆動してピックアップローラ59とフィードローラ57とを反時計回りに回転させることで、紙幣2aはピックアップローラ59で一枚ずつY方向に送られ、フィードローラ57とゲートローラ58との間を通って、排出口56から外部へ繰り出される。このとき、紙幣2aを整列させかつ積層させた状態で収納空間Aに収納しているので、紙幣2aをローラ57〜59等で詰まらせることなく外部に繰り出すことができる。
紙幣2を整列させかつ積層させた状態で収納空間Aに収納するには、収納空間Aの大きさを紙幣2のサイズに応じた大きさに調整する必要がある。図5〜図7に示すカートリッジ51では、紙幣2の短手方向(短辺方向)Sと平行であり、かつ紙幣2の繰り出し方向Yと略平行な収納空間Aの幅Wを調整するのに、板状の調整ガイド61a〜61cを設けている。図5に示す調整方式では、本体フレーム53に開閉可能に取り付けられたカバー54aに調整ガイド61aを図示しないネジ等で取り付ける際に、調整ガイド61aとカバー54aとの間に厚みの異なるスペーサ62a、62bをかませることで、調整ガイド61aのS方向の位置を変えて、収納空間Aの幅Wを調整している。例えば、図5(a)に示すようにスペーサ62aをカバー54aと調整ガイド61aとの間にかませることで、収納空間Aの幅Wを紙幣2aの短手方向Sの幅に対応させて80mmに調整することができる。また、図5(b)に示すようにスペーサ62bをカバー54aと調整ガイド61aとの間にかませることで、収納空間Aの幅Wを紙幣2fの短手方向Sの幅に対応させて66mmに調整することができる。
図6に示す調整方式では、調整ガイド61bにS方向に突起61zを設け、カバー54bにS方向に突起54zを設けている。そして、突起61z、54z同士を所定の重ね代Kで重ね合わせてボルト63で連結することで、調整ガイド61aのS方向の位置を変えて、収納空間Aの幅Wを調整している。例えば、図6(a)に示すように突起61z、54z同士を各突起61z、54zの高さ(図では、左右方向の寸法)と同一の重ね代11.8mmで重ね合わせてボルト63で連結することで、収納空間Aの幅Wを紙幣2dの短手方向Sの幅に対応させて71.8mmに調整することができる。また、図6(b)に示すように突起61z、54z同士を重ね代6mmで重ね合わせてボルト63で連結することで、収納空間Aの幅Wを紙幣2fの短手方向Sの幅に対応させて66mmに調整することができる。
図7に示す調整方式では、梁64の一端を軸65aを介してカバー54cに回転可能に取り付け、梁64の他端を梁64が軸65aを中心として回転できるように軸65bを介して調整ガイド61cに取り付けている。そして、各軸65a、65bに図示しないナットを螺合する等して、梁64を所定の角度で調整ガイド61cおよびカバー54cに固定することで、調整ガイド61cのS方向の位置を変えて、収納空間Aの幅Wを調整している。例えば、図7(a)に示すように梁64を調整ガイド61cおよびカバー54cと平行にして調整ガイド61cおよびカバー54cに固定することで、収納空間Aの幅Wを紙幣2bの短手方向Sの幅に対応させて77.6mmに調整することができる。また、図7(b)に示すように梁64を角度θで調整ガイド61cおよびカバー54cに固定することで、収納空間Aの幅Wを紙幣2fの短手方向Sの幅に対応させて66mmに調整することができる。
一方、特許文献1に示されている調整方式では、底板に貫通する長孔を開口するとともに、調整ガイドの下面に螺合孔を開口し、長孔を挿通させたボルトを螺合孔に螺着して、底板上の所定の位置に調整ガイドを直立させて固定することで、収納空間の幅を調整している。
しかしながら、上述した図5の調整方式では、収納空間Aの幅Wの大きさを変更する際に、スペーサを変更する幅Wの大きさに応じた専用のスペーサに交換する必要があるので、専用のスペーサをメーカから取り寄せなければならず、取り寄せに手間がかかる。また、次回の変更時に備えて、取り寄せた複数のスペーサを種類毎に管理しなければならず、管理が煩雑である。
また、上述した図6の調整方式では、突起61z、54zの高さよりもやや小さい間隔G(図6(a))以上の隙間が常に調整ガイド61bとカバー54bとの間に生じるので、収納空間Aの幅Wの調整範囲が小さくなり、紙幣2dよりもサイズの大きい紙幣2a(図5(a))を整列させかつ積層させた状態で収納することができない。また、収納空間Aの幅Wの調整範囲を大きくしようとすると、カートリッジ51をS方向に大きくしなければならないので、カートリッジ51の小型化を図ることができない。一般的に自動現金取引装置等では、取り扱う紙幣の種類数に応じて、複数台のカートリッジ51を内部にS方向に並べて装填するため、カートリッジ51の大きさは制限されている、特に、カートリッジ51のS方向の大きさは厳しく制限されている。このため、カートリッジ51の小型化を図ることは、重要な課題となっている。
また、図7の調整方式では、梁64の角度設定が難しいので、収納空間Aの幅Wを調整するのが困難である。また、調整ガイド61cの姿勢を安定させるために、梁64と調整ガイド61cおよびカバー54cとの固定強度を強くする必要がある。しかし、固定強度を強くするには、軸65a、65bやナット等の固定用部品にある程度大型のものを用い、調整ガイド61cや梁64の厚みを大きくしなければならないので、収納空間Aの幅Wの調整範囲が小さくなり、サイズの大きい紙幣2aを整列させかつ積層させた状態で収納することができない。また、収納空間Aの幅Wの調整範囲を大きくしようとすると、カートリッジ51の小型化を図ることができない。
さらに、特許文献1の調整方式では、調整ガイドの姿勢を安定させるために、調整ガイドと底板との固定強度を強くする必要がある。しかし、固定強度を強くするには、ボルトにある程度大型のものを用い、調整ガイドの厚みを大きくしなければならないので、収納空間の幅の調整範囲が小さくなる。また、収納空間の幅の調整範囲を大きくしようとすると、カートリッジの小型化を図ることができない。
本発明は、上記問題点を解決するものであって、その課題とするところは、部品を交換することなく収納空間の幅を容易に調整することが可能であり、かつ、収納空間の幅の調整範囲を大きく確保しながら装置の小型化を図ることが可能な紙葉類収納装置を提供することにある。
本発明では、紙葉類を整列させかつ積層させた状態で収納可能な収納空間が設けられた紙葉類収納装置において、収納空間の所定方向の幅を調節するための調整ガイドと、紙葉類収納装置の内面に取り付けられ、調整ガイドを垂直に嵌合させる嵌合溝が複数種類の紙葉類のサイズに対応させて収納空間の幅方向に形成されたコネクタとを設け、調整ガイドをコネクタのいずれかの嵌合溝に嵌合させることにより、収納空間の幅を多段階に調整可能にした。
このようにすることで、収納する紙葉類のサイズに対応したコネクタの嵌合溝に調整ガイドを嵌合することにより、収納空間の幅を紙葉類のサイズに対応した大きさに容易に調整することが可能となる。よって、従来の図5の調整方式のように部品を交換する必要がなくなり、部品を取り寄せる手間がかからず、部品を種類毎に管理する煩わしさがない。また、コネクタの嵌合溝の側壁で調整ガイドを支持して調整ガイドの姿勢を安定させるので、従来の図6および図7の調整方式のように調整ガイドと紙葉類収納装置の内面との間に調整ガイドを支持するための機構を設ける必要がなく、また、従来の図7および特許文献1の調整方式のように調整ガイドの厚みを大きくする必要がなくなる。このため、収納空間の幅の調整範囲が小さくなることはなく、当該調整範囲を大きく確保しながら紙葉類収納装置の小型化を図ることが可能となる。
また、本発明においては、調整ガイドは、収納空間の幅方向と紙葉類の積層方向とに対して垂直な方向に凹凸を有する形状をしていて、複数の嵌合溝は、収納空間の幅方向に所定の間隔で複数形成された第1の嵌合溝群と、当該第1の嵌合溝群から収納空間の幅方向と紙葉類の積層方向とに対して垂直な方向に所定の間隔をおいて形成され、かつ第1の嵌合溝群の各嵌合溝に対して収納空間の幅方向に所定の間隔だけずらして複数形成された第2の嵌合溝群とから構成されている。この場合、第1の嵌合溝群のいずれかの嵌合溝に調整ガイドを嵌合させるときと、第2の嵌合溝群のいずれかの嵌合溝に調整ガイドを嵌合させるときとで、コネクタを180°回転させればよい。
コネクタに複数の嵌合溝を収納空間の幅方向に一列に並ぶように形成する場合は、サイズの差が小さい複数種類の紙葉類のそれぞれに対応するように嵌合溝を形成しようとすると、嵌合溝同士の間隔が非常に狭くなるので、各嵌合溝の側壁の厚みを調整ガイドを支持することが可能な程度に厚くすることができない。また逆に、嵌合溝の側壁の厚みを調整ガイドを支持することが可能な程度に厚くしようとすると、コネクタに形成できる嵌合溝の数が少なくなり、収納空間の幅を調整する段階数も少なくなってしまう。然るに、上記のようにすることで、第1の嵌合溝群と第2の嵌合溝群のそれぞれにおいて、各嵌合溝の側壁の厚みを調整ガイドを支持することが可能な程度に厚くすることができる。また、サイズの差が小さい複数種類の紙葉類のそれぞれに対応するように、コネクタに複数の嵌合溝を形成することができ、収納空間の幅を調整する段階数を多くすることが可能となる。
本発明においては、コネクタに、嵌合溝のそれぞれに対応する収納空間の幅の調整段階を示す段階表示を付してもよい。このようにすることで、段階表示を見ることにより、収納する紙葉類のサイズに対応した嵌合溝に調整ガイドを確実に嵌合することができ、収納空間の幅を紙葉類のサイズに対応した大きさに容易に調整することが可能となる。また、調整後に、収納空間の幅の調整段階を一目瞭然で把握することができる。
本発明によれば、収納する紙葉類のサイズに対応したコネクタの嵌合溝に調整ガイドを嵌合することで、部品を交換することなく収納空間の幅を紙葉類のサイズに対応した大きさに容易に調整することが可能となる。また、コネクタの嵌合溝で調整ガイドを支持するので、収納空間の幅の調整範囲を大きく確保しながら紙葉類収納装置の小型化を図ることが可能となる。
図1および図2は、本発明に係る紙葉類収納装置の一例であるカートリッジ1の概略構造を示す図である。詳しくは、図1はカートリッジ1の側方断面図であり、図2はカートリッジ1の内部を示す斜視図である。図1(a)において、カートリッジ1は、自動現金取引装置等の内部に装填され、複数枚の紙幣2を整列させかつ積層させた状態で内部に設けられた収納空間Aに収納する。3はカートリッジ1の本体フレーム、4は本体フレーム3に開閉可能に取り付けられたカバーである。具体的には、カバー4は、図2に示す本体フレーム3の支持部1aに蝶番構造で支持されている。なお、図2では、カートリッジ1の内部構造を分かり易くするため、カバー4の図示を省略している。図1(a)に示す5は紙幣2が挿入される挿入口、6は紙幣2が排出される排出口である。7はフィードローラ、8はゲートローラ、9はピンチローラである。フィードローラ7とピンチローラ9は、それぞれ図示しないモータの駆動により時計回りまたは反時計回りに回転する。ゲートローラ8は、図2に示すようにフィードローラ7から離間した位置に設けられていて、図示しないワンウェイクラッチにより回転方向が規制されて、反時計回りにのみ自由に回転する。10は収納空間Aに昇降可能に設けられた押圧板である。
紙幣2が自動現金取引装置等に設けられた搬送機構により搬送されて、カートリッジ1の挿入口5に挿入されると、図示しないモータを駆動してフィードローラ7を時計回りに回転させることで、挿入された紙幣2はフィードローラ7とゲートローラ8との間を通って、収納空間Aに取り込まれる。このとき、ゲートローラ8が反時計回りに自由に回転するので、紙幣2が収納空間Aへスムーズに取り込まれる。取り込まれた紙幣2は、図1(a)に示す紙幣2aのように、押圧板10の上に整列しかつ積層した状態で収納される。また、押圧板10を上昇させて、収納している紙幣2aをピックアップローラ9に当接させた後に、モータを駆動してピックアップローラ9とフィードローラ7とを反時計回りに回転させることで、紙幣2aはピックアップローラ9で一枚ずつY方向に送られ、フィードローラ7とゲートローラ8との間を通って、排出口6から外部へ繰り出される。このとき、ゲートローラ8が時計回りに回転しないので、紙幣2a間の摩擦によって複数枚の紙幣2aがピックアップローラ9でY方向に送られても、複数枚の紙幣2aはフィードローラ7とゲートローラ8とで一枚ずつ分離されて、外部へ繰り出される。
11は板金からなる調整ガイドである。この調整ガイド11は、収納している紙幣2aの短手方向(短辺方向)Sと平行であり、かつ紙幣2aの繰り出し方向Yと略平行な収納空間Aの幅Wを調整するためのものである。なお、収納空間Aの幅Wは、調整ガイド11とカートリッジ1の内壁1bとの間隔に相当する。調整ガイド11の厚み(短手方向Sの大きさ)は4.5mmであり、比較的薄くなっている。また、調整ガイド11は、紙幣2aの積層方向(上下方向)Hの強度を高めるために、短手方向Sと積層方向Hとに対して垂直な方向、即ち紙幣2aの長手方向(長辺方向)L(図2に図示)に凹凸を有する形状をしている。なお、凹凸の詳細な形状は、図4Aおよび図4Bに図示している。
12a、12bは調整ガイド11の端部を嵌合するコネクタである。上部のコネクタ12aは、図2に示すように2つに分割されている。また、このコネクタ12aは、図1(a)に示すようにネジ13を貫通孔12c(図2に図示)を貫通させて、カバー4に設けられた突起4cの図示しないネジ穴に螺合させることにより、カバー4の内面4aに密着するようにカバー4に着脱自在に取り付けられている。下部のコネクタ12bは、脚部12d(図2に図示)をカバー4に設けられた溝4dに挿入することによって、カバー4の内面4aに密着するようにカバー4に着脱自在に取り付けられている。
図3は、コネクタ12a、12bの詳細を示す拡大図である。図3(a)はコネクタ12aを図1において下方から見た図であり、図3(b)はコネクタ12bを図1において上方から見た図である。各コネクタ12a、12bには、調整ガイド11を垂直に嵌合させる複数の嵌合溝M1〜M6が、複数種類の紙幣2の短辺サイズに対応させて形成されている。嵌合溝M1、M3、M5は、短手方向Sに所定の間隔で複数形成されている。嵌合溝M2、M4、M6は、嵌合溝M1、M3、M5から長手方向Lに所定の間隔をおいて形成され、かつ嵌合溝M1、M3、M5のそれぞれに対して短手方向Sに所定の間隔だけずらして形成されている。嵌合溝M1、M3、M5は、本発明における第1の嵌合溝群の一実施形態であり、嵌合溝M2、M4、M6は、本発明における第2の嵌合溝群の一実施形態である。各嵌合溝M1〜M6同士の間隔と、各嵌合溝M1〜M6の深さとは、嵌合溝M1〜M6の側壁12eで調整ガイド11を支持して、調整ガイド11の姿勢を安定させることが可能な大きさに設定されている。後述するように、いずれかの嵌合溝M1〜M6に調整ガイド11を嵌合した後、コネクタ12a、12bをカバー4に取り付けることで、調整ガイド11の短手方向Sにおける位置が変わり、収納空間Aの幅Wの大きさが多段階に調整される。嵌合溝M1〜M6の側壁12eの上には、嵌合溝M1〜M6のそれぞれに対応する収納空間Aの幅Wの調整段階を示す段階表示として「1」〜「6」の文字が示されている。
なお、上述したカートリッジ1では、収納空間Aの短手方向Sの幅Wだけでなく、収納空間Aの長手方向Lの幅も大きさが調整される。収納空間Aの長手方向Lの幅の調整には、例えば特許文献1の調整方式が採用されている。
図4Aおよび図4Bは、収納空間Aの幅Wの調整状況を説明するための図である。上述した調整ガイド11のコネクタ12aへの嵌合状態と、コネクタ12bへの嵌合状態とは略同様であるので、各図では、コネクタ12bへの嵌合状態を図示し、コネクタ12aへの嵌合状態の図示を省略している。
収納空間Aの幅Wを段階「1」に調整する場合は、まず、本体フレーム3よりカバー4を開いて、コネクタ12a、12bをカバー4から取り外した後、調整ガイド11をコネクタ12a、12bから引き抜く。そして、コネクタ12a、12bの段階「1」に対応する嵌合溝M1に調整ガイド11を嵌合して、嵌合溝M1に近い方の側面12fをカバー4の内面4aに密着するように、コネクタ12a、12bをカバー4に取り付ける。この後、カバー4を閉じると、図4A(a)に示すように収納空間Aの幅Wが、サイズの大きい紙幣2aの短辺サイズに対応して80mmに調整された状態となる。
また、図4A(a)の状態から収納空間Aの幅Wを段階「2」に調整する場合は、上述したようにコネクタ12a、12bから調整ガイド11を引き抜いた後、コネクタ12a、12bを中点O(図3に図示)を中心に180°回転させる。そして、コネクタ12a、12bの段階「2」に対応する嵌合溝M2に調整ガイド11を嵌合して、嵌合溝M2に近い方の側面12gをカバー4の内面4aに密着するように、コネクタ12a、12bをカバー4に取り付ける。この後、カバー4を閉じると、図4A(b)に示すように収納空間Aの幅Wが、紙幣2aよりサイズの小さい紙幣2bの短辺サイズに対応して78mmに調整された状態となる。
また、図4A(b)の状態から収納空間Aの幅Wを段階「3」に調整する場合は、上述したようにコネクタ12a、12bから調整ガイド11を引き抜いた後、コネクタ12a、12bを中点Oを中心に180°回転させる。そして、コネクタ12a、12bの段階「3」に対応する嵌合溝M3に調整ガイド11を嵌合して、側面12fをカバー4の内面4aに密着するように、コネクタ12a、12bをカバー4に取り付ける。この後、カバー4を閉じると、図4A(c)に示すように収納空間Aの幅Wが、紙幣2bよりサイズの小さい紙幣2cの短辺サイズに対応して75mmに調整された状態となる。
また、図4A(c)の状態から収納空間Aの幅Wを段階「4」に調整する場合は、上述したようにコネクタ12a、12bから調整ガイド11を引き抜いた後、コネクタ12a、12bを中点Oを中心に180°回転させる。そして、コネクタ12a、12bの段階「4」に対応する嵌合溝M4に調整ガイド11を嵌合して、側面12gをカバー4の内面4aに密着するように、コネクタ12a、12bをカバー4に取り付ける。この後、カバー4を閉じると、図4B(d)に示すように収納空間Aの幅Wが、紙幣2cよりサイズの小さい紙幣2dの短辺サイズに対応して72mmに調整された状態となる。
また、図4B(d)の状態から収納空間Aの幅Wを段階「5」に調整する場合は、上述したようにコネクタ12a、12bから調整ガイド11を引き抜いた後、コネクタ12a、12bを中点Oを中心に180°回転させる。そして、コネクタ12a、12bの段階「5」に対応する嵌合溝M5に調整ガイド11を嵌合して、側面12fをカバー4の内面4aに密着するように、コネクタ12a、12bをカバー4に取り付ける。この後、カバー4を閉じると、図4B(e)に示すように収納空間Aの幅Wが、紙幣2dよりサイズの小さい紙幣2eの短辺サイズに対応して69mmに調整された状態となる。
さらに、図4B(e)の状態から収納空間Aの幅Wを段階「6」に調整する場合は、上述したようにコネクタ12a、12bから調整ガイド11を引き抜いた後、コネクタ12a、12bを中点Oを中心に180°回転させる。そして、コネクタ12a、12bの段階「6」に対応する嵌合溝M6に調整ガイド11を嵌合して、側面12gをカバー4の内面4aに密着するように、コネクタ12a、12bをカバー4に取り付ける。この後、カバー4を閉じると、図4B(f)に示すように収納空間Aの幅Wが、紙幣2eよりサイズの小さい紙幣2fの短辺サイズに対応して66mmに調整された状態となる。
図4A(a)〜図4B(f)のいずれかの状態になった後、当該状態に対応するいずれかのサイズの紙幣2a〜2fを、前述したようにフィードローラ7およびゲートローラ8によって複数枚取り込むと、その複数枚の紙幣2a〜2fが収納空間Aに整列しかつ積層した状態で収納される。例えば、図4A(a)の状態で対応する最大サイズの紙幣2aを複数枚取り込むと、図1(a)に示すように複数枚の紙幣2aが収納空間Aに整列しかつ積層した状態で収納される。このとき、調整ガイド11はカバー4の内面4aに密着していて、調整ガイド11の収納空間A側の側面11aからカバー4の外面4bまでの距離Dは最小の7mmになっている。また、図4B(f)の状態で対応する最小サイズの紙幣2fを複数枚取り込むと、図1(b)に示すように複数枚の紙幣2fが収納空間Aに整列しかつ積層した状態で収納される。上記のように複数枚のいずれかのサイズの紙幣2a〜2fを収納した後、当該紙幣2a〜2fを、前述したようにピックアップローラ9およびフィードローラ7によって繰り出すと、紙幣2a〜2fがローラ7〜9等で詰まることなく外部に1枚ずつ排出される。
以上説明した調整方式によると、収納する紙幣2a〜2fのサイズに対応したコネクタ12a、12bの嵌合溝M1〜M6に調整ガイド11を嵌合することにより、収納空間Aの幅Wを紙幣2a〜2fのサイズに対応した大きさに容易に調整することが可能となる。よって、従来の図5の調整方式のように部品を交換する必要がなくなり、部品を取り寄せる手間がかからず、部品を種類毎に管理する煩わしさがない。また、コネクタ12a、12bの嵌合溝M1〜M6の側壁12eで調整ガイド11を支持して調整ガイド11の姿勢を安定させるので、従来の図6および図7の調整方式のように調整ガイドとカバーの内面との間に調整ガイドを支持するための機構を設ける必要がなく、また、従来の図7および特許文献1の調整方式のように調整ガイドの厚みを大きくする必要がなくなる。このため、収納空間Aの幅Wを最大サイズの紙幣2aに対応した大きさに調整した場合に、調整ガイド11の側面11aからカバー4の外面4bまでの距離Dを7mmと小さくすることができる。よって、収納空間Aの幅Wの調整範囲が小さくなることはなく、当該調整範囲を大きく確保しながらカートリッジ1の小型化を図ることが可能となる。
また、図3に示した実施形態以外に、コネクタ12a、12bに複数の嵌合溝を短手方向Sに一列に並ぶように形成することが考えられるが、その場合、サイズの差が小さい紙幣2a〜2fのそれぞれに対応するように嵌合溝を形成しようとすると、嵌合溝同士の間隔が非常に狭くなるので、各嵌合溝の側壁の厚みを調整ガイド11を支持することが可能な程度に厚くすることができない。また逆に、嵌合溝の側壁の厚みを調整ガイド11を支持することが可能な程度に厚くしようとすると、コネクタ12a、12bに形成できる嵌合溝の数が少なくなり、収納空間Aの幅Wを調整する段階数も少なくなってしまう。然るに、図3に示したように、嵌合溝M1、M3、M5に対して嵌合溝M2、M4、M6をずらして形成し、図4Aおよび図4Bに示したように、調整ガイド11を嵌合溝M1、M3、M5に嵌合させるときと嵌合溝M2、M4、M6に嵌合させるときとで、コネクタ12a、12bを180°回転させることで、嵌合溝M1、M3、M5間の側壁12eの厚みと、嵌合溝M2、M4、M6間の側壁12eの厚みとを調整ガイド11を支持することが可能な程度に厚くすることができる。また、サイズの差が小さい紙幣2a〜2fのそれぞれに対応するようにコネクタ12a、12bに複数の嵌合溝M1〜M6を形成することができ、収納空間Aの幅Wを調整する段階数を6段階と多くすることが可能となる。
さらに、各嵌合溝M1〜M6の側壁12eの上に、嵌合溝M1〜M6のそれぞれに対応する収納空間Aの幅Wの調整段階を示す段階表示「1」〜「6」を設けたことで、段階表示「1」〜「6」を見ることにより、収納する紙幣2a〜2fのサイズに対応した嵌合溝M1〜M6に調整ガイド11を確実に嵌合することができ、収納空間Aの幅Wを紙幣2a〜2fのサイズに対応した大きさに容易に調整することが可能となる。また、調整後に、収納空間Aの幅Wの調整段階を一目瞭然で把握することができる。また、嵌合溝M1、M3、M5に対応する段階表示「1」、「3」、「5」を側面12fを上基準として設け、嵌合溝M2、M4、M6に対応する段階表示「2」、「4」、「6」を側面12gを上基準として設けたことで、嵌合溝M1、M3、M5のいずれかに調整ガイド11を嵌合した状態でコネクタ12a、12bをカバー4に取り付ける際に、段階表示「1」、「3」、「5」が正常に見え、段階表示「2」、「4」、「6」が反転状態で見える。また、嵌合溝M2、M4、M6のいずれかに調整ガイド11を嵌合した状態でコネクタ12a、12bをカバー4に取り付ける際に、段階表示「2」、「4」、「6」が正常に見え、段階表示「1」、「3」、「5」が反転状態で見える。このため、コネクタ12a、12bをカバー4に間違った向きで取り付けることなく、常に正しい向きで取り付けることができる。
以上述べた実施形態においては、カバー4の内面4aにコネクタ12a、12bを取り付けて、調整ガイド11で収納空間Aの短手方向Sの幅Wを調整した場合を例に挙げているが、例えば、長手方向Lに対して垂直な本体フレーム3の一方の内面、または両方の内面にコネクタ12a、12bを取り付けて、調整ガイド11で収納空間Aの長手方向Lの幅を調整するようにしてもよい。また、収納空間Aの短手方向Sと長手方向Lの両方の幅を調整するようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、収納空間Aの幅Wの調整段階を示す段階表示として、数字「1」〜「6」をそれぞれ対応する嵌合溝M1〜M6の側壁12e上に設けた場合を例に挙げているが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、段階表示として、例えば英字、漢字、およびカナ等の他の文字を側壁12e上や各嵌合溝M1〜M6の底部に設けたり、複数の直線で構成される目盛をコネクタ12a、12bに短手方向Sと平行に設けたりしてもよい。また、収納空間Aの幅Wの調整段階は、6段に限らず、5段以下または7段以上にしてもよい。
さらに、以上の実施形態では、自動現金取引装置等の内部に装填され、紙幣の取り込み機能と繰り出し機能とを有するカートリッジ1に、本発明を適用した例を挙げているが、本発明はこれ以外にも、例えば紙幣の取り込み機能だけを有するカートリッジや、紙幣の繰り出し機能だけを有するカートリッジや、紙幣以外の金券や株券等のような紙葉類を収納する紙葉類収納装置に適用することが可能である。